説明

圧電振動子およびその製造方法

【課題】より小型の圧電振動子およびその製造方法を得ること。
【解決手段】振動片33の片面に形成された第1の励振電極31が振動子基板3の側面の凹部35を介して、第2の励振電極32が形成された面に形成された第3の電極36と電気的に接続されている。したがって、第2の励振電極32が形成された面に第1の励振電極31を集約でき、一つの面での実装を可能にできる。また、スルーホールでなく側面で第1の励振電極31と第3の電極36との電気的接続が行われているので、振動子基板3に貫通用の面積を必要とせず、同じ大きさの振動片33に対して、振動子基板3を小さくできる。その結果、小型の圧電振動子を得ることができる。さらに、第1の励振電極31と第3の電極36との電気的接続が凹部35でなされているので、外部からの接触による断線および放電を少なくできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型電子機器に用いられる圧電振動子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
小型電子機器は、更なる小型化が要求されており、小型電子機器に用いられる圧電振動子にも小型化が要求されている。
ここで、圧電振動子に用いられる振動片は、振動面積が大きいほどクリスタルインピーダンス(CI)値が小さく振動し易いため、できるだけ振動面積を大きくする必要がある。したがって、振動片の振動面積を確保しつつ圧電振動子を小型化するには、振動片を収めるパッケージの小型化が必要となる。パッケージの小型化においては、パッケージに設けられた電極の引き回し等を工夫する必要がある。
そのために、振動片の対向する面に設けられた励振電極からの引き回しをコンパクトにし、パッケージを小型化しつつ実装基板との接続が最小面積でできるように、2つの励振電極に対応する接続電極をパッケージの一つの面に集約する等の工夫がなされている。
その一例として、振動片を備えた振動子基板にスルーホールを設け、スルーホールを介して一方の面の励振電極を他方の面に引き出し、パッケージの1つの面に2つの励振電極を集約する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−76826号公報(3頁、段落番号[0012]〜[0014]、図2、図3および図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スルーホールを設ける場合、振動子基板にスルーホールを形成するための面積が必要であり、同じ大きさの振動片であっても、より大きい振動子基板が必要となる。したがって、圧電振動子の小型化が制限される。
本発明の目的は、より小型の圧電振動子およびその製造方法を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の圧電振動子は、振動子基板と、前記振動子基板を支持するベース基板と、前記振動子基板のうち、前記ベース基板に対向する面とは逆の面を覆うリッド基板と、前記振動子基板の前記リッド基板に対向する面に形成された第1の励振電極と、前記振動子基板の前記ベース基板に対向する面に形成された第2の励振電極とを備え、前記振動子基板の前記ベース基板に対向する面には、前記振動子基板の側面に形成された凹部によって前記第1の励振電極と電気的に接続されている第3の電極が設けられていることを特徴とする。
【0006】
この発明によれば、振動片の片面に形成された第1の励振電極が振動子基板の側面の凹部を介して、第2の励振電極が形成された面に形成された第3の電極と電気的に接続されている。したがって、第2の励振電極が形成された面に第1の励振電極が集約され、パッケージの一つの面で実装が可能となる。また、スルーホールでなく側面で第1の励振電極と第3の電極との電気的接続が行われているので、振動子基板に貫通用の面積を必要とせず、同じ大きさの振動片に対して、振動子基板を小さくすることができる。その結果、小型の圧電振動子が得られる。
さらに、第1の励振電極と第3の電極との電気的接続が凹部でなされているので、外部からの接触による断線および放電が少ない。
【0007】
本発明では、前記振動子基板は水晶で形成され、前記凹部は、前記水晶をウエットエッチングすることによって形成されているのが好ましい。
この発明では、水晶で形成された振動子基板をウエットエッチングすることによって凹部を形成するので、水晶の結晶異方性により、凹部の側面がテーパ形状になり、この側面に電極を形成しやすくなる。
