圧電体積層体、表面弾性波素子、薄膜圧電共振子および圧電アクチュエータ、ならびに圧電体積層体の製造方法
【課題】基体上にニオブ酸カリウムナトリウム層が形成された圧電体積層体を提供する。
【解決手段】圧電体積層体100は、基体1と、前記基体1の上方に形成されたテンプレート層3aと、前記テンプレート層3aの上方に形成されたニオブ酸カリウムナトリウムからなる圧電体層3bと、を含む。
【解決手段】圧電体積層体100は、基体1と、前記基体1の上方に形成されたテンプレート層3aと、前記テンプレート層3aの上方に形成されたニオブ酸カリウムナトリウムからなる圧電体層3bと、を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニオブ酸カリウムナトリウム層を有する圧電体積層体、当該圧電体積層体を含む表面弾性波素子、薄膜圧電共振子および圧電アクチュエータ、ならびに圧電体積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、携帯電話などの移動体通信を中心とした通信分野の著しい発展に伴い、表面弾性波素子の需要が急速に拡大している。表面弾性波素子の開発の方向としては、小型化、高効率化、高周波化の方向にある。そのためには、より大きな電気機械結合係数(k2)、より安定な温度特性、より大きな表面弾性波伝播速度、が必要となる。
【0003】
表面弾性波素子は、従来、主として圧電体の単結晶上にインターディジタル型電極を形成した構造が用いられてきた。圧電単結晶の代表的なものとしては、水晶、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)などがある。例えば、広帯域化や通過帯域の低損失化が要求されるRFフィルタの場合には、電気機械結合係数の大きいLiNbO3が用いられる。一方、狭帯域でも安定な温度特性が必要なIFフィルタの場合は、中心周波数温度係数の小さい水晶が用いられる。さらに、電気機械結合係数および中心周波数温度係数がそれぞれLiNbO3と水晶の間にあるLiTaO3はその中間的な役割を果たしている。また、最近、ニオブ酸カリウム(KNbO3)単結晶において、大きな電気機械結合係数の値を示すカット角が見出された。KNbO3単結晶板は、特開平10−65488号公報に記載されている。
【0004】
圧電単結晶基板を用いた表面弾性波素子では、電気機械結合係数、温度係数、音速などの特性は材料固有の値であり、カット角および伝播方向で決定される。たとえば、0°Y−XKNbO3単結晶基体は電気機械結合係数に優れるが、45°から75°までの回転Y−XKNbO3単結晶基体のような零温度特性は室温付近において示さない。
【特許文献1】特開平10−65488号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、基体上にニオブ酸カリウムナトリウム層が形成された圧電体積層体を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、本発明の圧電体積層体を有する表面弾性波素子、薄膜圧電共振子および圧電アクチュエータを提供することにある。
【0007】
本発明のさらに他の目的は、本発明の圧電体積層体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる圧電体積層体は、
基体と、
前記基体の上方に形成されたテンプレート層と、
前記テンプレート層の上方に形成されたニオブ酸カリウムナトリウムからなる圧電体層と、を含む。
【0009】
本発明の圧電体積層体によれば、テンプレート層を有することにより、圧電体層の結晶化温度を下げることができ、その結果、所望の組成を有し、かつ優れた結晶性を有するニオブ酸カリウムナトリウム層を有する。
【0010】
本発明において、特定のA部材(以下、「A部材」という。)の上方に形成された特定のB部材(以下、「B部材」という。)というとき、A部材の上に直接B部材が設けられた場合と、A部材の上に他の部材を介してB部材が設けられた場合とを含む意味である。
【0011】
本発明の圧電体積層体において、前記第1圧電体層は、前記組成式において、0.1<a<1であり、1≦x≦1.2であることができる。
【0012】
本発明の圧電体積層体において、前記第1圧電体層は、1<x≦1.1であることができる。
【0013】
本発明の圧電体積層体において、前記テンプレート層は、前記圧電体層と同じ組成を有するニオブ酸カリウムナトリウムからなることができる。
【0014】
本発明の圧電体積層体において、前記テンプレート層の下に、ランタン酸ニッケルからなる配向制御層を有することができる。
【0015】
本発明の圧電体積層体において、前記ランタン酸ニッケルは多結晶であることができる。
【0016】
本発明の圧電体積層体は、前記圧電体層の上方に形成された電極を有することができる。
【0017】
本発明の圧電体積層体は、前記基体と前記圧電体層との間に形成された第1電極と、
前記第1圧電体層の上方に形成された第2電極と、を有することができる。
【0018】
本発明にかかる表面弾性波素子は、本発明の圧電体積層体を含む。
【0019】
本発明にかかる薄膜圧電共振子は、本発明の圧電体積層体を含む。
【0020】
本発明にかかる圧電アクチュエータは、本発明の圧電体積層体を含む。
【0021】
本発明にかかる圧電体積層体の製造方法は、
基体の上方に、テンプレート層を化学溶液堆積法によって形成する工程と、
前記テンプレート層の上方にニオブ酸カリウムナトリウムからなる圧電体層を化学溶液堆積法によって形成する工程と、を含む。
【0022】
本発明の製造方法によれば、テンプレート層を形成することにより、圧電体層の結晶化温度を下げることができ、その結果、Aサイト元素(カリウムおよびナトリウム)の揮発を抑制できるので所望の組成を有し、かつ優れた結晶性を有するニオブ酸カリウムナトリウム層を得ることができる。
【0023】
本発明の製造方法において、前記テンプレート層を形成するための溶液と、前記圧電体層を形成するための溶液とは、同じ組成を有することができる。
【0024】
本発明の製造方法において、前記テンプレート層を形成する前に、前記基体の上方にランタン酸ニッケルからなる配向制御層を形成する工程を有することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明にかかる実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0026】
1.圧電体積層体
1.1.第1の圧電体積層体
図1は、本実施形態に係る第1の圧電体積層体100の一例を模式的に示す断面図である。
【0027】
圧電体積層体100は、基体1と、基体1上に形成された配向制御層2と、配向制御層2上に形成されたニオブ酸カリウムナトリウムからなる圧電体層3と、圧電体層3上に形成された電極4とを有する。
【0028】
基体1は、圧電体積層体100の用途によって選択され、その材料、構成は特に限定されない。基体1としては、絶縁性基板、半導体基板等を用いることができる。絶縁性基板としては、たとえばサファイア基板、STO基板、プラスチック基板、ガラス基板などを用いることができ、半導体基板としてはシリコン基板などを用いることができる。また、基体1は、基板単体あるいは基板上に他の層が積層された積層体であってもよい。
【0029】
配向制御層2は、バッファ層あるいはシード層と呼ばれ、必要に応じて形成される。配向制御層2は、圧電体層3の結晶配向性を制御する機能を有する。すなわち、配向制御層2上に形成される圧電体層3は、配向制御層2の結晶構造を引き継いだ結晶構造となる。かかる配向制御層2としては、圧電体層3と同様の結晶構造を有する複合酸化物を用いることができる。配向制御層2としては、たとえば、ランタン酸ニッケル(LaNiO3)などのペロブスカイト型酸化物を用いることができる。ランタン酸ニッケルは、多結晶であることができる。配向制御層2は、圧電体層3の配向を制御できればよく、例えば50ないし100nmの膜厚を有することができる。
【0030】
圧電体層3は、配向制御層2上に形成されたテンプレート層3aと、該テンプレート層3a上に形成された圧電体層3bとを有する。テンプレート層3aは、圧電体層3bと同じニオブ酸カリウムナトリウム層によって形成される。テンプレート層3aは、配向制御層2の結晶配向を反映してエピタキシャル成長し、高い結晶性を有する。したがって、テンプレート層3aが存在することにより、圧電体層3bは、テンプレート層3aがない場合より、さらに優れた結晶性、配向性およびモフォロジーを有し、また、圧電体層3bの結晶化温度を下げる機能を有することができる。テンプレート層3aは、例えば、5ないし100nmの膜厚を有することができる。
【0031】
テンプレート層3aは、圧電体層3bと同じ組成を有することが望ましいが、圧電体層3bと異なる材質の層であってもよい。
【0032】
圧電体層3は、組成式(KaNa1−a)xNbO3で表される圧電体から構成される。前記組成式において、好ましくは0.1<a<1、より好ましくは0.2≦a≦0.7であり、好ましくは1≦x≦1.2、より好ましくは1<x≦1.1である。組成式(KaNa1−a)xNbO3で表される圧電体は、室温では斜方晶の構造をとる。前記組成式において、「a」が上記範囲にあることにより、斜方晶から菱面体晶(a≦0.55)および斜方晶から単斜晶(0.55≦a)への相変化温度がマイナス40℃以下となり、低温領域において安定した特性が得られる点で好ましい。「a」が0.1以下であると、結晶化のための熱処理時にカリウムの揮発のために異相が生じ、圧電特性や強誘電体特性などの物性に悪影響を及ぼす。「x」が上記範囲にあることにより、低温にて結晶が形成されるのでカリウムの揮発が抑制され、層密度が向上する点で好ましい。
