説明

圧着ツール保護シートの送り方法及び装置

【課題】保護シートのセット時のセット状態に関わり無く、保護シートが切れる恐れがなく、かつ保護シートが切れたり外れたりしたとき直ちに検知してトラブルの発生を未然に防止でき、コンパクトな構成にて作業性良く安定した動作を確保する。
【解決手段】保護シートの送り経路を圧着ツールに接触した圧着動作位置から圧着ツールと離間したシート送り位置に切り替える工程と、送り経路の切り替えによる送り経路長の伸縮をテンションローラの昇降動作によって吸収するテンション機構部を通して保護シートを所定長送る工程と、送り経路を圧着動作位置に切り替える工程とを有する保護シートの送り方法において、送り経路をシート送り位置に切り替える工程に先立って、保護シートの送り時にテンションローラを位置させる送り原点位置より上方に設定された切替原点位置にテンションローラを位置決めする工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ACF(異方性導電材フィルム)テープなどの粘着テープやIC部品やその他各種部品等を圧着ツールにて加圧して基板に圧着する圧着装置において、圧着ツールと粘着テープや部品等の間に配置される保護シートの送り方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルやPDP(Plasma Display Panel)に代表されるディスプレイパネルなどの基板に部品を実装する方法として、ACFテープなどの粘着材層を支持テープに支持させた粘着テープを基板に貼り付けた後、その支持テープを剥離して基板にACFなどの粘着材層を設け、その粘着材層の上に、例えばTCP(Tape Carrier Package)、IC、COF(Chip on Film)、薄型LSIパッケージ部品等の部品を仮圧着した後、熱と圧力を加えて本圧着することで、基板に部品を実装する方法が知られている。
【0003】
この部品実装方法における粘着材層の貼付けに使用される粘着テープ貼付装置として、テープ供給装置にてリールに巻回された粘着テープを引き出して供給し、圧着装置の手前で粘着テープの粘着材層のみを所定の長さに切断した後粘着テープを圧着ツールと受け台上に載置された基板の間に送り、圧着ツールにて粘着テープを加圧して所定長さに切断された粘着材層を基板に貼り付け、その後支持テープを貼り付けた粘着材層から剥離して支持テープを回収するとともに、次の粘着テープの供給を行うという動作を繰り返すように構成したものが知られている。
【0004】
この種の粘着テープ貼付装置においては、圧着動作を繰り返す間に圧着ツールの圧着面に粘着材の微細片やダストが付着すると、粘着テープを全体に均一に加圧することができなくなり、圧着品質の低下を来たすことになる。特に、基板が大型化して圧着ツールが長くなるとその恐れが大きくなる。この問題を解消するには、圧着ツールを度々交換する必要があるが、圧着ツールの交換には手間がかかり、特に高い精度で平面度及び平行度を確保する必要があるため、その調整に多大な時間を要し、生産性を著しく低下させるという問題がある。また、ダスト等の付着の恐れがなくても、基板が大きくなると、長尺の圧着ツールの全長にわたって精度良く平面度を確保することも困難となり、このことによっても粘着テープを全体に均一に加圧することが困難になるという問題がある。
【0005】
このような問題を解消するため、ダスト等の付着を防止する保護シート、若しくは平行度の誤差を吸収するクッション性を備えた保護シート、又はその両機能を奏する1又は複数の保護シートを圧着ツールと粘着テープとの間に配置した状態で圧着動作を行い、その圧着動作が予め設定された回数になると、保護シートを所定量、すなわち保護シートの未使用部分が圧着ツールと対向するように送るようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−198197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1では、圧着動作を行う度に保護テープを圧着ツールから離間させるように構成されている。しかし、保護シートを圧着ツールから離間させると冷却し、次の圧着動作時に圧着ツールに冷却した保護シートが接触するためにその温度が変化し、かつ保護シートを所定温度まで加熱させるのにも時間を要するため、高精度の温度制御が必要な圧着工程における高速化を阻害することになる。
【0007】
そこで、高速でかつ安定して高い信頼性をもって圧着するため、保護シートを圧着ツールに接触させたまま圧着動作を繰り返し、保護シートの使用限界回数に達すると、保護シートを圧着ツールから離間させて保護シートを所定量送り、その後保護シートを圧着ツールに接触させて圧着動作を繰り返すように構成することが考えられている。
