説明

固定撮像素子

【課題】信号処理回路から熱によって、画素回路の性能が劣化することを抑制することができると共に、画素回路および信号処理回路とをそれぞれ最適な製造プロセスで製作することができる固定撮像素子を提供する。
【解決手段】固定撮像素子100は、第1主表面101および第2主表面102を含むガラス基板103と、集光部110および画素回路112を含む画素回路チップ113と、画素回路112からの信号を処理する信号処理回路が形成された信号処理回路チップ121とを備え、画素回路チップ113は、第1主表面101から間隔をあけて配置されると共に、集光部110が第1主表面101と対向するように配置され、信号処理回路チップ121は、第1主表面101に設けられると共に、集光部110とガラス基板103との間に位置する領域Rから離れた位置に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定撮像素子に関し、特に、画素回路と信号処理回路とを別々の基板に形成した固定撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から画素回路と信号処理回路を1つのチップで作られた固定撮像素子が知られている。
【0003】
たとえば、特開2007−294667号公報に記載された固定撮像素子は、半導体基板上に、光電変換素子を有する画素回路と、信号処理を行うための信号処理回路とを備える。
【0004】
この固体撮像素子は、画素回路と信号処理回路の上に平坦化層を形成する工程と、信号処理回路内に配線回路パターンが含まれる中間層を、画素回路と信号処理回路の双方にわたって共通したプロセスにより形成する工程と、画素回路を含む領域に対して中間層を、平坦化層をストッパとして選択的に除去する工程と、選択的に除去した後の画素回路および信号処理回路の表面に保護層を形成する工程とを経ることで製作されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−294667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来の固定撮像素子においては、信号処理回路等の信号処理回路からの熱によって、画素回路の性能が劣化する場合がある。
【0007】
さらに、画素回路と、信号処理回路とを1チップで形成した場合には、画素回路および信号処理回路の最適な製造プロセスが異なるため、撮像素子の基本性能を確保することが困難なものとなる。
【0008】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、信号処理回路から熱によって、画素回路の性能が劣化することを抑制することができると共に、画素回路および信号処理回路とをそれぞれ最適な製造プロセスで製作することができる固定撮像素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施例に係る固定撮像素子は、第1主表面および第2主表面を含むガラス基板と、集光部および画素回路を含む画素回路チップと、前記画素回路からの信号を処理する信号処理回路が形成された信号処理回路チップとを備える。そして、上記画素回路チップは、前記第1主表面から間隔をあけて配置されると共に、前記集光部が前記ガラス基板を通過した光を受光するように配置され、前記信号処理回路チップは、前記第1主表面に設けられると共に、前記集光部と前記ガラス基板との間に位置する領域よりも離れた位置に配置される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一実施例に係る固定撮像素子によれば、信号処理回路から熱によって、画素回路の性能が劣化することを抑制することができると共に、画素回路および信号処理回路とをそれぞれ最適な製造プロセスで製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1に係る固定撮像素子の断面図である。
【図2】図1に示された固定撮像素子100の平面図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る固定撮像素子100の製造方法について説明する断面図である。
【図4】固定撮像素子100の変形例を示す断面図である。
【図5】参考例としての固定撮像素子500を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1から図5を用いて、本発明の実施の形態に係る固定撮像素子を説明する。
なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本発明にとって必ずしも必須のものではない。また、以下に複数の実施の形態が存在する場合、特に記載がある場合を除き、各々の実施の形態の特徴部分を適宜組合わせることは、当初から予定されている。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態1に係る固定撮像素子の断面図であり、図2は、図1に示された固定撮像素子100の平面図である。なお、図2においては、ガラス基板103は省略されている。
【0014】
