説明

圧縮開放エンジン・ブレーキ用のカム

【課題】低い力で作動でき、部品が少なく、低コストのエンジン・ブレーキを提供する。
【解決手段】エンジン・シリンダと排気マニホールド26の間に設けられたエンジン・バルブ34を作動させ、排気ガス絞り70及びブレーキ・ガス再循環を組み合わせて圧縮解放エンジン・ブレーキを提供するカムが開示される。ブレーキ・ガス再循環及び圧縮解放ブレーキを行うために使用されるエンジン・バルブ34が、ブレーキ・ガス再循環と圧縮解放事象の間にわずかに開いて維持される。主要排気事象のためのカム閉鎖ランプが延長されて、ブレーキ・ガス再循環事象の開始付近で終了し、排気バルブ34と関連して使用される液圧バルブ作動システムを再充填するのを容易にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に内燃機関のエンジン・ブレーキを作動させるカムに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関では、エンジン・バルブの作動は、正の動力を生成するために必要とされ、その作動は、エンジン・ブレーキ及び/又は排気ガス再循環(EGR)の生成にも使用できる。正の動力の間は、ピストンの吸気行程中に、燃焼の目的でシリンダに空気を送り込むため、1つ又は複数の吸気バルブが開かれる。ピストンの排気行程中にシリンダから燃焼ガスを排出するために、1つ又は複数の排気バルブが開かれる。
【0003】
1つ又は複数の排気バルブも、エンジン・ブレーキ動作の目的で少なくとも一時的にエンジンを空気圧縮機に変換するために選択的に開かれる。この空気圧縮機効果は、圧縮解放型ブレーキに関してはピストンの上死点(TDC)位置付近で1つ又は複数の排気バルブを開き、或いは抽気型ブレーキに関しては、ピストン運動のほとんど又は全ての間に、比較的一定のわずかに開いた位置で1つ又は複数の排気バルブを維持することによって達成される。これらの方法のいずれにおいても、エンジンは車両を減速させるのを補助するために使用できる減速力を生み出すことができる。このブレーキ力は、操縦者に車両の向上した制御を提供し、常用ブレーキの磨耗を大幅に低下させることもできる。圧縮解放型エンジン・ブレーキは長い間周知であり、Cumminsの米国特許第3,220,392号(1965年11月)に開示され、本明細書に参照によって援用される。
【0004】
圧縮解放型エンジン・ブレーキのブレーキ力は、圧縮解放ブレーキと組み合わせてブレーキ・ガス再循環を実行するために排気バルブを選択的に作動させることによって増加できる。ブレーキ・ガス再循環(BGR)は、ピストンの吸気行程の下死点付近で排気バルブ又は補助バルブを開き、エンジンの圧縮工程の最初の部分の間に排気バルブ又は補助バルブを開いて保持することによって達成できる。機関サイクルのこの部分の間に排気バルブ又は補助バルブを開くことによって、排気ガスが比較的高い圧力の排気マニホールドからエンジン・シリンダに流入できるようになる。排気ガスを排気マニホールドからシリンダに導入することにより、他の方式では圧縮行程中に起こるよりも速く、給気によってシリンダを加圧できる。エンジン・シリンダ内の増加したガス圧力は、圧縮解放事象によって生成されるブレーキ力を増加できる。
【0005】
BGR及び圧縮解放事象を生成するために排気バルブ又は補助バルブを選択的に作動させるために使用できる多くの様々なシステムがある。作動システムの1つの周知のタイプに、前述のCumminsの特許に記載されたロスト・モーション・システムがある。ロスト・モーション・システム、並びにエンジン・ブレーキ及びブレーキ・ガス再循環を得るために使用される方法の一例がGobertの米国特許第5,146,890号(1992年9月15日)に開示され、それは圧縮行程の最初の部分の間、及び任意で同様に吸気行程の終り近くの部分の間にシリンダを排気システムと連通させることによってブレーキ・ガス再循環を行う方法を開示しており、それは参照によって本明細書に援用される。Gobertは、圧縮解放ブレーキ及びブレーキ・ガス再循環を作動及び作動不能にするロスト・モーション・システムを使用する。Gobertの特許に開示されたシステムは、BGR事象に関する吸気行程の下死点付近で排気バルブを開き、BGR事象を終了するために圧縮行程の中間点前に排気バルブを閉じ、圧縮解放事象に関する同じ圧縮行程の上死点付近で再び排気バルブを開くものである。その結果、Gobertのシステムに従って作動された排気バルブは、BGRと圧縮解放事象の間で着座及び離座を急速に行わなければならない。
