固体撮像素子、固体撮像装置、撮像機器、及び、偏光素子の製造方法
【課題】ワイヤグリッド型偏光子技術に基づく、構成、構造が簡素な偏光素子を備えた固体撮像素子を提供する。
【解決手段】固体撮像装置は、光電変換素子61、及び、光電変換素子61の光入射側に設けられた偏光素子70を備えた固体撮像素子41を複数、有し、偏光方位が異なる2種類以上の偏光素子70を備え、各偏光素子は、光電変換素子側から、ストライプ状の反射層71、反射層71上に形成された絶縁層72、及び、絶縁層72上に離間された状態で形成された複数の断片73’から成る光吸収層73の積層構造を有する。
【解決手段】固体撮像装置は、光電変換素子61、及び、光電変換素子61の光入射側に設けられた偏光素子70を備えた固体撮像素子41を複数、有し、偏光方位が異なる2種類以上の偏光素子70を備え、各偏光素子は、光電変換素子側から、ストライプ状の反射層71、反射層71上に形成された絶縁層72、及び、絶縁層72上に離間された状態で形成された複数の断片73’から成る光吸収層73の積層構造を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像素子、固体撮像装置、撮像機器、及び、偏光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微小な領域毎に偏光方位を変えて偏光素子を配置した光学素子、及び、このような光学素子をインテグレートした電子デバイスの商品化が、表示装置や計測装置を中心として進められており、例えば、表示装置用として、株式会社有沢製作所製のXpol(登録商標)が販売されている。
【0003】
また、所定数の走査線の整数倍に相当する画素が撮像面に設けられた撮像手段と;被写体からの第1の映像光における水平成分だけを透過する第1の水平成分偏光手段と;第1の水平成分偏光手段とは所定距離だけ離隔された位置に配置され、被写体からの第2の映像光における垂直成分だけを透過する第1の垂直成分偏光手段とを備え;第1の水平成分偏光手段により透過した水平成分を撮像面における所定範囲の画素に集光させ;第1の垂直成分偏光手段によって透過された垂直成分を所定範囲を除く残余範囲の画素に集光させる撮像装置が、特開2004−309868から周知である。そして、CCDの撮像面に対して所定距離だけ離れた位置に、人間の視差に応じた間隔だけ離間して配置された水平成分偏光フィルタ及び垂直成分偏光フィルタが、2つのレンズと共に設けられている。
【0004】
更には、使用帯域の光に透明な基板と;基板上で一方向に延びた帯状薄膜が使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列された反射層と;反射層上に形成された誘電体層と;帯状薄膜に対応する位置であって誘電体層上に、無機微粒子が一次格子状に配列されて成り、光吸収作用を持つ無機微粒子層とを備えた偏光素子が、特開2008−216956から周知である。係る偏光素子は、所謂、ワイヤグリッド型偏光子の技術を応用したものである。
【0005】
また、CCD素子(Charge Coupled Device:電荷結合素子)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor:相補性金属酸化膜半導体)イメージセンサーといった固体撮像素子の上に複数の偏光方位を有する偏光素子を配置することにより、同時刻における複数の偏光情報を空間分割して取得する技術が、例えば、第34回光学シンポジウム(2009年) 講演番号16 「偏光イメージングのSiCウェファ欠陥評価への応用」から周知である。具体的には、固体撮像素子への入射光をフォトニック結晶アレイによって4つの偏光方位の偏光成分に分解して、各偏光方位の強度を同時に出力することにより、従来は時分割処理であった偏光解析が空間分割処理で同時解析が可能となり、駆動部分を必要とせずに偏光イメージを出力することができる偏光カメラシステムが提案されている。しかしながら、フォトニック結晶アレイを固体撮像素子とは別に作製し、貼り合わせによって一体化するため、微細な画素サイズの撮像装置に適用することは困難である。
【0006】
一般に、ワイヤグリッド型偏光子は、導体材料から成る1次元若しくは2次元の格子状構造を有する。図35に概念図を示すように、ワイヤグリッドの形成ピッチP0が入射する電磁波の波長よりも有意に小さい場合、ワイヤグリッドの延在方向に平行な平面で振動する電磁波は、選択的にワイヤグリッドにて反射・吸収される。そのため、図35に示すように、ワイヤグリッド型偏光子に到達する電磁波には縦偏光成分と横偏光成分が含まれるが、ワイヤグリッド型偏光子を通過した電磁波は縦偏光成分が支配的な直線偏光となる。ここで、可視光波長帯に着目して考えた場合、ワイヤグリッドの形成ピッチP0がワイヤグリッド型偏光子へ入射する電磁波の波長と同程度以下である場合、ワイヤグリッドの延在方向に平行な面に偏った偏光成分はワイヤグリッドの表面で反射若しくは吸収される。一方、ワイヤグリッドの延在方向に垂直な面に偏った偏光成分を有する電磁波がワイヤグリッドに入射すると、ワイヤグリッドの表面を伝播した電場がワイヤグリッドの裏面から入射波長と同じ波長、同じ偏光方位のまま透過する。以上の物理現象は公知の内容で、例えば 新技術コミニュケーションズ社発行 鶴田著 「第3 光の鉛筆」23章 グリッド偏光器 等の書籍などに詳細が記述されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−309868
【特許文献2】特開2008−216956
【特許文献3】特公平6−054991号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】第34回光学シンポジウム 講演番号16 「偏光イメージングのSiCウェファ欠陥評価への応用」
【非特許文献2】新技術コミニュケーションズ社発行 鶴田著 「第3 光の鉛筆」23章 グリッド偏光器
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特開2004−309868に開示された撮像装置にあっては、水平成分偏光手段や垂直成分偏光手段が、具体的にどのような構成であるか、明示されていない。また、特開2008−216956に開示された偏光素子にあっては、無機微粒子(無機微粒子層14)は金属材料や半導体材料から構成され、無機微粒子は、形状異方性を有し、斜めスパッタ成膜法に基づき形成される。そのため、固体撮像素子毎に異なる形状異方性を有する無機微粒子を形成することは極めて困難である。それ故、特開2008−216956に開示された偏光素子を非特許文献1に開示された技術に適用することも、極めて困難である。
【0010】
従って、本発明の目的は、ワイヤグリッド型偏光子(Wire Grid Polarizer,WGP)技術に基づく、偏光方位が異なる2種類以上であって、構成、構造が簡素な偏光素子を備えた固体撮像装置、係る固体撮像装置を用いた撮像機器、係る固体撮像装置を構成する固体撮像素子、及び、係る固体撮像装置に用いられる偏光素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するための本発明の固体撮像素子は、
(A)光電変換素子、及び、
(B)光電変換素子の光入射側に設けられた偏光素子、
を備えており、
偏光素子は、光電変換素子側から、ストライプ状の反射層、反射層上に形成された絶縁層、及び、絶縁層上に離間された状態で形成された複数の断片(セグメント)から成る光吸収層の積層構造を有する。
【0012】
上記の目的を達成するための本発明の固体撮像装置は、
(A)光電変換素子、及び、
(B)光電変換素子の光入射側に設けられた偏光素子、
を備えた固体撮像素子を複数、有する固体撮像装置であって、
偏光方位が異なる2種類以上の偏光素子を備え、
各偏光素子は、光電変換素子側から、ストライプ状の反射層、反射層上に形成された絶縁層、及び、絶縁層上に離間された状態で形成された複数の断片(セグメント)から成る光吸収層の積層構造を有する。
【0013】
上記の目的を達成するための本発明の撮像機器は、本発明の固体撮像装置を備えており、具体的には、例えば、デジタルスチルカメラやビデオカメラ、カムコーダから構成されている。
【0014】
上記の目的を達成するための本発明の偏光素子の製造方法は、
基体上に形成されたストライプ状の反射層、反射層上に形成された絶縁層、及び、絶縁層上に離間された状態で形成された複数の断片(セグメント)から成る光吸収層の積層構造を有し、
ストライプ状の反射層の繰り返し方向における光吸収層の形成ピッチをPab-2、光吸収層の幅をWab、ストライプ状の反射層の延びる方向における光吸収層の断片の長さをLabとする偏光素子の製造方法であって、
(a)基体上に、反射層を構成すべき反射層形成層、絶縁層を構成すべき絶縁層形成層、光吸収層を構成すべき光吸収層形成層を設け、次いで、
(b)光吸収層形成層をパターニングすることで、長さLabの光吸収層形成層を得た後、
(C)ストライプ状の光吸収層の繰り返し方向における形成ピッチが2×Pab-2、幅が(Pab-2−Wab)であるレジスト層を全面に形成した後、レジスト層の側壁における厚さがWabであるエッチングマスク層をレジスト層の側壁に形成し、次いで、
(c)レジスト層を除去した後、エッチングマスク層をエッチング用マスクとして、光吸収層形成層、絶縁層形成層及び反射層形成層を順次エッチングし、以て、反射層、絶縁層及び光吸収層の積層構造から成る偏光素子を得る。
【発明の効果】
【0015】
ワイヤグリッド型偏光子の技術を応用した、本発明の固体撮像素子等における吸収型の偏光素子は、光電変換素子側から、ストライプ状の反射層、反射層上に形成された絶縁層、及び、絶縁層上に離間された状態で形成された複数の断片(セグメント)から成る光吸収層の積層構造を有するので、構成、構造が簡素であるにも拘わらず、所望の偏光方位を有し、優れた消光特性を有する偏光素子を提供することができる。しかも、光電変換素子の上方にオンチップで一体的に偏光素子が形成されているが故に、固体撮像素子の厚さを薄くすることができる。その結果、隣接する固体撮像素子への偏光光の混入(偏光クロストーク)を抑制することができるし、光吸収層を有する吸収型の偏光素子であるために、迷光、フレア、ゴースト等の発生を抑えることができる。また、本発明の固体撮像装置にあっては、偏光方位が異なる2種類以上の偏光素子を備えているので、固体撮像装置への入射光の偏光情報を空間的に分離する偏光分離機能を付与することができるし、偏光方位が異なる2種類以上の偏光素子を有する固体撮像素子を備えた固体撮像装置を容易に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、実施例1の固体撮像素子の模式的な一部断面図である。
【図2】図2は、実施例1の固体撮像素子の模式的な部分的平面図である。
【図3】図3は、実施例1の固体撮像素子の変形例の模式的な一部断面図である。
【図4】図4は、実施例1の偏光素子において、ストライプ状の反射層の延びる方向における反射層の長さLrfと消光比を関係を示すグラフである。
【図5】図5は、実施例1の偏光素子において、ストライプ状の反射層の延びる方向における反射層の長さLrfを2μmとしたときの、ストライプ状の反射層の延びる方向における反射層を透過する光の各偏光成分の透過強度分布をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【図6】図6は、遮光層の厚さを20nm、幅を100nmとし、入射光の波長を550nmとして、透過光強度分布をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【図7】図7は、実施例1の偏光素子における偏光特性をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【図8】図8は、実施例4の固体撮像素子の模式的な一部断面図である。
【図9】図9の(A)及び(B)は、実施例4の偏光素子において、Lab/Pab-1の値と平均反射率との関係を示すグラフである。
【図10】図10は、実施例4の偏光素子において、Lab/Pab-1の値と平均反射率との関係を示すグラフである。
【図11】図11の(A)、(B)及び(C)は、それぞれ、実施例5の撮像機器の概念図、第1偏光手段及び第2偏光手段における偏光の状態を模式的に示す図である。
【図12】図12の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例5の撮像機器において、第1偏光手段における第1領域及び第2偏光手段における第3領域を通過し、撮像素子アレイに到達する光の概念図、及び、第1偏光手段における第2領域及び第2偏光手段における第4領域を通過し、撮像素子アレイに到達する光の概念図であり、図12の(C)及び(D)は、図12の(A)及び(B)に示した光によって撮像素子アレイに結像した画像を模式的に示す図である。
【図13】図13は、実施例5の撮像機器におけるベイヤ配列を有する撮像素子アレイの概念図である。
【図14】図14は、固体撮像素子から得られた電気信号に対するデモザイク処理を行い、信号値を得る画像処理を説明するためのベイヤ配列を有する撮像素子アレイの概念図である。
【図15】図15の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例6の撮像機器に備えられた第1偏光手段及び第2偏光手段における偏光の状態を模式的に示す図である。
【図16】図16は、実施例6の撮像機器におけるベイヤ配列を有する撮像素子アレイの概念図である。
【図17】図17の(A)〜(D)は、実施例7の撮像機器に備えられた第1偏光手段の模式図である。
【図18】図18は、実施例8の撮像機器の概念図である。
【図19】図19の(A)、(B)及び(C)は、それぞれ、実施例9の撮像機器の概念図、第1偏光手段及び第2偏光手段における偏光の状態を模式的に示す図である。
【図20】図20は、実施例10の撮像機器におけるベイヤ配列を有する撮像素子アレイの概念図である。
【図21】図21は、実施例10の撮像機器の変形例1におけるベイヤ配列を有する撮像素子アレイの概念図である。
【図22】図22は、実施例10の撮像機器の変形例2におけるベイヤ配列を有する撮像素子アレイの概念図である。
【図23】図23は、実施例10の撮像機器の変形例3におけるベイヤ配列を有する撮像素子アレイの概念図である。
【図24】図24は、実施例10の撮像機器の変形例4におけるベイヤ配列を有する撮像素子アレイの概念図である。
【図25】図25の(A)、(B)、(C)及び(D)は、それぞれ、実施例11の固体撮像装置の概念図、四分の一波長板の概念図、第1偏光手段における偏光の状態を模式的に示す図、及び、偏光手段(第2偏光手段)における偏光の状態を模式的に示す図である。
【図26】図26の(A)、(B)及び(C)は、それぞれ、実施例11の固体撮像装置における四分の一波長板の概念図、第1偏光手段における偏光の状態を模式的に示す図、偏光手段(第2偏光手段)における偏光の状態を模式的に示す図であり、図26の(D)及び(E)は、実施例12の固体撮像装置における四分の一波長板の概念図である。
【図27】図27の(A)及び(B)は、実施例1の偏光素子の製造方法を説明するための、基体等の模式的な一部端面図である。
【図28】図27の(A)及び(B)は、図27の(B)に引き続き、実施例1の偏光素子の製造方法を説明するための、基体等の模式的な一部端面図である。
【図29】図29の(A)及び(B)は、図28の(A)及び(B)に引き続き、実施例1の偏光素子の製造方法を説明するための、基体等の模式的な一部端面図である。
【図30】図30の(A)及び(B)は、図29の(A)及び(B)に引き続き、実施例1の偏光素子の製造方法を説明するための、基体等の模式的な一部端面図である。
【図31】図31の(A)及び(B)は、図30の(A)及び(B)に引き続き、実施例1の偏光素子の製造方法を説明するための、基体等の模式的な一部端面図である。
【図32】図32の(A)及び(B)は、図31の(A)及び(B)に引き続き、実施例1の偏光素子の製造方法を説明するための、基体等の模式的な一部端面図である。
【図33】図33の(A)及び(B)は、実施例2及び実施例3の偏光素子の製造方法を説明するための、基体等の模式的な一部端面図である。
【図34】図34は、ストライプ状の反射層の延びる方向に沿って隣接する固体撮像素子間で反射層を離間させない状態の固体撮像素子の模式的な部分的平面図である。
【図35】図35は、ワイヤグリッド型偏光子を通過する光等を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではなく、実施例における種々の数値や材料は例示である。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本発明の固体撮像素子、本発明の固体撮像装置、撮像機器及び偏光素子の製造方法、全般に関する説明
2.実施例1(本発明の固体撮像素子、本発明の固体撮像装置、撮像機器及び偏光素子の製造方法)
3.実施例2(実施例1の偏光素子の製造方法の変形)
4.実施例3(実施例2の偏光素子の製造方法の変形)
5.実施例4(実施例1の変形)
6.実施例5(本発明の固体撮像装置の変形)
7.実施例6(実施例5の固体撮像装置の変形)
8.実施例7(実施例5の固体撮像装置の別の変形)
9.実施例8(実施例5の固体撮像装置の更に別の変形)
10.実施例9(実施例5の固体撮像装置の更に別の変形)
11.実施例10(実施例5の固体撮像装置の更に別の変形)
12.実施例11(実施例5の固体撮像装置の更に別の変形)
13.実施例12(実施例11の変形)、その他
【0018】
[本発明の固体撮像素子、本発明の固体撮像装置、撮像機器及び偏光素子の製造方法、全般に関する説明]
本発明の固体撮像素子における偏光素子、本発明の固体撮像装置における偏光素子、本発明の撮像機器における偏光素子、あるいは、本発明の偏光素子の製造方法によって得られる偏光素子において、ストライプ状の反射層の延びる方向は、消光させるべき偏光方位と一致しており、ストライプ状の反射層の繰り返し方向は、透過させるべき偏光方位と一致している構成とすることができる。即ち、反射層は、ワイヤグリッド型偏光子としての機能を有し、偏光素子に入射した光の内、反射層の延びる方向と平行な方向に電界成分を有する偏光波(TE波/S波及びTM波/P波のいずれか一方)を減衰させ、反射層の延びる方向と直交する方向(ストライプ状の反射層の繰り返し方向)に電界成分を有する偏光波(TE波/S波及びTM波/P波のいずれか他方)を透過させる。即ち、反射層の延びる方向が偏光素子の光吸収軸となり、反射層の延びる方向と直交する方向が偏光素子の光透過軸となる。
【0019】
上記の好ましい構成を含む本発明の固体撮像素子における偏光素子、本発明の固体撮像装置における偏光素子、あるいは、上記の好ましい構成を含む本発明の撮像機器における偏光素子において、ストライプ状の反射層の延びる方向における反射層の長さ(Lrf)は、ストライプ状の反射層の延びる方向に沿った固体撮像素子の長さ(Lid)未満である形態とすることが好ましい。
【0020】
そして、上記の好ましい構成、形態を含む本発明の固体撮像素子、上記の好ましい構成、形態を含む本発明の固体撮像装置における固体撮像素子、あるいは、上記の好ましい構成、形態を含む本発明の撮像機器における固体撮像素子にあっては、光電変換素子の上方にオンチップレンズが配置されており、オンチップレンズの上方に偏光素子が設けられている構成とすることができる。尚、係る構成を、便宜上、『本発明における固体撮像素子−A』と呼ぶ場合がある。
【0021】
そして、本発明における固体撮像素子−Aにあっては、偏光素子とオンチップレンズとの間の光軸方向の距離をD、オンチップレンズのサグ量をS、偏光素子とオンチップレンズとの間に存在する媒質の屈折率をn1、隣接する偏光素子の間に存在する隙間の幅を2×R、偏光素子への光の入射角の最大値をθin-maxとしたとき、
R≧(D+S)×tan[sin-1{sin(θin-max)/n1}] (1)
を満足する構成とすることができる。このように式(1)を満足することで、より具体的には、式(1)を満足するように「R」の値を設定することで、隣接する固体撮像素子への光の漏れ込み(偏光クロストーク)を防ぐことができる。更には、このような好ましい構成を含む本発明における固体撮像素子−Aにあっては、オンチップレンズと偏光素子との間に位置する平面内の領域であって、隣接するオンチップレンズとオンチップレンズとの間に位置する領域には、例えば、クロム(Cr)や銅(Cu)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)から成る遮光層が設けられている構成とすることができ、これによって、隣接する固体撮像素子への光の漏れ込み(偏光クロストーク)を、一層効果的に防ぐことができる。更には、これらの好ましい構成を含む本発明における固体撮像素子−Aにあっては、オンチップレンズと偏光素子との間には、オンチップレンズ側から、例えば透明な樹脂(例えば、アクリル系樹脂)から成る平坦化層、及び、偏光素子製造工程においてプロセスの下地として機能するシリコン酸化膜等の無機材料から成る層間絶縁層が形成されている構成とすることができる。更には、これらの好ましい構成を含む本発明における固体撮像素子−Aにあっては、光電変換素子とオンチップレンズとの間に波長選択層(具体的には、例えば、周知のカラーフィルタ層)が配置されている構成とすることができる。
【0022】
あるいは又、上記の好ましい構成、形態を含む本発明の固体撮像素子、上記の好ましい構成、形態を含む本発明の固体撮像装置における固体撮像素子、あるいは、上記の好ましい構成、形態を含む本発明の撮像機器における固体撮像素子にあっては、光電変換素子の上方にオンチップレンズが配置されており、光電変換素子とオンチップレンズの間に偏光素子が設けられている構成とすることができる。尚、係る構成を、便宜上、『本発明における固体撮像素子−B』と呼ぶ場合がある。
【0023】
そして、本発明における固体撮像素子−Bにあっては、オンチップレンズと偏光素子との間に波長選択層(具体的には、例えば、周知のカラーフィルタ層)が配置されている構成とすることができる。このような構成を採用することで、各偏光素子における透過光の波長帯域において独立して偏光素子の最適化を図ることができ、可視光域全域において一層の低反射率を実現することができる。更には、このような好ましい構成を含む本発明における固体撮像素子−Bにあっては、ストライプ状の反射層の延びる方向における光吸収層を構成する断片の(長手方向の)形成ピッチをPab-1、ストライプ状の反射層の延びる方向における光吸収層の断片の長さをLabとしたとき、波長選択層を通過する光の波長に依存してPab-1及びLabを決定する構成とすることができ、これによって、固体撮像素子に入射する光の波長範囲における偏光素子の低光反射構造化を達成することができる。
【0024】
以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む本発明の固体撮像素子における偏光素子、以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む本発明の固体撮像装置における偏光素子、以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む本発明の撮像機器における偏光素子、あるいは、上記の好ましい構成を含む本発明の偏光素子の製造方法によって得られる偏光素子においては、ストライプ状の反射層の延びる方向における光吸収層の断片の形成ピッチをPab-1、ストライプ状の反射層の繰り返し方向における光吸収層の断片の形成ピッチをPab-2、偏光素子に入射する光の最短波長をλmin、偏光素子に入射する光が通過する媒質の屈折率をn0、偏光素子への光の入射角の最大値をθin-maxとしたとき、
(Pab-12+Pab-22)1/2≦[(λmin/n0)×cos(θin-max)] (2)
を満足することが望ましい。このように(Pab-1,Pab-2)の値を規定することで、周期的に形成された光吸収層の断片からの回折光の発生を防ぐことができ、隣接する固体撮像素子への不要な光の漏れ込みを防ぐことができる。
【0025】
更には、以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む本発明の固体撮像素子における偏光素子、以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む本発明の固体撮像装置における偏光素子、以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む本発明の撮像機器における偏光素子、あるいは、上記の好ましい構成を含む本発明の偏光素子の製造方法によって得られる偏光素子においては、ストライプ状の反射層の延びる方向における光吸収層の断片の形成ピッチをPab-1、長さをLabとしたとき、
0.5≦(Lab/Pab-1)<1 (3)
を満足することが好ましい。
【0026】
更には、以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む本発明の固体撮像装置における固体撮像素子、あるいは、以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む本発明の撮像機器における固体撮像素子において、ストライプ状の反射層の延びる方向は、複数の固体撮像素子の配列方向と45度の角度又は135度の角度を成す構成とすることができる。
【0027】
更には、以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む本発明の固体撮像素子における偏光素子、以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む本発明の固体撮像装置における偏光素子、以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む本発明の撮像機器における偏光素子、あるいは、上記の好ましい構成を含む本発明の偏光素子の製造方法によって得られる偏光素子において、反射層は、金属材料、合金材料若しくは半導体材料から成る構成とすることができるし、光吸収層は、金属材料、合金材料若しくは半導体材料から成る構成とすることができる。
【0028】
偏光素子を構成する金属材料や合金材料(以下、『金属材料等』と呼ぶ場合がある)が外気と接触すると、外気からの水分や有機物の付着によって金属材料等の腐食耐性が劣化し、固体撮像素子の長期信頼性が劣化する虞がある。特に、金属材料等−絶縁材料−金属材料等の積層構造体に水分が付着すると、水分中にはCO2やO2が溶解しているために電解液として作用し、2種類のメタル間の間で局部電池が形成される虞がある。そして、このような現象が生じると、カソード(正極)側では水素発生等の還元反応が進み、アノード(負極側)では酸化反応が進むことにより、金属材料等の異常析出や偏光素子の形状変化が発生する。そして、その結果、本来期待され偏光素子や固体撮像素子の性能が損なわれる虞がある。例えば、反射層としてアルミニウム(Al)を用いる場合、以下の反応式で示すようなアルミニウムの異常析出が発生する虞がある。
Al → Al3+ + 3e-
Al3+ + 3OH- → Al(OH)3
【0029】
従って、以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む本発明の固体撮像素子における偏光素子、以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む本発明の固体撮像装置における偏光素子、以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む本発明の撮像機器における偏光素子、あるいは、上記の好ましい構成を含む本発明の偏光素子の製造方法によって得られる偏光素子において、偏光素子には保護膜が形成されていることが好ましい。そして、この場合、偏光素子は基体上に形成されており、偏光素子と偏光素子との間に位置する基体の部分には保護膜が形成されていない形態とすることが、より好ましい。また、上記の好ましい構成を含む本発明の偏光素子の製造方法にあっては、前記工程(c)に引き続き、偏光素子の上及び基体の上に保護膜を形成する形態を含むことができるし、この場合、更に、偏光素子の上及び基体の上に保護膜を形成した後、基体の上の保護膜を除去する形態を含むことができる。
【0030】
以上に説明した各種のパラメータを、以下に纏めておく。ここで、ストライプ状の(即ち、ラインアンドスペース・パターンを有する)反射層の延びる方向を、便宜上、『第1の方向』と呼び、ストライプ状の反射層の繰り返し方向(ストライプ状の反射層の延びる方向と直交する方向)を、便宜上、『第2の方向』と呼ぶ。
【0031】
Lrf :第1の方向における反射層の長さ
Pab-1:第1の方向における光吸収層の断片(セグメント)の形成ピッチ
Pab-2:第2の方向における光吸収層の断片(セグメント)の形成ピッチ
Lab :第1の方向における光吸収層の断片(セグメント)の長さ
Wab :第2の方向に沿った光吸収層の断片(セグメント)の幅
Lid :第1の方向に沿った固体撮像素子の長さ
D :偏光素子とオンチップレンズとの間の距離
S :オンチップレンズのサグ量
R :隣接する偏光素子の間に存在する隙間の幅の半分の値
n0 :偏光素子に入射する光が通過する媒質の屈折率
n1 :偏光素子とオンチップレンズとの間に存在する媒質の屈折率
λmin :偏光素子に入射する光の最短波長
θin-max:入射光のNAを含めた、偏光素子への入射光の入射角の最大値
【0032】
光吸収層の断片は、長辺が第1の方向と平行であり、短辺が第2の方向と平行である、即ち、
1<Lab/Wab (4)
好ましくは、
2≦Lab/Wab≦7 (4’)
である、平面形状が長方形の島状(即ち、長方形のアイランド・パターンを有する)の層であり、光学異方性を有する。即ち、長方形の長辺の延びる方向が偏光素子の光吸収軸となり、短辺の延びる方向が偏光素子の光透過軸となる。ところで、可視光域の波長に対して吸収効果を有する光吸収層の断片の適切なアスペクト比(Lab/Wab)は、入射光の波長に依存しており、単純なレイリー近似値を用いて求めることができる。例えば、光吸収層の断片のアスペクト比が約5:1である場合、約500nmの波長で最大の消光比と低反射率が得られる。従って、可視光域では、比較的大きなアスペクト比で吸収効率が高くなるので、式(4)を、好ましくは式(4’)を満たすことが望ましい。光吸収層の厚さとして、1×10-8m乃至1.0×10-7mを例示することができる。また、第2の方向における光吸収層の形成ピッチPab-2と、第2の方向に沿った光吸収層の幅Wabとの関係として、
0.1≦Wab/Pab-2≦0.9
好ましくは、
0.2≦Wab/Pab-2≦0.7
といった関係を例示することができる。反射層の厚さとして、0.01μm乃至1μmを例示することができる。1つの光電変換素子に対応する偏光素子におけるストライプ状の反射層の数として、20本以上を例示することができる。本発明の固体撮像装置あるいは本発明の撮像機器にあっては、偏光方位が異なる2種類以上の偏光素子を備えているが、具体的には、隣接する固体撮像素子においては、例えば、透過軸が直交している構成とすることが好ましい。
【0033】
ワイヤグリッド型偏光子として機能する反射層(反射層形成層)を構成する無機材料として、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)、白金(Pt)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、鉄(Fe)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、テルル(Te)等の金属材料や、これらの金属を含む合金材料、半導体材料を挙げることができるし、あるいは又、例えば着色等により表面の反射率を高くした無機材料層や樹脂層から反射層を構成することもできる。
【0034】
また、光吸収層(光吸収層形成層)を構成する材料として、消衰係数kが零でない、即ち、光吸収作用を有する金属材料や合金材料、半導体材料、具体的には、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、鉄(Fe)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、テルル(Te)、錫(Sn)等の金属材料や、これらの金属を含む合金材料、半導体材料を挙げることができる。また、FeSi2(特にβ−FeSi2)、MgSi2、NiSi2、BaSi2、CrSi2、CoSi2等のシリサイド系材料を挙げることもできる。特に、光吸収層を構成する材料として、アルミニウム又はその合金、あるいは、β−FeSi2や、ゲルマニウム、テルルを含む半導体材料を用いることで、可視光域で高コントラスト(高消光比)を得ることができる。尚、可視光以外の波長帯域、例えば赤外域に偏光特性を持たせるためには、光吸収層を構成する材料として、銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)等を用いることが好ましい。これらの金属の共鳴波長が赤外域近辺にあるからである。
【0035】
反射層形成層、光吸収層形成層は、各種化学的気相成長法(CVD法)、塗布法、スパッタリング法や真空蒸着法を含む各種物理的気相成長法(PVD法)、ゾル−ゲル法、メッキ法、MOCVD法、MBE法等の公知の方法に基づき形成することができる。また、反射層形成層、光吸収層形成層のパターニング法として、リソグラフィ技術とエッチング技術との組合せ(例えば、四フッ化炭素ガス、六フッ化硫黄ガス、トリフルオロメタンガス、二フッ化キセノンガス等を用いた異方性ドライエッチング技術や、物理的エッチング技術)、所謂リフトオフ技術を挙げることができる。また、リソグラフィ技術として、フォトリソグラフィ技術(高圧水銀灯のg線、i線、KrFエキシマレーザ、ArFエキシマレーザ、EUV等を光源として用いたリソグラフィ技術、及び、これらの液浸リソグラフィ技術、電子線リソグラフィ技術、X線リソグラフィ)を挙げることができる。あるいは又、フェムト秒レーザ等の極短時間パルスレーザによる微細加工技術や、ナノインプリント法に基づき、反射層や光吸収層を形成することもできる。
【0036】