これら図1および図2に示すように、固定撮像素子100は、第1主表面101および第2主表面102を含むガラス基板103と、集光部110および画素回路112を含む画素回路チップ113とを備える。さらに、固定撮像素子100は、画素回路112からの信号を処理する信号処理回路120が形成された信号処理回路チップ121を備える。画素回路チップ113は、第1主表面101から間隔をあけて配置されると共に、集光部110が第1主表面101と対向するように配置される。
【0015】
信号処理回路チップ121は、第1主表面101に設けられると共に、集光部110とガラス基板103との間に位置する領域Rから離れた位置に配置されている。このため、ガラス基板103内に差し込み、領域Rを通過する光は、集光部110に達し受光することができる。
【0016】
本実施の形態に係る固定撮像素子100においては、信号処理回路チップ121は、領域Rの両側に間隔を隔てて配置されている。
【0017】
画素回路チップ113と、信号処理回路チップ121とは、別個独立のチップとされている。このため、信号処理回路120からの熱によって、画素回路チップ113の温度も上昇し、画素回路112の性能が劣化することを抑制することができる。
【0018】
ガラス基板103は、固定撮像素子100の必須の構成である一方で、本実施の形態に係る固定撮像素子100においては信号処理回路チップ121を所定位置に固定する固定基板としても機能している。このように、ガラス基板103を位置決め固定する固定基板としても利用することで、固定撮像素子100の部品点数の低減を図ることができる。
【0019】
信号処理回路チップ121は、ガラス基板103の第1主表面101に配置された基板(第1基板)122と、基板122に対してガラス基板103と反対側に位置し、基板122の主表面上に形成された配線層(第1配線層)123と、配線層123に形成されたパッド部(第1パッド部)129とを含む。
【0020】
画素回路チップ113は、基板(第2基板)111と、基板111の主表面上に形成されると共に、ガラス基板103の第1主表面101と対向するように配置された配線層(第2配線層)116と、配線層116上に形成された集光部110と、配線層116上に形成されたパッド部119とを含む。
【0021】
集光部110は、配線層116の表面のうち、第1主表面101と対向する主表面上に形成されている。
【0022】
集光部110は、配線層116の表面上に形成されたインナーレンズ130と、インナーレンズ130を覆う透光性を有する樹脂層133と、樹脂層133上に形成されたカラーフィルタ131と、カラーフィルタ131上に形成されたマイクロレンズ132とを含む。
【0023】
この集光部110は、高耐熱性の無機材料によって形成されている。たとえば、カラーフィルタ131を形成する材料として、染料、光酸発生剤、硬化剤およびアルカリ可溶性樹脂を含む着色感光性樹脂組成物であって、該アルカリ可溶性樹脂が、部分的にアルキルエーテル化されたビニルフェノールを構成単位として有するポリビニルフェノール樹脂を含む着色感光性樹脂組成物を採用することができる。
【0024】
そして、基板111の主表面上には、図2に示すように、画素回路112と、アンプ回路104とが形成されている。画素回路112は、基板111の主表面に形成された複数のフォトダイオード114と、フォトダイオード114に接続されたスイッチングトランジスタとを含む。スイッチングトランジスタのゲート電極115は、基板111の主表面上に形成されている。
【0025】
配線層116は、基板111の主表面上に形成された絶縁層118と、この絶縁層118に埋設された複数の配線117とを備えている。配線117は、互いに間隔をあけて積層されており、各配線117は絶縁層118によって絶縁されている。
【0026】
画素回路チップ113のパッド部119は、絶縁層118の表面のうち、ガラス基板103と対向する位置する部分に形成され、信号処理回路チップ121のパッド部129は、絶縁層124の表面のうち、画素回路チップ113側に位置する部分に形成されているため、パッド部129とパッド部119との距離が近接している。このため、パッド部129とパッド部119とを接続する半田バンプなどの接続部140の長さを低減することができると共に、パッド部129とパッド部119とを容易に接続することができる。
【0027】
図1および図2に示す例においては、画素回路チップ113のパッド部119と、信号処理回路チップ121のパッド部129とが互いに対向するように配置されている。
【0028】
信号処理回路チップ121の基板122と、ガラス基板103の第1主表面101との間には、遮光体としての遮光性膜141が形成されている。遮光性膜141は、基板122の主表面の全面を覆うように形成されている。なお、遮光性膜141は、絶縁膜材料によって構成されている。
【0029】
これにより、基板122に外部からの光が入射されることを抑制することができ、基板122内に電子が発生することを抑制することができる。これにより、信号処理回路120の誤動作を抑制することができる。
【0030】
