説明

固体撮像素子および電子情報機器

【課題】製造工程も簡易で、信号読み出しも容易であり、素子分離部により素子分離を確実に行い、素子分離部から発生する暗電流を抑制しつつ、N型フォトダイオードの飽和蓄積電子数を増加させる。
【解決手段】光電変換素子部3と信号走査回路部4とを分離するトレンチ分離部5の深さが、周辺回路形成領域7で素子間を分離するトレンチ分離部7cの深さの1/8〜1/2として、画素形成領域6のトレンチ分離部5の深さを浅くする。これによって、トレンチ分離部5の幅の縮小が可能となる。トレンチ分離部5が従来のように基板表面から突出していない。しかも、光電変換素子部3の不純物濃度が最大となるN型電荷蓄積領域の深さがトレンチ分離部5の深さよりも浅く構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体からの画像光を光電変換して撮像する半導体素子で構成された例えばCMOSイメージセンサなどの固体撮像素子および、この固体撮像素子を画像入力デバイスとして撮像部に用いた例えばデジタルビデオカメラおよびデジタルスチルカメラなどのデジタルカメラや、監視カメラなどの画像入力カメラ、スキャナ装置、ファクシミリ装置、テレビジョン電話装置、カメラ付き携帯電話装置などの電子情報機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の固体撮像素子について図5〜図8を用いて説明する。
【0003】
図5は、従来の固体撮像素子の要部構成例を概略的に示す縦断面図である。
【0004】
図5に示すように、従来の固体撮像素子120において、P型シリコン基板121のPウェル内に、N型フォトダイオード122aを持つ光電変換素子部122と、ソース・ドレイン123aおよびゲート電極123bからなるトランジスタを持つ信号走査回路部123と、これらの光電変換素子部122と信号走査回路部123を分離するトレンチ分離部124とを有する画素形成領域125と、CMOSで構成され、ソース・ドレイン126aおよびゲート電極126bからなるトランジスタおよび、これらを分離するトレンチ分離部126cを持つ周辺回路形成領域126とを具備している。
【0005】
N型フォトダイオード122aにて光電変換された信号電荷に、トレンチ分離部124で発生した発生電子がノイズとして加わると、暗いのに明るく表示されてしまったりする。トレンチ分離部124の側壁表面で電子がノイズとして発生し易い。これを解決するために、画素形成領域125のトレンチ分離部124のSi−SiO界面がP型拡散層でカバーすることにより、暗電流成分の電子をホールと相殺させて消滅させることができる。これが特許文献1に開示されている。
【0006】
図6は、特許文献1に開示されている従来のCMOSイメージセンサの要部構成例を概略的に示す縦断面図である。
【0007】
図6に示すように、従来のCMOSイメージセンサ100は、P型シリコン基板101上に配置された光電変換部102と信号走査回路部103を含む複数の単位セルと、光電変換部102と信号走査回路部103とを分離するトレンチ分離領域104と、このトレンチ分離領域104の底面下部で、光電変換部を形成するフォトダイオード拡散層105より深い位置まで形成されたP型の素子分離拡散層106とを有している。このトレンチ分離領域104のSi−SiO界面がP型素子分離拡散層106でカバーすることにより、暗電流成分の電子をホールと相殺させて消滅させることができる。
【0008】
上記構成により、入射光はマイクロレンズ107を介してフォトダイオード拡散層105上に集光されてフォトダイオード拡散層105にて光電変換されて信号電荷を生成する。この信号電荷は、信号読み出しゲート108によりフォトダイオード拡散層105からフローティングディヒュージョンFDに読み出されて信号電圧に変換される。信号走査回路部103により、この信号電圧に応じて増幅されて撮像信号として出力される。
【0009】
図7は、特許文献2に開示されている従来の固体撮像素子の要部構成例を概略的に示す縦断面図である。
【0010】