絶縁層(絶縁層形成層)や層間絶縁層を構成する材料として、入射光に対して透明であり、光吸収特性を有していない絶縁材料、具体的には、SiO2、NSG(ノンドープ・シリケート・ガラス)、BPSG(ホウ素・リン・シリケート・ガラス)、PSG、BSG、PbSG、AsSG、SbSG、SOG(スピンオングラス)等のSiOX系材料(シリコン系酸化膜を構成する材料)、SiN、SiON、SiOC、SiOF、SiCN、低誘電率絶縁材料(例えば、フルオロカーボン、シクロパーフルオロカーボンポリマー、ベンゾシクロブテン、環状フッ素樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、アモルファステトラフルオロエチレン、ポリアリールエーテル、フッ化アリールエーテル、フッ化ポリイミド、有機SOG、パリレン、フッ化フラーレン、アモルファスカーボン)、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、Silk(The Dow Chemical Co. の商標であり、塗布型低誘電率層間絶縁膜材料)、Flare(Honeywell Electronic Materials Co. の商標であり、ポリアリルエーテル(PAE)系材料)を挙げることができ、単独、あるいは、適宜、組み合わせて使用することができる。絶縁層形成層は、各種CVD法、塗布法、スパッタリング法や真空蒸着法を含む各種PVD法、スクリーン印刷法といった各種印刷法、ゾル−ゲル法等の公知の方法に基づき形成することができる。絶縁層は、光吸収層の下地層として機能すると共に、光吸収層で反射された偏光光と、光吸収層を透過し、反射層で反射された偏光光の位相を調整し、干渉効果により反射率を低減する目的で形成される。従って、絶縁層は、1往復での位相が半波長分ずれるような厚さとすることが望ましい。但し、光吸収層は、光吸収効果を有するが故に、反射された光が吸収される。従って、絶縁層の厚さが、上述のように最適化されていなくても、消光比の向上を実現することができる。それ故、実用上、所望の偏光特性と実際の作製工程との兼ね合い基づき絶縁層の厚さを決定すればよく、例えば、1×10-9m乃至1×10-7m、より好ましくは、1×10-8m乃至8×10-8mを例示することができる。また、絶縁層の屈折率は、1.0より大きく、限定するものではないが、2.5以下とすることが好ましい。
【0037】
カラーフィルタ層として、赤色、緑色、青色、シアン色、マゼンダ色、黄色等の特定波長を透過させるフィルタ層を挙げることができる。カラーフィルタ層を、顔料や染料等の有機化合物を用いた有機材料系のカラーフィルタ層から構成するだけでなく、フォトニック結晶や、プラズモンを応用した波長選択素子(導体薄膜に格子状の穴構造を設けた導体格子構造を有するカラーフィルタ層。例えば、特開2008−177191参照)、アモルファスシリコン等の無機材料から成る薄膜から構成することもできる。
【0038】
基体として、光電変換素子が形成されたシリコン半導体基板や、光電変換素子、オンチップレンズ等が形成されたシリコン半導体基板を挙げることができる。
【0039】
本発明の固体撮像装置や撮像機器においては、1画素は複数の副画素から構成されている。そして、各副画素は1つの固体撮像素子を備えている。画素と副画素の関係については後述する。
【0040】
以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む本発明の固体撮像素子における偏光素子、以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む本発明の固体撮像装置における偏光素子、以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む本発明の撮像機器における偏光素子、あるいは、上記の好ましい構成を含む本発明の偏光素子の製造方法によって得られる偏光素子(以下、これらを総称して、『本発明における偏光素子』と呼ぶ場合がある)にあっては、光吸収層から光が入射する。そして、偏光素子は、光の透過、反射、干渉、光学異方性による偏光波の選択的光吸収の4つの作用を利用することで、第1方向に平行な電界成分を有する偏光波(TE波/S波及びTM波/P波のいずれか一方)を減衰させると共に、第2の方向に平行な電界成分を有する偏光波(TE波/S波及びTM波/P波のいずれか他方)を透過させる。即ち、一方の偏光波(例えば、TE波)は、形状異方性を有する光吸収層の断片の光学異方性による偏光波の選択的光吸収作用によって減衰される。ストライプ状の反射層はワイヤグリッド型偏光子として機能し、光吸収層及び絶縁層を透過した一方の偏光波(例えば、TE波)を反射する。このとき、光吸収層を透過し、反射層で反射された一方の偏光波(例えば、TE波)の位相が半波長分ずれるように絶縁層を構成すれば、反射層で反射された一方の偏光波(例えば、TE波)は、光吸収層で反射された一方の偏光波(例えば、TE波)との干渉により打ち消し合って減衰される。以上のようにして、一方の偏光波(例えば、TE波)を選択的に減衰させることができる。但し、上述したように、絶縁層の厚さが最適化されていなくても、コントラストの向上を実現することができる。それ故、上述したように、実用上、所望の偏光特性と実際の作製工程との兼ね合い基づき、絶縁層の厚さを決定すればよい。
【0041】
前述したとおり、本発明における偏光素子に(具体的には、少なくとも偏光素子の側面に、即ち、偏光素子の側面に、又は、偏光素子の側面及び頂面に)保護膜を形成してもよい。保護膜の厚さは、偏光特性に影響を与えない範囲の厚さとすればよい。但し、光吸収層を構成する断片の光学的特性は周囲の屈折率によっても影響を受けるため、保護膜の形成により偏光特性の変化が生じる場合がある。また、入射光に対する反射率は保護膜の光学厚さ(屈折率×保護膜の膜厚)によっても変化するので、保護膜の材料と厚さは、これらを考慮して決定すればよく、厚さとして、15nm以下を例示することができ、あるいは又は、隣接する偏光素子の間のスペース(偏光素子と偏光素子との間に位置する基体の部分)の長さ(距離)の1/4以下を例示することができる。保護膜を構成する材料として、屈折率が2以下、消衰係数が零に近い材料が望ましく、TEOS−SiO2を含むSiO2、SiON、SiN、SiC、SiOC、SiCN等の絶縁材料や、酸化アルミニウム(AlOX)、酸化ハフニウム(HfOx)、酸化ジルコニウム(ZrOx)、酸化タンタル(TaOx)等の金属酸化物を挙げることができる。あるいは又、パーフルオロデシルトリクロロシランやオクタデシルトリクロロシランを挙げることができる。保護膜を設けることで、偏光素子の耐湿性の向上等、信頼性を向上させることができる。保護膜は、各種CVD法、塗布法、スパッタリング法や真空蒸着法を含む各種PVD法、ゾル−ゲル法等の公知のプロセスによって形成することができるが、所謂単原子成長法(ALD法、Atomic Layer Doposition 法)を採用することが、より好ましい。ALD法を採用することで、薄い保護膜をコンフォーマルに偏光素子上に形成することができる。保護膜は、偏光素子の全面に形成してもよいが、偏光素子の側面にのみ形成し、偏光素子と偏光素子との間に位置する下地(基体)の上には形成しないことが一層好ましい。そして、このように、偏光素子を構成する金属材料等の露出した部分である側面を覆うように保護膜を形成することで、大気中の水分や有機物を遮断することができ、偏光素子を構成する金属材料等の腐食や異常析出といった問題の発生を確実に抑制することができる。そして、固体撮像素子の長期信頼性の向上を図ることが可能となり、より高い信頼性を有する偏光素子をオンチップで備える固体撮像素子の提供が可能となる。
【0042】
本発明において光電変換素子として、CCD素子、CMOSイメージセンサー、CIS(Contact Image Sensor)、CMD(Charge Modulation Device)型の信号増幅型イメージセンサーを挙げることができる。また、固体撮像素子として、表面照射型の固体撮像素子あるいは裏面照射型の固体撮像素子を挙げることができる。以下、本発明の適用事例に当たる単眼視差立体カメラの構成について説明する。
【0043】
ところで、従来、共通の被写体を左右に配置した2台のビデオカメラによって同時に撮像し、得られた2種類の画像(右眼用画像及び左眼用画像)を同時に出力することによって立体画像を表示するシステムが提案されている。しかしながら、このような2台のビデオカメラを用いた場合、装置が大型化してしまい、実用的ではない。また、2台のビデオカメラの間の基線長(ベースライン)、即ち、立体カメラとしての両眼間距離は、レンズのズーム比に拘わらず、人間の両眼の距離に相当する65mm程度とされることが多い。そして、このような場合、ズームアップされた画像においては両眼視差が大きくなってしまい、観察者の視覚系に日常と異なる情報処理を強制することになり、視覚疲労の原因となる。また、移動する被写体を2台のビデオカメラで撮像することは、2台のビデオカメラの精密な同期制御を必要とし、非常に困難であるし、輻輳角の正確な制御もまた、非常に困難である。
【0044】
立体撮影を行うためのレンズ系の調整を容易にするために、互いに直交関係となるように偏光させる偏光フィルタを組み合わせることによって、光学系を共通化させる立体撮影装置が提案されている(例えば、特公平6−054991号公報参照)。また、2つのレンズと1つの撮像手段から構成された撮像機器で立体撮影を行う方式が、前述した特開2004−309868に開示されている。
【0045】
ところで、特公平6−054991号に開示された技術にあっては、2つの偏光フィルタの出力を重ねて光路を一系統とすることによって、レンズ系を共通化させている。しかしながら、後段で右眼用画像及び左眼用画像を抽出するために更に偏光フィルタを設け、光路自体を再度分けて別々の偏光フィルタに入光させなければならず、レンズ系において光の損失が発生し、また、装置の小型化が困難であるなどの問題がある。特開2004−309868に開示された技術にあっては、レンズ及び偏光フィルタの組合せを2組、必要とし、装置の複雑化、大型化が免れない。
【0046】
上述したとおり、本発明の撮像機器として、具体的には、例えば、デジタルスチルカメラやビデオカメラ、カムコーダを挙げることができるが、本発明の撮像機器を、1台の撮像装置によって被写体を立体画像として撮像し得る撮像装置(以下、『本発明における立体画像撮像装置』と呼ぶ)に適用することができる。
【0047】
本発明における立体画像撮像装置は、
(A)被写体からの光を偏光させる第1偏光手段、
(B)第1偏光手段からの光を集光するレンズ系、並びに、
(C)X方向、及び、X方向と直交するY方向の2次元マトリクス状に固体撮像素子が配列されて成り、光入射側に第2偏光手段を有し、レンズ系によって集光された光を電気信号に変換する撮像素子アレイ、
を具備し、
第1偏光手段は、X方向に沿って配列された第1領域及び第2領域を有し、
第1領域を通過した第1領域通過光の偏光状態と、第2領域を通過した第2領域通過光の偏光状態とは異なり、
第2偏光手段は、Y方向に沿って交互に配置され、X方向に延びる複数の第3領域及び第4領域を有し、
第3領域を通過した第3領域通過光の偏光状態と、第4領域を通過した第4領域通過光の偏光状態とは異なり、
第1領域通過光は第3領域を通過して固体撮像素子に到達し、第2領域通過光は第4領域を通過して固体撮像素子に到達し、以て、第1領域の重心点と第2領域の重心点との間の距離を両眼視差の基線長さとした立体画像を得るための画像を撮像する。
【0048】
ここで、第2偏光手段に、本発明における偏光素子、本発明の固体撮像素子、本発明の固体撮像装置を適用すればよい。
【0049】
このように、本発明における立体画像撮像装置は、簡素な構成、構造を有し、1台の撮像装置によって被写体を立体画像として撮像し得る撮像装置であり、1組の第1偏光手段及び第2偏光手段並びに1つのレンズ系から撮像装置が構成されているので、単眼で、簡素な構成、構造を有する、小型の撮像装置を提供することができる。また、レンズ及び偏光フィルタの組合せを2組、必要としないので、ズーム、絞り部、フォーカス、輻輳角等にズレや差異が生じることもない。しかも、両眼視差の基線長さが比較的短いので、自然な立体感を得ることができる。更には、第1偏光手段の脱着によって、容易に、2次元画像及び3次元画像を得ることができる。
【0050】
尚、本発明における立体画像撮像装置を用いた撮像方法にあっては、
第3領域を通過して固体撮像素子に到達した第1領域通過光によって、右眼用画像を得るための電気信号を固体撮像素子において生成し、
第4領域を通過して固体撮像素子に到達した第2領域通過光によって、左眼用画像を得るための電気信号を固体撮像素子において生成し、
これらの電気信号を出力する。尚、これらの電気信号を、同時に出力してもよいし、時系列に交互に出力してもよい。
【0051】
本発明における立体画像撮像装置において、第1偏光手段はレンズ系の絞り部近傍に配置されている形態とすることが好ましい。あるいは又、レンズ系に入射した光が、一旦、平行光とされ、最終的に固体撮像素子上に集光(結像)されるとき、平行光の状態にあるレンズ系の部分に第1偏光手段を配置する形態とすることが好ましい。これらの形態にあっては、一般に、レンズ系の光学系を新たに設計し直す必要はなく、既存のレンズ系に第1偏光手段を、固定して、あるいは又、脱着自在に取り付けられるように、機械的(物理的)な設計変更を施せばよい。尚、レンズ系に第1偏光手段を脱着自在に取り付けるには、例えば、第1偏光手段をレンズの絞り羽根に類似した構成、構造とし、レンズ系内に配置すればよい。あるいは又、レンズ系において、第1偏光手段と開口部とが併設された部材を、レンズ系の光軸と平行な回動軸を中心として回動可能にこの回動軸に取り付け、係る部材を回動軸を中心として回動させることで、レンズ系を通過する光線が開口部を通過し、あるいは、第1偏光手段を通過する構成、構造を挙げることができる。あるいは又、レンズ系において、第1偏光手段と開口部とが併設された部材を、例えばレンズ系の光軸と直交する方向に滑動自在にレンズ系に取り付け、係る部材を滑動させることで、レンズ系を通過する光線が開口部を通過し、あるいは、第1偏光手段を通過する構成、構造を挙げることができる。
【0052】
上記の好ましい形態を含む本発明における立体画像撮像装置にあっては、第1偏光手段において、第1領域と第2領域との間に中央領域が設けられており、中央領域を通過した中央領域通過光の偏光状態は、中央領域入射前と変化しない形態とすることができる。即ち、中央領域は、偏光に関して素通し状態とすることができる。第1偏光手段の中央領域にあっては、光強度が強いが、視差量は少ない。従って、このような形態とすることで、撮像素子アレイが受ける光強度を大きくしながら、十分な長さの両眼視差の基線長さを確保することが可能となる。第1偏光手段の外形形状を円形としたとき、中央領域を円形とし、第1領域及び第2領域を、中央領域を囲む中心角180度の扇形とすることができるし、中央領域を正方形や菱形とし、第1領域及び第2領域を、中央領域を囲む中心角180度の扇形に類似した形状とすることができる。あるいは又、第1領域、中央領域及び第2領域を、Y方向に沿って延びる帯状の形状とすることができる。
【0053】
以上に説明した各種の好ましい形態を含む本発明における立体画像撮像装置において、第1領域及び第2領域は偏光子から成り、第1領域通過光の電場の向きと第2領域通過光の電場の向きとは直交している構成とすることができる。そして、このような構成を含む本発明における立体画像撮像装置において、第1領域通過光の電場の向きはX方向と平行である構成とすることができるし、あるいは又、第1領域通過光の電場の向きはX方向と45度の角度を成す構成とすることができる。更には、これらの構成の任意の組合せを含む本発明における立体画像撮像装置において、第1領域通過光の電場の向きと第3領域通過光の電場の向きとは平行であり、第2領域通過光の電場の向きと第4領域通過光の電場の向きとは平行である構成とすることができる。更には、これらの構成の任意の組合せを含む本発明における立体画像撮像装置において、偏光子の消光比は、3以上、好ましくは10以上であることが望ましい。
【0054】
ここで、『偏光子』とは、自然光(非偏光)や円偏光から直線偏光を作り出すものを指し、第1領域を構成する偏光子、それ自体は、周知の構成、構造の偏光子(偏光板)とすればよい。また、例えば、第1領域通過光及び第2領域通過光の一方の偏光成分を主としてS波(TE波)とし、第1領域通過光及び第2領域通過光の他方の偏光成分を主としてP波(TM波)とすればよい。第1領域通過光及び第2領域通過光の偏光状態は、直線偏光であってもよいし、円偏光(但し、回転方向が相互に逆の関係にある)であってもよい。一般に、振動方向が或る特定の向きだけの横波を偏光した波と呼び、この振動方向を偏光方向あるいは偏光軸と呼ぶ。光の電場の向きは偏光方向と一致する。消光比とは、第1領域通過光の電場の向きがX方向と平行である構成とする場合、第1領域にあっては、第1領域を通過する光に含まれる、電場の向きがX方向である光の成分と電場の向きがY方向である光の成分の割合であり、第2領域にあっては、第2領域を通過する光に含まれる、電場の向きがY方向である光の成分と電場の向きがX方向である光の成分の割合である。また、第1領域通過光の電場の向きがX方向と45度の角度を成す構成とする場合、第1領域にあっては、第1領域を通過する光に含まれる、電場の向きがX方向と45度の角度を成す光の成分と135度の角度を成す光の成分の割合であり、第2領域にあっては、第2領域を通過する光に含まれる、電場の向きがX方向と135度の角度を成す光の成分と45度の角度を成す光の成分の割合である。あるいは又、例えば、第1領域通過光の偏光成分が主としてP波であり、第2領域通過光の偏光成分が主としてS波である場合、第1領域にあっては、第1領域通過光に含まれるP偏光成分とS偏光成分の割合であり、第2領域にあっては、第2領域通過光に含まれるS偏光成分とP偏光成分の割合である。
【0055】
以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本発明における立体画像撮像装置において、固体撮像素子は、光電変換素子、並びに、その上あるいは上方に、カラーフィルタ、オンチップレンズ、及び、本発明における偏光素子が積層されて成り、本発明における偏光素子が第3領域又は第4領域を構成する形態とすることができる。あるいは又、固体撮像素子は、光電変換素子、並びに、その上あるいは上方に、本発明における偏光素子、カラーフィルタ、及び、オンチップレンズが積層されて成り、本発明における偏光素子が第3領域又は第4領域を構成する形態とすることができる。あるいは又、固体撮像素子は、光電変換素子、並びに、その上あるいは上方に、オンチップレンズ、カラーフィルタ、及び、本発明における偏光素子が積層されて成り、本発明における偏光素子が第3領域又は第4領域を構成する形態とすることができる。但し、オンチップレンズ、カラーフィルタ、及び、本発明における偏光素子の積層順は、適宜、変更することができる。そして、これらの形態にあっては、第1領域通過光の電場の向きがX方向と平行である構成とする場合、本発明における偏光素子を構成する反射層の延びる方向(第1の方向)は、X方向あるいはY方向と平行である形態とすることができる。具体的には、第3領域を構成する本発明における偏光素子にあっては、反射層の延びる方向(第1の方向)はY方向と平行であり、第4領域を構成する本発明における偏光素子にあっては、反射層の延びる方向(第1の方向)はX方向と平行である。あるいは又、これらの形態にあっては、第1領域通過光の電場の向きがX方向と45度の角度を成す構成とする場合、本発明における偏光素子を構成する反射層の延びる方向(第1の方向)は、X方向あるいはY方向と45度を成す形態とすることができる。具体的には、第3領域を構成する本発明における偏光素子にあっては、反射層の延びる方向(第1の方向)はX方向と135度の角度を成し、第4領域を構成する本発明における偏光素子にあっては、反射層の延びる方向(第1の方向)はX方向と45度の角度を成す。
【0056】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本発明における立体画像撮像装置において、所謂視野闘争の発生を回避するために、第1偏光手段の光入射側には、四分の一波長板(λ/4波長板)が配置されていることが望ましい。四分の一波長板を、常時、配置してもよいし、所望に応じて配置してもよい。具体的には、四分の一波長板を、レンズ系に設けられたフィルタ取付部に着脱自在に取り付ければよい。ここで、視野闘争とは、例えば、P波成分は反射するがS波成分は吸収する水面や窓等の被写体を撮像するとき、P波成分から得られた画像とS波成分から得られた画像を両眼へ提示したとき、融像が起こらず、一方の画像だけが優越して交互に見えたり、重なった領域で互いに抑制しあったりする現象を指す。四分の一波長板を通過した光は偏光方向が揃った状態となり、このような光が第1領域及び第3領域を通過して撮像素子アレイに到達して得られた画像と、第2領域及び第4領域を通過して撮像素子アレイに到達して得られた画像との間であって、P波成分は反射するがS波成分は吸収する被写体の部分の画像の間に、大きな相違が生じなくなり、視野闘争の発生を回避することができる。尚、四分の一波長板速軸は、第1領域通過光の電場の向きと45度の角度あるいは45度±10度の角度を成すことが好ましい。
【0057】
あるいは又、本発明における立体画像撮像装置において、所謂視野闘争の発生を回避するために、
第1偏光手段の光入射側には、α度の偏光軸を有する偏光板が配置されており、
第1領域は第1波長板から成り、第2領域は第2波長板から成り、
第1領域通過光の電場の向きと第2領域通過光の電場の向きとは直交している構成とすることができる。そして、この場合、具体的には、
αの値は45度であり、
第1波長板は半波長板(+λ/2波長板)から成り、
第2波長板は、第1波長板を構成する半波長板とは位相差の異なる半波長板(−λ/2波長板)から成る構成とすることができる。尚、この場合、α度の偏光軸を有する偏光板はレンズ系に固定しておく。
【0058】
以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本発明における立体画像撮像装置において、撮像素子アレイはベイヤ配列を有し、1画素は4つの固体撮像素子から構成されており、1画素に対して、1つの第3領域及び/又は第4領域が配されている形態とすることができる。また、このような形態を含む以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本発明における立体画像撮像装置において、Y方向に沿ってN個の画素(但し、例えば、N=2nであり、nは1乃至5の自然数)に対して1つの第3領域及び1つの第4領域を配する形態とすることもできる。但し、撮像素子アレイの配列は、ベイヤ配列に限定されず、その他、インターライン配列、GストライプRB市松配列、GストライプRB完全市松配列、市松補色配列、ストライプ配列、斜めストライプ配列、原色色差配列、フィールド色差順次配列、フレーム色差順次配列、MOS型配列、改良MOS型配列、フレームインターリーブ配列、フィールドインターリーブ配列を挙げることができる。
【0059】
また、以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本発明における立体画像撮像装置を用いた撮像方法においては、Y方向に沿ってN個の画素(但し、例えば、N=2nであり、nは1乃至5の自然数)に対して1つの第3領域及び1つの第4領域を配する構成とすることができ、この場合、第3領域を通過した第1領域通過光によって得られる電気信号及び第4領域を通過した第2領域通過光によって得られる電気信号から生成されたデプスマップ(奥行き情報)、並びに、撮像素子アレイを構成する全固体撮像素子からの電気信号に基づき、右眼用画像を得るための画像データ(右眼用画像データ)、及び、左眼用画像を得るための画像データ(左眼用画像データ)を得る構成とすることができる。
【0060】
あるいは又、撮像素子アレイの配列をベイヤ配列としたとき、赤色を受光する赤色固体撮像素子及び青色を受光する青色固体撮像素子には第3領域及び第4領域を配置せず、緑色を受光する2つの緑色固体撮像素子の一方に第3領域を配し、他方に第4領域を配してもよい。あるいは又、撮像素子アレイの配列をベイヤ配列としたとき、赤色を受光する1つ赤色固体撮像素子、青色を受光する1つの青色固体撮像素子、及び、緑色を受光する2つの緑色固体撮像素子の内のX方向に隣接する2つの固体撮像素子(例えば、赤色を受光する赤色固体撮像素子及び緑色を受光する一方の緑色固体撮像素子)には第3領域あるいは第4領域を配し、残りの2つの固体撮像素子(例えば、青色を受光する青色固体撮像素子及び緑色を受光する他方の緑色固体撮像素子)には第4領域あるいは第3領域を配してもよい。あるいは又、撮像素子アレイの配列をベイヤ配列としたとき、赤色を受光する1つ赤色固体撮像素子、青色を受光する1つの青色固体撮像素子、及び、緑色を受光する2つの緑色固体撮像素子の内のいずれか1つの固体撮像素子(例えば、赤色を受光する1つ赤色固体撮像素子あるいは青色を受光する1つの青色固体撮像素子)には第3領域あるいは第4領域を配し、この固体撮像素子にY方向に隣接する固体撮像素子(例えば、緑色固体撮像素子)には第4領域あるいは第3領域を配してもよい。尚、これらの場合にも、Y方向に沿ってN個の画素に対して1つの第3領域及び1つの第4領域を配する構成とすることができるし、X方向に沿ってM個の画素に対して1つの第3領域あるいは1つの第4領域を配する構成とすることができる。
【0061】
以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本発明における立体画像撮像装置あるいは撮像方法において、X方向を水平方向、Y方向を垂直方向とすることができる。X方向に沿った第3領域及び第4領域の単位長さは、例えば、固体撮像素子のX方向に沿った長さと等しくすればよく(第1領域通過光の電場の向きがX方向と平行である場合)、あるいは又、1固体撮像素子分の長さと等しくすればよい(第1領域通過光の電場の向きがX方向と45度の角度を成す場合)。レンズ系は、単焦点レンズとしてもよいし、所謂ズームレンズとしてもよく、レンズやレンズ系の構成、構造は、レンズ系に要求される仕様に基づき決定すればよい。
【0062】
第1領域の重心点とは、第1領域の外形形状に基づき求められた重心点を指し、第2領域の重心点とは、第2領域の外形形状に基づき求められた重心点を指す。第1偏光手段の外形形状を半径rの円形とし、第1領域及び第2領域を、それぞれ、第1偏光手段の半分を占める半月状としたとき、第1領域の重心点と第2領域の重心点との間の距離は、簡単な計算から、[(8r)/(3π)]で求めることができる。
【実施例1】
【0063】
実施例1は、本発明の固体撮像素子、本発明の固体撮像装置、本発明の撮像機器、及び、偏光素子の製造方法に関し、より具体的には、本発明における固体撮像素子−Aに関する。実施例1の固体撮像装置を構成する固体撮像素子の模式的な一部断面図を図1に示し、固体撮像素子の模式的な部分的平面図を図2に示す。更には、偏光素子の模式的な一部端面図を図32の(A)及び(B)に示す。尚、図1においては2つの固体撮像素子を図示し、図2においては4つの固体撮像素子を図示している。また、図1は、図2の矢印A−Aに沿った模式的な一部端面図であり、偏光素子におけるストライプ状の反射層の延びる方向に沿った固体撮像素子の模式的な一部断面図と、ストライプ状の反射層の繰り返し方向(ストライプ状の反射層の延びる方向と直交する方向)に沿った固体撮像素子の模式的な一部断面図とを示している。更には、図2においては、固体撮像素子と固体撮像素子との間の境界を点線で示した。また、図32の(A)及び(B)は、図2の矢印A−A及び矢印B−Bに沿った模式的な一部端面図である。
【0064】
実施例1の固体撮像素子41は、光電変換素子(受光素子)61、及び、光電変換素子61の光入射側に設けられた偏光素子70を備えている。また、実施例1の固体撮像装置は、実施例1の固体撮像素子41を複数、有する固体撮像装置であり、偏光方位が異なる2種類以上の偏光素子70を備えている。尚、隣接する固体撮像素子41A,41Bにおいては、偏光素子70A,70Bにおける透過軸が直交している。更には、実施例1の撮像機器は、実施例1の固体撮像装置を備えており、例えば、デジタルスチルカメラやビデオカメラ、カムコーダが構成されている。そして、実施例1にあっては、光電変換素子61の上方にオンチップレンズ64が配置されており、オンチップレンズ64の上方に偏光素子70が設けられている。尚、本発明の撮像機器の詳細は、実施例5以降において説明する。
【0065】
具体的には、実施例1の固体撮像素子41は、例えば、シリコン半導体基板60に設けられた光電変換素子61、並びに、その上に、第1平坦化膜62、波長選択層(カラーフィルタ層63)、オンチップレンズ64、平坦化層(第2平坦化膜65と呼ぶ)、層間絶縁層(無機絶縁下地層66と呼ぶ)、及び、偏光素子70が積層されて成る。第1平坦化膜62及び層間絶縁層(無機絶縁下地層66)はSiO2から成り、平坦化層(第2平坦化膜65)はアクリル系樹脂から成る。光電変換素子61は、CCD素子やCMOSイメージセンサー等から構成されている。参照番号67は、光電変換素子61の近傍に設けられた遮光部である。
【0066】
実施例1にあっては、固体撮像素子の配置をベイヤ配置としている。即ち、1つの画素は、赤色を受光する1つ副画素、青色を受光する1つの副画素、及び、緑色を受光する2つの副画素から構成されており、各副画素は固体撮像素子を備えている。画素は、行方向及び列方向に2次元マトリクス状に配列されている。1つの画素内における全ての偏光素子の第1の方向は同じ方向である。更には、行方向に配列された画素にあっては、偏光素子の第1の方向は全て同じ方向である。一方、列方向に沿って、偏光素子の第1の方向が行方向と平行である画素と、偏光素子の第1の方向が列方向と平行である画素とが、交互に配置されている。
【0067】
そして、偏光素子70は、光電変換素子側から、ストライプ状の反射層71、反射層71上に形成された絶縁層72、及び、絶縁層72上に離間された状態で形成された複数の断片(セグメント)73’から成る光吸収層73の積層構造を有する。ここで、反射層71は、厚さ100nmのアルミニウム(Al)から構成され、絶縁層72は、厚さ25nmのSiO2から構成され、光吸収層73は、厚さ50nmのタングステン(W)から構成されている。そして、ストライプ状の反射層71の延びる方向(第1の方向)は、消光させるべき偏光方位と一致しており、ストライプ状の反射層71の繰り返し方向(第2の方向であり、第1の方向と直交する)は、透過させるべき偏光方位と一致している。即ち、反射層71は、ワイヤグリッド型偏光子としての機能を有し、偏光素子70に入射した光の内、反射層71の延びる方向(第1の方向)と平行な方向に電界成分を有する偏光波を減衰させ、反射層71の延びる方向と直交する方向(第2の方向)に電界成分を有する偏光波を透過させる。第1の方向は偏光素子の光吸収軸であり、第2の方向は偏光素子の光透過軸である。
【0068】
また、実施例1にあっては、詳細は後述するが、第1の方向における反射層71の長さ(Lrf)は、第1の方向に沿った固体撮像素子41の長さ(Lid)未満である。
【0069】
ところで、隣接する固体撮像素子41A,41Bにおいては、偏光素子70A,70Bにおける透過軸が直交している。従って、隣接する固体撮像素子41への偏光光の漏れ込み(偏光クロストーク)が発生すると、本来、消光しているはずの偏光成分が隣接する固体撮像素子41から混入し、最終的な消光比が低下してしまう。即ち、図1中のθin-maxなる入射角度を有する入射光が入射する偏光素子70Aの光透過軸(第2の方向)は紙面垂直方向である。一方、隣接する偏光素子70Bの光透過軸(第2の方向)は紙面平行方向である。従って、偏光素子70Aを備えた固体撮像素子41Aからの光が偏光素子70Bを備えた固体撮像素子41Bに入射すると、固体撮像素子41Bにおける消光比が著しく低下するといった問題が発生する。
【0070】
このような偏光クロストークの発生を防ぐためには、偏光素子70とオンチップレンズ64との間に深さ(厚さ)方向の距離的制限を設け、しかも、偏光素子70Aと偏光素子70Bとの境界部分に、偏光素子としての機能を有しない無効領域を設ければよい。具体的には、図1に示すように、偏光素子70とオンチップレンズ64との間の距離をD、オンチップレンズ64のサグ量をS、偏光素子70とオンチップレンズ64との間に存在する媒質[具体的には、層間絶縁層(無機絶縁下地層)66、及び、平坦化層(第2平坦化膜)65]の屈折率(この場合、平均屈折率で近似)をn1、隣接する偏光素子の間に存在する隙間の幅を2×R、入射光のNAを含めた、偏光素子への入射光の入射角の最大値をθin-maxとしたとき、
R≧(D+S)×tan[sin-1{sin(θin-max)/n1}] (1)
を満足すればよい。
【0071】
また、周期的に形成された光吸収層の断片73’からの回折光の発生を防ぎ、隣接する固体撮像素子41への不要な光の漏れ込みを確実に防ぐためには、図2に示すように、或る光吸収層の断片(便宜上、『断片−a』と呼ぶ)に対して第2の方向に沿って隣接する光吸収層の断片(便宜上、『断片−b』と呼ぶ)の第1の方向に沿って隣りに位置する光吸収層の断片(便宜上、『断片−c』と呼ぶ)を想定したとき、断片−aと断片−cとの間で回折現象が発生しなければよい。これを満足すれば、断片−aと断片−bとの間でも回折現象は発生しない。従って、第1の方向における光吸収層の断片73’の形成ピッチをPab-1、第2の方向における光吸収層の断片73’の形成ピッチをPab-2、偏光素子70に入射する光の最短波長をλmin、偏光素子に入射する光が通過する媒質の屈折率をn0、偏光素子への光の入射角の最大値をθin-maxとしたとき、
(Pab-12+Pab-22)1/2≦[(λmin/n0)×cos(θin-max)] (2)
を満足すればよい。
【0072】
更には、消光特性の向上といった観点から、第1の方向における光吸収層の断片73’の形成ピッチをPab-1、長さをLabとしたとき、
0.5≦(Lab/Pab-1)<1 (3)
を満足している。
【0073】
第1の方向における反射層71の長さLrfが消光比に与える影響を、FDTD(Finite-difference time-domain)法に基づくシミュレーションを用いて解析した。
【0074】
尚、反射層71の長さLrfの依存に注目するために、絶縁層72及び光吸収層73を設けていない構造としており、反射層71はアルミニウムから成る。反射層71の下地は、SiO2層から成る。そして、反射層71の厚さを100nm一定とし、第2の方向における反射層71の形成ピッチを150nm、第2の方向に沿った反射層71の幅を50nm、第1の方向に沿った隣接する偏光素子の間に存在する隙間の幅2×Rの値を150nm、一定としている。そして、第1の方向における反射層71の長さLrfを、1μm、2μm、4μm、無限大とした。
【0075】
シミュレーション結果を図4に示す。尚、図4において、「A」は第1の方向における反射層71の長さLrfを1μmとしたときの結果であり、「B」は第1の方向における反射層71の長さLrfを2μmとしたときの結果であり、「C」は第1の方向における反射層71の長さLrfを4μmとしたときの結果であり、「A」は第1の方向における反射層71の長さLrfを無限大としたときの結果である。
【0076】
