説明

基板レス半導体パッケージ製造用耐熱性粘着シート、及びその粘着シートを用いる基板レス半導体パッケージ製造方法

【課題】粘着シートを仮固定用支持体として用いた基板レス半導体パッケージの製造方法においては、樹脂封止の際の圧力によりチップが保持されず指定の位置からずれることがあり、そのような場合には、その後の工程において予定していた箇所にチップ配線を接続する際に、チップが指定の位置からずれた分だけ、配線とチップの相対的な位置関係もずれる。
また、粘着シートを剥離する際に糊残りが発生し、パッケージ表面を汚染してしまう場合には、チップ表面に残された接着剤成分が、その後の配線工程において、配線とチップとの接続を妨害することになる。
【解決手段】基板レス半導体チップを樹脂封止する際に、貼着して使用される半導体装置用接着シートであって、前記接着シートは基材層と粘着剤層とを有し、該粘着剤層は、特定の粘着力及び剥離力を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製のリードフレームを用いない基板レス半導体パッケージの製造方法に使用されるチップ仮固定用耐熱性粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの実装技術において、CSP(Chip Size / Scale Package)技術が注目されている。この技術のうち、WLP(Wafer Level Package)に代表される基板レス半導体パッケージは、小型化と高集積の面で特に注目されるパッケージ形態のひとつである。WLPの製造方法では、基板を用いずに整然と配列した複数の半導体Siウェハーチップを封止樹脂にて一括封止したのち、切断によって個別の構造物に切り分けることにより、基板を用いる従来のものよりも小型のパッケージを効率的に生産することができる。
このようなWLPの製造方法においては、従来基板上に固定するチップを、別の支持体上に固定することが必要となる。更に樹脂封止を経て個別のパッケージに成型された後には固定を解除する必要があるため、その支持体は永久接着ではなく再剥離可能であることが必要となる。そこで、このようなチップの仮固定用支持体として粘着シートを用いる手法が注目されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、基板上に、処理前は粘着力を持つが処理後は粘着力が低下するアクリル樹脂系の粘着手段を貼り付ける工程と、この粘着手段の上に複数個又は複数種の半導体チップをその電極面を下にして固定する工程と、保護物質を前記複数個又は複数種の半導体チップ間を含む全面に被着する工程と、前記粘着手段に所定の処理を施して前記粘着手段の粘着力を低下させ、前記半導体チップを固定した疑似ウエーハを剥離する工程と、前記複数個又は複数種の半導体チップ間において前記保護物質を切断して各半導体チップ又はチップ状電子部品を分離する工程を有する、チップ状電子部品の製造方法が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、基板上に、処理前は粘着力を持つが処理後は粘着力が低下するアクリル樹脂系の粘着手段を貼り付ける工程と、この粘着手段の上に複数個又は複数種の半導体チップをその電極面を下にして固定する工程と、保護物質を前記複数個又は複数種の半導体チップ間を含む全面に被着する工程と、前記電極面とは反対側から前記保護物質を半導体チップの前記反対側の面まで除去する工程と、前記粘着手段に所定の処理を施して前記粘着手段の粘着力を低下させ、前記半導体チップを固定した疑似ウエーハを剥離する工程と、前記複数個又は複数種の半導体チップ間において前記保護物質を切断して各半導体チップ又はチップ状電子部品を分離する工程を有する、チップ状電子部品の製造方法が記載されている。
これらの方法によれば、チップが保護されるので、個片後の実装ハンドリングにおいてもチップが保護されるし、実装密度を向上させることができる等の効果を得ることが可能である。
特許文献3にはダイシング・ダイボンディングテープではあるものの、粘着剤層にはエポキシ樹脂とアクリルゴムを含有すること、ダイシングにより得られた半導体素子を支持部材に接着する方法が記載され、この方法は明らかに基板レス半導体装置の方法ではなく、基板への接着性等も考慮して粘着剤層が選択されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−308116号公報
【特許文献2】特開2001−313350号公報
