説明

回転電機、回転電機の製造方法および回転電機を備えた装置

【課題】固定子コイルの冷却効率を向上可能な回転電機、回転電機の製造方法および回転電機を備えた装置を提供すること。
【解決手段】回転電機が備えるフレームの内部に固定された環状の固定子コアと固定子コアに設けられた固定子コイルとをモールドした樹脂は、固定子コアの環軸方向端面から該樹脂の外部まで達する孔部を有する。孔部は、固定子コアの環軸方向端面における周縁部の複数の箇所からそれぞれ樹脂の外部へ向けて開口され、孔軸方向が固定子コアの環軸方向に対して平行となるように設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機、回転電機の製造方法および回転電機を備えた装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フレームの内部に固定子コアが設けられた回転電機がある。かかる回転電機では、固定子コアに巻回された固定子コイルおよび固定子コアを樹脂によってモールドすることがある(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−47218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転電機においては、動作時に固定子コイルから発せられる熱を効率良く放熱可能にすることが望ましい。しかしながら、固定子コアおよび固定子コイルを樹脂でモールドした上記特許文献1の回転電機では、この放熱についての対策は特に講じられていなかった。
【0005】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、固定子コイルの冷却効率を向上可能な回転電機、回転電機の製造方法および回転電機を備えた装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の開示する回転電機では、フレームの内部に固定された環状の固定子コアと前記固定子コアに設けられた固定子コイルとをモールドした樹脂は、前記固定子コアの環軸方向端面から該樹脂の外部まで達する孔部を有する。
【発明の効果】
【0007】
本願の開示する回転電機の一つの態様によれば、固定子コイルの冷却効率を向上可能にさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、実施例に係る回転電機の構成を示す模式図である。
【図2】図2は、実施例に係る回転電機の構成を示す模式図である。
【図3】図3は、実施例に係る金型を示す模式図である。
【図4A】図4Aは、実施例に係る回転電機の製造方法を示す断面模式図である。
【図4B】図4Bは、実施例に係る回転電機の製造方法を示す断面模式図である。
【図4C】図4Cは、実施例に係る回転電機の製造方法を示す断面模式図である。
【図4D】図4Dは、実施例に係る回転電機の製造方法を示す断面模式図である。
【図5】図5は、実施例に係る回転電機を備えた装置を示す説明図である。
【図6A】図6Aは、実施例に係る温度センサの取付け工程を示す断面模式図である。
【図6B】図6Bは、実施例に係る温度センサの取付け工程を示す断面模式図である。
【図6C】図6Cは、実施例に係る温度センサの取付け工程を示す断面模式図である。
【図7】図7は、実施例に係る固定子コアが複数の分割コアによって構成された回転電機を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する回転電機、回転電機の製造方法および回転電機を備えた装置の実施例を詳細に説明する。なお、以下に示す実施例における例示で本発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0010】
まず、実施例に係る回転電機の構成について図1および図2を用いて説明する。図1および図2は、実施例に係る回転電機1の構成を示す模式図であり、図1には、図2における回転電機1のX−X線による断面を模式的に示している。
【0011】
また、図2には、図1における回転電機1のY−Y線による断面を模式的に示している。なお、図2では、説明を容易にする観点から後述の温度センサ33に接続されたリード線34およびブラケット4が取り外された状態の回転電機1を示している。
【0012】
図1および図2に示すように、本実施例に係る回転電機1は、フレーム2、固定子コア3、ブラケット4、軸受5、シャフト6、回転子コア8、位置検出器9およびカバー10を備える。
【0013】
なお、回転電機1は、シャフト6を介して外部装置(図示略)と連動連結している。以下では、回転電機1が電動機であり、外部装置が電動機の負荷である場合について説明する。
【0014】
