説明

圧電振動子の駆動装置および超音波美顔装置

【課題】本発明は、所望の駆動周波数に容易に設定可能な圧電振動子の駆動装置及び超音波髪処理装置を提供する。
【解決手段】本発明の圧電振動子の駆動装置は、制御電圧の電圧値に応じて発振周波数が制御されるVCO114と、VCO114から出力された出力信号を固定の第1分周比で分周し分周信号として出力する固定分周器115と、第1基準信号を生成する基準発振部111Aと、分周信号の位相と第1基準信号の位相との差に応じた誤差信号を出力する位相比較器112と、この誤差信号を濾波し制御電圧として出力するLPF113とを備え、基準発振部111Aが、第2基準信号を生成する発振器1111と、第2基準信号を可変の第2分周比で分周し第1基準信号として出力する可変分周器1112と、第2分周比の設定を受け付けてこの第2分周比で発振器1111の第2基準信号を分周するように可変分周器1112を制御する分周制御部1113とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PLL回路によって圧電振動子を駆動するための圧電振動子の駆動装置およびこの圧電振動子の駆動装置を用いた超音波美顔装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、超音波は、その性質から、剤浸透促進、美容、霧化、乳化、分散、攪拌、洗浄、接合、加工等の様々な分野に応用されている。この超音波は、駆動装置からの電気振動を超音波の機械振動に変換する、例えばPZTや水晶等の圧電材料を電極で挟んだ構造の圧電振動子によって発生される。この圧電振動子の駆動方法には、圧電振動子の周波数を発振回路に帰還することによって目標の駆動周波数で圧電振動子が振動するように発振回路を調整する自励発振方式と、圧電振動子が目標の駆動周波数で振動するように発振回路を予め設定しておく他励発振方式とがある。この他励発振方式の発振回路の一例として、PLL(phase locked loop)回路が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1の38段落には、「PLL回路は、例えば、プログラマブル分周器、位相比較器、VCO(Voltage Controlled Oscillator)、低域フィルタ等を備えた公知の構成であり、位相比較器から出力される電圧が低域フィルタにより直流信号に変換されて、VCOに印加されることにより発振周波数が可変されるようにしたものである」、と記載されている。
【特許文献1】特開2002−345915号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、実際に圧電振動子を所望の駆動周波数で駆動させようとした場合、PLL回路の発振周波数が前記所望の駆動周波数に応じて設計されたとしても、圧電振動子やPLL回路を構成する素子の製品バラツキ、あるいは、経年変化等によって、圧電振動子が必ずしも前記所望の駆動周波数で駆動されず、PLL回路の発振周波数の調整が必要とされる。
【0005】
一方、前記特許文献1には、上述の記載があるだけであり、PLL回路の発振周波数は、プログラマブル分周器の分周比を調整することによって調整可能であることが示唆されているだけであり、その他は、記載も示唆もされていない。
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、所望の駆動周波数に容易に設定することができる圧電振動子の駆動装置を提供することを目的とする。そして、本発明は、このような圧電振動子の駆動装置を用いた超音波髪処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。即ち、本発明に係る一態様では、PLL回路によって圧電振動子を駆動するための圧電振動子の駆動装置において、前記PLL回路は、制御電圧の電圧値に応じて発振周波数が制御される電圧制御発振器と、前記電圧制御発振器から出力された出力信号を固定の第1分周比で分周し、分周信号として出力する第1分周器と、第1基準信号を生成する基準発振部と、前記第1分周器から出力された前記分周信号の位相と前記基準発振部から出力された前記第1基準信号の位相との差に応じた誤差信号を出力する位相比較器と、前記位相比較器から出力された誤差信号を濾波し、前記制御電圧として出力するローパスフィルタとを備え、前記基準発振部は、第2基準信号を生成する発振器と、前記発振器の第2基準信号を可変の第2分周比で分周し、前記第1基準信号として出力する第2分周器と、前記第2分周比の設定を受け付け、該受け付けた第2分周比で前記発振器の第2基準信号を分周するように、前記第2分周器を制御する分周制御部とを備えることを特徴とする。
【0008】
