説明

基板の検査装置、および、基板の検査装置における基板の欠陥分布を得る方法

【課題】欠陥画像を記憶するメモリのオーバフローが発生した場合でも基板の全面についての欠陥分布を早期に得ることができる基板の検査装置、および、基板の検査装置における基板の欠陥分布を得る方法を提供する。
【解決手段】基板の画像を取得し、画像比較により差のある画素を抽出し、該画素の信号量が予め設定された閾値を超えた場合に欠陥候補と判定し、欠陥候補の代表画素の座標を記憶装置へ記憶し、記憶装置の容量がオーバフローした場合、またはオーバフローの前に、閾値の値を変更して欠陥候補の判定を継続し、基板の欠陥分布をディスプレイへ表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な回路パターンを有する半導体装置や液晶等を製造するための基板の欠陥検査技術に係わる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は、シリコンウエハを基板として微細な回路パターンが形成される。また、その微細な回路パターンを露光転写するための露光装置用フォトマスクであるガラス基板にも、微細な回路パターンが形成される。また、液晶,太陽電池,遺伝子検査用チップ等の基板にも、微細な回路パターンが形成される。これらの微細な回路パターンが形成された基板の欠陥の有無を検査する場合、光学式顕微鏡や電子顕微鏡で撮影した画像が用いられる。本発明は、電子顕微鏡で撮影した画像を用いて、基板に形成された微細な回路パターンを検査する技術に関するもので、上記いずれの基板にも適用可能な技術である。
【0003】
ここでは、半導体装置の製造過程途中の半導体ウエハを用いた欠陥検査を一例として、本発明を説明する。LSIロジックや半導体メモリ等の半導体装置は、半導体ウエハ上にフォトマスクに形成された回路パターンを、リソグラフィー処理,エッチング処理により転写する工程を繰り返すことで、製造される。半導体装置の製造過程における処理結果の良否,異物発生の有無等は、半導体装置の製造歩留まりに大きく影響を及ぼす。従って、半導体装置の製造過程における不良発生や異物を、早期に検知するために、製造過程の途中途中で半導体ウエハを検査する必要がある。
【0004】
半導体ウエハに形成される半導体装置の検査としては、前述のように、半導体ウエハに光を照射して光学画像を撮影したり、電子線を照射して基板から発生する二次電子を検出して二次電子画像を形成して、欠陥のない画像と比較して画像信号、具体的には画素の信号量が閾値を超えた場合に欠陥候補が有るとプロセッサが判断し、その欠陥候補の代表座標を算出する画像比較検査が用いられている。また、半導体ウエハにレーザ光を照射し、基板上の欠陥の反射光を検出することで、欠陥を検知し座標を算出する装置も用いられている。
【0005】
半導体装置の製造プロセス立上げ時に欠陥が多発したときには、半導体ウエハ全面における欠陥の分布の傾向を早期に把握し、欠陥の原因となっている製造装置を特定することが行われる(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
欠陥候補の座標を記憶するメモリの容量は、半導体ウエハの端から端までの1回の繰り返し走査単位であるストライプのひとつ分だけ用意され、ひとつのストライプの検査が終わると、メモリに記憶された欠陥座標データは、検査装置の出力ユニットから外部の欠陥観察装置等へ送られ、次のストライプの検査で検出された欠陥座標で上書きされるようになっているので、メモリの容量を増やすことなく半導体ウエハの全面検査が可能になっている。しかし、近年、半導体デバイスの回路パターンの微細化がすすむとともに、欠陥検査装置の検出感度も向上しているため、検出される欠陥候補の数が増えてきている。従来と同じ容量のメモリでは、ひとつのストライプで記憶できる欠陥座標の数が限られているため、オーバフローして検査装置が停止したり、半導体ウエハの一部の半導体装置の欠陥候補しか表示できなくなってしまう。
【0007】
