説明

圧縮成形システム

【課題】 合成樹脂供給装置(6)における切断・保持手段(38、138)から離脱して落下せしめられる合成樹脂(84、184)を圧縮成形装置(2)における成形金型手段(12、112)の所要部位に充分精密に位置せしめることができる圧縮成形システムを提供する。
【解決手段】 切断・保持手段の回転中心を圧縮成形装置における成形金型手段の円形軌跡(14、114)の中心と実質上合致せしめると共に、切断・保持手段の回転方向及び回転角速度を成形金型手段の回転方向及び回転角速度と実質上合致せしめ、所要角度範囲に渡って円弧状に存在する樹脂供給域(16、116)においては、切断・保持手段の半径方向位置を成形金型手段の円形軌跡に整合せしめ、かくして切断・保持手段が成形金型手段の所要部位に整合してその上方に位置して移動するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個の成形金型手段を含む圧縮成形装置、押出口から軟化乃至溶融状態の合成樹脂を押し出すための押出装置、及び押出装置の押出口から押し出された合成樹脂を押出口から切り離して圧縮成形装置の成形金型手段に供給するための合成樹脂供給装置を具備する圧縮成形システムに関する。
【背景技術】
【0002】
飲料等のための容器として、ポリエチレンテレフタレートの如き適宜の合成樹脂から形成された合成樹脂容器が広く実用に供されている。かような合成樹脂容器は、当業者には周知の如く、軟化乃至溶融状態の合成樹脂を圧縮成形して前成形体(所謂プリフォーム)を形成し、次いでかかる前成形体をブロー乃至延伸ブロー成形することによって好都合に形成することができる。
【0003】
そして、前成形体の圧縮成形は、下記特許文献1、2及び3に開示されている如く、圧縮成形装置と共に押出装置及び合成樹脂供給装置を備えた圧縮成形システムによって好都合に遂行される。圧縮成形装置は実質上鉛直に延びる中心軸線を中心として回転駆動される回転基盤、及び周方向に間隔をおいて回転基盤に配設され、樹脂供給域、圧縮・冷却域及び取出域を順次に含む円形軌跡を通して移動せしめられる複数個の成形金型手段を含んでいる。押出装置は押出口を有しており、かかる押出口を通して軟化乃至溶融状態の合成樹脂を押し出す。合成樹脂供給装置は、実質上鉛直に延びる中心軸線を中心として回転駆動される支持手段、及び周方向に間隔をおいて支持手段に配設された切断・保持手段を含んでおり、切断・支持手段は押出域及び樹脂供給域を含む円形軌跡を通して移動せしめられる。切断・保持手段が押出域を移動する際に、切断・保持手段が押出口から押し出される合成樹脂を切断し保持する。そして、切断・保持手段が成形型手段と同期して樹脂供給域を移動する際に、切断・保持手段から開放された合成樹脂が成形金型手段の所要部位に落下せしめられる。
【特許文献1】特開2000−25729号公報
【特許文献2】特開2000−108127号公報
【特許文献3】特開2000−280248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
而して、上述した従来の圧縮成形システムにおいては、圧縮成形装置の回転基盤と合成樹脂供給装置の支持手段とは相互に離隔せしめて別個に配設されており、回転基盤の回転方向即ち成形金型手段の回転方向と支持手段の回転方向即ち切断・保持手段の回転方向は相互に反対方向であり、圧縮成形装置における成形金型手段の円形軌跡と合成樹脂供給装置における切断・保持手段の円形軌跡とは樹脂供給域において瞬時的に重なり合うにすぎない。従って、成形金型手段の所要部位に充分精密に合成樹脂を供給するためには樹脂供給域において成形金型手段と切断・保持手段とが瞬時的に重なり合った時点においてタイミングよく切断・保持手段から合成樹脂が離脱して成形金型手段に落下することが重要である。然るに、合成樹脂は軟化乃至溶融状態である等に起因して、合成樹脂が切断・保持手段から離脱して成形金型手段に落下する時点を充分精密に制御することは、不可能ではないにしても著しく困難であり、従来の圧縮成形システムにおいては、成形金型手段に供給される合成樹脂の位置が所要部位からずれ、これに起因して圧縮成形不良が発生することが少なくなかった。
