説明

固体撮像素子

【課題】画素部の金属汚染や受光部の光電変換素子表面へのRIEによるダメージの発生を抑制することができる固体撮像素子を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、固体撮像素子は、所定の波長の光を透過させるカラーフィルタ51L,51M,51Sと、カラーフィルタ51L,51M,51Sを透過する光を検出するフォトダイオードPDと、を含む画素PL,PM,PSを、異なる波長の光を検出するように複数有する絵素が、所定の周期で2次元的に基板11上に配置される。絵素中の最も長い波長の光を検出する画素PLは、基板11の光の入射面と対向する面側のフォトダイオードPD上に設けられる保護膜12と、保護膜12上に設けられ、厚さ方向に貫通する円柱状の孔が2次元的に配置される回折格子部20Lと、を備える。回折格子部20Lは、画素PLに設けられるカラーフィルタ51Lを透過する光を反射させるように孔の径と配置される周期が選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、固体撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
固体撮像素子は、基板上に、光電変換素子と、光電変換素子に蓄積された信号を選択読み出しするMOS(Metal-Oxide-Semiconductor)トランジスタと、有する画素を複数備え、さらにその上部に多層配線層が形成される半導体デバイスであり、たとえば、ビデオカメラやデジタルスチルカメラ等に使用されている。このうち、CMOS(Complementary MOS:相補型MOS)プロセスで製造されるCMOS型固体撮像素子は低電圧・低消費電力というメリットを有するので、携帯電話用のカメラやデジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラの撮像素子として注目されている。
【0003】
従来では、固体撮像素子は、多層配線層側から光を入射させていたが、光が多層配線層などで遮られてしまい、十分な集光特性を得ることができなくなってきている。そこで、近年では、基板の裏面側から光を入射させ、基板内部で光電変換を行う裏面入射型の固体撮像素子が作製されている。
【0004】
固体撮像素子では、カメラの撮像画質向上の要求から、光の受光部である画素部を微細化しチップ面積を維持したまま画素数を増やして高画素化・高感度化する試みがなされている。裏面照射型の固体撮像素子では単位画素ピッチが1.4μmを切るところまで微細化が進んできているが、シリコンの光学吸収係数から赤色光の吸収感度を維持するために固体撮像素子の厚さは3μm程度より薄くすることができず、平面方向にのみ微細化が進み厚さ方向はほとんど微細化されていないのが現状である。厚さ方向の微細化が進まないため、隣接画素に赤色光が侵入することよる混色や、深さ3μmの素子分離形成のための高加速インプラが必要になる等様々な問題が生じている。
【0005】
そこで、裏面照射型の固体撮像素子で厚さ方向の微細化を行う手法として、光電変換素子に入射してきた光を反射させ、再び光電変換素子に戻して再利用し、光電変換素子の厚さを半分にする技術が提案されている。光を反射させる方法として、たとえば多層配線層の層間膜の底に金属膜を設けることができる。しかし、固体撮像素子の画素部は金属汚染に非常に敏感であり、層間膜を挟まずに画素の直上部に金属層を設けた場合には、金属汚染による固定パターンノイズの増加等が懸念される。
【0006】
また、光を反射させる方法として、物質の屈折率差と微細な格子構造を用いて共鳴する波長のみを反射する導波モード共鳴格子というフォトニックフィルタを受光部である光電変換素子上に設けることもできる。しかし、この場合には、受光部表面に導波モード共鳴格子形成時のRIE(Reactive Ion Etching)によるダメージが入り固定パターンノイズが増加することが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0099804号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2011/0073976号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一つの実施形態は、画素部の金属汚染や受光部の光電変換素子表面へのRIEによるダメージの発生を抑制することができる固体撮像素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一つの実施形態によれば、絵素が所定の周期で2次元的に半導体基板上に配置される固体撮像素子が提供される。前記絵素は、所定の波長の光を透過させるフィルタと、前記フィルタを透過する前記所定の波長の光を検出するフォトダイオードと、を含む画素を、異なる波長の光を検出するように複数有する。前記絵素中の最も長い波長の光を検出する画素は、前記半導体基板の前記光の入射面と対向する面側の前記フォトダイオード上に設けられる保護膜と、前記保護膜上に設けられ、厚さ方向に貫通する円柱状の孔が2次元的に配置される第1回折格子部と、を備える。前記第1回折格子部は、当該画素に設けられる前記フィルタを透過する光を反射させるように前記孔の径と配置される周期が選択される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、第1の実施形態による固体撮像素子の構成を模式的に示す断面図である。
【図2−1】図2−1は、第1の実施形態による固体撮像素子の製造方法の手順の一例を模式的に示す断面図である(その1)。
【図2−2】図2−2は、第1の実施形態による固体撮像素子の製造方法の手順の一例を模式的に示す断面図である(その2)。
【図2−3】図2−3は、第1の実施形態による固体撮像素子の製造方法の手順の一例を模式的に示す断面図である(その3)。
【図3】図3は、第2の実施形態による固体撮像素子の画素形成部の構成を模式的に示す断面図である。
【図4】図4は、回折格子部の孔のピッチを変えた場合の光の透過率の様子を示す図である。
【図5】図5は、導波モード共鳴格子の形状を模式的に示す平面図である。
