説明

圧電振動子の両面ポリッシング加工装置、及び、両面ポリッシング加工方法

【課題】周波数掃引法によって厚み検出を行う圧電振動子の両面ポリッシング加工において、非導電性のポリッシングパッドの厚み、弾性、あるいは使用時間の影響を実質的に受けることなく、共振周波数の高周波数化と表面粗度への要求とに対応することを課題とする。
【解決手段】上定盤11には、流体貯留部34内に開口し、樋25から通電用流体を供給するための注入路32が設けられている。流体貯留部34内には、電極端面331が流体ポケット35より突出しない位置になるように測定電極33が設けられている。測定電極33は、電極端面331を除いて周囲が絶縁壁332により電気的に絶縁されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶振動子などの圧電振動子の両面ポリッシング加工装置、及び、両面ポリッシング加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水晶あるいはセラミック等の圧電材料を用いた圧電振動子は、共振周波数が非常に安定していることから多様な電子機器等の基準周波数発信器(装置)において使用されている。ATカットのような共振周波数が厚みに依存するカット方法の場合、当然のこととして圧電振動子は周波数に応じて所定の正確な厚みに加工することが必要となる。
【0003】
従来から、この加工には両面のラッピング加工法を用いるのが一般的である。特許文献1(特公昭63−027149号公報)に開示されているように、この加工方法では、加工時に、上定盤に設けた電極、ラッピング加工中の圧電振動子、及び下定盤の間で回路を形成させ、この電極と下定盤(下定盤がもう一方の電極となる。)の間に検出用交流電圧を印加する。印加される電圧の周波数が、適宜の範囲で変化(掃引)させられるとき、その周波数が圧電振動子の固有振動数に近づくと共振現象がおこり、インピーダンスが低下する。最も低いインピーダンスが検出されたときの周波数が、その時の圧電振動子の固有振動数(共振周波数)と判定される。ここではこのような固有振動数の検出方法を周波数掃引法と呼ぶ。
【0004】
そして、この特許文献1のものは、従来、測定電極と圧電材料との間隙を常に厳密に調整し、しかも間隙内をスラリーで満たすようにすることが困難であるとの問題から、測定電極の先端に強誘電性を示すとともに柔らかいチタン酸バリウムのような誘電体層を定盤の加工面と面一に設け、誘電体層は、ラッピング加工につれて定盤とともに摩耗させるようにすることによって、この問題を解決しようとしている。
【0005】
上述のように、圧電振動子の共振周波数はその厚みの関数であるが、求める周波数が高くなるほど必要な圧電振動子の厚みは薄いものとなる。近年、デバイスの多様化により圧電振動子に求められる共振周波数が非常に高いものとなってきている。例えば、共振周波数が54MHzのものが要求された場合、圧電振動子の厚みは、約30.925・ .・μm程度の厚みにしなければならないことになる。さらに、圧電振動子の表面粗度もこれに応じて向上させる必要が出てくる。つまり、極めて厚みが薄く表面粗度が非常に滑らかな圧電振動子が要求されるようになってきた。
【0006】
ここで、従来から行われているラッピング加工法は、金属製上定盤の下表面と金属製下定盤の上表面との間にキャリアのワーク保持孔内に保持された圧電振動子を置き、上下定盤間に研磨圧を加えるとともにラッピングスラリーを供給しながら、キャリア、したがって、これに保持された圧電振動子に回転運動を与えることにより、上、下定盤の下、上表面とスラリーによって、圧電振動子表面を研磨するものである。
【0007】
このような従来から利用されてきているラッピング加工法では、剛体である定盤の上下表面とワークである圧電振動子とが接触することに加えて、上述のように圧電振動子の厚みが近年特に薄くなってきたことと相まって、研磨中に非常に割れが発生しやすくなっただけでなく、要求されるレベルに合わせて表面粗度を得ることも難しくなってきた。
【0008】
