圧電振動デバイスの封止部材の製造方法および当該製造方法によって得られた封止部材を用いた圧電振動デバイス
【課題】 貫通孔の小径化を図ることができるとともに穿孔時のチッピング等を防止した圧電振動デバイスの封止部材の製造方法と当該製造方法によって得られた封止部材を用いた圧電振動デバイスを提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明は圧電振動素子の励振電極を気密に封止する圧電振動デバイスの封止部材の製造方法であって、前記封止部材の基材の両主面間を電気的に接続するための貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、貫通孔に導電性部材を形成する導電性部材形成工程とを有している。前記貫通孔形成工程は、前記基材の一主面200における開口径より当該基材内部における開口径が小さく、かつテーパー状の内側面61を備えた孔60を前記主面に形成する第1工程と、内側面61のうち、前記主面近傍から離間した位置から穿孔することによって貫通孔を形成する第2工程とから成っている。
【解決手段】 本発明は圧電振動素子の励振電極を気密に封止する圧電振動デバイスの封止部材の製造方法であって、前記封止部材の基材の両主面間を電気的に接続するための貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、貫通孔に導電性部材を形成する導電性部材形成工程とを有している。前記貫通孔形成工程は、前記基材の一主面200における開口径より当該基材内部における開口径が小さく、かつテーパー状の内側面61を備えた孔60を前記主面に形成する第1工程と、内側面61のうち、前記主面近傍から離間した位置から穿孔することによって貫通孔を形成する第2工程とから成っている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動デバイスの封止部材の製造方法と当該製造方法によって得られた封止部材を用いた圧電振動デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
圧電振動デバイスは携帯電話等の各種通信機器等に広く使用されている。例えば圧電振動デバイスとして水晶振動子を例に挙げると、一般的な水晶振動子の主要構成部材は、励振電極が表裏主面に対向形成された略直方体状の水晶振動素子と、水晶振動素子を収容するための凹部を有するセラミック製の容器体と、当該容器体との接合により前記励振電極を気密封止する金属製の蓋体となっている。ここで前記励振電極は、引出電極を経由して水晶振動素子の一端部に形成された接続電極へ導出されている。そして前記容器体の凹部底面には前記接続電極と接合材を介して接合される搭載電極が形成されている。前記搭載電極は、容器体の基材を厚み方向に貫く貫通孔の内部に導体が充填された貫通電極(いわゆるビア)を介して、容器体の底面に形成された外部接続端子と電気的に接続されている。このような貫通電極を利用した構成の圧電振動デバイスは例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
前述の各種通信機器等の薄型化および高機能化が進むにつれ、前記機器内部基板へ実装される各種電子部品の小型化および高密度化により、圧電振動デバイスにおいても超小型で薄型の製品が求められている。前述の水晶振動子を例に挙げると、直方体状の水晶振動子の平面視外形寸法が2.0mm×1.6mm以下の超小型になってくると、前述の貫通電極が容器体に対して占める面積(貫通電極の両端の径)の割合が相対的に大きくなってしまう。貫通電極の端部周辺には各種電極パターン等が高密度で配されるため、さらなる貫通電極の小径化が必要となってくる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3523502号
【特許文献2】特開2010−206322号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のように従来の圧電振動デバイスの容器体の材料にはセラミックが使用されるのが一般的であるが、圧電振動デバイスが超小型になってくるとセラミックでは焼成精度等の点から限界に来つつあるため、水晶やガラス等の結晶性材料を容器体の材料として用いることで超小型化に対応することができる。水晶やガラス等の結晶性材料を基材とする容器体の場合、前記貫通電極の貫通孔を穿孔する方法として湿式エッチング法等の他、ビームやブラスト(サンドブラスト等)を用いることができる。
【0006】
しかしながら湿式エッチング法による穿孔の場合、水晶のような異方性材料では結晶方位による非対称な形状が発生したり、エッチングレート(腐食速度)の差に起因するエッチング時間の適切な管理が困難となる。これにより貫通孔の両端(被加工物の表裏主面)で開口径が大きく異なった形状になってしまう。一方、ガラスのような等方性材料の場合は貫通孔の深さに比例して開口径が拡大するため、開口径の大きな貫通孔が形成されてしまう。これはエッチングマスクの直下にも腐食が進むいわゆるアンダーカットによるものである。つまり、いずれの材料においても化学的手段によって所望形状の貫通孔を高精度で形成することが困難となる。
【0007】
一方、ビーム(レーザービーム等)やブラスト(サンドブラスト等)を穿孔に用いた場合はウエットエッチング等の化学的手段に比べ、貫通孔の両端における開口径の差が小さく、略同一径の貫通孔を形成することができる利点がある。しかしながら、これらの加工手段の場合、次のような問題が存在する。ビームを使用する場合は微細な貫通孔を形成することが可能であるものの、被加工物に対して垂直にビームが照射されるためチッピングやチッピングに起因するクラック等(以下チッピング等と略)が発生することがある。また、ブラスト(例えばサンドブラスト)であれば略同一径の貫通孔を形成することが可能であるものの、加工速度の点から実用的ではないという問題が存在する。つまり、加工時間を短縮するために粗い研磨剤を使用するとチッピング等が発生しやすくなり、チッピング等を抑制するために微細な研磨材を使用すると加工時間が長くなり生産効率の低下をもたらすという問題が存在する。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、貫通孔の小径化を図ることができるとともに穿孔時のチッピング等を防止した圧電振動デバイスの封止部材の製造方法と当該製造方法によって得られた封止部材を用いた圧電振動デバイスを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、圧電振動素子の励振電極を気密に封止する圧電振動デバイスの封止部材の製造方法であって、前記封止部材の基材の両主面間を電気的に接続するための貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、前記貫通孔に導電性部材を形成する導電性部材形成工程とを有し、前記貫通孔形成工程は、前記基材の両主面における開口径より当該基材内部における開口径が小さく、かつテーパー状の内側面を備えた孔を前記両主面に各々形成する第1工程と、前記内側面のうち、前記両主面近傍から離間した位置から穿孔することによって貫通孔を形成する第2工程と、からなる圧電振動デバイスの封止部材の製造方法となっている。
【0010】
