説明

圧力容器

【課題】 補強繊維をライナの長さ方向への巻き付けを簡単に行うことができる圧力容器を提供する。
【解決手段】 筒状ライナ3およびライナ3の周壁外周面にその周方向に巻き付けられた補強繊維を有しかつライナ3の周壁外周面を覆う第1の繊維強化樹脂層4よりなる容器構成体2と、すべての容器構成体2の長さ方向に巻き付けられた補強繊維を有する第2の繊維強化樹脂層20とを備えた圧力容器1である。すべての容器構成体2のライナ3の両端部に跨ってそれぞれ外方に膨出したドーム状連通部材6を固定し、これらのライナ3の内部どうしを連通させるとともに、すべてのライナ3の両端開口を閉鎖する。連通部材6の外面にずれ防止部としての凹部12を形成する。第2の繊維強化樹脂層20は、両連通部材6の凹部12にかかるように容器構成体2の長さ方向に巻き付けられた補強繊維を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば自動車産業、住宅産業、軍事産業、航空宇宙産業、医療産業等において、発電のための燃料となる水素ガスや天然ガスを貯蔵する圧力容器、または酸素ガスを貯蔵する圧力容器に用いられる圧力容器に関する。
この明細書および特許請求の範囲において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。また、この明細書および特許請求の範囲において、図1、図8、図9、図11および図12の左右を左右といい、同図の下側を前、これと反対側を後というものとする。また、図3の上下を上下というものとする。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車排気ガス等による大気汚染対策として、排気ガスのクリーンな天然ガス自動車や、燃料電池自動車の開発が進められている。これらの自動車は、燃料となる天然ガスや水素ガスを高圧で充填した圧力容器を搭載している。
【0003】
従来、このような圧力容器として、両端が開口した円筒状ライナおよびライナの両端部に固定されかつライナの両端開口を閉鎖する外方膨出ドーム状閉鎖部材よりなる容器構成体と、補強繊維を両閉鎖部材にかかるようにしてライナの長さ方向に巻き付けるとともにエポキシ樹脂で含浸固定してなるヘリカル巻繊維強化樹脂層と、補強繊維をライナの周りに周方向に巻き付けるとともにエポキシ樹脂で含浸固定してなるフープ巻繊維強化樹脂層とよりなるものが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の圧力容器においては、閉鎖部材が外方膨出ドーム状であるため、ヘリカル巻繊維強化樹脂層を形成する補強繊維を巻き付ける作業が困難であるという問題がある。しかも、ヘリカル巻繊維強化樹脂層を形成する補強繊維がずれ、その結果圧力容器の長さ方向の耐圧性が低下するおそれがある。
【特許文献1】特開平9−42595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の目的は、上記問題を解決し、補強繊維をライナの長さ方向への巻き付けを簡単に行うことができる圧力容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0007】
1)左右両端開口が閉鎖部により閉鎖された筒状ライナ、およびライナの周壁外周面にその周方向に巻き付けられた補強繊維を有しかつライナの周壁外周面を覆う第1の繊維強化樹脂層よりなる容器構成体と、ライナの両閉鎖部にかかるように容器構成体の長さ方向に巻き付けられた補強繊維を有する第2の繊維強化樹脂層とを備えており、ライナの両端閉鎖部に、それぞれ第2の繊維強化樹脂層の補強繊維を巻き付ける際のずれ防止部が設けられ、第2の繊維強化樹脂層が、両閉鎖部のずれ防止部にかかるように容器構成体の長さ方向に巻き付けられた補強繊維を有している圧力容器。
【0008】
2)左右両端開口が閉鎖部により閉鎖された筒状ライナ、およびライナの周壁外周面にその周方向に巻き付けられた補強繊維を有しかつライナの周壁外周面を覆う第1の繊維強化樹脂層よりなる容器構成体と、ライナの両閉鎖部にかかるように容器構成体の長さ方向に巻き付けられた補強繊維を有する第2の繊維強化樹脂層とを備えており、ライナの一方の閉鎖部に第2の繊維強化樹脂層の補強繊維を巻き付ける際のずれ防止部が設けられるとともに、ライナの他方の閉鎖部を覆うように第2の繊維強化樹脂層の補強繊維を巻き付ける際のずれ防止部材が配置され、ずれ防止部材の横断面におけるライナの軸線方向の外側部分が、前方から見て高さ方向の中間部が左右方向外方に突出するように丸みを帯びるとともにその突出端部が前後方向に直線状に伸びており、第2の繊維強化樹脂層が、一方の閉鎖部のずれ防止部およびずれ防止部材にかかるように容器構成体の長さ方向に巻き付けられた補強繊維を有している圧力容器。
【0009】
3)ずれ防止部が、閉鎖部に形成された凹部からなる上記1)または2)記載の圧力容器。
【0010】
4)ずれ防止部が、閉鎖部に形成された凸部からなる上記1)または2)記載の圧力容器。
【0011】
5)左右両端開口が閉鎖部により閉鎖された筒状ライナ、およびライナの周壁外周面にその周方向に巻き付けられた補強繊維を有しかつライナの周壁外周面を覆う第1の繊維強化樹脂層よりなる容器構成体と、ライナの両閉鎖部にかかるように容器構成体の長さ方向に巻き付けられた補強繊維を有する第2の繊維強化樹脂層とを備えており、ライナの両端閉鎖部を覆うように第2の繊維強化樹脂層の補強繊維を巻き付ける際のずれ防止部材が配置され、ずれ防止部材の横断面におけるライナの軸線方向の外側部分が、前方から見て高さ方向の中間部が左右方向外方に突出するように丸みを帯びるとともにその突出端部が前後方向に直線状に伸びており、第2の繊維強化樹脂層が、両ずれ防止部材にかかるように容器構成体の長さ方向に巻き付けられた補強繊維を有している圧力容器。
【0012】
6)複数の容器構成体が並べられて一体化され、すべての容器構成体のライナ内部どうしが連通させられるとともに、すべての容器構成体のライナにより1つの閉空間が形成され、当該閉空間を外部に通じさせる1つの口部を備えている上記1)〜5)のうちのいずれかに記載の圧力容器。
【0013】
