説明

型締装置

【課題】ブレーキの動作を保証可能な型締装置を提供する。
【解決手段】型締装置3は、固定金型503を保持する固定ダイプレート11と、移動金型505を保持し、固定ダイプレート11に対して型開閉方向に移動可能な移動ダイプレート13と、移動ダイプレート13を駆動する駆動力を生じるモータ23とを有する。また、型締装置3は、摩擦抵抗によりモータ23を制動可能なブレーキ28と、ブレーキ28の異常の有無に関する物理量を検出する圧力センサ76と、圧力センサ76の検出結果に基づいて、成形サイクルの1周期毎に異常の有無を判定する(ステップS6)制御装置7とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイカストマシン等の成形機の型締装置に関する。
【背景技術】
【0002】
縦型締装置において、ブレーキにより移動ダイプレートの落下を防止する技術が知られている(例えば特許文献1)。横型締装置においては、型開位置において安全フックにより移動ダイプレートの移動を規制することが一般的である(例えば特許文献2)。また、モータ(電動機)により移動ダイプレートを駆動する横型締装置において、ダイナミックブレーキを使用する技術も知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−291239号公報
【特許文献2】実開平6−5752号公報
【特許文献3】特開平11−235744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1等では、ブレーキが正常に作動することを前提としている。しかし、特許文献1等では、ブレーキが正常に作動することを保証するための技術については言及されていない。
【0005】
本発明の目的は、ブレーキの動作を保証可能な型締装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の型締装置は、固定金型を保持する固定ダイプレートと、移動金型を保持し、前記固定ダイプレートに対して型開閉方向に移動可能な移動ダイプレートと、前記移動ダイプレートを駆動する駆動力を生じる駆動源と、摩擦抵抗により前記駆動源を制動可能なブレーキと、前記ブレーキの異常の有無に関する物理量を検出する第1センサと、前記第1センサの検出結果に基づいて、成形サイクルの1周期毎、又は、複数回の成形サイクルの周期に相当する周期毎に異常の有無の判定を行う制御装置と、を有する。
【0007】
好適には、前記ブレーキは、前記駆動源により駆動される被当接部材と、前記被当接部材に当接可能な当接部材と、前記当接部材を前記被当接部材に押し付ける弾性部材と、ピストンにより区画された2つのシリンダ室のうち一方のシリンダ室に作動液が供給されることにより前記弾性部材の付勢力に抗して前記当接部材を前記被当接部材から離間させることが可能なシリンダ装置と、を有し、前記第1センサは、前記一方のシリンダ室の圧力を検出する圧力センサである。
【0008】
好適には、前記制御装置は、成形サイクルにおいて型閉じを開始するときに前記一方のシリンダ室に作動液を供給して前記ブレーキの制動力を解放し、前記型閉じを開始するときにおける、前記一方のシリンダ室に作動液が供給されているときの前記圧力センサの検出した圧力が、所定の設定圧力よりも小さいときに異常が生じていると判定する。
【0009】
好適には、前記駆動源の動作を検出する第2センサを有し、前記制御装置は、前記ブレーキに制動力を発揮させた状態で、前記駆動源に駆動力を生じさせる制御信号を出力し、そのときの前記第2センサの検出結果に基づいて前記ブレーキにおける異常の有無を判定することも行う。
【0010】
好適には、前記制御装置は、当該型締装置が起動されたときに、前記第2センサの検出結果に基づく異常の有無の判定を行う。
【0011】
好適には、前記駆動源はモータである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ブレーキの動作を保証できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係るダイカストマシンの要部の構成を示す概略図。
【図2】図1のダイカストマシンのブレーキの構成を示す図。
【図3】図1のダイカストマシンにおける駆動処理系の構成を示すブロック図。
【図4】図1のダイカストマシンにおける第1のブレーキ異常診断の原理を説明する図。
【図5】図3の制御装置が実行する第1のブレーキ異常診断処理の手順を示すフローチャート。
【図6】図3の制御装置が実行する第2のブレーキ異常診断処理の手順を示すフローチャート。
【図7】図6のステップS13において制御装置が実行するブレーキ異常有無判断処理の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係るダイカストマシン1の構成を型閉状態で示す概略図である。
【0015】
ダイカストマシン1は、金型501を開閉するための型締装置3と、金型501に成形材料としての溶湯(溶融金属)MLを射出するための射出装置5と、これらの動作を制御するための制御装置7(図3参照)とを有している。なお、特に図示しないが、この他にも、ダイカストマシン1は、成形品としてのダイカスト製品を金型501から押し出す押出装置等を有している。
【0016】
金型501は、互いに対向して配置される固定金型503及び移動金型505を有している。移動金型505は、型締装置3により、固定金型503に対して、その対向方向(型開閉方向:図1の紙面左右方向)において移動される。すなわち、型開閉される。なお、型締装置3は、例えば、いわゆる横型締装置であり、型開閉方向は水平方向である。固定金型503と移動金型505とが当接(型閉じ)されると、固定金型503と移動金型505との間には、ダイカスト製品を形成するためのキャビティCaが構成される。
【0017】
型締装置3は、例えば、ベース9と、固定金型503を保持する固定ダイプレート11と、移動金型505を保持する移動ダイプレート13と、これらダイプレート(11、13)を貫通する複数のタイバー15とを有している。
【0018】
固定ダイプレート11は、ベース9上に固定されている。移動ダイプレート13は、ベース9上において、型開閉方向に移動可能に設けられている。より詳細には、移動ダイプレート13は、図1に示す型閉位置と、図1よりも紙面左側に移動した型開位置との間でベース9上を摺動可能である。移動ダイプレート13の移動により、固定金型503及び移動金型505は開閉(型開閉)される。