フレーム2は、筒状に形成された筐体であり、内部に固定子コア3および回転子コア8が収納される。また、フレーム2は、開口端部にブラケット4が設けられる。ブラケット4は、外周部がフレーム2の開口端部に取り付けられ、内周部で軸受5を保持する。
【0015】
固定子コア3は、肉薄の電磁鋼板を複数枚重ね合わせて形成された環状の部材である。かかる固定子コア3は、固定子コイル31が巻回されたボビン3aが装着された状態でフレーム2の内周面に焼き嵌めによって固定される。さらに、固定子コア3、ボビン3aおよび固定子コイル31は、熱硬化性のある樹脂32によってモールドされる。
【0016】
また、シャフト6は、固定子コア3の環軸Lを回転軸として回転可能に軸受5により保持される。なお、固定子コイル31には、シャフト6を駆動する三相電力を供給するためのリード線7が接続される。リード線7は、フレーム2の支持部材21を介してフレーム2の外部へ引き出される。
【0017】
また、固定子コア3の内周側には空隙を介して回転子コア8が対向配置される。回転子コア8は、肉薄の電磁鋼板を複数枚重ね合わせて形成された円筒状の部材であり、一例として、周面に複数の永久磁石81が配置される。かかる回転子コア8は、固定子コア3の環軸Lを回転軸として回転する。
【0018】
位置検出器9は、シャフト6の回転位置を検出するロータリーエンコーダやレゾルバ等である。かかる位置検出器9には、シャフト6の回転位置に関する検出結果を所定の制御装置(図示略)へ出力するためのリード線91が接続される。なお、位置検出器9は、カバー10によって被覆される。
【0019】
かかる回転電機1では、固定子コア3に巻回された固定子コイル31へ電流を流すことにより固定子コア3の内側に回転磁界が発生する。そして、この回転磁界と回転子コア8の永久磁石81が発生する磁界との相互作用により回転子コア8が回転し、この回転子コア8の回転に伴ってシャフト6が回転する。
【0020】
なお、回転電機1を発電機とした場合、電動機とは逆の動作をする。すなわち、シャフト6の回転に伴い、回転子コア8が回転し、固定子コア3の固定子コイル31に電流が発生する。
【0021】
さらに、固定子コア3、ボビン3aおよび固定子コイル31をモールドした樹脂32は、固定子コア3の環軸L方向端面から樹脂32の外部まで達する孔部30を備える。かかる孔部30を備える樹脂32は、孔部30のない樹脂32に比べて表面積が大きいため冷却効率が高い。
【0022】
このため、回転電機1では、樹脂32によってモールドされた固定子コイル31の冷却効率が向上する。また、孔部30が達する固定子コア3の環軸L方向端面には、穴等は特に形成されていないため、当該穴等が与える電磁特性への影響はない。
【0023】
また、樹脂32に設けられた孔部30は、樹脂32の環軸L方向端面から固定子コア3の環軸L方向端面まで貫通されている。これにより、回転電機1では、動作時に固定子コイル31から発せられる熱が固定子コア3を介して孔部30から樹脂32の外部へ効率的に放熱される。
【0024】
また、図2に示すように、孔部30は、固定子コア3の環軸L方向端面における周縁部の複数の箇所(ここでは、12箇所)からそれぞれ樹脂32の外部へ向けて開口される。これにより、回転電機1では、複数の孔部30のそれぞれから効率的に放熱を行うことができる。
【0025】
しかも、複数の孔部30は、固定子コア3の環軸L方向端面に対して固定子コア3の周方向に沿って等間隔に設けられる。これにより、回転電機1では、固定子コア3の環軸L方向端面における各部位から均等に放熱させることが可能なため、固定子コイル31によって発せられる熱をより効率的に樹脂32の外部へ放熱させることができる。
【0026】
また、複数の孔部30のうち、一つの孔部30の内部には、温度センサ33が設けられる。これにより、回転電機1では、温度センサ33によって固定子コイル31の温度を検出することができる。
【0027】
したがって、回転電機1では、温度センサ33によって検出される温度を所定の制御装置によって監視させ、温度が所定の閾値を超えた場合に、制御装置によって異常発熱の報知や回転電機1の動作停止を行わせることができる。
【0028】
また、温度センサ33は、図2に示すように、複数の孔部30のうち、固定子コイル31に接続されたリード線7が配置される領域以外の領域に配置された孔部30に設けられる。これにより、回転電機1では、温度センサ33に接続されたリード線34と固定子コイル31に接続されたリード線7とがフレーム2の内部で干渉することを防止することができる。
【0029】
なお、温度センサ33は、全ての孔部30から選択した複数の孔部30に設けられてもよい。かかる場合、温度センサ33は、固定子コア3の環軸L方向端面における周方向に沿って等間隔に設けられる。
【0030】
かかる構成によれば、環状に配置された複数の固定子コイル31の温度分布を検出することが可能となる。このため、回転電機1によれば、一部の固定子コイル31が異常発熱を起こしたとしても、かかる異常発熱を起こした固定子コイル31に対応した温度センサ33によって異常発熱の発生を適切に検知することができる。
