圧電発振器及びこの圧電発振器の周囲温度測定方法
【課題】槽外感温センサを用いることなく、圧電発振器の周囲の温度の変化を測定することができる圧電発振器及びこの圧電発振器の周囲温度測定方法を提供する。
【解決手段】圧電振動子1と発振回路18aとを含む発振部18と、圧電振動子1を温めるヒータ部2と、ヒータ部2の温度制御をする温度制御部5とを備えており、感温センサ3で圧電振動子1の温度を測定し、温度制御部5により、測定した圧電振動子1の温度に基づいて、ヒータ部2の発熱量を制御するとともに、圧電発振器10の周囲の温度が変化したときには、ヒータ部2の消費電力の変化(好ましくは、ヒータ部2の電圧の変化またはヒータ部2の電流の変化)に基づいて、圧電発振器10の周囲の温度の変化を測定する。
【解決手段】圧電振動子1と発振回路18aとを含む発振部18と、圧電振動子1を温めるヒータ部2と、ヒータ部2の温度制御をする温度制御部5とを備えており、感温センサ3で圧電振動子1の温度を測定し、温度制御部5により、測定した圧電振動子1の温度に基づいて、ヒータ部2の発熱量を制御するとともに、圧電発振器10の周囲の温度が変化したときには、ヒータ部2の消費電力の変化(好ましくは、ヒータ部2の電圧の変化またはヒータ部2の電流の変化)に基づいて、圧電発振器10の周囲の温度の変化を測定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度補償型の圧電発振器及びこの圧電発振器の周囲温度測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、温度変化が激しい環境で圧電発振器を使用する場合、温度特性を補償して安定した周波数で圧電発振器を発振させることは大変困難である。
【0003】
そこで、圧電発振器の一部分を構成する圧電振動子を恒温槽内に配置することによって、圧電発振器が安定した周波数で発振するよう構成されたものがある。このような圧電発振器の従来例として、後述の特許文献1である特許第3272633号公報に開示されている恒温槽型圧電発振器がある。
【0004】
図11は従来の圧電発振器の一例を示すブロック図である。
【0005】
同図に示す圧電発振器は、圧電振動子101と発熱体102と槽内感温センサ103とが恒温槽104内に配置された、いわゆる恒温槽型圧電発振器と呼ばれるものである。
【0006】
この圧電発振器は、圧電振動子101の温度を槽内感温センサ103で測定するよう構成されている。槽内感温センサ103で測定した温度を示す信号は、発熱体102と槽内感温センサ103との間に接続された温度制御部105により発熱体102を制御する電流信号に置き換えられ、当該電流信号により発熱体102の駆動電流を調整する。これにより、発熱体102の発熱量が変化し、圧電振動子101の温度が予め設定された値に調整され、圧電発振器が安定した周波数で発振する。
【0007】
また、従来の圧電発振器の他の例として図12に示す圧電発振器がある。
【0008】
図12は従来の圧電発振器の他の例を示すブロック図である。
【0009】
同図に示す圧電発振器は、圧電振動子201が、図11に示す圧電発振器と同様に、発熱体202と槽内感温センサ203とともに恒温槽204内に配置されており、圧電振動子201の温度は、槽内感温センサ203で測定するよう構成されており、いわゆる恒温槽型圧電発振器と呼ばれるものである。
【0010】
さらに、圧電発振器201は、恒温槽204外部に、発熱体202の駆動電流を制御する温度制御部205と、恒温槽204外部の温度を測定する槽外感温センサ206と、槽外感温センサ206で測定した温度に従って圧電振動子201に印加される電圧を制御する制御電圧発生回路207とを備えている。
【0011】
また、温度制御部205において、槽外感温センサ206で測定した温度と槽内感温センサ203で測定した温度との差を示す信号が発熱体202を制御する電流信号に置き換えられる。そして、この電流信号により発熱体202の駆動電流を調整する。これにより、発熱体202の発熱量が変化し、圧電発振器の温度が予め設定された値に調整され、圧電発振器が安定した周波数で発振する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第3272633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、図11に示す圧電発振器では、槽内感温センサ103で圧電振動子101の温度を管理しているので、恒温槽104外部の温度変化に影響されないように、恒温槽104外部の温度に対して恒温槽104内部の温度が高い目に設定されていた。その結果、恒温槽104内部の温度を一定に保つには非常に大きな電流が必要であり、図11に示す圧電発振器には、圧電発振器自体で消費される電力を少なく抑えることが難しいといった問題があった。
【0014】
一方、図12に示す圧電発振器では、例えば熱を放出する素子(不図示)と隣接した状態で圧電発振器を使用するときに、槽外感温センサ206がこの熱を放出する素子の近くに配置されていると、前記素子が放出した熱の影響を受けて槽外感温センサ206が温度を正しく測定できなくなってしまう。その結果、図12に示す圧電発振器には、圧電振動子201に印加する電圧を制御電圧発生回路207により適切な値に制御することができなくなり、圧電発振器が安定した周波数で発振できなくなるといった問題があった。
【0015】
本発明はかかる問題点を解決すべく創案されたもので、その目的は、槽外感温センサを用いることなく、圧電発振器の周囲の温度の変化を測定することができる圧電発振器及びこの圧電発振器の周囲温度測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本発明の圧電発振器は、圧電振動子と発振回路とを含む発振部と、前記圧電振動子を温めるヒータ部と、当該ヒータ部の温度制御をする温度制御部とを備えており、前記ヒータ部の消費電力の変化(好ましくは、ヒータ部の電圧の変化またはヒータ部の電流の変化)に基づいて、当該圧電発振器の周囲の温度の変化を測定することを特徴とする。
【0017】
これにより、槽外感温センサを用いることなく、圧電発振器の周囲の温度の変化を測定することができる。
【0018】
また、前記構成において、例えば、前記圧電振動子として水晶振動子を備えており、前記ヒータ部として膜抵抗体またはチップ抵抗体を備えていることが、圧電発振器を小型化することができるため好ましい。
【0019】
また、前記構成において、前記圧電発振器の周囲の温度の変化に基づいて、前記圧電振動子の周波数を制御する周波数制御回路をさらに備えていてもよい。
【0020】
この場合には、圧電振動子の出力が圧電発振器の周囲の温度の変化に影響されないため、圧電発振器がより安定した周波数で発振する。さらに、周波数制御にバリキャップダイオードを用いた場合、電圧を入力信号として使用することができるため、ヒータ部の消費電力を端子電圧で検出することができ、回路構成をより簡略化できる。
【0021】
また、前記構成において、恒温槽をさらに備えており、当該恒温槽内部に前記圧電振動子及び前記ヒータ部を配したものであってもよい。
【0022】
この場合には、圧電振動子の温度をより一定に保つことができるので、圧電発振器がより安定した周波数で発振する。
【0023】
前記構成において、前記圧電振動子の温度を測定する感温センサをさらに備えており、前記恒温槽内部に前記感温センサを配しており、前記感温センサの測定結果に基づいて前記ヒータ部の動作を制御するものであってもよい。
【0024】
この場合には、圧電振動子の温度をより一定に保つことができるので、圧電発振器がより安定した周波数で発振する。
【0025】
本発明の圧電発振器の周囲温度測定方法は、前記圧電発振器が、圧電振動子と発振回路とを含む発振部と、前記圧電振動子を温めるヒータ部と当該ヒータ部の温度制御をする温度制御部とを備えており、前記圧電振動子の温度を前記感温センサで測定する手順と、前記感温センサの測定結果に基づいて前記ヒータ部の動作を制御する手順と、前記ヒータ部の消費電力の変化に基づいて、前記圧電発振器の周囲の温度の変化を測定する手順とを含むことを特徴とする。
【0026】
これにより、槽外感温センサを用いることなく、圧電発振器の周囲の温度の変化を測定することができる。
【0027】
また、前記構成において、前記圧電発振器が、前記圧電発振器の周囲の温度の変化に基づいて前記圧電振動子の周波数を制御する周波数制御回路をさらに備えており、前記圧電発振器の周囲の温度の変化に基づいて、前記周波数制御回路により前記圧電振動子の周波数を制御する手順をさらに含むものでもよい。
【0028】
この場合には、圧電振動子の出力が圧電発振器の周囲の温度の変化に影響されないため、圧電発振器がより安定した周波数で発振する。
【発明の効果】
【0029】
本発明は上記のように構成したので、槽外感温センサを用いることなく、圧電発振器の周囲の温度の変化を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の圧電発振器の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】ヒータ部の消費電力と周囲温度との関係を示すグラフである。
【図3】図1に示す圧電発振器の構成の一例を示す断面図である。
【図4】図1に示す圧電発振器の電気的構成例1を示す回路図である。
【図5】ヒータ部の電圧と周囲温度との関係を示すグラフである。
【図6】図4に示す圧電発振器の周波数温度特性の一例を示すグラフである。
【図7】図1に示す圧電発振器の電気的構成例2を示す回路図である。
【図8】図1に示す圧電発振器の電気的構成例3を示す回路図である。
【図9】図1に示す圧電発振器の電気的構成例4を示す回路図である。
【図10】ヒータ部の電流と周囲温度との関係を示すグラフである。
【図11】従来の圧電発振器の一例を示すブロック図である。
【図12】従来の圧電発振器の他の例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の圧電発振器及びこの圧電発振器の周囲温度測定方法の実施形態について説明する。
【0032】
まず初めに、本発明の圧電発振器の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0033】
図1は、本発明の圧電発振器の一実施形態を示すブロック図である。
【0034】
圧電発振器10は、恒温槽4を備えた、いわゆる恒温槽型圧電発振器と呼ばれるものである。図1に示す圧電発振器10では、恒温槽4の内部に、圧電振動子1とヒータ部2と感温センサ3と発振回路18aとが配置されている。なお、発振回路18aは、恒温槽4内部に配置(図1参照)されていても、恒温槽4外部に配置(不図示)されていてもよいが、圧電振動子1との温度差が少なくなるように恒温槽4内部に配置されていることがより好ましい。
【0035】
圧電振動子1としては、例えば水晶振動子が用いられる。この圧電振動子1は、発振回路18aにより印加した電圧によって振動する。感温センサ3は、圧電振動子1付近に配置されており、圧電振動子1付近の温度を測定することにより圧電振動子1の温度を測定する。ヒータ部2は、感温センサ3による温度の測定結果に応じて、熱を放出して圧電振動子1を温める。恒温槽4は、圧電振動子1をより一定の温度に保つために設けられている。
【0036】
さらに、本実施形態の圧電発振器10は、感温センサ3とヒータ部2との間に接続された温度制御部5と、恒温槽4外部に配置された周波数制御回路6とを備えている。
【0037】
