説明

圧力センサおよび圧力センサの製造方法

【課題】 圧力の作用により振動する振動部の厚さを、様々な厚さに高精度に制御することのできる圧力センサおよびその製造方法を提供すること。
【解決手段】 圧力センサ1において、シリコン基板4上に、BOX層5を介して、活性層6を積層した構造のSOI基板2を形成する。SOI基板2には、その厚さ方向一方側から他方側へ向かう方向にシリコン基板4およびBOX層5を一括して貫通する貫通孔8を形成する。これにより、活性層6における貫通孔8との対向部分に、ダイヤフラム9を形成する。ダイヤフラム9の上層部には、ダイヤフラム9とともに振動可能な可動電極10を形成する。一方、封止基板3に、周辺部15の裏面よりも上面側へ一段低く形成された凹部16を形成する。凹部16の底面には、固定電極17を形成する。そして、固定電極17と可動電極10とが対向する姿勢で、封止基板3とSOI基板2とを接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力センサおよび圧力センサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工業機械などの圧力測定・圧力スイッチなどの用途に、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術により作製される圧力センサが用いられている。圧力センサとして、入力圧力により変化するコンデンサ容量の変化量に基づいて圧力を検出する、容量検出型の圧力センサが知られている。
図5は、従来の圧力センサの模式的な断面図である。
【0003】
圧力センサ101は、シリコン基板102と、シリコン基板102を支持するための支持基板103と、シリコン基板102を封止するための封止基板104とを備えている。
シリコン基板102には、その中央部における一方側(上側)および他方側(下側)が厚さ方向にウェットエッチングされることにより、上側凹部105および下側凹部106が形成されている。上側凹部105および下側凹部106の形成により、シリコン基板102の中央部には、中央部を取り囲む周辺部の厚さ(シリコン基板102本体の厚さ)よりも小さい厚さのダイヤフラム107が形成されている。このダイヤフラム107の厚さは、ダイヤフラム107がシリコン基板102の厚さ方向に振動可能な厚さである。
【0004】
ダイヤフラム107における上側凹部105に臨む上層部には、ダイヤフラム107とともに振動可能な可動電極108が形成されている。可動電極108は、不純物の拡散により導電性が付与された拡散電極であり、ダイヤフラム107の上層部全域に一様に形成されている。
また、シリコン基板102には、上側凹部105の側壁からシリコン基板102の周辺部に至る領域に、不純物の拡散により導電性が付与された可動電極用配線109が、可動電極108に連続して形成されている。可動電極用配線109は、可動電極108に電気的に接続されることとなる。
【0005】
また、シリコン基板102には、上側凹部105の側壁からシリコン基板102の周辺部に至る領域に、不純物の拡散により導電性が付与された固定電極用配線110が形成されている。固定電極用配線110は、可動電極108および可動電極用配線109に対して絶縁されている。
支持基板103は、たとえば、パイレックス(登録商標)ガラスなどの耐熱性ガラス基板からなり、シリコン基板102に陽極接合されている。支持基板103におけるダイヤフラム107に対向する部分には、支持基板103を厚さ方向に貫通する貫通孔111が形成されている。
【0006】
封止基板104は、たとえば、パイレックス(登録商標)ガラスなどの耐熱性ガラス基板からなり、シリコン基板102に陽極接合されている。これにより、上側凹部105の内面および封止基板104の下面により囲まれる空間112は、真空状態に保持されている。封止基板104の下面には、アルミニウムからなる固定電極113が、可動電極108に対向して固定されている。固定電極113は、図示しない位置において固定電極用配線110に電気的に接続されている。
【0007】
この圧力センサ101において、可動電極108および固定電極113は、それらを対向電極とするコンデンサを形成している。このコンデンサ(可動電極108および固定電極113間)には、可動電極用配線109および固定電極用配線110を介して、所定の電圧が印加される。