【0008】
本発明では、前記振動子基板は、前記水晶の結晶軸であるX軸方向に前記側面を有し、前記凹部は、前記X軸の正方向に位置する前記側面に形成されているのが好ましい。
この発明では、水晶の結晶軸に対するウエットエッチングの異方性により、X軸の負方向の振動子基板の側面に形成される凹部の側面の傾斜が、正方向に対する傾斜と比較して急峻であり、振動子基板で占める凹部の占める割合が少なくてすみ、振動子基板内で振動片を大きくとれる。また、凹部の側面が急峻であるため、第1の励振電極と第3の電極の接続が、凹部側面で断線することを低減できる。
【0009】
本発明の圧電振動子の製造方法は、振動子基体とベース基体とリッド基体とを用意する基体準備工程と、前記振動子基体に、複数の振動片と各前記振動片に対応する貫通孔を形成する振動子基体形成工程と、前記振動子基体形成工程の後に、前記振動子基体の一方の主面であって前記振動片の少なくとも一部に第1の励振電極を形成し、前記貫通孔の内面の少なくとも一部に前記第1の励振電極と接続された電極を形成し、前記振動体基体の他方の主面であって前記振動片の少なくとも一部に第2の励振電極を形成し、前記他方の主面の一部に第3の電極を形成し、前記貫通孔の内面の少なくとも一部に前記第3の電極と接続された電極を形成して、前記貫通孔の前記内面において前記第1の励振電極と前記第3の電極とを電気的に接続する励振電極形成工程と、前記ベース基体に前記貫通孔に対応する孔を複数形成するベース基体形成工程と、前記振動子基体の前記第1の励振電極が形成された面に前記リッド基体を、前記振動子基体の前記第2の励振電極が形成された面に前記ベース基体を前記振動片に対応する前記孔を対応させて接合する接合工程と、前記接合工程後の前記リッド基体、前記振動子基体および前記ベース基体を、前記貫通孔に対応した前記振動片側の前記貫通孔の前記内面の一部を残すように切断して、複数の圧電振動子を得る切断工程とを含むことを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、振動子基体の片面に形成された第1の励振電極が振動子基体の貫通孔を介して、第2の励振電極が形成された振動子基体の他方の面に形成された第3の電極と電気的に接続されている。そして、貫通孔に対応した振動片側の貫通孔の内面の一部を残すように切断して、圧電素子を得る。したがって、第2の励振電極が形成された面に第1の励振電極が集約され、パッケージの一つの面で実装が可能な圧電素子が得られる。また、スルーホールでなく貫通孔の内面の一部で第1の励振電極と第3の電極との電気的接続が行われ、貫通孔に沿って切断するので、振動子基板にスルーホールを別途設ける必要がなく、同じ大きさの振動片に対して、圧電振動子が小さくなる。その結果、一つの振動子基体から得られる圧電振動子の個数が増える。
【0011】
本発明では、前記振動子基体形成工程は、前記振動子基体の両主面に第1耐蝕膜を形成する第1耐蝕膜形成工程と、前記貫通孔が形成される貫通孔部の前記第1耐蝕膜を除去する貫通孔部パターニング工程と、前記第1耐蝕膜が除去された前記貫通孔部に前記貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、前記振動片が形成される逆メサ部の前記第1耐蝕膜を除去する逆メサ部パターニング工程と、前記第1耐蝕膜が除去された前記逆メサ部をエッチングして行う逆メサの形成と、前記貫通孔を拡大するエッチングを同時に行う逆メサ形成および貫通孔拡大工程と、前記第1耐蝕膜を剥離し、第2耐蝕膜を、前記第1耐蝕膜剥離後の前記振動子基体の表面に形成する耐蝕膜剥離後再形成工程と、前記振動片と前記振動子基体との間のくり貫き部の前記第2耐蝕膜を除去するくり貫き部パターニング工程と、前記くり貫き部をエッチングし、くり貫きを形成するくり貫き工程と、前記第2耐蝕膜剥離工程とを含むのが好ましい。
この発明では、逆メサの形成と貫通孔拡大を同時に行っているので、振動子基体形成工程全体の工程が短縮される。
【0012】
本発明では、前記振動子基体は水晶で形成され、前記エッチングは、ウエットエッチングによって行うのが好ましい。
この発明では、水晶で形成された振動子基体をウエットエッチングすることによって貫通孔を形成するので、水晶の結晶異方性により、貫通孔の内面がテーパ形状になり、この内面に電極を形成しやすくなる。
【0013】
本発明では、前記振動子基体は、前記水晶の結晶軸であるX軸に平行に前記主面が形成され、前記貫通孔は、前記振動片に対して前記X軸の正方向に形成されているのが好ましい。