7)少なくともいずれか一方の閉鎖部が、隣り合う少なくとも2つの容器構成体のライナの開口端部に跨って固定され、かつ隣り合う少なくとも2つの容器構成体のライナの内部どうしを通じさせる外方に膨出したドーム状連通部材からなる上記6)記載の圧力容器。
【0014】
8)すべての容器構成体のライナの長さが等しくなっており、両閉鎖部が、すべての容器構成体のライナの両開口端部に跨ってそれぞれ固定され、かつすべての容器構成体のライナの内部どうしを通じさせる外方に膨出したドーム状連通部材からなり、いずれか一方のドーム状連通部材に口部が設けられている上記6)記載の圧力容器。
【0015】
9)隣り合う少なくとも2つの容器構成体のライナの開口端部に跨ってエンドプレートが固定状に設けられ、ドーム状連通部材の周縁部がエンドプレートの周縁部に接合されている上記7)または8)記載の圧力容器。
【0016】
10)エンドプレートが、ライナの開口端部に一体に形成された外向きフランジどうしが接合されることにより形成されている上記9)記載の圧力容器。
【0017】
11)ライナおよび外向きフランジがアルミニウムよりなり、外向きフランジどうしが摩擦攪拌接合されている上記10)記載の圧力容器。
【0018】
12)エンドプレートが、ライナの開口端部を嵌め入れる貫通穴を有する1枚の板からなり、当該板における貫通穴の周囲の部分とライナの開口端部とが接合されている上記9)記載の圧力容器。
【0019】
13)ライナおよび板がアルミニウムよりなり、ライナと板とが摩擦攪拌接合されている上記12)記載の圧力容器。
【0020】
14)ドーム状連通部材およびエンドプレートがアルミニウムよりなり、ドーム状連通部材とエンドプレートとが摩擦攪拌接合されている上記9)〜13)のうちのいずれかに記載の圧力容器。
【0021】
15)隣り合う少なくとも2つの容器構成体のライナの開口端部間に、両側のライナの開口端部が嵌る切り欠きを有する板状連結部材が配置され、連結部材における切り欠きの周囲の部分とライナの開口端部とが接合され、ドーム状連通部材の周縁部が連結部材およびライナの開口端部に接合されている上記7)または8)記載の圧力容器。
【0022】
16)ライナおよび連結部材がアルミニウムよりなり、ライナと連結部材とが摩擦攪拌接合されている上記15)記載の圧力容器。
【0023】
17)ドーム状連通部材、ライナおよび連結部材がアルミニウムよりなり、ドーム状連通部材とライナと連結部材とが摩擦攪拌接合されている上記15)または16)記載の圧力容器。
【0024】
18)少なくともいずれか一方の閉鎖部が、各容器構成体のライナの開口端部に固定され、かつ外方に膨出したドーム状閉鎖部材からなる上記1)〜17)のうちのいずれかに記載の圧力容器。
【0025】
19)燃料水素用圧力容器、燃料電池、および燃料水素用圧力容器から燃料電池に燃料水素ガスを送る圧力配管を備えており、燃料水素用圧力容器が上記1)〜18)のうちのいずれかに記載の圧力容器からなる燃料電池システム。
【0026】
20)上記19)記載の燃料電池システムを搭載した燃料電池自動車。
【0027】
21)上記19)記載の燃料電池システムを備えたコージェネレーションシステム。
【0028】
22)天然ガス用圧力容器および天然ガス用圧力容器から天然ガスを送り出す圧力配管を備えており、天然ガス用圧力容器が上記1)〜18)のうちのいずれかに記載の圧力容器からなる天然ガス供給システム。
【0029】
23)上記22)記載の天然ガス供給システムと、発電機と、発電機駆動装置を備えているコージェネレーションシステム。
【0030】
24)上記22)記載の天然ガス供給システムと、天然ガスを燃料とするエンジンとを備えている天然ガス自動車。
【0031】
25)酸素用圧力容器および酸素用圧力容器から酸素ガスを送り出す圧力配管を備えており、酸素用圧力容器が上記1)〜18)のうちのいずれかに記載の圧力容器からなる酸素ガス供給システム。
【発明の効果】
【0032】
上記1)、3)および4)の圧力容器によれば、ライナの両端閉鎖部のずれ防止部の働きにより、第2の繊維強化樹脂層の補強繊維をライナの両閉鎖部にかかるように容器構成体の長さ方向に巻き付ける際の作業を簡単に行うことができ、補強繊維のずれを防止することができる。しかも、第2の繊維強化樹脂層の補強繊維のずれが防止されるので、圧力容器の長さ方向の耐圧性が優れたものとなる。
【0033】
上記2)〜4)の圧力容器によれば、ライナの一方の閉鎖部のずれ防止部およびライナの他方の閉鎖部を覆うように配置されたずれ防止部材の働きにより、第2の繊維強化樹脂層の補強繊維をライナの両閉鎖部にかかるように容器構成体の長さ方向に巻き付ける際の作業を簡単に行うことができ、補強繊維のずれを防止することができる。しかも、第2の繊維強化樹脂層の補強繊維のずれが防止されるので、圧力容器の長さ方向の耐圧性が優れたものとなる。また、ずれ防止部材の横断面におけるライナの軸線方向の外側部分が、前方から見て高さ方向の中間部が左右方向外方に突出するように丸みを帯びているので、補強繊維を巻き付ける際の補強繊維の破断が防止される。
【0034】
上記5)の圧力容器によれば、ライナの両端閉鎖部を覆うように配置されたずれ防止部材の働きにより、第2の繊維強化樹脂層の補強繊維をライナの両閉鎖部にかかるように容器構成体の長さ方向に巻き付ける際の作業を簡単に行うことができ、補強繊維のずれを防止することができる。しかも、第2の繊維強化樹脂層の補強繊維のずれが防止されるので、圧力容器の長さ方向の耐圧性が優れたものとなる。また、ずれ防止部材の横断面におけるライナの軸線方向の外側部分が、前方から見て高さ方向の中間部が左右方向外方に突出するように丸みを帯びているので、補強繊維を巻き付ける際の補強繊維の破断が防止される。
【0035】
上記6)の圧力容器によれば、複数の容器構成体が並べられて一体化され、すべての容器構成体のライナ内部どうしが連通させられるとともに、すべての容器構成体のライナにより1つの閉空間が形成され、当該閉空間を外部に通じさせる1つの口部を備えている各容器構成体の横断面の大きさおよび長さや、すべての容器構成体の並べ方を、設置すべき装置、たとえば自動車の空きスペースに合わせて適宜変更することにより、無駄なスペースを生じさせることなく設置することができ、しかも大容量化を図ることができる。さらに、1つの口部を備えているだけであるので、用いられるバルブも1つで済み、コストが安くなる。