図7に示すように、従来の固体撮像素子200において、画素形成領域201と周辺回路形成領域202とが同一の半導体基体203上に形成され、周辺回路形成領域302では、半導体基体203に絶縁層が埋め込まれた素子分離層204により第1素子分離部が形成され、画素形成領域201では、半導体基体203内に形成されたP型の素子分離領域205(上部の幅の広い部分205aと、下部の幅の狭い部分205b)と半導体基体203から上方に突出した素子分離層206とから成る第2素子分離部が形成され、光電変換素子207(電荷蓄積領域207aとその上の表面P+層207b)が第2素子分離部の素子分離層206の下まで延在して形成されている。なお、半導体基体203上に絶縁膜208を介してトランジスタのゲート電極などが形成されている。
【0011】
図8は、特許文献3に開示されている従来の固体撮像素子の要部構成例を概略的に示す縦断面図である。
【0012】
図8に示すように、従来の固体撮像素子300において、シリコン基板(またはp型ウェル)301内にフォトダイオード302がn型拡散領域として形成されている。フォトダイオード302は、隣接するMOSトランジスタと素子分離部303により電気的に分離されている。このフォトダイオード302は、撮像領域のMOSトランジスタのソースも兼ねており、他のMOSトランジスタと同様に、フォトダイオード302に隣接する領域には、素子分離部303が形成されている。
【0013】
フォトダイオード302であるn型拡散領域の表面付近には、暗電流抑制層304としてp型拡散領域が形成されている。この場合、暗電流抑制層304は、素子分離部303の周囲にまで伸長している。暗電流抑制層304の光吸収による感度の減少を抑えるため、暗電流抑制層304は、シリコン基板301の表面から10nm以上200nm以下の位置に形成される。特に、感度を向上させるためには、暗電流抑制層304は、シリコン基板301の表面から10nm以上100nm以下の位置に形成される方が好ましい。素子分離部303は、ドライエッチング法により形成する。素子分離部303の深さは、1nm以上200nm以下であり、前述のように、暗電流抑制層304よりも浅い領域で形成されている。暗電流抑制層304、ドレイン305およびフォトダイオード302上にゲート酸化膜306を介してゲート電極が設けられている。
【0014】
この場合に、素子分離部303の深さが、フォトダイオード302において、その不純物濃度が最大となる第1導電型の電荷蓄積領域の深さよりも浅く構成されている。この不純物濃度が最大となる第1導電型の電荷蓄積領域の基板深さは、1nm〜250nmである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2003−142674号公報
【特許文献2】特開2005−347325号公報
【特許文献3】特開2005−101596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
特許文献1では、トレンチ分離領域104で発生した発生電子をP型の素子分離拡散層106で打ち消す構造であるので、発生電子そのものは減少しておらず、特に高温時の暗電流抑制効果が小さくなるという問題があった。また、特許文献1では、トレンチ分離領域104の周囲に素子分離拡散層106が設けられていることから分離領域幅が大きくなるため、相対的にフォトダイオード拡散層105のフォトダイオード面積が小さくなってしまうという問題があった。
【0017】
上記特許文献2では、ポリシリコン層が素子分離層206上に配置されたときに、ポリシリコン層への電圧印加によって素子分離層206下のP型の素子分離領域205が距離があって導通しにくいように構成されているものの、突出した素子分離層206上にポリシリコン層を形成しにくく、段差が大きいために製造工程が複雑になるという問題があった。
【0018】
上記特許文献3では、前述したが、素子分離部303の深さが、フォトダイオード302において、その不純物濃度が最大となる第1導電型の電荷蓄積領域の深さ、1nm〜250nmよりも浅く構成されているが、不純物濃度が最大となる電荷蓄積領域の深さが深ければ深いほど、基板表面から電子(ノイズ)をもらいにくくなるので良いが、その反面、その電荷蓄積領域からの信号電荷が読み出しにくくなるのは避けられない。しかも、素子分離部303の深さが、不純物濃度が最大となる電荷蓄積領域の深さよりも浅ければ浅いほど、素子分離部303上にポリシリコン層があって電圧が印加された場合に、素子分離部303の直下の拡散層を通して導通してしまい、素子分離機能が果たせなくなるという問題があった。