【0006】
多くの内燃機関では、吸気バルブ及び排気バルブは一定の輪郭のカムによって作動でき、より具体的には、各カムの一体化された部分である1つ又は複数の一定のローブ又はバンプによって作動できる。カムは、カムが提供する役割を担う各バルブ事象に関するローブを含むことができる。カムのローブの寸法及び形状は、ローブから得られるバルブのリフト及び継続期間を指示することができる。たとえば、前述のGobertの特許に従って構成されたシステムに関する排気カム・プロファイルは、BGR事象に関するローブ、圧縮解放事象に関するローブ、及び主要排気事象のためのローブを含むことができる。
【0007】
エンジン・ブレーキの間、排気マニホールドの排気背圧を上昇させることも望ましい可能性がある。より高い排気背圧は、エンジン・ブレーキに利用可能なエンジン・シリンダのガスの質量及び圧力を上昇させ、それによってブレーキ力を上昇させることができる。しかし、排気バルブに加えられる開放力が排気背圧の上昇から生じるエンジンのシリンダの圧力の上昇を超える必要があるので、排気背圧の上昇は圧縮解放事象に関する排気バルブを開くのに必要な力を望ましくなく上昇させる。ある範囲で、排気背圧の上昇は、排気バルブの後方に加えられた圧力も上昇させることができ、それはシリンダ内の圧力の上昇を相殺し、したがって圧縮解放事象に関して使用される排気バルブ開放機構への負荷を低下させることができる。
【0008】
排気マニホールドのガスの圧力を上昇させることは、排気マニホールドを通るガスの流れを絞ることによって達成できる。排気マニホールドの絞りは、作動されたときに、排気マニホールドを通る全ての排気ガスの流れの全部、又は一部分を絞ることができる任意の構造を使用することによって達成できる。排気絞り器は、排気エンジン・ブレーキ、ターボ過給器、可変ジオメトリ・ターボ過給器、可変ノズル・タービンを有する可変ジオメトリ・ターボ過給器、及び/又は排気ガスの流れを絞ることができる任意のその他の装置の形であることができる。
【0009】
排気ブレーキは一般に、排気マニホールドの全部又は一部を閉じることによって絞りを行い、それによって排気ガスが漏れるのを防止している。排気ガスのこの絞りは、各シリンダが排気行程にあるとき背圧をもたらすことによってエンジンにブレーキ効果をもたらすことができる。たとえば、Meneelyの米国特許第4,848,289号(1989年7月18日)、Schaeferの米国特許第6,109,027号(2000年8月29日)、Israelの米国特許第6,170,474号(2001年1月9日)、Kinerson等の米国特許第6,179,096号(2001年1月30日)、Anderson等の米国特許出願第2003/0019470号(2003年1月30日)は、エンジンを減速するのに使用する排気ブレーキを開示している。
【0010】
ターボ過給器は、同様に排気マニホールドからの排気ガスの流れを絞ることができる。ターボ過給器はしばしば、タービンに動力を供給するために、排気マニホールドからの高圧の排気ガスの流れを使用する。可変ジオメトリ・ターボ過給器(VGT)は、タービンを駆動するために、それが捕らえる高圧の排気ガスの量を変えることができる。たとえば、Arnold等の米国特許第6,269,642号(2001年8月7日)は、可変ジオメトリ・ターボ過給器を開示し、そこでは絞られる排気ガスの量は、タービンの翼の角度及び長さを修正することによって変更される。エンジン・ブレーキに関連する可変ジオメトリのターボ過給器の使用の例が、参照によって本明細書に援用される、Faletti等の米国特許第5,813,231号(1998年9月29日)、Faletti等の米国特許第6,148,793号(2000年11月21日)、Ruggiero等の米国特許第6,866,017号(2005年3月15日)に開示されている。
【0011】
圧縮解放エンジン・ブレーキは、周知のエンジン・ブレーキの唯一のタイプではない。抽気型エンジン・ブレーキの動作も長い間周知である。抽気型エンジン・ブレーキの際、通常の排気バルブのリフトに加えて、排気バルブは残りの機関サイクルの全体を連続的にわずかに開いて保持される(完全サイクル抽気ブレーキ、又はサイクルの一部分の間(部分サイクル抽気ブレーキ)わずかに開いて保持される。部分サイクル抽気ブレーキと完全サイクル抽気ブレーキとの間の主な違いは、前者に関しては吸気行程のほとんどの間、排気バルブが閉じられていることである。