そこで、上、下定盤の下、上表面にある程度弾性を有するポリッシングパッドを貼り付けたものを用いてポリッシング加工を行い、上述の割れや表面粗度の問題あるいはその他の問題を克服しようとする試みがなされてきた(特許文献2、3)。ところが、ポリッシングパッドは一般に非導電性且つ厚みと弾性があるため、上記掃引電圧印加用の電極と圧電振動子表面との距離がパッドの厚みのために遠くなったためだけでなく研磨圧、使用時間に応じて変化し、その結果、共振回路が成立しない、共振回路が成立したとしても非常に不安定になる、あるいは、検出電圧が低くなり相対的にノイズが増加するなどの問題がある。これらのことから、周波数掃引法によって厚み検出を行いながら、圧電素子をポリッシング加工する両面ポリッシング加工技術は、未だ実質的かつ実用上の問題解決をみるには至っていないというのが実情である。
【0009】
そこで、発明者は、上定盤に貼り付けたポリッシングパッドに、電極の下部の位置で穴を開け、研磨加工のために供給されるスラリーを研磨部に存在させるだけでなく、この穴(圧電振動子上面を底とする穴ができる。)に溜め、溜まったスラリーを介して電極と圧電振動子の間を電気的に結合することによって、上記問題を解決しようと考えた。そして、この課題解決を推し進めるべく、最初のアイデアに基づいて試行してみたところ、単にポリッシングパッドに穴を設け、スラリーが溜まるのを自然にまかせるだけでは、スラリーをこの穴内に溜めるのが非常に不安定、結果として回路が不安定になるため、ポリッシングパッドを用いるところの両面ポリッシング加工装置、あるいは、両面ポリッシング加工方法においては、周波数掃引法による厚み検出を安定的に行うのが難しいことを発見した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特公昭63−027149号公報
【特許文献2】特許第2767052号公報
【特許文献3】特開2007−319977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、周波数掃引法によって厚み検出を行う圧電振動子の両面ポリッシング加工において、上定盤に設けた電極とワークである圧電振動子との間で安定的に電気回路が形成されるようにし、もって、非導電性のポリッシングパッドの厚み、弾性、あるいは使用時間の影響を実質的に受けることなく、安定的に回路が成立し、ノイズの影響を受けることが少なくなるようにし、圧電振動子のような薄物ワークを破損することなく加工でき、共振周波数の高周波数化への要求に対応することができる圧電振動子の両面ポリッシング加工装置、及び、ポリッシング加工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題は以下の手段により解決される。すなわち、第1番目の発明は、上定盤と下定盤との間にキャリアを載置し、キャリアの保持孔内に圧電振動子を保持し、この上下定盤間にスラリーを供給するとともに、上定盤と下定盤との間に圧力を加えながら、上定盤、下定盤、キャリアにそれぞれ回転運動をさせることによって、圧電振動子をポリッシング加工するための両面ポリッシング加工装置において、上記上定盤は、上定盤本体の下面に形成された流体貯留部、上記上定盤本体の下面に貼付され、上記流体貯留部に対応する部分に開口部を設けたポリッシングパッド、上記流体貯留部と上記ポリッシングパッドの開口部によって形成された流体ポケット、上記上定盤本体に形成され上記流体ポケット内に通電用流体を注入するための注入路、端面が流体ポケットより突出しない位置に設けられているとともに、この流体ポケット内では端面を除いて周囲が電気的に絶縁された測定電極、を備えたことを特徴とする両面ポリッシング加工装置である。
【0013】
第2番目の発明は、第1番目の発明の圧電振動子の両面ポリッシング加工装置において、上記下定盤は、表面に流体溜まりが形成されているとともにこの流体溜まりに入ったスラリーと下定盤本体との間を電気的に導通させるための導通孔を備えたポリッシングパッドが上面に貼付されたものであることを特徴とする両面ポリッシング加工装置である。
【0014】
第3番目の発明は、圧電振動子のポリッシング加工方法であって、上定盤と下定盤との間にキャリアを載置し、キャリアの保持孔内に圧電振動子を保持し、この上下定盤間にスラリーを供給するとともに、上定盤と下定盤との間に圧力を加えながら、上定盤、下定盤、キャリアにそれぞれ回転運動をさせることによって、圧電振動子をポリッシング加工するに際し、上記上定盤の上記圧電振動子が通過する位置に設けた測定電極と上記下定盤との間に交流電圧を印加・掃引することにより、圧電振動子の共振周波数をモニタリングしながらポリッシング加工をする圧電振動子のポリッシング加工方法において、上記上定盤として、 