【0033】
本実施形態の圧電体層3は、擬立方晶(100)に優先配向していることが望ましい。
【0034】
圧電体層3の代表的な膜厚は、圧電体積層体100の用途によって選択される。圧電体層3の代表的な膜厚は、300nmから3.0μmである。ただし、この厚みの上限値に関しては、薄層としての緻密さ、結晶配向性を維持する範囲で厚くすることができ、10μm程度まで許容できる。
【0035】
電極4は、金属層または導電性複合酸化物層から構成できる。電極4は、金属層と導電性複合酸化物層の積層体でもよい。電極4の材料としては、白金、イリジウム、アルミニウムなどの金属層あるいは酸化イリジウムなどの導電性複合酸化物層を用いることができる。
【0036】
本実施形態の第1の圧電体積層体100は、たとえば以下のようにして形成できる。
【0037】
(1) まず、基体1を準備する。基体1は、上述したように圧電体積層体100の用途で選択される。基体1としては、たとえばSTO(SrTiO3)基板、Nb:STO(NbドープSrTiO3)基板、サファイア基板を用いることができる。
【0038】
(2) 図1に示すように、基体1上に、例えば多結晶ランタン酸ニッケルからなる配向制御層2を形成する。この配向制御層2は、例えば、スパッタリング等の方法で形成できる。
【0039】
(3) 図1に示すように、配向制御層2上に、ニオブ酸カリウムナトリウムからなるテンプレート層3aおよびニオブ酸カリウムナトリウムからなる圧電体層3bを順に形成し、上述した組成式で示される圧電体層3を形成する。圧電体層3は、ゾルゲル法やMOD(Metal Organic Decomposition)法などの化学溶液堆積法にて形成することができる。圧電体層3は、前記組成式の組成となる前駆体溶液を用いて塗布層を形成し、該塗布層を結晶化させることにより形成できる。
【0040】
圧電体層3の形成材料である前駆体溶液については、圧電体層3となる圧電材料の構成金属をそれぞれ含んでなる有機金属化合物を各金属が所望のモル比となるように混合し、さらにアルコールなどの有機溶媒を用いてこれらを溶解、または分散させることにより作製することができる。圧電材料の構成金属をそれぞれ含んでなる有機金属化合物としては、金属アルコキシドや有機酸塩、βジケトン錯体といった有機金属化合物を用いることができる。具体的には、圧電材料として以下のものが挙げられる。
【0041】
ナトリウム(Na)を含む有機金属化合物としては、たとえば、ナトリウムエトキシドが挙げられる。カリウム(K)を含む有機金属化合物としては、たとえば、カリウムエトキシドが挙げられる。ニオブ(Nb)を含む有機金属化合物としては、たとえばニオブエトキシドが挙げられる。圧電材料の構成金属を含んでなる有機金属化合物は、これらに限定されず、公知のものを用いることができる。
【0042】
前駆体溶液には、必要に応じて安定化剤等の各種添加剤を添加することができる。さらに、前駆体溶液に加水分解・重縮合を起こさせる場合には、前駆体溶液に適当な量の水とともに、触媒として酸あるいは塩基を添加することができる。
【0043】
テンプレート層3aは、以下のようにして形成される。すなわち、テンプレート層3aが所望の組成比となるように、原料溶液を調製する。この原料溶液を配向制御層2上に塗布した後、熱処理を加えて塗層を結晶化させることにより、テンプレート層3aを形成することができる。具体的には、たとえば、原料溶液の塗布工程、アルコールなどの溶媒の除去工程、塗層の乾燥熱処理工程および脱脂熱処理工程の一連の工程を行い、その後に結晶化アニールにより焼成してテンプレート層3aを形成する。テンプレート層3aの結晶化アニールは、550ないし750℃で行うことができる。テンプレート層3aは、前述したように、5ないし100nmの膜厚とすることにより、配向制御層2の配向性を引き継いだ良好な結晶となる。
【0044】
次に、圧電体層3bは、テンプレート層3a上に以下のようにして形成される。すなわち、圧電体層3bが所望の組成比となるように、原料溶液を調製する。この原料溶液をテンプレート層3a上に塗布した後、熱処理を加えて塗層を結晶化させることにより、圧電体層3bを形成することができる。具体的には、たとえば、原料溶液の塗布工程、アルコールなどの溶媒の除去工程、塗層の乾燥熱処理工程および脱脂熱処理工程の一連の工程を所望の回数行い、その後に結晶化アニールにより焼成して圧電体層3bを形成する。また、上述した塗布工程、溶媒の除去工程、塗層の乾燥熱処理工程、脱脂熱処理工程および結晶化アニール工程からなる一連の工程を所望の回数行うことにより、圧電体層3bを形成することもできる。圧電体層3bの結晶化アニールは、テンプレート層3aの結晶化アシストによって結晶化温度をテンプレート層3aがない場合に比べて低くでき、550ないし650℃で行うことができる。このように圧電体層3bの結晶化温度を下げることにより、揮発しやすいAサイト元素(カリウムおよびナトリウム)の揮発を抑制でき、所望の組成を有するニオブ酸カリウムナトリウム層を得ることができる。
【0045】
(4) 図1に示すように、圧電体層3上に、電極4を形成する。電極4を構成する金属層あるいは導電性複合酸化物層は、たとえば公知のスパッタリングなどによって形成される。
【0046】
(5) 次に、必要に応じて、ポストアニールを酸素雰囲気中でRTA(ラピッドサーマルアニール)等を用いて行うことができる。これにより、電極4と圧電体層3との良好な界面を形成することができ、かつ圧電体層3の結晶性を改善することができる。
【0047】
以上の工程によって、本実施形態にかかる第1の圧電体積層体100を製造することができる。
【0048】
以上のようにして、圧電体層3を形成することにより、圧電体層3は、組成式(KaNa1−a)xNbO3で表される圧電体から構成される。この圧電体は、室温では斜方晶の構造を有するペロブスカイト型酸化物である。また、圧電体層3は、配向制御層2上に形成されることにより、高い結晶性および配向性を有する。さらに、テンプレート層3aを形成することにより、圧電体層3aの結晶化温度を下げることができ、その結果、Aサイト元素(カリウムおよびナトリウム)の揮発を抑制できるので所望の組成を有し、かつ優れた結晶性を有するニオブ酸カリウムナトリウム層を得ることができる。
【0049】
1.2.第2の圧電体積層体
図2は、本実施形態に係る第2の圧電体積層体200の一例を模式的に示す断面図である。
【0050】
圧電体積層体200は、基体1と、基体1上に形成された第1電極(下部電極)5と、下部電極5上に形成された配向制御層2と、配向制御層2上に形成されたニオブ酸カリウムナトリウムからなる圧電体層3と、圧電体層3上に形成された第2電極(上部電極)4とを含む。
【0051】
基体1は、圧電体積層体200の用途によって選択され、その材料、構成は特に限定されない。基体1としては、第1の圧電体積層体100で述べたと同様のものを用いることができる。
【0052】
下部電極5は、白金族などの金属層あるいは導電性複合酸化物層を用いることができる。また、下部電極5としては、金属層と導電性複合酸化物層とが積層された多層構造を有する導電層を用いることができる。
【0053】
配向制御層2は、第1の圧電体積層体100で述べたように、バッファ層あるいはシード層と呼ばれ、必要に応じて形成される。配向制御層2は、圧電体層3の結晶配向性を制御する機能を有する。かかる配向制御層2としては、圧電体層3と同様の結晶構造を有する複合酸化物を用いることができる。配向制御層2としては、たとえば、ランタン酸ニッケル(LaNiO3)などのペロブスカイト型酸化物を用いることができる。配向制御層2は、圧電体層3の配向を制御できればよく、例えば5ないし100nmの膜厚を有することができる。ランタン酸ニッケルからなる配向制御層2は、導電性を有し、下部電極としても機能する。
【0054】
圧電体層3は、第1の圧電体積層体100における圧電体層3と同様である。すなわち、圧電体層3は、配向制御層2上に形成されたテンプレート層3aと、該テンプレート層3a上に形成された圧電体層3bとを有する。テンプレート層3aは、圧電体層3bと同じニオブ酸カリウムナトリウム層によって形成される。テンプレート層3aは、配向制御層2の結晶配向を反映してエピタキシャル成長し、高い結晶性を有する。したがって、テンプレート層3aが存在することにより、圧電体層3bは、テンプレート層3aがない場合より、さらに優れた結晶性、配向性およびモフォロジーを有し、圧電体層3bの結晶化温度を下げることができる。
【0055】
圧電体層3は、組成式(KaNa1−a)xNbO3で表される圧電体から構成される。前記組成式において、好ましくは0.1<a<1、より好ましくは0.2≦a≦0.7であり、好ましくは1≦x≦1.2、より好ましくは1<x≦1.1である。組成式(KaNa1−a)xNbO3で表される圧電体は、室温では斜方晶の構造をとる。前記組成式において、「a」が上記範囲にあることにより、斜方晶から菱面体晶(a≦0.55)および斜方晶から単斜晶(0.55≦a)への相変化温度がマイナス40℃以下となり、低温領域において安定した特性が得られる点で好ましい。組成式における「a」および「x」の数値範囲に関する事項および圧電体層3の特徴は、第1の圧電体積層体100で述べたと同様であるので、詳細な記載を省略する。
【0056】
上部電極4は、下部電極5と同様に、金属層または導電性複合酸化物層、あるいはそれらの積層体からなることができる。すなわち、上部電極4は、白金、イリジウムなどの金属層あるいは酸化イリジウムなどの導電性複合酸化物層を用いることができる。
【0057】
本実施形態の第2の圧電体積層体200は、たとえば以下のようにして形成できる。