【0019】
複数のタイバー15は、例えば、ダイプレート(11、13)の4隅に設けられている。複数のタイバー15は、型閉状態において、一端が2つのダイプレート(11、13)の一方(本実施形態では移動ダイプレート13)に固定され、他端が複数のタイバー15の伸長方向へ引っ張られる。これにより、タイバー15の伸長量に応じて固定金型503及び移動金型505の接触圧が高められる。すなわち、型締が行われる。
【0020】
型締装置3は、例えば、いわゆる複合式型締装置として構成されており、駆動装置として、主として型開閉に利用される移動機構17と、主として型締に利用される型締シリンダ装置19とを有している。また、型締装置3は、型締シリンダ装置19と協働して型締を行うためのタイバーナット21を有している。
【0021】
移動機構17は、例えば、ベース9の内部に設けられている。移動機構17は、ベース9に固定されたモータ23と、モータ23により回転駆動されるネジ軸25と、ネジ軸25に螺合された移動ナット27とを有する。また、移動機構17は、モータ23(移動ダイプレート13)を制動するためのブレーキ28を有している。
【0022】
モータ23は、特に図示しないが、界磁及び電機子の一方を構成するステータと、界磁及び電機子の他方を構成し、ステータに対して回転するロータとを有している。モータ23は、直流モータであってもよいし、交流モータであってもよい。
【0023】
ネジ軸25は、ベース9に軸支されている。ネジ軸25は、モータ23の出力軸に対して、直接的に、若しくは、歯車機構等の伝達機構を介して間接的に連結されており、モータ23の回転に従って回転する。
【0024】
移動ナット27は、移動ダイプレート13に固定されている。モータ23の回転は、ネジ軸25及び移動ナット27により並進運動に変換され、移動ダイプレート13に伝達される。これにより、移動ダイプレート13は、型開閉方向へ移動する。
【0025】
型締シリンダ装置19は、固定ダイプレート11に設けられている。型締シリンダ装置19は、固定ダイプレート11に内蔵された型締シリンダ部29と、型締シリンダ部29内を摺動可能な型締ピストン31とを有している。
【0026】
型締ピストン31は、型締シリンダ部29の内部を2つのシリンダ室に区画しており、また、タイバー15に固定されている。型締シリンダ装置19は、2つのシリンダ室に選択的に作動液が供給されることにより、駆動力を生じる。
【0027】
タイバーナット21は、移動ダイプレート13に設けられている。タイバーナット21は、例えば、ハーフナットにより構成されており、不図示のシリンダ装置により開閉される。タイバー15の移動ダイプレート13側の端部には、タイバーナット21に係合可能な被係合部15aが形成されている。タイバーナット21と被係合部15aとの係合又は当該係合の解除により、移動ダイプレート13とタイバー15とは係合又は当該係合の解除がなされる。
【0028】
タイバーナット21により移動ダイプレート13とタイバー15とを係合した状態で、型締シリンダ装置19に作動液を供給して型締ピストン31を固定ダイプレート11の背面側(図1の紙面右側)に移動させることにより、型締めが行われる。
【0029】
射出装置5は、例えば、キャビティCaに連通するスリーブ33と、スリーブ33内を摺動可能な射出プランジャ35と、射出プランジャ35を駆動する射出シリンダ装置37とを有している。
【0030】
不図示のラドル等によりスリーブ33内に溶湯が供給され、射出プランジャ35がスリーブ33内をキャビティCa側へ前進することにより、溶湯MLがキャビティCaに射出、充填される。
【0031】
射出シリンダ装置37は、射出シリンダチューブ39と、射出シリンダチューブ39内を摺動可能な射出ピストン41(図3参照)と、射出ピストン41に固定された射出ピストンロッド43とを有している。
【0032】
射出ピストン41は、射出シリンダチューブ39内を2つのシリンダ室に区画している。射出ピストンロッド43は、カップリング45を介して射出プランジャ35に固定されている。射出シリンダチューブ39の2つのシリンダ室に選択的に作動液が供給されることにより、射出プランジャ35は駆動される。
【0033】
図2は、ブレーキ28の構成を示す図である。
【0034】
ブレーキ28は、例えば、いわゆるディスクブレーキにより構成されており、モータ23とともに回転するディスク47と、ディスク47に対して当接可能なパッド49と、パッド49を支持する保持装置51とを有している。
【0035】
ディスク47は、例えば、ネジ軸25に固定されている。パッド49は、例えば、ディスク47の両側に設けられている。保持装置51は、ベース9に支持され、パッド49を保持するとともに、パッド49をディスク47に対して近接離間する方向へ駆動可能である。
【0036】
パッド49がディスク47に当接することにより生じる摩擦抵抗により、ディスク47に制動力が作用し、ひいては、モータ23や移動ダイプレート13が制動される。また、パッド49がディスク47から離間することにより、ディスク47に作用する制動力が解放される。
【0037】
また、ブレーキ28は、例えば、液圧装置によりパッド49を駆動する液圧式ブレーキにより構成されている。さらに、ブレーキ28は、例えば、液圧装置により動力が供給されていないときに制動力を発揮し、動力が供給されているときに制動力を解放する逆作動解放式ブレーキにより構成されている。具体的には、以下のとおりである。
【0038】
保持装置51は、2つのパッド49に対応して2つの駆動部53を有している。2つの駆動部53は、互いに共通化された基体54を有している。基体54は、ベース9に固定されている。また、各駆動部53は、ブレーキシリンダ装置55と、弾性部材57とを有している。
【0039】
ブレーキシリンダ装置55は、基体54により形成されたブレーキシリンダ部59と、ブレーキシリンダ部59内を摺動可能なブレーキピストン61と、ブレーキピストン61に固定されたブレーキピストンロッド63とを有している。
【0040】