【図6】図6は、第3の実施形態による固体撮像素子の画素形成部の構成を模式的に示す断面図である。
【図7−1】図7−1は、第3の実施形態による固体撮像素子の製造方法の手順の一例を模式的に示す断面図である(その1)。
【図7−2】図7−2は、第3の実施形態による固体撮像素子の製造方法の手順の一例を模式的に示す断面図である(その2)。
【図8】図8は、第4の実施形態による固体撮像素子の画素形成部の構成を模式的に示す断面図である。
【図9】図9は、第5の実施形態による固体撮像素子の画素形成部の構成を模式的に示す断面図である。
【図10−1】図10−1は、第5の実施形態による固体撮像素子の製造方法の手順の一例を模式的に示す断面図である(その1)。
【図10−2】図10−2は、第5の実施形態による固体撮像素子の製造方法の手順の一例を模式的に示す断面図である(その2)。
【図10−3】図10−3は、第5の実施形態による固体撮像素子の製造方法の手順の一例を模式的に示す断面図である(その3)。
【図11】図11は、第6の実施形態による固体撮像素子の画素形成部の構成を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して、実施形態にかかる固体撮像素子を詳細に説明する。なお、これらの実施形態により本発明が限定されるものではない。また、以下の実施形態で用いられる固体撮像素子の断面図は模式的なものであり、層の厚みと幅との関係や各層の厚みの比率などは現実のものとは異なる場合がある。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態による固体撮像素子の構成を模式的に示す断面図である。固体撮像素子は、光電変換素子および光電変換素子の信号を読み出す素子を有する画素PL,PM,PSが形成される画素形成部10と、画素形成部10に形成された素子に接続される配線層が形成される多層配線層31と、画素形成部10および多層配線層31を支持する支持基板41と、画素形成部10の各画素へ入射する光の波長を制限するカラーフィルタ51と、各画素PL,PM,PSに対して設けられるマイクロレンズ52と、を備える。
【0013】
画素形成部10は、画素PL,PM,PSが形成されたP型単結晶シリコン基板11によって構成される。P型単結晶シリコン基板11には、各画素が形成される画素領域RL,RM,RSを分離(絶縁)するP型拡散層によって構成される画素分離部14が設けられている。また、画素分離部14の上部には、たとえばシリコン酸化膜などからなる素子分離絶縁膜15が形成されている。画素分離部14で区画される領域には、マイクロレンズ52とカラーフィルタ51を介して入射してきた光を検知する光電変換素子としてのフォトダイオードPDと、フォトダイオードPDに蓄積された電荷を読み出す読み出しトランジスタTrと、が設けられる。
【0014】
フォトダイオードPDは、画素分離部14で区画される領域内の一部に所定の深さまで形成されたN型拡散層16の上部にP型拡散層からなる電荷蓄積層18が設けられ、基板面に略平行にPN接合面が形成された構造を有する。なお、N型拡散層16の深さは、P型単結晶シリコン基板11の厚さとほぼ同じである。
【0015】
読み出しトランジスタTrは、画素分離部14で区画される画素領域RL,RM,RS内のN型拡散層16に隣接する領域に形成されるP型ウェル17に設けられる電界効果型トランジスタである。つまり、読み出しトランジスタTrは、P型ウェル17上の所定の領域に、ゲート絶縁膜13を介してゲート電極19を有している。このとき、ゲート電極19のゲート長方向の一方の側にフォトダイオードPDが配置され、他方の側にN型拡散層からなるソース/ドレイン領域21が形成される。
【0016】
フォトダイオードPD上には、保護膜12を介して、導波モード共鳴格子からなる回折格子部20Lが設けられている。保護膜12は、たとえば、2〜10nm程度の厚さのシリコン酸化膜によって構成される。回折格子部20Lは、保護膜12に比して高い屈折率を有し、金属材料以外の光学吸収係数が低い材料(回折格子構成材)によって構成される。たとえば、回折格子構成材として、多結晶シリコンやTiO2,Ta25などを用いることができる。なお、多結晶シリコンを回折格子部20Lに用いる場合には、粒径を変えることによって屈折率を変えることができるので、保護膜12の屈折率に比して高い屈折率を有するように、粒径を制御すればよい。
【0017】
この図1では、可視光領域で比較的波長の長い第1の光を検出する第1の画素PLと、可視光領域で第1の光よりも短い波長の第2の光を検出する第2の画素PMと、可視光領域で第1および第2の光よりも短い波長の第3の光を検出する第3の画素PSと、が画像を形成する最小単位である1絵素を形成している。そのため、カラーフィルタ51として、第1の画素PLには、第1の光のみを透過させるカラーフィルタ51Lが設けられ、第2の画素PMには、第2の光のみを透過させるカラーフィルタ51Mが設けられ、第3の画素PSには、第3の光のみを透過させるカラーフィルタ51Sが設けられる。
【0018】
たとえば、第1〜第3の光として、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の光を用いることができ、この場合には、カラーフィルタ51L,51M,51Sとして、それぞれ赤、緑、青の原色フィルタが用いられる。また、第1〜第3の光として、たとえば黄色(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の3色の光を用いることもできる。そして、それぞれの画素領域RL,RM,RS上に画素領域RL,RM,RS内に光を集光するマイクロレンズ52が設けられる。なお、図示していないが、絵素は、P型単結晶シリコン基板11上に所定の周期で2次元的に配置されている。
【0019】
回折格子部20Lが形成されたP型単結晶シリコン基板11の面上には、多層配線層31が形成される。多層配線層31は、層間絶縁膜32と、層間絶縁膜32上に設けられる配線層33と、上下の配線層33間または下層の読み出しトランジスタTrのゲート電極19やソース/ドレイン領域21と上層の配線層33との間を接続するビア34と、を有する。この多層配線層31によって、読み出しトランジスタTrと図示しない周辺回路と、が接続される。この多層配線層31上には、さらにシリコン基板などからなる支持基板41が設けられる。支持基板41は、P型単結晶シリコン基板11の裏面から光を入射させるようにP型単結晶シリコン基板11を研磨する際に、強度を保つために設けられる。