【0019】
本発明は、上記従来の問題を解決するもので、製造工程も簡易で、信号読み出しも容易であり、素子分離部により素子分離を確実に行い、素子分離部から発生する暗電流を抑制しつつ、N型フォトダイオードの飽和蓄積電子数を増加させることができる固体撮像素子および、この固体撮像素子を画像入力デバイスとして撮像部に用いた例えばカメラ付き携帯電話装置などの電子情報機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の固体撮像素子は、被写体からの画像光を光電変換して撮像する複数の光電変換素子および、該光電変換素子から信号電荷を読み出すための信号走査回路部を有する画素形成領域と、該信号走査回路部を駆動制御する周辺回路が設けられた周辺回路形成領域とが同一の半導体基板上に形成されており、該画素形成領域において該光電変換素子と該信号走査回路部とを分離するトレンチ分離部の深さが、該周辺回路形成領域で素子間を分離するトレンチ分離部の深さの1/8〜1/2であり、該光電変換素子の不純物濃度が最大となる一導電型電荷蓄積領域の深さが、該光電変換素子と該信号走査回路部とを分離するトレンチ分離部の深さよりも浅く構成されているものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0021】
また、好ましくは、本発明の固体撮像素子において、前記信号走査回路部を構成するトランジスタのソース・ドレイン拡散層の深さが、前記周辺回路形成領域のトランジスタのソース・ドレイン拡散層の深さよりも浅く構成されている。
【0022】
さらに、好ましくは、本発明の固体撮像素子において、前記光電変換素子と前記信号走査回路部とを分離するトレンチ分離部の深さが、該信号走査回路部を構成するトランジスタのソース・ドレイン拡散層の深さよりも深く構成されている。
【0023】
さらに、好ましくは、本発明の固体撮像素子において、前記周辺回路形成領域で素子間を分離するトレンチ分離部の深さが、該周辺回路形成領域のトランジスタのソース・ドレイン拡散層の深さよりも深く構成されている。
【0024】
さらに、好ましくは、本発明の固体撮像素子において、前記光電変換素子と前記信号走査回路部とを分離するトレンチ分離部の最小幅が、前記周辺回路形成領域で素子間を分離するトレンチ分離部の最小幅より狭く構成されている。
【0025】
さらに、好ましくは、本発明の固体撮像素子において、前記光電変換素子と前記信号走査回路部とを分離するトレンチ分離部の幅が、前記周辺回路形成領域で素子間を分離するトレンチ分離部の幅の1/8〜1/2である。
【0026】
さらに、好ましくは、本発明の固体撮像素子において、前記光電変換素子と前記信号走査回路部とを分離するトレンチ分離部の深さが、前記光電変換素子において、その不純物濃度が最大とな一導電型電荷蓄積領域の深さよりも深く構成されている。
【0027】
さらに、好ましくは、本発明の固体撮像素子において、前記光電変換素子と前記信号走査回路部とを分離するトレンチ分離部の深さは、該トレンチ分離部上に導電層が配置されたときに、該導電層への電圧印加によって該トレンチ分離部下で導通しない深さに設定されている。
【0028】
さらに、好ましくは、本発明の固体撮像素子において、前記光電変換素子と前記信号走査回路部とを分離するトレンチ分離部の底面および側面が、電子ノイズを相殺可能な他導電型拡散層で覆われている。
【0029】
さらに、好ましくは、本発明の固体撮像素子は、CMOS型固体撮像素子である。
【0030】
さらに、好ましくは、本発明の固体撮像素子において、前記半導体基板に形成された前記複数の光電変換素子の上方に、各光電変換素子のそれぞれに対応するように所定色配列のカラーフィルタおよびその上に集光用のマイクロレンズが形成されている表面照射構造である。
【0031】
さらに、好ましくは、本発明の固体撮像素子において、前記複数の光電変換素子が形成された前記半導体基板の裏面側を研磨して厚さを薄くし、その薄くした裏面上に、各光電変換素子のそれぞれに対応するように所定色配列のカラーフィルタおよびその上に集光用のマイクロレンズが形成されている。