ブレーキピストン61は、ブレーキシリンダ部59の内部を、ブレーキピストンロッド63が突出する側のロッド側室60Aと、その反対側のヘッド側室60Bとに区画している。ブレーキピストンロッド63は、パッド49に固定されている。
【0041】
弾性部材57は、例えば、板バネ(皿ばね)により構成されている。ブレーキピストン61のヘッド側室60B側には、基体54に対して移動可能な押圧部材65が当接又は固定されている。弾性部材57は、押圧部材65をブレーキピストン61側へ付勢している。
【0042】
弾性部材57の付勢力により、パッド49はディスク47に押し付けられる。また、ロッド側室60Aに作動液が供給され、弾性部材57の付勢力に抗してブレーキピストン61がヘッド側室60B側に駆動されることにより、パッド49は、ディスク47から離間する。
【0043】
図3は、ダイカストマシン1の駆動処理系の構成を示すブロック図である。
【0044】
モータ23は、例えば、サーボモータにより構成されている。すなわち、モータ23には、モータ23の回転を検出するエンコーダ等のモータ用センサ67が設けられており、その検出値はサーボドライバ(サーボアンプ)69に入力される。サーボドライバ69は、モータ用センサ67から入力された検出値と、適宜に入力された指令値(制御信号)との比較に基づいてモータ23のフィードバック制御を行う。
【0045】
ダイカストマシン1は、ブレーキシリンダ装置55を駆動するために、作動液を送出可能なポンプ71と、ポンプ71からの作動液の流れを制御するブレーキ側方向制御弁73と、ブレーキ側方向制御弁73を制御するブレーキ制御回路75とを有している。
【0046】
ポンプ71は、歯車ポンプやベーンポンプ等のロータの回転により作動液を吐出するロータリポンプであってもよいし、アキシャル型のプランジャポンプやラジアル式のプランジャポンプ等のピストンの往復により作動液を吐出するプランジャポンプであってもよい。
【0047】
ブレーキ側方向制御弁73は、ポンプ71からロッド側室60Aへの流れの許容、及び、当該流れの遮断のいずれかを行うためのものである。より具体的には、例えば、ブレーキ側方向制御弁73は、4ポート2位置の切換弁により構成されており、以下のように動作する。
【0048】
ブレーキ側方向制御弁73は、中立位置においては、ポンプ71からロッド側室60Aへの流れを禁止するとともに、ロッド側室60Aからタンク72への作動液の排出やタンク72からヘッド側室60Bへの作動液の流れを許容する。このとき、ブレーキピストン61は弾性部材57によりロッド側室60A側へ移動され、パッド49はディスク47に押し付けられる。
【0049】
ブレーキ側方向制御弁73は、中立位置から他の位置に切り換えられると、ポンプ71からロッド側室60Aへの流れを許容するとともに、ヘッド側室60Bからタンク72への作動液の排出を許容する。このとき、ブレーキピストン61は弾性部材57の付勢力に抗してヘッド側室60B側へ移動し、パッド49はディスク47から離間する。
【0050】
ブレーキ側方向制御弁73は、例えば、電力が供給されることにより電磁力を生じ、当該電磁力により中立位置から他の位置へ切り換えられる。また、ブレーキ側方向制御弁73は、電力が供給されていないときはバネ力により中立位置に戻される。
【0051】
ブレーキ制御回路75は、適宜に入力された制御信号に従って、ブレーキ側方向制御弁73に対する電力の供給又は遮断を行い、ブレーキ側方向制御弁73の位置を切り換える。
【0052】
なお、ポンプ71は、複数の液圧シリンダ装置等に共用されるものであってよい。例えば、ポンプ71は、射出側方向制御弁77を介して射出シリンダ装置37に接続されている。射出側方向制御弁77は、例えば、4ポート3位置の切換弁により構成されている。射出側方向制御弁77は、ポンプ71から射出シリンダ装置37への流れの遮断、ポンプ71から射出シリンダ装置37の一方のシリンダ室への流れの許容、及び、ポンプ71から射出シリンダ装置37の他方のシリンダ室への流れの許容のいずれかを行う。
【0053】
制御装置7は、サーボドライバ69やブレーキ制御回路75等の各部へ電力を供給する電源回路79と、サーボドライバ69やブレーキ制御回路75等の各部へ制御信号を出力する主制御部81とを有している。
【0054】
電源回路79は、例えば、変圧器等を含んで構成されている。電源回路79は、商用電源から供給される電力を適宜な電圧に変換してダイカストマシン1の各部に供給する。電源回路79には、商用電源から電源回路79への電力の供給を許容又は遮断するために、電源オフスイッチ83や電源オンスイッチ85が接続されている。
【0055】
主制御部81は、例えば、CPU、ROM、RAM等を含んで構成されている。主制御部81は、予め定められたプログラムやユーザの入力部87に対する操作に基づいて、サーボドライバ69、ブレーキ制御回路75、表示部89へ制御信号を出力する。これにより、モータ23、ブレーキ28、表示部89が駆動される。
【0056】
なお、上述したように、主制御部81からサーボドライバ69に入力された制御信号は、サーボドライバ69により適宜な大きさの電力に変換されてモータ23に供給される。従って、サーボドライバ69からモータ23に出力される電力は、主制御部81からモータ23に出力された制御信号とみなせる。本願では、主制御部81からサーボドライバ69への制御信号と、サーボドライバ69からモータ23への電力とを特に区別せずに言及することがある。
【0057】
ダイカストマシン1は、更に、ブレーキ28の動作を保証するための構成を有している。具体的には、ダイカストマシン1では、ブレーキ28の動作を保証する2種類の方法が実行される。
【0058】
まず、第1の方法に係る構成について説明する。ダイカストマシン1は、第1の方法を実行するために、ロッド側室60Aへの作動液の流れを制御する流量制御弁74と、ロッド側室60Aの圧力を検出する圧力センサ76とを有している。
【0059】
流量制御弁74は、いわゆる圧力補償付流量調整弁により構成されている。すなわち、弁の開口度、流量及び圧力差の関係は一義的に定まるところ、流量制御弁74は、圧力差を一定とする装置を有し、作動液の流れを開口度に応じた一定の流量の流れに規制する。従って、ポンプ71からロッド側室60Aへの流量は、流量制御弁74により、ロッド側室60Aの圧力の変化に係らず、一定の値とされる。なお、流量制御弁74は、開口度が固定のものであってもよいし、可変のものであってもよい。