温度制御部5は、感温センサ3での測定結果に基づいてヒータ部2の動作を制御する。また、周波数制御回路6は、ヒータ部2の消費電力の変化に基づき後述する周囲温度の変化を測定し、この測定結果に基づいて圧電振動子1に印加する電圧を制御して、圧電振動子1の周波数を制御する。
【0038】
なお、本実施形態においては、圧電振動子1と発振回路18aと周波数制御回路6とを発振部18とし、また、図1中に二点鎖線で概略的に示す圧電発振器10の周囲(即ち、製品本体の周囲)の温度を「周囲温度」とする。この周囲温度は、例えば、熱を放出する素子(またはペルチェ素子のような冷却用の素子)と隣接した状態で圧電発振器10を使用した場合に、当該素子の温度変化に影響され変化する。
【0039】
ここで、ヒータ部2の消費電力と周囲温度との関係について図2を参照しつつ説明する。図2は、ヒータ部2の消費電力と周囲温度との関係を示すグラフであり、縦軸は消費電力(W)、横軸は周囲温度(℃)を示す。但し、感温センサ3で測定する圧電振動子1の温度はほぼ一定に制御されている。
【0040】
図2中にL1で示すように、約−40度〜約80度の範囲において周囲温度が上昇するとヒータ部2の消費電力は低くなっており、ヒータ部2の消費電力は周囲温度に対して一次関数になっている。即ち、ヒータ部2の消費電力は、ヒータ部2に熱的に接続されている全ての部材それぞれが受けた周囲温度の変化の影響の総和に従って変化する。
【0041】
次いで、本発明の圧電発振器の周囲温度測定方法の一実施形態について図1を参照しつつ説明する。
【0042】
周囲温度が変化していない状態では、まず、圧電振動子1付近の温度を感温センサ3で測定する。続いて、温度制御部5において、感温センサ3により測定した温度と予め設定された温度との差を求め、この求めた差の大きさに応じてヒータ部2の発熱量を制御する。このような制御により、圧電振動子1の温度は一定の温度になり、圧電振動子1は、発振回路18aにより印加した電圧に従って安定した周波数で発振する。
【0043】
また、周囲温度が変化したときには、温度制御部5による制御を実施しているにもかかわらず、図2に示すようにヒータ部2の消費電力が変化してしまう。例えば、周囲温度が高くなるとヒータ部2の消費電力が下がり発熱量が小さくなり、周囲温度が低くなるとヒータ部2の消費電力が上がり発熱量が大きくなる。
【0044】
本実施形態においては、周波数制御回路6により、このようなヒータ部2の消費電力の変化に基づいて、周囲温度の変化を測定する。さらに、周波数制御回路6により、周囲温度の変化を測定した結果に基づいて、圧電振動子1の周波数を制御する。例えば、周波数制御回路6では、ヒータ部2の消費電力の変化により圧電振動子1の周波数が低くなっている場合には周波数が高くなるように調整を行う。また、ヒータ部2の消費電力の変化により圧電振動子1の周波数が高くなっている場合には周波数が低くなるように調整を行う。なお、調整を行うための手段の具体例については、後に図4、図7〜図9を参照しつつ詳細に説明する。
【0045】
本実施形態の圧電発振器10では、ヒータ部2の消費電力の変化に基づいて周囲温度の変化を測定している。そのため、図12に示す従来の圧電発振器で用いられていた槽外感温センサ206を省略することができる。その結果、圧電発振器10を小型化することや低コストで製造することもできる。
【0046】
また、前述したように、図12に示す従来の圧電発振器では、槽外感温センサ206の配置場所によっては温度を正しく測定できない場合があった。しかしながら、本実施形態の圧電発振器10では、ヒータ部2に熱的に接続されている全ての部材それぞれが受けた周囲温度の変化の影響の総和である、ヒータ部2の消費電力の変化に基づいて、周囲温度の変化を測定している。そのため、周囲温度の変化を正しく測定することができる。
【0047】
さらに、本実施形態の圧電発振器10では、測定した周囲温度の変化に基づいて、周波数制御回路6により圧電振動子1の周波数を制御している。その結果、周囲温度が変化した場合にも圧電発振器10を安定した周波数で発振させることができる。
【0048】
[圧電発振器の構成例]
次いで、図1に示す圧電発振器の構成の一例について図3を参照しつつ説明する。図3は、図1に示す構成の一例を示す断面図である。なお、図3では、水晶振動子を圧電振動子として用いた水晶発振器を一例とし、この水晶発振器に本発明を適用した場合の構成例を示す。また、図1及び図3において同じ符号は同様の部位を示すものとし、この同様の部位については説明を省略する。
【0049】
前記水晶発振器は、図3に示すように、金属材料の本体ベース11a及び本体蓋11bから構成された本体筐体11内に、互いに対向した状態で配置された2枚の基板(例えばメイン基板12及び発振回路(OSC(oscillator))基板13)が配置された構成となっている。なお、本明細書では、メイン基板12及び発振回路基板13の表面のうち、互いに対向する面を一主面12a,13aとし、これら一主面12a,13aそれぞれに対となる面を他主面12b,13bとする。また、本明細書では、メイン基板12と発振回路基板13とで挟まれた領域を恒温槽4内部とする。
【0050】
図3に示す水晶発振器は、圧電振動子として水晶振動子14を備えている。この水晶振動子14は、恒温槽4内部に配置されたアルミブロック15内に装填されている。アルミブロック15は、水晶振動子14の表面を覆っており、ヒータ部2から放出された熱を水晶振動子14全体に伝導して、水晶振動子14の温度を一定の温度(例えば、約80度)に保つために設けられている。また、アルミブロック15は、接合部16によって、メイン基板12の一主面12aと発振回路基板13の一主面13aとに接合されている。即ち、水晶発振器は、発振回路基板13上に、接合部16、アルミブロック15、接合部16及びメイン基板12が順に積層された構造となっている。なお、図示していないが、メイン基板12と発振回路基板13との配置を互いに入れ換えてもよい。また、接合部16は、例えば、メイン基板12と発振回路基板13との間に熱伝導性樹脂を充填し硬化させることにより形成されており、この熱伝導性樹脂としては、熱伝導性の高いシリコーン系樹脂または熱伝導性の高いエポキシ系樹脂を用いることができる。
【0051】
さらに、水晶振動子14は、詳細に図示していないが、振動子ベースに水晶振動片が配されており、この水晶振動片が振動子ベースと振動子蓋とによって気密封止された構成となっている。また、水晶振動片には、励振電極と、この励振電極から引き出された引出電極とが形成されており、この引出電極は、図3に示す少なくとも一対のリード端子17に接続されている。なお、水晶振動子14は、リード端子17を一対のみ備えていてもよく、複数対備えていてもよい。このように構成された水晶振動子14は、図示しないが例えば発振回路基板13の一主面13aに設けられた発振回路18a(図1参照)、及び発振回路基板13の他主面13bに設けられた周波数制御回路6にリード端子17により電気的に接続されている。
【0052】
図3に示すように、メイン基板12の一主面12aには、ヒータ部2が配置されている。また、メイン基板12の他主面12bには、アルミブロック15の温度制御を行う温度制御部5が配置されている。
【0053】
なお、温度制御部5の一部を構成しているトランジスタ2bは、抵抗2aと同様に熱を放出するためヒータ部2としても用いられており、ヒータ部2の一部も構成している。
【0054】
また、アルミブロック15には貫通孔15aが形成されており、この貫通孔15a内部には感温センサ3が配置されている。これら感温センサ3と貫通孔15aとの間の隙間には接合部16が配置されている。なお、感温センサ3は、例えばサーミスタからなり、水晶振動子14の近くに配置されており、温度制御部5を介してヒータ部2に接続されている。
【0055】
ヒータ部2は抵抗2aとトランジスタ2bとから構成されている。例えば、抵抗2aは、圧膜印刷抵抗等の膜抵抗体であってもよく、また、チップ抵抗体であってもよく、この場合には水晶発振器をより小型化することができる。また、トランジスタ2bは、安全性を配慮して定格値が充分に高いものを使用することが好ましく、例えば、パワートランジスタである。
【0056】
また、メイン基板12の一主面12aには、配線パターン(図示せず)が印刷形成されており、ヒータ部2は、トランジスタ2bのリード端子(図示せず)を介してメイン基板12の配線パターンに電気的に接続されている。
【0057】
[圧電発振器の電気的構成例1]
次に、図1に示す圧電発振器の電気的構成例1について図4を参照しつつ説明する。図4は、図1に示す圧電発振器10の電気的構成例1を示す回路図である。なお、図1、図3及び図4において同じ符号は同様の部位を示すものとし、この同様の部位については説明を省略する。
【0058】
図4に示す圧電発振器では、周波数制御回路6aにより、抵抗2aとトランジスタ2bとから構成されたヒータ部2の電圧の変化に基づいて周囲温度の変化を測定し、さらに、この測定結果に従って、圧電振動子42の周波数を制御している。
【0059】
図4に示すように、周波数制御回路6aは発振回路18a及び圧電振動子42とともに発振部18を構成している。さらに、周波数制御回路6aは、抵抗41,44,45とバリキャップダイオード43とから構成されており、温度制御部5は、集積回路素子で構成されたオペアンプ47と、抵抗48,49,50,51と、ヒータ部2の一部を構成するトランジスタ2bとから構成されている。
【0060】
図4に示す圧電発振器の電気的構成をより詳細に説明すると、直列に接続された抵抗2aの一端子とトランジスタ2bのコレクタ端子との接続点aが、抵抗41を介して、直列に接続された圧電振動子42の一端子とバリキャップダイオード43のカソード端子との接続点bに接続されている。
【0061】
なお、抵抗2aの他端子は電源電圧(Vcc)に接続されており、トランジスタ2bのエミッタ端子は接地(GND)されている。また、抵抗41と接続点bとの間の接続点dには抵抗45の一端子が接続されており、抵抗45の他端子は接地されている。さらに、バリキャップダイオード43のアノード端子には抵抗44の一端子が接続されており、この抵抗44の他端子は接地されている。
【0062】
また、発振回路18aの一端子には、圧電振動子42の他端子が接続されており、発振回路18aの他の端子には、コンデンサ46を介して、バリキャップダイオード43のアノード端子と抵抗44との接続点cが接続されており、発振回路18aのさらに他の端子には、レギュレータ52を介して電源電圧が接続されている。
【0063】
感温センサ3の一端子はオペアンプ47の非反転入力端子に接続されている。さらに、感温センサ3とオペアンプ47との接続点eには抵抗48の一端子が接続されており、抵抗48の他端子はレギュレータ52を介して電源電圧に接続されている。
【0064】
また、直列に接続された抵抗49,50の接続点fはオペアンプ47の反転入力端子に接続されている。この抵抗49の他端子はレギュレータ52を介して電源電圧に接続されており、抵抗50の他端子は接地されている。さらに、オペアンプ47の出力端子は抵抗51を介してトランジスタ2bのベースに接続されている。
【0065】
さらに、感温センサ3は、温度によって抵抗値が変化する感温素子(例えば、サーミスタ)であり、図4では、温度が低くなると抵抗値が大きくなり、温度が高くなると抵抗値が小さくなる感温素子が用いられている。
【0066】
ここで、ヒータ部2の電圧と周囲温度との関係について図5を参照しつつ説明する。図5は、ヒータ部2の電圧と周囲温度との関係を示すグラフであり、縦軸はヒータ部2の電圧であるヒータ端子電圧Vc(V)、横軸は周囲温度(℃)を示す。但し、感温センサ3で測定する圧電振動子42の温度はほぼ一定に制御されている。
【0067】