図4より、消光比は、反射層71の長さLrfに対する依存性を有し、反射層71の長さLrfを無限大とした場合と、反射層71の長さLrfを4μmとした場合とで、消光比に大きな差異が生じている。従って、図34に固体撮像素子の模式的な部分的平面図を示すように、第1の方向に沿って隣接する固体撮像素子間で反射層71を離間させないと、第1の方向に沿った反射層71の長さが非常に長くなり、第2の方向に沿って隣接する固体撮像素子41A,41B間における消光比に、大きな差異が生じてしまう。それ故、固体撮像素子の模式的な部分的平面図を図2に示すように、第1の方向における反射層71の長さ(Lrf)を、第1の方向に沿った固体撮像素子41の長さ(Lid)未満、具体的には、例えば、
Lrf=Lid−2×R
とする。これによって、第2の方向に沿って隣接する固体撮像素子41A,41B間における消光比に、差異が生じ難くなる。
【0077】
ところで、図4に示したように、第1の方向における反射層71の長さ(Lrf)が短くなると、消光比が低下する。これは、第1の方向における反射層71の長さ(Lrf)だけでなく、反射層71と反射層71との間の分断境界(無効領域)における無偏光成分の混入も大きく寄与しているためであると考えられる。
【0078】
図5に、第1の方向における反射層71の長さLrfを2μmとしたときの、第1の方向及び第2の方向に沿って反射層71を透過する光の強度をシミュレーションした結果を示す。尚、入射光の波長を550nmとした。図5において、「A」は光吸収軸(第1の方向)に沿った光強度(単位:任意)であり、「B」は光透過軸(第2の方向)に沿った光強度(単位:任意)である。このシミュレーション結果から、反射層71の第1の方向に沿った両端部では、反射層71が存在していない影響で、TE偏光成分、TM偏光成分の両方が透過し、無偏光の透過に近い状態となっており、無偏光成分の混入が大きく発生していることが判る。このように画素内において位置によって消光状態が異なっているが、画素内で全て集光(積分)したものが、1つの画素における偏光特性(消光比)を与えると云うことである。
【0079】
このような反射層71の第1の方向に沿った両端部における消光比の低下を改善するためには、固体撮像素子の模式的な一部断面図を図3に示すように、隣接するオンチップレンズ64とオンチップレンズ64との間に位置する領域[より具体的には、オンチップレンズ64とオンチップレンズ64との間に位置する層間絶縁層(無機絶縁下地層66)]に、例えば、タングステン(W)等から成る遮光層(所謂、ブラックマトリクス層)68を設ければよい。尚、遮光層68は、例えば金属材料から構成される反射層71と遮光層68中の自由電子の相互干渉を避けるために、絶縁材料である層間絶縁層66の中に配置させることが好ましい。
【0080】
遮光層68の厚さを20nm、幅(=2×R)を200nmとし、入射光の波長を550nmとして、透過光強度分布をシミュレーションした結果を、図6に示す。尚、図6において、「A」は、遮光層68を設けない場合の光吸収軸(第1の方向)に沿った光強度(単位:任意)であり、「B」は、遮光層68を設けない場合の光透過軸(第2の方向)に沿った光強度(単位:任意)である。また、「C」は、遮光層68を設けた場合の光吸収軸(第1の方向)に沿った光強度(単位:任意)であり、「D」は、遮光層68を設けた場合の光透過軸(第2の方向)に沿った光強度(単位:任意)である。反射層71の第1の方向に沿った両端部における消光比の低下が改善されていることが判る。FDTD法に基づくシミュレーションから得られた画素内透過強度を積分して計算した消光比は、遮光層68を設けない場合の5.6から、遮光層68を設けた場合、9.0と、1.5倍程度に改善した。更に、第1の方向における反射層71の長さLrfを1μm、2μm、4μmとし、遮光層68を設けた場合、設けない場合の消光比(波長:550nm)を比較した結果は以下の表1のとおりであった。以上の結果から、固体撮像素子のサイズが小さくなっても、遮光層68を設けることで、消光比が約1.5倍程度、改善することが判る。例えば必要とされる消光比を10以上と仮定したとき、遮光層を設けない場合の固体撮像素子の下限サイズは5μm程度であるが、遮光層を設けることで、3μm程度まで固体撮像素子のサイズを小さくすることが可能となり、同一の画素数であれば固体撮像装置のチップサイズを小さくすることができ、撮像機器自体の小型化が可能となる。
【0081】
[表1] 消光比
Lrf 遮光層有り 遮光層無し
1μm 4.7 3.0
2μm 8.1 5.6
4μm 12.3 7.5
【0082】
ここで具体的な構造寸法における偏光特性の計算結果について説明する。例えば、
λmin=400nm
θin-max=20°
n0=1.0(空気)
としたとき、式(2)の右辺の値は376nmである。一方、
Pab-1=300nm
Pab-2=150nm
とすれば、式(2)の右辺の値は335nmであり、式(2)を満足する。ここで、
Lab-1=150nm
Wab = 50nm
とする。また、
Lid=6μm
R =75nm
とする。第2の方向に沿った光吸収層の断片(セグメント)の数は20であり、第1の方向に沿った光吸収層の断片(セグメント)の数は1つ(1周期)である。更には、反射層は、厚さ100nmのアルミニウム(Al)から構成され、絶縁層は、厚さ25nmのSiO2から構成され、光吸収層は、厚さ50nmのタングステン(W)から構成されている。このような構成の偏光素子のFDTD法に基づくシミュレーションを行い、偏光素子としての特性予測を行った。シミュレーションでは周期境界条件を用いているために、第1の方向の反射層の長さは無限長である。また、第2の方向には反射層が無限の本数、配置された構造としている。シミュレーション結果を図7に示す。尚、図7において、「A」は消光比のデータを示し、「B」は、光透過軸(第2の方向)に沿った偏光方位入射に対する光透過率(単位:任意)であり、「C」は、光吸収軸(第1の方向)に沿った偏光方位入射に対する光透過率(単位:任意)であり、「D」は、光吸収軸(第1の方向)に沿った偏光方位入射に対する光反射率(単位:任意)であり「E」は、光透過軸(第2の方向)に沿った偏光方位入射に対する光反射率(単位:任意)である。
【0083】
シミュレーション結果から、消光比は波長550nmで最良となり、消光比27、第1の方向に沿った波長550nmにおける反射率も約4%が得られた。
【0084】
以下、基体等の模式的な一部端面図である図27の(A)、(B)、図28の(A)、(B)、図29の(A)、(B)、図30の(A)、(B)、図31の(A)、(B)、図32の(A)、(B)を参照して、実施例1の偏光素子の製造方法(一例として、固体撮像素子毎に異なる偏光方位を有する偏光素子の製造方法)を説明する。尚、これらの図においては、層間絶縁層66より下方に形成された各種構成要素の図示を省略している。また、図27の(A)、(B)、図28の(A)、図29の(A)、図30の(A)、図31の(A)、及び、図32の(A)は、図2の矢印A−Aに沿ったと同様の模式的な一部端面図であり、第1の方向に沿った偏光素子70Aに関する模式的な一部端面図(仮想切断面は第1の方向と平行)と、第2の方向に沿った偏光素子70Bに関する模式的な一部端面図(仮想切断面は第2の方向と平行)とを示している。一方、図28の(B)、図29の(B)、図30の(B)、図31の(B)、及び、図32の(B)、並びに、図27の(B)は、図2の矢印B−Bに沿ったと同様の模式的な一部端面図であり、第2の方向に沿った偏光素子70Bに関する模式的な一部端面図(仮想切断面は第2の方向と平行)と、第2の方向に隣接する偏光素子70Aと偏光素子70Aの隙間における模式的な一部端面図(仮想切断面は第1の方向と平行)とを示している。
【0085】
[工程−100]
先ず、基体上に、反射層71を構成すべき反射層形成層71A、絶縁層72を構成すべき絶縁層形成層72A、光吸収層73を構成すべき光吸収層形成層73Aを設ける(図27の(A)参照)。具体的には、層間絶縁層66を基体として、その上に、アルミニウム(Al)から成る反射層形成層71Aを真空蒸着法によって形成し、SiO2から成る絶縁層形成層72AをCVD法によって形成し、更に、スパッタリング法によってタングステン(W)から成る光吸収層形成層73Aを形成する。尚、シリコン半導体基板60には、周知の方法で光電変換素子61を設ければよいし、その上に、第1平坦化膜62、波長選択層(カラーフィルタ層63)、オンチップレンズ64、平坦化層(第2平坦化膜65)、層間絶縁層(無機絶縁下地層66)を周知の方法で形成すればよい。
【0086】
[工程−110]
次いで、光吸収層形成層73Aをパターニングすることで、長さLabの帯状の光吸収層形成層73Aを得る(図27の(B)参照)。具体的には、光吸収層形成層73A上にリソグラフィ技術及びドライエッチング技術に基づき、光吸収層形成層73Aをパターニングすることで、パターニングされた光吸収層形成層73Aを得ることができる。
【0087】
[工程−120]
その後、ストライプ状の光吸収層の繰り返し方向(第2の方向)における形成ピッチが2×Pab-2(=300nm)、第2の方向における幅が(Pab-2−Wab)であるレジスト層91を、リソグラフィ技術に基づき、全面に(具体的には、所定の固体撮像素子領域、あるいは、偏光方位の揃った画素内に)形成する(図28の(A)及び(B)参照)。レジスト層91は、例えば、フォトレジスト材料から成る。尚、露光波長248nmのKrF露光が望ましい。その後、レジスト層91の側壁における厚さがWab(=50nm)であるエッチングマスク層(ハードマスク材料層)92をレジスト層91の側壁に形成する(図29の(A)及び(B)参照)。具体的には、CVD法に基づき、TEOS等から成るエッチングマスク層92を(全面に)コンフォーマルに形成した後、レジスト層91の頂面上等のエッチングマスク層92の部分を、周知のエッチバック方法に基づき除去する。
【0088】
[工程−130]
次いで、露出したレジスト層91を、アッシング技術に基づき除去する(図30の(A)及び(B)参照)。エッチングマスク層92の形成ピッチは150nmであり、第2の方向における幅は50nmである。その後、エッチングマスク層92をエッチング用マスクとして、光吸収層形成層73A、絶縁層形成層72A及び反射層形成層71Aを順次エッチングし、反射層71、絶縁層72及び光吸収層73の積層構造から成る偏光素子70を得た後(図31の(A)及び(B)参照)、エッチングマスク層92を除去する。こうして、図32の(A)及び(B)に示す構造を得ることができる。その後、必要に応じて、SiO2あるいはSiON、SiN等の絶縁材料から成り、厚さ数十nmの保護膜(具体的には、例えば、偏光素子70の側面において、厚さ15nmの保護膜)を、全面にCVD法やALD法に基づきコンフォーマルに形成してもよい。
【0089】
[工程−140]
その後、電極パッド(図示せず)の形成、チップ切り離しのためのダイシング、パッケージといった周知の方法に基づき、固体撮像装置、撮像機器を組み立てればよい。
【0090】
このような実施例1の偏光素子の製造方法にあっては、形成ピッチが2×Pab-2、幅が(Pab-2−Wab)であるレジスト層を形成し、次いで、レジスト層の側壁における厚さがWabであるエッチングマスク層をレジスト層の側壁に形成した後、エッチングマスク層をドライエッチング用マスクとして、光吸収層形成層、絶縁層形成層及び反射層形成層を順次エッチングするといった、スペーサ方式とも呼ばれる方式を採用している。それ故、[工程−120]において、第2の方向における形成ピッチが2×Pab-2であるレジスト層を形成するにも拘わらず、第2の方向に沿った形成ピッチがPab-2、幅がWabの光吸収層や反射層を得ることができるし、幅50nmのエッチングマスク層(ハードマスク材料層)が倒壊する虞もない。尚、スペーサ方式の代わりに、ダブルパターニング方式を採用することもできる。即ち、第2の方向に沿って、例えば、先ず、奇数番目の偏光素子を形成し、次いで、偶数番目の偏光素子を形成してもよい。
【0091】
また、実施例1にあっては、偏光素子の光吸収層を、成膜技術とパターニング技術に基づき形成する。従来の技術のように、形状異方性を有する光吸収層を斜めスパッタ成膜法に基づき形成する必要がない。従って、固体撮像素子毎に異なる偏光方位を有する偏光素子を容易に得ることができる。しかも、光電変換素子の上方にオンチップで一体的に偏光素子が形成されているが故に、固体撮像素子の厚さを薄くすることができる。その結果、隣接する固体撮像素子への偏光光の混入(偏光クロストーク)を最小にできるし、本偏光素子は吸収層を有する吸収型偏光素子であるために反射率が低く、映像に対する迷光、フレア等の影響を軽減することができる。また、固体撮像装置にあっては、偏光方位が異なる2種類以上の偏光素子を備えているので、固体撮像装置に入射光の偏光情報を空間的に偏光分離する偏光分離機能を付与することができる。
【実施例2】
【0092】
実施例2は、実施例1の変形である。ところで、CVD法に比べてADL法は、よりコンフォーマルに偏光素子70の側面における成膜が可能である。それ故、偏光素子の光学特性の低下を防ぐことが可能である。特に、AlOxやHfOxのような金属酸化物から成る保護膜は、偏光素子に対する保護能力が高く、しかも、薄く、コンフォーマルに成膜することが可能であるが故に、光学特性の低下を招かない良質な保護膜として機能し得る。
【0093】
実施例2にあっては、第2の方向に沿った形成ピッチPab-2=180nm、幅Wab=80nm、偏光素子70と偏光素子70の間のスペース(Pab-2−Wab)=100nmの偏光素子70を形成する。具体的には、実施例2にあっては、実施例1の[工程−130]と同様の工程において、エッチングマスク層92を除去した後、AlOxあるいはHfOxから成る保護膜74を、ADL法に基づき、偏光素子70上に、より具体的には、偏光素子70及び層間絶縁層(基体であり、無機絶縁下地層66)上に形成する。ここでは、偏光素子70の側面において厚さ15nmの保護膜74を形成する。こうして、図33の(A)に示す構造を得ることができる。尚、図33の(A)及び後述する図33の(B)は、図2の矢印A−Aに沿ったと同様の模式的な一部端面図であり、第1の方向に沿った偏光素子70Aに関する模式的な一部端面図(仮想切断面は第1の方向と平行)と、第2の方向に沿った偏光素子70Bに関する模式的な一部端面図(仮想切断面は第2の方向と平行)とを示している。
【0094】
実施例2にあっては、ADL法に基づき保護膜74を形成することにより、偏光素子70が形成されていない無機絶縁下地層66上の保護膜74の膜厚を薄くすることができる。その結果、無機絶縁下地層66上の保護膜74の部分における入射光の反射、屈折を防止することができるし、隣接する固体撮像素子への不要な光の漏れ込みを防ぐことができる結果、感度の向上、混色の低減といった光学特性の改善を図ることができる。特に、シリコン系酸化膜よりも外気に対する保護性能が高いが、屈折率は高い金属酸化物を薄く形成することができるため、結果として、高性能、高信頼性を有する偏光素子を備えた固体撮像素子の提供が可能となる。また、ADL法に基づく成膜はCVD法に基づく成膜よりもコンフォーマルな成膜が実現できると共に、偏光素子70と偏光素子70との間のスペース(偏光素子と偏光素子との間に位置する基体の部分)の距離の長短によるカバレッジ差が発生し難い。従って、光学特性や信頼性に関して固体撮像素子内でより均一な特性が得られる。実際、保護膜74としてADL法を適用した場合、CVD法を適用した場合と比較して、固体撮像素子の特性ムラ(感度等のムラ)を大幅に改善することができた。
【実施例3】
【0095】
実施例3は、実施例2の変形である。実施例2にあっては、偏光素子70が形成されていない無機絶縁下地層66上にも保護膜74を形成した。しかしながら、偏光素子70が形成されていない無機絶縁下地層66上には保護膜74を形成しない方が、一層の特性向上(具体的には、一層の感度の向上)を図ることができる。
【0096】
実施例3にあっては、実施例1の[工程−130]と同様の工程において、エッチングマスク層92を除去した後、実施例2と同様に、AlOxあるいはHfOxから成る保護膜74を、ADL法に基づき、偏光素子70上に、より具体的には、偏光素子70及び無機絶縁下地層66上に形成する。ここで、偏光素子70の側面において厚さ15nmの保護膜74を形成する(図33の(A)の基体等の模式的な一部端面図を参照)。そして、その後、基体の上の保護膜を除去する。具体的には、無機絶縁下地層66上に堆積した保護膜74をエッチバック法によって除去し、偏光素子70の側面のみに保護膜74を残存させる(図33の(B)の基体等の模式的な一部端面図を参照)。保護膜74のエッチバックにあっては、無機絶縁下地層66上に堆積した保護膜74のみを効率良く除去するために、高パワーで指向性の高い(強い)条件を採用することが望ましい。偏光素子70の頂面の保護膜74も同時に除去されるが、何ら問題はない。こうして、偏光素子70の側面のみに保護膜74を存在させるが故に、偏光素子70に腐食、異常析出に対する耐性を付与しつつ、偏光素子70と偏光素子70との間のスペースに保護膜74が存在しないため、このスペースに入射する光が保護膜74によって反射、屈折されることが無く、また、隣接する固体撮像素子への不要な光の漏れ込みを一層確実に防ぐことができる。そして、その結果、感度の一層の向上を図ることができ、良好な特性を有する固体撮像素子を実現することができる。
【実施例4】
【0097】
実施例4は、実施例1の変形であり、本発明における固体撮像素子−Bに関する。実施例4にあっては、固体撮像素子の模式的な一部断面図を図8に示すように、光電変換素子(受光素子)81の上方にオンチップレンズ84が配置されており、光電変換素子81とオンチップレンズ84の間に偏光素子70が設けられている。そして、オンチップレンズ84と偏光素子70との間に波長選択層(具体的には、カラーフィルタ層83)が配置されている。
【0098】
具体的には、実施例4の固体撮像素子41は、例えば、シリコン半導体基板80に設けられた光電変換素子81、並びに、その上に、層間絶縁層(第1平坦化膜82)、偏光素子70、偏光素子埋込み材料層88、第2平坦化膜89、波長選択層(カラーフィルタ層83)、オンチップレンズ84が積層されて成る。層間絶縁層(第1平坦化膜82)及び第2平坦化膜89はSiO2から成り、偏光素子埋込み材料層88は、SiO2やアクリル系樹脂、SOG等から成る。光電変換素子81、偏光素子70、波長選択層(カラーフィルタ層83)、オンチップレンズ84は、実施例1と同様の構成、構造とすることができる。
【0099】
実施例4にあっては、更に、第1の方向における光吸収層の断片73’の形成ピッチPab-1、第1の方向における光吸収層の断片73’の長さLabは、波長選択層(カラーフィルタ層83)を通過する光の波長に依存して決定されている。即ち、赤色を受光する赤色固体撮像素子、青色を受光する青色固体撮像素子、及び、緑色を受光する緑色固体撮像素子のそれぞれにおいて、(Pab-1,Lab)の最適化が図られ、これによって、各固体撮像素子における更なる低光反射構造が達成されている。尚、実施例4にあっても、固体撮像素子の配置はベイヤ配置としている。
【0100】
以下、FDTD法に基づくシミュレーションにて、(Pab-1,Lab)と光反射率との関係を求めた結果を説明する。ここで、カラーフィルタ層83を通過する光の中心波長を、それぞれ、450nm、550nm、650nmとし、第2の方向における光吸収層73の形成ピッチPab-2を120nm、第2の方向に沿った光吸収層の断片73’の幅Wabを40nm、偏光素子埋込み材料層88の屈折率を1.45、アルミニウム(Al)から成る反射層71の厚さを100nm、SiO2から成る絶縁層72の厚さを25nm、タングステン(W)から成る光吸収層73の厚さを50nmとした。また、反射層71の下地は、SiO2層から成る。
【0101】
そして、ディユーティー比Lab/Pab-1の値を種々、変更し、評価する特性指標として、第1の方向に沿った反射率と第2の方向に沿った反射率の平均反射率を計算し、最適なLab/Pab-1の値を求めた。但し、評価する特性指標は、これに限定するものではなく、消光比、第2の方向に沿った光透過率、あるいは、これらの複数を選択してもよく、重視しなければならないパラメータを適宜選択すればよい。
【0102】
図9の(A)、(B)及び図10にシミュレーション結果を、以下の表2に示す。横軸はLab/Pab-1、つまり、ディユーティー比であり、更に、Pab-1は波長毎に3水準(A,B,C)振っている。縦軸は前述の平均反射率である。尚、図9の(A)は波長450nmにおけるシミュレーション結果であり、「A」はPab-1=200nmの結果を示し、「B」はPab-1=240nmの結果を示し、「C」はPab-1=280nmの結果を示す。また、図9の(B)は波長550nmにおけるシミュレーション結果であり、「A」はPab-1=250nmの結果を示し、「B」はPab-1=300nmの結果を示し、「C」はPab-1=350nmの結果を示す。更には、図10は波長650nmにおけるシミュレーション結果であり、「A」はPab-1=300nmの結果を示し、「B」はPab-1=350nmの結果を示し、「C」はPab-1=400nmの結果を示す。この結果から、以下の最適条件を得ることができた。このように、赤色、緑色、青色の各波長帯域での平均反射率を全て4%以下にすることが可能となる。
【0103】
[表2]
波長 Pab-1 Lab 平均反射率
450nm 240nm 120nm 4.0%
550nm 250nm 150nm 0.6%
650nm 300nm 210nm 3.9%
【0104】
実施例4にあっては、光電変換素子81とオンチップレンズ84の間に、偏光素子70が波長選択層(具体的には、カラーフィルタ層83)より基体側に配置されており、偏光素子70の形成はカラーフィルタ層形成前となるために、プロセス温度に制限を受け難い。更に、偏光素子70は埋め込み材料層88内に埋め込み形成されている。それ故、固体撮像装置をパッケージに実装する際に、厚さを調整するためのシリコン半導体基板の裏面切削、更に、その後のチップ切り離しのためのダイシング工程等における偏光素子へのダメージの発生を確実に防止することができる。また、固体撮像素子の信頼性確保の観点から、偏光素子を保護するために保護膜を形成することが好ましいが、実施例4にあっては、偏光素子埋込み材料層88が形成されているので保護膜の形成は不要である。
【実施例5】
【0105】
実施例5は、本発明の撮像機器に関し、より具体的には、被写体を立体画像として撮像する固体撮像装置及び撮像方法に関する。実施例5の撮像機器にあっては、実施例1〜実施例4において説明した固体撮像装置、固体撮像素子を適用することができる。
【0106】
実施例5の撮像機器(立体画像撮像装置)の概念図を図11の(A)に示し、第1偏光手段及び第2偏光手段における偏光の状態を模式的に図11の(B)及び(C)に示し、レンズ系、第1偏光手段における第1領域及び第2偏光手段における第3領域を通過し、撮像素子アレイに到達する光の概念図を図12の(A)に示し、第1偏光手段における第2領域及び第2偏光手段における第4領域を通過し、撮像素子アレイに到達する光の概念図を図12の(B)に示し、図12の(A)及び(B)に示した光によって撮像素子アレイに結像した画像を模式的に図12の(C)及び(D)に示す。尚、以下の説明において、光の進行方向をZ軸方向、X方向を水平方向(X軸方向)、Y方向を垂直方向(Y軸方向)とする。
【0107】
実施例5、あるいは、後述する実施例6〜実施例12の立体画像撮像装置は、
(A)被写体からの光を偏光させる第1偏光手段130,230,330,430,530,630、
(B)第1偏光手段130,230,330,430,530,630からの光を集光するレンズ系20、並びに、
(C)X方向(水平方向、X軸方向)、及び、X方向と直交するY方向(垂直方向、Y軸方向)の2次元マトリクス状に固体撮像素子41が配列されて成り、光入射側に第2偏光手段150,250を有し、レンズ系20によって集光された光を電気信号に変換する撮像素子アレイ40、
を具備している。
【0108】
そして、実施例5、あるいは、後述する実施例6〜実施例12の立体画像撮像装置において、
第1偏光手段130,230,330,430,530,630は、X方向(水平方向、X軸方向)に沿って配列された第1領域131,231,331,531,631及び第2領域132,232,332,532,632を有し、
第1領域131,231,331,531,631を通過した第1領域通過光L1の偏光状態と、第2領域132,232,332,532,632を通過した第2領域通過光L2の偏光状態とは異なり、
第2偏光手段150,250は、Y方向(垂直方向、Y軸方向)に沿って交互に配置され、X方向(水平方向、X軸方向)に延びる複数の第3領域151,251及び第4領域152,252を有し、
第3領域151,251を通過した第3領域通過光L3の偏光状態と、第4領域152,252を通過した第4領域通過光L4の偏光状態とは異なり、
第1領域通過光L1は第3領域151,251を通過して固体撮像素子41に到達し、第2領域通過光L2は第4領域152,252を通過して固体撮像素子41に到達し、以て、第1領域131,231,331,531,631の重心点BC1と第2領域132,232,332,532,632の重心点BC2との間の距離を両眼視差の基線長さとした立体画像を得るための画像を撮像する。
【0109】
ここで、実施例5、あるいは、後述する実施例6〜実施例12の立体画像撮像装置において、レンズ系20は、例えば、撮影レンズ21、絞り部22及び結像レンズ23を備えており、ズームレンズとして機能する。撮影レンズ21は、被写体からの入射光を集光するためのレンズである。撮影レンズ21は、焦点を合わせるためのフォーカスレンズや、被写体を拡大するためのズームレンズ等を含み、一般に、色収差等を補正するために複数枚のレンズの組合せによって実現されている。絞り部22は、集光された光の量を調整するために絞り込む機能を有するものであり、一般に、複数枚の板状の羽根を組み合わせて構成されている。少なくとも絞り部22の位置において、被写体の1点からの光は平行光となる。結像レンズ23は、第1偏光手段130,230,330,430,530,630を通過した光を撮像素子アレイ40上に結像する。撮像素子アレイ40は、カメラ本体部11の内部に配置されている。以上の構成において、入射瞳は、結像レンズ23よりもカメラ本体部側に位置する。立体画像撮像装置から、例えば、上述したとおり、デジタルスチルカメラやビデオカメラ、カムコーダが構成される。
【0110】
カメラ本体部11は、撮像素子アレイ40の他に、例えば、画像処理手段12及び画像記憶部13を備えている。そして、撮像素子アレイ40によって変換された電気信号に基づき右眼用画像データ及び左眼用画像データが形成される。撮像素子アレイ40は、例えば、上述したとおり、CCD素子やCMOSイメージセンサー等によって実現される。画像処理手段12は、撮像素子アレイ40から出力された電気信号を、右眼用画像データ及び左眼用画像データに変換して、画像記憶部13に記録する。
【0111】
第1偏光手段130,230,330,430,530,630は、レンズ系20の絞り部22の近傍に配置されている。具体的には、第1偏光手段130,230,330,430,530,630は、絞り部22の作動に支障を来さない限り、出来るだけ絞り部22に近い位置に配置されている。尚、第1偏光手段130,230,330,430,530,630は、上述したとおり、レンズ系20に入射した光が、一旦、平行光とされ、最終的に固体撮像素子41上に集光(結像)されるとき、平行光の状態にあるレンズ系20の部分に配置されている。
【0112】
実施例5の立体画像撮像装置110において、第1偏光手段130は第1領域131及び第2領域132から構成されている。具体的には、第1偏光手段130の外形形状は円形であり、第1領域131及び第2領域132は、それぞれ、第1偏光手段130の半分を占める半月状の外形形状を有する。第1領域131と第2領域132との境界線は、Y方向に沿って延びている。2つの偏光フィルタの組合せから成る第1偏光手段130は、入射した光を2つの異なる偏光状態に分離する。第1偏光手段130は、上述したとおり、左右対称の偏光子から構成されており、カメラの正立状態に対する左右2つの位置において、互いに直交する直線方向の偏光、又は、互いに逆方向となる回転方向の偏光を生成する。第1領域131は、被写体を右眼で見るであろう像(右眼が受けるであろう光)に対して偏光を施すフィルタである。一方、第2領域132は、被写体を左眼で見るであろう像(左眼が受けるであろう光)に対して偏光を施すフィルタである。
【0113】
ここで、実施例5の立体画像撮像装置110において、第1領域131及び第2領域132は偏光子から成る。そして、第1領域通過光L1の電場の向き(白抜きの矢印で示す)と第2領域通過光L2の電場の向き(白抜きの矢印で示す)とは直交している(図11の(B)参照)。ここで、実施例5において、第1領域通過光L1の電場の向きはX方向と平行である。具体的には、例えば、第1領域通過光L1は主としてP波(TM波)を偏光成分として有し、第2領域通過光L2は主としてS波(TE波)を偏光成分として有する。更には、第1領域通過光L1の電場の向きと第3領域通過光L3の電場の向き(白抜きの矢印で示す)とは平行であり、第2領域通過光L2の電場の向きと第4領域通過光L4の電場の向き(白抜きの矢印で示す)とは平行である(図11の(C)参照)。また、各偏光子の消光比は、3以上、より具体的には10以上である。
【0114】
実施例5の立体画像撮像装置110にあっては、第1偏光手段130の外形形状を半径r=10mmの円形とした。そして、第1領域131及び第2領域132を、第1偏光手段130の半分を占める半月状とした。従って、第1領域131の重心点BC1と第2領域132の重心点BC2との間の距離は、[(8r)/(3π)]=8.5mmである。
【0115】
第3領域151及び第4領域152には、実施例1〜実施例4において説明した偏光素子70が設けられている。ここで、第3領域151を構成する偏光素子にあっては、第1の方向(光吸収軸と平行な方向)はY方向と平行であり、第4領域152を構成する偏光素子にあっては、第1の方向はX方向と平行である。
【0116】
そして、実施例5の撮像方法にあっては、第3領域151を通過して固体撮像素子41に到達した第1領域通過光L1によって、右眼用画像データを得るための電気信号を固体撮像素子41において生成する。また、第4領域152を通過して固体撮像素子41に到達した第2領域通過光L2によって、左眼用画像データを得るための電気信号を固体撮像素子41において生成する。そして、これらの電気信号を、同時に、又は、時系列に交互に、出力する。出力された電気信号(撮像素子アレイ40から出力された右眼用画像データ及び左眼用画像データを得るための電気信号)に対して、画像処理手段12によって画像処理が施され、右眼用画像データ及び左眼用画像データとして画像記憶部13に記録される。
【0117】
図12の(A)及び(B)に模式的に示すように、四角い形状の物体Aにレンズ系20のピントが合っているとする。また、丸い形状の物体Bが、物体Aよりもレンズ系20に近く位置しているとする。四角い物体Aの像が、ピントが合った状態で撮像素子アレイ40上に結像する。また、丸い物体B像は、ピントが合っていない状態で撮像素子アレイ40上に結像する。そして、図12の(A)に示す例にあっては、撮像素子アレイ40上では、物体Bは、物体Aの右手側に距離(+ΔX)だけ離れた位置に像を結ぶ。一方、図12の(B)に示す例にあっては、撮像素子アレイ40上では、物体Bは、物体Aの左手側に距離(−ΔX)だけ離れた位置に像を結ぶ。従って、距離(2×ΔX)が物体Bの奥行きに関する情報となる。即ち、物体Aよりも固体撮像装置に近い側に位置する物体のボケ量及びボケ方向は、固体撮像装置に遠い側に位置する物体のボケ量及びボケ方向と異なるし、物体Aと物体Bとの距離によって物体Bのボケ量は異なる。そして、第1偏光手段130における第1領域131及び第2領域132の形状の重心位置の間の距離を両眼視差の基線長さとした立体画像を得ることができる。即ち、このようにして得られた右眼用画像(図12の(C)の模式図参照)及び左眼用画像(図12の(D)の模式図参照)から、周知の方法に基づき立体画像を得ることができる。尚、右眼用画像データと左眼用画像データとを混合すれば、立体画像ではない、通常の2次元(平面)画像を得ることができる。
【0118】
図13に概念図を示すように、実施例5にあっては、撮像素子アレイ40はベイヤ配列を有し、1画素は4つの固体撮像素子(赤色を受光する1つの赤色固体撮像素子R、青色を受光する1つの青色固体撮像素子B、及び、緑色を受光する2つの緑色固体撮像素子G)から構成されている。そして、X方向に沿って配列された1行の画素群に対して第3領域151が配置されており、同様に、この画素群にY方向に隣接し、X方向に沿って配列された1行の画素群に対して第4領域152が配置されている。第3領域151と第4領域152とは、Y方向に沿って交互に配置されている。尚、第3領域151及び第4領域152は全体としてX方向に延びているが、第3領域151及び第4領域152のX方向及びY方向に沿った単位長さは、固体撮像素子41のX方向及びY方向に沿った長さと等しい。そして、このような構成とすることで、主としてP波成分を有する光に基づくX方向に延びる帯状の画像(右眼用画像)、及び、主としてS波成分を有する光に基づくX方向に延びる帯状の画像(左眼用画像)が、Y方向に沿って交互に生成される。尚、図13において、第3領域151の内部に縦線を付し、第4領域152の内部に横線を付しているが、これらは、偏光素子における第2の方向(ストライプ状の反射層の繰り返し方向であり、ストライプ状の反射層の延びる方向と直交する方向であり、光透過軸である)を模式的に表しているし、図16、図20〜図24においても同様である。
【0119】
右眼用画像データ及び左眼用画像データのための電気信号は、上述したとおり、Y方向に沿って、一種、歯抜け状態となって生成される。そこで、画像処理手段12は、右眼用画像データ及び左眼用画像データ作成のために、電気信号に対してデモザイク処理を施すと共に、例えば、超解像処理に基づく補間処理を行うことにより、最終的に右眼用画像データ及び左眼用画像データを生成、作成する。また、例えば、左眼用画像データと右眼用画像データからステレオマッチングによりデイスパリティ・マップ(Disparity Map)を作成するといった視差検出技術、及び、デイスパリティ・マップを基に視差を制御する視差制御技術により、視差を強調したり、適切化を図ることもできる。
【0120】
図14に、固体撮像素子から得られた電気信号に対するデモザイク処理を行い、信号値を得る画像処理(モザイク処理)を説明するためのベイヤ配列を有する撮像素子アレイの概念図を示す。尚、図14には、左眼用画像における緑色固体撮像素子に関する信号値を生成する例について示している。通常のデモザイク処理では、近傍の同一色の固体撮像素子の電気信号の平均値が用いられるのが一般的である。しかしながら、実施例5のように右眼用画像データを得るための画素群(画素行)と左眼用画像データを得るための画素群(画素行)とが交互に繰り返されている場合、そのまま、近傍の値を用いると本来の画像データが得られなくなる虞がある。そこで、参照される固体撮像素子の電気信号が右眼用画像データ及び左眼用画像データの何れに相当するものであるかを考慮した上で、デモザイク処理を行う。