【特許文献3】特開2008−101183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
リードフレームを用いる半導体パッケージを製造する際には、以下のような問題を生じないが、粘着シートを仮固定用支持体として用いた基板レス半導体パッケージの下記の製造方法においては、以下の問題を生じるおそれがある。
図1に基板レス半導体装置の製造方法を示しつつ、以下に課題を述べる。
一方の面に粘着剤層12、他方の面に基板固定用接着剤層13を有する半導体装置製造用耐熱性粘着シート2に複数のチップ1を貼り付け、さらに半導体装置製造用耐熱性粘着シート2を基板3に固定させて(a)で示される構造とする。あるいは、基板3上に半導体装置製造用耐熱性粘着シート2を貼り付け、さらにチップ1を固定して、(a)で示される構造とする。
【0007】
次いで、該(a)で示される構造のチップ1の上から、封止樹脂4により複数のチップが一体となるように封止して(b)で示されるものとする。
そして(c)に示されるように、さらに半導体装置製造用耐熱性粘着シート2と基板3を一体とし、封止樹脂4により封止された複数のチップ1を分離する方法、あるいは、封止樹脂4により封止された複数のチップ1と半導体装置製造用耐熱性粘着シート2からなるものを基板3から剥離し、さらに半導体装置製造用耐熱性粘着シート2のみを剥離する方法により、封止樹脂4により封止された複数のチップ1を得る。
【0008】
その封止樹脂4により封止された複数のチップ1の、半導体装置製造用耐熱性粘着シート2が設けられていた側であり、チップ1の表面が露出している側において、チップ1表面の必要とされる箇所に電極5を形成して(d)で示される構造とする。
この構造に対して、封止樹脂4側に必要に応じてダイシングリング7を設けたダイシングテープ8を接着して、ダイシング工程のために封止樹脂4により封止された複数のチップ1を固定する。これを(e)に示すように、ダイシングブレード6によりダイシングを行ない、最後に(f)のように複数のチップが樹脂により封止されてなる複数の基板レスパッケージを得る。
【0009】
また、樹脂による封止の際に、半導体装置製造用耐熱性粘着シートの基材層や粘着剤層の膨張や弾性によって、図2(a)に示す半導体装置製造用耐熱性粘着シートが、図2(b)のように平面方向に変形することにより、半導体装置製造用耐熱性粘着シート2上に設置されていたチップ1の位置が移動することがある。
この結果、チップ1上に電極を設ける際には、チップと電極の相対的位置関係が予定したものと異なることになり、またチップ1を樹脂により封止してダイシングする際には、ダイシング工程において予め決められていたチップ1の位置に基づくダイシングの線と、実際のチップ1の位置により必要となったダイシングの線とが異なることになる。
そうすると、ダイシングにより得られた各パッケージは封止されているチップの位置にばらつきが生じ、その後の電極形成工程を円滑に進めることができず、また封止が充分になされていないパッケージが得られてしまう。
【0010】
さらに、半導体装置製造用耐熱性粘着シート2を樹脂により封止されたチップから剥離する際には、特に半導体装置製造用耐熱性粘着シートのチップ側に形成された粘着剤の性質によっては、チップ及び封止樹脂に対して、一方でも重剥離性を呈すために剥離が困難となったり、図3に示すような糊残り9を生じたり、あるいは剥離帯電を起こすことが懸念される。
剥離が困難になるとその分時間を要するので、重剥離性により生産性が低下し、糊残り9を生じるとその後の電極形成等の工程を実施できなくなり、また剥離帯電を生じると塵などの付着によるその後の工程での不都合を生じることがある。
【0011】
このように、半導体装置製造用耐熱性粘着シートを仮固定用支持体として用いた基板レス半導体パッケージの製造方法においては、樹脂封止の際の圧力によりチップが保持されず指定の位置からずれる場合がある。あるいは、半導体装置製造用耐熱性粘着シートを剥離する際に封止材の硬化や熱によるチップ面に対する強粘着化により、パッケージが破損する場合がある。
そして、これらの課題は、例えば特許文献3に記載の方法が備える課題ではなく、基板レス半導体パッケージの製造方法に特有の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するための手段は以下の通りである。
