説明

圧電薄膜音叉振動片、圧電薄膜音叉振動子及び加速度センサ

【課題】チタン酸ジルコン酸鉛(以下、PZTと呼ぶ。)における圧電出力係数(以下、gと呼ぶ。)の絶対値がその他の圧電材料におけるgの絶対値の中で小さい方に位置付けられ、PZTは、所定の機械エネルギーを効率良く電気エネルギーに変換できないという課題がある。
【解決手段】検出用圧電薄膜部152,162,172,182のg(ZnO)の絶対値は、駆動用圧電薄膜部112,122,132,142のg(PZT)の絶対値より大きくなるように形成されている。このことから、検出用圧電薄膜部152,162,172,182に加えられた所定の大きさの変形(圧電歪)は、検出用圧電薄膜部152,162,172,182で交流電圧に効率良く変換することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動用圧電薄膜素子及び検出用圧電薄膜素子を備えた圧電薄膜音叉振動片、圧電薄膜音叉振動子及び加速度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基部と、基部から延在された2つのアーム(以下、振動腕部と呼ぶ。)と、2つの振動腕部それぞれの主面上に形成された駆動部(以下、駆動用圧電薄膜素子と呼ぶ。)及び検出部(以下、検出用圧電薄膜素子と呼ぶ。)とが備えられた薄膜微少機械式共振子(以下、圧電薄膜音叉振動片と呼ぶ。)が開示されている(例えば、特許文献1参照)。そして、この圧電薄膜音叉振動片はジャイロ素子などに用いられている。それぞれの駆動用圧電薄膜素子は、それぞれの振動腕部の主面上の振動腕部が延在された延在方向の中心線(以下、主面中心線と呼ぶ。)より内側及び外側に、それぞれ離間するように、第1、第2の電極(以下、駆動用下部電極部と呼ぶ。)と、第1、第2の駆動用下部電極部上にそれぞれ設けられた第1、第2の圧電薄膜(以下、駆動用圧電薄膜部と呼ぶ。)と、第1、第2の駆動用圧電薄膜部上にそれぞれ設けられた第3、第4の電極(以下、駆動用上部電極部と呼ぶ。)とを有する。各検出圧電薄膜素子は、第1、第2の駆動用下部電極部と離間するように設けられた第5の電極(以下、検出用下部電極部と呼ぶ。)と、検出用下部電極部上に設けられた第3の圧電薄膜(以下、検出用圧電薄膜部と呼ぶ。)と、検出用圧電薄膜部上に設けられた第6の電極(以下、検出用上部電極部と呼ぶ。)とを有する。駆動用圧電薄膜部及び検出用圧電薄膜部は、共にチタン酸ジルコン酸鉛(以下、PZTと呼ぶ。)が主体の材料で形成されている。また、上述の内側とはそれぞれの主面中心線を基点にして2つの振動腕部間の中間線に向かう側(それぞれの主面中心線の間。)を指し、外側とはそれぞれの主面中心線を基点にして前記中間線から遠ざかる側を指す。
【0003】
【特許文献1】特開2003−227719号公報(11頁〜16頁、図8〜図13)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の圧電薄膜音叉振動片では、駆動用圧電薄膜部及び検出用圧電薄膜部は、共にPZTが主体の材料で形成されている。PZTにおける圧電歪定数(以下、dと呼ぶ。)の絶対値は、その他の圧電材料におけるdの絶対値の中で大きい方に位置付けられ、PZTは、所定の電気エネルギーを効率良く機械エネルギーに変換できるという長所を有する。他方、PZTにおける圧電出力係数(以下、gと呼ぶ。)の絶対値がその他の圧電材料におけるgの絶対値の中で小さい方に位置付けられ、PZTは、所定の機械エネルギーを効率良く電気エネルギーに変換できない。
これにより、従来の圧電薄膜音叉振動片では、駆動の効率アップと検出の感度向上とが両立しないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかる圧電薄膜音叉振動片は、基部と、前記基部から互いに略平行に延在された一対の振動腕部と、それぞれの前記振動腕部の少なくともいずれか1つの主面または側面に形成され、電荷が印加されて発生する圧電歪によりそれぞれの前記振動腕部を屈曲振動させる駆動用圧電薄膜素子と、それぞれの前記振動腕部の前記駆動用圧電薄膜素子が形成された面と対向する面に形成され、それぞれの前記振動腕部の屈曲振動により発生する圧電歪を電荷に変換して出力する検出用圧電薄膜素子とを備え、前記駆動用圧電薄膜素子は、駆動用圧電薄膜部を有し、前記検出用圧電薄膜素子は、検出用圧電薄膜部を有し、前記駆動用圧電薄膜部の圧電歪定数の絶対値は、前記検出用圧電薄膜部の圧電歪定数の絶対値より大きく、前記検出用圧電薄膜部の圧電出力係数の絶対値は、前記駆動用圧電薄膜部の圧電出力係数の絶対値より大きいことを特徴とする。
【0007】
これによれば、圧電薄膜音叉振動片は、基部と、基部から互いに略平行に延在された一対の振動腕部と、それぞれの振動腕部の少なくともいずれか1つの面に形成され、振動腕部を屈曲振動させる駆動用圧電薄膜素子と、それぞれの振動腕部の駆動用圧電薄膜素子が形成された面と対向する面に形成され、振動腕部の屈曲振動により発生する圧電歪を電荷に変換して出力する検出用圧電薄膜素子とを備えている。
そして、圧電薄膜音叉振動片は、駆動用圧電薄膜素子が、駆動用圧電薄膜部を有し、検出用圧電薄膜素子が、検出用圧電薄膜部を有し、駆動用圧電薄膜部の圧電歪定数の絶対値が、検出用圧電薄膜部の圧電歪定数の絶対値より大きく、検出用圧電薄膜部の圧電出力係数の絶対値が、駆動用圧電薄膜部の圧電出力係数の絶対値より大きい。
【0008】
このことから、圧電薄膜音叉振動片は、駆動用圧電薄膜素子に印加された電荷が効率よく圧電歪に変換されることで、一対の振動腕部が屈曲振動しやすくなるとともに、検出用圧電薄膜素子が一対の振動腕部の屈曲振動により発生する圧電歪を、効率よく電荷に変換して出力することができる。これにより、圧電薄膜音叉振動片は、駆動の効率アップと検出の感度向上とが両立できる。
【0009】
[適用例2]上記適用例にかかる圧電薄膜音叉振動片は、前記基部の一主面から延設されているそれぞれの前記振動腕部の一方の主面に、前記駆動用圧電薄膜素子が形成され、前記基部の他主面から延設されているそれぞれの前記振動腕部の他方の主面に、前記検出用圧電薄膜素子が形成されていることが好ましい。
【0010】
これによれば、圧電薄膜音叉振動片は、基部の一主面から延設されているそれぞれの振動腕部の一方の主面に、駆動用圧電薄膜素子が形成され、基部の他主面から延設されているそれぞれの振動腕部の他方の主面に、検出用圧電薄膜素子が形成されている。
【0011】
このことから、圧電薄膜音叉振動片は、2つの振動腕部における同一側の一方の主面及び他方の主面に形成されている各圧電薄膜素子が同一種類である。
これにより、圧電薄膜音叉振動片は、例えば、一方の振動腕部の一方の主面に駆動用圧電薄膜素子が形成され、他方の振動腕部の他方の主面に駆動用圧電薄膜素子が形成されている場合に発生しやすい、振動腕部のねじれ成分が含まれた屈曲振動を、抑制することができる。
また、圧電薄膜音叉振動片は、例えば、蒸着法やスパッタ法などで成膜する際に、2つの振動腕部を一括して行えることから、各圧電薄膜素子の形成が容易に行える。
【0012】
[適用例3]上記適用例にかかる圧電薄膜音叉振動片は、それぞれの前記振動腕部の前記一方の主面上における前記振動腕部が延在された延在方向の主面中心線より内側と外側とに、前記駆動用圧電薄膜素子がそれぞれ形成され、それぞれの前記振動腕部の前記他方の主面上における前記振動腕部が延在された前記延在方向の主面中心線より内側と外側とに、前記検出用圧電薄膜素子がそれぞれ形成されていることが好ましい。
【0013】
これによれば、圧電薄膜音叉振動片は、それぞれの振動腕部の一方の主面上における振動腕部が延在された延在方向の主面中心線より内側と外側とに、駆動用圧電薄膜素子がそれぞれ形成され、それぞれの振動腕部の他方の主面上における振動腕部が延在された延在方向の主面中心線より内側と外側とに、検出用圧電薄膜素子がそれぞれ形成されている。
【0014】
このことから、圧電薄膜音叉振動片は、例えば、内側の駆動用圧電薄膜素子と外側の駆動用圧電薄膜素子とで印加する電荷の極性を変えることができる。これにより、圧電薄膜音叉振動片は、振動腕部をより効率よく屈曲振動させることができる。
【0015】
[適用例4]上記適用例にかかる圧電薄膜音叉振動片は、前記駆動用圧電薄膜素子及び前記検出用圧電薄膜素子の前記振動腕部に接する側の電位が、互いに等電位であることが好ましい。
【0016】
これによれば、圧電薄膜音叉振動片は、駆動用圧電薄膜素子及び検出用圧電薄膜素子の振動腕部に接する側の電位が、互いに等電位であることから、電荷が印加されることに起因する振動腕部自体の圧電作用による圧電歪成分の発生を抑制できる。
このことから、圧電薄膜音叉振動片は、検出用圧電薄膜素子が不要な圧電歪成分を殆ど含まない圧電歪を、電荷に変換して出力することができる。そして、圧電薄膜音叉振動片は、スプリアスが小さくできるのでノイズの少ない出力が得られる。