その状態で、貫通孔111から、圧力(たとえば、気体圧力)が入力されると、その圧力の作用により、ダイヤフラム107とともに可動電極108が振動して、コンデンサの静電容量が変化する。そして、この静電容量の変化による可動電極108および固定電極113間の電圧変動が電気信号として出力される。
【特許文献1】特開平6−18345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
圧力センサ101の感度は、ダイヤフラム107の厚さを変えることにより設計される。したがって、所望の感度の圧力センサを製造するには、シリコン基板102に対するウェットエッチングの条件を適切に制御し、ダイヤフラム107の厚さを目的の厚さにしなければならない。
ところが、シリコン基板102のエッチングレートは、エッチャントの温度変化などにともなって変化する。そのため、エッチング条件を適切に制御しても、製造されたダイヤフラム107の厚さと目的の厚さとの間にずれが生じる場合がある。
【0009】
本発明の目的は、圧力の作用により振動する振動部の厚さを、様々な厚さに高精度に制御することのできる圧力センサおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための請求項1記載の発明は、一方側から他方側へ貫通する貫通孔を有する絶縁層、およびこの絶縁層上に一様な厚さに形成され、前記貫通孔に臨む部分が前記貫通孔との対向方向に振動可能な振動部とされた活性層を備える下基板と、前記振動部上に形成された下部電極と、前記活性層に対向配置され、前記振動部に対向する部分に凹部を有する上基板と、前記凹部に形成された上部電極とを含む、圧力センサである。
【0011】
この圧力センサは、たとえば、請求項4に記載の製造方法、つまり、絶縁層およびこの絶縁層上に形成された一様な厚さを有する活性層を備える下基板を形成する工程と、前記絶縁層の側から前記絶縁層のみをエッチングすることにより、前記絶縁層にその一方側から他方側へ貫通し、他方側が活性層により覆われる貫通孔を形成する工程と、前記活性層における前記貫通孔を覆う部分上に下部電極を形成する工程と、前記下基板に接合するための上基板に凹部を形成する工程と、前記凹部に上部電極を形成する工程と、前記凹部と前記活性層における前記貫通孔を覆う部分とが対向するように、前記上基板と前記下基板とを接合する工程とを含む、圧力センサの製造方法により製造することができる。
【0012】
この方法によれば、絶縁層およびこの絶縁層上に形成された一様な厚さを有する活性層を備える下基板が形成される。下基板には、絶縁層のみがエッチングされることにより、絶縁層にその一方側から他方側へ貫通し、他方側が活性層により覆われる貫通孔が形成される。これにより、活性層における貫通孔を覆う部分が空間上(貫通孔上)に配置されることになり、貫通孔との対向方向に振動可能な振動部が形成される。活性層における貫通孔を覆う部分(振動部)上には、下部電極が形成される。
【0013】
一方、上基板には、凹部が形成される。この凹部には、上部電極が形成される。
そして、凹部と活性層における貫通孔を覆う部分(振動部)とが対向するように、上基板と下基板とが接合される。
絶縁層のみのエッチングにより振動部が形成されるので、活性層がエッチングされない。つまり、振動部の厚さは、活性層における他の部分と同じ厚さである。したがって、下基板の形成工程において、活性層の厚さを制御することにより振動部の厚さを決定することができる。そのため、振動部の厚さを高精度に制御することができる。その結果、所望の感度の圧力センサを簡単かつ高精度に製造することができる。
【0014】
また、請求項2に記載の発明は、前記下基板および前記上基板は、金属接合材を用いた金属接合により接合されている、請求項1に記載の圧力センサである。
この構成によれば、下基板および上基板が金属接合により接合されるので、陽極接合の接合時間よりも接合時間を短縮することができる。
また、請求項3に記載の発明は、前記凹部には、前記上部電極の周囲の領域に前記上部電極に導通する上部電極用配線が形成され、前記活性層には、前記振動部の周囲の領域に前記下部電極に導通する下部電極用配線の形成されており、前記金属接合材は、その一部が前記上部電極用配線に対向し、他の一部が前記下部電極用配線に対向するように形成され、前記金属接合材における前記上部電極用配線に対向する部分と前記上部電極用配線との間には、絶縁膜が介在されている、請求項2に記載の圧力センサである。
