説明

型締装置及びその制御装置

【課題】ブレーキの動作を保証可能な型締装置を提供する。
【解決手段】ダイカストマシン1の型締装置3は、固定金型503を保持する固定ダイプレート11と、移動金型505を保持し、固定ダイプレート11に対して型開閉方向に移動可能な移動ダイプレート13とを有する。また、型締装置3は、移動ダイプレート13を駆動する駆動力を生じるモータ23と、摩擦抵抗によりモータ23を制動可能なブレーキ28と、モータ23の動作を検出可能なモータ用センサ67とを有する。さらに、ダイカストマシン1は、ブレーキ28に制動力を発揮させた状態で、モータ23に駆動力を生じさせる制御信号を出力し、そのときのモータ用センサ67の検出結果に基づいてブレーキ28における異常の有無を判定する制御装置7を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイカストマシン等の成形機の型締装置及びその制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
縦型締装置において、ブレーキにより移動ダイプレートの落下を防止する技術が知られている(例えば特許文献1)。横型締装置においては、型開位置において安全フックにより移動ダイプレートの移動を規制することが一般的である(例えば特許文献2)。また、モータ(電動機)により移動ダイプレートを駆動する横型締装置において、ダイナミックブレーキを使用する技術も知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−291239号公報
【特許文献2】実開平6−5752号公報
【特許文献3】特開平11−235744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1等では、ブレーキが正常に作動することを前提としている。しかし、特許文献1等では、ブレーキが正常に作動することを保証するための技術については言及されていない。
【0005】
本発明の目的は、ブレーキの動作を保証可能な型締装置及びその制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の型締装置は、固定金型を保持する固定ダイプレートと、移動金型を保持し、前記固定ダイプレートに対して型開閉方向に移動可能な移動ダイプレートと、前記移動ダイプレートを駆動する駆動力を生じる駆動源と、摩擦抵抗により前記駆動源を制動可能なブレーキと、前記駆動源の動作を検出可能なセンサと、前記ブレーキに制動力を発揮させた状態で、前記駆動源に駆動力を生じさせる制御信号を出力し、そのときの前記センサの検出結果に基づいて前記ブレーキにおける異常の有無を判定する制御装置と、を有する。
【0007】
好適には、前記駆動源はモータである。
【0008】
好適には、前記制御装置は、前記異常の有無の判定において、型閉じ時に前記モータが生じる駆動力と同じ駆動力を生じさせる制御信号を前記モータに出力する。
【0009】
好適には、前記ブレーキは、前記モータにより駆動される被当接部材と、前記被当接部材に対して当接可能な当接部材と、前記当接部材を前記被当接部材に押し付ける弾性部材と、前記弾性部材の付勢力に抗して前記当接部材を前記被当接部材から離間させることが可能なブレーキ駆動装置と、を有する。
【0010】
好適には、前記ブレーキ駆動装置は、液圧シリンダ装置である。
【0011】
好適には、前記液圧シリンダ装置に作動液を供給可能であるとともに、前記移動金型及び前記固定金型に成形材料を押し出す射出プランジャを駆動する射出シリンダ装置に作動液を供給可能なポンプを有する。
【0012】
好適には、前記制御装置は、前記モータへの電力供給の異常の有無を判定し、異常が生じていると判定したときは前記ブレーキを作動する。
【0013】
好適には、前記制御装置は、当該型締装置が起動されたときに異常の有無の判定を行う。
【0014】
好適には、本発明の型締装置の制御装置は、固定金型を保持する固定ダイプレートと、移動金型を保持し、前記固定ダイプレートに対して型開閉方向に移動可能な移動ダイプレートと、前記移動ダイプレートを駆動する駆動力を生じる駆動源と、摩擦抵抗により前記駆動源を制動可能なブレーキと、前記駆動源の動作を検出可能なセンサとを有する型締装置の制御装置であって、前記ブレーキに制動力を発揮させた状態で、前記駆動源に駆動力を生じさせる制御信号を出力し、そのときの前記センサの検出結果に基づいて前記ブレーキにおける異常の有無を判定する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ブレーキの動作を保証できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係るダイカストマシンの要部の構成を示す概略図。