【0017】
[適用例5]本適用例にかかる圧電薄膜音叉振動子は、上記適用例のいずれか1つの圧電薄膜音叉振動片と、前記圧電薄膜音叉振動片を気密封止された内部に収容するパッケージとを備えたことを特徴とする。
【0018】
これによれば、圧電薄膜音叉振動子は、上記適用例のいずれか1つの圧電薄膜音叉振動片と、圧電薄膜音叉振動片を気密封止された内部に収容するパッケージとを備えている。このことから、圧電薄膜音叉振動子は、圧電薄膜音叉振動片が気密封止されたパッケージ内に収容されていることで、安定した屈曲振動を維持することができる。
【0019】
[適用例6]本適用例にかかる加速度センサは、上記適用例のいずれか1つの圧電薄膜音叉振動片を、加速度検出素子として備えたことを特徴とする。
【0020】
これによれば、加速度センサは、上記適用例のいずれか1つの圧電薄膜音叉振動片を加速度検出素子として備えていることから、加速度の変化に伴う圧電薄膜音叉振動片の屈曲振動数の変化を効率よく検出できることにより、加速度を感度よく検出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、実施形態を図面に沿って説明する。以下の説明で参照する図は、図示の便宜上、部材ないし部分の縦横の縮尺が実際とは異なる模式図である。
【0022】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の圧電薄膜音叉振動片を示す斜視図であり、図2は、図1のA−A線断面図及び各圧電薄膜素子の接続説明図である。なお、本実施形態の圧電薄膜音叉振動片の音叉振動片体には、圧電体としての周波数温度特性に優れる水晶振動片体を例示して説明する。
【0023】
図1、図2に示すように、圧電薄膜音叉振動片としての圧電薄膜水晶振動片10は、水晶振動片体20の基部21の一辺から、互いに略平行に延在された一対の振動腕部30,40を有した音叉型の振動片である。
基部21において、振動腕部30,40の延在方向とは逆方向に支持部22が設けられている。
ここで、振動腕部30,40において、振動腕部30,40の延在方向と振動腕部30,40の配列方向(振動腕部30,40と交差する方向)とにより規定される面に略沿った面を主面とし、振動腕部30,40の配列方向に略直交する面を側面とする。
振動腕部30の表面には、互いに対向する一方の主面としての主面31及び他方の主面としての主面32と、互いに対向する側面33,34とが形成されている。
振動腕部40の表面には、互いに対向する一方の主面としての主面41及び他方の主面としての主面42と、互いに対向する側面43,44とが形成されている。
主面31,32,41,42には、圧電薄膜素子110,120,130,140,150,160,170,180が形成されている。
なお、一対の振動腕部30,40は、振動腕部30と振動腕部40との間の中間線C0に対して対称形である。
ここで、振動腕部30,40が延在された延在方向及び圧電薄膜水晶振動片10の長さ方向をY軸方向、Y軸方向に直交する圧電薄膜水晶振動片10の幅方向をX軸方向、X軸方向及びY軸方向に直交する圧電薄膜水晶振動片10の厚さ方向をZ軸方向とする。
【0024】
次に、主面31,32,41,42に形成される駆動用圧電薄膜素子(以下、駆動用素子と呼ぶ。)、検出用圧電薄膜素子(以下、検出用素子と呼ぶ。)としての圧電薄膜素子それぞれについて説明する。
図1、図2に示すように、圧電薄膜素子110は、主面31上のY軸方向の主面中心線C1の外側に略長方形の平面形状を有するように形成されている。
圧電薄膜素子120は、主面31上のY軸方向の主面中心線C1の内側に略長方形の平面形状を有するように形成されている。
圧電薄膜素子150は、主面32上のY軸方向の主面中心線C2の外側に略長方形の平面形状を有するように形成されている。
圧電薄膜素子160は、主面32上のY軸方向の主面中心線C2の内側に略長方形の平面形状を有するように形成されている。
圧電薄膜素子130は、主面41上のY軸方向の主面中心線C3の内側に略長方形の平面形状を有するように形成されている。
圧電薄膜素子140は、主面41上のY軸方向の主面中心線C3の外側に略長方形の平面形状を有するように形成されている。
圧電薄膜素子170は、主面42上のY軸方向の主面中心線C4の内側に略長方形の平面形状を有するように形成されている。
圧電薄膜素子180は、主面42上のY軸方向の主面中心線C4の外側に略長方形の平面形状を有するように形成されている。
【0025】
ここで、圧電薄膜素子110と圧電薄膜素子120とは、主面中心線C1に対し略線対称の平面形状を有するように形成されている。
圧電薄膜素子150と圧電薄膜素子160とは、主面中心線C2に対し略線対称の平面形状を有するように形成されている。
圧電薄膜素子130と圧電薄膜素子140とは、主面中心線C3に対し略線対称の平面形状を有するように形成されている。
圧電薄膜素子170と圧電薄膜素子180とは、主面中心線C4に対し略線対称の平面形状を有するように形成されている。
ここで、上述の内側とは主面中心線C1,C2,C3,C4を基点にして中間線C0に向かう側(主面中心線C1と主面中心線C3、主面中心線C2と主面中心線C4との間。)を指し、外側とは主面中心線C1,C2,C3,C4を基点にして中間線C0から遠ざかる側を指す。
【0026】
次に、圧電薄膜素子110,120,130,140,150,160,170,180それぞれを、駆動用素子として形成するか、または検出用素子として形成するかについて説明する。表1は、駆動用素子及び検出用素子の各主面上の配置を説明する表である。
【0027】
【表1】

【0028】
本実施形態では、圧電薄膜素子110,120,130,140,150,160,170,180に駆動用素子または検出用素子が、表1に示すように形成されたサンプルNo.1からサンプルNo.13までの圧電薄膜水晶振動片10を作製する。以下、サンプルNo.1の圧電薄膜水晶振動片10を代表例として説明する。
【0029】
この圧電薄膜水晶振動片10は、駆動用素子としての圧電薄膜素子110,120,130,140と、検出用素子としての圧電薄膜素子150,160,170,180とが形成されている。
【0030】
圧電薄膜水晶振動片10は、主面31に駆動用素子としての圧電薄膜素子110,120、主面41に駆動用素子としての圧電薄膜素子130,140が形成され、主面32に検出用素子としての圧電薄膜素子150,160、主面42に検出用素子としての圧電薄膜素子170,180が形成されている。
これにより、圧電薄膜水晶振動片10は、駆動用素子としての圧電薄膜素子110,120,130,140と、検出用素子としての圧電薄膜素子150,160,170,180とが、互いに対向している。
【0031】
なお、振動腕部30の主面31及び振動腕部40の主面41は、基部21の一主面23から延設され、振動腕部30の主面32及び振動腕部40の主面42は、基部21の他主面24から延設されている。つまり、主面31及び主面41は、基部の一主面23側にあり、主面32及び主面42は、基部21の他主面24側にある。
【0032】
次に、駆動用素子及び検出用素子の詳細について、圧電薄膜素子110及び圧電薄膜素子150を一例として図2に沿って説明する。
圧電薄膜素子110は、主面31上に形成された駆動用下部電極部としての下部電極部111と、下部電極部111上に形成された駆動用圧電薄膜部としての圧電薄膜部112と、圧電薄膜部112上に形成された駆動用上部電極部としての上部電極部113とを有している。
圧電薄膜素子150は、主面32上に形成された検出用下部電極部としての下部電極部151と、下部電極部151上に形成された検出用圧電薄膜部としての圧電薄膜部152と、圧電薄膜部152上に形成された検出用上部電極部としての上部電極部153とを有している。
下部電極部111の材質としてはPt、圧電薄膜部112の材質としてはPZT、上部電極部113の材質としてはAlを採用している。
下部電極部151の材質としてはMo、圧電薄膜部152の材質としてはZnO、上部電極部153の材質としてはAlを採用している。
【0033】
PZTの圧電歪定数(以下、d(PZT)と呼ぶ。)の絶対値は、約130×10-12[m/V]、ZnOの圧電歪定数(以下、d(ZnO)と呼ぶ。)の絶対値は、約6×10-12[m/V]である。よって、d(PZT)の絶対値>d(ZnO)の絶対値で示す大小関係となる。
また、PZTの圧電出力係数(以下、g(PZT)と呼ぶ。)の絶対値は、約12×10-3[Vm/N]、ZnOの圧電出力係数(以下、g(ZnO)と呼ぶ。)の絶対値は、約55×10-3[Vm/N]である。よって、g(ZnO)の絶対値>g(PZT)の絶対値で示す大小関係となる。
