圧電型MEMSマイクロフォン
圧電型MEMSマイクロフォンは、2つの電極層の間に少なくとも1つの圧電層を含む多層センサを備え、センサは、入力圧力、バンド幅、ならびに、圧電材料および電極材料の特性を保障する最適パラメータによって決定されるものとして、センサ面積に対する最大比率に近い出力エネルギを供給するような寸法を有する。センサは、小さな隙間によって互いに分離された、単一のまたは積層された片持ち梁から形成され、または、シリコン基板上への堆積によって形成された応力解放型振動板(stress-relieved diaphragm)であり得、振動板は、基板からの振動板の実質的な分離により応力が解放され、そして、引き続いて、応力が解放された今の振動板の再取り付けが行なわれる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に圧電型マイクロフォンに関し、特に、圧電型MEMSマイクロフォンおよび特定の最終使用用途の要件を満たすそのようなマイクロフォンを構築するための設計技術に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
微小電気機械システム(microelectromechanical system:MEMS)技術の発生は、シリコンウェハ堆積技術を用いるマイクロフォンのような音響変換器の開発を可能にした。この方法で製造されたマイクロフォンは、一般的に、MEMSマイクロフォンと称され、容量型マイクロフォンや、PZT、ZnO、PVDF、PMN−PT、またはAlNのような材料を用いる圧電型マイクロフォンのような様々な形態に作られる。MEMS容量型マイクロフォンおよびエレクトレットコンデンサマイクロフォン(electret condenser microphone:ECM)は、家庭用電化製品に用いられ、より大きな感度およびより低いノイズフロアを有する点で、典型的な圧電型MEMSマイクロフォンに比べて利点を有する。しかしなら、これらのよりありきたりの(ubiquitous)技術の各々は、それ自身の欠点を有する。標準的なECMについては、それらは、基板上に取り付けられたほかの全てのマイクロチップに一般的に使用される典型的な鉛フリーはんだ処理を用いるプリント回路基板には、典型的には搭載することができない。MEMS容量型マイクロフォンは、携帯電話においてよく用いられるが、少なくとも部分的に、マイクロフォンのための読出回路を提供する特定用途向け集積回路(application-specific integrated circuit:ASIC)の使用によって、比較的高価になる。MEMS容量型マイクロフォンは、また、典型的な圧電型MEMSマイクロフォンよりも、小さいダイナミックレンジを有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
様々な公知の圧電型および容量型MEMSマイクロフォンのノイズフロアが、図1に示される。円で囲まれた2つのマイクロフォンのグループによって示されるように、容量型MEMSマイクロフォン(下方のグループ)は、同じ位の大きさの圧電型MEMSマイクロフォンよりも、およそ20dB低いノイズフロアを、一般的に有する。
【0004】
公知の圧電型MEMSマイクロフォンは、片持ち梁(cantilever beam)あるいは振動板のいずれかとして作られ、これらのマイクロフォンは、電極、および、振動板または梁の基板材料として用いられるパリレン(Parylene)またはシリコンのような構造材料に沿った圧電材料を含む。片持ち梁設計のためのパリレンの利点は、それが、(固定長さについて)梁のバンド幅を増加するとともに圧電材料の中立軸からの距離を増加する、梁の厚さを増加するために用いられ、それは一見して感度を増加する。たとえば、およそ20μmの梁基板が公知であり、レダーマン(Ledermann)の参考文献[15]を参照されたい。パリレン振動板を利用する圧電型MEMSマイクロフォンについては、より薄い層が用いられる。たとえば、米国特許番号6,857,501およびニュー(Niu)の参考文献[10]を参照されたい。ここで用いられる他の著者の様々な参照は、本説明の最後に特定される文献および雑誌の記事の参照であり、本明細書中のいくつかの教示のサポートにおける非本質的な対象のためだけ、またはそれらの教示の背景としてのみ提供されることに注意すべきである。参照された文献の各々は、これによって、参照として引用される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の要約
本発明の1つの局面に従えば、基板と、第1の電極層、第1の電極層上に堆積された圧電材料の中間層、およびその圧電材料上に堆積された第2の電極層を含む少なくとも3つの層を有する多層音響センサとを備える圧電型MEMSマイクロフォンが提供される。センサは、多層センサについてのセンサ面積に対する出力エネルギの比率が、所与の入力圧力、バンド幅、および圧電材料について取得できる最大比率の少なくとも10%であるような寸法とされる。
【0006】
本発明の他の局面に従えば、基板と、第1の電極層、前記第1の電極層上に堆積された圧電材料の中間層、および前記圧電材料上に堆積された第2の電極層を含む少なくとも3つの層を備える多層音響センサとを備える圧電型MEMSマイクロフォンが提供される。センサは、以下の式に従って計算される最適化パラメータが、
【0007】
【数1】
【0008】
センサについて取得可能な最大最適パラメータの少なくとも10%であるような寸法とされ、ここで、Voutはセンサの出力電圧であり、Cはセンサのキャパシタンスであり、Pは入力圧力であり、Aはセンサ面積であり、tan(δ)はセンサの第1の共振周波数におけるセンサの誘電損失角であり、fresは第1の共振周波数である。
【0009】
本発明の他の局面に従えば、シリコン基板と、各梁が片持ち状とされるとともに固定端と自由端との間に伸延するように各々が前記基板によって一方端を支持される複数の梁とを備える。各梁は、電極材料の堆積層および電極材料を覆う圧電材料の堆積層を含む。少なくともいくつかの梁は積層され、その積層された梁は、それらの間に追加の層を有しない、堆積された電極材料および堆積された圧電材料の交互層を含む。
【0010】
本発明のされに他の局面に従えば、圧電型MEMSマイクロフォンは、基板と、基板の上方に吊るされた応力解放型振動板とを備える。振動板は、第1の電極層、第1の電極層上に堆積された圧電材料の中間層、および圧電材料上に堆積された第2の電極層を含む少なくとも3つの層を有する、多層音響センサを含む。これらの応力解放型振動板は、たとえば、実質的にその周囲のすべてについて基板からそれを切り離すとともに、必要に応じて、残留応力を解放するためにそれを伸延または収縮させることによって、適当な態様で得ることができる。振動板は、適当な技術によって、基板のその周囲に再取り付けされ得る。
【0011】
図面の簡単な説明
本発明の1つまたはより多くの好ましい例示的な実施形態が、添付の図面と関連して、以降で説明され、同様の符号は同様の要素を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】様々な公知のMEMSマイクロフォンについての、センサ面積に対するノイズレベルのプロットである。
【図2】圧電型MEMSマイクロフォンの出力エネルギについての振動板残留応力の影響を示すプロットである。
【図3a】本発明の1つの局面に従って構築された片持ち梁型圧電型MEMSマイクロフォンセンサの上面図である。
【図3b】図3aのマイクロフォンセンサからの2つの対の対向梁の断面図である。
【図3c】図3bに示される積層型梁の挙動のモデリングに使用するための交互梁層およびそれらの寸法を示す図である。
【図4】増幅回路に接続され、電流についてのインピーダンスモデリングを示す、図3aのマイクロフォンの概要図を示す。
【図5】圧電型音響センサについての典型的なノイズ曲線のプロットである。
【図6】図3aのセンサの出力エネルギについての、梁テーパの影響を示す図である。
【図7】圧電型MEMSマイクロフォンセンサの出力エネルギについての、層厚さの影響を示す、1つまたはより多くのパラリン層を含むことの影響を示す図である。
【図8】異なる電極材料が、どのように圧電型MEMSマイクロフォンセンサの出力エネルギに影響を及ぼすかを示すプロットである。
【図9a】図3bのセンサを製造するために用いられる処理ステップを示す図である。
【図9b】図3bのセンサを製造するために用いられる処理ステップを示す図である。
【図9c】図3bのセンサを製造するために用いられる処理ステップを示す図である。
【図9d】図3bのセンサを製造するために用いられる処理ステップを示す図である。
【図10】図3aの製造されたセンサの顕微鏡写真である。
【図11】図3aのセンサを用いる圧電型MEMSマイクロフォンの図である。
【図12】図11のマイクロフォンの周波数応答のプロットである。
【図13】図11のマイクロフォン梁偏位プロファイルのプロットである。
【図14】図11のマイクロフォンについての、測定された、および予測された感度ならびにノイズフロアのプロットである。
【図15】図3aに示されるタイプの片持ち梁についての、電極長さの関数として正規化された出力エネルギのプロットである。
【図16】AlN圧電材料についての圧電結合係数行列からのd33係数の低下を示すプロットである。
【図17】誘電損失角tan(δ)の低下を示すプロットである。
【図18】電極層厚さの関数としてのMo抵抗率を示す図である。
【図19】圧電層厚さと、AlN圧電材料についての圧電結合係数行列からのd31係数との間の関係のプロットである。
【図20】AlN層厚さの関数としての誘電損失角を示すプロットである。
【図21】単一の(非積層の)片持ち梁についてのMo下部電極層厚さの関数としての、計算された最適化パラメータを示す図である。
【図22】単一の(非積層の)片持ち梁についてのAlN中間層厚さの関数としての、計算された最適化パラメータを示す図である。
【図23】単一の(非積層の)片持ち梁についてのMo上部電極層厚さの関数としての、計算された最適化パラメータを示す図である。
【図24】5層の(積層された)持ち梁についてのMo下部および上部電極層厚さの関数としての、計算された最適化パラメータを示す図である。
【図25】5層の(積層された)持ち梁についてのAlN中間層厚さの関数としての、計算された最適化パラメータを示す図である。
【図26】5層の(積層された)持ち梁についてのMo中間電極層厚さの関数としての、計算された最適化パラメータを示す図である。
【図27a】本発明の1つの局面に従って構築された、振動板圧電型MEMSマイクロフォンセンサの上面図である。
【図27b】図27aのB−B線に沿って得られる、部分断面図である。
【図28】公知の圧電型および容量型MEMSマイクロフォンとどのように比較するかを示す、本発明に従って構築された圧電型MEMSマイクロフォンについての期待されるノイズフロアのプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
好ましい実施形態の詳細な説明
以下の説明は、以下に記載される1つまたはより多くの異なる態様で定められ得る最適化基準を満たす、様々な圧電型MEMSマイクロフォンに向けられる。
【0014】
典型的な圧電型MEMSマイクロフォンは、マイクロフォンの感度を最適化するように設計され、これは、少なくとも部分的に、これらの装置について、上述した増加されたノイズフロアに関与する。以下に説明されるように、所与の入力圧力、バンド幅、および圧電材料について、センサ面積に対する出力エネルギの比率を最適化することによって、容量型MEMSマイクロフォンと同様のノイズフロアを伴って、特定の用途のための十分な感度を有する圧電型MEMSマイクロフォンが構築される。このアプローチは、高品質の膜に対して有効である。しかしながら、膜厚が低減されるにつれて、膜品質は低下する。この要因は、面積に対するセンサエネルギの比率でもあるとともに、圧力、(バンド幅を制限する)固有振動数、および装置の損失角を含む、計算された最適化パラメータを利用する、本明細書で説明される代替的アプローチを用いて説明され得る。これらのパラメータを計算された比率に加えることによって、この代替的アプローチは、それらを定数として考えるよりも、これらのパラメータの効果を説明する。したがって、当業者によって理解されるように、以下の実施形態は、最適または最適に近いセンサ設計を定めるための、2つの異なる使用可能なアプローチと関連して説明され、それらは、1)所与の(一定の)入力圧力、バンド幅、および圧電材料についてのセンサ面積に対する出力エネルギの比率の直計算(straight calculation)、ならびに2)圧力、(バンド幅を制限する)固有振動数、および装置の損失角を説明する最適化パラメータの計算である。この最適化パラメータは、以下の式を用いて定められ得る。
【0015】
【数2】
【0016】
ここで、Voutは出力電圧であり、Cはキャパシタンスであり、Pは入力圧力であり、Aはセンサ面積であり、tan(δ)は第1の共振周波数におけるマイクロフォンの誘電損失角または散逸係数であり、fresは装置の第1の共振周波数である。この最適化パラメータの使用、ならびに、このパラメータの計算において用いられる材料特性および装置形状が、以下にさらに説明される。最適な膜厚が、以下にさらに説明される図18、図19および図20にプロットされた膜特性と比較されると、ほとんどの最適膜厚が、厚い膜とほぼ同じ特性を有するような値を有することが明らかである。これらの膜について、センサ面積のみに対する計算されたエネルギの最適化は、電極および/または圧電特性の変化を説明することなく、適しているかもしれない。しかしながら、最適厚よりも実質的に薄い膜を作ることは、材料特性の大きな相対変化をもたらし、そのような場合には、最適パラメータの使用は、センサ最適化を定めるのにより最適であり得る。
【0017】
これらの先行設計がこの最適化を達成することを典型的に避けてきた、より従来型のMEMSマイクロフォン設計の少なくとも2つの局面がある。第1は、張力により支配される剛性を有する振動板のようなセンサ構造の使用である。シリコンウェハ基板上に作られた圧電型MEMSマイクロフォンについて、この張力は、堆積後の各層上に残された残留応力の結果である。この効果は、正規化出力エネルギの減少を引き起こし、図2において理解され得るように、最適化パラメータの要素の1つである。この図は、残留応力が、2つの1μmの窒化アルミ(AlN)層および20kHzの共振周波数を有する3つの100nmモリブデン(Mo)層板の正規化出力エネルギをどれくらい低減するかを示す。1MPa以下低い応力、すなわち達成し難い圧力レベルは、この振動板の正規化出力エネルギを20%低減し、同様に最適化パラメータを20%低減する。上述の関係の最適化に近づくことを妨げる先行設計における第2の問題は、これらの設計が最適または最適に近い装置配置を利用していなかったことである。したがって、たとえば、(片持ち梁を形成するときに装置がその基板から解放されるために)装置の残留応力が重要な要因とはならない片持ち梁設計においては、層厚さ、層順、梁形状、および隣接梁との等しい梁間隔の組み合わせは、最適化が望まれる全体の装置構成を作り上げる。
【0018】