図5中にL2で示すように、約−40度〜約80度の範囲において周囲温度が上昇するとヒータ端子電圧は高くなっており、ヒータ端子電圧は周囲温度に対して一次関数になっている。即ち、ヒータ部2の電圧は、ヒータ部2に熱的に接続されている全ての部材それぞれが受けた周囲温度の変化の影響の総和に従って変化する。これにより、図4に示す圧電発振器によれば、ヒータ部2の電圧の変化に基づいて周囲温度の変化を測定することができる。
【0068】
次いで、図4に示す圧電発振器を用いた圧電発振器の周囲温度測定方法の一例について図4を参照しつつ説明する。
【0069】
図4に示す圧電発振器を用いて圧電発振器の周囲温度測定方法を実施した場合、周囲温度が変化していない状態では、感温センサ3の抵抗値が圧電振動子42付近の温度に従って変化する。
【0070】
例えば、圧電振動子42付近の温度が低くなると感温センサ3の抵抗値が大きくなり、感温センサ3の端子間電圧が大きくなり、オペアンプ47の出力電圧が大きくなる。これにより、オペアンプ47の出力電流が増大し、トランジスタ2bのコレクタ電流が増大して抵抗2aを流れる電流が増え、抵抗2aの発熱量が大きくなる。そのため、圧電振動子42付近の温度が低くなると、抵抗2aの発熱量が大きくなって圧電振動子42をより急速に温めることができる。
【0071】
また、例えば、圧電振動子42付近の温度が高くなると感温センサ3の抵抗値が小さくなり、感温センサ3の端子間電圧が小さくなり、オペアンプ47の出力電圧が小さくなる。これにより、オペアンプ47の出力電流が減少し、トランジスタ2bのコレクタ電流が減少して抵抗2aを流れる電流が減り、抵抗2aの発熱量が小さくなる。これにより、圧電振動子42付近の温度が高くなると抵抗2aの発熱量が小さくなって圧電振動子42をより緩やかに温めることができる。
【0072】
感温センサ3、温度制御部5及びヒータ部2において、このような動作が実施されることにより、圧電振動子42の温度は一定の温度になり、圧電振動子42は、発振回路18aにより印加した電圧に従って安定した周波数で発振する。
【0073】
さらに、図4に示す圧電発振器では、感温センサ3、温度制御部5及びヒータ部2において圧電振動子42の温度を制御するとともに、周囲温度が変化した場合には、周波数制御回路6aにより、ヒータ部2の電圧の変化に基づいて周囲温度の変化を測定し、この測定結果に基づいて圧電振動子42の周波数を制御する。
【0074】
ここで、周波数制御回路6aによる圧電振動子42の周波数の制御について詳細な説明を行う前に、図4に示す圧電発振器の温度特性の一例について図6を参照しつつ説明する。図6は、図4に示す圧電発振器の周波数温度特性の一例を示すグラフであり、縦軸は周波数偏差(ppb)、横軸は周囲温度(℃)を示す。なお、図6には、図4に示す圧電発振器の温度特性L3とともに、図4中の抵抗41を開(open)状態にした場合(即ち、周波数制御回路6aによる制御を行わない場合)の温度特性L100も示す。
【0075】
なお、図6には基準温度を25℃とした時の周波数温度特性を示す。そのため、図4に示す圧電発振器では、基準温度に対して設定された所定の温度範囲において、周波数温度特性の変動が最小となるように抵抗41、45の値が選択されている。
【0076】
抵抗41をopen状態にして周波数制御回路6aによる制御を行わない場合、図4に示す圧電発振器は、図6中にL100で示すように、約−20度〜約65度の範囲において周囲温度が高くなるにつれて、周波数偏差が小さくなっており、周囲温度が約25℃のときに周波数偏差が「0」となっている。
【0077】
図4に示す圧電発振器では、図5に示すように、例えば、周囲温度が高くなるとヒータ部2の電圧が高くなり、周囲温度が低くなるとヒータ部2の電圧が低くなる。周波数制御回路6aは、このようなヒータ部2(接続点a)の電圧の変化を用いて、周囲温度の変化を測定している。さらに、周波数制御回路6aでは、測定した周囲温度の変化に従って圧電振動子42の周波数を制御するために、ヒータ部2(接続点a)の電圧を制御してバリキャップダイオード43の容量を調整している。
【0078】
例えば、周囲温度が高くなると、図5に示すように、ヒータ部2の電圧が高くなる。これにより、接続点bの電圧が高くなり、バリキャップダイオード43のカソード端子とアノード端子との間の電位差が大きくなり、バリキャップダイオード43の容量が小さくなるため圧電振動子42の周波数が高くなる。また、例えば、周囲温度が低くなると、図5に示すように、ヒータ部2の電圧が低くなる。これにより、接続点bの電圧が低くなり、バリキャップダイオード43のカソード端子とアノード端子との間の電位差が小さくなり、バリキャップダイオード43の容量が大きくなるため圧電振動子42の周波数が低くなる。
【0079】
図4に示す圧電発振器では、周波数制御回路6aにおいてこのような動作を行うことにより、周囲温度の変化に応じてバリキャップダイオード43の容量を調整し、圧電振動子42の周波数を制御して、圧電発振器の周波数温度特性を調整している。そのため、図6中にL3で示すように、抵抗41をopen状態にした場合と比較して、周波数偏差を略一定にすることができる。つまり、図4に示す圧電発振器では、温度が高くなるほど周波数が高くなる方向に、つまり周波数温度特性のカーブが左回転する方向に圧電振動子42の出力を調整することができる。
【0080】
従って、図4に示す圧電発振器及びこれを用いた圧電発振器の周囲温度測定方法によれば、槽外感温センサ206(図12参照)を省略することができる。その結果、圧電発振器を小型化することや低コストで製造することもできる。
【0081】
また、図4に示す圧電発振器及びこれを用いた圧電発振器の周囲温度測定方法によれば、ヒータ部2に熱的に接続されている全ての部材それぞれが受けた周囲温度の変化の影響の総和である、ヒータ部2の電圧の変化に基づいて、周囲温度の変化を測定しているため、周囲温度の変化を正しく測定することができる。
【0082】
さらに、図4に示す圧電発振器及びこれを用いた圧電発振器の周囲温度測定方法によれば、測定した周囲温度の変化に基づいて、周波数制御回路6aにより圧電振動子42の周波数を制御しているため、周囲温度が変化した場合にも圧電発振器を安定した周波数で発振させることができる。
【0083】
[圧電発振器の電気的構成例2]
次に、図1に示す圧電発振器10の電気的構成の例2について図7を参照しつつ説明する。図7は、図1に示す圧電発振器10の電気的構成例2を示す回路図である。なお、図1、図3、図4及び図7において同じ符号は同様の部位を示すものとし、この同様の部位については説明を省略する。
【0084】
図7に示す圧電発振器の温度特性は、図示しないが、傾きが図6に示すものと反転している(即ち、周囲温度が高くなるにつれて周波数偏差が大きくなっている)ものとする。
【0085】
図7に示す圧電発振器では、周波数制御回路6bにより、ヒータ部2の電圧の変化に基づいて周囲温度の変化を測定し、さらに、この測定結果に従って圧電振動子42の周波数を制御している。
【0086】
図7に示す圧電発振器は、図4に示す圧電発振器と比較して、周波数制御回路6bの構成が異なっており、他の構成については同様である。
【0087】
周波数制御回路6bは、図7に示すように、抵抗71,72,44とバリキャップダイオード43とから構成されている。さらに詳しくは、図7に示す圧電発振器では、図4に示す抵抗41及び抵抗45は削除されており、接続点aと接続点c(バリキャップダイオード43のアノード端子)との間に抵抗71が接続されており、接続点bに抵抗72の一端子が接続されている。さらに、この抵抗72の他端子はレギュレータ52を介して電源電圧に接続されている。
【0088】
なお、図7に示す圧電発振器では、基準温度に対して設定された所定の温度範囲において、周波数温度特性の変動が最小となるように抵抗71,44の値が選択されている。
【0089】
次いで、図7に示す圧電発振器を用いた圧電発振器の周囲温度測定方法の一例について図7を参照しつつ説明する。
【0090】
周囲温度が変化していない状態では、図4に示す圧電発振器と同様の手順で、感温センサ3、温度制御部5及びヒータ部2において圧電振動子42の温度を制御しており、詳細な説明を省略する。
【0091】
図7に示す圧電発振器では、感温センサ3、温度制御部5及びヒータ部2において圧電振動子42の温度を制御するとともに、周囲温度が変化した場合には、周波数制御回路6bにより、ヒータ部2の電圧の変化に基づいて周囲温度の変化を測定し、この測定結果に従って、圧電振動子42の周波数を制御している。
【0092】
例えば、周囲温度が高くなるとヒータ部2の電圧が高くなることにより(図5参照)、接続点cの電圧が高くなり、バリキャップダイオード43のカソード端子とアノード端子との間の電位差が小さくなる。そのため、周囲温度が高くなるとバリキャップダイオード43の容量が大きくなる。また、例えば、周囲温度が低くなるとヒータ部2の電圧が低くなることにより(図5参照)、接続点cの電圧が低くなり、バリキャップダイオード43のカソード端子とアノード端子との間の電位差が大きくなり、バリキャップダイオード43の容量が小さくなる。
【0093】
図7に示す圧電発振器では、周波数制御回路6bにおいてこのような動作を行うことにより、周囲温度の変化に応じてバリキャップダイオード43の容量を調整し、圧電振動子42の周波数を制御して、圧電発振器の周波数温度特性を調整している。そのため、周波数偏差を略一定にすることができる。つまり、図7に示す圧電発振器では、温度が高くなるほど周波数が低くなる方向に、つまり周波数温度特性のカーブが右回転する方向に圧電振動子42の出力を調整することができる。
【0094】
従って、図7に示す圧電発振器及びこれを用いた圧電発振器の周囲温度測定方法によれば、槽外感温センサ206(図12参照)を省略することができる。その結果、圧電発振器を小型化することや低コストで製造することもできる。
【0095】
また、図7に示す圧電発振器及びこれを用いた圧電発振器の周囲温度測定方法によれば、ヒータ部2に熱的に接続されている全ての部材それぞれが受けた周囲温度の変化の影響の総和である、ヒータ部2の電圧の変化に基づいて、周囲温度の変化を測定しているため、周囲温度の変化を正しく測定することができる。
【0096】
さらに、図7に示す圧電発振器及びこれを用いた圧電発振器の周囲温度測定方法によれば、測定した周囲温度の変化に基づいて、周波数制御回路6bにより圧電振動子42の周波数を制御しているため、周囲温度が変化した場合にも圧電発振器を安定した周波数で発振させることができる。
【0097】
[圧電発振器の電気的構成例3]
次に、図1に示す圧電発振器10の電気的構成の例3について図8を参照しつつ説明する。図8は、図1に示す圧電発振器10の電気的構成例3を示す回路図である。なお、図1、図3、図4、図7及び図8において同じ符号は同様の部位を示すものとし、この同様の部位については説明を省略する。
【0098】
図8に示す圧電発振器では、周波数制御回路6cにより、ヒータ部2の電圧の変化に基づいて周囲温度の変化を測定し、さらに、この測定結果に従って圧電振動子42の周波数を制御している。
【0099】
図8に示す圧電発振器は、図4及び図7に示す圧電発振器と比較して、周波数制御回路6cの構成が異なっており、他の構成については同様である。
【0100】
図8に示す圧電発振器では、製造時に、前述の周波数制御回路6aと周波数制御回路6bとが周波数制御回路6c内に設けられている。そして、使用時に、圧電発振器の温度特性(温度特性の傾き)に合わせて、周波数制御回路6aの部分及び周波数制御回路6bの部分のうちのいずれか一方の部分をopen状態にすることによって、他の一方の部分の回路を採用している。