上記製造方法によれば、貫通孔の穿孔時のチッピング等の発生を抑制することができる。これは前記第1工程において前記基材の両主面における開口径より当該基材内部における開口径が小さく、かつテーパー状の内側面を備えた孔が前記両主面に各々形成され、前記第2工程において前記内側面のうち、前記両主面近傍から離間した位置から穿孔することによる。つまり、表面が平坦な封止部材に対して垂直にビームや研磨剤(ブラスト加工に用いられる)を照射または噴射して穿孔する場合、貫通孔の端部にチッピング等が発生することがある。これに対し、本発明の封止部材の製造方法であれば、前記内側面の途中から加工を開始するため、加工に寄与しない前記両主面近傍の領域のチッピング等の発生を防止することができる。さらに前記内側面の途中から加工を開始するため、封止部材の主面への穿孔の影響を緩和することがきる。これにより貫通孔端部周辺の封止部材の主面を良好な状態に維持できるため、圧電振動素子と接合部材を介して接合するための搭載電極や、内部配線および封止部材底面に形成される外部接続端子等の各種導体の成膜を確実に行うことができる。なお、前記第2工程の穿孔は、封止部材の一主面側からだけでなく、封止部材の他主面側からも行ってもよい。
【0011】
上記目的を達成するために、前記第1工程における孔を湿式エッチング法によって形成してもよい。例えば封止部材の基材に結晶性材料(水晶やガラス等)を用いることによって前記第1工程における孔のテーパー状の内側面を容易に成形することができる。この場合、基材一主面に対する前記内側面の傾斜角は、水晶の場合(軸方向によって異なる)、20〜70度に、ガラスであれば約45度となる。
【0012】
封止部材の基材に結晶性材料を用い、湿式エッチング法によって封止部材に貫通孔を形成する場合、貫通孔の深さに比例して貫通孔の開口径が拡大するため、開口径の大きな貫通孔が形成されてしまうが、本発明の前記第1工程において形成する孔が有底孔の場合、封止部材を貫通するまで湿式エッチングを行わないため、封止部材の主面における開口径の拡大を抑制することができ、貫通孔の小径化に効果的である。なお、本発明において第1工程で形成される孔は有底孔に限定されものではなく、基材の両主面における開口径より当該基材内部における開口径が小さく、かつテーパー状の内側面を備えた貫通孔であってもよい。また、湿式エッチング法によって、封止部材の両主面から当該封止部材の途中の深さまで基材を溶解させることにより、第2工程において穿孔する封止部材の残りの厚みが少なくなるため、穿孔に要する時間を短縮することができる。
【0013】
また、前記第1工程における孔を湿式エッチング法によって形成することにより、エッチング後の孔の内壁面を、機械的加工によって形成された孔の内壁面よりも平滑にすることができる。そして第2工程では、第1工程で形成された孔の内側面の途中から加工を開始するため、加工に寄与しない封止部材の両主面近傍の領域を平滑面とすることができる。このように前記両主面近傍の領域が平滑面であるため、被加工物(封止部材)の表面(主面)へのチッピング発生領域の拡大を防止することができる。また、前記内側面の表面が湿式エッチングによって平滑な状態で形成されるため、第2工程における穿孔時のチッピング等の抑制にも効果的である。
【0014】
また、上記目的を達成するために、前記第2工程において、前記穿孔をビームまたはブラストによって行ってもよい。これらの穿孔手段を用いて穿孔することにより、第1工程の孔の形成で残った基材部分を略同一径で穿孔することができる。なお前記ビームとしてはレーザービームや電子ビーム等のエネルギービームを用いることができる。また、ブラストとしては機械式ブラスト(ショットブラスト等)や空気式ブラスト(サンドブラスト等のエアーブラスト)あるいは、湿式ブラストが適用可能である。ブラストの場合、第1工程で形成された孔の内側面がテーパー状であるので、研磨剤が斜めに当接することによる研磨剤の整流効果が期待できる。つまり断面視長方形の孔の場合、研磨剤が孔底面の隅部に滞留して研磨剤の流れが不均一になりやすいが、内側面がテーパー状の孔であれば滞留領域が形成されにくくなるため研磨剤の入替が促進されやすくなる。これにより加工効率が向上する。
【0015】
ブラストによって前記穿孔を行う場合、前記基材の両主面の所定パターンと前記孔の両主面近傍の領域を被覆するようにレジスト膜等でマスクした後、ブラスト加工を行ってもよい。この場合、ブラスト加工に寄与しない前記両主面近傍の領域は、前記レジスト膜等によって研磨剤から保護されるため、研磨剤の投射径を絞ることなく加工ができるのでバッチ処理に好適である。
【0016】
また、請求項1乃至3のいずれか一つに記載の圧電振動デバイスの封止部材の製造方法によって得られた封止部材に、励振電極が形成された圧電振動素子を搭載し、前記励振電極を他の封止部材で気密に封止した圧電振動デバイスであれば、封止部材への貫通孔の穿孔時のチッピング等の発生を抑制することができる。また封止部材の主面への穿孔の影響を緩和することがきる。これにより貫通孔端部周辺の封止部材の主面を良好な状態に維持できるため、圧電振動素子と接合部材を介して接合するための搭載電極や、内部配線および封止部材底面に形成される外部接続端子等の各種導体の成膜を確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、貫通孔の小径化を図ることができるとともに穿孔時のチッピング等を防止した圧電振動デバイスの封止部材の製造方法と当該製造方法によって得られた封止部材を用いた圧電振動デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態を示す水晶振動子の断面模式図。
【図2】本発明の封止部材の製造方法を示す断面模式図。
【図3】本発明の封止部材の製造方法を示す断面模式図。
【図4】本発明の封止部材の製造方法を示す断面模式図。
【図5】本発明の封止部材の製造方法を示す断面模式図。
【図6】本発明の封止部材の製造方法を示す断面模式図。
【図7】本発明の封止部材の製造方法を示す断面模式図。
【図8】図7におけるA部拡大図。
【図9】本発明の封止部材の製造方法を示す断面模式図。
【図10】図9におけるB部拡大図。
【図11】本発明の封止部材の製造方法を示す断面模式図。
【図12】本発明の封止部材の製造方法を示す断面模式図。
【図13】本発明の封止部材の製造方法を示す断面模式図。
【図14】本発明の他の実施形態を示す貫通電極の拡大断面図。
【図15】本発明の他の実施形態を示す貫通電極の拡大断面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、圧電振動デバイスとして水晶振動子に本発明を適用した例を説明する。まず本発明における水晶振動子について説明した後、当該水晶振動子を構成する封止部材の製造方法について説明する。
【0020】
本発明における水晶振動子は略長方体形状であり、外部基板と接続される外部接続端子24が筐体の底面に設けられた表面実装型の水晶振動子である。水晶振動子1は、水晶振動素子を収容するための凹部20を備えた水晶からなる封止部材2(容器体)と、凹部20内に接合部材8を介して接合されるATカット水晶振動素子3と、凹部20を気密に封止するホウケイ酸ガラスからなる平板状の蓋体4が主な構成部材となっている。なお本発明の実施形態では封止部材2に水晶を使用しているが水晶に限定されるものではなく、水晶以外にホウケイ酸ガラス等の結晶性材料を使用してもよい。
【0021】
図1において封止部材2はZ板と呼ばれる水晶で構成されている。封止部材2には平面視略矩形状の堤部22が形成されており、堤部22の上面には金属ロウ材(図示省略)が周状に形成されている。堤部22の内側の領域は凹部20となっている。そして凹部20の内底面21のうち、一短辺寄りの領域には段部23が形成されている。段部23の上面には水晶振動素子3と接合部材8を介して片持ち接合される一対の搭載電極7,7が並列に形成されている。そして前記搭載電極7は貫通電極6および凹部20の内底面21に形成される図示しない内部配線等を経由して封止部材2の底面に形成された外部接続端子24と各々電気的に接続されている。なお前述の段部23の上方に水晶振動素子を接合部材8を介して片持ち支持することにより、内底面21の上部に直接水晶振動素子を配する場合に比べ、水晶振動素子の自由端と内底面21との距離をより大きく確保することができる。これにより、水晶振動子1が外部衝撃等を受けて前記自由端側が撓んだ場合であっても、当該自由端と内底面21側との接触を防止することができる。なお、本発明の適用は前記段部を有する構造の封止部材に限定されるものではなく、段部を有しない構造の封止部材にも適用可能である。