【0020】
回折格子部20Lは、回折格子構成材にたとえば円柱状の貫通孔が所定の規則で(たとえば三角格子状や正方格子状に)形成された構造を有し、固体撮像素子の裏面のマイクロレンズ52とカラーフィルタ51を介して入射してきた光を反射する機能を有する。この回折格子部20Lは、たとえば円柱状の貫通孔のピッチまたは径を変えることで、反射できる光の波長を変えることができる。なお、この明細書では、円柱状の貫通孔は、円柱状の貫通孔のほか、円錐台形状の貫通孔や、孔の途中まで円柱状で途中から円錐台形状となるような形状の貫通孔なども含むものである。
【0021】
一般的に、物質内を進む光は、波長が長いほど吸収され難い。そのため、フォトダイオードPD内で画像を形成するのに十分な量の第1の光が吸収されるように、P型単結晶シリコン基板11の厚さが決定される。たとえば、第1〜第3の光として赤、緑、青の3色の光を用いる場合には、光の強度が1/eとなる厚さは、それぞれ3.5μm、1μm、150nmとなる。そのため、第1〜第3の光のうち、最も吸収され難い第1の光を検出する第1の画素領域RLに第1の光を反射させる回折格子部20Lを少なくとも設ければよい。これによって、第1の画素領域RLでは、第1の光が回折格子部20Lによって反射されるので、P型単結晶シリコン基板11の厚さを薄くしても、第1の光の光路長を長くすることができる。たとえば第1の光が赤色光である場合で、P型単結晶シリコン基板11中を3.5μm進めさせるには、回折格子部20Lの存在によって、P型単結晶シリコン基板11の厚さをその半分の1.75μmに薄くすることができる。
【0022】
なお、第2の光と第3の光は、P型単結晶シリコン基板11の厚さを薄くしたとしても、その厚さでフォトダイオードPDで十分に吸収されるので、第2と第3の画素領域RM,RSのフォトダイオードPD上に回折格子部20Lを設けなくてもよい。ただし、図1に示されるように、第2と第3の画素領域RM,RSのフォトダイオードPD上にも保護膜12を介して第1の画素領域RLと同じピッチと径を有する円柱状の貫通孔を形成することで、製造工程数を増加させないようにすると共に、製造工程を簡略化することができる。
【0023】
ここで、このような構造の固体撮像素子の動作の概要について説明する。P型単結晶シリコン基板11の裏面側のマイクロレンズ52から光が入射し、カラーフィルタ51L,51M,51Sによって各画素領域RL,RM,RSに到達する光の波長が選択される。すなわち、第1、第2および第3の画素領域RL,RM,RSでは、それぞれ第1の光、第2の光および第3の光のみが選択される。画素領域RL,RM,RSに入射した光は、フォトダイオードPDで吸収され、光電変換され、信号電荷となるキャリアが蓄積される。信号電荷の蓄積は、読み出しトランジスタTrによって制御され、図示しない周辺回路によって読み出される。
【0024】
フォトダイオードPDでの光電変換の際に、第1の画素領域RLでは、第1の光の一部はフォトダイオードPDで吸収されずに保護膜12まで到達するが、第1の光を反射するように円柱状の孔の径と周期が最適化された回折格子部20Lによって反射され、再びフォトダイオードPD中を伝播することになる。これによって、P型単結晶シリコン基板11内を第1の光が伝播する間に、フォトダイオードPDで光電変換され、十分な信号電荷を得ることが可能になる。また、第2と第3の画素領域RM,RSでは、第2と第3の光は、保護膜12まで到達するまでの間に十分な信号電荷を得ることができる程度にフォトダイオードPDで吸収され、光電変換される。そして、フォトダイオードPDで吸収されなかった第2と第3の光は、保護膜12から多層配線層31側へと透過して行く。
【0025】
つぎに、このような構造の固体撮像素子の製造方法について説明する。図2−1〜図2−3は、第1の実施形態による固体撮像素子の製造方法の手順の一例を模式的に示す断面図である。
【0026】
まず、図2−1(a)に示されるように、P型単結晶シリコン基板11(以下、単に基板ともいう)を用意し、熱酸化によって基板11の一方の主面上にパッド酸化膜101を形成する。ついで、図2−2(b)に示されるように、各画素領域RL,RM,RSの境界に、イオン注入法によってBなどのP型不純物をイオン注入してP型拡散層からなる画素分離部14を形成する。これによって、第1の光を検知する第1の画素領域RLと、第2の光を検知する第2の画素領域RMと、第3の光を検知する第3の画素領域RSと、が基板11上に形成される。
【0027】
その後、パッド酸化膜101上に図示しないシリコン窒化膜を形成し、リソグラフィ技術とエッチング技術とを用いて素子分離絶縁膜15を形成する領域が開口するようにシリコン窒化膜を加工した後、熱酸化を行い、シリコン窒化膜を除去する。これによって、図2−1(c)に示されるように、画素分離部14上にパッド酸化膜101よりも厚い素子分離絶縁膜15が形成される。
【0028】
ついで、図2−2(a)に示されるように、各画素領域RL,RM,RS内のフォトダイオードPDを形成する領域にはPなどのN型不純物をイオン注入してN型拡散層16を形成し、読み出しトランジスタTrを形成する領域には、BなどのP型不純物をイオン注入してP型拡散層からなるP型ウェル17を形成する。なお、N型拡散層16の底部は、画素分離部14を構成するP型拡散層の底部と同等となるように形成され、P型ウェル17はN型拡散層16よりも浅い領域に形成される。その後、図2−2(b)に示されるように、N型拡散層16の上部の浅い領域にBなどのP型不純物をイオン注入してP型拡散層からなる電荷蓄積層18を形成する。
【0029】
ついで、図2−2(c)に示されるように、基板11上にたとえば図示しないシリコン窒化膜を形成し、リソグラフィ技術とエッチング技術とを用いて、P型ウェル17を形成した領域上が開口するように加工を行った後、P型ウェル17上のパッド酸化膜101をたとえばフッ酸を用いて除去する。これによって、フォトダイオードPD上に残されたパッド酸化膜101は、保護膜12となる。
【0030】