【0031】
また、孔部30は、孔軸方向が固定子コア3の環軸L方向に対して平行に設けられる。このため、温度センサ33を取付ける作業者は、ブラケット4をフレーム2へ嵌合する前に、フレーム2の環軸L方向からフレーム2内部の樹脂32を目視することで、温度センサ33を取付ける孔部30の位置を容易に確認することができる。これにより、温度センサ33の取付け作業の作業性が向上する。
【0032】
なお、孔部30の孔軸方向は、固定子コア3の環軸L方向に対して平行であることが望ましいが、必ずしも環軸L方向に対して平行である必要はない。
【0033】
また、固定子コア3、ボビン3aおよび固定子コイル31を樹脂32によってモールドした際、樹脂32は、フレーム2から環軸L方向へ所定の長さだけせり出すように設けられる。かかる樹脂32のフレーム2からせり出した部分32aは、ブラケット4を取付ける際に取付け位置の位置決め部材として機能する。
【0034】
これにより、ブラケット4を取付ける作業者は、煩雑な位置合わせを行うことなく、フレーム2からせり出した部分32aへブラケット4を嵌合するだけで簡単にブラケット4の取付けを行うことができる。
【0035】
しかも、樹脂32は、前述したよう複数の孔部30を備えている。このため、たとえば、フレーム2からせり出した部分32aの径がブラケット4の径よりも多少大きい場合であっても、ブラケット4を嵌合する際に孔部30が変形して応力逃げとして機能するので、ブラケット4を樹脂32へ嵌合することができる。
【0036】
すなわち、回転電機1では、フレーム2からせり出した部分32aの径がブラケット4の径よりも多少大きい場合に、当該部分32aに対して径を小さくする加工等の煩雑な作業を行うことなくブラケット4の取付けを行うことができる。
【0037】
次に、固定子コア3および固定子コイル31をモールドする際に用いる金型について図3を用いて説明する。図3は、実施例に係る金型100を示す模式図である。
【0038】
図3に示すように、金型100は、環状(ドーナツ状)の底面101と、底面101の内周から立設された内壁103と、底面101の外周から立設された外壁104とによって形成される空間を備える。
【0039】
また、底面101は、筒状のフレーム2の外径よりも外周が大きく、固定子コア3の内径よりも内周が小さく形成される。さらに、底面101には、固定子コア3の環軸L方向端面を支持する複数の支持ピン102が立設される。これら複数の支持ピン102は、底面101における周縁部に、底面101の周方向に沿って等間隔でそれぞれ設けられる。
【0040】
なお、図3では、説明を簡単にする観点から金型100の底面101を平面として図示しているが、金型100の底面101は、回転電機1の設計に応じて任意の形状に形成される。
【0041】
そして、実施例に係る回転電機1の製造方法では、金型100へ、固定子コア3が内部に焼き嵌めされたフレーム2を装填した後、金型100へ熱硬化性の樹脂32を充填し、金型100を加熱する。これによって樹脂32を硬化させ、固定子コア3、ボビン3aおよび固定子コイル31を樹脂32によってモールドする。なお、かかる樹脂32によって固定子コア3、ボビン3aおよび固定子コイル31をモールドする製造工程の詳細については、図4A、図4B、図4Cおよび図4Dを用いて後述する。
【0042】
次に、実施例に係る回転電機1の製造方法について、図4A、図4B、図4Cおよび図4Dを用いて説明する。以下では、固定子コア3、ボビン3aおよび固定子コイル31を樹脂32によってモールドする製造工程について説明し、その他の製造工程については、一般的な回転電機の製造方法と同様であるため説明を省略する。
【0043】
図4A、図4B、図4Cおよび図4Dは、実施例に係る回転電機1の製造方法を示す断面模式図である。なお、以下に説明する工程で用いる金型110は、底面111が所定形状に加工された点を除き、図3に示した金型100と同様の形状を備える。
【0044】
すなわち、図4Aに示すように、金型110は、支持ピン112が立設されたドーナツ状の底面111と、底面111の内周から立設された内壁113と、底面111の外周から立設された外壁114とによって形成される空間を備える。
【0045】
そして、かかる金型110を用いて回転電機1の固定子コア3、ボビン3aおよび固定子コイル31を樹脂32によってモールドする場合、図4Bに示すように、固定子コイル31が巻回された固定子コア3が内部に焼き嵌めされたフレーム2を金型110へ装填する。
【0046】
具体的には、底面111、内壁113および外壁114によって形成される環状の空間における環軸と固定子コア3の環軸Lとが一致するように、フレーム2を固定子コア3の環軸L方向から金型110の内部へ装填する。