【0101】
周波数制御回路6cは、図8に示すように、抵抗41の一端子と抵抗71の一端子とが接続点aに並列に接続されている。この抵抗41の他端子は、図4に示す圧電発振器と同様に、接続点bに接続されており、抵抗71の他端子は、図7に示す圧電発振器と同様に、接続点cに接続されている。さらに、抵抗41の他端子と接続点bとの間の接続点dには、抵抗45の一端子と抵抗72の一端子とが接続されている。この抵抗45の他端子は接地されており、抵抗72の他端子はレギュレータ52を介して電源電圧に接続されている。
【0102】
図8に示す圧電発振器は、このような構成となっているので、例えば、抵抗71及び抵抗72をopen状態にすることによって図4に示す圧電発振器を得ることができ、図4に示す圧電発振器を用いた場合と同様の手順で、圧電発振器の周囲温度測定方法を実施することができる。また、例えば、抵抗41及び抵抗45をopen状態にすることによって図7に示す圧電発振器を得ることができ、図7に示す圧電発振器を用いた場合と同様の手順で、圧電発振器の周囲温度測定方法を実施することができる。つまり、図8に示す圧電発振器では、温度が高くなるほど周波数が高くなる方向に、つまり周波数温度特性のカーブが左回転する方向に圧電振動子42の出力を調整することもでき、温度が高くなるほど周波数が低くなる方向に、つまり周波数温度特性のカーブが右回転する方向に圧電振動子42の出力を調整することもできる。
【0103】
従って、図8に示す圧電発振器及びこれを用いた圧電発振器の周囲温度測定方法によれば、図4及び図7に示す圧電発振器及びこれを用いた圧電発振器の周囲温度測定方法と同様の効果が得られるとともに、使用時に周波数制御回路6cの構成を選択することができる。その結果、周波数温度特性が異なる種々の圧電発振器において汎用することができる。
【0104】
[圧電発振器の電気的構成例4]
次に、図1に示す圧電発振器10の電気的構成の例4について図9を参照しつつ説明する。図9は、図1に示す圧電発振器10の電気的構成例4を示す回路図である。なお、図1、図3、図4、図7、図8及び図9において同じ符号は同様の部位を示すものとし、この同様の部位については説明を省略する。
【0105】
図9に示す圧電発振器では、周囲温度の変化を測定する際に、ヒータ部2の消費電力の変化としてヒータ部2の電流の変化を用いている。
【0106】
図9に示す圧電発振器の周波数温度特性は、図4に示す圧電発振器の周波数温度特性と同じ(図6参照)であるものとする。
【0107】
図9に示す圧電発振器では、周波数制御回路6dにより、ヒータ部2の電流の変化に基づいて周囲温度の変化を測定し、さらに、この測定結果に従って圧電振動子42の周波数を制御している。
【0108】
図9に示す圧電発振器は、図4に示す圧電発振器と比較して、周波数制御回路6dの構成が異なっており、他の構成については同様である。
【0109】
周波数制御回路6dは、抵抗91,92,93,44とバリキャップダイオード43とから構成されている。さらに詳しくは、図9に示す圧電発振器では、図4に示す抵抗41及び抵抗45は削除されており、トランジスタ2bのエミッタ端子に抵抗91の一端子が接続されており、トランジスタ2bと抵抗91との接続点gが、抵抗92を介して、直列に接続された圧電振動子42の一端子とバリキャップダイオード43のカソード端子との接続点bに接続されている。なお、抵抗92と接続点bとの間の接続点hには抵抗93の一端子が接続されている。また、抵抗91,93の他端子は接地されている。即ち、周波数制御回路6dは、ヒータ部2の電流を電圧に変換し、この変換後の電圧の変化に基づいて、周囲温度の変化を測定している。
【0110】
なお、図9に示す圧電発振器では、基準温度に対して設定された所定の温度範囲において、周波数温度特性の変動が最小となるように抵抗44,91,92,93の値が選択されている。
【0111】
また、図9に示す圧電発振器では、周波数制御回路6d全体が恒温槽4外部に配置されているが、周波数制御回路6dのうち抵抗91のみが、トランジスタ2bとともに恒温槽4内部(例えば、図3に示すメイン基板12の一主面12a)に配置されていてもよい。
【0112】
次いで、図9に示す圧電発振器を用いた圧電発振器の周囲温度測定方法の一例について図9を参照しつつ説明する。
【0113】
図9に示す圧電発振器を用いて圧電発振器の周囲温度測定方法を実施した場合、周囲温度が変化していない状態では、図4に示す圧電発振器を用いた場合と同様の手順で、感温センサ3、温度制御部5及びヒータ部2において圧電振動子42の温度を制御しており、詳細な説明を省略する。
【0114】
ここで、ヒータ部2の電流と周囲温度との関係について図10を参照しつつ説明する。図10は、ヒータ部2の電流と周囲温度との関係を示すグラフであり、縦軸はヒータ部の電流であるヒータ電流(A)、横軸は周囲温度(℃)を示す。但し、感温センサ3で測定する圧電振動子42の温度はほぼ一定に制御されている。
【0115】
図10中にL4で示すように、約−40度〜約80度の範囲において周囲温度が上昇するとヒータ電流は低くなっており、ヒータ電流は周囲温度に対して一次関数になっている。即ち、ヒータ部2の電流は、ヒータ部2に熱的に接続されている全ての部材それぞれが受けた周囲温度の変化の影響の総和に従って変化する。これにより、図9に示す圧電発振器によれば、ヒータ部2の電流の変化に基づいて周囲温度の変化を測定することができる。
【0116】
例えば、周囲温度が高くなると、図10に示すように、ヒータ部2の電流が小さくなる。これにより、接続点bの電圧が高くなり、バリキャップダイオード43のカソード端子とアノード端子との間の電位差が大きくなり、バリキャップダイオード43の容量が小さくなる。また、例えば、周囲温度が低くなると、図10に示すように、ヒータ部2の電流が大きくなる。これにより、接続点bの電圧が低くなり、バリキャップダイオード43のカソード端子とアノード端子との間の電位差が小さくなり、バリキャップダイオード43の容量が大きくなる。
【0117】
図9に示す圧電発振器では、周波数制御回路6dにおいてこのような動作を行うことにより、周囲温度の変化に応じてバリキャップダイオード43の容量を調整し、圧電振動子42の周波数を制御して、圧電発振器の周波数温度特性を調整している。そのため、周波数偏差を略一定にすることができる。つまり、図9に示す圧電発振器では、温度が高くなるほど周波数が高くなる方向に、つまり周波数温度特性のカーブが左回転する方向に圧電振動子42の出力を調整することができる。
【0118】
従って、図9に示す圧電発振器及びこれを用いた圧電発振器の周囲温度測定方法によれば、槽外感温センサ206(図12参照)を省略することができる。その結果、圧電発振器を小型化することや低コストで製造することもできる。
【0119】
また、図9に示す圧電発振器及びこれを用いた圧電発振器の周囲温度測定方法によれば、ヒータ部2に熱的に接続されている全ての部材それぞれが受けた周囲温度の変化の影響の総和である、ヒータ部2の電流の変化に基づいて、周囲温度の変化を測定しているため、周囲温度の変化を正しく測定することができる。
【0120】
さらに、図9に示す圧電発振器及びこれを用いた圧電発振器の周囲温度測定方法によれば、測定した周囲温度の変化に基づいて、周波数制御回路6dにより圧電振動子42の周波数を制御しているため、周囲温度が変化した場合にも圧電発振器を安定した周波数で発振させることができる。
【0121】
なお、本実施形態において、ヒータ部2は、図4、図7、図8及び図9に示すように、アルミブロック15の外部に配置されているが、ヒータ部2を構成する抵抗2a及びトランジスタ2bのうち抵抗2aはアルミブロック15内部に配置されていてもよい。また、本実施形態において、トランジスタ2bは、図4、図7、図8及び図9に示すように、恒温槽4内部に配置されているが、恒温槽4外部(例えば、図3に示すメイン基板12の他主面12b)に配置されていてもよい。
【0122】
また、本明細書においては、圧電発振器の一例として恒温槽型圧電発振器を用いて説明を行っているが、本発明はこの形態に限定されるものではない。例えば、感温センサやヒータ部を用いて温度調整を行うが、恒温槽にアルミブロックを備えていない圧電発振器において本発明を実施してもよい。この場合には、図1に示す圧電発振器10と同様の効果が得られるとともに、圧電発振器をさらに小型化することができる。
【0123】
また、例えば、恒温槽が2重構造になっておりより精密な温度調整を行うことができる圧電発振器において本発明を実施してもよい。この場合には、図1に示す圧電発振器10と同様の効果が得られるとともに、圧電発振器の周波数温度特性をさらに高精度に安定させることができる。
【0124】
なお、前記圧電振動子の水晶振動片としては、ATカット水晶振動板またはSCカット水晶振動板を用いることができる。
【0125】
また、前記発振回路としては、オーバートーン発振を抑制するため及び(または)SCカット水晶振動板を用いた場合におけるB−MODE(Bモード)発振を抑制するために、急峻な周波数選択機能を備えたものが好ましく、例えば、タンク回路またはB.P.F(Band Pass filter)を備えていることが好ましい。
【0126】
さらに、発振回路、この発振回路を構成する周波数選択回路及び圧電振動子からなる発振に関わる部位を設計する際には、圧電発振器における位相雑音の発生を抑制するためや短期安定度(短い時間周期内での出力周波数の不規則な揺らぎ)を向上するために、前記部位のQ値を向上することが必要とされる。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明の圧電発振器及びこの圧電発振器の周囲温度測定方法は、圧電発振器の周波数を安定させる際に活用できる。
【符号の説明】
【0128】
1 圧電振動子
2 ヒータ部
3 感温センサ
4 恒温槽
5 温度制御部
6 周波数制御回路
10 圧電発振器
18 発振部
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度補償型の圧電発振器及びこの圧電発振器の周囲温度測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、温度変化が激しい環境で圧電発振器を使用する場合、温度特性を補償して安定した周波数で圧電発振器を発振させることは大変困難である。
【0003】
そこで、圧電発振器の一部分を構成する圧電振動子を恒温槽内に配置することによって、圧電発振器が安定した周波数で発振するよう構成されたものがある。このような圧電発振器の従来例として、後述の特許文献1である特許第3272633号公報に開示されている恒温槽型圧電発振器がある。
【0004】
図11は従来の圧電発振器の一例を示すブロック図である。
【0005】
同図に示す圧電発振器は、圧電振動子101と発熱体102と槽内感温センサ103とが恒温槽104内に配置された、いわゆる恒温槽型圧電発振器と呼ばれるものである。
【0006】
この圧電発振器は、圧電振動子101の温度を槽内感温センサ103で測定するよう構成されている。槽内感温センサ103で測定した温度を示す信号は、発熱体102と槽内感温センサ103との間に接続された温度制御部105により発熱体102を制御する電流信号に置き換えられ、当該電流信号により発熱体102の駆動電流を調整する。これにより、発熱体102の発熱量が変化し、圧電振動子101の温度が予め設定された値に調整され、圧電発振器が安定した周波数で発振する。
【0007】
また、従来の圧電発振器の他の例として図12に示す圧電発振器がある。
【0008】
図12は従来の圧電発振器の他の例を示すブロック図である。