この発明では、水晶の結晶軸に対するウエットエッチングの異方性により、X軸の負方向の振動片側に形成される貫通孔の内面の傾斜が、正方向に対する傾斜と比較して急峻であり、第1の励振電極と第3の電極との電気的な接続を得るため主面方向から見た面積が小さくなる。したがって、切断後の圧電振動子に含まれる振動片を大きくとれる。また、凹部の側面が急峻であるため、第1の励振電極と第3の電極の接続が、凹部側面で断線することを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した実施形態および変形例について図面に基づいて説明する。
なお、各実施形態および変形例の図面において、同じ構成要素には同じ符号を付して説明する。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、本発明の本実施形態における圧電振動子1を示している。
図1(a)は、圧電振動子1の斜視図、同図(b)は、(a)におけるA−A断面図を示している。
また、図2は圧電振動子1の分解斜視図を示している。圧電振動子1は、リッド基板2と振動子基板3とベース基板4とを備えている。
図3(a)は、リッド基板2側からみた振動子基板3の平面図、同図(b)は、ベース基板4側から見た振動子基板3の平面図を示している。
【0016】
図1(a)および図2において、圧電振動子1は、ベース基板4に支持された振動子基板3にリッド基板2が積み重ねられることによって構成されている。振動子基板3は、リッド基板2とベース基板4とに挟み込まれ、接合されている。
ベース基板4は略矩形の板であり、その側面が交差する4隅には切り欠きが設けられ、その切り欠きの側面には、外部電極41,42が形成されている。
振動子基板3は、ベース基板4と略同外形状の板である。その側面の一つには、凹部35が2ヶ所設けられている。
リッド基板2も、ベース基板4と略同外形状の板である。リッド基板2の側面には、加工は施されていない。
【0017】
図1(b)および図2において、振動子基板3は枠部30と枠部30に囲まれた振動片33を備えている。振動子基板3は水晶から形成され、振動片33は、主面が長方形の直方体形状を有している。ここで、振動子基板3はATカットで形成されており、その主面はY’軸に直交する面であり、振動子基板3の側面は、Z’軸および結晶軸であるX軸に略直交している(図2参照)。
振動片33は、振動子基板3の厚みより薄く形成され、枠部30のZ’軸方向から延長された二箇所の対向する支持部34によって支持されている。したがって、振動片33は、リッド基板2とベース基板4とに挟まれた空間に封止されている(図1(b)参照)。
2ヶ所の凹部35は、水晶からなる振動子基板3の図2中の矢印で示したX軸の正方向に位置する側面に形成されている。
【0018】
図3(a)および(b)において、振動子基板3に形成された第1の励振電極31、第2の励振電極32および引出電極である第3の電極36の部分が斜線で示されている。
図3(a)において、第1の励振電極31は、振動子基板3のリッド基板2に対向する面に設けられている。より詳しくは、振動片33と2つの支持部34と枠部30のリッド基板2に対向する面に連続して設けられている。また、凹部35の側面にも励振電極31は設けられている。
図3(b)において、第2の励振電極32は、振動子基板3のベース基板4に対向する面に設けられている。より詳しくは、振動片33と2つの支持部34と枠部30のベース基板4に対向する面に設けられている。ここで、励振電極32は、凹部35の近傍までは設けられていない。凹部35の近傍の面には、電極の設けられていない面37を挟んで、電気的に切断された状態で、第3の電極36が設けられている。また、第3の電極36は、凹部35の側面にも設けられている。
【0019】
凹部35の側面に設けられた第1の励振電極31と第3の電極36とは、側面で電気的に接続されている。したがって、リッド基板2に対向する振動子基板3の面に形成された第1の励振電極31は、ベース基板4に対向する振動子基板3の面に引き出され、第1の励振電極31と第2の励振電極32とは、面37によって電気的に切断されている。
【0020】
振動子基板3とベース基板4とが接合された状態で、第3の電極36は外部電極41と接続され、第2の励振電極32は外部電極42と接続されている。したがって、振動片33の両主面に形成された第1の励振電極31と第2の励振電極32とは、外部電極41,42を介してベース基板4の底面で実装基板等と接続できる。
