説明

圧力測定装置及びタイヤ用ゴムを加硫する金型

【課題】加硫用金型によるタイヤ製造において、圧力測定面の望ましくない変形が生じず、しかも製造が簡単な圧力測定装置を提供する。
【解決手段】圧力測定装置(20)は、プルーフ本体(22)に機能的に取り付けられた圧力測定面(28)と、プルーフ本体に機能的に取り付けられた剛性コンポーネント(30)とを有し、測定面(28)は、剛性コンポーネント(30)の表面を形成している。更に、この装置は、プルーフ本体とは機能的に別個であり、剛性コンポーネントを収容する全体として環状の支持体(38)と、支持体と剛性コンポーネントとの間に半径方向に挿入された可撓性物体(40)とを有し、測定面の輪郭は、可撓性物体によって境界付けられるようになっており、この可撓性物体は、支持体及び剛性コンポーネントにくっついている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの技術分野に関し、特にタイヤの製造に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤは、タイヤのゴムを主成分とする生のブランクを回転軸線回りに全体として環状の形をした金型内で加熱することによって製造できるということが知られている。生ブランクの加熱により、その加硫が行われる。
【0003】
具体的に説明すると、特にゴムの塊の生(未加工)の状態から硬化状態への移行を判定するために、加硫中、ゴムの塊により金型の内壁に及ぼされる圧力を検査しなければならない。
【0004】
この圧力は、例えば側壁及び測定されるべき圧力が及ぼされる圧力測定面を形成する端側部を備えたボックスを有する圧力センサを用いて点検できるということが知られている。ボックスは、測定面に機能的に取り付けられたプルーフ本体(proof body)を収容するようになっている。
【0005】
伝統的に、測定面は、それ自体圧力の影響を受けて変形し、この機械的な変形の量をプルーフ本体に伝え、このプルーフ本体は、この変形量を検出器向きの物理的な量に変換し、検出器は、この量に敏感である。ゴムにより金型の内壁に及ぼされる圧力を測定するため、圧力センサは、この目的のために金型内に設けられたハウジング内に挿入され、その測定面がゴムと接触関係をなすようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ブランクが生であるとき、ゴム残留物が、センサハウジングの内部で、特にそのボックスの外壁に沿って流れる場合がある。加硫中、このゴム残留物は、膨張して圧力をボックスの壁に及ぼし、それにより壁並びにセンサ測定面を変形させる。
【0007】
測定面のこの望ましくない変形により、圧力測定値が不正確になる。
【0008】
本発明の主目的は、この欠点を解決すると共に製造が簡単な圧力測定装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、プルーフ本体に機能的に取り付けられた圧力測定面を有する圧力測定装置において、
プルーフ本体に機能的に取り付けられた剛性コンポーネントを有し、測定面は、剛性コンポーネントの一表面を形成し、
プルーフ本体とは機能的に別個であり、剛性コンポーネントを収容する全体として環状の支持体を有し、
支持体と剛性コンポーネントとの間に半径方向に挿入された可撓性物体を有し、測定面の輪郭は、可撓性物体によって境界付けられるようになっており、可撓性物体は、支持体にくっつくと共に剛性コンポーネントにくっついていることを特徴とする装置に関する。
【0010】
測定面の輪郭を境界付け、支持体と剛性コンポーネントの両方にくっついている可撓性物体の存在により、ゴムは、圧力測定装置のハウジング内を流れることができず、従って、圧力測定を妨害することができない。
【0011】
更に、支持体は、プルーフ本体から機能的に切り離されているので、ゴム残留物は、測定面に及ぼされる圧力の測定を妨害する恐れ無く、支持体の外壁とハウジングの内壁との間に形成された隙間内を流れることができる。
【0012】
本発明の圧力測定装置は、次の特徴のうちの1つ又は2つ以上を有するのが良い。
【0013】
構成要素としての支持体及び剛性コンポーネントのうちの少なくとも一方は、溝及びカラーを有する形式の環状くっつき面を有する。
剛性コンポーネントは、互いに反対側の端に位置した第1の側部及び第2の側部を有し、第1の側部は、測定面を形成し、第2の側部は、プルーフ本体に機能的に取り付けられた変形可能な表面と接触関係をなす側部を形成する。
コンポーネントの第1の端側部の面積は、変形可能な表面の面積に等しい。
可撓性物体は、剛性コンポーネント及び支持体上に複合成形されている。