開示された実施形態においては、これらの問題は1つまたはより多くの方法で対処され得る。装置の残留応力が問題とはならない片持ち梁においては、これは、所与の入力圧力、バンド幅、および圧電材料について、センサ面積に対する出力エネルギの取得可能な最大比率の少なくとも10%を達成するマイクロフォン設計を利用することによって、なされ得る。本明細書で使用されるように、所与のセンサ設計についての「取得可能な最大比率」は、センサ面積に沿って与えられる出力エネルギ計算を用いて定められ、または、上述の(時々変化するが)利用可能な値が与えられた最適化パラメータ式、および最適化式において用いられる様々なパラメータについての式を用いて定められ得る。この後者のアプローチにおいては、計算された最適化パラメータがセンサについての最大の取得可能な最適化パラメータの少なくとも10%であるような適当なセンサ設計を得ることができる。反復された実験的決定によって、あるいは、現在公知であるかまたは後に開発される他の最適化式または技術を用いることによって、取得可能な最大比率を決定する他の方法も可能である。達成可能な最大最適化の10%またはより多くの所望レベルを達成するために、モデリングおよび後続の試作試験を通して、センサをできるだけ薄く作り、かつ、複数の層が出力を増加するために積層され、または、電極層と結晶層との間の中央に配置された薄い(〜1μm)パリレン層を有する個別の梁として構築されるトポロジにおいてそれを採用することが有効であることが定められた。いずれのアプローチでも、複数の梁が生成され、そして、所与の用途のための装置のキャパシタンスおよび感度の所望の組み合わせを得るために、直列および並列接続の組み合わせで配線される。振動板については、改善された圧電型MEMSマイクロフォンは応力解放型振動板を用いて構築され、圧電センサはシリコンベース構造上への堆積によって作られ、その後、基板から切り離して解放膜(released membrane)を拡張または収縮させて残留応力を解放し、適当な態様で再取り付けが行なわれる。この技術は、クランプされた状態、ピンで固定された状態、または自由外周状態のどのような組み合わせを有する振動板にも有効である。また、上記の最適化計算の使用は、振動板型の圧電型MEMSマイクロフォンの製造において用いられ、向上されたマイクロフォン感度およびノイズ性能を提供する。これらの、片持ち梁および振動板の設計は、多くの用途のための装置の有用な動作を提供するとともに、計算された最適化パラメータが最適の10%を上回るような設計は、容量型MEMSマイクロフォンと同様またはそれを超過するユニット面積あたりのノイズフロアを有する良好な感度を提供する向上された動作を提供し得る。
【0019】
以下の実施形態は、上述の技術を用いる例示的な設計を提供し、それに引き続く議論は、様々な実施形態が、上述の比率の最適化のために、どのように設計され、実行され、そして確認されるかを考慮する、追加的な演算および製造の詳細を提供する。センサ面積比率に対するエネルギの最適化、および、特に、最適化パラメータの使用は、センサ形状の一部または全ての決定において役立つが、結果としてのマイクロフォンが、設計されてはいるが、本明細書で説明される最適化標準を満たしているか否かが重要であるので、そのようにすることは必ずしも必要ではない。
【0020】
単一のおよび積層された片持ち梁
図3aは、複数の指状の片持ち梁32を有する多層音響センサを含む、片持ち梁型の圧電型MEMSマイクロフォン30を示し、各々は、公知のMEMS製造技術を用いて形成され得る、梁32の対向する各対の自由端が小さな隙間38によって分離されるような、マイクロフォンの2つの左右端34,36の1つにおいて、片持ち梁にされる。好ましくは、この隙間は3μm以下であるが、設計によってはより大きくなり得る。多くの用途については、10μm以下の隙間が用いられ得る。同様の隙間40が、隣接する(隣同士の)梁の間に用いられ得る。片持ち梁32は、装置のバンド幅についての材料残留応力の影響を低減する。図3aに示される各梁32は、他の梁と相互接続されて所望のキャパシタンス特性および感度特性を有するマイクロフォン全体を生成する、単一の分離された梁であり得る。あるいは、図3bに示されるように、示される各梁32は、電極および圧電材料の層を交互にすることによって形成された、2つまたはより多くの梁の積層された組の上部梁であり得る。積層梁構造については、追加的な層が用いられ得ることが理解されるが、図3bにおいては5つの層がある。これらの梁は、梁が電極層および圧電層のみを含むような、他の層または材料を用いることなく構築される。示された例においては、電極材料はモリブデンであり、圧電材料は窒化アルミニウムであるが、どのような適当な導電材料(たとえば、チタン)も電極用に用いることができ、PZT,ZnOなどのような、どのような適当な圧電材料も用いられ得ることが理解されるであろう。
【0021】
梁32は、望ましい特徴の組を提供するために、以下に説明される設計手法に従って定められる寸法を有し得る。いくつかの実施形態については、圧電層は1μmよりも小さく、より好ましくは、およそ0.5μmであり得るが、これは、他の梁の寸法、材料などを含む多くの因子に基づいて変化する。多くの用途について、梁厚さ、したがって圧電厚さは2μmより小さいが、それに含まれる特定の用途によっては8μm以下の高さになり得る。好ましくは、圧電層の厚さは、良好な圧電膜品質を維持しつつ、できるだけ薄く作られる。たとえば、その層は、それに含まれる特定の用途について十分な圧電効果を発揮するための十分な厚さを有している限り、利用可能な製造技術がなし得る可能な限りの薄さで作られる。梁長さは、以下の設計説明において示されるように、厚さに関連されるべきである。電極層もまた変化し得るが、好ましくは、0.2μmまたはそれより小さいオーダである。好ましくは、梁のベース端は、結果として生じるキャパシタンスを最小化するように、面積の最小限の量で支持される。
【0022】
MEMSマイクロフォン30は、様々な有利な特徴を有し、それらの1つまたはより多くは、本明細書に記載される設計手法を用いて達成し得る。これらの特徴は以下を含む。
【0023】
1.所与のバンド幅、圧力、および圧電材料についての、センサ面積に対する出力エネルギの最大または最大に近い比率。
【0024】
2.センサのキャパシタンスと、個別の梁間の直列または並列接続の組み合わせによって達成される感度との所望の組み合わせにおいて設計する能力。これは、マイクロフォンの全出力エネルギに影響を及ぼすことなく、かつ入力換算圧電ノイズ(input referred piezoelectric noise)に影響を及ぼすことなくなされ得る。
【0025】
3.より高周波音に対して高インピーダンスを提供し、それによって装置が低周波数カットオフを有するように設計され得る、小さな空気間隙によって分離された隣接する梁の使用。上述のように、これは、隣接する梁との間隔(すなわち、梁の対向端間の隙間、および/または、梁の隣接する側面間の隙間)を、10μm以内、好ましくは3μm以内に保つことによってなされ得る。これらの隙間は、レダーマン(Ledermann)[15]において議論されるように設計され得る。
【0026】
4.電極および圧電材料の交互層のみで形成された、積層された梁の使用。
特定の用途についての片持ち梁型マイクロフォン30の設計は、以下に説明される設計手法を用いて実行され得る。この手法は、解析的かつ検証実験的(verified experimentally)に最初になされた、梁の数学モデリングに基づいて開発された。単一梁の感度は、クロマー(Krommer)[1]の式(20)で開始し、そして以下の梁方程式を定めることによって決定された。
【0027】
【数3】
【0028】
ここで、
【0029】
【数4】
【0030】
ρは厚さ方向にわたって平均化された密度であり、Aは断面積であり、wは梁偏位であり、tは時間であり、xは梁に沿った距離であり、Mは梁の曲げモーメントであり、fは単位幅当たりの力であり、bは梁の幅であり、Nは層lの数であり、sは弾性材料コンプライアンスであり、dは圧電結合係数であり、εは誘電率であり、zは図3cに示されるような梁の底部からの高さであり、Vは層にかかる電圧である。z0は、梁が圧電材料を有していない場合の中立軸であり、以下のように演算され得る。
【0031】
【数5】
【0032】
梁方程式についての境界条件は、以下である。
【0033】
【数6】
【0034】
モーメント方程式における電圧Vは、アーシック(Irschik)[2]の方法を拡張することによって定めることができ、多層については以下のような結果がもたらされる。
【0035】
【数7】
【0036】
層のキャパシタンスは以下の式によって与えられる。
【0037】
【数8】
【0038】
層の出力エネルギは、層電圧の二乗を層キャパシタンスと掛け合わせることによって計算される。
【0039】
【数9】
【0040】
装置出力エネルギ(出力エネルギとも称する。)は、梁32が本製品を維持する(preserve)直列または並列の組み合わせで配線される所与の各層における出力エネルギの総和である。マイクロフォン30の設計および製造においては、梁レイアップ(layup)(すなわち、層の高さおよび長さ)のパラメータは、所与の入力圧力、バンド幅、および圧電材料について、センサ面積に対するこの出力エネルギの比率が最大となるように選択され得る。この比率は以下のようになる。
【0041】
【数10】
【0042】
ここで、センサ面積は、圧電梁を含む全チップ表面積を指す。好ましくは、マイクロフォン30は、最大の達成可能な値にできるだけ近い値が達成できるように、設計されかつ製造される。しかしながら、多くの理由(たとえば、製造コスト)のために、たとえセンサ面積に対する最適エネルギ比率の10%程度の低い設計であっても、特定の用途については許容可能であり得る。
【0043】
この比率項を最大化することは、2つの理由について有利である。第1に、(マイクロフォンを特定の回路に適合させるように)梁32を直列または並列に配線するときは、出力エネルギは一定のままである。これは、リード(Ried)[9]の研究において指摘された。第2に、梁32を直列または並列に配線するときは、入力換算圧電ノイズは一定のままである。これらの特徴の両方が一定のままであるので、この比率の最大化は、設計を最適化するための手法として用いられ得る。
【0044】
上記の式は、任意の幅の梁で用いられ、数値的に解かれて梁の感度を決定する。より幅広の梁(平面)については、上記で用いられた一軸応力前提を平面応力前提に変更するような単純な置換が、デ・ボウ(DeVoe)[3]によって提案された。この置換は以下である。
【0045】
【数11】
【0046】
しかしながら、エルカ(Elka)[4]は、三次元(3D)解析モデルまたは3D有限要素モデルと比較して、初期一軸歪み前提がよりよい結果を与えることを示した。梁が一定幅であると仮定した場合は、式は非常に単純化され、解析的に解くことができる。ティエルステン(Tiersten)[5]からの小型圧電結合の前提は、さらなる単純化をもたらす。これらの式は、1つの特定の梁によって生じる電圧を定めるために用いられるとともに、複数の梁によって生じる電圧を定めるために拡張され得、したがって、圧電型マイクロフォンの感度を与える。梁密度がこの式に含まれるので、それらは、マイクロフォンのバンド幅の推定にも用いられ得る。これらの式は、電圧検出が用いられ、梁の出力が高インピーダンス入力になることを想定している。類似の式は、電荷検出が想定される場合に、導かれ得る。これらの式は、クロマー(Krommer)[1]およびアーシック[2]の研究にもある。当業者においては、これらの式は、電荷増幅電子機器を利用する最適化された装置を定めるために、上記で与えられたものと同様に用いられ得る。
【0047】
圧電型マイクロフォン30のノイズフロア(最小の検出可能信号)は、基本的に、レビンゾン(Levinzon)[6]によって説明されるように、材料の誘電損失角によって制限される。この圧電ノイズは、以下の式として表現される、膜の抵抗によって生じる熱ノイズである。
【0048】
【数12】
【0049】
ここで、vnはノイズスペクトル密度であり、Δfはバンド幅であり、kはボルツマン定数であり、Tは温度であり、ωは角振動数であり、Cはセンサキャパシタンスであり、tan(δ)は材料の誘電損失角の正接である。これは、与えられた1つの梁32または梁の組み合わせの出力電圧ノイズを定める。梁からの機械的熱ノイズ、梁の放射インピーダンス、および1/fノイズのような、他のノイズ源は、マイクロフォンのノイズに影響を与えない。
【0050】
他の重要なノイズ源は、付随の電子機器のノイズである。増幅電子機器は、電荷増幅器から電圧増幅のための集積回路までのどのようなものにも及ぶ。実例の装置は、増幅のための2.2kΩの付加抵抗を有する共通ソース増幅器において、接合型電界効果トランジスタ(junction field effect transistor:JFET)を用いるが、これは、これらのトランジスタが、相対的に低ノイズを有し、小さく、高価でなく、比較的モデリングしやすいからである。JFETノイズは、レビンゾン(Levinzon)[7]によって示されるようにモデリングされ得る。低周波数において、図4に示される抵抗Rbの熱ノイズが、回路に影響を及ぼす。周波数ω=1/(Rb||Rp・C)において、極が形成され、ここで、Rpはtan(δ)から得られる圧電層の抵抗である。Rbが抵抗に影響を及ぼすと、より大きなキャパシタンスCが極をより低周波数に移動し、したがってさらに熱ノイズを減衰させる。JFETに接続された圧電型センサいついての典型的なノイズ曲線が、図5に示される。
【0051】
マイクロフォン30のダイナミックレンジは、多くの用途についての要件を上回り、典型的には、それが接続される電子機器によって制限される。マイクロフォン30それ自体は、電力を消費せず、そのため、トータルの電力消費は増幅回路の電力消費に依存する。マイクロフォンの面積は、用いられる梁の大きさおよび数によって定められ、ノイズフロア、感度およびバンド幅と、トレードオフの関係になり得る。
【0052】
振動および温度のような他のパラメータに対するマイクロフォン30の感度も、研究されている。振動に対する感度は、以下の式によって与えられるように、材料密度および厚さに関連する。
【0053】
【数13】
【0054】
これらのモデルは、マトラボ(登録商標)(MatlabTM)で実行され、最適化が実行された。最適化は、可聴域におけるバンド幅、低ノイズフロア、および市販のMEMSマイクロフォンと同様の面積を与えることが意図された。
【0055】
装置30が複数の梁32を用いるので、それらは直列または並列のいずれかで接続され得るが、出力エネルギ、積V2Cは、リード(Ried)[9]によって述べられているように、与えられた音圧については一定のままである。これらの梁が接続される方法は、感度とノイズの間のトレードオフを説明する。それらがすべて直列に接続される場合は、これは感度を最大化するが、センサキャパシタンスCは非常に小さくなる。JFETが増幅に使用される場合は、これはノイズをフィルタリングする極の周波数を増加し、結果としてのノイズが増加する。一般的に、小さいキャパシタンスは、電子機器への入力キャパシタンスが容量型除算器として動作し信号を低減するので、有害である。全ての梁が並列に接続される場合は、これは最小感度をもたらすが、最大センサキャパシタンスをもたらす。最適なキャパシタンスは、通常は上述の2つの限定的な場合(全並列対全直列)の間であり、JFETを用いるときに、システムの入力換算ノイズを最小化するように同定され得る。
【0056】
したがって、当業者によって理解されるように、面積は感度およびノイズフロアとのトレードオフであり得る。より多くの梁は、より多くの面積を消費するが、より大きなV2Cの積をもたらす。バンド幅も、ノイズフロア、感度、および面積とのトレードオフであり得る。より長い梁はより多くの面積を消費するが、それらはより従順(compliant)なので、与えられた面積に対してより大きなV2Cの積を与える。これらのより長い梁は、より低い固有振動数を有し、したがって、より低いバンド幅を有する。
【0057】
マイクロフォン出力に影響を与える、他の設計/製造要因がある。図6に示されるように、自由端に向けてテーパ状になっている幅を有する梁は、より大きなV2C出力エネルギを提供し得る。これのピーク値は、0.33の、梁の基部における先端に対する比率である。また、少なくとも単一(非積層)梁については、電極層と圧電層との間に配置されたパリレンの層は、より良好なV2C出力を提供し得る。特に、梁のモデリング後において、図7はパリレンの中間層の利点/欠点を定めるように生成された。この図は、薄いパリレン層が、梁の一定面積/一定バンド幅のグループの、V2Cの積を若干向上させることを示している。この薄い層は、パリレンが上部AlN層の膜品質の低下を引き起こす、より高い表面粗さを有するかもしれないので、試験装置においては用いられなかった。AlNの上部層は、おそらく役に立たないので、パリレンは有効であるためには、V2Cの積を2倍にする必要があるが、そうではなかった。したがって、単一(非積層)梁について用いるマイクロフォン構造に対しては、パリレンの使用を制限することが望ましいかもしれない。低い弾性係数および低い密度を有する、パリレン以外の適当な材料もまた用いることができる。
【0058】
マトラボ(登録商標)における装置のモデリングおよび最適化の後、装置が製造された。(テーパ状梁とは対照的な)矩形梁が、より単純な製造および試験の目的のために作られた。その梁は、200nmのMo、500nmのAlN、200nmのMo、500nmのAlN、200nmのMoの材料層で作られたが、これは、この組み合わせが、相対的に高感度および低ノイズを与えるからである。
【0059】