上記上定盤として、上定盤本体の下面に形成された流体貯留部、上記上定盤本体の下面に貼付され、上記流体貯留部に対応する部分に開口部を設けたポリッシングパッド、上記流体貯留部と上記ポリッシングパッドの開口部によって形成された流体ポケット、上記上定盤本体に形成され上記流体ポケット内に通電用流体を注入するための注入路、端面が流体ポケットより突出しない位置に設けられているとともに、この流体ポケット内では端面を除いて周囲が電気的に絶縁された測定電極、を備えたところの上定盤を使用し、上記下定盤として、表面に流体溜まりが形成されているとともにこの流体溜まりに入ったスラリーと下定盤本体との間を電気的に導通させるための導通孔を備えたポリッシングパッドがその上面に貼付されたところの下定盤を使用し、上記共振周波数のモニタリングは、上記注入路を通して、上記流体ポケットに、上記測定電極の上記端面を浸す水位にまで、通電用流体を注入した状態で行われることを特徴とする圧電振動子のポリッシング加工方法である。
【0015】
第4番目の発明は、第3番目の発明の圧電振動子のポリッシング加工方法において、上記通電用流体は、加工間隙に供給されるスラリーと同じものであることを特徴とする圧電振動子のポリッシング加工方法である。
【0016】
第5番目の発明は、第3番目の発明の圧電振動子のポリッシング加工方法において、上記通電用流体は、水であることを特徴とする圧電振動子のポリッシング加工方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の両面ポリッシング加工装置においては、上定盤に、流体貯留部とポリッシングパッドの開口部から形成された流体ポケットと、この流体ポケットに通電用流体を注入するための注入路が設けられているため、通電用流体を通して電極端面と圧電振動子との間が電気的に結合される。両面ポリッシング加工装置であるのにも関わらず、非導電性のポリシングパッドを介在させて回路を形成するようなことは行われず、回路形成が通電用流体の導電性によって直接電気的な結合によって行われるので、回路を安定させることができる。
【0018】
測定電極は電極端面が流体ポケットより突出しない位置に設けられているとともに、流体ポケットには、通電用流体が強制的に注入されるので、測定電極が圧電振動子に接触することがなく、圧電振動子を破損させずに加工することができ、且つ、流体ポケット内、就中測定電極と圧電振動子の間に、通電流体を安定して存在させることができるため、電気的結合が安定化され、共振周波数の検出を安定して行うことができるという効果を奏する。
【0019】
さらに、下定盤には、表面に流体溜まりが形成されるとともにこの流体溜まりに入ったスラリーと下定盤本体との間を電気的に導通させるための導通孔を備えたポリッシングパッドが使用されるので、測定電極、流体ポケット内の通電用流体、圧電素子、流体溜まり、及びパッド導通孔を介して下定盤を通る安定した検出回路を形成することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の第1実施例であって、圧電振動子の両面ポリッシング加工装置の概要を模式的に示す縦断面図である。
【図2】図2は、図1における点線囲み部分を拡大した拡大縦断面図である。
【図3】図3は、本発明の第3実施例の要部の拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の圧電振動子の両面ポリッシング加工装置を実施するための形態を、実施例および図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0022】
図1は、本発明の第1実施例であって、圧電振動子の両面ポリッシング加工装置の概要を模式的に示すための縦断面図である。図2は、図1における点線囲み部分を拡大した拡大縦断面図である。この例は、通電用流体とスラリーとを区別し、検出回路は、上定盤の測定電極、流体ポケット内の通電用流体、圧電振動子、ポリッシングパッドの流体溜まりのスラリーを通って下定盤へと抜ける電気回路を形成するようにしたものである。
【0023】
両面ポリッシング装置1は次のような構成を備えている。上定盤11、下定盤12、サンギア13及びインターナルギア14は、機台10上に同一の軸線の周りに回転可能に支持されている。これらの上定盤11、下定盤12、サンギア13及びインターナルギア14には、それぞれ、第1駆動ギア11d、第2駆動ギア12d、第3駆動ギア13d、及び、第4駆動ギア14dが回転動力を伝達する上では一体に結合されており、これらのギアには、それぞれにかみ合うギア(不図示)を介して、図示しない単一の駆動源あるいはそれぞれ独立の駆動源から回転駆動力が伝達される。