基板レス半導体チップを樹脂封止する際に、貼着して使用される半導体装置製造用耐熱性粘着シートを、基材層と粘着剤層とを有し、該粘着剤層は貼り合わせ後には対SUS304粘着力が0.5N/20mm以上であり、樹脂封止工程完了時点に至るまでに受ける刺激により硬化して、対パッケージ剥離力が2.0N/20mm以下であることを特徴とする半導体装置製造用耐熱性粘着シートとする。
前記粘着剤層が、紫外線等の放射線により硬化する放射線硬化型であること、又は加熱により硬化する放射線硬化型でもよいことも特徴とする。
さらに、これらの半導体装置製造用耐熱性粘着シートを用いた金属製のリードフレームを用いない基板レス半導体チップを樹脂封止する半導体装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、金属製のリードフレームを用いない基板レス半導体パッケージの製造方法(例えばWLPの製造方法等)に使用される半導体装置製造用耐熱性粘着シート、及びそのシートを用いた半導体装置の製造方法であって、それらの発明によれば、金属製のリードフレームを用いない基板レス半導体チップを樹脂封止する際に、チップを指定の位置からずれること無く保持し、且つ使用後に糊残りを発生しないので、さらに加熱時にガスの発生がなく、粘着剤が溶着しないために、確実に配線を設けることができ、ひいては半導体パッケージの製造歩留まりを向上させると共に、シート剥離時の糊残りによる汚染を低減することができる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】基板レスパッケージ製造方法の模式図。
【図2】封止樹脂による封止時の熱により、チップを搭載した半導体装置製造用耐熱性粘着シートが変形する図。
【図3】半導体装置製造用耐熱性粘着シートを剥離する際に帯電及び糊残りを生じる図。
【図4】本発明の半導体装置製造用耐熱性粘着シートの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明者は、上記目的を達成すべく、半導体装置製造用耐熱性粘着シートの材料、構成等について鋭意研究した。その結果、硬化前後における剥離力が特定の範囲である、粘着剤層を備えた半導体装置製造用耐熱性粘着シートを使用し、且つ貼り合わせ後から樹脂封止工程完了に至るまでの熱履歴により粘着剤層の硬化反応を誘起させ、前記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、金属製のリードフレームを用いない基板レス半導体チップを樹脂封止する際に、貼着して使用される半導体装置製造用耐熱性粘着シートであって、この半導体装置製造用耐熱性粘着シートは基材層と粘着剤層とを有し、貼り合わせ後から樹脂封止工程完了に至るまでに粘着剤層が硬化するように設計されていることを特徴とする半導体装置製造用耐熱性粘着シート、に関する。
【0016】
具体的な半導体装置製造用耐熱性粘着シートとしては、前記粘着剤層が放射線硬化型粘着剤を含有するもの、加熱により硬化するものを用いることができる。この前記放射線硬化型粘着剤としては紫外線硬化型粘着剤が好ましい。
半導体装置製造用耐熱性粘着シートは、貼り合わせ後から樹脂封止工程完了に至るまでに粘着剤層が硬化するように設計されている。具体的な硬化の手段は特に限定されないが、たとえば、粘着剤層の一部または全部に紫外線硬化型粘着剤を含ませて、工程中の加熱処理によって紫外線硬化型粘着剤を含む粘着剤層の硬化反応を誘起させる方法があげられる。
【0017】
以下に、本発明の半導体装置製造用耐熱性粘着シート2について、その実施の形態を、図4を参照しながら具体的に説明する。図4はその断面図であり、基材層11と粘着剤層12を有する。そして、該粘着剤層12にチップ1を固定した半導体装置製造用耐熱性粘着シート2を基板3に固定できるよう、粘着剤層を設けていない側の基材層の面に基板固定用接着剤層13を形成することも可能である。粘着剤層2は、アクリル樹脂系粘着剤、ゴム成分およびエポキシ樹脂成分を含む粘着剤、シリコーン樹脂系粘着剤等の粘着剤である。
さらに粘着剤層12と基板固定用接着剤層13の表面を保護する平滑な剥離シート10を設けることができる。
【0018】
以下に本発明の半導体装置製造用耐熱性粘着シート2を説明する。
[粘着剤層12]
粘着剤層12を構成する粘着剤としては、耐熱性を有するものであれば特に限定されない。
具体的には、例えばアクリル樹脂系粘着剤、ゴム成分及びエポキシ樹脂成分を含む粘着剤、シリコーン樹脂系粘着剤等の各種粘着剤が用いられる。