【0121】
ベイヤ配列において、位置(4,2)には赤色固体撮像素子Rが配置されているものとする。このとき、位置(4,2)に相当する緑色固体撮像素子信号値g’を生成するためには、次式によって表される演算を行う。
【0122】
g’4,2=(g4,1+g4,3+g5,2+g1,2×W3)/(3.0+W3)
【0123】
ここで、左辺のg’i,jは、位置(i,j)における緑色固体撮像素子信号値である。また、右辺のgi,jは、位置(i,j)における緑色固体撮像素子の電気信号の値である。更には、「3.0」は、注目固体撮像素子G4,2に対する隣接固体撮像素子G4,1,G4,3,G5,2への距離(W1)をそれぞれ例えば「1.0」としたとき、その逆数を重みとして、それら重みの総和に対応するものである。W3は、同様に、3固体撮像素子分だけ離れた固体撮像素子G1,2の電気信号の値に対する重みであり、この場合、「1/3」である。上式を一般化すると、次式のようになる。
【0124】
iが偶数の場合(赤色固体撮像素子Rの位置に相当する緑色固体撮像素子Gの信号値);
g’i,j=(gi,j-1×W1+gi,j+1×W1+gi+1,j×W1+gi-3,j×W3)/(W1×3.0+W3)
iが奇数の場合(青色固体撮像素子Bの位置に相当する緑色固体撮像素子Gの信号値);
g’i,j=(gi,j-1×W1+gi,j+1×W1+gi-1,j×W1+gi+3,j×W3)/(W1×3.0+W3)
ここで、W1=1.0,W3=1/3である。
【0125】
赤色固体撮像素子R及び青色固体撮像素子Bについても、同様の考え方によりデモザイク処理を行うことができる。
【0126】
デモザイク処理により各固体撮像素子位置における固体撮像素子信号値を得ることができるが、この段階では、上述したとおり、一種、歯抜け状態となっている。そのため、固体撮像素子信号値が存在しない領域に対して、固体撮像素子信号値を補間により生成する必要がある。補間の手法としては、近傍の値の加算平均値を利用する方法等、周知の方法を挙げることができる。尚、この補間処理は、デモザイク処理と並行して行ってもよい。X方向においては画質は完全に保持されているので、画像全体の解像度低下等の画質劣化は比較的少ない。
【0127】
実施例5においては、1組の第1偏光手段130及び第2偏光手段150並びに1つのレンズ系20から立体画像撮像装置110が構成されているので、例えば左右に分離された2つの異なる画像を同時に生成させることができ、単眼で、簡素な構成、構造を有し、構成部品の少ない、小型の立体画像撮像装置を提供することができる。また、レンズ及び偏光フィルタの組合せを2組、必要としないので、ズーム、絞り部、フォーカス、輻輳角等にズレや差異が生じることもない。しかも、両眼視差の基線長さが比較的短いので、自然な立体感を得ることができる。更には、第1偏光手段130を脱着させ得る構造とすれば、容易に、2次元画像及び3次元画像を得ることができる。
【実施例6】
【0128】
実施例6は実施例5の変形である。実施例5にあっては、第1領域通過光L1の電場の向きをX方向と平行とした。一方、実施例6にあっては、第1領域通過光L1の電場の向きはX方向と45度の角度を成す。即ち、偏光素子におけるストライプ状の反射層の延びる方向(第1の方向)は、複数の固体撮像素子の配列方向と45度の角度を成す。実施例6の立体画像撮像装置に備えられた第1偏光手段230及び第2偏光手段250における偏光の状態を、模式的に図15の(A)及び(B)に示す。
【0129】
ベイヤ配列を有する撮像素子アレイ40の概念図を図16に示す。実施例6にあっても、撮像素子アレイ40は、1画素は4つの固体撮像素子(赤色を受光する1つの赤色固体撮像素子R、青色を受光する1つの青色固体撮像素子B、及び、緑色を受光する2つの緑色固体撮像素子G)から構成されている。そして、X方向に沿って配列された1行の画素群に対して第3領域251が配置されており、同様に、この画素群にY方向に隣接し、X方向に沿って配列された1行の画素群に対して第4領域252が配置されている。第3領域251と第4領域252とは、Y方向に沿って交互に配置されている。尚、第3領域251及び第4領域252は全体としてX方向に延びているが、第3領域251及び第4領域252の単位長さは、1固体撮像素子分の長さと等しい。そして、このような構成とすることで、主としてP波成分を有する光に基づくX方向に延びる帯状の画像(右眼用画像)、及び、主としてS波成分を有する光に基づくX方向に延びる帯状の画像(左眼用画像)が、Y方向に沿って交互に生成される。尚、図16において、第3領域251及び第4領域252の内部に斜め線を付しているが、これらは、偏光素子の反射層を模式的に表している。
【0130】
これらの点を除き、実施例6の立体画像撮像装置の構成、構造は、実施例5にて説明した立体画像撮像装置110の構成、構造と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。実施例6における立体画像撮像装置の構成、構造を、後述する実施例7〜実施例12における立体画像撮像装置に対して適用することができる。
【実施例7】
【0131】
実施例7も実施例5の変形である。実施例7の立体画像撮像装置にあっては、第1偏光手段330において、第1領域331と第2領域332との間に中央領域333が設けられており、中央領域333を通過した中央領域通過光の偏光状態は、中央領域333への入射前と変化しない。即ち、中央領域333は、偏光に関して素通し状態である。
【0132】
ところで、入射した光が第1偏光手段を通過する際に、その光量は分光特性と消光比に比例して減少し、暗くなる。ここで、消光比とは、偏光子が選択して通過する光の量と、偏光子が選択せず、反射又は吸収する光の漏れこみ量の比である。具体的には、例えば、消光比10のP波成分を通過させる偏光子の場合、
P波成分:S波成分=50:50
の入射自然光の強度100に対して、この偏光子は、P波成分を50、S波成分を5の割合で透過する。また、消光比∞のP波成分を通過させる偏光子の場合、P波成分を100%透過し、S波成分を全反射し、又は、完全に吸収し、透過させないので、平均的な自然光が入射した場合、約1/2の明るさになる。図11の(B)及び(C)に示した第1偏光手段130及び第2偏光手段150を通過した光の光量は、透過損失がゼロとしても、第1偏光手段130に入射する前の光の光量の約25%となってしまう。また、第1領域及び第2領域を通過した光が、混ざった状態になり、分離できない状態で撮像素子アレイ40に入射した場合、混ざった割合に比例して両眼視差の基線長さが短くなり、完全に混ざった状態では左眼用画像と右眼用画像が同一の画像となり、視差が取れず、立体視することができなくなる。
【0133】
第1偏光手段330の中央領域333にあっては、光強度が強いが、視差量は少ない。従って、実施例7の第1偏光手段330を採用することで、撮像素子アレイ40が受ける光強度を大きくしながら、十分な長さの両眼視差の基線長さを確保することが可能となる。図17の(A)に第1偏光手段330の模式図を示すように、第1偏光手段330の外形形状を円形としたとき、中央領域333を円形とし、第1領域331及び第2領域332を、中央領域333を囲む中心角180度の扇形とすることができる。あるいは又、図17の(B)、(C)に第1偏光手段330の模式図を示すように、中央領域333を菱形や正方形とし、第1領域331及び第2領域332を、中央領域333を囲む中心角180度の扇形に類似した形状とすることができる。あるいは又、図17の(D)に第1偏光手段330の模式図を示すように、第1領域331、中央領域333及び第2領域332を、Y方向に沿って延びる帯状の形状とすることができる。
【0134】
これらの点を除き、実施例7の立体画像撮像装置の構成、構造は、実施例5にて説明した立体画像撮像装置110の構成、構造と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。実施例7における立体画像撮像装置の構成、構造を、後述する実施例8〜実施例12における立体画像撮像装置に対して適用することができる。
【実施例8】
【0135】
実施例8も実施例5の変形である。実施例8の立体画像撮像装置410の概念図を図18に示す。実施例8の立体画像撮像装置410にあっては、第1偏光手段430の光入射側に、四分の一波長板(λ/4波長板)433が配置されており、これによって、所謂視野闘争の発生を回避することができる。四分の一波長板433は、レンズ系に設けられたフィルタ取付部に、着脱自在に取り付ければよい。四分の一波長板433を通過した光は偏光方向が揃った状態(直線偏光の状態)となる。そして、このような光が第1領域131及び第3領域151を通過して撮像素子アレイ40に到達して得られた画像と、第2領域132及び第4領域152を通過して撮像素子アレイ40に到達して得られた画像とにあっては、P波成分は反射するがS波成分は吸収する被写体の部分の画像の間に大きな相違が生じなくなり、視野闘争の発生を回避することができる。尚、四分の一波長板433の速軸は、実施例1あるいは実施例2において説明した立体画像撮像装置において、第1領域通過光の電場の向きと所定の角度(具体的には、45度の角度あるいは45度±10度の角度)を成すことが好ましい。
【実施例9】
【0136】
実施例9も実施例5の変形である。実施例9の立体画像撮像装置510の概念図を図19の(A)に示し、第1偏光手段及び第2偏光手段における偏光の状態を模式的に図19の(B)及び(C)に示す。実施例9の立体画像撮像装置510においては、視野闘争の発生を回避するために、第1偏光手段530の光入射側には、α度の偏光軸を有する偏光板534が配置されている。また、第1領域531は第1波長板から成り、第2領域532は第2波長板から成り、第1領域通過光L1の電場の向きと第2領域通過光L2の電場の向きとは直交している。より具体的には、αの値は45度であり、第1領域531を構成する第1波長板は半波長板(+λ/2波長板)から成り、第2領域532を構成する第2波長板は、第1波長板を構成する半波長板とは位相差の異なる半波長板(−λ/2波長板)から成る。これによって、第1領域通過光L1の電場の向きはX方向と平行となり、第2領域通過光L2の電場の向きはY方向と平行となる。尚、偏光板534はレンズ系に固定しておく。
【実施例10】
【0137】
実施例10も実施例5の変形である。図20に、ベイヤ配列を有する撮像素子アレイの概念図を示すように、実施例10の立体画像撮像装置にあっては、Y方向に沿ってN個の画素(但し、N=2nであり、nは1乃至5の自然数であり、実施例10にあっては、具体的には、n=3)に対して1つの第3領域151及び1つの第4領域152が配されている。そして、第3領域151を通過した第1領域通過光によって得られる電気信号及び第4領域152を通過した第2領域通過光によって得られる電気信号から生成された視差量に基づくデプスマップ(奥行き情報)、並びに、撮像素子アレイ40を構成する全固体撮像素子41からの電気信号に基づき、右眼用画像を得るための電気信号及び左眼用画像を得るための電気信号を得るが、係る方法それ自体は周知の方法とすることができる。尚、第3領域及び第4領域を配置した固体撮像素子と配置していない固体撮像素子の全てを含む全電気信号に基づきデモザイク処理を行ってもよいし、第3領域及び第4領域を配置した固体撮像素子群の行を間引いた部分を超解像処理により補間して画像データを生成することも可能である。また、画像の画質・画素数に対して、デプスマップの画質・画素数は、1:1である必要はない。これは、殆どの撮影場面において、個々の被写体は、画素分解能に比べて十分大きく、個々の被写体に、画素分解能と同じ細かさの距離差がない限り、画像の画素分解能と同じ距離情報分解能が必要になることはないためである。また、距離差の感覚において、横方向の分解能が十分あれば、縦方向の分解能が低くても違和感は少ない。
【0138】
あるいは又、実施例10の立体画像撮像装置の変形例1におけるベイヤ配列を有する撮像素子アレイの概念図を図21に示すが、X方向に沿って2個の画素に対して1つの第3領域151及び1つの第4領域152を配する構成とすることができる。尚、図21に示す例にあっては、第3領域151及び第4領域152は千鳥状(市松模様状)に配置されている。即ち、Y方向に沿って、第3領域151の一方の境界において第4領域152と隣接しているが、第3領域151の他方の境界においては第4領域152と隣接していない。
【0139】
あるいは又、実施例10の立体画像撮像装置の変形例2におけるベイヤ配列を有する撮像素子アレイの概念図を図22に示すが、赤色を受光する赤色固体撮像素子R及び青色を受光する青色固体撮像素子Bには第3領域151及び第4領域152を配置せず、緑色を受光する2つの緑色固体撮像素子Gの一方に第3領域151を配し、他方に第4領域152を配してもよい。また、実施例10の立体画像撮像装置の変形例3におけるベイヤ配列を有する撮像素子アレイの概念図を図23に示すが、緑色を受光する2つの緑色固体撮像素子Gの一方に第3領域151を配し、他方に第4領域152を配し、しかも、Y方向に沿ってN個の画素(但し、N=2nであり、図示した例では、n=2)に対して1つの第3領域151及び1つの第4領域152が配されている構成としてもよい。また、図24に示すように、第3領域151及び第4領域152を千鳥状(市松模様状)に配置してもよい。
【実施例11】
【0140】
実施例11は、実施例5〜実施例7、実施例9〜実施例10の立体画像撮像装置の変形を含む。実施例11の固体撮像装置の概念図を図25の(A)に示し、四分の一波長板の概念図を図25の(B)に示し、第1偏光手段における偏光の状態を模式的に図25の(C)に示し、偏光手段(第2偏光手段)における偏光の状態を模式的に図25の(D)に示す。
【0141】
実施例11の固体撮像装置610は、
(A)四分の一波長板633、
(B)四分の一波長板633からの光を集光するレンズ系20、並びに、
(C)X方向(水平方向、X軸方向)、及び、X方向と直交するY方向(垂直方向、Y軸方向)の2次元マトリクス状に固体撮像素子41が配列されて成り、光入射側に偏光手段150,250を有し、レンズ系20によって集光された光を電気信号に変換する撮像素子アレイ40、
を具備している。このような簡素な構成、構造を有する実施例11の固体撮像装置により通常の2次元画像を容易に撮像することができるし、このような構成、構造を有する実施例11の固体撮像装置を実施例5〜実施例7、実施例9〜実施例10の立体画像撮像装置に容易に組み込むことができ、これによって、立体画像を撮影するだけでなく、通常の2次元画像を、容易に、高画質にて撮影することが可能となる。
【0142】
ここで、偏光手段150,250は、Y方向(垂直方向、Y軸方向)に沿って交互に配置され、X方向(水平方向、X軸方向)に延びる複数の第1領域151,251及び第2領域152,252を有し、
第1領域151,251を通過した第1領域通過光の偏光状態と、第2領域152,252を通過した第2領域通過光の偏光状態とは異なり、
四分の一波長板633の速軸(図25の(B)、図26の(A)、(D)、(E)にあっては、黒色の矢印で示す)は、第1領域通過光の電場の向きと所定の角度を成す。所定の角度は45度あるいは45度±10度である。以下においても同様である。また、第1領域通過光の電場の向きと第2領域通過光の電場の向きとは直交している。第1領域通過光の電場の向きはX方向と平行であり(図25の(D)参照)、あるいは又、第1領域通過光)の電場の向きはX方向と45度の角度を成す(図26の(C)参照)。四分の一波長板633は、例えば、レンズの絞り羽根に類似した構成、構造を有し、レンズ系20内に配置されている。
【0143】
尚、以上に説明した実施例11の固体撮像装置610における偏光手段150,250は、実施例5〜実施例7、実施例9〜実施例10の立体画像撮像装置における第2偏光手段150,250に該当し、偏光手段150,250における複数の第1領域151,251及び第2領域152,252は、実施例5〜実施例7、実施例9〜実施例10の立体画像撮像装置における第3領域151,251及び第4領域152,252に該当する。以下の説明において、混乱を招かないために、「第2偏光手段150,250」に用語を統一し、また、実施例11の固体撮像装置610における偏光手段150,250(実施例5〜実施例7、実施例9〜実施例10の立体画像撮像装置における第3領域151,251及び第4領域152,252)を、「第5領域151,251」、「第6領域152,252」と表現する。
【0144】
あるいは又、実施例11の固体撮像装置610において、第1偏光手段630の光入射側には四分の一波長板633が配置されており、四分の一波長板633の速軸は、第1領域通過光L1の電場の向きと所定の角度を成す。尚、第1領域通過光L1の電場の向きと第3領域通過光L3の電場の向きとは平行であり、第2領域通過光L2の電場の向きと第4領域通過光L4の電場の向きとは平行である。
【0145】
尚、実施例12において説明するように、
四分の一波長板633は、Y方向に沿って配列された第1の四分の一波長板633A及び第2の四分の一波長板633Bから成り、
第1の四分の一波長板633Aの速軸は、第5領域通過光の電場の向きと所定の角度を成し、
第2の四分の一波長板633Bの速軸は、第1の四分の一波長板633Aの速軸と直交している(云い換えれば、第1の四分の一波長板633Aの遅軸と平行である)形態とすることができる。そして、このような形態を含む実施例11の固体撮像装置において、所定の角度は45度あるいは45度±10度である形態とすることができ、更には、これらの形態を含む実施例11の固体撮像装置にあっては、第5領域通過光の電場の向きと第6領域通過光の電場の向きとは直交している形態とすることができ、この場合、第5領域通過光の電場の向きはX方向と平行である形態とすることができるし、あるいは又、第5領域通過光の電場の向きはX方向と45度の角度を成す形態とすることができる。更には、これらの形態を含む実施例11の固体撮像装置において、四分の一波長板はレンズ系に脱着自在に取り付けられている形態とすることができる。
【0146】
あるいは又、実施例11の固体撮像装置610を実施例5〜実施例7、実施例9〜実施例10の立体画像撮像装置に適用する場合、
第1偏光手段630の光入射側には、四分の一波長板633が配置されており、
四分の一波長板633の速軸は、第1領域通過光L1の電場の向きと所定の角度を成す形態とすることができるし、あるいは又、実施例12において説明するように、
四分の一波長板633は、Y方向に沿って配列された第1の四分の一波長板633A及び第2の四分の一波長板633Bから成り、
第1の四分の一波長板633Aの速軸は、第1領域通過光L1の電場の向きと所定の角度を成し、
第2の四分の一波長板633Bの速軸は、第1の四分の一波長板633Aの速軸と直交している(云い換えれば、第1の四分の一波長板633Aの遅軸と平行である)形態とすることができ、これらの形態において、所定の角度は45度あるいは45度±10度である形態とすることができ、更には、これらの形態にあっては、
第1領域通過光L1の電場の向きと第3領域通過光L3の電場の向きとは平行であり、
第2領域通過光L2の電場の向きと第4領域通過光L4の電場の向きとは平行である形態とすることができる。更には、これらの形態において、
第1偏光手段630はレンズ系20に脱着自在に取り付けられており、
四分の一波長板633はレンズ系20に脱着自在に取り付けられている形態とすることができる。そして、更には、これらの形態において、四分の一波長板6330は第1偏光手段630に隣接して、例えば第1偏光手段630の光入射側に配設されている形態とすることができる。
【0147】
実施例11の固体撮像装置610において、第1偏光手段630はレンズ系20に脱着自在に取り付けられており、四分の一波長板633もレンズ系20に脱着自在に取り付けられている。四分の一波長板633は第1偏光手段630に隣接して配設されている。図25の(A)にあっては、光入射側から、四分の一波長板633及び第1偏光手段630の順に図示したが、場合によっては、第1偏光手段630及び四分の一波長板633の順に配置してもよい。光入射側から四分の一波長板633及び第1偏光手段630の順に配置し、四分の一波長板633及び第1偏光手段630をレンズ系に配することで3次元画像(立体画像)を撮像することができるし、あるいは又、第1偏光手段630をレンズ系に配し、且つ、四分の一波長板633をレンズ系から外すことで3次元画像(立体画像)を撮像することができるし、四分の一波長板633をレンズ系に配し、第1偏光手段630をレンズ系から外すことで2次元画像を撮像することができる。一方、光入射側から第1偏光手段630及び四分の一波長板633の順に配置し、第1偏光手段630をレンズ系に配し、四分の一波長板633をレンズ系から外すことで3次元画像(立体画像)を撮像することができるし、四分の一波長板633をレンズ系に配し、第1偏光手段630をレンズ系から外すことで2次元画像を撮像することができる。図25の(B)に右上45度方向に延びる黒色の矢印で示した四分の一波長板633の速軸は、このような方向に限定するものではなく、左上45度方向に延びていてもよい。また、図26の(A)、(B)及び(C)のそれぞれに、実施例11の固体撮像装置における四分の一波長板の概念図、第1偏光手段における偏光の状態、偏光手段(第2偏光手段)における偏光の状態の変形例を図示するが、この例は、図15に示した実施例6の変形である。
【0148】
尚、四分の一波長板633をレンズ系20に脱着自在に取り付けるには、例えば、上述したとおり、四分の一波長板633をレンズの絞り羽根に類似した構成、構造とし、レンズ系内に配置すればよい。あるいは又、レンズ系20において、四分の一波長板633と開口部とが併設された部材を、レンズ系20の光軸と平行な回動軸を中心として回動可能にこの回動軸に取り付け、係る部材を回動軸を中心として回動させることで、レンズ系20を通過する光線が開口部を通過し、あるいは、四分の一波長板633を通過する構成、構造を挙げることができる。あるいは又、レンズ系20において、四分の一波長板633と開口部とが併設された部材を、例えばレンズ系20の光軸と直交する方向に滑動自在にレンズ系に取り付け、係る部材を滑動させることで、レンズ系20を通過する光線が開口部を通過し、あるいは、四分の一波長板633を通過する構成、構造を挙げることができる。尚、この場合、四分の一波長板633を複数の部材から構成し、各部材をレンズ系20の光軸と直交する方向に滑動自在とする構成を採用してもよい。
【0149】
第1偏光手段630をレンズ系20から外し、通常の2次元画像の撮影を試みた場合、固体撮像装置に入射する光が直線偏光を含んでいると、第5領域151,251を通過した光の強度と、第6領域152,252を通過した光の強度との間に、差が生じ、得られた2次元画像には、縞状の光の濃淡が生じる場合がある。実施例11の固体撮像装置にあっては、速軸が、第3領域通過光の電場の向きと所定の角度(具体的には、45度あるいは45度±10度)を成す四分の一波長板633が組み込まれるので、四分の一波長板633に入射した直線偏光の光は円偏光状態の光となって四分の一波長板633から出射される。従って、第5領域151,251を通過した光の強度と、第6領域152,252を通過した光の強度との間に、差が生じ難く、得られた2次元画像には、縞状の光の濃淡が生じる虞が無い。
【実施例12】
【0150】
実施例12は、実施例11の変形である。実施例12の固体撮像装置における四分の一波長板の概念図を図26の(D)あるいは図26の(E)に示すように、実施例12において、四分の一波長板633は、Y方向に沿って配列された第1の四分の一波長板633A及び第2の四分の一波長板633Bから成る。第1の四分の一波長板633Aと第2の四分の一波長板633Bとは一体化されている。そして、第1の四分の一波長板633Aの速軸は、第3領域通過光の電場の向きと所定の角度を成し、第2の四分の一波長板633Bの速軸は、第1の四分の一波長板633Aの速軸と直交している。云い換えれば、第1の四分の一波長板633Aの遅軸と平行である。ここで、所定の角度は45度あるいは45度±10度である。尚、図26の(D)に示した例は、図25の(B)に示した例の変形であり、図26の(E)に示した例は、図26の(A)に示した例の変形である。以上の点を除き、実施例12の固体撮像装置は、実施例11の固体撮像装置と同様の構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。四分の一波長板633を第1の四分の一波長板633A及び第2の四分の一波長板633Bから構成することで、第5領域151,251を通過した光の強度と、第6領域152,252を通過した光の強度との間に、より差が生じ難くなる。
【0151】
以上、本発明を好ましい実施例に基づき説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例において説明した偏光素子、固体撮像素子、固体撮像装置、撮像機器の構成、構造は例示であり、適宜、変更することができる。例えば、固体撮像素子を、シリコン半導体基板に設けられた光電変換素子、並びに、その上に、第1平坦化膜、オンチップレンズ、第2平坦化膜、カラーフィルタ層、無機絶縁下地層、及び、本発明における偏光素子が積層されて成る構成とすることもできる。また、固体撮像素子を、裏面照射型とするだけでなく、表面照射型としてもよい。
【0152】
右眼用画像データ及び左眼用画像データに基づき立体画像を表示するが、係る表示方式として、例えば、2台のプロジェクタに円偏光又は直線偏光フィルタを取り付けて左右眼用の画像をそれぞれ表示し、表示に対応した円偏光又は直線偏光眼鏡で画像を観察する方式、レンチキュラーレンズ方式、パララックスバリア方式を挙げることができる。尚、円偏光又は直線偏光眼鏡を使用することなく画像を観察すると、通常の2次元(平面)画像を観察することができる。また、以上に説明した処理手順は、これら一連の手順を有する方法として捉えてもよく、また、これら一連の手順をコンピュータに実行させるためのプログラムあるいはプログラムを記憶する記録媒体として捉えてもよい。記録媒体として、例えば、CD(Compact Disc)、MD(MiniDisc)、DVD(Digital Versatile Disk)、メモリカード、ブルーレイディスク(Blu-ray Disc(登録商標))等を用いることができる。
【0153】
あるいは又、実施例にて説明した偏光素子を透明な基板や基体上に形成し、テレビ受像機等の画像表示装置において、右目用、左目用の画素群に2種類の偏光素子を割り当てれば、立体視用の画像を得ることができる。あるいは又、1枚の画像に複数の画像を含ませることで、例えば、複数の人間が複数の異なる画像(番組)を同時に見ることも可能である。また、DVDやブルーレイ(Blu−ray)光ディスクシステムにおける光ピックアップにおいて、記録媒体に縦偏光用の凹凸構造、横偏光用の凹凸構造を2層にて作り込み、縦横2種類に偏光したレーザを用いることで、同じサイズで2倍の情報記録が可能になる。また、光通信機器等への転用も可能である。
【符号の説明】
【0154】
110,410,510・・・立体画像撮像装置、610・・・固体撮像装置、11・・・カメラ本体部、12・・・画像処理手段、13・・・画像記憶部、20・・・レンズ系、21・・・撮影レンズ、22・・・絞り部、23・・・結像レンズ、130,230,330,430,530,630・・・第1偏光手段、131,231,331,531,631・・・第1領域、132,232,332,532,632・・・第2領域、333・・・中央領域、433,633・・・四分の一波長板(λ/4波長板)、633A・・・第1の四分の一波長板(λ/4波長板)、633B・・・第2の四分の一波長板(λ/4波長板)、534・・・偏光板、40・・・撮像素子アレイ、41・・・固体撮像素子、150,250・・・第2偏光手段(偏光手段)、151,251・・・第3領域(第5領域)、152,252・・・第4領域(第6領域)、60・・・シリコン半導体基板、61,81・・・光電変換素子、62・・・第1平坦化膜、63,83・・・波長選択層(カラーフィルタ層)、64,84・・・オンチップレンズ、65・・・平坦化層(第2平坦化膜)、66・・・層間絶縁層(無機絶縁下地層)、67・・・遮光部、68・・・遮光層、70・・・偏光素子、71・・・反射層、71A・・・反射層形成層、72・・・絶縁層、72A・・・絶縁層形成層、73・・・光吸収層、73’・・・光吸収層の断片、73A・・・光吸収層形成層、74・・・保護膜、82・・・層間絶縁層(第1平坦化膜)、88・・・偏光素子埋込み材料層、89・・・第2平坦化膜
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像素子、固体撮像装置、撮像機器、及び、偏光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微小な領域毎に偏光方位を変えて偏光素子を配置した光学素子、及び、このような光学素子をインテグレートした電子デバイスの商品化が、表示装置や計測装置を中心として進められており、例えば、表示装置用として、株式会社有沢製作所製のXpol(登録商標)が販売されている。
【0003】
また、所定数の走査線の整数倍に相当する画素が撮像面に設けられた撮像手段と;被写体からの第1の映像光における水平成分だけを透過する第1の水平成分偏光手段と;第1の水平成分偏光手段とは所定距離だけ離隔された位置に配置され、被写体からの第2の映像光における垂直成分だけを透過する第1の垂直成分偏光手段とを備え;第1の水平成分偏光手段により透過した水平成分を撮像面における所定範囲の画素に集光させ;第1の垂直成分偏光手段によって透過された垂直成分を所定範囲を除く残余範囲の画素に集光させる撮像装置が、特開2004−309868から周知である。そして、CCDの撮像面に対して所定距離だけ離れた位置に、人間の視差に応じた間隔だけ離間して配置された水平成分偏光フィルタ及び垂直成分偏光フィルタが、2つのレンズと共に設けられている。
【0004】
更には、使用帯域の光に透明な基板と;基板上で一方向に延びた帯状薄膜が使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列された反射層と;反射層上に形成された誘電体層と;帯状薄膜に対応する位置であって誘電体層上に、無機微粒子が一次格子状に配列されて成り、光吸収作用を持つ無機微粒子層とを備えた偏光素子が、特開2008−216956から周知である。係る偏光素子は、所謂、ワイヤグリッド型偏光子の技術を応用したものである。
【0005】
また、CCD素子(Charge Coupled Device:電荷結合素子)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor:相補性金属酸化膜半導体)イメージセンサーといった固体撮像素子の上に複数の偏光方位を有する偏光素子を配置することにより、同時刻における複数の偏光情報を空間分割して取得する技術が、例えば、第34回光学シンポジウム(2009年) 講演番号16 「偏光イメージングのSiCウェファ欠陥評価への応用」から周知である。具体的には、固体撮像素子への入射光をフォトニック結晶アレイによって4つの偏光方位の偏光成分に分解して、各偏光方位の強度を同時に出力することにより、従来は時分割処理であった偏光解析が空間分割処理で同時解析が可能となり、駆動部分を必要とせずに偏光イメージを出力することができる偏光カメラシステムが提案されている。しかしながら、フォトニック結晶アレイを固体撮像素子とは別に作製し、貼り合わせによって一体化するため、微細な画素サイズの撮像装置に適用することは困難である。
【0006】
一般に、ワイヤグリッド型偏光子は、導体材料から成る1次元若しくは2次元の格子状構造を有する。図35に概念図を示すように、ワイヤグリッドの形成ピッチP0が入射する電磁波の波長よりも有意に小さい場合、ワイヤグリッドの延在方向に平行な平面で振動する電磁波は、選択的にワイヤグリッドにて反射・吸収される。そのため、図35に示すように、ワイヤグリッド型偏光子に到達する電磁波には縦偏光成分と横偏光成分が含まれるが、ワイヤグリッド型偏光子を通過した電磁波は縦偏光成分が支配的な直線偏光となる。ここで、可視光波長帯に着目して考えた場合、ワイヤグリッドの形成ピッチP0がワイヤグリッド型偏光子へ入射する電磁波の波長と同程度以下である場合、ワイヤグリッドの延在方向に平行な面に偏った偏光成分はワイヤグリッドの表面で反射若しくは吸収される。一方、ワイヤグリッドの延在方向に垂直な面に偏った偏光成分を有する電磁波がワイヤグリッドに入射すると、ワイヤグリッドの表面を伝播した電場がワイヤグリッドの裏面から入射波長と同じ波長、同じ偏光方位のまま透過する。以上の物理現象は公知の内容で、例えば 新技術コミニュケーションズ社発行 鶴田著 「第3 光の鉛筆」23章 グリッド偏光器 等の書籍などに詳細が記述されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−309868
【特許文献2】特開2008−216956
【特許文献3】特公平6−054991号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】第34回光学シンポジウム 講演番号16 「偏光イメージングのSiCウェファ欠陥評価への応用」
【非特許文献2】新技術コミニュケーションズ社発行 鶴田著 「第3 光の鉛筆」23章 グリッド偏光器
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特開2004−309868に開示された撮像装置にあっては、水平成分偏光手段や垂直成分偏光手段が、具体的にどのような構成であるか、明示されていない。また、特開2008−216956に開示された偏光素子にあっては、無機微粒子(無機微粒子層14)は金属材料や半導体材料から構成され、無機微粒子は、形状異方性を有し、斜めスパッタ成膜法に基づき形成される。そのため、固体撮像素子毎に異なる形状異方性を有する無機微粒子を形成することは極めて困難である。それ故、特開2008−216956に開示された偏光素子を非特許文献1に開示された技術に適用することも、極めて困難である。
【0010】
従って、本発明の目的は、ワイヤグリッド型偏光子(Wire Grid Polarizer,WGP)技術に基づく、偏光方位が異なる2種類以上であって、構成、構造が簡素な偏光素子を備えた固体撮像装置、係る固体撮像装置を用いた撮像機器、係る固体撮像装置を構成する固体撮像素子、及び、係る固体撮像装置に用いられる偏光素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するための本発明の固体撮像素子は、
(A)光電変換素子、及び、
(B)光電変換素子の光入射側に設けられた偏光素子、
を備えており、
偏光素子は、光電変換素子側から、ストライプ状の反射層、反射層上に形成された絶縁層、及び、絶縁層上に離間された状態で形成された複数の断片(セグメント)から成る光吸収層の積層構造を有する。
【0012】
上記の目的を達成するための本発明の固体撮像装置は、
(A)光電変換素子、及び、