このような構成の圧電振動子の駆動装置では、PLL回路における電圧制御発振器の出力信号を位相比較器へ帰還する第1分周器は、第1分周比で分周比が固定の回路構成とされ、PLL回路の第1基準信号を生成する基準発振部における第2分周器は、分周比が可変の回路構成とされる。このため、第1および第2分周器が分周比の可変な回路構成とされる場合に較べて、圧電振動子の駆動周波数を所望の周波数に設定する際に、第2分周比のみを調整すればよいので、所望の駆動周波数に容易に設定することができる。
【0009】
そして、上述の圧電振動子の駆動装置において、前記基準発振部は、外部の設定装置から前記第2分周比の設定を受け付けて記憶し、該記憶した第2分周比を前記分周制御部へ出力する記憶部をさらに備えることを特徴とする。
【0010】
このような構成の圧電振動子の駆動装置は、記憶部に記憶されている第2分周比を外部の設定装置から書き換えることによって、所望の駆動周波数で駆動するように第2分周比を設定することができ、再設定も容易に行うこともできる。
【0011】
また、これら上述の圧電振動子の駆動装置において、前記圧電振動子をさらに備えることを特徴とする。
【0012】
このような構成の圧電振動子の駆動装置は、圧電振動子を含んだ圧電振動子の駆動装置が提供され、圧電振動子の特性に応じた第2分周比が選択可能となる。
【0013】
そして、本発明に係る他の一態様では、超音波を発生させる圧電振動子と、前記圧電振動子を駆動するための圧電振動子の駆動装置と、一方面に前記圧電振動子が接合され前記圧電振動子からの前記超音波を他方面の放射面に伝達する伝達部材とを備え、前記放射面から放射される超音波を肌に作用させる超音波美顔装置において、前記圧電振動子の駆動装置は、これら上述の記載の圧電振動子の駆動装置であることを特徴とする。
【0014】
このような構成の超音波美顔装置では、圧電振動子の駆動周波数を所望の周波数に設定する際に、第2分周比のみを調整すればよいので、所望の駆動周波数に容易に設定することができる。このため、超音波美顔装置は、所定の周波数の超音波を放射面から放射するので、効果的に肌に超音波を作用させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる圧電振動子の駆動装置は、圧電振動子の駆動周波数を所望の周波数に容易に設定することができる。そして、本発明にかかる超音波美顔装置は、圧電振動子の駆動周波数を所望の周波数に容易に設定することができ、所定の周波数の超音波を放射面から放射するので、効果的に肌に超音波を作用させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明にかかる実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
【0017】
図1は、実施形態における超音波美顔装置を示す図である。図1(A)は、斜視図であり、図1(B)は、正面図であり、図1(C)は、側面図であり、そして、図1(D)は、図1(B)のAAにおける断面図である。図2は、実施形態における超音波美顔装置の構成を示すブロック図である。図3は、図2に示す超音波美顔装置における超音波発振部の構成を示すブロック図である。図4は、図1に示すヘッドブロックのインピーダンス特性を示す図である。図4の横軸は、周波数であり、その縦軸は、対数目盛でΩ単位で表すインピーダンスである。
【0018】
図1において、超音波美顔装置Sは、超音波を例えば顔等の肌に作用させることによって肌の状態を改善するための装置である。超音波美顔装置Sは、その外殻を成すハウジング1を備えている。ハウジング1は、片手で把持可能な形状に形成されており、例えば、図1に示すように、長手方向に垂直な断面が略楕円形状である棒形状に形成されている。ハウジング1の略中央部分には、超音波美顔装置Sのオンオフを切り換える操作スイッチ2が突没自在に設けられている。ハウジング1の先端部には、ヘッドブロックHBが設けられている。ハウジング1の内部には、超音波制御ブロックCBが収納されている。
【0019】
ヘッドブロックHBは、前記肌に超音波を作用させるための部材であり、例えば、図2に示すように、圧電振動子21と、ヘッド22とを備えている。圧電振動子21は、超音波制御ブロックCBからの電気振動を超音波の機械振動に変換するものであり、例えば、PZTや水晶等の圧電材料を電極で挟んだ構造の超音波振動子である。ヘッド22は、一方面に圧電振動子21が接合され圧電振動子21からの超音波の機械振動を他方面の放射面に伝達するものであり、伝達部材の一例である。ヘッド22は、例えば、短高有底の円筒形状をした例えばアルミニウムや軽合金等の導電性の金属部材であり、その内底面に接着剤によって圧電振動子21が導電性の高い状態で接着されて固定されており、その外底面22aが前記放射面となっている。
【0020】