【0012】
通常、抽気ブレーキ動作のブレーキ・バルブの最初の開放は、圧縮のTDCの前で遠くになり(すなわち早期のバルブ作動)、次いでリフトがある期間一定に保持される。したがって、抽気型エンジン・ブレーキは、早期のバルブ作動のためにバルブを作動させるためにはるかに低い力しか必要とせず、圧縮解放型ブレーキの急速な吹出しの代わりに連続的な抽気のために発生するノイズがより少ない。さらに、抽気ブレーキはしばしば、必要とする部品がより少なく、より低いコストで製造できる。したがって、エンジンの抽気ブレーキは大幅な利点を有することができる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の1つの実施例は、延長された閉鎖ランプ部分を含む主要排気ローブと、ブレーキ・ガス再循環ローブと、圧縮解放ローブと、主要排気ローブの延長された閉鎖ランプ部分とブレーキ・ガス再循環ローブとの間で約15カム角度以下に延長する基礎円部分とを備える圧縮解放エンジン・ブレーキ用の革新的な内燃機関のカムを対象にしている。
【0014】
本発明の別の実施例は、基礎円部分と、ブレーキ・ガス再循環ローブと、圧縮解放ローブと、ブレーキ・ガス再循環ローブと圧縮解放ローブとの間の窪んだ領域とを備え、前記窪んだ部分がカムの基礎円部分よりも大きな高さを有する、圧縮解放エンジン・ブレーキ用の革新的な内燃機関のカムを対象にしている。
【0015】
前述の全体的な説明と以下の詳細な説明の両方は、例示的且つ説明的なものに過ぎず、特許請求の範囲に記載される本発明を限定するものでないことを理解されたい。参照によって本明細書に援用され、本明細書の一部分を構成する添付の図面は、本発明のいくつかの実施例を示し、詳細な説明と共に本発明の原理を説明するのに役立つ。
【0016】
次に本発明を同様の参照番号が同様の部品を指す以下の図面と関連して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例による排気バルブ又は補助のエンジン・バルブを作動させるのに使用されるバルブ作動システムの概略図である。
【図2】本発明の実施例によるカム角度に対するカム従動節リフトのグラフである。
【図3】本発明の実施例によるクランク角度に対するバルブ・リフトのグラフである。
【図4】本発明の別の実施例によるカム角度に対するカム従動節リフトのグラフである。
【実施例】
【0018】
本発明の実施例による排気バルブ又は補助バルブを作動させるのに使用できるシステムの一例に詳細に説明する。エンジン20の一部分のエンジン・シリンダ40が図1に示されている。エンジン20は任意の数の同様のシリンダ40を有することができ、その中で、エンジンが正の動力及びエンジン・ブレーキに使用される間、ピストン45が繰返し上方及び下方に往復運動する。シリンダ40の上部に、少なくとも1つの吸気バルブ32及び1つの排気バルブ34がある。2つ以上の吸気バルブ32及び排気バルブ34がそれぞれエンジン・シリンダにあることが一般的であり、それぞれの1つのみが例示を容易にするために示されている。吸気バルブ32及び排気バルブ34は、それぞれ吸気ガス経路22及び排気ガス経路24と連通をもたらすように開かれ、また閉じられる。排気ガス通路24は排気マニホールド26と連通し、それは他のエンジン・シリンダからの他の排気ガス通路(図示されない)からの排気ガスも有する。排気マニホールド26の下流側に、マニホールド26からの排気ガスの流れを絞るように選択的に作動できる排気絞り手段70がある。排気絞り手段70は、ターボ過給器タービン、可変ジオメトリ・ターボ過給器、図示される排気パイプ内のバタフライ・バルブ72、又は他の絞り手段などの様々な手段によって提供される。排気絞り手段は、部分的又は完全に閉じられた場合に、BGRに使用できる排気マニホールド26及び排気ガス通路24内の排気背圧を選択的に生み出す。
【0019】