【0005】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、合成樹脂供給装置における切断・保持手段から離脱して落下せしめられる合成樹脂を圧縮成形装置における成形金型手段の所要部位に充分精密に位置せしめることができる、新規且つ改良された圧縮成形システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明においては、上記技術的課題を達成するために、合成樹脂供給装置における切断・保持手段の回転中心を圧縮成形装置における成形金型手段の円形軌跡の中心と実質上合致せしめると共に、切断・保持手段の回転方向及び回転角速度を成形金型手段の回転方向及び回転角速度と実質上合致せしめ、所要角度範囲に渡って円弧状に存在する樹脂供給域においては、切断・保持手段の半径方向位置を成形金型手段の円形軌跡に整合せしめ、かくして切断・保持手段が成形金型手段の所要部位に整合してその上方に位置して移動することができるように構成する。
【0007】
即ち、本発明によれば、上記主たる技術的課題を達成する圧縮成形システムとして、実質上鉛直に延びる中心軸線を中心として回転駆動される回転基盤、及び周方向に間隔をおいて該回転基盤に配設され、樹脂供給域、圧縮成形・冷却域及び取出域を順次に含む円形軌跡を通して移動せしめられる複数個の成形金型手段を含む圧縮成形装置と、押出口から軟化乃至溶融状態の合成樹脂を押し出すための押出装置と、該押出装置の該押出口から押し出される合成樹脂を該押出口から切り離して、該圧縮成形装置の該成形金型手段に供給するための合成樹脂供給装置とを具備する圧縮成形システムにおいて、
該合成樹脂供給装置は、該圧縮成形装置における該回転基盤の中心軸線と実質上合致した中心軸線を中心として該回転基盤と同一方向に且つ該回転基盤と実質上同一角速度で回転駆動せしめられる支持手段と、周方向に間隔をおいて且つ半径方向に移動自在に該支持手段に配設された複数個の切断・保持手段と、該切断・保持手段を半径方向に見て該円形軌跡から外方又は内方に変位した第一の半径方向位置と該円形軌跡と整合する第二の半径方向位置とに選択的に位置せしめる半径方向移動手段とを含んでおり、正常運転期間においては、該切断・保持手段は少なくとも該円形軌道の該樹脂供給域に対応して該第二の半径方向位置に位置せしめられて該樹脂供給域を通して移動せしめられる、
ことを特徴とする圧縮成形システムが提供される。
【0008】
本発明の好適形態においては、該押出装置の該押出口は、該圧縮成形装置における該成形金型手段の該円形軌跡に対して半径方向外方又は内方に変位し且つ該樹脂供給域よりも上流に位置する押出域に配置されており、該圧縮成形装置における該成形金型手段の各々は、雌型と該雌型の上方に配置された雄型とを含み、該雌型に対して該雄型を相対的に昇降動せしめることによって開閉せしめられ、該円形軌跡中の該樹脂供給域においては開状態にせしめられており、正常運転期間においては、該合成樹脂供給装置における該切断・保持手段は、該押出域を通過した後に該第一の半径方向位置から該第二の半径方向位置に移動せしめられ、該樹脂供給域においては該雌型と該雄型との間を通過し、該樹脂供給域を通過した後に該第二の半径方向位置から該第一の半径方向位置に移動せしめられる。この場合、該押出装置の作動を開始してから該押出口から押し出される合成樹脂の状態が安定するまでの始動準備期間においては、該押出域に対応して該切断・保持手段は該第二の半径方向位置に位置せしめられるのが好適である。
【0009】