【0022】
本実施形態では前記貫通電極6はフォトリソグラフィ技術を利用してパターン形成し、湿式エッチングおよびレーザー加工を組み合わせて貫通孔を穿孔した後、シード層となる金属膜をスパッタリングによって前記貫通孔の内壁面に被着させ、電解メッキ法によって導電性部材を前記金属膜上に析出させて貫通孔内を充填している(貫通電極の形成方法の詳細は後述)。
【0023】
水晶振動素子3は所定の角度で切断された平面視矩形のATカット水晶振動板である。水晶振動素子3の表裏主面には一対の励振電極(図示省略)が対向形成されており、各励振電極からは引出電極によって水晶振動素子の一短辺端部へそれぞれ導出されている。前記水晶振動素子の一短辺端部へそれぞれ導出された終端は接続電極(図示省略)となっており、前述の搭載電極7と接合部材8を介して接合される。なお本実施形態では前記接合部材8として金からなるスタッドバンプが使用されているが、これに限定されるものではなく金以外の金属からなるスタッドバンプや、金属メッキバンプ、または導電性の接着材を用いてもよい。
【0024】
図1において蓋体4はガラスからなる平板である。蓋体4の一主面側には、封止部材2の堤部22の上面の金属ロウ材と対応する位置に金属膜が周状に形成されている(図示省略)。蓋体4は、搭載電極7の上に接合された水晶振動素子3の周波数調整等の所定の工程を経た後、蓋体4の一主面側の金属膜が、堤部22の上面の金属ロウ材と当接するように蓋体4を封止部材2に位置決め載置した後、加熱雰囲気下でこれらの金属(蓋体の前記金属膜と封止部材の前記金属ロウ材)を溶融一体化させることによって封止部材2と気密に接合される。なお溶融一体化された状態が図1における金属ロウ材5となっている。以上が本発明における水晶振動子についての説明である。
【0025】
次に前述の水晶振動子を構成する封止部材の製造方法のうち、主要工程について説明する。
(凹部形成工程)
まず図2に示すように所定の大きさの水晶ウエハWを用意する。なお本実施形態における説明において図面中では単体の封止部材についてその製造方法を示しているが、実際には多数個の封止部材が格子状に整列した状態で一括で製造される。水晶ウエハWはその表裏主面(一主面200、他主面201)は平滑面となっており、これら表裏主面上に金属膜(本実施形態では金)がスパッタリングによって成膜される(図示省略)。そしてスパッタリングによって成膜された前記金属膜の上にレジスト膜(ポジ型)を塗布し、所定パターンにて露光・現像を行う。図3は上記方法によって凹部20の形成領域が開口した状態で湿式エッチングを行って凹部20を形成し、レジスト膜および金属膜を除去した状態を表している。その後さらに段部23を形成するために、金属膜をスパッタリングによって成膜した後、前記金属膜の上にレジスト膜を塗布して所定パターンにて露光・現像を行う。そして湿式エッチングによって図4に示すように凹部20内に段部23を形成する。なお図4はレジスト膜および金属膜を除去した状態を表している。
【0026】
(貫通孔形成工程)
以下、封止部材の基材の両主面間を電気的に接続するための貫通孔を形成する貫通孔形成工程について第1工程と第2工程に分けて説明する。
−第1工程−
ウエハWの表裏主面上に前述の金属膜をスパッタリングによって再形成した後、フォトリソグラフィ技術を用いて有底孔を形成する領域のレジスト膜を露光・現像処理によって除去する(図6参照)。なお図5乃至10において前述のスパッタリングによって形成された金属膜の表示は省略している。
【0027】
そして図6において矢印で示すように有底孔を形成する領域が開口した状態で、湿式エッチングを行う。当該湿式エッチングによって図7に示すように孔60が形成される。ここで図8に示すように孔60は、基材(W)の両主面における開口径より当該基材内部における開口径が小さく、かつテーパー状の内側面61と、内側面61と連続した孔底面62とを有する形状となっている。孔60は封止部材の両主面(段部23の上面および他主面201)に対向して形成されている。内側面61は封止部材2の基材が異方性結晶材料である水晶で構成されているため湿式エッチング時には水晶の結晶方位固有の角度で化学的溶解が進行し、前記形状の孔60を容易に成形できる点から好適である。なお封止部材2の基材として水晶以外にガラスを用いてもよい。また孔60の成形はフォトリソグラフィ技術を用いた湿式エッチング以外に、フォトリソグラフィ技術を用いた乾式エッチングによって行ってもよい。また、内側面の断面形状は直線状に傾斜したものだけに限定されるものではなく、円弧状に傾斜した状態であってもよい。
【0028】
本発明の封止部材の製造方法であれば、封止部材の基材に結晶性材料を用い、前記第1工程における孔の形成に湿式エッチング法を用いることで、テーパー状の内側面を容易に成形することができる。なお、本発明の前記第1工程において形成する孔60が有底孔の場合、封止部材を貫通するまで湿式エッチングを行わないため、封止部材の主面における開口径の拡大を抑制することができ、貫通孔の小径化に効果的である。また、湿式エッチング法によって、封止部材の両主面から当該封止部材の途中の深さまで基材を溶解させることにより、第2工程において穿孔する封止部材の残りの厚みが少なくなるため、穿孔に要する時間を短縮することができる。
【0029】
また、前記第1工程における孔60を湿式エッチング法によって形成することにより、エッチング後の孔60の内壁面を、機械的加工によって形成された孔の内壁面よりも平滑にすることができる。そして第2工程では、第1工程で形成された孔60の内側面61の途中から加工を開始するため、加工に寄与しない封止部材の両主面近傍の領域を平滑面とすることができる。このように前記両主面近傍の領域が平滑面であるため、被加工物(封止部材)の表面(主面)へのチッピング発生領域の拡大を防止することができる。また、内側面61の表面が湿式エッチングによって平滑な状態で形成されるため、第2工程における穿孔時のチッピング等の抑制にも効果的である。
【0030】
−第2工程−
次に前述の第1工程でウエハWの表裏主面に形成された孔60,60のうち、一主面側(凹部20側)の孔60に対して凹部20の上方からレーザービームL(本実施形態ではCO2レーザーを使用。波長10600nm)を照射する(図9参照)。これにより、第1工程での湿式エッチングで残存した有底孔下方の基材部分が加工され、他主面201側の孔60まで貫通する貫通孔Hが穿孔される(図11参照)。なお第2工程で穿孔される領域は断面視では略直管状となっている(図11における符号63)。ここで貫通孔Hの形成の詳細について図10を用いて説明する。図10は図9のB部を拡大したものである。図10に示すようにレーザービームLは、孔60の内側面61のうち、一主面200(段部23の上面)近傍から離間した位置に照射される。そしてレーザービーム径をD1、孔60の一主面における開口径をD2とすると、D1<D2の関係となっている。レーザービーム径よりも大きい開口径の孔60を形成することにより、図中にSで示す内側面61の領域(一主面200の近傍の領域)は穿孔に寄与しない領域となる。つまり、孔60の内側面61の途中から加工を開始することにより、加工に寄与しない封止部材の両主面近傍の領域を平滑面とすることができる。このように前記両主面近傍の領域が平滑面であるため、被加工物(封止部材)の表面(主面)へのチッピング発生領域の拡大を防止することができる。
【0031】