エンジン20は、正の動力及びエンジン・ブレーキの動作モード中にエンジン・バルブを作動させる排気バルブ作動サブシステム38及び吸気バルブ作動サブシステム36を備えることができる。エンジンは任意で、エンジン・シリンダ40と排気ガス通路24との間の補助の連通をもたらす補助バルブ及び補助バルブ作動サブシステム(図示されない)を備えることができる。それに限定されるわけではないが機械的バルブ列、電気アクチュエータ、及び液圧アクチュエータ(ロスト・モーションなどの)を含む、吸気及び排気事象に関して吸気バルブ及び排気バルブを開くのに使用され得るいくつかの周知のサブシステム36及び38がある。任意のそのようなサブシステム、又はサブシステムの組合せ及び/又は出願人又は他者によって開発された新しいサブシステムが、吸気バルブ及び排気バルブのエンジン・バルブ作動を行うために使用できることが企図される。
【0020】
排気バルブ34の作動は、圧縮解放ブレーキ、抽気ブレーキ、又は部分抽気ブレーキなどのブレーキ・ガス再循環及びエンジン・ブレーキ用の排気バルブを開くためにサブシステム38によって制御される。排気バルブ作動サブシステム38は、それに限定されるわけではないがコモン・レール、ロスト・モーション、ロッカー・アーム、カム、プッシュ・チューブ、又はその他の機械からのバルブを開く力を引き出す手段を含む、様々な液圧式、液圧機械式、及び電磁式の作動手段を備えることができる。排気バルブ作動サブシステム38及び吸気バルブ作動サブシステム36は、正の動力及び/又はエンジン・ブレーキの間に排気バルブ34及び吸気バルブ32によってもたらされるバルブ作動事象を変更するためにECM50によって電子的に制御されうる。
【0021】
エンジン・ブレーキの間、排気背圧を増加させるために、排気絞り手段70が閉じ、又は部分的に閉じられる。上昇した背圧がブレーキ・ガス再循環事象と組み合わせて提供された場合に、上昇した背圧を使用して、ブレーキのためにシリンダ40内のガスの充填及び圧力を上昇させる。
【0022】
ブレーキ・ガス再循環の間、ガスの流れは、一時的に排気マニホールド26からエンジン・シリンダ40に逆流する可能性があり、また吸気バルブ32を通って吸気経路22内に戻る可能性もある。排気バルブ及び吸気バルブを通るこの逆方向のガスの流れの制御は、システムの排気圧プロファイル、及びその結果生じる、吸気時にシリンダに送られる質量チャージを決定する。一般的にシリンダ40内のガスの圧力がより高いほど、ブレーキの量がより大きくなり、それは往復するピストン45がガスの高い圧力によって対抗されることから実現できるので、質量チャージは、エンジン・ブレーキの出力に影響を与える。
【0023】
図2は、図3に示される本発明の実施例によるエンジン・ブレーキを生成する排気バルブを作動させるための、図1に示されるシステムから生じるカム従動節リフトの一例である。図2は、主要排気、BGR、及び圧縮解放バルブ事象を行うために使用できるカム基礎円から延出するいくつかのローブを有するカムから生じるカム従動節リフトのグラフである。カム基礎円は、図2に0リフトで示される。排気カム・プロファイルは、主要排気ローブ100、BGRローブ110、及び圧縮解放ローブ120を備える。
【0024】
カムは、エンジンの正の動力動作の間、作動不可能なロスト・モーション・システムに連結でき、閾値130よりも少ない(バルブ又はカムラッシュの高さであることができる)高さを有するカム・ローブが吸収され又は「失われる」。したがって、正の動力動作の間、BGRローブ110及び圧縮解放ローブ120からのカム運動は、排気バルブに伝達されない。エンジン・ブレーキを備えないエンジンにおいてまさにそうであるように、正の動力の間、主要排気事象100からの運動のみが排気バルブに伝達される。
【0025】
エンジン・ブレーキの間、BGRローブ110及び圧縮解放ローブ120によって与えられた運動が「ロスト」に成ることを終わらせ、全てのカム・ローブからの運動が排気バルブに伝達されるように、ロスト・モーション・システムが切り替えられ、液圧流体が供給される。その結果として、エンジン・ブレーキの間、カムは以下の追加の運動を排気バルブに与えることができる。カムの領域102は、エンジン・ブレーキの間使用される主要排気ローブ100の閉鎖ランプ部分に対応する。主要排気ローブの閉鎖ランプ部分102は、約210カム角度と240カム角度の間、又はより好ましくは約225カム角度と235カム角度の間の領域104の基礎円に戻ることが示される。
【0026】