(B)光電変換素子の光入射側に設けられた偏光素子、
を備えた固体撮像素子を複数、有する固体撮像装置であって、
偏光方位が異なる2種類以上の偏光素子を備え、
各偏光素子は、光電変換素子側から、ストライプ状の反射層、反射層上に形成された絶縁層、及び、絶縁層上に離間された状態で形成された複数の断片(セグメント)から成る光吸収層の積層構造を有する。
【0013】
上記の目的を達成するための本発明の撮像機器は、本発明の固体撮像装置を備えており、具体的には、例えば、デジタルスチルカメラやビデオカメラ、カムコーダから構成されている。
【0014】
上記の目的を達成するための本発明の偏光素子の製造方法は、
基体上に形成されたストライプ状の反射層、反射層上に形成された絶縁層、及び、絶縁層上に離間された状態で形成された複数の断片(セグメント)から成る光吸収層の積層構造を有し、
ストライプ状の反射層の繰り返し方向における光吸収層の形成ピッチをPab-2、光吸収層の幅をWab、ストライプ状の反射層の延びる方向における光吸収層の断片の長さをLabとする偏光素子の製造方法であって、
(a)基体上に、反射層を構成すべき反射層形成層、絶縁層を構成すべき絶縁層形成層、光吸収層を構成すべき光吸収層形成層を設け、次いで、
(b)光吸収層形成層をパターニングすることで、長さLabの光吸収層形成層を得た後、
(C)ストライプ状の光吸収層の繰り返し方向における形成ピッチが2×Pab-2、幅が(Pab-2−Wab)であるレジスト層を全面に形成した後、レジスト層の側壁における厚さがWabであるエッチングマスク層をレジスト層の側壁に形成し、次いで、
(c)レジスト層を除去した後、エッチングマスク層をエッチング用マスクとして、光吸収層形成層、絶縁層形成層及び反射層形成層を順次エッチングし、以て、反射層、絶縁層及び光吸収層の積層構造から成る偏光素子を得る。
【発明の効果】
【0015】
ワイヤグリッド型偏光子の技術を応用した、本発明の固体撮像素子等における吸収型の偏光素子は、光電変換素子側から、ストライプ状の反射層、反射層上に形成された絶縁層、及び、絶縁層上に離間された状態で形成された複数の断片(セグメント)から成る光吸収層の積層構造を有するので、構成、構造が簡素であるにも拘わらず、所望の偏光方位を有し、優れた消光特性を有する偏光素子を提供することができる。しかも、光電変換素子の上方にオンチップで一体的に偏光素子が形成されているが故に、固体撮像素子の厚さを薄くすることができる。その結果、隣接する固体撮像素子への偏光光の混入(偏光クロストーク)を抑制することができるし、光吸収層を有する吸収型の偏光素子であるために、迷光、フレア、ゴースト等の発生を抑えることができる。また、本発明の固体撮像装置にあっては、偏光方位が異なる2種類以上の偏光素子を備えているので、固体撮像装置への入射光の偏光情報を空間的に分離する偏光分離機能を付与することができるし、偏光方位が異なる2種類以上の偏光素子を有する固体撮像素子を備えた固体撮像装置を容易に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、実施例1の固体撮像素子の模式的な一部断面図である。
【図2】図2は、実施例1の固体撮像素子の模式的な部分的平面図である。
【図3】図3は、実施例1の固体撮像素子の変形例の模式的な一部断面図である。
【図4】図4は、実施例1の偏光素子において、ストライプ状の反射層の延びる方向における反射層の長さLrfと消光比を関係を示すグラフである。
【図5】図5は、実施例1の偏光素子において、ストライプ状の反射層の延びる方向における反射層の長さLrfを2μmとしたときの、ストライプ状の反射層の延びる方向における反射層を透過する光の各偏光成分の透過強度分布をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【図6】図6は、遮光層の厚さを20nm、幅を100nmとし、入射光の波長を550nmとして、透過光強度分布をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【図7】図7は、実施例1の偏光素子における偏光特性をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【図8】図8は、実施例4の固体撮像素子の模式的な一部断面図である。
【図9】図9の(A)及び(B)は、実施例4の偏光素子において、Lab/Pab-1の値と平均反射率との関係を示すグラフである。
【図10】図10は、実施例4の偏光素子において、Lab/Pab-1の値と平均反射率との関係を示すグラフである。
【図11】図11の(A)、(B)及び(C)は、それぞれ、実施例5の撮像機器の概念図、第1偏光手段及び第2偏光手段における偏光の状態を模式的に示す図である。
【図12】図12の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例5の撮像機器において、第1偏光手段における第1領域及び第2偏光手段における第3領域を通過し、撮像素子アレイに到達する光の概念図、及び、第1偏光手段における第2領域及び第2偏光手段における第4領域を通過し、撮像素子アレイに到達する光の概念図であり、図12の(C)及び(D)は、図12の(A)及び(B)に示した光によって撮像素子アレイに結像した画像を模式的に示す図である。
【図13】図13は、実施例5の撮像機器におけるベイヤ配列を有する撮像素子アレイの概念図である。
【図14】図14は、固体撮像素子から得られた電気信号に対するデモザイク処理を行い、信号値を得る画像処理を説明するためのベイヤ配列を有する撮像素子アレイの概念図である。
【図15】図15の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例6の撮像機器に備えられた第1偏光手段及び第2偏光手段における偏光の状態を模式的に示す図である。
【図16】図16は、実施例6の撮像機器におけるベイヤ配列を有する撮像素子アレイの概念図である。
【図17】図17の(A)〜(D)は、実施例7の撮像機器に備えられた第1偏光手段の模式図である。
【図18】図18は、実施例8の撮像機器の概念図である。
【図19】図19の(A)、(B)及び(C)は、それぞれ、実施例9の撮像機器の概念図、第1偏光手段及び第2偏光手段における偏光の状態を模式的に示す図である。
【図20】図20は、実施例10の撮像機器におけるベイヤ配列を有する撮像素子アレイの概念図である。
【図21】図21は、実施例10の撮像機器の変形例1におけるベイヤ配列を有する撮像素子アレイの概念図である。
【図22】図22は、実施例10の撮像機器の変形例2におけるベイヤ配列を有する撮像素子アレイの概念図である。
【図23】図23は、実施例10の撮像機器の変形例3におけるベイヤ配列を有する撮像素子アレイの概念図である。
【図24】図24は、実施例10の撮像機器の変形例4におけるベイヤ配列を有する撮像素子アレイの概念図である。
【図25】図25の(A)、(B)、(C)及び(D)は、それぞれ、実施例11の固体撮像装置の概念図、四分の一波長板の概念図、第1偏光手段における偏光の状態を模式的に示す図、及び、偏光手段(第2偏光手段)における偏光の状態を模式的に示す図である。
【図26】図26の(A)、(B)及び(C)は、それぞれ、実施例11の固体撮像装置における四分の一波長板の概念図、第1偏光手段における偏光の状態を模式的に示す図、偏光手段(第2偏光手段)における偏光の状態を模式的に示す図であり、図26の(D)及び(E)は、実施例12の固体撮像装置における四分の一波長板の概念図である。
【図27】図27の(A)及び(B)は、実施例1の偏光素子の製造方法を説明するための、基体等の模式的な一部端面図である。
【図28】図27の(A)及び(B)は、図27の(B)に引き続き、実施例1の偏光素子の製造方法を説明するための、基体等の模式的な一部端面図である。
【図29】図29の(A)及び(B)は、図28の(A)及び(B)に引き続き、実施例1の偏光素子の製造方法を説明するための、基体等の模式的な一部端面図である。
【図30】図30の(A)及び(B)は、図29の(A)及び(B)に引き続き、実施例1の偏光素子の製造方法を説明するための、基体等の模式的な一部端面図である。
【図31】図31の(A)及び(B)は、図30の(A)及び(B)に引き続き、実施例1の偏光素子の製造方法を説明するための、基体等の模式的な一部端面図である。
【図32】図32の(A)及び(B)は、図31の(A)及び(B)に引き続き、実施例1の偏光素子の製造方法を説明するための、基体等の模式的な一部端面図である。
【図33】図33の(A)及び(B)は、実施例2及び実施例3の偏光素子の製造方法を説明するための、基体等の模式的な一部端面図である。
【図34】図34は、ストライプ状の反射層の延びる方向に沿って隣接する固体撮像素子間で反射層を離間させない状態の固体撮像素子の模式的な部分的平面図である。
【図35】図35は、ワイヤグリッド型偏光子を通過する光等を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではなく、実施例における種々の数値や材料は例示である。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本発明の固体撮像素子、本発明の固体撮像装置、撮像機器及び偏光素子の製造方法、全般に関する説明
2.実施例1(本発明の固体撮像素子、本発明の固体撮像装置、撮像機器及び偏光素子の製造方法)
3.実施例2(実施例1の偏光素子の製造方法の変形)
4.実施例3(実施例2の偏光素子の製造方法の変形)
5.実施例4(実施例1の変形)
6.実施例5(本発明の固体撮像装置の変形)
7.実施例6(実施例5の固体撮像装置の変形)
8.実施例7(実施例5の固体撮像装置の別の変形)
9.実施例8(実施例5の固体撮像装置の更に別の変形)
10.実施例9(実施例5の固体撮像装置の更に別の変形)
11.実施例10(実施例5の固体撮像装置の更に別の変形)
12.実施例11(実施例5の固体撮像装置の更に別の変形)
13.実施例12(実施例11の変形)、その他
【0018】
[本発明の固体撮像素子、本発明の固体撮像装置、撮像機器及び偏光素子の製造方法、全般に関する説明]
本発明の固体撮像素子における偏光素子、本発明の固体撮像装置における偏光素子、本発明の撮像機器における偏光素子、あるいは、本発明の偏光素子の製造方法によって得られる偏光素子において、ストライプ状の反射層の延びる方向は、消光させるべき偏光方位と一致しており、ストライプ状の反射層の繰り返し方向は、透過させるべき偏光方位と一致している構成とすることができる。即ち、反射層は、ワイヤグリッド型偏光子としての機能を有し、偏光素子に入射した光の内、反射層の延びる方向と平行な方向に電界成分を有する偏光波(TE波/S波及びTM波/P波のいずれか一方)を減衰させ、反射層の延びる方向と直交する方向(ストライプ状の反射層の繰り返し方向)に電界成分を有する偏光波(TE波/S波及びTM波/P波のいずれか他方)を透過させる。即ち、反射層の延びる方向が偏光素子の光吸収軸となり、反射層の延びる方向と直交する方向が偏光素子の光透過軸となる。
【0019】
上記の好ましい構成を含む本発明の固体撮像素子における偏光素子、本発明の固体撮像装置における偏光素子、あるいは、上記の好ましい構成を含む本発明の撮像機器における偏光素子において、ストライプ状の反射層の延びる方向における反射層の長さ(Lrf)は、ストライプ状の反射層の延びる方向に沿った固体撮像素子の長さ(Lid)未満である形態とすることが好ましい。
【0020】
そして、上記の好ましい構成、形態を含む本発明の固体撮像素子、上記の好ましい構成、形態を含む本発明の固体撮像装置における固体撮像素子、あるいは、上記の好ましい構成、形態を含む本発明の撮像機器における固体撮像素子にあっては、光電変換素子の上方にオンチップレンズが配置されており、オンチップレンズの上方に偏光素子が設けられている構成とすることができる。尚、係る構成を、便宜上、『本発明における固体撮像素子−A』と呼ぶ場合がある。
【0021】
そして、本発明における固体撮像素子−Aにあっては、偏光素子とオンチップレンズとの間の光軸方向の距離をD、オンチップレンズのサグ量をS、偏光素子とオンチップレンズとの間に存在する媒質の屈折率をn1、隣接する偏光素子の間に存在する隙間の幅を2×R、偏光素子への光の入射角の最大値をθin-maxとしたとき、
R≧(D+S)×tan[sin-1{sin(θin-max)/n1}] (1)
を満足する構成とすることができる。このように式(1)を満足することで、より具体的には、式(1)を満足するように「R」の値を設定することで、隣接する固体撮像素子への光の漏れ込み(偏光クロストーク)を防ぐことができる。更には、このような好ましい構成を含む本発明における固体撮像素子−Aにあっては、オンチップレンズと偏光素子との間に位置する平面内の領域であって、隣接するオンチップレンズとオンチップレンズとの間に位置する領域には、例えば、クロム(Cr)や銅(Cu)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)から成る遮光層が設けられている構成とすることができ、これによって、隣接する固体撮像素子への光の漏れ込み(偏光クロストーク)を、一層効果的に防ぐことができる。更には、これらの好ましい構成を含む本発明における固体撮像素子−Aにあっては、オンチップレンズと偏光素子との間には、オンチップレンズ側から、例えば透明な樹脂(例えば、アクリル系樹脂)から成る平坦化層、及び、偏光素子製造工程においてプロセスの下地として機能するシリコン酸化膜等の無機材料から成る層間絶縁層が形成されている構成とすることができる。更には、これらの好ましい構成を含む本発明における固体撮像素子−Aにあっては、光電変換素子とオンチップレンズとの間に波長選択層(具体的には、例えば、周知のカラーフィルタ層)が配置されている構成とすることができる。
【0022】
あるいは又、上記の好ましい構成、形態を含む本発明の固体撮像素子、上記の好ましい構成、形態を含む本発明の固体撮像装置における固体撮像素子、あるいは、上記の好ましい構成、形態を含む本発明の撮像機器における固体撮像素子にあっては、光電変換素子の上方にオンチップレンズが配置されており、光電変換素子とオンチップレンズの間に偏光素子が設けられている構成とすることができる。尚、係る構成を、便宜上、『本発明における固体撮像素子−B』と呼ぶ場合がある。
【0023】
そして、本発明における固体撮像素子−Bにあっては、オンチップレンズと偏光素子との間に波長選択層(具体的には、例えば、周知のカラーフィルタ層)が配置されている構成とすることができる。このような構成を採用することで、各偏光素子における透過光の波長帯域において独立して偏光素子の最適化を図ることができ、可視光域全域において一層の低反射率を実現することができる。更には、このような好ましい構成を含む本発明における固体撮像素子−Bにあっては、ストライプ状の反射層の延びる方向における光吸収層を構成する断片の(長手方向の)形成ピッチをPab-1、ストライプ状の反射層の延びる方向における光吸収層の断片の長さをLabとしたとき、波長選択層を通過する光の波長に依存してPab-1及びLabを決定する構成とすることができ、これによって、固体撮像素子に入射する光の波長範囲における偏光素子の低光反射構造化を達成することができる。
【0024】
以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む本発明の固体撮像素子における偏光素子、以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む本発明の固体撮像装置における偏光素子、以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む本発明の撮像機器における偏光素子、あるいは、上記の好ましい構成を含む本発明の偏光素子の製造方法によって得られる偏光素子においては、ストライプ状の反射層の延びる方向における光吸収層の断片の形成ピッチをPab-1、ストライプ状の反射層の繰り返し方向における光吸収層の断片の形成ピッチをPab-2、偏光素子に入射する光の最短波長をλmin、偏光素子に入射する光が通過する媒質の屈折率をn0、偏光素子への光の入射角の最大値をθin-maxとしたとき、
(Pab-12+Pab-22)1/2≦[(λmin/n0)×cos(θin-max)] (2)
を満足することが望ましい。このように(Pab-1,Pab-2)の値を規定することで、周期的に形成された光吸収層の断片からの回折光の発生を防ぐことができ、隣接する固体撮像素子への不要な光の漏れ込みを防ぐことができる。
【0025】
更には、以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む本発明の固体撮像素子における偏光素子、以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む本発明の固体撮像装置における偏光素子、以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む本発明の撮像機器における偏光素子、あるいは、上記の好ましい構成を含む本発明の偏光素子の製造方法によって得られる偏光素子においては、ストライプ状の反射層の延びる方向における光吸収層の断片の形成ピッチをPab-1、長さをLabとしたとき、
0.5≦(Lab/Pab-1)<1 (3)
を満足することが好ましい。
【0026】
更には、以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む本発明の固体撮像装置における固体撮像素子、あるいは、以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む本発明の撮像機器における固体撮像素子において、ストライプ状の反射層の延びる方向は、複数の固体撮像素子の配列方向と45度の角度又は135度の角度を成す構成とすることができる。
【0027】
更には、以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む本発明の固体撮像素子における偏光素子、以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む本発明の固体撮像装置における偏光素子、以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む本発明の撮像機器における偏光素子、あるいは、上記の好ましい構成を含む本発明の偏光素子の製造方法によって得られる偏光素子において、反射層は、金属材料、合金材料若しくは半導体材料から成る構成とすることができるし、光吸収層は、金属材料、合金材料若しくは半導体材料から成る構成とすることができる。
【0028】
偏光素子を構成する金属材料や合金材料(以下、『金属材料等』と呼ぶ場合がある)が外気と接触すると、外気からの水分や有機物の付着によって金属材料等の腐食耐性が劣化し、固体撮像素子の長期信頼性が劣化する虞がある。特に、金属材料等−絶縁材料−金属材料等の積層構造体に水分が付着すると、水分中にはCO2やO2が溶解しているために電解液として作用し、2種類のメタル間の間で局部電池が形成される虞がある。そして、このような現象が生じると、カソード(正極)側では水素発生等の還元反応が進み、アノード(負極側)では酸化反応が進むことにより、金属材料等の異常析出や偏光素子の形状変化が発生する。そして、その結果、本来期待され偏光素子や固体撮像素子の性能が損なわれる虞がある。例えば、反射層としてアルミニウム(Al)を用いる場合、以下の反応式で示すようなアルミニウムの異常析出が発生する虞がある。
Al → Al3+ + 3e-
Al3+ + 3OH- → Al(OH)3
【0029】
従って、以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む本発明の固体撮像素子における偏光素子、以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む本発明の固体撮像装置における偏光素子、以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む本発明の撮像機器における偏光素子、あるいは、上記の好ましい構成を含む本発明の偏光素子の製造方法によって得られる偏光素子において、偏光素子には保護膜が形成されていることが好ましい。そして、この場合、偏光素子は基体上に形成されており、偏光素子と偏光素子との間に位置する基体の部分には保護膜が形成されていない形態とすることが、より好ましい。また、上記の好ましい構成を含む本発明の偏光素子の製造方法にあっては、前記工程(c)に引き続き、偏光素子の上及び基体の上に保護膜を形成する形態を含むことができるし、この場合、更に、偏光素子の上及び基体の上に保護膜を形成した後、基体の上の保護膜を除去する形態を含むことができる。
【0030】
以上に説明した各種のパラメータを、以下に纏めておく。ここで、ストライプ状の(即ち、ラインアンドスペース・パターンを有する)反射層の延びる方向を、便宜上、『第1の方向』と呼び、ストライプ状の反射層の繰り返し方向(ストライプ状の反射層の延びる方向と直交する方向)を、便宜上、『第2の方向』と呼ぶ。
【0031】
Lrf :第1の方向における反射層の長さ
Pab-1:第1の方向における光吸収層の断片(セグメント)の形成ピッチ
Pab-2:第2の方向における光吸収層の断片(セグメント)の形成ピッチ
Lab :第1の方向における光吸収層の断片(セグメント)の長さ
Wab :第2の方向に沿った光吸収層の断片(セグメント)の幅
Lid :第1の方向に沿った固体撮像素子の長さ
D :偏光素子とオンチップレンズとの間の距離
S :オンチップレンズのサグ量
R :隣接する偏光素子の間に存在する隙間の幅の半分の値
n0 :偏光素子に入射する光が通過する媒質の屈折率
n1 :偏光素子とオンチップレンズとの間に存在する媒質の屈折率
λmin :偏光素子に入射する光の最短波長
θin-max:入射光のNAを含めた、偏光素子への入射光の入射角の最大値
【0032】
光吸収層の断片は、長辺が第1の方向と平行であり、短辺が第2の方向と平行である、即ち、
1<Lab/Wab (4)
好ましくは、
2≦Lab/Wab≦7 (4’)
である、平面形状が長方形の島状(即ち、長方形のアイランド・パターンを有する)の層であり、光学異方性を有する。即ち、長方形の長辺の延びる方向が偏光素子の光吸収軸となり、短辺の延びる方向が偏光素子の光透過軸となる。ところで、可視光域の波長に対して吸収効果を有する光吸収層の断片の適切なアスペクト比(Lab/Wab)は、入射光の波長に依存しており、単純なレイリー近似値を用いて求めることができる。例えば、光吸収層の断片のアスペクト比が約5:1である場合、約500nmの波長で最大の消光比と低反射率が得られる。従って、可視光域では、比較的大きなアスペクト比で吸収効率が高くなるので、式(4)を、好ましくは式(4’)を満たすことが望ましい。光吸収層の厚さとして、1×10-8m乃至1.0×10-7mを例示することができる。また、第2の方向における光吸収層の形成ピッチPab-2と、第2の方向に沿った光吸収層の幅Wabとの関係として、
0.1≦Wab/Pab-2≦0.9
好ましくは、
0.2≦Wab/Pab-2≦0.7
といった関係を例示することができる。反射層の厚さとして、0.01μm乃至1μmを例示することができる。1つの光電変換素子に対応する偏光素子におけるストライプ状の反射層の数として、20本以上を例示することができる。本発明の固体撮像装置あるいは本発明の撮像機器にあっては、偏光方位が異なる2種類以上の偏光素子を備えているが、具体的には、隣接する固体撮像素子においては、例えば、透過軸が直交している構成とすることが好ましい。
【0033】
ワイヤグリッド型偏光子として機能する反射層(反射層形成層)を構成する無機材料として、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)、白金(Pt)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、鉄(Fe)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、テルル(Te)等の金属材料や、これらの金属を含む合金材料、半導体材料を挙げることができるし、あるいは又、例えば着色等により表面の反射率を高くした無機材料層や樹脂層から反射層を構成することもできる。
【0034】
また、光吸収層(光吸収層形成層)を構成する材料として、消衰係数kが零でない、即ち、光吸収作用を有する金属材料や合金材料、半導体材料、具体的には、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、鉄(Fe)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、テルル(Te)、錫(Sn)等の金属材料や、これらの金属を含む合金材料、半導体材料を挙げることができる。また、FeSi2(特にβ−FeSi2)、MgSi2、NiSi2、BaSi2、CrSi2、CoSi2等のシリサイド系材料を挙げることもできる。特に、光吸収層を構成する材料として、アルミニウム又はその合金、あるいは、β−FeSi2や、ゲルマニウム、テルルを含む半導体材料を用いることで、可視光域で高コントラスト(高消光比)を得ることができる。尚、可視光以外の波長帯域、例えば赤外域に偏光特性を持たせるためには、光吸収層を構成する材料として、銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)等を用いることが好ましい。これらの金属の共鳴波長が赤外域近辺にあるからである。
【0035】
反射層形成層、光吸収層形成層は、各種化学的気相成長法(CVD法)、塗布法、スパッタリング法や真空蒸着法を含む各種物理的気相成長法(PVD法)、ゾル−ゲル法、メッキ法、MOCVD法、MBE法等の公知の方法に基づき形成することができる。また、反射層形成層、光吸収層形成層のパターニング法として、リソグラフィ技術とエッチング技術との組合せ(例えば、四フッ化炭素ガス、六フッ化硫黄ガス、トリフルオロメタンガス、二フッ化キセノンガス等を用いた異方性ドライエッチング技術や、物理的エッチング技術)、所謂リフトオフ技術を挙げることができる。また、リソグラフィ技術として、フォトリソグラフィ技術(高圧水銀灯のg線、i線、KrFエキシマレーザ、ArFエキシマレーザ、EUV等を光源として用いたリソグラフィ技術、及び、これらの液浸リソグラフィ技術、電子線リソグラフィ技術、X線リソグラフィ)を挙げることができる。あるいは又、フェムト秒レーザ等の極短時間パルスレーザによる微細加工技術や、ナノインプリント法に基づき、反射層や光吸収層を形成することもできる。
【0036】
絶縁層(絶縁層形成層)や層間絶縁層を構成する材料として、入射光に対して透明であり、光吸収特性を有していない絶縁材料、具体的には、SiO2、NSG(ノンドープ・シリケート・ガラス)、BPSG(ホウ素・リン・シリケート・ガラス)、PSG、BSG、PbSG、AsSG、SbSG、SOG(スピンオングラス)等のSiOX系材料(シリコン系酸化膜を構成する材料)、SiN、SiON、SiOC、SiOF、SiCN、低誘電率絶縁材料(例えば、フルオロカーボン、シクロパーフルオロカーボンポリマー、ベンゾシクロブテン、環状フッ素樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、アモルファステトラフルオロエチレン、ポリアリールエーテル、フッ化アリールエーテル、フッ化ポリイミド、有機SOG、パリレン、フッ化フラーレン、アモルファスカーボン)、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、Silk(The Dow Chemical Co. の商標であり、塗布型低誘電率層間絶縁膜材料)、Flare(Honeywell Electronic Materials Co. の商標であり、ポリアリルエーテル(PAE)系材料)を挙げることができ、単独、あるいは、適宜、組み合わせて使用することができる。絶縁層形成層は、各種CVD法、塗布法、スパッタリング法や真空蒸着法を含む各種PVD法、スクリーン印刷法といった各種印刷法、ゾル−ゲル法等の公知の方法に基づき形成することができる。絶縁層は、光吸収層の下地層として機能すると共に、光吸収層で反射された偏光光と、光吸収層を透過し、反射層で反射された偏光光の位相を調整し、干渉効果により反射率を低減する目的で形成される。従って、絶縁層は、1往復での位相が半波長分ずれるような厚さとすることが望ましい。但し、光吸収層は、光吸収効果を有するが故に、反射された光が吸収される。従って、絶縁層の厚さが、上述のように最適化されていなくても、消光比の向上を実現することができる。それ故、実用上、所望の偏光特性と実際の作製工程との兼ね合い基づき絶縁層の厚さを決定すればよく、例えば、1×10-9m乃至1×10-7m、より好ましくは、1×10-8m乃至8×10-8mを例示することができる。また、絶縁層の屈折率は、1.0より大きく、限定するものではないが、2.5以下とすることが好ましい。
【0037】
カラーフィルタ層として、赤色、緑色、青色、シアン色、マゼンダ色、黄色等の特定波長を透過させるフィルタ層を挙げることができる。カラーフィルタ層を、顔料や染料等の有機化合物を用いた有機材料系のカラーフィルタ層から構成するだけでなく、フォトニック結晶や、プラズモンを応用した波長選択素子(導体薄膜に格子状の穴構造を設けた導体格子構造を有するカラーフィルタ層。例えば、特開2008−177191参照)、アモルファスシリコン等の無機材料から成る薄膜から構成することもできる。
【0038】
基体として、光電変換素子が形成されたシリコン半導体基板や、光電変換素子、オンチップレンズ等が形成されたシリコン半導体基板を挙げることができる。
【0039】
本発明の固体撮像装置や撮像機器においては、1画素は複数の副画素から構成されている。そして、各副画素は1つの固体撮像素子を備えている。画素と副画素の関係については後述する。
【0040】
以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む本発明の固体撮像素子における偏光素子、以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む本発明の固体撮像装置における偏光素子、以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む本発明の撮像機器における偏光素子、あるいは、上記の好ましい構成を含む本発明の偏光素子の製造方法によって得られる偏光素子(以下、これらを総称して、『本発明における偏光素子』と呼ぶ場合がある)にあっては、光吸収層から光が入射する。そして、偏光素子は、光の透過、反射、干渉、光学異方性による偏光波の選択的光吸収の4つの作用を利用することで、第1方向に平行な電界成分を有する偏光波(TE波/S波及びTM波/P波のいずれか一方)を減衰させると共に、第2の方向に平行な電界成分を有する偏光波(TE波/S波及びTM波/P波のいずれか他方)を透過させる。即ち、一方の偏光波(例えば、TE波)は、形状異方性を有する光吸収層の断片の光学異方性による偏光波の選択的光吸収作用によって減衰される。ストライプ状の反射層はワイヤグリッド型偏光子として機能し、光吸収層及び絶縁層を透過した一方の偏光波(例えば、TE波)を反射する。このとき、光吸収層を透過し、反射層で反射された一方の偏光波(例えば、TE波)の位相が半波長分ずれるように絶縁層を構成すれば、反射層で反射された一方の偏光波(例えば、TE波)は、光吸収層で反射された一方の偏光波(例えば、TE波)との干渉により打ち消し合って減衰される。以上のようにして、一方の偏光波(例えば、TE波)を選択的に減衰させることができる。但し、上述したように、絶縁層の厚さが最適化されていなくても、コントラストの向上を実現することができる。それ故、上述したように、実用上、所望の偏光特性と実際の作製工程との兼ね合い基づき、絶縁層の厚さを決定すればよい。
【0041】
前述したとおり、本発明における偏光素子に(具体的には、少なくとも偏光素子の側面に、即ち、偏光素子の側面に、又は、偏光素子の側面及び頂面に)保護膜を形成してもよい。保護膜の厚さは、偏光特性に影響を与えない範囲の厚さとすればよい。但し、光吸収層を構成する断片の光学的特性は周囲の屈折率によっても影響を受けるため、保護膜の形成により偏光特性の変化が生じる場合がある。また、入射光に対する反射率は保護膜の光学厚さ(屈折率×保護膜の膜厚)によっても変化するので、保護膜の材料と厚さは、これらを考慮して決定すればよく、厚さとして、15nm以下を例示することができ、あるいは又は、隣接する偏光素子の間のスペース(偏光素子と偏光素子との間に位置する基体の部分)の長さ(距離)の1/4以下を例示することができる。保護膜を構成する材料として、屈折率が2以下、消衰係数が零に近い材料が望ましく、TEOS−SiO2を含むSiO2、SiON、SiN、SiC、SiOC、SiCN等の絶縁材料や、酸化アルミニウム(AlOX)、酸化ハフニウム(HfOx)、酸化ジルコニウム(ZrOx)、酸化タンタル(TaOx)等の金属酸化物を挙げることができる。あるいは又、パーフルオロデシルトリクロロシランやオクタデシルトリクロロシランを挙げることができる。保護膜を設けることで、偏光素子の耐湿性の向上等、信頼性を向上させることができる。保護膜は、各種CVD法、塗布法、スパッタリング法や真空蒸着法を含む各種PVD法、ゾル−ゲル法等の公知のプロセスによって形成することができるが、所謂単原子成長法(ALD法、Atomic Layer Doposition 法)を採用することが、より好ましい。ALD法を採用することで、薄い保護膜をコンフォーマルに偏光素子上に形成することができる。保護膜は、偏光素子の全面に形成してもよいが、偏光素子の側面にのみ形成し、偏光素子と偏光素子との間に位置する下地(基体)の上には形成しないことが一層好ましい。そして、このように、偏光素子を構成する金属材料等の露出した部分である側面を覆うように保護膜を形成することで、大気中の水分や有機物を遮断することができ、偏光素子を構成する金属材料等の腐食や異常析出といった問題の発生を確実に抑制することができる。そして、固体撮像素子の長期信頼性の向上を図ることが可能となり、より高い信頼性を有する偏光素子をオンチップで備える固体撮像素子の提供が可能となる。
【0042】
本発明において光電変換素子として、CCD素子、CMOSイメージセンサー、CIS(Contact Image Sensor)、CMD(Charge Modulation Device)型の信号増幅型イメージセンサーを挙げることができる。また、固体撮像素子として、表面照射型の固体撮像素子あるいは裏面照射型の固体撮像素子を挙げることができる。以下、本発明の適用事例に当たる単眼視差立体カメラの構成について説明する。
【0043】