また、PtとPZTとの格子長は略一致していることから、下部電極部111,121,131,141上に形成された圧電薄膜部112,122,132,142の配向性が高まり、圧電薄膜部112,122,132,142のd(PZT)及びg(PZT)の絶対値がより大きくなる。
また、MoとZnOとの格子長も略一致していることから、下部電極部151,161,171,181上に形成された圧電薄膜部152,162,172,182の配向性が高まり、圧電薄膜部152,162,172,182のd(ZnO)及びg(ZnO)の絶対値がより大きくなる。
【0034】
圧電薄膜素子110,120,130,140,150,160,170,180などにおける成膜方法にはスパッタ法を採用している。そして、形状出し方法にはフォトリソグラフィー法及びエッチング法を採用している。
本実施形態では、圧電薄膜素子110,120,130,140,150,160,170,180を、側面33,34,43,44には形成せず、主面31,32,41,42のみに形成する。
加えて、本実施形態では、駆動用素子としての圧電薄膜素子110,120,130,140と、検出用素子としての圧電薄膜素子150,160,170,180とが、それぞれ水晶振動片体20の同一側の面である主面31,41と主面32,42とに形成されている。このことにより、スパッタ法、フォトリソグラフィー法やエッチング法は、振動腕部30,40を一括して処理できるなど適用が容易になる。
【0035】
次に、駆動用素子の電極部間の接続と検出用素子の電極部間の接続とについて、図2に沿って順次説明する。
駆動用素子において、下部電極部111,141、上部電極部123,133及び接続端子61は、接続電極51によって接続されている。また、これらの電極部とは互いに異極となる上部電極部113,143、下部電極部121,131及び接続端子62は、接続電極52によって接続されている。
検出用素子において、下部電極部151,181、上部電極部163,173及び接続端子63は、接続電極53によって接続されている。また、これらの電極部とは互いに異極となる上部電極部153,183、下部電極部161,171及び接続端子64は、接続電極54によって接続されている。
【0036】
図3は、圧電薄膜水晶振動片10を増幅器に接続した状態を示す等価回路図である。図2及び図3に示すように、駆動用素子(圧電薄膜素子110,120,130,140)は、接続端子61で増幅器と接続され、検出用素子(圧電薄膜素子150,160,170,180)は、接続端子63で増幅器と接続されている。そして、圧電薄膜部112,122,132,142と圧電薄膜部152,162,172,182とは、機械エネルギーで結合されている。このような構成により発振回路を構成することができる。
【0037】
次に、圧電薄膜水晶振動片10の振動について説明する。
図4は、圧電薄膜水晶振動片10の振動について模式的に示す説明図である。なお、図4(a)は図1のA−A線断面図であり、図4(b)は圧電薄膜水晶振動片10の振動方向を示す模式図である。図4を参照して第1の状態を説明する。
下部電極部111,141、上部電極部123,133にはプラス(+)電位を印加し、上部電極部113,143、下部電極部121,131にはマイナス(−)電位を印加する。ここで、圧電薄膜部112,122,132,142の分極方向は、矢印Poで示すような圧電薄膜部112,122,132,142の厚さ方向である。
【0038】
まず、振動腕部30について説明すると、圧電薄膜部112は、下部電極部111にプラス電位、上部電極部113にマイナス電位を印加すると分極方向に平行となるZ軸方向に伸張し、X軸方向及びY軸方向に収縮する。
また、圧電薄膜部122は、下部電極部121にマイナス電位、上部電極部123にプラス電位を印加するとZ軸方向に収縮し、X軸方向及びY軸方向に伸張する。
これらの伸張または収縮の歪みの大きさは、伸張または収縮の歪みが生じる方向の圧電薄膜部の寸法に比例する。圧電薄膜部112,122において、Y軸方向の寸法が最も大きくなるように形成されていることから、Y軸方向の歪みが最も大きくなる。
よって、主面中心線C1の外側に形成された圧電薄膜部112は、Y軸方向に最も大きく収縮する。また、主面中心線C1の内側に形成された圧電薄膜部122は、Y軸方向に最も大きく伸張する。このことによって、圧電薄膜部112,122が形成された振動腕部30は、矢印F1方向に変位する。
【0039】
振動腕部30が矢印F1方向に変位したことによって、振動腕部30に形成された圧電薄膜部152はY軸方向に収縮し、X軸方向及びZ軸方向に伸張する。このことによって、下部電極部151にプラス(+)電荷が、上部電極部153にマイナス(−)電荷が発生する。
また、圧電薄膜部162はY軸方向に伸張し、X軸方向及びZ軸方向に収縮する。このことによって、下部電極部161にマイナス電荷が、上部電極部163にプラス電荷が発生する。
【0040】
次に、振動腕部40について説明すると、圧電薄膜部142は、下部電極部141にプラス電位、上部電極部143にマイナス電位を印加すると分極方向に平行となるZ軸方向に伸張し、X軸方向及びY軸方向に収縮する。
また、圧電薄膜部132は、下部電極部131にマイナス電位、上部電極部133にプラス電位を印加するとZ軸方向に収縮し、X軸方向及びY軸方向に伸張する。
圧電薄膜部132,142においても、Y軸方向の寸法が最も大きくなるように形成されていることから、Y軸方向の歪みが最も大きくなる。
よって、主面中心線C3の外側に形成された圧電薄膜部142は、Y軸方向に最も大きく収縮する。また、主面中心線C3の内側に形成された圧電薄膜部132は、Y軸方向に最も大きく伸張する。このことによって、圧電薄膜部132,142が形成された振動腕部40は、矢印F2方向に変位する。
【0041】
振動腕部40が矢印F2方向に変位したことによって、振動腕部40に形成された圧電薄膜部182はY軸方向に収縮し、X軸方向及びZ軸方向に伸張する。このことによって、下部電極部181にプラス電荷が、上部電極部183にマイナス電荷が発生する。
また、圧電薄膜部172はY軸方向に伸張し、X軸方向及びZ軸方向に収縮する。このことによって、下部電極部171にマイナス電荷が、上部電極部173にプラス電荷が発生する。
【0042】
次に、第2の状態を説明する(図示は省略する。)。第2の状態は上述した第1の状態に対して、各上部電極部及び下部電極部に逆相の電圧を印加した状態を示している。つまり、下部電極部111,141、上部電極部123,133にはマイナス電位を印加し、上部電極部113,143、下部電極部121,131にはプラス電位を印加する。
【0043】
まず、振動腕部30について説明すると、圧電薄膜部112は、下部電極部111にマイナス電位、上部電極部113にプラス電位を印加すると分極方向に平行となるZ軸方向に収縮し、X軸方向及びY軸方向に伸張する。
また、圧電薄膜部122は、下部電極部121にプラス電位、上部電極部123にマイナス電位が印加されるとZ軸方向に伸張し、X軸方向及びY軸方向に収縮する。主面中心線C1の外側に形成された圧電薄膜部112は、Y軸方向に最も大きく伸張する。
また、主面中心線C1の内側に形成された圧電薄膜部122は、Y軸方向に最も大きく収縮する。このことによって、圧電薄膜部112,122が形成された振動腕部30は、矢印F3方向に変位する。
【0044】
振動腕部30が矢印F3方向に変位したことによって、振動腕部30に形成された圧電薄膜部152はY軸方向に伸張し、X軸方向及びZ軸方向に収縮する。このことによって、下部電極部151にマイナス電荷が、上部電極部153にプラス電荷が発生する。
また、圧電薄膜部162はY軸方向に収縮し、X軸方向及びZ軸方向に伸張する。このことによって、下部電極部161にプラス電荷が、上部電極部163にマイナス電荷が発生する。
【0045】
次に、振動腕部40について説明すると、圧電薄膜部142は、下部電極部141にマイナス電位、上部電極部143にプラス電位を印加すると分極方向に平行となるZ軸方向に収縮し、X軸方向及びY軸方向に伸張する。
また、圧電薄膜部132は、下部電極部131にプラス電位、上部電極部133にマイナス電位が印加するとZ軸方向に伸張し、X軸方向及びY軸方向に収縮する。
主面中心線C3の外側に形成された圧電薄膜部142は、Y軸方向に最も大きく伸張する。また、主面中心線C3の内側に形成された圧電薄膜部132は、Y軸方向に最も大きく収縮する。このことによって、圧電薄膜部132,142が形成された振動腕部40は、矢印F4方向に変位する。
【0046】
振動腕部40が矢印F4方向に変位したことによって、振動腕部40に形成された圧電薄膜部182はY軸方向に伸張し、X軸方向及びZ軸方向に収縮する。このことによって、下部電極部181にマイナス電荷が、上部電極部183にプラス電荷が発生する。
