説明

圧電振動デバイス

【課題】複数の圧電振動片の周波数調整時において、複数の圧電振動片それぞれの周波数を個別調整する際、周波数調整を行っていない他の圧電振動片への周波数調整に関する干渉を防止する。
【解決手段】水晶振動子1は、2つの水晶振動片2,3と、ベース41と、キャップ42とからなり、ベース41とキャップ42とが接合されてパッケージ11が構成され、このパッケージ11内に内部空間12が形成される。2つの水晶振動片2,3は、ベース41上であって、内部空間12に積層状に配されている。内部空間12において積層状に配された2つの水晶振動片2,3の間には、2つの水晶振動片2,3それぞれの周波数調整に係わる基板領域2A,3Aを少なくとも隔壁した絶縁性の分離板8が介在されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動デバイスに関し、特に、周波数調整工程における不具合を解消する圧電振動デバイスの構成に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、圧電振動デバイスとして、1パッケージ内に複数の圧電振動片を備え、複数の異なる機能を有する圧電振動デバイスがある(例えば、特許文献1ご参照)。
【0003】
下記する特許文献1に開示の圧電振動デバイスは、そのパッケージがベースとキャップとから構成され、その内部に2つの圧電振動片を収めたデバイスである。
【0004】
この特許文献1に開示の圧電振動デバイスでは、パッケージ内の側壁壁面に多段階の階段状段差が形成され、この階段状段差の所定段に圧電振動片がそれぞれ配されている。
【特許文献1】特開2003−318651号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記した特許文献1に開示の圧電振動デバイスの製造工程において、周波数を調整する工程がある。この周波数調整工程では、パッケージ内に圧電振動片を配した後に圧電振動片の周波数を調整する。
【0006】
そこで、上記した特許文献1に開示の圧電振動デバイスの場合、1パッケージ内に2つの圧電振動片が積層状に配されている。そのため、この圧電振動子の周波数調整工程では、下方に配する圧電振動片の周波数調整を行い、その後に、上方に配する圧電振動片の周波数調整を行う。
【0007】
しかしながら、上記した特許文献1に開示の圧電振動子では、1パッケージ内に2つの圧電振動片が積層状に配されているので、その周波数調整工程のうち、上方に配する圧電振動片の周波数調整工程の際、上方に配される圧電振動片に設けられた金属材料や圧電振動片自体の欠片が飛散し、この飛散物がその下方に配された圧電振動片に付着する場合が生じる。この場合、下方に配される圧電振動片の周波数が変動し、その結果、圧電振動デバイスの特性が劣化する原因となる。
【0008】
そこで、上記課題を解決するために、本発明は、複数の圧電振動片の周波数調整時において、複数の圧電振動片それぞれの周波数を個別調整する際、周波数調整を行っていない他の圧電振動片への周波数調整に関する干渉を防止する圧電振動デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明にかかる圧電振動デバイスは、ベースとキャップとから構成されたパッケージ内に内部空間が形成され、この内部空間に複数の圧電振動片が設けられた圧電振動デバイスにおいて、前記内部空間における複数の前記圧電振動片は、積層状に配され、前記積層状に配された複数の前記圧電振動片の間に、複数の前記圧電振動片それぞれの周波数調整に係わる基板領域を少なくとも隔壁した絶縁性の分離板が介在されたことを特徴とする。なお、ここでいう周波数調整に係わる基板領域とは、周波数調整を行う基板領域だけではなく、周波数調整に係わる部分の基板領域を含み、例えば、周波数調整を行う際、エッチング調整時にプラズマが回り込んで影響を受ける基板領域や、基板の重み付け(蒸着調整)を行った時に蒸着物が回りこんで影響を受ける基板領域などを含む。
【0010】
本発明によれば、前記内部空間における複数の前記圧電振動片は、積層状に配され、前記積層状に配された複数の前記圧電振動片の間に、複数の前記圧電振動片それぞれの前記周波数調整に係わる基板領域を隔壁した絶縁性の分離板が介在されるので、複数の前記圧電振動片それぞれの周波数調整をそれぞれ独立して行うことが可能となる。その結果、複数の前記圧電振動片の周波数調整時において、複数の前記圧電振動片それぞれの周波数を個別調整する際、周波数調整を行っていない他の前記圧電振動片への周波数調整に関する干渉を防止することが可能となる。例えば、前記内部空間内において上方に配された前記圧電振動片の周波数調整の際に飛散する金属材料などがその下方に配された前記圧電振動片に付着し、下方に配された前記圧電振動片の周波数が変動するのを抑制することが可能となる。