AlNが、圧電材料として選択されたが、これは、ZnOおよびPZTのようなほかの一般的なMEMS圧電材料と比べて、同等のまたは優れた性能を与えるけれども、これらの2つの材料のいずれよりも、よりCOMS適合性があるためである。装置性能は、d31、tan(δ)、誘電率、s、およびρのような、さまざまな材料パラメータに依存するので、最適な圧電材料を同定することは困難であり得る。これらの特性は、材料組成、堆積力/圧力/温度、基板粗さおよび結晶構造、材料厚さなどに依存する。材料堆積変動に加えて、これらのパラメータについて引用した値が、特にPZTが組成および配向性(orientation)においてより多くの多様性を有するにつれて、AlNよりPZTのほうが実質的に変化するので、完全な材料比較についての必要な情報の全てを提供する源を見出すことは困難であり得る。PZTはマイクロフォンの用途にもよっては有益であり得るより高い感度を典型的にもたらすが、AlNおよびPZTの両方を評価するための文献[11]〜[14]からの最適値を用いて、それらは成功した装置について、ほぼ等しい可能性(potential)を有するように見える。文献中のAlNパラメータは、より一貫性があるようにも考えられ、さらにAlNおよびMoは市販のFBARプロセスにおいてすでに用いられており、そのためこれらの材料を用いる製造は、市販用装置へより容易に移行することができる。高品質AlNがMo上に堆積され、残りの処理ステップで作用するので、Moが選択された。図8は、異なる電極材料がV2Cの積にどのように影響するかを示す。この用途についての最良の材料は、低密度かつ低剛性の材料である。したがって、チタン(Ti)はMoよりもよく作用するが、他の処理ステップでの適合性の問題のために用いられなかった。これらが高品質で合理的に堆積され得る最薄のものであるので、この層の厚さが選択された。モデルは、より薄い層は有利であることを示すが、製造においては試みられなかった。
【0060】
装置の処理が、図9a〜図9dに示される。第1に、200nmのSiO2層がDRIEエッチングのためのエッチング停止層として堆積された。その後、200nmのMo層が堆積され、パターン形成され、そして、希王水(9H2O:1HMO3:3HCL)でエッチングされた。次に、200nmのMo層に続いて500nmのAlN層が堆積され、パターン形成され、そして、Moについては希王水で、AlNについては熱い(85C)H3PO4でエッチングされた。その後、他の500nmAlNおよび200nmMoが堆積され、パターン形成され、そしてエッチングされた。全てのAlN堆積は、UCバークレイにおいて、ハーモニック装置(Harmonic Device)によって実行された。AlN堆積の間、梁の曲率を制限するために、残留応力が監視された。後続のこれらのエッチングにおいて、ウェハの両側が6μmのSiO2で覆われ、背面がパターン形成されるとともに、梁を解放するためのDRIEエッチングのためにエッチングされた。次に、ウェハはSTS DRIEツールにおいて、背面からエッチングされた。個々のダイ(die)は、ダイシングソーで切断され、SiO2は5:1のBHF中で除去された。いくつかのステップは改良され、最も顕著には、背面空洞(back cavity)をエッチングするために異方性シリコンエッチングが用いられるとともにエッチング停止が梁の下方でシリコン内に埋め込まれる場合は、梁の長さがより良好に制御され得る。いくつかの設計は、直列または並列の異なる組み合わせで梁を接続するとともに浮遊容量を低減するために、追加のメタライゼーションステップを利用したが、これらの装置は、この概念の初期の試験(initial proof)においては用いられなかった。装置の顕微鏡写真が図10に見られる。
【0061】
装置の製造後、それらは、図11に見られるように、トランジスタアウトライン(transistor outline:TO)缶(can)内にパッケージ化され、信号をバッファリングするためのJFETにワイヤボンディングされる。これは、図4に示されるように、電極から受けた信号がトランジスタによって増幅されるように、JFETのゲート入力がセンサ電極に接続されて行なわれ得る。梁への光学的アクセスを与えるとともに梁の偏位を測定するために、孔がTO缶のマイクロフォンの下方に開けられた。背面空洞の大きさがマイクロフォンのバンド幅の低位端を定めるので、この孔によって、背面空洞の大きさを調整することも可能である。そして、マイクロフォンが、基準マイクロフォン(ラーセン・デービス モデル2520(Larsen Davis model 2520))に隣接する平面波管内に配置され、周波数応答が、ラブ・ビューA/D(Lab View A/D)カードおよびソフトウェアを用いて測定された。これは、図12に見られ得る。梁を動作させ、レーザ振動計で梁の曲率を測定することによって、d31係数が測定された。梁の偏位プロファイルが図13に見られ得る。
【0062】
梁の固有振動数が、動作に対する梁の周波数応答を測定することによって定められた。マイクロフォンの性能に影響を与える他のパラメータは、マイクロフォンの誘電損失角tan(δ)である。これは、ラブ・ビュー(登録商標)ソフトウェアと関連するカスタム回路およびアジレント モデル4284A精密LCRメータ(Agilent Model 4284A Precision LCR meter)を用いて測定された。
【0063】
この初期テストについて、AlN最上部層のみが、JFETおよび梁の一方の側面のみに接続され、それによって、マイクロフォン全体がJFETに接続される場合に予測されるよりも、3dB高いノイズフロアをもたらした。梁は、356μmになるまで引き伸ばされたが、DRIEは予測よりもはるかにエッチングされ、およそ11kHzの固有振動数をもたらした。これは、梁の長さが実際にはおよそ400μmであることを示唆している。d31係数は1.68×10−12N/Cとして測定された。この値は、文献に引用されている最良値の約65%である。d31係数は、X線回折ロッキングカーブFWHMと関連させるために示され、報告された最良値はおよそ1度であるが、この層については約2.6度である。この値は、他よりもおそらく高く、というのも、その層がほんの0.5μmであり、他の層の上部にあるからである。tan(δ)は、1kHZにおいて0.04と測定された。文献は、典型的に、0.001から0.002の範囲のtan(δ)を与え、そのため、この値は、それらの典型的な引用値よりも1桁以上高い大きさである。この予測されるtan(δ)よりも高いことは、H3PO4を用いたAlNのエッチング後に、残留応力が少し残っているためと断定された。いくつかの調査の後、tan(δ)は、超音波洗浄器中において加熱板上で加熱しながら、アセトンで洗浄することによって低減され得ることが見出された。より低いtan(δ)を有する装置は、より低いノイズフロアを有するマイクロフォンをもたらす。
【0064】
測定されたd31係数およびtan(δ)とともに、固有振動数測定から導き出された長さを用いて、マイクロフォンモデルは、測定された性能に非常によく合致する。図14に示されるように、2.2kΩの負荷抵抗を伴うJFETコモンソース増幅器(common source amplifier)の外部で、感度は0.52V/Paと測定される。これは、圧電型マイクロフォンについての、0.17mV/Paの生出力感度に一致する。モデルは、0.18mV/Paの出力感度を予測する。装置の測定された入力換算ノイズフロアは58.2dBAであり、一方モデルは57.3dBAの入力換算ノイズフロアを示す。図14は、測定された感度およびノイズフロア、ならびに、予測された感度およびノイズフロアを示す。測定された周波数応答における第1のピークは、測定に用いられた梁の真向かいにある梁の固有振動数によって生じる。それらは、DRIEエッチングにおける不均一性のために、全く同じ長さではない。
【0065】
上述の片持ち梁の設計においては、センサ面積に対する出力エネルギ比率の最適化は、所与の入力圧力、バンド幅、および圧電材料に基づいて定められた。しかしながら、これらの制約は、圧電型MEMSマイクロフォンの設計または解析において考慮され得る。特に、以下の最適化パラメータ式を用いて、
【0066】
【数14】
【0067】
入力圧力は圧力P項によって説明され、バンド幅はfres項によって説明され、圧電材料および電極の特性は誘電損失角tan(δ)によって説明される。したがって、これらの入力制約の所与の組が用いられない場合、センサ面積に対する出力エネルギの比率は、それらその他の要因を考慮に入れるために、上記で与えられた最適化パラメータ式を最大化することによって最適化され得る。
【0068】
一例として、1つのAlN圧電層と2つのMo電極層とを有する矩形片持ち梁を用いる、圧電型MEMSマイクロフォンを再び考える。図15に示されるように、片持ち梁について、正規化された出力エネルギが、電極長さの関数としてプロットされ得る。単位面積あたりの正規化された出力エネルギが増加するにつれて、電極が梁の基部から梁の長さのだいたい50%までの間は、最適化パラメータも増加する。
【0069】
圧電材料として窒化アルミニウムを用いる場合は、小さい圧電結合が想定され得る。この想定は、出力電圧についての表現を、Vlについての上記で与えられたものから、以下の式に単純化し、
【0070】
【数15】
【0071】
ここで、Pは圧力振幅であり、bは片持ち梁の幅であり、Lは片持ち梁の長さであり、d31は圧電結合係数行列の31番目の項であり、ηは圧電材料の誘電率であり、s11はコンプライアンス行列ZQ=(zk−zn)2−(zk-1−zn)2の11番目の項であり、ここで、znは梁の中立軸であり、添字kは層を示し、この場合には、圧電層を示し、EIは以下の式として与えられる梁の曲げ剛性であり、
【0072】
【数16】
【0073】
ここで、ZCk=(zk−zn)3−(zk-1−zn)3であり、znは以下の式として与えられる。
【0074】
【数17】
【0075】
キャパシタンスは、およそ以下の式のようであり、
【0076】
【数18】
【0077】
ここで、Aeは電極によって覆われる面積であり、hpは圧電層の高さである。第1の共振周波数は、およそ以下の式のようになる。
【0078】
【数19】
【0079】
マイクロフォンの誘電損失角は、圧電材料それ自体における損失と、電極における損失との関数である。これは以下のように概算される。
【0080】
【数20】
【0081】
ここで、添字pおよびeは、それぞれ圧電材料および電極材料を示し、σは材料の導電率であり、ωは角振動数であり、Lは電極長さである。
【0082】
これらの式を組み合わせることによって、電極の長さが片持ち梁の長さと等しいと想定して、最適化パラメータは以下の式のように計算され得る。
【0083】
【数21】
【0084】
この式および材料特性とは独立の厚さを用いて、最適化は、ゼロ厚さ層および無限最適化パラメータをもたらす。しかしながら、モリブデン層が薄くなるにつれて、その導電率は減少する。また、非常に薄いAlNは、低減された圧電結合係数、および、より大きな損失角を有する傾向にある。この理由のために、これらの関係は、最適化に含まれなければならない。
【0085】
d31データは、d31係数が、d33係数と同じ比率で低下すると想定することによって引出され得る。d33およびtan(δ)の低下のプロットは、マーティン(Martin)[16]において与えられ、図16および図17にそれぞれ示される。代替的に、厚さについてのd31の依存性は、実験的に定められ得る。
【0086】
Mo導電率も、厚さが減少するにつれて変化する。抵抗率についてのMo厚さの依存性は、モデリング目的のためのこの関係を定めるために、難波[17]のモデルを用いて得ることができる。このモデル、140nmの平均自由行程、P=Q=0、および0.5nmのRMS表面粗さを用いて、Mo厚さと抵抗率との間の関係が定められ得る。Mo抵抗率とMo厚さとの間、d31とAlN厚さとの間、および、損失角と厚さとの間の想定される関係が、図18〜図20のそれぞれに示される。最適化パラメータ式および上記のプロットからのデータを用いて、3層の装置の理想的な厚さが、以下の表1に示される。
【0087】
表1
【表1】
【0088】
追加された精度のために、1mm×1mmの振動板の上方および下方の空気の流体負荷が、密度合計(density summation)に追加された。そして、固有振動数方程式が、梁の長さを計算するために用いられ得る。20kHzの固有振動数については、梁は374μmの長さとなる。図21〜図23のプロットは、最適化パラメータについての層厚さ変化の効果を示す。小さな相対変化は、底部Mo厚さの場合を除いては、最適化パラメータに大きな影響は及ぼさない。そのため、20nmのような、より保守的な底部Mo厚さを使用することがよいであろう。もちろん、取得可能な最大値の10%より大きい最適化パラメータを維持する、より保守的な値も用いることができ、したがって、図18〜図20に示されるように、この範囲においては、特に底部電極の最適化パラメータは厚さとともに非常に大きくは減少しないので、50nm、100nm、またはそれより大きい電極厚さが用いられ得る。所望のセンサ面積が、およそ1mm×1mmである場合は、この梁は1mm幅に作られ、それらの3つが端と端をつなげて配置され得る。
【0089】
これと同様のアプローチが、図3bに示される、電極および圧電材料の交互5層の積層梁構造について用いられ得る。最適化パラメータを最大化する計算された最適値が、以下の表2で与えられる。
【0090】
表2
【表2】
【0091】
そして、固有振動数方程式が、梁の長さを計算するために用いられ得る。20kHzの固有振動数については、梁は461μmの長さとなる。図24〜図26のプロットは、最適化パラメータについての層厚さ変化の効果を示す。また、これらのプロットは、電極層が、たとえば、20,50,100nmまたはそれより大きい値まで、センサ面積に対する出力電圧の計算された比率の非常に大きな減少にみまわれることなく十分に低減されること、および、取得可能な最大値の10%より小さい値まで、その比率を減少させることなく、中間電極が5nmから1μmの間で変化され得ることを示している。
【0092】
振動板設計
上述のように、片持ち梁構造と言うよりは、応力解放された振動板設計も、感度および低ノイズフロアの良好な組み合わせを提供し得る。図27aおよび図27bへ戻って、シリコン基板54の上方に吊るされた、応力解放型振動板52の形体における多層音響センサを含む圧電型MEMSマイクロフォンが示される。この実施形態においては、上部および下部Mo電極層、およびAlN圧電材料の中間層の、3層だけが用いられる。しかしながら、パリレンおよび他の材料の層も用いられ得ること、および、振動板が上述のような複数の圧電層を積層型片持ち梁構造とともに有し得ることが理解されるであろう。図示された実施形態は3層のみを含むが、上部および下部電極層は、各々2つの独立した電極を定めるようにパターン化される。特に、第1の(下部)電極層は、中央電極56および中央電極56の周囲を囲む外部リング状電極58を含む。図27aに示される第2の(上部)電極層も、中央電極57および中央電極57の周囲を囲む外部リング状電極59を含む。図27aに示される上面図の奥行きから、中央電極57および外部リング状電極59の両方は、それらにそれぞれ関連する中央電極56および外部リング状電極58と同一の拡がりを持つ。理解されるように、中央電極56,57は、第1の圧電検出素子を形成し、外部リング状電極58,59は、第2の圧電検出素子を形成する。電極を互いに電気的に絶縁された状態に維持することによって、それらは、必要に応じて、共に配線され得る。外部リング状圧電検出素子は、中央検出素子とは反対方向に引っ張られているので、圧電効果によってこれらの電極上に生成される電荷は、中央電極56を外部リング状電極59に接続し、中央電極57を外部リング状電極58に接続することによって共に加えられ得るように、逆極性となる。センサからの信号は、トランジスタ、オペアンプ、または他の適当な回路への接続によって、片持ち梁の実施形態に関連して上記で議論されたものと同様の態様で増幅され得る。
【0093】