【0036】
上記7)および8)の圧力容器によれば、隣り合う少なくとも2つの容器構成体におけるライナの内部どうしを比較的簡単に連通させることができるとともに、これらのライナの開口を閉鎖することができる。
【0037】
上記9)の圧力容器によれば、隣り合う少なくとも2つの容器構成体のライナの開口端部どうしに跨って、ドーム状連通部材を比較的簡単に固定することができる。
【0038】
上記10)の圧力容器によれば、エンドプレートを比較的簡単に形成することができる。
【0039】
上記11)の圧力容器によれば、外向きフランジどうしの接合を強固に行うことができる。
【0040】
上記12)の圧力容器によれば、エンドプレートを比較的簡単に形成することができる。
【0041】
上記13)の圧力容器によれば、ライナと板との接合を強固に行うことができる。
【0042】
上記14)の圧力容器によれば、ドーム状連通部材とエンドプレートとの接合を強固に行うことができる。
【0043】
上記15)の圧力容器によれば、隣り合う少なくとも2つの容器構成体のライナの開口端部どうしに跨って、ドーム状連通部材を比較的簡単に固定することができる。
【0044】
上記16)の圧力容器によれば、ライナと連結部材との接合を強固に行うことができる。
【0045】
上記17)の圧力容器によれば、ドーム状連通部材とライナと連結部材との接合を強固に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。なお、全図面を通じて同一部分および同一物には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0047】
実施形態1
この実施形態は図1〜図7に示すものである。図1〜図4は圧力容器を示し、図5〜図7は圧力容器の製造方法を示す。
【0048】
図1〜図4において、圧力容器(1)は、両端が開口したアルミニウム製円筒状ライナ(3)およびライナ(3)の周壁外周面を覆う1次繊維強化樹脂層(4)(第1の繊維強化樹脂層)よりなり、かつライナ(3)の軸線が同一水平面内に位置するように並列状に並べられた複数の容器構成体(2)を有する圧力容器本体(10)と、圧力容器本体(10)のすべての容器構成体(2)に跨るように形成された2次繊維強化樹脂層(20)とを備えている。
【0049】
すべての容器構成体(2)のライナ(3)の両端部に跨ってそれぞれアルミニウム製エンドプレート(5)が固定状に設けられ、各エンドプレート(5)に、すべての容器構成体(2)のライナ(3)の内部どうしを連通させるとともにすべてのライナ(3)の両端開口を閉鎖する外方に膨出したアルミニウム製ドーム状連通部材(6)(閉鎖部)が固定されている。そして、すべての容器構成体(2)のライナ(3)により1つの閉空間が形成され、一方、ここでは左側の連通部材(6)に、当該閉空間を外部に通じさせる1つの口部(7)が設けられている。
【0050】
すべての容器構成体(2)のライナ(3)の長さおよび直径は等しく、その左右両端がそれぞれ同一垂直面内に位置するように配置されている。各ライナ(3)の左右両端部にはそれぞれ外向きフランジ(8A)(8B)が一体に形成されている。容器構成体(2)が並んだ方向(前後方向)の両端部に位置するライナ(3)の外向きフランジ(8A)は、外側縁部が円弧状となった略半長円形である。また、他のライナ(3)の外向きフランジ(8B)は方形である。すべてのライナ(3)の外向きフランジ(8A)(8B)の高さは等しくなっている。1次繊維強化樹脂層(4)は、ライナ(3)の軸線方向とほぼ直角をなすようにライナ(3)の周方向に巻き付けてなるフープ巻繊維層に樹脂を含浸硬化させることにより形成されたものであり、外向きフランジ(8A)(8B)の部分を除いて各ライナ(3)の周壁外周面全体を覆っている。繊維としては、たとえばカーボン繊維、ガラス繊維、アラミド繊維などが用いられるが、カーボン繊維を用いることが好ましい。樹脂としては、たとえばエポキシ樹脂が用いられる。そして、隣り合うライナ(3)の外向きフランジ(8A)(8B)どうしが適当な方法、ここでは摩擦攪拌接合法により、ライナ(3)の軸線方向外側から接合されてすべての容器構成体(2)が一体化されており、すべての外向きフランジ(8A)(8B)によってライナ(3)の両端部に跨るエンドプレート(5)が固定状に設けられている。外向きフランジ(8A)(8B)どうしの接合ビードを(9)で示す。なお、外向きフランジ(8A)(8B)どうしを接合する方法は、摩擦攪拌接合法に限定されるものではない。
【0051】
ドーム状連通部材(6)は鍛造、ダイカストまたは切削により形成されたものであり、エンドプレート(5)の外形と同形同大の外形を有している。各ドーム状連通部材(6)外面の頂部には、ずれ防止部としての上下方向に伸びる凹部(12)が、前後方向に間隔をおいて複数、ここでは2つ形成されている。一方の連通部材(6)の凹部(12)と、他方の連通部材(6)の凹部(12)とは左右方向に関して同一位置にある。なお、一方の連通部材(6)の口部(7)は両凹部(12)間に形成されている。口部(7)には、その外端から貫通穴(7a)が形成されており、貫通穴(7a)の内周面に、たとえば制御バルブを取り付けるのに利用されるめねじ(7b)が形成されている。連通部材(6)は、周壁の端面がエンドプレート(5)の左右方向外面の周縁部に密着した状態で、適当な方法、ここでは摩擦攪拌接合法により外周側からエンドプレート(5)に接合されている。連通部材(6)とエンドプレート(5)との接合ビードを(11)で示す。なお、連通部材(6)とエンドプレート(5)とを接合する方法は、摩擦攪拌接合法に限定されるものではない。
【0052】
ライナ(3)および両連通部材(6)は、それぞれ、たとえばJIS A2000系合金、JIS A5000系合金、JIS A6000系合金およびJIS A7000系合金のうちのいずれかにより形成されている。すべてのライナ(3)および両連通部材(6)は同じ材料で形成されていてもよいし、あるいは少なくとも1つが異なる材料で形成されていてもよい。
【0053】