本発明の他の好適形態においては、該押出装置の該押出口は、該圧縮成形装置における該成形金型手段の該円形軌跡に整合して且つ該樹脂供給域よりも上流に位置する押出域に配置されており、該圧縮成形装置における該成形金型手段の各々は、雌型と該雌型の上方に配置された雄型とを含み、該雌型に対して該雄型を相対的に昇降動せしめることによって開閉せしめられ、該押出域及び該樹脂供給域においては開状態にせしめられており、正常運転期間においては、該合成樹脂供給装置における該切断・保持手段は、該押出域よりも上流にて該第一の半径方向位置から該第二の半径方向位置に移動せしめられ、該押出域及び該樹脂供給域においては該雌型と該雄型との間を通過し、該樹脂供給域を通過した後に該第二の半径方向位置から該第一の半径方向位置に移動せしめられる。この場合、該押出装置の作動を開始してから該押出口から押し出される合成樹脂の状態が安定するまでの始動準備期間においては、該押出域に対応して該切断・保持手段は該第一の半径方向位置に位置せしめられるのが好適である。
【0010】
好ましくは、該切断・保持手段は、該押出口から切断された合成樹脂を挟持する閉状態と挟持した合成樹脂を開放する開状態とに選択的に設定される、少なくとも一方は可動である一対の保持部材を有し、該押出域を通過する際に該閉状態に設定され、該樹脂供給域を通過する間に該開放状態に戻される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の圧縮成形システムにおいては、所定角度範囲に渡って円弧状に存在する合成樹脂供給域において切断・保持手段を第二の半径方向位置、即ち半径方向において成形金型手段の円形軌跡と整合する位置に位置せしめることによって、所要角度範囲に渡って切断・保持手段が成形金型手段の所要部位に整合してその上方に位置して移動せしめられる。従って、所定角度範囲に渡って円弧状に存在する合成樹脂供給域を通過する間に、切断・保持手段から合成樹脂が離脱されて成形金型手段に落下するようにせしめさえすれば、成形金型手段の所要部位に充分精密に合成樹脂を供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明に従って構成された圧縮成形システムの好適実施形態について、更に詳細に説明する。
【0013】
本発明に従って構成された圧縮成形システムの好適実施形態を図示している図1及び図2を参照して説明すると、圧縮成形システムは、圧縮成形装置2、押出装置4及び合成樹脂供給装置6を具備している。
【0014】
圧縮成形装置2は実質上鉛直に延びる中心軸線8を中心として回転自在に装着された回転基盤(図面の複雑化を避けるために図示していない)を備えており、かかる回転基盤は電動モ−タでよい駆動源(図示していない)に連結されており、図1に矢印10で示す方向に回転駆動せしめられる。そして、回転基盤の周縁部には、周方向に等間隔をおいて複数個の成形金型手段12が配設されている。回転基盤が矢印10で示す方向に回転駆動せしめられると、成形金型手段12の各々は円形軌跡14に沿って移動せしめられる。円形軌跡14は樹脂供給域16、圧縮成形・冷却域18及び取出域19を含んでいる。図2に明確に図示する如く、成形金型12の各々は、雌型20とこの雌型20の上方に配設された雄型22とから構成されている。図示の成形金型12は後にブロー成形されて容器にせしめられる前成形体を圧縮成形するためのものであり、雌型20には下方に延びる成形キャビティ24が形成されている。雄型22には下方に延びるコア部26と前成形体の口頸部を規定する成形キャビティ28とが形成されている。雌型20と雄型22とは相対的に昇降動せしめられ、これによって成形金型手段12が開閉せしめられる。図2には開状態にある成形金型手段12が図示されている。成形金型手段12が樹脂供給域16を通過した後に成形金型手段12の閉動が開始され、圧縮成形・冷却域18を通過する際に成形金型手段12の閉動が完了する。そして、圧縮成形・冷却域18を通過した後に成形金型手段12の開動が開始され、取出域19に至る前に開動が完了する。圧縮成形装置2自体の上述したとおりの構成は当業者には周知の形態でよく、従ってこれらについての詳細な説明は本明細書においては省略する。
【0015】