本実施形態において孔60は、レーザービーム径D1よりも大きい開口径D2(本実施形態では0.10〜0.15mm)を有している。なお図10で示すSは0.005〜0.01mm程度であり、これは孔60の開口部分に対してレーザービームLが略中央に位置するように照射された場合の状態を表している。なお第1工程で形成される孔60は、レーザービーム径よりも大きい開口径(D2)を有しているが、孔60の開口径の寸法は前記寸法に限定されるものではない。またD1の寸法は上記寸法に限定されるものではなく、D1はD2よりも小さく設定されていればよい。なおレーザーを使用する場合、レーザーの種類は本実施形態のレーザーに限定されるものではなく他の種類(波長)のレーザーを用いてもよい。例えばYAGレーザーやYVO4レーザー、グリーンレーザー等も使用可能である。
【0032】
本発明の封止部材の製造方法によれば、貫通孔Hの穿孔時のチッピング等の発生を抑制することができる。これは前記第1工程において封止部材の基材の両主面における開口径より当該基材内部における開口径が小さく、かつテーパー状の内側面61を備えた孔60が前記両主面に各々形成され、前記第2工程において内側面61のうち、前記両主面近傍から離間した位置から穿孔することによる。表面が平坦な封止部材に対して垂直にビームや研磨剤(ブラスト加工に用いられる)を照射または噴射して穿孔する場合、貫通孔の端部にチッピング等が発生することがある。これに対し、本発明の封止部材の製造方法であれば、内側面61の途中から加工を開始するため、加工に寄与しない前記両主面近傍の領域のチッピング等の発生を防止することができる。さらに内側面61の途中から加工を開始するため、封止部材の主面への穿孔の影響を緩和することがきる。これにより貫通孔端部周辺の封止部材の主面を良好な状態に維持できるため、搭載電極7や内部配線および外部接続端子24等の各種導体の成膜を確実に行うことができる。
【0033】
なお前記第2工程において、前記穿孔をブラストによって行ってもよい。具体的にブラストとして、ショットブラスト等の機械式ブラストやサンドブラスト等の空気式ブラストあるいは、研磨剤溶液をノズルから高圧で噴射させて加工を行う湿式ブラストが適用可能である。前記穿孔をブラストによって行うことにより、高精度で微細な加工を行うことができる。これはブラスト加工であれば、各種レジスト膜を用いた露光によってパターン形成を行うので、開口部分の位置決めを高精度でできるためである。また露光によってパターン形成されたレジスト膜を保護膜としてブラスト加工を行うため、このような保護膜を形成しないビームによる加工よりも投射(照射)位置制御の点において、ビームよりも優れる。この場合、基材の両主面の所定パターンと前記孔の両主面近傍の領域を被覆するように電着レジストでレジスト膜を形成した後、ブラスト加工を行ってもよい。この場合、ブラスト加工に寄与しない前記両主面近傍の領域は、レジスト膜によって研磨剤から保護されるため、研磨剤の投射径を絞ることなく加工ができるのでバッチ処理が可能となり、生産効率に優れる。なお、超小型で微小領域への高精度な各種加工が施される圧電振動デバイスにおいては研磨剤の飛散を防止できる湿式ブラストが好適である。
【0034】
(導電性部材形成工程)
図11に示す貫通孔Hの内壁面に導電性部材(金属膜)をスパッタリングによって形成するとともに、同時にその他領域(凹部20の内底面等)にも金属膜を形成する。そしてこれらの金属膜をフォトリソグラフィ技術によって露光・現像して所定形状に内部配線を形成する(図示省略)。本実施形態では貫通孔Hの内壁面に形成する導電性部材(シード層)は、TiまたはMoのスパッタ膜の上にCuのスパッタ膜が積層された多層膜となっている。また前記内部配線には、とし、その上にCuメッキ層が積層された多層膜が用いられている。そして電解メッキ法によって貫通孔Hの前記シード層上に導電性部材M(本実施形態ではCu)を析出させることにより貫通電極6が形成される(図12参照。図12では内部配線の記載は省略)。貫通電極6を形成後、図13に示すように段部23の上面側の貫通電極6の一端部に一対の搭載電極7,7(本実施形態ではCu)を形成する。なお本発明の実施形態において導電性部材Mおよび内部配線や搭載電極に使用される金属は前記種類および膜構成に限定されるものではない。前記種類および膜構成以外の種類または膜構成であってもよい。
【0035】
(外部端子形成工程)
導電性部材形成工程の後、所定の工程を経て外部接続端子24を形成する(図13参照)。外部接続端子24は貫通電極6の封止部材の他主面201側の一端部を覆うように形成されており、これにより搭載電極7が貫通電極6(または図示しない内部配線)を経由して外部接続端子24と電気的に接続されることになる。
【0036】
なお、貫通孔Hの内部へは必ずしも導電性部材を充填する必要は無く、例えば図14に示すように貫通孔の内壁面に導電性部材(金属膜M)を被着させることで基材の表裏主面の導通を確保し、空隙部分に樹脂材Pを充填することによって貫通孔を封止した構造であってもよい。あるいはまた、図15に示すように貫通孔の内壁面に導電性部材(金属膜M)を被着させるとともに、貫通孔のうち凹部20側の一端領域にも導電性部材(金属膜M)を部分的に充填し、貫通孔の残りの領域に樹脂材Pを部分的に充填した構造であってもよい。また、本発明の実施形態では平面視で外部接続端子24に貫通電極6が重なる位置に形成されているが本発明の適用は本構成に限定されるものではなく、平面視で外部接続端子に重ならない位置、例えば外部接続端子を水晶振動子の底面周縁に配置し、その内側の領域に貫通電極6が位置するように貫通電極を形成してもよい。この場合、前記樹脂材PにはPBO(ポリベンズオキサゾール)等の感光性を有する樹脂材が用いられる。なお樹脂材PはPBOに限定されず、封止部材を構成する材料との密着性が良好な樹脂材を使用することができる。
以上が本発明における水晶振動子を構成する封止部材の製造方法の主要工程に関する説明である。
【0037】
なお、本発明の実施形態では第1工程において封止部材2の両主面(具体的には段部23と他主面201)にそれぞれ有低孔60を形成しているが、必ずしも封止部材の両主面に有低孔を形成する必要は無く、一主面側のみに有低孔を形成してもよい。この場合、水晶振動素子が搭載され水晶振動子の内部空間となる凹部20側に有低孔を形成するのが好ましい。また、本発明において第1工程で形成される孔は有底孔に限定されものではなく、基材の両主面における開口径より当該基材内部における開口径が小さく、かつテーパー状の内側面を備えた貫通孔であってもよい。
【0038】
本発明の実施形態では表面実装型の水晶振動子の封止部材の製造方法を例に挙げているが、水晶振動子以外に水晶フィルタ、水晶発振器などの電子機器等に用いられる他の圧電振動デバイスの封止部材の製造方法にも適用可能である。
【0039】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0040】
圧電振動デバイスの量産に適用できる。
【符号の説明】
【0041】
1 水晶振動子
2 封止部材
20 凹部
21 内底面(凹部)
200 一主面
201 他主面
3 水晶振動素子
4 蓋体
6 貫通電極
60 孔
61 内側面
62 孔底面
63 直管部
H 貫通孔
M 導電性部材
R レジスト膜
D1 レーザービーム径
D2 有底孔開口径
S 一主面近傍の領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動デバイスの封止部材の製造方法と当該製造方法によって得られた封止部材を用いた圧電振動デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