画像比較検査における欠陥候補と判断するときの閾値を上げることにより、欠陥候補の数を減らすことができる。しかし、画像比較検査では、半導体ウエハを移動させながら光や電子線を連続走査し、メモリに連続的に画像データを送っているので、閾値を上げる理由で、ひとつのストライプ検査の途中で検査を止めることはできない。
【0008】
また、半導体ウエハ上の全ての欠陥を検出してその発生原因を突き止めることよりも、半導体ウエハの全面における欠陥の分布を早期に知りたい場合には、画像処理のときの信号ノイズに近い信号の欠陥候補を省略しても、半導体ウエハ全体に関する欠陥候補の分布を検出することを優先すべきである。従って、ストライプ検査の途中でメモリがオーバフローした場合、あるいはオーバフローしそうな場合に、検査を止めずに閾値を上げることができれば、半導体ウエハ全体に関する欠陥候補の分布を早期に知ることができる。
【0009】
検査装置で取り扱える欠陥数を増やすために、メモリの容量を大きくすることによっても、半導体ウエハ全面の欠陥分布を得ることができるが、メモリ容量増加によるコストアップだけでなく、検出される欠陥数が増えることにより検査時間が長時間化するため、半導体ウエハの全面における欠陥の分布を早期に知りたいというニーズに沿うことはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−148027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来は、基板の検査装置において、欠陥の位置座標を記憶するメモリの容量を超えてオーバフローするような欠陥数を検出する場合には、基板の全面についての欠陥分布を得ることができなかった。
【0012】
本発明の目的は、欠陥の位置座標を記憶するメモリのオーバフローが発生した場合でも基板の全面についての欠陥分布を早期に得ることができる基板の検査装置、および、基板の検査装置における基板の欠陥分布を得る方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の実施態様によれば、基板の画像を取得し、画像比較により差のある画素を抽出し、該画素の信号量が予め設定された閾値を超えた場合に欠陥候補と判定し、欠陥候補の代表画素の座標を記憶装置へ記憶し、記憶装置の容量がオーバフローした場合、またはオーバフローの前に、閾値の値を変更して欠陥候補の判定を継続し、基板の欠陥分布をディスプレイへ表示する構成を採用したものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、欠陥の位置座標を記憶するメモリのオーバフローが発生した場合でも基板の全面についての欠陥分布を早期に得ることができる基板の検査装置、および基板の検査装置における基板の欠陥分布を得る方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】検査装置の構成図。
【図2】インターフェース装置のディスプレイへ表示される画面図。
【図3】基板の平面図。
【図4】基板の平面図。
【図5】欠陥検査の手順を示すフローチャート。
【図6】画像毎の欠陥判定のタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施例について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、半導体ウエハの検査のために電子顕微鏡を応用した検査装置の構成図であり、主要な構成を略縦断面図とし、これに機能図を付加してその構成を表している。検査装置1は、検査室2と、その外部に設けられる画像処理装置5とから構成されている。検査室2は、内部が真空排気される電子光学系カラム3と、半導体ウエハに代表される基板9が設置される試料室8とから構成される。基板9は、検査室2の外部から搬送された後、光学顕微鏡室4で位置決めされてから、電子光学系カラム3の下方に、移動ステージ30により位置決めされる。
【0018】
光学顕微鏡室4に設けられた光源40で発生した光は、光学レンズ41で基板9に焦点が合せられ、基板9に予め設けられた位置決めマークの画像が検出器42で検出されることで、基板9が位置決めされる。その後、移動ステージ30によって基板9が搬送され、Xステージ31、またはYステージ32で微調整を行う。移動ステージ30の位置は、ステージ位置計測装置34によりモニタリングされ、制御装置60へ送られる。