2次繊維強化樹脂層(20)は、補強繊維をすべての容器構成体(2)を連結するようにライナ(3)の軸線方向とほぼ直角をなすように巻き付けてなるフープ巻繊維層に樹脂を含浸硬化させたフープ巻繊維強化樹脂層(21)と、補強繊維をライナ(3)の軸線方向と平行に巻き付けてなるインプレーン巻繊維層に樹脂を含浸硬化させたインプレーン巻繊維強化樹脂層(22)と、補強繊維をライナ(3)の軸線方向に対して傾斜するように巻き付けてなるヘリカル巻繊維層に樹脂を含浸硬化させたヘリカル巻繊維強化樹脂層(23)とよりなる。各繊維強化樹脂層(21)(22)(23)を構成する補強繊維としては、たとえばカーボン繊維、ガラス繊維、アラミド繊維などが用いられるが、カーボン繊維を用いることが好ましい。また、各繊維強化樹脂層(21)(22)(23)を構成する樹脂としては、たとえばエポキシ樹脂が用いられる。各繊維強化樹脂層(21)(22)(23)は、フィラメントワインディング法により樹脂を含浸させた補強繊維、あるいは樹脂を含浸させた補強繊維の束を巻き付けた後、樹脂を硬化させることにより形成される。
【0054】
インプレーン巻繊維強化樹脂層(22)を構成するインプレーン巻繊維層は、樹脂含浸補強繊維または樹脂含浸補強繊維束を、両連通部材(6)の左右方向に関して同一位置にある凹部(12)内に嵌るように巻き付けることにより形成されており、これによりインプレーン巻繊維強化樹脂層(22)は、ライナ(3)の軸線方向と平行に形成されている。ヘリカル巻繊維強化樹脂層(23)を構成するヘリカル巻繊維層は、樹脂含浸補強繊維または樹脂含浸補強繊維束を、両連通部材(6)の左右方向に関して異なる位置にある凹部(12)内に嵌るように巻き付けることにより形成されており、これによりヘリカル巻繊維強化樹脂層(23)は、ライナ(3)の軸線方向に対して傾斜するように形成されている。
【0055】
圧力容器(1)は、以下に述べる方法によって製造される。
【0056】
まず、図5および図6に示す方法により容器構成体(2)を製造する。なお、図5は並び方向の一端部に位置する容器構成体(2)を製造する方法を示し、図6は並び方向の中間部に位置する容器構成体(2)を製造する方法を示す。
【0057】
すなわち、横断面の外形が外向きフランジ(8A)(8B)の外形と同形同大であり、かつ横断面円形貫通穴(16)を有するアルミニウム製中空押出形材(15A)(15B)を形成する(図5(a)および図6(a)参照)。ついで、中空押出形材(15A)(15B)の外周面にその両端部を除いて旋削加工を施すことにより、両端が開口した円筒状ライナ(3)とライナ(3)の両端部の外向きフランジ(8A)(8B)とを同時に形成する(図5(b)および図6(b)参照)。ついで、ライナ(3)の外周に、フィラメントワインディング法により樹脂を含浸させた補強繊維、あるいは樹脂を含浸させた補強繊維の束をライナ(3)の軸線とほぼ直交する方向に巻き付けることによりフープ巻繊維層を形成した後、樹脂を硬化させて1次繊維強化樹脂層(4)を形成することにより容器構成体(2)を製造する(図5(c)および図6(c)参照)。
【0058】
また、鍛造、ダイカストまたは切削により、2つの凹部(12)を有する2つのドーム状連通部材(6)を製造しておく。一方の連通部材(6)には口部(7)を形成しておく。
【0059】
ついで、すべての容器構成体(2)を、その軸線が同一水平面内に位置するとともに左右両端が同一垂直面内に位置するように並列状に並べ、隣り合う容器構成体(2)の外向きフランジ(8A)(8B)の側縁部どうしを当接させる。そして、隣り合う容器構成体(2)の外向きフランジ(8A)(8B)どうしを、ライナ(3)の軸線方向外側から摩擦攪拌接合することにより、エンドプレート(5)を固定状に設ける(図7参照)。
【0060】
ついで、両連通部材(6)の周壁端面を両エンドプレート(5)の外面周縁部に当接させた状態で、連通部材(6)とエンドプレート(5)とを外周側から摩擦攪拌接合し、圧力容器本体(10)をつくる。
【0061】
その後、樹脂含浸補強繊維または樹脂含浸補強繊維束を、すべての容器構成体(2)を連結するようにライナ(3)の軸線方向とほぼ直角をなすように巻き付けてフープ巻繊維層を形成する。また、樹脂含浸補強繊維または樹脂含浸補強繊維束を、両連通部材(6)における左右方向に関して同一位置にある凹部(12)内に嵌るように、ライナ(3)の軸線方向と平行な方向に巻き付けてインプレーン巻繊維層を形成する。さらに、樹脂含浸補強繊維または樹脂含浸補強繊維束を、両連通部材(6)における左右方向に関して異なる位置にある凹部(12)内に嵌るように、ライナ(3)の軸線方向に対して傾斜する方向に巻き付けてヘリカル巻繊維層を形成する。そして、樹脂を硬化させることにより、フープ巻繊維強化樹脂層(21)、インプレーン巻繊維強化樹脂層(22)およびヘリカル巻繊維強化樹脂層(23)を形成し、2次繊維強化樹脂層(20)とする。
【0062】
こうして、圧力容器(1)が製造される。
【0063】
実施形態1において、ライナ(3)および外向きフランジ(8A)(8B)は、中空押出形材(15A)(15B)に旋削加工を施すことにより一体に形成されているが、これに代えて、ダイカストによりライナ(3)および外向きフランジ(8A)(8B)が一体に形成されていてもよい。
【0064】
また、実施形態1において、ライナ(3)はアルミニウム製であるが、これに代えて樹脂製のものを用いてもよい。樹脂製ライナ(3)を用いる場合、外向きフランジ(8A)(8B)が樹脂により一体に形成されることがある。この場合、外向きフランジ(8A)(8B)どうしが溶接または接着により接合されてエンドプレート(5)が形成され、連通部材(6)として樹脂製のものが用いられてエンドプレート(5)に溶接または接着により接合される。また、樹脂製ライナ(3)を用いる場合であっても、外向きフランジ(8A)(8B)としてライナ(3)と別体のアルミニウム製のものが用いられることがある。この場合、たとえば外向きフランジ(8A)(8B)をインサートとしてライナ(3)を射出成形することにより、ライナ(3)と外向きフランジ(8A)(8B)とが一体化される。なお、この場合、外向きフランジ(8A)(8B)どうしの接合、および連通部材(6)とエンドプレート(5)との接合は、実施形態1の場合と同様にして行われる。
【0065】