圧電振動デバイスは携帯電話等の各種通信機器等に広く使用されている。例えば圧電振動デバイスとして水晶振動子を例に挙げると、一般的な水晶振動子の主要構成部材は、励振電極が表裏主面に対向形成された略直方体状の水晶振動素子と、水晶振動素子を収容するための凹部を有するセラミック製の容器体と、当該容器体との接合により前記励振電極を気密封止する金属製の蓋体となっている。ここで前記励振電極は、引出電極を経由して水晶振動素子の一端部に形成された接続電極へ導出されている。そして前記容器体の凹部底面には前記接続電極と接合材を介して接合される搭載電極が形成されている。前記搭載電極は、容器体の基材を厚み方向に貫く貫通孔の内部に導体が充填された貫通電極(いわゆるビア)を介して、容器体の底面に形成された外部接続端子と電気的に接続されている。このような貫通電極を利用した構成の圧電振動デバイスは例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
前述の各種通信機器等の薄型化および高機能化が進むにつれ、前記機器内部基板へ実装される各種電子部品の小型化および高密度化により、圧電振動デバイスにおいても超小型で薄型の製品が求められている。前述の水晶振動子を例に挙げると、直方体状の水晶振動子の平面視外形寸法が2.0mm×1.6mm以下の超小型になってくると、前述の貫通電極が容器体に対して占める面積(貫通電極の両端の径)の割合が相対的に大きくなってしまう。貫通電極の端部周辺には各種電極パターン等が高密度で配されるため、さらなる貫通電極の小径化が必要となってくる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3523502号
【特許文献2】特開2010−206322号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のように従来の圧電振動デバイスの容器体の材料にはセラミックが使用されるのが一般的であるが、圧電振動デバイスが超小型になってくるとセラミックでは焼成精度等の点から限界に来つつあるため、水晶やガラス等の結晶性材料を容器体の材料として用いることで超小型化に対応することができる。水晶やガラス等の結晶性材料を基材とする容器体の場合、前記貫通電極の貫通孔を穿孔する方法として湿式エッチング法等の他、ビームやブラスト(サンドブラスト等)を用いることができる。
【0006】
しかしながら湿式エッチング法による穿孔の場合、水晶のような異方性材料では結晶方位による非対称な形状が発生したり、エッチングレート(腐食速度)の差に起因するエッチング時間の適切な管理が困難となる。これにより貫通孔の両端(被加工物の表裏主面)で開口径が大きく異なった形状になってしまう。一方、ガラスのような等方性材料の場合は貫通孔の深さに比例して開口径が拡大するため、開口径の大きな貫通孔が形成されてしまう。これはエッチングマスクの直下にも腐食が進むいわゆるアンダーカットによるものである。つまり、いずれの材料においても化学的手段によって所望形状の貫通孔を高精度で形成することが困難となる。
【0007】
一方、ビーム(レーザービーム等)やブラスト(サンドブラスト等)を穿孔に用いた場合はウエットエッチング等の化学的手段に比べ、貫通孔の両端における開口径の差が小さく、略同一径の貫通孔を形成することができる利点がある。しかしながら、これらの加工手段の場合、次のような問題が存在する。ビームを使用する場合は微細な貫通孔を形成することが可能であるものの、被加工物に対して垂直にビームが照射されるためチッピングやチッピングに起因するクラック等(以下チッピング等と略)が発生することがある。また、ブラスト(例えばサンドブラスト)であれば略同一径の貫通孔を形成することが可能であるものの、加工速度の点から実用的ではないという問題が存在する。つまり、加工時間を短縮するために粗い研磨剤を使用するとチッピング等が発生しやすくなり、チッピング等を抑制するために微細な研磨材を使用すると加工時間が長くなり生産効率の低下をもたらすという問題が存在する。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、貫通孔の小径化を図ることができるとともに穿孔時のチッピング等を防止した圧電振動デバイスの封止部材の製造方法と当該製造方法によって得られた封止部材を用いた圧電振動デバイスを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、圧電振動素子の励振電極を気密に封止する圧電振動デバイスの封止部材の製造方法であって、前記封止部材の基材の両主面間を電気的に接続するための貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、前記貫通孔に導電性部材を形成する導電性部材形成工程とを有し、前記貫通孔形成工程は、前記基材の両主面における開口径より当該基材内部における開口径が小さく、かつテーパー状の内側面を備えた孔を前記両主面に各々形成する第1工程と、前記内側面のうち、前記両主面近傍から離間した位置から穿孔することによって貫通孔を形成する第2工程と、からなる圧電振動デバイスの封止部材の製造方法となっている。
【0010】
上記製造方法によれば、貫通孔の穿孔時のチッピング等の発生を抑制することができる。これは前記第1工程において前記基材の両主面における開口径より当該基材内部における開口径が小さく、かつテーパー状の内側面を備えた孔が前記両主面に各々形成され、前記第2工程において前記内側面のうち、前記両主面近傍から離間した位置から穿孔することによる。つまり、表面が平坦な封止部材に対して垂直にビームや研磨剤(ブラスト加工に用いられる)を照射または噴射して穿孔する場合、貫通孔の端部にチッピング等が発生することがある。これに対し、本発明の封止部材の製造方法であれば、前記内側面の途中から加工を開始するため、加工に寄与しない前記両主面近傍の領域のチッピング等の発生を防止することができる。さらに前記内側面の途中から加工を開始するため、封止部材の主面への穿孔の影響を緩和することがきる。これにより貫通孔端部周辺の封止部材の主面を良好な状態に維持できるため、圧電振動素子と接合部材を介して接合するための搭載電極や、内部配線および封止部材底面に形成される外部接続端子等の各種導体の成膜を確実に行うことができる。なお、前記第2工程の穿孔は、封止部材の一主面側からだけでなく、封止部材の他主面側からも行ってもよい。
【0011】
上記目的を達成するために、前記第1工程における孔を湿式エッチング法によって形成してもよい。例えば封止部材の基材に結晶性材料(水晶やガラス等)を用いることによって前記第1工程における孔のテーパー状の内側面を容易に成形することができる。この場合、基材一主面に対する前記内側面の傾斜角は、水晶の場合(軸方向によって異なる)、20〜70度に、ガラスであれば約45度となる。
【0012】
封止部材の基材に結晶性材料を用い、湿式エッチング法によって封止部材に貫通孔を形成する場合、貫通孔の深さに比例して貫通孔の開口径が拡大するため、開口径の大きな貫通孔が形成されてしまうが、本発明の前記第1工程において形成する孔が有底孔の場合、封止部材を貫通するまで湿式エッチングを行わないため、封止部材の主面における開口径の拡大を抑制することができ、貫通孔の小径化に効果的である。なお、本発明において第1工程で形成される孔は有底孔に限定されものではなく、基材の両主面における開口径より当該基材内部における開口径が小さく、かつテーパー状の内側面を備えた貫通孔であってもよい。また、湿式エッチング法によって、封止部材の両主面から当該封止部材の途中の深さまで基材を溶解させることにより、第2工程において穿孔する封止部材の残りの厚みが少なくなるため、穿孔に要する時間を短縮することができる。
【0013】
また、前記第1工程における孔を湿式エッチング法によって形成することにより、エッチング後の孔の内壁面を、機械的加工によって形成された孔の内壁面よりも平滑にすることができる。そして第2工程では、第1工程で形成された孔の内側面の途中から加工を開始するため、加工に寄与しない封止部材の両主面近傍の領域を平滑面とすることができる。このように前記両主面近傍の領域が平滑面であるため、被加工物(封止部材)の表面(主面)へのチッピング発生領域の拡大を防止することができる。また、前記内側面の表面が湿式エッチングによって平滑な状態で形成されるため、第2工程における穿孔時のチッピング等の抑制にも効果的である。