【0024】
上定盤11の下側平面と下定盤12の上側平面には、ポリッシングパッド17、18が貼り付けられ、上定盤11と下定盤12とが平面で向かい合うように配置される。この向かい合う面の間には、キャリア15が配置され、このキャリア15は上記サンギア13の有する外歯及び、上記インターナルギア14の内歯と噛合する外歯を備えており、平板状の被加工物(この場合、圧電振動子16)の厚さよりも薄く作られている。キャリア15には複数(場合により、単一)のワーク保持孔が設けられており、これらのワーク保持孔内には、被加工物(圧電振動子16)が嵌装される。
【0025】
両面ポリッシング装置1の上部に設けられている上部アーム(不図示)からは吊り下げ棒22が垂下しており、この吊り下げ棒22の下側には、ベアリング23を介して回転円板21が回転自在に支持されている。回転円板21の上面には同心的に2つの環状の樋24、25が載置されており、樋24にはポリッシング用のスラリー、他の樋25には通電用流体(スラリーまたは水)が各流体の供給用ノズル241、251から供給され貯留される。
【0026】
回転円板21から下方に向けて係合腕27が延びており、上定盤11に係合している。このため、上定盤11が回転すると係合腕27を介して回転円板21が連れ周り回転するようになっている。
【0027】
吊り下げ棒22の下端には、ロータリーコネクター26の一方の側(出力側)が固定されており、他の側(入力側)が自由に回転できるようになっている。これにより回転系(上定盤11)から、固定系(吊り下げ棒22等)に電気信号を伝達することができる。配線は固定系側で共振周波数検出装置5に接続される。
【0028】
図2に示すように、上定盤11の下面には流体貯留部34が形成され、さらに上定盤11の下面にはポリッシングパッド17が貼り付けられており、流体貯留部34に対応する位置で開口部171が形成されている。この連続した流体貯留部34と開口部171とで流体ポケット35が形成されている。さらに、上定盤11には、この流体ポケット35内に開口し、この中に樋25から通電用流体を供給するための注入路32が設けられている。なお、ポリッシング用スラリーは上定盤に設けた別の注入路31を通して加工部に注入される。
【0029】
流体ポケット35内には、電極端面331が流体ポケット35より突出しない位置、すなわち上定盤11本体の下面に貼付されたポリッシングパッド17の下面より突出しない位置になるように測定電極33が設けられている。測定電極33は、この流体ポケット35内では電極端面331を除いて周囲が絶縁壁332により電気的に絶縁されている。この絶縁壁332により、測定電極33と上定盤11との間の絶縁が確保される。
【0030】
また、電極端面331は流体ポケットより突出しない位置であれば、電極端面331を流体ポケット35内、すなわち流体貯留部34上部とポリッシングパッド開口部171下端部(上定盤11に貼付されたポリッシングパッド17の面の反対側面)で形成された領域内に突出させてもよい。電極端面331を流体ポケット35内に突出させることにより、電極側面を通る電気回路の形成を防ぎ、流体ポケット35内の通電用流体の水位に変動があっても、この変動の検出回路への影響は低く抑えられる。
【0031】
下定盤12の上面には、ポリッシングパッド18が貼り付けられており、このポリッシングパッド18には上側表面に流体溜まり181が形成されている。流体溜まり181の底部からは下まで貫通する導通孔182があけられている。流体溜まり181に入ったスラリーと下定盤12本体との間は導通孔182を通じて電気的に接続される。なお、導通孔182の大きさは流体溜まり181と同一のサイズ(一体となった貫通孔)である必要はなく、流体溜まり181と導通孔182の大きさを異なるサイズにしてもよい。
【0032】
ここでポリッシング作業は次のように行われる。加工部に樋24から注入路31を通してポリッシング用スラリーが注入され、上定盤11、下定盤12、サンギア13及びインターナルギア14が回転駆動される。また、樋25からは通電用流体が注入路32を通して流体ポケット35内に注入される。つまり、通電用流体の注入は流体ポケット35内に向けて直接的に行われる。
【0033】
一方、注入路31から注入されたポリッシング用スラリーは、キャリア15の下にまで回り込み、ポリッシング作用をするだけでなく一部が流体溜まり181、導通孔182に入り、ここに溜まる。流体溜まり181は上を向いて開口しているので、ポリッシング用スラリーで満たされる。