【0015】
この構成によれば、金属接合材における上部電極用配線に対向する部分と上部電極用配線との間に絶縁膜が介在されているので、金属接合材と上部電極用配線との短絡を防止することができる。
また、請求項5に記載の発明は、前記上基板が、ガラス基板であり、前記凹部を形成する工程が、ウェットエッチングにより前記ガラス基板をエッチングする工程である、請求項4に記載の圧力センサの製造方法である。
【0016】
この方法によれば、凹部がガラス基板のウェットエッチングにより形成されるので、凹部の側面は、凹部の開口径がエッチング方向に次第に狭まるテーパ状に形成される。そのため、凹部の側面は、凹部の開口位置へ向かう方向(エッチング方向と反対側の方向)に臨むこととなる。そのため、上部電極などを構成する導電材料を、凹部の側面にカバレッジよく堆積させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る圧力センサの模式的な断面図である。
圧力センサ1は、工業機械などの圧力測定・圧力スイッチなど各種用途に利用されるセンサである。圧力センサ1は、四角平板状の下基板としてのSOI(Silicon On Insulator)基板2と、SOI基板2よりも小さい四角平板状をなし、SOI基板2を封止するための上基板としての封止基板3とを備えている。
【0018】
SOI基板2は、シリコン基板4上に、SiO2からなる絶縁層としてのBOX層5を介して、SiからなるN-型の活性層6を厚さ方向に積層した構造を有している。
シリコン基板4は、たとえば、200〜700μmの厚さT1を一様に有している。また、BOX層5は、たとえば、0.5〜5μmの厚さT2を一様に有している。また、活性層6は、たとえば、0.5〜100μm、好ましくは、20〜30μmの厚さT3を一様に有している。
【0019】
SOI基板2には、その中央部7に、厚さ方向一方側(シリコン基板4の裏面側)から他方側(活性層6の上面側)へ向かう方向にシリコン基板4およびBOX層5を一括して貫通し、その末端が活性層6の裏面により覆われる貫通孔8が形成されている。
これにより、活性層6は、貫通孔8(シリコン基板4およびBOX層5の存在しない空間)との対向部分に、貫通孔8との対向方向に振動可能な振動部としてのダイヤフラム9を有している。
【0020】
ダイヤフラム9の中央部における上層部(貫通孔8に対して反対側の表層部)には、ダイヤフラム9とともに振動可能な下部電極としての可動電極10が形成されている。可動電極10は、N-型の活性層6へのP型不純物の拡散により導電性が付与された拡散電極であり、一様なP型不純物濃度を有している。
活性層6の上層部には、ダイヤフラム9の中央部を取り囲む周縁部からSOI基板2の中央部7を取り囲む周辺部11(BOX層5上の領域)に至る部分に、可動電極用配線12が形成されている。可動電極用配線12は、可動電極10と同様に不純物の拡散により導電性が付与された拡散配線であり、可動電極10と連続して形成されている。これにより、可動電極用配線12は、可動電極10に電気的に接続されている。
【0021】
また、SOI基板2における周辺部11において、活性層6の上層部には、固定電極用配線13が形成されている。固定電極用配線13は、可動電極10と同様に不純物の拡散により導電性が付与された拡散配線であり、可動電極10および可動電極用配線12に対して絶縁されている。
封止基板3は、たとえば、パイレックス(登録商標)ガラスなどの耐熱性ガラス基板からなる。封止基板3には、その中央部14に、中央部14を取り囲む周辺部15よりも一方面(裏面)が他方側(上面側)へ一段低く形成された凹部16が形成されている。周辺部15における封止基板3の裏面から凹部16の底面までの深さD1は、たとえば、1〜50μmである。
【0022】
凹部16の側面は、凹部16の底面へ向かう方向(封止基板3の厚さ方向一方側から他方側へ向かう方向)に開口径が狭まるテーパ状に形成されている。
凹部16の底面には、その中央部に、アルミニウムからなる上部電極としての固定電極17が形成されている。凹部16の底面の周縁部から側面を介して、封止基板3の周辺部15の裏面に至る領域には、固定電極17から引き回された、アルミニウムからなる引き回し配線18が形成されている。引き回し配線18は、固定電極17と一体的に形成されており、固定電極17に電気的に接続されている。
【0023】