BGRローブ110は、約230カム角度と270カム角度の間、より好ましくは約240カム角度と260のカム角度の間で領域104の後に始まる。BGRローブ110は、約270カム角度と300カム角度の間で最大高さに到達し、次いでカム基礎円に向かって戻る。カムの領域112は、BGRローブ110と圧縮解放ローブ120交差部に対応する。領域112の最低点は、排気バルブをBGR事象と圧縮解放事象の間で着座(すなわち完全に閉じる)しないように保つのに十分なカム基礎円の最低限の高さ114の上に上昇する。領域112の最低点は、約300カム角度と340カム角度の間、より好ましくは約310カム角度と330のカム角度の間である。最低高さ114は、排気バルブが図3に示されるBGR事象と圧縮解放事象との間で非常に密接して、しかし全くは閉じられないように選択される。
【0027】
圧縮解放エンジン・ブレーキ・ローブ120は、BGRローブ110に続く。圧縮解放ローブ120は、エンジン・シリンダのピストンがその上死点位置に到達する点付近で排気バルブを開くように、カムに設けられる。圧縮解放ローブ120は、350カム角度の早期に、又は0カム角度(すなわち上死点で)の後に最大の高さに到達し、その後基礎円に向かって戻る。カムの領域122は、圧縮解放ローブ120と主要排気ローブ100の交差部に対応する。領域122の最も低い部分は、排気バルブが圧縮解放事象と主要排気事象の間に閉じないように、最低限の距離124によってカム基礎円の上に上昇する。或いは、領域122の最低の部分は、選択的なカム・プロファイル124を追従することによってカム基礎円へ完全に戻る。
【0028】
図2に示されるカム・プロファイルは、エンジン・ブレーキ動作中に図3に示される排気バルブ作動をもたらす。図3の0のバルブ・リフトは、排気バルブが閉じ、着座したことを示す。図3を参照すると、排気バルブは主要排気事象200に対して作動され、バルブ着座事象202によって着座させられる。排気バルブは、それがBGR事象210に対して作動されるまで、期間204の間、着座したままである。排気バルブが着座する期間の間、エンジン・シリンダと排気マニホールドの間に排気ガス交換はない。
【0029】
次に、排気バルブは、BGR事象210に対して作動される。BGR事象は、吸気事象と部分的に又は完全に重なる。BGR事象の間、排気マニホールド内の排気ガスは、エンジン・シリンダに流れて戻り、開いた吸気バルブを通って吸気マニホールドに戻る。これは、その後に続く圧縮解放事象に関して、シリンダ内で排気質量を増加させる。BGR事象に関して最大リフトに到達した後に、排気バルブはそのシートに向かって戻るが、BGR事象210と圧縮解放事象220の間の点212で閉じない。排気バルブが点212で維持するリフトの量は、本発明の様々な実施例で変わることができる。それは0であることもでき、したがって排気バルブは、より多いコンプライアンス及び/又はより大きなバルブ・ラッシュ設定によって、本発明のいくつかの実施例でBGR事象と圧縮解放事象の間で着座する。
【0030】
圧縮解放事象220はBGR事象110に追従することができる。圧縮解放事象の間、排気バルブのリフトは、エンジン・シリンダのピストンが上死点位置に近づき、到達するとき、上昇する。シリンダ内のガス圧力は、ピストンの圧縮行程の終り付近で排気バルブのリフトを上昇させることによって排気マニホールドに解放される。シリンダ内での排気ガスのこの圧縮エネルギーは、膨張行程中にエンジン・ピストンを下方に押すことによって正の仕事を行うのではなく排気マニホールドに解放される。圧縮解放事象220に関して最大リフトに到達した後に、排気バルブは圧縮解放事象220と主要排気事象200の間の期間222中にそのシートに向かって戻る。排気バルブはある程度のリフトを維持し期間222の間は閉じず、又はその代わりに排気バルブはバルブ作動224によって着座する。
【0031】
図4に示される別のカム従動節リフトは、バルブ・リフト・リセット機能を備えるロスト・モーション・システムに液圧流体をよりよく引き込むことができる閉鎖ランプを含む。図4に示されるカム従動節リフトは、図2に示されるものとは以下のように異なる。主要排気ローブ100の閉鎖ランプ部分に対応する、カムの領域102は、図2に示されるものからBGR事象110に、完全に又はほぼ完全に拡張されうる。主要排気ローブの領域102によって生成されたバルブ閉鎖速度は、リセット機能によってロスト・モーション・システムに対する液圧再充填を最適化するために、液圧流体再充填速度を適合させるように設計される。主要排気ローブの閉鎖ランプ部分102は、約230カム角度と265カム角度の間で領域104の基礎円に戻ることが示されている。
【0032】
BGRローブは、排気バルブがBGR事象と圧縮解放事象の間で閉じるように基礎円に戻る。或いは、BGRローブは、排気バルブがBGR事象と圧縮解放事象の間で開いたままになるように基礎円に接近するが、領域112で基礎円には到達しない。