本発明の粘着剤層12は樹脂封止の前にはチップを確実に固定でき、樹脂封止の後において、半導体装置製造用耐熱性粘着シート2を樹脂封止されたチップから糊残りや樹脂等の破壊なく剥離させることができるという性質を有する。
そのために、樹脂封止前において、対SUS304初期粘着力が0.5N/20mm以上であり、かつ硬化後における対パッケージ剥離力は2.0N/20mm以下であることが必要である。対SUS304初期粘着力は好ましくは0.6N/20mm以上、より好ましくは0.8N/20mm以上、対パッケージ剥離力は好ましくは1.0N/20mm以下、より好ましくは0.85N/20mm以下、さら好ましくは0.5N/20mm以下である。
なお、ここでいう対パッケージ剥離力に関して、封止樹脂の硬化後における半導体装置製造用耐熱性粘着シート2の粘着剤層12は、硬化された封止樹脂とチップの両方と接着されているが、その硬化された封止樹脂がチップよりも半導体装置製造用耐熱性粘着シート2の粘着剤層12に対する接着面積が大であることから、専らパッケージの硬化された封止樹脂に対する剥離力である。
【0019】
・アクリル樹脂系粘着剤
前記アクリル系樹脂系粘着剤として、例えば、アルキル(メタ)アクリレートを少なくとも含むモノマーの共重合から得られたアクリル系共重合体からなるものが挙げられる。
アルキル(メタ)アクリレートの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、アルキル(メタ)アクリレートとは、アルキルアクリレート及び/又はアルキルメタクリレートをいい、本発明の(メタ)とは全て同様の意味である。
【0020】
また、前記アクリル樹脂系粘着剤には、公知の適宜な架橋剤を含有し得る。
その架橋剤としては、例えば、イソシアネート架橋剤、エポキシ架橋剤、アジリジン系化合物、キレート系架橋剤等が例示できる。
それらの架橋剤の含有量は特に限定されない。具体的には、例えば、前記アクリル系共重合体100重量部に対して0.1〜15重量部が好ましく、好ましくは0.5〜10重量部である。含有量が0.1重量部以上であれば、粘着剤層12の粘弾性が適切な大きさとなるため、チップ表面の導電性パターン又は封止樹脂4に対する粘着剤層12の粘着力が過度に強くならず、半導体装置製造用耐熱性粘着シート2の剥離時に封止樹脂4を剥離若しくは破損することがない。また、粘着剤層12の一部がチップ表面の導電性パターンや封止樹脂4に付着・残留する恐れもない。その一方、含有量が15重量部以下のときには、粘着剤層12の硬化の進行し過ぎによる粘着剤層12の割れが生じるおそれがない。
【0021】
前記粘着剤層12に、放射線硬化型粘着剤を含有させることにより、樹脂封止時及び/又はポストキュア時の熱により樹脂を硬化させることができる。
放射線硬化型粘着剤としては、紫外線により硬化可能で三次元網状化が効率よくなされる紫外線硬化性化合物が好ましい。
このような紫外線硬化性化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート等が挙げられる。反応部位となる不飽和結合を有する官能基数が多いものほど好ましく、官能基数が6以上であることが特に好ましい。これらの化合物は単独で、又は2種以上を併用してもよい。
【0022】
紫外線硬化性化合物としては紫外線硬化性樹脂を用いてもよく、例えば、分子末端に(メタ)アクリロイル基を有するエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、アクリル樹脂(メタ)アクリレート、分子末端にアリル基を有するチオール−エン付加型樹脂や光カチオン重合型樹脂、ポリビニルシンナマート等のシンナモイル基含有ポリマー、ジアゾ化したアミノノボラック樹脂やアクリルアミド型ポリマー等、感光性反応基含有ポリマーあるいはオリゴマー等が挙げられる。更に、紫外線で反応するポリマーとしては、エポキシ化ポリブタジエン、不飽和ポリエステル、ポリグリシジルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリビニルシロキサン等が挙げられる。
紫外線硬化性化合物の配合量は、例えば、粘着剤100重量部に対して5〜500重量部であることが好ましく、15〜300重量部であることがより好ましく、20〜150重量部であることが特に好ましい。
【0023】
・ゴム成分及びエポキシ樹脂系粘着剤
(ゴム成分)