また、圧電薄膜部172はY軸方向に収縮し、X軸方向及びZ軸方向に伸張する。このことによって、下部電極部171にプラス電荷が、上部電極部173にマイナス電荷が発生する。
【0047】
上述した第1の状態と第2の状態とを繰り返す(つまり、交流電圧を印加する。)と振動腕部30,40は、X軸方向に屈曲振動を繰り返す。
【0048】
上述の第1の実施形態では、以下の効果が得られる。
(1)駆動用圧電薄膜部112,142と駆動用圧電薄膜部122,132とに印加される互いに逆相の交流電圧は、駆動用圧電薄膜部112,142と駆動用圧電薄膜部122,132とでは逆方向の歪み(圧電歪)を発生させる。
その結果、振動腕部30と振動腕部40とは、互いが逆方向の屈曲振動を行う。そして、かかる屈曲振動によって、検出用圧電薄膜素子150,160,170,180の検出用圧電薄膜部152,162,172,182は変形する。
【0049】
ここで、検出用圧電薄膜部152,162,172,182のg(ZnO)の絶対値は、駆動用圧電薄膜部112,122,132,142のg(PZT)の絶対値より大きくなるように形成されている。このことから、検出用圧電薄膜部152,162,172,182に加えられた所定の大きさの変形(圧電歪)は、検出用圧電薄膜部152,162,172,182で交流電圧に効率良く変換して出力することができる。これにより、圧電薄膜水晶振動片10は、駆動の効率アップと検出の感度向上とが両立できる。
【0050】
(2)圧電薄膜水晶振動片10は、下部電極部111,121,131,141の材質がPtであり、下部電極部111,121,131,141上に形成された圧電薄膜部112,122,132,142の材質がPZTである。
圧電薄膜水晶振動片10は、PtとPZTとの格子長が略一致していることにより、下部電極部111,121,131,141上に形成された圧電薄膜部112,122,132,142の配向性が高まり、圧電薄膜部112,122,132,142のd(PZT)の絶対値がより大きくなる。このことから、圧電薄膜水晶振動片10は、所定の電気エネルギーをより効率良く機械エネルギーに変換することができる。
【0051】
(3)圧電薄膜水晶振動片10は、下部電極部151,161,171,181の材質がMoであり、下部電極部151,161,171,181上に形成された圧電薄膜部152,162,172,182の材質がZnOである。
圧電薄膜水晶振動片10は、MoとZnOとの格子長が略一致していることにより、下部電極部151,161,171,181上に形成された圧電薄膜部152,162,172,182の配向性が高まり、圧電薄膜部152,162,172,182のg(ZnO)の絶対値がより大きくなる。このことから、圧電薄膜水晶振動片10は、所定の機械エネルギーをより効率良く電気エネルギーに変換することができる。
【0052】
(4)圧電薄膜水晶振動片10は、内側の駆動用圧電薄膜部122,132と外側の駆動用圧電薄膜部112,142とで印加する電位の極性を変えることができる。これにより、圧電薄膜水晶振動片10は、駆動用圧電薄膜部が各振動腕部に1つの場合と比較して、各振動腕部をより効率よく屈曲振動させることができる。
【0053】
(5)圧電薄膜水晶振動片10は、内側の駆動用圧電薄膜部122,132と外側の駆動用圧電薄膜部112,142とが、同一側の面である主面31,41に形成されていることから、振動腕部30,40のX軸方向以外へのねじれなどを伴う変形が抑制できる。 これにより、圧電薄膜水晶振動片10は、検出用圧電薄膜部152,162,172,182における不要な圧電歪成分の発生を低減できる。
【0054】
(変形例)
ここで、上記第1の実施形態の変形例を説明する。
図5は、第1の実施形態の変形例の各圧電薄膜素子の接続説明図である。
変形例の圧電薄膜水晶振動片10の駆動用素子の電極部間の接続と検出用素子の電極部間の接続とについて、図5に沿って順次説明する。
駆動用素子において、下部電極部111,121,131,141は、互いに接続され、接続端子62と接続されている。上部電極部113,143は、互いに接続され、接続端子61bと接続されている。
上部電極部123,133は、互いに接続され、接続端子61aと接続されている。
【0055】
検出用素子において、下部電極部151,161,171,181は、互いに接続され、接続端子64と接続されている。上部電極部153,183は、互いに接続され、接続端子63bと接続されている。
上部電極部163,173は、互いに接続され、接続端子63aと接続されている。
なお、接続端子61a,61b,63a,63bは、増幅器と接続されている。また、接続端子62は、接続端子64と等電位になるように構成されている。
【0056】
次に、圧電薄膜水晶振動片10の振動について説明する。
図6は、圧電薄膜水晶振動片10の振動について模式的に示す説明図である。なお、図6(a)は図1のA−A線断面相当の断面図であり、図6(b)は圧電薄膜水晶振動片10の振動方向を示す模式図である。ここでは、第1の実施形態との異なる部分を中心に説明する。
変形例と第1の実施形態との違いは、各振動腕部の各下部電極部の電位を等電位にしていることである。
【0057】
図6を参照して第1の状態を説明する。
下部電極部111,121,131,141にはグランド電位(G)を印加し、上部電極部113,143にはグランド電位よりマイナス側のマイナス(−)電位を印加する。
そして、上部電極部123,133にはグランド電位よりプラス側のプラス(+)電位を印加する。ここで、圧電薄膜部112,122,132,142の分極方向は、第1の実施形態と同様に矢印Poで示すような圧電薄膜部112,122,132,142の厚さ方向である。
【0058】
このことから、振動腕部30は、第1の実施形態と同様に、主面中心線C1の外側に形成された圧電薄膜部112が、Y軸方向に最も大きく収縮する。また、主面中心線C1の内側に形成された圧電薄膜部122は、Y軸方向に最も大きく伸張する。このことによって、圧電薄膜部112,122が形成された振動腕部30は、矢印F1方向に変位する。
【0059】
振動腕部30が矢印F1方向に変位したことによって、振動腕部30に形成された圧電薄膜部152はY軸方向に収縮し、X軸方向及びZ軸方向に伸張する。このことによって、下部電極部151にグランド電荷が、上部電極部153にグランド電荷よりマイナス側のマイナス電荷が発生する。
また、圧電薄膜部162はY軸方向に伸張し、X軸方向及びZ軸方向に収縮する。このことによって、下部電極部161にグランド電荷が、上部電極部163にグランド電荷よりプラス側のプラス電荷が発生する。
【0060】
振動腕部40も、第1の実施形態と同様に、主面中心線C3の外側に形成された圧電薄膜部142は、Y軸方向に最も大きく収縮する。また、主面中心線C3の内側に形成された圧電薄膜部132は、Y軸方向に最も大きく伸張する。このことによって、圧電薄膜部132,142が形成された振動腕部40は、矢印F2方向に変位する。
【0061】
振動腕部40が矢印F2方向に変位したことによって、振動腕部40に形成された圧電薄膜部182はY軸方向に収縮し、X軸方向及びZ軸方向に伸張する。このことによって、下部電極部181にグランド電荷が、上部電極部183にグランド電荷よりマイナス側のマイナス電荷が発生する。
また、圧電薄膜部172はY軸方向に伸張し、X軸方向及びZ軸方向に収縮する。このことによって、下部電極部171にグランド電荷が、上部電極部173にグランド電荷よりプラス側のプラス電荷が発生する。
【0062】
次に、第2の状態について説明する。
第2の状態では、下部電極部111,121,131,141にグランド電位を印加し、上部電極部113,143,123,133に第1の状態と逆相の電位を印加する。これにより、第1の実施形態における第2の状態と同様に、振動腕部30が矢印F3方向に変位し、振動腕部40が矢印F4方向に変位する。
【0063】
振動腕部30が矢印F3方向に変位したことによって、下部電極部151にグランド電荷が、上部電極部153にグランド電荷よりプラス側のプラス電荷が発生する。
また、下部電極部161にグランド電荷が、上部電極部163にグランド電荷よりマイナス側のマイナス電荷が発生する。
【0064】
振動腕部40が矢印F4方向に変位したことによって、下部電極部181にグランド電荷が、上部電極部183にグランド電荷よりプラス側のプラス電荷が発生する。
また、下部電極部171にグランド電荷が、上部電極部173にグランド電荷よりマイナス側のマイナス電荷が発生する。
【0065】
上述した第1の状態と第2の状態とを繰り返すことにより、第1の実施形態と同様に振動腕部30,40は、X軸方向に屈曲振動を繰り返す。
【0066】