【0019】
電子光学系カラム3の電子源10で発生した一次電子線19は、引き出し電極11で引き出され、コンデンサレンズ12で細く絞られ、さらに対物レンズ16で基板9に焦点を結ぶように細く絞られて、基板9に到達する。電子源10で発生する一次電子線19の発生は自由に制御できないので、ブランキング偏向器13で一次電子線19を偏向し、絞り14で隠すことで、基板9に一次電子線19が照射されないように制御している。細く絞られた一次電子線19は、細いスポット状で基板9に当るので、走査偏向器15で一次電子線19を走査しながら、走査信号に同期して検出器20で二次電子を検出することにより、基板9の画像を生成することができる。基板9で発生した二次電子37は、一次電子線19の軌道に影響を及ぼさないE×B偏向器18により、その軌道を曲げられ、反射体17に衝突する。反射体17に二次電子37が衝突することで、二次電子38が発生し、検出器20で二次電子38を検出する。半導体装置などの微細な構造物は、高エネルギーの一次電子線を当てると破壊してしまう場合がある。基板9に、電圧印加部33から直接に、あるいは、移動ステージ30を介して、負電圧電源36から負の電圧を印加すると、電子源10の電位と基板9の電位との差が小さくなり、破壊を防ぐことができる。この印加する電圧をリターディング電圧とよぶ。基板9の表面に、一次電子線19の焦点を合せるために、高さ計測装置35が設けられ、制御装置60へ送られる。ステージ位置計測装置34で計測された移動ステージ30の位置や、高さ計測装置35で計測された基板9の高さが制御装置60へ送られ、制御装置60のプロセッサは、ブランキング偏向器13の偏向タイミング,走査偏向器15の偏向タイミングや偏向速度,対物レンズ16の励磁強度を計算し、制御装置60は、計算結果に基づく偏向制御信号を、偏向信号発生装置43に送り、対物レンズ16の励磁強度を対物レンズ制御装置44に送る。
【0020】
基板9の大きさに対して一次電子線19のスポットの大きさは非常に小さく、おおよそ100μm四方の大きさの画像しか生成できないので、基板9を停止させて撮像することの繰り返しでは、基板9の全面の検査には非常に時間がかかってしまう。そこで、Xステージ31を移動させながら一次電子線19を走査して画像を生成し、同時にメモリ45へ保存しながら画像比較により欠陥を検出する連続画像比較検査により、検査時間を短縮することができる。この場合、比較検査で用いられるメモリ45の容量は、ひとつの画像分の容量だけにしており、ひとつの画像の処理が終了したら次の画像データで上書きし、画像データを残さないようにして、メモリ45の容量を低減している。
【0021】
検出器20で検出した信号は、検出信号処理部7に送られ、プリアンプ21で増幅され、AD変換器22でアナログ信号からデジタル信号へ変換され、光変換装置23で光信号に変換され、光伝送路24で画像処理装置5へ送られる。検出器20の逆バイアスは、逆バイアス電源29により供給され、プリアンプ21の電源は、プリアンプ駆動電源27から供給され、AD変換器22の電源は、AD変換器駆動電源28から供給され、これらの電源は、高圧電源26から供給される。
【0022】
光伝送路24で送られたデジタル信号は、電気変換装置25で電気信号に変換され、画像処理装置5の画像信号を格納するメモリ45に記憶される。メモリ45に記憶された信号は画像処理回路46で画像化される。また、画像処理回路46には、参照画像として隣接する画像または特定位置はなれた画像が記憶されている。画像処理回路46では、画像化された画像と参照画像の位置合わせ,信号レベルの規格化,ノイズ信号を除去するための画像処理が施され、比較演算する。画像同士の比較演算は、画像の画素毎の明るさ信号の階調値の差分を求めることで行われる。両者に差がなければ比較結果は信号の大きさがゼロとなり、差があれば信号が残る。画像処理回路46には演算部48が接続され、この演算部48は、比較演算された差画像信号の絶対値を予め設定された閾値と比較し、該閾値よりも差画像信号レベルが大きい場合に欠陥候補と判定し、欠陥候補と判定された代表画素の位置座標を求めて欠陥データバッファ47に送信する。欠陥データバッファ47では、欠陥の位置座標を記憶し、全体制御部49へ欠陥の位置座標を送るとともに、欠陥数をカウントする。
