説明

固体撮像装置及びカメラシステム

【課題】画素セルが3つのトランジスタで構成される場合でも、横引きノイズの発生を抑えることが可能な固体撮像装置を提供する。
【解決手段】駆動回路は、所定の画素セル11に対して、リセットトランジスタ117をON状態とすることで、増幅トランジスタ113のゲートの電位をリセットする電子シャッター動作を行い、電子シャッター動作が行われた所定の画素セル11に対して、選択トランジスタ115及びリセットトランジスタ117を同時にON状態とすることで、リセットされた増幅トランジスタ113のゲートの電位に応じた電圧をリセット信号として画素セル11から列信号線141に出力させるリセット信号の信号読み出し動作を行い、電子シャッター動作において、リセットトランジスタ117がON状態とされている時に選択トランジスタ115がON状態とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像装置に関し、特に積層型及び裏面照射型の固体撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、結晶シリコンからなる半導体基板の内部にフォトダイオード(光電変換部)が設けられ、CCD(Charge Coupled Device)又はMOS(Metal Oxide Semiconductor)を走査回路とするCCD型又はMOS型の固体撮像装置の画素セルは急速に微細化されている。2000年頃には3μmであった画素サイズは、2007年には2μm以下となった。2010年には画素サイズが1.4μmの固体撮像装置が実用化される予定であり、このペースで画素サイズの微細化が進むと、数年以内に1μm以下の画素サイズを実現できると期待される。
【0003】
しかし、1μm以下の画素サイズを実現するためには結晶シリコンの光吸収係数が小さいことにより生じる第1の課題と、取り扱い信号量に関する第2の課題とを解決する必要があることを本願発明者は見出した。
【0004】
まず、第1の課題について詳細に述べる。結晶シリコンの光吸収係数は光の波長に依存する。固体撮像装置の感度を決める波長550nm近傍の緑色の光をほぼ完全に吸収し光電変換するには約3.5μmの厚さの結晶シリコンが必要である。従って、半導体基板の内部に形成するフォトダイオードの深さを3.5μm程度とする必要がある。平面的な画素サイズを1μmとした場合には、深さが3.5μm程度のフォトダイオードを形成することは非常に困難である。仮に深さが3.5μm程度のフォトダイオードを形成できたとしても斜めに入射する光が隣接する画素セルのフォトダイオードに入射するという問題が発生するおそれが高い。斜めに入射する光が隣接する画素セルのフォトダイオードに入射すると、混色(クロストーク)が生じ、カラーの固体撮像装置においては大きな問題である。混色を防ぐためにフォトダイオードをこれより浅く形成すると緑の光吸収効率が劣化し固体撮像装置の感度が劣化する。画素セルの微細化では画素サイズが小さくなって1つの画素セルの感度が低下するため、これに加えて光吸収効率が低下することは致命的である。
【0005】
次に、第2の課題について詳細を述べる。取り扱い信号量は、一般的な固体撮像装置に用いられているフォトダイオード構造である埋め込みフォトダイオードの飽和電荷量により決まる。埋め込みフォトダイオードは、内部に蓄積された信号電荷をほぼ完全に隣接する電荷検出部に転送できる(完全転送)という長所がある。このため、電荷転送に関わる雑音がほとんど発生せず、埋め込みフォトダイオードは広く固体撮像装置に採用されている。しかし、完全転送を実現するためにフォトダイオードの単位面積あたりの容量を大きくできない。このため画素セルを微細化すると飽和電荷の減少が問題となる。コンパクトデジタルカメラにおいては、1つの画素セルあたり10000電子の飽和電子数が必要であったが、画素サイズが1.4μm程度となると飽和電子数は5000電子程度が限界となる。現在は、デジタル信号処理技術による雑音抑圧処理等により画像を作製することにより、飽和電子数の減少に対応しているが、自然な再生画像を得ることは困難である。さらに、高級な一眼レフカメラの場合には、1つの画素セルあたり30000電子程度の飽和電子数が必要であると言われている。
【0006】
なお、結晶シリコン基板を用いたMOS型イメージセンサにおいて、基板を薄く削ることにより画素回路が形成された表面側ではなく裏面側から光を入射させる構造が検討されている。しかし、この構造でも、画素回路を構成する配線等により入射する光が妨げられることを回避できるだけであり、第1の課題及び第2の課題を解決することはできない。
【0007】
これら2つの課題を解決する有望な技術として、積層型の固体撮像装置があげられる。積層型の固体撮像装置は、画素回路が形成された半導体基板の上に絶縁膜を介して光電変換膜が形成された構成を有している。このため、光電変換膜にアモルファスシリコン等の光吸収係数が大きい材料を用いることが可能となる。例えば、アモルファスシリコンの場合、波長550nmの緑色の光は、0.4nm程度の厚さでほとんど吸収することができる。また、埋め込みフォトダイオードを用いないため、光電変換部の容量を大きくすることが可能であり、飽和電荷を大きくすることができる。さらに、電荷を完全転送しないため付加容量を積極的に付加することも可能であり、微細化された画素セルにおいても十分な大きさの容量が実現でき、第2の課題も解決できる。ダイナミックランダムアクセスメモリにおけるスタックセルのような構造とすることも可能である。
【0008】
なお、近年の埋め込みフォトダイオードを用いたMOS型の固体撮像装置は、例えば特許文献1に記載されているように、画素セルが選択トランジスタ、転送トランジスタ、リセットトランジスタ及び増幅トランジスタの4つのトランジスタで構成されているものが一般的である。しかし、例えば特許文献2に記載されているように、転送トランジスタが除かれて画素セルが3つのトランジスタで構成されているものもある。そして、上記の積層型の固体撮像装置に用いる画素セルは、電荷検出回路により光電変換膜で発生した電荷を直接画素アンプで検出するために、3つのトランジスタで構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2011−9997号公報
【特許文献2】特開2005−269098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、画素セルが3つのトランジスタで構成される回路構成では、電子シャッター動作を行う場合、次の問題が発生する。すなわち、選択トランジスタがON状態にあるかOFF状態にあるかに依存して画素セル内のフローティングディフュージョン(FD)の電位が変化するため、電子シャッター後のFDの電位とリセット信号読み出し時のFDの電位とが異なり、これに起因して横引きノイズが発生する。以下で、この問題を詳細に説明する。