そして、封止基板3は、固定電極17と可動電極10とが対向する姿勢で、その周辺部15とSOI基板2の周辺部11とが陽極接合されることにより、SOI基板2に接合されている。これにより、凹部16の内面(側面および底面)およびダイヤフラム9の上面により囲まれる空間19は、真空状態に保持されている。SOI基板2の周辺部11には、接合された封止基板3から可動電極用配線12および固定電極用配線13が露出している。可動電極用配線12および固定電極用配線13の露出した部分には、それぞれ外部からの配線が接続される。
【0024】
この圧力センサ1において、可動電極10および固定電極17は、それらを対向電極とするコンデンサを形成している。このコンデンサ(可動電極10および固定電極17間)には、可動電極用配線12および固定電極用配線13を介して、所定の電圧が印加される。
その状態で、貫通孔8から、圧力(たとえば、気体圧力)が入力されると、その圧力の作用により、ダイヤフラム9とともに可動電極10が振動して、コンデンサの静電容量が変化する。そして、この静電容量の変化による可動電極10および固定電極17間の電圧変動が電気信号として出力される。
【0025】
図2は、図1に示す圧力センサの製造方法を工程順に説明するための模式的な断面図である。
図1に示す圧力センサ1を製造するには、図2(a)に示すように、シリコン基板4上に、BOX層5を介して活性層6を積層した構造を有するSOI基板2が形成される。具体的には、熱酸化処理により、シリコン基板4(厚さT1)の表面にBOX層5(厚さT2)が形成される。その一方で、活性層6と同じ厚さT3を有するシリコン基板が用意される。そして、このシリコン基板とBOX層5とを対向させた状態でシリコン基板同士を貼り合わせることにより、SOI基板2が形成される。
【0026】
次いで、図2(b)に示すように、互いに分離された開口を有するマスク(図示せず)を介して、活性層6の上層部に、P型不純物がイオン注入される。イオン注入後、アニール処理が行われることにより、注入されたP型不純物が活性化する。これにより、活性層6の上層部には、SOI基板2の中央部7から周辺部11に至る領域に第1不純物領域20が形成される。また、周辺部11における第1不純物領域20と間隔を空けた領域に、第2不純物領域21が形成される。
【0027】
次いで、図2(c)に示すように、SOI基板2の中央部7における裏面(シリコン基板4の裏面)を露出させる開口を有するマスク(図示せず)を介して、シリコン基板4にエッチングガスが供給される。エッチングガスとしては、シリコンおよび酸化シリコンをエッチング可能なガスが用いられ、具体的には、CF4、SF6などのフッ素系ガスが用いられる。そして、エッチングガスの供給は、シリコン基板4およびBOX層5が除去され、活性層6の裏面が露出するまで続けられる。
【0028】
これにより、SOI基板2の中央部7に、貫通孔8が形成される。また、貫通孔8の形成により、活性層6における貫通孔8に対向する部分に、振動可能な状態となるダイヤフラム9が形成される。また、第1不純物領域20の一部からなる可動電極10がダイヤフラム9の上層部に形成されるとともに、第1不純物領域20の他の部分からなる可動電極用配線12が形成される。
【0029】
一方、図2(d)に示すように、耐熱性ガラスからなる封止基板3が用意される。
次いで、図2(e)に示すように、封止基板3の中央部14の裏面を露出させる開口を有するマスク(図示せず)を介して、封止基板3にエッチャントが供給される。エッチャントとしては、たとえば、HFなどが用いられる。エッチャントの供給により、封止基板3がその裏面側からウェットエッチングされる。これにより、封止基板3に、テーパ状の側面を有する凹部16が形成される。
【0030】
次いで、図2(f)に示すように、スパッタ法により、所定パターンの開口を有するマスク(図示せず)を介して、アルミニウム材料が、封止基板3の裏面側から凹部16の内面(側面および底面)および封止基板3の周辺部15に堆積される。これにより、固定電極17および引き回し配線18が一体的に形成される。
その後、図2(g)に示すように、固定電極17および可動電極10が対向し、引き回し配線18と第2不純物領域21とが対向するように、SOI基板2の周辺部11に封止基板3の周辺部15が当接される。そして、この状態で、たとえば、250〜350℃で、0.5〜2時間加熱される。これにより、SOI基板2の周辺部11と封止基板3の周辺部15とが陽極接合される。活性層6に形成された第2不純物領域21は、引き回し配線18に接続されることにより固定電極用配線13となる。