剛性コンポーネントは、変形不能な材料で作られ、例えば、主としてポリエーテルエーテルケトン(PEEK)から成る。
可撓性物体は、主としてシリコーン又はブチル系ゴムから成る材料で作られる。
プルーフ本体は、圧電型又は歪ゲージ型のものである。
支持体は、圧力が測定されるべき材料を収容するキャビティ内に開口した金型の穴内に嵌まり込むよう設計された外面を有する。
【0014】
本発明は又、圧力測定装置と、タイヤのためのゴムを加硫する金型とを有するユニットであって、
ゴムのためのキャビティを形成する内壁と、
キャビティ内に開口し、圧力測定装置を収容するようになった穴とを有するユニットにおいて、圧力測定装置は、上述したような圧力測定装置であることを特徴とするユニットに関する。
【0015】
本発明の内容は、例示としてのみ与えられ、添付の図面を参照して行われる以下の説明から良好に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の圧力測定装置を有するタイヤゴムの塊を加硫する金型の断面図である。
【図2】図1に示す装置の側面図である。
【図3】図2の円で囲んだ部分の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、全体が符号10で示された生の自動車用タイヤブランクを加硫する金型を示している。図1に断面で示されているように、金型10は、回転軸線Xを中心として全体として環状の形をしている。この金型10は、材料、この場合、生のタイヤブランクを形成するゴム16を収容する開放内部キャビティ14を形成する内壁12を有している。
【0018】
この金型10は、キャビティ14内に開口し、ゴム16をその加硫中収容する穴18を有する。この穴18は、特にゴム16によりその加硫中に金型10の内壁12に及ぼされる圧力を測定する装置20を収容するよう設計されている(図2及び図3)。金型10と装置20は、ユニットを形成している。
【0019】
装置20は、プルーフ本体22を有している。伝統的に、測定されるべき圧力を受けるプルーフ本体22は、圧力を別の物理的量、例えば変形量、変位等に変換する。更に、装置20は、この物理的量に敏感であり、この検出された量を例えば測定圧力を表示する手段(図示せず)に伝送可能な電気信号に変換するよう設計された検出器(図示せず)を有している。
【0020】
装置20は、プルーフ本体22に機能的に取り付けられた変形可能な表面24を更に有している。好ましくは、プルーフ本体22は、変形可能な表面24の機械的変形量を検出器向きの電気信号に変換することができる圧電型要素を有する。変形例として、プルーフ本体は、歪ゲージ型要素を有する。
【0021】
装置20は、プルーフ本体22及び検出器を収容するボックス26を更に有し、ボックス26は、変形可能な表面24によって形成された少なくとも1つの端側部及び全体として円筒形の形をした側壁26Aを有している。表面24は、プルーフ本体22に機能的に取り付けられていて、圧力が表面24に及ぼされると、結果として生じるこの表面24の変形量がプルーフ本体22に伝えられるようになっている。
【0022】
更に、装置20は、測定されるべき圧力が及ぼされる圧力測定面28を有する。この測定面28は、プルーフ本体22に機能的に取り付けられている。したがって、装置20は、測定面28に及ぼされた圧力を変形可能な表面24に伝達するよう設計された剛性コンポーネント30を有する。
【0023】
この剛性コンポーネント30は、互いに反対側の端に位置する第1の側部32及び第2の側部34を有し、第1の側部32は、測定面28を形成し、第2の側部34は、装置20の変形可能な表面24と接触状態にある側部を形成する。この例では、剛性コンポーネント30は、その互いに反対側の端側部32,34を互いに連結する側壁36を備えた全体として円筒形の形をした本体を有する。
【0024】
好ましくは、剛性コンポーネント30は、加硫中における測定面28とゴム16を形成する材料のくっつきを回避するよう主としてポリエーテルエーテルケトン(PEEK)から成る材料で作られている。
【0025】
更に、この例では、コンポーネント30の第1の端側部32の面積は、変形可能な表面24の面積に等しい。場合によっては、変形例として、コンポーネント30の第1の端側部32の面積は、変形可能な表面24の面積とは異なっていても良く、この場合、装置20は、主として2つの面積の比に応じた補正係数を測定圧力に与える手段(図示せず)を有する。
【0026】
装置20は、回転軸線Yを中心とする全体として環状の形をしたプルーフ本体22とは機能的に別個であって、剛性コンポーネント30を収容する支持体38を更に有している。
【0027】