【0060】
また、流量制御弁74は、いわゆる逆止弁付流量制御弁により構成されている。すなわち、流量制御弁74は、流量を調整する開口(弁)をバイパスする流路と、当該流路において、ブレーキ側方向制御弁73からロッド側室60Aへの作動液の流れを禁止する一方で、その逆方向の流れを許容する逆止弁とを有している。従って、弾性部材57の付勢力によりブレーキピストン61がロッド側室60A側へ移動するときには、ロッド側室60Aの作動液は、流量制御弁74及びブレーキ側方向制御弁73を介してタンク72へ排出される。
【0061】
圧力センサ76は、公知の適宜な構成のものにより構成されてよい。圧力センサ76は、ロッド側室60Aの作動液の圧力を直接検出してもよいが、図3では、流量制御弁74とロッド側室60Aとの間の流路においてロッド側室60Aの作動液の圧力を検出している場合を例示している。圧力センサ76は、例えば、作動液の圧力に応じたアナログ式の電気信号を出力し、当該信号は、アンプ101により増幅され、AD変換器103によりデジタル信号に変換され、主制御部81に入力される。
【0062】
主制御部81の比較部94は、圧力センサ76の検出した圧力と、入力部87に対する操作などにより予め設定された、ブレーキ28に異常が無いときの圧力とを比較する。主制御部81の異常判別回路95は、比較部94の比較結果に基づいて異常の有無を判定する。当該判別の原理等については後述する。
【0063】
次に、第2の方法に係る構成について説明する。制御装置7は、上述した構成に加え、ブレーキ診断回路91及び停電検出回路93を有している。
【0064】
ブレーキ診断回路91は、ブレーキ28を診断するための動作を主制御部81の異常判別回路95に指示する。当該指示がなされると、異常判別回路95は、モータ23及びブレーキ28に対して所定の制御を行いつつ、そのときのモータ用センサ67からの検出信号に基づいて、ブレーキ28における異常の有無を判定する。当該処理については後述する。
【0065】
ダイカストマシン1は、ブレーキ診断回路91に対してブレーキ28の診断を指示するために、ブレーキ診断オンスイッチ97及びブレーキ診断オン回路99を有している。
【0066】
ブレーキ診断オンスイッチ97は、ユーザによって任意の時期に操作され、当該操作に応じてブレーキ診断回路91に対してオン信号を出力する。ブレーキ診断回路91は、ブレーキ診断オンスイッチ97からオン信号が入力されると、異常判別回路95に診断を指示する。
【0067】
ブレーキ診断オン回路99は、電源回路79に電力が供給されたときに(ダイカストマシン1が起動されたときに)、ブレーキ診断オンスイッチ97と同様に、ブレーキ診断回路91にオン信号を出力する。なお、ブレーキ診断オン回路99は、入力部87に対する操作により、起動時に診断の指示を行うか否かの設定がなされることが可能である。
【0068】
本実施形態のダイカストマシン1においては、ブレーキ28は、逆作動解放式ブレーキにより構成されていることから、停電や断線により各部への電力供給が一切断たれた場合には、ブレーキ28が作動する。
【0069】
しかし、電源回路79とモータ23との間において断線が生じ、モータ23のみが電力供給が断たれたような場合には、ブレーキ28は作動しない。そこで、停電検出回路93は、電源回路79からモータ23への電力供給における異常の有無を判定し、異常が生じたと判定した場合は、ブレーキ28を作動させるようにブレーキ制御回路75を制御する。
【0070】
停電検出回路93は、例えば、電源回路79からモータ23までの配線のいずれかの位置において、モータ23が駆動されるべき時期における電力量を監視して、異常の有無を判定する。
【0071】
なお、図3では、制御装置7の各部に対して回路の名称を付しているが、これは説明の便宜上の手法に過ぎず、制御装置7の各部は、CPUがROM等に記憶されているプログラムを実行することにより構成されてもよい。
【0072】
図4は、検出圧力に基づく異常の有無の判定(第1の方法)の原理を説明する図である。横軸は、時間を示している。縦軸は、ロッド側室60Aの圧力を示している。実線L1は、正常時の圧力の変化を示し、破線L2は、異常時の圧力の変化を示している。
【0073】
まず、正常時の圧力の変化について説明する。時刻t0においてロッド側室60Aへの作動液の供給が開始されると、それまでタンク圧とされていたロッド側室60Aの圧力は比較的急激に上昇する(時刻t0〜時刻t1)。
【0074】
具体的には、ロッド側室60Aの圧力は、弾性部材57の付勢力の圧力換算値と同等の値(圧力P1)まで上昇する。なお、正確には、ロッド側室60Aの圧力は、サージ圧により、圧力P1を一時的に超える。
【0075】
さらに、ロッド側室60Aに作動液が供給されると、ブレーキピストン61は弾性部材57の付勢力に抗してヘッド側室60B側へ移動する。弾性部材57は、ブレーキピストン61のヘッド側室60B側への移動により弾性変形量が増加し、付勢力を増加させる。従って、ロッド側室60Aの圧力は、ブレーキピストン61のヘッド側室60B側への移動に伴って徐々に上昇していく(時刻t1〜時刻t2)。
【0076】
そして、ブレーキピストン61が不図示のストッパに当接するなど、ブレーキピストン61が物理的な後退限(ヘッド側室60B側の移動限)に到達すると、弾性部材57の弾性変形量の増加も停止する(時刻t2、圧力P2)。
【0077】
なお、ブレーキピストン61の物理的な後退限は、押圧部材65が不図示のストッパに到達することなどにより実現されてもよい。また、ストッパには、ブレーキシリンダ部59のヘッド側室60B側の端面等の、特別な形状を有さない部位も含まれる。
【0078】
ブレーキピストン61が後退限に到達した後は、ロッド側室60Aへの作動液の流入は不可能となることから、ロッド側室60Aの圧力は、ポンプ71の吐出圧(圧力P3)まで急激に上昇し(時刻t2〜時刻t3)、その後、当該吐出圧に維持される(時刻t3〜)。
【0079】
次に、異常時の圧力の変化について説明する。ここでいう異常時は、弾性部材57が破損するなどして、弾性部材57の付勢力が正常にブレーキピストン61に作用しない場合をいう。
【0080】
時刻t0においてロッド側室60Aへの作動液の供給が開始されると、それまでタンク圧とされていたロッド側室60Aの圧力は比較的急激に上昇する(時刻t0〜時刻t1)。