【0023】
欠陥候補と判定されるものは、所定の閾値よりも差画像信号レベルが大きい画素のかたまりである。従って、欠陥ではなく信号レベルの大きいノイズであっても、欠陥候補として判定される可能性がある。半導体装置の製造過程では、検査装置で検出された欠陥の座標に基づいて、観察装置で欠陥の画像を撮像し、オペレータが欠陥かどうかを確認したり、画像処理により欠陥かどうかをコンピュータが判断して、最終的に真の欠陥かどうかが判定される。1つの画像中に複数の欠陥候補が検出された場合は、欠陥数も重要な情報なので、欠陥データバッファ47では1つの画像中の欠陥数もカウントし、この欠陥数が全体制御部49へ送られる。画像処理装置5は、インターフェース装置6に接続され、画像処理装置5の全体制御部49からインターフェース装置6に欠陥の位置座標を示す信号が送られ、ディスプレイの画像表示部56に欠陥の位置がシンボル化されて表示される。
【0024】
インターフェース装置6は、検査装置1の動作条件や、画像処理の条件を入力して指示したり、検査結果を表示することにより、検査装置1のオペレータのユーザインターフェースとなる。インターフェース装置6から入力された動作条件は、画像処理装置5の全体制御部49を介して制御装置60へ送られ、一次電子線19の偏向や移動ステージ30の移動が制御される。インターフェース装置6のディスプレイのマップ表示部55には、基板9の平面図が模式的に表示され、検出された欠陥候補の座標に従って、欠陥候補の分布を記号化して表示させることができる。基板9の全体に対して、欠陥候補がどのように分布しているかをオペレータが見ることによって、欠陥候補の発生の傾向をつかむことができ、欠陥発生の製造工程を推定する一助となる。
【0025】
インターフェース装置6には、ディスプレイの表示内容を変更するためのモード切替え指示ボタン50が用意されている。また、基板9の搬入指示ボタン51,検査開始指示ボタン52,欠陥確認のための画面を表示させる欠陥確認指示ボタン53,基板9の搬出指示ボタン54等により、検査全体の実行を指示することができる。
【0026】
また、インターフェース装置6には、画像取得指示ボタン57が用意され、検出された欠陥毎、あるいは領域毎に電子線画像あるいは光学画像を取得する指示を出すことができる。画像処理指示ボタン58は、取得した画像の明るさの調整やコントラスト調整を指示することができる。処理条件設定ボタン59は、一次電子線19を基板9に照射するときの偏向幅,偏向速度,対物レンズの焦点距離,焦点深度などの電子光学系の各種条件を設定することができる。これらの指示の入力によって、制御装置60は、一次電子線19の発生時の加速電圧,偏向幅,偏向速度,検出信号処理部7の信号取り込みタイミング,移動ステージ30や、Xステージ31,Yステージ32の移動速度等を制御する。また、ステージ位置計測装置34,基板9の高さ計測装置35で検出された信号に基づいて、基板9の位置や高さをモニタし、目標値に対してずれがある場合に補正信号を生成し、偏向信号発生装置43や対物レンズ制御装置44に補正信号を送り、一次電子線19が基板9の目標位置に照射されるように、偏向幅,偏向速度,対物レンズの焦点距離,焦点深度を変える制御を行う。
【0027】
図2は、図1に示したインターフェース装置6のディスプレイに表示される画面の一例である。画面の左側にマップ表示部55が、右側に画像表示部56が設けられている。マップ表示部55は、検査対象の基板のダイのレイアウト情報に基づいて、ダイの配列が表示され、欠陥検査の進行に従って、検出された欠陥候補の位置が丸印等のシンボルで検出された順番に表示される。
【0028】