【0058】
(1) まず、基体1を準備する。基体1としては、第1の圧電体積層体100で述べた基体1と同様のものを用いることができる。基体1としては、たとえばシリコン基板を用いることができる。
【0059】
(2) 図2に示すように、基体1上に、下部電極5を形成する。下部電極5を構成する金属層または導電性複合酸化物層は、たとえば公知のスパッタリング法などによって形成される。
【0060】
(3) 図2に示すように、基体1上に、例えば多結晶ランタン酸ニッケルからなる配向制御層2を形成する。この配向制御層2は、例えば、スパッタリング等の方法で形成できる。
【0061】
(4) 図2に示すように、下部電極5上に、ニオブ酸カリウムナトリウムからなるテンプレート層3aおよびニオブ酸カリウムナトリウムからなる圧電体層3bを順に形成し、上述した組成式で示される圧電体層3を形成する。圧電体層3は、ゾルゲル法やMOD法などの化学溶液堆積法にて形成することができる。テンプレート層3aおよび圧電体層3bの形成方法は、第1の圧電体積層体100の場合と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0062】
(5) 図2に示すように、圧電体層3上に、上部電極4を形成する。上部電極4を構成する金属層または導電性複合酸化物層の構成、形成方法については、第1の圧電体積層体100の電極4と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0063】
(6) 次に、必要に応じて、ポストアニールを酸素雰囲気中でRTA等を用いて行うことができる。これにより、下部電極5(配向制御層2),上部電極4と圧電体層3との良好な界面を形成することができ、かつ圧電体層3の結晶性を改善することができる。
【0064】
以上の工程によって、本実施形態にかかる第2の圧電体積層体200を製造することができる。
【0065】
以上のようにして、圧電体層3を形成することにより、圧電体層3は、組成式(KaNa1−a)xNbO3で表される圧電体から構成される。この圧電体は、室温では斜方晶の構造を有するペロブスカイト型酸化物である。また、圧電体層3は、配向制御層2上に形成されることにより、高い結晶性および配向性を有する。さらに、テンプレート層3aを形成することにより、圧電体層3aの結晶化温度を下げることができ、その結果、Aサイト元素(カリウムおよびナトリウム)の揮発を抑制できので所望の組成を有し、かつ優れた結晶性を有するニオブ酸カリウムナトリウム層を得ることができる。
【0066】
なお、圧電体層3は、ゾルゲル法やMOD法の液相法のみならず、レーザーアブレーション法やスパッタ法等の気相法を用いて形成することもできる。
【0067】
第1、第2の圧電体積層体100,200は、圧電特性に優れた圧電体層3を有し、後述する各種の用途に好適に適用できる。
【0068】
2.実施例
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0069】
2.1.実施例1、参考例1
カリウムエトキシド、ナトリウムエトキシドおよびニオブエトキシドを、K:Na:Nb=1.0:0.2:1.0のモル比で混合し、この混合液をブチルセロソルブ中で還流し、トリプルアルコキシド溶液を調整した。さらに、この溶液の安定化剤としてジエタノールアミンを添加した。このようにして前駆体溶液を調整した。なお、ジエタノールアミンの代わりに酢酸を用いることもできる。この前駆体溶液を、配向制御層として多結晶ランタン酸ニッケル層を形成した基体(ランタン酸ニッケル層/白金層/酸化シリコン層/シリコン基板)上にスピンコート法により塗布し、ホットプレート上で乾燥、仮焼成した後、700℃にてラピッドサーマルアニールを施し、膜厚約30nmのテンプレート層を得た。
【0070】
次いで、カリウムエトキシド、ナトリウムエトキシドおよびニオブエトキシドを、K:Na:Nb=1.0:0.2:1.0のモル比で混合し、この混合液をブチルセロソルブ中で還流し、トリプルアルコキシド溶液を調整した。さらに、この溶液の安定化剤としてジエタノールアミンを添加した。このようにして前駆体溶液を調整した。この前駆体溶液をテンプレート層上にスピンコート法により塗布し、ホットプレート上で乾燥、仮焼成した後、650℃にてラピッドサーマルアニールを施し、ニオブ酸カリウムナトリウム層を形成した。この工程を8回繰り返して、厚さ約1μmの多結晶ニオブ酸ナトリウムカリウム(KNN)層を得た。
【0071】
このサンプルを用いて、その断面をSEMにて観察したところ、図3(A)に示す結果が得られた。この結果から、本実施例のサンプルは、緻密で良好な結晶性を有することが確認された。また、このサンプルについて、XRDによって結晶性を調べたところ、図4(A)に示す結果が得られた。この結果から、本実施例では、KNN層は、1μmの膜厚であっても、(100)に単一配向していることが確認された。
【0072】
参考例1として、実施例1における配向制御層を形成しない他は、実施例1と同様にしてKNN層を形成した。このKNN層をXRDによって結晶性を調べた。その結果を図4(B)に示す。この結果から、白金層上にKNN層を形成すると、KNN層はランダム配向することが確認された。
【0073】
2.2.実施例2
実施例1における、カリウムに対するナトリウムのモル比(モル%)を表1に示すように代えた他は、実施例1と同様にしてKNN層を形成した。すなわち、前駆体溶液中のカリウムに対するナトリウム量(過剰Na量)を、10モル%,20モル%,40モル%および50モル%に調製した。その結果、4種の厚さ約1μmの多結晶KNN層を得た。
【0074】
【表1】
【0075】
得られたKNN層について、組成分析を行った。具体的には、ICP(誘導結合型プラズマ)発光分析法によって、実施例2にかかるKNN層の組成分析を行った。その結果を表1に示す。表1より、実施例のKNN層では、式(KaNa1−a)xNbO3におけるxは1より大きく、Nbに対して、KおよびNaが化学量論組成に比べて過剰に含まれることが確認された。また、前駆体溶液におけるNa量を増加させても「x」の値は最大で約1.1であった。
【0076】
2.3.比較例1
テンプレート層を形成しない他は、実施例1と同様にして、基体上に膜厚約1μmのKNN層を形成した。このサンプルを用いて、その断面をSEMにて観察したところ、図3(B)に示す結果が得られた。この結果から、本比較例1のサンプルは、実施例1に比べて、結晶性が劣ることが確認された。
【0077】
3.適用例
3.1.表面弾性波素子
次に、本発明の第1の圧電体積層体100を適用した表面弾性波素子の一例について、図面を参照しながら説明する。
【0078】
図5は、本実施形態に係る表面弾性波素子300を模式的に示す断面図である。
【0079】
表面弾性波素子300は、図1に示す第1の圧電体積層体100を適用して形成される。すなわち、表面弾性波素子300は、圧電体積層体100における基体1と、基体1上に形成された配向制御層2と、配向制御層2上に形成された圧電体層3と、圧電体層3上に形成された電極、すなわちインターディジタル型電極(以下、「IDT電極」という)18,19と、を含む。IDT電極18,19は、図1に示す電極4をパターニングして形成される。
【0080】
3.2.周波数フィルタ
次に、本発明の表面弾性波素子を適用した周波数フィルタの一例について、図面を参照しながら説明する。図6は、周波数フィルタを模式的に示す図である。
【0081】
図6に示すように、周波数フィルタは積層体140を有する。この積層体140としては、上述した表面弾性波素子300と同様の積層体(図5参照)を用いることができる。すなわち、積層体140は、図1に示す基体1と、配向制御層2と、圧電体層3とを有することができる。
【0082】
積層体140は、その上面に、図1に示す電極4をパターニングして形成されるIDT電極141、142を有する。また、IDT電極141、142を挟むように、積層体140の上面には吸音部143、144が形成されている。吸音部143、144は、積層体140の表面を伝播する表面弾性波を吸収するものである。一方のIDT電極141には高周波信号源145が接続されており、他方のIDT電極142には信号線が接続されている。
【0083】
3.3.発振器
次に、本発明の表面弾性波素子を適用した発振器の一例について、図面を参照しながら説明する。図7は、発振器を模式的に示す図である。
【0084】
図7に示すように、発振器は積層体150を有する。この積層体150としては、上述した表面弾性波素子300と同様の積層体(図5参照)を用いることができる。すなわち、積層体150は、図1に示す基体1と、配向制御層2と、圧電体層3とを有することができる。
【0085】
積層体150の上面には、図1に示す電極4をパターニングして形成される、IDT電極151が形成されており、さらに、IDT電極151を挟むように、IDT電極152、153が形成されている。IDT電極151を構成する一方の櫛歯状電極151aには、高周波信号源154が接続されており、他方の櫛歯状電極151bには、信号線が接続されている。なお、IDT電極151は、電気信号印加用電極に相当し、IDT電極152、153は、IDT電極151によって発生される表面弾性波の特定の周波数成分または特定の帯域の周波数成分を共振させる共振用電極に相当する。
【0086】
また、前述した発振器をVCSO(Voltage Controlled SAW Oscillator:電圧制御SAW発振器)に応用することもできる。
【0087】
以上述べたように、周波数フィルタおよび発振器は、本発明に係る表面弾性波素子を有することができる。