上記実施形態1において、容器構成体(2)の数は適宜変更可能である。なお、実施形態1において容器構成体(2)の数を2つにする場合には、図1における並べ方向の両端(前後両端)に位置する2つの容器構成体(2)が用いられる。また、上記実施形態1において、すべての容器構成体(2)のライナ(3)の直径は等しくなっているが、これに限るものではなく、少なくとも1つの容器構成体(2)のライナ(3)の直径が異なっていてもよい。
【0066】
実施形態2
この実施形態は図8に示すものである。
【0067】
この実施形態の圧力容器(40)の場合、各ドーム状連通部材(6)外面の頂部における前後両側部分には、それぞれ前後方向に間隔をおいて形成された、ずれ防止部としての2つの凸部(41)からなる凸部対(42)が形成されている。一方の連通部材(6)の凸部対(42)と、他方の連通部材(6)の凸部対(42)とは左右方向に関して同一位置にある。なお、一方の連通部材(6)に形成された口部(7)は両凸部対(42)間の位置に形成されている。
【0068】
すべての容器構成体(2)に跨るように形成された2次繊維強化樹脂層(20)は、フープ巻繊維強化樹脂層(21)、インプレーン巻繊維強化樹脂層(22)およびヘリカル巻繊維強化樹脂層(23)からなる。インプレーン巻繊維強化樹脂層(22)を構成するインプレーン巻繊維層は、樹脂含浸補強繊維または樹脂含浸補強繊維束を、両連通部材(6)の左右方向に関して同一位置にある凸部対(42)の両凸部(41)間に嵌るように巻き付けることにより形成されており、これによりインプレーン巻繊維強化樹脂層(22)は、ライナ(3)の軸線方向と平行に形成されている。ヘリカル巻繊維強化樹脂層(23)を構成するヘリカル巻繊維層は、樹脂含浸補強繊維または樹脂含浸補強繊維束を、両連通部材(6)の左右方向に関して異なる位置にある凸部対(42)の両凸部(41)間に嵌るように巻き付けることにより形成されており、これによりヘリカル巻繊維強化樹脂層(23)は、ライナ(3)の軸線方向に対して傾斜するように形成されている。
【0069】
その他の構成は実施形態1の圧力容器(1)と同様である。
【0070】
実施形態3
この実施形態は図9および図10に示すものである。
【0071】
この実施形態の圧力容器(45)の場合、圧力容器本体(46)のすべての容器構成体(2)のライナ(3)の長さが等しく、すべてのライナ(3)は左右両端が同一垂直面内に位置するように並べられている。そして、すべての容器構成体(2)の左端部どうしが、実施形態1の場合と同様にして連結一体化されており、すべてのライナ(3)の左端部に跨るように口部(7)を有するドーム状連通部材(6)が接合され、すべてのライナ(3)の内部どうしが連通させられるとともにすべてのライナ(3)の左端開口が閉鎖されている。
【0072】
各ライナ(3)の右端部には、金属、ここではアルミニウムからなる略椀状(ドーム状)の閉鎖部材(47)(閉鎖部)が適当な方法、たとえば摩擦攪拌接合法により外周側から接合されており、閉鎖部材(47)により各ライナ(3)の右端開口が閉鎖されている。なお、鍛造により各ライナ(3)と閉鎖部材(47)とが一体に形成されていてもよい。
【0073】
すべてのライナ(3)の閉鎖部材(47)の外側において、これらの閉鎖部材(47)に跨るように、樹脂や、アルミニウムなどの金属から形成されたずれ防止部材(48)が配置されている。ずれ防止部材(48)の左側面にはすべての閉鎖部材(47)が嵌る凹所(49)が形成されている。また、ずれ防止部材(48)の横断面における左右方向(ライナ軸線方向)の外側部分は、前方から見て高さ方向の中間部が右方に突出するように丸みを帯びており、ここでは、ずれ防止部材(48)の左右方向外面は部分円筒面(48a)となっている。
【0074】
すべての容器構成体(2)に跨るように形成された2次繊維強化樹脂層(20)は、フープ巻繊維強化樹脂層(21)、インプレーン巻繊維強化樹脂層(22)およびヘリカル巻繊維強化樹脂層(23)からなる。インプレーン巻繊維強化樹脂層(22)を構成するインプレーン巻繊維層は、樹脂含浸補強繊維または樹脂含浸補強繊維束を、連通部材(6)の各凹部(12)内に嵌るとともに、ずれ防止部材(48)の部分円筒面(48a)における前後方向に関して各凹部(12)と対応する位置にかかるように巻き付けることにより形成されており、これによりインプレーン巻繊維強化樹脂層(22)は、ライナ(3)の軸線方向と平行に形成されている。ヘリカル巻繊維強化樹脂層(23)を構成するヘリカル巻繊維層は、樹脂含浸補強繊維または樹脂含浸補強繊維束を、連通部材の各凹部(12)に嵌るとともに、ずれ防止部材(48)の部分円筒面(48a)における前後方向に関して異なる凹部(12)と対応する位置にかかるように巻き付けることにより形成されており、これによりヘリカル巻繊維強化樹脂層(23)は、ライナ(3)の軸線方向に対して傾斜するように形成されている。
【0075】
その他の構成は実施形態1の圧力容器(1)と同様である。
【0076】
実施形態4
この実施形態は図11に示すものである。
【0077】
この実施形態の圧力容器(50)の場合、圧力容器本体(51)のすべての容器構成体(2)のライナ(3)の長さが等しく、すべてのライナ(3)は左右両端が同一垂直面内に位置するように並べられている。そして、前側の2つのライナ(3)の左端部どうし、および後側の2つのライナ(3)の右端部どうしが、実施形態1の場合と同様にして連結一体化されており、前側の2つのライナ(3)の左端部および後側の2つのライナ(3)の右端部にそれぞれ跨るようにそれぞれドーム状連通部材(6)が接合され、これらのライナ(3)の内部どうしが連通させられるとともに、前側の隣り合う2つのライナ(3)の左端開口および後側の隣り合う2つのライナ(3)の右端開口が閉鎖されている。
【0078】
前端部のライナ(3)の右端部には閉鎖部材(47)が適当な方法、たとえば摩擦攪拌接合法により外周側から接合されており、閉鎖部材(47)によりライナ(3)の右端開口が閉鎖されている。また、後端部のライナ(3)の左端部には口部(7)を有する閉鎖部材(47)が適当な方法、たとえば摩擦攪拌接合法により外周側から接合されており、閉鎖部材(47)によりライナ(3)の左端開口が閉鎖されている。なお、鍛造によりこれらのライナ(3)と閉鎖部材(47)とが一体に形成されていてもよい。
【0079】