ところで、従来、共通の被写体を左右に配置した2台のビデオカメラによって同時に撮像し、得られた2種類の画像(右眼用画像及び左眼用画像)を同時に出力することによって立体画像を表示するシステムが提案されている。しかしながら、このような2台のビデオカメラを用いた場合、装置が大型化してしまい、実用的ではない。また、2台のビデオカメラの間の基線長(ベースライン)、即ち、立体カメラとしての両眼間距離は、レンズのズーム比に拘わらず、人間の両眼の距離に相当する65mm程度とされることが多い。そして、このような場合、ズームアップされた画像においては両眼視差が大きくなってしまい、観察者の視覚系に日常と異なる情報処理を強制することになり、視覚疲労の原因となる。また、移動する被写体を2台のビデオカメラで撮像することは、2台のビデオカメラの精密な同期制御を必要とし、非常に困難であるし、輻輳角の正確な制御もまた、非常に困難である。
【0044】
立体撮影を行うためのレンズ系の調整を容易にするために、互いに直交関係となるように偏光させる偏光フィルタを組み合わせることによって、光学系を共通化させる立体撮影装置が提案されている(例えば、特公平6−054991号公報参照)。また、2つのレンズと1つの撮像手段から構成された撮像機器で立体撮影を行う方式が、前述した特開2004−309868に開示されている。
【0045】
ところで、特公平6−054991号に開示された技術にあっては、2つの偏光フィルタの出力を重ねて光路を一系統とすることによって、レンズ系を共通化させている。しかしながら、後段で右眼用画像及び左眼用画像を抽出するために更に偏光フィルタを設け、光路自体を再度分けて別々の偏光フィルタに入光させなければならず、レンズ系において光の損失が発生し、また、装置の小型化が困難であるなどの問題がある。特開2004−309868に開示された技術にあっては、レンズ及び偏光フィルタの組合せを2組、必要とし、装置の複雑化、大型化が免れない。
【0046】
上述したとおり、本発明の撮像機器として、具体的には、例えば、デジタルスチルカメラやビデオカメラ、カムコーダを挙げることができるが、本発明の撮像機器を、1台の撮像装置によって被写体を立体画像として撮像し得る撮像装置(以下、『本発明における立体画像撮像装置』と呼ぶ)に適用することができる。
【0047】
本発明における立体画像撮像装置は、
(A)被写体からの光を偏光させる第1偏光手段、
(B)第1偏光手段からの光を集光するレンズ系、並びに、
(C)X方向、及び、X方向と直交するY方向の2次元マトリクス状に固体撮像素子が配列されて成り、光入射側に第2偏光手段を有し、レンズ系によって集光された光を電気信号に変換する撮像素子アレイ、
を具備し、
第1偏光手段は、X方向に沿って配列された第1領域及び第2領域を有し、
第1領域を通過した第1領域通過光の偏光状態と、第2領域を通過した第2領域通過光の偏光状態とは異なり、
第2偏光手段は、Y方向に沿って交互に配置され、X方向に延びる複数の第3領域及び第4領域を有し、
第3領域を通過した第3領域通過光の偏光状態と、第4領域を通過した第4領域通過光の偏光状態とは異なり、
第1領域通過光は第3領域を通過して固体撮像素子に到達し、第2領域通過光は第4領域を通過して固体撮像素子に到達し、以て、第1領域の重心点と第2領域の重心点との間の距離を両眼視差の基線長さとした立体画像を得るための画像を撮像する。
【0048】
ここで、第2偏光手段に、本発明における偏光素子、本発明の固体撮像素子、本発明の固体撮像装置を適用すればよい。
【0049】
このように、本発明における立体画像撮像装置は、簡素な構成、構造を有し、1台の撮像装置によって被写体を立体画像として撮像し得る撮像装置であり、1組の第1偏光手段及び第2偏光手段並びに1つのレンズ系から撮像装置が構成されているので、単眼で、簡素な構成、構造を有する、小型の撮像装置を提供することができる。また、レンズ及び偏光フィルタの組合せを2組、必要としないので、ズーム、絞り部、フォーカス、輻輳角等にズレや差異が生じることもない。しかも、両眼視差の基線長さが比較的短いので、自然な立体感を得ることができる。更には、第1偏光手段の脱着によって、容易に、2次元画像及び3次元画像を得ることができる。
【0050】
尚、本発明における立体画像撮像装置を用いた撮像方法にあっては、
第3領域を通過して固体撮像素子に到達した第1領域通過光によって、右眼用画像を得るための電気信号を固体撮像素子において生成し、
第4領域を通過して固体撮像素子に到達した第2領域通過光によって、左眼用画像を得るための電気信号を固体撮像素子において生成し、
これらの電気信号を出力する。尚、これらの電気信号を、同時に出力してもよいし、時系列に交互に出力してもよい。
【0051】
本発明における立体画像撮像装置において、第1偏光手段はレンズ系の絞り部近傍に配置されている形態とすることが好ましい。あるいは又、レンズ系に入射した光が、一旦、平行光とされ、最終的に固体撮像素子上に集光(結像)されるとき、平行光の状態にあるレンズ系の部分に第1偏光手段を配置する形態とすることが好ましい。これらの形態にあっては、一般に、レンズ系の光学系を新たに設計し直す必要はなく、既存のレンズ系に第1偏光手段を、固定して、あるいは又、脱着自在に取り付けられるように、機械的(物理的)な設計変更を施せばよい。尚、レンズ系に第1偏光手段を脱着自在に取り付けるには、例えば、第1偏光手段をレンズの絞り羽根に類似した構成、構造とし、レンズ系内に配置すればよい。あるいは又、レンズ系において、第1偏光手段と開口部とが併設された部材を、レンズ系の光軸と平行な回動軸を中心として回動可能にこの回動軸に取り付け、係る部材を回動軸を中心として回動させることで、レンズ系を通過する光線が開口部を通過し、あるいは、第1偏光手段を通過する構成、構造を挙げることができる。あるいは又、レンズ系において、第1偏光手段と開口部とが併設された部材を、例えばレンズ系の光軸と直交する方向に滑動自在にレンズ系に取り付け、係る部材を滑動させることで、レンズ系を通過する光線が開口部を通過し、あるいは、第1偏光手段を通過する構成、構造を挙げることができる。
【0052】
上記の好ましい形態を含む本発明における立体画像撮像装置にあっては、第1偏光手段において、第1領域と第2領域との間に中央領域が設けられており、中央領域を通過した中央領域通過光の偏光状態は、中央領域入射前と変化しない形態とすることができる。即ち、中央領域は、偏光に関して素通し状態とすることができる。第1偏光手段の中央領域にあっては、光強度が強いが、視差量は少ない。従って、このような形態とすることで、撮像素子アレイが受ける光強度を大きくしながら、十分な長さの両眼視差の基線長さを確保することが可能となる。第1偏光手段の外形形状を円形としたとき、中央領域を円形とし、第1領域及び第2領域を、中央領域を囲む中心角180度の扇形とすることができるし、中央領域を正方形や菱形とし、第1領域及び第2領域を、中央領域を囲む中心角180度の扇形に類似した形状とすることができる。あるいは又、第1領域、中央領域及び第2領域を、Y方向に沿って延びる帯状の形状とすることができる。
【0053】
以上に説明した各種の好ましい形態を含む本発明における立体画像撮像装置において、第1領域及び第2領域は偏光子から成り、第1領域通過光の電場の向きと第2領域通過光の電場の向きとは直交している構成とすることができる。そして、このような構成を含む本発明における立体画像撮像装置において、第1領域通過光の電場の向きはX方向と平行である構成とすることができるし、あるいは又、第1領域通過光の電場の向きはX方向と45度の角度を成す構成とすることができる。更には、これらの構成の任意の組合せを含む本発明における立体画像撮像装置において、第1領域通過光の電場の向きと第3領域通過光の電場の向きとは平行であり、第2領域通過光の電場の向きと第4領域通過光の電場の向きとは平行である構成とすることができる。更には、これらの構成の任意の組合せを含む本発明における立体画像撮像装置において、偏光子の消光比は、3以上、好ましくは10以上であることが望ましい。
【0054】
ここで、『偏光子』とは、自然光(非偏光)や円偏光から直線偏光を作り出すものを指し、第1領域を構成する偏光子、それ自体は、周知の構成、構造の偏光子(偏光板)とすればよい。また、例えば、第1領域通過光及び第2領域通過光の一方の偏光成分を主としてS波(TE波)とし、第1領域通過光及び第2領域通過光の他方の偏光成分を主としてP波(TM波)とすればよい。第1領域通過光及び第2領域通過光の偏光状態は、直線偏光であってもよいし、円偏光(但し、回転方向が相互に逆の関係にある)であってもよい。一般に、振動方向が或る特定の向きだけの横波を偏光した波と呼び、この振動方向を偏光方向あるいは偏光軸と呼ぶ。光の電場の向きは偏光方向と一致する。消光比とは、第1領域通過光の電場の向きがX方向と平行である構成とする場合、第1領域にあっては、第1領域を通過する光に含まれる、電場の向きがX方向である光の成分と電場の向きがY方向である光の成分の割合であり、第2領域にあっては、第2領域を通過する光に含まれる、電場の向きがY方向である光の成分と電場の向きがX方向である光の成分の割合である。また、第1領域通過光の電場の向きがX方向と45度の角度を成す構成とする場合、第1領域にあっては、第1領域を通過する光に含まれる、電場の向きがX方向と45度の角度を成す光の成分と135度の角度を成す光の成分の割合であり、第2領域にあっては、第2領域を通過する光に含まれる、電場の向きがX方向と135度の角度を成す光の成分と45度の角度を成す光の成分の割合である。あるいは又、例えば、第1領域通過光の偏光成分が主としてP波であり、第2領域通過光の偏光成分が主としてS波である場合、第1領域にあっては、第1領域通過光に含まれるP偏光成分とS偏光成分の割合であり、第2領域にあっては、第2領域通過光に含まれるS偏光成分とP偏光成分の割合である。
【0055】
以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本発明における立体画像撮像装置において、固体撮像素子は、光電変換素子、並びに、その上あるいは上方に、カラーフィルタ、オンチップレンズ、及び、本発明における偏光素子が積層されて成り、本発明における偏光素子が第3領域又は第4領域を構成する形態とすることができる。あるいは又、固体撮像素子は、光電変換素子、並びに、その上あるいは上方に、本発明における偏光素子、カラーフィルタ、及び、オンチップレンズが積層されて成り、本発明における偏光素子が第3領域又は第4領域を構成する形態とすることができる。あるいは又、固体撮像素子は、光電変換素子、並びに、その上あるいは上方に、オンチップレンズ、カラーフィルタ、及び、本発明における偏光素子が積層されて成り、本発明における偏光素子が第3領域又は第4領域を構成する形態とすることができる。但し、オンチップレンズ、カラーフィルタ、及び、本発明における偏光素子の積層順は、適宜、変更することができる。そして、これらの形態にあっては、第1領域通過光の電場の向きがX方向と平行である構成とする場合、本発明における偏光素子を構成する反射層の延びる方向(第1の方向)は、X方向あるいはY方向と平行である形態とすることができる。具体的には、第3領域を構成する本発明における偏光素子にあっては、反射層の延びる方向(第1の方向)はY方向と平行であり、第4領域を構成する本発明における偏光素子にあっては、反射層の延びる方向(第1の方向)はX方向と平行である。あるいは又、これらの形態にあっては、第1領域通過光の電場の向きがX方向と45度の角度を成す構成とする場合、本発明における偏光素子を構成する反射層の延びる方向(第1の方向)は、X方向あるいはY方向と45度を成す形態とすることができる。具体的には、第3領域を構成する本発明における偏光素子にあっては、反射層の延びる方向(第1の方向)はX方向と135度の角度を成し、第4領域を構成する本発明における偏光素子にあっては、反射層の延びる方向(第1の方向)はX方向と45度の角度を成す。
【0056】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本発明における立体画像撮像装置において、所謂視野闘争の発生を回避するために、第1偏光手段の光入射側には、四分の一波長板(λ/4波長板)が配置されていることが望ましい。四分の一波長板を、常時、配置してもよいし、所望に応じて配置してもよい。具体的には、四分の一波長板を、レンズ系に設けられたフィルタ取付部に着脱自在に取り付ければよい。ここで、視野闘争とは、例えば、P波成分は反射するがS波成分は吸収する水面や窓等の被写体を撮像するとき、P波成分から得られた画像とS波成分から得られた画像を両眼へ提示したとき、融像が起こらず、一方の画像だけが優越して交互に見えたり、重なった領域で互いに抑制しあったりする現象を指す。四分の一波長板を通過した光は偏光方向が揃った状態となり、このような光が第1領域及び第3領域を通過して撮像素子アレイに到達して得られた画像と、第2領域及び第4領域を通過して撮像素子アレイに到達して得られた画像との間であって、P波成分は反射するがS波成分は吸収する被写体の部分の画像の間に、大きな相違が生じなくなり、視野闘争の発生を回避することができる。尚、四分の一波長板速軸は、第1領域通過光の電場の向きと45度の角度あるいは45度±10度の角度を成すことが好ましい。
【0057】
あるいは又、本発明における立体画像撮像装置において、所謂視野闘争の発生を回避するために、
第1偏光手段の光入射側には、α度の偏光軸を有する偏光板が配置されており、
第1領域は第1波長板から成り、第2領域は第2波長板から成り、
第1領域通過光の電場の向きと第2領域通過光の電場の向きとは直交している構成とすることができる。そして、この場合、具体的には、
αの値は45度であり、
第1波長板は半波長板(+λ/2波長板)から成り、
第2波長板は、第1波長板を構成する半波長板とは位相差の異なる半波長板(−λ/2波長板)から成る構成とすることができる。尚、この場合、α度の偏光軸を有する偏光板はレンズ系に固定しておく。
【0058】
以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本発明における立体画像撮像装置において、撮像素子アレイはベイヤ配列を有し、1画素は4つの固体撮像素子から構成されており、1画素に対して、1つの第3領域及び/又は第4領域が配されている形態とすることができる。また、このような形態を含む以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本発明における立体画像撮像装置において、Y方向に沿ってN個の画素(但し、例えば、N=2nであり、nは1乃至5の自然数)に対して1つの第3領域及び1つの第4領域を配する形態とすることもできる。但し、撮像素子アレイの配列は、ベイヤ配列に限定されず、その他、インターライン配列、GストライプRB市松配列、GストライプRB完全市松配列、市松補色配列、ストライプ配列、斜めストライプ配列、原色色差配列、フィールド色差順次配列、フレーム色差順次配列、MOS型配列、改良MOS型配列、フレームインターリーブ配列、フィールドインターリーブ配列を挙げることができる。
【0059】
また、以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本発明における立体画像撮像装置を用いた撮像方法においては、Y方向に沿ってN個の画素(但し、例えば、N=2nであり、nは1乃至5の自然数)に対して1つの第3領域及び1つの第4領域を配する構成とすることができ、この場合、第3領域を通過した第1領域通過光によって得られる電気信号及び第4領域を通過した第2領域通過光によって得られる電気信号から生成されたデプスマップ(奥行き情報)、並びに、撮像素子アレイを構成する全固体撮像素子からの電気信号に基づき、右眼用画像を得るための画像データ(右眼用画像データ)、及び、左眼用画像を得るための画像データ(左眼用画像データ)を得る構成とすることができる。
【0060】
あるいは又、撮像素子アレイの配列をベイヤ配列としたとき、赤色を受光する赤色固体撮像素子及び青色を受光する青色固体撮像素子には第3領域及び第4領域を配置せず、緑色を受光する2つの緑色固体撮像素子の一方に第3領域を配し、他方に第4領域を配してもよい。あるいは又、撮像素子アレイの配列をベイヤ配列としたとき、赤色を受光する1つ赤色固体撮像素子、青色を受光する1つの青色固体撮像素子、及び、緑色を受光する2つの緑色固体撮像素子の内のX方向に隣接する2つの固体撮像素子(例えば、赤色を受光する赤色固体撮像素子及び緑色を受光する一方の緑色固体撮像素子)には第3領域あるいは第4領域を配し、残りの2つの固体撮像素子(例えば、青色を受光する青色固体撮像素子及び緑色を受光する他方の緑色固体撮像素子)には第4領域あるいは第3領域を配してもよい。あるいは又、撮像素子アレイの配列をベイヤ配列としたとき、赤色を受光する1つ赤色固体撮像素子、青色を受光する1つの青色固体撮像素子、及び、緑色を受光する2つの緑色固体撮像素子の内のいずれか1つの固体撮像素子(例えば、赤色を受光する1つ赤色固体撮像素子あるいは青色を受光する1つの青色固体撮像素子)には第3領域あるいは第4領域を配し、この固体撮像素子にY方向に隣接する固体撮像素子(例えば、緑色固体撮像素子)には第4領域あるいは第3領域を配してもよい。尚、これらの場合にも、Y方向に沿ってN個の画素に対して1つの第3領域及び1つの第4領域を配する構成とすることができるし、X方向に沿ってM個の画素に対して1つの第3領域あるいは1つの第4領域を配する構成とすることができる。
【0061】
以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本発明における立体画像撮像装置あるいは撮像方法において、X方向を水平方向、Y方向を垂直方向とすることができる。X方向に沿った第3領域及び第4領域の単位長さは、例えば、固体撮像素子のX方向に沿った長さと等しくすればよく(第1領域通過光の電場の向きがX方向と平行である場合)、あるいは又、1固体撮像素子分の長さと等しくすればよい(第1領域通過光の電場の向きがX方向と45度の角度を成す場合)。レンズ系は、単焦点レンズとしてもよいし、所謂ズームレンズとしてもよく、レンズやレンズ系の構成、構造は、レンズ系に要求される仕様に基づき決定すればよい。
【0062】
第1領域の重心点とは、第1領域の外形形状に基づき求められた重心点を指し、第2領域の重心点とは、第2領域の外形形状に基づき求められた重心点を指す。第1偏光手段の外形形状を半径rの円形とし、第1領域及び第2領域を、それぞれ、第1偏光手段の半分を占める半月状としたとき、第1領域の重心点と第2領域の重心点との間の距離は、簡単な計算から、[(8r)/(3π)]で求めることができる。
【実施例1】
【0063】
実施例1は、本発明の固体撮像素子、本発明の固体撮像装置、本発明の撮像機器、及び、偏光素子の製造方法に関し、より具体的には、本発明における固体撮像素子−Aに関する。実施例1の固体撮像装置を構成する固体撮像素子の模式的な一部断面図を図1に示し、固体撮像素子の模式的な部分的平面図を図2に示す。更には、偏光素子の模式的な一部端面図を図32の(A)及び(B)に示す。尚、図1においては2つの固体撮像素子を図示し、図2においては4つの固体撮像素子を図示している。また、図1は、図2の矢印A−Aに沿った模式的な一部端面図であり、偏光素子におけるストライプ状の反射層の延びる方向に沿った固体撮像素子の模式的な一部断面図と、ストライプ状の反射層の繰り返し方向(ストライプ状の反射層の延びる方向と直交する方向)に沿った固体撮像素子の模式的な一部断面図とを示している。更には、図2においては、固体撮像素子と固体撮像素子との間の境界を点線で示した。また、図32の(A)及び(B)は、図2の矢印A−A及び矢印B−Bに沿った模式的な一部端面図である。
【0064】
実施例1の固体撮像素子41は、光電変換素子(受光素子)61、及び、光電変換素子61の光入射側に設けられた偏光素子70を備えている。また、実施例1の固体撮像装置は、実施例1の固体撮像素子41を複数、有する固体撮像装置であり、偏光方位が異なる2種類以上の偏光素子70を備えている。尚、隣接する固体撮像素子41A,41Bにおいては、偏光素子70A,70Bにおける透過軸が直交している。更には、実施例1の撮像機器は、実施例1の固体撮像装置を備えており、例えば、デジタルスチルカメラやビデオカメラ、カムコーダが構成されている。そして、実施例1にあっては、光電変換素子61の上方にオンチップレンズ64が配置されており、オンチップレンズ64の上方に偏光素子70が設けられている。尚、本発明の撮像機器の詳細は、実施例5以降において説明する。
【0065】
具体的には、実施例1の固体撮像素子41は、例えば、シリコン半導体基板60に設けられた光電変換素子61、並びに、その上に、第1平坦化膜62、波長選択層(カラーフィルタ層63)、オンチップレンズ64、平坦化層(第2平坦化膜65と呼ぶ)、層間絶縁層(無機絶縁下地層66と呼ぶ)、及び、偏光素子70が積層されて成る。第1平坦化膜62及び層間絶縁層(無機絶縁下地層66)はSiO2から成り、平坦化層(第2平坦化膜65)はアクリル系樹脂から成る。光電変換素子61は、CCD素子やCMOSイメージセンサー等から構成されている。参照番号67は、光電変換素子61の近傍に設けられた遮光部である。
【0066】
実施例1にあっては、固体撮像素子の配置をベイヤ配置としている。即ち、1つの画素は、赤色を受光する1つ副画素、青色を受光する1つの副画素、及び、緑色を受光する2つの副画素から構成されており、各副画素は固体撮像素子を備えている。画素は、行方向及び列方向に2次元マトリクス状に配列されている。1つの画素内における全ての偏光素子の第1の方向は同じ方向である。更には、行方向に配列された画素にあっては、偏光素子の第1の方向は全て同じ方向である。一方、列方向に沿って、偏光素子の第1の方向が行方向と平行である画素と、偏光素子の第1の方向が列方向と平行である画素とが、交互に配置されている。
【0067】
そして、偏光素子70は、光電変換素子側から、ストライプ状の反射層71、反射層71上に形成された絶縁層72、及び、絶縁層72上に離間された状態で形成された複数の断片(セグメント)73’から成る光吸収層73の積層構造を有する。ここで、反射層71は、厚さ100nmのアルミニウム(Al)から構成され、絶縁層72は、厚さ25nmのSiO2から構成され、光吸収層73は、厚さ50nmのタングステン(W)から構成されている。そして、ストライプ状の反射層71の延びる方向(第1の方向)は、消光させるべき偏光方位と一致しており、ストライプ状の反射層71の繰り返し方向(第2の方向であり、第1の方向と直交する)は、透過させるべき偏光方位と一致している。即ち、反射層71は、ワイヤグリッド型偏光子としての機能を有し、偏光素子70に入射した光の内、反射層71の延びる方向(第1の方向)と平行な方向に電界成分を有する偏光波を減衰させ、反射層71の延びる方向と直交する方向(第2の方向)に電界成分を有する偏光波を透過させる。第1の方向は偏光素子の光吸収軸であり、第2の方向は偏光素子の光透過軸である。
【0068】
また、実施例1にあっては、詳細は後述するが、第1の方向における反射層71の長さ(Lrf)は、第1の方向に沿った固体撮像素子41の長さ(Lid)未満である。
【0069】
ところで、隣接する固体撮像素子41A,41Bにおいては、偏光素子70A,70Bにおける透過軸が直交している。従って、隣接する固体撮像素子41への偏光光の漏れ込み(偏光クロストーク)が発生すると、本来、消光しているはずの偏光成分が隣接する固体撮像素子41から混入し、最終的な消光比が低下してしまう。即ち、図1中のθin-maxなる入射角度を有する入射光が入射する偏光素子70Aの光透過軸(第2の方向)は紙面垂直方向である。一方、隣接する偏光素子70Bの光透過軸(第2の方向)は紙面平行方向である。従って、偏光素子70Aを備えた固体撮像素子41Aからの光が偏光素子70Bを備えた固体撮像素子41Bに入射すると、固体撮像素子41Bにおける消光比が著しく低下するといった問題が発生する。
【0070】
このような偏光クロストークの発生を防ぐためには、偏光素子70とオンチップレンズ64との間に深さ(厚さ)方向の距離的制限を設け、しかも、偏光素子70Aと偏光素子70Bとの境界部分に、偏光素子としての機能を有しない無効領域を設ければよい。具体的には、図1に示すように、偏光素子70とオンチップレンズ64との間の距離をD、オンチップレンズ64のサグ量をS、偏光素子70とオンチップレンズ64との間に存在する媒質[具体的には、層間絶縁層(無機絶縁下地層)66、及び、平坦化層(第2平坦化膜)65]の屈折率(この場合、平均屈折率で近似)をn1、隣接する偏光素子の間に存在する隙間の幅を2×R、入射光のNAを含めた、偏光素子への入射光の入射角の最大値をθin-maxとしたとき、
R≧(D+S)×tan[sin-1{sin(θin-max)/n1}] (1)
を満足すればよい。
【0071】
また、周期的に形成された光吸収層の断片73’からの回折光の発生を防ぎ、隣接する固体撮像素子41への不要な光の漏れ込みを確実に防ぐためには、図2に示すように、或る光吸収層の断片(便宜上、『断片−a』と呼ぶ)に対して第2の方向に沿って隣接する光吸収層の断片(便宜上、『断片−b』と呼ぶ)の第1の方向に沿って隣りに位置する光吸収層の断片(便宜上、『断片−c』と呼ぶ)を想定したとき、断片−aと断片−cとの間で回折現象が発生しなければよい。これを満足すれば、断片−aと断片−bとの間でも回折現象は発生しない。従って、第1の方向における光吸収層の断片73’の形成ピッチをPab-1、第2の方向における光吸収層の断片73’の形成ピッチをPab-2、偏光素子70に入射する光の最短波長をλmin、偏光素子に入射する光が通過する媒質の屈折率をn0、偏光素子への光の入射角の最大値をθin-maxとしたとき、
(Pab-12+Pab-22)1/2≦[(λmin/n0)×cos(θin-max)] (2)
を満足すればよい。
【0072】
更には、消光特性の向上といった観点から、第1の方向における光吸収層の断片73’の形成ピッチをPab-1、長さをLabとしたとき、
0.5≦(Lab/Pab-1)<1 (3)
を満足している。
【0073】
第1の方向における反射層71の長さLrfが消光比に与える影響を、FDTD(Finite-difference time-domain)法に基づくシミュレーションを用いて解析した。
【0074】
尚、反射層71の長さLrfの依存に注目するために、絶縁層72及び光吸収層73を設けていない構造としており、反射層71はアルミニウムから成る。反射層71の下地は、SiO2層から成る。そして、反射層71の厚さを100nm一定とし、第2の方向における反射層71の形成ピッチを150nm、第2の方向に沿った反射層71の幅を50nm、第1の方向に沿った隣接する偏光素子の間に存在する隙間の幅2×Rの値を150nm、一定としている。そして、第1の方向における反射層71の長さLrfを、1μm、2μm、4μm、無限大とした。
【0075】
シミュレーション結果を図4に示す。尚、図4において、「A」は第1の方向における反射層71の長さLrfを1μmとしたときの結果であり、「B」は第1の方向における反射層71の長さLrfを2μmとしたときの結果であり、「C」は第1の方向における反射層71の長さLrfを4μmとしたときの結果であり、「A」は第1の方向における反射層71の長さLrfを無限大としたときの結果である。
【0076】
図4より、消光比は、反射層71の長さLrfに対する依存性を有し、反射層71の長さLrfを無限大とした場合と、反射層71の長さLrfを4μmとした場合とで、消光比に大きな差異が生じている。従って、図34に固体撮像素子の模式的な部分的平面図を示すように、第1の方向に沿って隣接する固体撮像素子間で反射層71を離間させないと、第1の方向に沿った反射層71の長さが非常に長くなり、第2の方向に沿って隣接する固体撮像素子41A,41B間における消光比に、大きな差異が生じてしまう。それ故、固体撮像素子の模式的な部分的平面図を図2に示すように、第1の方向における反射層71の長さ(Lrf)を、第1の方向に沿った固体撮像素子41の長さ(Lid)未満、具体的には、例えば、
Lrf=Lid−2×R
とする。これによって、第2の方向に沿って隣接する固体撮像素子41A,41B間における消光比に、差異が生じ難くなる。
【0077】
ところで、図4に示したように、第1の方向における反射層71の長さ(Lrf)が短くなると、消光比が低下する。これは、第1の方向における反射層71の長さ(Lrf)だけでなく、反射層71と反射層71との間の分断境界(無効領域)における無偏光成分の混入も大きく寄与しているためであると考えられる。
【0078】
図5に、第1の方向における反射層71の長さLrfを2μmとしたときの、第1の方向及び第2の方向に沿って反射層71を透過する光の強度をシミュレーションした結果を示す。尚、入射光の波長を550nmとした。図5において、「A」は光吸収軸(第1の方向)に沿った光強度(単位:任意)であり、「B」は光透過軸(第2の方向)に沿った光強度(単位:任意)である。このシミュレーション結果から、反射層71の第1の方向に沿った両端部では、反射層71が存在していない影響で、TE偏光成分、TM偏光成分の両方が透過し、無偏光の透過に近い状態となっており、無偏光成分の混入が大きく発生していることが判る。このように画素内において位置によって消光状態が異なっているが、画素内で全て集光(積分)したものが、1つの画素における偏光特性(消光比)を与えると云うことである。
【0079】
このような反射層71の第1の方向に沿った両端部における消光比の低下を改善するためには、固体撮像素子の模式的な一部断面図を図3に示すように、隣接するオンチップレンズ64とオンチップレンズ64との間に位置する領域[より具体的には、オンチップレンズ64とオンチップレンズ64との間に位置する層間絶縁層(無機絶縁下地層66)]に、例えば、タングステン(W)等から成る遮光層(所謂、ブラックマトリクス層)68を設ければよい。尚、遮光層68は、例えば金属材料から構成される反射層71と遮光層68中の自由電子の相互干渉を避けるために、絶縁材料である層間絶縁層66の中に配置させることが好ましい。
【0080】
遮光層68の厚さを20nm、幅(=2×R)を200nmとし、入射光の波長を550nmとして、透過光強度分布をシミュレーションした結果を、図6に示す。尚、図6において、「A」は、遮光層68を設けない場合の光吸収軸(第1の方向)に沿った光強度(単位:任意)であり、「B」は、遮光層68を設けない場合の光透過軸(第2の方向)に沿った光強度(単位:任意)である。また、「C」は、遮光層68を設けた場合の光吸収軸(第1の方向)に沿った光強度(単位:任意)であり、「D」は、遮光層68を設けた場合の光透過軸(第2の方向)に沿った光強度(単位:任意)である。反射層71の第1の方向に沿った両端部における消光比の低下が改善されていることが判る。FDTD法に基づくシミュレーションから得られた画素内透過強度を積分して計算した消光比は、遮光層68を設けない場合の5.6から、遮光層68を設けた場合、9.0と、1.5倍程度に改善した。更に、第1の方向における反射層71の長さLrfを1μm、2μm、4μmとし、遮光層68を設けた場合、設けない場合の消光比(波長:550nm)を比較した結果は以下の表1のとおりであった。以上の結果から、固体撮像素子のサイズが小さくなっても、遮光層68を設けることで、消光比が約1.5倍程度、改善することが判る。例えば必要とされる消光比を10以上と仮定したとき、遮光層を設けない場合の固体撮像素子の下限サイズは5μm程度であるが、遮光層を設けることで、3μm程度まで固体撮像素子のサイズを小さくすることが可能となり、同一の画素数であれば固体撮像装置のチップサイズを小さくすることができ、撮像機器自体の小型化が可能となる。
【0081】
[表1] 消光比
Lrf 遮光層有り 遮光層無し
1μm 4.7 3.0
2μm 8.1 5.6
4μm 12.3 7.5
【0082】
ここで具体的な構造寸法における偏光特性の計算結果について説明する。例えば、
λmin=400nm
θin-max=20°
n0=1.0(空気)
としたとき、式(2)の右辺の値は376nmである。一方、
Pab-1=300nm
Pab-2=150nm
とすれば、式(2)の右辺の値は335nmであり、式(2)を満足する。ここで、
Lab-1=150nm
Wab = 50nm
とする。また、
Lid=6μm
R =75nm
とする。第2の方向に沿った光吸収層の断片(セグメント)の数は20であり、第1の方向に沿った光吸収層の断片(セグメント)の数は1つ(1周期)である。更には、反射層は、厚さ100nmのアルミニウム(Al)から構成され、絶縁層は、厚さ25nmのSiO2から構成され、光吸収層は、厚さ50nmのタングステン(W)から構成されている。このような構成の偏光素子のFDTD法に基づくシミュレーションを行い、偏光素子としての特性予測を行った。シミュレーションでは周期境界条件を用いているために、第1の方向の反射層の長さは無限長である。また、第2の方向には反射層が無限の本数、配置された構造としている。シミュレーション結果を図7に示す。尚、図7において、「A」は消光比のデータを示し、「B」は、光透過軸(第2の方向)に沿った偏光方位入射に対する光透過率(単位:任意)であり、「C」は、光吸収軸(第1の方向)に沿った偏光方位入射に対する光透過率(単位:任意)であり、「D」は、光吸収軸(第1の方向)に沿った偏光方位入射に対する光反射率(単位:任意)であり「E」は、光透過軸(第2の方向)に沿った偏光方位入射に対する光反射率(単位:任意)である。
【0083】
シミュレーション結果から、消光比は波長550nmで最良となり、消光比27、第1の方向に沿った波長550nmにおける反射率も約4%が得られた。
【0084】
以下、基体等の模式的な一部端面図である図27の(A)、(B)、図28の(A)、(B)、図29の(A)、(B)、図30の(A)、(B)、図31の(A)、(B)、図32の(A)、(B)を参照して、実施例1の偏光素子の製造方法(一例として、固体撮像素子毎に異なる偏光方位を有する偏光素子の製造方法)を説明する。尚、これらの図においては、層間絶縁層66より下方に形成された各種構成要素の図示を省略している。また、図27の(A)、(B)、図28の(A)、図29の(A)、図30の(A)、図31の(A)、及び、図32の(A)は、図2の矢印A−Aに沿ったと同様の模式的な一部端面図であり、第1の方向に沿った偏光素子70Aに関する模式的な一部端面図(仮想切断面は第1の方向と平行)と、第2の方向に沿った偏光素子70Bに関する模式的な一部端面図(仮想切断面は第2の方向と平行)とを示している。一方、図28の(B)、図29の(B)、図30の(B)、図31の(B)、及び、図32の(B)、並びに、図27の(B)は、図2の矢印B−Bに沿ったと同様の模式的な一部端面図であり、第2の方向に沿った偏光素子70Bに関する模式的な一部端面図(仮想切断面は第2の方向と平行)と、第2の方向に隣接する偏光素子70Aと偏光素子70Aの隙間における模式的な一部端面図(仮想切断面は第1の方向と平行)とを示している。
【0085】
[工程−100]