【図2】図1のダイカストマシンのブレーキの構成を示す図。
【図3】図1のダイカストマシンにおける駆動処理系の構成を示すブロック図。
【図4】図3の制御装置が実行するブレーキ異常診断処理の手順を示すフローチャート。
【図5】図4のステップS13において制御装置が実行するブレーキ異常有無判断処理の手順を示すフローチャート。
【図6】本発明の変形例に係るブレーキの構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係るダイカストマシン1の構成を型閉状態で示す概略図である。
【0018】
ダイカストマシン1は、金型501を開閉するための型締装置3と、金型501に成形材料としての溶湯(溶融金属)MLを射出するための射出装置5と、これらの動作を制御するための制御装置7(図3参照)とを有している。なお、特に図示しないが、この他にも、ダイカストマシン1は、成形品としてのダイカスト製品を金型501から押し出す押出装置等を有している。
【0019】
金型501は、互いに対向して配置される固定金型503及び移動金型505を有している。移動金型505は、型締装置3により、固定金型503に対して、その対向方向(型開閉方向:図1の紙面左右方向)において移動される。すなわち、型開閉される。なお、型締装置3は、例えば、いわゆる横型締装置であり、型開閉方向は水平方向である。固定金型503と移動金型505とが当接(型閉じ)されると、固定金型503と移動金型505との間には、ダイカスト製品を形成するためのキャビティCaが構成される。
【0020】
型締装置3は、例えば、ベース9と、固定金型503を保持する固定ダイプレート11と、移動金型505を保持する移動ダイプレート13と、これらダイプレート(11、13)を貫通する複数のタイバー15とを有している。
【0021】
固定ダイプレート11は、ベース9上に固定されている。移動ダイプレート13は、ベース9上において、型開閉方向に移動可能に設けられている。より詳細には、移動ダイプレート13は、図1に示す型閉位置と、図1よりも紙面左側に移動した型開位置との間でベース9上を摺動可能である。移動ダイプレート13の移動により、固定金型503及び移動金型505は開閉(型開閉)される。
【0022】
複数のタイバー15は、例えば、ダイプレート(11、13)の4隅に設けられている。複数のタイバー15は、型閉状態において、一端が2つのダイプレート(11、13)の一方(本実施形態では移動ダイプレート13)に固定され、他端が複数のタイバー15の伸長方向へ引っ張られる。これにより、タイバー15の伸長量に応じて固定金型503及び移動金型505の接触圧が高められる。すなわち、型締が行われる。
【0023】
型締装置3は、例えば、いわゆる複合式型締装置として構成されており、駆動装置として、主として型開閉に利用される移動機構17と、主として型締に利用される型締シリンダ装置19とを有している。また、型締装置3は、型締シリンダ装置19と協働して型締を行うためのタイバーナット21を有している。
【0024】
移動機構17は、例えば、ベース9の内部に設けられている。移動機構17は、ベース9に固定されたモータ23と、モータ23により回転駆動されるネジ軸25と、ネジ軸25に螺合された移動ナット27とを有する。また、移動機構17は、モータ23(移動ダイプレート13)を制動するためのブレーキ28を有している。
【0025】
モータ23は、特に図示しないが、界磁及び電機子の一方を構成するステータと、界磁及び電機子の他方を構成し、ステータに対して回転するロータとを有している。モータ23は、直流モータであってもよいし、交流モータであってもよい。
【0026】
ネジ軸25は、ベース9に軸支されている。ネジ軸25は、モータ23の出力軸に対して、直接的に、若しくは、歯車機構等の伝達機構を介して間接的に連結されており、モータ23の回転に従って回転する。
【0027】
移動ナット27は、移動ダイプレート13に固定されている。モータ23の回転は、ネジ軸25及び移動ナット27により並進運動に変換され、移動ダイプレート13に伝達される。これにより、移動ダイプレート13は、型開閉方向へ移動する。