【0008】
ところが、保護シートを圧着ツールに接触させたまま圧着動作を繰り返すと、保護シートの一部が圧着ツールに貼り付いて外れにくくなり、保護シートの送り経路の圧着ツールに対向する部分を圧着ツールから離間動作させても、離間動作距離が、例えば20mm程度と小さく設定されていた場合には、保護シートが圧着ツールから確実に外れないことがある。そのため、離間動作距離を、例えば30mm程度と大きく設定する必要が生じてきた。
【0009】
しかし、保護シートの送り経路を圧着ツールに接触する位置と離間した位置との間で切替えた時の送り経路長の変化をテンションローラの昇降動作で吸収するようにした構成においては、送り経路と圧着ツールとの離間距離を大きくすると、コンパクトな構成とするためテンションローラの動作範囲を大きく設定しなかった場合、保護テープをセットする際のテンションローラのセット位置によっては、テンションローラがその動作範囲を超えてしまい、離間動作によって保護シートが切れる恐れがあるという問題がある。
【0010】
また、圧着ツールとの離間距離が大きくなると、接触・離間動作時にシートが送り経路から外れたりする恐れも発生するが、上記のように保護シートが切れたり、送り経路から外れたりした場合に検知できる構成でないと、そのまま送り動作を行ってトラブルを発生したり、テンションローラが動作リミットを越えるエラーが発生したりするという問題を生じることになる。
【0011】
本発明は、上記従来の問題に鑑み、保護シートのセット時のセット状態に関わり無く、保護シートが切れる恐れがなく、かつ保護シートが切れたり外れたりしたとき直ちに検知してトラブルの発生を未然に防止でき、コンパクトな構成にて作業性良く安定した動作を確保することができる圧着ツール保護シートの送り方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の圧着ツール保護シートの送り方法は、保護シートの送り経路を圧着ツールに接触した圧着動作位置から圧着ツールと離間したシート送り位置に切り替える工程と、送り経路の切り替えによる送り経路長の伸縮をテンションローラの昇降動作によって吸収するテンション機構部を通して保護シートを所定長送る工程と、送り経路を圧着動作位置に切り替える工程とを有する保護シートの送り方法において、送り経路をシート送り位置に切り替える工程に先立って、保護シートの送り時にテンションローラを位置させる送り原点位置より上方に設定された切替原点位置にテンションローラを位置決めする工程を有するものである。
【0013】
この構成によれば、保護シートの送り原点位置とは別にその上方の適切な位置に保護シートの送り経路を圧着動作位置からシート送り位置へ切り替えるための切替原点位置を設け、シート送り位置への切り替えに先立ってその切替原点位置にテンションローラを位置決めするようにしていることで、保護シートのセット時のセット状態に関わり無く、送り経路を圧着動作位置から離間距離の大きいシート送り位置に切り替えて、保護シートが圧着ツールからの離間時に圧着ツールからの保護シートの剥離状態によって保護シートが伸びる場合であっても、テンションローラがその動作範囲を越えるなどして保護シートが切れたと誤検出する恐れが無く、また送り経路を圧着動作位置とシート送り位置とに切り替え時に、保護シートが圧着ツールに貼り付いたままとなる場合、その状態で保護シートを送ることで保護シートが切れたり、保護シートが送り経路から外れたりすると、保護シートを巻き取るシート巻取方向へのシート送り中にテンションローラが送り原点位置に下降し、かつ保護シートを供給する供給側で送り量を検知する送り検知が停止することで直ちに検知してトラブルの発生を未然に防止できるので、テンションローラの動作範囲の小さいコンパクトな構成にて、また保護シートを特に注意を払うことなく簡単な作業にてセットするだけで安定した送り動作を確保することができる。
【0014】
また、保護シートの送りは巻取リールにて保護シートを巻き取って行うものであって、保護シートの送り経路をシート送り位置に切り替えた後、その保護シートの送り時に、テンションローラが送り原点位置に位置するまで巻取リールから保護シートを巻き出す方向に巻取リールを逆転させ、その後保護シートを供給する供給側で供給可能とするとともに供給側で送り量を検知しつつ巻取リールに保護シートを巻き取る方向に巻取リールを正転させて保護シートを送り、保護シートの送り量が所定長になると保護シートの供給を停止し、その後テンションローラが切替原点位置より上方に設定された送り停止位置まで上昇すると巻取リールを停止し、その後送り経路を圧着動作位置に切り替えるのが好適である。これにより、巻取リールに保護シートを巻き取る方向への保護シートの送り開始時にテンションローラを下限の送り原点位置に位置させることで、送り動作中のテンションローラ位置が安定して安定した送り動作を確保できるとともに、供給側で送り量を検知しつつ巻取リールの回転によって送ることで圧着ツールと保護シートの離間時に保護シートの伸びがあっても、その影響を受けずに送り量精度の高い送りを実現できる。