したがって、図2に示す例では、支持体38は、穴18の内壁44と相補的な形状の外面42を有し、この外面42は、穴18に嵌まり込むようになっている。図3に詳細に示されているように、装置20を穴18内に嵌め込むのを容易にするために支持体38の外面42と穴18の内壁44との間には隙間45が存在している。
【0028】
更に、この例では、外面42は、環状周辺位置決め肩46を有し、この肩は、穴18の内壁44に形成された相補形状の環状停止部48に当接するようになっている。更に、支持体38は、例えば金属材料で作られている。
【0029】
装置20は、支持体38と剛性コンポーネント30との間に半径方向に挿入された可撓性の物体又は質量体40を更に有する。
【0030】
具体的に説明すると、可撓性物体40は、コンポーネント30の第1の端側部32の輪郭及び測定面28の輪郭が可撓性物体40によって境界付けられるよう支持体38内に収容されている。
【0031】
さらに、可撓性物体40は、支持体38にくっつくと共に剛性コンポーネント30にくっついている。したがって、可撓性物体40は、剛性コンポーネント30の側壁36を包囲した全体として環状の形をしており、この可撓性物体は、剛性コンポーネント30の壁36にくっついた内側くっつき面50及び支持体38の内壁54にくっついた外側くっつき面52によって境界付けられている。可撓性物体40の外面52と内面50は、互いに反対側の第1の端側部56及び第2の端側部58によって互いに連結されている。第1の端側部56は、測定面28の輪郭を境界付け、第2の端側部58は、変形可能な表面24と接触状態にあるコンポーネント30の側部の輪郭を境界付けている。
【0032】
可撓性物体40にくっついている剛性コンポーネント30及び支持体38のそれぞれの各くっつき面50,52は、溝60及びカラー62を有する形式のものである。
【0033】
この例では、プルーフ本体22を収容したボックス26は、装置20を較正するためにナット70によって支持体38に取り付けられている。好ましくは、付着性を得るために、可撓性物体40は、例えば、射出によって剛性コンポーネント30及び支持体38上に複合成形される。剛性コンポーネント30は、有利には、旋削された鋼で作られるのが良い。例えば、可撓性物体40は、主としてシリコーン又はブチル系ゴムから成る材料で作られる。
【0034】
図2及び図3で理解できるように、装置20の取り付け面28は、穴18内に設けられると、金型10の内壁12と面一をなす。この構成では、ブランクに印を付ける恐れのある金型10の内壁12上への凹凸の形成を回避しながら装置20を金型10内に挿入することができる。
【0035】
次に、圧力測定装置の主要な動作上の観点について説明する。
【0036】
最初に、金型10の内部キャビティ14内に収容された生のブランクを形成するゴム16は、これが内壁12上を流れると共にこの内壁12と面一をなす測定面28上を流れることができるようにする状態にある。
【0037】
測定面28の輪郭は、最初に支持体38にくっつき、第2に剛性コンポーネント30にくっつく可撓性物体40によって画定されているので、可撓性物体40は、ゴム16が特に、装置20のプルーフ本体22に機能的に取り付けられているボックス26の外壁26Aに沿って流れるのを阻止する。
【0038】
ゴム16は、その加硫中、温度に応じて膨張し、ゴム16により金型10の内壁12に及ぼされる圧力が増大する。
【0039】
装置20の測定面28は、金型10の内壁12と面一をなしているので、ゴム16は、膨張するにつれて、同じ値の圧力をこの表面28及び壁12に及ぼす。
【0040】
このゴム16により測定面28に及ぼされた圧力は、剛性コンポーネント30を介して、プルーフ本体22に機能的に取り付けられている変形可能な表面24に伝えられる。事実、物体40は可撓性なので、剛性コンポーネント30は、物体40内で動くことができ、その第2の端側部34が変形可能な表面24に圧接することにより変形可能な表面24を変形させる。プルーフ本体22に機能的に取り付けられている変形可能な表面24は、その機械的変形量に関する情報をプルーフ本体22に伝え、このプルーフ本体は、この変形量を別の電気的な量、例えば検出器が敏感な電気的な量に変換する。伝統的に、検出器は、検出された物理的量を電気信号に変換する。
【0041】
ゴム16の残留物が、場合によっては、支持体38と穴18の内壁との間に形成された隙間45内を流れることがある。しかしながら、この場合、支持体38がプルーフ本体22から機能的に切り離されているので、ゴム残留物は、プルーフ本体22に機能的に取り付けられている装置20の要素には圧力が伝えられない状態で、圧力を支持体38に及ぼす。
【0042】