【0034】
上定盤11、下定盤12、圧電振動子16はそれぞれが固有の運動をしているが、これらの位置が一致し、実質的に一直線上に並んだとき、圧電振動子を含んで回路が成立するので、共振周波数検出装置5は検出用の掃引電圧からインピーダンスの変化が検出され、その時点の圧電振動子の共振周波数をとらえることができる。このようにして、上定盤の圧電振動子が通過する位置に設けた測定電極と下定盤との間に交流電圧を印加・掃引することにより、圧電振動子の共振周波数をモニタリングしながらポリッシング加工が行われる。
【0035】
本実施例に示すように、上定盤11本体の下面に形成された流体ポケット35内には、測定電極33の電極端面331が配置されており、注入路32を通って通電用流体が注入されるため、電極端面331を覆う位置まで流体ポケット35内を通電用液体で満たすことができる。このように、流体ポケット35内には通電用流体を直接的、強制的に注入することができるため、通電用液体を常に電極端面331と接触させることができ、測定電極33と圧電振動子16との間は通電用流体を介して安定して電気的に接続されることになる。なお、流体ポケット35の流体貯留部34と注入路32の内側を絶縁壁で覆い、これらの中の通電用流体と上定盤11との間を電気的に絶縁することもできる。
【0036】
また、下定盤12に貼り付けられたポリッシングパッド18には、流体溜まり181、導通孔182が形成されているため、ここに溜まったスラリーを介して圧電振動子16と下定盤12の間が安定して電気的に接続されることになる。
【実施例2】
【0037】
実施例1では、流体ポケット35に注入される通電用流体とスラリーとを区別して説明したが、流体溜まり181内のスラリーは通電用流体として機能していることからもわかるように、流体ポケット35に注入される通電用流体としてスラリーを使用することもできる。この場合、流体ポケット35内のスラリーと加工部のスラリーとの間が電気的に導通していると、測定電極33から圧電振動子を介さない回路が形成され、共振周波数の検出が困難になるおそれがあるため、上記2つのスラリー間は、絶縁壁を設ける、注入路に点滴バルブを介在させるなどにより、電気的に絶縁する方が好ましい。
【実施例3】
【0038】
実施例1、2では、検出回路が、上定盤11の測定電極33、流体ポケット35内の通電用流体、圧電振動子16、下側のポリッシングパッド18の流体溜まり181の通電用流体(スラリーまたは水)を通って下定盤12へと抜ける電気回路によって形成されているが、図3に示すように、上定盤に測定電極を2つ設け、検出回路を形成することができる。
【0039】
この場合、検出回路は、上定盤11の測定電極33、流体ポケット35内の通電用流体(スラリーまたは水)、圧電振動子16、下側のポリッシングパッド18の流体溜まり181のスラリーを通って下定盤12に入り、ここからさらに、流体溜まり181’のスラリー、圧電振動子16、流体ポケット35’内の通電用流体(スラリーまたは水)、上定盤11の測定電極33’を通る回路を形成する。
【0040】
通電用流体(スラリーまたは水)を介して測定電極33、33’間が結合されることにより、圧電振動子16を通らない短絡路が形成されないようにするため、流体ポケット35、35’の流体貯留部34、34’についても、これらに通電用流体(スラリーまたは水)を注入する注入路32、32’についても相互に絶縁してもよい。
【0041】
上記実施例のいずれであっても、下側のポリッシングパッド18に形成する流体溜まり181、181’は、たとえば、ポリッシングパッド用のウェブを格子状にエンボス加工等により流体溜まりを形成するとともに格子点で導通孔182を打ち抜いたもの、あるいは、水玉模様状に流体溜まりを打ち抜いたもの、等検出回路が形成可能な限りどのようなパターンにしてもかまわない。
【0042】
なお、上に示した3実施例では、樋と流体ポケットの落差により、通電用流体を流体ポケットへ強制的に注入しているが、この注入は、落差によらないでポンプによって強制注入するようにすることも可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 両面ポリッシング装置
10 機台
11 上定盤
11d 第1駆動ギア
12 下定盤
12d 第2駆動ギア
13 サンギア
13d 第3駆動ギア
14 インターナルギア
14d 第4駆動ギア
15 キャリア