その後、熱酸化などの方法によって、P型ウェル17上にゲート絶縁膜13を形成する。また、ゲート絶縁膜13を形成した基板11上に、たとえば多結晶シリコン膜を形成し、リソグラフィ技術とエッチング技術とを用いて多結晶シリコン膜とゲート絶縁膜13とを所定の形状にパターニングする。これによって、ゲート絶縁膜13とゲート電極19との積層体が形成される。
【0031】
その後、図示しないシリコン窒化膜を熱燐酸などで除去した後、回折格子構成材を形成する。回折格子構成材として、上記したように多結晶シリコン膜やTiO2膜、Ta25膜などを用いることができる。ついで、リソグラフィ技術とRIE法などのエッチング技術とを用いて、第1の画素領域RLの回折格子構成材に第1の光を反射するように最適化された所定周期の円柱状の貫通孔201を形成し、回折格子部20Lを形成する。このとき、第2と第3の画素領域RM,RSにも、第1の画素領域RLに形成されたものと同じ所定周期の円柱状の貫通孔201を形成してもよい。また、エッチング技術によって回折格子部20Lを形成する際に、回折格子構成材はフォトダイオードPD上に保護膜12を介して形成されているので、フォトダイオードPDがエッチングダメージを受けることがない。
【0032】
その後、図2−3(a)に示されるように、イオン注入法によって、ゲート電極19と画素分離部14とで挟まれる領域にPなどのN型不純物をイオン注入してN型拡散層からなる読み出しトランジスタTrのソース/ドレイン領域21を形成する。
【0033】
ついで、図示しない周辺回路を形成した後、図2−3(b)に示されるように、回折格子部20Lと読み出しトランジスタTrを形成した基板11上に多層配線層31を形成する。多層配線層31は、複数の配線層33が層間絶縁膜32を介して積層された構造を有する。最下層の配線層33と読み出しトランジスタTrなどの基板11上の素子との間と、各配線層33間とは、ビア34によって接続される。
【0034】
ついで、図2−3(c)に示されるように、多層配線層31の最上層の層間絶縁膜32をCMP(Chemical Mechanical Polishing)法などによって平坦化した後、シリコン基板などの支持基板41を、接着層を介して貼り合わせる。その後、基板11の裏面側を所定の厚さとなるまで研削する。ここでは、N型拡散層16が露出するまで研削を行う。
【0035】
そして、各画素領域RL,RM,RS上に所定の波長の光のみを透過させるカラーフィルタ51L,51M,51Sを形成し、さらにその上にマイクロレンズ52を形成することによって、図1に示される構造の固体撮像素子が得られる。
【0036】
なお、図2−2(c)で、回折格子構成材に多結晶シリコンを用いる場合には、ゲート電極19と回折格子構成材とを同じ材料で形成することができる。また、この場合には、回折格子部20Lとゲート電極19とを一括して加工することができる。
【0037】
第1の実施形態では、検出する光の中で最も波長の長い第1の光を検出する第1の画素領域RLのフォトダイオードPD上に保護膜12を介して回折格子部20Lを形成し、フォトダイオードPD中で吸収され難い波長の長い第1の光を反射させるようにした。その結果、基板11の厚さを、フォトダイオードPDで検出することができる光路長の1/2とすることができ、第1の光の受光感度の低下を防止することができる。また、回折格子部20Lは、金属材料ではなく、半導体材料や絶縁材料などによって構成されるので、フォトダイオードPDが金属汚染される虞もない。さらに、回折格子部20Lは、保護膜12を介してフォトダイオードPD上に形成されているので、回折格子部20Lを形成する際に、エッチングダメージがフォトダイオードPDに入ることを抑え、フォトダイオードPDに固定パターンノイズが生じてしまうことを抑えることができるという効果も有する。また、各画素領域RL,RM,RSで回折格子部20Lの構造を統一する場合には、回折格子部20Lの格子構造を形成する際のリソグラフィのマージンが拡大するという利点も有する。
【0038】
(第2の実施形態)
図3は、第2の実施形態による固体撮像素子の画素形成部の構成を模式的に示す断面図である。第1の実施形態では、波長の長い第1の光を反射するように構成された回折格子部20Lを少なくとも第1の画素領域RLのフォトダイオードPD上に設けていたが、第2の実施形態では、各画素領域RL,RM,RSに入射される光を反射するように構成された回折格子部20L,20M,20Sを各画素領域RL,RM,RSのフォトダイオードPD上に設けている。すなわち、第1の画素領域RLには第1の光を反射するように構成された回折格子部20Lが設けられ、第2の画素領域RMには第2の光を反射するように構成された回折格子部20Mが設けられ、第3の画素領域RSには第3の光を反射するように構成された回折格子部20Sが設けられている。
【0039】
図4は、回折格子部の孔のピッチを変えた場合の光の透過率の様子を示す図である。この図で、横軸は、回折格子部20L,20M,20Sに入射する光の波長を示し、縦軸は、回折格子部20L,20M,20Sに入射した光の透過率を示す図である。たとえば、円柱状の孔を180〜220nmピッチで形成すると、0.63μm付近の光の透過率が0%となり、赤色光を反射させることができる。また、円柱状の孔を230〜270nmピッチで形成すると、0.55μm付近の光の透過率が0%となり、280〜320nmピッチで形成すると、0.53μm付近の光の透過率が0%となり、緑色光を反射させることができる。同様に、円柱状の孔を330〜370nmピッチで形成すると、0.46μm付近の光の透過率が0%となり、青色光を反射させることができる。なお、ここでは、直径がピッチの1/2である円柱状の孔が上記ピッチで2次元状に配置される回折格子部20L,20M,20Sを用いて測定を行っている。このように、円柱状の孔のピッチ(孔の径とピッチ)を変化させることで、各画素領域RL,RM,RSの回折格子部20L,20M,20Sでの反射できる光の波長を変えることができる。なお、これは一例であり、円柱状の孔の直径がピッチの1/2とならないように円柱状の孔を2次元的に配置する場合には、反射される光の波長と円柱状の孔の径またはピッチとの関係は、異なるものとなる。
【0040】