前記粘着剤層12を構成するゴム成分およびエポキシ樹脂成分含有粘着剤において、そのゴム成分としては、NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)、アクリルゴム、酸末端ニトリルゴム、熱可塑性エラストマー、等のエポキシ系接着剤に従来使用されるものが挙げられ、市販品としてはNiPol1072(日本ゼオン(株)社製)、Nipol−AR51(日本ゼオン(株)社製)等が挙げられる。なかでも、エポキシ樹脂との相溶性の点から、NBRが好ましく用いられ、特にアクリロニトリル量が10〜50%が好ましい。
ゴム成分は、接着剤に柔軟性を与えるために添加されるが、含有量が多くなると耐熱性が低下する。かかる観点より、粘着剤層12中の有機物に占めるゴム成分の割合は20〜60重量%が好ましく、更には30〜50重量%が好ましい。20重量%以上であれば、接着剤層12は柔軟性を有して、粘着シート切断時等の加工性が良好であり、60重量%以下であると充分な耐熱性を有すると共に糊残りの発生を防止できる。
【0024】
(エポキシ樹脂成分)
また、ゴム成分と共に用いられるエポキシ樹脂成分としては、分子内に2個以上のエポキシ基を含有する化合物であり、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂等が挙げられ、単独もしくは2種以上混合して用いる事ができる。なかでも、封止工程後の封止樹脂4との剥離性の点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いるのが好ましい。
【0025】
エポキシ樹脂成分の使用割合は、有機物100重量部に対し、好適には40〜80重量%、更に好ましくは50〜70重量%である。40重量%以上であれば十分に硬化により耐熱性を有し、80重量部以下であれば柔軟性も備えることができるので加工性が向上する。また、エポキシ樹脂のエポキシ当量は1000g/eq以下、好ましくは500g/eq以下である。エポキシ当量が1000g/eq以下であれば、架橋密度が小さくならず硬化後の接着強度が適切な範囲となるので、封止工程後の剥離の際に糊残りが発生することを防止できる。
【0026】
・シリコーン樹脂系粘着剤
前記シリコーン樹脂系粘着剤としては、200℃における貯蔵弾性率が5.0×103 N/cm2 以上であり、シリコーン樹脂系粘着剤層12の厚さは1〜50μmであることが好ましく、さらにシリコーン樹脂系粘着剤層12は、JIS C2107に準拠した200℃加熱後の粘着力が0.05〜4.0N/20mm幅であることが好ましい。
そのような粘着剤層12としては、オルガノポリシロキサン構造、好ましくはジメチルポリシロキサン構造とビニル基等の不飽和基、SiH基により架橋し、白金系触媒により硬化された付加重合型シリコーン樹脂粘着剤層12、又はBPO等の有機過酸化物により硬化して得られるシリコーン樹脂系粘着剤層12を使用することができる。ただし、耐熱性の観点から付加重合型が好ましい。この場合、得られる粘着力を考慮して該不飽和基の密度に応じて架橋密度を調整することが可能である。
このシリコーン樹脂系粘着剤層12の形成には付加重合させるために加熱等を行うことが必要である。
【0027】
その粘着力に関して、シリコーンに対する粘着力と封止樹脂に対する粘着力との間で大きな差が生じると、その粘着力の差によって帯電が起きる可能性が生じるので、可能な限り両者の粘着力の値が近いことが望ましい観点から、両者に対する粘着力を上記の範囲とすることが必要である。
また、シリコーン樹脂系粘着剤層は熱膨張性が小さいために樹脂による封止後においてチップ位置のずれが小さい。そのずれの程度としては0.3mm以下、好ましくは0.1mm以下である。
また、粘着剤層12において、封止樹脂を加熱硬化させる工程で、半導体装置製造用耐熱性粘着シート2からの発生ガスによりパッケージが汚染された場合、再配線時のメッキ不良など、パッケージの信頼性が劣る場合がある。このため、180℃での重量減少量を3.0重量%以下、好ましくは2.0重量%以下とすることが好ましい。
【0028】
・その他の成分
前記粘着剤層12には、前記成分の他に、紫外線硬化性化合物を硬化させるための紫外線重合開始剤や、熱重合開始剤等の適宜な添加剤を必要に応じて配合してもよい。前記紫外線重合開始剤としては、公知の重合開始剤を適宜選択できる。その配合量としては、粘着剤100重量部に対して、0.1〜10重量部であることが好ましく、1〜5重量部であることがより好ましい。尚、必要に応じて、紫外線重合開始剤と共に紫外線重合促進剤を併用してもよい。
【0029】