【0011】
まず、画素セルが4つのトランジスタで構成される固体撮像装置について述べる。
【0012】
図11は埋め込みフォトダイオードを用いたMOS型の固体撮像装置の回路構成の一例を示す図であり、図12は図11の固体撮像装置の電子シャッター動作を示す駆動タイミングチャートの一例である。
【0013】
図11の固体撮像装置では、画素セル201がフォトダイオード(PD)と、選択トランジスタ209、転送トランジスタ202、リセットトランジスタ204及び増幅トランジスタ205の4つのトランジスタとで構成されている。そして、電子シャッター動作を行う場合に、行毎の画素セル201の行リセット信号RESETと転送信号Txとを列方向に順番に駆動してローリングシャッターが行われる。
【0014】
このとき、図12に示されるように、PDの光電変換信号の読み出しをするn+1行(nは1以上の自然数)の画素セル201では行選択信号SELn+1が駆動されるが、電子シャッターが行われているn行の画素セル201では行選択信号SELnは駆動されない。その理由は、画素セル201でPDとFD(電荷検出素子)とが電気的に分離可能な状態で個別に設けられており、電子シャッター動作はPDの光電変換信号を掃き捨てる動作をするだけでよく、行選択信号SELは駆動しなくても良いからである。
【0015】
図11の固体撮像装置では、電子シャッター動作でリセットした時期を蓄積開始時期とし、ある蓄積期間が経過した後で各画素セル201から光電変換信号を読み出す駆動が行われるので、各画素セル201でFDを先にリセット(初期化)して基準信号を生成し、そこにPDに蓄積された光電変換信号が転送信号Txで転送される。カラムCDS(Correlated Double Sampling)回路では、このFDを先にリセッした時に増幅トランジスタ205から出力されたリセット信号と光電変換信号をFDに転送した時に増幅トランジスタ205から出力された画素信号とを相関二重サンプリングして、差分を信号成分として検出しているので、ノイズは相殺される。
【0016】
次に、画素セルが3つのトランジスタで構成される固体撮像装置について述べる。
【0017】
図13は積層型の固体撮像装置の全体の回路構成の一例を示す図であり、図14は図13の画素セル及びその周辺の回路構成の一例を示す図であり、図15は図13の固体撮像装置の動作を説明するための回路図である。
【0018】
図13の固体撮像装置(センサチップ)252は、アドレス制御線121、リセット制御線123、列信号線141、リセットドレイン線126、列選択トランジスタ127、列走査回路(水平走査部)229、水平信号線230、出力アンプ231、行走査回路(垂直走査部)233、マルチプレクサ回路(MUX)241、水平出力端子(VOUT端子)142、画素部243、列信号処理部(カラムCDS回路)21及びタイミング制御回路250を備える。
【0019】
画素部243には、複数の画素セル11が半導体基板で行列状に配置され、画素セル11の列毎に列信号線141が設けられている。固体撮像装置252内において、画素部243の画素セル11は行走査回路233とマルチプレクサ回路241とによって選択される。
【0020】
画素セル11は、光電変換部111と、ゲートが光電変換部111と接続された増幅トランジスタ113と、ドレインが光電変換部111と接続されたリセットトランジスタ117と、増幅トランジスタ113と直列に接続された選択トランジスタ115と、FD2とを有している。
【0021】
タイミング制御回路250は、行走査回路233に垂直走査信号を供給し、マルチプレクサ回路241に行選択信号SEL及び行リセット信号RESETを供給し、列走査回路229に水平走査信号を供給する。タイミング制御回路250は、行選択信号SEL及び行リセット信号RESETを画素セル11の駆動信号として生成し、駆動信号SEL及びCLを列信号処理部21の駆動信号として生成する。
【0022】
マルチプレクサ回路241は、図14に示されるように、画素リセット信号スイッチ237及び画素アドレス信号スイッチ238から構成され、行選択信号SEL及び行リセット信号RESETの画素部243への出力を制御する。
【0023】
列信号処理部21は、図15に示されるように、コンデンサ219及び225と、サンプルトランジスタ220と、クランプトランジスタ222とを有する。列信号処理部21は、列信号線141毎に設けられ、対応する列信号線141における任意の異なる2つのタイミングにおける電位差、つまりFD2をリセットした時に増幅トランジスタ113から出力されたリセット信号と光電変換部111の光電変換信号をFD2に転送した時に増幅トランジスタ113から出力された画素信号との差に応じた信号をCDS出力ノード226から出力する。
【0024】
蓄積ダイオード初期化電圧発生回路153は、リセットドレイン線126と接続され、リセットドレイン線126にFD2の電位をリセット(初期化)するためのリセット電圧を供給する。
【0025】
図16は、図13〜図15の固体撮像装置の信号読み出し動作を示す駆動タイミングチャートの一例である。
【0026】
図13〜図15の固体撮像装置において、光電変換部111により光が光電変換信号に変換されて、光電変換信号はFD2で蓄えられる。ここで、行選択信号SELを駆動して選択トランジスタ115をON状態にすると、この光電変換信号は、増幅トランジスタ113と負荷トランジスタ130とにより形成されるソースフォロア回路でインピーダンス変換され、列信号線141を介して、列信号処理部21に入力される。そして、列信号処理部21で光電変換信号は一旦サンプルホールドされる。
【0027】
次に、行リセット信号RESETが駆動されて、リセットトランジスタ117をON状態にすると、先ほどFD2で蓄えられた光電変換信号がリセットされる。このとき、FD2には基準信号が蓄積される。
【0028】
次に、行選択信号SELを駆動して選択トランジスタ115をON状態にすると、基準信号は、列信号線141を介して列信号処理部21に入力される。そして、列信号処理部21で光電変換信号と基準信号とが差分されて、差分がCDS出力ノード226に出力され、信号成分として扱われる。
【0029】
最後に、列走査回路229からの列選択信号により列選択トランジスタ127がON状態となることで、先の信号成分は水平信号線230に読み出されて、出力アンプ231で増幅後に水平出力端子142から外部出力される。
【0030】
図17は、図13〜図15の固体撮像装置の光電変換部111の光電変換信号の蓄積開始時期を決める電子シャッター動作、及び信号読み出し動作を示す駆動タイミングチャートの一例である。図18は、図13〜図15の固体撮像装置の構成、電子シャッター動作及び信号読み出し動作を説明するための図である。