図5は、導波モード共鳴格子の形状を模式的に示す平面図である。各画素領域RL,RM,RSに円柱状の孔を所定の規則で(たとえば三角格子状に)配置した図である。この図では、最も波長の長い第1の画素領域RLでは回折格子部20Lに形成される孔のピッチ(径)が最も大きく、最も波長の短い第3の画素領域RSでは回折格子部20Sに形成される孔のピッチ(径)は最も小さく、中間の波長を有する第2の画素領域RMでは回折格子部20Mに形成される孔のピッチ(径)は回折格子部20L,20Sの中間程度である。これによって、固体撮像素子の裏面のマイクロレンズ52とカラーフィルタ51を介して各画素PL,PM,PSに入射する光が反射される。このように第2の実施形態では、すべての画素領域RL,RM,RSに、各画素領域RL,RM,RSに入射する光を反射させる回折格子部20L,20M,20Sを設けている。これによって、第1の光よりも短い波長の第2と第3の光も光路長が長くなり、フォトダイオードPDで効率的に吸収される。
【0041】
なお、第1の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付してその説明を省略している。また、このような構造の固体撮像素子の製造方法は、第1の実施形態の図2−2(c)の回折格子部20Lの円柱状の貫通孔201をパターニングする際に、画素領域RL,RM,RSごとにピッチと径の異なる貫通孔を2次元的に周期的に配置する点が異なるのみで、基本的には第1の実施形態で説明した固体撮像素子の製造方法と同様であるので、その説明を省略する。
【0042】
第2の実施形態では、第1の光よりも波長の長い第2と第3の光を検出する第2と第3の画素領域RM,RSのフォトダイオードPD上に、保護膜12を介してそれぞれ第2と第3の光を反射する回折格子部20M,20Sを形成するようにしたので、第2と第3の画素領域RM,RSに入射した第2と第3の光のフォトダイオードPD中での光路長を長くすることができる。その結果、第2と第3の光に対しても受光感度の低下を防止することができるという効果を、第1の実施形態の効果に加えて得ることができる。
【0043】
(第3の実施形態)
図6は、第3の実施形態による固体撮像素子の画素形成部の構成を模式的に示す断面図である。第2の実施形態では、フォトダイオードPD上に形成される保護膜12は2〜10nmの厚さであったが、第3の実施形態では、保護膜12の厚さを10〜400nmの厚さとしている。保護膜12として、たとえば厚さ10〜400nmのシリコン酸化膜を用いることができる。このように保護膜12の厚さを10〜400nmとすることで、第2の実施形態に比して、より大きな共鳴効果が起き、薄い保護膜12の場合に比して回折格子部20L,20M,20Sで光を反射させやすくすることが可能となる。保護膜12の厚さが10nmよりも薄い場合には、共鳴効果を起こさせることができず、入射してきた光を十分に反射させることができず、また400nmよりも厚い場合には、これ以上膜厚を厚くしても光を反射させる効果にほとんど変わりがないため、保護膜12の厚さは上記範囲であることが望ましい。なお、回折格子部20L,20M,20Sは、第2の実施形態と同様に、各画素領域RL,RM,RSに入射する光を反射することができるように、円柱状の貫通孔の径とピッチが調整されている。また、第1と第2の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0044】
つぎに、このような構造の固体撮像素子の製造方法について説明する。図7−1〜図7−2は、第3の実施形態による固体撮像素子の製造方法の手順の一例を模式的に示す断面図である。
【0045】
まず、図7−1(a)に示されるように、P型単結晶シリコン基板11(以下、単に基板ともいう)を用意し、熱酸化によって基板11の一方の主面上にパッド酸化膜101を形成する。ついで、図7−2(b)に示されるように、各画素領域RL,RM,RSの境界に、イオン注入法によってBなどのP型不純物をイオン注入してP型拡散層からなる画素分離部14を形成する。これによって、第1の光を検知する第1の画素領域RLと、第2の光を検知する第2の画素領域RMと、第3の光を検知する第3の画素領域RSと、が基板11上に形成される。
【0046】
その後、パッド酸化膜101上に図示しないシリコン窒化膜を形成し、リソグラフィ技術とエッチング技術とを用いて読み出しトランジスタTrを形成する領域がシリコン窒化膜で覆われるようにシリコン窒化膜を加工した後、熱酸化を行い、シリコン窒化膜を除去する。これによって、図7−1(c)に示されるように、読み出しトランジスタTrの形成領域を除いた領域に厚さ10〜400nmの保護膜12と素子分離絶縁膜15が形成される。保護膜12は、フォトダイオードPDを形成する領域上に形成され、素子分離絶縁膜15は画素分離部14上に形成される。このように、第3の実施形態では、保護膜12が素子分離絶縁膜15と同一工程で作製されることになる。
【0047】
ついで、図7−2(a)に示されるように、各画素領域RL,RM,RS内のフォトダイオードPDを形成する領域にはPなどのN型不純物をイオン注入してN型拡散層16を形成し、読み出しトランジスタTrを形成する領域には、BなどのP型不純物をイオン注入してP型拡散層からなるP型ウェル17を形成する。なお、N型拡散層16の底部は、画素分離部14を構成するP型拡散層の底部と同等となるように形成され、P型ウェル17はN型拡散層16よりも浅い領域に形成される。その後、図7−2(b)に示されるように、N型拡散層16の上部の浅い領域にBなどのP型不純物をイオン注入してP型拡散層からなる電荷蓄積層18を形成する。
【0048】
ついで、図7−2(c)に示されるように、たとえば基板11上に図示しないシリコン窒化膜を形成し、リソグラフィ技術とエッチング技術とを用いて、P型ウェル17を形成した領域上が開口するように加工を行った後、P型ウェル17上のパッド酸化膜101をたとえばフッ酸を用いて除去する。その後、熱酸化などの方法によって、P型ウェル17上にゲート絶縁膜13を形成する。また、ゲート絶縁膜13を形成した基板11上に、たとえば多結晶シリコン膜を形成し、リソグラフィ技術とエッチング技術とを用いて多結晶シリコン膜とゲート絶縁膜13とを所定の形状にパターニングする。これによって、ゲート絶縁膜13とゲート電極19との積層体が形成される。