図3,図4は、基板9の平面図であって、インターフェース装置6のディスプレイのマップ表示部55に表示される欠陥マップである。図3において、基板301に複数のダイ302が表示される。黒い丸印で示されるものは、検査装置による検査で検出された欠陥303である。連続画像比較検査の場合、基板301を載せたXステージ31を紙面の左方向へ移動させながら、一次電子線19をY方向に偏向走査させると、走査偏向器15で偏向した幅のストライプ状の領域304の画像をメモリ45に取り込むことができる。連続画像比較検査は、画像を取得する単位であるストライプ状の領域を単位として行われる。ダイのY方向の幅は、走査偏向器15による偏向幅よりもはるかに大きいので、ダイのX方向の一列分の座標と画像を得るためには、ストライプ状の領域304の一次電子線19の走査を何回か繰り返す。これにより、ダイの一行分の画像をメモリ45へ取り込みながら、欠陥を検出することができる。
【0029】
1番目のストライプ状の領域304の検査が終了したら、次に、2番目のストライプ状の領域305の検査が行われる。このとき、欠陥データバッファ47の容量は、ひとつのストライプ分の欠陥の位置座標を記憶できるように設定されることから、欠陥データバッファ47に記憶された1番目のストライプ状の領域304の欠陥の位置座標は、2番目のストライプ状の領域305の欠陥の位置座標で上書きされ、消去される。これを、ストライプ状の領域306,307と繰り返して、基板301の全体の欠陥検査が行われ、欠陥の位置座標に基づいて、マップ表示部55に、欠陥の座標が黒丸印等にシンボル化されて表示される。
【0030】
例えば、図3に示されるように、基板301の中央部よりも周辺の領域に欠陥303が多く分布する欠陥分布が得られた場合は、欠陥の発生原因を究明するときに、はじめから基板の周辺の領域に欠陥が発生しやすい製造工程に着目することで、欠陥発生原因の究明時間を短縮することができる。
【0031】
しかしながら、検査の途中で、ひとつのストライプで検出される欠陥数が、想定していた欠陥数を超えてしまった場合には、欠陥データバッファ47は、オーバフローしたとき以降の欠陥数と欠陥の位置座標を記憶することができない。従って、マップ表示部55には、欠陥データバッファ47に記憶された欠陥しか表示されない。このときのマップ表示部55に表示される欠陥の分布は、図4に示すようになる。
【0032】
図4において、基板401に複数のダイ402が表示される。黒い丸印で示されるものは、検査装置による検査で検出された欠陥403である。図3に示した場合と同様に、連続画像比較検査の場合、基板401を載せたXステージ31を紙面の左方向へ移動させながら、一次電子線19をY方向に偏向走査させると、走査偏向器15で偏向した幅のストライプ状の領域404の画像が、順番にメモリ45に取り込まれる。
【0033】
1番目のストライプ状の領域404の検査が終了したら、次に、2番目のストライプ状の領域405の検査が行われ、欠陥データバッファ47に記憶された1番目のストライプ状の領域404の欠陥の位置座標が上書きされる。これを、ストライプ状の領域406,407と繰り返して、基板401の全体の欠陥検査が行われる。
【0034】
1番目のストライプ状の領域404において、検査のはじめの方のダイでは多数の欠陥が検出されているが、途中から欠陥が表示されていない。2番目のストライプ状の領域405についても、途中から欠陥が表示されていない。3番目のストライプ状の領域406でも、4番目のストライプ状の領域407でも、途中から欠陥が表示されていない。これは、欠陥数が多すぎて、検査の途中で欠陥データバッファ47の記憶容量をオーバフローしてしまったためであり、演算部48で欠陥が検出されているにもかかわらず、欠陥データバッファ47に欠陥の位置座標が記憶できないためである。
【0035】
このように、欠陥データバッファ47の記憶容量がオーバフローしてしまった場合には、それ以降の欠陥の位置座標を記憶できないので、図4に示すように全部の欠陥をディスプレイに表示できなくなってしまう。この欠陥マップをオペレータが見た場合、欠陥が左の方に偏って存在し、中央部や右の方の領域には欠陥がないと、誤って判断してしまう可能性があるので、欠陥データバッファがオーバフローした場合にこれを検知で、検査装置を検査の途中で停止させ、メッセージをディスプレイへ表示させることも行われている。このときには、オペレータは、その基板の検査を中止するか、あるいは、手動で欠陥を検出するときの信号レベルの閾値を上げて、再度、始めから検査をやり直すことで対処するしかない。