【0028】
型締シリンダ装置19は、固定ダイプレート11に設けられている。型締シリンダ装置19は、固定ダイプレート11に内蔵された型締シリンダ部29と、型締シリンダ部29内を摺動可能な型締ピストン31とを有している。
【0029】
型締ピストン31は、型締シリンダ部29の内部を2つのシリンダ室に区画しており、また、タイバー15に固定されている。型締シリンダ装置19は、2つのシリンダ室に選択的に作動液が供給されることにより、駆動力を生じる。
【0030】
タイバーナット21は、移動ダイプレート13に設けられている。タイバーナット21は、例えば、ハーフナットにより構成されており、不図示のシリンダ装置により開閉される。タイバー15の移動ダイプレート13側の端部には、タイバーナット21に係合可能な被係合部15aが形成されている。タイバーナット21と被係合部15aとの係合又は当該係合の解除により、移動ダイプレート13とタイバー15とは係合又は当該係合の解除がなされる。
【0031】
タイバーナット21により移動ダイプレート13とタイバー15とを係合した状態で、型締シリンダ装置19に作動液を供給して型締ピストン31を固定ダイプレート11の背面側(図1の紙面右側)に移動させることにより、型締めが行われる。
【0032】
射出装置5は、例えば、キャビティCaに連通するスリーブ33と、スリーブ33内を摺動可能な射出プランジャ35と、射出プランジャ35を駆動する射出シリンダ装置37とを有している。
【0033】
不図示のラドル等によりスリーブ33内に溶湯が供給され、射出プランジャ35がスリーブ33内をキャビティCa側へ前進することにより、溶湯MLがキャビティCaに射出、充填される。
【0034】
射出シリンダ装置37は、射出シリンダチューブ39と、射出シリンダチューブ39内を摺動可能な射出ピストン41(図3参照)と、射出ピストン41に固定された射出ピストンロッド43とを有している。
【0035】
射出ピストン41は、射出シリンダチューブ39内を2つのシリンダ室に区画している。射出ピストンロッド43は、カップリング45を介して射出プランジャ35に固定されている。射出シリンダチューブ39の2つのシリンダ室に選択的に作動液が供給されることにより、射出プランジャ35は駆動される。
【0036】
図2は、ブレーキ28の構成を示す図である。
【0037】
ブレーキ28は、例えば、いわゆるディスクブレーキにより構成されており、モータ23とともに回転するディスク47と、ディスク47に対して当接可能なパッド49と、パッド49を支持する保持装置51とを有している。
【0038】
ディスク47は、例えば、ネジ軸25に固定されている。パッド49は、例えば、ディスク47の両側に設けられている。保持装置51は、ベース9に支持され、パッド49を保持するとともに、パッド49をディスク47に対して近接離間する方向へ駆動可能である。
【0039】
パッド49がディスク47に当接することにより生じる摩擦抵抗により、ディスク47に制動力が作用し、ひいては、モータ23や移動ダイプレート13が制動される。また、パッド49がディスク47から離間することにより、ディスク47に作用する制動力が解放される。
【0040】
また、ブレーキ28は、例えば、液圧装置によりパッド49を駆動する液圧式ブレーキにより構成されている。さらに、ブレーキ28は、例えば、液圧装置により動力が供給されていないときに制動力を発揮し、動力が供給されているときに制動力を解放する逆作動解放式ブレーキにより構成されている。具体的には、以下のとおりである。
【0041】
保持装置51は、2つのパッド49に対応して2つの駆動部53を有している。2つの駆動部53は、互いに共通化された基体54を有している。基体54は、ベース9に固定されている。また、各駆動部53は、ブレーキシリンダ装置55と、弾性部材57とを有している。
【0042】
ブレーキシリンダ装置55は、基体54により形成されたブレーキシリンダ部59と、ブレーキシリンダ部59内を摺動可能なブレーキピストン61と、ブレーキピストン61に固定されたブレーキピストンロッド63とを有している。
【0043】
ブレーキピストン61は、ブレーキシリンダ部59の内部を、ブレーキピストンロッド63が突出する側のロッド側室60Aと、その反対側のヘッド側室60Bとに区画している。ブレーキピストンロッド63は、パッド49に固定されている。