【0015】
また、テンションローラの送り停止位置と切替原点位置を共通の位置とすると、テンションローラが切替原点位置に位置することを検知するセンサを設ける必要がなくなり、コスト低下を図りつつ、同様の作用効果を奏することができる。
【0016】
また、本発明の圧着ツール保護シートの送り装置は、保護シートを供給・停止可能なシート供給部と、圧着ツールに接触した圧着動作位置と離間したシート送り位置との間で送り経路を切り替え可能な送り経路切替部と、送り経路の切り替えによる送り経路長の伸縮をテンションローラの昇降動作によって吸収しかつテンションローラの位置を検出可能なテンション機構部と、正逆回転駆動可能な巻取リールにて保護シートを巻き取るシート巻取部と、シート供給部と送り経路切替部とシート巻取部の動作制御を行う制御部とを備え、制御部は、送り経路切替部をシート送り位置に切り替えるのに先立って、シート巻取部にて必要に応じ、巻取リールを正逆回転させ、テンションローラをシート送り時に位置させる送り原点位置より上方に設定された切替原点位置にテンションローラを位置決めするものである。
【0017】
この構成によれば、上記のようにテンションローラの動作範囲の小さいコンパクトな構成にて、また簡単な作業にて特に注意を払うことなく保護シートをセットするだけで安定した送り動作を確保することができる。
【0018】
また、シート供給部は保護シートの送り量を検出する送り量検知手段を備え、テンション機構部は送り原点位置と切替原点位置と、シート巻取部による巻取動作を停止する送り停止位置とでテンションローラを検出するセンサを備え、制御部は、シート送りの際に、送り経路切替部をシート送り位置に切り替えた後、シート巻取部でテンションローラが送り原点位置に位置するまで巻取リールから保護シートを巻き出す方向に巻取リールを逆転させ、その後シート供給部を供給可能とするとともにシート巻取部で巻取リールに保護シートを巻き取る方向に巻取リールを正転させ、送り量検知手段により検知した保護シートの送り量が所定値になるとシート供給部を供給停止とし、その後テンションローラが切替原点位置より上方に設定された送り停止位置まで上昇すると巻取リールを停止し、その後送り経路切替部を圧着動作位置に切り替える。このことにより、送り動作中のテンションローラ位置が安定した送り動作を確保できるとともに、供給側で送り量を検知しつつ巻取リールの回転による巻取り動作にて保護シートを送ることで保護シートに伸びがあっても、その影響を受けずに送り量精度の高い送りを実現できる。
【0019】
また、テンションローラの送り停止位置と切替原点位置を共通の位置として共通のセンサにて検出するようにすると、コスト低下を図りつつ、同様の作用効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の圧着ツール保護シートの送り方法及び装置によれば、送り原点位置とは別にその上方の適切な位置に切替原点位置を設け、シート送り位置への切り替えに先立ってその切替原点位置にテンションローラを位置決めすることで、送り経路を圧着動作位置から離間距離の大きいシート送り位置に切り替えて保護シートが圧着ツールから離間する時に圧着ツールからの保護シートの剥離状態によって保護シートが伸びた場合であっても、テンションローラがその動作範囲を越えて保護シートが切れたと誤認識する恐れが無く、また送り経路を圧着動作位置からシート送り位置へ切り替えて保護シートを送るときに、保護シートが切れたり、送り経路から外れたりすると、直ちに検知してトラブルの発生を未然に防止できるので、テンションローラの動作範囲の小さいコンパクトな構成にて、また保護シートを特に注意を払うことなく簡単な作業にてセットするだけで安定した送り動作を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の圧着ツール保護シートの送り方法及び装置の実施形態について、図1〜図12を参照して説明する。
【0022】
本実施形態の保護シート送り装置1は、図1に示すように、圧着ツール2を備えた圧着装置(図示せず)に装備されている。圧着装置は、圧着ツール2の下方に基板の圧着部位を支持する下受け部(図示せず)が配置され、シリンダ装置などのヘッド昇降装置(図示せず)にて下受け部に向けて圧着ツール2を昇降・加圧し、かつテープ供給装置(図示せず)にて圧着ツール2と基板の間に貼り付けるべき粘着テープ(ACF)を供給するように構成され、その粘着テープと圧着ツール2との間に保護テープ3を供給するように保護シート送り装置1が構成されている。