図1及び図3を参照して説明すると、押出装置4は押出ヘッド30を含んでいる。この押出ヘッド30には下方に突出した円筒状突出部が形成されており、かかる突出部の実質上水平に延在する下面には円形でよい押出口32が形成されている。押出ヘッド30には押出口32まで延びる押出流路(その一部のみを図2に図示している)が形成されており、かかる押出流路の上流端は押出機(図示していない)に接続されている。押出機から流出される軟化乃至溶融状態の合成樹脂が押出流路を通して流動せしめられ、押出口32から鉛直方向下方に押し出される。かような押出装置4自体の構成も当業者には周知の形態でよく、従って押出装置4自体の構成の詳細な説明も本明細書においては省略する。
【0016】
図1及び図2を参照して説明を続けると、合成樹脂供給装置6は主部が円筒形状である支持手段36(その主部の一部のみを図2に図示している)を含んでいる。この支持手段36は、上記圧縮成形装置2における回転基盤(図示していない)の中心軸線8と実質上整合した中心軸線を中心として回転自在に装着されている。支持手段36には電動モータでよい駆動源(図示していない)が連結されており、かかる駆動源によって支持手段36は、上記回転基盤の回転方向と同一の方向即ち矢印10で示す方向に上記回転基盤の角速度と実質上同一の角速度で回転駆動される。所望ならば、支持手段36を上記圧縮成形装置2における回転基盤と一体に形成することもできる。
【0017】
上記支持手段36には、周方向に間隔をおいて複数個の切断・保持手段38が配設されている。切断・保持手段38の角度間隔及び配設数は上記圧縮成形装置2における成形金型手段12の角度間隔及び配設数と同一であり、切断・保持手段38の各々の配設角度位置は成形金型手段12の配設角度位置と整合せしめられている。図2を参照して詳述すると、支持手段36には切断・保持手段38の配設角度位置に対応して半径方向に貫通する配設開口40が形成されている。かかる配設開口40は実質上水平に延在する底面を有し、かかる底面には案内部材42が固定されている。案内部材42には逆L字形状の支持ブラケット44が図2において左右方向に滑動自在に装着されている。更に詳述すると、案内部材42の上面には図2において左右方向に延びる案内溝が形成されており、かかる案内溝に支持ブラッケト44の下面に固定された被案内部材46が滑動自在に係合せしめられており、かくして支持ブラッケト44が図2において左右方向に移動自在に支持手段36に装着されている。支持手段36には半径方向移動手段48も装着されている。図示の実施形態においては、半径方向移動手段48は上記装着開口40の下方に位置する空気圧シリンダ機構から構成されている。シリンダ機構のシリンダは支持手段36に固定され、ピストンは連結部材50を介して支持ブラッケト44の一端に連結されている。シリンダ機構のピストンが伸縮せしめられることによって支持ブラッケト44は図2に実線で示す第一の半径方向位置と図2に二点鎖線44Aで示す第二の半径方向位置とに選択的に位置せしめられる。図示の実施形態においては、支持ブラケット44を直線往復動せしめることによって第一の半径方向位置と第二の半径方向位置とに選択的に位置せしめているが、所望ならば、例えば支持ブラッケト44を実質上鉛直に延びる旋回軸線を中心として旋回自在に装着し、往復旋回動せしめることによって第一の半径方向位置と第二の半径方向位置とに選択的に位置せしめることもできる。
【0018】
支持ブラケット44の直立部の前面(図2において右面)には案内部材52が固定されており、かかる案内部材52にはL字形状の支持ブラッケト54が鉛直方向に滑動自在に装着されている。更に詳述すると、案内部材52の前面には鉛直方向に延びる案内溝が形成されており、かかる案内溝に支持ブラケット54の直立部の後面(図2において左面)に固定された被案内部材56が係合せしめられており、かくして支持ブラケット54が鉛直方向に滑動自在に案内部材52に装着されている。支持ブラケット54の直立部の前面には従動カムローラ58が回転自在に装着されている。かかる従動カムローラ58は上記円形軌跡14に沿って延在するカム溝(図示していない)に係合せしめられている。上述した逆L字形状の支持ブラケット44の直立部には前方に突出する突出部材60が固定されている。そして、周方向両側において突出部材60と支持ブラケット54との間は引張ばね62(図2に一方の引張ばね62のみを図示している)が張設されている。後に更に言及する如く、支持ブラケット54は通常は図2に実線及び二点鎖線で示す上昇位置(かかる上昇位置においては支持ブラケット54の上端が突出部材60の下面に当接せしめられている)に位置せしめられているが、樹脂供給域16を通過する際にカム溝とカム従動ローラ58との協働によって図2に二点鎖線で示す下降位置に急激に下降され、しかる後に上記上昇位置に戻される。