【0088】
3.4.薄膜圧電共振子
次に、本発明の圧電体積層体を適用した薄膜圧電共振子の一例について、図面を参照しながら説明する。
【0089】
3.4.1.第1の薄膜圧電共振子
図8は、本実施形態の一例である第1の薄膜圧電共振子700を模式的に示す図である。第1の薄膜圧電共振子700は、ダイアフラム型の薄膜圧電共振子である。
【0090】
第1の薄膜圧電共振子700は、基板701と、弾性層703と、下部電極704と、圧電体層705と、上部電極706と、を含む。薄膜圧電共振子700における基板701と、下部電極704、圧電体層705、および上部電極706は、それぞれ図2に示す圧電体積層体200における基体1、下部電極5、配向制御層2、圧電体層3、および上部電極4に相当する。また、弾性層703としては、図2において図示しないバッファ層などの層を用いることができる。すなわち、第1の薄膜圧電共振子700は、図2に示す圧電体積層体200を有する。
【0091】
基板701には、基板701を貫通するビアホール702が形成されている。上部電極706上には、配線708が設けられている。配線708は、弾性層703上に形成された電極709と、パッド710を介して電気的に接続されている。
【0092】
3.4.2.第2の薄膜圧電共振子
図9は、本実施形態の一例である第2の薄膜圧電共振子800を模式的に示す図である。第2の薄膜圧電共振子800が図8に示す第1の薄膜圧電共振子700と主に異なるところは、ビアホールを形成せず、基板801と弾性層803との間にエアギャップ802を形成した点にある。
【0093】
第2の薄膜圧電共振子800は、基板801と、弾性層803と、下部電極804と、圧電体層805と、上部電極806と、を含む。薄膜圧電共振子800における基板801、下部電極804、圧電体層805、および上部電極806は、それぞれ図2に示す圧電体積層体200における基体1、下部電極5、配向制御層2、圧電体層3、および上部電極4に相当する。また、弾性層803としては、図2における配向制御層2などの層を用いることができる。すなわち、第2の薄膜圧電共振子800は、図2に示す圧電体積層体200を有する。エアギャップ802は、基板801と、弾性層803との間に形成された空間である。
【0094】
本実施形態に係る圧電薄層共振子(例えば、第1の薄膜圧電共振子700および第2の薄膜圧電共振子800)は、共振子、周波数フィルタ、または、発振器として機能することができる。
【0095】
3.5.圧電アクチュエータ
本発明の第2の圧電体積層体200を圧電アクチュエータに適応した例として、インクジェット式記録ヘッドについて説明する。図10は、本実施形態に係る圧電アクチュエータを適用したインクジェット式記録ヘッドの概略構成を示す側断面図であり、図11は、このインクジェット式記録ヘッドの分解斜視図であり、通常使用される状態とは上下逆に示したものである。
【0096】
図10および図11に示すように、インクジェット式記録ヘッド50は、ヘッド本体57と、ヘッド本体57上に形成される圧電部54と、を含む。圧電部54には図2に示す圧電体積層体200が適用され、下部電極5、配向制御層2、圧電体層3および上部電極4が順に積層して構成されている。インクジェット式記録ヘッドにおいて、圧電部54は、圧電アクチュエータとして機能する。
【0097】
ヘッド本体57は、ノズル板51と、インク室基板52と、弾性層55と、から構成されている。図2に示す圧電体積層体200における基体1は、図10における弾性層55を構成する。弾性層55としては、図2における配向制御層2などの層を用いることができる。また、圧電体積層体200における基体1は、図10におけるインク室基板52を構成する。インク室基板52にはキャビティ521が形成されている。また、ノズル板51には、キャビティ521と連続するノズル511が形成されている。そして、図11に示すように、これらが筐体56に収納されて、インクジェット式記録ヘッド50が構成されている。ノズル511の穴径は10〜30μmである。またノズル511は、1インチあたり90ノズルないし300ノズルのピッチで形成される。
【0098】
各圧電部は、圧電素子駆動回路(図示しない)に電気的に接続され、圧電素子駆動回路の信号に基づいて作動(振動、変形)するよう構成されている。すなわち、各圧電部54はそれぞれ振動源(ヘッドアクチュエータ)として機能する。弾性層55は、圧電部54の振動(たわみ)によって振動し、キャビティ521の内部圧力を瞬間的に高めるよう機能する。圧電体への最大印加電圧は20V〜40Vであり、20kHz〜50kHzで駆動する。代表的なインク吐出量は2ピコリットルから5ピコリットルの間である。
【0099】
なお、上述では、インクを吐出するインクジェット式記録ヘッドを一例として説明したが、本実施形態は、圧電体積層体を圧電アクチュエータとして用いた液体噴射ヘッドを対象としたものである。液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンタ等の画像記録装置に用いられる記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(面発光ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等を挙げることができる。
【0100】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。たとえば、本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(たとえば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の実施形態にかかる第1の圧電体積層体を模式的に示す断面図。
【図2】本発明の実施形態にかかる第2の圧電体積層体を模式的に示す断面図。
【図3】(A)は、本発明の実施例における圧電体層の断面のSEMによる図、(B)は比較例における圧電体層の断面のSEMによる図。
【図4】(A)は、本発明の実施例における圧電体層のXRDの図、(B)は参考例における圧電体層のXRDの図。
【図5】本発明の実施形態にかかる表面弾性波素子を模式的に示す図。
【図6】本発明の実施形態にかかる表面弾性波素子を適用した周波数フィルタを模式的に示す図。
【図7】本発明の実施形態にかかる表面弾性波素子を適用した発振器を模式的に示す図。
【図8】本発明の実施形態にかかる第1の薄膜圧電共振子を模式的に示す図。
【図9】本発明の実施形態にかかる第2の薄膜圧電共振子を模式的に示す図。
【図10】本発明の実施形態にかかる圧電アクチュエータを適用したインクジェット式ヘッドを模式的に示す図。
【図11】本発明の実施形態にかかる圧電アクチュエータを適用したインクジェット式ヘッドを模式的に示す斜視図。
【符号の説明】
【0102】
1 基体、2 配向制御層、3 圧電体層、3a テンプレート層、3b 圧電体層、4 電極(上部電極)、5 下部電極、100,200 圧電体積層体、300 表面弾性波素子、700,800 薄膜圧電共振子
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニオブ酸カリウムナトリウム層を有する圧電体積層体、当該圧電体積層体を含む表面弾性波素子、薄膜圧電共振子および圧電アクチュエータ、ならびに圧電体積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、携帯電話などの移動体通信を中心とした通信分野の著しい発展に伴い、表面弾性波素子の需要が急速に拡大している。表面弾性波素子の開発の方向としては、小型化、高効率化、高周波化の方向にある。そのためには、より大きな電気機械結合係数(k2)、より安定な温度特性、より大きな表面弾性波伝播速度、が必要となる。
【0003】
表面弾性波素子は、従来、主として圧電体の単結晶上にインターディジタル型電極を形成した構造が用いられてきた。圧電単結晶の代表的なものとしては、水晶、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)などがある。例えば、広帯域化や通過帯域の低損失化が要求されるRFフィルタの場合には、電気機械結合係数の大きいLiNbO3が用いられる。一方、狭帯域でも安定な温度特性が必要なIFフィルタの場合は、中心周波数温度係数の小さい水晶が用いられる。さらに、電気機械結合係数および中心周波数温度係数がそれぞれLiNbO3と水晶の間にあるLiTaO3はその中間的な役割を果たしている。また、最近、ニオブ酸カリウム(KNbO3)単結晶において、大きな電気機械結合係数の値を示すカット角が見出された。KNbO3単結晶板は、特開平10−65488号公報に記載されている。
【0004】
圧電単結晶基板を用いた表面弾性波素子では、電気機械結合係数、温度係数、音速などの特性は材料固有の値であり、カット角および伝播方向で決定される。たとえば、0°Y−XKNbO3単結晶基体は電気機械結合係数に優れるが、45°から75°までの回転Y−XKNbO3単結晶基体のような零温度特性は室温付近において示さない。
【特許文献1】特開平10−65488号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、基体上にニオブ酸カリウムナトリウム層が形成された圧電体積層体を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、本発明の圧電体積層体を有する表面弾性波素子、薄膜圧電共振子および圧電アクチュエータを提供することにある。
【0007】