なお、信号処理回路120は、画素回路112からの信号を処理するADCデジタル回路126と、外部に信号を出力する出力回路127とを備えている。出力回路127は、絶縁層124に形成されたパッド部152と、このパッド部152に接続された半田バンプ等の接続部153とを介して、フレキシブル基板150に形成されたパッド部154に接続されている。
【0031】
配線層123は、基板122の主表面上に形成された絶縁層124と、絶縁層124によって覆われた複数の配線125とを備えている。配線125は、互いに間隔をあけて積層されており、各配線125は絶縁層124によって絶縁されている。
【0032】
絶縁層124には、放熱部151が設けられている。これにより、信号処理回路120の温度の上昇を抑制することができ、信号処理回路120を良好に駆動させることができる。放熱部151は、パッド部152とパッド部129とが形成された絶縁層124の主表面に形成されており、パッド部152およびパッド部129間に位置する部分に形成されている。
【0033】
絶縁層124の表面のうち、パッド部152およびパッド部129が形成された主表面およびこの主表面より下方に位置する領域は、デッドスペースとなっており、当該スペースに放熱部151を配置することで、部材の搭載効率の向上を図ることができる。
【0034】
配線117の延在方向に対して垂直な断面における配線117の断面積S1は、配線125の延在方向に対して垂直な断面における配線125の断面積S2よりも大きくなるように形成されている。ゲート電極115の延在方向に対して垂直な断面におけるゲート電極115の断面積S3は、配線125の断面積S2よりも大きくなっている。
【0035】
ゲート電極115および配線117を流れる電流の電圧は、配線125を流れる電流の電圧よりも高電圧である一方で、上記のようにゲート電極115および配線117の低抵抗化を図ることで、画素回路112の性能を確保することができる。
【0036】
さらに、配線125の細線化を図ることで、信号処理回路チップ121のコンパクト化を図ることができる。
【0037】
配線125の積層数は、配線117の積層数よりも多い。信号処理回路チップ121の配線125の積層数を多くすることで、配線125の引き回し経路の簡略化を図ることができる。さらに、配線125の積層数を多くすることで、信号処理回路チップ121の設置面積を小さく抑えることができる。
【0038】
さらに、正確に配線125を多数積層することで、配線125間の配線間容量を利用することができ、信号処理回路120の性能の向上を図ることができる。
【0039】
図3を用いて、本発明の実施の形態1に係る固定撮像素子100の製造方法について説明する。図3において、まず、信号処理回路チップ121と、画素回路チップ113とを別々に製造する。
【0040】
信号処理回路チップ121の製造プロセスにおいて、画素回路チップ113の製造プロセスを考慮する必要がなくなり、信号処理回路チップ121の製造プロセスの最適化を図ることができる。これにより、信号処理回路チップ121の歩留まりを向上させることができる。同様に、画素回路チップ113の製造プロセスにおいて、信号処理回路チップ121の製造プロセスを考慮する必要がなく、画素回路チップ113の製造プロセスの最適化を図ることができる。これにより、画素回路チップ113の歩留まりを向上させることができる。
【0041】
具体的には、例えば画素回路チップ113を0.25μmオーダで製造することができ、信号処理回路チップ121を90nmオーダで製造することができ、各デバイスの製造プロセスの最適化を図ることができる。
【0042】
そして、ガラス基板103と、製造された信号処理回路チップ121と、製造された画素回路チップ113とを組み合わせ、固定撮像素子100を製造する際には、まず、ガラス基板103を準備する。
【0043】
ガラス基板103に装着される前の状態においては、信号処理回路チップ121は、基板122と、基板122の一方の主表面に形成された遮光性膜141と、基板122の他方の主表面に形成された配線層123と、配線層123に形成されたパッド部129に溶着された半田ボール156と、配線層123に形成されたパッド部152に溶着された半田ボール155とを含む。
【0044】
遮光性膜141の表面の表面に接着材を塗布し、信号処理回路チップ121を準備したガラス基板103の第1主表面101に接着させる。
【0045】
その後、製造された画素回路チップ113のパッド部119に半田ボール156を接触させると共に、フレキシブル基板150のパッド部154を半田ボール155に接着させる。
【0046】
そして、半田ボール155および半田ボール156を加熱し、半田ボール155および半田ボール156を溶かし、図1に示す接続部140および接続部153を形成する。これにより、図1に示す固定撮像素子100を成形することができる。
【0047】
ここで、集光部110は、上記のように無機材料によって形成されており、高い耐熱性を有する。このため、半田ボール155および半田ボール156を溶かす際に、集光部110の温度が上昇したとしても、集光部110の透光性能は確保される。
【0048】
なお、図4は、固定撮像素子100の変形例を示す断面図である。この図4に示すように、フレキシブル基板150に替えて、ボンディングワイヤー157を採用するようにしてもよい。