超音波制御ブロックCBは、PLL(phase locked loop、位相同期)回路によって圧電振動子21を駆動するための圧電振動子の駆動装置の一例であって、圧電振動子21を駆動するための電気振動を生成する回路である。そして、超音波制御ブロックCBは、操作スイッチ2の突没動作に応じてこの電気振動を生成し、この生成した電気振動を圧電振動子21へ出力する。超音波制御ブロックCBは、例えば、図2に示すように、例えば正弦波等の所定の周波数の交流信号を発生する超音波発振部11Aと、超音波発振部11Aで生成された交流信号を予め設定された所定の増幅率で増幅し、前記電気振動としてヘッドブロックHBの圧電振動子21へ出力するアンプ部12と、アンプ部12および超音波発振部11Aへ電力を供給する電源部13とを備えている。
【0021】
超音波発振部11Aは、PLL回路で構成されており、例えば、図3に示すように、基準発振部111Aと、位相比較器112と、ローパスフィルタ(以下、「LPF」と略記する。)113と、電圧制御発振器(以下、「VCO」と略記する。)114と、固定分周器115とを備えて構成される。
【0022】
基準発振部111Aは、PLL回路の基準信号(第1基準信号)を生成する発振回路であり、この生成した第1基準信号を位相比較器112へ出力する。基準発振部111Aは、例えば、発振器1111と、可変分周器1112と、分周制御部1113とを備えて構成されている。発振器1111は、所定の周波数の安定した信号を発振して基準信号(第2基準信号)を生成する回路であり、この第2基準信号を可変分周器1112へ出力する。発振器1111は、例えば、水晶振動子とゲインが1より大きいインバータとを備え、インバータの出力を、水晶振動子を介して入力に戻すことによって、水晶振動子の固有周波数で安定的に発振する水晶発振器等である。可変分周器1112は、発振器1111から出力された第2基準信号を分周比(第2分周比)mで分周し、前記第1基準信号として出力する回路であり、そして、この第2分周比mが変更可能に構成されている。可変分周器1112は、第1分周器の一例である。第1基準信号の周波数は、(第2基準信号の周波数)/mとなる。可変分周器1112は、この第1基準信号を基準発振部111Aの出力信号として位相比較器112へ出力する。分周制御部1113は、第2分周比mの設定を受け付け、この受け付けた第2分周比mで発振器1111の第2基準信号を分周するように、可変分周器1112を制御する回路である。
【0023】
このような基準発振部111Aは、例えば、個別部品によって構成され、ディップスイッチ等によって分周制御部1113の第2分周比mが設定される。あるいは、基準発振部111Aは、マイクロコンピュータによって構成され、可変分周器1112および分周制御部1113が機能的にマイクロコンピュータ上に実現され、可変分周器1112および分周制御部1113を機能的にマイクロコンピュータ上に実現するプログラムにおける第2分周比mの変数によって分周制御部1113の第2分周比mが設定される。
【0024】
位相比較器112は、基準発振部111Aから出力された第1基準信号の位相と、固定分周器115から出力された第1分周信号の位相とを比較し、位相差に応じた誤差信号を出力する回路であり、この位相差に応じた誤差信号をローパスフィルタ113へ出力する。
【0025】
ローパスフィルタ113は、予め設定された所定の遮断周波数よりも高い周波数の信号を遮断すると共にこの遮断周波数以下の信号を通過させるフィルタ回路であり、位相比較器112から出力された誤差信号を濾波し、位相比較器112の誤差信号に混入した高周波成分を除去し、直流成分の制御電圧としてVCO114へ出力する回路である。ローパスフィルタ113の遮断周波数は、超音波発振部11Aの仕様等に応じて適宜に設定される。
【0026】
VCO114は、制御電圧の電圧値に応じて発振周波数が制御される発振器であり、VCO114の出力信号は、超音波発振部11Aの出力信号(前記電気振動)となると共に、固定分周器115へ出力される。
【0027】
固定分周器115は、VCO113から出力された出力信号を分周比(第1分周比)nで分周し、分周信号として出力する回路であり、そして、この第1分周比nが固定されている。固定分周器115は、第1分周器の一例である。位相比較器112が基準発振部111Aからの第1基準信号の位相とこの固定分周器115からの分周信号の位相とを比較可能とすべく、第1分周比nは、VCO113の出力信号における周波数が基準発振部111Aの第1基準信号における周波数と同じオーダーの周波数、例えば略同じ周波数となるように、設定される。
【0028】
より具体的には、例えば、ヘッド22に接合された状態の圧電振動子21が1.05MHzで駆動するように設定されている場合であって、超音波発振部11Aが第1基準信号として4.1017kHzの信号を出力している場合では、第1分周比nは、1.05MHz/4.1017kHz=256に設定される。そして、第1分周比nが256で固定されている固定分周器115が作成される。