【0011】
また、複数の前記圧電振動片が積層状に配されているので、前記パッケージの小型化を図ることが可能となる。また、本発明によれば、前記分離板に絶縁材料を用いているので、例えば、導電性材料である金属と比較して、例えば、エッチング加工(前記分離板に水晶やガラスを用いる場合等)やプレス加工(前記分離板にセラミックを用いた場合等)などにより前記分離板を予め設定した形状に成形し易い。
【0012】
また、金属からなる金属分離板の場合、前記金属分離板を成形する際にバリが発生するため、前記内部空間において前記金属分離板を介在した前記圧電振動片に前記金属分離板のバリが接触することがあり、前記金属分離板を本発明にかかる分離板として機能させることは難しい。特に、現在のパッケージの小型化に伴い前記圧電振動片と前記分離板との距離が短くなっており、前記金属分離板を本発明にかかる分離板として用いることは、バリとの接触や電極の短絡の影響を受けやすくなるので好ましくない。
【0013】
また、分離板に導電性材料を採用した場合(導電性分離板)、周波数調整工程において飛散する金属材料や圧電振動片の欠片の前記導電性分離板への付着により電極の短絡や当該圧電振動デバイスの特性変化または特性劣化を起こす可能性がある。そのため、分離板に導電性材料を採用することはできない。しかしながら、導電性材料全体を絶縁性材料で覆うことにより分離板を構成することで、本発明の作用効果を持たせてもよい。すなわち、前記分離板の材料すべてを絶縁性材料で構成しなくてもよい。
【0014】
また、前記分離板は、複数の前記圧電振動片それぞれの周波数調整に係わる基板領域を少なくとも隔壁するので、前記分離板の寸法を最小限に抑えることが可能となり、前記分離板の製造コストを抑えることが可能となる。また、前記分離板により、複数の前記圧電振動片それぞれの周波数調整に係わる基板領域が隔壁され、複数の前記圧電振動片それぞれの周波数調整に係わり難い基板領域が隔壁されていない構成から当該圧電振動デバイスがなる場合、前記圧電振動デバイスの製造工程において前記内部空間の残存ガスの排気を行う際に、下方に配された前記圧電振動片の水分を真空加熱して蒸発させることが容易になる。また、上下の圧電振動片の封止雰囲気を同一にでき、圧電振動デバイスの製造が容易で、かつ、その特性が安定する。
【0015】
前記構成において、前記内部空間が、前記分離板により複数の分割内部空間に分けられ、これら複数の分割内部空間毎に前記圧電振動片が少なくとも一つずつ設けられてもよい。
【0016】
この場合、前記内部空間が、前記分離板により複数の前記分割内部空間に分けられ、これら複数の前記分割内部空間毎に前記圧電振動片が少なくとも一つずつ設けられるので、上方に位置する前記分割内部空間に配された前記圧電振動片の周波数調整の際に飛散する金属材料や圧電振動片の欠片などが、下方に位置する前記分割内部空間に配された前記圧電振動片に付着し、下方に配された前記圧電振動片の周波数が変動するのを完全に抑制することが可能となる。また、下方に配された圧電振動片が設けられた前記分割内部空間に外部からゴミが入るのを防止することが可能となり、前記圧電振動デバイスの抵抗値特性(例えば、圧電振動デバイスに水晶振動子を適用した場合、CI値特性)などの劣化を抑えることを可能となる。
【0017】
前記構成において、少なくとも一つの前記圧電振動片は、一部分において片保持され、前記分離板の、前記一部分において片保持された前記圧電振動片に面した主面に窪み部が形成され、前記窪み部の内底面は、前記一部分において片保持された前記圧電振動片の自由端の近傍に配されてもよい。
【0018】
この場合、少なくとも一つの前記圧電振動片は、前記一部分において片保持され、前記分離板の、前記一部分において片保持された前記圧電振動片に面した主面に前記窪み部が形成され、前記窪み部の内底面は、前記一部分において片保持された前記圧電振動片の自由端の近傍に配されるので、前記圧電振動デバイスが機械的な衝撃を受けた際に前記自由端が変位した場合であっても、前記圧電振動片の前記分離板への接触を回避することが可能となる。例えば、前記自由端は、機械的な衝撃により上下方向に振れるが、前記自由端の直上下に前記窪み部を形成することで、前記窪み部の内底面に前記自由端が触れるのを回避することが可能となる。さらに、前記ベースに前記圧電振動片を配する際に、前記主面の平坦部分が枕部として機能する。
【0019】
前記構成において、複数の前記圧電振動片は、それぞれ一部分において片保持され、かつ、前記それぞれ一部分が前記内部空間において対向配置されてもよい。
【0020】