上述したように、第1の実施形態の変形例の圧電薄膜水晶振動片10は、振動腕部30,40に接する側にある下部電極部111,121,131,141,151,161,171,181の電位(電荷)が、互いに等電位であることから、電圧が印加されることに起因する振動腕部30,40自体の圧電作用による圧電歪成分の発生を抑制できる。
このことから、圧電薄膜水晶振動片10は、振動腕部30,40の屈曲振動により発生する圧電歪が、振動腕部30,40自体の圧電作用による圧電歪成分を殆ど含まない。
これにより、圧電薄膜水晶振動片10は、検出用素子としての圧電薄膜素子150,160,170,180が、不要な圧電歪成分を殆ど含まない圧電歪を、電荷に変換して出力することができる。そして、圧電薄膜水晶振動片10は、上記のようにスプリアスが小さくできるのでノイズの少ない出力が得られる。
【0067】
(第2の実施形態)
本実施形態では、上述の実施形態と同じ内容については説明を省き、異なる内容を説明する。
図7は、第2の実施形態の圧電薄膜音叉振動片を示す斜視図であり、図8は、図7のB−B線断面図及び各圧電薄膜素子の接続説明図である。
図7及び図8に示すように、圧電薄膜素子210は、主面31の主面中心線C1に対し略線対称の略長方形の平面形状を有するように形成されている。
圧電薄膜素子230は、主面32の主面中心線C2に対し略線対称の略長方形の平面形状を有するように形成されている。
圧電薄膜素子220は、主面41の主面中心線C3に対し略線対称の略長方形の平面形状を有するように形成されている。
圧電薄膜素子240は、主面42の主面中心線C4に対し略線対称の略長方形の平面形状を有するように形成されている。
【0068】
次に、圧電薄膜素子210,220,230,240それぞれを、駆動用素子として形成するか、または検出用素子として形成するかについて説明する。表2は、駆動用素子及び検出用素子の各主面上の配置を説明する表である。
【0069】
【表2】

【0070】
本実施形態では、圧電薄膜素子210,220,230,240に駆動用素子または検出用素子が、表2に示すように形成されたサンプルNo.14及びサンプルNo.15の圧電薄膜水晶振動片10を作製する。
以下、サンプルNo.14の圧電薄膜水晶振動片10を代表例として説明する。この圧電薄膜水晶振動片10は、駆動用素子としての圧電薄膜素子210,220と、検出用素子としての圧電薄膜素子230,240とが形成されている。
【0071】
圧電薄膜水晶振動片10は、主面31に駆動用素子としての圧電薄膜素子210、主面41に駆動用素子としての圧電薄膜素子220が形成され、主面32に検出用素子としての圧電薄膜素子230、主面42に検出用素子としての圧電薄膜素子240が形成されてういる。
これにより、圧電薄膜水晶振動片10は、駆動用素子としての圧電薄膜素子210,220と、検出用素子としての圧電薄膜素子230,240とが、互いに対向している。
【0072】
次に、駆動用素子の電極部間の接続と検出用素子の電極部間の接続とについて、図8に沿って順次説明する。
駆動用素子において、下部電極部211、上部電極部223及び接続端子61は、接続電極51によって接続されている。また、これらの電極部とは互いに異極となる上部電極部213、下部電極部221及び接続端子62は、接続電極52によって接続されている。
検出用素子において、下部電極部231、上部電極部243及び接続端子64は、接続電極54によって接続されている。また、これらの電極部とは互いに異極となる上部電極部233、下部電極部241及び接続端子63は、接続電極53によって接続されている。
【0073】
次に、圧電薄膜水晶振動片10の振動について説明する。図9は、圧電薄膜水晶振動片10の振動について模式的に示す説明図である。なお、図9(a)は図7のB−B線断面図であり、図9(b)は圧電薄膜水晶振動片10の振動方向を示す模式図である。
図9を参照して第3の状態を説明する。下部電極部211、上部電極部223にはプラス電位を印加し、上部電極部213、下部電極部221にはマイナス電位を印加する。ここで、圧電薄膜部212,222,232,242の分極方向は、矢印Poで示すような圧電薄膜部212,222,232,242の厚さ方向である。
【0074】
まず、振動腕部30について説明すると、圧電薄膜部212は、下部電極部211にプラス電位、上部電極部213にマイナス電位を印加すると分極方向に平行となるZ軸方向に伸張し、X軸方向及びY軸方向に収縮する。主面31に形成された圧電薄膜部212がY軸方向に最も大きく収縮することによって、圧電薄膜部212が形成された振動腕部30は、矢印F5方向に変位する。
【0075】
振動腕部30が矢印F5方向に変位したことによって、振動腕部30に形成された圧電薄膜部232はY軸方向に伸張し、X軸方向及びZ軸方向に収縮する。このことによって、下部電極部231にマイナス電荷が、上部電極部233にプラス電荷が発生する。
【0076】
次に、振動腕部40について説明すると、圧電薄膜部222は、下部電極部221にマイナス電位、上部電極部223にプラス電位を印加すると分極方向に平行となるZ軸方向に収縮し、X軸方向及びY軸方向に伸張する。主面41に形成された圧電薄膜部222は、Y軸方向に最も大きく伸張することによって、圧電薄膜部222が形成された振動腕部40は、矢印F6方向に変位する。
【0077】
振動腕部40が矢印F6方向に変位したことによって、振動腕部40に形成された圧電薄膜部242はY軸方向に収縮し、X軸方向及びZ軸方向に伸張する。このことによって、下部電極部241にプラス電荷が、上部電極部243にマイナス電荷が発生する。
【0078】
次に、第4の状態を説明する(図示は省略する。)。第4の状態は上述した第3の状態に対して、各上部電極部及び下部電極部に逆相の電圧を印加した状態を示している。つまり、下部電極部211、上部電極部223にはマイナス電位を印加し、上部電極部213、下部電極部221にはプラス電位を印加する。
【0079】
まず、振動腕部30について説明すると、圧電薄膜部212は、下部電極部211にマイナス電位、上部電極部213にプラス電位を印加すると分極方向に平行となるZ軸方向に収縮し、X軸方向及びY軸方向に伸張する。主面31に形成された圧電薄膜部212がY軸方向に最も大きく伸張することによって、圧電薄膜部212が形成された振動腕部30は、矢印F7方向に変位する。
【0080】
振動腕部30が矢印F7方向に変位したことによって、振動腕部30に形成された圧電薄膜部232はY軸方向に収縮し、X軸方向及びZ軸方向に伸張する。このことによって、下部電極部231にプラス電荷が、上部電極部233にマイナス電荷が発生する。
【0081】
次に、振動腕部40について説明すると、圧電薄膜部222は、下部電極部221にプラス電位、上部電極部223にマイナス電位を印加すると分極方向に平行となるZ軸方向に伸張し、X軸方向及びY軸方向に収縮する。主面41に形成された圧電薄膜部222は、Y軸方向に最も大きく収縮することによって、圧電薄膜部222が形成された振動腕部40は、矢印F8方向に変位する。
【0082】
振動腕部40が矢印F8方向に変位したことによって、振動腕部40に形成された圧電薄膜部242はY軸方向に伸張し、X軸方向及びZ軸方向に収縮する。このことによって、下部電極部241にマイナス電荷が、上部電極部243にプラス電荷が発生する。
【0083】
上述の第2の実施形態では、第1の実施形態で述べた効果と同様の効果に加えて、以下の効果が得られる。
第2の実施形態では、駆動用素子及び検出用素子が振動腕部30,40に1つずつであることから、駆動用素子及び検出用素子の製造が第1の実施形態と比較して容易となる。
【0084】
(変形例)
ここで、上記第2の実施形態の変形例を説明する。
図10は、第2の実施形態の変形例の各圧電薄膜素子の接続説明図である。
変形例の圧電薄膜水晶振動片10の駆動用素子の電極部間の接続と検出用素子の電極部間の接続とについて、図10に沿って順次説明する。
駆動用素子において、下部電極部211,221は、互いに接続され、接続端子62と接続されている。上部電極部213は、接続端子61aと接続されている。上部電極部223は、接続端子61bと接続されている。
【0085】
検出用素子において、下部電極部231,241は、互いに接続され、接続端子64と接続されている。上部電極部233は、接続端子63aと接続されている。上部電極部243は、接続端子63bと接続されている。
なお、接続端子61a,61b,63a,63bは、増幅器と接続されている。また、接続端子62は、接続端子64と等電位になるように構成されている。
【0086】
次に、圧電薄膜水晶振動片10の振動について説明する。
図11は、圧電薄膜水晶振動片10の振動について模式的に示す説明図である。なお、図11(a)は図7のB−B線断面相当の断面図であり、図11(b)は圧電薄膜水晶振動片10の振動方向を示す模式図である。ここでは、第2の実施形態との異なる部分を中心に説明する。