【0049】
図5は、参考例としての固定撮像素子500を示す断面図である。この図5に示す固定撮像素子500においては、画素回路チップ113の下方に画素回路112が配置されており、信号処理回路チップ121と画素回路チップ113とが積層されている。
【0050】
基板111の一方の主表面には画素回路112が形成されており、この一方の主表面上には、配線層116が形成されている。
【0051】
そして、基板111には、一方の主表面から他方の主表面に達するビアホール161が形成されており、ビアホール161内にビア160が挿入されている。ビア160の端部には、半田バンプ162が形成されている。
【0052】
信号処理回路チップ121は、基板122と、基板122の主表面上に形成された配線層123と、この配線層123の上面に形成されたパッド部とを含む。信号処理回路チップ121のパッド部に半田バンプ162が接続されている。
【0053】
この固定撮像素子500は、画素回路チップ113と、信号処理回路チップ121とが別チップとされている点においては、上記図1から図4に示す固定撮像素子100と共通している。
【0054】
しかし、ビアホール161は高アスペクト比の穴部となっており、正確に形成するのが困難なものとなっており、歩留まりが悪くなる。
【0055】
その一方で、上記図1から図4に示す固定撮像素子100においては、上記ビアホール161のような高アスペクト比の穴部を形成する必要がなく、容易に固定撮像素子100を製作することができる。
【0056】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。さらに、上記数値などは、例示であり、上記数値および範囲にかぎられない。
【符号の説明】
【0057】
100 固定撮像素子、101 主表面、102 主表面、103 ガラス基板、110 集光部、111 基板、112 画素回路、113 画素回路チップ、114 フォトダイオード、115 ゲート電極、116 配線層、117 配線、118 絶縁層、119 パッド部、120 信号処理回路、121 信号処理回路チップ、122 基板、123 配線層、124 絶縁層、125 配線、126 デジタル回路、127 出力回路、129 パッド部、141 遮光性膜、150 フレキシブル基板、151 放熱部、152 パッド部、153 接続部、154 パッド部、155 半田ボール、156 半田ボール、160 ビア、161 ビアホール、162 半田バンプ、500 固定撮像素子、R 領域、S1,S2,S3 断面積。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主表面および第2主表面を含むガラス基板と、
集光部および画素回路を含む画素回路チップと、
前記画素回路からの信号を処理する信号処理回路が形成された信号処理回路チップと、
を備え、
前記画素回路チップは、前記第1主表面から間隔をあけて配置されると共に、前記集光部が前記ガラス基板を通過した光を受光するように配置され、
前記信号処理回路チップは、前記第1主表面に設けられると共に、前記集光部と前記ガラス基板との間に位置する領域から離れた位置に配置された、固定撮像素子。
【請求項2】
前記信号処理回路チップは、前記ガラス基板の第1主表面に配置された第1基板と、前記第1基板に対して前記ガラス基板と反対側に位置し、前記第1基板の主表面に形成された第1配線層と、前記第1配線層に形成された第1パッド部とを含み、
前記画素回路チップは、第2基板と、前記第2基板の主表面に形成されると共に前記第1主表面と対向するように配置された第2配線層と、前記第2配線層の表面のうち、前記第1主表面と対向する部分に形成された前記集光部と、前記第2配線層に形成された前記第2パッド部とを含み、
前記第1パッド部と前記第2パッド部とを接続する接続部をさらに備えた、請求項1に記載の固定撮像素子。
【請求項3】
前記ガラス基板の第1主表面と前記第1基板との間に設けられた遮光体をさらに備える、請求項2に記載の固定撮像素子。
【請求項4】
前記第1配線層に設けられた放熱部をさらに備える、請求項2または請求項3に記載の固定撮像素子。
【請求項5】
前記第1配線層は、複数の第1配線を含み、
前記第2配線層は、複数の第2配線を含み、
前記第2配線の延在方向に対して垂直な前記第2配線の断面積は、前記第1配線の延在方向に対して垂直な前記第1配線の断面積よりも大きい、請求項2から請求項4のいずれかに記載の固定撮像素子。
【請求項6】
前記第1配線層は、間隔をあけて積層された複数の第1配線を含み、前記第2配線層は、間隔をあけて積層された複数の第2配線を含み、
前記第1配線の積層数は、前記第2配線の積層数よりも多い、請求項2から請求項5のいずれかに記載の固定撮像素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−23595(P2011−23595A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168028(P2009−168028)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】