【0021】
以下に、圧電振動子1の製造方法を図面に基づいて説明する。
図4は、圧電振動子1の製造方法を示す製造フロー図である。
図5は、製造プロセスを示す概略図である。圧電振動子1は、大型の基板である基体を用いて多数個形成した後に、個々に切り離すことによって得られる。
【0022】
図4において、圧電振動子1の製造方法は、基体準備工程S10、振動子基体形成工程S20、リッド基体形成工程S30、ベース基体形成工程S40、励振電極形成工程S50、接合工程S60および切断工程S70を含む。
【0023】
図5(a)は、大型の基板であるリッド基体200、振動子基体300、ベース基体400をそれぞれ用意する基体準備工程S10を示している。
図5(a)において、リッド基体200およびベース基体400には、ガラス基板または水晶基板を用いることができる。振動子基体300としては、水晶基板を用いる。ここで、振動子基体300はATカットで形成する。その主面はY’軸に直交する面であり、振動子基体300の側面は、Z’軸および結晶軸であるX軸に略直交している。
【0024】
図5(b)は、振動子基体300に複数の振動片33等と、後にその一部が凹部35となる振動片33に対応する貫通孔305とを複数形成して、振動子基体310とする振動子基体形成工程S20を示している。また、リッド基体形成工程S30と、ベース基体400に後に外部電極41が形成される切り欠きとなる孔420を複数形成してベース基体410とするベース基体形成工程S40とを合わせて示している。
図5(b)において、振動子基体300の両面にマスクを施したうえで、ウエットエッチングを行い、図2に示した振動片33および支持部34を形成する。また、振動片33に対してX軸の正方向側の近い位置に2つの貫通孔305をウエットエッチングで形成する。ウエットエッチングを両主面から行うことによって、開口径の小さい貫通孔305を得ることができる。貫通孔305の内面は、水晶の結晶軸の異方性により、開口部から奥に向かって狭まるテーパ形状を有している。ウエットエッチングは、フッ化水素酸等を用いて行う。
ベース基体400には、外部電極41,42が形成される切り欠きとなる孔420をサンドブラストによって形成してベース基体410とする。
【0025】
図5(c)は、励振電極形成工程S50を示している。
図5(c)において、振動子基体310の主面の片面に、図中多数のドットで示した第1の励振電極321(励振電極31)を振動片33および貫通孔305の内面にかかるように形成する。また、他方の主面に第2の励振電極32(図示せず)と、貫通孔305の内面にかかる第3の電極36(図示せず)とを形成して振動子基体320とする。
第1の励振電極321(励振電極31)、第2の励振電極32および第3の電極36は、蒸着、スパッタ等により形成できる。ここで、貫通孔305の内面は、開口部から奥に向かって狭まるテーパ形状を有しているので貫通孔305の内面にも電極が形成され、両主面側から蒸着、スパッタ等を行うことにより、貫通孔305の内面で第1の励振電極31と第3の電極36との電気的接続が行われる。
【0026】
図5(d)は、リッド基体200と振動子基体320とベース基体410とを接合する接合工程S60を示している。
図5(d)において、振動子基体320の第1の励振電極321が形成された面にリッド基体200を、振動子基体320の第2の励振電極32(図示せず)が形成された面にベース基体410を振動片33に対応する孔420を対応させて接合する。
リッド基体200と振動子基体320とベース基体410との接合には、金錫等の共晶金属接合、陽極接合、プラズマ接合を用いることができる。
【0027】
図5(e)には、接合後の圧電振動子1の集合体100が示されている。
図5(f)は、圧電振動子1の集合体100を個々の圧電振動子1に切り離して圧電振動子1を得る切断工程S70を示している。
図5(f)において、圧電振動子1の集合体100を切り離して圧電振動子1を得る。以下に、詳しく説明する。
【0028】
図6および図7には、圧電振動子1を切り離す工程を表す詳細図が示されている。
図6(a)は、圧電振動子1の集合体100の部分平面図であり、(b)はそのB−B断面図である。
図7は、図6(b)の部分拡大断面図である。
【0029】