この場合、複数の前記圧電振動片は、前記それぞれ一部分において片保持され、かつ、前記それぞれ一部分が前記内部空間において対向配置されるので、複数の前記圧電振動片それぞれから前記パッケージに引き出され、外部電極と接続される前記パッケージ上の接続電極の長さを短くすることが可能となる。すなわち、前記パッケージ上の接続電極の配線パターンを簡易な配線パターンにすることが可能となり、複雑な配線パターンが原因となる電極の短絡を抑制することが可能となる。
【0021】
前記構成において、前記内部空間の側壁に突起部が形成され、前記突起部に前記分離板の一部が保持されてもよい。
【0022】
この場合、前記内部空間の前記側壁に前記突起部が形成され、前記突起部に前記分離板の一部が保持されるので、下方に配された前記圧電振動片のクリアランスを確保することが可能となる。特に、前記分離板を設けるために前記内部空間の側壁に更に階段状の台座を形成した圧電振動デバイスと比較して、本発明にかかる圧電振動デバイスでは、小型化を図りながら前記内部空間における複数の前記圧電振動片のクリアランスを確保することが可能となる。
【0023】
前記構成において、前記分離板が前記内部空間のベース上から突起して折曲されてなり、その折曲した前記分離板の先端が複数の前記圧電振動片の間に介在されてもよい。
【0024】
この場合、前記分離板が前記内部空間のベース上から突起して折曲されてなり、その折曲した前記分離板の先端が複数の前記圧電振動片の間に介在されるので、前記分離板を設けるための台座を前記内部空間の側壁に設ける必要がなく、小型化を図りながら前記内部空間における複数の前記圧電振動片のクリアランスを確保することが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明にかかる圧電振動デイアスによれば、複数の圧電振動片の周波数調整時において、複数の圧電振動片それぞれの周波数を個別調整する際、周波数調整を行っていない他の圧電振動片への周波数調整に関する干渉を防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施例では、圧電振動デバイスとして水晶振動子に本発明を適用した場合を示す。
【0027】
本実施例にかかる水晶振動子1は、図1に示すように、フォトリソ工法で成形された2つの水晶振動片2,3(本発明でいう圧電振動片)と、これら水晶振動片2,3を保持するベース41と、ベース41に保持した水晶振動片2,3を気密封止するためのキャップ42とからなる。
【0028】
この水晶振動子1では、図1に示すように、ベース41とキャップ42とが接合されて筐体であるパッケージ11が構成され、このパッケージ11内に内部空間12が形成される。この内部空間12のベース41上に、2つの水晶振動片2,3が保持されるとともに、パッケージ11の内部空間12が気密封止されている。この際、ベース41と水晶振動片2,3とは、導電性接合材(図示省略)を用いて接合されている。
【0029】
次に、この水晶振動子1の各構成について説明する。
【0030】
ベース41は、図1に示すように、底部43と、この底部43から上方に延出した壁部44とから構成される箱状体に形成されている。このベース41は、セラミック材料からなる平面視矩形状の一枚板上に、セラミック材料の直方体が積層して凹状に一体的に焼成されている。また、壁部44は、底部43の表面外周に沿って成形されている。この壁部44の上面は、キャップ42との接合領域であり、この接合領域には、キャップ42と接合するためのメタライズ層(図示省略)が設けられている。
【0031】
また、セラミック材料が積層して凹状に一体的に焼成されたベース41の内部空間12における側壁13には、図1に示すように、突起部14が形成され、この突起部14上に下記する分離板8が設けられる。このとき、突起部14に分離板8の一対向辺86が保持される。
【0032】
さらに、セラミック材料が積層して凹状に一体的に焼成されたベース41の内部空間12における側壁13には、図1に示すように、段部15,16が形成され、これら段部15,16上に下記する電極パッド51,52,53,54が形成され、これら電極パッド51,52,53,54上に2つの水晶振動片2,3が片保持して設けられる。
【0033】
また、内部空間12内のベース41の表面45(段部15,16)には、2つの水晶振動片2,3の下記する励振電極26,27,36,37と電気的に接続する電極パッド51,52,53,54が形成されている。これら電極パッド51,52,53,54は、それぞれに対応した接続電極61,62,63,64を介して、ベース41の裏面46に形成される端子電極71,72,73,74に電気的に接続され、これら端子電極71,72,73,74が外部部品や外部機器の外部電極に接続される。なお、これらの端子電極71,72,73,74、電極パッド51,52,53,54、接続電極61,62,63,64は、タングステン、モリブデン等のメタライズ材料を印刷した後にベース41と一体的に焼成して形成される。そして、これらの端子電極71,72,73,74、電極パッド51,52,53,54、接続電極61,62,63,64のうち一部のものについては、メタライズ上部にニッケルメッキが形成され、その上部に金メッキが形成されて構成される。