【0032】
本発明の電子情報機器は、本発明の上記固体撮像素子を画像入力デバイスとして撮像部に用いたものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0033】
上記構成により、以下、本発明の作用を説明する。
【0034】
本発明においては、被写体からの画像光を光電変換して撮像する複数の光電変換素子と、光電変換素子から信号電荷を読み出すための信号走査回路部とを有する画素形成領域と、信号走査回路部を駆動制御する周辺回路が設けられた周辺回路形成領域とが同一の半導体基板上に形成されており、画素形成領域において光電変換素子と信号走査回路部とを分離するトレンチ分離部の深さが、周辺回路形成領域で素子間を分離するトレンチ分離部の深さの1/8〜1/2であり、光電変換素子の不純物濃度が最大とな一導電型の電荷蓄積領域の深さが、光電変換素子と信号走査回路部とを分離するトレンチ分離部の深さよりも浅く構成されている。
【0035】
これによって、画素形成領域において光電変換素子と信号走査回路部とを分離するトレンチ分離部が従来のように基板表面から突出していないので、製造工程も複雑化せず簡易で、しかも、光電変換素子の不純物濃度が最大とな一導電型の電荷蓄積領域の深さが、光電変換素子と該信号走査回路部とを分離するトレンチ分離部の深さよりも浅く構成したので、信号読み出しも容易である。さらに、画素形成領域において光電変換素子と信号走査回路部とを分離するトレンチ分離部の深さが、周辺回路形成領域で素子間を分離するトレンチ分離部の深さの半分以下であって、1/8〜1/2であることから、素子分離部により素子分離を確実に行い、素子分離部から発生する暗電流を抑制しつつ、トレンチ分離部の幅も小さくなってN型フォトダイオードの受光面積を増加させて飽和蓄積電子数を増加させることが可能となる。
【発明の効果】
【0036】
以上により、本発明によれば、画素形成領域において光電変換素子と信号走査回路部とを分離するトレンチ分離部の深さが、周辺回路形成領域で素子間を分離するトレンチ分離部の深さの1/8〜1/2であり、光電変換素子の不純物濃度が最大とな一導電型の電荷蓄積領域の深さが、光電変換素子と信号走査回路部とを分離するトレンチ分離部の深さよりも浅いため、製造工程も簡易で、信号読み出しも容易であり、素子分離部により素子分離を確実に行い、素子分離部から発生する暗電流を抑制しつつ、N型フォトダイオードの飽和蓄積電子数を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態1における固体撮像素子の要部構成例を概略的に示す縦断面図である。
【図2】本発明の実施形態1における固体撮像素子の要部構成の変形例を概略的に示す縦断面図である。
【図3】本発明の実施形態1における固体撮像素子の要部構成の別の変形例を概略的に示す縦断面図である。
【図4】本発明の実施形態2として、本発明の実施形態1の固体撮像素子を撮像部に用いた電子情報機器の概略構成例を示すブロック図である。
【図5】従来の固体撮像素子の要部構成例を概略的に示す縦断面図である。
【図6】特許文献1に開示されている従来のCMOSイメージセンサの要部構成例を概略的に示す縦断面図である。
【図7】特許文献2に開示されている従来の固体撮像素子の要部構成例を概略的に示す縦断面図である。
【図8】特許文献3に開示されている従来の固体撮像素子の要部構成例を概略的に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下に、本発明の固体撮像素子の実施形態1および、この固体撮像素子の実施形態1を画像入力デバイスとして撮像部に用いた例えばカメラ付き携帯電話装置などの電子情報機器の実施形態2について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図における構成部材のそれぞれの厚みや長さなどは図面作成上の観点から、図示する構成に限定されるものではない。
【0039】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1における固体撮像素子の要部構成例を概略的に示す縦断面図である。