【0047】
このとき、固定子コア3の環軸L方向端面(図4Bでは、固定子コア3の下側端面)は、金型110の底面111に立設された支持ピン112によって支持される。
【0048】
続いて、金型110上部の開口部を蓋体120によって閉塞する。かかる蓋体120は、底面が予め所定の形状に加工され、樹脂32を金型110の内部へ導入するための導入孔121が形成された部材である。
【0049】
続いて、図4Cに示すように、蓋体120の導入孔121から金型110の内部へ樹脂32を導入し、金型110の内部に樹脂32を充填する。そして、金型110および蓋体120を加熱する。これによって樹脂32を硬化させ、固定子コア3、ボビン3aおよび固定子コイル31を樹脂32によってモールドする。
【0050】
このとき、加熱された金型110の熱によりフレーム2が熱膨張してフレーム2の内径が拡大しても、金型110では、支持ピン112によって固定子コア3の下側端面が支持されているため、樹脂32の導入圧力等によって固定子コア3が環軸L方向へずれることを防止することができる。これにより、実施例に係る製造方法では、フレーム2および固定子コア3の環軸L方向に対する相対的位置にバラツキが生じることを防止することができる。
【0051】
続いて、実施例に係る製造方法では、図4Dに示すように、樹脂32によって固定子コア3、ボビン3aおよび固定子コイル31がモールドされたフレーム2を金型110から取り出す。これにより、樹脂32における支持ピン112に対応する箇所には、固定子コア3の環軸L方向端面から樹脂32の外部まで達する孔部30が形成される。
【0052】
このように、実施例に係る製造方法では、樹脂32によるモールドを行う工程で孔部30が形成されるため、モールド後のフレーム2を金型110から取り出した際に、樹脂32に残存する熱を樹脂32の外表面だけでなく孔部30からも放熱させることができる。
【0053】
次に、実施例に係る回転電機1を備えた装置について、図5を用いて説明する。図5は、実施例に係る回転電機1を備えた装置200を示す説明図である。なお、図5には、装置200の内部における回転電機1の配設位置を示している。また、図5には、図2に示す回転電機1の断面と同一の断面を示している。
【0054】
図5に示すように、装置200は、内部に回転電機1を備える。かかる装置200の場合、回転電機1のフレーム2の内部に固定子コイル31から発せられた熱がこもり易くなるが、回転電機1の樹脂32が複数の孔部30を備えているため樹脂32の外表面および孔部30から外部へ効率的に放熱を行うことができる。
【0055】
また、装置200の内部に設けられる回転電機1では、装置200の内部空間における中心点側に配置された孔部30に温度センサ33が設けられる。かかる装置200を製造する場合、たとえば、装置200の内部に回転電機1を設置した後、複数の孔部30のうち、装置200の内部空間における中心点までの距離が最も近い孔部30に温度センサ33を取り付ける。
【0056】
なお、予め所定の孔部30に温度センサ33を取り付けておき、温度センサ33が取り付けられた孔部30から装置200の内部空間における中心点までの距離が最短となるように、回転電機1の設置角度を調整してもよい。
【0057】
このように、装置200の内部空間における中心点側に配置された孔部30に温度センサ33を設けることで、比較的高温になることが予想される内部空間の中心点近傍に配置された孔部30から固定子コア3を介して固定子コイル31の温度を検出することができる。
【0058】
したがって、装置200では、他の孔部30内の温度が所定の閾値を超える前に、温度センサ33が設けられた孔部30内の温度が所定の閾値を超えた時点で固定子コイル31の異常発熱をいち早く検知することが可能となるため信頼性の向上を図ることができる。
【0059】
なお、装置200の内部に、内部空間を冷却するためのファンや通風路が設けられている場合、内部空間の中で最も風下となる位置の近傍に配置された孔部30に温度センサ33が設けられてもよい。
【0060】
これにより、装置200の内部空間の中で、比較的高温になることが予想される位置近傍の温度を温度センサ33によって検出することで、固定子コイル31の異常発熱をより早期に検知することが可能となる。
【0061】
また、装置200の内部空間のうち、比較的高温になる位置が当該内部空間の中心点近傍以外である場合には、その比較的高温になる部分の位置の近傍に配置された孔部30に温度センサ33が設けられてもよい。
【0062】
なお、これまで、樹脂32に設けられる孔部30の形状が筒状である場合について説明したが、孔部30の形状は筒状に限定するものではない。たとえば、温度センサ33を設ける孔部30は、樹脂32の外部に面する開口部が漏斗状に形成されてもよい。
【0063】