【0031】
電子シャッター動作を行う場合、画素セル11の行リセット信号RESETを列方向に順番に駆動してローリングシャッターを行う。この電子シャッター動作において、行選択信号SEL1は、近年の埋め込みフォトダイオードを用いたMOS型の固体撮像装置と同様に駆動されない。これに対して、信号読み出し動作を行う画素セル11では行選択信号SELが駆動される。
【0032】
以上のように、画素セルが3つのトランジスタで構成される場合、PDとFDとは同一の素子である(以降、PD及びFDを区別せずPD及びFDをまとめて単にFDとも称する。)。そして、電子シャッター動作ではFDの光電変換信号を掃き捨てる動作が行われるが、この時に行選択信号SEL1は駆動されない。そして、電子シャッター動作によりFDをリセットした時期を蓄積開始時期とし、ある蓄積期間後に各画素セルから光電変換信号が読み出される。各画素セルのFDの光電変換信号が読み出された後に、FDが再びリセットされてリセット信号が読み出される。このリセット信号の読み出しでは、行選択信号SELを駆動しないとリセット信号が読み出せないので、必然的に行選択信号SELが駆動されて選択トランジスタがON状態とされる。従って、電子シャッター動作時のFDのリセット(1回目のリセット)とリセット信号の信号読み出し動作時のFDのリセット(2回目のリセット)とでは、選択トランジスタの状態が異なるため、FDのリセット電位へのカップリング状態が異なり、この差がノイズ成分として残る。
【0033】
カラムCDS回路では、2回目のリセットにより得られたリセット信号と画素信号とを相関二重サンプリングして、その差分を信号成分としているので、1回目及び2回目のリセットでFDのリセット電位へのカップリング状態が異なることに起因するノイズ成分が信号成分にも残る。このノイズ成分は、画像で見ると横引きノイズが目立つ画像となって表れる。
【0034】
そこで、本発明は、画素セルが3つのトランジスタで構成される場合でも、横引きノイズの発生を抑えることが可能な固体撮像装置及びカメラシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0035】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る固体撮像装置は、半導体基板と、前記半導体基板に行列状に配置された複数の画素セルと、前記画素セルの列に対応して設けられ、対応する前記画素セルの列と接続された垂直信号線と、前記画素セルを駆動する駆動回路とを備え、前記画素セルは、光電変換部と、ゲートが前記光電変換部と直接接続された増幅トランジスタと、前記増幅トランジスタと接続された選択トランジスタと、前記増幅トランジスタのゲートと接続されたリセットトランジスタとを有し、前記駆動回路は、所定の前記画素セルに対して、前記リセットトランジスタをON状態とすることで、前記増幅トランジスタのゲートの電位をリセットする電子シャッター動作を行い、前記電子シャッター動作が行われた所定の画素セルに対して、前記選択トランジスタをON状態とすることで、前記光電変換部の信号が読み出された前記増幅トランジスタのゲートの電位に応じた電圧を画素信号として前記画素セルから前記垂直信号線に出力させた後、前記選択トランジスタ及び前記リセットトランジスタを同時にON状態とすることで、リセットされた前記増幅トランジスタのゲートの電位に応じた電圧をリセット信号として前記画素セルから前記垂直信号線に出力させる信号読み出し動作を行い、前記電子シャッター動作において、前記リセットトランジスタがON状態とされている時に前記選択トランジスタがON状態とされることを特徴とする。
【0036】
ここで、前記光電変換部は、前記半導体基板の上方に形成された光電変換膜と、前記光電変換膜の上方に形成された透明電極と、前記光電変換膜と前記半導体基板との間に形成された画素電極とを有し、前記画素電極が前記増幅トランジスタのゲートに接続されていてもよい。
【0037】
本態様によれば、画素セルが3つのトランジスタで構成されるが、電子シャッター動作において選択トランジスタがON状態となっているため、FDのリセット電位へのカップリング状態がリセット信号の信号読み出し動作におけるカップリング状態と同じになる。従って、リセット信号の信号読み出し動作と電子シャッター動作とで、カップリングによる差を生じさせることがないので、横引きノイズの発生を抑えることができる。
【0038】
また、前記駆動回路は、前記電子シャッター動作において、同時にON状態とされている前記選択トランジスタ及び前記リセットトランジスタについて、前記リセットトランジスタをOFF状態としてから第1期間が経過した後で前記選択トランジスタをOFF状態とし、前記リセット信号の出力において、前記選択トランジスタをON状態としてから前記リセットトランジスタをON状態とすることで前記選択トランジスタ及び前記リセットトランジスタを同時にON状態とし、前記リセット信号の出力において、同時にON状態とされている前記選択トランジスタ及び前記リセットトランジスタについて、前記リセットトランジスタをOFF状態としてから第2期間が経過した後で前記選択トランジスタをOFF状態とし、前記第1期間と前記第2期間とは等しくてもよい。
【0039】
撮像条件が強烈な光照射のもとでは、電子シャッター動作において、リセット直後に光電変換部の電荷蓄積が始まり、増幅トランジスタのゲート電位つまりリセット電位が変動する。しかし、本態様によれば、電子シャッター動作及び信号読み出し動作において、リセットトランジスタがOFF状態になってから選択トランジスタがOFF状態になるまでの期間が等しい。従って、電子シャッター動作でのリセット電位と信号読み出し動作のリセット信号出力時のリセット電位とが同じように変動するので、電子シャッター動作のリセット電位の変動が相殺され、正確な信号を検出できる。
【0040】
また、前記駆動回路は、前記所定の画素セルと同じ列の異なる前記画素セルに対して前記信号読み出し動作を行った直後に、前記所定の画素セルに対して前記電子シャッター動作を行ってもよい。
【0041】
撮像条件が強烈な光照射のもとでは、電子シャッター動作において、リセット直後に光電変換部の電荷蓄積が始まり、リセット電位が変動するが、選択トランジスタはON状態とされているため、このリセットレベル変動成分が垂直信号線に出力される。従って、先に所定の画素セルについて電子シャッター動作で増幅トランジスタのゲート電位をリセットしてから、所定の画素セルと同じ列の他の画素セルについてある蓄積期間後に光電変換部の信号に対応する画素信号を出力させる駆動を行うと、電子シャッター動作のリセットレベル変動成分が次に垂直信号線に出力される画素信号と垂直信号線上で混ざりあうことになる。その結果、電子シャッター動作を行っている行からのリセットレベル変動成分と画素信号の出力を行っている行からの画素信号が画面の垂直方向にゴースト状に重なって見える。しかし、本態様によれば、画素信号を出力する駆動の後で電子シャッター動作を行われ、CDS回路のリセット動作により垂直信号線のリセットレベル変動成分が消されてから画素信号が出力されるので、ゴーストの発生を抑えることができる。