最後に、変形可能な表面24は、比較的脆い場合があるので、変形可能な表面24は、例えば硬化したタイヤブランクを取り出す際に金型10の内壁12上に生じる恐れのある機械的衝撃及び攻撃から保護される。というのは、表面24は、剛性コンポーネント38及び可撓性物体40によって金型の内部キャビティ14から分離されているからである。
【符号の説明】
【0043】
10 加硫用金型
12 内壁
14 内部キャビティ
16 ゴム
18 穴
20 圧力測定装置
22 プルーフ本体
24 変形可能な表面
26 ボックス
28 圧力測定面
30 剛性コンポーネント
32,34 端側部
38 支持体
40 可撓性物体
50,52 くっつき面
60 溝
62 カラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プルーフ本体(22)に機能的に取り付けられた圧力測定面(28)を有する圧力測定装置(20)において、
前記プルーフ本体(22)に機能的に取り付けられた剛性コンポーネント(30)を有し、前記測定面(28)は、前記剛性コンポーネント(30)の一表面を形成し、
前記プルーフ本体(22)とは機能的に別個であり、前記剛性コンポーネント(30)を収容する全体として環状の支持体(38)を有し、
前記支持体(38)と前記剛性コンポーネント(30)との間に半径方向に挿入された可撓性物体(40)を有し、前記測定面(28)の輪郭は、前記可撓性物体(40)によって境界付けられるようになっており、前記可撓性物体(40)は、前記支持体(38)にくっつくと共に前記剛性コンポーネント(30)にくっついている、
ことを特徴とする装置(20)。
【請求項2】
構成要素としての前記支持体(38)及び前記剛性コンポーネント(30)のうちの少なくとも一方は、溝(60)及びカラー(62)を有する形式の環状くっつき面(50,52)を有する、
請求項1に記載の装置(20)。
【請求項3】
前記剛性コンポーネント(30)は、互いに反対側の端に位置した第1の側部(32)及び第2の側部(34)を有し、前記第1の側部(32)は、前記測定面(28)を形成し、前記第2の側部(34)は、前記プルーフ本体(22)に機能的に取り付けられた変形可能な表面(24)と接触関係をなす側部を形成する、
請求項1又は2に記載の装置(20)。
【請求項4】
前記コンポーネント(30)の前記第1の端側部(32)の面積は、前記変形可能な表面(24)の面積に等しい、
請求項3に記載の装置(20)。
【請求項5】
前記可撓性物体(40)は、前記剛性コンポーネント(30)及び前記支持体(38)上に複合成形されている、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置(20)。
【請求項6】
前記剛性コンポーネント(30)は、変形不能な材料で作られ、例えば、主としてポリエーテルエーテルケトン(PEEK)から成る、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置(20)。
【請求項7】
前記可撓性物体(40)は、主としてシリコーン又はブチル系ゴムから成る材料で作られている、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の装置(20)。
【請求項8】
前記プルーフ本体(22)は、圧電型又は歪ゲージ型のものである、
請求項1〜7のいずれか1項に記載の装置(20)。
【請求項9】
前記支持体(38)は、圧力が測定されるべき材料を収容するキャビティ(14)内に開口した金型(10)の穴(18)内に嵌まり込むよう設計された外面を有する、
請求項1〜8のいずれか1項に記載の装置(20)。
【請求項10】
圧力測定装置と、タイヤのためのゴム(16)を加硫する金型(10)とを有するユニットであって、
前記ゴム(16)のためのキャビティ(14)を形成する内壁(12)と、
前記キャビティ(14)内に開口し、前記装置(20)を収容するようになった穴(18)とを有するユニットにおいて、前記装置は、請求項1〜9のいずれか1項に記載の装置である、
ことを特徴とするユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−8417(P2010−8417A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−151125(P2009−151125)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(599093568)ソシエテ ド テクノロジー ミシュラン (552)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【Fターム(参考)】