次に、開口部が漏斗状に形成された孔部30aへ温度センサ33を取付ける工程について、図6A、図6Bおよび図6Cを用いて説明する。図6A、図6Bおよび図6Cは、実施例に係る温度センサ33の取付け工程を示す断面模式図である。
【0064】
図6Aに示すように、複数の孔部30のうち、温度センサ33が設けられる孔部30aは、樹脂32の外部に面する開口部が漏斗状に形成されてもよい。かかる開口部が漏斗状に形成された孔部30aへ温度センサ33を取付ける場合、図6Bに示すように、まず、孔部30aへ温度センサ33を挿入する。
【0065】
続いて、図6Cに示すように、温度センサ33が挿入された孔部30aの内部へ耐熱性の接着剤35を流し込み、孔部30a内における接着剤35の嵩が上昇して接着剤35が漏斗状の開口部に溜り始めた時点で接着剤35の流し込みを停止する。そして、孔部30aへ流し込んだ接着剤35を固化させることによって孔部30a内に温度センサ33を固定する。
【0066】
このように、温度センサ33が取付けられる孔部30aの開口部を予め漏斗状に形成しておくことで、孔部30aへ接着剤35を流し込んだ場合に、孔部30aに十分な量の接着剤35が流し込まれたか否かを容易に判別することができる。
【0067】
また、かかる孔部30aによれば、流し込んだ接着剤35の量が若干多かった場合であっても、入れすぎた分の接着剤35を漏斗状の開口部内に溜めることが可能なため、孔部30aから接着剤35が溢れて他の部材へ付着することを防止することができる。
【0068】
なお、これまで、固定子コア3が周方向について一体に形成された回転電機1について説明したが、固定子コア3は、複数の分割コアによって構成されていてもよい。次に、固定子コアが複数の分割コアによって構成された場合について、図7を用いて説明する。
【0069】
図7は、実施例に係る固定子コアが複数の分割コア36によって構成された回転電機1aを示す模式図である。なお、図7に示す回転電機1aでは、図2に示す回転電機1と同一の構成要素については同一の符号を付している。なお、図7では、分割コア36を説明するために樹脂32を一部排除した回転電機1aを示している。
【0070】
図7に示すように、回転電機1aの固定子コアは、周方向に分割可能な複数の分割コア36によって構成される。かかる固定子コアでは、各分割コア36にそれぞれ固定子コイル31が巻回されたボビン3aが装着される。
【0071】
そこで、分割コア36を備える回転電機1aの場合、分割コア36、ボビン3aおよび固定子コイル31をモールドした樹脂32には、分割コア36毎に孔部30が設けられる。これにより、回転電機1aでは、各分割コア36に巻回された各固定子コイル31によって発せられる熱を各分割コア36に対応した孔部30から放熱させることができる。
【0072】
また、分割コア36を備える回転電機1aの場合、各孔部30は、固定子コアの環軸L方向端面における各分割コア36の周方向中央部37から樹脂32の外部まで達するように設けられる。
【0073】
これにより、回転電機1aによれば、各分割コア36における周方向中央部37からそれぞれ均等に放熱させることができるため、各固定子コイル31によって発せられた熱を効率的に樹脂32の外部へ放熱させることができる。
【0074】
ところで、図7に示す孔部30を設ける場合、各分割コア36の環軸L方向端面における周方向中央部37を支持する支持ピンが底面に設けられた金型を用いて樹脂32によるモールドを行う。
【0075】
このため、金型に樹脂32を充填する際、固定子コアの環軸L方向端面における各分割コア36は、金型の底面に設けられた支持ピンによって周方向中央部37が支持される。
【0076】
これにより、回転電機1aでは、樹脂32によるモールドを行う際、加熱された金型の熱によりフレーム2が熱膨張してフレーム2の内径が拡大しても、各分割コア36が環軸L方向へずれることを防止することができる。
【0077】
なお、各分割コア36は、さらに固定子コアの径方向に分割可能な分割コアによって構成されてもよい。すなわち、各分割コアは、固定子コアの内周部を構成する内コアと外周部を構成する外コアとから構成されてもよい。かかる場合、固定子コアおよび固定子コイル31をモールドした樹脂32には、各内コアおよび各外コアのそれぞれに対応した孔部30が設けられる。
【0078】
なお、分割コアが内コアおよび外コアによって構成されている場合、各内コアおよび各外コアを支持する支持ピンが底面に立設された金型を用いて樹脂32によるモールドを行う。これにより、モールドを行う際に、各内コアおよび各外コアがフレーム2に対して環軸L方向へずれることを防止することができる。
【0079】
また、上述した実施例では、孔部30に温度センサ33を設ける場合について説明したが、温度センサ33が設けられていない孔部30へ回転電機1の振動を検出する振動センサを設けてもよい。このように、実施例に係る回転電機1では、振動センサを設置するスペースを別途設けることなく振動センサを設置することができる。