【0040】
図1において、本実施形態1の固体撮像素子1は、P型シリコン基板2内に、N型フォトダイオード3aを持つ光電変換素子部3と、ソース・ドレイン拡散層4aおよびゲート電極4bからなるトランジスタを持つ信号走査回路部4と、これらの光電変換素子部3と信号走査回路部4を分離するトレンチ分離部5とを有する画素形成領域6と、CMOSで構成され、ソース・ドレイン拡散層7aおよびゲート電極7bからなるトランジスタおよび、これらを素子分離するトレンチ分離部7cを持つ周辺回路形成領域7とを具備している。
【0041】
トレンチ分離部5の側壁および底面を覆うように、P型の素子分離拡散層5aを設けている。トレンチ分離部5のSi−SiO界面がP型の素子分離拡散層5a(pウェル)でカバーすることにより、暗電流成分の電子をホールと相殺させて消滅させることができる。
【0042】
トレンチ分離部5の深さが、周辺回路形成領域7で素子間を分離するトレンチ分離部7cの深さの半分以下である。さらに具体的には、トレンチ分離部5の深さがトレンチ分離部7cの深さの1/8〜1/2である。この場合のトレンチ分離部5の深さは50nm〜130nm、さらに好ましくは80nm〜100とする。例えば、周辺回路形成領域7のトレンチ分離部7cの深さが300nmに対して、画素形成領域6におけるトレンチ分離部5の深さがは130nmに設定される。要するに、トレンチ分離部5の深さがトレンチ分離部7cの深さの半分以下にすることにより、素子分離部5から発生する暗電流を大幅に削減することができる。また、トレンチ分離部5の深さがトレンチ分離部7cの深さの1/8よりも小さいと、トレンチ分離部5上にポリシリコン層があってそこに電圧が印加した場合に、トレンチ分離部5の底側で導通してしまう虞があり、素子分離部による素子分離機能を確実に果たすことができない。
【0043】
トレンチ分離部5の深さをトレンチ分離部7cの深さの1/2よりも小さくして、トレンチ分離部5の深さを浅くした分だけ、トレンチ分離部5の幅寸法も小さくできて、その分、N型フォトダイオード3aの受光面積を増加でき、これによって、飽和蓄積電子数を増加させることができる。
【0044】
さらに、画素形成領域6の信号走査回路部4を構成するトランジスタのソース・ドレイン拡散層4aが、周辺回路形成領域7のトランジスタのソース・ドレイン拡散層7aより浅く、例えば周辺回路形成領域7のソース・ドレイン拡散層7aの深さが200nmに対して、画素形成領域6のソース・ドレイン拡散層4aの深さは100nm程度に設定されている。
【0045】
また、N型フォトダイオード3aの不純物濃度が最大となるN型の電荷蓄積領域の深さが、N型フォトダイオード3aと信号走査回路部4のソース・ドレイン拡散層4aとを分離するトレンチ分離部5の深さよりも浅く構成している。また、逆に言うと、N型フォトダイオード3aと信号走査回路部4のソース・ドレイン拡散層4aとを分離するトレンチ分離部5の深さが、N型フォトダイオード3aにおいてその不純物濃度が最大となN型の電荷蓄積領域の深さよりも深く構成されている。
【0046】
これらのソース・ドレイン拡散層4a、7aの深さはそれぞれのトレンチ分離部5、7cの深さよりも浅く設定されなければならない。要するに、ソース・ドレイン拡散層4aの深さがトレンチ分離部5よりも深いと、間にトレンチ分離部5があって互いに独立すべきソース・ドレイン拡散層4a間でリークが発生してしまう虞が高くなる。また同様に、ソース・ドレイン拡散層7aの深さがトレンチ分離部7cよりも深いと、間にトレンチ分離部7cがあって互いに独立すべきソース・ドレイン拡散層7a,7a間でリークが発生してしまう虞が高い。よって、N型フォトダイオード3aと信号走査回路部4のソース・ドレイン拡散層4aとを分離するトレンチ分離部5の深さが、信号走査回路部4を構成するトランジスタのソース・ドレイン拡散層4aの深さよりも深く構成されている。また、周辺回路形成領域7で素子間を分離するトレンチ分離部7cの深さが、周辺回路形成領域7のトランジスタのソース・ドレイン拡散層7aの深さよりも深く構成されている。
【0047】