左右両端部における連通部材(6)および閉鎖部材(47)の外側において、それぞれ連通部材(6)および閉鎖部材(47)に跨るように、樹脂や、アルミニウムなどの金属から形成されたずれ防止部材(52)が配置されている。各ずれ防止部材(52)の左右方向内面には連通部材(6)および閉鎖部材(47)が嵌る凹所(53)(54)が形成されている。また、各ずれ防止部材(52)の横断面における左右方向(ライナ軸線方向)の外側部分は、前方から見て高さ方向の中間部が右方に突出するように丸みを帯びており、ここでは、ずれ防止部材(52)の左右方向外面は部分円筒面(52a)となっている。なお、左側のずれ防止部材(52)には、閉鎖部材(47)の口部(7)を外方に露出させるための貫通穴(55)が形成されている。
【0080】
すべての容器構成体(2)に跨るように形成された2次繊維強化樹脂層(20)は、フープ巻繊維強化樹脂層(21)、インプレーン巻繊維強化樹脂層(22)およびヘリカル巻繊維強化樹脂層(23)からなる。インプレーン巻繊維強化樹脂層(22)を構成するインプレーン巻繊維層は、樹脂含浸補強繊維または樹脂含浸補強繊維束を、両ずれ防止部材(52)の部分円筒面(52a)における前後方向に関して同一位置にかかるように巻き付けることにより形成されており、これによりインプレーン巻繊維強化樹脂層(22)は、ライナ(3)の軸線方向と平行に形成されている。ヘリカル巻繊維強化樹脂層(23)を構成するヘリカル巻繊維層は、樹脂含浸補強繊維または樹脂含浸補強繊維束を、両ずれ防止部材(52)の部分円筒面における前後方向に関して異なる位置にかかるように巻き付けることにより形成されており、これによりヘリカル巻繊維強化樹脂層(23)は、ライナ(3)の軸線方向に対して傾斜するように形成されている。
【0081】
その他の構成は実施形態1の圧力容器(1)と同様である。
【0082】
実施形態5
この実施形態は図12に示すものである。
【0083】
この実施形態の圧力容器(60)の場合、圧力容器本体(61)のすべての容器構成体(2)のライナ(3)の長さが異なっており、すべてのライナ(3)は、左端が同一垂直面内に位置するように並べられている。そして、すべてのライナ(3)の左端部どうしが、実施形態1の場合と同様にして連結一体化されており、これらのライナ(3)の左端部に跨るように口部(7)を有するドーム状連通部材(6)が接合され、これらのライナ(3)の内部どうしが連通させられるとともに、これらのライナ(3)の左端開口が閉鎖されている。
【0084】
各ライナ(3)の右端部には閉鎖部材(47)が適当な方法、たとえば摩擦攪拌接合法により外周側から接合されており、閉鎖部材(47)によりライナ(3)の右端開口が閉鎖されている。なお、鍛造によりこれらのライナ(3)と閉鎖部材(47)とが一体に形成されていてもよい。
【0085】
左端部における連通部材(6)の外側に、樹脂や、アルミニウムなどの金属から形成されたずれ防止部材(62)が配置されている。ずれ防止部材(62)の左右方向内面には連通部材(6)が嵌る凹所(63)が形成されている。なお、ずれ防止部材(62)には、口部(7)を外方に露出させるための貫通穴(66)が形成されている。また、右端部における各閉鎖部材(47)の外側に、樹脂や、アルミニウムなどの金属から形成されたずれ防止部材(64)が配置されている。各ずれ防止部材(64)の左右方向内面には閉鎖部材(47)が嵌る凹所(65)が形成されている。各ずれ防止部材(62)(64)の横断面における左右方向(ライナ軸線方向)の外側部分は、前方から見て高さ方向の中間部が左右方向外方に突出するように丸みを帯びており、ここでは、ずれ防止部材(62)(64)の左右方向外面は部分円筒面(62a)(64a)となっている。
【0086】
すべての容器構成体(2)に跨るように形成された2次繊維強化樹脂層(20)は、フープ巻繊維強化樹脂層(21)、インプレーン巻繊維強化樹脂層(22)およびヘリカル巻繊維強化樹脂層(23)からなる。インプレーン巻繊維強化樹脂層(22)を構成するインプレーン巻繊維層は、樹脂含浸補強繊維または樹脂含浸補強繊維束を、各閉鎖部材(47)の外側に配置されたずれ防止部材(64)の部分円筒面(64a)と、連通部材(6)の外側に配置されたずれ防止部材(62)の部分円筒面(62a)における前後方向に関して右側のずれ防止部材(64)と同一位置にかかるように巻き付けることにより形成されており、これによりインプレーン巻繊維強化樹脂層(22)は、ライナ(3)の軸線方向と平行に形成されている。ヘリカル巻繊維強化樹脂層(23)を構成するヘリカル巻繊維層は、樹脂含浸補強繊維または樹脂含浸補強繊維束を、各閉鎖部材(47)の外側に配置されたずれ防止部材(64)の部分円筒面(64a)と、連通部材(6)の外側に配置されたずれ防止部材(62)の部分円筒面(62a)における前後方向に関して右側のずれ防止部材(64)と異なる位置にかかるように巻き付けることにより形成されており、これによりヘリカル巻繊維強化樹脂層(23)は、ライナ(3)の軸線方向に対して傾斜するように形成されている。
【0087】
その他の構成は実施形態1の圧力容器(1)と同様である。
【0088】
実施形態2〜5の圧力容器(40)(45)(50)(60)においても、樹脂製ライナ(3)が用いられることもある。この場合、実施形態1で述べたようにライナ(3)が連結一体化される。
【0089】
図13および図14は圧力容器に用いられる圧力容器本体の変形例を示す。
【0090】
図13に示す圧力容器本体(10A)の場合、両エンドプレート(5)は、ライナ(3)の開口端部を嵌め入れる貫通穴(31)を有する1枚の金属板、ここではアルミニウム板(30)からなる。そして、各ライナ(3)の両端部がそれぞれアルミニウム板(30)の貫通穴(31)内に嵌め入れられ、アルミニウム板(30)における貫通穴(31)の周囲の部分とライナ(3)の開口端部とが、適当な方法、たとえば摩擦攪拌接合法により、ライナ(3)の軸線方向外側から接合されている。なお、ライナ(3)の両端部におけるアルミニウム板(30)の貫通穴(31)内に嵌め入れられる部分には繊維強化樹脂層(4)は形成されていない。アルミニウム板(30)とライナ(3)とを接合する方法は、摩擦攪拌接合法に限定されるものではない。
【0091】
アルミニウム板(30)は、たとえばJIS A2000系合金、JIS A5000系合金、JIS A6000系合金およびJIS A7000系合金のうちのいずれかにより形成されている。