【0023】
保護シート送り装置1は、保護シート3を供給・停止可能に供給するシート供給部4と、保護シート3の送り経路を圧着ツール2に接触した圧着動作位置Pと離間したシート送り位置Sとの間で送り経路を切り替え可能な送り経路切替部5と、送り経路の切り替えによる送り経路長の伸縮をテンションローラ7の昇降動作によって吸収するとともに保護シート3を張設する張力を付与するテンション機構部6と、正逆回転駆動可能な巻取リール9にて巻き取るシート巻取部8とを備えている。これらシート供給部4と送り経路切替部5とシート巻取部8は、制御部10にて動作制御される。
【0024】
シート供給部4は、保護シート3を巻回した供給リール11が回転自在に配置され、かつ供給リール11の回転を開放可能に停止させる制動手段12が配設され、この制動手段12が制御部10にて駆動制御される。また、供給する保護シート3の送り量を検知する送り量検知手段13が設けられている。送り量検知手段13は、カウンタ付きローラ13aとピンチローラ13bとを備え、それらの間に保護シート3を通し、保護シート3の送りに伴うカウンタ付きローラ13aの回転角を検出して送り量を検知するように構成され、その検知信号が制御部10に入力されている。
【0025】
送り経路切替部5は、圧着ツール2の長手方向両側に配設された昇降体14a、14bと、両昇降体14a、14bをそれぞれ上下駆動する上下駆動手段15a、15bとを備え、両昇降体14a、14bにそれぞれ、保護シート3の送り経路を構成するガイドローラ16aと17a、16bと17bが配設され、ガイドローラ16a、16b間で保護シート3が圧着ツール2の下端面に平行に張設されている。上下駆動手段15a、15bにて昇降体14a、14bの上下位置を切り替えることで、保護シート3の送り経路が圧着ツール2に接触した圧着動作位置Pと離間したシート送り位置Sとの間で切り替えられる。上下駆動手段15a、15bは制御部10にて駆動制御される。
【0026】
テンション機構部6は、テンションローラ7を垂直な昇降ガイド18に沿って昇降自在に支持されるとともに、その上部両側にガイドローラ19a、19bが配設され、保護テープ3が、ガイドローラ19a、テンションローラ7、ガイドローラ19bの順にU字状ないしV字状に巻き掛けられ、テンションローラ7に重力による付勢力が作用されていることで保護テープ3に張力が付与されている。
【0027】
そして、保護テープ3の送り時にテンションローラ7を位置させる下限の送り原点位置(ORG2)にテンションローラ7が位置することを検知する送り原点位置センサ21と、送り経路切替部5をシート送り位置Sに切り替える前にテンションローラ7を位置させる切替原点位置(ORG1)にテンションローラ7が位置することを検知する切替原点位置センサ22と、シート巻取部8による巻取動作を停止する送り停止位置(STOP)にテンションローラ7が位置することを検知する送り停止位置センサ23と、テンションローラ7の移動範囲の上限位置(リミット)にテンションローラ7が位置することを検知する上限位置センサ24とが配設されている。切替原点位置(ORG1)は送り原点位置(ORG2)より適当距離上方に設定され、その上方位置に送り停止位置(STOP)が設定されている。
【0028】
また、テンション機構部6には、保護テープ送り方向上手側位置すなわちガイドローラ19aと送り経路切替部5の昇降体14bとの間に、上下に間隔をあけて一対のガイドローラ25a、25bが配設され、それらの間に保護テープ3を挟持して固定するシートチャック26が配設されている。シートチャック26は制御部10にて駆動制御される。
【0029】
シート巻取部8は、巻取リール9を巻取モータ27にて正逆回転駆動するように構成されるとともに、巻取リール9の回転を開放可能に停止させる制動手段28が配設され、巻取モータ27と制動手段28が制御部10にて駆動制御される。なお、制動手段28は巻取モータ27と別体としても良く、巻取モータ27のモータブレーキ機構を使用しても良い。
【0030】
次に、以上の構成の保護シート送り装置1において、制御部10による保護シート3の送り動作制御と、その動作状態を、図2、図3のフロー図と、図4〜図9の動作説明図を参照して説明する。
【0031】