【0081】
しかし、弾性部材57の付勢力がブレーキピストン61に正常に作用していない状態においては、ロッド側室60Aの圧力が圧力P1に到達する前に、ブレーキピストン61がヘッド側室60B側への移動を開始する。また、ブレーキピストン61がヘッド側室60B側へ移動しても、弾性部材57の付勢力の増加が生じない。
【0082】
従って、ロッド側室60Aの圧力は、ブレーキピストン61がヘッド側室60B側へ移動している間、圧力P1よりも低い圧力で概ね一定に保たれる(時刻t1〜時刻t2)。
【0083】
そして、ブレーキピストン61が物理的な後退限に到達すると、正常時と同様に、ロッド側室60Aの圧力は、ポンプ71の吐出圧(圧力P3)まで急激に上昇し(時刻t2〜時刻t3)、その後、当該吐出圧に維持される(時刻t3〜)。
【0084】
上述のように、ロッド側室60Aへの作動液の供給は、ロッド側室60Aの圧力の変化に係らず、流量を一定の値とすることができる流量制御弁74を介してなされている。従って、作動液の供給を開始してからブレーキピストン61が後退限に到達するまでの時間T1は、ブレーキピストン61が前進限から後退限まで移動するときのロッド側室60Aの体積の増加量と流量制御弁74における流量とにより一義的に定まる。すなわち、正常時と異常時との間で、時間T1は同一である。なお、ブレーキピストン61の前進限は、例えば、パッド49とディスク47との当接により規定される。
【0085】
以上のとおり、ダイカストマシン1においては、弾性部材57の付勢力が異常なときは、ロッド側室60Aにおける時刻t1〜時刻t2までの圧力が、正常なときよりも低くなる。そこで、時刻t1〜時刻t2までの検出圧力が、1点鎖線L3で示す、所定の設定圧力(正常時の圧力としての下限値)よりも低いか否かを判定することにより、弾性部材57の異常が検出される。
【0086】
設定圧力(L3)は、例えば、理想的な正常時の圧力(基準圧力、L1)との差が、一定の大きさになるように設定される。若しくは、例えば、設定圧力は、基準圧力との差が、基準圧力の大きさの所定割合(例えば10%)の大きさになるように設定される。
【0087】
次に、ダイカストマシン1の動作を説明する。
【0088】
ダイカストマシン1においては、まず、移動機構17により、移動ダイプレート13が型開位置から固定ダイプレート11側へ駆動され、移動金型505を固定金型503に接触させる型閉じが行われる。次に、型締シリンダ装置19により、移動金型505及び固定金型503の接触圧を高める型締めが行われる。
【0089】
その後、射出シリンダ装置37により射出プランジャ35が駆動され、溶湯がキャビティCaに射出、充填される。一定時間が経過すると、換言すれば、溶湯が凝固して成形品が形成されると、移動機構17により、移動ダイプレート13が固定ダイプレート11とは反対側へ駆動され、型開きが行われる。この際、成形品は、移動金型505とともに移動して、固定金型503から離型する。そして、不図示の押出装置により、移動金型505から成形品が押し出される。ダイカストマシン1は、このような成形サイクルを繰り返し行う。
【0090】
ブレーキ28は、適宜なタイミングで使用される。例えば、ブレーキ28は、繰り返し行われる成形サイクルにおいて、移動ダイプレート13が型開位置にあるときに作動する。また、例えば、ブレーキ28は、ダイカストマシン1内への作業者の進入を許容または禁止する不図示の扉部が開かれたときに作動する。このようにブレーキ28が作動することにより、移動ダイプレート13の意図しない動作が抑制され、安全性が向上する。
【0091】
そして、ダイカストマシン1では、ブレーキ28の動作を保証するために、適宜な時期にブレーキ28の診断が行われる。
【0092】
図5は、制御装置7が実行する第1の方法に係る第1のブレーキ異常診断処理の手順を示すフローチャートである。
【0093】
図5においては、制御装置7が実行する型閉動作処理の手順も簡略化して示している。ブレーキ28は、型開状態において作動されている。そして、制御装置7は、型閉動作の開始時期が到来すると、ブレーキ側方向制御弁73をポンプ71からロッド側室60Aへの流れを許容する位置に切り換え、ブレーキ28の制動力の解放を開始する(ステップS1)。また、制御装置7は、ステップS1の後(概ね同時でもよい)、モータ23を起動して(ステップS2)、移動ダイプレート13の型閉方向への移動を開始する。
【0094】
制御装置7は、ブレーキ28の制動力の解放の開始(ステップS1)に伴って、第1のブレーキ異常診断処理を開始する。
【0095】
ステップS3〜S5では、制御装置7は、ロッド側室60Aへの作動液の供給を開始してから所定のサンプリング時間が経過するまでの間、圧力センサ76の検出値を所定のサンプリング周期でサンプリングする。なお、サンプリング時間は、例えば、図4の時間T1である。また、サンプリング周期は、サンプリング時間の長さ、ポンプ71の脈動などにより生じ得る検出圧力の誤差等を考慮して、適宜に設定されてよい。
【0096】
ステップS6では、制御装置7は、サンプリングされた圧力が、予め設定された設定圧力(図4のL3)よりも低いか否かを判定することにより、弾性部材57の異常の有無を判定する。
【0097】
なお、サンプリングされた圧力と、設定圧力との比較は、種々の方法が可能である。例えば、設定圧力自体が制御装置7に記憶されており、サンプリングされた圧力と設定圧力とが直接的に比較されてもよい。また、例えば、基準圧力(図4のL1)と、基準圧力と設定圧力との偏差とが制御装置7に記憶されており、サンプリングされた圧力と基準圧力との偏差が算出され、偏差同士が比較されてもよい。
【0098】
また、比較の結果、異常が生じているか否かの判定も、種々の方法が可能である。例えば、複数のサンプリング圧力において、一つでも異常と判定されたときに、弾性部材57に異常が生じていると判定されてもよいし、所定数以上のサンプリング圧力について異常と判定されたときに弾性部材57に異常が生じていると判定されてもよい。また、例えば、記憶されている基準圧力と設定圧力との偏差(サンプリングの時期によらず一定の値とする)と、算出された基準圧力とサンプリング圧力との偏差とを比較する場合においては、基準圧力とサンプリング圧力との偏差の代表値(例えば最大値や平均値)について異常が生じていると判定されたときに弾性部材57に異常が生じていると判定されてもよい。