また、画素形成領域6のトレンチ分離部5の最小幅が、周辺回路形成領域7のトレンチ分離部7cの最小幅より狭く、例えば、周辺回路形成領域7のトレンチ分離部7cの最小幅が0.25μmに対して、画素形成領域6のトレンチ分離部5の最小幅が0.18μmに設定される。前述した通り、トレンチ分離部5の深さがトレンチ分離部7cの深さの1/8〜1/2であることから、トレンチ分離部5の深さを浅くした分だけ、トレンチ分離部5の幅寸法も小さくできて、トレンチ分離部5の幅も、トレンチ分離部7cの幅の1/5〜4/5になり得る。
【0048】
以上により、本実施形態1の固体撮像素子1は、画素形成領域6と周辺回路形成領域7とが同一の半導体基板2上に形成されており、画素形成領域6のトレンチ分離部5の深さが周辺回路形成領域7のトレンチ分離部7cの深さの半分以下であり、かつ光電変換素子部3の不純物濃度が最大となるN型電荷蓄積領域の深さが、光電変換素子部3と信号走査回路部4とを分離するトレンチ分離部5の深さよりも浅く構成している。
従来の固体撮像素子では、トレンチ分離部の深さは周辺回路形成領域におけるウェル境界耐圧によって決定されるが、周辺CMOS回路ではトレンチ分離部の底部にウェル境界を設けて適正なウェル境界耐圧が得られるトレンチ分離部の深さを設定する。しかしながら、画素形成領域は単一ウェルで形成するので、ウェル境界は存在せず、トレンチ分離部の深さはソース・ドレイン拡散層の深さのみに制限される。したがって、本実施形態1の固体撮像素子1のように、画素形成領域4のソース・ドレイン拡散層4aの深さの調整に応じてトレンチ分離部5を浅くすることが可能となる。また、トレンチ分離部5の幅も、トレンチ分離部5の深さとの比(アスペクト比)で決定されるので、トレンチ分離部5を浅くした分だけ、その分離幅を狭めることが可能となる。
【0049】
したがって、画素形成領域6のトレンチ分離部5の深さを浅くすることにより、Si−SiO界面の表面積が大幅に減少して暗電流を大幅に抑制することができる。また、トレンチ分離部5の幅の縮小が可能となり、N型フォトダイオード3aの表面積(または受光面積)を増やして飽和蓄積電子数を向上させることができる。これによって、素子分離部5から発生する暗電流を抑制しつつ、N型フォトダイオード3aの飽和蓄積電子数を増加させることができる。
【0050】
また、画素形成領域6において光電変換素子部3と信号走査回路部4とを分離するトレンチ分離部5が従来のように基板表面から突出していないので、製造工程も複雑化せず簡易であり、しかも、光電変換素子部3の不純物濃度が最大となN型電荷蓄積領域の深さが、光電変換素子部3と信号走査回路部4とを分離するトレンチ分離部5の深さよりも浅く構成したので、信号読み出しも容易である。
【0051】
なお、本実施形態1では、図1のN型フォトダイオード3aの上側に、所定色配列のカラーフィルタおよびその上に集光用のマイクロレンズが設けられている表面照射構造について説明したが、これに限らず、図2に示すように、裏面側を研磨して薄くした半導体基板2Aの研磨面側(図2の下側)に、各N型フォトダイオード3aにそれぞれ対応させて所定色配列のカラーフィルタおよびその上に集光用のマイクロレンズが設けられる厚さ2μm程度の裏面照射構造についても、本実施形態1の固体撮像素子1を適応した固体撮像素子1Aを得ることができる。なお、図2では、図1の場合と同様の作用効果を奏する部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0052】
なお、本実施形態1では、トレンチ分離部5の深さがトレンチ分離部7cの深さの1/8〜1/2とし、図1ではトレンチ分離部5の深さがトレンチ分離部7cの深さの1/2.5程度の場合について示したが、図3ではトレンチ分離部5の深さがトレンチ分離部7cの深さの1/8の場合について示している。この場合、画素形成領域6Bにおいて光電変換素子部3Bとソース・ドレイン拡散層4aBとを分離するトレンチ分離部5Bが、トレンチ分離部7cに比べて1/8に小さくなったことから、N型フォトダイオード3bの受光面積がその分、広くなっている。
【0053】
(実施形態2)
図5は、本発明の実施形態2として、本発明の実施形態1の固体撮像素子を撮像部に用いた電子情報機器の概略構成例を示すブロック図である。
【0054】