【0009】
同図に示す圧電発振器は、圧電振動子201が、図11に示す圧電発振器と同様に、発熱体202と槽内感温センサ203とともに恒温槽204内に配置されており、圧電振動子201の温度は、槽内感温センサ203で測定するよう構成されており、いわゆる恒温槽型圧電発振器と呼ばれるものである。
【0010】
さらに、圧電発振器201は、恒温槽204外部に、発熱体202の駆動電流を制御する温度制御部205と、恒温槽204外部の温度を測定する槽外感温センサ206と、槽外感温センサ206で測定した温度に従って圧電振動子201に印加される電圧を制御する制御電圧発生回路207とを備えている。
【0011】
また、温度制御部205において、槽外感温センサ206で測定した温度と槽内感温センサ203で測定した温度との差を示す信号が発熱体202を制御する電流信号に置き換えられる。そして、この電流信号により発熱体202の駆動電流を調整する。これにより、発熱体202の発熱量が変化し、圧電発振器の温度が予め設定された値に調整され、圧電発振器が安定した周波数で発振する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第3272633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、図11に示す圧電発振器では、槽内感温センサ103で圧電振動子101の温度を管理しているので、恒温槽104外部の温度変化に影響されないように、恒温槽104外部の温度に対して恒温槽104内部の温度が高い目に設定されていた。その結果、恒温槽104内部の温度を一定に保つには非常に大きな電流が必要であり、図11に示す圧電発振器には、圧電発振器自体で消費される電力を少なく抑えることが難しいといった問題があった。
【0014】
一方、図12に示す圧電発振器では、例えば熱を放出する素子(不図示)と隣接した状態で圧電発振器を使用するときに、槽外感温センサ206がこの熱を放出する素子の近くに配置されていると、前記素子が放出した熱の影響を受けて槽外感温センサ206が温度を正しく測定できなくなってしまう。その結果、図12に示す圧電発振器には、圧電振動子201に印加する電圧を制御電圧発生回路207により適切な値に制御することができなくなり、圧電発振器が安定した周波数で発振できなくなるといった問題があった。
【0015】
本発明はかかる問題点を解決すべく創案されたもので、その目的は、槽外感温センサを用いることなく、圧電発振器の周囲の温度の変化を測定することができる圧電発振器及びこの圧電発振器の周囲温度測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本発明の圧電発振器は、圧電振動子と発振回路とを含む発振部と、前記圧電振動子を温めるヒータ部と、当該ヒータ部の温度制御をする温度制御部とを備えており、前記ヒータ部の消費電力の変化(好ましくは、ヒータ部の電圧の変化またはヒータ部の電流の変化)に基づいて、当該圧電発振器の周囲の温度の変化を測定することを特徴とする。
【0017】
これにより、槽外感温センサを用いることなく、圧電発振器の周囲の温度の変化を測定することができる。
【0018】
また、前記構成において、例えば、前記圧電振動子として水晶振動子を備えており、前記ヒータ部として膜抵抗体またはチップ抵抗体を備えていることが、圧電発振器を小型化することができるため好ましい。
【0019】
また、前記構成において、前記圧電発振器の周囲の温度の変化に基づいて、前記圧電振動子の周波数を制御する周波数制御回路をさらに備えていてもよい。
【0020】
この場合には、圧電振動子の出力が圧電発振器の周囲の温度の変化に影響されないため、圧電発振器がより安定した周波数で発振する。さらに、周波数制御にバリキャップダイオードを用いた場合、電圧を入力信号として使用することができるため、ヒータ部の消費電力を端子電圧で検出することができ、回路構成をより簡略化できる。
【0021】
また、前記構成において、恒温槽をさらに備えており、当該恒温槽内部に前記圧電振動子及び前記ヒータ部を配したものであってもよい。
【0022】
この場合には、圧電振動子の温度をより一定に保つことができるので、圧電発振器がより安定した周波数で発振する。
【0023】
前記構成において、前記圧電振動子の温度を測定する感温センサをさらに備えており、前記恒温槽内部に前記感温センサを配しており、前記感温センサの測定結果に基づいて前記ヒータ部の動作を制御するものであってもよい。
【0024】
この場合には、圧電振動子の温度をより一定に保つことができるので、圧電発振器がより安定した周波数で発振する。
【0025】
本発明の圧電発振器の周囲温度測定方法は、前記圧電発振器が、圧電振動子と発振回路とを含む発振部と、前記圧電振動子を温めるヒータ部と当該ヒータ部の温度制御をする温度制御部とを備えており、前記圧電振動子の温度を前記感温センサで測定する手順と、前記感温センサの測定結果に基づいて前記ヒータ部の動作を制御する手順と、前記ヒータ部の消費電力の変化に基づいて、前記圧電発振器の周囲の温度の変化を測定する手順とを含むことを特徴とする。
【0026】
これにより、槽外感温センサを用いることなく、圧電発振器の周囲の温度の変化を測定することができる。
【0027】
また、前記構成において、前記圧電発振器が、前記圧電発振器の周囲の温度の変化に基づいて前記圧電振動子の周波数を制御する周波数制御回路をさらに備えており、前記圧電発振器の周囲の温度の変化に基づいて、前記周波数制御回路により前記圧電振動子の周波数を制御する手順をさらに含むものでもよい。
【0028】
この場合には、圧電振動子の出力が圧電発振器の周囲の温度の変化に影響されないため、圧電発振器がより安定した周波数で発振する。
【発明の効果】
【0029】
本発明は上記のように構成したので、槽外感温センサを用いることなく、圧電発振器の周囲の温度の変化を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の圧電発振器の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】ヒータ部の消費電力と周囲温度との関係を示すグラフである。
【図3】図1に示す圧電発振器の構成の一例を示す断面図である。
【図4】図1に示す圧電発振器の電気的構成例1を示す回路図である。
【図5】ヒータ部の電圧と周囲温度との関係を示すグラフである。
【図6】図4に示す圧電発振器の周波数温度特性の一例を示すグラフである。
【図7】図1に示す圧電発振器の電気的構成例2を示す回路図である。
【図8】図1に示す圧電発振器の電気的構成例3を示す回路図である。
【図9】図1に示す圧電発振器の電気的構成例4を示す回路図である。
【図10】ヒータ部の電流と周囲温度との関係を示すグラフである。
【図11】従来の圧電発振器の一例を示すブロック図である。
【図12】従来の圧電発振器の他の例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の圧電発振器及びこの圧電発振器の周囲温度測定方法の実施形態について説明する。
【0032】
まず初めに、本発明の圧電発振器の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0033】
図1は、本発明の圧電発振器の一実施形態を示すブロック図である。
【0034】
圧電発振器10は、恒温槽4を備えた、いわゆる恒温槽型圧電発振器と呼ばれるものである。図1に示す圧電発振器10では、恒温槽4の内部に、圧電振動子1とヒータ部2と感温センサ3と発振回路18aとが配置されている。なお、発振回路18aは、恒温槽4内部に配置(図1参照)されていても、恒温槽4外部に配置(不図示)されていてもよいが、圧電振動子1との温度差が少なくなるように恒温槽4内部に配置されていることがより好ましい。
【0035】
圧電振動子1としては、例えば水晶振動子が用いられる。この圧電振動子1は、発振回路18aにより印加した電圧によって振動する。感温センサ3は、圧電振動子1付近に配置されており、圧電振動子1付近の温度を測定することにより圧電振動子1の温度を測定する。ヒータ部2は、感温センサ3による温度の測定結果に応じて、熱を放出して圧電振動子1を温める。恒温槽4は、圧電振動子1をより一定の温度に保つために設けられている。
【0036】
さらに、本実施形態の圧電発振器10は、感温センサ3とヒータ部2との間に接続された温度制御部5と、恒温槽4外部に配置された周波数制御回路6とを備えている。
【0037】
温度制御部5は、感温センサ3での測定結果に基づいてヒータ部2の動作を制御する。また、周波数制御回路6は、ヒータ部2の消費電力の変化に基づき後述する周囲温度の変化を測定し、この測定結果に基づいて圧電振動子1に印加する電圧を制御して、圧電振動子1の周波数を制御する。
【0038】
なお、本実施形態においては、圧電振動子1と発振回路18aと周波数制御回路6とを発振部18とし、また、図1中に二点鎖線で概略的に示す圧電発振器10の周囲(即ち、製品本体の周囲)の温度を「周囲温度」とする。この周囲温度は、例えば、熱を放出する素子(またはペルチェ素子のような冷却用の素子)と隣接した状態で圧電発振器10を使用した場合に、当該素子の温度変化に影響され変化する。
【0039】
ここで、ヒータ部2の消費電力と周囲温度との関係について図2を参照しつつ説明する。図2は、ヒータ部2の消費電力と周囲温度との関係を示すグラフであり、縦軸は消費電力(W)、横軸は周囲温度(℃)を示す。但し、感温センサ3で測定する圧電振動子1の温度はほぼ一定に制御されている。
【0040】
図2中にL1で示すように、約−40度〜約80度の範囲において周囲温度が上昇するとヒータ部2の消費電力は低くなっており、ヒータ部2の消費電力は周囲温度に対して一次関数になっている。即ち、ヒータ部2の消費電力は、ヒータ部2に熱的に接続されている全ての部材それぞれが受けた周囲温度の変化の影響の総和に従って変化する。
【0041】
次いで、本発明の圧電発振器の周囲温度測定方法の一実施形態について図1を参照しつつ説明する。
【0042】
周囲温度が変化していない状態では、まず、圧電振動子1付近の温度を感温センサ3で測定する。続いて、温度制御部5において、感温センサ3により測定した温度と予め設定された温度との差を求め、この求めた差の大きさに応じてヒータ部2の発熱量を制御する。このような制御により、圧電振動子1の温度は一定の温度になり、圧電振動子1は、発振回路18aにより印加した電圧に従って安定した周波数で発振する。
【0043】
また、周囲温度が変化したときには、温度制御部5による制御を実施しているにもかかわらず、図2に示すようにヒータ部2の消費電力が変化してしまう。例えば、周囲温度が高くなるとヒータ部2の消費電力が下がり発熱量が小さくなり、周囲温度が低くなるとヒータ部2の消費電力が上がり発熱量が大きくなる。
【0044】
本実施形態においては、周波数制御回路6により、このようなヒータ部2の消費電力の変化に基づいて、周囲温度の変化を測定する。さらに、周波数制御回路6により、周囲温度の変化を測定した結果に基づいて、圧電振動子1の周波数を制御する。例えば、周波数制御回路6では、ヒータ部2の消費電力の変化により圧電振動子1の周波数が低くなっている場合には周波数が高くなるように調整を行う。また、ヒータ部2の消費電力の変化により圧電振動子1の周波数が高くなっている場合には周波数が低くなるように調整を行う。なお、調整を行うための手段の具体例については、後に図4、図7〜図9を参照しつつ詳細に説明する。
【0045】