【0044】
弾性部材57は、例えば、板バネ(皿ばね)により構成されている。ブレーキピストン61のヘッド側室60B側には、基体54に対して移動可能な押圧部材65が当接又は固定されている。弾性部材57は、押圧部材65をブレーキピストン61側へ付勢している。
【0045】
弾性部材57の付勢力により、パッド49はディスク47に押し付けられる。また、ロッド側室60Aに作動液が供給され、弾性部材57の付勢力に抗してブレーキピストン61がヘッド側室60B側に駆動されることにより、パッド49は、ディスク47から離間する。
【0046】
図3は、ダイカストマシン1の駆動処理系の構成を示すブロック図である。
【0047】
モータ23は、例えば、サーボモータにより構成されている。すなわち、モータ23には、モータ23の回転を検出するエンコーダ等のモータ用センサ67が設けられており、その検出値はサーボドライバ(サーボアンプ)69に入力される。サーボドライバ69は、モータ用センサ67から入力された検出値と、適宜に入力された指令値(制御信号)との比較に基づいてモータ23のフィードバック制御を行う。
【0048】
ダイカストマシン1は、ブレーキシリンダ装置55を駆動するために、作動液を送出可能なポンプ71と、ポンプ71からの作動液の流れを制御するブレーキ側方向制御弁73と、ブレーキ側方向制御弁73を制御するブレーキ制御回路75とを有している。
【0049】
ポンプ71は、歯車ポンプやベーンポンプ等のロータの回転により作動液を吐出するロータリポンプであってもよいし、アキシャル型のプランジャポンプやラジアル式のプランジャポンプ等のピストンの往復により作動液を吐出するプランジャポンプであってもよい。
【0050】
ブレーキ側方向制御弁73は、ポンプ71からロッド側室60Aへの流れの許容、及び、当該流れの遮断のいずれかを行うためのものである。より具体的には、例えば、ブレーキ側方向制御弁73は、4ポート2位置の切換弁により構成されており、以下のように動作する。
【0051】
ブレーキ側方向制御弁73は、中立位置においては、ポンプ71からロッド側室60Aへの流れを禁止するとともに、ロッド側室60Aからタンク72への作動液の排出やタンク72からヘッド側室60Bへの作動液の流れを許容する。このとき、ブレーキピストン61は弾性部材57によりロッド側室60A側へ移動され、パッド49はディスク47に押し付けられる。
【0052】
ブレーキ側方向制御弁73は、中立位置から他の位置に切り換えられると、ポンプ71からロッド側室60Aへの流れを許容するとともに、ヘッド側室60Bからタンク72への作動液の排出を許容する。このとき、ブレーキピストン61は弾性部材57の付勢力に抗してヘッド側室60B側へ移動し、パッド49はディスク47から離間する。
【0053】
ブレーキ側方向制御弁73は、例えば、電力が供給されることにより電磁力を生じ、当該電磁力により中立位置から他の位置へ切り換えられる。また、ブレーキ側方向制御弁73は、電力が供給されていないときはバネ力により中立位置に戻される。
【0054】
ブレーキ制御回路75は、適宜に入力された制御信号に従って、ブレーキ側方向制御弁73に対する電力の供給又は遮断を行い、ブレーキ側方向制御弁73の位置を切り換える。
【0055】
なお、ポンプ71は、複数の液圧シリンダ装置等に共用されるものであってよい。例えば、ポンプ71は、射出側方向制御弁77を介して射出シリンダ装置37に接続されている。射出側方向制御弁77は、例えば、4ポート3位置の切換弁により構成されている。射出側方向制御弁77は、ポンプ71から射出シリンダ装置37への流れの遮断、ポンプ71から射出シリンダ装置37の一方のシリンダ室への流れの許容、及び、ポンプ71から射出シリンダ装置37の他方のシリンダ室への流れの許容のいずれかを行う。
【0056】
制御装置7は、サーボドライバ69やブレーキ制御回路75等の各部へ電力を供給する電源回路79と、サーボドライバ69やブレーキ制御回路75等の各部へ制御信号を出力する主制御部81とを有している。
【0057】
電源回路79は、例えば、変圧器等を含んで構成されている。電源回路79は、商用電源から供給される電力を適宜な電圧に変換してダイカストマシン1の各部に供給する。電源回路79には、商用電源から電源回路79への電力の供給を許容又は遮断するために、電源オフスイッチ83や電源オンスイッチ85が接続されている。