【0019】
上記切断・保持手段38は支持ブラケット54に装着されている。図1及び図2を参照して説明を続けると、図示の実施形態における切断・保持手段38の各々は切断部材66とかかる切断部材66の下方に配置された一対の保持部材68a及び68bとから構成されている。切断部材66と一方の保持部材68aとは連結部材69を介して支持ブラケット54に固定されているが、他方の保持部材68bは図2に実線で図示する開位置と図2に二点鎖線で図示する閉位置との間を図2において左右方向に移動自在に支持ブラケット54に装着されている。更に詳述すると、支持ブラケット54の下面には案内部材70が固定されており、かかる案内部材70の下面には図2において左右方向に延びる案内溝が形成されている。一方、保持部材68bの後面(図2において右面)には略逆L字形状の連結部材72が固定されており、連結部材72の水平部の上面には被案内部材74が固定されている。被案内部材74は上記案内溝に係合せしめられており、かくして連結部材72及びこれが固定された保持部材68bが上記案内溝に沿って滑動自在に支持ブラケット54に装着されている。周方向両側において連結部材72と上記支持ブラケット44との間には引張ばね76(図2には一方の引張ばね76のみを図示している)が張設されている。更に、連結部材の水平部の下面には従動カムローラ78が回転自在に装着されている。かかる従動カムローラ78は上記円形軌跡14に沿って延びるカム溝(図示していない)に係合せしめられている。後に更に言及する如く、保持部材68bは通常は上記開位置に位置せしめられているが、従動カムローラ78とカム溝との協働によって所定期間上記閉位置に位置せしめられる。
【0020】
上述したとおりの圧縮成形システムの作用を要約して説明すると次のとおりである。支持ブラケット44が図2に実線で図示する第一の半径方向位置に位置せしめられているときには、切断・保持手段38の各々も図2に実線で示す第一の半径方向位置に位置せしめられており、成形金型手段12の円形軌跡14よりも半径方向外方に変位して位置する。従って、支持手段36が矢印10で示す方向に回転駆動せしめられると、切断・保持手段38は上記円形軌跡14よりも半径が大きい円弧軌跡80を通して移動せしめられる。押出装置6における押出口32は円弧軌跡80上に位置する押出域82に位置せしめられている。正常運転期間においては、切断・保持手段38は第一の半径方向位置に位置せしめられた状態で押出域82を通る。図1と共に図3を参照することによって明確に理解される如く、押出域82においては、切断・保持手段38の切断部材66が押出ヘッド30の下面に近接乃至接触して押出口32を横切り、かくして押出口32から押し出されている合成樹脂84が切断部材66によって切断される。切断された合成樹脂84は一対の保持部材68a及び68b間に位置せしめられる。一方の保持部材68bは切断部材66が合成樹脂84を切断するのと実質上同時に或いはその直後に図2に実線で示す開位置から図2に二点鎖線で図3に実線で示す閉位置に移動せしめられ、かくして切断された合成樹脂84が開状態から閉状態に変更された一対の保持部材68a及び68b間に挟持される。
【0021】