圧着ツール2に保護シート3を接触させた状態で、圧着ツール2にて所定回数又は所定時間圧着工程を繰り返すと、保護シート3のそれまで使用していた部分を送って未使用部分を圧着ツール2に接触させる送り動作を実施する。保護シート3を送る際には、保護シート3を圧着ツール2に接触した圧着動作位置Pからシート送り位置Sに離間させるように送り経路の切替を行うが、本実施形態ではそれに先立って、まずテンションローラ7が切替原点位置(ORG1)に位置するか否かを判定し(ステップS1)、切替原点位置(ORG1)に位置していない場合には切替原点位置(ORG1)に位置決めする工程を行う(ステップS2)。
【0032】
この切替原点位置(ORG1)への位置決め工程(ステップS2)においては、図3のフロー図、及び図4に示すように、まず巻取リール9の制動手段28を開き(ステップS21)、巻取リール9から保護シート3を巻き出す方向に巻取モータ27を逆転駆動しつつ(ステップS22)、テンションローラ7が切替原点位置(ORG1)に位置したか否かと、送り原点位置(ORG2)に位置したか否かを順次判定する(ステップS23、ステップS24)。ステップS23の判定で、切替原点位置(ORG1)に位置すると、ステップS27に移行して巻取モータ28を停止する。一方、切替原点位置(ORG1)に位置せずに送り原点位置(ORG2)まで下降すると、巻取モータ27を逆転駆動から正転駆動に切り替え(ステップS25)、正転駆動しつつ切替原点位置(ORG1)に位置するか否かを判定し(ステップS26)、切替原点位置(ORG1)に位置すると、巻取モータ28を停止する(ステップS27)。巻取モータ28を停止した後、巻取リール9の制動手段28を閉じることで(ステップS28)、切替原点位置(ORG1)への位置決め工程が完了し(ステップS29)、ステップS1にリターンする。
【0033】
なお、ここでは、図10(a)に示すように、ステップS23にて先に切替原点位置(ORG1)に位置したかの判定を行うとしたが、ステップS23での判定を行わず、図10(b)に示すように、送り原点位置(ORG2)に位置したかの判定(ステップS24)の後に、切替原点位置(ORG1)に位置したかの判定を行う(ステップS26)ようにしても良い。そうした場合は、切替原点位置(ORG1)の検出が常に送り原点位置(ORG2)からの一定方向からの検出となるため、検出精度をより向上させることができる。なお、図10(a)、(b)において、7aはテンションローラ7を各センサにて検出されるようにテンションローラ7に設けられた検出ドグであり、各センサは検出ドグ7aの端縁を検出することで、テンションローラ7の位置を検出する。さらに、図10(a)、(b)とは逆に、テンションローラ7を一旦送り停止位置(STOP)まで上昇させた後下降させ、切替原点位置(ORG1)の検出を常に送り停止位置(STOP)からの一定方向からの検出となるようにしても良い。
【0034】
こうしてテンションローラ7を切替原点位置(ORG1)に確実に位置させた後、図5に示すように、シートチャック26を開き(ステップS3)、上下駆動手段15a、15bにて昇降体14a、14bを下降させ、ガイドローラ16a、16b間の送り経路にある保護シート3を圧着ツール2の下方に距離Lだけ離間させる(ステップS4)。本実施形態では、この距離Lを、従来20mmであったものを30mmに増大して設定している。また、このガイドローラ16a、16b間の送り経路の離間動作に伴って、テンションローラ7は、切替原点位置(ORG1)から上方に移動する。この送り経路の離間動作の際の動作開始前に必ずテンションローラ7を切替原点位置(ORG1)に位置させるので、保護シート3の送り時にテンションローラ7の可動範囲の下限位置である送り原点位置(ORG2)より上方に位置し、かつテンションローラ7の可動範囲の上限位置(リミット)とは十分な距離で下方に位置しているので、テンションローラ7の可動範囲を特に大きく設定することなく、離間距離Lを大きく設定しても、テンションローラ7が可動範囲の上限位置(リミット)を超えてエラー状態になったり、保護テープ3が切れたりすることはない。また、この離間動作時に保護テープ3が万一切れた場合には、テンションローラ7が下降して送り原点位置(ORG2)に位置するため直ちに検知することができ、その時点で対策を行うことができ、検知できずに送り動作に移行して簡易な対策の困難なトラブル状態になるのを未然に防止することができる。
【0035】
次に、図6に示すように、巻取リール9の制動手段28を開き(ステップS5)、巻取リール9から保護シート3を巻き出す方向に巻取モータ27を逆転駆動しつつ(ステップS6)、テンションローラ7が送り原点位置(ORG2)に位置したか否かを判定し(ステップS7)、テンションローラ7が送り原点位置(ORG2)に位置すると、巻取モータ27の逆転駆動を停止する(ステップS8)。次に、図7に示すように、供給リール11の制動手段12を開き(ステップS9)、送り量検知手段13にて送り量を検知しつつ、巻取リール9に保護シート3を巻き取る方向に巻取モータ27を正転駆動して保護シート3を送りつつ(ステップS10)、送り量検知手段13にて送り量を検知し、送り量が設定送り量になったか否かの判定を行う(ステップS11)。