【0049】
その後、図示しないシリコン窒化膜を熱燐酸などで除去した後、回折格子構成材を形成する。回折格子構成材として、多結晶シリコン膜やTiO2膜、Ta25膜などを用いることができる。ついで、リソグラフィ技術とRIE法などのエッチング技術とを用いて、第1の画素領域RLの回折格子構成材に第1の光を反射する所定周期の円柱状の貫通孔201を形成して回折格子部20Lを形成し、第2の画素領域RMの回折格子構成材に第2の光を反射する所定周期の円柱状の貫通孔202を形成して回折格子部20Mを形成し、第3の画素領域RSの回折格子構成材に第3の光を反射する所定周期の円柱状の貫通孔203を形成して回折格子部20Sを形成する。このとき、エッチング技術によって回折格子部20L,20M,20Sを形成する際に、回折格子構成材はフォトダイオードPD上に保護膜12を介して形成されているので、フォトダイオードPDがエッチングダメージを受けることがない。
【0050】
ついで、イオン注入法によって、ゲート電極19と画素分離部14とで挟まれる領域にPなどのN型不純物をイオン注入してN型拡散層からなる読み出しトランジスタTrのソース/ドレイン領域21を形成することで、図6に示される固体撮像素子の画素形成部10が完成する。
【0051】
この後、第1の実施形態の図2−3(b)以降で説明したように、図示しない周辺回路を形成した後、回折格子部20L,20M,20Sと読み出しトランジスタTrを形成した基板11上に多層配線層31を形成する。ついで、多層配線層31の最上層の層間絶縁膜32を平坦化した後、シリコン基板などの支持基板41を接着層を介して貼り合わせ、基板11の裏面側をN型拡散層16が露出するまで研削する。そして、各画素領域RL,RM,RS上にそれぞれ所定の波長の光のみを透過させるカラーフィルタ51L,51M,51Sを形成し、さらにその上にマイクロレンズ52を形成することによって固体撮像素子が得られる。
【0052】
第3の実施形態によれば、保護膜12の厚さを10〜400nmの厚さとしたので、画素領域RL,RM,RSに入射する光をより効果的に反射させることができるという効果を第2の実施形態の効果に加えて得ることができる。また、保護膜12を素子分離絶縁膜15と同時に形成することができるので、固体撮像素子の製造工程を簡略化することができるという効果も有する。
【0053】
(第4の実施形態)
図8は、第4の実施形態による固体撮像素子の画素形成部の構成を模式的に示す断面図である。第3の実施形態では、厚さ10〜400nmの保護膜12上に形成される回折格子部20L,20M,20Sは、各画素領域RL,RM,RSに入射される光を反射させることができるように円柱状の孔の径とピッチとを変えるようにしているが、第1の実施形態と同様に少なくとも回折格子部は、フォトダイオードPD中で吸収され難い波長の長い第1の光を検出する第1の画素領域RLに形成されていればよい。そこで、第4の実施形態では、第1〜第3の画素領域RL,RM,RS中の厚さ10〜400nmの保護膜12上に、第1の光を反射するように調整された径とピッチとを有する円柱状の孔を2次元状に配置した回折格子部20Lを形成する場合を示している。このように保護膜12の厚さを10〜400nmとすることで、第1の実施形態に比して、より大きな共鳴効果が起き、回折格子部20Lで薄い保護膜12の場合に比して光を反射させやすくすることが可能となる。なお、第1〜第3の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付してその説明を省略する。また、このような構造の固体撮像素子の形成方法は、第3の実施形態で説明したものと同様であるので、その説明も省略する。
【0054】
第4の実施形態によれば、保護膜12の厚さを10〜400nmの厚さとしたので、画素領域RL,RM,RSに入射する光をより効果的に反射させることができるという効果を第1の実施形態の効果に加えて得ることができる。また、保護膜12を素子分離絶縁膜15と同時に形成することができるので、固体撮像素子の製造工程を簡略化することができるという効果も有する。
【0055】
(第5の実施形態)
図9は、第5の実施形態による固体撮像素子の画素形成部の構成を模式的に示す断面図である。第3の実施形態では、保護膜12と素子分離絶縁膜15とを同一の工程で形成していたので、保護膜12と素子分離絶縁膜15の上面の高さと厚さは略同じであったが、第5の実施形態では、保護膜12の形成位置と素子分離絶縁膜15の形成位置とが異なっている。なお、第1〜第3の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0056】
つぎに、このような構造の固体撮像素子の製造方法について説明する。図10−1〜図10−3は、第5の実施形態による固体撮像素子の製造方法の手順の一例を模式的に示す断面図である。
【0057】
まず、図10−1(a)に示されるように、P型単結晶シリコン基板11(以下、単に基板ともいう)を用意し、熱酸化によって基板11の一方の主面上にパッド酸化膜101を形成する。ついで、図10−2(b)に示されるように、各画素領域RL,RM,RSの境界に、イオン注入法によってBなどのP型不純物をイオン注入してP型拡散層からなる画素分離部14を形成する。これによって、第1の光を検知する第1の画素領域RLと、第2の光を検知する第2の画素領域RMと、第3の光を検知する第3の画素領域RSと、が基板11上に形成される。
【0058】
その後、パッド酸化膜101上に図示しないシリコン窒化膜を形成し、リソグラフィ技術とエッチング技術とを用いて素子分離絶縁膜15を形成する領域が開口するようにシリコン窒化膜を加工した後、熱酸化を行い、シリコン窒化膜を除去する。これによって、図10−1(c)に示されるように、画素分離部14上にパッド酸化膜101よりも厚い素子分離絶縁膜15が形成される。
【0059】
ついで、図10−2(a)に示されるように、各画素領域RL,RM,RS内のフォトダイオードPDを形成する領域にはPなどのN型不純物をイオン注入してN型拡散層16を形成し、読み出しトランジスタTrを形成する領域には、BなどのP型不純物をイオン注入してP型拡散層からなるP型ウェル17を形成する。なお、N型拡散層16の底部は、画素分離部14を構成するP型拡散層の底部と同等となるように形成され、P型ウェル17はN型拡散層16よりも浅い領域に形成される。その後、図10−2(b)に示されるように、N型拡散層16の上部の浅い領域にBなどのP型不純物をイオン注入してP型拡散層からなる電荷蓄積層18を形成する。