【0080】
また、上述した実施例では、熱硬化性の樹脂32を用いたが、樹脂32は、熱可塑性の樹脂であってもよい。この場合、回転電機1では、製造時に固定子コア3、ボビン3aおよび固定子コイル31を樹脂32によりモールドした際、孔部30により、加熱して軟化させた樹脂32の温度が低下して硬化するまでに要する時間を短縮することが可能となり、製造時間が短縮される。
【符号の説明】
【0081】
L 環軸
1、1a 回転電機
2 フレーム
3 固定子コア
3a ボビン
30、30a 孔部
31 固定子コイル
32 樹脂
33 温度センサ
35 接着剤
36 分割コア
37 周方向中央部
4 ブラケット
6 シャフト
7、34、91 リード線
8 回転子コア
81 永久磁石
100、110 金型
101、111 底面
102、112 支持ピン
103、113 内壁
104、114 外壁
200 装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームの内部に固定された環状の固定子コアと前記固定子コアに設けられた固定子コイルとをモールドした樹脂は、前記固定子コアの環軸方向端面から該樹脂の外部まで達する孔部を有する
ことを特徴とする回転電機。
【請求項2】
複数の前記孔部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記孔部は、
前記固定子コアの環軸方向端面における周縁部の複数の箇所からそれぞれ前記樹脂の外部へ向けて開口された
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記孔部は、
孔軸方向が前記環軸方向に対して平行に設けられた
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の回転電機。
【請求項5】
前記固定子コアは、
複数の分割コアによって構成され、
前記孔部は、
前記分割コア毎に設けられた
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の回転電機。
【請求項6】
前記孔部は、
前記固定子コアの前記環軸方向端面における前記分割コアの周方向中央部から前記樹脂の外部まで達する
ことを特徴とする請求項5に記載の回転電機。
【請求項7】
前記樹脂は、
前記フレームの環軸方向端面から該環軸方向に突出した部分を有し、
前記回転電機は、
前記フレームの環軸方向端面側に設けられ、前記樹脂の突出した部分の外周を覆うブラケットを備える
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の回転電機。
【請求項8】
前記孔部に温度センサが設けられた
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の回転電機。
【請求項9】
前記孔部は、
前記樹脂の外部に面する開口部が漏斗状に形成された
ことを特徴とする請求項8に記載の回転電機。
【請求項10】
前記温度センサは、
前記固定子コイルのリード線が配置される領域以外に配置された前記孔部に設けられた
ことを特徴とする請求項8または請求項9に記載の回転電機。
【請求項11】
固定子コイルが設けられた環状の固定子コアが内部に固定された筒状のフレームの外径よりも外周が大きく、当該固定子コアの内径よりも内周が小さな環状の底面に前記固定子コアの環軸方向端面を支持する支持ピンが立設され、前記底面の内周から立設された内壁と前記底面の外周から立設された外壁と前記底面とによって形成される空間を備えた金型へ当該フレームを前記環軸方向から装填する工程と、
当該フレームが装填された前記金型へ樹脂を充填して前記固定子コアおよび前記固定子コイルをモールドする工程と
を含んだことを特徴とする回転電機の製造方法。
【請求項12】
回転電機が備えるフレームの内部に固定された環状の固定子コアと前記固定子コアに設けられた固定子コイルとをモールドした樹脂は、前記固定子コアの環軸方向端面から該樹脂の外部まで達する孔部を有する
ことを特徴とする回転電機を備えた装置。
【請求項13】
前記回転電機は、
前記装置の内部に設けられ、
前記装置の内部空間における中心点側に配置された前記孔部に温度センサが設けられた
ことを特徴とする請求項10に記載の回転電機を備えた装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−249438(P2012−249438A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119560(P2011−119560)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】