【0029】
このような構成の超音波美顔装置Sでは、操作スイッチ2が操作され、オンされると、超音波制御ブロックCBが動作し、超音波制御ブロックCBから電気振動がヘッドブロックHBの圧電振動子21へ供給される。圧電振動子21は、この電気振動を機械振動に変換する。これによって、圧電振動子21に接合されているヘッド22が機械振動され、放射面22aから超音波が放射される。ここで、ヘッド22の放射面22aに肌が直接的にまたはトリートメント液等の剤を介して間接的に接触されていると、肌に超音波が作用し、肌の状態が改善される。
【0030】
超音波制御ブロックCBでは、ヘッドブロックHBの圧電振動子21へ電気振動を供給するに当たって、まず、VCO114の出力信号は、固定分周器115によって第1分周比nで分周されて所定の周波数に変換され、位相比較器112へ出力される。位相比較器112では、固定分周器115からの分周信号と基準発振部11Aからの第1基準信号との位相が比較され、その位相差に応じた誤差信号がLPF113へ出力される。第1基準信号は、発振器111から出力された第2基準信号が、分周制御部1113の制御によって可変分周器1112において第2分周比mで分周されることで生成される。LPF113では、誤差信号に混入された高周波成分が除去され、直流成分の制御電圧がVCO114へ出力される。そして、分周信号の周波数と第1基準信号の周波数とが一致するように、VCO114が制御電圧に応じて発振周波数fを変更する。このように動作することによって超音波発振部11Aは、第1基準信号の周波数のn倍の周波数fで安定的に発振し、ヘッドブロックHBの圧電振動子21へ電気振動を供給する。
【0031】
ここで、圧電振動子21の駆動周波数fdは、次のように決定される。ヘッド22に接合された状態の圧電振動子21のインピーダンス特性は、超音波の機械振動を伝達する対象物、例えば肌がヘッド22の放射面22aに接触していない無負荷状態では、例えば、図4に実線CNLで示すように、周波数fの増大に従って、インピーダンスZが徐々に小さくなって周波数frで極小Zr1となり、その後、略比例するように大きくなって周波数faで極大Za1となり、そして再び徐々に小さくなるプロファイルである。そして、超音波の機械振動を伝達する対象物が放射面22aに接触している負荷状態では、インピーダンス特性は、図4に破線CLで示すように、無負荷状態のインピーダンス特性CNLと略同様なプロファイルであるが、負荷状態のインピーダンス特性CLにおける極小のインピーダンスZr2が無負荷状態のインピーダンス特性CNLにおける極小のインピーダンスZr1よりも大きく、そして、負荷状態のインピーダンス特性CLにおける極大のインピーダンスZa2が無負荷状態のインピーダンス特性CNLにおける極大のインピーダンスZa1よりも小さくなっている。
【0032】
周波数frが共振周波数であり、周波数faが反共振周波数であり、圧電振動子21の駆動周波数fdは、共振周波数frから反共振周波数faまで(発振範囲RR)の間に決定される。
【0033】
そして、無負荷状態の供給電力を低減するために、無負荷時においてインピーダンスZが高くなるように圧電振動子21の駆動周波数fdが決定される。すなわち、圧電振動子21の駆動周波数fdは、共振周波数frから反共振周波数faまでの間であって、反共振周波数fa寄りに決定される。
【0034】
また、無負荷状態であるか負荷状態であるかを圧電振動子21のインピーダンスZによって検出するように超音波制御ブロックCBが構成されている場合には、より確実に検出可能となるように、無負荷状態のインピーダンスZと負荷状態のインピーダンスZとの差が大きくなるように圧電振動子21の駆動周波数fdが決定される。
【0035】
したがって、圧電振動子21の駆動周波数fdは、無負荷状態のインピーダンス特性CNLと負荷状態のインピーダンス特性CLとが交わる交点の周波数fmから反共振周波数faまでのうち、より反共振周波数faに寄った周波数に決定される。例えば、図4に示すように圧電振動子21の駆動周波数fdが決定され、インピーダンスZは、無負荷状態ではインピーダンスZdとなり、負荷状態ではインピーダンスZd’(<Zd)となる。
【0036】
このように圧電振動子21の駆動周波数fdが決定されると、無負荷状態における消費電力が低減され、また無負荷状態であるか負荷状態であるかを別途にセンサを設けることなく検出することができるので、装置が小型化される。
【0037】