【0042】
また、前記駆動回路は、前記電子シャッター動作において、前記リセットトランジスタをON状態としてから前記選択トランジスタをON状態とすることで前記選択トランジスタ及び前記リセットトランジスタを同時にON状態としてもよい。
【0043】
撮像条件が強烈な光照射のもとでは、電子シャッター動作で選択トランジスタをリセットトランジスタより先にON状態とすると、リセットトランジスタをON状態とする前に垂直信号線に大きな電圧が出力され、垂直信号線の寄生容量を大きく充電する。従って、電子シャッター動作でリセットトランジスタをON状態としても、垂直信号線をリセットレベルに復帰させるまでに時間を要し、電子シャッター動作の期間内にリセットレベルに復帰しきれないため、ゴーストが発生する。しかし、本態様によれば、電子シャッター動作においてリセットトランジスタを先にON状態としてから選択トランジスタをON状態とする。従って、選択トランジスタをON状態とする前に増幅トランジスタのゲートの電荷を完全にリセットドレインに掃き捨てるため、ゴーストの発生を抑えることができる。
【0044】
また、前記所定の画素セルにおいて、前記選択トランジスタ及び前記リセットトランジスタのゲートには共通の信号線が接続され、前記選択トランジスタ及び前記リセットトランジスタの閾値電圧は異なってもよい。
【0045】
本態様によれば、選択トランジスタ及びリセットトランジスタでゲートに駆動信号を供給する信号線を共通化できるので、信号線の数を減らすことができる。
【0046】
また、本発明の一態様に係るカメラシステムは、上記固体撮像装置を用いたことを特徴とする。
【0047】
本態様によれば、横引きノイズの発生を抑えることができる。
【発明の効果】
【0048】
本発明によれば、画素セルが3つのトランジスタで構成される場合でも、横引きノイズの発生を抑えることができる。また、電子シャッター動作を行っている行からのリセットレベル変動成分と画素信号の出力を行っている行からの画素信号とが画面の垂直方向にゴースト状に重なって見えることを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置の構成、電子シャッター動作及び信号読み出し動作を説明するための図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置の電子シャッター動作及び信号読み出し動作を示す駆動タイミングチャートの一例である。
【図3A】リセット電位の時間変動を示す図である。
【図3B】本発明の第2の実施形態に係る固体撮像装置の電子シャッター動作及び信号読み出し動作を示す駆動タイミングチャートの一例である。
【図4】ゴースト画像の一例を示す図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る固体撮像装置の電子シャッター動作及び信号読み出し動作を示す駆動タイミングチャートの一例である。
【図6】本発明の第4の実施形態に係る固体撮像装置の電子シャッター動作及び信号読み出し動作を示す駆動タイミングチャートの一例である。
【図7】本発明の第5の実施形態に係る固体撮像装置の固体撮像装置の構成、電子シャッター動作及び信号読み出し動作を説明するための図である。
【図8】本発明の第5の実施形態に係る固体撮像装置の電子シャッター動作及び信号読み出し動作を示す駆動タイミングチャートの一例である。
【図9】本発明の第6の実施形態の係る撮像装置の全体構成を示す図である。
【図10A】本発明の第1〜6の実施形態の固体撮像装置の変形例に係る画素セル及びその周辺の回路構成の一例を示す図である。
【図10B】本発明の第1〜6の実施形態の固体撮像装置の変形例に係る画素セルの構成の一例を示す断面図である。
【図11】埋め込みフォトダイオードを用いた固体撮像装置の回路構成の一例を示す図である。
【図12】埋め込みフォトダイオードを用いた固体撮像装置の電子シャッター動作を示す駆動タイミングチャートの一例である。
【図13】積層型の固体撮像装置の全体の回路構成の一例を示す図である。
【図14】積層型の固体撮像装置の画素セル及びその周辺の回路構成の一例を示す図である。
【図15】積層型の固体撮像装置の動作を説明するための回路図である。
【図16】積層型の固体撮像装置の信号読み出し動作を示す駆動タイミングチャートの一例である。
【図17】積層型の固体撮像装置の電子シャッター動作及び信号読み出し動作を示す駆動タイミングチャートの一例である。
【図18】積層型の固体撮像装置の構成、電子シャッター動作及び信号読み出し動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。本発明は、特許請求の範囲だけによって限定される。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、本発明の課題を達成するのに必ずしも必要ではないが、より好ましい形態を構成するものとして説明される。また、図面において、実質的に同一の構成、動作、及び効果を表す要素については、同一の符号を付す。
【0051】
(第1の実施形態)
本実施形態の固体撮像装置は、図13〜図15で示した構成を有する積層型の固体撮像装置であるが、タイミング制御回路250、行走査回路233及びマルチプレクサ回路241から構成される駆動回路による電子シャッター動作及びリセット信号の信号読み出し動作が図17及び図18とは異なる。
【0052】
本実施形態の固体撮像装置は、半導体基板と、半導体基板に行列状に配置された複数の画素セル11と、画素セル11の列に対応して設けられ、対応する画素セル11の列と接続された列信号線(垂直信号線)141と、画素セル11を駆動する駆動回路であり、タイミング制御回路250、行走査回路233及びマルチプレクサ回路241から構成される駆動回路とを備え、画素セル11は、光電変換部111と、ゲートが光電変換部111と直接接続された増幅トランジスタ113と、増幅トランジスタ113と接続された選択トランジスタ115と、増幅トランジスタ113のゲートと接続されたリセットトランジスタ117とを有し、駆動回路は、所定の画素セル11に対して、リセットトランジスタ117をON状態とすることで、増幅トランジスタ113のゲートの電位をリセットする電子シャッター動作を行い、電子シャッター動作が行われた所定の画素セル11に対して、選択トランジスタ115をON状態とすることで、光電変換部111の信号が読み出された増幅トランジスタ113のゲートの電位に応じた電圧を画素信号として画素セル11から列信号線141に出力させた後、選択トランジスタ115及びリセットトランジスタ117を同時にON状態とすることで、リセットされた増幅トランジスタ113のゲートの電位に応じた電圧をリセット信号として画素セル11から列信号線141に出力させるリセット信号の信号読み出し動作を行い、電子シャッター動作において、リセットトランジスタ117がON状態とされている時に選択トランジスタ115がON状態とされる。なお、信号読み出し動作におけるリセット信号の出力は、電子シャッター動作が行われた後、さらに信号蓄積期間が経過して画素信号の読み出しが行われた後で行われる。