【0036】
検査装置の対応としては、基板で検出される欠陥数の増加に従って、欠陥データバッファの容量を増やし、オーバフローしないようにしておくことが考えられるが、コストアップになるだけで、根本的な解決にはなっていない。
【0037】
欠陥データバッファ47の記憶容量がオーバフローしてしまったかどうかは、欠陥データバッファ47に欠陥の位置座標だけでなく、欠陥数も記憶させるようにしておき、判定のための欠陥数を予め閾値として設定し、欠陥数がこの閾値を超えるかどうかを欠陥検出毎に判定するようにしておけば、記憶容量がオーバフローしたとき、またはオーバフローする前に、直ちにオーバフローまたはその可能性を知ることができる。
【0038】
図5は、欠陥検査の手順を示すフローチャートである。これは、図4に示したような、基板全体の欠陥座標が得られない状況になることを防止し、図3に示したような基板全体の欠陥座標が得られるようにするための検査手順である。全体制御部49で、欠陥データバッファ47の記憶容量のオーバフローを監視し、オーバフローした場合、またはオーバフローの手前で画像処理の手順を制御する。
【0039】
検査を開始すると、1番目のストライプの開始位置にステージを移動させ(ステップ501)、ストライプ終了位置へ向かってXステージ31を移動開始させて、欠陥の位置座標を求めながら、欠陥データバッファ47の記憶容量がオーバフローしていないかどうか、あるいはオーバフローの可能性を確認する(ステップ502)。オーバフローの判定は、前述のように、欠陥数を基準とした閾値を設け、これと比較することが可能である。オーバフローと判定されない場合は、ひとつのストライプについての欠陥検出処理が終了し(ステップ503)、次のストライプの有無を確認し(ステップ504)、有の場合はステップ501に戻って、次のストライプの検査を開始し、無の場合は検査を終了する。
【0040】
ステップ502でオーバフローと判定された場合は、全体制御部49は、その時点での欠陥判定のための信号の閾値を予め定められた値だけ上昇させ(ステップ505)、現在検査しているストライプの最初の位置へステージを移動させ(ステップ506)、ステップ502からの欠陥検出処理を行う。
【0041】
このように、ひとつのストライプの検査の途中で欠陥データバッファ47のオーバフローが有る場合には、そのストライプの検査を中止し、欠陥検出の閾値を上げ、そのストライプの検査を最初からやり直すことで、検出される欠陥数を少なくし、欠陥データバッファ47の記憶容量へ格納できるように調整する。閾値の上げ幅は、実際の取得データに従って、オペレータにより予め決めておくようにする。以上により、ひとつのストライプで検出される欠陥数が、欠陥データバッファ47の記憶容量のオーバフローを防ぐように低減されるので、欠陥が基板全体に対して偏って検出されることを防止して、基板全体の欠陥分布を早期に知ることができる。上述のように、欠陥判定の閾値がストライプ毎に異なることから、欠陥判定の閾値を該当するストライプの属性データとして欠陥候補の座標とともに送信することで、半導体ウエハ全体の欠陥の分布を分析するときの参考にできるようにする。
【0042】
図6は、画像毎の欠陥判定のタイムチャートである。図3に示したストライプ状の領域304で得られる画像A,B,C,D,E,F,…が、画像メモリ45へ書き込まれる。画像メモリ45の容量は、ひとつのストライプの画像を一時保存できるだけの容量としておく。図1に示した画像処理回路46で、画像化された画像と参照画像の位置合わせ、信号レベルの規格化,ノイズ信号を除去するための画像処理が施され、画像の画素毎の明るさ信号の階調値の差分を求めて比較演算を行う。両画像間の信号の大きさに差がなければ信号の大きさがゼロとなり、差があれば信号が残る。画像A,Bの比較で欠陥候補が抽出された場合、画像A,Bのどちらに欠陥があるかわからない。そこで次の演算である画像B,Cの比較の結果、欠陥候補が抽出されなかった場合は、画像Aに欠陥候補があることがわかる。画像B,Cの比較の結果、欠陥候補が抽出された場合は、画像Bに欠陥候補があることがわかる。これを順に繰り返して、欠陥候補がどの画像に存在するかを判定し、画像処理回路46に接続された演算部48で、比較演算された差画像信号の絶対値を予め設定された閾値と比較し、該閾値よりも差画像信号レベルが大きい場合に欠陥候補と判定し、欠陥候補と判定された代表画素の位置座標を求めて、欠陥データバッファ47に座標を送信する。さらに、演算部48は、欠陥候補と判定された欠陥候補の数も欠陥データバッファ47に送信して欠陥数として書き込む。