【0034】
キャップ42は、金属材料からなり、図1に示すように、平面視矩形状の一枚板に成形されている。このキャップ42は、下面にろう材(図示省略)が形成されており、シーム溶接やビーム溶接等の手法によりベース41に接合されて、キャップ42とベース41とによる水晶振動子1のパッケージ11が構成される。なお、本実施例でいう内部空間12とは、キャップ42とベース41により気密封止された部分のことをいう。また、キャップをセラミック材料とし、ガラス材料を介して気密封止してもよい。
【0035】
2つの水晶振動片2,3は、図1に示すように、ベース41上であって、内部空間12に積層状に配されている。
【0036】
内部空間12の上方に配された水晶振動片2(以下、上側水晶振動片という)は、図1,2(a)に示すように、音叉型水晶振動片であり、異方性材料の水晶片である基板21からエッチング形成される。基板21は、2本の脚部22,23(第1脚部,第2脚部)と、基部34とから構成されており、2本の脚部22,23が基部24から延出されている。
【0037】
この上側水晶振動片2の表側主面25には、異電位で構成された2つの励振電極26,27(第1励振電極,第2励振電極)と、これらの励振電極26,27を電極パッド51,52に電気的に接続させるために励振電極26,27から引き出された引出電極28,29とが形成されている。そして、引出電極28,29と電極パッド51,52が導電性接合材(図示省略)を介して接合されて、これら引出電極28,29と電極パッド51,52とが電気的に接続される。
【0038】
第1励振電極26は、第1脚部22の両主面(表側主面221,裏側主面(図示省略))に形成された第1主面電極261と、第2脚部23の両側面(対向側面232等)に形成された第2側面電極262とにより構成される。そして、これら第1主面電極261と第2側面電極262とが引き回し電極(図示省略)によって接続されている。
【0039】
同様に、第2励振電極27は、第2脚部23の両主面(表側主面231,裏側主面(図示省略))に形成された第2主面電極271と、第1脚部22の両側面(対向側面222等)に形成された第1側面電極272とにより構成される。そして、これら第2主面電極271と第1側面電極272とが引き回し電極(図示省略)によって接続されている。
【0040】
上記した励振電極26,27は、例えば、クロムの下地電極層と、金の上部電極層とから構成された積層薄膜である。この薄膜は、真空蒸着法等の手法により全面に形成された後、フォトリソグラフィー技術によりメタルエッチングして所望の形状に形成される。また、上記した引出電極28,29は、例えば、クロムの下地電極層と、金の中間電極層と、クロムの上部電極層と、から構成された積層薄膜である。この薄膜は、真空蒸着法等の手法により全面に形成された後、フォトリソグラフィー技術によりメタルエッチングして所望の形状に形成され、クロムの上部電極層のみが部分的にマスクして真空蒸着法等の手法により形成される。
【0041】
また、この上側水晶振動片2の2本の脚部22、23の先端は、図1,2(a)に示すように、周波数調整に係わる基板領域2Aとして設定される。
【0042】
内部空間12の下方に配された水晶振動片3(以下、下側水晶振動片という)は、上記した上側水晶振動片2と同様の構成からなり、図1,2(b)に示すように、音叉型水晶振動片であり、異方性材料の水晶片である基板31からエッチング形成される。基板31は、2本の脚部32,33(第3脚部,第4脚部)と、基部34とから構成されており、2本の脚部32,33が基部34から延出されている。
【0043】
この下側水晶振動片3の表側主面35には、異電位で構成された2つの励振電極36,37(第3励振電極,第4励振電極)と、これらの励振電極36,37を電極パッド53,54に電気的に接続させるために励振電極36,37から引き出された引出電極38,39とが形成されている。そして、引出電極38,39と電極パッド53,54が導電性接合材(図示省略)を介して接合されて、これら引出電極38,39と電極パッド53,54とが電気的に接続される。
【0044】
第3励振電極36は、第3脚部32の両主面(表側主面321,裏側主面(図示省略))に形成された第3主面電極361と、第4脚部33の両側面(対向側面333等)に形成された第4側面電極362とにより構成される。そして、これら第1主面電極361と第2側面電極362とが引き回し電極(図示省略)によって接続されている。