【0036】
送り量が設定量になると、図8に示すように、供給リール11の制動手段12を閉じる(ステップS12)。すると、保護シートプ3の送りが停止し、巻取モータ27の巻取リール9に保護シート3を巻き取る方向への正転駆動に伴ってテンションローラ7が上昇する。次に、テンションローラ7が送り停止位置(STOP)に位置したか否かの判定を行い(ステップS13)、送り停止位置(STOP)まで上昇すると巻取リール9に保護シート3を巻き取る方向への巻取モータ27の正転駆動を停止した後(ステップS14)、巻取リール9の制動手段28を矢印で示したように閉じる(ステップS15)。
【0037】
次に、図9に示すように、上下駆動手段15a、15bにて昇降体14a、14bを上昇させ、ガイドローラ16a、16b間の送り経路にある保護シート3を圧着ツール2に接触させる(ステップS16)。このとき、送り経路の経路長が短くなる分、テンションローラ7が、送り停止位置(STOP)から下降し、基本的には切替原点位置(ORG1)に位置する。その後、シートチャック26を閉じて保護シート3を圧着ツール2に接触した状態で固定保持する(ステップS17)。
【0038】
なお、保護シート3に伸びが発生した場合には、上記のようにテンションローラ7が切替原点位置(ORG1)に位置するとは限らないので、保護テープ3を新たにセットしたとき以外は、この時点で次にテンションローラ7が切替原点位置(ORG1)に位置するか否かのステップS1の判定を行っておき、切替原点位置(ORG1)に位置しない場合には、次に保護シート3の送り動作を行うための圧着ツール2からの保護シート3の離間動作前に、上記ステップS2の工程を行うようにするのが好ましい。
【0039】
本実施形態によれば、テンションローラ7の動作範囲の下限に設定した送り原点位置(ORG2)とは別にその上方の適切な位置に切替原点位置(ORG1)を設け、保護シート3の送り経路をシート送り位置に切り替えるのに先立って、テンションローラ7を切替原点位置(ORG1)に位置決めするようにしていることで、保護シート3のセット時のセット状態に関わり無く、保護シート3の送り経路を圧着ツール2に接触した圧着動作位置から離間距離の大きいシート送り位置に切り替えて、保護シート3の圧着ツール2からの離間時に圧着ツール2からの保護シート3の剥離状態によって保護シート3が伸びる場合であっても、テンションローラ7がその動作範囲を越えるなどして保護シート3が切れたと誤検出する恐れが無い。
【0040】
また、切替原点位置(ORG1)を送り原点位置(ORG2)の上方の適切な位置に設けているので、保護シート3の送り経路を圧着動作位置からシート送り位置に切り替えたときに、保護シート3が圧着ツール2に貼り付いたままとなる場合、その状態で保護シート3を送ることで保護シート3が切れたり、保護シートが送り経路から外れたりすると、保護シート3を巻き取るシート巻取り方向へのシート送り中にテンションローラ7が送り原点位置(ORG2)に下降し、かつ保護シート3を供給する供給側でシート送り量を検知する送り検知手段13の送り検知が停止することで直ちに検知することができ、検知できずに送り動作を継続することで発生するトラブルを未然に防止することができる。したがって、テンションローラ7の動作範囲の小さいコンパクトな構成にて、また保護シート3を特に注意を払うことなく簡単にセットするだけで、安定した送り動作を確保することができる。
【0041】
また、保護シート3の送り時に、テンションローラ7を下限の送り原点位置(ORG2)に位置させた状態で、供給側で送り量を検知しつつ巻取リール9の回転によって送ることで、圧着ツール2と保護シート3の間で保護シート3に伸びが生じたとしても精度の高い送り量制御を実現できる。また、所定の送り量になると、供給リール11からの供給を停止してテンションローラ7を送り停止位置(STOP)まで上昇させてから巻取リール9を停止し、その後保護シート3の送り経路を圧着動作位置Pに切り替えることで、テンションローラ7が切替原点位置(ORG1)またはその近傍に下降し、保護シート3を適当な張力が作用して張設された状態とすることができる。
【0042】
以上の実施形態では、切替原点位置(ORG1)を、送り原点位置(ORG2)及び送り停止位置(STOP)とは別に、それらの間に設けた例を示したが、場合によっては、図11に示すように、切替原点位置(ORG1)を送り停止位置(STOP)と共通の位置とし、切替原点位置センサ22を送り停止位置センサ23にて兼用するようにしても良い。
【0043】