次いで、支持ブラッケト44及びこれに装着されている切断・保持手段38が半径方向内方に漸次移動せしめられ、樹脂供給域16の上流端或いはこれよりも幾分上流側にて切断・保持手段38は図2に二点鎖線で示す第二の半径方向位置に位置せしめられて成形金型手段12の円形軌跡14に整合せしめられる。樹脂供給域16においては、図4に明確に図示する如く、切断・保持手段38は、鉛直方向において開状態にある成形金型手段12の雌型20と雄型22との間を通って移動せしめられる。そして、この際には両者間に合成樹脂84を把持している一対の保持部材68a及び68bの一方、即ち保持部材68bが図2に二点鎖線で図3に実線で示す閉位置から図2に実線で示すと共に図4に実線で示す開位置に移動せしめられる。また、支持ブラケット54及びこれに装着されている切断・保持手段38の全体が図4に実線で示す上昇位置から図4に二点鎖線で示す下降位置に急激に下降せしめられる。かくして、一対の保持部材68a及び68b間に保持されていた合成樹脂84が下方に落下せしめられて雌型20の所要部位、即ち成形キャビティ24に供給される。所定範囲に渡って円弧状に延在する樹脂供給域16においては切断・保持手段38は成形金型手段12の雌型20と整合してその上方に位置した状態で雌型20と同方向に同速度で移動せしめられる故に、成形金型手段12及び切断・保持手段38が樹脂供給域16を通過する間に一対の保持部材68a及び68b間から雌型20に合成樹脂84が落下されさえすえれば、合成樹脂84は雌型20の成形キャビティ24内に充分精密に供給され得る。
【0022】
樹脂供給域16を通過すると、切断・保持手段38が図2及び図4に実線で図示する上昇位置に戻される。そしてまた、支持ブラッケト44及びこれに装着されている切断・保持手段38が半径方向外方に漸次移動せしめられて、切断・保持手段38は第一の半径方向位置に位置せしめられて成形金型手段12の円形軌跡14よりも半径方向外方に変位して位置する。
【0023】
雌型20の成形キャビティ24内に合成樹脂84が供給された成形金型手段12は、樹脂供給域16を通過した後に漸次閉動せしめられ、圧縮成形・冷却域18を通過する際に成形金型手段12の閉動が完了し、かくして合成樹脂84が所要形状の圧縮成形品即ち前成形体に圧縮成形され、冷却される。圧縮成形・冷却域18を通過すると、成形金型手段12の開動が開始され、取出域19に至る前に成形金型手段12の開動が完了する。取出域19においては、圧縮成形された前成形体が成形金型手段12から離脱され適宜の取出手段(図示していない)によって取り出される。
【0024】
周知の如く、押出機(図示していない)の運転を開始してから所定時間が経過するまでは、押出口32から押し出される合成樹脂84は所要状態になく、押出機の運転を開始してから押出口32から押し出される合成樹脂84が所要状態に安定するまでの始動準備期間においては、押出口32から押し出される合成樹脂84を成形金型手段12に供給しないことが望まれる。かような始動準備期間においては、切断・保持手段38を上記押出域82の上流側において図2に二点鎖線で示す第二の半径方向位置に位置せしめる。かくすると、切断・保持手段38は押出口32を横切って移動することなく押出口32よりも半径方向内側を移動し、従って押出口32から押し出される合成樹脂84を切断して保持することがなく、成形金型手段12に合成樹脂84が供給されることがない。押出口32から押し出される合成樹脂84は、押出口32の下方に配設されている受け部材86(図3)に受け入れられ、かかる受け部材86上を流動せしめられて回収される。
【0025】
図5及び図6は本発明に従って構成された圧縮成形システムの他の好適実施形態を図示している。図5及び図6に図示する圧縮成形システムにおいては、押出口132が配置されている押出域182は、成形金型手段112の円形軌跡114に整合せしめて樹脂供給域116の上流に位置せしめられている。そして、切断・保持手段138は半径方向に見て成形金型手段112の円形軌跡114よりも内方に変位して位置する第一の半径方向位置と成形金型手段112の円形軌跡114と整合する第二の半径方向位置とに選択的に位置せしめられる。
【0026】