【0014】
また、上記目的を達成するために、前記第2工程において、前記穿孔をビームまたはブラストによって行ってもよい。これらの穿孔手段を用いて穿孔することにより、第1工程の孔の形成で残った基材部分を略同一径で穿孔することができる。なお前記ビームとしてはレーザービームや電子ビーム等のエネルギービームを用いることができる。また、ブラストとしては機械式ブラスト(ショットブラスト等)や空気式ブラスト(サンドブラスト等のエアーブラスト)あるいは、湿式ブラストが適用可能である。ブラストの場合、第1工程で形成された孔の内側面がテーパー状であるので、研磨剤が斜めに当接することによる研磨剤の整流効果が期待できる。つまり断面視長方形の孔の場合、研磨剤が孔底面の隅部に滞留して研磨剤の流れが不均一になりやすいが、内側面がテーパー状の孔であれば滞留領域が形成されにくくなるため研磨剤の入替が促進されやすくなる。これにより加工効率が向上する。
【0015】
ブラストによって前記穿孔を行う場合、前記基材の両主面の所定パターンと前記孔の両主面近傍の領域を被覆するようにレジスト膜等でマスクした後、ブラスト加工を行ってもよい。この場合、ブラスト加工に寄与しない前記両主面近傍の領域は、前記レジスト膜等によって研磨剤から保護されるため、研磨剤の投射径を絞ることなく加工ができるのでバッチ処理に好適である。
【0016】
また、請求項1乃至3のいずれか一つに記載の圧電振動デバイスの封止部材の製造方法によって得られた封止部材に、励振電極が形成された圧電振動素子を搭載し、前記励振電極を他の封止部材で気密に封止した圧電振動デバイスであれば、封止部材への貫通孔の穿孔時のチッピング等の発生を抑制することができる。また封止部材の主面への穿孔の影響を緩和することがきる。これにより貫通孔端部周辺の封止部材の主面を良好な状態に維持できるため、圧電振動素子と接合部材を介して接合するための搭載電極や、内部配線および封止部材底面に形成される外部接続端子等の各種導体の成膜を確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、貫通孔の小径化を図ることができるとともに穿孔時のチッピング等を防止した圧電振動デバイスの封止部材の製造方法と当該製造方法によって得られた封止部材を用いた圧電振動デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態を示す水晶振動子の断面模式図。
【図2】本発明の封止部材の製造方法を示す断面模式図。
【図3】本発明の封止部材の製造方法を示す断面模式図。
【図4】本発明の封止部材の製造方法を示す断面模式図。
【図5】本発明の封止部材の製造方法を示す断面模式図。
【図6】本発明の封止部材の製造方法を示す断面模式図。
【図7】本発明の封止部材の製造方法を示す断面模式図。
【図8】図7におけるA部拡大図。
【図9】本発明の封止部材の製造方法を示す断面模式図。
【図10】図9におけるB部拡大図。
【図11】本発明の封止部材の製造方法を示す断面模式図。
【図12】本発明の封止部材の製造方法を示す断面模式図。
【図13】本発明の封止部材の製造方法を示す断面模式図。
【図14】本発明の他の実施形態を示す貫通電極の拡大断面図。
【図15】本発明の他の実施形態を示す貫通電極の拡大断面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、圧電振動デバイスとして水晶振動子に本発明を適用した例を説明する。まず本発明における水晶振動子について説明した後、当該水晶振動子を構成する封止部材の製造方法について説明する。
【0020】
本発明における水晶振動子は略長方体形状であり、外部基板と接続される外部接続端子24が筐体の底面に設けられた表面実装型の水晶振動子である。水晶振動子1は、水晶振動素子を収容するための凹部20を備えた水晶からなる封止部材2(容器体)と、凹部20内に接合部材8を介して接合されるATカット水晶振動素子3と、凹部20を気密に封止するホウケイ酸ガラスからなる平板状の蓋体4が主な構成部材となっている。なお本発明の実施形態では封止部材2に水晶を使用しているが水晶に限定されるものではなく、水晶以外にホウケイ酸ガラス等の結晶性材料を使用してもよい。
【0021】
図1において封止部材2はZ板と呼ばれる水晶で構成されている。封止部材2には平面視略矩形状の堤部22が形成されており、堤部22の上面には金属ロウ材(図示省略)が周状に形成されている。堤部22の内側の領域は凹部20となっている。そして凹部20の内底面21のうち、一短辺寄りの領域には段部23が形成されている。段部23の上面には水晶振動素子3と接合部材8を介して片持ち接合される一対の搭載電極7,7が並列に形成されている。そして前記搭載電極7は貫通電極6および凹部20の内底面21に形成される図示しない内部配線等を経由して封止部材2の底面に形成された外部接続端子24と各々電気的に接続されている。なお前述の段部23の上方に水晶振動素子を接合部材8を介して片持ち支持することにより、内底面21の上部に直接水晶振動素子を配する場合に比べ、水晶振動素子の自由端と内底面21との距離をより大きく確保することができる。これにより、水晶振動子1が外部衝撃等を受けて前記自由端側が撓んだ場合であっても、当該自由端と内底面21側との接触を防止することができる。なお、本発明の適用は前記段部を有する構造の封止部材に限定されるものではなく、段部を有しない構造の封止部材にも適用可能である。
【0022】
本実施形態では前記貫通電極6はフォトリソグラフィ技術を利用してパターン形成し、湿式エッチングおよびレーザー加工を組み合わせて貫通孔を穿孔した後、シード層となる金属膜をスパッタリングによって前記貫通孔の内壁面に被着させ、電解メッキ法によって導電性部材を前記金属膜上に析出させて貫通孔内を充填している(貫通電極の形成方法の詳細は後述)。
【0023】
水晶振動素子3は所定の角度で切断された平面視矩形のATカット水晶振動板である。水晶振動素子3の表裏主面には一対の励振電極(図示省略)が対向形成されており、各励振電極からは引出電極によって水晶振動素子の一短辺端部へそれぞれ導出されている。前記水晶振動素子の一短辺端部へそれぞれ導出された終端は接続電極(図示省略)となっており、前述の搭載電極7と接合部材8を介して接合される。なお本実施形態では前記接合部材8として金からなるスタッドバンプが使用されているが、これに限定されるものではなく金以外の金属からなるスタッドバンプや、金属メッキバンプ、または導電性の接着材を用いてもよい。
【0024】
図1において蓋体4はガラスからなる平板である。蓋体4の一主面側には、封止部材2の堤部22の上面の金属ロウ材と対応する位置に金属膜が周状に形成されている(図示省略)。蓋体4は、搭載電極7の上に接合された水晶振動素子3の周波数調整等の所定の工程を経た後、蓋体4の一主面側の金属膜が、堤部22の上面の金属ロウ材と当接するように蓋体4を封止部材2に位置決め載置した後、加熱雰囲気下でこれらの金属(蓋体の前記金属膜と封止部材の前記金属ロウ材)を溶融一体化させることによって封止部材2と気密に接合される。なお溶融一体化された状態が図1における金属ロウ材5となっている。以上が本発明における水晶振動子についての説明である。
【0025】
次に前述の水晶振動子を構成する封止部材の製造方法のうち、主要工程について説明する。
(凹部形成工程)