【0058】
主制御部81は、例えば、CPU、ROM、RAM等を含んで構成されている。主制御部81は、予め定められたプログラムやユーザの入力部87に対する操作に基づいて、サーボドライバ69、ブレーキ制御回路75、表示部89へ制御信号を出力する。これにより、モータ23、ブレーキ28、表示部89が駆動される。
【0059】
なお、上述したように、主制御部81からサーボドライバ69に入力された制御信号は、サーボドライバ69により適宜な大きさの電力に変換されてモータ23に供給される。従って、サーボドライバ69からモータ23に出力される電力は、主制御部81からモータ23に出力された制御信号とみなせる。本願では、主制御部81からサーボドライバ69への制御信号と、サーボドライバ69からモータ23への電力とを特に区別せずに言及することがある。
【0060】
制御装置7は、上述した構成に加え、ブレーキ28の動作を保証するために、ブレーキ診断回路91及び停電検出回路93を有している。
【0061】
ブレーキ診断回路91は、ブレーキ28を診断するための動作を主制御部81の異常判別回路95に指示する。当該指示がなされると、異常判別回路95は、モータ23及びブレーキ28に対して所定の制御を行いつつ、そのときのモータ用センサ67からの検出信号に基づいて、ブレーキ28における異常の有無を判定する。当該処理については後述する。
【0062】
ダイカストマシン1は、ブレーキ診断回路91に対してブレーキ28の診断を指示するために、ブレーキ診断オンスイッチ97及びブレーキ診断オン回路99を有している。
【0063】
ブレーキ診断オンスイッチ97は、ユーザによって任意の時期に操作され、当該操作に応じてブレーキ診断回路91に対してオン信号を出力する。ブレーキ診断回路91は、ブレーキ診断オンスイッチ97からオン信号が入力されると、異常判別回路95に診断を指示する。
【0064】
ブレーキ診断オン回路99は、電源回路79に電力が供給されたときに(ダイカストマシン1が起動されたときに)、ブレーキ診断オンスイッチ97と同様に、ブレーキ診断回路91にオン信号を出力する。なお、ブレーキ診断オン回路99は、入力部87に対する操作により、起動時に診断の指示を行うか否かの設定がなされることが可能である。
【0065】
本実施形態のダイカストマシン1においては、ブレーキ28は、逆作動解放式ブレーキにより構成されていることから、停電や断線により各部への電力供給が一切断たれた場合には、ブレーキ28が作動する。
【0066】
しかし、電源回路79とモータ23との間において断線が生じ、モータ23のみが電力供給が断たれたような場合には、ブレーキ28は作動しない。そこで、停電検出回路93は、電源回路79からモータ23への電力供給における異常の有無を判定し、異常が生じたと判定した場合は、ブレーキ28を作動させるようにブレーキ制御回路75を制御する。
【0067】
停電検出回路93は、例えば、電源回路79からモータ23までの配線のいずれかの位置において、モータ23が駆動されるべき時期における電力量を監視して、異常の有無を判定する。
【0068】
なお、図3では、制御装置7の各部に対して回路の名称を付しているが、これは説明の便宜上の手法に過ぎず、制御装置7の各部は、CPUがROM等に記憶されているプログラムを実行することにより構成されてもよい。
【0069】
次に、ダイカストマシン1の動作を説明する。
【0070】
ダイカストマシン1においては、まず、移動機構17により、移動ダイプレート13が型開位置から固定ダイプレート11側へ駆動され、移動金型505を固定金型503に接触させる型閉じが行われる。次に、型締シリンダ装置19により、移動金型505及び固定金型503の接触圧を高める型締めが行われる。
【0071】
その後、射出シリンダ装置37により射出プランジャ35が駆動され、溶湯がキャビティCaに射出、充填される。一定時間が経過すると、換言すれば、溶湯が凝固して成形品が形成されると、移動機構17により、移動ダイプレート13が固定ダイプレート11とは反対側へ駆動され、型開きが行われる。この際、成形品は、移動金型505とともに移動して、固定金型503から離型する。そして、不図示の押出装置により、移動金型505から成形品が押し出される。ダイカストマシン1は、このような成形サイクルを繰り返し行う。
【0072】