図5において、本実施形態2の電子情報機器90は、上記実施形態1の固体撮像素子からの撮像信号を所定の信号処理をしてカラー画像信号を得る固体撮像装置91と、この固体撮像装置91からのカラー画像信号を記録用に所定の信号処理した後にデータ記録可能とする記録メディアなどのメモリ部92と、この固体撮像装置91からのカラー画像信号を表示用に所定の信号処理した後に液晶表示画面などの表示画面上に表示可能とする液晶表示装置などの表示部93と、この固体撮像装置91からのカラー画像信号を通信用に所定の信号処理をした後に通信処理可能とする送受信装置などの通信部手段94と、この固体撮像装置91からのカラー画像信号を印刷用に所定の印刷信号処理をした後に印刷処理可能とするプリンタなどの画像出力部95とを有している。なお、この電子情報機器90として、これに限らず、固体撮像装置91の他に、メモリ部92と、表示部93と、通信部94と、プリンタなどの画像出力部95とのうちの少なくともいずれかを有していてもよい。
【0055】
この電子情報機器90としては、前述したように例えばデジタルビデオカメラ、デジタルスチルカメラなどのデジタルカメラや、監視カメラ、ドアホンカメラ、車載用後方監視カメラなどの車載用カメラおよびテレビジョン電話用カメラなどの画像入力カメラ、スキャナ装置、ファクシミリ装置、カメラ付き携帯電話装置および携帯端末装置(PDA)などの画像入力デバイスを有した電子機器が考えられる。
【0056】
したがって、本実施形態3によれば、この固体撮像装置91からのカラー画像信号に基づいて、これを表示画面上に良好に表示したり、これを紙面にて画像出力部95により良好にプリントアウト(印刷)したり、これを通信データとして有線または無線にて良好に通信したり、これをメモリ部92に所定のデータ圧縮処理を行って良好に記憶したり、各種データ処理を良好に行うことができる。
【0057】
以上のように、本発明の好ましい実施形態1、2を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態1、2に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態1、2の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、被写体からの画像光を光電変換して撮像する半導体素子で構成された例えばCMOSイメージセンサなどの固体撮像素子および、この固体撮像素子を画像入力デバイスとして撮像部に用いた例えばデジタルビデオカメラおよびデジタルスチルカメラなどのデジタルカメラや、監視カメラなどの画像入力カメラ、スキャナ装置、ファクシミリ装置、テレビジョン電話装置、カメラ付き携帯電話装置などの電子情報機器の分野において、画素形成領域において光電変換素子と信号走査回路部とを分離するトレンチ分離部の深さが、周辺回路形成領域で素子間を分離するトレンチ分離部の深さの1/8〜1/2であり、光電変換素子の不純物濃度が最大とな一導電型の電荷蓄積領域の深さが、光電変換素子と信号走査回路部とを分離するトレンチ分離部の深さよりも浅いため、製造工程も簡易で、信号読み出しも容易であり、素子分離部により素子分離を確実に行い、素子分離部から発生する暗電流を抑制しつつ、N型フォトダイオードの飽和蓄積電子数を増加させることができる。
【符号の説明】
【0059】
1、1A、1B 固体撮像素子
2、2A P型シリコン基板
3,3B 光電変換素子部
3a、3b、3aB N型フォトダイオード
4,4B 信号走査回路部
4a、4aB ソース・ドレイン拡散層
4b ゲート電極
5、5B トレンチ分離部
5a、5b P型素子分離拡散層
6、6B 画素形成領域
7 周辺回路形成領域
7a ソース・ドレイン拡散層
7b ゲート電極
7c トレンチ分離部
90 電子情報機器
91 固体撮像装置
92 メモリ部
93 表示部
94 通信部
95 画像出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体からの画像光を光電変換して撮像する複数の光電変換素子および、該光電変換素子から信号電荷を読み出すための信号走査回路部を有する画素形成領域と、該信号走査回路部を駆動制御する周辺回路が設けられた周辺回路形成領域とが同一の半導体基板上に形成されており、