応力解放型振動板52を得るために、層はシリコンウェハまたは他の適当な基板54上への堆積によって形成され、そして、振動板はマイクロマシン化または他の処理がされて、残留応力を解放するために必要に応じて層が拡縮できるように、基板から実質的に引き離される。図27aに示されるように、これを達成するための1つの方法は、スプリング60を用いて振動板52を定位置に保持することであり、一方で、そうでなければ、基板54から解放される。一旦、応力が解放されると、振動板52は、静電気クランピングを介するような適当な技術によって基板54の周辺に再度取り付けられ得る。スプリング60は、境界を形成するためにAlNでエッチングし、その後、それより下方の材料を除去することによってスプリングをアンダーカットすることによって生成される。振動板52は、電極のリード線のために用いられる領域の底部右角において、基板54と接続される。そして、残りの3つの角のスプリングは、一方端で基板54に、そして他方端で振動板52に固定される。スプリングのアンダーカット後、振動板52は、底部の外部電極58を接地に固定するとともに、基板にバイアス電圧を印加することによって基板54に再取付けされ得る。このように、振動板52は、基板上の層のうちの少なくとも1つの直接堆積として基板54上に取り付けられる、その周辺の第1の部分(底部右)を有し、基板上の第2の部分の個別の接着によって基板に取り付けられた周辺の第2の部分を有する。それは、また、その他の角において、スプリング60として動作する1つまたはより多くの層の薄い相互接続によって基板54に接続される。中央および外部リング状電極への電気的接続は、振動板52が基板54に接続されたままの底部右角において圧電層にわたって伸延する導電配線62によってなされ得る。最適な層厚さおよび大きさは、片持ち梁設計のための上記と同じ手順を引き続いて行なうことによって得られる。層厚さの妥当な見積もりは、上記で与えられた同じパラメータを用いることによって見出され、代替的には、振動板モデルがより完全で正確な最適化のために用いられ得る。
【0094】
さらなる観察
製造された装置は、モデルが正確であり、かつ、材料および処理のみの改善が必要であることを示す。処理および堆積技術が、達成されるべきよりよい材料特性を可能とする場合は、性能は図28に示されるものと合致する。この図は、人々が、高品質材料パラメータを有するJFETコモンソース増幅器を用いて設計・製造された装置について期待し得る性能を示す。これは、この圧電型マイクロフォンのための設計が、良好に最適化された容量型マイクロフォンと同じ程度のノイズフロアを達成し得ることを示す。感度および電力消費のようないくつかのパラメータは、図28のプロットには含まれず、というのも、これらのパラメータは、図で与えられたものとは十分に相互関係を有しないからである。図中のプラス記号は圧電型マイクロフォンを示し、丸は容量型マイクロフォンを示す。圧電型マイクロフォンは、典型的に、容量型マイクロフォンよりも低い感度を有するが、これは、容量型マイクロフォンにおいてしばしば用いられるように、特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit:ASIC)を用いて信号を増幅することによって修正され得る。この図は高品質な圧電材料を想定しているが、より良好な電極材料、テーパ状の梁、または、梁の中央部の薄いコンプライアンス層の使用によって可能となる改善を考慮に入れていない。これは、また、JFETが増幅のために用いられることを想定しており、そのためノイズフロアが制限される。ASICは、より低いノイズフロアを有するとともに、マイクロフォンの性能をさらにもっと改善し得る。これは、また、0,001のtan(δ)を想定しているが、適当な焼なましによって、この値以下に低減され得ることが示された。
【0095】
上述のように構築された圧電型MEMSマイクロフォンは、家庭用電化製品において用いられるエレクトレットコンデンサマイクロフォン(ECM)およびMEMS容量型マイクロフォンと競合する商業的可能性を有し得る。この設計は、ECMおよびMEMS容量型マイクロフォンと同程度の性能を提供するが、それらに勝る利点を提供する。第1に、標準的なECMは、他のすべてのマイクロチップについて用いられる典型的な鉛フリーはんだ処理を用いたプリント回路基板に搭載することができない。これは、手動で、またはより高価でかつ信頼性の低いソケットのいずれかによって、特別に取り付けられなければならないことを意味している。前述した圧電型マイクロフォンは、高温に耐えることができ、したがって、標準的な技術を用いて搭載され得る。この圧電型マイクロフォンは、また、ECMよりも小さく、全体としてより小さな電子装置を可能とする。MEMS容量型マイクロフォンも、これらの利点を有し、したがって、2003年から携帯電話において用いられてきた。しかしながら、MEMS容量型マイクロフォンは、多くの部分で、これらのマイクロフォンへの読み出し回路を提供するために用いられる特定用途向け集積回路(ASIC)のために、ECMより高価になる。これは、ECMにおいて用いられるJFETよりもずっと高価な部品である。ここで説明された圧電型MEMSマイクロフォンは、単一のJFETを用いて増幅され、したがって、MEMS容量型マイクロフォンの利点を有するより低コストのマイクロフォンを創出することができる。
【0096】
音響マイクロフォンとしての使用の他に、その装置は、マイクロフォン構造の設計における適切な変更が、当該用途のためにそれを最適化するために用いられることによって、
超音波検出用のような他の用途のために用いられ得る。さらに、(たとえば、約1〜2μmの)パリレンのような絶縁材料で梁を覆うことによって、マクロフォンは、水中用の用途のためのハイドロフォンとして用いられ得る。同様に、パリレンまたは他の適当な絶縁被服は、ハイドロフォンを構築するために上述の振動板設計に用いられ、その場合、装置は、当業者によって知られているように、圧力均等化ポート、または、外部環境との適当な圧力均等化の他の手段を含む。
【0097】
上記は、本発明の1つまたはより多くの好ましい例示的な実施形態の説明であることが理解されるべきである。本発明は、本明細書に記載された特定の実施形態に限定されるのではなく、むしろ、以下の請求項によってのみ定められる。さらに、上記の説明に含まれる記述は特定の実施形態に関連し、用語または語句が明確に定義される場合を除いて、本発明の範囲または請求項において用いられる用語の定義についての限定として解釈されるべきではない。さまざまな他の実施形態、および、開示された実施形態に対するさまざまな変更および修正が、当業者には明白となるであろう。たとえば、取得可能な最大比率(または、取得可能な最大最適化パラメータ)の少なくとも10%を提供するセンサ設計は、多くの用途のために適当であるが、より好ましい設計は、取得可能な最大比率の少なくとも25%を提供し、さらにより好ましい設計は、取得可能な最大比率の少なくとも50%を提供する。高度に好ましい実施形態においては、取得可能な最大最適パラメータを用いる設計が利用され得る。そのようなすべての実施形態、変更、および修正は、添付の請求項の範囲内に入ることが意図される。
この明細書および請求項において用いられるように、「たとえば」、「例として」、「〜のような」、および「類似の」の語句、ならびに、「備える」、「有する」、「含む」の動詞およびそれらの動詞の他の形式は、1つまたはより多くの要素または他の事項の一覧とともに用いられるときは、各々オープンエンドとして解釈されるべきであり、その一覧は、他の追加の要素または事項を排除するものとして考えられるべきでないことを意味する。他の語句は、異なる解釈が必要とされる文脈において用いられない限り、それらの最も広範な妥当な意味を用いて解釈されるべきである。
【0098】
参考文献
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【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に圧電型マイクロフォンに関し、特に、圧電型MEMSマイクロフォンおよび特定の最終使用用途の要件を満たすそのようなマイクロフォンを構築するための設計技術に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
微小電気機械システム(microelectromechanical system:MEMS)技術の発生は、シリコンウェハ堆積技術を用いるマイクロフォンのような音響変換器の開発を可能にした。この方法で製造されたマイクロフォンは、一般的に、MEMSマイクロフォンと称され、容量型マイクロフォンや、PZT、ZnO、PVDF、PMN−PT、またはAlNのような材料を用いる圧電型マイクロフォンのような様々な形態に作られる。MEMS容量型マイクロフォンおよびエレクトレットコンデンサマイクロフォン(electret condenser microphone:ECM)は、家庭用電化製品に用いられ、より大きな感度およびより低いノイズフロアを有する点で、典型的な圧電型MEMSマイクロフォンに比べて利点を有する。しかしなら、これらのよりありきたりの(ubiquitous)技術の各々は、それ自身の欠点を有する。標準的なECMについては、それらは、基板上に取り付けられたほかの全てのマイクロチップに一般的に使用される典型的な鉛フリーはんだ処理を用いるプリント回路基板には、典型的には搭載することができない。MEMS容量型マイクロフォンは、携帯電話においてよく用いられるが、少なくとも部分的に、マイクロフォンのための読出回路を提供する特定用途向け集積回路(application-specific integrated circuit:ASIC)の使用によって、比較的高価になる。MEMS容量型マイクロフォンは、また、典型的な圧電型MEMSマイクロフォンよりも、小さいダイナミックレンジを有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
様々な公知の圧電型および容量型MEMSマイクロフォンのノイズフロアが、図1に示される。円で囲まれた2つのマイクロフォンのグループによって示されるように、容量型MEMSマイクロフォン(下方のグループ)は、同じ位の大きさの圧電型MEMSマイクロフォンよりも、およそ20dB低いノイズフロアを、一般的に有する。
【0004】
公知の圧電型MEMSマイクロフォンは、片持ち梁(cantilever beam)あるいは振動板のいずれかとして作られ、これらのマイクロフォンは、電極、および、振動板または梁の基板材料として用いられるパリレン(Parylene)またはシリコンのような構造材料に沿った圧電材料を含む。片持ち梁設計のためのパリレンの利点は、それが、(固定長さについて)梁のバンド幅を増加するとともに圧電材料の中立軸からの距離を増加する、梁の厚さを増加するために用いられ、それは一見して感度を増加する。たとえば、およそ20μmの梁基板が公知であり、レダーマン(Ledermann)の参考文献[15]を参照されたい。パリレン振動板を利用する圧電型MEMSマイクロフォンについては、より薄い層が用いられる。たとえば、米国特許番号6,857,501およびニュー(Niu)の参考文献[10]を参照されたい。ここで用いられる他の著者の様々な参照は、本説明の最後に特定される文献および雑誌の記事の参照であり、本明細書中のいくつかの教示のサポートにおける非本質的な対象のためだけ、またはそれらの教示の背景としてのみ提供されることに注意すべきである。参照された文献の各々は、これによって、参照として引用される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の要約
本発明の1つの局面に従えば、基板と、第1の電極層、第1の電極層上に堆積された圧電材料の中間層、およびその圧電材料上に堆積された第2の電極層を含む少なくとも3つの層を有する多層音響センサとを備える圧電型MEMSマイクロフォンが提供される。センサは、多層センサについてのセンサ面積に対する出力エネルギの比率が、所与の入力圧力、バンド幅、および圧電材料について取得できる最大比率の少なくとも10%であるような寸法とされる。
【0006】
本発明の他の局面に従えば、基板と、第1の電極層、前記第1の電極層上に堆積された圧電材料の中間層、および前記圧電材料上に堆積された第2の電極層を含む少なくとも3つの層を備える多層音響センサとを備える圧電型MEMSマイクロフォンが提供される。センサは、以下の式に従って計算される最適化パラメータが、
【0007】
【数1】
【0008】
センサについて取得可能な最大最適パラメータの少なくとも10%であるような寸法とされ、ここで、Voutはセンサの出力電圧であり、Cはセンサのキャパシタンスであり、Pは入力圧力であり、Aはセンサ面積であり、tan(δ)はセンサの第1の共振周波数におけるセンサの誘電損失角であり、fresは第1の共振周波数である。
【0009】
本発明の他の局面に従えば、シリコン基板と、各梁が片持ち状とされるとともに固定端と自由端との間に伸延するように各々が前記基板によって一方端を支持される複数の梁とを備える。各梁は、電極材料の堆積層および電極材料を覆う圧電材料の堆積層を含む。少なくともいくつかの梁は積層され、その積層された梁は、それらの間に追加の層を有しない、堆積された電極材料および堆積された圧電材料の交互層を含む。
【0010】
本発明のされに他の局面に従えば、圧電型MEMSマイクロフォンは、基板と、基板の上方に吊るされた応力解放型振動板とを備える。振動板は、第1の電極層、第1の電極層上に堆積された圧電材料の中間層、および圧電材料上に堆積された第2の電極層を含む少なくとも3つの層を有する、多層音響センサを含む。これらの応力解放型振動板は、たとえば、実質的にその周囲のすべてについて基板からそれを切り離すとともに、必要に応じて、残留応力を解放するためにそれを伸延または収縮させることによって、適当な態様で得ることができる。振動板は、適当な技術によって、基板のその周囲に再取り付けされ得る。
【0011】
図面の簡単な説明
本発明の1つまたはより多くの好ましい例示的な実施形態が、添付の図面と関連して、以降で説明され、同様の符号は同様の要素を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】様々な公知のMEMSマイクロフォンについての、センサ面積に対するノイズレベルのプロットである。
【図2】圧電型MEMSマイクロフォンの出力エネルギについての振動板残留応力の影響を示すプロットである。
【図3a】本発明の1つの局面に従って構築された片持ち梁型圧電型MEMSマイクロフォンセンサの上面図である。
【図3b】図3aのマイクロフォンセンサからの2つの対の対向梁の断面図である。
【図3c】図3bに示される積層型梁の挙動のモデリングに使用するための交互梁層およびそれらの寸法を示す図である。
【図4】増幅回路に接続され、電流についてのインピーダンスモデリングを示す、図3aのマイクロフォンの概要図を示す。
【図5】圧電型音響センサについての典型的なノイズ曲線のプロットである。
【図6】図3aのセンサの出力エネルギについての、梁テーパの影響を示す図である。
【図7】圧電型MEMSマイクロフォンセンサの出力エネルギについての、層厚さの影響を示す、1つまたはより多くのパラリン層を含むことの影響を示す図である。
【図8】異なる電極材料が、どのように圧電型MEMSマイクロフォンセンサの出力エネルギに影響を及ぼすかを示すプロットである。
【図9a】図3bのセンサを製造するために用いられる処理ステップを示す図である。
【図9b】図3bのセンサを製造するために用いられる処理ステップを示す図である。
【図9c】図3bのセンサを製造するために用いられる処理ステップを示す図である。
【図9d】図3bのセンサを製造するために用いられる処理ステップを示す図である。
【図10】図3aの製造されたセンサの顕微鏡写真である。
【図11】図3aのセンサを用いる圧電型MEMSマイクロフォンの図である。
【図12】図11のマイクロフォンの周波数応答のプロットである。
【図13】図11のマイクロフォン梁偏位プロファイルのプロットである。
【図14】図11のマイクロフォンについての、測定された、および予測された感度ならびにノイズフロアのプロットである。
【図15】図3aに示されるタイプの片持ち梁についての、電極長さの関数として正規化された出力エネルギのプロットである。
【図16】AlN圧電材料についての圧電結合係数行列からのd33係数の低下を示すプロットである。
【図17】誘電損失角tan(δ)の低下を示すプロットである。
【図18】電極層厚さの関数としてのMo抵抗率を示す図である。
【図19】圧電層厚さと、AlN圧電材料についての圧電結合係数行列からのd31係数との間の関係のプロットである。
【図20】AlN層厚さの関数としての誘電損失角を示すプロットである。
【図21】単一の(非積層の)片持ち梁についてのMo下部電極層厚さの関数としての、計算された最適化パラメータを示す図である。