ブレーキ28は、適宜なタイミングで使用される。例えば、ブレーキ28は、繰り返し行われる成形サイクルにおいて、移動ダイプレート13が型開位置にあるときに作動する。また、例えば、ブレーキ28は、ダイカストマシン1内への作業者の進入を許容または禁止する不図示の扉部が開かれたときに作動する。このようにブレーキ28が作動することにより、移動ダイプレート13の意図しない動作が抑制され、安全性が向上する。
【0073】
そして、ダイカストマシン1では、ブレーキ28の動作を保証するために、適宜な時期にブレーキ28の診断が行われる。
【0074】
図4は、制御装置7が実行するブレーキ異常診断処理の手順を示すフローチャートである。当該処理は、上述のように、ユーザが任意の時期にブレーキ診断オンスイッチ97を操作したときやダイカストマシン1の起動時において実行される。
【0075】
ステップS11では、制御装置7は、ブレーキ28を作動させる。具体的には、制御装置7は、ブレーキ制御回路75への制御信号の出力を停止することにより、ブレーキ制御回路75からブレーキ側方向制御弁73への電力供給を停止する。ブレーキ側方向制御弁73は、バネ力により中立位置となり、ポンプ71からブレーキシリンダ装置55への作動液の流れは遮断される。そして、弾性部材57の付勢力によりパッド49はディスク47に押し付けられる。
【0076】
ステップS12では、制御装置7は、モータ23を駆動するための制御信号の出力を開始する。このときの制御信号は、例えば、型閉じにおいてモータ23が生じる駆動力と同等の駆動力を生じさせる制御信号である。
【0077】
ステップS13では、制御装置7は、ブレーキ28の異常の有無を判定する。
【0078】
図5は、ステップS13において制御装置7が実行するブレーキ異常有無判断処理の手順を示すフローチャートである。
【0079】
ステップS11及びS12により、ダイカストマシン1においては、ブレーキ28の制動力が発揮された状態で、モータ23を駆動するための制御信号が出力されている。従って、ブレーキ28に異常が生じていれば、モータ23は回転してしまう。より具体的には、例えば、本実施形態は、逆作動解放式のブレーキであるから、弾性部材57が破損するなどしていれば、モータ23は回転してしまう。
【0080】
そこで、ステップS21では、制御装置7は、モータ用センサ67の検出信号に基づいて、モータ23が回転したか否か判定する。制御装置7は、モータ23が回転していないと判定した場合は、ブレーキ28は正常であるものとみなし、その旨をRAM等に記憶する(ステップS22)。逆に、制御装置7は、モータ23が回転したと判定した場合は、ブレーキ28に異常が生じたものとみなし、その旨をRAM等に記憶する(ステップS23)。そして、処理を終了する。
【0081】
図4の説明に戻る。ステップS14では、制御装置7は、モータ23を起動してから所定の制動時間が経過したか否か判定する。制動時間が経過していないと判定した場合は、制御装置7は、ステップS13を再度実行する。なお、制動時間は、モータ23やブレーキ28の負荷を軽減するために、比較的短く設定されることが好ましい。
【0082】
制動時間が経過したと判定した場合は、制御装置7は、モータ23を駆動するための制御信号の出力を停止する(ステップS15)。そして、制御装置7は、ステップS13における判定結果を表示部89に表示し(ステップS16)、処理を終了する。
【0083】
以上の実施形態によれば、ダイカストマシン1の型締装置3は、固定金型503を保持する固定ダイプレート11と、移動金型505を保持し、固定ダイプレート11に対して型開閉方向に移動可能な移動ダイプレート13とを有する。また、型締装置3は、移動ダイプレート13を駆動する駆動力を生じるモータ23と、摩擦抵抗によりモータ23を制動可能なブレーキ28と、モータ23の動作を検出可能なモータ用センサ67とを有する。さらに、ダイカストマシン1は、ブレーキ28に制動力を発揮させた状態で、モータ23に駆動力を生じさせる制御信号を出力し、そのときのモータ用センサ67の検出結果に基づいてブレーキ28における異常の有無を判定する制御装置7を有する。
【0084】
従って、ブレーキ28により移動ダイプレート13の意図しない移動を抑制して安全性を向上させることができ、且つ、そのブレーキ28の動作を保証できることから、一層の安全性向上が図られる。
【0085】
移動ダイプレート13を駆動する駆動源はモータ23である。従って、ブレーキとして、ディスクブレーキやドラムブレーキ等の公知の技術を適用しやすい。また、制御信号の変更のみで駆動力を調整できることから、ブレーキ28の診断時の駆動力を適宜な大きさに設定することが容易である。