【0031】
以上の工程を経て、図1に示す圧力センサ1が得られる。
上記の方法によれば、活性層6の裏面が露出するまでシリコン基板4およびBOX層5がエッチングされることにより、ダイヤフラム9が形成される(図2(c)参照)。そのため、一様な厚さT3を有する活性層6がエッチングされない。つまり、ダイヤフラム9の厚さは、活性層6の他の部分(ダイヤフラム9以外の部分)の厚さT3と同じ厚さである。したがって、SOI基板2の形成工程(図2(a)参照)において、活性層6の厚さを制御することによりダイヤフラム9の厚さを決定することができる。そのため、ダイヤフラム9の厚さを高精度に制御することができる。その結果、所望の感度の圧力センサ1を簡単かつ高精度に製造することができる。
【0032】
また、凹部16がウェットエッチングにより形成されるので(図2(e)参照)、凹部16の側面は、凹部16の開口径がエッチング方向(封止基板3の裏面側から上面側へ向かう方向)に次第に狭まるテーパ状に形成される。そのため、凹部16の側面は、封止基板3の裏面側(エッチング方向と反対側)に臨むこととなる。そのため、封止基板3の裏面側から供給される固定電極17および引き回し配線18の材料を、凹部の側面にカバレッジよく堆積させることができる。
【0033】
図3は、本発明の第2の実施形態に係る圧力センサの模式的な断面図である。
圧力センサ31は、工業機械などの圧力測定・圧力スイッチなど各種用途に利用されるセンサである。圧力センサ31は、四角平板状の下基板としてのSOI(Silicon On Insulator)基板2と、SOI基板32よりも小さい四角平板状をなし、SOI基板32を封止するための上基板としての封止基板33とを備えている。
【0034】
SOI基板32は、シリコン基板34上に、SiO2からなる絶縁層としてのBOX層35を介して、SiからなるN-型の活性層36を厚さ方向に積層した構造を有している。
シリコン基板34は、たとえば、200〜700μmの厚さT4を一様に有している。また、BOX層35は、たとえば、0.5〜5μmの厚さT5を一様に有している。また、活性層36は、たとえば、0.5〜100μm、好ましくは、20〜30μmの厚さT6を一様に有している。
【0035】
SOI基板32には、その中央部37に、厚さ方向一方側(シリコン基板34の裏面側)から他方側(活性層36の上面側)へ向かう方向にシリコン基板34およびBOX層35を一括して貫通し、その末端が活性層36の裏面により覆われる貫通孔38が形成されている。
これにより、活性層36は、貫通孔38(シリコン基板34およびBOX層35の存在しない空間)との対向部分に、貫通孔38との対向方向に振動可能な振動部としてのダイヤフラム39を有している。
【0036】
ダイヤフラム39の中央部における上層部(貫通孔38に対して反対側の表層部)には、ダイヤフラム39とともに振動可能な下部電極としての可動電極40が形成されている。可動電極40は、N-型の活性層36へのP型不純物の拡散により導電性が付与された拡散電極であり、一様なP型不純物濃度を有している。
活性層36の上層部には、ダイヤフラム39の中央部を取り囲む周縁部からSOI基板32の中央部37を取り囲む周辺部41(BOX層35上の領域)に至る部分に、可動電極用配線42が形成されている。可動電極用配線42は、可動電極40と同様に不純物の拡散により導電性が付与された拡散配線であり、可動電極40と連続して形成されている。これにより、可動電極用配線42は、可動電極40に電気的に接続されている。
【0037】
また、SOI基板32の周辺部41において、活性層36の上層部には、固定電極用配線43が形成されている。固定電極用配線43は、可動電極40と同様に不純物の拡散により導電性が付与された拡散配線であり、可動電極40および可動電極用配線42に対して絶縁されている。
封止基板33は、たとえば、パイレックス(登録商標)ガラスなどの耐熱性ガラス基板からなる。封止基板33には、その中央部44に、中央部44を取り囲む周辺部45よりも一方面(裏面)が他方面側(上面側)へ一段低く形成された凹部46が形成されている。周辺部45における封止基板33の裏面から凹部46の底面までの深さD2は、たとえば、1〜50μmである。
【0038】