まず図2に示すように所定の大きさの水晶ウエハWを用意する。なお本実施形態における説明において図面中では単体の封止部材についてその製造方法を示しているが、実際には多数個の封止部材が格子状に整列した状態で一括で製造される。水晶ウエハWはその表裏主面(一主面200、他主面201)は平滑面となっており、これら表裏主面上に金属膜(本実施形態では金)がスパッタリングによって成膜される(図示省略)。そしてスパッタリングによって成膜された前記金属膜の上にレジスト膜(ポジ型)を塗布し、所定パターンにて露光・現像を行う。図3は上記方法によって凹部20の形成領域が開口した状態で湿式エッチングを行って凹部20を形成し、レジスト膜および金属膜を除去した状態を表している。その後さらに段部23を形成するために、金属膜をスパッタリングによって成膜した後、前記金属膜の上にレジスト膜を塗布して所定パターンにて露光・現像を行う。そして湿式エッチングによって図4に示すように凹部20内に段部23を形成する。なお図4はレジスト膜および金属膜を除去した状態を表している。
【0026】
(貫通孔形成工程)
以下、封止部材の基材の両主面間を電気的に接続するための貫通孔を形成する貫通孔形成工程について第1工程と第2工程に分けて説明する。
−第1工程−
ウエハWの表裏主面上に前述の金属膜をスパッタリングによって再形成した後、フォトリソグラフィ技術を用いて有底孔を形成する領域のレジスト膜を露光・現像処理によって除去する(図6参照)。なお図5乃至10において前述のスパッタリングによって形成された金属膜の表示は省略している。
【0027】
そして図6において矢印で示すように有底孔を形成する領域が開口した状態で、湿式エッチングを行う。当該湿式エッチングによって図7に示すように孔60が形成される。ここで図8に示すように孔60は、基材(W)の両主面における開口径より当該基材内部における開口径が小さく、かつテーパー状の内側面61と、内側面61と連続した孔底面62とを有する形状となっている。孔60は封止部材の両主面(段部23の上面および他主面201)に対向して形成されている。内側面61は封止部材2の基材が異方性結晶材料である水晶で構成されているため湿式エッチング時には水晶の結晶方位固有の角度で化学的溶解が進行し、前記形状の孔60を容易に成形できる点から好適である。なお封止部材2の基材として水晶以外にガラスを用いてもよい。また孔60の成形はフォトリソグラフィ技術を用いた湿式エッチング以外に、フォトリソグラフィ技術を用いた乾式エッチングによって行ってもよい。また、内側面の断面形状は直線状に傾斜したものだけに限定されるものではなく、円弧状に傾斜した状態であってもよい。
【0028】
本発明の封止部材の製造方法であれば、封止部材の基材に結晶性材料を用い、前記第1工程における孔の形成に湿式エッチング法を用いることで、テーパー状の内側面を容易に成形することができる。なお、本発明の前記第1工程において形成する孔60が有底孔の場合、封止部材を貫通するまで湿式エッチングを行わないため、封止部材の主面における開口径の拡大を抑制することができ、貫通孔の小径化に効果的である。また、湿式エッチング法によって、封止部材の両主面から当該封止部材の途中の深さまで基材を溶解させることにより、第2工程において穿孔する封止部材の残りの厚みが少なくなるため、穿孔に要する時間を短縮することができる。
【0029】
また、前記第1工程における孔60を湿式エッチング法によって形成することにより、エッチング後の孔60の内壁面を、機械的加工によって形成された孔の内壁面よりも平滑にすることができる。そして第2工程では、第1工程で形成された孔60の内側面61の途中から加工を開始するため、加工に寄与しない封止部材の両主面近傍の領域を平滑面とすることができる。このように前記両主面近傍の領域が平滑面であるため、被加工物(封止部材)の表面(主面)へのチッピング発生領域の拡大を防止することができる。また、内側面61の表面が湿式エッチングによって平滑な状態で形成されるため、第2工程における穿孔時のチッピング等の抑制にも効果的である。
【0030】
−第2工程−
次に前述の第1工程でウエハWの表裏主面に形成された孔60,60のうち、一主面側(凹部20側)の孔60に対して凹部20の上方からレーザービームL(本実施形態ではCO2レーザーを使用。波長10600nm)を照射する(図9参照)。これにより、第1工程での湿式エッチングで残存した有底孔下方の基材部分が加工され、他主面201側の孔60まで貫通する貫通孔Hが穿孔される(図11参照)。なお第2工程で穿孔される領域は断面視では略直管状となっている(図11における符号63)。ここで貫通孔Hの形成の詳細について図10を用いて説明する。図10は図9のB部を拡大したものである。図10に示すようにレーザービームLは、孔60の内側面61のうち、一主面200(段部23の上面)近傍から離間した位置に照射される。そしてレーザービーム径をD1、孔60の一主面における開口径をD2とすると、D1<D2の関係となっている。レーザービーム径よりも大きい開口径の孔60を形成することにより、図中にSで示す内側面61の領域(一主面200の近傍の領域)は穿孔に寄与しない領域となる。つまり、孔60の内側面61の途中から加工を開始することにより、加工に寄与しない封止部材の両主面近傍の領域を平滑面とすることができる。このように前記両主面近傍の領域が平滑面であるため、被加工物(封止部材)の表面(主面)へのチッピング発生領域の拡大を防止することができる。
【0031】
本実施形態において孔60は、レーザービーム径D1よりも大きい開口径D2(本実施形態では0.10〜0.15mm)を有している。なお図10で示すSは0.005〜0.01mm程度であり、これは孔60の開口部分に対してレーザービームLが略中央に位置するように照射された場合の状態を表している。なお第1工程で形成される孔60は、レーザービーム径よりも大きい開口径(D2)を有しているが、孔60の開口径の寸法は前記寸法に限定されるものではない。またD1の寸法は上記寸法に限定されるものではなく、D1はD2よりも小さく設定されていればよい。なおレーザーを使用する場合、レーザーの種類は本実施形態のレーザーに限定されるものではなく他の種類(波長)のレーザーを用いてもよい。例えばYAGレーザーやYVO4レーザー、グリーンレーザー等も使用可能である。
【0032】
本発明の封止部材の製造方法によれば、貫通孔Hの穿孔時のチッピング等の発生を抑制することができる。これは前記第1工程において封止部材の基材の両主面における開口径より当該基材内部における開口径が小さく、かつテーパー状の内側面61を備えた孔60が前記両主面に各々形成され、前記第2工程において内側面61のうち、前記両主面近傍から離間した位置から穿孔することによる。表面が平坦な封止部材に対して垂直にビームや研磨剤(ブラスト加工に用いられる)を照射または噴射して穿孔する場合、貫通孔の端部にチッピング等が発生することがある。これに対し、本発明の封止部材の製造方法であれば、内側面61の途中から加工を開始するため、加工に寄与しない前記両主面近傍の領域のチッピング等の発生を防止することができる。さらに内側面61の途中から加工を開始するため、封止部材の主面への穿孔の影響を緩和することがきる。これにより貫通孔端部周辺の封止部材の主面を良好な状態に維持できるため、搭載電極7や内部配線および外部接続端子24等の各種導体の成膜を確実に行うことができる。
【0033】
なお前記第2工程において、前記穿孔をブラストによって行ってもよい。具体的にブラストとして、ショットブラスト等の機械式ブラストやサンドブラスト等の空気式ブラストあるいは、研磨剤溶液をノズルから高圧で噴射させて加工を行う湿式ブラストが適用可能である。前記穿孔をブラストによって行うことにより、高精度で微細な加工を行うことができる。これはブラスト加工であれば、各種レジスト膜を用いた露光によってパターン形成を行うので、開口部分の位置決めを高精度でできるためである。また露光によってパターン形成されたレジスト膜を保護膜としてブラスト加工を行うため、このような保護膜を形成しないビームによる加工よりも投射(照射)位置制御の点において、ビームよりも優れる。この場合、基材の両主面の所定パターンと前記孔の両主面近傍の領域を被覆するように電着レジストでレジスト膜を形成した後、ブラスト加工を行ってもよい。この場合、ブラスト加工に寄与しない前記両主面近傍の領域は、レジスト膜によって研磨剤から保護されるため、研磨剤の投射径を絞ることなく加工ができるのでバッチ処理が可能となり、生産効率に優れる。なお、超小型で微小領域への高精度な各種加工が施される圧電振動デバイスにおいては研磨剤の飛散を防止できる湿式ブラストが好適である。