その他の任意成分として、可塑剤、顔料、染料、老化防止剤、帯電防止剤、弾性率等の粘着剤層12の物性改善のために加えられる充填剤等の各種添加剤を添加することもできる。特に導電性のフィラーを充填剤として添加した場合、粘着剤層の弾性率を向上させつつ剥離帯電を防止することができる。また特に老化防止剤は高温での劣化を防止するために配合してもよい。
粘着剤層12の厚みは、通常1〜50μm程度、より好ましくは5〜30μmであることが好適である。
【0030】
[基材層11]
基材層11の材料としては、その種類に特に制限はないが、樹脂封止時の加熱条件下において耐熱性を有する基材が用いられる。樹脂封止工程では一般的に175℃前後の温度がかかることから、このような温度条件下での著しい収縮、または基材層11そのものが破壊を生じない耐熱性を持っているものが好適に用いられる。このため、50〜250℃における線熱膨張係数が0.8×10−5〜5.6×10−5/Kであることが好ましい。
【0031】
また、封止樹脂4を硬化させる加熱温度よりも低い温度にガラス転移温度がある基材を用いた場合、ガラス転移温度より高い温度領域ではガラス転移温度よりも低い温度領域での線熱膨張係数よりも大きくなり、貼着したチップ1の指定位置からの精度が劣ることになる。
加えて、一軸や二軸延伸した基材では、ガラス転移温度より高い温度では延伸によって生じた伸びがガラス転移温度より高い温度では収縮が始まり、これも貼着したチップの指定位置からの精度が劣ってしまう。このため、金属製のリードフレームを用いない基板レス半導体チップを樹脂封止する際に、貼着して使用される半導体装置製造用耐熱性粘着シート2に使用する基材層11のガラス転移温度を180℃を超えるものとすることで、チップの位置精度を向上させることができる。
【0032】
このような基材の例として、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ポリエチレンサルフォン(PES)フィルム、ポリエーテルイミド(PEI)フィルム、ポリサルフォン(PSF)フィルム、ポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)フィルム、ポリアリレート(PAR)フィルム、アラミドフィルム、液晶ポリマー(LCP)などの耐熱性プラスチックフィルムが挙げられる。
なお、樹脂封止時の加熱条件が150℃以下であれば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの使用も可能である。
【0033】
また耐熱性の基材層11としては、グラシン紙、上質紙、和紙等の紙基材、セルロース、ポリアミド、ポリエステル、アラミド等の不織布基材、アルミ箔、SUS箔、Ni箔等の金属フィルム基材等を使用でき、これらの材料を積層して基材層11とすることもできる。
基材層11の厚みは、折れや裂けを防止するため少なくとも5μm以上、好ましくは10〜200μm、より好ましくは25〜100μmである。5μm以上であれば良好なハンドリング性を有し、200μm以下であればコスト面で有利である。
【0034】
[基板固定用接着剤層13]
基板固定用接着剤層13に使用される接着剤は粘着剤層12に使用される樹脂と同様の樹脂でよく、または、基板あるいは基材層11から剥離できる程度の接着力を有するものでも良い。
さらに、基板3から半導体装置製造用耐熱性粘着シート2を剥離する際には、例えば加熱によって発泡する発泡剤を基板固定用接着剤層13に配合させておくことにより、基板3からの剥離工程を加熱により行うことが可能である。また、加熱手段に変えて、例えば紫外線により架橋する成分を予め配合しておくことにより、基板固定用接着剤層13を硬化させて、基板固定用接着剤層13の接着力を低下させることも可能である。
このような処理を行うことにより、基板固定用接着剤層13の接着力を低下させて、基板3と基板固定用接着剤層13との間を剥離させて、あるいは基材層11と基板固定用接着剤層13との間を剥離させて、樹脂封止したチップを基板から離す。
【0035】
[平滑な剥離シート10]
平滑な剥離シート10は、基材フィルムの片面に剥離剤層を形成してなるシートであり、本発明の半導体装置製造用耐熱性粘着シート2を使用する前に各面の粘着剤層を露出させるために剥離されるシートである。
剥離剤層は、公知のフッ素化されたシリコーン樹脂系剥離剤、フッ素樹脂系剥離剤、シリコーン樹脂系剥離剤、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、長鎖アルキル化合物等の公知の剥離剤を、粘着剤層の樹脂に応じて選択して含有させてなる層である。