【0053】
光電変換部111は、半導体基板の上方に形成された光電変換膜と、光電変換膜の上方(半導体基板と反対側)に光電変換膜と接する形で形成された透明電極と、光電変換膜と半導体基板との間(半導体基板側)に形成された画素電極とを有し、画素電極が増幅トランジスタ113のゲートに接続されている。透明電極及び画素電極は、光電変換膜に電圧を印加するものであり、光電変換膜と接している。透明電極は複数の画素セル11に対して共通に設けられているのに対して、画素電極は各画素セル11に対して個別に設けられている。また、透明電極は固定電位を供給する電源線に接続されているのに対し、画素電極はFD2に接続されている。FD2は、半導体基板内に形成された蓄積ダイオードである。蓄積ダイオード及びFD2の接続ノードに増幅トランジスタ113のゲートが接続されている。
【0054】
増幅トランジスタ113は、ソースが選択トランジスタ115を介して列信号線141と接続され、ドレインが電源電圧Vddを供給する電源線と接続されている。リセットトランジスタ117は、ゲートがリセット制御線123に接続され、ソースが光電変換部111の画素電極と接続され、ドレインがリセットドレイン線126と接続されている。選択トランジスタ115は、ゲートがアドレス制御線121に接続され、増幅トランジスタ113のソースと列信号線141との間に設けられている。なお、選択トランジスタ115は、増幅トランジスタ113のドレインと電源電圧Vddを供給する電源線との間に設けられてもよい。負荷トランジスタ130は、列信号線141と接地線との間に設けられている。
【0055】
図1は、本実施形態に係る固体撮像装置の構成、電子シャッター動作及び信号読み出し動作を説明するための図であり、特に選択トランジスタ115及びリセットトランジスタ117の駆動例を示している。図2は、本実施形態に係る固体撮像装置の電子シャッター動作及び信号読み出し動作を示す駆動タイミングチャートの一例であり、特に選択トランジスタ115及びリセットトランジスタ117の駆動タイミングチャートの一例である。
【0056】
電子シャッター動作において、各行に対応して設けられたリセット制御線123の行リセット信号RESET1、RESET2・・・RESETnを列方向に順番にハイレベルにしてローリングシャッターが行われる。このとき、行リセット信号RESETがハイレベルにされる行の行選択信号SELも同時にハイレベルにされるように、行選択信号SEL1、SEL2・・・SELnが列方向に順番にハイレベルにされる。所定の画素セル11について、行リセット信号RESETがハイレベルにされると、対応する行の増幅トランジスタ113のゲートの電位は、リセットされる。
【0057】
電子シャッター動作でリセットされた時期を蓄積開始時期として所定の蓄積期間の経過後、電子シャッター動作によりリセットされた増幅トランジスタ113のゲートの電位は、光電変換部111による光電変換により生成された電荷の量に応じて変化する。この電荷量の変化は、行選択信号SEL1、SEL2・・・SELnのみを列方向に順番にハイレベルにすることで読み出される。所定の画素セル11について、行選択信号SELがハイレベル、行リセット信号RESETがローレベルにされると、選択トランジスタ115がON状態、リセットトランジスタ117がOFF状態とされて、変化したゲートの電位に応じた電圧(FD2の電圧)が画素信号として列信号線141に出力され、画素信号の信号読み出し動作が行われる。
【0058】
画素信号が読み出された後でリセット信号の読み出しが行われ、行リセット信号RESET1、RESET2・・・RESETnが列方向に順番にハイレベルにされる。所定の画素セル11について、行選択信号SELがハイレベル、行リセット信号RESETがハイレベルにされると、選択トランジスタ115及びリセットトランジスタ117が同時にON状態とされ、変化したゲートの電位がリセットされると共にリセットされたゲートの電位に応じた電圧がリセット信号として列信号線141に出力され、リセット信号の信号読み出し動作が行われる。
【0059】
ここで、リセット信号の信号読み出し動作の前で、列信号処理部21が動かされる。具体的に、駆動信号CL及びSHはハイレベルにされ、サンプルトランジスタ220及びクランプトランジスタ222はON状態とされて、列信号線141の電位がリセットされる。
【0060】
図1及び図2の電子シャッター動作及び信号読み出し動作は、第1行の画素セル11の電子シャッター動作を行う第一の水平ブランキング期間と、第n行の画素セル11の信号読み出し動作を行う第二の水平ブランキング期間との両期間で、第1行及び第n行に対応するリセット制御線123にハイレベルの行リセット信号RESET1及びRESETn、アドレス制御線121にハイレベルの行選択信号SEL1及びSELnが入力され、第一の水平ブランキング期間における行リセット信号RESET1及び行選択信号SEL1の両方がハイレベルになる期間と、第二の水平ブランキング期間における行リセット信号RESETn及び行選択信号SELnの両方がハイレベルになる期間とが同一であることを特徴としている。
【0061】
以上のように本実施形態の固体撮像装置によれば、リセット信号の信号読み出し動作時にリセットトランジスタ117及び選択トランジスタ115がON状態とされるため、電子シャッター動作時においてもリセットトランジスタ117をON状態とすると共に選択トランジスタ115をON状態とする。従って、電子シャッター動作時とリセット信号の信号読み出し動作時とで選択トランジスタ115の状態は同じになるので、駆動信号のカップリングによるFD電位の変動量を同じ状態にし、リセット電位の変動を同じにすることができる。その結果、ノイズ成分を小さくできるので、横引きノイズの発生を抑えることができる。
【0062】
(第2の実施形態)