本実施形態の圧電発振器10では、ヒータ部2の消費電力の変化に基づいて周囲温度の変化を測定している。そのため、図12に示す従来の圧電発振器で用いられていた槽外感温センサ206を省略することができる。その結果、圧電発振器10を小型化することや低コストで製造することもできる。
【0046】
また、前述したように、図12に示す従来の圧電発振器では、槽外感温センサ206の配置場所によっては温度を正しく測定できない場合があった。しかしながら、本実施形態の圧電発振器10では、ヒータ部2に熱的に接続されている全ての部材それぞれが受けた周囲温度の変化の影響の総和である、ヒータ部2の消費電力の変化に基づいて、周囲温度の変化を測定している。そのため、周囲温度の変化を正しく測定することができる。
【0047】
さらに、本実施形態の圧電発振器10では、測定した周囲温度の変化に基づいて、周波数制御回路6により圧電振動子1の周波数を制御している。その結果、周囲温度が変化した場合にも圧電発振器10を安定した周波数で発振させることができる。
【0048】
[圧電発振器の構成例]
次いで、図1に示す圧電発振器の構成の一例について図3を参照しつつ説明する。図3は、図1に示す構成の一例を示す断面図である。なお、図3では、水晶振動子を圧電振動子として用いた水晶発振器を一例とし、この水晶発振器に本発明を適用した場合の構成例を示す。また、図1及び図3において同じ符号は同様の部位を示すものとし、この同様の部位については説明を省略する。
【0049】
前記水晶発振器は、図3に示すように、金属材料の本体ベース11a及び本体蓋11bから構成された本体筐体11内に、互いに対向した状態で配置された2枚の基板(例えばメイン基板12及び発振回路(OSC(oscillator))基板13)が配置された構成となっている。なお、本明細書では、メイン基板12及び発振回路基板13の表面のうち、互いに対向する面を一主面12a,13aとし、これら一主面12a,13aそれぞれに対となる面を他主面12b,13bとする。また、本明細書では、メイン基板12と発振回路基板13とで挟まれた領域を恒温槽4内部とする。
【0050】
図3に示す水晶発振器は、圧電振動子として水晶振動子14を備えている。この水晶振動子14は、恒温槽4内部に配置されたアルミブロック15内に装填されている。アルミブロック15は、水晶振動子14の表面を覆っており、ヒータ部2から放出された熱を水晶振動子14全体に伝導して、水晶振動子14の温度を一定の温度(例えば、約80度)に保つために設けられている。また、アルミブロック15は、接合部16によって、メイン基板12の一主面12aと発振回路基板13の一主面13aとに接合されている。即ち、水晶発振器は、発振回路基板13上に、接合部16、アルミブロック15、接合部16及びメイン基板12が順に積層された構造となっている。なお、図示していないが、メイン基板12と発振回路基板13との配置を互いに入れ換えてもよい。また、接合部16は、例えば、メイン基板12と発振回路基板13との間に熱伝導性樹脂を充填し硬化させることにより形成されており、この熱伝導性樹脂としては、熱伝導性の高いシリコーン系樹脂または熱伝導性の高いエポキシ系樹脂を用いることができる。
【0051】
さらに、水晶振動子14は、詳細に図示していないが、振動子ベースに水晶振動片が配されており、この水晶振動片が振動子ベースと振動子蓋とによって気密封止された構成となっている。また、水晶振動片には、励振電極と、この励振電極から引き出された引出電極とが形成されており、この引出電極は、図3に示す少なくとも一対のリード端子17に接続されている。なお、水晶振動子14は、リード端子17を一対のみ備えていてもよく、複数対備えていてもよい。このように構成された水晶振動子14は、図示しないが例えば発振回路基板13の一主面13aに設けられた発振回路18a(図1参照)、及び発振回路基板13の他主面13bに設けられた周波数制御回路6にリード端子17により電気的に接続されている。
【0052】
図3に示すように、メイン基板12の一主面12aには、ヒータ部2が配置されている。また、メイン基板12の他主面12bには、アルミブロック15の温度制御を行う温度制御部5が配置されている。
【0053】
なお、温度制御部5の一部を構成しているトランジスタ2bは、抵抗2aと同様に熱を放出するためヒータ部2としても用いられており、ヒータ部2の一部も構成している。
【0054】
また、アルミブロック15には貫通孔15aが形成されており、この貫通孔15a内部には感温センサ3が配置されている。これら感温センサ3と貫通孔15aとの間の隙間には接合部16が配置されている。なお、感温センサ3は、例えばサーミスタからなり、水晶振動子14の近くに配置されており、温度制御部5を介してヒータ部2に接続されている。
【0055】
ヒータ部2は抵抗2aとトランジスタ2bとから構成されている。例えば、抵抗2aは、圧膜印刷抵抗等の膜抵抗体であってもよく、また、チップ抵抗体であってもよく、この場合には水晶発振器をより小型化することができる。また、トランジスタ2bは、安全性を配慮して定格値が充分に高いものを使用することが好ましく、例えば、パワートランジスタである。
【0056】
また、メイン基板12の一主面12aには、配線パターン(図示せず)が印刷形成されており、ヒータ部2は、トランジスタ2bのリード端子(図示せず)を介してメイン基板12の配線パターンに電気的に接続されている。
【0057】
[圧電発振器の電気的構成例1]
次に、図1に示す圧電発振器の電気的構成例1について図4を参照しつつ説明する。図4は、図1に示す圧電発振器10の電気的構成例1を示す回路図である。なお、図1、図3及び図4において同じ符号は同様の部位を示すものとし、この同様の部位については説明を省略する。
【0058】
図4に示す圧電発振器では、周波数制御回路6aにより、抵抗2aとトランジスタ2bとから構成されたヒータ部2の電圧の変化に基づいて周囲温度の変化を測定し、さらに、この測定結果に従って、圧電振動子42の周波数を制御している。
【0059】
図4に示すように、周波数制御回路6aは発振回路18a及び圧電振動子42とともに発振部18を構成している。さらに、周波数制御回路6aは、抵抗41,44,45とバリキャップダイオード43とから構成されており、温度制御部5は、集積回路素子で構成されたオペアンプ47と、抵抗48,49,50,51と、ヒータ部2の一部を構成するトランジスタ2bとから構成されている。
【0060】
図4に示す圧電発振器の電気的構成をより詳細に説明すると、直列に接続された抵抗2aの一端子とトランジスタ2bのコレクタ端子との接続点aが、抵抗41を介して、直列に接続された圧電振動子42の一端子とバリキャップダイオード43のカソード端子との接続点bに接続されている。
【0061】
なお、抵抗2aの他端子は電源電圧(Vcc)に接続されており、トランジスタ2bのエミッタ端子は接地(GND)されている。また、抵抗41と接続点bとの間の接続点dには抵抗45の一端子が接続されており、抵抗45の他端子は接地されている。さらに、バリキャップダイオード43のアノード端子には抵抗44の一端子が接続されており、この抵抗44の他端子は接地されている。
【0062】
また、発振回路18aの一端子には、圧電振動子42の他端子が接続されており、発振回路18aの他の端子には、コンデンサ46を介して、バリキャップダイオード43のアノード端子と抵抗44との接続点cが接続されており、発振回路18aのさらに他の端子には、レギュレータ52を介して電源電圧が接続されている。
【0063】
感温センサ3の一端子はオペアンプ47の非反転入力端子に接続されている。さらに、感温センサ3とオペアンプ47との接続点eには抵抗48の一端子が接続されており、抵抗48の他端子はレギュレータ52を介して電源電圧に接続されている。
【0064】
また、直列に接続された抵抗49,50の接続点fはオペアンプ47の反転入力端子に接続されている。この抵抗49の他端子はレギュレータ52を介して電源電圧に接続されており、抵抗50の他端子は接地されている。さらに、オペアンプ47の出力端子は抵抗51を介してトランジスタ2bのベースに接続されている。
【0065】
さらに、感温センサ3は、温度によって抵抗値が変化する感温素子(例えば、サーミスタ)であり、図4では、温度が低くなると抵抗値が大きくなり、温度が高くなると抵抗値が小さくなる感温素子が用いられている。
【0066】
ここで、ヒータ部2の電圧と周囲温度との関係について図5を参照しつつ説明する。図5は、ヒータ部2の電圧と周囲温度との関係を示すグラフであり、縦軸はヒータ部2の電圧であるヒータ端子電圧Vc(V)、横軸は周囲温度(℃)を示す。但し、感温センサ3で測定する圧電振動子42の温度はほぼ一定に制御されている。
【0067】
図5中にL2で示すように、約−40度〜約80度の範囲において周囲温度が上昇するとヒータ端子電圧は高くなっており、ヒータ端子電圧は周囲温度に対して一次関数になっている。即ち、ヒータ部2の電圧は、ヒータ部2に熱的に接続されている全ての部材それぞれが受けた周囲温度の変化の影響の総和に従って変化する。これにより、図4に示す圧電発振器によれば、ヒータ部2の電圧の変化に基づいて周囲温度の変化を測定することができる。
【0068】
次いで、図4に示す圧電発振器を用いた圧電発振器の周囲温度測定方法の一例について図4を参照しつつ説明する。
【0069】
図4に示す圧電発振器を用いて圧電発振器の周囲温度測定方法を実施した場合、周囲温度が変化していない状態では、感温センサ3の抵抗値が圧電振動子42付近の温度に従って変化する。
【0070】
例えば、圧電振動子42付近の温度が低くなると感温センサ3の抵抗値が大きくなり、感温センサ3の端子間電圧が大きくなり、オペアンプ47の出力電圧が大きくなる。これにより、オペアンプ47の出力電流が増大し、トランジスタ2bのコレクタ電流が増大して抵抗2aを流れる電流が増え、抵抗2aの発熱量が大きくなる。そのため、圧電振動子42付近の温度が低くなると、抵抗2aの発熱量が大きくなって圧電振動子42をより急速に温めることができる。
【0071】
また、例えば、圧電振動子42付近の温度が高くなると感温センサ3の抵抗値が小さくなり、感温センサ3の端子間電圧が小さくなり、オペアンプ47の出力電圧が小さくなる。これにより、オペアンプ47の出力電流が減少し、トランジスタ2bのコレクタ電流が減少して抵抗2aを流れる電流が減り、抵抗2aの発熱量が小さくなる。これにより、圧電振動子42付近の温度が高くなると抵抗2aの発熱量が小さくなって圧電振動子42をより緩やかに温めることができる。
【0072】
感温センサ3、温度制御部5及びヒータ部2において、このような動作が実施されることにより、圧電振動子42の温度は一定の温度になり、圧電振動子42は、発振回路18aにより印加した電圧に従って安定した周波数で発振する。
【0073】
さらに、図4に示す圧電発振器では、感温センサ3、温度制御部5及びヒータ部2において圧電振動子42の温度を制御するとともに、周囲温度が変化した場合には、周波数制御回路6aにより、ヒータ部2の電圧の変化に基づいて周囲温度の変化を測定し、この測定結果に基づいて圧電振動子42の周波数を制御する。
【0074】
ここで、周波数制御回路6aによる圧電振動子42の周波数の制御について詳細な説明を行う前に、図4に示す圧電発振器の温度特性の一例について図6を参照しつつ説明する。図6は、図4に示す圧電発振器の周波数温度特性の一例を示すグラフであり、縦軸は周波数偏差(ppb)、横軸は周囲温度(℃)を示す。なお、図6には、図4に示す圧電発振器の温度特性L3とともに、図4中の抵抗41を開(open)状態にした場合(即ち、周波数制御回路6aによる制御を行わない場合)の温度特性L100も示す。
【0075】