図6(a)、(b)および図7において、貫通孔305を横切るように、図中の二点鎖線で示した部分をブレード600によって切断する。ここで、貫通孔305の内面の形状は、水晶のウエットエッチングに対する異方性により対称ではない。X軸の正方向へエッチングされた内面307は勾配が急で、X軸の負方向の内面は、勾配が急峻になっている(図7参照)。
【0030】
ブレード600による切断位置を詳しく説明する。
図7において、ブレード600の片方の端601は、貫通孔305のX軸の負方向の内面の頂部306にかからないようにして、ブレード600の他方の端602は、貫通孔305のX軸の正方向の内面307全部を削り落とすような位置にセットして切断する。したがって、貫通孔305のX軸負方向の内面の頂部306は、切り離された圧電振動子1の側面より奥に位置することになる。
【0031】
例えば、貫通孔305とブレード600の幅の関係は、次のようになる。
貫通孔305を振動子基体300の両側からウエットエッチングして形成すると、振動子基体300と貫通孔305の最小貫通孔寸法との関係は、振動子基体300の厚みが100μmの場合、貫通孔305の開口部の大きさは、X軸方向に90μm、Z’軸方向に150μm程度になる。この場合、ブレード600の幅は、90μmのものを用いることができる。
なお、最小貫通孔寸法とは、貫通孔305を両側からウエットエッチングで形成した場合に、振動子基体300が貫通し、貫通孔305が形成された時点での最小限の開口部の大きさである。貫通孔305の開口部の大きさは、X軸方向に90μm、Z’軸方向に150μmより大きくてもよい。
【0032】
振動子基体300の厚みに応じた最小貫通孔寸法は、以下の通りである。
振動子基体300の厚みが80μmの場合、X軸方向に70μm、Z’軸方向に120μm程度、振動子基体300の厚みが60μmの場合、X軸方向に55μm、Z’軸方向に90μm程度の大きさになる。
以上の工程により、圧電振動子1を得ることができる。
【0033】
以下、本実施形態の効果を記載する。
(1)振動片33の片面に形成された第1の励振電極31が振動子基板3の側面の凹部35を介して、第2の励振電極32が形成された面に形成された第3の電極36と電気的に接続されている。したがって、第2の励振電極32が形成された面に第1の励振電極31を集約でき、一つの面での実装を可能にできる。また、スルーホールでなく側面で第1の励振電極31と第3の電極36との電気的接続が行われているので、振動子基板3に貫通用の面積を必要とせず、同じ大きさの振動片33に対して、振動子基板3を小さくできる。その結果、小型の圧電振動子1を得ることができる。
さらに、第1の励振電極31と第3の電極36との電気的接続が凹部35でなされているので、外部からの接触による断線および放電を少なくできる。
【0034】
(2)水晶で形成された振動子基体300をウエットエッチングすることによって貫通孔305を形成し、この貫通孔305から凹部35は形成されるので、水晶の結晶異方性により、凹部35の側面をテーパ形状にでき、この側面に電極を形成しやすくできる。
【0035】
(3)水晶の結晶軸であるX軸の結晶性異方性により、振動子基板3の側面に形成される凹部35の側面の傾斜を、正方向に対する傾斜と比較して急峻にでき、振動子基板3で占める凹部35の占める割合を少なくでき、振動子基板3内で振動片33を大きくとることができる。また、凹部35の側面が急峻であるため、第1の励振電極31と第3の電極36の接続が、凹部35側面で断線することを低減できる。
【0036】
(4)振動子基体300の片面に形成された第1の励振電極321が振動子基体300の貫通孔305を介して、第2の励振電極32が形成された振動子基体300の他方の面に形成された第3の電極36と電気的に接続できる。そして、貫通孔305に対応した振動片33側の貫通孔305の内面の一部を残すように切断して、圧電素子を得る。したがって、第2の励振電極32が形成された面に第1の励振電極31が集約され、パッケージの一つの面で実装が可能な圧電素子を得ることができる。また、スルーホールでなく貫通孔305の内面の一部で第1の励振電極321と第3の電極36との電気的接続が行われ、貫通孔305に沿って切断するので、振動子基体300にスルーホールを別途設ける必要がなく、同じ大きさの振動片33に対して、圧電振動子を小さくできる。その結果、一つの振動子基体300から得られる圧電振動子1の個数を増やすことができる。
【0037】
(5)水晶で形成された振動子基体300をウエットエッチングすることによって貫通孔305を形成するので、水晶の結晶異方性により、貫通孔305の内面をテーパ形状にでき、この内面に電極を形成しやすくできる。