図11において、図11(a)に示すように、送り経路を圧着動作位置に切り替えることで、テンションローラ7は破線で示す送り停止位置(STOP)で停止した位置から下方に移動し、実線で示す位置で保護シート3が固定保持され、その状態で圧着動作が繰り返される。次に、圧着動作を所定回数又は所定時間繰り返した後、保護シート3を送る際に、その送り動作に先立って、保護シート3を圧着ツール2より離間する前に、図11(b)に示すように、テンションローラ7を送り停止位置(STOP(ORG1))に位置させた後、送り経路を圧着動作位置Pからシート送り位置Sに切り替え切り替える。このとき、テンションローラ7は送り停止位置(STOP(ORG1))の上方に移動した状態となる。次に、図11(c)に示すように、まず破線の如く巻取リール9から保護シート3を巻き出す方向に巻取リール9を逆転させて、テンションローラ7を送り停止位置(STOP(ORG1))から送り原点位置(ORG2)に位置させた後、供給リール11の制動を開放して実線の如く巻取リール9に保護シート3を巻き取る方向に巻取リール9を正転させることで保護シート3を所定の送り量だけ送る動作を行う。所定の送り量だけ送られると、供給リール11を制動することで、図11(d)に示すように、テンションローラ7が上昇し、送り停止位置(STOP(ORG1))に位置した時点で、巻取リール9を停止し、巻取リール9を制動手段28にて制動する。その後、図11(a)に戻って送り経路が圧着動作位置Pに切り替えられて圧着動作が繰り返される。
【0044】
なお、図11(a)のように、送り経路を圧着動作位置に切り替えたときに、テンションローラ7が送り停止位置(STOP)で停止した状態から下降するが、その際のテンションローラ7の位置が低くすぎると、テンションローラ7が送り原点位置(ORG2)の送り原点位置センサ21で検知され、保護シート3の切れや外れと誤検知される可能性も考えられる。そこで、図12(a)(図11(a)と同じ)、図12(b)に示すように、テンションローラ7が送り停止位置(STOP)まで上昇し、テンションローラ7に設けられ、伴に昇降動作するドグ7aが破線で示す位置で送り停止位置センサ23で検知された時点で、タイマーを作動させ、所定距離Dだけ上昇動作をオーバーランさせた後、巻取リール9を停止させるようにするのが好ましい。こうすることで、その後送り経路を圧着動作位置に切り替えても、ドグ7aが送り原点位置センサ21にて検知されてしまう恐れを解消することができ、よりコンパクトなテンション機構部とすることができる。
【0045】
このようにテンションローラ7の送り停止位置(STOP)と切替原点位置(ORG1)を共通の位置とすることで、テンションローラ7が切替原点位置(ORG1)に位置することを検知する独立したセンサを設ける必要がなくなり、コスト低下を図りつつ、同様の作用効果を奏することができる。
【0046】
以上の実施形態では、保護シート3の送りを巻取リール9にて保護シート3を巻き取ることによって行う例を示したが、保護シート3の逆戻し動作に悪影響がなければ、保護シート3の送りに巻取リール9を用いず、ピンチローラと送りローラ(図示せず)にて保護シート3を送っても良く、その場合保護シート3を巻き取らずに垂れ流して廃棄ボックス(図示せず)に回収しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の圧着ツール保護シートの送り方法及び装置によれば、保護シートを適当にセットして送り経路を圧着動作位置からシート送り位置に切り替えてもシート切れを発生する恐れが無く、また保護シートの送り動作時に保護シートが切れたり、送り経路から外れたりすると、直ちに検知してトラブルの発生を未然に防止できるので、基板に各種部品等を圧着する部品実装装置に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態の保護シート送り装置の概略構成図。
【図2】同実施形態の動作制御のフロー図。
【図3】同実施形態の切替原点位置をサーチする動作制御のフロー図。
【図4】(a)は切替原点位置のサーチ動作の説明図、(b)は同要部説明図。
【図5】(a)はシート送り位置への離間動作の説明図、(b)は同要部説明図。
【図6】(a)は送り原点位置への移動動作の説明図、(b)は同要部説明図。
【図7】(a)は保護シートの送り動作の説明図、(b)は同要部説明図。
【図8】(a)は送り停止動作の説明図、(b)は同要部説明図。
【図9】(a)は圧着動作位置への移動動作の説明図、(b)は同要部説明図。
【図10】(a)は図4の切替原点位置のサーチ動作における詳細説明図、(b)は他のサーチ動作の詳細説明図。
【図11】本発明の他の実施形態における動作工程の説明図。