【図22】単一の(非積層の)片持ち梁についてのAlN中間層厚さの関数としての、計算された最適化パラメータを示す図である。
【図23】単一の(非積層の)片持ち梁についてのMo上部電極層厚さの関数としての、計算された最適化パラメータを示す図である。
【図24】5層の(積層された)持ち梁についてのMo下部および上部電極層厚さの関数としての、計算された最適化パラメータを示す図である。
【図25】5層の(積層された)持ち梁についてのAlN中間層厚さの関数としての、計算された最適化パラメータを示す図である。
【図26】5層の(積層された)持ち梁についてのMo中間電極層厚さの関数としての、計算された最適化パラメータを示す図である。
【図27a】本発明の1つの局面に従って構築された、振動板圧電型MEMSマイクロフォンセンサの上面図である。
【図27b】図27aのB−B線に沿って得られる、部分断面図である。
【図28】公知の圧電型および容量型MEMSマイクロフォンとどのように比較するかを示す、本発明に従って構築された圧電型MEMSマイクロフォンについての期待されるノイズフロアのプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
好ましい実施形態の詳細な説明
以下の説明は、以下に記載される1つまたはより多くの異なる態様で定められ得る最適化基準を満たす、様々な圧電型MEMSマイクロフォンに向けられる。
【0014】
典型的な圧電型MEMSマイクロフォンは、マイクロフォンの感度を最適化するように設計され、これは、少なくとも部分的に、これらの装置について、上述した増加されたノイズフロアに関与する。以下に説明されるように、所与の入力圧力、バンド幅、および圧電材料について、センサ面積に対する出力エネルギの比率を最適化することによって、容量型MEMSマイクロフォンと同様のノイズフロアを伴って、特定の用途のための十分な感度を有する圧電型MEMSマイクロフォンが構築される。このアプローチは、高品質の膜に対して有効である。しかしながら、膜厚が低減されるにつれて、膜品質は低下する。この要因は、面積に対するセンサエネルギの比率でもあるとともに、圧力、(バンド幅を制限する)固有振動数、および装置の損失角を含む、計算された最適化パラメータを利用する、本明細書で説明される代替的アプローチを用いて説明され得る。これらのパラメータを計算された比率に加えることによって、この代替的アプローチは、それらを定数として考えるよりも、これらのパラメータの効果を説明する。したがって、当業者によって理解されるように、以下の実施形態は、最適または最適に近いセンサ設計を定めるための、2つの異なる使用可能なアプローチと関連して説明され、それらは、1)所与の(一定の)入力圧力、バンド幅、および圧電材料についてのセンサ面積に対する出力エネルギの比率の直計算(straight calculation)、ならびに2)圧力、(バンド幅を制限する)固有振動数、および装置の損失角を説明する最適化パラメータの計算である。この最適化パラメータは、以下の式を用いて定められ得る。
【0015】
【数2】
【0016】
ここで、Voutは出力電圧であり、Cはキャパシタンスであり、Pは入力圧力であり、Aはセンサ面積であり、tan(δ)は第1の共振周波数におけるマイクロフォンの誘電損失角または散逸係数であり、fresは装置の第1の共振周波数である。この最適化パラメータの使用、ならびに、このパラメータの計算において用いられる材料特性および装置形状が、以下にさらに説明される。最適な膜厚が、以下にさらに説明される図18、図19および図20にプロットされた膜特性と比較されると、ほとんどの最適膜厚が、厚い膜とほぼ同じ特性を有するような値を有することが明らかである。これらの膜について、センサ面積のみに対する計算されたエネルギの最適化は、電極および/または圧電特性の変化を説明することなく、適しているかもしれない。しかしながら、最適厚よりも実質的に薄い膜を作ることは、材料特性の大きな相対変化をもたらし、そのような場合には、最適パラメータの使用は、センサ最適化を定めるのにより最適であり得る。
【0017】
これらの先行設計がこの最適化を達成することを典型的に避けてきた、より従来型のMEMSマイクロフォン設計の少なくとも2つの局面がある。第1は、張力により支配される剛性を有する振動板のようなセンサ構造の使用である。シリコンウェハ基板上に作られた圧電型MEMSマイクロフォンについて、この張力は、堆積後の各層上に残された残留応力の結果である。この効果は、正規化出力エネルギの減少を引き起こし、図2において理解され得るように、最適化パラメータの要素の1つである。この図は、残留応力が、2つの1μmの窒化アルミ(AlN)層および20kHzの共振周波数を有する3つの100nmモリブデン(Mo)層板の正規化出力エネルギをどれくらい低減するかを示す。1MPa以下低い応力、すなわち達成し難い圧力レベルは、この振動板の正規化出力エネルギを20%低減し、同様に最適化パラメータを20%低減する。上述の関係の最適化に近づくことを妨げる先行設計における第2の問題は、これらの設計が最適または最適に近い装置配置を利用していなかったことである。したがって、たとえば、(片持ち梁を形成するときに装置がその基板から解放されるために)装置の残留応力が重要な要因とはならない片持ち梁設計においては、層厚さ、層順、梁形状、および隣接梁との等しい梁間隔の組み合わせは、最適化が望まれる全体の装置構成を作り上げる。
【0018】
開示された実施形態においては、これらの問題は1つまたはより多くの方法で対処され得る。装置の残留応力が問題とはならない片持ち梁においては、これは、所与の入力圧力、バンド幅、および圧電材料について、センサ面積に対する出力エネルギの取得可能な最大比率の少なくとも10%を達成するマイクロフォン設計を利用することによって、なされ得る。本明細書で使用されるように、所与のセンサ設計についての「取得可能な最大比率」は、センサ面積に沿って与えられる出力エネルギ計算を用いて定められ、または、上述の(時々変化するが)利用可能な値が与えられた最適化パラメータ式、および最適化式において用いられる様々なパラメータについての式を用いて定められ得る。この後者のアプローチにおいては、計算された最適化パラメータがセンサについての最大の取得可能な最適化パラメータの少なくとも10%であるような適当なセンサ設計を得ることができる。反復された実験的決定によって、あるいは、現在公知であるかまたは後に開発される他の最適化式または技術を用いることによって、取得可能な最大比率を決定する他の方法も可能である。達成可能な最大最適化の10%またはより多くの所望レベルを達成するために、モデリングおよび後続の試作試験を通して、センサをできるだけ薄く作り、かつ、複数の層が出力を増加するために積層され、または、電極層と結晶層との間の中央に配置された薄い(〜1μm)パリレン層を有する個別の梁として構築されるトポロジにおいてそれを採用することが有効であることが定められた。いずれのアプローチでも、複数の梁が生成され、そして、所与の用途のための装置のキャパシタンスおよび感度の所望の組み合わせを得るために、直列および並列接続の組み合わせで配線される。振動板については、改善された圧電型MEMSマイクロフォンは応力解放型振動板を用いて構築され、圧電センサはシリコンベース構造上への堆積によって作られ、その後、基板から切り離して解放膜(released membrane)を拡張または収縮させて残留応力を解放し、適当な態様で再取り付けが行なわれる。この技術は、クランプされた状態、ピンで固定された状態、または自由外周状態のどのような組み合わせを有する振動板にも有効である。また、上記の最適化計算の使用は、振動板型の圧電型MEMSマイクロフォンの製造において用いられ、向上されたマイクロフォン感度およびノイズ性能を提供する。これらの、片持ち梁および振動板の設計は、多くの用途のための装置の有用な動作を提供するとともに、計算された最適化パラメータが最適の10%を上回るような設計は、容量型MEMSマイクロフォンと同様またはそれを超過するユニット面積あたりのノイズフロアを有する良好な感度を提供する向上された動作を提供し得る。
【0019】
以下の実施形態は、上述の技術を用いる例示的な設計を提供し、それに引き続く議論は、様々な実施形態が、上述の比率の最適化のために、どのように設計され、実行され、そして確認されるかを考慮する、追加的な演算および製造の詳細を提供する。センサ面積比率に対するエネルギの最適化、および、特に、最適化パラメータの使用は、センサ形状の一部または全ての決定において役立つが、結果としてのマイクロフォンが、設計されてはいるが、本明細書で説明される最適化標準を満たしているか否かが重要であるので、そのようにすることは必ずしも必要ではない。
【0020】
単一のおよび積層された片持ち梁
図3aは、複数の指状の片持ち梁32を有する多層音響センサを含む、片持ち梁型の圧電型MEMSマイクロフォン30を示し、各々は、公知のMEMS製造技術を用いて形成され得る、梁32の対向する各対の自由端が小さな隙間38によって分離されるような、マイクロフォンの2つの左右端34,36の1つにおいて、片持ち梁にされる。好ましくは、この隙間は3μm以下であるが、設計によってはより大きくなり得る。多くの用途については、10μm以下の隙間が用いられ得る。同様の隙間40が、隣接する(隣同士の)梁の間に用いられ得る。片持ち梁32は、装置のバンド幅についての材料残留応力の影響を低減する。図3aに示される各梁32は、他の梁と相互接続されて所望のキャパシタンス特性および感度特性を有するマイクロフォン全体を生成する、単一の分離された梁であり得る。あるいは、図3bに示されるように、示される各梁32は、電極および圧電材料の層を交互にすることによって形成された、2つまたはより多くの梁の積層された組の上部梁であり得る。積層梁構造については、追加的な層が用いられ得ることが理解されるが、図3bにおいては5つの層がある。これらの梁は、梁が電極層および圧電層のみを含むような、他の層または材料を用いることなく構築される。示された例においては、電極材料はモリブデンであり、圧電材料は窒化アルミニウムであるが、どのような適当な導電材料(たとえば、チタン)も電極用に用いることができ、PZT,ZnOなどのような、どのような適当な圧電材料も用いられ得ることが理解されるであろう。
【0021】
梁32は、望ましい特徴の組を提供するために、以下に説明される設計手法に従って定められる寸法を有し得る。いくつかの実施形態については、圧電層は1μmよりも小さく、より好ましくは、およそ0.5μmであり得るが、これは、他の梁の寸法、材料などを含む多くの因子に基づいて変化する。多くの用途について、梁厚さ、したがって圧電厚さは2μmより小さいが、それに含まれる特定の用途によっては8μm以下の高さになり得る。好ましくは、圧電層の厚さは、良好な圧電膜品質を維持しつつ、できるだけ薄く作られる。たとえば、その層は、それに含まれる特定の用途について十分な圧電効果を発揮するための十分な厚さを有している限り、利用可能な製造技術がなし得る可能な限りの薄さで作られる。梁長さは、以下の設計説明において示されるように、厚さに関連されるべきである。電極層もまた変化し得るが、好ましくは、0.2μmまたはそれより小さいオーダである。好ましくは、梁のベース端は、結果として生じるキャパシタンスを最小化するように、面積の最小限の量で支持される。
【0022】
MEMSマイクロフォン30は、様々な有利な特徴を有し、それらの1つまたはより多くは、本明細書に記載される設計手法を用いて達成し得る。これらの特徴は以下を含む。
【0023】
1.所与のバンド幅、圧力、および圧電材料についての、センサ面積に対する出力エネルギの最大または最大に近い比率。
【0024】
2.センサのキャパシタンスと、個別の梁間の直列または並列接続の組み合わせによって達成される感度との所望の組み合わせにおいて設計する能力。これは、マイクロフォンの全出力エネルギに影響を及ぼすことなく、かつ入力換算圧電ノイズ(input referred piezoelectric noise)に影響を及ぼすことなくなされ得る。
【0025】
3.より高周波音に対して高インピーダンスを提供し、それによって装置が低周波数カットオフを有するように設計され得る、小さな空気間隙によって分離された隣接する梁の使用。上述のように、これは、隣接する梁との間隔(すなわち、梁の対向端間の隙間、および/または、梁の隣接する側面間の隙間)を、10μm以内、好ましくは3μm以内に保つことによってなされ得る。これらの隙間は、レダーマン(Ledermann)[15]において議論されるように設計され得る。
【0026】
4.電極および圧電材料の交互層のみで形成された、積層された梁の使用。
特定の用途についての片持ち梁型マイクロフォン30の設計は、以下に説明される設計手法を用いて実行され得る。この手法は、解析的かつ検証実験的(verified experimentally)に最初になされた、梁の数学モデリングに基づいて開発された。単一梁の感度は、クロマー(Krommer)[1]の式(20)で開始し、そして以下の梁方程式を定めることによって決定された。
【0027】
【数3】
【0028】
ここで、
【0029】
【数4】
【0030】
ρは厚さ方向にわたって平均化された密度であり、Aは断面積であり、wは梁偏位であり、tは時間であり、xは梁に沿った距離であり、Mは梁の曲げモーメントであり、fは単位幅当たりの力であり、bは梁の幅であり、Nは層lの数であり、sは弾性材料コンプライアンスであり、dは圧電結合係数であり、εは誘電率であり、zは図3cに示されるような梁の底部からの高さであり、Vは層にかかる電圧である。z0は、梁が圧電材料を有していない場合の中立軸であり、以下のように演算され得る。
【0031】
【数5】
【0032】
梁方程式についての境界条件は、以下である。
【0033】
【数6】
【0034】
モーメント方程式における電圧Vは、アーシック(Irschik)[2]の方法を拡張することによって定めることができ、多層については以下のような結果がもたらされる。
【0035】
【数7】
【0036】
層のキャパシタンスは以下の式によって与えられる。
【0037】
【数8】
【0038】
層の出力エネルギは、層電圧の二乗を層キャパシタンスと掛け合わせることによって計算される。
【0039】
【数9】
【0040】
装置出力エネルギ(出力エネルギとも称する。)は、梁32が本製品を維持する(preserve)直列または並列の組み合わせで配線される所与の各層における出力エネルギの総和である。マイクロフォン30の設計および製造においては、梁レイアップ(layup)(すなわち、層の高さおよび長さ)のパラメータは、所与の入力圧力、バンド幅、および圧電材料について、センサ面積に対するこの出力エネルギの比率が最大となるように選択され得る。この比率は以下のようになる。
【0041】
【数10】
【0042】
ここで、センサ面積は、圧電梁を含む全チップ表面積を指す。好ましくは、マイクロフォン30は、最大の達成可能な値にできるだけ近い値が達成できるように、設計されかつ製造される。しかしながら、多くの理由(たとえば、製造コスト)のために、たとえセンサ面積に対する最適エネルギ比率の10%程度の低い設計であっても、特定の用途については許容可能であり得る。
【0043】
この比率項を最大化することは、2つの理由について有利である。第1に、(マイクロフォンを特定の回路に適合させるように)梁32を直列または並列に配線するときは、出力エネルギは一定のままである。これは、リード(Ried)[9]の研究において指摘された。第2に、梁32を直列または並列に配線するときは、入力換算圧電ノイズは一定のままである。これらの特徴の両方が一定のままであるので、この比率の最大化は、設計を最適化するための手法として用いられ得る。
【0044】
上記の式は、任意の幅の梁で用いられ、数値的に解かれて梁の感度を決定する。より幅広の梁(平面)については、上記で用いられた一軸応力前提を平面応力前提に変更するような単純な置換が、デ・ボウ(DeVoe)[3]によって提案された。この置換は以下である。
【0045】
【数11】
【0046】