変形例と第2の実施形態との違いは、各振動腕部の各下部電極部の電位を等電位にしていることである。
【0087】
図11を参照して第3の状態を説明する。
下部電極部211,221にはグランド電位を印加し、上部電極部213には、グランド電位よりマイナス側のマイナス電位を印加する。上部電極部223には、グランド電位よりプラス側のプラス電位を印加する。
ここで、圧電薄膜部212,222,232,242の分極方向は、第2の実施形態と同様に矢印Poで示すような圧電薄膜部212,222,232,242の厚さ方向である。
【0088】
これにより、振動腕部30は、第2の実施形態と同様に、矢印F5方向に変位する。
振動腕部30が矢印F5方向に変位したことによって、振動腕部30に形成された圧電薄膜部232はY軸方向に伸張し、X軸方向及びZ軸方向に収縮する。
このことによって、下部電極部231にグランド電荷が、上部電極部233にグランド電荷よりプラス側のプラス電荷が発生する。
【0089】
振動腕部40も、第2の実施形態と同様に、矢印F6方向に変位する。
振動腕部40が矢印F6方向に変位したことによって、振動腕部40に形成された圧電薄膜部242はY軸方向に収縮し、X軸方向及びZ軸方向に伸張する。
このことによって、下部電極部241にグランド電荷が、上部電極部243にグランド電荷よりマイナス側のマイナス電荷が発生する。
【0090】
次に、第4の状態について説明する。
第4の状態では、下部電極部211,221にはグランド電位を印加し、上部電極部213,223には、第3の状態と逆相の電位を印加する。これにより、第2の実施形態の第4の状態と同様に、振動腕部30が矢印F7方向に変位し、振動腕部40が矢印F8方向に変位する。
【0091】
振動腕部30が矢印F7方向に変位したことによって、下部電極部231にグランド電荷が、上部電極部233にグランド電荷よりマイナス側のマイナス電荷が発生する。
また、振動腕部40が矢印F8方向に変位したことによって、下部電極部241にグランド電荷が、上部電極部243にグランド電荷よりプラス側のプラス電荷が発生する。
【0092】
上述の第2の実施形態の変形例では、第1の実施形態の変形例で述べた効果と同様の効果が得られる。
【0093】
(第3の実施形態)
本実施形態では、上述の実施形態と同じ内容については説明を省き、異なる内容を説明する。図12は、第3の実施形態の圧電薄膜音叉振動片を示す斜視図であり、図13は、図12のC−C線断面図及び各圧電薄膜素子の接続説明図である。
図12及び図13に示すように、圧電薄膜素子310は、側面33上のY軸方向の側面中心線C5に対し略線対称の略長方形の平面形状を有するように形成されている。
圧電薄膜素子320は、側面34上のY軸方向の側面中心線C6に対し略線対称の略長方形の平面形状を有するように形成されている。
圧電薄膜素子330は、側面43上のY軸方向の側面中心線C7に対し略線対称の略長方形の平面形状を有するように形成されている。
圧電薄膜素子340は、側面44上のY軸方向の側面中心線C8に対し略線対称の略長方形の平面形状を有するように形成されている。
【0094】
次に、圧電薄膜素子310,320,330,340それぞれを、駆動用素子として形成するか、または検出用素子として形成するかについて説明する。表3は、駆動用素子及び検出用素子の各側面上の配置を説明する表である。
【0095】
【表3】

【0096】
本実施形態では、圧電薄膜素子310,320,330,340に駆動用素子または検出用素子が、表3に示すように形成されたサンプルNo.16からサンプルNo.19までの圧電薄膜水晶振動片10を作製する。
以下、サンプルNo.16の圧電薄膜水晶振動片10を代表例として説明する。
この圧電薄膜水晶振動片10は、駆動用素子としての圧電薄膜素子310,330と、検出用素子としての圧電薄膜素子320,340とが形成されている。
【0097】
圧電薄膜水晶振動片10は、側面33に駆動用素子としての圧電薄膜素子310、側面43に駆動用素子としての圧電薄膜素子330が形成され、側面34に検出用素子としての圧電薄膜素子320、側面44に検出用素子としての圧電薄膜素子340が形成されている。
これにより、圧電薄膜水晶振動片10は、駆動用素子としての圧電薄膜素子310,330と、検出用素子としての圧電薄膜素子320,340とが、互いに対向して形成されている。
【0098】
次に、駆動用素子の電極部間の接続と検出用素子の電極部間の接続とについて、図13に沿って順次説明する。
駆動用素子において、下部電極部311、上部電極部333及び接続端子61は、接続電極51によって接続されている。また、これらの電極部とは互いに異極となる上部電極部313、下部電極部331及び接続端子62は、接続電極52によって接続されている。
検出用素子において、下部電極部321、上部電極部343及び接続端子64は、接続電極54によって接続されている。また、これらの電極部とは互いに異極となる上部電極部323、下部電極部341及び接続端子63は、接続電極53によって接続されている。
【0099】
次に、圧電薄膜水晶振動片10の振動について説明する。図14は、圧電薄膜水晶振動片10の振動について模式的に示す説明図である。なお、図14(a)は図12のC−C線断面図であり、図14(b)は圧電薄膜水晶振動片10の振動方向を示す模式図である。
図14を参照して第5の状態を説明する。下部電極部311、上部電極部333にはプラス電位を印加し、上部電極部313、下部電極部331にはマイナス電位を印加する。ここで、圧電薄膜部312,322,332,342の分極方向は、矢印Poで示すような圧電薄膜部312,322,332,342の厚さ方向である。
【0100】
まず、振動腕部30について説明すると、圧電薄膜部312は、下部電極部311にプラス電位、上部電極部313にマイナス電位を印加すると分極方向に平行となるX軸方向に伸張し、Z軸方向及びY軸方向に収縮する。側面33に形成された圧電薄膜部312がY軸方向に最も大きく収縮することによって、圧電薄膜部312が形成された振動腕部30は、矢印F9方向に変位する。
【0101】
振動腕部30が矢印F9方向に変位したことによって、振動腕部30に形成された圧電薄膜部322はY軸方向に伸張し、X軸方向及びZ軸方向に収縮する。このことによって、下部電極部321にマイナス電荷が、上部電極部323にプラス電荷が発生する。
【0102】
次に、振動腕部40について説明すると、圧電薄膜部332は、下部電極部331にマイナス電位、上部電極部333にプラス電位を印加すると分極方向に平行となるX軸方向に収縮し、Z軸方向及びY軸方向に伸張する。側面43に形成された圧電薄膜部332は、Y軸方向に最も大きく伸張することによって、圧電薄膜部332が形成された振動腕部40は、矢印F10方向に変位する。
【0103】
振動腕部40が矢印F10方向に変位したことによって、振動腕部40に形成された圧電薄膜部342はY軸方向に収縮し、X軸方向及びZ軸方向に伸張する。このことによって、下部電極部341にプラス電荷が、上部電極部343にマイナス電荷が発生する。
【0104】
次に、第6の状態を説明する(図示は省略する。)。第6の状態は上述した第5の状態に対して、各上部電極部及び下部電極部に逆相の電圧を印加した状態を示している。つまり、下部電極部311、上部電極部333にはマイナス電位を印加し、上部電極部313、下部電極部331にはプラス電位を印加する。
【0105】
まず、振動腕部30について説明すると、圧電薄膜部312は、下部電極部311にマイナス電位、上部電極部313にプラス電位を印加すると分極方向に平行となるX軸方向に収縮し、Z軸方向及びY軸方向に伸張する。側面33に形成された圧電薄膜部312がY軸方向に最も大きく伸張することによって、圧電薄膜部312が形成された振動腕部30は、矢印F11方向に変位する。
【0106】
振動腕部30が矢印F11方向に変位したことによって、振動腕部30に形成された圧電薄膜部322はY軸方向に収縮し、X軸方向及びZ軸方向に伸張する。このことによって、下部電極部321にプラス電荷が、上部電極部323にマイナス電荷が発生する。
【0107】
次に、振動腕部40について説明すると、圧電薄膜部332は、下部電極部331にプラス電位、上部電極部333にマイナス電位を印加すると分極方向に平行となるX軸方向に伸張し、Z軸方向及びY軸方向に収縮する。側面43に形成された圧電薄膜部332は、Y軸方向に最も大きく収縮することによって、圧電薄膜部332が形成された振動腕部40は、矢印F12方向に変位する。
【0108】
振動腕部40が矢印F12方向に変位したことによって、振動腕部40に形成された圧電薄膜部342はY軸方向に伸張し、X軸方向及びZ軸方向に収縮する。このことによって、下部電極部341にマイナス電荷が、上部電極部343にプラス電荷が発生する。