なお、図6には基準温度を25℃とした時の周波数温度特性を示す。そのため、図4に示す圧電発振器では、基準温度に対して設定された所定の温度範囲において、周波数温度特性の変動が最小となるように抵抗41、45の値が選択されている。
【0076】
抵抗41をopen状態にして周波数制御回路6aによる制御を行わない場合、図4に示す圧電発振器は、図6中にL100で示すように、約−20度〜約65度の範囲において周囲温度が高くなるにつれて、周波数偏差が小さくなっており、周囲温度が約25℃のときに周波数偏差が「0」となっている。
【0077】
図4に示す圧電発振器では、図5に示すように、例えば、周囲温度が高くなるとヒータ部2の電圧が高くなり、周囲温度が低くなるとヒータ部2の電圧が低くなる。周波数制御回路6aは、このようなヒータ部2(接続点a)の電圧の変化を用いて、周囲温度の変化を測定している。さらに、周波数制御回路6aでは、測定した周囲温度の変化に従って圧電振動子42の周波数を制御するために、ヒータ部2(接続点a)の電圧を制御してバリキャップダイオード43の容量を調整している。
【0078】
例えば、周囲温度が高くなると、図5に示すように、ヒータ部2の電圧が高くなる。これにより、接続点bの電圧が高くなり、バリキャップダイオード43のカソード端子とアノード端子との間の電位差が大きくなり、バリキャップダイオード43の容量が小さくなるため圧電振動子42の周波数が高くなる。また、例えば、周囲温度が低くなると、図5に示すように、ヒータ部2の電圧が低くなる。これにより、接続点bの電圧が低くなり、バリキャップダイオード43のカソード端子とアノード端子との間の電位差が小さくなり、バリキャップダイオード43の容量が大きくなるため圧電振動子42の周波数が低くなる。
【0079】
図4に示す圧電発振器では、周波数制御回路6aにおいてこのような動作を行うことにより、周囲温度の変化に応じてバリキャップダイオード43の容量を調整し、圧電振動子42の周波数を制御して、圧電発振器の周波数温度特性を調整している。そのため、図6中にL3で示すように、抵抗41をopen状態にした場合と比較して、周波数偏差を略一定にすることができる。つまり、図4に示す圧電発振器では、温度が高くなるほど周波数が高くなる方向に、つまり周波数温度特性のカーブが左回転する方向に圧電振動子42の出力を調整することができる。
【0080】
従って、図4に示す圧電発振器及びこれを用いた圧電発振器の周囲温度測定方法によれば、槽外感温センサ206(図12参照)を省略することができる。その結果、圧電発振器を小型化することや低コストで製造することもできる。
【0081】
また、図4に示す圧電発振器及びこれを用いた圧電発振器の周囲温度測定方法によれば、ヒータ部2に熱的に接続されている全ての部材それぞれが受けた周囲温度の変化の影響の総和である、ヒータ部2の電圧の変化に基づいて、周囲温度の変化を測定しているため、周囲温度の変化を正しく測定することができる。
【0082】
さらに、図4に示す圧電発振器及びこれを用いた圧電発振器の周囲温度測定方法によれば、測定した周囲温度の変化に基づいて、周波数制御回路6aにより圧電振動子42の周波数を制御しているため、周囲温度が変化した場合にも圧電発振器を安定した周波数で発振させることができる。
【0083】
[圧電発振器の電気的構成例2]
次に、図1に示す圧電発振器10の電気的構成の例2について図7を参照しつつ説明する。図7は、図1に示す圧電発振器10の電気的構成例2を示す回路図である。なお、図1、図3、図4及び図7において同じ符号は同様の部位を示すものとし、この同様の部位については説明を省略する。
【0084】
図7に示す圧電発振器の温度特性は、図示しないが、傾きが図6に示すものと反転している(即ち、周囲温度が高くなるにつれて周波数偏差が大きくなっている)ものとする。
【0085】
図7に示す圧電発振器では、周波数制御回路6bにより、ヒータ部2の電圧の変化に基づいて周囲温度の変化を測定し、さらに、この測定結果に従って圧電振動子42の周波数を制御している。
【0086】
図7に示す圧電発振器は、図4に示す圧電発振器と比較して、周波数制御回路6bの構成が異なっており、他の構成については同様である。
【0087】
周波数制御回路6bは、図7に示すように、抵抗71,72,44とバリキャップダイオード43とから構成されている。さらに詳しくは、図7に示す圧電発振器では、図4に示す抵抗41及び抵抗45は削除されており、接続点aと接続点c(バリキャップダイオード43のアノード端子)との間に抵抗71が接続されており、接続点bに抵抗72の一端子が接続されている。さらに、この抵抗72の他端子はレギュレータ52を介して電源電圧に接続されている。
【0088】
なお、図7に示す圧電発振器では、基準温度に対して設定された所定の温度範囲において、周波数温度特性の変動が最小となるように抵抗71,44の値が選択されている。
【0089】
次いで、図7に示す圧電発振器を用いた圧電発振器の周囲温度測定方法の一例について図7を参照しつつ説明する。
【0090】
周囲温度が変化していない状態では、図4に示す圧電発振器と同様の手順で、感温センサ3、温度制御部5及びヒータ部2において圧電振動子42の温度を制御しており、詳細な説明を省略する。
【0091】
図7に示す圧電発振器では、感温センサ3、温度制御部5及びヒータ部2において圧電振動子42の温度を制御するとともに、周囲温度が変化した場合には、周波数制御回路6bにより、ヒータ部2の電圧の変化に基づいて周囲温度の変化を測定し、この測定結果に従って、圧電振動子42の周波数を制御している。
【0092】
例えば、周囲温度が高くなるとヒータ部2の電圧が高くなることにより(図5参照)、接続点cの電圧が高くなり、バリキャップダイオード43のカソード端子とアノード端子との間の電位差が小さくなる。そのため、周囲温度が高くなるとバリキャップダイオード43の容量が大きくなる。また、例えば、周囲温度が低くなるとヒータ部2の電圧が低くなることにより(図5参照)、接続点cの電圧が低くなり、バリキャップダイオード43のカソード端子とアノード端子との間の電位差が大きくなり、バリキャップダイオード43の容量が小さくなる。
【0093】
図7に示す圧電発振器では、周波数制御回路6bにおいてこのような動作を行うことにより、周囲温度の変化に応じてバリキャップダイオード43の容量を調整し、圧電振動子42の周波数を制御して、圧電発振器の周波数温度特性を調整している。そのため、周波数偏差を略一定にすることができる。つまり、図7に示す圧電発振器では、温度が高くなるほど周波数が低くなる方向に、つまり周波数温度特性のカーブが右回転する方向に圧電振動子42の出力を調整することができる。
【0094】
従って、図7に示す圧電発振器及びこれを用いた圧電発振器の周囲温度測定方法によれば、槽外感温センサ206(図12参照)を省略することができる。その結果、圧電発振器を小型化することや低コストで製造することもできる。
【0095】
また、図7に示す圧電発振器及びこれを用いた圧電発振器の周囲温度測定方法によれば、ヒータ部2に熱的に接続されている全ての部材それぞれが受けた周囲温度の変化の影響の総和である、ヒータ部2の電圧の変化に基づいて、周囲温度の変化を測定しているため、周囲温度の変化を正しく測定することができる。
【0096】
さらに、図7に示す圧電発振器及びこれを用いた圧電発振器の周囲温度測定方法によれば、測定した周囲温度の変化に基づいて、周波数制御回路6bにより圧電振動子42の周波数を制御しているため、周囲温度が変化した場合にも圧電発振器を安定した周波数で発振させることができる。
【0097】
[圧電発振器の電気的構成例3]
次に、図1に示す圧電発振器10の電気的構成の例3について図8を参照しつつ説明する。図8は、図1に示す圧電発振器10の電気的構成例3を示す回路図である。なお、図1、図3、図4、図7及び図8において同じ符号は同様の部位を示すものとし、この同様の部位については説明を省略する。
【0098】
図8に示す圧電発振器では、周波数制御回路6cにより、ヒータ部2の電圧の変化に基づいて周囲温度の変化を測定し、さらに、この測定結果に従って圧電振動子42の周波数を制御している。
【0099】
図8に示す圧電発振器は、図4及び図7に示す圧電発振器と比較して、周波数制御回路6cの構成が異なっており、他の構成については同様である。
【0100】
図8に示す圧電発振器では、製造時に、前述の周波数制御回路6aと周波数制御回路6bとが周波数制御回路6c内に設けられている。そして、使用時に、圧電発振器の温度特性(温度特性の傾き)に合わせて、周波数制御回路6aの部分及び周波数制御回路6bの部分のうちのいずれか一方の部分をopen状態にすることによって、他の一方の部分の回路を採用している。
【0101】
周波数制御回路6cは、図8に示すように、抵抗41の一端子と抵抗71の一端子とが接続点aに並列に接続されている。この抵抗41の他端子は、図4に示す圧電発振器と同様に、接続点bに接続されており、抵抗71の他端子は、図7に示す圧電発振器と同様に、接続点cに接続されている。さらに、抵抗41の他端子と接続点bとの間の接続点dには、抵抗45の一端子と抵抗72の一端子とが接続されている。この抵抗45の他端子は接地されており、抵抗72の他端子はレギュレータ52を介して電源電圧に接続されている。
【0102】
図8に示す圧電発振器は、このような構成となっているので、例えば、抵抗71及び抵抗72をopen状態にすることによって図4に示す圧電発振器を得ることができ、図4に示す圧電発振器を用いた場合と同様の手順で、圧電発振器の周囲温度測定方法を実施することができる。また、例えば、抵抗41及び抵抗45をopen状態にすることによって図7に示す圧電発振器を得ることができ、図7に示す圧電発振器を用いた場合と同様の手順で、圧電発振器の周囲温度測定方法を実施することができる。つまり、図8に示す圧電発振器では、温度が高くなるほど周波数が高くなる方向に、つまり周波数温度特性のカーブが左回転する方向に圧電振動子42の出力を調整することもでき、温度が高くなるほど周波数が低くなる方向に、つまり周波数温度特性のカーブが右回転する方向に圧電振動子42の出力を調整することもできる。
【0103】
従って、図8に示す圧電発振器及びこれを用いた圧電発振器の周囲温度測定方法によれば、図4及び図7に示す圧電発振器及びこれを用いた圧電発振器の周囲温度測定方法と同様の効果が得られるとともに、使用時に周波数制御回路6cの構成を選択することができる。その結果、周波数温度特性が異なる種々の圧電発振器において汎用することができる。
【0104】
[圧電発振器の電気的構成例4]
次に、図1に示す圧電発振器10の電気的構成の例4について図9を参照しつつ説明する。図9は、図1に示す圧電発振器10の電気的構成例4を示す回路図である。なお、図1、図3、図4、図7、図8及び図9において同じ符号は同様の部位を示すものとし、この同様の部位については説明を省略する。
【0105】
図9に示す圧電発振器では、周囲温度の変化を測定する際に、ヒータ部2の消費電力の変化としてヒータ部2の電流の変化を用いている。
【0106】
図9に示す圧電発振器の周波数温度特性は、図4に示す圧電発振器の周波数温度特性と同じ(図6参照)であるものとする。
【0107】
図9に示す圧電発振器では、周波数制御回路6dにより、ヒータ部2の電流の変化に基づいて周囲温度の変化を測定し、さらに、この測定結果に従って圧電振動子42の周波数を制御している。
【0108】
図9に示す圧電発振器は、図4に示す圧電発振器と比較して、周波数制御回路6dの構成が異なっており、他の構成については同様である。
【0109】