【0086】
制御装置7は、異常の有無の判定において、型閉じ時にモータ23が生じる駆動力と同じ駆動力を生じさせる制御信号をモータ23に出力する。この場合、ブレーキ28の効きを必要十分な範囲で診断することができる。
【0087】
ブレーキ28は、モータ23により駆動されるディスク47と、ディスク47に対して当接可能なパッド49と、パッド49をディスク47に押し付ける弾性部材57と、弾性部材57の付勢力に抗してパッド49をディスク47から離間させることが可能なブレーキシリンダ装置55とを有する。すなわち、ブレーキ28は、逆作動解放式のブレーキである。従って、停電時や断線時においても制動力を発揮して移動ダイプレート13の移動を抑制することができる。そして、制御装置7は、上述した異常の有無の判定により、弾性部材57の破損等を検出することができる。
【0088】
上記のパッド49をディスク47から離間させる方向へ駆動するブレーキ駆動装置(ブレーキシリンダ装置55)は、液圧シリンダ装置であることから、弾性部材57の付勢力に抗する駆動力を得ることが容易である。その結果、例えば、弾性係数の高い弾性部材57を用いて制動力を大きくできる。
【0089】
ダイカストマシン1は、ブレーキシリンダ装置55に作動液を供給可能であるとともに、移動金型505及び固定金型503に成形材料としての溶湯を押し出す射出プランジャ35を駆動する射出シリンダ装置37に作動液を供給可能なポンプ71を有する。従って、制動力を解放する駆動力が、共用されるポンプ71から得られ、ダイカストマシン1の構成が簡素化される。また、射出装置5の調整などのためにポンプ71を停止させたときには、ブレーキ28が自動的に作動して作業の安全性が図られる。
【0090】
制御装置7は、モータ23への電力供給の異常の有無を判定し、異常が生じていると判定したときはブレーキ28を作動する。従って、例えば、モータ23に接続された配線が断線しており、ダイナミックブレーキが有効に機能しないおそれがある場合に移動ダイプレート13を強制的に停止させ、安全性を向上させることができる。
【0091】
制御装置7は、型締装置3が起動されたときに異常の有無の判定を行う。従って、ブレーキ28の不具合により移動ダイプレート13が制動されない事態を未然に防止することができる。
【0092】
なお、以上の実施形態において、モータ23は本発明の駆動源の一例であり、ディスク47は本発明の被当接部材の一例であり、パッド49は本発明の当接部材の一例であり、ブレーキシリンダ装置55は本発明のブレーキ駆動装置の一例である。
【0093】
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0094】
成形機は、ダイカストマシンに限定されない。例えば、成形機は、他の金属成形機であってもよいし、プラスチック射出成形機であってもよいし、木粉に熱可塑性樹脂等を混合させた材料を成形する成形機であってもよい。また、成形機は、横型締横射出に限定されず、例えば、縦型締縦射出、横型締縦射出であってもよい。
【0095】
移動ダイプレートを駆動する駆動源は、モータに限定されず、例えば、液圧装置であってもよい。
【0096】
ブレーキは、ディスクブレーキに限定されず、例えば、ドラムブレーキであってもよい。また、ブレーキは、動力が断たれたときに制動力を発揮する逆作動解放式のものに限定されず、動力が供給されたときに制動力を発揮するものであってもよい。被当接部材を駆動するブレーキ駆動装置は、液圧シリンダ装置に限定されない。例えば、電磁石であってもよい。
【0097】
図6は、変形例に係るブレーキ128を示す断面図である。ブレーキ128は、電磁ブレーキにより構成されている。具体的には、以下のとおりである。
【0098】
ブレーキ128は、モータ23の出力軸と一体的に回転するディスク147と、ディスク147の一方側の面に配置されたパッド149とを有している。パッド149は、弾性部材(図ではコイルバネ)157によりディスク147に押し付けられており、これにより制動力が生じている。また、パッド149は、金属により構成されており、コイル155が通電されると、弾性部材157の付勢力に抗してコイル155に引き寄せられる。これにより、制動力が解放される。
【0099】