【0038】
(6)水晶の結晶軸に対するウエットエッチングの異方性により、X軸の負方向の振動片33側に形成される貫通孔305の内面の傾斜が、正方向に対する傾斜と比較して急峻であり、第1の励振電極321と第3の電極36との電気的な接続を得るため主面方向から見た面積を小さくできる。したがって、切断後の圧電振動子1に含まれる振動片33を大きくできる。
【0039】
(7)図7に示すように、貫通孔305の内面の頂部306にブレード600の片方の端601がかからないように切断するので、力や振動が伝わりにくく、X軸負方向の内面の頂部306側の振動子基体320の欠け、いわゆるチッピングを発生しにくくできる。
【0040】
(8)頂部306の角度が内面307側の頂部と比較して鈍角なので、第1の励振電極31と第3の電極36とを接続しても、内面307側の頂部を用いるよりも頂部での断線を発生しにくくできる。
【0041】
(第2実施形態)
図8は、本発明の本実施形態における振動子基板3を2種類示している。
図8(a)は、ベース基板4側から見た振動子基板3の平面図、同図(b)はベース基板4側から見た他の振動子基板3の平面図である。
【0042】
図8(a)において、振動片33の支持部34は、凹部35側の枠部30の辺に並んで設けられている。振動片33と枠部30との間は、くり貫き314によってくり貫かれている。
第2の励振電極32は、振動子基板3のベース基板4に対向する面に設けられている。より詳しくは、振動片33と2つの支持部34の片側と枠部30のベース基板4に対向する面に設けられている。ここで、励振電極32は、凹部35の近傍までは設けられていない。凹部35の近傍の面には、電極の設けられていない面37を挟んで、電気的に切断された状態で、第3の電極36が設けられている。また、第3の電極36は、凹部35の側面にも設けられている。
【0043】
図8(b)において、図8(a)に示した振動子基板3と異なるところは、2つの支持部34が、凹部35側の枠部30の角に設けられている点である。その他の構成は、図8(a)に示した振動子基板3と同様である。
【0044】
本実施形態では、第1実施形態における振動子基体形成工程S20を以下の工程で行った。その他の工程は、第1実施形態と同様である。振動子基体310は、振動子基体300に以下の加工を行うことによって得られる。
図9は、振動子基体形成工程S20を示す製造フロー図である。
図10は、振動子基体形成工程S20を示す図8におけるC−C断面に基づいた概略断面図である。
【0045】
図9において、振動子基体形成工程S20は、第1耐蝕膜形成工程S21と貫通孔部パターニング工程S22と貫通孔形成工程S23と逆メサ部パターニング工程S24と逆メサ形成および貫通孔拡大工程S25と耐蝕膜剥離後再形成工程S26とくり貫き部パターニング工程S27とくり貫き工程S28と第2耐蝕膜剥離工程S29とを含む。
【0046】
図10(a)は、振動子基体300の両主面に第1耐蝕膜301を形成する第1耐蝕膜形成工程S21を示している。
図10(a)において、振動子基体300の両主面に第1耐蝕膜301を形成する。第1耐蝕膜301は、振動子基体300の主面上にクロム膜および金膜を積層することによって形成することができる。例えば、クロム膜の厚さを数十nm、金膜の厚さを数十から数百nmとして形成することができる。
【0047】
図10(b)は、貫通孔305が形成される貫通孔部302の第1耐蝕膜301を除去する貫通孔部パターニング工程S22を示している。
図10(b)において、マスクと酸系の第1耐蝕膜の剥離液を用いたフォトリソ工程によって、貫通孔部302の第1耐蝕膜301を除去する。
【0048】
図10(c)は、第1耐蝕膜301の除去された貫通孔部302に貫通孔303を形成する貫通孔形成工程S23を示している。
図10(c)において、フッ化水素酸等を用いたウエットエッチングによって、貫通孔部302を両面よりエッチングし、貫通孔303を形成する。この工程のウエットエッチングの時間は、後の工程の逆メサ形成および貫通孔拡大工程S25におけるエッチング時間を考慮して決めることができる。最終的な貫通孔305の開口部の大きさは、この工程のウエットエッチングの時間と逆メサ形成および貫通孔拡大工程S25におけるエッチング時間とで決まる。
【0049】
図10(d)は、振動片33が形成される逆メサ部304の第1耐蝕膜301を除去する逆メサ部パターニング工程S24を示している。