第1の実施形態の固体撮像装置において、撮像条件が強烈な光照射のもとでは、リセット直後に電荷蓄積が始まり、リセット電位も変動する。従って、リセットトランジスタ117をOFF状態としてから選択トランジスタ115をOFF状態とするまでのOFF期間が電子シャッター動作時と信号読み出し動作時とで異なると、リセット電位の変動量が電子シャッター動作と信号読み出し動作時とで異なることになる。つまり、図3Aのリセット電位の時間変動に示されるように、OFF期間が電子シャッター動作でT1であり、信号読み出し動作時でT2であり、T1及びT2が異なると、この違いがリセット電位のリセットレベル差として表れる。このリセットレベル差は画像上の目立つノイズとして表れるため、本実施形態の固体撮像装置において、リセットレベルの変動量が同量になるようにタイミング調整する。具体的には、T1=T2に設定して、ノイズ成分を相殺する。
【0063】
図3Bは、本実施形態に係る固体撮像装置の電子シャッター動作及び信号読み出し動作を示す駆動タイミングチャートの一例であり、特に選択トランジスタ115及びリセットトランジスタ117の駆動タイミングチャートの一例である。
【0064】
本実施形態に係る固体撮像装置は、タイミング制御回路250、行走査回路233及びマルチプレクサ回路241から構成される駆動回路が、電子シャッター動作において、同時にON状態とされている選択トランジスタ115及びリセットトランジスタ117について、リセットトランジスタ117をOFF状態としてからOFF期間T1が経過した後で選択トランジスタ115をOFF状態とし、リセット信号の出力において、選択トランジスタ115をON状態としてからリセットトランジスタ117をON状態とすることで選択トランジスタ115及びリセットトランジスタ117を同時にON状態とし、リセット信号の出力において、同時にON状態とされている選択トランジスタ115及びリセットトランジスタ117について、リセットトランジスタ117をOFF状態としてからOFF期間T2が経過した後で選択トランジスタ115をOFF状態とし、OFF期間T1とOFF期間T2とは等しい点が第1の実施形態の固体撮像装置と異なっている。
【0065】
言い換えると、本実施形態に係る電子シャッター動作及び信号読み出し動作は、第一の水平ブランキング期間における行リセット信号RESET1をローレベルにしてから行選択信号SEL1をローレベルにするまでのOFF期間T1と、第二の水平ブランキング期間における行リセット信号RESETnをローレベルにしてから行選択信号SELnをローレベルにするまでのOFF期間T2とが同一である点が第1の実施形態の固体撮像装置と異なっている。
【0066】
以上のように、本実施形態の固体撮像装置によれば、電子シャッター動作及び信号読み出し動作において、リセットトランジスタ117がOFF状態になってから選択トランジスタ115がOFF状態になるまでのOFF期間が等しい。従って、強い光が入射し、電子シャッター動作においてリセットトランジスタ117をOFF状態にした後でFD2に電荷が蓄積してリセットレベルが変動した場合でも、電子シャッター動作時と信号読み出し動作時とでリセットレベルの変動量を同じにできる。その結果、画像に黒切れが生じたたり、ダークノイズの重畳が生じたりするのを抑えることができる。
【0067】
(第3の実施形態)
第2の実施形態の固体撮像装置においても、撮像条件がより強烈な光照射のもとでは、リセット直後に電荷蓄積が始まり、リセット電位も変動する。従って、先に所定の画素セル11について電子シャッター動作でリセットしてから、所定の画素セル11と同じ列の画素セル11についてある蓄積期間後に信号読み出し動作を行うと、電子シャッター動作のリセットレベル変動成分が次に列信号線141に出力される画素信号と列信号線141上で混ざりあうことになる。この状態では、電子シャッター動作を行っている行からのリセットレベル変動成分と信号読み出し動作を行っている行からの画素信号が画面の垂直方向にゴースト状に重なって見えることがある。つまり、図4に示されるように、信号読み出し動作を行っている行の高輝度のヘッドライト部分のみが電子シャッター動作を行っている行で薄っすらと見えることがある。これを防止するために、本実施形態の固体撮像装置では、信号読み出し動作の後で、電子シャッター動作が行われる。
【0068】
図5は、本実施形態に係る固体撮像装置の電子シャッター動作及び信号読み出し動作を示す駆動タイミングチャートの一例であり、特に選択トランジスタ115及びリセットトランジスタ117の駆動タイミングチャートの一例である。
【0069】
本実施形態に係る固体撮像装置は、タイミング制御回路250、行走査回路233及びマルチプレクサ回路241から構成される駆動回路が、所定の画素セル11と同じ列の異なる画素セル11に対して信号読み出し動作を行った直後に、所定の画素セル11に対して電子シャッター動作を行う点が第2の実施形態の固体撮像装置と異なっている。
【0070】
言い換えると、本実施形態に係る電子シャッター動作及びリセット信号の信号読み出し動作は、第一の水平ブランキング期間における行リセット信号RESETn及び行選択信号SELnがそれぞれハイレベルになる時期が、第二の水平ブランキング期間における行リセット信号RESET1及び行選択信号SEL1がそれぞれハイレベルになる時期よりも後である点が第2の実施形態の固体撮像装置と異なっている。
【0071】
撮像条件が強烈な光照射のもとでは、電子シャッター動作でリセットトランジスタ117がOFF状態となった直後のFD2の蓄積電荷による信号が列信号線141に出力されて、列信号線141の寄生容量が充電される。従って、電子シャッター動作の直後に信号読み出し動作を行い列信号線141に画素信号を出力させると先の寄生容量に充電された信号と画素信号とが列信号線141上で混ざり、ゴースト画像が出る。しかしながら、本実施形態の固体撮像装置によれば、信号読み出し動作の後で電子シャッター動作が行われるので、ゴースト画像の発生を抑えることができる。
【0072】
(第4の実施形態)
第3の実施形態の固体撮像装置において、信号読み出し動作の後で電子シャッター動作を行った場合でも、電子シャッター動作で選択トランジスタ115をリセットトランジスタ117より先にON状態とすると、リセットトランジスタ117をON状態とする前に列信号線141に大きな電圧が出力され、列信号線141の寄生容量を大きく充電する。特に電子シャッター動作において、リセットトランジスタ117をON状態とする前に列信号線141に出力される電圧は大きく、列信号線141の寄生容量に充電される電荷も大きい。従って、電子シャッター動作でリセットトランジスタ117をON状態にして増幅トランジスタ及び負荷トランジスタ130からなるソースフォロア回路を形成し、これにより列信号線141をリセットレベルに復帰させるまでに時間を要し、電子シャッター動作期間内にリセットレベルに復帰しきれないため、ゴーストが発生する。特に、積層センサでは、強力光入射時にFD2の電位は透明電極の電圧まで上昇する。そして、電源でクリップするまでソースフォロア回路により画素セル11から列信号線141に電圧(約2Vpp)が出力されるので、寄生容量に充電される電荷量が通常CMOSセンサより格段に多く(約0.5Vpp)、ゴーストが発生しやすい。これを防止するために、本実施形態の固体撮像装置は、電子シャッター動作においてリセットトランジスタ117を先にON状態としてFD2の電荷を完全にリセットドレインに掃き捨ててから選択トランジスタ115をON状態としている。