先ず、基体上に、反射層71を構成すべき反射層形成層71A、絶縁層72を構成すべき絶縁層形成層72A、光吸収層73を構成すべき光吸収層形成層73Aを設ける(図27の(A)参照)。具体的には、層間絶縁層66を基体として、その上に、アルミニウム(Al)から成る反射層形成層71Aを真空蒸着法によって形成し、SiO2から成る絶縁層形成層72AをCVD法によって形成し、更に、スパッタリング法によってタングステン(W)から成る光吸収層形成層73Aを形成する。尚、シリコン半導体基板60には、周知の方法で光電変換素子61を設ければよいし、その上に、第1平坦化膜62、波長選択層(カラーフィルタ層63)、オンチップレンズ64、平坦化層(第2平坦化膜65)、層間絶縁層(無機絶縁下地層66)を周知の方法で形成すればよい。
【0086】
[工程−110]
次いで、光吸収層形成層73Aをパターニングすることで、長さLabの帯状の光吸収層形成層73Aを得る(図27の(B)参照)。具体的には、光吸収層形成層73A上にリソグラフィ技術及びドライエッチング技術に基づき、光吸収層形成層73Aをパターニングすることで、パターニングされた光吸収層形成層73Aを得ることができる。
【0087】
[工程−120]
その後、ストライプ状の光吸収層の繰り返し方向(第2の方向)における形成ピッチが2×Pab-2(=300nm)、第2の方向における幅が(Pab-2−Wab)であるレジスト層91を、リソグラフィ技術に基づき、全面に(具体的には、所定の固体撮像素子領域、あるいは、偏光方位の揃った画素内に)形成する(図28の(A)及び(B)参照)。レジスト層91は、例えば、フォトレジスト材料から成る。尚、露光波長248nmのKrF露光が望ましい。その後、レジスト層91の側壁における厚さがWab(=50nm)であるエッチングマスク層(ハードマスク材料層)92をレジスト層91の側壁に形成する(図29の(A)及び(B)参照)。具体的には、CVD法に基づき、TEOS等から成るエッチングマスク層92を(全面に)コンフォーマルに形成した後、レジスト層91の頂面上等のエッチングマスク層92の部分を、周知のエッチバック方法に基づき除去する。
【0088】
[工程−130]
次いで、露出したレジスト層91を、アッシング技術に基づき除去する(図30の(A)及び(B)参照)。エッチングマスク層92の形成ピッチは150nmであり、第2の方向における幅は50nmである。その後、エッチングマスク層92をエッチング用マスクとして、光吸収層形成層73A、絶縁層形成層72A及び反射層形成層71Aを順次エッチングし、反射層71、絶縁層72及び光吸収層73の積層構造から成る偏光素子70を得た後(図31の(A)及び(B)参照)、エッチングマスク層92を除去する。こうして、図32の(A)及び(B)に示す構造を得ることができる。その後、必要に応じて、SiO2あるいはSiON、SiN等の絶縁材料から成り、厚さ数十nmの保護膜(具体的には、例えば、偏光素子70の側面において、厚さ15nmの保護膜)を、全面にCVD法やALD法に基づきコンフォーマルに形成してもよい。
【0089】
[工程−140]
その後、電極パッド(図示せず)の形成、チップ切り離しのためのダイシング、パッケージといった周知の方法に基づき、固体撮像装置、撮像機器を組み立てればよい。
【0090】
このような実施例1の偏光素子の製造方法にあっては、形成ピッチが2×Pab-2、幅が(Pab-2−Wab)であるレジスト層を形成し、次いで、レジスト層の側壁における厚さがWabであるエッチングマスク層をレジスト層の側壁に形成した後、エッチングマスク層をドライエッチング用マスクとして、光吸収層形成層、絶縁層形成層及び反射層形成層を順次エッチングするといった、スペーサ方式とも呼ばれる方式を採用している。それ故、[工程−120]において、第2の方向における形成ピッチが2×Pab-2であるレジスト層を形成するにも拘わらず、第2の方向に沿った形成ピッチがPab-2、幅がWabの光吸収層や反射層を得ることができるし、幅50nmのエッチングマスク層(ハードマスク材料層)が倒壊する虞もない。尚、スペーサ方式の代わりに、ダブルパターニング方式を採用することもできる。即ち、第2の方向に沿って、例えば、先ず、奇数番目の偏光素子を形成し、次いで、偶数番目の偏光素子を形成してもよい。
【0091】
また、実施例1にあっては、偏光素子の光吸収層を、成膜技術とパターニング技術に基づき形成する。従来の技術のように、形状異方性を有する光吸収層を斜めスパッタ成膜法に基づき形成する必要がない。従って、固体撮像素子毎に異なる偏光方位を有する偏光素子を容易に得ることができる。しかも、光電変換素子の上方にオンチップで一体的に偏光素子が形成されているが故に、固体撮像素子の厚さを薄くすることができる。その結果、隣接する固体撮像素子への偏光光の混入(偏光クロストーク)を最小にできるし、本偏光素子は吸収層を有する吸収型偏光素子であるために反射率が低く、映像に対する迷光、フレア等の影響を軽減することができる。また、固体撮像装置にあっては、偏光方位が異なる2種類以上の偏光素子を備えているので、固体撮像装置に入射光の偏光情報を空間的に偏光分離する偏光分離機能を付与することができる。
【実施例2】
【0092】
実施例2は、実施例1の変形である。ところで、CVD法に比べてADL法は、よりコンフォーマルに偏光素子70の側面における成膜が可能である。それ故、偏光素子の光学特性の低下を防ぐことが可能である。特に、AlOxやHfOxのような金属酸化物から成る保護膜は、偏光素子に対する保護能力が高く、しかも、薄く、コンフォーマルに成膜することが可能であるが故に、光学特性の低下を招かない良質な保護膜として機能し得る。
【0093】
実施例2にあっては、第2の方向に沿った形成ピッチPab-2=180nm、幅Wab=80nm、偏光素子70と偏光素子70の間のスペース(Pab-2−Wab)=100nmの偏光素子70を形成する。具体的には、実施例2にあっては、実施例1の[工程−130]と同様の工程において、エッチングマスク層92を除去した後、AlOxあるいはHfOxから成る保護膜74を、ADL法に基づき、偏光素子70上に、より具体的には、偏光素子70及び層間絶縁層(基体であり、無機絶縁下地層66)上に形成する。ここでは、偏光素子70の側面において厚さ15nmの保護膜74を形成する。こうして、図33の(A)に示す構造を得ることができる。尚、図33の(A)及び後述する図33の(B)は、図2の矢印A−Aに沿ったと同様の模式的な一部端面図であり、第1の方向に沿った偏光素子70Aに関する模式的な一部端面図(仮想切断面は第1の方向と平行)と、第2の方向に沿った偏光素子70Bに関する模式的な一部端面図(仮想切断面は第2の方向と平行)とを示している。
【0094】
実施例2にあっては、ADL法に基づき保護膜74を形成することにより、偏光素子70が形成されていない無機絶縁下地層66上の保護膜74の膜厚を薄くすることができる。その結果、無機絶縁下地層66上の保護膜74の部分における入射光の反射、屈折を防止することができるし、隣接する固体撮像素子への不要な光の漏れ込みを防ぐことができる結果、感度の向上、混色の低減といった光学特性の改善を図ることができる。特に、シリコン系酸化膜よりも外気に対する保護性能が高いが、屈折率は高い金属酸化物を薄く形成することができるため、結果として、高性能、高信頼性を有する偏光素子を備えた固体撮像素子の提供が可能となる。また、ADL法に基づく成膜はCVD法に基づく成膜よりもコンフォーマルな成膜が実現できると共に、偏光素子70と偏光素子70との間のスペース(偏光素子と偏光素子との間に位置する基体の部分)の距離の長短によるカバレッジ差が発生し難い。従って、光学特性や信頼性に関して固体撮像素子内でより均一な特性が得られる。実際、保護膜74としてADL法を適用した場合、CVD法を適用した場合と比較して、固体撮像素子の特性ムラ(感度等のムラ)を大幅に改善することができた。
【実施例3】
【0095】
実施例3は、実施例2の変形である。実施例2にあっては、偏光素子70が形成されていない無機絶縁下地層66上にも保護膜74を形成した。しかしながら、偏光素子70が形成されていない無機絶縁下地層66上には保護膜74を形成しない方が、一層の特性向上(具体的には、一層の感度の向上)を図ることができる。
【0096】
実施例3にあっては、実施例1の[工程−130]と同様の工程において、エッチングマスク層92を除去した後、実施例2と同様に、AlOxあるいはHfOxから成る保護膜74を、ADL法に基づき、偏光素子70上に、より具体的には、偏光素子70及び無機絶縁下地層66上に形成する。ここで、偏光素子70の側面において厚さ15nmの保護膜74を形成する(図33の(A)の基体等の模式的な一部端面図を参照)。そして、その後、基体の上の保護膜を除去する。具体的には、無機絶縁下地層66上に堆積した保護膜74をエッチバック法によって除去し、偏光素子70の側面のみに保護膜74を残存させる(図33の(B)の基体等の模式的な一部端面図を参照)。保護膜74のエッチバックにあっては、無機絶縁下地層66上に堆積した保護膜74のみを効率良く除去するために、高パワーで指向性の高い(強い)条件を採用することが望ましい。偏光素子70の頂面の保護膜74も同時に除去されるが、何ら問題はない。こうして、偏光素子70の側面のみに保護膜74を存在させるが故に、偏光素子70に腐食、異常析出に対する耐性を付与しつつ、偏光素子70と偏光素子70との間のスペースに保護膜74が存在しないため、このスペースに入射する光が保護膜74によって反射、屈折されることが無く、また、隣接する固体撮像素子への不要な光の漏れ込みを一層確実に防ぐことができる。そして、その結果、感度の一層の向上を図ることができ、良好な特性を有する固体撮像素子を実現することができる。
【実施例4】
【0097】
実施例4は、実施例1の変形であり、本発明における固体撮像素子−Bに関する。実施例4にあっては、固体撮像素子の模式的な一部断面図を図8に示すように、光電変換素子(受光素子)81の上方にオンチップレンズ84が配置されており、光電変換素子81とオンチップレンズ84の間に偏光素子70が設けられている。そして、オンチップレンズ84と偏光素子70との間に波長選択層(具体的には、カラーフィルタ層83)が配置されている。
【0098】
具体的には、実施例4の固体撮像素子41は、例えば、シリコン半導体基板80に設けられた光電変換素子81、並びに、その上に、層間絶縁層(第1平坦化膜82)、偏光素子70、偏光素子埋込み材料層88、第2平坦化膜89、波長選択層(カラーフィルタ層83)、オンチップレンズ84が積層されて成る。層間絶縁層(第1平坦化膜82)及び第2平坦化膜89はSiO2から成り、偏光素子埋込み材料層88は、SiO2やアクリル系樹脂、SOG等から成る。光電変換素子81、偏光素子70、波長選択層(カラーフィルタ層83)、オンチップレンズ84は、実施例1と同様の構成、構造とすることができる。
【0099】
実施例4にあっては、更に、第1の方向における光吸収層の断片73’の形成ピッチPab-1、第1の方向における光吸収層の断片73’の長さLabは、波長選択層(カラーフィルタ層83)を通過する光の波長に依存して決定されている。即ち、赤色を受光する赤色固体撮像素子、青色を受光する青色固体撮像素子、及び、緑色を受光する緑色固体撮像素子のそれぞれにおいて、(Pab-1,Lab)の最適化が図られ、これによって、各固体撮像素子における更なる低光反射構造が達成されている。尚、実施例4にあっても、固体撮像素子の配置はベイヤ配置としている。
【0100】
以下、FDTD法に基づくシミュレーションにて、(Pab-1,Lab)と光反射率との関係を求めた結果を説明する。ここで、カラーフィルタ層83を通過する光の中心波長を、それぞれ、450nm、550nm、650nmとし、第2の方向における光吸収層73の形成ピッチPab-2を120nm、第2の方向に沿った光吸収層の断片73’の幅Wabを40nm、偏光素子埋込み材料層88の屈折率を1.45、アルミニウム(Al)から成る反射層71の厚さを100nm、SiO2から成る絶縁層72の厚さを25nm、タングステン(W)から成る光吸収層73の厚さを50nmとした。また、反射層71の下地は、SiO2層から成る。
【0101】
そして、ディユーティー比Lab/Pab-1の値を種々、変更し、評価する特性指標として、第1の方向に沿った反射率と第2の方向に沿った反射率の平均反射率を計算し、最適なLab/Pab-1の値を求めた。但し、評価する特性指標は、これに限定するものではなく、消光比、第2の方向に沿った光透過率、あるいは、これらの複数を選択してもよく、重視しなければならないパラメータを適宜選択すればよい。
【0102】
図9の(A)、(B)及び図10にシミュレーション結果を、以下の表2に示す。横軸はLab/Pab-1、つまり、ディユーティー比であり、更に、Pab-1は波長毎に3水準(A,B,C)振っている。縦軸は前述の平均反射率である。尚、図9の(A)は波長450nmにおけるシミュレーション結果であり、「A」はPab-1=200nmの結果を示し、「B」はPab-1=240nmの結果を示し、「C」はPab-1=280nmの結果を示す。また、図9の(B)は波長550nmにおけるシミュレーション結果であり、「A」はPab-1=250nmの結果を示し、「B」はPab-1=300nmの結果を示し、「C」はPab-1=350nmの結果を示す。更には、図10は波長650nmにおけるシミュレーション結果であり、「A」はPab-1=300nmの結果を示し、「B」はPab-1=350nmの結果を示し、「C」はPab-1=400nmの結果を示す。この結果から、以下の最適条件を得ることができた。このように、赤色、緑色、青色の各波長帯域での平均反射率を全て4%以下にすることが可能となる。
【0103】
[表2]
波長 Pab-1 Lab 平均反射率
450nm 240nm 120nm 4.0%
550nm 250nm 150nm 0.6%
650nm 300nm 210nm 3.9%
【0104】
実施例4にあっては、光電変換素子81とオンチップレンズ84の間に、偏光素子70が波長選択層(具体的には、カラーフィルタ層83)より基体側に配置されており、偏光素子70の形成はカラーフィルタ層形成前となるために、プロセス温度に制限を受け難い。更に、偏光素子70は埋め込み材料層88内に埋め込み形成されている。それ故、固体撮像装置をパッケージに実装する際に、厚さを調整するためのシリコン半導体基板の裏面切削、更に、その後のチップ切り離しのためのダイシング工程等における偏光素子へのダメージの発生を確実に防止することができる。また、固体撮像素子の信頼性確保の観点から、偏光素子を保護するために保護膜を形成することが好ましいが、実施例4にあっては、偏光素子埋込み材料層88が形成されているので保護膜の形成は不要である。
【実施例5】
【0105】
実施例5は、本発明の撮像機器に関し、より具体的には、被写体を立体画像として撮像する固体撮像装置及び撮像方法に関する。実施例5の撮像機器にあっては、実施例1〜実施例4において説明した固体撮像装置、固体撮像素子を適用することができる。
【0106】
実施例5の撮像機器(立体画像撮像装置)の概念図を図11の(A)に示し、第1偏光手段及び第2偏光手段における偏光の状態を模式的に図11の(B)及び(C)に示し、レンズ系、第1偏光手段における第1領域及び第2偏光手段における第3領域を通過し、撮像素子アレイに到達する光の概念図を図12の(A)に示し、第1偏光手段における第2領域及び第2偏光手段における第4領域を通過し、撮像素子アレイに到達する光の概念図を図12の(B)に示し、図12の(A)及び(B)に示した光によって撮像素子アレイに結像した画像を模式的に図12の(C)及び(D)に示す。尚、以下の説明において、光の進行方向をZ軸方向、X方向を水平方向(X軸方向)、Y方向を垂直方向(Y軸方向)とする。
【0107】
実施例5、あるいは、後述する実施例6〜実施例12の立体画像撮像装置は、
(A)被写体からの光を偏光させる第1偏光手段130,230,330,430,530,630、
(B)第1偏光手段130,230,330,430,530,630からの光を集光するレンズ系20、並びに、
(C)X方向(水平方向、X軸方向)、及び、X方向と直交するY方向(垂直方向、Y軸方向)の2次元マトリクス状に固体撮像素子41が配列されて成り、光入射側に第2偏光手段150,250を有し、レンズ系20によって集光された光を電気信号に変換する撮像素子アレイ40、
を具備している。
【0108】
そして、実施例5、あるいは、後述する実施例6〜実施例12の立体画像撮像装置において、
第1偏光手段130,230,330,430,530,630は、X方向(水平方向、X軸方向)に沿って配列された第1領域131,231,331,531,631及び第2領域132,232,332,532,632を有し、
第1領域131,231,331,531,631を通過した第1領域通過光L1の偏光状態と、第2領域132,232,332,532,632を通過した第2領域通過光L2の偏光状態とは異なり、
第2偏光手段150,250は、Y方向(垂直方向、Y軸方向)に沿って交互に配置され、X方向(水平方向、X軸方向)に延びる複数の第3領域151,251及び第4領域152,252を有し、
第3領域151,251を通過した第3領域通過光L3の偏光状態と、第4領域152,252を通過した第4領域通過光L4の偏光状態とは異なり、
第1領域通過光L1は第3領域151,251を通過して固体撮像素子41に到達し、第2領域通過光L2は第4領域152,252を通過して固体撮像素子41に到達し、以て、第1領域131,231,331,531,631の重心点BC1と第2領域132,232,332,532,632の重心点BC2との間の距離を両眼視差の基線長さとした立体画像を得るための画像を撮像する。
【0109】
ここで、実施例5、あるいは、後述する実施例6〜実施例12の立体画像撮像装置において、レンズ系20は、例えば、撮影レンズ21、絞り部22及び結像レンズ23を備えており、ズームレンズとして機能する。撮影レンズ21は、被写体からの入射光を集光するためのレンズである。撮影レンズ21は、焦点を合わせるためのフォーカスレンズや、被写体を拡大するためのズームレンズ等を含み、一般に、色収差等を補正するために複数枚のレンズの組合せによって実現されている。絞り部22は、集光された光の量を調整するために絞り込む機能を有するものであり、一般に、複数枚の板状の羽根を組み合わせて構成されている。少なくとも絞り部22の位置において、被写体の1点からの光は平行光となる。結像レンズ23は、第1偏光手段130,230,330,430,530,630を通過した光を撮像素子アレイ40上に結像する。撮像素子アレイ40は、カメラ本体部11の内部に配置されている。以上の構成において、入射瞳は、結像レンズ23よりもカメラ本体部側に位置する。立体画像撮像装置から、例えば、上述したとおり、デジタルスチルカメラやビデオカメラ、カムコーダが構成される。
【0110】
カメラ本体部11は、撮像素子アレイ40の他に、例えば、画像処理手段12及び画像記憶部13を備えている。そして、撮像素子アレイ40によって変換された電気信号に基づき右眼用画像データ及び左眼用画像データが形成される。撮像素子アレイ40は、例えば、上述したとおり、CCD素子やCMOSイメージセンサー等によって実現される。画像処理手段12は、撮像素子アレイ40から出力された電気信号を、右眼用画像データ及び左眼用画像データに変換して、画像記憶部13に記録する。
【0111】
第1偏光手段130,230,330,430,530,630は、レンズ系20の絞り部22の近傍に配置されている。具体的には、第1偏光手段130,230,330,430,530,630は、絞り部22の作動に支障を来さない限り、出来るだけ絞り部22に近い位置に配置されている。尚、第1偏光手段130,230,330,430,530,630は、上述したとおり、レンズ系20に入射した光が、一旦、平行光とされ、最終的に固体撮像素子41上に集光(結像)されるとき、平行光の状態にあるレンズ系20の部分に配置されている。
【0112】
実施例5の立体画像撮像装置110において、第1偏光手段130は第1領域131及び第2領域132から構成されている。具体的には、第1偏光手段130の外形形状は円形であり、第1領域131及び第2領域132は、それぞれ、第1偏光手段130の半分を占める半月状の外形形状を有する。第1領域131と第2領域132との境界線は、Y方向に沿って延びている。2つの偏光フィルタの組合せから成る第1偏光手段130は、入射した光を2つの異なる偏光状態に分離する。第1偏光手段130は、上述したとおり、左右対称の偏光子から構成されており、カメラの正立状態に対する左右2つの位置において、互いに直交する直線方向の偏光、又は、互いに逆方向となる回転方向の偏光を生成する。第1領域131は、被写体を右眼で見るであろう像(右眼が受けるであろう光)に対して偏光を施すフィルタである。一方、第2領域132は、被写体を左眼で見るであろう像(左眼が受けるであろう光)に対して偏光を施すフィルタである。
【0113】
ここで、実施例5の立体画像撮像装置110において、第1領域131及び第2領域132は偏光子から成る。そして、第1領域通過光L1の電場の向き(白抜きの矢印で示す)と第2領域通過光L2の電場の向き(白抜きの矢印で示す)とは直交している(図11の(B)参照)。ここで、実施例5において、第1領域通過光L1の電場の向きはX方向と平行である。具体的には、例えば、第1領域通過光L1は主としてP波(TM波)を偏光成分として有し、第2領域通過光L2は主としてS波(TE波)を偏光成分として有する。更には、第1領域通過光L1の電場の向きと第3領域通過光L3の電場の向き(白抜きの矢印で示す)とは平行であり、第2領域通過光L2の電場の向きと第4領域通過光L4の電場の向き(白抜きの矢印で示す)とは平行である(図11の(C)参照)。また、各偏光子の消光比は、3以上、より具体的には10以上である。
【0114】
実施例5の立体画像撮像装置110にあっては、第1偏光手段130の外形形状を半径r=10mmの円形とした。そして、第1領域131及び第2領域132を、第1偏光手段130の半分を占める半月状とした。従って、第1領域131の重心点BC1と第2領域132の重心点BC2との間の距離は、[(8r)/(3π)]=8.5mmである。
【0115】
第3領域151及び第4領域152には、実施例1〜実施例4において説明した偏光素子70が設けられている。ここで、第3領域151を構成する偏光素子にあっては、第1の方向(光吸収軸と平行な方向)はY方向と平行であり、第4領域152を構成する偏光素子にあっては、第1の方向はX方向と平行である。
【0116】
そして、実施例5の撮像方法にあっては、第3領域151を通過して固体撮像素子41に到達した第1領域通過光L1によって、右眼用画像データを得るための電気信号を固体撮像素子41において生成する。また、第4領域152を通過して固体撮像素子41に到達した第2領域通過光L2によって、左眼用画像データを得るための電気信号を固体撮像素子41において生成する。そして、これらの電気信号を、同時に、又は、時系列に交互に、出力する。出力された電気信号(撮像素子アレイ40から出力された右眼用画像データ及び左眼用画像データを得るための電気信号)に対して、画像処理手段12によって画像処理が施され、右眼用画像データ及び左眼用画像データとして画像記憶部13に記録される。
【0117】
図12の(A)及び(B)に模式的に示すように、四角い形状の物体Aにレンズ系20のピントが合っているとする。また、丸い形状の物体Bが、物体Aよりもレンズ系20に近く位置しているとする。四角い物体Aの像が、ピントが合った状態で撮像素子アレイ40上に結像する。また、丸い物体B像は、ピントが合っていない状態で撮像素子アレイ40上に結像する。そして、図12の(A)に示す例にあっては、撮像素子アレイ40上では、物体Bは、物体Aの右手側に距離(+ΔX)だけ離れた位置に像を結ぶ。一方、図12の(B)に示す例にあっては、撮像素子アレイ40上では、物体Bは、物体Aの左手側に距離(−ΔX)だけ離れた位置に像を結ぶ。従って、距離(2×ΔX)が物体Bの奥行きに関する情報となる。即ち、物体Aよりも固体撮像装置に近い側に位置する物体のボケ量及びボケ方向は、固体撮像装置に遠い側に位置する物体のボケ量及びボケ方向と異なるし、物体Aと物体Bとの距離によって物体Bのボケ量は異なる。そして、第1偏光手段130における第1領域131及び第2領域132の形状の重心位置の間の距離を両眼視差の基線長さとした立体画像を得ることができる。即ち、このようにして得られた右眼用画像(図12の(C)の模式図参照)及び左眼用画像(図12の(D)の模式図参照)から、周知の方法に基づき立体画像を得ることができる。尚、右眼用画像データと左眼用画像データとを混合すれば、立体画像ではない、通常の2次元(平面)画像を得ることができる。
【0118】
図13に概念図を示すように、実施例5にあっては、撮像素子アレイ40はベイヤ配列を有し、1画素は4つの固体撮像素子(赤色を受光する1つの赤色固体撮像素子R、青色を受光する1つの青色固体撮像素子B、及び、緑色を受光する2つの緑色固体撮像素子G)から構成されている。そして、X方向に沿って配列された1行の画素群に対して第3領域151が配置されており、同様に、この画素群にY方向に隣接し、X方向に沿って配列された1行の画素群に対して第4領域152が配置されている。第3領域151と第4領域152とは、Y方向に沿って交互に配置されている。尚、第3領域151及び第4領域152は全体としてX方向に延びているが、第3領域151及び第4領域152のX方向及びY方向に沿った単位長さは、固体撮像素子41のX方向及びY方向に沿った長さと等しい。そして、このような構成とすることで、主としてP波成分を有する光に基づくX方向に延びる帯状の画像(右眼用画像)、及び、主としてS波成分を有する光に基づくX方向に延びる帯状の画像(左眼用画像)が、Y方向に沿って交互に生成される。尚、図13において、第3領域151の内部に縦線を付し、第4領域152の内部に横線を付しているが、これらは、偏光素子における第2の方向(ストライプ状の反射層の繰り返し方向であり、ストライプ状の反射層の延びる方向と直交する方向であり、光透過軸である)を模式的に表しているし、図16、図20〜図24においても同様である。
【0119】
右眼用画像データ及び左眼用画像データのための電気信号は、上述したとおり、Y方向に沿って、一種、歯抜け状態となって生成される。そこで、画像処理手段12は、右眼用画像データ及び左眼用画像データ作成のために、電気信号に対してデモザイク処理を施すと共に、例えば、超解像処理に基づく補間処理を行うことにより、最終的に右眼用画像データ及び左眼用画像データを生成、作成する。また、例えば、左眼用画像データと右眼用画像データからステレオマッチングによりデイスパリティ・マップ(Disparity Map)を作成するといった視差検出技術、及び、デイスパリティ・マップを基に視差を制御する視差制御技術により、視差を強調したり、適切化を図ることもできる。
【0120】
図14に、固体撮像素子から得られた電気信号に対するデモザイク処理を行い、信号値を得る画像処理(モザイク処理)を説明するためのベイヤ配列を有する撮像素子アレイの概念図を示す。尚、図14には、左眼用画像における緑色固体撮像素子に関する信号値を生成する例について示している。通常のデモザイク処理では、近傍の同一色の固体撮像素子の電気信号の平均値が用いられるのが一般的である。しかしながら、実施例5のように右眼用画像データを得るための画素群(画素行)と左眼用画像データを得るための画素群(画素行)とが交互に繰り返されている場合、そのまま、近傍の値を用いると本来の画像データが得られなくなる虞がある。そこで、参照される固体撮像素子の電気信号が右眼用画像データ及び左眼用画像データの何れに相当するものであるかを考慮した上で、デモザイク処理を行う。
【0121】
ベイヤ配列において、位置(4,2)には赤色固体撮像素子Rが配置されているものとする。このとき、位置(4,2)に相当する緑色固体撮像素子信号値g’を生成するためには、次式によって表される演算を行う。
【0122】
g’4,2=(g4,1+g4,3+g5,2+g1,2×W3)/(3.0+W3)
【0123】
ここで、左辺のg’i,jは、位置(i,j)における緑色固体撮像素子信号値である。また、右辺のgi,jは、位置(i,j)における緑色固体撮像素子の電気信号の値である。更には、「3.0」は、注目固体撮像素子G4,2に対する隣接固体撮像素子G4,1,G4,3,G5,2への距離(W1)をそれぞれ例えば「1.0」としたとき、その逆数を重みとして、それら重みの総和に対応するものである。W3は、同様に、3固体撮像素子分だけ離れた固体撮像素子G1,2の電気信号の値に対する重みであり、この場合、「1/3」である。上式を一般化すると、次式のようになる。
【0124】
iが偶数の場合(赤色固体撮像素子Rの位置に相当する緑色固体撮像素子Gの信号値);
g’i,j=(gi,j-1×W1+gi,j+1×W1+gi+1,j×W1+gi-3,j×W3)/(W1×3.0+W3)
iが奇数の場合(青色固体撮像素子Bの位置に相当する緑色固体撮像素子Gの信号値);
g’i,j=(gi,j-1×W1+gi,j+1×W1+gi-1,j×W1+gi+3,j×W3)/(W1×3.0+W3)
ここで、W1=1.0,W3=1/3である。
【0125】
赤色固体撮像素子R及び青色固体撮像素子Bについても、同様の考え方によりデモザイク処理を行うことができる。
【0126】
デモザイク処理により各固体撮像素子位置における固体撮像素子信号値を得ることができるが、この段階では、上述したとおり、一種、歯抜け状態となっている。そのため、固体撮像素子信号値が存在しない領域に対して、固体撮像素子信号値を補間により生成する必要がある。補間の手法としては、近傍の値の加算平均値を利用する方法等、周知の方法を挙げることができる。尚、この補間処理は、デモザイク処理と並行して行ってもよい。X方向においては画質は完全に保持されているので、画像全体の解像度低下等の画質劣化は比較的少ない。
【0127】
実施例5においては、1組の第1偏光手段130及び第2偏光手段150並びに1つのレンズ系20から立体画像撮像装置110が構成されているので、例えば左右に分離された2つの異なる画像を同時に生成させることができ、単眼で、簡素な構成、構造を有し、構成部品の少ない、小型の立体画像撮像装置を提供することができる。また、レンズ及び偏光フィルタの組合せを2組、必要としないので、ズーム、絞り部、フォーカス、輻輳角等にズレや差異が生じることもない。しかも、両眼視差の基線長さが比較的短いので、自然な立体感を得ることができる。更には、第1偏光手段130を脱着させ得る構造とすれば、容易に、2次元画像及び3次元画像を得ることができる。
【実施例6】
【0128】
実施例6は実施例5の変形である。実施例5にあっては、第1領域通過光L1の電場の向きをX方向と平行とした。一方、実施例6にあっては、第1領域通過光L1の電場の向きはX方向と45度の角度を成す。即ち、偏光素子におけるストライプ状の反射層の延びる方向(第1の方向)は、複数の固体撮像素子の配列方向と45度の角度を成す。実施例6の立体画像撮像装置に備えられた第1偏光手段230及び第2偏光手段250における偏光の状態を、模式的に図15の(A)及び(B)に示す。
【0129】
ベイヤ配列を有する撮像素子アレイ40の概念図を図16に示す。実施例6にあっても、撮像素子アレイ40は、1画素は4つの固体撮像素子(赤色を受光する1つの赤色固体撮像素子R、青色を受光する1つの青色固体撮像素子B、及び、緑色を受光する2つの緑色固体撮像素子G)から構成されている。そして、X方向に沿って配列された1行の画素群に対して第3領域251が配置されており、同様に、この画素群にY方向に隣接し、X方向に沿って配列された1行の画素群に対して第4領域252が配置されている。第3領域251と第4領域252とは、Y方向に沿って交互に配置されている。尚、第3領域251及び第4領域252は全体としてX方向に延びているが、第3領域251及び第4領域252の単位長さは、1固体撮像素子分の長さと等しい。そして、このような構成とすることで、主としてP波成分を有する光に基づくX方向に延びる帯状の画像(右眼用画像)、及び、主としてS波成分を有する光に基づくX方向に延びる帯状の画像(左眼用画像)が、Y方向に沿って交互に生成される。尚、図16において、第3領域251及び第4領域252の内部に斜め線を付しているが、これらは、偏光素子の反射層を模式的に表している。
【0130】
これらの点を除き、実施例6の立体画像撮像装置の構成、構造は、実施例5にて説明した立体画像撮像装置110の構成、構造と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。実施例6における立体画像撮像装置の構成、構造を、後述する実施例7〜実施例12における立体画像撮像装置に対して適用することができる。
【実施例7】
【0131】
実施例7も実施例5の変形である。実施例7の立体画像撮像装置にあっては、第1偏光手段330において、第1領域331と第2領域332との間に中央領域333が設けられており、中央領域333を通過した中央領域通過光の偏光状態は、中央領域333への入射前と変化しない。即ち、中央領域333は、偏光に関して素通し状態である。
【0132】
ところで、入射した光が第1偏光手段を通過する際に、その光量は分光特性と消光比に比例して減少し、暗くなる。ここで、消光比とは、偏光子が選択して通過する光の量と、偏光子が選択せず、反射又は吸収する光の漏れこみ量の比である。具体的には、例えば、消光比10のP波成分を通過させる偏光子の場合、
P波成分:S波成分=50:50
の入射自然光の強度100に対して、この偏光子は、P波成分を50、S波成分を5の割合で透過する。また、消光比∞のP波成分を通過させる偏光子の場合、P波成分を100%透過し、S波成分を全反射し、又は、完全に吸収し、透過させないので、平均的な自然光が入射した場合、約1/2の明るさになる。図11の(B)及び(C)に示した第1偏光手段130及び第2偏光手段150を通過した光の光量は、透過損失がゼロとしても、第1偏光手段130に入射する前の光の光量の約25%となってしまう。また、第1領域及び第2領域を通過した光が、混ざった状態になり、分離できない状態で撮像素子アレイ40に入射した場合、混ざった割合に比例して両眼視差の基線長さが短くなり、完全に混ざった状態では左眼用画像と右眼用画像が同一の画像となり、視差が取れず、立体視することができなくなる。
【0133】
第1偏光手段330の中央領域333にあっては、光強度が強いが、視差量は少ない。従って、実施例7の第1偏光手段330を採用することで、撮像素子アレイ40が受ける光強度を大きくしながら、十分な長さの両眼視差の基線長さを確保することが可能となる。図17の(A)に第1偏光手段330の模式図を示すように、第1偏光手段330の外形形状を円形としたとき、中央領域333を円形とし、第1領域331及び第2領域332を、中央領域333を囲む中心角180度の扇形とすることができる。あるいは又、図17の(B)、(C)に第1偏光手段330の模式図を示すように、中央領域333を菱形や正方形とし、第1領域331及び第2領域332を、中央領域333を囲む中心角180度の扇形に類似した形状とすることができる。あるいは又、図17の(D)に第1偏光手段330の模式図を示すように、第1領域331、中央領域333及び第2領域332を、Y方向に沿って延びる帯状の形状とすることができる。