図10(d)において、貫通孔部パターニング工程S22と同様のフォトリソ工程によって、逆メサ部304の第1耐蝕膜301を除去する。
【0050】
図10(e)は、第1耐蝕膜301が除去された逆メサ部304をエッチングして行う逆メサの形成と、貫通孔303を拡大するエッチングを同時に行う逆メサ形成および貫通孔拡大工程S25を示している。
図10(e)において、フッ化水素酸等を用いたウエットエッチングによって、逆メサ部304をエッチングし、逆メサ構造311を形成すると同時に、貫通孔303をエッチングして拡大し、所定の開口部の大きさの貫通孔305を形成する。所定の大きさとは、振動子基体300の厚み、図4で示した切断工程S70で使用する図7に示したブレード600の幅等によって決めることができる。
【0051】
図10(f)および(g)は、第1耐蝕膜301を剥離し、第2耐蝕膜312を、第1耐蝕膜301剥離後の振動子基体300の表面に形成する耐蝕膜剥離後再形成工程S26を示している。
図10(f)および(g)において、第1耐蝕膜301の剥離は、貫通孔部パターニング工程S22と同様の剥離液を用いることができ、第2耐蝕膜312は第1耐蝕膜301と同様に形成することができる。
【0052】
図10(h)は、振動片33と振動子基体300との間のくり貫き部313の第2耐蝕膜312を除去するくり貫き部パターニング工程S27を示している。
図10(h)において、貫通孔部パターニング工程S22と同様のフォトリソ工程によって、くり貫き部313の第2耐蝕膜312を除去する。
【0053】
図10(i)は、くり貫き部313をエッチングし、くり貫き314を形成するくり貫き工程S28を示している。
図10(i)において、くり貫き部313のエッチングは、貫通孔形成工程S23と同様のウエットエッチングによって行うことができる。
【0054】
図10(j)は、第2耐蝕膜剥離工程S29を示している。
図10(j)において、第2耐蝕膜312の剥離は、第1耐蝕膜301の剥離液と同様の剥離液によって行うことができる。
以上の工程によって、振動子基体310が得られる。
【0055】
以下、本実施形態の効果を記載する。
(9)前述の効果に加え、逆メサの形成と貫通孔拡大を同時に行っているので、振動子基体形成工程全体の工程を短縮できる。
【0056】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、変形例として、図11に示すように振動子基板3に設けられる凹部35は、実施形態のように二つに分離している必要はなく、連続した形状の凹部38であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】(a)は、本発明の第1実施形態における圧電振動子の斜視図、(b)は、(a)におけるA−A断面図。
【図2】圧電振動子の分解斜視図。
【図3】(a)は、リッド基板側からみた振動子基板の平面図、(b)は、ベース基板側から見た振動子基板の平面図。
【図4】本発明の第1実施形態における製造方法を示す製造フロー図。
【図5】製造プロセスを示す概略図。
【図6】(a)は、第1実施形態における切断前の圧電振動子の集合体の部分平面図、(b)は、(a)におけるB−B部分断面図。
【図7】図6(b)における部分拡大断面図。
【図8】(a)は、本発明の第2実施形態にかかるベース基板側から見た振動子基板の平面図、(b)はベース基板側から見た他の振動子基板の平面図。
【図9】本発明の第2実施形態における振動子基体形成工程を示す製造フロー図。
【図10】振動子基体形成工程を示す図8におけるC−C断面に基づいた概略断面図。
【図11】本発明の変形例にかかる圧電振動子の斜視図。
【符号の説明】
【0058】
1…圧電振動子、2…リッド基板、3…振動子基板、4…ベース基板、31,321…第1の励振電極、32…第2の励振電極、33…振動片、35…凹部、36…第3の電極、200…リッド基体、300,310…振動子基体、301…第1耐蝕膜、302…貫通孔部、303,305…貫通孔、304…逆メサ部、312…第2耐蝕膜、313…くり貫き部、314…くり貫き、400…ベース基体、420…孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動子基板と、
前記振動子基板を支持するベース基板と、
前記振動子基板のうち、前記ベース基板に対向する面とは逆の面を覆うリッド基板と、
前記振動子基板の前記リッド基板に対向する面に形成された第1の励振電極と、