【0033】
図4に示される延長された閉鎖ランプ102を有するカムは、たとえばUskoの米国特許第5,460,131号、及びCavanaughの米国特許第4,399,787号に開示されるような再設定デバイスも含む液圧バルブ作動システムで使用される。再設定デバイスは、カム従動節が領域104でカム基礎円に到達する前に排気バルブを閉じる。延長された閉鎖ランプ102は、液圧バルブ作動システムが次の液圧バルブ作動、すなわちBGR事象のために液圧流体によって再充填する能力を向上させる。
【0034】
本発明の様々な実施例を本明細書に説明してきたが、多くの代替、変更、及び変形が当分野の技術者には明らかになることが明白である。したがって、本明細書に明記したような本発明の好ましい実施例は、例示的であることを意図し、限定的であることを意図しない。添付の特許請求の範囲に定義される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な変更を行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮解放エンジン・ブレーキ用の内燃機関のカムであって、
延長された閉鎖ランプ部分を含む主要排気ローブと、
ブレーキ・ガス再循環ローブと、
圧縮解放ローブと、
前記主要排気ローブの延長された閉鎖ランプ部分と前記ブレーキ・ガス再循環ローブとの間で約15カム角度以下に延長する基礎円部分とを備える、カム。
【請求項2】
請求項1に記載のカムにおいて、該カムが、前記ブレーキ・ガス再循環ローブと前記圧縮解放ローブとの間に窪んだ領域をさらに備え、前記窪んだ領域が前記カムの前記基礎円部分よりも大きな高さを有する、カム。
【請求項3】
請求項2に記載のカムにおいて、該カムが、前記圧縮解放ローブと前記主要排気ローブとの間に第2の窪んだ領域をさらに備え、前記第2の窪んだ領域が前記カムの前記基礎円部分よりも大きな高さを有する、カム。
【請求項4】
請求項2に記載のカムにおいて、該カムが、前記圧縮解放ローブと前記主要排気ローブとの間に第2の窪んだ領域をさらに備え、前記第2の窪んだ領域が前記カムの前記基礎円部分と等しい高さを有する、カム。
【請求項5】
請求項1に記載のカムにおいて、該カムが、前記圧縮解放ローブと前記主要排気ローブとの間に第2の窪んだ領域をさらに備え、前記第2の窪んだ領域が前記カムの前記基礎円部分よりも大きな高さを有する、カム。
【請求項6】
請求項1に記載のカムにおいて、該カムが、前記圧縮解放ローブと前記主要排気ローブとの間に第2の窪んだ領域をさらに備え、前記第2の窪んだ領域が前記カムの前記基礎円部分と等しい高さを有する、カム。
【請求項7】
圧縮解放エンジン・ブレーキ用の内燃機関のカムであって、
基礎円部分と、
ブレーキ・ガス再循環ローブと、
圧縮解放ローブと、
前記ブレーキ・ガス再循環ローブと前記圧縮解放ローブとの間の窪んだ領域であって、前記窪んだ領域が前記カムの前記基礎円部分よりも大きな高さを有する領域とを備える、カム。
【請求項8】
請求項7に記載のカムにおいて、該カムが、主要排気ローブをさらに備える、カム。
【請求項9】
請求項8に記載のカムにおいて、該カムが、前記圧縮解放ローブと前記主要排気ローブとの間に第2の窪んだ領域をさらに備え、前記第2の窪んだ領域が前記カムの前記基礎円部分よりも大きな高さを有する、カム。
【請求項10】
請求項8に記載のカムにおいて、該カムが、前記圧縮解放ローブと前記主要排気ローブとの間に第2の窪んだ領域をさらに備え、前記第2の窪んだ領域が前記カムの前記基礎円部分と等しい高さを有する、カム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−193736(P2012−193736A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−109000(P2012−109000)
【出願日】平成24年5月11日(2012.5.11)
【分割の表示】特願2009−509565(P2009−509565)の分割
【原出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(505413266)ジェイコブス ビークル システムズ、インコーポレイテッド (31)
【Fターム(参考)】