異常の有無の判定において、制御装置がモータに出力する制御信号は、型閉じ時にモータが生じる駆動力と同じ駆動力を生じさせるものに限定されない。例えば、制御信号は、モータやブレーキの負担を軽減する目的で、型閉じ時の駆動力よりも小さい駆動力を生じさせるものとされてもよいし、ブレーキが作動することを確実に確認するために、型閉じ時の駆動力よりも大きい駆動力を生じさせるものとされてもよい。
【0100】
異常の有無の判定では、モータが少しでも回転したときに異常と判定されてもよいし、所定の制動時間に所定量以上の回転が生じたときに異常と判定されてもよい。
【0101】
異常の有無の判定の実行時期は、起動時及び作業者が指示したときに限定されない。例えば、成形サイクルの所定の時期に自動的に異常の有無の判定が行われることにより、成形サイクル毎に、若しくは、複数の成形サイクルの周期に相当する所定の周期毎に行われてもよい。
【0102】
異常の有無の判定結果を示す装置は、表示装置に限定されず、例えば、報知音を出力する警報装置であってもよい。
【符号の説明】
【0103】
3…型締装置、7…制御装置、11…固定ダイプレート、13…移動ダイプレート、23…モータ(駆動源)、28…ブレーキ、67…モータ用センサ、503…固定金型、505…移動金型。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定金型を保持する固定ダイプレートと、
移動金型を保持し、前記固定ダイプレートに対して型開閉方向に移動可能な移動ダイプレートと、
前記移動ダイプレートを駆動する駆動力を生じる駆動源と、
摩擦抵抗により前記駆動源を制動可能なブレーキと、
前記駆動源の動作を検出可能なセンサと、
前記ブレーキに制動力を発揮させた状態で、前記駆動源に駆動力を生じさせる制御信号を出力し、そのときの前記センサの検出結果に基づいて前記ブレーキにおける異常の有無を判定する制御装置と、
を有する型締装置。
【請求項2】
前記駆動源はモータである
請求項1に記載の型締装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記異常の有無の判定において、型閉じ時に前記モータが生じる駆動力と同じ駆動力を生じさせる制御信号を前記モータに出力する
請求項2に記載の型締装置。
【請求項4】
前記ブレーキは、
前記モータにより駆動される被当接部材と、
前記被当接部材に対して当接可能な当接部材と、
前記当接部材を前記被当接部材に押し付ける弾性部材と、
前記弾性部材の付勢力に抗して前記当接部材を前記被当接部材から離間させることが可能なブレーキ駆動装置と、
を有する
請求項2又は3に記載の型締装置。
【請求項5】
前記ブレーキ駆動装置は、液圧シリンダ装置である
請求項4に記載の型締装置。
【請求項6】
前記液圧シリンダ装置に作動液を供給可能であるとともに、前記移動金型及び前記固定金型に成形材料を押し出す射出プランジャを駆動する射出シリンダ装置に作動液を供給可能なポンプを有する
請求項5に記載の型締装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記モータへの電力供給の異常の有無を判定し、異常が生じていると判定したときは前記ブレーキを作動する
請求項2〜6のいずれか1項に記載の型締装置。
【請求項8】
前記制御装置は、当該型締装置が起動されたときに異常の有無の判定を行う
請求項1〜7のいずれか1項に記載の型締装置。
【請求項9】
固定金型を保持する固定ダイプレートと、移動金型を保持し、前記固定ダイプレートに対して型開閉方向に移動可能な移動ダイプレートと、前記移動ダイプレートを駆動する駆動力を生じる駆動源と、摩擦抵抗により前記駆動源を制動可能なブレーキと、前記駆動源の動作を検出可能なセンサとを有する型締装置の制御装置であって、
前記ブレーキに制動力を発揮させた状態で、前記駆動源に駆動力を生じさせる制御信号を出力し、そのときの前記センサの検出結果に基づいて前記ブレーキにおける異常の有無を判定する
型締装置の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−269350(P2010−269350A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124473(P2009−124473)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】