【0060】
ついで、図10−2(c)に示されるように、基板11上にたとえば図示しないシリコン窒化膜を形成し、リソグラフィ技術とエッチング技術とを用いて、P型ウェル17を形成した領域上が開口するように加工を行った後、P型ウェル17上のパッド酸化膜101をたとえばフッ酸を用いて除去する。その後、熱酸化などの方法によって、P型ウェル17上にゲート絶縁膜13を形成する。また、ゲート絶縁膜13を形成した基板11上に、たとえば多結晶シリコン膜を形成し、リソグラフィ技術とエッチング技術とを用いて多結晶シリコン膜とゲート絶縁膜13とを所定の形状にパターニングする。これによって、ゲート絶縁膜13とゲート電極19との積層体が形成される。
【0061】
ついで、図示しないシリコン窒化膜を熱燐酸などで除去した後、図10−3(a)に示されるように、イオン注入法によって、ゲート電極19と画素分離部14とで挟まれる領域にPなどのN型不純物をイオン注入してN型拡散層からなる読み出しトランジスタTrのソース/ドレイン領域21を形成する。
【0062】
その後、図10−3(b)に示されるように、フォトダイオードPD上(回折格子部20L,20M,20Sの形成領域上)に保護膜12を形成する。たとえば、リソグラフィ技術によって、フォトダイオードPDの形成領域が開口するようにレジストを形成した後、CVD法などの成膜法によってシリコン酸化膜などの保護膜12を形成した後、レジストを除去する。なお、形成した保護膜12とパッド酸化膜101と合わせて保護膜12とする。また、保護膜12の厚さとしては、10〜400nmとすることができる。
【0063】
さらに、保護膜12上に回折格子構成材を形成する。回折格子構成材として、多結晶シリコン膜やTiO2膜、Ta25膜などを用いることができる。ついで、リソグラフィ技術とRIE法などのエッチング技術とを用いて、第1の画素領域RLの回折格子構成材に第1の光を反射する所定周期の円柱状の貫通孔201を形成して回折格子部20Lを形成し、第2の画素領域RMの回折格子構成材に第2の光を反射する所定周期の円柱状の貫通孔202を形成して回折格子部20Mを形成し、第3の画素領域RSの回折格子構成材に第3の光を反射する所定周期の円柱状の貫通孔203を形成して回折格子部20Sを形成する。このとき、エッチング技術によって回折格子部20L,20M,20Sを形成する際に、回折格子構成材はフォトダイオードPD上に保護膜12を介して形成されているので、フォトダイオードPDがエッチングダメージを受けることがない。以上によって、図9に示される固体撮像素子の画素形成部10が完成する。
【0064】
この後、第1の実施形態の図2−3(b)以降で説明したように、図示しない周辺回路を形成した後、回折格子部20L,20M,20Sと読み出しトランジスタTrを形成した基板11上に多層配線層31を形成する。ついで、多層配線層31の最上層の層間絶縁膜32を平坦化した後、シリコン基板などの支持基板41を接着層を介して貼り合わせ、基板11の裏面側をN型拡散層16が露出するまで研削する。そして、各画素領域RL,RM,RS上に所定の波長の光のみを透過させるカラーフィルタ51L,51M,51Sを形成し、さらにその上にマイクロレンズ52を形成することによって固体撮像素子が得られる。
【0065】
第5の実施形態によれば、保護膜12の厚さを10〜400nmの厚さとしたので、画素領域に入射する光をより効果的に反射させることができるという効果を第2の実施形態の効果に加えて得ることができる。
【0066】
(第6の実施形態)
図11は、第6の実施形態による固体撮像素子の画素形成部の構成を模式的に示す断面図である。第5の実施形態では、厚さ10〜400nmの保護膜12上に形成される回折格子部20L,20M,20Sは、各画素領域RL,RM,RSに入射される光を反射させることができるように円柱状の孔の径とピッチとを変えるようにしているが、第1の実施形態と同様に少なくとも回折格子部は、フォトダイオードPD中で吸収され難い波長の長い第1の光を検出する第1の画素領域RLに形成されていればよい。そこで、第6の実施形態では、第1〜第3の画素領域RL,RM,RS中の厚さ10〜400nmの保護膜12上に、第1の光を反射するように調整された径とピッチとを有する円柱状の孔を2次元状に配置した回折格子部20Lを形成する場合を示している。このように保護膜12の厚さを10〜400nmとすることで、第1の実施形態に比して、より大きな共鳴効果が起き、薄い保護膜12の場合に比して回折格子部20Lで光を反射させやすくすることが可能となる。なお、第1〜第5の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付してその説明を省略する。また、このような構造の固体撮像素子の形成方法は、第5の実施形態で説明したものと同様であるので、その説明も省略する。
【0067】
第6の実施形態によれば、保護膜12の厚さを10〜400nmの厚さとしたので、画素領域に入射する光をより効果的に反射させることができるという効果を第1の実施形態の効果に加えて得ることができる。
【0068】
なお、上述した実施形態では、1絵素が3つの画素PL,PM,PSからなる場合を示したが、1絵素が2つ以上の画素からなる場合も、同様に上記の実施形態を適用することができる。また、上記した説明では、裏面照射型の固体撮像素子を例に挙げたが、表面照射型の固体撮像素子に対しても、光の入射面側と対向する側の基板11の裏面のフォトダイオードPDの形成領域上にシリコン酸化膜などの保護膜12を介して回折格子部を設けることによって、上記した実施形態を同様に適用することができる。
【0069】
さらに、上記した説明では、基板としてP型単結晶シリコン基板を用いる場合を例示したが、N型単結晶シリコン基板を用いてもよい。この場合には、基板がN型となるだけで、その他の導電型は上記で説明したものと同様である。また、上記した説明では、基板として、単結晶シリコン基板を用いているが、単結晶ゲルマニウム基板や単結晶ガリウム砒素基板などの単結晶半導体基板を用いてもよいし、多結晶シリコン基板や多結晶ゲルマニウム基板などの多結晶半導体基板を用いてもよい。