本発明のさらに他の目的は、本発明の圧電体積層体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる圧電体積層体は、
基体と、
前記基体の上方に形成されたテンプレート層と、
前記テンプレート層の上方に形成されたニオブ酸カリウムナトリウムからなる圧電体層と、を含む。
【0009】
本発明の圧電体積層体によれば、テンプレート層を有することにより、圧電体層の結晶化温度を下げることができ、その結果、所望の組成を有し、かつ優れた結晶性を有するニオブ酸カリウムナトリウム層を有する。
【0010】
本発明において、特定のA部材(以下、「A部材」という。)の上方に形成された特定のB部材(以下、「B部材」という。)というとき、A部材の上に直接B部材が設けられた場合と、A部材の上に他の部材を介してB部材が設けられた場合とを含む意味である。
【0011】
本発明の圧電体積層体において、前記第1圧電体層は、前記組成式において、0.1<a<1であり、1≦x≦1.2であることができる。
【0012】
本発明の圧電体積層体において、前記第1圧電体層は、1<x≦1.1であることができる。
【0013】
本発明の圧電体積層体において、前記テンプレート層は、前記圧電体層と同じ組成を有するニオブ酸カリウムナトリウムからなることができる。
【0014】
本発明の圧電体積層体において、前記テンプレート層の下に、ランタン酸ニッケルからなる配向制御層を有することができる。
【0015】
本発明の圧電体積層体において、前記ランタン酸ニッケルは多結晶であることができる。
【0016】
本発明の圧電体積層体は、前記圧電体層の上方に形成された電極を有することができる。
【0017】
本発明の圧電体積層体は、前記基体と前記圧電体層との間に形成された第1電極と、
前記第1圧電体層の上方に形成された第2電極と、を有することができる。
【0018】
本発明にかかる表面弾性波素子は、本発明の圧電体積層体を含む。
【0019】
本発明にかかる薄膜圧電共振子は、本発明の圧電体積層体を含む。
【0020】
本発明にかかる圧電アクチュエータは、本発明の圧電体積層体を含む。
【0021】
本発明にかかる圧電体積層体の製造方法は、
基体の上方に、テンプレート層を化学溶液堆積法によって形成する工程と、
前記テンプレート層の上方にニオブ酸カリウムナトリウムからなる圧電体層を化学溶液堆積法によって形成する工程と、を含む。
【0022】
本発明の製造方法によれば、テンプレート層を形成することにより、圧電体層の結晶化温度を下げることができ、その結果、Aサイト元素(カリウムおよびナトリウム)の揮発を抑制できるので所望の組成を有し、かつ優れた結晶性を有するニオブ酸カリウムナトリウム層を得ることができる。
【0023】
本発明の製造方法において、前記テンプレート層を形成するための溶液と、前記圧電体層を形成するための溶液とは、同じ組成を有することができる。
【0024】
本発明の製造方法において、前記テンプレート層を形成する前に、前記基体の上方にランタン酸ニッケルからなる配向制御層を形成する工程を有することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明にかかる実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0026】
1.圧電体積層体
1.1.第1の圧電体積層体
図1は、本実施形態に係る第1の圧電体積層体100の一例を模式的に示す断面図である。
【0027】
圧電体積層体100は、基体1と、基体1上に形成された配向制御層2と、配向制御層2上に形成されたニオブ酸カリウムナトリウムからなる圧電体層3と、圧電体層3上に形成された電極4とを有する。
【0028】
基体1は、圧電体積層体100の用途によって選択され、その材料、構成は特に限定されない。基体1としては、絶縁性基板、半導体基板等を用いることができる。絶縁性基板としては、たとえばサファイア基板、STO基板、プラスチック基板、ガラス基板などを用いることができ、半導体基板としてはシリコン基板などを用いることができる。また、基体1は、基板単体あるいは基板上に他の層が積層された積層体であってもよい。
【0029】
配向制御層2は、バッファ層あるいはシード層と呼ばれ、必要に応じて形成される。配向制御層2は、圧電体層3の結晶配向性を制御する機能を有する。すなわち、配向制御層2上に形成される圧電体層3は、配向制御層2の結晶構造を引き継いだ結晶構造となる。かかる配向制御層2としては、圧電体層3と同様の結晶構造を有する複合酸化物を用いることができる。配向制御層2としては、たとえば、ランタン酸ニッケル(LaNiO3)などのペロブスカイト型酸化物を用いることができる。ランタン酸ニッケルは、多結晶であることができる。配向制御層2は、圧電体層3の配向を制御できればよく、例えば50ないし100nmの膜厚を有することができる。
【0030】
圧電体層3は、配向制御層2上に形成されたテンプレート層3aと、該テンプレート層3a上に形成された圧電体層3bとを有する。テンプレート層3aは、圧電体層3bと同じニオブ酸カリウムナトリウム層によって形成される。テンプレート層3aは、配向制御層2の結晶配向を反映してエピタキシャル成長し、高い結晶性を有する。したがって、テンプレート層3aが存在することにより、圧電体層3bは、テンプレート層3aがない場合より、さらに優れた結晶性、配向性およびモフォロジーを有し、また、圧電体層3bの結晶化温度を下げる機能を有することができる。テンプレート層3aは、例えば、5ないし100nmの膜厚を有することができる。
【0031】
テンプレート層3aは、圧電体層3bと同じ組成を有することが望ましいが、圧電体層3bと異なる材質の層であってもよい。
【0032】
圧電体層3は、組成式(KaNa1−a)xNbO3で表される圧電体から構成される。前記組成式において、好ましくは0.1<a<1、より好ましくは0.2≦a≦0.7であり、好ましくは1≦x≦1.2、より好ましくは1<x≦1.1である。組成式(KaNa1−a)xNbO3で表される圧電体は、室温では斜方晶の構造をとる。前記組成式において、「a」が上記範囲にあることにより、斜方晶から菱面体晶(a≦0.55)および斜方晶から単斜晶(0.55≦a)への相変化温度がマイナス40℃以下となり、低温領域において安定した特性が得られる点で好ましい。「a」が0.1以下であると、結晶化のための熱処理時にカリウムの揮発のために異相が生じ、圧電特性や強誘電体特性などの物性に悪影響を及ぼす。「x」が上記範囲にあることにより、低温にて結晶が形成されるのでカリウムの揮発が抑制され、層密度が向上する点で好ましい。
【0033】
本実施形態の圧電体層3は、擬立方晶(100)に優先配向していることが望ましい。
【0034】
圧電体層3の代表的な膜厚は、圧電体積層体100の用途によって選択される。圧電体層3の代表的な膜厚は、300nmから3.0μmである。ただし、この厚みの上限値に関しては、薄層としての緻密さ、結晶配向性を維持する範囲で厚くすることができ、10μm程度まで許容できる。
【0035】
電極4は、金属層または導電性複合酸化物層から構成できる。電極4は、金属層と導電性複合酸化物層の積層体でもよい。電極4の材料としては、白金、イリジウム、アルミニウムなどの金属層あるいは酸化イリジウムなどの導電性複合酸化物層を用いることができる。
【0036】
本実施形態の第1の圧電体積層体100は、たとえば以下のようにして形成できる。
【0037】
(1) まず、基体1を準備する。基体1は、上述したように圧電体積層体100の用途で選択される。基体1としては、たとえばSTO(SrTiO3)基板、Nb:STO(NbドープSrTiO3)基板、サファイア基板を用いることができる。
【0038】
(2) 図1に示すように、基体1上に、例えば多結晶ランタン酸ニッケルからなる配向制御層2を形成する。この配向制御層2は、例えば、スパッタリング等の方法で形成できる。
【0039】
(3) 図1に示すように、配向制御層2上に、ニオブ酸カリウムナトリウムからなるテンプレート層3aおよびニオブ酸カリウムナトリウムからなる圧電体層3bを順に形成し、上述した組成式で示される圧電体層3を形成する。圧電体層3は、ゾルゲル法やMOD(Metal Organic Decomposition)法などの化学溶液堆積法にて形成することができる。圧電体層3は、前記組成式の組成となる前駆体溶液を用いて塗布層を形成し、該塗布層を結晶化させることにより形成できる。
【0040】
圧電体層3の形成材料である前駆体溶液については、圧電体層3となる圧電材料の構成金属をそれぞれ含んでなる有機金属化合物を各金属が所望のモル比となるように混合し、さらにアルコールなどの有機溶媒を用いてこれらを溶解、または分散させることにより作製することができる。圧電材料の構成金属をそれぞれ含んでなる有機金属化合物としては、金属アルコキシドや有機酸塩、βジケトン錯体といった有機金属化合物を用いることができる。具体的には、圧電材料として以下のものが挙げられる。
【0041】
ナトリウム(Na)を含む有機金属化合物としては、たとえば、ナトリウムエトキシドが挙げられる。カリウム(K)を含む有機金属化合物としては、たとえば、カリウムエトキシドが挙げられる。ニオブ(Nb)を含む有機金属化合物としては、たとえばニオブエトキシドが挙げられる。圧電材料の構成金属を含んでなる有機金属化合物は、これらに限定されず、公知のものを用いることができる。
【0042】
前駆体溶液には、必要に応じて安定化剤等の各種添加剤を添加することができる。さらに、前駆体溶液に加水分解・重縮合を起こさせる場合には、前駆体溶液に適当な量の水とともに、触媒として酸あるいは塩基を添加することができる。
【0043】