【0092】
図13に示す圧力容器本体(10A)においても、ライナ(3)として樹脂製のものが用いられ、すべてのライナ(3)とエンドプレート(5)とが樹脂により一体成形されることがある。この場合、連通部材(6)も樹脂製のものとされ、エンドプレート(5)に溶接または接着により接合される。また、樹脂製ライナ(3)を用いる場合であっても、エンドプレート(5)としてライナ(3)と別体のアルミニウム製のものがを用いられることがある。この場合、たとえばエンドプレート(5)をインサートとしてすべてのライナ(3)を同時に射出成形することにより、ライナ(3)とエンドプレート(5)とが一体化される。なお、この場合、連通部材(6)とエンドプレート(5)との接合は、実施形態1の場合と同様にして行われる。
【0093】
図14に示す圧力容器本体(10B)の場合、エンドプレート(5)は用いられておらず、隣り合う容器構成体(2)のライナ(3)の両端部どうしが金属製、ここではアルミニウム製板状連結部材(35)を介して連結一体化されている。すなわち、連結部材(35)の両側には、それぞれ隣り合う2つのライナ(3)の両端部における半分の部分が嵌る半円形の切り欠き(36)が形成されている。そして、ライナ(3)の両端部の半部が連結部材(35)の切り欠き(36)内に嵌め入れられ、連結部材(35)における切り欠き(36)の周囲の部分とライナ(3)の両端部とが、適当な方法、たとえば摩擦攪拌接合法により、ライナ(3)の軸線方向外側から接合されている。なお、ライナ(3)の両端部における連結部材(35)の切り欠き(36)内に嵌め入れられる部分には繊維強化樹脂層(4)は形成されていない。連結部材(35)とライナ(3)とを接合する方法は、摩擦攪拌接合法に限定されるものではない。
【0094】
ドーム状連通部材(6)は、すべてのライナ(3)と連結部材(35)とを合わせたものの外形と同形同大の外形を有している。連通部材(6)は、周壁端面をすべてのライナ(3)と連結部材(35)とを合わせたものの端面の周縁部に当接させられた状態で、適当な方法、たとえば摩擦攪拌接合法により外周側から接合されている。連通部材(6)とライナ(3)および連結部材(35)とを接合する方法は、摩擦攪拌接合法に限定されるものではない。
【0095】
連結部材(35)は、たとえばJIS A2000系合金、JIS A5000系合金、JIS A6000系合金およびJIS A7000系合金のうちのいずれかにより形成されている。
【0096】
図14に示す圧力容器においても、樹脂製のライナが用いられてもよい。樹脂製ライナ(3)を用いる場合、連結部材(35)がすべてのライナ(3)に一体に形成されることがある。この場合、連通部材(6)も樹脂製のものとされ、連結部材(35)およびライナ(3)に溶接または接着により接合される。また、樹脂製ライナ(3)を用いる場合であっても、連結部材(35)としてライナ(3)と別体のアルミニウム製のものがを用いられることがある。この場合、たとえば連結部材(35)をインサートとしてすべてのライナ(3)を射出成形することにより、ライナ(3)と連結部材(35)とが一体化される。なお、この場合、連通部材(6)とライナ(3)および連結部材(35)との接合は、適当な方法、たとえば接着により行われる。
【0097】
上記実施形態1〜5の圧力容器における圧力容器、および圧力容器本体の変形例において、ライナは円筒状であるが、これに限定されるものではなく、非円筒状であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】この発明の実施形態1の圧力容器を示す平面図である
【図2】図1の圧力容器の圧力容器本体を示す斜視図である。
【図3】図2の圧力容器本体の水平断面図である。
【図4】同じく横断面図である。
【図5】並び方向の端に位置する容器構成体を製造する方法を示す斜視図である。
【図6】並び方向の中間に位置する容器構成体を製造する方法を示す斜視図である。
【図7】連結一体化された複数の容器構成体に連通部材を接合する状態を示す斜視図である。
【図8】この発明の実施形態2の圧力容器を示す一部切り欠き平面図である。
【図9】この発明の実施形態3の圧力容器を示す一部切り欠き平面図である。
【図10】図9のX−X線断面図である。
【図11】この発明の実施形態4の圧力容器を示す一部切り欠き平面図である。
【図12】この発明の実施形態5の圧力容器を示す一部切り欠き平面図である。
【図13】この発明の圧力容器における圧力容器本体の変形例を示し、連通部材を省略した分解斜視図である。
【図14】この発明の圧力容器における圧力容器本体の他の変形例を示し、連通部材を省略した分解斜視図である。
【符号の説明】
【0099】
(1)(40)(45)(50)(60):圧力容器
(2):容器構成体
(3):ライナ
(4):繊維強化樹脂層
(5):エンドプレート
(6):ドーム状連通部材(閉鎖部)
(7):口部
(8A)(8B):外向きフランジ
(12):凹部(ずれ防止部)
(20):2次繊維強化樹脂層
(21):フープ巻繊維強化樹脂層
(22):インプレーン巻繊維強化樹脂層
(23):ヘリカル巻繊維強化樹脂層
(41):凸部(ずれ防止部)
(42):凸部対
(47):閉鎖部材(閉鎖部)
(48)(52)(62)(64):ずれ防止部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右両端開口が閉鎖部により閉鎖された筒状ライナ、およびライナの周壁外周面にその周方向に巻き付けられた補強繊維を有しかつライナの周壁外周面を覆う第1の繊維強化樹脂層よりなる容器構成体と、ライナの両閉鎖部にかかるように容器構成体の長さ方向に巻き付けられた補強繊維を有する第2の繊維強化樹脂層とを備えており、ライナの両端閉鎖部に、それぞれ第2の繊維強化樹脂層の補強繊維を巻き付ける際のずれ防止部が設けられ、第2の繊維強化樹脂層が、両閉鎖部のずれ防止部にかかるように容器構成体の長さ方向に巻き付けられた補強繊維を有している圧力容器。
【請求項2】
