説明

固体撮像素子

【課題】 高感度化及び高い色再現性の双方に対応できる固体撮像素子を実現する。
【解決手段】 入射される光を電荷に変換する光電変換部が形成された半導体基板と、光電変換部に対応して配置され、屈折率の異なる少なくとも2種以上の膜が積層された色分離用の干渉フィルタと、干渉フィルタが配置された光電変換部に対応して配置された色分離用の光吸収フィルタと、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルタを備えた固体撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサに代表される固体撮像素子を内蔵したビデオカメラや電子カメラが一般に普及している。これらカメラに内蔵される固体撮像素子は、入射される光から所定の波長成分を選択的に透過させる色分離用の光学フィルタを備えている。この色分離用の光学フィルタとしては、例えば顔料や染料を用いた有機系の光吸収フィルタや、多層膜構造の干渉フィルタなどが挙げられる(特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−180621号公報
【特許文献2】特開2008−066470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば光学フィルタとして光吸収フィルタを用いる場合、原色系の光吸収フィルタであれば色再現性が高いが、透過率が比較的低い。また、補色系の光吸収フィルタであれば比較的透過率が高くなるが、色再現性が悪くなる。一方、光学フィルタとして干渉フィルタを用いる場合、特定の波長域で高い透過率を得ることができるものの、目的の分光特性を得るためには、その構造が複雑になり、また、透過率が低くなる。このように、これらフィルタのいずれかを用いた固体撮像素子においては、高感度化及び高い色再現性の双方に対応できる固体撮像素子を実現することは難しい。
【0005】
本発明は、高感度化及び高い色再現性の双方に対応できる固体撮像素子を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の固体撮像素子は、入射される光を電荷に変換する光電変換部が形成された半導体基板と、前記光電変換部に対応して配置され、屈折率の異なる少なくとも2種以上の膜が積層された色分離用の干渉フィルタと、前記干渉フィルタが配置された前記光電変換部に対応して配置された色分離用の光吸収フィルタと、を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、前記干渉フィルタの透過中心波長における透過率は85%以上であり、前記光吸収フィルタの可視光領域における最小の透過率は、5%以上であることが好ましい。
【0008】
また、前記干渉フィルタの透過中心波長は、前記光吸収フィルタの透過中心波長と略一致していることが好ましい。
【0009】
また、前記干渉フィルタの透過率の分布における半値幅は、前記光吸収フィルタの半値幅よりも広いことが好ましい。
【0010】
また、前記干渉フィルタが透過する光の波長域は、前記光吸収フィルタが透過する光の波長域の少なくとも一部と重複することが好ましい。
【0011】
また、前記半導体基板の上方に前記光電変換部を覆うことなく形成された遮光膜を備え、 前記干渉フィルタは、前記光電変換部の受光面と前記遮光膜との間の位置に配置されることが好ましい。
【0012】
また、前記干渉フィルタは、前記光電変換部と前記光吸収フィルタとの間に配置されることが好ましい。
【0013】
この場合、前記干渉フィルタが積層されるパッシベーション膜と、前記干渉フィルタ上に積層される有機材料からなる平坦化膜とを備えており、前記色吸収フィルタは、前記有機材料からなる平坦化膜上に積層されることが好ましい。
【0014】
また、前記光吸収フィルタは、原色フィルタ又は補色フィルタであることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高感度化及び高い色再現性の双方に対応できる固体撮像素子を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の固体撮像素子の一例を示す概略構成図である。
【図2】単位画素の構成を示す回路図である。