【図12】(a)は同実施形態における送り停止動作から圧着動作位置への移動動作の説明図、(b)は同要部説明図。
【符号の説明】
【0049】
1 保護シート送り装置
2 圧着ツール
3 保護シート
4 シート供給部
5 送り経路切替部
6 テンション機構部
7 テンションローラ
8 シート巻取部
9 巻取リール
10 制御部
13 送り量検知手段
21 切替原点位置センサ
22 送り原点位置センサ
23 送り停止位置センサ
P 圧着動作位置
S シート送り位置
ORG1 切替原点位置
ORG2 送り原点位置
STOP 送り停止位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護シートの送り経路を圧着ツールに接触した圧着動作位置から圧着ツールと離間したシート送り位置に切り替える工程と、送り経路の切り替えによる送り経路長の伸縮をテンションローラの昇降動作によって吸収するテンション機構部を通して保護シートを所定長送る工程と、送り経路を圧着動作位置に切り替える工程とを有する保護シートの送り方法において、送り経路をシート送り位置に切り替える工程に先立って、保護シートの送り時にテンションローラを位置させる送り原点位置より上方に設定された切替原点位置にテンションローラを位置決めする工程を有することを特徴とする圧着ツール保護シートの送り方法。
【請求項2】
保護シートの送りは巻取リールにて保護シートを巻き取って行うものであって、保護シートの送り経路をシート送り位置に切り替えた後、その保護シートの送り時に、テンションローラが送り原点位置に位置するまで巻取リールから保護シートを巻き出す方向に巻取リールを逆転させ、その後保護シートを供給する供給側で供給可能とするとともに供給側で送り量を検知しつつ巻取リールに保護シートを巻き取る方向に巻取リールを正転させて保護シートを送り、保護シートの送り量が所定長になると保護シートの供給を停止し、その後テンションローラが切替原点位置より上方に設定された送り停止位置まで上昇すると巻取リールを停止し、その後送り経路を圧着動作位置に切り替えることを特徴とする請求項1記載の圧着ツール保護シートの送り方法。
【請求項3】
テンションローラの送り停止位置と切替原点位置を共通の位置とすることを特徴とする請求項2記載の圧着ツール保護シートの送り方法。
【請求項4】
保護シートを供給・停止可能なシート供給部と、圧着ツールに接触した圧着動作位置と離間したシート送り位置との間で送り経路を切り替え可能な送り経路切替部と、送り経路の切り替えによる送り経路長の伸縮をテンションローラの昇降動作によって吸収しかつテンションローラの位置を検出可能なテンション機構部と、正逆回転駆動可能な巻取リールにて保護シートを巻き取るシート巻取部と、シート供給部と送り経路切替部とシート巻取部の動作制御を行う制御部とを備え、制御部は、送り経路切替部をシート送り位置に切り替えるのに先立って、シート巻取部にて必要に応じ、巻取リールを正逆回転させ、テンションローラをシート送り時に位置させる送り原点位置より上方に設定された切替原点位置にテンションローラを位置決めすることを特徴とする圧着ツール保護シートの送り装置。
【請求項5】
シート供給部は保護シートの送り量を検出する送り量検知手段を備え、テンション機構部は送り原点位置と切替原点位置と、シート巻取部による巻取動作を停止する送り停止位置とでテンションローラを検出するセンサを備え、制御部は、シート送りの際に、送り経路切替部をシート送り位置に切り替えた後、シート巻取部でテンションローラが送り原点位置に位置するまで巻取リールから保護シートを巻き出す方向に巻取リールを逆転させ、その後シート供給部を供給可能とするとともにシート巻取部で巻取リールに保護シートを巻き取る方向に巻取リールを正転させ、送り量検知手段により検知した保護シートの送り量が所定値になるとシート供給部を供給停止とし、その後テンションローラが切替原点位置より上方に設定された送り停止位置まで上昇すると巻取リールを停止し、その後送り経路切替部を圧着動作位置に切り替えることを特徴とする請求項4記載の圧着ツール保護シートの送り装置。
【請求項6】
テンションローラの送り停止位置と切替原点位置を共通の位置として共通のセンサにて検出するようにしたことを特徴とする請求項4又は5記載の圧着ツール保護シートの送り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−132478(P2009−132478A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−308050(P2007−308050)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】