凹部46の側面は、凹部46の底面へ向かう方向(封止基板33の厚さ方向一方側から他方側へ向かう方向)に開口径が狭まるテーパ状に形成されている。
凹部46の底面には、その中央部に、アルミニウムからなる上部電極としての固定電極47が形成されている。凹部46の底面の周縁部から側面を介して、封止基板3の周辺部45の裏面に至る領域には、固定電極47から引き回された、アルミニウムからなる引き回し配線48が形成されている。引き回し配線48は、固定電極47と一体的に形成されており、固定電極47に電気的に接続されている。
【0039】
そして、封止基板33は、固定電極47と可動電極40とが対向する姿勢で、その周辺部45とSOI基板32の周辺部41との間に金属接合材52が介在されることにより、SOI基板32に金属接合されている。
金属接合材52は、たとえば、Cu−Sn合金、Au−Sn合金などからなる。金属接合材52は、ダイヤフラム39を取り囲む平面視四角環状に形成され、その一部が引き回し配線48に対向し、他の一部が可動電極用配線42に対向するように配置されている。また、金属接合材52における引き回し配線48に対向する部分と引き回し配線48における凹部46の底面上の部分との間には、酸化シリコンからなる絶縁スペーサ53が介在されている。
【0040】
すなわち、封止基板33は、その周辺部45が金属接合材52に支持され、中央部44が金属接合材52および絶縁スペーサ53に支持されることにより、SOI基板32に金属接合されている。これにより、凹部46の内面(側面および底面)、ダイヤフラム39の上面、金属接合材52および絶縁スペーサ53により囲まれる空間49は、真空状態に保持されている。
【0041】
また、引き回し配線48における周辺部45の裏面上の部分と固定電極用配線43との間には、金属接合材52とほぼ同じ高さの導電スペーサ54がこれらに接触した状態で介在されている。導電スペーサ54は、たとえば、金属接合材52と同様の材料からなり、引き回し配線48および固定電極用配線43に電気的に接続されている。
SOI基板32の周辺部41には、接合された封止基板33から可動電極用配線42および固定電極用配線43が露出している。可動電極用配線42および固定電極用配線43の露出した部分には、それぞれ外部からの配線が接続される。
【0042】
この圧力センサ31において、可動電極40および固定電極47は、それらを対向電極とするコンデンサを形成している。このコンデンサ(可動電極40および固定電極47間)には、可動電極用配線42および固定電極用配線43を介して、所定の電圧が印加される。
その状態で、貫通孔38から、圧力(たとえば、気体圧力)が入力されると、その圧力の作用により、ダイヤフラム39とともに可動電極40が振動して、コンデンサの静電容量が変化する。そして、この静電容量の変化による可動電極40および固定電極47間の電圧変動が電気信号として出力される。
【0043】
図4は、図3に示す圧力センサの製造方法を工程順に説明するための模式的な断面図である。
図3に示す圧力センサ31を製造するには、図4(a)に示すように、シリコン基板34上に、BOX層35を介して活性層36を積層した構造を有するSOI基板32が形成される。具体的には、熱酸化処理により、シリコン基板34(厚さT4)の表面にBOX層35(厚さT5)が形成される。その一方で、活性層36と同じ厚さT6を有するシリコン基板が用意される。そして、このシリコン基板とBOX層35とを対向させた状態でシリコン基板同士を貼り合わせることにより、SOI基板32が形成される。
【0044】
次いで、図4(b)に示すように、互いに分離された開口を有するマスク(図示せず)を介して、活性層36の上層部に、P型不純物がイオン注入される。イオン注入後、アニール処理が行われることにより、注入されたP型不純物が活性化する。これにより、活性層36の上層部には、SOI基板2の中央部37から周辺部41に至る領域に第1不純物領域50が形成される。また、周辺部41における第1不純物領域50と間隔を空けた領域に、第2不純物領域51が形成される。
【0045】
次いで、図4(c)に示すように、金属接合材52および導電スペーサ54の材料が活性層36の上面に堆積される。そして、公知のフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術により、堆積材料の不要部分(金属接合材52および導電スペーサ54以外の部分)が除去されて、金属接合材52および導電スペーサ54が形成される。