しかしながら、エルカ(Elka)[4]は、三次元(3D)解析モデルまたは3D有限要素モデルと比較して、初期一軸歪み前提がよりよい結果を与えることを示した。梁が一定幅であると仮定した場合は、式は非常に単純化され、解析的に解くことができる。ティエルステン(Tiersten)[5]からの小型圧電結合の前提は、さらなる単純化をもたらす。これらの式は、1つの特定の梁によって生じる電圧を定めるために用いられるとともに、複数の梁によって生じる電圧を定めるために拡張され得、したがって、圧電型マイクロフォンの感度を与える。梁密度がこの式に含まれるので、それらは、マイクロフォンのバンド幅の推定にも用いられ得る。これらの式は、電圧検出が用いられ、梁の出力が高インピーダンス入力になることを想定している。類似の式は、電荷検出が想定される場合に、導かれ得る。これらの式は、クロマー(Krommer)[1]およびアーシック[2]の研究にもある。当業者においては、これらの式は、電荷増幅電子機器を利用する最適化された装置を定めるために、上記で与えられたものと同様に用いられ得る。
【0047】
圧電型マイクロフォン30のノイズフロア(最小の検出可能信号)は、基本的に、レビンゾン(Levinzon)[6]によって説明されるように、材料の誘電損失角によって制限される。この圧電ノイズは、以下の式として表現される、膜の抵抗によって生じる熱ノイズである。
【0048】
【数12】
【0049】
ここで、vnはノイズスペクトル密度であり、Δfはバンド幅であり、kはボルツマン定数であり、Tは温度であり、ωは角振動数であり、Cはセンサキャパシタンスであり、tan(δ)は材料の誘電損失角の正接である。これは、与えられた1つの梁32または梁の組み合わせの出力電圧ノイズを定める。梁からの機械的熱ノイズ、梁の放射インピーダンス、および1/fノイズのような、他のノイズ源は、マイクロフォンのノイズに影響を与えない。
【0050】
他の重要なノイズ源は、付随の電子機器のノイズである。増幅電子機器は、電荷増幅器から電圧増幅のための集積回路までのどのようなものにも及ぶ。実例の装置は、増幅のための2.2kΩの付加抵抗を有する共通ソース増幅器において、接合型電界効果トランジスタ(junction field effect transistor:JFET)を用いるが、これは、これらのトランジスタが、相対的に低ノイズを有し、小さく、高価でなく、比較的モデリングしやすいからである。JFETノイズは、レビンゾン(Levinzon)[7]によって示されるようにモデリングされ得る。低周波数において、図4に示される抵抗Rbの熱ノイズが、回路に影響を及ぼす。周波数ω=1/(Rb||Rp・C)において、極が形成され、ここで、Rpはtan(δ)から得られる圧電層の抵抗である。Rbが抵抗に影響を及ぼすと、より大きなキャパシタンスCが極をより低周波数に移動し、したがってさらに熱ノイズを減衰させる。JFETに接続された圧電型センサいついての典型的なノイズ曲線が、図5に示される。
【0051】
マイクロフォン30のダイナミックレンジは、多くの用途についての要件を上回り、典型的には、それが接続される電子機器によって制限される。マイクロフォン30それ自体は、電力を消費せず、そのため、トータルの電力消費は増幅回路の電力消費に依存する。マイクロフォンの面積は、用いられる梁の大きさおよび数によって定められ、ノイズフロア、感度およびバンド幅と、トレードオフの関係になり得る。
【0052】
振動および温度のような他のパラメータに対するマイクロフォン30の感度も、研究されている。振動に対する感度は、以下の式によって与えられるように、材料密度および厚さに関連する。
【0053】
【数13】
【0054】
これらのモデルは、マトラボ(登録商標)(MatlabTM)で実行され、最適化が実行された。最適化は、可聴域におけるバンド幅、低ノイズフロア、および市販のMEMSマイクロフォンと同様の面積を与えることが意図された。
【0055】
装置30が複数の梁32を用いるので、それらは直列または並列のいずれかで接続され得るが、出力エネルギ、積V2Cは、リード(Ried)[9]によって述べられているように、与えられた音圧については一定のままである。これらの梁が接続される方法は、感度とノイズの間のトレードオフを説明する。それらがすべて直列に接続される場合は、これは感度を最大化するが、センサキャパシタンスCは非常に小さくなる。JFETが増幅に使用される場合は、これはノイズをフィルタリングする極の周波数を増加し、結果としてのノイズが増加する。一般的に、小さいキャパシタンスは、電子機器への入力キャパシタンスが容量型除算器として動作し信号を低減するので、有害である。全ての梁が並列に接続される場合は、これは最小感度をもたらすが、最大センサキャパシタンスをもたらす。最適なキャパシタンスは、通常は上述の2つの限定的な場合(全並列対全直列)の間であり、JFETを用いるときに、システムの入力換算ノイズを最小化するように同定され得る。
【0056】
したがって、当業者によって理解されるように、面積は感度およびノイズフロアとのトレードオフであり得る。より多くの梁は、より多くの面積を消費するが、より大きなV2Cの積をもたらす。バンド幅も、ノイズフロア、感度、および面積とのトレードオフであり得る。より長い梁はより多くの面積を消費するが、それらはより従順(compliant)なので、与えられた面積に対してより大きなV2Cの積を与える。これらのより長い梁は、より低い固有振動数を有し、したがって、より低いバンド幅を有する。
【0057】
マイクロフォン出力に影響を与える、他の設計/製造要因がある。図6に示されるように、自由端に向けてテーパ状になっている幅を有する梁は、より大きなV2C出力エネルギを提供し得る。これのピーク値は、0.33の、梁の基部における先端に対する比率である。また、少なくとも単一(非積層)梁については、電極層と圧電層との間に配置されたパリレンの層は、より良好なV2C出力を提供し得る。特に、梁のモデリング後において、図7はパリレンの中間層の利点/欠点を定めるように生成された。この図は、薄いパリレン層が、梁の一定面積/一定バンド幅のグループの、V2Cの積を若干向上させることを示している。この薄い層は、パリレンが上部AlN層の膜品質の低下を引き起こす、より高い表面粗さを有するかもしれないので、試験装置においては用いられなかった。AlNの上部層は、おそらく役に立たないので、パリレンは有効であるためには、V2Cの積を2倍にする必要があるが、そうではなかった。したがって、単一(非積層)梁について用いるマイクロフォン構造に対しては、パリレンの使用を制限することが望ましいかもしれない。低い弾性係数および低い密度を有する、パリレン以外の適当な材料もまた用いることができる。
【0058】
マトラボ(登録商標)における装置のモデリングおよび最適化の後、装置が製造された。(テーパ状梁とは対照的な)矩形梁が、より単純な製造および試験の目的のために作られた。その梁は、200nmのMo、500nmのAlN、200nmのMo、500nmのAlN、200nmのMoの材料層で作られたが、これは、この組み合わせが、相対的に高感度および低ノイズを与えるからである。
【0059】
AlNが、圧電材料として選択されたが、これは、ZnOおよびPZTのようなほかの一般的なMEMS圧電材料と比べて、同等のまたは優れた性能を与えるけれども、これらの2つの材料のいずれよりも、よりCOMS適合性があるためである。装置性能は、d31、tan(δ)、誘電率、s、およびρのような、さまざまな材料パラメータに依存するので、最適な圧電材料を同定することは困難であり得る。これらの特性は、材料組成、堆積力/圧力/温度、基板粗さおよび結晶構造、材料厚さなどに依存する。材料堆積変動に加えて、これらのパラメータについて引用した値が、特にPZTが組成および配向性(orientation)においてより多くの多様性を有するにつれて、AlNよりPZTのほうが実質的に変化するので、完全な材料比較についての必要な情報の全てを提供する源を見出すことは困難であり得る。PZTはマイクロフォンの用途にもよっては有益であり得るより高い感度を典型的にもたらすが、AlNおよびPZTの両方を評価するための文献[11]〜[14]からの最適値を用いて、それらは成功した装置について、ほぼ等しい可能性(potential)を有するように見える。文献中のAlNパラメータは、より一貫性があるようにも考えられ、さらにAlNおよびMoは市販のFBARプロセスにおいてすでに用いられており、そのためこれらの材料を用いる製造は、市販用装置へより容易に移行することができる。高品質AlNがMo上に堆積され、残りの処理ステップで作用するので、Moが選択された。図8は、異なる電極材料がV2Cの積にどのように影響するかを示す。この用途についての最良の材料は、低密度かつ低剛性の材料である。したがって、チタン(Ti)はMoよりもよく作用するが、他の処理ステップでの適合性の問題のために用いられなかった。これらが高品質で合理的に堆積され得る最薄のものであるので、この層の厚さが選択された。モデルは、より薄い層は有利であることを示すが、製造においては試みられなかった。
【0060】
装置の処理が、図9a〜図9dに示される。第1に、200nmのSiO2層がDRIEエッチングのためのエッチング停止層として堆積された。その後、200nmのMo層が堆積され、パターン形成され、そして、希王水(9H2O:1HMO3:3HCL)でエッチングされた。次に、200nmのMo層に続いて500nmのAlN層が堆積され、パターン形成され、そして、Moについては希王水で、AlNについては熱い(85C)H3PO4でエッチングされた。その後、他の500nmAlNおよび200nmMoが堆積され、パターン形成され、そしてエッチングされた。全てのAlN堆積は、UCバークレイにおいて、ハーモニック装置(Harmonic Device)によって実行された。AlN堆積の間、梁の曲率を制限するために、残留応力が監視された。後続のこれらのエッチングにおいて、ウェハの両側が6μmのSiO2で覆われ、背面がパターン形成されるとともに、梁を解放するためのDRIEエッチングのためにエッチングされた。次に、ウェハはSTS DRIEツールにおいて、背面からエッチングされた。個々のダイ(die)は、ダイシングソーで切断され、SiO2は5:1のBHF中で除去された。いくつかのステップは改良され、最も顕著には、背面空洞(back cavity)をエッチングするために異方性シリコンエッチングが用いられるとともにエッチング停止が梁の下方でシリコン内に埋め込まれる場合は、梁の長さがより良好に制御され得る。いくつかの設計は、直列または並列の異なる組み合わせで梁を接続するとともに浮遊容量を低減するために、追加のメタライゼーションステップを利用したが、これらの装置は、この概念の初期の試験(initial proof)においては用いられなかった。装置の顕微鏡写真が図10に見られる。
【0061】
装置の製造後、それらは、図11に見られるように、トランジスタアウトライン(transistor outline:TO)缶(can)内にパッケージ化され、信号をバッファリングするためのJFETにワイヤボンディングされる。これは、図4に示されるように、電極から受けた信号がトランジスタによって増幅されるように、JFETのゲート入力がセンサ電極に接続されて行なわれ得る。梁への光学的アクセスを与えるとともに梁の偏位を測定するために、孔がTO缶のマイクロフォンの下方に開けられた。背面空洞の大きさがマイクロフォンのバンド幅の低位端を定めるので、この孔によって、背面空洞の大きさを調整することも可能である。そして、マイクロフォンが、基準マイクロフォン(ラーセン・デービス モデル2520(Larsen Davis model 2520))に隣接する平面波管内に配置され、周波数応答が、ラブ・ビューA/D(Lab View A/D)カードおよびソフトウェアを用いて測定された。これは、図12に見られ得る。梁を動作させ、レーザ振動計で梁の曲率を測定することによって、d31係数が測定された。梁の偏位プロファイルが図13に見られ得る。
【0062】
梁の固有振動数が、動作に対する梁の周波数応答を測定することによって定められた。マイクロフォンの性能に影響を与える他のパラメータは、マイクロフォンの誘電損失角tan(δ)である。これは、ラブ・ビュー(登録商標)ソフトウェアと関連するカスタム回路およびアジレント モデル4284A精密LCRメータ(Agilent Model 4284A Precision LCR meter)を用いて測定された。
【0063】
この初期テストについて、AlN最上部層のみが、JFETおよび梁の一方の側面のみに接続され、それによって、マイクロフォン全体がJFETに接続される場合に予測されるよりも、3dB高いノイズフロアをもたらした。梁は、356μmになるまで引き伸ばされたが、DRIEは予測よりもはるかにエッチングされ、およそ11kHzの固有振動数をもたらした。これは、梁の長さが実際にはおよそ400μmであることを示唆している。d31係数は1.68×10−12N/Cとして測定された。この値は、文献に引用されている最良値の約65%である。d31係数は、X線回折ロッキングカーブFWHMと関連させるために示され、報告された最良値はおよそ1度であるが、この層については約2.6度である。この値は、他よりもおそらく高く、というのも、その層がほんの0.5μmであり、他の層の上部にあるからである。tan(δ)は、1kHZにおいて0.04と測定された。文献は、典型的に、0.001から0.002の範囲のtan(δ)を与え、そのため、この値は、それらの典型的な引用値よりも1桁以上高い大きさである。この予測されるtan(δ)よりも高いことは、H3PO4を用いたAlNのエッチング後に、残留応力が少し残っているためと断定された。いくつかの調査の後、tan(δ)は、超音波洗浄器中において加熱板上で加熱しながら、アセトンで洗浄することによって低減され得ることが見出された。より低いtan(δ)を有する装置は、より低いノイズフロアを有するマイクロフォンをもたらす。
【0064】
測定されたd31係数およびtan(δ)とともに、固有振動数測定から導き出された長さを用いて、マイクロフォンモデルは、測定された性能に非常によく合致する。図14に示されるように、2.2kΩの負荷抵抗を伴うJFETコモンソース増幅器(common source amplifier)の外部で、感度は0.52V/Paと測定される。これは、圧電型マイクロフォンについての、0.17mV/Paの生出力感度に一致する。モデルは、0.18mV/Paの出力感度を予測する。装置の測定された入力換算ノイズフロアは58.2dBAであり、一方モデルは57.3dBAの入力換算ノイズフロアを示す。図14は、測定された感度およびノイズフロア、ならびに、予測された感度およびノイズフロアを示す。測定された周波数応答における第1のピークは、測定に用いられた梁の真向かいにある梁の固有振動数によって生じる。それらは、DRIEエッチングにおける不均一性のために、全く同じ長さではない。
【0065】
上述の片持ち梁の設計においては、センサ面積に対する出力エネルギ比率の最適化は、所与の入力圧力、バンド幅、および圧電材料に基づいて定められた。しかしながら、これらの制約は、圧電型MEMSマイクロフォンの設計または解析において考慮され得る。特に、以下の最適化パラメータ式を用いて、
【0066】
【数14】
【0067】
入力圧力は圧力P項によって説明され、バンド幅はfres項によって説明され、圧電材料および電極の特性は誘電損失角tan(δ)によって説明される。したがって、これらの入力制約の所与の組が用いられない場合、センサ面積に対する出力エネルギの比率は、それらその他の要因を考慮に入れるために、上記で与えられた最適化パラメータ式を最大化することによって最適化され得る。
【0068】
一例として、1つのAlN圧電層と2つのMo電極層とを有する矩形片持ち梁を用いる、圧電型MEMSマイクロフォンを再び考える。図15に示されるように、片持ち梁について、正規化された出力エネルギが、電極長さの関数としてプロットされ得る。単位面積あたりの正規化された出力エネルギが増加するにつれて、電極が梁の基部から梁の長さのだいたい50%までの間は、最適化パラメータも増加する。
【0069】
圧電材料として窒化アルミニウムを用いる場合は、小さい圧電結合が想定され得る。この想定は、出力電圧についての表現を、Vlについての上記で与えられたものから、以下の式に単純化し、
【0070】
【数15】
【0071】
ここで、Pは圧力振幅であり、bは片持ち梁の幅であり、Lは片持ち梁の長さであり、d31は圧電結合係数行列の31番目の項であり、ηは圧電材料の誘電率であり、s11はコンプライアンス行列ZQ=(zk−zn)2−(zk-1−zn)2の11番目の項であり、ここで、znは梁の中立軸であり、添字kは層を示し、この場合には、圧電層を示し、EIは以下の式として与えられる梁の曲げ剛性であり、
【0072】
【数16】
【0073】
ここで、ZCk=(zk−zn)3−(zk-1−zn)3であり、znは以下の式として与えられる。