【0034】
(導電性部材形成工程)
図11に示す貫通孔Hの内壁面に導電性部材(金属膜)をスパッタリングによって形成するとともに、同時にその他領域(凹部20の内底面等)にも金属膜を形成する。そしてこれらの金属膜をフォトリソグラフィ技術によって露光・現像して所定形状に内部配線を形成する(図示省略)。本実施形態では貫通孔Hの内壁面に形成する導電性部材(シード層)は、TiまたはMoのスパッタ膜の上にCuのスパッタ膜が積層された多層膜となっている。また前記内部配線には、とし、その上にCuメッキ層が積層された多層膜が用いられている。そして電解メッキ法によって貫通孔Hの前記シード層上に導電性部材M(本実施形態ではCu)を析出させることにより貫通電極6が形成される(図12参照。図12では内部配線の記載は省略)。貫通電極6を形成後、図13に示すように段部23の上面側の貫通電極6の一端部に一対の搭載電極7,7(本実施形態ではCu)を形成する。なお本発明の実施形態において導電性部材Mおよび内部配線や搭載電極に使用される金属は前記種類および膜構成に限定されるものではない。前記種類および膜構成以外の種類または膜構成であってもよい。
【0035】
(外部端子形成工程)
導電性部材形成工程の後、所定の工程を経て外部接続端子24を形成する(図13参照)。外部接続端子24は貫通電極6の封止部材の他主面201側の一端部を覆うように形成されており、これにより搭載電極7が貫通電極6(または図示しない内部配線)を経由して外部接続端子24と電気的に接続されることになる。
【0036】
なお、貫通孔Hの内部へは必ずしも導電性部材を充填する必要は無く、例えば図14に示すように貫通孔の内壁面に導電性部材(金属膜M)を被着させることで基材の表裏主面の導通を確保し、空隙部分に樹脂材Pを充填することによって貫通孔を封止した構造であってもよい。あるいはまた、図15に示すように貫通孔の内壁面に導電性部材(金属膜M)を被着させるとともに、貫通孔のうち凹部20側の一端領域にも導電性部材(金属膜M)を部分的に充填し、貫通孔の残りの領域に樹脂材Pを部分的に充填した構造であってもよい。また、本発明の実施形態では平面視で外部接続端子24に貫通電極6が重なる位置に形成されているが本発明の適用は本構成に限定されるものではなく、平面視で外部接続端子に重ならない位置、例えば外部接続端子を水晶振動子の底面周縁に配置し、その内側の領域に貫通電極6が位置するように貫通電極を形成してもよい。この場合、前記樹脂材PにはPBO(ポリベンズオキサゾール)等の感光性を有する樹脂材が用いられる。なお樹脂材PはPBOに限定されず、封止部材を構成する材料との密着性が良好な樹脂材を使用することができる。
以上が本発明における水晶振動子を構成する封止部材の製造方法の主要工程に関する説明である。
【0037】
なお、本発明の実施形態では第1工程において封止部材2の両主面(具体的には段部23と他主面201)にそれぞれ有低孔60を形成しているが、必ずしも封止部材の両主面に有低孔を形成する必要は無く、一主面側のみに有低孔を形成してもよい。この場合、水晶振動素子が搭載され水晶振動子の内部空間となる凹部20側に有低孔を形成するのが好ましい。また、本発明において第1工程で形成される孔は有底孔に限定されものではなく、基材の両主面における開口径より当該基材内部における開口径が小さく、かつテーパー状の内側面を備えた貫通孔であってもよい。
【0038】
本発明の実施形態では表面実装型の水晶振動子の封止部材の製造方法を例に挙げているが、水晶振動子以外に水晶フィルタ、水晶発振器などの電子機器等に用いられる他の圧電振動デバイスの封止部材の製造方法にも適用可能である。
【0039】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0040】
圧電振動デバイスの量産に適用できる。
【符号の説明】
【0041】
1 水晶振動子
2 封止部材
20 凹部
21 内底面(凹部)
200 一主面
201 他主面
3 水晶振動素子
4 蓋体
6 貫通電極
60 孔
61 内側面
62 孔底面
63 直管部
H 貫通孔
M 導電性部材
R レジスト膜
D1 レーザービーム径
D2 有底孔開口径
S 一主面近傍の領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動素子の励振電極を気密に封止する圧電振動デバイスの封止部材の製造方法であって、
前記封止部材の基材の両主面間を電気的に接続するための貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、前記貫通孔に導電性部材を形成する導電性部材形成工程とを有し、
前記貫通孔形成工程は、前記基材の両主面における開口径より当該基材内部における開口径が小さく、かつテーパー状の内側面を備えた孔を前記両主面に各々形成する第1工程と、
前記内側面のうち、前記両主面近傍から離間した位置から穿孔することによって貫通孔を形成する第2工程と、
からなることを特徴とする圧電振動デバイスの封止部材の製造方法。
【請求項2】
前記第1工程における前記孔を湿式エッチング法によって形成することを特徴とする請求項1に記載の圧電振動デバイスの封止部材の製造方法。
【請求項3】
前記第2工程において、前記穿孔をビームまたはブラストによって行うことを特徴とする請求項1乃至2に記載の圧電振動デバイスの封止部材の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一つに記載の圧電振動デバイスの封止部材の製造方法によって得られた封止部材に、励振電極が形成された圧電振動素子を搭載し、前記励振電極を他の封止部材で気密に封止した圧電振動デバイス。
【請求項1】
圧電振動素子の励振電極を気密に封止する圧電振動デバイスの封止部材の製造方法であって、
前記封止部材の基材の両主面間を電気的に接続するための貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、前記貫通孔に導電性部材を形成する導電性部材形成工程とを有し、
前記貫通孔形成工程は、前記基材の両主面における開口径より当該基材内部における開口径が小さく、かつテーパー状の内側面を備えた孔を前記両主面に各々形成する第1工程と、
前記内側面のうち、前記両主面近傍から離間した位置から穿孔することによって貫通孔を形成する第2工程と、
からなることを特徴とする圧電振動デバイスの封止部材の製造方法。
【請求項2】
前記第1工程における前記孔を湿式エッチング法によって形成することを特徴とする請求項1に記載の圧電振動デバイスの封止部材の製造方法。
【請求項3】
前記第2工程において、前記穿孔をビームまたはブラストによって行うことを特徴とする請求項1乃至2に記載の圧電振動デバイスの封止部材の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一つに記載の圧電振動デバイスの封止部材の製造方法によって得られた封止部材に、励振電極が形成された圧電振動素子を搭載し、前記励振電極を他の封止部材で気密に封止した圧電振動デバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−51510(P2013−51510A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187623(P2011−187623)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】
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