次いで、図4(d)に示すように、SOI基板32の中央部37における裏面(シリコン基板34の裏面)を露出させる開口を有するマスク(図示せず)を介して、シリコン基板34にエッチングガスが供給される。エッチングガスとしては、シリコンおよび酸化シリコンをエッチング可能なガスが用いられ、具体的には、CF4、SF6などのフッ素系ガスが用いられる。そして、エッチングガスの供給は、シリコン基板34およびBOX層35が除去され、活性層36の裏面が露出するまで続けられる。
【0046】
これにより、SOI基板32の中央部37に、貫通孔38が形成される。また、貫通孔38の形成により、活性層36における貫通孔38に対向する部分に、振動可能な状態となるダイヤフラム39が形成される。また、第1不純物領域50の一部からなる可動電極40がダイヤフラム39の上層部に形成されるとともに、第1不純物領域50の他の部分からなる可動電極用配線42が形成される。
【0047】
一方、図4(e)に示すように、耐熱性ガラスからなる封止基板33が用意される。
次いで、図4(f)に示すように、封止基板33の中央部44の裏面を露出させる開口を有するマスク(図示せず)を介して、封止基板33にエッチャントが供給される。エッチャントとしては、たとえば、HFなどが用いられる。エッチャントの供給により、封止基板33がその裏面側からウェットエッチングされる。これにより、封止基板33に、テーパ状の側面を有する凹部46が形成される。
【0048】
次いで、図4(g)に示すように、スパッタ法により、所定パターンの開口を有するマスク(図示せず)を介して、アルミニウム材料が、封止基板33の裏面側から凹部46の内面(側面および底面)および封止基板33の周辺部45に堆積される。これにより、固定電極47および引き回し配線48が一体的に形成される。次いで、図4(g)に示すように、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により、凹部46の内面および封止基板3の裏面に、酸化シリコンが堆積される。そして、公知のフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術により、堆積酸化シリコンの不要部分(絶縁スペーサ53以外の部分)が除去されて、絶縁スペーサ53が形成される。
【0049】
その後、図4(h)に示すように、固定電極47および可動電極40が対向し、引き回し配線48と導電スペーサ54とが対向するように、金属接合材52に絶縁スペーサ53および封止基板33の周辺部45が当接される。そして、この状態で、たとえば、300〜350℃で、5〜10秒間加熱される。これにより、SOI基板32の周辺部41と封止基板33の周辺部45とが金属接合される。活性層36に形成された第2不純物領域51は、導電スペーサ54を介して引き回し配線48に接続されることにより固定電極用配線43となる。
【0050】
以上の工程を経て、図3に示す圧力センサ31が得られる。
上記の方法によれば、活性層36の裏面が露出するまでシリコン基板34およびBOX層35がエッチングされることにより、ダイヤフラム39が形成される(図4(d)参照)。そのため、一様な厚さT6を有する活性層36がエッチングされない。つまり、ダイヤフラム39の厚さは、活性層36の他の部分(ダイヤフラム39以外の部分)の厚さT6と同じ厚さである。したがって、SOI基板32の形成工程(図4(a)参照)において、活性層36の厚さを制御することによりダイヤフラム39の厚さを決定することができる。そのため、ダイヤフラム39の厚さを高精度に制御することができる。その結果、所望の感度の圧力センサ31を簡単かつ高精度に製造することができる。
【0051】
また、凹部46がウェットエッチングにより形成されるので(図4(f)参照)、凹部46の側面は、凹部46の開口径がエッチング方向(封止基板33の裏面側から上面側へ向かう方向)に次第に狭まるテーパ状に形成される。そのため、凹部46の側面は、封止基板33の裏面側(エッチング方向と反対側)に臨むこととなる。そのため、封止基板33の裏面側から供給される固定電極47および引き回し配線48の材料を、凹部の側面にカバレッジよく堆積させることができる。
【0052】
また、SOI基板32および封止基板33が金属接合材52を介した金属接合により接合されるので、陽極接合の接合時間よりも接合時間を短縮することができる。