【0045】
同様に、第4励振電極37は、第4脚部33の両主面(表側主面331,裏側主面(図示省略))に形成された第4主面電極371と、第3脚部32の両側面(対向側面323等)に形成された第3側面電極372とにより構成される。そして、これら第4主面電極371と第3側面電極372とが引き回し電極(図示省略)によって接続されている。
【0046】
上記した励振電極36,37は、例えば、クロムの下地電極層と、金の上部電極層とから構成された積層薄膜である。この薄膜は、真空蒸着法等の手法により全面に形成された後、フォトリソグラフィー技術によりメタルエッチングして所望の形状に形成される。また、上記した引出電極38,39は、例えば、クロムの下地電極層と、金の中間電極層と、クロムの上部電極層と、から構成された積層薄膜である。この薄膜は、真空蒸着法等の手法により全面に形成された後、フォトリソグラフィー技術によりメタルエッチングして所望の形状に形成され、クロムの上部電極層のみが部分的にマスクして真空蒸着法等の手法により形成される。
【0047】
また、この下側水晶振動片3の2本の脚部32、33の先端は、図1,2(b)に示すように、周波数調整に係わる基板領域3Aとして設定される。
【0048】
そして、上記した上側水晶振動片2の引出電極28,29とベース41の電極パッド51,52とが、導電性接合材により接合され、図1に示すように、上側水晶振動片2は、基部24においてベース41に片保持されている。同様に、上記した下側水晶振動片3の引出電極38,39と、ベース41の電極パッド53,54とが、導電性接合材により接合され、図1に示すように、下側水晶振動片3は、基部34においてベース41に片保持されている。
【0049】
ところで、内部空間12において積層状に配された2つの水晶振動片2,3の間には、2つの水晶振動片2,3それぞれの周波数調整に係わる基板領域2A,3Aを少なくとも隔壁した絶縁性の分離板8が介在されている。この分離板8は、図1に示すように、内部空間12の側壁13に形成された突起部14に、その一部(分離板8の一対向辺86)が保持されるように設けられている。なお、本実施例では、分離板8の材料として水晶を用いている。この分離板8は、水晶振動片2,3と同様に、フォトリソ工法で成形されている。
【0050】
分離板8は、上記したように、2つの水晶振動片2,3それぞれの周波数調整に係わる基板領域2A,3Aを少なくとも隔壁する。具体的に、分離板8は、図1,3に示すように、2つの水晶振動片2,3それぞれの脚部22,23,32,33の長手方向にわたって2つの水晶振動片2,3を隔壁している。なお、ここでいう周波数調整に係わる基板領域と2A,3Aは、周波数調整を行う基板領域だけではなく、周波数調整に係わる部分の基板領域を含み、例えば、周波数調整を行う際、エッチング調整時にプラズマが回り込んで影響を受ける基板領域、基板21の重み付け(蒸着調整)を行った時に蒸着物が回りこんで影響を受ける基板領域などを含む。
【0051】
この分離板8の上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3に面した両主面81,82に凹部83(本発明でいう窪み部)が形成され、凹部83の内底面84の上下方には、上側水晶振動片2の脚部22,23及び下側水晶振動片3の脚部32,33が配されている。すなわち、凹部83の内底面84は、2つの水晶振動片2,3の脚部22,23,32,33の先端である自由端の近傍に配されている。
【0052】
上記した構成からなる水晶振動子1の周波数調整は、次のようにして行われる。まず、下側水晶振動片3がベース41の段部16に片保持され、下側水晶振動片3の周波数調整が行われる。下側水晶振動片3の周波数調整を終えた後に、その上空に分離板8が突起部14上に設けられる。そして、分離板8の上空に、上側水晶振動片2がベース41の段部15に片保持され、上側水晶振動片2の周波数調整が行われて、水晶振動子1の周波数調整が行われる。
【0053】
上記したように、本実施例にかかる水晶振動子1によれば、内部空間12における2つの水晶振動片2,3は、積層状に配され、積層状に配された2つの水晶振動片2,3の間に、2つの水晶振動片2,3それぞれの周波数調整に係わる基板領域2A,3Aを少なくとも隔壁した絶縁性の分離板8が介在されるので、2つの水晶振動片2,3それぞれの周波数調整をそれぞれ独立して行うことができる。その結果、2つの水晶振動片2,3の周波数調整時において、2つの水晶振動片2,3それぞれの周波数を個別調整する際、周波数調整を行っていない他の水晶振動片(上側水晶振動片2の周波数調整を行うときの下側水晶振動片3)への周波数調整に関する干渉を防止することができる。具体的に、上側水晶振動片2の周波数調整の際に飛散する金属材料などが下側水晶振動片3に付着し、下側水晶振動片3の周波数が変動するのを抑制することができる。