正常運転期間においては、押出域182の上流側にて切断・保持手段138が第一の半径方向位置から第二の半径方向位置に移動せしめられ、従って、図6に図示する如く、切断・保持手段138は押出口132を横切って移動せしめられる。切断・保持手段138の切断部材166は押出口132から押し出されている合成樹脂184を押出口132から切断し、そして切断・保持手段138の一対の保持部材168a及び168bの一方、即ち保持部材168bは切断部材166が合成樹脂184を切断するのと同時に或いはその直後に開状態から閉状態に移動され、かくして切断された合成樹脂184が一対の保持部材168a及び168b間に保持される。
【0027】
切断・保持手段138は第二の半径方向位置に位置せしめられ続けて樹脂供給域116を通過する。樹脂供給域116においては、切断・保持手段138は、鉛直方向において開状態にある成形金型手段112の雌型120と雄型122との間を通って移動せしめられる。そして、この際には両者間に合成樹脂148を把持している一対の保持部材168a及び168bの一方、即ち保持部材168bが閉位置から開位置に移動せしめられる。また、切断・保持手段38の全体が上昇位置から下降位置に急激に下降せしめられる。かくして、一対の保持部材168a及び168b間に保持されていた合成樹脂184が下方に落下せしめられて雌型120の所要部位、即ち成形キャビティ124に供給される。
【0028】
樹脂供給域116を通過すると、切断・保持手段138が上昇位置に戻される。そしてまた、切断・保持手段138が半径方向内方に漸次移動せしめられて、切断・保持手段138が第一の半径方向位置に位置せしめられて成形金型手段112の円形軌跡114よりも半径方向内方に変位して位置せしめられる。
【0029】
押出機の運転を開始してから押出口132から押し出される合成樹脂84が所要状態に安定するまでの始動準備期間においては、切断・保持手段138は上記押出域182の上流側において第二の半径方向位置に位置せしめられることがなく、従って切断・保持手段138は押出口132を横切って移動することなく押出口132よりも半径方向内側を移動する。従って、押出口132から押し出される合成樹脂184を切断して保持することがなく、成形金型手段112に合成樹脂184が供給されることがない。押出口132から押し出される合成樹脂184は、押出口132の下方に配設されている受け部材186(図6)に受け入れられ、かかる受け部材186上を流動せしめられて回収される。
【0030】
図5及び図6に図示する実施形態における上述した構成及び作用以外の構成及び作用は、図1乃至図4を参照して説明した実施形態の構成及び作用と実質上同一であるので、説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に従って構成された圧縮成形システムの好適実施形態を示す簡略平面図。
【図2】図1の圧縮成形システムにおける樹脂供給装置の一部を圧縮成形装置の成形金型手段の一部と共に示す部分断面図。
【図3】図1の圧縮成形システムにおける押出域を示す部分断面図。
【図4】図1の圧縮成形システムにおける樹脂供給域を示す部分断面図。
【図5】本発明に従って構成された圧縮成形システムの他の好適実施形態を示す簡略平面図。
【図6】図5の圧縮成形システムにおける押出域を示す部分断面図。
【符号の説明】
【0032】
2:圧縮成形装置
4:押出装置
6:合成樹脂供給装置
12:成形金型手段
14:円形軌跡
16:樹脂供給域
20:雌型
22:雄型
30:押出ヘッド
32:押出口
36:支持手段
38:切断・保持手段
48:半径方向移動手段
66:切断部材
68a:保持部材
68b:保持部材
82:押出域
84:合成樹脂
112:成形金型手段
114:円形軌跡
116:樹脂供給域
120:雌型
122:雄型
132:押出口
138:切断・保持手段
166:切断部材
168a:保持部材
168b:保持部材
182:押出域
184:合成樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質上鉛直に延びる中心軸線を中心として回転駆動される回転基盤、及び周方向に間隔をおいて該回転基盤に配設され、樹脂供給域、圧縮成形・冷却域及び取出域を順次に含む円形軌跡を通して移動せしめられる複数個の成形金型手段を含む圧縮成形装置と、押出口から軟化乃至溶融状態の合成樹脂を押し出すための押出装置と、該押出装置の該押出口から押し出される合成樹脂を該押出口から切り離して、該圧縮成形装置の該成形金型手段に供給するための合成樹脂供給装置とを具備する圧縮成形システムにおいて、