【図3】固体撮像素子の一部を模式的に示す概略断面図である。
【図4】(a)は原色系の光吸収フィルタの透過率分布、(b)は干渉フィルタにおける透過率分布、(c)はこれらフィルタを組み合わせたカラーフィルタにおける透過率分布を示すグラフである。
【図5】(a)は補色系の光吸収フィルタの透過率分布、(b)は干渉フィルタにおける透過率分布、(c)はこれらフィルタを組み合わせたカラーフィルタにおける透過率分布を示すグラフである。
【図6】カラーフィルタの配列を変更したときの、固体撮像素子の一部を模式的に示す概略断面図である。
【図7】干渉フィルタを反射防止膜として兼用する場合の、固体撮像素子の一部を模式的に示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の固体撮像素子の一例を示す概略構成図である。以下、固体撮像素子として、CMOS型の固体撮像素子を例に取り上げて説明する。図1に示すように、固体撮像素子10は、垂直走査回路11、水平走査回路12、2次元状に配置された複数の単位画素13、読み出し回路14、出力アンプ15を有している。各画素で光電変換により生じた電気信号は垂直走査回路11によって読み出し回路14に行単位で取り出され、水平走査回路12によって列単位で出力アンプ15を介して出力端子16に画像信号として出力される。なお、複数の単位画素13は、各画素に対応して、例えばベイヤー配列によって配列された赤(R)色フィルタ、緑(G)色フィルタ又は青(B)色フィルタを有しており、いずれかの色成分の画素となる。
【0018】
図2は、単位画素13を示す回路図である。図2に示すように、各単位画素13は、選択トランジスタ21、ソースフォロアの増幅トランジスタ22、リセットトランジスタ23、転送トランジスタ24、フォトダイオード25、フローティングディフュージョン(FD)26から構成されている。被写体から入射される光を電荷に変換する光電変換部としてのフォトダイオード25で生じた電荷は、転送トランジスタ24の制御によりフローティングディフュージョン(FD)26へ転送される。なお、図2中のVccは電源である。
【0019】
図1及び図2に示すように、単位画素13の選択トランジスタ21のゲートは行毎に選択線31に共通に接続されている。単位画素13のリセットトランジスタ23のゲートは、行毎にリセット線32に共通に接続されている。単位画素13の転送トランジスタ24のゲートは、行毎に転送線33に共通に接続されている。単位画素13の選択トランジスタ21のソースは、列毎に垂直信号線34に共通に接続されている。選択線31、リセット線32及び転送線33は、垂直走査回路11に接続されている。垂直信号線34は、読み出し回路14に接続されている。
【0020】
以下、固体撮像素子10の構成について説明する。図3は、固体撮像素子の一部の構成を模式的に示す概略断面図である。なお、図3においては、図の煩雑さを防止するため、ハッチングは省略してある。
【0021】
図3は単位画素13の断面図を示す。図3に示すように、単位画素13は、半導体基板としてのシリコン基板41に形成されたフォトダイオード25を有する。シリコン基板41上には、例えばシリコン酸化膜からなる層間絶縁膜42,43,44が、シリコン基板41側から順に形成される。また、1層目アルミニウム配線層45、2層目アルミニウム配線層46及び3層目アルミニウム配線層47が層間絶縁膜42,43,44上にそれぞれ形成され、これらによって、図1及び図2に示す回路の配線がなされている。これらアルミニウム配線層45,46,47は、各単位画素13の受光領域以外を覆う遮光膜を兼ねている。なお、図面には示していないが、各単位画素13を構成する転送トランジスタ24等の他の回路は、シリコン基板41に設けられる。また、この固体撮像素子10には、不図示のIRカットフィルタが設けられ、可視光の波長域を除く波長域の光が除去される。
【0022】
この固体撮像素子10は、3層目のアルミニウム配線層47の上方に、窒化シリコン膜等からなるパッシベーション膜としての絶縁層48、干渉フィルタ49、有機材料からなる平坦化層50、吸収フィルタ51、有機材料からなる平坦化層52の順で積層される。この平坦化層52の上部に、入射光をフォトダイオード25に集光させるマイクロレンズ54がさらに設けられる。なお、干渉フィルタ49及び光吸収フィルタ51は、フォトダイオード25の上方、すなわちフォトダイオードの受光面と、マイクロレンズ54との間に、それぞれ位置する。これら干渉フィルタ49と吸収フィルタ51とによりカラーフィルタが構成される。このカラーフィルタの作用により、マイクロレンズ54により集光される光が、R色、G色、B色のいずれかの色成分の光としてフォトダイオード25に入射する。