【0070】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0071】
10…画素形成部、11…P型単結晶シリコン基板(基板)、12…保護膜、13…ゲート絶縁膜、14…画素分離部、15…素子分離絶縁膜、16…N型拡散層、17…P型ウェル、18…電荷蓄積層、19…ゲート電極、20L,20M,20S…回折格子部、21…ソース/ドレイン領域、31…多層配線層、32…層間絶縁膜、33…配線層、34…ビア、41…支持基板、51,51L,51M,51S…カラーフィルタ、52…マイクロレンズ、101…パッド酸化膜、201,202,203…貫通孔、PL,PM,PS…画素、PD…フォトダイオード、RL,RM,RS…画素領域、Tr…読み出しトランジスタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の波長の光を透過させるフィルタと、前記フィルタを透過する前記所定の波長の光を検出するフォトダイオードと、を含む画素を、異なる波長の光を検出するように複数有する絵素が、所定の周期で2次元的に半導体基板上に配置される固体撮像素子において、
前記絵素中の最も長い波長の光を検出する画素は、
前記半導体基板の前記光の入射面と対向する面側の前記フォトダイオード上に設けられる保護膜と、
前記保護膜上に設けられ、厚さ方向に貫通する円柱状の孔が2次元的に配置される第1回折格子部と、
を備え、
前記絵素中の前記最も長い波長の光を検出する前記画素以外の他の画素は、
前記半導体基板の前記光の入射面と対向する面側の前記フォトダイオード上に設けられる前記保護膜と、
前記保護膜上に設けられ、厚さ方向に貫通する円柱状の孔が所定の周期で2次元的に配置される第2回折格子部と、
を備え、
前記第1回折格子部は、前記絵素中の前記最も長い波長の光を検出する前記画素に設けられる前記フィルタを透過する光を反射させるように前記孔の径と配置される周期が選択され、
前記第2回折格子部は、前記他の画素に設けられる前記フィルタを透過する光を反射させるように前記孔の径と配置される周期が選択されることを特徴とする固体撮像素子。
【請求項2】
所定の波長の光を透過させるフィルタと、前記フィルタを透過する前記所定の波長の光を検出するフォトダイオードと、を含む画素を、異なる波長の光を検出するように複数有する絵素が、所定の周期で2次元的に半導体基板上に配置される固体撮像素子において、
前記絵素中の最も長い波長の光を検出する画素は、
前記半導体基板の前記光の入射面と対向する面側の前記フォトダイオード上に設けられる保護膜と、
前記保護膜上に設けられ、厚さ方向に貫通する円柱状の孔が2次元的に配置される第1回折格子部と、
を備え、
前記第1回折格子部は、当該画素に設けられる前記フィルタを透過する光を反射させるように前記孔の径と配置される周期が選択されることを特徴とする固体撮像素子。
【請求項3】
前記絵素中の前記最も長い波長の光を検出する前記画素以外の他の画素は、
前記半導体基板の前記光の入射面と対向する面側の前記フォトダイオード上に設けられる前記保護膜と、
前記保護膜上に設けられ、厚さ方向に貫通する円柱状の孔が所定の周期で2次元的に配置される第2回折格子部と、
を備えることを特徴とする請求項2に記載の固体撮像素子。
【請求項4】
前記第2回折格子部は、前記第1回折格子部と同じ前記孔の径と前記周期を有することを特徴とする請求項3に記載の固体撮像素子。
【請求項5】
前記第1回折格子部は、前記保護膜よりも高い屈折率を有する材料からなることを特徴とする請求項1または2に記載の固体撮像素子。
【請求項6】
前記保護膜は、シリコン酸化膜からなり、
前記第1回折格子部は、シリコン、TiO2またはTa25のいずれかよりなることを特徴とする請求項5に記載の固体撮像素子。
【請求項7】
前記第2回折格子部は、前記保護膜よりも高い屈折率を有する材料からなることを特徴とする請求項1,3または4のいずれか1つに記載の固体撮像素子。
【請求項8】
前記保護膜は、シリコン酸化膜からなり、
前記第2回折格子部は、シリコン、TiO2またはTa25のいずれかよりなることを特徴とする請求項7に記載の固体撮像素子。
【請求項9】
前記画素は、前記フォトダイオードで光電変換された電荷を読み出す読み出しトランジスタをさらに備え、
前記保護膜は、前記読み出しトランジスタのゲート絶縁膜とほぼ同じ厚さを有し、前記ゲート絶縁膜の上面と略同じ高さに上面を有することを特徴とする請求項1から8のいずれか1つに記載の固体撮像素子。
【請求項10】
前記半導体基板の表面付近の隣接する前記画素間の境界に設けられる素子分離絶縁膜をさらに備え、
前記保護膜は、前記素子分離絶縁膜と略同じ厚さを有し、前記素子分離絶縁膜の上面と略同じ高さに上面を有することを特徴とする請求項1から8のいずれか1つに記載の固体撮像素子。
【請求項11】
前記絵素は、赤色光、緑色光および青色光を検出する3つの画素によって構成されることを特徴とする請求項1から10のいずれか1つに記載の固体撮像素子。
【請求項12】
前記半導体基板の前記フォトダイオードのPN接合面の形成面側に多層配線層をさらに備え、
前記フィルタは、前記半導体基板の前記多層配線層の形成面とは対向する側の面上に設けられることを特徴とする請求項1から11のいずれか1つに記載の固体撮像素子。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8】
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【図9】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図10−3】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−98503(P2013−98503A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242993(P2011−242993)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】