【0043】
本発明の実施態様における検査装置で欠陥候補が抽出されると、その欠陥が何であるかを詳細に調べる観察装置へ、欠陥候補の座標が送信される。近年では、メモリやデータ転送容量の増大により、必要に応じてそのときの欠陥候補の差画像も属性データとして送信することが可能になってきている。前述の実施態様では、ストライプ検査の途中で欠陥データバッファ47の記憶容量のオーバフローの可能性がある場合、検査を中止し、そのストライプの検査を新たな欠陥判定の閾値でやり直す手順を説明した。しかし、メモリやデータ転送容量の増大により、欠陥候補毎に閾値を属性データとして添付可能になるので、ストライプの途中で閾値を変更しても、検査を中止することなくそのストライプの検査を続行してしまうことで、検査時間をより短縮することができる。この場合、観察装置へ送られるひとつひとつの欠陥候補のデータには、欠陥候補の座標の他に、属性データとしてストライプの番号,欠陥判定の閾値が付帯されている。
【0044】
半導体ウエハの場所によって、検出したい欠陥の種類が異なるときには、欠陥判定の閾値を下げて欠陥判定を行う場合もある。欠陥判定の閾値を任意に上げ下げ可能として、多種の欠陥を検出することを可能にすることもできる。例えば、図3に示したような、半導体ウエハの外周に欠陥が多く発生する場合、内側の画像の検査は詳細に行う必要がないので、欠陥判定のストライプ毎に欠陥判定の閾値を変えるのではなく、外周の画像の欠陥判定の閾値を低くし、内側の画像の欠陥判定の閾値を高くして閾値を異ならせるようにする。これにより、外周の欠陥候補をくまなく抽出できるとともに、内側の検査は欠陥数を減らせるので、メモリの容量を有効に使用することが可能となる。
【0045】
以上述べたように、本発明の実施態様によれば、欠陥画像を記憶するメモリのオーバフローが発生した場合でも基板の全面についての欠陥分布を早期に得ることができる基板の検査装置、および、基板の検査装置における基板の欠陥分布を得る方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 検査装置
5 画像処理装置
6 インターフェース装置
9,301,401 基板
45 メモリ
46 画像処理回路
47 欠陥データバッファ
48 演算部
49 全体制御部
55 マップ表示部
56 画像表示部
60 制御装置
302,402 ダイ
303,403 欠陥
304,305,306,307 ストライプ状の領域
404,405,406,407 ストライプ状の領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の検査装置における基板の欠陥分布を得る方法であって、
前記基板の画像を取得し、
画像比較により差のある画素を抽出し、該画素の信号量が予め設定された閾値を超えた場合に欠陥候補と判定し、
該欠陥候補の代表画素の座標を記憶装置へ記憶し、
該記憶装置の容量がオーバフローした場合、またはオーバフローの前に、前記閾値の値を変更して前記欠陥候補の判定を継続し、
前記基板の欠陥分布をディスプレイへ表示する
ことを特徴とする基板の検査装置における基板の欠陥分布を得る方法。
【請求項2】
請求項1の記載において、
前記基板に照射する光または電子線の走査と略直角方向に前記基板を連続移動させながら、前記画像を複数取得する単位をストライプとよぶとき、前記記憶装置は、該ストライプ単位で前記欠陥候補の座標を記憶する容量を有し、
前記記憶装置の容量がオーバフローした場合、またはオーバフローの前に、前記ストライプの検査を中止して前記閾値の値を変更し、
前記ストライプの最初から画像を取得して前記欠陥候補の判定を再開する
ことを特徴とする基板の検査装置における基板の欠陥分布を得る方法。