テンプレート層3aは、以下のようにして形成される。すなわち、テンプレート層3aが所望の組成比となるように、原料溶液を調製する。この原料溶液を配向制御層2上に塗布した後、熱処理を加えて塗層を結晶化させることにより、テンプレート層3aを形成することができる。具体的には、たとえば、原料溶液の塗布工程、アルコールなどの溶媒の除去工程、塗層の乾燥熱処理工程および脱脂熱処理工程の一連の工程を行い、その後に結晶化アニールにより焼成してテンプレート層3aを形成する。テンプレート層3aの結晶化アニールは、550ないし750℃で行うことができる。テンプレート層3aは、前述したように、5ないし100nmの膜厚とすることにより、配向制御層2の配向性を引き継いだ良好な結晶となる。
【0044】
次に、圧電体層3bは、テンプレート層3a上に以下のようにして形成される。すなわち、圧電体層3bが所望の組成比となるように、原料溶液を調製する。この原料溶液をテンプレート層3a上に塗布した後、熱処理を加えて塗層を結晶化させることにより、圧電体層3bを形成することができる。具体的には、たとえば、原料溶液の塗布工程、アルコールなどの溶媒の除去工程、塗層の乾燥熱処理工程および脱脂熱処理工程の一連の工程を所望の回数行い、その後に結晶化アニールにより焼成して圧電体層3bを形成する。また、上述した塗布工程、溶媒の除去工程、塗層の乾燥熱処理工程、脱脂熱処理工程および結晶化アニール工程からなる一連の工程を所望の回数行うことにより、圧電体層3bを形成することもできる。圧電体層3bの結晶化アニールは、テンプレート層3aの結晶化アシストによって結晶化温度をテンプレート層3aがない場合に比べて低くでき、550ないし650℃で行うことができる。このように圧電体層3bの結晶化温度を下げることにより、揮発しやすいAサイト元素(カリウムおよびナトリウム)の揮発を抑制でき、所望の組成を有するニオブ酸カリウムナトリウム層を得ることができる。
【0045】
(4) 図1に示すように、圧電体層3上に、電極4を形成する。電極4を構成する金属層あるいは導電性複合酸化物層は、たとえば公知のスパッタリングなどによって形成される。
【0046】
(5) 次に、必要に応じて、ポストアニールを酸素雰囲気中でRTA(ラピッドサーマルアニール)等を用いて行うことができる。これにより、電極4と圧電体層3との良好な界面を形成することができ、かつ圧電体層3の結晶性を改善することができる。
【0047】
以上の工程によって、本実施形態にかかる第1の圧電体積層体100を製造することができる。
【0048】
以上のようにして、圧電体層3を形成することにより、圧電体層3は、組成式(KaNa1−a)xNbO3で表される圧電体から構成される。この圧電体は、室温では斜方晶の構造を有するペロブスカイト型酸化物である。また、圧電体層3は、配向制御層2上に形成されることにより、高い結晶性および配向性を有する。さらに、テンプレート層3aを形成することにより、圧電体層3aの結晶化温度を下げることができ、その結果、Aサイト元素(カリウムおよびナトリウム)の揮発を抑制できるので所望の組成を有し、かつ優れた結晶性を有するニオブ酸カリウムナトリウム層を得ることができる。
【0049】
1.2.第2の圧電体積層体
図2は、本実施形態に係る第2の圧電体積層体200の一例を模式的に示す断面図である。
【0050】
圧電体積層体200は、基体1と、基体1上に形成された第1電極(下部電極)5と、下部電極5上に形成された配向制御層2と、配向制御層2上に形成されたニオブ酸カリウムナトリウムからなる圧電体層3と、圧電体層3上に形成された第2電極(上部電極)4とを含む。
【0051】
基体1は、圧電体積層体200の用途によって選択され、その材料、構成は特に限定されない。基体1としては、第1の圧電体積層体100で述べたと同様のものを用いることができる。
【0052】
下部電極5は、白金族などの金属層あるいは導電性複合酸化物層を用いることができる。また、下部電極5としては、金属層と導電性複合酸化物層とが積層された多層構造を有する導電層を用いることができる。
【0053】
配向制御層2は、第1の圧電体積層体100で述べたように、バッファ層あるいはシード層と呼ばれ、必要に応じて形成される。配向制御層2は、圧電体層3の結晶配向性を制御する機能を有する。かかる配向制御層2としては、圧電体層3と同様の結晶構造を有する複合酸化物を用いることができる。配向制御層2としては、たとえば、ランタン酸ニッケル(LaNiO3)などのペロブスカイト型酸化物を用いることができる。配向制御層2は、圧電体層3の配向を制御できればよく、例えば5ないし100nmの膜厚を有することができる。ランタン酸ニッケルからなる配向制御層2は、導電性を有し、下部電極としても機能する。
【0054】
圧電体層3は、第1の圧電体積層体100における圧電体層3と同様である。すなわち、圧電体層3は、配向制御層2上に形成されたテンプレート層3aと、該テンプレート層3a上に形成された圧電体層3bとを有する。テンプレート層3aは、圧電体層3bと同じニオブ酸カリウムナトリウム層によって形成される。テンプレート層3aは、配向制御層2の結晶配向を反映してエピタキシャル成長し、高い結晶性を有する。したがって、テンプレート層3aが存在することにより、圧電体層3bは、テンプレート層3aがない場合より、さらに優れた結晶性、配向性およびモフォロジーを有し、圧電体層3bの結晶化温度を下げることができる。
【0055】
圧電体層3は、組成式(KaNa1−a)xNbO3で表される圧電体から構成される。前記組成式において、好ましくは0.1<a<1、より好ましくは0.2≦a≦0.7であり、好ましくは1≦x≦1.2、より好ましくは1<x≦1.1である。組成式(KaNa1−a)xNbO3で表される圧電体は、室温では斜方晶の構造をとる。前記組成式において、「a」が上記範囲にあることにより、斜方晶から菱面体晶(a≦0.55)および斜方晶から単斜晶(0.55≦a)への相変化温度がマイナス40℃以下となり、低温領域において安定した特性が得られる点で好ましい。組成式における「a」および「x」の数値範囲に関する事項および圧電体層3の特徴は、第1の圧電体積層体100で述べたと同様であるので、詳細な記載を省略する。
【0056】
上部電極4は、下部電極5と同様に、金属層または導電性複合酸化物層、あるいはそれらの積層体からなることができる。すなわち、上部電極4は、白金、イリジウムなどの金属層あるいは酸化イリジウムなどの導電性複合酸化物層を用いることができる。
【0057】
本実施形態の第2の圧電体積層体200は、たとえば以下のようにして形成できる。
【0058】
(1) まず、基体1を準備する。基体1としては、第1の圧電体積層体100で述べた基体1と同様のものを用いることができる。基体1としては、たとえばシリコン基板を用いることができる。
【0059】
(2) 図2に示すように、基体1上に、下部電極5を形成する。下部電極5を構成する金属層または導電性複合酸化物層は、たとえば公知のスパッタリング法などによって形成される。
【0060】
(3) 図2に示すように、基体1上に、例えば多結晶ランタン酸ニッケルからなる配向制御層2を形成する。この配向制御層2は、例えば、スパッタリング等の方法で形成できる。
【0061】
(4) 図2に示すように、下部電極5上に、ニオブ酸カリウムナトリウムからなるテンプレート層3aおよびニオブ酸カリウムナトリウムからなる圧電体層3bを順に形成し、上述した組成式で示される圧電体層3を形成する。圧電体層3は、ゾルゲル法やMOD法などの化学溶液堆積法にて形成することができる。テンプレート層3aおよび圧電体層3bの形成方法は、第1の圧電体積層体100の場合と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0062】
(5) 図2に示すように、圧電体層3上に、上部電極4を形成する。上部電極4を構成する金属層または導電性複合酸化物層の構成、形成方法については、第1の圧電体積層体100の電極4と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0063】
(6) 次に、必要に応じて、ポストアニールを酸素雰囲気中でRTA等を用いて行うことができる。これにより、下部電極5(配向制御層2),上部電極4と圧電体層3との良好な界面を形成することができ、かつ圧電体層3の結晶性を改善することができる。
【0064】
以上の工程によって、本実施形態にかかる第2の圧電体積層体200を製造することができる。
【0065】
以上のようにして、圧電体層3を形成することにより、圧電体層3は、組成式(KaNa1−a)xNbO3で表される圧電体から構成される。この圧電体は、室温では斜方晶の構造を有するペロブスカイト型酸化物である。また、圧電体層3は、配向制御層2上に形成されることにより、高い結晶性および配向性を有する。さらに、テンプレート層3aを形成することにより、圧電体層3aの結晶化温度を下げることができ、その結果、Aサイト元素(カリウムおよびナトリウム)の揮発を抑制できので所望の組成を有し、かつ優れた結晶性を有するニオブ酸カリウムナトリウム層を得ることができる。
【0066】
なお、圧電体層3は、ゾルゲル法やMOD法の液相法のみならず、レーザーアブレーション法やスパッタ法等の気相法を用いて形成することもできる。
【0067】
第1、第2の圧電体積層体100,200は、圧電特性に優れた圧電体層3を有し、後述する各種の用途に好適に適用できる。
【0068】
2.実施例
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0069】
2.1.実施例1、参考例1