また、基準発振部111Aが所定の周波数の第1基準信号を出力するように、発振器1111の発振周波数に基づいて可変分周器1112の第2分周比mが決定され、分周制御部1113に第2分周比mが設定される。例えば、上記例で第1基準信号の周波数が4.1017kHzである場合であって、発振器1111から出力される第2基準信号の周波数が80MHzである場合には、第2分周比mは、80MHz/4.1017=19504に決定され、分周制御部1113に設定される。
【0038】
ここで、実際の製品では、圧電振動子21やPLL回路を構成する素子の製品バラツキあるいは、経年変化等によって、圧電振動子21が必ずしもこの決定した駆動周波数fdで駆動されず、PLL回路における発振周波数の調整が必要とされる。このような場合、本実施形態に係る超音波美顔装置Sの基準発振部111Aでは、分周制御部1113に設定されている第2分周比mを変更することによって、可変分周器1112の第2分周比mを容易に変更することができ、圧電振動子21がこの決定した駆動周波数fdで駆動可能となる。その分解能は、例えば、上記例の場合では、第2分周比m=19504の場合では80MHz/19504×256=1.050041MHzであり、一方、第2分周比m=19505の場合では80MHz/19504×256=1.049987MHzであることから、53Hzとなり、53Hz刻みで圧電振動子21の駆動周波数fdが調整可能である。
【0039】
そして、本実施形態に係る超音波美顔装置Sの超音波発振部11Aでは、VCO114の出力信号を位相比較器112へ帰還する固定分周器115は、分周比が第1分周比nで固定であり、発振器1111の第2基準信号を分周する可変分周器1112のみ分周比が可変である。このため、VCO114の出力信号を位相比較器112へ帰還する分周器、および、発振器1111の第2基準信号を分周する分周器の両者が分周比を変更可能に構成されている場合に較べて、本実施形態に係る超音波美顔装置Sおよびその超音波発振部11Aは、圧電振動子21の駆動周波数fdの調整を第2分周比mという1個のパラメータで調整することができるので、容易に、圧電振動子21の駆動周波数fdを所定の周波数に調整することができる。そして、このため、回路構成の複雑化が回避されて回路構成が簡素化され、また、素子バラツキが低減されるので、圧電振動子21の駆動周波数fdの精度がより向上する。さらに、上述のように圧電振動子21の駆動周波数fdが決定される超音波美顔装置Sでは、精度のよい制御が要求されるため、超音波発振部11Aは、好適である。
【0040】
図5は、図2に示す超音波美顔装置における超音波発振部の他の構成を示すブロック図である。
【0041】
なお、上述の実施形態において、超音波美顔装置Sは、超音波発振部11Aに代えて、図5に示す超音波発振部11Bを備えて構成されてもよい。この図5に示す超音波発振部11Bは、図3に示す超音波発振部11Aの基準発振部111Aに代えて、発振器1111、可変分周器1112および分周制御部1113にさらに加えて、外部の設定装置Tから第2分周比mの設定を受け付けて記憶し、この記憶した第2分周比mを分周制御部1113へ出力する記憶部1114を備える基準発振部111Bを備えて構成される。
【0042】
記憶部1114は、例えばEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の書き換え可能な不揮発性の記憶素子を備えて構成される。
【0043】
このような構成の超音波美顔装置Sでは、例えば、製造段階や出荷段階等の市販前の段階において、市販のインピーダンス特性測定装置によって超音波美顔装置Sにおける無負荷状態の圧電振動子21のインピーダンス特性(振動子特性)を測定し、この測定したインピーダンス特性に基づいて圧電振動子21の駆動周波数fdを決定し、この決定した駆動周波数fdになるように第2分周比mを決定し、この決定した第2分周比mを設定装置Tによって記憶部1114に格納する。設定装置Tは、例えば、記憶部1114がEEPROMを備えて構成されている場合には、PROMライタを備えて構成される。
【0044】
圧電振動子21の駆動周波数fdは、上述のように決定され、例えば、無負荷状態のインピーダンス特性CNLと負荷状態のインピーダンス特性CLとが交わる交点の周波数fmから反共振周波数faまでのうち、この交点の周波数fmから反共振周波数faへシフト量△fだけシフトした周波数に決定される。すなわち、fd=fm+△f、0<△f<fa−fmである。シフト量△fは、無負荷状態における省電力化の程度や無負荷状態であるか否かの検出の容易性等を考慮して、超音波発振部11Bの仕様等に応じて適宜に設定される。
【0045】
この交点の周波数fmは、無負荷状態のインピーダンス特性CNLと負荷状態のインピーダンス特性CLとをインピーダンス特性測定装置で測定することによって求めることができるが、無負荷状態における共振周波数frおよび反共振周波数faと交点の周波数fmとの関係をヘッド22に接合された状態の複数の圧電振動子21について測定して統計的な処理を施すことによって求め、この関係を用いることによって、無負荷状態の圧電振動子21のインピーダンス特性から共振周波数frおよび反共振周波数faを求めて交点の周波数fmを求めてもよい。これによってより短時間で交点の周波数fmが求められる。