【請求項3】
請求項2の記載において、
前記ストライプ毎の前記閾値を、前記欠陥候補の座標の属性データとして付与する
ことを特徴とする基板の検査装置における基板の欠陥分布を得る方法。
【請求項4】
請求項2の記載において、
前記記憶装置の容量がオーバフローした場合、またはオーバフローの前で、前記閾値の値を上げる
ことを特徴とする基板の検査装置における基板の欠陥分布を得る方法。
【請求項5】
請求項1の記載において、
前記記憶装置の容量がオーバフローした場合、またはオーバフローの前に、画像取得を継続しながら前記閾値の値を変更して前記欠陥候補の判定を継続し、
前記画像毎の前記閾値を、前記欠陥候補の座標の属性データとして付与する
ことを特徴とする基板の検査装置における基板の欠陥分布を得る方法。
【請求項6】
請求項1の記載において、
前記記憶装置の容量がオーバフローしたかどうか、またはオーバフローの前かどうかは、前記欠陥候補と判定された欠陥候補の数に基づいて判定する
ことを特徴とする基板の検査装置における基板の欠陥分布を得る方法。
【請求項7】
請求項6の記載において、
前記欠陥候補の数は、前記記憶装置へ記憶される
ことを特徴とする基板の検査装置における基板の欠陥分布を得る方法。
【請求項8】
基板の画像を取得して欠陥候補を検出する基板の検査装置において、
画像比較により差のある画素を抽出する画像処理回路と、
該画素の信号量が予め設定された閾値を超えた場合に欠陥候補と判定する演算部と、
該欠陥候補の代表画素の座標を記憶する記憶装置とを備え、
前記演算部は、前記記憶装置の容量がオーバフローした場合、またはオーバフローの前に、前記閾値の値を変更して前記欠陥候補の判定を継続する
ことを特徴とする基板の検査装置。
【請求項9】
請求項8の記載において、
前記基板に照射する光または電子線の走査と略直角方向に前記基板を連続移動させながら、前記画像を複数取得する単位をストライプとよぶとき、前記記憶装置は、該ストライプ単位で前記欠陥候補の座標を記憶する容量を有し、
前記演算部は、前記記憶装置の容量がオーバフローした場合、またはオーバフローの前に、前記ストライプの検査を中止し、前記閾値の値を変更し、
前記画像処理回路は、前記ストライプの最初から画像を取得して画像比較により差のある画素を抽出し、
前記演算部は、該画素に基づいて前記欠陥候補の判定を行う
ことを特徴とする基板の検査装置。
【請求項10】
請求項9の記載において、
前記記憶装置は、前記ストライプ毎の前記閾値を、前記欠陥候補の座標の属性データとして記憶する
ことを特徴とする基板の検査装置。
【請求項11】
請求項9の記載において、
前記演算部は、前記記憶装置の容量がオーバフローした場合、またはオーバフローの前で、前記閾値の値を上げる
ことを特徴とする基板の検査装置。
【請求項12】
請求項8の記載において、
前記演算部は、前記記憶装置の容量がオーバフローした場合、またはオーバフローの前に、画像取得を継続しながら前記閾値の値を変更して前記欠陥候補の判定を継続し、
前記記憶装置は、前記画像毎の前記閾値を、前記欠陥候補の座標の属性データとして記憶する
ことを特徴とする基板の検査装置。
【請求項13】
請求項8の記載において、
前記演算部は、前記記憶装置の容量がオーバフローしたかどうか、またはオーバフローの前かどうかを、前記欠陥候補と判定された欠陥候補の数に基づいて判定する
ことを特徴とする基板の検査装置。
【請求項14】
請求項13の記載において、
前記記憶装置は、前記欠陥候補の数を記憶する
ことを特徴とする基板の検査装置。
【請求項15】
請求項8の記載において、
前記演算部は、前記欠陥候補の分布をディスプレイへ表示する
ことを特徴とする基板の検査装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−22100(P2011−22100A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169680(P2009−169680)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】