【0054】
また、2つの水晶振動片2,3が積層状に配されているので、パッケージ11の小型化を図ることができる。また、本実施例によれば、分離板8に絶縁材料である水晶を用いているので、例えば、導電性材料である金属と比較して、例えば、フォトリソ工法などによるエッチング加工により分離板8を予め設定した形状に成形し易い。
【0055】
また、金属からなる金属分離板の場合、金属分離板を成形する際にバリが発生するため、内部空間12において金属分離板を介在した2つの水晶振動片2,3に金属分離板のバリが接触することがあり、金属分離板を本発明にかかる分離板8として機能させることは難しい。特に、現在のパッケージの小型化に伴い2つの水晶振動片2,3と分離板8との距離が短くなっており、金属分離板を本発明にかかる分離板8として用いることは、バリとの接触や電極の短絡の影響を受けやすくなるので好ましくない。
【0056】
また、分離板8に導電性材料を採用した場合(導電性分離板)、周波数調整工程において飛散する金属材料や水晶振動片2,3の欠片の導電性分離板への付着により電極の短絡や水晶振動子1の特性変化または特性劣化(例えば、CI値のばらつきなど)を起こす可能性がある。そのため、分離板8に導電性材料を採用することはできない。しかしながら、導電性材料全体を絶縁性材料で覆うことにより分離板を構成することで、本発明の作用効果を持たせてもよい。すなわち、分離板8の材料すべてを絶縁性材料で構成しなくてもよい。
【0057】
また、分離板8は、2つの水晶振動片2,3それぞれの周波数調整に係わる基板領域2A,3Aを少なくとも隔壁するので、分離板8の寸法を最小限に抑えることができ、分離板8の製造コストを抑えることができる。また、分離板8により、2つの水晶振動片2,3それぞれの周波数調整に係わる基板領域2A,3Aが隔壁され、2つの水晶振動片2,3それぞれの周波数調整に係わり難い基板領域が隔壁されていない構成から水晶振動子1がなる場合、水晶振動子1の製造工程において内部空間12の残存ガスの排気を行う際に下側水晶振動片3の水分を真空加熱して蒸発させることが容易になる。また、上下の水晶振動片2,3の封止雰囲気を同一にでき、水晶振動子1の製造が容易で、かつ、その特性が安定する。
【0058】
また、分離板8は、水晶振動片2,3と同様にフォトリソ工法で成形されているので、分離板8を製造する製造設備を、水晶振動片2,3を製造する製造設備との共用化を図ることができる。また、共用化の製造設備を用いることで、製造現場を同一場所とすることでき、品質管理や、信頼性の面で有効である。
【0059】
また、2つの水晶振動片2,3は、それぞれ基部24,34において片保持され、分離板8の両主面81,82に凹部83が形成され、この凹部83の内底面84は、2つの水晶振動片2,3の脚部22,23,32,33の先端である自由端の近傍に配されるので、水晶振動子1が機械的な衝撃を受けた際に自由端が変位した場合であっても、2つの水晶振動片2,3の分離板8への接触を回避することができる。例えば、自由端は、機械的な衝撃により上下方向に振れるが、自由端の直上下に凹部83を形成することで、凹部83の内底面84に自由端が触れるのを回避することができる。さらに、ベース41に上側水晶振動片2を配する際に、主面81の平坦部分、すなわち凹部83の天面85が枕部として機能する。
【0060】
また、内部空間12の側壁13に突起部14が形成され、突起部14に分離板8の一対向辺86が保持されるので、下側水晶振動片3のクリアランスを確保することができる。特に、分離板8を設けるために内部空間12の側壁13に更に階段状の台座を形成した水晶振動子と比較して、本実施例にかかる水晶振動子1では、小型化を図りながら内部空間12における2つの水晶振動片2,3のクリアランスを確保することができる。
【0061】
なお、上記した本実施例では、水晶振動片の個数を2つとしているが、これに限定されるものではなく、用途にあわせて3つ以上の水晶振動片を用いることが可能である。この時、用いる水晶振動片の個数にあわせてパッケージの形状を変更し、3つ以上の水晶振動片の間それぞれに分離板8を介在させることで、上記した本実施例にかかる水晶振動子だけでなく、他の異なる機能を有する任意の水晶振動デバイスとして用いることができる。
【0062】