前記振動子基板の前記ベース基板に対向する面に形成された第2の励振電極とを備え、
前記振動子基板の前記ベース基板に対向する面には、前記振動子基板の側面に形成された凹部によって前記第1の励振電極と電気的に接続されている第3の電極が設けられている
ことを特徴とする圧電振動子。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電振動子において、
前記振動子基板は水晶で形成され、
前記凹部は、前記水晶をウエットエッチングすることによって形成されている
ことを特徴とする圧電振動子。
【請求項3】
請求項2に記載の圧電振動子において、
前記振動子基板は、前記水晶の結晶軸であるX軸方向に前記側面を有し、
前記凹部は、前記X軸の正方向に位置する前記側面に形成されている
ことを特徴とする圧電振動子。
【請求項4】
振動子基体とベース基体とリッド基体とを用意する基体準備工程と、
前記振動子基体に、複数の振動片と各前記振動片に対応する貫通孔を形成する振動子基体形成工程と、
前記振動子基体形成工程の後に、前記振動子基体の一方の主面であって前記振動片の少なくとも一部に第1の励振電極を形成し、前記貫通孔の内面の少なくとも一部に前記第1の励振電極と接続された電極を形成し、前記振動体基体の他方の主面であって前記振動片の少なくとも一部に第2の励振電極を形成し、前記他方の主面の一部に第3の電極を形成し、前記貫通孔の内面の少なくとも一部に前記第3の電極と接続された電極を形成して、前記貫通孔の前記内面において前記第1の励振電極と前記第3の電極とを電気的に接続する励振電極形成工程と、
前記ベース基体に前記貫通孔に対応する孔を複数形成するベース基体形成工程と、
前記振動子基体の前記第1の励振電極が形成された面に前記リッド基体を、
前記振動子基体の前記第2の励振電極が形成された面に前記ベース基体を前記振動片に対応する前記孔を対応させて接合する接合工程と、
前記接合工程後の前記リッド基体、前記振動子基体および前記ベース基体を、前記貫通孔に対応した前記振動片側の前記貫通孔の前記内面の一部を残すように切断して、複数の圧電振動子を得る切断工程とを含む
ことを特徴とする圧電振動子の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の圧電振動子の製造方法において、
前記振動子基体形成工程は、
前記振動子基体の両主面に第1耐蝕膜を形成する第1耐蝕膜形成工程と、
前記貫通孔が形成される貫通孔部の前記第1耐蝕膜を除去する貫通孔部パターニング工程と、
前記第1耐蝕膜が除去された前記貫通孔部に前記貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、
前記振動片が形成される逆メサ部の前記第1耐蝕膜を除去する逆メサ部パターニング工程と、
前記第1耐蝕膜が除去された前記逆メサ部をエッチングして行う逆メサの形成と、前記貫通孔を拡大するエッチングを同時に行う逆メサ形成および貫通孔拡大工程と、
前記第1耐蝕膜を剥離し、第2耐蝕膜を、前記第1耐蝕膜剥離後の前記振動子基体の表面に形成する耐蝕膜剥離後再形成工程と、
前記振動片と前記振動子基体との間のくり貫き部の前記第2耐蝕膜を除去するくり貫き部パターニング工程と、
前記くり貫き部をエッチングし、くり貫きを形成するくり貫き工程と、
前記第2耐蝕膜剥離工程とを含む
ことを特徴とする圧電振動子の製造方法。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の圧電振動子の製造方法において、
前記振動子基体は水晶で形成され、
前記エッチングは、ウエットエッチングによって行う
ことを特徴とする圧電振動子の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の圧電振動子の製造方法において、
前記振動子基体は、前記水晶の結晶軸であるX軸に平行に前記主面が形成され、
前記貫通孔は、前記振動片に対して前記X軸の正方向に形成されている
ことを特徴とする圧電振動子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−325250(P2007−325250A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−46583(P2007−46583)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】