【0074】
【数17】
【0075】
キャパシタンスは、およそ以下の式のようであり、
【0076】
【数18】
【0077】
ここで、Aeは電極によって覆われる面積であり、hpは圧電層の高さである。第1の共振周波数は、およそ以下の式のようになる。
【0078】
【数19】
【0079】
マイクロフォンの誘電損失角は、圧電材料それ自体における損失と、電極における損失との関数である。これは以下のように概算される。
【0080】
【数20】
【0081】
ここで、添字pおよびeは、それぞれ圧電材料および電極材料を示し、σは材料の導電率であり、ωは角振動数であり、Lは電極長さである。
【0082】
これらの式を組み合わせることによって、電極の長さが片持ち梁の長さと等しいと想定して、最適化パラメータは以下の式のように計算され得る。
【0083】
【数21】
【0084】
この式および材料特性とは独立の厚さを用いて、最適化は、ゼロ厚さ層および無限最適化パラメータをもたらす。しかしながら、モリブデン層が薄くなるにつれて、その導電率は減少する。また、非常に薄いAlNは、低減された圧電結合係数、および、より大きな損失角を有する傾向にある。この理由のために、これらの関係は、最適化に含まれなければならない。
【0085】
d31データは、d31係数が、d33係数と同じ比率で低下すると想定することによって引出され得る。d33およびtan(δ)の低下のプロットは、マーティン(Martin)[16]において与えられ、図16および図17にそれぞれ示される。代替的に、厚さについてのd31の依存性は、実験的に定められ得る。
【0086】
Mo導電率も、厚さが減少するにつれて変化する。抵抗率についてのMo厚さの依存性は、モデリング目的のためのこの関係を定めるために、難波[17]のモデルを用いて得ることができる。このモデル、140nmの平均自由行程、P=Q=0、および0.5nmのRMS表面粗さを用いて、Mo厚さと抵抗率との間の関係が定められ得る。Mo抵抗率とMo厚さとの間、d31とAlN厚さとの間、および、損失角と厚さとの間の想定される関係が、図18〜図20のそれぞれに示される。最適化パラメータ式および上記のプロットからのデータを用いて、3層の装置の理想的な厚さが、以下の表1に示される。
【0087】
表1
【表1】
【0088】
追加された精度のために、1mm×1mmの振動板の上方および下方の空気の流体負荷が、密度合計(density summation)に追加された。そして、固有振動数方程式が、梁の長さを計算するために用いられ得る。20kHzの固有振動数については、梁は374μmの長さとなる。図21〜図23のプロットは、最適化パラメータについての層厚さ変化の効果を示す。小さな相対変化は、底部Mo厚さの場合を除いては、最適化パラメータに大きな影響は及ぼさない。そのため、20nmのような、より保守的な底部Mo厚さを使用することがよいであろう。もちろん、取得可能な最大値の10%より大きい最適化パラメータを維持する、より保守的な値も用いることができ、したがって、図18〜図20に示されるように、この範囲においては、特に底部電極の最適化パラメータは厚さとともに非常に大きくは減少しないので、50nm、100nm、またはそれより大きい電極厚さが用いられ得る。所望のセンサ面積が、およそ1mm×1mmである場合は、この梁は1mm幅に作られ、それらの3つが端と端をつなげて配置され得る。
【0089】
これと同様のアプローチが、図3bに示される、電極および圧電材料の交互5層の積層梁構造について用いられ得る。最適化パラメータを最大化する計算された最適値が、以下の表2で与えられる。
【0090】
表2
【表2】
【0091】
そして、固有振動数方程式が、梁の長さを計算するために用いられ得る。20kHzの固有振動数については、梁は461μmの長さとなる。図24〜図26のプロットは、最適化パラメータについての層厚さ変化の効果を示す。また、これらのプロットは、電極層が、たとえば、20,50,100nmまたはそれより大きい値まで、センサ面積に対する出力電圧の計算された比率の非常に大きな減少にみまわれることなく十分に低減されること、および、取得可能な最大値の10%より小さい値まで、その比率を減少させることなく、中間電極が5nmから1μmの間で変化され得ることを示している。
【0092】
振動板設計
上述のように、片持ち梁構造と言うよりは、応力解放された振動板設計も、感度および低ノイズフロアの良好な組み合わせを提供し得る。図27aおよび図27bへ戻って、シリコン基板54の上方に吊るされた、応力解放型振動板52の形体における多層音響センサを含む圧電型MEMSマイクロフォンが示される。この実施形態においては、上部および下部Mo電極層、およびAlN圧電材料の中間層の、3層だけが用いられる。しかしながら、パリレンおよび他の材料の層も用いられ得ること、および、振動板が上述のような複数の圧電層を積層型片持ち梁構造とともに有し得ることが理解されるであろう。図示された実施形態は3層のみを含むが、上部および下部電極層は、各々2つの独立した電極を定めるようにパターン化される。特に、第1の(下部)電極層は、中央電極56および中央電極56の周囲を囲む外部リング状電極58を含む。図27aに示される第2の(上部)電極層も、中央電極57および中央電極57の周囲を囲む外部リング状電極59を含む。図27aに示される上面図の奥行きから、中央電極57および外部リング状電極59の両方は、それらにそれぞれ関連する中央電極56および外部リング状電極58と同一の拡がりを持つ。理解されるように、中央電極56,57は、第1の圧電検出素子を形成し、外部リング状電極58,59は、第2の圧電検出素子を形成する。電極を互いに電気的に絶縁された状態に維持することによって、それらは、必要に応じて、共に配線され得る。外部リング状圧電検出素子は、中央検出素子とは反対方向に引っ張られているので、圧電効果によってこれらの電極上に生成される電荷は、中央電極56を外部リング状電極59に接続し、中央電極57を外部リング状電極58に接続することによって共に加えられ得るように、逆極性となる。センサからの信号は、トランジスタ、オペアンプ、または他の適当な回路への接続によって、片持ち梁の実施形態に関連して上記で議論されたものと同様の態様で増幅され得る。
【0093】
応力解放型振動板52を得るために、層はシリコンウェハまたは他の適当な基板54上への堆積によって形成され、そして、振動板はマイクロマシン化または他の処理がされて、残留応力を解放するために必要に応じて層が拡縮できるように、基板から実質的に引き離される。図27aに示されるように、これを達成するための1つの方法は、スプリング60を用いて振動板52を定位置に保持することであり、一方で、そうでなければ、基板54から解放される。一旦、応力が解放されると、振動板52は、静電気クランピングを介するような適当な技術によって基板54の周辺に再度取り付けられ得る。スプリング60は、境界を形成するためにAlNでエッチングし、その後、それより下方の材料を除去することによってスプリングをアンダーカットすることによって生成される。振動板52は、電極のリード線のために用いられる領域の底部右角において、基板54と接続される。そして、残りの3つの角のスプリングは、一方端で基板54に、そして他方端で振動板52に固定される。スプリングのアンダーカット後、振動板52は、底部の外部電極58を接地に固定するとともに、基板にバイアス電圧を印加することによって基板54に再取付けされ得る。このように、振動板52は、基板上の層のうちの少なくとも1つの直接堆積として基板54上に取り付けられる、その周辺の第1の部分(底部右)を有し、基板上の第2の部分の個別の接着によって基板に取り付けられた周辺の第2の部分を有する。それは、また、その他の角において、スプリング60として動作する1つまたはより多くの層の薄い相互接続によって基板54に接続される。中央および外部リング状電極への電気的接続は、振動板52が基板54に接続されたままの底部右角において圧電層にわたって伸延する導電配線62によってなされ得る。最適な層厚さおよび大きさは、片持ち梁設計のための上記と同じ手順を引き続いて行なうことによって得られる。層厚さの妥当な見積もりは、上記で与えられた同じパラメータを用いることによって見出され、代替的には、振動板モデルがより完全で正確な最適化のために用いられ得る。
【0094】
さらなる観察
製造された装置は、モデルが正確であり、かつ、材料および処理のみの改善が必要であることを示す。処理および堆積技術が、達成されるべきよりよい材料特性を可能とする場合は、性能は図28に示されるものと合致する。この図は、人々が、高品質材料パラメータを有するJFETコモンソース増幅器を用いて設計・製造された装置について期待し得る性能を示す。これは、この圧電型マイクロフォンのための設計が、良好に最適化された容量型マイクロフォンと同じ程度のノイズフロアを達成し得ることを示す。感度および電力消費のようないくつかのパラメータは、図28のプロットには含まれず、というのも、これらのパラメータは、図で与えられたものとは十分に相互関係を有しないからである。図中のプラス記号は圧電型マイクロフォンを示し、丸は容量型マイクロフォンを示す。圧電型マイクロフォンは、典型的に、容量型マイクロフォンよりも低い感度を有するが、これは、容量型マイクロフォンにおいてしばしば用いられるように、特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit:ASIC)を用いて信号を増幅することによって修正され得る。この図は高品質な圧電材料を想定しているが、より良好な電極材料、テーパ状の梁、または、梁の中央部の薄いコンプライアンス層の使用によって可能となる改善を考慮に入れていない。これは、また、JFETが増幅のために用いられることを想定しており、そのためノイズフロアが制限される。ASICは、より低いノイズフロアを有するとともに、マイクロフォンの性能をさらにもっと改善し得る。これは、また、0,001のtan(δ)を想定しているが、適当な焼なましによって、この値以下に低減され得ることが示された。
【0095】
上述のように構築された圧電型MEMSマイクロフォンは、家庭用電化製品において用いられるエレクトレットコンデンサマイクロフォン(ECM)およびMEMS容量型マイクロフォンと競合する商業的可能性を有し得る。この設計は、ECMおよびMEMS容量型マイクロフォンと同程度の性能を提供するが、それらに勝る利点を提供する。第1に、標準的なECMは、他のすべてのマイクロチップについて用いられる典型的な鉛フリーはんだ処理を用いたプリント回路基板に搭載することができない。これは、手動で、またはより高価でかつ信頼性の低いソケットのいずれかによって、特別に取り付けられなければならないことを意味している。前述した圧電型マイクロフォンは、高温に耐えることができ、したがって、標準的な技術を用いて搭載され得る。この圧電型マイクロフォンは、また、ECMよりも小さく、全体としてより小さな電子装置を可能とする。MEMS容量型マイクロフォンも、これらの利点を有し、したがって、2003年から携帯電話において用いられてきた。しかしながら、MEMS容量型マイクロフォンは、多くの部分で、これらのマイクロフォンへの読み出し回路を提供するために用いられる特定用途向け集積回路(ASIC)のために、ECMより高価になる。これは、ECMにおいて用いられるJFETよりもずっと高価な部品である。ここで説明された圧電型MEMSマイクロフォンは、単一のJFETを用いて増幅され、したがって、MEMS容量型マイクロフォンの利点を有するより低コストのマイクロフォンを創出することができる。
【0096】
音響マイクロフォンとしての使用の他に、その装置は、マイクロフォン構造の設計における適切な変更が、当該用途のためにそれを最適化するために用いられることによって、
超音波検出用のような他の用途のために用いられ得る。さらに、(たとえば、約1〜2μmの)パリレンのような絶縁材料で梁を覆うことによって、マクロフォンは、水中用の用途のためのハイドロフォンとして用いられ得る。同様に、パリレンまたは他の適当な絶縁被服は、ハイドロフォンを構築するために上述の振動板設計に用いられ、その場合、装置は、当業者によって知られているように、圧力均等化ポート、または、外部環境との適当な圧力均等化の他の手段を含む。
【0097】
上記は、本発明の1つまたはより多くの好ましい例示的な実施形態の説明であることが理解されるべきである。本発明は、本明細書に記載された特定の実施形態に限定されるのではなく、むしろ、以下の請求項によってのみ定められる。さらに、上記の説明に含まれる記述は特定の実施形態に関連し、用語または語句が明確に定義される場合を除いて、本発明の範囲または請求項において用いられる用語の定義についての限定として解釈されるべきではない。さまざまな他の実施形態、および、開示された実施形態に対するさまざまな変更および修正が、当業者には明白となるであろう。たとえば、取得可能な最大比率(または、取得可能な最大最適化パラメータ)の少なくとも10%を提供するセンサ設計は、多くの用途のために適当であるが、より好ましい設計は、取得可能な最大比率の少なくとも25%を提供し、さらにより好ましい設計は、取得可能な最大比率の少なくとも50%を提供する。高度に好ましい実施形態においては、取得可能な最大最適パラメータを用いる設計が利用され得る。そのようなすべての実施形態、変更、および修正は、添付の請求項の範囲内に入ることが意図される。
この明細書および請求項において用いられるように、「たとえば」、「例として」、「〜のような」、および「類似の」の語句、ならびに、「備える」、「有する」、「含む」の動詞およびそれらの動詞の他の形式は、1つまたはより多くの要素または他の事項の一覧とともに用いられるときは、各々オープンエンドとして解釈されるべきであり、その一覧は、他の追加の要素または事項を排除するものとして考えられるべきでないことを意味する。他の語句は、異なる解釈が必要とされる文脈において用いられない限り、それらの最も広範な妥当な意味を用いて解釈されるべきである。
【0098】
参考文献
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[11]トロリア・マッキンストリ,S(Trolier-McKinstry, S.),ムラー,P(Muralt, P.),(2004),「MEMS用の薄膜圧電素子(Thin Film Piezoelectrics for MEMS.)」ジャーナル・オブ・エレクトロセラミックス,(12),7−17
[12]坪内,K(Tsubouchi, K.),御子柴,N(Mikoshiba, N.),(1985),「AlNエピタキシャル薄膜上のゼロ温度係数SAW装置(Zero-Temperature-Coefficient SAW Devices on AlN Epitaxial Thin Films.)」,音波および超音波のIEEE会議,(SU−32),634−644
[13]デュボア,M.A(Dubois, M.A.),ミュラー,P(Muralt, P.)、(1999),「圧電変換器およびマイクロ波フィルタ用途のための窒化アルミニウム薄膜の特性(Properties of aluminum nitride thin flims for piezoelectric transducers and microwave filter applications.)」,アプライド・フィジックス・レターズ(Applied Physics Letters),(74),3032−3034
[14]フーカー,M.W(Hooker, M.W.),(1998),「−150〜250℃間におけるPZTベースの圧電セラミックスの特性(Properties of PZT-Based Piezoelectric Ceramics Between -150 and 250℃.)」,NASA報告書,NASA/CR−1998−208708
[15]レダーマン,N(Ledermann, N.),ミュラー,P(Muralt, P.),バドロウスキー,J(Baborowski, J.),フォースター,M(Forster, M.),ペロー,J−P(Pellaux, J.-P.),「小型光音響ガス検出器用のPb(Zrx,Til−x)O3圧電薄膜およびブリッジ音響センサ(Piezoelectric Pb(Zrx, Til -χ)O3 thin film cantilever and bridge acoustic sensors for miniaturized photoacoustic gas detectors.)」,ジャーナル・オブ・マイクロメカニクス・マイクロエンジニアリング(J. Micromech. Microeng.),14(2004) 1650−1658