【0023】
干渉フィルタ49は、二酸化シリコン膜等の低屈折率層及び二酸化チタン膜等の高屈折率層が、特に制限されないが、交互に5〜7層積層した多層膜構造からなる。周知のように、干渉フィルタ49は、該干渉フィルタ49に入射する入射光と、二酸化シリコン膜と二酸化チタン膜との界面において生じる反射光とを干渉させることで、入射光の透過率に波長依存性を持たせる。この波長依存性は、二酸化シリコン膜及び二酸化チタン膜の膜厚や層数によって任意に設定される。なお、この干渉フィルタ49は、無機系の材料から形成されており、透過中心波長の透過率は85%以上であることが望ましい。
【0024】
光吸収フィルタ51は、顔料や染料など有機系の材料から形成される。この吸収フィルタ51は、複数の色成分のいずれかの色成分に該当する波長域の光を透過させ、それ以外の波長域の光を吸収する。この光吸収フィルタ51としては、R色,G色,B色のいずれかの色成分に該当する波長域の光を透過させる原色系フィルタ、又は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)のいずれかの色成分に該当する波長域の光を透過させる補色系フィルタのいずれかの光吸収フィルタが用いられる。なお、この光吸収フィルタ51は、可視光領域における透過率の最小値は5%以上であることが望ましい。
【0025】
以下、第1実施形態として、干渉フィルタ49と原色系の光吸収フィルタ51とからなるカラーフィルタの場合について説明する。
【0026】
(第1実施形態)
以下、単位画素がG色画素となる場合について説明する。この場合、図4(a)に示すように、光吸収フィルタ51として、G色光、つまり、白色光が入射されたときの透過率が最大となる波長(透過中心波長)は約530nmであり、その透過率は約90%の光吸収フィルタを用いた。また、この光吸収フィルタ51における透過率の分布から得られる半値幅は約120nmであった。この光吸収フィルタ51の可視光域(例えば400〜700nm)における透過率の最小値は、約20%以下に抑えた。なお、透過率は、フィルタから出射される各波長の光量をフィルタに入射される各波長の光量で除算した値である。後述するが、本実施形態においては、光吸収フィルタ51の膜厚を、光吸収フィルタのみからなる従来のカラーフィルタの膜厚に比較して薄く形成した。このため、本実施形態における光吸収フィルタ51の透過率は、可視領域において従来のカラーフィルタの透過率よりも高くなる。
【0027】
次に、干渉フィルタ49について説明する。図4(b)に示すように、干渉フィルタ49として、光吸収フィルタ51と同様に、G色光を透過させる干渉フィルタを用いた。なお、この干渉フィルタ49は、100nmの膜厚の二酸化シリコン膜及び二酸化チタン膜を交互に5〜7層積層したものであり、白色光が入射されたときの透過率の最小値は可視光の波長域において約20%以下に抑えた。また、この干渉フィルタ49の透過中心波長は、光吸収フィルタ51と一致する約530nmであり、その透過率は約100%であった。また、干渉フィルタ49における透過率の分布から得られる半値幅は約220nmであり、光吸収フィルタ51の半値幅よりも広く設定した。
【0028】
次に、上述した干渉フィルタ49と光吸収フィルタ51とから形成される本実施形態のカラーフィルタと、光吸収フィルタのみで形成される従来のカラーフィルタとを比較した場合について説明する。以下、光吸収フィルタのみでカラーフィルタを形成した場合の従来の光吸収フィルタに対しては、符号を付さずに説明する。干渉フィルタ49と光吸収フィルタ51とからカラーフィルタを形成する場合の光吸収フィルタ51の膜厚は、光吸収フィルタのみでカラーフィルタを形成した場合の膜厚の1/2に設定した。
【0029】