カリウムエトキシド、ナトリウムエトキシドおよびニオブエトキシドを、K:Na:Nb=1.0:0.2:1.0のモル比で混合し、この混合液をブチルセロソルブ中で還流し、トリプルアルコキシド溶液を調整した。さらに、この溶液の安定化剤としてジエタノールアミンを添加した。このようにして前駆体溶液を調整した。なお、ジエタノールアミンの代わりに酢酸を用いることもできる。この前駆体溶液を、配向制御層として多結晶ランタン酸ニッケル層を形成した基体(ランタン酸ニッケル層/白金層/酸化シリコン層/シリコン基板)上にスピンコート法により塗布し、ホットプレート上で乾燥、仮焼成した後、700℃にてラピッドサーマルアニールを施し、膜厚約30nmのテンプレート層を得た。
【0070】
次いで、カリウムエトキシド、ナトリウムエトキシドおよびニオブエトキシドを、K:Na:Nb=1.0:0.2:1.0のモル比で混合し、この混合液をブチルセロソルブ中で還流し、トリプルアルコキシド溶液を調整した。さらに、この溶液の安定化剤としてジエタノールアミンを添加した。このようにして前駆体溶液を調整した。この前駆体溶液をテンプレート層上にスピンコート法により塗布し、ホットプレート上で乾燥、仮焼成した後、650℃にてラピッドサーマルアニールを施し、ニオブ酸カリウムナトリウム層を形成した。この工程を8回繰り返して、厚さ約1μmの多結晶ニオブ酸ナトリウムカリウム(KNN)層を得た。
【0071】
このサンプルを用いて、その断面をSEMにて観察したところ、図3(A)に示す結果が得られた。この結果から、本実施例のサンプルは、緻密で良好な結晶性を有することが確認された。また、このサンプルについて、XRDによって結晶性を調べたところ、図4(A)に示す結果が得られた。この結果から、本実施例では、KNN層は、1μmの膜厚であっても、(100)に単一配向していることが確認された。
【0072】
参考例1として、実施例1における配向制御層を形成しない他は、実施例1と同様にしてKNN層を形成した。このKNN層をXRDによって結晶性を調べた。その結果を図4(B)に示す。この結果から、白金層上にKNN層を形成すると、KNN層はランダム配向することが確認された。
【0073】
2.2.実施例2
実施例1における、カリウムに対するナトリウムのモル比(モル%)を表1に示すように代えた他は、実施例1と同様にしてKNN層を形成した。すなわち、前駆体溶液中のカリウムに対するナトリウム量(過剰Na量)を、10モル%,20モル%,40モル%および50モル%に調製した。その結果、4種の厚さ約1μmの多結晶KNN層を得た。
【0074】
【表1】
【0075】
得られたKNN層について、組成分析を行った。具体的には、ICP(誘導結合型プラズマ)発光分析法によって、実施例2にかかるKNN層の組成分析を行った。その結果を表1に示す。表1より、実施例のKNN層では、式(KaNa1−a)xNbO3におけるxは1より大きく、Nbに対して、KおよびNaが化学量論組成に比べて過剰に含まれることが確認された。また、前駆体溶液におけるNa量を増加させても「x」の値は最大で約1.1であった。
【0076】
2.3.比較例1
テンプレート層を形成しない他は、実施例1と同様にして、基体上に膜厚約1μmのKNN層を形成した。このサンプルを用いて、その断面をSEMにて観察したところ、図3(B)に示す結果が得られた。この結果から、本比較例1のサンプルは、実施例1に比べて、結晶性が劣ることが確認された。
【0077】
3.適用例
3.1.表面弾性波素子
次に、本発明の第1の圧電体積層体100を適用した表面弾性波素子の一例について、図面を参照しながら説明する。
【0078】
図5は、本実施形態に係る表面弾性波素子300を模式的に示す断面図である。
【0079】
表面弾性波素子300は、図1に示す第1の圧電体積層体100を適用して形成される。すなわち、表面弾性波素子300は、圧電体積層体100における基体1と、基体1上に形成された配向制御層2と、配向制御層2上に形成された圧電体層3と、圧電体層3上に形成された電極、すなわちインターディジタル型電極(以下、「IDT電極」という)18,19と、を含む。IDT電極18,19は、図1に示す電極4をパターニングして形成される。
【0080】
3.2.周波数フィルタ
次に、本発明の表面弾性波素子を適用した周波数フィルタの一例について、図面を参照しながら説明する。図6は、周波数フィルタを模式的に示す図である。
【0081】
図6に示すように、周波数フィルタは積層体140を有する。この積層体140としては、上述した表面弾性波素子300と同様の積層体(図5参照)を用いることができる。すなわち、積層体140は、図1に示す基体1と、配向制御層2と、圧電体層3とを有することができる。
【0082】
積層体140は、その上面に、図1に示す電極4をパターニングして形成されるIDT電極141、142を有する。また、IDT電極141、142を挟むように、積層体140の上面には吸音部143、144が形成されている。吸音部143、144は、積層体140の表面を伝播する表面弾性波を吸収するものである。一方のIDT電極141には高周波信号源145が接続されており、他方のIDT電極142には信号線が接続されている。
【0083】
3.3.発振器
次に、本発明の表面弾性波素子を適用した発振器の一例について、図面を参照しながら説明する。図7は、発振器を模式的に示す図である。
【0084】
図7に示すように、発振器は積層体150を有する。この積層体150としては、上述した表面弾性波素子300と同様の積層体(図5参照)を用いることができる。すなわち、積層体150は、図1に示す基体1と、配向制御層2と、圧電体層3とを有することができる。
【0085】
積層体150の上面には、図1に示す電極4をパターニングして形成される、IDT電極151が形成されており、さらに、IDT電極151を挟むように、IDT電極152、153が形成されている。IDT電極151を構成する一方の櫛歯状電極151aには、高周波信号源154が接続されており、他方の櫛歯状電極151bには、信号線が接続されている。なお、IDT電極151は、電気信号印加用電極に相当し、IDT電極152、153は、IDT電極151によって発生される表面弾性波の特定の周波数成分または特定の帯域の周波数成分を共振させる共振用電極に相当する。
【0086】
また、前述した発振器をVCSO(Voltage Controlled SAW Oscillator:電圧制御SAW発振器)に応用することもできる。
【0087】
以上述べたように、周波数フィルタおよび発振器は、本発明に係る表面弾性波素子を有することができる。
【0088】
3.4.薄膜圧電共振子
次に、本発明の圧電体積層体を適用した薄膜圧電共振子の一例について、図面を参照しながら説明する。
【0089】
3.4.1.第1の薄膜圧電共振子
図8は、本実施形態の一例である第1の薄膜圧電共振子700を模式的に示す図である。第1の薄膜圧電共振子700は、ダイアフラム型の薄膜圧電共振子である。
【0090】
第1の薄膜圧電共振子700は、基板701と、弾性層703と、下部電極704と、圧電体層705と、上部電極706と、を含む。薄膜圧電共振子700における基板701と、下部電極704、圧電体層705、および上部電極706は、それぞれ図2に示す圧電体積層体200における基体1、下部電極5、配向制御層2、圧電体層3、および上部電極4に相当する。また、弾性層703としては、図2において図示しないバッファ層などの層を用いることができる。すなわち、第1の薄膜圧電共振子700は、図2に示す圧電体積層体200を有する。
【0091】
基板701には、基板701を貫通するビアホール702が形成されている。上部電極706上には、配線708が設けられている。配線708は、弾性層703上に形成された電極709と、パッド710を介して電気的に接続されている。
【0092】
3.4.2.第2の薄膜圧電共振子
図9は、本実施形態の一例である第2の薄膜圧電共振子800を模式的に示す図である。第2の薄膜圧電共振子800が図8に示す第1の薄膜圧電共振子700と主に異なるところは、ビアホールを形成せず、基板801と弾性層803との間にエアギャップ802を形成した点にある。
【0093】
第2の薄膜圧電共振子800は、基板801と、弾性層803と、下部電極804と、圧電体層805と、上部電極806と、を含む。薄膜圧電共振子800における基板801、下部電極804、圧電体層805、および上部電極806は、それぞれ図2に示す圧電体積層体200における基体1、下部電極5、配向制御層2、圧電体層3、および上部電極4に相当する。また、弾性層803としては、図2における配向制御層2などの層を用いることができる。すなわち、第2の薄膜圧電共振子800は、図2に示す圧電体積層体200を有する。エアギャップ802は、基板801と、弾性層803との間に形成された空間である。
【0094】
本実施形態に係る圧電薄層共振子(例えば、第1の薄膜圧電共振子700および第2の薄膜圧電共振子800)は、共振子、周波数フィルタ、または、発振器として機能することができる。
【0095】
3.5.圧電アクチュエータ
本発明の第2の圧電体積層体200を圧電アクチュエータに適応した例として、インクジェット式記録ヘッドについて説明する。図10は、本実施形態に係る圧電アクチュエータを適用したインクジェット式記録ヘッドの概略構成を示す側断面図であり、図11は、このインクジェット式記録ヘッドの分解斜視図であり、通常使用される状態とは上下逆に示したものである。
【0096】
図10および図11に示すように、インクジェット式記録ヘッド50は、ヘッド本体57と、ヘッド本体57上に形成される圧電部54と、を含む。圧電部54には図2に示す圧電体積層体200が適用され、下部電極5、配向制御層2、圧電体層3および上部電極4が順に積層して構成されている。インクジェット式記録ヘッドにおいて、圧電部54は、圧電アクチュエータとして機能する。