【0073】
図6は、本実施形態に係る固体撮像装置の電子シャッター動作及び信号読み出し動作を示す駆動タイミングチャートの一例であり、選択トランジスタ115及びリセットトランジスタ117の駆動タイミングチャートの一例である。
【0074】
本実施形態に係る固体撮像装置は、タイミング制御回路250、行走査回路233及びマルチプレクサ回路241から構成される駆動回路が、電子シャッター動作において、リセットトランジスタ117をON状態としてから選択トランジスタ115をON状態とすることで選択トランジスタ115及びリセットトランジスタ117を同時にON状態とする点が第3の実施形態の固体撮像装置と異なっている。
【0075】
言い換えると、本実施形態に係る電子シャッター動作及びリセット信号の信号読み出し動作は、第二の水平ブランキング期間において行リセット信号RESET1をハイレベルとした後で行選択信号SEL1をハイレベルとし、行リセット信号RESET1をローレベルとした後で行選択信号SEL1をローレベルとする点が第3の実施形態の固体撮像装置と異なっている。
【0076】
本実施形態の固体撮像装置によれば、電子シャッター動作において選択トランジスタ115をON状態とした後でリセットトランジスタ117をON状態とするので、ゴーストの発生を抑えることができる。
【0077】
(第5の実施形態)
図7は、本実施形態に係る固体撮像装置の構成、電子シャッター動作及び信号読み出し動作を説明するための図であり、特に選択トランジスタ115及びリセットトランジスタ117の駆動例を示している。図8は、本実施形態に係る固体撮像装置の電子シャッター動作及び信号読み出し動作を示す駆動タイミングチャートの一例であり、特に選択トランジスタ115及びリセットトランジスタ117の駆動タイミングチャートの一例である。
【0078】
本実施形態に係る固体撮像装置は、所定の画素セル11において、選択トランジスタ115及びリセットトランジスタ117のゲートには共通の画素操作信号線150が接続され、選択トランジスタ115及びリセットトランジスタ117の閾値電圧が異なる点が第1の実施形態の固体撮像装置と異なっている。ここで、画素操作信号線150には3値の画素操作信号ERSが入力され、画素操作信号ERSがローレベルのとき選択トランジスタ115及びリセットトランジスタ117は共にOFF状態であり、画素操作信号ERSがミドルレベルのとき選択トランジスタ115はON状態でリセットトランジスタ117はOFF状態であり、画素操作信号ERSがハイレベルのとき選択トランジスタ115及びリセットトランジスタ117は共にON状態である。
【0079】
言い換えると、本実施形態に係る固体撮像装置は、リセット制御線123及びアドレス制御線121が共通の画素操作信号線150で与えられ、第一の水平ブランキング期間及び第二の水平ブランキング期間の両期間で画素操作信号ERS1及びERSnがハイレベルである点が第1の実施形態の固体撮像装置と異なっている。
【0080】
以上のように本実施形態の固体撮像装置によれば、行リセット信号RESET及び行選択信号SELが共通の画素セル11においても、第1の実施形態の固体撮像装置と同様の効果を得ることができる。また、リセット制御線123及びアドレス制御線121が共通の画素操作信号線150で与えられるので、配線数を削減することができる。
【0081】
(第6の実施形態)
図9は、本実施形態の撮像装置(カメラシステム)の全体構成を示す図である。
【0082】
この撮像装置は、大きく分けて固体撮像装置252、光学系340、DSP(Digital Signal Processor)350、液晶画面等の画像表示デバイス380及び画像メモリ390から構成されている。
【0083】
光学系340は、被写体からの光を集光して固体撮像装置252の画素部243上に画像イメージを形成するレンズ341を備えている。
【0084】
固体撮像装置252は、第1〜5の実施形態で説明した固体撮像装置である。
【0085】
DSP350は、カメラシステム制御部360及び画像処理回路370を備えている。
【0086】
画像処理回路370は、固体撮像装置252から出力されたデジタル信号を受けて、カメラ信号処理として必要な、ガンマ補正、色補間処理、空間補間処理、及びオートホワイトバランス等の処理を行う。また、画像処理回路370は、JPEG等の圧縮フォーマットへの変換、画像メモリ390への記録、及び画像表示デバイス380への表示用信号処理等を行う。
【0087】
カメラシステム制御部360は、ユーザI/F(図示せず)で指定された各種の設定に従って、光学系340、固体撮像装置252及び画像処理回路370の制御を行い、撮像装置の全体動作を統合するマイクロコンピュータ等である。ユーザI/Fは、例えば、ズーム倍率の変更及びレリーズボタンなどのリアルタイム指示を入力として受け、カメラシステム制御部360は、レンズ341のズーム倍率変更、幕シャッターの走行及び固体撮像装置252のリセット走査の制御を行う。
【0088】
以上のように本実施形態の撮像装置によれば、第1〜5の実施形態で説明した固体撮像装置が用いられるため、画素セルが3つのトランジスタで構成される場合でも、横引きノイズの発生を抑えることができる。
【0089】
(変形例)
図10Aは、本発明の第1〜6の実施形態の固体撮像装置の変形例に係る画素セル11及びその周辺の回路構成の一例を示す図である。
【0090】
本変形例の固体撮像装置は、画素セル11が埋め込みフォトダイオードを用いた構造を有し、光電変換部111がフォトダイオード111aに置き換えられている点で第1〜6の実施形態の固体撮像装置と異なる。
【0091】
図10Bは、本変形例に係る画素セル11の構成の一例を示す断面図である。
【0092】
埋め込みフォトダイオードを用いた構造で3つのトランジスタで構成される画素セル11を実現しようとした場合、フォトダイオード111aと増幅トランジスタ113のゲートとを接続する配線を半導体基板461上に形成する必要があり、通常の構成では、この配線によりフォトダイオード111aへの光が遮光される。しかし、図10Aの画素セル11は、図10Bに示されるように、裏面照射型の構造を有し、半導体基板461の信号線等が形成された表面と反対側の裏面から入射光がフォトダイオード111aに入るため、このような問題は生じない。また、裏面照射型の画素セル11の場合は、半導体基板461の表面とは反対側の裏面からフォトダイオード111aに光が入射されるため、コンタクト450及び導電線451を形成する領域の自由度が表面照射型の画素セル11に対して向上する。