図4(c)に示すように、光吸収フィルタのみから形成される従来のカラーフィルタの場合、白色光が入射されたときの透過率の最小値は可視光の波長域において約5%以下に抑えた。また、従来のカラーフィルタの中心波長は波長530nmであり、その透過率は約80%であった。この場合、透過率の分布から得られる半値幅は、約90nmであった。このように、従来の光吸収フィルタおよび本実施形態の光吸収フィルタ51の透過中心波長は同一であるものの、可視光領域における透過率は異なる。従来の光吸収フィルタにおいては、G色光以外の波長帯域の光の透過率を低く抑えるために光吸収フィルタの膜厚を厚くせざるを得ず、その結果、透過中心波長を含む透過光領域の透過率が下がり、固体撮像素子の感度を低下させる要因のひとつとなっていた。
【0030】
一方、干渉フィルタ49と光吸収フィルタ51とから形成されるカラーフィルタの場合、可視光域(例えば400〜700nm)における透過率の最小値は約5%以下に抑えられた。また、このカラーフィルタは、白色光が入射されたときの透過率が波長530nmで最大となり、その透過率は約90%であった。また、カラーフィルタにおける透過率の分布から得られる半値幅は、約110nmであった。
【0031】
つまり、光吸収フィルタ51と干渉フィルタ49とから形成されるカラーフィルタでは、光吸収フィルタ51の膜厚を、従来の吸収フィルタの膜厚よりも薄くすることで、カラーフィルタを透過する光のうち、目的となるG色以外の色成分の波長域の透過率を維持した状態で、G色の波長域における透過率を10%増加させることができた。また、吸収フィルタ51と、それよりも半値幅の広い干渉フィルタ49とを組み合わせることで、透過率分布における半値幅を、従来の吸収フィルタで得られる半値幅よりも約20%増加させることができる。これによれば、光吸収フィルタ51と干渉フィルタ49とからなるカラーフィルタを固体撮像素子10に設けることで、原色フィルタ使用時における色再現性を維持しつつ、高感度化に対応した固体撮像素子を実現できる。
【0032】
なお、第1実施形態では、G色画素について説明しているが、R色画素、B色画素についても同様である。例えばR色画素の場合には、R色光(例えば透過中心波長630nm)を透過させる光吸収フィルタと、該光吸収フィルタよりも透過率の分布における半値幅が広く設定された、R色光を透過させる干渉フィルタとをカラーフィルタとしてフォトダイオード25の上方に配置すればよい。同様にして、B色画素の場合には、B色光(例えば450nm)を透過させる光吸収フィルタと、該光吸収フィルタよりも透過率の分布における半値幅が広く設定された、B色光を透過させる干渉フィルタとをカラーフィルタとしてフォトダイオードの上方に配置すればよい。なお、これら場合についても光吸収フィルタの膜厚は、光吸収フィルタのみでカラーフィルタを形成する場合の膜厚の1/2とすればよい。また、光吸収フィルタの膜厚を光吸収フィルタのみでカラーフィルタを形成する場合の膜厚の1/2としているが、膜厚については、適宜設定してよい。
【0033】
第1実施形態では、原色フィルタと干渉フィルタとの組合せについて説明しているが、これに限定される必要はなく、補色フィルタと干渉フィルタとの組合せであってもよい。以下、第2実施形態として、補色フィルタと干渉フィルタとの組合せからなるカラーフィルタについて説明する。
【0034】
(第2実施形態)
この第2実施形態においても、単位画素がG色画素について説明する。図5(a)に示すように、補色フィルタとして、イエローの波長域を透過させる色吸収フィルタ51を用いた。この色吸収フィルタ51の可視光域(例えば400〜700nm)における透過率の最小値は、5%以下に抑えた。この光吸収フィルタ51の透過率の最大値は約100%であり、この最大値は波長550nm以上の波長域で達成された。つまり、この光吸収フィルタ51は、短波長カットフィルタとして機能する。
【0035】
一方、図5(b)に示すように、干渉フィルタ49として、光吸収フィルタが透過する光の波長域の少なくとも一部と重複するシアンの波長域を透過させる干渉フィルタを用いた。この干渉フィルタ49の可視光域(例えば400〜700nm)における透過率の最小値は、5%以上以下に抑えた。この干渉フィルタ49の透過率の最大値は約100%であり、この最大値は波長525nm以下の波長域で達成された。つまり、この干渉フィルタ49は、長波長カットフィルタとして機能する。
【0036】