該合成樹脂供給装置は、該圧縮成形装置における該回転基盤の中心軸線と実質上合致した中心軸線を中心として該回転基盤と同一方向に且つ該回転基盤と実質上同一角速度で回転駆動せしめられる支持手段と、周方向に間隔をおいて且つ半径方向に移動自在に該支持手段に配設された複数個の切断・保持手段と、該切断・保持手段を半径方向に見て該円形軌跡から外方又は内方に変位した第一の半径方向位置と該円形軌跡と整合する第二の半径方向位置とに選択的に位置せしめる半径方向移動手段とを含んでおり、正常運転期間においては、該切断・保持手段は少なくとも該円形軌道の該樹脂供給域に対応して該第二の半径方向位置に位置せしめられて該樹脂供給域を通して移動せしめられる、
ことを特徴とする圧縮成形システム。
【請求項2】
該押出装置の該押出口は、該圧縮成形装置における該成形金型手段の該円形軌跡に対して半径方向外方又は内方に変位し且つ該樹脂供給域よりも上流に位置する押出域に配置されており、
該圧縮成形装置における該成形金型手段の各々は、雌型と該雌型の上方に配置された雄型とを含み、該雌型に対して該雄型を相対的に昇降動せしめることによって開閉せしめられ、該円形軌跡中の該樹脂供給域においては開状態にせしめられており、正常運転期間においては、該合成樹脂供給装置における該切断・保持手段は、該押出域を通過した後に該第一の半径方向位置から該第二の半径方向位置に移動せしめられ、該樹脂供給域においては該雌型と該雄型との間を通過し、該樹脂供給域を通過した後に該第二の半径方向位置から該第一の半径方向位置に移動せしめられる、請求項1記載の圧縮成形システム。
【請求項3】
該押出装置の作動を開始してから該押出口から押し出される合成樹脂の状態が安定するまでの始動準備期間においては、該押出域に対応して該切断・保持手段は該第二の半径方向位置に位置せしめられる、請求項2記載の圧縮成形システム。
【請求項4】
該押出装置の該押出口は、該圧縮成形装置における該成形金型手段の該円形軌跡に整合して且つ該樹脂供給域よりも上流に位置する押出域に配置されており、
該圧縮成形装置における該成形金型手段の各々は、雌型と該雌型の上方に配置された雄型とを含み、該雌型に対して該雄型を相対的に昇降動せしめることによって開閉せしめられ、該押出域及び該樹脂供給域においては開状態にせしめられており、正常運転期間においては、該合成樹脂供給装置における該切断・保持手段は、該押出域よりも上流にて該第一の半径方向位置から該第二の半径方向位置に移動せしめられ、該押出域及び該樹脂供給域においては該雌型と該雄型との間を通過し、該樹脂供給域を通過した後に該第二の半径方向位置から該第一の半径方向位置に移動せしめられる、請求項1記載の圧縮成形システム。
【請求項5】
該押出装置の作動を開始してから該押出口から押し出される合成樹脂の状態が安定するまでの始動準備期間においては、該押出域に対応して該切断・保持手段は該第一の半径方向位置に位置せしめられる、請求項4記載の圧縮成形システム。
【請求項6】
該切断・保持手段は、該押出口から切断された合成樹脂を挟持する閉状態と挟持した合成樹脂を開放する開状態とに選択的に設定される、少なくとも一方は可動である一対の保持部材を有し、該押出域を通過する際に該閉状態に設定され、該樹脂供給域を通過する間に該開状態に戻される、請求項2から4までのいずれかに記載の圧縮成形システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−62169(P2006−62169A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−246391(P2004−246391)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】