【0099】
ステップS7では、制御装置7は、ステップS6における判定結果を表示部89に表示する。そして、制御装置7は、処理を終了する。
【0100】
図6は、制御装置7が実行する第2の方法に係る第2のブレーキ異常診断処理の手順を示すフローチャートである。当該処理は、上述のように、ユーザが任意の時期にブレーキ診断オンスイッチ97を操作したときやダイカストマシン1の起動時において実行される。
【0101】
ステップS11では、制御装置7は、ブレーキ28を作動させる。具体的には、制御装置7は、ブレーキ制御回路75への制御信号の出力を停止することにより、ブレーキ制御回路75からブレーキ側方向制御弁73への電力供給を停止する。ブレーキ側方向制御弁73は、バネ力により中立位置となり、ポンプ71からブレーキシリンダ装置55への作動液の流れは遮断される。そして、弾性部材57の付勢力によりパッド49はディスク47に押し付けられる。
【0102】
ステップS12では、制御装置7は、モータ23を駆動するための制御信号の出力を開始する。このときの制御信号は、例えば、型閉じにおいてモータ23が生じる駆動力と同等の駆動力を生じさせる制御信号である。
【0103】
ステップS13では、制御装置7は、ブレーキ28の異常の有無を判定する。
【0104】
図7は、ステップS13において制御装置7が実行するブレーキ異常有無判断処理の手順を示すフローチャートである。
【0105】
ステップS11及びS12により、ダイカストマシン1においては、ブレーキ28の制動力が発揮された状態で、モータ23を駆動するための制御信号が出力されている。従って、ブレーキ28に異常が生じていれば、モータ23は回転してしまう。より具体的には、例えば、本実施形態は、逆作動解放式のブレーキであるから、弾性部材57が破損するなどしていれば、モータ23は回転してしまう。
【0106】
そこで、ステップS21では、制御装置7は、モータ用センサ67の検出信号に基づいて、モータ23が回転したか否か判定する。制御装置7は、モータ23が回転していないと判定した場合は、ブレーキ28は正常であるものとみなし、その旨をRAM等に記憶する(ステップS22)。逆に、制御装置7は、モータ23が回転したと判定した場合は、ブレーキ28に異常が生じたものとみなし、その旨をRAM等に記憶する(ステップS23)。そして、処理を終了する。
【0107】
図6の説明に戻る。ステップS14では、制御装置7は、モータ23を起動してから所定の制動時間が経過したか否か判定する。制動時間が経過していないと判定した場合は、制御装置7は、ステップS13を再度実行する。なお、制動時間は、モータ23やブレーキ28の負荷を軽減するために、比較的短く設定されることが好ましい。
【0108】
制動時間が経過したと判定した場合は、制御装置7は、モータ23を駆動するための制御信号の出力を停止する(ステップS15)。そして、制御装置7は、ステップS13における判定結果を表示部89に表示し(ステップS16)、処理を終了する。
【0109】
以上の実施形態によれば、型締装置3は、固定金型503を保持する固定ダイプレート11と、移動金型505を保持し、固定ダイプレート11に対して型開閉方向に移動可能な移動ダイプレート13と、移動ダイプレート13を駆動する駆動力を生じるモータ23とを有する。また、型締装置3は、摩擦抵抗によりモータ23を制動可能なブレーキ28と、ブレーキ28の異常の有無に関する物理量を検出する圧力センサ76と、圧力センサ76の検出結果に基づいて、成形サイクルの1周期毎に異常の有無を判定する(ステップS6)制御装置7とを有する。
【0110】
従って、ブレーキ28により移動ダイプレート13の意図しない移動を抑制して安全性を向上させることができ、且つ、そのブレーキ28の動作を保証できることから、一層の安全性向上が図られる。一定の周期毎にブレーキ28の異常の有無が判定されることから、確実且つ迅速にブレーキ28の異常を検出することができる。
【0111】
ブレーキ28は、モータ23により駆動されるディスク47と、ディスク47に当接可能なパッド49と、パッド49をディスク47に押し付ける弾性部材57と、ブレーキピストン61により区画された2つのシリンダ室のうち一方のシリンダ室(ロッド側室60A)に作動液が供給されることにより弾性部材57の付勢力に抗してパッド49をディスク47から離間させることが可能なブレーキシリンダ装置55とを有する。上記のブレーキ28の異常の有無に関する物理量を検出するセンサは、ロッド側室60Aの圧力を検出する圧力センサ76である。
【0112】
従って、ブレーキ28は、弾性部材57の付勢力により制動力を発揮する逆作動解放式のブレーキにより構成されていることから、停電等が生じたときにも確実に移動ダイプレート13の移動が規制される。そして、弾性部材57の異常がロッド側室60Aの圧力に表出することに着目し、弾性部材57の圧力を検出するセンサとして圧力センサ76を採用していることから、第2の方法との比較からも理解されるように、特別な動作をモータ23やブレーキ28にさせることなく、成形サイクル中において弾性部材57の異常を検出することができる。
【0113】
制御装置7は、成形サイクルにおいて型閉じを開始するときにロッド側室60Aに作動液を供給してブレーキ28の制動力を解放する。また、制御装置7は、型閉じを開始するときにおける、ロッド側室60Aに作動液が供給されているときの圧力センサ76の検出した圧力が、所定の設定圧力よりも小さいときに異常が生じていると判定する。
【0114】
従って、異常の有無の判定が成形サイクル中の好適な時期に行われる。具体的には、以下のとおりである。実施形態とは逆に、弾性部材57の付勢力により、ロッド側室60Aから作動液が排出されるときのロッド側室60Aの圧力に基づいて異常の有無を判定する方法が考えられる。また、弾性部材57の付勢力の圧力換算値と、ロッド側室60Aの圧力との差は、ロッド側室60Aにおける作動液の流入速度又は流出速度が小さいほど小さくなる。一方、ブレーキ28を作動させるときは、弾性部材57の付勢力により、ロッド側室60Aの作動液が速やかに排出されることが好ましい。従って、検出時期として、ロッド側室60Aに作動液が供給されるとき、換言すれば、ブレーキ28の制動力を解放するときを選択することにより、ロッド側室60Aへの作動液の流入速度を小さくして、より正確な弾性部材57の異常の検出が可能となる。さらに、検出圧力が設定圧力よりも小さいときに異常と判定することにより、弾性部材57の付勢力が小さくなり、制動力が低下する異常を検出して、安全性を向上させることができる。