このような干渉フィルタ49と光吸収フィルタ51とから形成されたカラーフィルタについて説明する。図5(c)に示すように、このカラーフィルタに対して白色光を透過させたときの透過率は、440nm以下の波長域及び660nm以上の波長域で最小値となり、その透過率は約5%以下に抑えられた。また、カラーフィルタの透過中心波長は530nmであり、その透過率は約97%であった。さらに、このカラーフィルタを透過した光の透過率の分布における半値幅は約120nmであった。
【0037】
つまり、この場合も、光吸収フィルタ51及び干渉フィルタ49からなるカラーフィルタにおける透過率の最大値は、図4(c)に示す吸収フィルタのみからなる従来のカラーフィルタの透過率の最大値に比べて約17%増加させ、半値幅を約30%増加させることができた。これによれば、目的となるG色以外の波長域の透過率を維持した状態で、G色の波長域の透過率を増加させ、透過させる波長域を拡大することができる。また、干渉フィルタ49と補色系の色吸収フィルタ51とを組合せたカラーフィルタを用いることによって、図4(c)に示すような色分離特性を有するG色画素を実現することができる。このような干渉フィルタ49と光吸収フィルタ51とからなるカラーフィルタを固体撮像素子10に設けることで、高感度化と高い色再現性との双方に対応した固体撮像素子10が実現できる。また、補色フィルタと干渉フィルタとの組合せからなるカラーフィルタでは、干渉フィルタの中心波長を任意に変更することによって所望の色分離特性を有するカラーフィルタを形成することができるため、所望の色再現性を容易に実現することができる。
【0038】
なお、G色画素の場合に用いるカラーフィルタとして、イエローの波長域の光を透過させる光吸収フィルタとシアンの波長域の光を透過させる干渉フィルタとからなるカラーフィルタとしているが、この他に、シアンの波長域の光を透過させる光吸収フィルタと、イエローの波長域の光を透過させる干渉フィルタとからG色画素に用いるカラーフィルタを形成することも可能である。
【0039】
なお、第2実施形態についても、第1実施形態と同様に、G色画素についてのみ説明しているが、R色画素、B色画素についても同様の方法で作成することができる。例えばR画素の場合には、白色光がカラーフィルタを透過したときの透過率が最大値となる波長が例えば630nmとなるように、光吸収フィルタを透過する光の波長域と、干渉フィルタを透過する光の波長域とを設定すればよい。また、B色画素の場合も同様に、白色光がカラーフィルタを透過したときの透過率が最大となる波長が例えば450nmとなるように、光吸収フィルタを透過する光の波長域と、干渉フィルタを透過する光の波長域とを設定すればよい。
【0040】
上述した第1実施形態では、原色フィルタと図4(b)に示した透過特性を有する干渉フィルタとの組み合わせからなるカラーフィルタについて説明しているが、この他に、例えば、G色画素の場合には、G色の波長域を透過させる原色フィルタと、図5(b)に示す透過特性を有する干渉フィルタ(シアンの波長域を透過させる干渉フィルタ)との組み合わせからなるカラーフィルタを形成してもよい。
【0041】
また、上述した第1実施形態では、干渉フィルタをR色画素、G色画素及びB色画素ごとに色分離特性に合わせて形成するようにしたが、この限りではなく、各色画素に用いる干渉フィルタを共通化し、原色フィルタにて透過させる波長域を各色画素毎に変更することも可能である。その場合、R色画素、B色画素の出力はG色画素と比べて若干低くなるが、原色系イメージセンサでは、一般的にG色画素の出力を最も大きくするので、むしろ好都合である。
【0042】
また、上述した実施形態では、シリコン基板41側からマイクロレンズ54へ向かって、干渉フィルタ49、吸収フィルタ51の順で配置した実施形態としているが、これに限定される必要はなく、図6に示すように、シリコン基板41側から、吸収フィルタ51、干渉フィルタ49の順で配置することも可能である。なお、この場合、図示していないが、パッシベーション膜48上に有機材料からなる平坦化膜を積層し、当該平坦化膜上に吸収フィルタ51を積層するのが好ましい。
【0043】