また、上記した本実施例では、分離板8により、2つの水晶振動片2,3それぞれの周波数調整に係わる基板領域2A,3Aが少なくとも隔壁されているが、これに限定されるものではなく、例えば、分離板8により2つの水晶振動片2,3を完全に隔壁してもよい。具体的に、図4に示すように、内部空間12が、分離板8により2つの分割内部空間17,18に分けられ、これら2つの分割内部空間17,18毎に2つの水晶振動片2,3がそれぞれ設けられてもよい。この場合、図4に示すように、上方に位置する分割内部空間17に配された上側水晶振動片2の周波数調整の際に飛散する金属材料や上側水晶振動片2の欠片などが、下方に位置する分割内部空間18に配された下側水晶振動片3に付着し、下側水晶振動片3の周波数が変動するのを完全に抑制することができる。また、下側水晶振動片3が設けられた分割内部空間18に外部からゴミが入るのを防止することができ、水晶振動子1の、CI値特性などの劣化を抑えることをできる。なお、図4に示す水晶振動子1の場合、突起部14上に上側水晶振動片2を保持するための段部15が設けられている。そのため、図4に示す水晶振動子1は、下側水晶振動片3のクリアランスを確保するのに好ましい形態である。
【0063】
また、この図4に示す水晶振動子1では、段部15,16が、内部空間12において対向配置され、2つの水晶振動片2,3が、それぞれ基部24,34において段部15,16に片保持されている。そのため、2つの水晶振動片2,3の基部24,34が、内部空間12において対向配置されている。この場合、2つの水晶振動片2,3は、それぞれ基部24,34において片保持され、かつ、それぞれ基部24,34が内部空間12において対向配置されるので、2つの水晶振動片2,3それぞれからパッケージ11に引き出され、外部電極と接続されるパッケージ11上の接続電極61,62,63,64の長さを短くすることができる。すなわち、パッケージ11上の接続電極61,62,63,64の配線パターンを簡易な配線パターンにすることができ、複雑な配線パターンが原因となる電極の短絡を抑制することができる。
【0064】
また、上記した本実施例では、図1に示す2つの水晶振動片2,3に音叉型水晶振動片を適用しているが、これに限定されるものではなく、例えば、図2に示す音叉型水晶振動片2と図5に示すようなATカットの水晶振動片9とを用いてもよい。また、図5に示すようなATカットの水晶振動片9を2つ用いてもよい。すなわち、任意の圧電振動片が適用可能である。なお、この図5に示すATカットの水晶振動片9は、平面視矩形上の一枚板の直方体に成形されている。このATカットの水晶振動片9の両主面91、92には、それぞれ励振電極93,94が形成されている。これらの励振電極93,94は、例えば、水晶振動板側からクロム、金の順に、あるいはクロム、金、クロムの順に、あるいはクロム、銀、クロムの順に積層して形成されている。なお、このATカットの水晶振動子9における周波数調整に係わる基板領域を、図5に示す基板領域9Aの範囲とする。
【0065】
また、本実施例では、分離板8の材料として水晶を用いているが、これに限定されるものではなく、絶縁材料であれば、ガラスやセラミックなどであってもよい。なお、分離板8の材料にガラスを用いた場合、分離板8はエッチング加工により成形される。また、分離板8の材料にセラミックを用いた場合、分離板8はプレス加工(セラミックの粉体をプレスする)により成形される。
【0066】
また、上記した本実施例では、分離板8は、図1に示すように、2つの水晶振動片2,3それぞれの脚部22,23,32,33の長手方向にわたって2つの水晶振動片2,3を隔壁しているが、これに限定されるものではない。すなわち、本発明では、2つの水晶振動片2,3それぞれの周波数調整に係わる基板領域2A,3Aを少なくとも隔壁すればよく、あわせて他の部位を隔壁してもよい。例えば、図4に示すように水晶振動片2,3自体を隔壁してもよい。
【0067】
また、上記した本実施例では、分離板8の両主面81,82に凹部83が形成されているが、分離板8の形状は、これに限定されるものではなく、上側水晶振動片2と下側水晶振動片3との間に介在可能な形状であれば、任意に設定可能である。また、より好適な例として、本実施例では、分離板8の両主面81,82に凹部83が形成されているが、主面の一部が凹んだ窪み部であればよく凹部の形状は限定されるものではなく、図6に示すような窪み部であってよい。
【0068】
また、上記した本実施例では、分離板8は、内部空間12の側壁13に設けられているが、これに限定されるものではなく、例えば、ベース41上に設けられてもよい。具体的に、図7に示すように、分離板8は、内部空間12のベース41上から突起して折曲されてもよい。この図7に示す分離板8は、内部空間12の2つの水晶振動片2,3の間の高さ位置において直角に折曲されている。そして、折曲された分離板8の先端が、2つの水晶振動片2,3の間に介在されている。また、図7に示す分離板8として図6(b)に示す分離板8を用いてもよい。
【0069】