【0097】
ヘッド本体57は、ノズル板51と、インク室基板52と、弾性層55と、から構成されている。図2に示す圧電体積層体200における基体1は、図10における弾性層55を構成する。弾性層55としては、図2における配向制御層2などの層を用いることができる。また、圧電体積層体200における基体1は、図10におけるインク室基板52を構成する。インク室基板52にはキャビティ521が形成されている。また、ノズル板51には、キャビティ521と連続するノズル511が形成されている。そして、図11に示すように、これらが筐体56に収納されて、インクジェット式記録ヘッド50が構成されている。ノズル511の穴径は10〜30μmである。またノズル511は、1インチあたり90ノズルないし300ノズルのピッチで形成される。
【0098】
各圧電部は、圧電素子駆動回路(図示しない)に電気的に接続され、圧電素子駆動回路の信号に基づいて作動(振動、変形)するよう構成されている。すなわち、各圧電部54はそれぞれ振動源(ヘッドアクチュエータ)として機能する。弾性層55は、圧電部54の振動(たわみ)によって振動し、キャビティ521の内部圧力を瞬間的に高めるよう機能する。圧電体への最大印加電圧は20V〜40Vであり、20kHz〜50kHzで駆動する。代表的なインク吐出量は2ピコリットルから5ピコリットルの間である。
【0099】
なお、上述では、インクを吐出するインクジェット式記録ヘッドを一例として説明したが、本実施形態は、圧電体積層体を圧電アクチュエータとして用いた液体噴射ヘッドを対象としたものである。液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンタ等の画像記録装置に用いられる記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(面発光ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等を挙げることができる。
【0100】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。たとえば、本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(たとえば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の実施形態にかかる第1の圧電体積層体を模式的に示す断面図。
【図2】本発明の実施形態にかかる第2の圧電体積層体を模式的に示す断面図。
【図3】(A)は、本発明の実施例における圧電体層の断面のSEMによる図、(B)は比較例における圧電体層の断面のSEMによる図。
【図4】(A)は、本発明の実施例における圧電体層のXRDの図、(B)は参考例における圧電体層のXRDの図。
【図5】本発明の実施形態にかかる表面弾性波素子を模式的に示す図。
【図6】本発明の実施形態にかかる表面弾性波素子を適用した周波数フィルタを模式的に示す図。
【図7】本発明の実施形態にかかる表面弾性波素子を適用した発振器を模式的に示す図。
【図8】本発明の実施形態にかかる第1の薄膜圧電共振子を模式的に示す図。
【図9】本発明の実施形態にかかる第2の薄膜圧電共振子を模式的に示す図。
【図10】本発明の実施形態にかかる圧電アクチュエータを適用したインクジェット式ヘッドを模式的に示す図。
【図11】本発明の実施形態にかかる圧電アクチュエータを適用したインクジェット式ヘッドを模式的に示す斜視図。
【符号の説明】
【0102】
1 基体、2 配向制御層、3 圧電体層、3a テンプレート層、3b 圧電体層、4 電極(上部電極)、5 下部電極、100,200 圧電体積層体、300 表面弾性波素子、700,800 薄膜圧電共振子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、
前記基体の上方に形成されたテンプレート層と、
前記テンプレート層の上方に形成されたニオブ酸カリウムナトリウムからなる圧電体層と、を含む、圧電体積層体。
【請求項2】
請求項1において、
前記圧電体層は、組成式(KaNa1−a)xNbO3で表され、該組成式において、0.1<a<1であり、1≦x≦1.2である、圧電体積層体。
【請求項3】
請求項2において、
前記圧電体層は、前記組成式において、1<x≦1.1である、圧電体積層体。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記テンプレート層は、前記圧電体層と同じ組成を有するニオブ酸カリウムナトリウムからなる、圧電体積層体。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、
前記テンプレート層の下に、ランタン酸ニッケルからなる配向制御層を有する、圧電体積層体。
【請求項6】
請求項5において、
前記ランタン酸ニッケルは多結晶である、圧電体積層体。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかにおいて、
前記圧電体層の上方に形成された電極を有する、圧電体積層体。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれかにおいて、
前記基体と前記圧電体層との間に形成された第1電極と、
前記第1圧電体層の上方に形成された第2電極と、を有する、圧電体積層体。
【請求項9】
請求項7に記載の圧電体積層体を含む、表面弾性波素子。
【請求項10】
請求項8に記載の圧電体積層体を含む、薄膜圧電共振子。
【請求項11】
請求項8に記載の圧電体積層体を含む、圧電アクチュエータ。
【請求項12】
基体の上方に、テンプレート層を化学溶液堆積法によって形成する工程と、
前記テンプレート層の上方にニオブ酸カリウムナトリウムからなる圧電体層を化学溶液堆積法によって形成する工程と、を含む、圧電体積層体の製造方法。
【請求項13】
請求項12において、前記テンプレート層を形成するための溶液と、前記圧電体層を形成するための溶液とは、同じ組成を有する、圧電体積層体の製造方法。
【請求項14】
請求項12または13において、
前記テンプレート層を形成する前に、前記基体の上方にランタン酸ニッケルからなる配向制御層を形成する工程を有する、圧電体積層体の製造方法。
【請求項1】
基体と、
前記基体の上方に形成されたテンプレート層と、
前記テンプレート層の上方に形成されたニオブ酸カリウムナトリウムからなる圧電体層と、を含む、圧電体積層体。
【請求項2】
請求項1において、
前記圧電体層は、組成式(KaNa1−a)xNbO3で表され、該組成式において、0.1<a<1であり、1≦x≦1.2である、圧電体積層体。
【請求項3】
請求項2において、
前記圧電体層は、前記組成式において、1<x≦1.1である、圧電体積層体。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記テンプレート層は、前記圧電体層と同じ組成を有するニオブ酸カリウムナトリウムからなる、圧電体積層体。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、
前記テンプレート層の下に、ランタン酸ニッケルからなる配向制御層を有する、圧電体積層体。
【請求項6】
請求項5において、
前記ランタン酸ニッケルは多結晶である、圧電体積層体。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかにおいて、
前記圧電体層の上方に形成された電極を有する、圧電体積層体。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれかにおいて、
前記基体と前記圧電体層との間に形成された第1電極と、
前記第1圧電体層の上方に形成された第2電極と、を有する、圧電体積層体。
【請求項9】
請求項7に記載の圧電体積層体を含む、表面弾性波素子。
【請求項10】
請求項8に記載の圧電体積層体を含む、薄膜圧電共振子。
【請求項11】
請求項8に記載の圧電体積層体を含む、圧電アクチュエータ。
【請求項12】
基体の上方に、テンプレート層を化学溶液堆積法によって形成する工程と、
前記テンプレート層の上方にニオブ酸カリウムナトリウムからなる圧電体層を化学溶液堆積法によって形成する工程と、を含む、圧電体積層体の製造方法。
【請求項13】
請求項12において、前記テンプレート層を形成するための溶液と、前記圧電体層を形成するための溶液とは、同じ組成を有する、圧電体積層体の製造方法。
【請求項14】
請求項12または13において、
前記テンプレート層を形成する前に、前記基体の上方にランタン酸ニッケルからなる配向制御層を形成する工程を有する、圧電体積層体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図3】
【図4】
【図2】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2007−287918(P2007−287918A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−113493(P2006−113493)
【出願日】平成18年4月17日(2006.4.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月17日(2006.4.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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