また、上述した実施形態では、パッシベーション膜48等の絶縁層の上部に干渉フィルタ49を配置した実施形態としているが、これに限定される必要はなく、図7に示すように、干渉フィルタ49を、シリコン基板41に設けられるフォトダイオード25の上面に配置することも可能である。この場合、干渉フィルタ49は、フォトダイオード25の受光面とパッシベーション膜48上に積層された遮光膜との間の位置に配置されて、フォトダイオード25を被覆することになるので、干渉フィルタ49を反射防止膜と兼用させることができる。この場合、反射防止膜として兼用できるという効果の他に、シリコン基板41の上面に積層される層間膜42のスペースを有効利用でき、第1実施形態で示した干渉フィルタ49の分薄くなるので、固体撮像素子10の薄型化を図るという効果が得られる。さらに、干渉フィルタ49だけでなく、光吸収フィルタ51も層間膜42に配置することも可能である。なお、図7において図示していないが、パッシベーション膜48上に有機材料からなる平坦化膜を積層し、当該平坦化膜上に吸収フィルタ51を積層するのが好ましい。
【0044】
また、上述した実施形態では、表面照射型の固体撮像素子を例示するが、これに限定されるものではなく、裏面照射型の固体撮像素子であってもよい。
【0045】
また、上述した実施形態では、固体撮像素子としてCMOS型の固体撮像素子を例に挙げて説明しているが、他のMOS型の固体撮像素子や、CCD型の固体撮像素子に本発明を用いることも可能である。
【0046】
なお、上述した実施形態では、固体撮像素子について説明しているが、本実施形態で述べた固体撮像素子は、デジタルカメラなどに代表される撮像装置や、カメラ機能を備えた携帯電話機などの携帯型端末機や、コンピュータなどに接続され、インターネット回線を通じて送信する際に静止画像や動画像を取得することが可能なwebカメラなどに搭載することが可能である。
【符号の説明】
【0047】
10…固体撮像素子、13…単位画素、25…フォトダイオード、49…干渉フィルタ、51…光吸収フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射される光を電荷に変換する光電変換部が形成された半導体基板と、
前記光電変換部に対応して配置され、屈折率の異なる少なくとも2種以上の膜が積層された色分離用の干渉フィルタと、
前記干渉フィルタが配置された前記光電変換部に対応して配置された色分離用の光吸収フィルタと、
を備えたことを特徴とする固体撮像素子。
【請求項2】
請求項1に記載の固体撮像素子において、
前記干渉フィルタの透過中心波長における透過率は85%以上であり、
前記光吸収フィルタの可視光領域における最小の透過率は、5%以上であることを特徴とする固体撮像素子。
【請求項3】
請求項1に記載の固体撮像素子において、
前記干渉フィルタの透過中心波長は、前記光吸収フィルタの透過中心波長と略一致していることを特徴とする固体撮像素子。
【請求項4】
請求項3に記載の固体撮像素子において、
前記干渉フィルタの透過率の分布における半値幅は、前記光吸収フィルタの半値幅よりも広いことを特徴とする固体撮像素子。
【請求項5】
請求項1に記載の固体撮像素子において、
前記干渉フィルタが透過する光の波長域は、前記光吸収フィルタが透過する光の波長域の少なくとも一部と重複することを特徴とする固体撮像素子。
【請求項6】
請求項1に記載の固体撮像素子において、
前記半導体基板の上方に前記光電変換部を覆うことなく形成された遮光膜を備え、
前記干渉フィルタは、前記光電変換部の受光面と前記遮光膜との間の位置に配置されることを特徴とする固体撮像素子。
【請求項7】
請求項1に記載の固体撮像素子において、
前記干渉フィルタは、前記光電変換部と前記光吸収フィルタとの間に配置されることを特徴とする固体撮像素子。
【請求項8】
請求項7に記載の固体撮像素子において、
前記干渉フィルタが積層されるパッシベーション膜と、
前記干渉フィルタ上に積層される有機材料からなる平坦化膜とを備えており、
前記色吸収フィルタは、前記有機材料からなる平坦化膜上に積層されることを特徴とする固体撮像素子。
【請求項9】
請求項1から請求項8にいずれか1項に記載の固体撮像素子において、
前記光吸収フィルタは、原色フィルタ又は補色フィルタであることを特徴とする固体撮像素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−243785(P2011−243785A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115220(P2010−115220)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】