この図7に示す水晶振動子1によれば、分離板8を設けるための台座を内部空間12の側壁13に設ける必要がなく、小型化を図りながら内部空間12における2つの水晶振動片2,3のクリアランスを確保することができる。
【0070】
なお、本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、水晶振動子などの圧電振動デバイスに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】図1は、本実施の形態にかかる水晶振動子の概略構成図である。具体的に、図1(a)は、図1(d)に示す水晶振動子のZ−Z線断面図である。図1(b)は、水晶振動子の背面図である。図1(c)は、図1(d)に示す水晶振動子のY−Y線断面図である。図1(d)は、図1(a)に示す水晶振動子のX−X線断面図である。
【図2】図2(a)は、本実施の形態にかかる上側水晶振動片の概略平面図である。図2(b)は、本実施の形態にかかる上側水晶振動片の概略平面図である。
【図3】図3は、本実施の形態にかかる分離板の概略構成斜視図である。
【図4】図4は、本実施の他の形態にかかる水晶振動子の概略構成図である。具体的に、図4(a)は、図4(d)に示す水晶振動子のZ’−Z’線断面図である。図4(b)は、水晶振動子の背面図である。図4(c)は、図4(d)に示す水晶振動子のY’−Y’線断面図である。図4(d)は、図4(a)に示す水晶振動子のX’−X’線断面図である。
【図5】図5は、ATカットの水晶振動片の概略平面図である。
【図6】図6(a)〜図6(c)は、本実施の他の形態にかかる分離板の概略構成斜視図である。
【図7】図7は、本実施の他の形態にかかる水晶振動子の概略内部側面図である。
【符号の説明】
【0073】
1 水晶振動子(圧電振動デバイス)
11 パッケージ
12 内部空間
13 内部空間の側壁
14 突起部
17,18 分割内部空間
2,3,9 水晶振動片(圧電振動片)
2A,3A,9A 周波数調整に係わる基板領域
41 ベース
42 キャップ
8 分離板
81,82 分離板の主面
83 凹部(窪み部)
84 凹部(窪み部)の内底面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースとキャップとから構成されたパッケージ内に内部空間が形成され、この内部空間に複数の圧電振動片が設けられた圧電振動デバイスにおいて、
前記内部空間における複数の前記圧電振動片は、積層状に配され、
前記積層状に配された複数の前記圧電振動片の間に、複数の前記圧電振動片それぞれの周波数調整に係わる基板領域を少なくとも隔壁した絶縁性の分離板が介在されたことを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項2】
前記内部空間が、前記分離板により複数の分割内部空間に分けられ、
これら複数の分割内部空間毎に前記圧電振動片が少なくとも一つずつ設けられたことを特徴とする請求項1に記載の圧電振動デバイス。
【請求項3】
少なくとも一つの前記圧電振動片は、一部分において片保持され、
前記分離板の、前記一部分において片保持された前記圧電振動片に面した主面に窪み部が形成され、
前記窪み部の内底面は、前記一部分において片保持された前記圧電振動片の自由端の近傍に配されたことを特徴とする請求項1または2に記載の圧電振動デバイス。
【請求項4】
複数の前記圧電振動片は、それぞれ一部分において片保持され、かつ、前記それぞれ一部分が前記内部空間において対向配置されたことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1つに記載の圧電振動デバイス。
【請求項5】
前記内部空間の側壁に突起部が形成され、
前記突起部に前記分離板の一部が保持されたことを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか1つに記載の圧電振動デバイス。
【請求項6】
前記分離板が前記内部空間のベース上から突起して折曲されてなり、その折曲した前記分離板の先端が複数の前記圧電振動片の間に介在されたことを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか1つに記載の圧電振動デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−332883(P2006−332883A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−151228(P2005−151228)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】