該画素形成領域において該光電変換素子と該信号走査回路部とを分離するトレンチ分離部の深さが、該周辺回路形成領域で素子間を分離するトレンチ分離部の深さの1/8〜1/2であり、該光電変換素子の不純物濃度が最大となる一導電型電荷蓄積領域の深さが、該光電変換素子と該信号走査回路部とを分離するトレンチ分離部の深さよりも浅く構成されている固体撮像素子。
【請求項2】
前記信号走査回路部を構成するトランジスタのソース・ドレイン拡散層の深さが、前記周辺回路形成領域のトランジスタのソース・ドレイン拡散層の深さよりも浅く構成されている請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項3】
前記光電変換素子と前記信号走査回路部とを分離するトレンチ分離部の深さが、該信号走査回路部を構成するトランジスタのソース・ドレイン拡散層の深さよりも深く構成されている請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項4】
前記周辺回路形成領域で素子間を分離するトレンチ分離部の深さが、該周辺回路形成領域のトランジスタのソース・ドレイン拡散層の深さよりも深く構成されている請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項5】
前記光電変換素子と前記信号走査回路部とを分離するトレンチ分離部の最小幅が、前記周辺回路形成領域で素子間を分離するトレンチ分離部の最小幅より狭く構成されている請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項6】
前記光電変換素子と前記信号走査回路部とを分離するトレンチ分離部の最小幅が、前記周辺回路形成領域で素子間を分離するトレンチ分離部の幅の1/5〜4/5である請求項5に記載の固体撮像素子。
【請求項7】
前記光電変換素子と前記信号走査回路部とを分離するトレンチ分離部の深さが、前記光電変換素子において、その不純物濃度が最大とな一導電型電荷蓄積領域の深さよりも深く構成されている請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項8】
前記光電変換素子と前記信号走査回路部とを分離するトレンチ分離部の深さは、該トレンチ分離部上に導電層が配置されたときに、該導電層への電圧印加によって該トレンチ分離部下で導通しない深さに設定されている請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項9】
前記光電変換素子と前記信号走査回路部とを分離するトレンチ分離部の底面および側面が、電子ノイズを相殺可能な他導電型拡散層で覆われている請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項10】
CMOS型固体撮像素子である請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項11】
前記半導体基板に形成された前記複数の光電変換素子の上方に、各光電変換素子のそれぞれに対応するように所定色配列のカラーフィルタおよびその上に集光用のマイクロレンズが形成されている表面照射構造である請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項12】
前記複数の光電変換素子が形成された前記半導体基板の裏面側を研磨して厚さを薄くし、その薄くした裏面上に、各光電変換素子のそれぞれに対応するように所定色配列のカラーフィルタおよびその上に集光用のマイクロレンズが形成されている請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の固体撮像素子を画像入力デバイスとして撮像部に用いた電子情報機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−84748(P2012−84748A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230941(P2010−230941)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】