【0115】
型締装置3は、ロッド側室60Aへの作動液の流量を一定とする圧力補償付流量制御弁74を更に有する。従って、まず、上述のように、ロッド側室60Aへの流入量(速度)を規制して、弾性部材57の付勢力の圧力換算値と、ロッド側室60Aの圧力との差を小さくすることができる。さらに、図4を参照して説明したように、異常時と正常時とで、ロッド側室60Aへの作動液の供給を開始してからブレーキピストン61が後退限に到達するまでの時間T1が同一になる。換言すれば、異常時と正常時とは、圧力のみが相違する。従って、検出圧力と、当該検出圧力と比較されるべき設定圧力との対応関係が明確であり、比較のアルゴリズムが簡素化される。また、サンプリングすべき期間の設定も容易化される。
【0116】
制御装置7は、ロッド側室60Aへの作動液の供給の開始時(時刻t0)を基準として設定される、開始時以後の所定の時刻(本実施形態では開始時と同じ)からの一定期間(本実施形態では時間T1)において、圧力センサ76の検出した圧力をサンプリングし、当該サンプリングした圧力に基づいて異常の有無を判定する。上述のように、圧力補償付流量制御弁74により、異常時と正常時とで時間軸は同一であることから、このように、一定の期間でのサンプリングに基づいて、簡便且つ正確に異常の判定を行うことができる。
【0117】
型締装置3は、モータ23の動作を検出するモータ用センサ67を有する。制御装置7は、ブレーキ28に制動力を発揮させた状態で、モータ23に駆動力を生じさせる制御信号を出力し、そのときのモータ用センサ67の検出結果に基づいてブレーキ28における異常の有無を判定することも行う。
【0118】
従って、圧力検出に基づく簡便な第1の方法により周期的にブレーキ28の異常診断を行う一方で、適宜なタイミングで、ブレーキ28の効きを直接的に試す第2の方法が行われることにより、異常の早期検出及び確実な検出の両立が、成形サイクルの長期化を招くことなく実現される。
【0119】
特に、制御装置7が、型締装置3が起動されたときに、上記のモータ用センサ67に基づく異常の有無の判定を行う場合には、ブレーキ28の不具合により移動ダイプレート13が制動されない事態を未然に防止することができる。
【0120】
移動ダイプレート13を駆動する駆動源はモータ23である。従って、ブレーキとして、ディスクブレーキやドラムブレーキ等の公知の技術を適用しやすい。また、制御信号の変更のみで駆動力を調整できることから、第2の方法によるブレーキ28の診断時の駆動力を適宜な大きさに設定することが容易である。
【0121】
制御装置7は、異常の有無の判定において、型閉じ時にモータ23が生じる駆動力と同じ駆動力を生じさせる制御信号をモータ23に出力する。この場合、ブレーキ28の効きを必要十分な範囲で診断することができる。
【0122】
ダイカストマシン1は、ブレーキシリンダ装置55に作動液を供給可能であるとともに、移動金型505及び固定金型503に成形材料としての溶湯を押し出す射出プランジャ35を駆動する射出シリンダ装置37に作動液を供給可能なポンプ71を有する。従って、制動力を解放する駆動力が、共用されるポンプ71から得られ、ダイカストマシン1の構成が簡素化される。また、射出装置5の調整などのためにポンプ71を停止させたときには、ブレーキ28が自動的に作動して作業の安全性が図られる。
【0123】
制御装置7は、モータ23への電力供給の異常の有無を判定し、異常が生じていると判定したときはブレーキ28を作動する。従って、例えば、モータ23に接続された配線が断線しており、ダイナミックブレーキが有効に機能しないおそれがある場合に移動ダイプレート13を強制的に停止させ、安全性を向上させることができる。
【0124】
なお、以上の実施形態において、モータ23は本発明の駆動源の一例であり、ディスク47は本発明の被当接部材の一例であり、パッド49は本発明の当接部材の一例であり、ロッド側室60Aは本発明の一方のシリンダ室の一例であり、圧力センサ76は本発明の第1センサの一例であり、モータ用センサ67は本発明の第2センサの一例である。
【0125】
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0126】
成形機は、ダイカストマシンに限定されない。例えば、成形機は、他の金属成形機であってもよいし、プラスチック射出成形機であってもよいし、木粉に熱可塑性樹脂等を混合させた材料を成形する成形機であってもよい。また、成形機は、横型締横射出に限定されず、例えば、縦型締縦射出、横型締縦射出であってもよい。
【0127】
移動ダイプレートを駆動する駆動源は、モータに限定されず、例えば、液圧装置であってもよい。ブレーキは、ディスクブレーキに限定されず、例えば、ドラムブレーキであってもよい。
【0128】
実施形態では、第1センサとして圧力センサ76を例示した。しかし、モータ用センサ67が第1センサであってもよい。換言すれば、周期毎に行われる異常の有無の判定は、ブレーキに制動力を発揮させた状態で、駆動源に駆動力を生じさせる制御信号を出力し、そのときのモータ用センサの検出結果に基づいてブレーキにおける異常の有無を判定するものであってもよい。
【0129】
周期毎に行われる異常の有無の判定は、成形サイクルの位相に対して適宜な時期に行われてよく、型閉じを開始するときに行われるものに限定されない。例えば、当該判定が検出圧力に基づくものである場合には、上述のように、シリンダ室(ロッド側室60A)から作動液を排出してブレーキを作動させるときにも異常検出は可能であり、型開き完了時にブレーキを作動させるときに異常の有無の判定が行われてもよい。また、周期毎に行われる異常の有無の判定は、全ての成形サイクルそれぞれにおいて判定が行われてもよいし、所定回数の成形サイクル毎に行われてもよい。
【0130】
検出圧力に基づく異常の有無の判定は、検出圧力が所定の設定圧力よりも小さいときに異常が生じていると判定するものに限定されず、検出圧力が所定の許容最大圧力よりも大きいときに異常が生じていると判定するものであってもよい。付勢力が大きい場合には、制動力の解放が適正になされず、ひいては、成形サイクルが適正に行われないおそれがあるからである。また、異常の有無の判定は、検出圧力が所定の設定圧力よりも小さいときと、検出圧力が所定の許容最大圧力よりも大きいときとの双方において異常と判定されるものであってもよい。