さらに、金属接合材52における引き回し配線48に対向する部分と引き回し配線48との間には、酸化シリコンからなる絶縁スペーサ53が介在されている。そのため、金属接合材52と引き回し配線48との短絡を防止することができる。
【0053】
以上、本発明の複数の実施形態を説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
たとえば、封止基板3,33は、シリコン基板であってもよい。
また、凹部16,46は、封止基板3,33をドライエッチングすることにより形成されていてもよい。
【0054】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る圧力センサの模式的な断面図である。
【図2】図1に示す圧力センサの製造方法を工程順に説明するための模式的な断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る圧力センサの模式的な断面図である。
【図4】図3に示す圧力センサの製造方法を工程順に説明するための模式的な断面図である。
【図5】従来の圧力センサの模式的な断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 圧力センサ
2 SOI基板(下基板)
3 封止基板(上基板)
5 BOX層(絶縁層)
6 活性層
8 貫通孔
9 ダイヤフラム(振動部)
10 可動電極(下部電極)
16 凹部
17 固定電極(上部電極)
31 圧力センサ
32 SOI基板(下基板)
33 封止基板(上基板)
35 BOX層(絶縁層)
36 活性層
38 貫通孔
39 ダイヤフラム(振動部)
40 可動電極(下部電極)
42 可動電極用配線(下部電極用配線)
46 凹部
47 固定電極(上部電極)
48 引き回し配線(上部電極用配線)
52 金属接合材
53 絶縁スペーサ(絶縁膜)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方側から他方側へ貫通する貫通孔を有する絶縁層、およびこの絶縁層上に一様な厚さに形成され、前記貫通孔に臨む部分が前記貫通孔との対向方向に振動可能な振動部とされた活性層を備える下基板と、
前記振動部上に形成された下部電極と、
前記活性層に対向配置され、前記振動部に対向する部分に凹部を有する上基板と、
前記凹部に形成された上部電極とを含む、圧力センサ。
【請求項2】
前記下基板および前記上基板は、金属接合材を用いた金属接合により接合されている、請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項3】
前記凹部には、前記上部電極の周囲の領域に前記上部電極に導通する上部電極用配線が形成され、
前記活性層には、前記振動部の周囲の領域に前記下部電極に導通する下部電極用配線の形成されており、
前記金属接合材は、その一部が前記上部電極用配線に対向し、他の一部が前記下部電極用配線に対向するように形成され、
前記金属接合材における前記上部電極用配線に対向する部分と前記上部電極用配線との間には、絶縁膜が介在されている、請求項2に記載の圧力センサ。
【請求項4】
絶縁層およびこの絶縁層上に形成された一様な厚さを有する活性層を備える下基板を形成する工程と、
前記絶縁層の側から前記絶縁層のみをエッチングすることにより、前記絶縁層にその一方側から他方側へ貫通し、他方側が活性層により覆われる貫通孔を形成する工程と、
前記活性層における前記貫通孔を覆う部分上に下部電極を形成する工程と、
前記下基板に接合するための上基板に凹部を形成する工程と、
前記凹部に上部電極を形成する工程と、
前記凹部と前記活性層における前記貫通孔を覆う部分とが対向するように、前記上基板と前記下基板とを接合する工程とを含む、圧力センサの製造方法。
【請求項5】
前記上基板が、ガラス基板であり、
前記凹部を形成する工程が、ウェットエッチングにより前記ガラス基板をエッチングする工程である、請求項4に記載の圧力センサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−91467(P2010−91467A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−262906(P2008−262906)
【出願日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】