【0093】
カラーフィルタ468およびマイクロレンズ469は、半導体基板461の裏面上に形成されている。これにより、入射光はカラーフィルタ468およびマイクロレンズ469を通過し、半導体基板461の裏面からフォトダイオード111aに入る。
【0094】
半導体基板461の表面上には、画素セル11を構成するトランジスタ及びフォトダイオード111aを電気的に接続し、画素セル11の信号を出力するためのコンタクト450及び導電線451と、これらを覆う層間絶縁膜467とが形成されている。
【0095】
以上、本発明の固体撮像装置及びカメラシステムについて、実施形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲内で当業者が思いつく各種変形を施したものも本発明の範囲内に含まれる。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、複数の実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、固体撮像装置に応用でき、特に高感度で飽和量が大きく高画質なデジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯端末用カメラ、車載用カメラ、街頭カメラ、防犯用カメラ及び医療用カメラ等に応用できる。
【符号の説明】
【0097】
2 FD
11、201 画素セル
21 列信号処理部
111 光電変換部
111a フォトダイオード
113、205 増幅トランジスタ
115、209 選択トランジスタ
117、204 リセットトランジスタ
121 アドレス制御線
123 リセット制御線
126 リセットドレイン線
127 列選択トランジスタ
130 負荷トランジスタ
141 列信号線
142 水平出力端子
150 画素操作信号線
153 蓄積ダイオード初期化電圧発生回路
202 転送トランジスタ
219、225 コンデンサ
220 サンプルトランジスタ
222 クランプトランジスタ
226 CDS出力ノード
229 列走査回路
230 水平信号線
231 出力アンプ
233 行走査回路
237 画素リセット信号スイッチ
238 画素アドレス信号スイッチ
241 マルチプレクサ回路
243 画素部
250 タイミング制御回路
252 固体撮像装置
340 光学系
341 レンズ
350 DSP
360 カメラシステム制御部
370 画像処理回路
380 画像表示デバイス
390 画像メモリ
461 半導体基板
468 カラーフィルタ
469 マイクロレンズ
450 コンタクト
451 導電線
467 層間絶縁膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板に行列状に配置された複数の画素セルと、
前記画素セルの列に対応して設けられ、対応する前記画素セルの列と接続された垂直信号線と、
前記画素セルを駆動する駆動回路とを備え、
前記画素セルは、光電変換部と、ゲートが前記光電変換部と直接接続された増幅トランジスタと、前記増幅トランジスタと接続された選択トランジスタと、前記増幅トランジスタのゲートと接続されたリセットトランジスタとを有し、
前記駆動回路は、
所定の前記画素セルに対して、前記リセットトランジスタをON状態とすることで、前記増幅トランジスタのゲートの電位をリセットする電子シャッター動作を行い、
前記電子シャッター動作が行われた所定の画素セルに対して、前記選択トランジスタをON状態とすることで、前記光電変換部の信号が読み出された前記増幅トランジスタのゲートの電位に応じた電圧を画素信号として前記画素セルから前記垂直信号線に出力させた後、前記選択トランジスタ及び前記リセットトランジスタを同時にON状態とすることで、リセットされた前記増幅トランジスタのゲートの電位に応じた電圧をリセット信号として前記画素セルから前記垂直信号線に出力させる信号読み出し動作を行い、
前記電子シャッター動作において、前記リセットトランジスタがON状態とされている時に前記選択トランジスタがON状態とされる
固体撮像装置。
【請求項2】
前記駆動回路は、
前記電子シャッター動作において、同時にON状態とされている前記選択トランジスタ及び前記リセットトランジスタについて、前記リセットトランジスタをOFF状態としてから第1期間が経過した後で前記選択トランジスタをOFF状態とし、
前記リセット信号の出力において、前記選択トランジスタをON状態としてから前記リセットトランジスタをON状態とすることで前記選択トランジスタ及び前記リセットトランジスタを同時にON状態とし、
前記リセット信号の出力において、同時にON状態とされている前記選択トランジスタ及び前記リセットトランジスタについて、前記リセットトランジスタをOFF状態としてから第2期間が経過した後で前記選択トランジスタをOFF状態とし、
前記第1期間と前記第2期間とは等しい
請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項3】
前記駆動回路は、
前記所定の画素セルと同じ列の異なる前記画素セルに対して前記信号読み出し動作を行った直後に、前記所定の画素セルに対して前記電子シャッター動作を行う
請求項1又は2に記載の固体撮像装置。
【請求項4】
前記駆動回路は、
前記電子シャッター動作において、前記リセットトランジスタをON状態としてから前記選択トランジスタをON状態とすることで前記選択トランジスタ及び前記リセットトランジスタを同時にON状態とする
請求項1〜3のいずれか1項に記載の固体撮像装置。
【請求項5】
前記所定の画素セルにおいて、前記選択トランジスタ及び前記リセットトランジスタのゲートには共通の信号線が接続され、
前記選択トランジスタ及び前記リセットトランジスタの閾値電圧は異なる
請求項1〜4のいずれか1項に記載の固体撮像装置。
【請求項6】
前記光電変換部は、
前記半導体基板の上方に形成された光電変換膜と、
前記光電変換膜の上方に形成された透明電極と、
前記光電変換膜と前記半導体基板との間に形成された画素電極とを有し、
前記画素電極が前記増幅トランジスタのゲートに接続されている
請求項1〜5のいずれか1項に記載の固体撮像装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の固体撮像装置を用いた
カメラシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−70181(P2013−70181A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206360(P2011−206360)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】