【0134】
これらの点を除き、実施例7の立体画像撮像装置の構成、構造は、実施例5にて説明した立体画像撮像装置110の構成、構造と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。実施例7における立体画像撮像装置の構成、構造を、後述する実施例8〜実施例12における立体画像撮像装置に対して適用することができる。
【実施例8】
【0135】
実施例8も実施例5の変形である。実施例8の立体画像撮像装置410の概念図を図18に示す。実施例8の立体画像撮像装置410にあっては、第1偏光手段430の光入射側に、四分の一波長板(λ/4波長板)433が配置されており、これによって、所謂視野闘争の発生を回避することができる。四分の一波長板433は、レンズ系に設けられたフィルタ取付部に、着脱自在に取り付ければよい。四分の一波長板433を通過した光は偏光方向が揃った状態(直線偏光の状態)となる。そして、このような光が第1領域131及び第3領域151を通過して撮像素子アレイ40に到達して得られた画像と、第2領域132及び第4領域152を通過して撮像素子アレイ40に到達して得られた画像とにあっては、P波成分は反射するがS波成分は吸収する被写体の部分の画像の間に大きな相違が生じなくなり、視野闘争の発生を回避することができる。尚、四分の一波長板433の速軸は、実施例1あるいは実施例2において説明した立体画像撮像装置において、第1領域通過光の電場の向きと所定の角度(具体的には、45度の角度あるいは45度±10度の角度)を成すことが好ましい。
【実施例9】
【0136】
実施例9も実施例5の変形である。実施例9の立体画像撮像装置510の概念図を図19の(A)に示し、第1偏光手段及び第2偏光手段における偏光の状態を模式的に図19の(B)及び(C)に示す。実施例9の立体画像撮像装置510においては、視野闘争の発生を回避するために、第1偏光手段530の光入射側には、α度の偏光軸を有する偏光板534が配置されている。また、第1領域531は第1波長板から成り、第2領域532は第2波長板から成り、第1領域通過光L1の電場の向きと第2領域通過光L2の電場の向きとは直交している。より具体的には、αの値は45度であり、第1領域531を構成する第1波長板は半波長板(+λ/2波長板)から成り、第2領域532を構成する第2波長板は、第1波長板を構成する半波長板とは位相差の異なる半波長板(−λ/2波長板)から成る。これによって、第1領域通過光L1の電場の向きはX方向と平行となり、第2領域通過光L2の電場の向きはY方向と平行となる。尚、偏光板534はレンズ系に固定しておく。
【実施例10】
【0137】
実施例10も実施例5の変形である。図20に、ベイヤ配列を有する撮像素子アレイの概念図を示すように、実施例10の立体画像撮像装置にあっては、Y方向に沿ってN個の画素(但し、N=2nであり、nは1乃至5の自然数であり、実施例10にあっては、具体的には、n=3)に対して1つの第3領域151及び1つの第4領域152が配されている。そして、第3領域151を通過した第1領域通過光によって得られる電気信号及び第4領域152を通過した第2領域通過光によって得られる電気信号から生成された視差量に基づくデプスマップ(奥行き情報)、並びに、撮像素子アレイ40を構成する全固体撮像素子41からの電気信号に基づき、右眼用画像を得るための電気信号及び左眼用画像を得るための電気信号を得るが、係る方法それ自体は周知の方法とすることができる。尚、第3領域及び第4領域を配置した固体撮像素子と配置していない固体撮像素子の全てを含む全電気信号に基づきデモザイク処理を行ってもよいし、第3領域及び第4領域を配置した固体撮像素子群の行を間引いた部分を超解像処理により補間して画像データを生成することも可能である。また、画像の画質・画素数に対して、デプスマップの画質・画素数は、1:1である必要はない。これは、殆どの撮影場面において、個々の被写体は、画素分解能に比べて十分大きく、個々の被写体に、画素分解能と同じ細かさの距離差がない限り、画像の画素分解能と同じ距離情報分解能が必要になることはないためである。また、距離差の感覚において、横方向の分解能が十分あれば、縦方向の分解能が低くても違和感は少ない。
【0138】
あるいは又、実施例10の立体画像撮像装置の変形例1におけるベイヤ配列を有する撮像素子アレイの概念図を図21に示すが、X方向に沿って2個の画素に対して1つの第3領域151及び1つの第4領域152を配する構成とすることができる。尚、図21に示す例にあっては、第3領域151及び第4領域152は千鳥状(市松模様状)に配置されている。即ち、Y方向に沿って、第3領域151の一方の境界において第4領域152と隣接しているが、第3領域151の他方の境界においては第4領域152と隣接していない。
【0139】
あるいは又、実施例10の立体画像撮像装置の変形例2におけるベイヤ配列を有する撮像素子アレイの概念図を図22に示すが、赤色を受光する赤色固体撮像素子R及び青色を受光する青色固体撮像素子Bには第3領域151及び第4領域152を配置せず、緑色を受光する2つの緑色固体撮像素子Gの一方に第3領域151を配し、他方に第4領域152を配してもよい。また、実施例10の立体画像撮像装置の変形例3におけるベイヤ配列を有する撮像素子アレイの概念図を図23に示すが、緑色を受光する2つの緑色固体撮像素子Gの一方に第3領域151を配し、他方に第4領域152を配し、しかも、Y方向に沿ってN個の画素(但し、N=2nであり、図示した例では、n=2)に対して1つの第3領域151及び1つの第4領域152が配されている構成としてもよい。また、図24に示すように、第3領域151及び第4領域152を千鳥状(市松模様状)に配置してもよい。
【実施例11】
【0140】
実施例11は、実施例5〜実施例7、実施例9〜実施例10の立体画像撮像装置の変形を含む。実施例11の固体撮像装置の概念図を図25の(A)に示し、四分の一波長板の概念図を図25の(B)に示し、第1偏光手段における偏光の状態を模式的に図25の(C)に示し、偏光手段(第2偏光手段)における偏光の状態を模式的に図25の(D)に示す。
【0141】
実施例11の固体撮像装置610は、
(A)四分の一波長板633、
(B)四分の一波長板633からの光を集光するレンズ系20、並びに、
(C)X方向(水平方向、X軸方向)、及び、X方向と直交するY方向(垂直方向、Y軸方向)の2次元マトリクス状に固体撮像素子41が配列されて成り、光入射側に偏光手段150,250を有し、レンズ系20によって集光された光を電気信号に変換する撮像素子アレイ40、
を具備している。このような簡素な構成、構造を有する実施例11の固体撮像装置により通常の2次元画像を容易に撮像することができるし、このような構成、構造を有する実施例11の固体撮像装置を実施例5〜実施例7、実施例9〜実施例10の立体画像撮像装置に容易に組み込むことができ、これによって、立体画像を撮影するだけでなく、通常の2次元画像を、容易に、高画質にて撮影することが可能となる。
【0142】
ここで、偏光手段150,250は、Y方向(垂直方向、Y軸方向)に沿って交互に配置され、X方向(水平方向、X軸方向)に延びる複数の第1領域151,251及び第2領域152,252を有し、
第1領域151,251を通過した第1領域通過光の偏光状態と、第2領域152,252を通過した第2領域通過光の偏光状態とは異なり、
四分の一波長板633の速軸(図25の(B)、図26の(A)、(D)、(E)にあっては、黒色の矢印で示す)は、第1領域通過光の電場の向きと所定の角度を成す。所定の角度は45度あるいは45度±10度である。以下においても同様である。また、第1領域通過光の電場の向きと第2領域通過光の電場の向きとは直交している。第1領域通過光の電場の向きはX方向と平行であり(図25の(D)参照)、あるいは又、第1領域通過光)の電場の向きはX方向と45度の角度を成す(図26の(C)参照)。四分の一波長板633は、例えば、レンズの絞り羽根に類似した構成、構造を有し、レンズ系20内に配置されている。
【0143】
尚、以上に説明した実施例11の固体撮像装置610における偏光手段150,250は、実施例5〜実施例7、実施例9〜実施例10の立体画像撮像装置における第2偏光手段150,250に該当し、偏光手段150,250における複数の第1領域151,251及び第2領域152,252は、実施例5〜実施例7、実施例9〜実施例10の立体画像撮像装置における第3領域151,251及び第4領域152,252に該当する。以下の説明において、混乱を招かないために、「第2偏光手段150,250」に用語を統一し、また、実施例11の固体撮像装置610における偏光手段150,250(実施例5〜実施例7、実施例9〜実施例10の立体画像撮像装置における第3領域151,251及び第4領域152,252)を、「第5領域151,251」、「第6領域152,252」と表現する。
【0144】
あるいは又、実施例11の固体撮像装置610において、第1偏光手段630の光入射側には四分の一波長板633が配置されており、四分の一波長板633の速軸は、第1領域通過光L1の電場の向きと所定の角度を成す。尚、第1領域通過光L1の電場の向きと第3領域通過光L3の電場の向きとは平行であり、第2領域通過光L2の電場の向きと第4領域通過光L4の電場の向きとは平行である。
【0145】
尚、実施例12において説明するように、
四分の一波長板633は、Y方向に沿って配列された第1の四分の一波長板633A及び第2の四分の一波長板633Bから成り、
第1の四分の一波長板633Aの速軸は、第5領域通過光の電場の向きと所定の角度を成し、
第2の四分の一波長板633Bの速軸は、第1の四分の一波長板633Aの速軸と直交している(云い換えれば、第1の四分の一波長板633Aの遅軸と平行である)形態とすることができる。そして、このような形態を含む実施例11の固体撮像装置において、所定の角度は45度あるいは45度±10度である形態とすることができ、更には、これらの形態を含む実施例11の固体撮像装置にあっては、第5領域通過光の電場の向きと第6領域通過光の電場の向きとは直交している形態とすることができ、この場合、第5領域通過光の電場の向きはX方向と平行である形態とすることができるし、あるいは又、第5領域通過光の電場の向きはX方向と45度の角度を成す形態とすることができる。更には、これらの形態を含む実施例11の固体撮像装置において、四分の一波長板はレンズ系に脱着自在に取り付けられている形態とすることができる。
【0146】
あるいは又、実施例11の固体撮像装置610を実施例5〜実施例7、実施例9〜実施例10の立体画像撮像装置に適用する場合、
第1偏光手段630の光入射側には、四分の一波長板633が配置されており、
四分の一波長板633の速軸は、第1領域通過光L1の電場の向きと所定の角度を成す形態とすることができるし、あるいは又、実施例12において説明するように、
四分の一波長板633は、Y方向に沿って配列された第1の四分の一波長板633A及び第2の四分の一波長板633Bから成り、
第1の四分の一波長板633Aの速軸は、第1領域通過光L1の電場の向きと所定の角度を成し、
第2の四分の一波長板633Bの速軸は、第1の四分の一波長板633Aの速軸と直交している(云い換えれば、第1の四分の一波長板633Aの遅軸と平行である)形態とすることができ、これらの形態において、所定の角度は45度あるいは45度±10度である形態とすることができ、更には、これらの形態にあっては、
第1領域通過光L1の電場の向きと第3領域通過光L3の電場の向きとは平行であり、
第2領域通過光L2の電場の向きと第4領域通過光L4の電場の向きとは平行である形態とすることができる。更には、これらの形態において、
第1偏光手段630はレンズ系20に脱着自在に取り付けられており、
四分の一波長板633はレンズ系20に脱着自在に取り付けられている形態とすることができる。そして、更には、これらの形態において、四分の一波長板6330は第1偏光手段630に隣接して、例えば第1偏光手段630の光入射側に配設されている形態とすることができる。
【0147】
実施例11の固体撮像装置610において、第1偏光手段630はレンズ系20に脱着自在に取り付けられており、四分の一波長板633もレンズ系20に脱着自在に取り付けられている。四分の一波長板633は第1偏光手段630に隣接して配設されている。図25の(A)にあっては、光入射側から、四分の一波長板633及び第1偏光手段630の順に図示したが、場合によっては、第1偏光手段630及び四分の一波長板633の順に配置してもよい。光入射側から四分の一波長板633及び第1偏光手段630の順に配置し、四分の一波長板633及び第1偏光手段630をレンズ系に配することで3次元画像(立体画像)を撮像することができるし、あるいは又、第1偏光手段630をレンズ系に配し、且つ、四分の一波長板633をレンズ系から外すことで3次元画像(立体画像)を撮像することができるし、四分の一波長板633をレンズ系に配し、第1偏光手段630をレンズ系から外すことで2次元画像を撮像することができる。一方、光入射側から第1偏光手段630及び四分の一波長板633の順に配置し、第1偏光手段630をレンズ系に配し、四分の一波長板633をレンズ系から外すことで3次元画像(立体画像)を撮像することができるし、四分の一波長板633をレンズ系に配し、第1偏光手段630をレンズ系から外すことで2次元画像を撮像することができる。図25の(B)に右上45度方向に延びる黒色の矢印で示した四分の一波長板633の速軸は、このような方向に限定するものではなく、左上45度方向に延びていてもよい。また、図26の(A)、(B)及び(C)のそれぞれに、実施例11の固体撮像装置における四分の一波長板の概念図、第1偏光手段における偏光の状態、偏光手段(第2偏光手段)における偏光の状態の変形例を図示するが、この例は、図15に示した実施例6の変形である。
【0148】
尚、四分の一波長板633をレンズ系20に脱着自在に取り付けるには、例えば、上述したとおり、四分の一波長板633をレンズの絞り羽根に類似した構成、構造とし、レンズ系内に配置すればよい。あるいは又、レンズ系20において、四分の一波長板633と開口部とが併設された部材を、レンズ系20の光軸と平行な回動軸を中心として回動可能にこの回動軸に取り付け、係る部材を回動軸を中心として回動させることで、レンズ系20を通過する光線が開口部を通過し、あるいは、四分の一波長板633を通過する構成、構造を挙げることができる。あるいは又、レンズ系20において、四分の一波長板633と開口部とが併設された部材を、例えばレンズ系20の光軸と直交する方向に滑動自在にレンズ系に取り付け、係る部材を滑動させることで、レンズ系20を通過する光線が開口部を通過し、あるいは、四分の一波長板633を通過する構成、構造を挙げることができる。尚、この場合、四分の一波長板633を複数の部材から構成し、各部材をレンズ系20の光軸と直交する方向に滑動自在とする構成を採用してもよい。
【0149】
第1偏光手段630をレンズ系20から外し、通常の2次元画像の撮影を試みた場合、固体撮像装置に入射する光が直線偏光を含んでいると、第5領域151,251を通過した光の強度と、第6領域152,252を通過した光の強度との間に、差が生じ、得られた2次元画像には、縞状の光の濃淡が生じる場合がある。実施例11の固体撮像装置にあっては、速軸が、第3領域通過光の電場の向きと所定の角度(具体的には、45度あるいは45度±10度)を成す四分の一波長板633が組み込まれるので、四分の一波長板633に入射した直線偏光の光は円偏光状態の光となって四分の一波長板633から出射される。従って、第5領域151,251を通過した光の強度と、第6領域152,252を通過した光の強度との間に、差が生じ難く、得られた2次元画像には、縞状の光の濃淡が生じる虞が無い。
【実施例12】
【0150】
実施例12は、実施例11の変形である。実施例12の固体撮像装置における四分の一波長板の概念図を図26の(D)あるいは図26の(E)に示すように、実施例12において、四分の一波長板633は、Y方向に沿って配列された第1の四分の一波長板633A及び第2の四分の一波長板633Bから成る。第1の四分の一波長板633Aと第2の四分の一波長板633Bとは一体化されている。そして、第1の四分の一波長板633Aの速軸は、第3領域通過光の電場の向きと所定の角度を成し、第2の四分の一波長板633Bの速軸は、第1の四分の一波長板633Aの速軸と直交している。云い換えれば、第1の四分の一波長板633Aの遅軸と平行である。ここで、所定の角度は45度あるいは45度±10度である。尚、図26の(D)に示した例は、図25の(B)に示した例の変形であり、図26の(E)に示した例は、図26の(A)に示した例の変形である。以上の点を除き、実施例12の固体撮像装置は、実施例11の固体撮像装置と同様の構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。四分の一波長板633を第1の四分の一波長板633A及び第2の四分の一波長板633Bから構成することで、第5領域151,251を通過した光の強度と、第6領域152,252を通過した光の強度との間に、より差が生じ難くなる。
【0151】
以上、本発明を好ましい実施例に基づき説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例において説明した偏光素子、固体撮像素子、固体撮像装置、撮像機器の構成、構造は例示であり、適宜、変更することができる。例えば、固体撮像素子を、シリコン半導体基板に設けられた光電変換素子、並びに、その上に、第1平坦化膜、オンチップレンズ、第2平坦化膜、カラーフィルタ層、無機絶縁下地層、及び、本発明における偏光素子が積層されて成る構成とすることもできる。また、固体撮像素子を、裏面照射型とするだけでなく、表面照射型としてもよい。
【0152】
右眼用画像データ及び左眼用画像データに基づき立体画像を表示するが、係る表示方式として、例えば、2台のプロジェクタに円偏光又は直線偏光フィルタを取り付けて左右眼用の画像をそれぞれ表示し、表示に対応した円偏光又は直線偏光眼鏡で画像を観察する方式、レンチキュラーレンズ方式、パララックスバリア方式を挙げることができる。尚、円偏光又は直線偏光眼鏡を使用することなく画像を観察すると、通常の2次元(平面)画像を観察することができる。また、以上に説明した処理手順は、これら一連の手順を有する方法として捉えてもよく、また、これら一連の手順をコンピュータに実行させるためのプログラムあるいはプログラムを記憶する記録媒体として捉えてもよい。記録媒体として、例えば、CD(Compact Disc)、MD(MiniDisc)、DVD(Digital Versatile Disk)、メモリカード、ブルーレイディスク(Blu-ray Disc(登録商標))等を用いることができる。
【0153】
あるいは又、実施例にて説明した偏光素子を透明な基板や基体上に形成し、テレビ受像機等の画像表示装置において、右目用、左目用の画素群に2種類の偏光素子を割り当てれば、立体視用の画像を得ることができる。あるいは又、1枚の画像に複数の画像を含ませることで、例えば、複数の人間が複数の異なる画像(番組)を同時に見ることも可能である。また、DVDやブルーレイ(Blu−ray)光ディスクシステムにおける光ピックアップにおいて、記録媒体に縦偏光用の凹凸構造、横偏光用の凹凸構造を2層にて作り込み、縦横2種類に偏光したレーザを用いることで、同じサイズで2倍の情報記録が可能になる。また、光通信機器等への転用も可能である。
【符号の説明】
【0154】
110,410,510・・・立体画像撮像装置、610・・・固体撮像装置、11・・・カメラ本体部、12・・・画像処理手段、13・・・画像記憶部、20・・・レンズ系、21・・・撮影レンズ、22・・・絞り部、23・・・結像レンズ、130,230,330,430,530,630・・・第1偏光手段、131,231,331,531,631・・・第1領域、132,232,332,532,632・・・第2領域、333・・・中央領域、433,633・・・四分の一波長板(λ/4波長板)、633A・・・第1の四分の一波長板(λ/4波長板)、633B・・・第2の四分の一波長板(λ/4波長板)、534・・・偏光板、40・・・撮像素子アレイ、41・・・固体撮像素子、150,250・・・第2偏光手段(偏光手段)、151,251・・・第3領域(第5領域)、152,252・・・第4領域(第6領域)、60・・・シリコン半導体基板、61,81・・・光電変換素子、62・・・第1平坦化膜、63,83・・・波長選択層(カラーフィルタ層)、64,84・・・オンチップレンズ、65・・・平坦化層(第2平坦化膜)、66・・・層間絶縁層(無機絶縁下地層)、67・・・遮光部、68・・・遮光層、70・・・偏光素子、71・・・反射層、71A・・・反射層形成層、72・・・絶縁層、72A・・・絶縁層形成層、73・・・光吸収層、73’・・・光吸収層の断片、73A・・・光吸収層形成層、74・・・保護膜、82・・・層間絶縁層(第1平坦化膜)、88・・・偏光素子埋込み材料層、89・・・第2平坦化膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)光電変換素子、及び、
(B)光電変換素子の光入射側に設けられた偏光素子、
を備えた固体撮像素子を複数、有する固体撮像装置であって、
偏光方位が異なる2種類以上の偏光素子を備え、
各偏光素子は、光電変換素子側から、ストライプ状の反射層、反射層上に形成された絶縁層、及び、絶縁層上に離間された状態で形成された複数の断片から成る光吸収層の積層構造を有する固体撮像装置。
【請求項2】
ストライプ状の反射層の延びる方向は、消光させるべき偏光方位と一致しており、
ストライプ状の反射層の繰り返し方向は、透過させるべき偏光方位と一致している請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項3】
ストライプ状の反射層の延びる方向における反射層の長さは、ストライプ状の反射層の延びる方向に沿った固体撮像素子の長さ未満である請求項1又は請求項2に記載の固体撮像装置。
【請求項4】
光電変換素子の上方にオンチップレンズが配置されており、
オンチップレンズの上方に偏光素子が設けられている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の固体撮像装置。
【請求項5】
偏光素子とオンチップレンズとの間の光軸方向の距離をD、オンチップレンズのサグ量をS、偏光素子とオンチップレンズとの間に存在する媒質の屈折率をn1、隣接する偏光素子の間に存在する隙間の幅を2×R、偏光素子への光の入射角の最大値をθin-maxとしたとき、
R≧(D+S)×tan[sin-1{sin(θin-max)/n1}]
を満足する請求項4に記載の固体撮像装置。
【請求項6】
オンチップレンズと偏光素子との間に位置する平面内の領域であって、隣接するオンチップレンズとオンチップレンズとの間に位置する領域には、遮光層が設けられている請求項4又は請求項5に記載の固体撮像装置。
【請求項7】
オンチップレンズと偏光素子との間には、オンチップレンズ側から、平坦化層及び無機材料から成る層間絶縁層が形成されている請求項4乃至請求項6のいずれか1項に記載の固体撮像装置。
【請求項8】
光電変換素子とオンチップレンズとの間に波長選択層が配置されている請求項4乃至請求項7のいずれか1項に記載の固体撮像装置。
【請求項9】
光電変換素子の上方にオンチップレンズが配置されており、
光電変換素子とオンチップレンズの間に偏光素子が設けられている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の固体撮像装置。
【請求項10】
オンチップレンズと偏光素子との間に波長選択層が配置されている請求項9に記載の固体撮像装置。
【請求項11】
ストライプ状の反射層の延びる方向における光吸収層を構成する断片の形成ピッチをPab-1、ストライプ状の反射層の延びる方向における光吸収層の断片の長さをLabとしたとき、波長選択層を通過する光の波長に依存してPab-1及びLabを決定する請求項10に記載の固体撮像装置。
【請求項12】
ストライプ状の反射層の延びる方向における光吸収層の断片の形成ピッチをPab-1、ストライプ状の反射層の繰り返し方向における光吸収層の断片の形成ピッチをPab-2、偏光素子に入射する光の最短波長をλmin、偏光素子に入射する光が通過する媒質の屈折率をn0、偏光素子への光の入射角の最大値をθin-maxとしたとき、
(Pab-12+Pab-22)1/2≦[(λmin/n0)×cos(θin-max)]
を満足する請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の固体撮像装置。
【請求項13】
ストライプ状の反射層の延びる方向における光吸収層の断片の形成ピッチをPab-1、長さをLabとしたとき、
0.5≦(Lab/Pab-1)<1
を満足する請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載の固体撮像装置。
【請求項14】
ストライプ状の反射層の延びる方向は、複数の固体撮像素子の配列方向と45度の角度又は135度の角度を成す請求項1乃至請求項13のいずれか1項に記載の固体撮像装置。
【請求項15】
反射層は、金属材料、合金材料若しくは半導体材料から成る請求項1乃至請求項14のいずれか1項に記載の固体撮像装置。
【請求項16】
光吸収層は、金属材料、合金材料若しくは半導体材料から成る請求項1乃至請求項15のいずれか1項に記載の固体撮像装置。
【請求項17】
偏光素子には保護膜が形成されている請求項1乃至請求項16のいずれか1項に記載の固体撮像装置。
【請求項18】
偏光素子は基体上に形成されており、
偏光素子と偏光素子との間に位置する基体の部分には保護膜が形成されていない請求項17に記載の固体撮像装置。
【請求項19】
請求項1乃至請求項18に記載の固体撮像装置を備えた撮像機器。
【請求項20】
基体上に形成されたストライプ状の反射層、反射層上に形成された絶縁層、及び、絶縁層上に離間された状態で形成された複数の断片から成る光吸収層の積層構造を有し、
ストライプ状の反射層の繰り返し方向における光吸収層の形成ピッチをPab-2、光吸収層の幅をWab、ストライプ状の反射層の延びる方向における光吸収層の断片の長さをLabとする偏光素子の製造方法であって、
(a)基体上に、反射層を構成すべき反射層形成層、絶縁層を構成すべき絶縁層形成層、光吸収層を構成すべき光吸収層形成層を設け、次いで、
(b)光吸収層形成層をパターニングすることで、長さLabの光吸収層形成層を得た後、
(C)ストライプ状の光吸収層の繰り返し方向における形成ピッチが2×Pab-2、幅が(Pab-2−Wab)であるレジスト層を全面に形成した後、レジスト層の側壁における厚さがWabであるエッチングマスク層をレジスト層の側壁に形成し、次いで、
(c)レジスト層を除去した後、エッチングマスク層をエッチング用マスクとして、光吸収層形成層、絶縁層形成層及び反射層形成層を順次エッチングし、以て、反射層、絶縁層及び光吸収層の積層構造から成る偏光素子を得る偏光素子の製造方法。
【請求項21】
前記工程(c)に引き続き、偏光素子の上及び基体の上に保護膜を形成する請求項20に記載の偏光素子の製造方法。
【請求項22】
偏光素子の上及び基体の上に保護膜を形成した後、基体の上の保護膜を除去する請求項21に記載の偏光素子の製造方法。
【請求項23】
(A)光電変換素子、及び、
(B)光電変換素子の光入射側に設けられた偏光素子、
を備えた固体撮像素子であって、
偏光素子は、光電変換素子側から、ストライプ状の反射層、反射層上に形成された絶縁層、及び、絶縁層上に離間された状態で形成された複数の断片から成る光吸収層の積層構造を有する固体撮像素子。
【請求項1】
(A)光電変換素子、及び、
(B)光電変換素子の光入射側に設けられた偏光素子、
を備えた固体撮像素子を複数、有する固体撮像装置であって、
偏光方位が異なる2種類以上の偏光素子を備え、
各偏光素子は、光電変換素子側から、ストライプ状の反射層、反射層上に形成された絶縁層、及び、絶縁層上に離間された状態で形成された複数の断片から成る光吸収層の積層構造を有する固体撮像装置。
【請求項2】
ストライプ状の反射層の延びる方向は、消光させるべき偏光方位と一致しており、
ストライプ状の反射層の繰り返し方向は、透過させるべき偏光方位と一致している請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項3】
ストライプ状の反射層の延びる方向における反射層の長さは、ストライプ状の反射層の延びる方向に沿った固体撮像素子の長さ未満である請求項1又は請求項2に記載の固体撮像装置。
【請求項4】
光電変換素子の上方にオンチップレンズが配置されており、
オンチップレンズの上方に偏光素子が設けられている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の固体撮像装置。
【請求項5】
偏光素子とオンチップレンズとの間の光軸方向の距離をD、オンチップレンズのサグ量をS、偏光素子とオンチップレンズとの間に存在する媒質の屈折率をn1、隣接する偏光素子の間に存在する隙間の幅を2×R、偏光素子への光の入射角の最大値をθin-maxとしたとき、
R≧(D+S)×tan[sin-1{sin(θin-max)/n1}]
を満足する請求項4に記載の固体撮像装置。
【請求項6】
オンチップレンズと偏光素子との間に位置する平面内の領域であって、隣接するオンチップレンズとオンチップレンズとの間に位置する領域には、遮光層が設けられている請求項4又は請求項5に記載の固体撮像装置。
【請求項7】
オンチップレンズと偏光素子との間には、オンチップレンズ側から、平坦化層及び無機材料から成る層間絶縁層が形成されている請求項4乃至請求項6のいずれか1項に記載の固体撮像装置。
【請求項8】
光電変換素子とオンチップレンズとの間に波長選択層が配置されている請求項4乃至請求項7のいずれか1項に記載の固体撮像装置。
【請求項9】
光電変換素子の上方にオンチップレンズが配置されており、
光電変換素子とオンチップレンズの間に偏光素子が設けられている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の固体撮像装置。
【請求項10】
オンチップレンズと偏光素子との間に波長選択層が配置されている請求項9に記載の固体撮像装置。
【請求項11】
ストライプ状の反射層の延びる方向における光吸収層を構成する断片の形成ピッチをPab-1、ストライプ状の反射層の延びる方向における光吸収層の断片の長さをLabとしたとき、波長選択層を通過する光の波長に依存してPab-1及びLabを決定する請求項10に記載の固体撮像装置。
【請求項12】
ストライプ状の反射層の延びる方向における光吸収層の断片の形成ピッチをPab-1、ストライプ状の反射層の繰り返し方向における光吸収層の断片の形成ピッチをPab-2、偏光素子に入射する光の最短波長をλmin、偏光素子に入射する光が通過する媒質の屈折率をn0、偏光素子への光の入射角の最大値をθin-maxとしたとき、
(Pab-12+Pab-22)1/2≦[(λmin/n0)×cos(θin-max)]
を満足する請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の固体撮像装置。
【請求項13】
ストライプ状の反射層の延びる方向における光吸収層の断片の形成ピッチをPab-1、長さをLabとしたとき、
0.5≦(Lab/Pab-1)<1
を満足する請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載の固体撮像装置。
【請求項14】
ストライプ状の反射層の延びる方向は、複数の固体撮像素子の配列方向と45度の角度又は135度の角度を成す請求項1乃至請求項13のいずれか1項に記載の固体撮像装置。
【請求項15】
反射層は、金属材料、合金材料若しくは半導体材料から成る請求項1乃至請求項14のいずれか1項に記載の固体撮像装置。
【請求項16】
光吸収層は、金属材料、合金材料若しくは半導体材料から成る請求項1乃至請求項15のいずれか1項に記載の固体撮像装置。
【請求項17】
偏光素子には保護膜が形成されている請求項1乃至請求項16のいずれか1項に記載の固体撮像装置。
【請求項18】
偏光素子は基体上に形成されており、
偏光素子と偏光素子との間に位置する基体の部分には保護膜が形成されていない請求項17に記載の固体撮像装置。
【請求項19】
請求項1乃至請求項18に記載の固体撮像装置を備えた撮像機器。
【請求項20】
基体上に形成されたストライプ状の反射層、反射層上に形成された絶縁層、及び、絶縁層上に離間された状態で形成された複数の断片から成る光吸収層の積層構造を有し、
ストライプ状の反射層の繰り返し方向における光吸収層の形成ピッチをPab-2、光吸収層の幅をWab、ストライプ状の反射層の延びる方向における光吸収層の断片の長さをLabとする偏光素子の製造方法であって、
(a)基体上に、反射層を構成すべき反射層形成層、絶縁層を構成すべき絶縁層形成層、光吸収層を構成すべき光吸収層形成層を設け、次いで、
(b)光吸収層形成層をパターニングすることで、長さLabの光吸収層形成層を得た後、
(C)ストライプ状の光吸収層の繰り返し方向における形成ピッチが2×Pab-2、幅が(Pab-2−Wab)であるレジスト層を全面に形成した後、レジスト層の側壁における厚さがWabであるエッチングマスク層をレジスト層の側壁に形成し、次いで、
(c)レジスト層を除去した後、エッチングマスク層をエッチング用マスクとして、光吸収層形成層、絶縁層形成層及び反射層形成層を順次エッチングし、以て、反射層、絶縁層及び光吸収層の積層構造から成る偏光素子を得る偏光素子の製造方法。
【請求項21】
前記工程(c)に引き続き、偏光素子の上及び基体の上に保護膜を形成する請求項20に記載の偏光素子の製造方法。
【請求項22】
偏光素子の上及び基体の上に保護膜を形成した後、基体の上の保護膜を除去する請求項21に記載の偏光素子の製造方法。
【請求項23】
(A)光電変換素子、及び、
(B)光電変換素子の光入射側に設けられた偏光素子、
を備えた固体撮像素子であって、
偏光素子は、光電変換素子側から、ストライプ状の反射層、反射層上に形成された絶縁層、及び、絶縁層上に離間された状態で形成された複数の断片から成る光吸収層の積層構造を有する固体撮像素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図8】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図8】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−80065(P2012−80065A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100684(P2011−100684)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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