【0046】
記憶部1114に第2分周比mが記憶されると、分周制御部1113は、この記憶部1114に記憶されている第2分周比mを用いて、この第2分周比mで発振器1111の第2基準信号を分周するように、可変分周器1112を制御する。
【0047】
このように個々の超音波美顔装置Sにおける圧電振動子21の特性に合わせて圧電振動子21の駆動周波数fdを容易に設定することができる。超音波美顔装置Sは、所定の周波数の超音波を放射面22aから放射するので、効果的に肌に超音波を作用させることができる。
【0048】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更及び/又は改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。従って、当業者が実施する変更形態又は改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態又は当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施形態における超音波美顔装置を示す図である。
【図2】実施形態における超音波美顔装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図2に示す超音波美顔装置における超音波発振部の構成を示すブロック図である。
【図4】図1に示すヘッドブロックのインピーダンス特性を示す図である。
【図5】図2に示す超音波美顔装置における超音波発振部の他の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0050】
S 超音波美顔装置
T 設定装置
HB ヘッドブロック
CB 超音波制御ブロック
11A、11B 超音波発振部
21 圧電振動子
22 ヘッド
111A、111B 基準発振部
112 位相比較器
113 ローパスフィルタ
114 電圧制御発振器
115 固定分周器
1111 発振器
1112 可変分周器
1113 分周制御部
1114 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PLL回路によって圧電振動子を駆動するための圧電振動子の駆動装置において、
前記PLL回路は、
制御電圧の電圧値に応じて発振周波数が制御される電圧制御発振器と、
前記電圧制御発振器から出力された出力信号を固定の第1分周比で分周し、分周信号として出力する第1分周器と、
第1基準信号を生成する基準発振部と、
前記第1分周器から出力された前記分周信号の位相と前記基準発振部から出力された前記第1基準信号の位相との差に応じた誤差信号を出力する位相比較器と、
前記位相比較器から出力された誤差信号を濾波し、前記制御電圧として出力するローパスフィルタとを備え、
前記基準発振部は、
第2基準信号を生成する発振器と、
前記発振器の第2基準信号を可変の第2分周比で分周し、前記第1基準信号として出力する第2分周器と、
前記第2分周比の設定を受け付け、該受け付けた第2分周比で前記発振器の第2基準信号を分周するように、前記第2分周器を制御する分周制御部とを備えること
を特徴とする圧電振動子の駆動装置。
【請求項2】
前記基準発振部は、外部の設定装置から前記第2分周比の設定を受け付けて記憶し、該記憶した第2分周比を前記分周制御部へ出力する記憶部をさらに備えること
を特徴とする請求項1に記載の圧電振動子の駆動装置。
【請求項3】
前記圧電振動子をさらに備えること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の圧電振動子の駆動装置。
【請求項4】
超音波を発生させる圧電振動子と、前記圧電振動子を駆動するための圧電振動子の駆動装置と、一方面に前記圧電振動子が接合され前記圧電振動子からの前記超音波を他方面の放射面に伝達する伝達部材とを備え、前記放射面から放射される超音波を肌に作用させる超音波美顔装置において、
前記圧電振動子の駆動装置は、請求項1または請求項2に記載の圧電振動子の駆動装置であること
を特徴とする超音波美顔装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−155115(P2008−155115A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−345992(P2006−345992)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】