【0131】
また、上述したように、検出圧力に基づく異常の有無の判定は、シリンダ室(ロッド側室60A)に作動液が供給されているときの圧力センサの検出した圧力に基づく判定に限定されず、シリンダ室(ロッド側室60A)から作動液が排出されているときの圧力センサの検出した圧力に基づく判定であってもよい。
【0132】
圧力補償付流量制御弁は本発明の必須要件ではなく、省略されてもよい。例えば、圧力補償付流量制御弁に代えて、作動液の流量を圧力差に応じた値に規制する絞り弁が設けられてもよい。この場合、実施形態のように、所定の時刻の圧力を比較する判定の他に、シリンダ室(ロッド側室60A)の圧力がポンプの吐出圧に到達するまでの時間を計測し、当該時間が所定の時間よりも短いときに、異常が発生していると判定する判定を行うことができる。
【0133】
圧力のサンプリングは、所定の期間に亘って行われる必要はなく、所定の一の時刻においてのみ行われてもよい。例えば、実施形態において、ロッド側室60Aへの作動液の供給の開始時(時刻t0)を基準として設定される、前記開始時以後の所定の時刻において、圧力がサンプリングされてもよい。
【0134】
また、圧力のサンプリングが、作動液の供給の開始時(時刻t0)を基準として設定される、その開始時以後の所定の時刻からの一定期間において行われる場合、当該所定の時刻からの一定期間は、開始時からの時間T1の期間に限定されない。例えば、実施形態において、サンプリングの開始時刻(所定の時刻)を、作動液の供給の開始時(時刻t0)に対して所定の時間だけ遅らせたり、サンプリングの終了を時刻t2よりも早めたりしてもよい。
【0135】
圧力センサに基づく異常の有無の判定(第1の方法)は、周期毎に行われるだけでなく、他の時期に行われてもよい。例えば、当該判定は、実施形態の第2の方法のように、作業者が希望する任意の時期に、作業者が入力部を介して異常の有無の判定を指示することにより行われてもよい。また、例えば、当該判定は、型締装置が起動されたときに、自動的に行われてもよい。さらに、当該判定は、ブレーキの制動力が解放される全ての機会において行われてもよい。
【0136】
モータの動作を検出するセンサに基づく異常の有無の判定(第2の方法)において、制御装置がモータに出力する制御信号は、型閉じ時にモータが生じる駆動力と同じ駆動力を生じさせるものに限定されない。例えば、制御信号は、モータやブレーキの負担を軽減する目的で、型閉じ時の駆動力よりも小さい駆動力を生じさせるものとされてもよいし、ブレーキが作動することを確実に確認するために、型閉じ時の駆動力よりも大きい駆動力を生じさせるものとされてもよい。
【0137】
モータの動作を検出するセンサに基づく異常の有無の判定(第2の方法)では、モータが少しでも回転したときに異常と判定されてもよいし、所定の制動時間に所定量以上の回転が生じたときに異常と判定されてもよい。
【0138】
異常の有無の判定結果を示す装置は、表示装置に限定されず、例えば、報知音を出力する警報装置であってもよい。
【符号の説明】
【0139】
3…型締装置、7…制御装置、11…固定ダイプレート、13…移動ダイプレート、23…モータ(駆動源)、28…ブレーキ、47…ディスク(被当接部材)、49…パッド(当接部材)、55…ブレーキシリンダ装置、57…弾性部材、60A…ロッド側室(シリンダ室)、60B…ヘッド側室(シリンダ室)、61…ブレーキピストン、76…圧力センサ、503…固定金型、505…移動金型。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定金型を保持する固定ダイプレートと、
移動金型を保持し、前記固定ダイプレートに対して型開閉方向に移動可能な移動ダイプレートと、
前記移動ダイプレートを駆動する駆動力を生じる駆動源と、
摩擦抵抗により前記駆動源を制動可能なブレーキと、
前記ブレーキの異常の有無に関する物理量を検出する第1センサと、
前記第1センサの検出結果に基づいて、成形サイクルの1周期毎、又は、複数回の成形サイクルの周期に相当する周期毎に異常の有無の判定を行う制御装置と、
を有する型締装置。
【請求項2】
前記ブレーキは、
前記駆動源により駆動される被当接部材と、
前記被当接部材に当接可能な当接部材と、
前記当接部材を前記被当接部材に押し付ける弾性部材と、
ピストンにより区画された2つのシリンダ室のうち一方のシリンダ室に作動液が供給されることにより前記弾性部材の付勢力に抗して前記当接部材を前記被当接部材から離間させることが可能なシリンダ装置と、
を有し、
前記第1センサは、前記一方のシリンダ室の圧力を検出する圧力センサである
請求項1に記載の型締装置。
【請求項3】
前記制御装置は、
成形サイクルにおいて型閉じを開始するときに前記一方のシリンダ室に作動液を供給して前記ブレーキの制動力を解放し、
前記型閉じを開始するときにおける、前記一方のシリンダ室に作動液が供給されているときの前記圧力センサの検出した圧力が、所定の設定圧力よりも小さいときに異常が生じていると判定する
請求項2に記載の型締装置。
【請求項4】
前記駆動源の動作を検出する第2センサを有し、
前記制御装置は、前記ブレーキに制動力を発揮させた状態で、前記駆動源に駆動力を生じさせる制御信号を出力し、そのときの前記第2センサの検出結果に基づいて前記ブレーキにおける異常の有無を判定することも行う
請求項2又は3に記載の型締装置。
【請求項5】
前記制御装置は、当該型締装置が起動されたときに、前記第2センサの検出結果に基づく異常の有無の判定を行う
請求項4に記載の型締装置。
【請求項6】
前記駆動源はモータである
請求項1〜5のいずれか1項に記載の型締装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−269352(P2010−269352A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124475(P2009−124475)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】