【0109】
上述の第3の実施形態では、第1の実施形態及び第2の実施形態で述べた効果と同様の効果が得られる。
【0110】
(変形例)
ここで、上記第3の実施形態の変形例を説明する。
図15は、第3の実施形態の変形例の各圧電薄膜素子の接続説明図である。
変形例の圧電薄膜水晶振動片10の駆動用素子の電極部間の接続と検出用素子の電極部間の接続とについて、図15に沿って順次説明する。
駆動用素子において、下部電極部311,331は、互いに接続され、接続端子62と接続されている。上部電極部313は、接続端子61aと接続されている。上部電極部333は、接続端子61bと接続されている。
【0111】
検出用素子において、下部電極部321,341は、互いに接続され、接続端子64と接続されている。上部電極部323は、接続端子63aと接続されている。上部電極部343は、接続端子63bと接続されている。
なお、接続端子61a,61b,63a,63bは、増幅器と接続されている。また、接続端子62は、接続端子64と等電位になるように構成されている。
【0112】
次に、圧電薄膜水晶振動片10の振動について説明する。
図16は、圧電薄膜水晶振動片10の振動について模式的に示す説明図である。なお、図16(a)は図12のC−C線断面相当の断面図であり、図16(b)は圧電薄膜水晶振動片10の振動方向を示す模式図である。ここでは、第3の実施形態との異なる部分を中心に説明する。
変形例と第3の実施形態との違いは、各振動腕部の各下部電極部の電位を等電位にしていることである。
【0113】
図16を参照して第5の状態を説明する。
下部電極部311,331には、グランド電位を印加し、上部電極部333にはグランド電位よりプラス側のプラス電位を印加し、上部電極部313にはグランド電位よりマイナス側のマイナス電位を印加する。
ここで、圧電薄膜部312,322,332,342の分極方向は、第3の実施形態と同様に矢印Poで示すような圧電薄膜部312,322,332,342の厚さ方向である。
【0114】
これにより、振動腕部30は、第3の実施形態と同様に、矢印F9方向に変位する。
振動腕部30が矢印F9方向に変位したことによって、振動腕部30に形成された圧電薄膜部322はY軸方向に伸張し、X軸方向及びZ軸方向に収縮する。このことによって、下部電極部321にグランド電荷が、上部電極部323にグランド電荷よりプラス側のプラス電荷が発生する。
【0115】
振動腕部40も、第3の実施形態と同様に、矢印F10方向に変位する。
振動腕部40が矢印F10方向に変位したことによって、振動腕部40に形成された圧電薄膜部342はY軸方向に収縮し、X軸方向及びZ軸方向に伸張する。このことによって、下部電極部341にグランド電荷が、上部電極部343にグランド電荷よりマイナス側のマイナス電荷が発生する。
【0116】
次に、第6の状態について説明する。
第6の状態では、下部電極部311,331には、グランド電位を印加し、上部電極部333,313には、第5の状態と逆相の電位を印加する。これにより、第3の実施形態の第6の状態と同様に、振動腕部30が矢印F11方向に変位し、振動腕部40が矢印F12方向に変位する。
【0117】
振動腕部30が矢印F11方向に変位したことによって、下部電極部321にグランド電荷が、上部電極部323にグランド電荷よりマイナス側のマイナス電荷が発生する。
また、振動腕部40が矢印F12方向に変位したことによって、下部電極部341にグランド電荷が、上部電極部343にグランド電荷よりプラス側のプラス電荷が発生する。
【0118】
上述の第3の実施形態の変形例では、第1の実施形態の変形例で述べた効果と同様の効果が得られる。
【0119】
なお、上記各実施形態及び各変形例は上述の内容に限定されるものではなく、その主旨を逸脱しない範囲において、上述の内容以外に種々の変更を行うことが可能である。
例えば、音叉振動片体の材質は恒弾性を示す材質であれば良く、各種金属、シリコンなどの半金属、ガラス、石英、リン酸ガリウムなどの材質であっても良い。この際、材質が金属の場合には、音叉振動片体と形成される圧電薄膜素子との間に絶縁膜を形成する。
【0120】
また、圧電薄膜素子の個数は1つの主面または側面毎に4つ以上の偶数個であっても良い。
【0121】
また、サンプルNo.7からサンプルNo.13までの圧電薄膜水晶振動片10において、主面31または主面41、主面32または主面42への圧電薄膜素子の形成であっても良い。さらに、主面31または主面41、主面32または主面42において、1つの主面毎に2つ以上の偶数個の駆動用素子と2つ以上の偶数個の検出用素子とが形成されていても良い。
【0122】
また、各圧電薄膜素子の平面形状は、楕円形、略長方形以外の一方向に長い多角形やトラック円形などであっても良い。
【0123】
また、駆動用素子の圧電薄膜部の材質は、BaTi(チタン酸バリウム)、KN(ニオブ酸カリウム)などであっても良い。
【0124】
また、検出用素子の圧電薄膜部の材質は、AlN、水晶、LN(ニオブ酸リチウム)、LT(タンタル酸リチウム)などであっても良い。
【0125】
また、検出用素子の下部電極部の材質は、PtやAlなどであっても良い。
【0126】
また、駆動用素子及び検出用素子の上部電極部の材質は、Cr,Ti,Ni,Cu,Ag,Auなどであっても良い。
【0127】
また、駆動用素子及び検出用素子の成膜方法は、乾式法の蒸着法、イオンプレーティング法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法や、湿式法の印刷法などであっても良い。
【0128】
また、各圧電薄膜部の分極方向は厚さ方向に対し傾いていても良い。さらに、各圧電薄膜部の分極方向は各圧電薄膜部の平面上における任意の方向であっても良い。
【0129】
また、増幅器との接続は接続端子62,64であっても良い。さらに、増幅器との接続は、一方が接続端子61で他方が接続端子64、または一方が接続端子62で他方が接続端子63であっても良く、この場合、増幅器に替わって一例としてCMOSインバータを採用する。
【0130】
(圧電薄膜音叉振動子)
ここで、上記各実施形態及び各変形例の圧電薄膜音叉振動片としての圧電薄膜水晶振動片10を備えた、圧電薄膜音叉振動子としての圧電薄膜水晶振動子について説明する。
【0131】
図17は、圧電薄膜水晶振動子の概略構成の一例を示す断面図である。
図17に示すように、圧電薄膜水晶振動子400は、圧電薄膜水晶振動片10、圧電薄膜水晶振動片10を気密封止された内部に収容するパッケージ410などから構成されている。
【0132】
パッケージ410は、ベース部410a、枠部410b、蓋体部410c、接合部410dなどから構成されている。
ベース部410aの2つの層411,412には、セラミックグリーンシートを成形して焼成した酸化アルミニウム質焼結体などが用いられている。
【0133】
ベース部410aの第1層411には、金属被膜からなる電極411cが形成されており、圧電薄膜水晶振動片10が、図示しない引出し電極部を電極411cに位置合わせして搭載されている。圧電薄膜水晶振動片10は、支持部22が導電性接着剤430などにより引出し電極部を介して電極411cに電気的に接続され固定されている。
また、第1層411には、貫通穴411aが形成されている。
なお、第1層411には、平面視において、圧電薄膜水晶振動片10の先端部10bと重なる部分に開口部411bが形成されている。これにより、圧電薄膜水晶振動子400は、外部からの衝撃などにより発生する圧電薄膜水晶振動片10のたわみに起因する圧電薄膜水晶振動片10の先端部10bとベース部410aの第1層411との接触を回避できる。なお、開口部411bは、形成されていなくても良い。
【0134】
ベース部410aの第2層412には、外面に金属被膜からなる実装端子412cが形成されている。この実装端子412cは、ベース部410aの図示しない内部配線により電極411cと接続されている。また、第2層412には、第1層411の貫通穴411aと重なり、貫通穴411aより大きい貫通穴412aが形成されている。
【0135】
ベース部410aには、圧電薄膜水晶振動片10を囲むように枠状に形成された枠部410bが積層されている。枠部410bには、ベース部410aと同様にセラミックグリーンシートを成形して焼成した酸化アルミニウム質焼結体などが用いられている。
【0136】
枠部410bには、圧電薄膜水晶振動片10を覆うように蓋体部410cが配設されている。蓋体部410cは、コバールなどの金属が用いられ、同じくコバールなどの金属からなる接合部410dを介して、シーム溶接、ロウ付けなどにより枠部410bに接合されている。
【0137】