周波数制御回路6dは、抵抗91,92,93,44とバリキャップダイオード43とから構成されている。さらに詳しくは、図9に示す圧電発振器では、図4に示す抵抗41及び抵抗45は削除されており、トランジスタ2bのエミッタ端子に抵抗91の一端子が接続されており、トランジスタ2bと抵抗91との接続点gが、抵抗92を介して、直列に接続された圧電振動子42の一端子とバリキャップダイオード43のカソード端子との接続点bに接続されている。なお、抵抗92と接続点bとの間の接続点hには抵抗93の一端子が接続されている。また、抵抗91,93の他端子は接地されている。即ち、周波数制御回路6dは、ヒータ部2の電流を電圧に変換し、この変換後の電圧の変化に基づいて、周囲温度の変化を測定している。
【0110】
なお、図9に示す圧電発振器では、基準温度に対して設定された所定の温度範囲において、周波数温度特性の変動が最小となるように抵抗44,91,92,93の値が選択されている。
【0111】
また、図9に示す圧電発振器では、周波数制御回路6d全体が恒温槽4外部に配置されているが、周波数制御回路6dのうち抵抗91のみが、トランジスタ2bとともに恒温槽4内部(例えば、図3に示すメイン基板12の一主面12a)に配置されていてもよい。
【0112】
次いで、図9に示す圧電発振器を用いた圧電発振器の周囲温度測定方法の一例について図9を参照しつつ説明する。
【0113】
図9に示す圧電発振器を用いて圧電発振器の周囲温度測定方法を実施した場合、周囲温度が変化していない状態では、図4に示す圧電発振器を用いた場合と同様の手順で、感温センサ3、温度制御部5及びヒータ部2において圧電振動子42の温度を制御しており、詳細な説明を省略する。
【0114】
ここで、ヒータ部2の電流と周囲温度との関係について図10を参照しつつ説明する。図10は、ヒータ部2の電流と周囲温度との関係を示すグラフであり、縦軸はヒータ部の電流であるヒータ電流(A)、横軸は周囲温度(℃)を示す。但し、感温センサ3で測定する圧電振動子42の温度はほぼ一定に制御されている。
【0115】
図10中にL4で示すように、約−40度〜約80度の範囲において周囲温度が上昇するとヒータ電流は低くなっており、ヒータ電流は周囲温度に対して一次関数になっている。即ち、ヒータ部2の電流は、ヒータ部2に熱的に接続されている全ての部材それぞれが受けた周囲温度の変化の影響の総和に従って変化する。これにより、図9に示す圧電発振器によれば、ヒータ部2の電流の変化に基づいて周囲温度の変化を測定することができる。
【0116】
例えば、周囲温度が高くなると、図10に示すように、ヒータ部2の電流が小さくなる。これにより、接続点bの電圧が高くなり、バリキャップダイオード43のカソード端子とアノード端子との間の電位差が大きくなり、バリキャップダイオード43の容量が小さくなる。また、例えば、周囲温度が低くなると、図10に示すように、ヒータ部2の電流が大きくなる。これにより、接続点bの電圧が低くなり、バリキャップダイオード43のカソード端子とアノード端子との間の電位差が小さくなり、バリキャップダイオード43の容量が大きくなる。
【0117】
図9に示す圧電発振器では、周波数制御回路6dにおいてこのような動作を行うことにより、周囲温度の変化に応じてバリキャップダイオード43の容量を調整し、圧電振動子42の周波数を制御して、圧電発振器の周波数温度特性を調整している。そのため、周波数偏差を略一定にすることができる。つまり、図9に示す圧電発振器では、温度が高くなるほど周波数が高くなる方向に、つまり周波数温度特性のカーブが左回転する方向に圧電振動子42の出力を調整することができる。
【0118】
従って、図9に示す圧電発振器及びこれを用いた圧電発振器の周囲温度測定方法によれば、槽外感温センサ206(図12参照)を省略することができる。その結果、圧電発振器を小型化することや低コストで製造することもできる。
【0119】
また、図9に示す圧電発振器及びこれを用いた圧電発振器の周囲温度測定方法によれば、ヒータ部2に熱的に接続されている全ての部材それぞれが受けた周囲温度の変化の影響の総和である、ヒータ部2の電流の変化に基づいて、周囲温度の変化を測定しているため、周囲温度の変化を正しく測定することができる。
【0120】
さらに、図9に示す圧電発振器及びこれを用いた圧電発振器の周囲温度測定方法によれば、測定した周囲温度の変化に基づいて、周波数制御回路6dにより圧電振動子42の周波数を制御しているため、周囲温度が変化した場合にも圧電発振器を安定した周波数で発振させることができる。
【0121】
なお、本実施形態において、ヒータ部2は、図4、図7、図8及び図9に示すように、アルミブロック15の外部に配置されているが、ヒータ部2を構成する抵抗2a及びトランジスタ2bのうち抵抗2aはアルミブロック15内部に配置されていてもよい。また、本実施形態において、トランジスタ2bは、図4、図7、図8及び図9に示すように、恒温槽4内部に配置されているが、恒温槽4外部(例えば、図3に示すメイン基板12の他主面12b)に配置されていてもよい。
【0122】
また、本明細書においては、圧電発振器の一例として恒温槽型圧電発振器を用いて説明を行っているが、本発明はこの形態に限定されるものではない。例えば、感温センサやヒータ部を用いて温度調整を行うが、恒温槽にアルミブロックを備えていない圧電発振器において本発明を実施してもよい。この場合には、図1に示す圧電発振器10と同様の効果が得られるとともに、圧電発振器をさらに小型化することができる。
【0123】
また、例えば、恒温槽が2重構造になっておりより精密な温度調整を行うことができる圧電発振器において本発明を実施してもよい。この場合には、図1に示す圧電発振器10と同様の効果が得られるとともに、圧電発振器の周波数温度特性をさらに高精度に安定させることができる。
【0124】
なお、前記圧電振動子の水晶振動片としては、ATカット水晶振動板またはSCカット水晶振動板を用いることができる。
【0125】
また、前記発振回路としては、オーバートーン発振を抑制するため及び(または)SCカット水晶振動板を用いた場合におけるB−MODE(Bモード)発振を抑制するために、急峻な周波数選択機能を備えたものが好ましく、例えば、タンク回路またはB.P.F(Band Pass filter)を備えていることが好ましい。
【0126】
さらに、発振回路、この発振回路を構成する周波数選択回路及び圧電振動子からなる発振に関わる部位を設計する際には、圧電発振器における位相雑音の発生を抑制するためや短期安定度(短い時間周期内での出力周波数の不規則な揺らぎ)を向上するために、前記部位のQ値を向上することが必要とされる。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明の圧電発振器及びこの圧電発振器の周囲温度測定方法は、圧電発振器の周波数を安定させる際に活用できる。
【符号の説明】
【0128】
1 圧電振動子
2 ヒータ部
3 感温センサ
4 恒温槽
5 温度制御部
6 周波数制御回路
10 圧電発振器
18 発振部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電発振器において、
圧電振動子と発振回路とを含む発振部と、前記圧電振動子を温めるヒータ部と、当該ヒータ部の温度制御をする温度制御部とを備えており、
前記ヒータ部の消費電力の変化に基づいて、当該圧電発振器の周囲の温度の変化を測定することを特徴とする。
【請求項2】
請求項1記載の圧電発振器において、
前記ヒータ部の消費電力の変化として、前記ヒータ部の電圧の変化または前記ヒータ部の電流の変化を用いる圧電発振器。
【請求項3】
請求項1または2記載の圧電発振器において、
前記圧電発振器の周囲の温度の変化に基づいて、前記圧電振動子の周波数を制御する周波数制御回路をさらに備えた圧電発振器。
【請求項4】
請求項1〜3のうちのいずれか1つに記載の圧電発振器において、
恒温槽をさらに備えており、当該恒温槽内部に前記圧電振動子及び前記ヒータ部を配した圧電発振器。
【請求項5】
請求項4記載の圧電発振器において、
前記圧電振動子の温度を測定する感温センサをさらに備えており、
前記恒温槽内部に前記感温センサを配しており、
前記感温センサの測定結果に基づいて前記ヒータ部の動作を制御する圧電発振器。
【請求項6】
圧電発振器の周囲温度測定方法において、
前記圧電発振器が、圧電振動子と発振回路とを含む発振部と、前記圧電振動子を温めるヒータ部と当該ヒータ部の温度制御をする温度制御部とを備えており、
前記圧電振動子の温度を前記感温センサで測定する手順と、
前記感温センサの測定結果に基づいて前記ヒータ部の動作を制御する手順と、
前記ヒータ部の消費電力の変化に基づいて、前記圧電発振器の周囲の温度の変化を測定する手順とを含む圧電発振器の周囲温度測定方法。
【請求項7】
請求項6記載の圧電発振器の周囲温度測定方法において、
前記圧電発振器が、前記圧電発振器の周囲の温度の変化に基づいて前記圧電振動子の周波数を制御する周波数制御回路をさらに備えており、
前記圧電発振器の周囲の温度の変化に基づいて、前記周波数制御回路により前記圧電振動子の周波数を制御する手順をさらに含む圧電発振器の周囲温度測定方法。
【請求項1】
圧電発振器において、
圧電振動子と発振回路とを含む発振部と、前記圧電振動子を温めるヒータ部と、当該ヒータ部の温度制御をする温度制御部とを備えており、
前記ヒータ部の消費電力の変化に基づいて、当該圧電発振器の周囲の温度の変化を測定することを特徴とする。
【請求項2】
請求項1記載の圧電発振器において、
前記ヒータ部の消費電力の変化として、前記ヒータ部の電圧の変化または前記ヒータ部の電流の変化を用いる圧電発振器。
【請求項3】
請求項1または2記載の圧電発振器において、
前記圧電発振器の周囲の温度の変化に基づいて、前記圧電振動子の周波数を制御する周波数制御回路をさらに備えた圧電発振器。
【請求項4】
請求項1〜3のうちのいずれか1つに記載の圧電発振器において、
恒温槽をさらに備えており、当該恒温槽内部に前記圧電振動子及び前記ヒータ部を配した圧電発振器。
【請求項5】
請求項4記載の圧電発振器において、
前記圧電振動子の温度を測定する感温センサをさらに備えており、
前記恒温槽内部に前記感温センサを配しており、
前記感温センサの測定結果に基づいて前記ヒータ部の動作を制御する圧電発振器。
【請求項6】
圧電発振器の周囲温度測定方法において、
前記圧電発振器が、圧電振動子と発振回路とを含む発振部と、前記圧電振動子を温めるヒータ部と当該ヒータ部の温度制御をする温度制御部とを備えており、
前記圧電振動子の温度を前記感温センサで測定する手順と、
前記感温センサの測定結果に基づいて前記ヒータ部の動作を制御する手順と、
前記ヒータ部の消費電力の変化に基づいて、前記圧電発振器の周囲の温度の変化を測定する手順とを含む圧電発振器の周囲温度測定方法。
【請求項7】
請求項6記載の圧電発振器の周囲温度測定方法において、
前記圧電発振器が、前記圧電発振器の周囲の温度の変化に基づいて前記圧電振動子の周波数を制御する周波数制御回路をさらに備えており、
前記圧電発振器の周囲の温度の変化に基づいて、前記周波数制御回路により前記圧電振動子の周波数を制御する手順をさらに含む圧電発振器の周囲温度測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−213102(P2010−213102A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58404(P2009−58404)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】
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