[16]マーティン,F(Martin, F.),ミュラー,P(Muralt, P.),デュボア,M.A(Dubois, M.A.),ペザス,A(Pezous, A.),(2004),「高度c軸テクスチャーAlN薄膜の特性の厚さ依存性(Thickness dependence of the properties of highly c-axis textured AlN thin films.)」,ジャーナル・オブ・バキューム・サイエンス・テクノロジ A(J. Vac. Sci. Technol A),Vol.22,No.2,361−365
[17]難波,Y(Namba, Y.),(1970),日本応用物理学会誌(Japan J. Appl Phys.)(9),1326−1329
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電型MEMSマイクロフォンであって、
基板と、
第1の電極層、前記第1の電極層上に堆積された圧電材料の中間層、および前記圧電材料上に堆積された第2の電極層を含む少なくとも3つの層を備える多層音響センサとを備え、
前記センサは、前記多層センサについてのセンサ面積に対する出力エネルギの比率が、所与の入力圧力、バンド幅、および圧電材料について取得できる最大比率の少なくとも10%であるような寸法とされる、圧電型MEMSマイクロフォン。
【請求項2】
圧電型MEMSマイクロフォンであって、
基板と、
第1の電極層、前記第1の電極層上に堆積された圧電材料の中間層、および前記圧電材料上に堆積された第2の電極層を含む少なくとも3つの層を備える多層音響センサとを備え、
前記センサは、以下の式
【数1】
に従って計算される最適パラメータ(Optimization Parameter)が、前記センサについて取得可能な最大最適パラメータの少なくとも10%であるような寸法とされ、ここで、Voutは前記センサの出力電圧であり、Cは前記センサのキャパシタンスであり、Pは入力圧力であり、Aはセンサ面積であり、tan(δ)は前記センサの第1の共振周波数における前記センサの誘電損失角であり、fresは前記第1の共振周波数である、圧電型MEMSマイクロフォン。
【請求項3】
前記第1および第2の電極層、ならびに、前記中間層は、一緒になって、8μm以下の厚さを有する、請求項2に記載の圧電型MEMSマイクロフォン。
【請求項4】
前記第1および第2の電極層、ならびに、前記中間層は、一緒になって、2μm以下の厚さを有する、請求項2に記載の圧電型MEMSマイクロフォン。
【請求項5】
前記中間層は、前記第1の電極層の表面上に直接堆積された圧電材料の層を含み、
前記第2の電極層は、前記圧電材料の表面上に直接堆積された電極材料の層を含む、請求項2に記載の圧電型MEMSマイクロフォン。
【請求項6】
前記電極層に接続される制御入力を有するトランジスタをさらに備え、前記制御入力への前記センサから受信される信号は前記トランジスタによって増幅される、請求項2に記載の圧電型MEMSマイクロフォン。
【請求項7】
前記多層音響センサは、
前記基板の上方に吊るされた応力解放型振動板を含む、請求項2に記載の圧電型MEMSマイクロフォン。
【請求項8】
前記振動板は、前記振動板の周囲において前記基板に取り付けられ、前記基板上の前記層のうちの少なくとも1つの直接堆積として前記基板に取り付けられる前記周囲の第1の部分を有するとともに、前記基板上の第2の部分の個別の接着によって取り付けられる、前記周囲の第2の部分を有する、請求項7に記載の圧電型MEMSマイクロフォン。
【請求項9】
前記第1および第2の電極層は、
前記振動板の中央に配置され、前記第1の部分において前記基板へと延びるリード線を含む第1および第2の電極をそれぞれ含む、請求項8に記載の圧電型MEMSマイクロフォン。
【請求項10】
前記センサは、第3および第4の電極をさらに含み、
前記第3の電極は、前記圧電材料の下方に堆積されるとともに、前記第1の電極から電気的に絶縁されつつ前記第1の電極の周囲を囲む円環状または帯状であり、
前記第4の電極は、前記第3の電極が、前記第2の電極から電気的に絶縁されつつ前記第2の電極の周囲を囲む前記第4の電極と重なり合う領域における、前記圧電材料上に堆積される、請求項9に記載の圧電型MEMSマイクロフォン。
【請求項11】
前記第1および第4の電極は、ともに電気的に接続され、
前記第2および第3の電極は、ともに電気的に接続される、請求項10に記載の圧電型MEMSマイクロフォン。
【請求項12】
前記振動板は、絶縁層に覆われ、
前記マイクロフォンは、圧力均一化ポートを含み、それによって、前記マイクロフォンはハイドロフォンを備える、請求項7に記載の圧電型MEMSマイクロフォン。
【請求項13】
前記センサは、各々が前記基板によって一方端が支持された複数の梁を含み、
各梁は、片持ち状とされるとともに固定端と自由端との間に伸延し、
各梁は、前記電極層および中間層を含む、請求項2に記載の圧電型MEMSマイクロフォン。
【請求項14】
前記梁の少なくとも2つは、各梁の自由端が互いに対抗するとともに、3μm以下の隙間によって分離される、請求項13に記載の圧電型MEMSマイクロフォン。
【請求項15】
隣接する梁は、10μm以下の隙間だけ離れている、請求項13に記載の圧電型MEMSマイクロフォン。
【請求項16】
前記複数の梁は、複数の積層された梁群(beam set)を含み、
各積層された梁群は、少なくとも5つの、電極材料および圧電材料の交互層を含む、請求項13に記載の圧電型MEMSマイクロフォン。
【請求項17】
前記梁は、前記梁の幅が片持ち端よりも自由端において狭くなるように、自由端に向かってテーパ状になっている、請求項13に記載の圧電型MEMSマイクロフォン。
【請求項18】
前記梁は、絶縁層で覆われ、それによって、前記マイクロフォンはハイドロフォンを備える、請求項13に記載の圧電型MEMSマイクロフォン。
【請求項19】
圧電型MEMSマイクロフォンであって、
シリコン基板と、
各々が前記基板によって一方端を支持された、複数の梁とを備え、
各梁は、片持ち状とされるとともに固定端と自由端との間に伸延し、
各梁は、電極材料の堆積層および前記電極材料を覆う圧電材料の堆積層を含み、
前記梁の少なくともいくつかは積層され、前記積層された梁は、それらの間に追加の層を有しない、堆積された電極材料および堆積された圧電材料の交互層を含む、圧電型MEMSマイクロフォン。
【請求項20】
前記圧電材料の層の各々は、2μm以下の厚さを有する、請求項19に記載の圧電型MEMSマイクロフォン。
【請求項21】
前記圧電材料は、
PZT、ZnO、PVDF、PNMPC、およびAlNで構成されるグループから選択された材料を備える、請求項19に記載の圧電型MEMSマイクロフォン。
【請求項22】
圧電型MEMSマイクロフォンであって、
基板と、
前記基板の上方に吊るされた応力解放型振動板とを備え、
前記振動板は、
第1の電極層、前記第1の電極層上に堆積された圧電材料の中間層、および前記圧電材料上に堆積された第2の電極層を含む少なくとも3つの層を有する、多層音響センサを含む、圧電型MEMSマイクロフォン。
【請求項23】
前記振動板は、前記振動板の周囲において、前記基板に取り付けられ、前記基板上の前記層のうちの少なくとも1つの直接堆積として前記基板に取り付けられる前記周囲の第1の部分を有するとともに、前記基板上の第2の部分の個別の接着によって取り付けられる、前記周囲の第2の部分を有する、請求項22に記載の圧電型MEMSマイクロフォン。
【請求項1】
圧電型MEMSマイクロフォンであって、
基板と、
第1の電極層、前記第1の電極層上に堆積された圧電材料の中間層、および前記圧電材料上に堆積された第2の電極層を含む少なくとも3つの層を備える多層音響センサとを備え、
前記センサは、前記多層センサについてのセンサ面積に対する出力エネルギの比率が、所与の入力圧力、バンド幅、および圧電材料について取得できる最大比率の少なくとも10%であるような寸法とされる、圧電型MEMSマイクロフォン。
【請求項2】
圧電型MEMSマイクロフォンであって、
基板と、
第1の電極層、前記第1の電極層上に堆積された圧電材料の中間層、および前記圧電材料上に堆積された第2の電極層を含む少なくとも3つの層を備える多層音響センサとを備え、
前記センサは、以下の式
【数1】
に従って計算される最適パラメータ(Optimization Parameter)が、前記センサについて取得可能な最大最適パラメータの少なくとも10%であるような寸法とされ、ここで、Voutは前記センサの出力電圧であり、Cは前記センサのキャパシタンスであり、Pは入力圧力であり、Aはセンサ面積であり、tan(δ)は前記センサの第1の共振周波数における前記センサの誘電損失角であり、fresは前記第1の共振周波数である、圧電型MEMSマイクロフォン。
【請求項3】
前記第1および第2の電極層、ならびに、前記中間層は、一緒になって、8μm以下の厚さを有する、請求項2に記載の圧電型MEMSマイクロフォン。
【請求項4】
前記第1および第2の電極層、ならびに、前記中間層は、一緒になって、2μm以下の厚さを有する、請求項2に記載の圧電型MEMSマイクロフォン。
【請求項5】
前記中間層は、前記第1の電極層の表面上に直接堆積された圧電材料の層を含み、
前記第2の電極層は、前記圧電材料の表面上に直接堆積された電極材料の層を含む、請求項2に記載の圧電型MEMSマイクロフォン。
【請求項6】
前記電極層に接続される制御入力を有するトランジスタをさらに備え、前記制御入力への前記センサから受信される信号は前記トランジスタによって増幅される、請求項2に記載の圧電型MEMSマイクロフォン。
【請求項7】
前記多層音響センサは、
前記基板の上方に吊るされた応力解放型振動板を含む、請求項2に記載の圧電型MEMSマイクロフォン。
【請求項8】
前記振動板は、前記振動板の周囲において前記基板に取り付けられ、前記基板上の前記層のうちの少なくとも1つの直接堆積として前記基板に取り付けられる前記周囲の第1の部分を有するとともに、前記基板上の第2の部分の個別の接着によって取り付けられる、前記周囲の第2の部分を有する、請求項7に記載の圧電型MEMSマイクロフォン。
【請求項9】
前記第1および第2の電極層は、
前記振動板の中央に配置され、前記第1の部分において前記基板へと延びるリード線を含む第1および第2の電極をそれぞれ含む、請求項8に記載の圧電型MEMSマイクロフォン。
【請求項10】
前記センサは、第3および第4の電極をさらに含み、
前記第3の電極は、前記圧電材料の下方に堆積されるとともに、前記第1の電極から電気的に絶縁されつつ前記第1の電極の周囲を囲む円環状または帯状であり、
前記第4の電極は、前記第3の電極が、前記第2の電極から電気的に絶縁されつつ前記第2の電極の周囲を囲む前記第4の電極と重なり合う領域における、前記圧電材料上に堆積される、請求項9に記載の圧電型MEMSマイクロフォン。
【請求項11】
前記第1および第4の電極は、ともに電気的に接続され、
前記第2および第3の電極は、ともに電気的に接続される、請求項10に記載の圧電型MEMSマイクロフォン。
【請求項12】
前記振動板は、絶縁層に覆われ、
前記マイクロフォンは、圧力均一化ポートを含み、それによって、前記マイクロフォンはハイドロフォンを備える、請求項7に記載の圧電型MEMSマイクロフォン。
【請求項13】
前記センサは、各々が前記基板によって一方端が支持された複数の梁を含み、
各梁は、片持ち状とされるとともに固定端と自由端との間に伸延し、
各梁は、前記電極層および中間層を含む、請求項2に記載の圧電型MEMSマイクロフォン。
【請求項14】
前記梁の少なくとも2つは、各梁の自由端が互いに対抗するとともに、3μm以下の隙間によって分離される、請求項13に記載の圧電型MEMSマイクロフォン。
【請求項15】
隣接する梁は、10μm以下の隙間だけ離れている、請求項13に記載の圧電型MEMSマイクロフォン。
【請求項16】
前記複数の梁は、複数の積層された梁群(beam set)を含み、
各積層された梁群は、少なくとも5つの、電極材料および圧電材料の交互層を含む、請求項13に記載の圧電型MEMSマイクロフォン。
【請求項17】
前記梁は、前記梁の幅が片持ち端よりも自由端において狭くなるように、自由端に向かってテーパ状になっている、請求項13に記載の圧電型MEMSマイクロフォン。
【請求項18】
前記梁は、絶縁層で覆われ、それによって、前記マイクロフォンはハイドロフォンを備える、請求項13に記載の圧電型MEMSマイクロフォン。
【請求項19】
圧電型MEMSマイクロフォンであって、
シリコン基板と、
各々が前記基板によって一方端を支持された、複数の梁とを備え、
各梁は、片持ち状とされるとともに固定端と自由端との間に伸延し、
各梁は、電極材料の堆積層および前記電極材料を覆う圧電材料の堆積層を含み、
前記梁の少なくともいくつかは積層され、前記積層された梁は、それらの間に追加の層を有しない、堆積された電極材料および堆積された圧電材料の交互層を含む、圧電型MEMSマイクロフォン。
【請求項20】
前記圧電材料の層の各々は、2μm以下の厚さを有する、請求項19に記載の圧電型MEMSマイクロフォン。
【請求項21】
前記圧電材料は、
PZT、ZnO、PVDF、PNMPC、およびAlNで構成されるグループから選択された材料を備える、請求項19に記載の圧電型MEMSマイクロフォン。
【請求項22】
圧電型MEMSマイクロフォンであって、
基板と、
前記基板の上方に吊るされた応力解放型振動板とを備え、
前記振動板は、
第1の電極層、前記第1の電極層上に堆積された圧電材料の中間層、および前記圧電材料上に堆積された第2の電極層を含む少なくとも3つの層を有する、多層音響センサを含む、圧電型MEMSマイクロフォン。
【請求項23】
前記振動板は、前記振動板の周囲において、前記基板に取り付けられ、前記基板上の前記層のうちの少なくとも1つの直接堆積として前記基板に取り付けられる前記周囲の第1の部分を有するとともに、前記基板上の第2の部分の個別の接着によって取り付けられる、前記周囲の第2の部分を有する、請求項22に記載の圧電型MEMSマイクロフォン。
【図3b】
【図3c】
【図4】
【図9a】
【図9b】
【図9c】
【図9d】
【図10】
【図16】
【図17】
【図27a】
【図27b】
【図1】
【図2】
【図3a】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図28】
【図3c】
【図4】
【図9a】
【図9b】
【図9c】
【図9d】
【図10】
【図16】
【図17】
【図27a】
【図27b】
【図1】
【図2】
【図3a】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図28】
【公表番号】特表2011−527152(P2011−527152A)
【公表日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516815(P2011−516815)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/049248
【国際公開番号】WO2010/002887
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(511000957)ザ・リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ミシガン (4)
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF MICHIGAN
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/049248
【国際公開番号】WO2010/002887
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(511000957)ザ・リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ミシガン (4)
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF MICHIGAN
【Fターム(参考)】
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