左右両端開口が閉鎖部により閉鎖された筒状ライナ、およびライナの周壁外周面にその周方向に巻き付けられた補強繊維を有しかつライナの周壁外周面を覆う第1の繊維強化樹脂層よりなる容器構成体と、ライナの両閉鎖部にかかるように容器構成体の長さ方向に巻き付けられた補強繊維を有する第2の繊維強化樹脂層とを備えており、ライナの一方の閉鎖部に第2の繊維強化樹脂層の補強繊維を巻き付ける際のずれ防止部が設けられるとともに、ライナの他方の閉鎖部を覆うように第2の繊維強化樹脂層の補強繊維を巻き付ける際のずれ防止部材が配置され、ずれ防止部材の横断面におけるライナの軸線方向の外側部分が、前方から見て高さ方向の中間部が左右方向外方に突出するように丸みを帯びるとともにその突出端部が前後方向に直線状に伸びており、第2の繊維強化樹脂層が、一方の閉鎖部のずれ防止部およびずれ防止部材にかかるように容器構成体の長さ方向に巻き付けられた補強繊維を有している圧力容器。
【請求項3】
ずれ防止部が、閉鎖部に形成された凹部からなる請求項1または2記載の圧力容器。
【請求項4】
ずれ防止部が、閉鎖部に形成された凸部からなる請求項1または2記載の圧力容器。
【請求項5】
左右両端開口が閉鎖部により閉鎖された筒状ライナ、およびライナの周壁外周面にその周方向に巻き付けられた補強繊維を有しかつライナの周壁外周面を覆う第1の繊維強化樹脂層よりなる容器構成体と、ライナの両閉鎖部にかかるように容器構成体の長さ方向に巻き付けられた補強繊維を有する第2の繊維強化樹脂層とを備えており、ライナの両端閉鎖部を覆うように第2の繊維強化樹脂層の補強繊維を巻き付ける際のずれ防止部材が配置され、ずれ防止部材の横断面におけるライナの軸線方向の外側部分が、前方から見て高さ方向の中間部が左右方向外方に突出するように丸みを帯びるとともにその突出端部が前後方向に直線状に伸びており、第2の繊維強化樹脂層が、両ずれ防止部材にかかるように容器構成体の長さ方向に巻き付けられた補強繊維を有している圧力容器。
【請求項6】
複数の容器構成体が並べられて一体化され、すべての容器構成体のライナ内部どうしが連通させられるとともに、すべての容器構成体のライナにより1つの閉空間が形成され、当該閉空間を外部に通じさせる1つの口部を備えている請求項1〜5のうちのいずれかに記載の圧力容器。
【請求項7】
少なくともいずれか一方の閉鎖部が、隣り合う少なくとも2つの容器構成体のライナの開口端部に跨って固定され、かつ隣り合う少なくとも2つの容器構成体のライナの内部どうしを通じさせる外方に膨出したドーム状連通部材からなる請求項6記載の圧力容器。
【請求項8】
すべての容器構成体のライナの長さが等しくなっており、両閉鎖部が、すべての容器構成体のライナの両開口端部に跨ってそれぞれ固定され、かつすべての容器構成体のライナの内部どうしを通じさせる外方に膨出したドーム状連通部材からなり、いずれか一方のドーム状連通部材に口部が設けられている請求項6記載の圧力容器。
【請求項9】
隣り合う少なくとも2つの容器構成体のライナの開口端部に跨ってエンドプレートが固定状に設けられ、ドーム状連通部材の周縁部がエンドプレートの周縁部に接合されている請求項7または8記載の圧力容器。
【請求項10】
エンドプレートが、ライナの開口端部に一体に形成された外向きフランジどうしが接合されることにより形成されている請求項9記載の圧力容器。
【請求項11】
ライナおよび外向きフランジがアルミニウムよりなり、外向きフランジどうしが摩擦攪拌接合されている請求項10記載の圧力容器。
【請求項12】
エンドプレートが、ライナの開口端部を嵌め入れる貫通穴を有する1枚の板からなり、当該板における貫通穴の周囲の部分とライナの開口端部とが接合されている請求項9記載の圧力容器。
【請求項13】
ライナおよび板がアルミニウムよりなり、ライナと板とが摩擦攪拌接合されている請求項12記載の圧力容器。
【請求項14】
ドーム状連通部材およびエンドプレートがアルミニウムよりなり、ドーム状連通部材とエンドプレートとが摩擦攪拌接合されている請求項9〜13のうちのいずれかに記載の圧力容器。
【請求項15】
隣り合う少なくとも2つの容器構成体のライナの開口端部間に、両側のライナの開口端部が嵌る切り欠きを有する板状連結部材が配置され、連結部材における切り欠きの周囲の部分とライナの開口端部とが接合され、ドーム状連通部材の周縁部が連結部材およびライナの開口端部に接合されている請求項7または8記載の圧力容器。
【請求項16】
ライナおよび連結部材がアルミニウムよりなり、ライナと連結部材とが摩擦攪拌接合されている請求項15記載の圧力容器。
【請求項17】
ドーム状連通部材、ライナおよび連結部材がアルミニウムよりなり、ドーム状連通部材とライナと連結部材とが摩擦攪拌接合されている請求項15または16記載の圧力容器。
【請求項18】
少なくともいずれか一方の閉鎖部が、各容器構成体のライナの開口端部に固定され、かつ外方に膨出したドーム状閉鎖部材からなる請求項1〜17のうちのいずれかに記載の圧力容器。
【請求項19】
燃料水素用圧力容器、燃料電池、および燃料水素用圧力容器から燃料電池に燃料水素ガスを送る圧力配管を備えており、燃料水素用圧力容器が請求項1〜18のうちのいずれかに記載の圧力容器からなる燃料電池システム。
【請求項20】
請求項19記載の燃料電池システムを搭載した燃料電池自動車。
【請求項21】
請求項19記載の燃料電池システムを備えたコージェネレーションシステム。
【請求項22】
天然ガス用圧力容器および天然ガス用圧力容器から天然ガスを送り出す圧力配管を備えており、天然ガス用圧力容器が請求項1〜18のうちのいずれかに記載の圧力容器からなる天然ガス供給システム。
【請求項23】
請求項22記載の天然ガス供給システムと、発電機と、発電機駆動装置を備えているコージェネレーションシステム。
【請求項24】
請求項22記載の天然ガス供給システムと、天然ガスを燃料とするエンジンとを備えている天然ガス自動車。
【請求項25】
酸素用圧力容器および酸素用圧力容器から酸素ガスを送り出す圧力配管を備えており、酸素用圧力容器が請求項1〜18のうちのいずれかに記載の圧力容器からなる酸素ガス供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−38156(P2006−38156A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−221385(P2004−221385)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】