圧電薄膜水晶振動子400は、貫通穴411a,412aにより、パッケージ410を気密封止する封止部413が形成されている。圧電薄膜水晶振動子400は、封止部413にAu−Ge合金などから成る封止材414が充填されている。
これにより、圧電薄膜水晶振動子400は、パッケージ410の内部が気密封止されている。なお、パッケージ410の内部は、真空状態または窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスが封入されていても良い。
【0138】
なお、圧電薄膜水晶振動子400は、パッケージ410の蓋体部410cの材料として、コバールなどの金属の他にガラスを用いても良い。この場合は、接合部410dの材料として低融点ガラスが用いられ、低融点ガラスが溶融されて蓋体部410cと枠部410bとが接合される。
【0139】
上述したように、圧電薄膜水晶振動子400は、圧電薄膜水晶振動片10と、圧電薄膜水晶振動片10を気密封止された内部に収容するパッケージ410とを備えている。
このことから、圧電薄膜水晶振動子400は、圧電薄膜水晶振動片10が気密封止されたパッケージ410内に収容されていることで、圧電薄膜水晶振動片10の安定した屈曲振動を維持することができる。
【0140】
(加速度センサ)
ここで、上記各実施形態及び各変形例の圧電薄膜音叉振動片としての圧電薄膜水晶振動片10を備えた、加速度センサについて説明する。
【0141】
図18は、加速度センサの概略構成の一例を示すブロック図である。
図18に示すように、加速度センサ500は、駆動検出部510、駆動回路部520、検出回路部530、周波数差算出回路部540などから構成されている。
駆動検出部510には、加速度検出素子として上記各実施形態及び各変形例の圧電薄膜水晶振動片10が備えられている。
【0142】
加速度センサ500は、駆動回路部520から駆動信号が出力され、駆動検出部510の圧電薄膜水晶振動片10が一定の周波数f0で屈曲振動をしている。
ここで、加速度センサ500は、圧電薄膜水晶振動片10の振動方向に加速度が印加されると、圧電薄膜水晶振動片10の屈曲振動の周波数が周波数fに変化する。
加速度センサ500は、周波数f0と周波数fとを検出回路部530が検出し、検出信号として出力する。
加速度センサ500は、この検出信号に基づいて周波数差算出回路部540が変化前の周波数f0と変化後の周波数fとの周波数差Δf(Δf=f0−f)を算出し、算出結果を電圧などで出力する。
なお、加速度センサ500は、周波数差と加速度との対応関係を、図示しない記憶部に記憶し、算出した周波数差Δfに基づいて図示しない演算部で演算して、加速度を求めて出力する構成としても良い。なお、上記記憶部の機能はコンデンサを用いて実現しても良い。
【0143】
上述したように、加速度センサ500は、駆動検出部510に加速度検出素子として圧電薄膜水晶振動片10が備えられていることから、加速度の印加に伴う圧電薄膜水晶振動片10の各振動腕部の屈曲振動の変化を、検出用素子である各圧電薄膜部が効率よく電荷の変化に変換できる。これにより、加速度センサ500は、印加された加速度を感度よく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1】第1の実施形態の圧電薄膜音叉振動片を示す斜視図。
【図2】図1のA−A線断面図及び各圧電薄膜素子の接続説明図。
【図3】圧電薄膜水晶振動片を増幅器に接続した状態を示す等価回路図。
【図4】圧電薄膜水晶振動片の振動について模式的に示す説明図。
【図5】第1の実施形態の変形例の各圧電薄膜素子の接続説明図。
【図6】圧電薄膜水晶振動片の振動について模式的に示す説明図。
【図7】第2の実施形態の圧電薄膜音叉振動片を示す斜視図。
【図8】図7のB−B線断面図及び各圧電薄膜素子の接続説明図。
【図9】圧電薄膜水晶振動片の振動について模式的に示す説明図。
【図10】第2の実施形態の変形例の各圧電薄膜素子の接続説明図。
【図11】圧電薄膜水晶振動片の振動について模式的に示す説明図。
【図12】第3の実施形態の圧電薄膜音叉振動片を示す斜視図。
【図13】図12のC−C線断面図及び各圧電薄膜素子の接続説明図。
【図14】圧電薄膜水晶振動片の振動について模式的に示す説明図。
【図15】第3の実施形態の変形例の各圧電薄膜素子の接続説明図。
【図16】圧電薄膜水晶振動片の振動について模式的に示す説明図。
【図17】圧電薄膜水晶振動子の概略構成の一例を示す断面図。
【図18】加速度センサの概略構成の一例を示すブロック図。
【符号の説明】
【0145】
10…圧電薄膜音叉振動片としての圧電薄膜水晶振動片、20…水晶振動片体、21…基部、23…一主面、24…他主面、30,40…振動腕部、31,41…一方の主面としての主面、32,42…他方の主面としての主面、33,34,43,44…側面、110,120,130,140,150,160,170,180,210,220,230,240,310,320,330,340…駆動用圧電薄膜素子または検出用圧電薄膜素子としての圧電薄膜素子、111,121,131,141,151,161,171,181,211,221,231,241,311,321,331,341…駆動用下部電極部または検出用下部電極部としての下部電極部、112,122,132,142,152,162,172,182,212,222,232,242,312,322,332,342…駆動用圧電薄膜部または検出用圧電薄膜部としての圧電薄膜部、113,123,133,143,153,163,173,183,213,223,233,243,313,323,333,343…駆動用上部電極部または検出用上部電極部としての上部電極部、C1,C2,C3,C4…主面中心線、C5,C6,C7,C8…側面中心線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、
前記基部から互いに略平行に延在された一対の振動腕部と、
それぞれの前記振動腕部の少なくともいずれか1つの主面または側面に形成され、電荷が印加されて発生する圧電歪によりそれぞれの前記振動腕部を屈曲振動させる駆動用圧電薄膜素子と、
それぞれの前記振動腕部の前記駆動用圧電薄膜素子が形成された面と対向する面に形成され、それぞれの前記振動腕部の屈曲振動により発生する圧電歪を電荷に変換して出力する検出用圧電薄膜素子とを備え、
前記駆動用圧電薄膜素子は、駆動用圧電薄膜部を有し、
前記検出用圧電薄膜素子は、検出用圧電薄膜部を有し、
前記駆動用圧電薄膜部の圧電歪定数の絶対値は、前記検出用圧電薄膜部の圧電歪定数の絶対値より大きく、
前記検出用圧電薄膜部の圧電出力係数の絶対値は、前記駆動用圧電薄膜部の圧電出力係数の絶対値より大きいことを特徴とする圧電薄膜音叉振動片。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電薄膜音叉振動片において、前記基部の一主面から延設されているそれぞれの前記振動腕部の一方の主面に、前記駆動用圧電薄膜素子が形成され、前記基部の他主面から延設されているそれぞれの前記振動腕部の他方の主面に、前記検出用圧電薄膜素子が形成されていることを特徴とする圧電薄膜音叉振動片。
【請求項3】
請求項2に記載の圧電薄膜音叉振動片において、それぞれの前記振動腕部の前記一方の主面上における前記振動腕部が延在された延在方向の主面中心線より内側と外側とに、前記駆動用圧電薄膜素子がそれぞれ形成され、
それぞれの前記振動腕部の前記他方の主面上における前記振動腕部が延在された前記延在方向の主面中心線より内側と外側とに、前記検出用圧電薄膜素子がそれぞれ形成されていることを特徴とする圧電薄膜音叉振動片。
【請求項4】
請求項1に記載の圧電薄膜音叉振動片において、前記駆動用圧電薄膜素子及び前記検出用圧電薄膜素子の前記振動腕部に接する側の電位が、互いに等電位であることを特徴とする圧電薄膜音叉振動片。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の圧電薄膜音叉振動片と、前記圧電薄膜音叉振動片を気密封止された内部に収容するパッケージとを備えたことを特徴とする圧電薄膜音叉振動子。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の圧電薄膜音叉振動片を、加速度検出素子として備えたことを特徴とする加速度センサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2009−81836(P2009−81836A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−183508(P2008−183508)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】