16 圧電振動子
17 ポリッシングパッド
171 開口部
18 ポリッシングパッド
182 導通孔
21 回転円板
22 棒
23 ベアリング
24、25 樋
26 ロータリーコネクター
27 係合腕
31、32 注入路
33 測定電極
331 電極端面
332 絶縁壁
34、34’ 流体貯留部
35、35’ 流体ポケット
5 共振周波数検出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上定盤と下定盤との間にキャリアを載置し、キャリアの保持孔内に圧電振動子を保持し、この上下定盤間にスラリーを供給するとともに、上定盤と下定盤との間に圧力を加えながら、上定盤、下定盤、キャリアにそれぞれ回転運動をさせることによって、圧電振動子をポリッシング加工するための両面ポリッシング加工装置において、
上記上定盤は、
上定盤本体の下面に形成された流体貯留部、
上記上定盤本体の下面に貼付され、上記流体貯留部に対応する部分に開口部を設けたポリッシングパッド、
上記流体貯留部と上記ポリッシングパッドの開口部によって形成された流体ポケット、
上記上定盤本体に形成され上記流体ポケット内に通電用流体を注入するための注入路、
端面が流体ポケットより突出しない位置に設けられているとともに、この流体ポケット内では端面を除いて周囲が電気的に絶縁された測定電極、
を備えたこと
を特徴とする圧電振動子の両面ポリッシング加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載された圧電振動子の両面ポリッシング加工装置において、
上記下定盤は、表面に流体溜まりが形成されているとともにこの流体溜まりに入ったスラリーと下定盤本体との間を電気的に導通させるための導通孔を備えたポリッシングパッドが上面に貼付されたものであること
を特徴とする両面ポリッシング加工装置。
【請求項3】
圧電振動子の両面ポリッシング加工方法であって、
上定盤と下定盤との間にキャリアを載置し、キャリアの保持孔内に圧電振動子を保持し、この上下定盤間にスラリーを供給するとともに、上定盤と下定盤との間に圧力を加えながら、上定盤、下定盤、キャリアにそれぞれ回転運動をさせることによって、圧電振動子をポリッシング加工するに際し、
上記上定盤の上記圧電振動子が通過する位置に設けた測定電極と上記下定盤との間に交流電圧を印加・掃引することにより、圧電振動子の共振周波数をモニタリングしながらポリッシング加工をする圧電振動子の両面ポリッシング加工方法において、
上記上定盤として、
上定盤本体の下面に形成された流体貯留部、
上記上定盤本体の下面に貼付され、上記流体貯留部に対応する部分に開口部を設けたポリッシングパッド、
上記流体貯留部と上記ポリッシングパッドの開口部によって形成された流体ポケット、
上記上定盤本体に形成され上記流体ポケット内に通電用流体を注入するための注入路、
端面が流体ポケットより突出しない位置に設けられているとともに、この流体ポケット内では端面を除いて周囲が電気的に絶縁された測定電極、
を備えたところの上定盤を使用し、
上記下定盤として、
表面に流体溜まりが形成されているとともにこの流体溜まりに入ったスラリーと下定盤本体との間を電気的に導通させるための導通孔を備えたポリッシングパッドがその上面に貼付されたところの下定盤を使用し、
上記共振周波数のモニタリングは、上記注入路を通して、上記流体ポケットに、上記測定電極の上記端面を浸す水位にまで、通電用流体を注入した状態で行われること
を特徴とする圧電振動子の両面ポリッシング加工方法。
【請求項4】
請求項3に記載された圧電振動子の両面ポリッシング加工方法において、
上記通電用流体は、加工間隙に供給されるスラリーと同じものであること
を特徴とする圧電振動子の両面ポリッシング加工方法。
【請求項5】
請求項3に記載された圧電振動子の両面ポリッシング加工方法において、
上記通電用流体は、水であること
を特徴とする圧電振動子の両面ポリッシング加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−725(P2012−725A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138372(P2010−138372)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000107745)スピードファム株式会社 (62)
【Fターム(参考)】