【0036】
基材フィルムとしては公知のものを使用でき、例えばポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、及びポリカーボネートフィルム等のプラスチックフィルム等から選択することが可能である。
【0037】
[半導体装置製造用耐熱性粘着シート2の製造]
本発明においては、このように調製される組成物を用いて、一般的な積層体の製造方法にて、半導体装置製造用耐熱性粘着シート2とすることができる。つまり粘着剤を無溶剤の状態か、あるいは反応性溶剤へ溶解した状態において基材フィルムへ塗布した後に加熱乾燥して、接着シートを形成する方法により半導体装置製造用耐熱性粘着シート2を形成する方法が挙げられる。基材層としては、上記の耐熱性基材が適当である。また、基材層の他面に形成する粘着剤層も同様にして得ることができる。
【0038】
また、粘着剤を剥離性フィルム等に流延するなどにより単体のフィルムを作成し、これらを順に積層させても良く、また、上記の塗布液の塗布と該単体のフィルムによる積層を組み合わせても良い。ここで、溶剤としては特に限定されないが、粘着剤層12の構成材料の溶解性が良好な点を考慮すると、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤が好適に用いられる。また、前記構成材料を水系のディスパージョン溶液とし、これを基材層11上に塗布して加熱乾燥する工程を繰り返すことにより、粘着剤層12を積層して、半導体装置製造用耐熱性粘着シート2を形成する方法も挙げられる。
【0039】
本発明の半導体装置製造用耐熱性粘着シート2は、このようにして製造される厚さ通常1〜50μmの粘着剤からなる層を基材層上に設けたものである。
また半導体装置製造用耐熱性粘着シート2には、必要に応じて帯電防止機能を設けることができる。
半導体装置製造用耐熱性粘着シート2に静電防止機能を付与する手法を示す。
帯電防止機能を付与する方法としては、粘着剤層や基材層11に帯電防止剤、導電性フィラーを混合する方法があげられる。また基材層11と粘着剤層12との界面や、粘着剤層12が設けられていない基材層11の反対面に帯電防止剤を塗布する方法があげられる。
【0040】
当該帯電防止機能により、半導体装置製造用耐熱性粘着シート2を半導体装置から分離する時に発生する静電気を抑制することができる。帯電防止剤としては、上記帯電防止機能を有するものであれば特に制限はない。具体例としては、例えば、アクリル系両性、アクリル系カチオン、無水マレイン酸−スチレン系アニオン等の界面活性剤等が使用できる。
帯電防止層用の材料としては、具体的には、ボンディップPA、ボンディップPX、ボンディップP(コニシ(株)製)などがあげられる。また、前記導電性フィラーとしては、慣用のものを使用でき、例えば、Ni、Fe、Cr、Co、Al、Sb、Mo、Cu、Ag、Pt、Auなどの金属、これらの合金または酸化物、カーボンブラックなどのカーボンなどが例示できる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
導電性フィラーは、粉体状、繊維状の何れであってもよい。
このように構成される本発明の半導体装置製造用耐熱性粘着シート2は、耐熱性に優れ、パッケージとの離型性も良好であり、半導体装置の製造工程に好適に使用できる。
【0041】
[半導体チップの接着工程]
半導体装置製造用耐熱性粘着シート2の両面の剥離シート10を除去した基板固定用接着剤層13側を基板上に接着して、粘着剤層12側が上面に露出するようにする。
その上に樹脂により封止しようとする所定の半導体チップ1を、目的とする配置となるように載置・接着して、半導体装置製造用耐熱性粘着シート2の粘着剤層12上に固定する。その際の半導体チップ1の構造、形状、大きさ等は特に限定されない。
【0042】
[封止工程]
本発明の半導体装置製造用耐熱性粘着シート2が使用される封止工程に用いられる封止樹脂4は、エポキシ樹脂等の公知の封止樹脂でよい。粉末状の樹脂の溶融温度や硬化温度、液状の樹脂の硬化温度は、半導体装置製造用耐熱性粘着シート2の耐熱性を勘案して選ばれるが、本発明の半導体装置製造用耐熱性粘着シート2は通常の封止樹脂4の溶融温度や硬化温度において耐熱性を有する。
封止工程はチップ保護のために上記の樹脂により金型内にて行われ、例えば170〜180℃において行われる。
その後、半導体装置製造用耐熱性粘着シート2を剥離する前に、ポストモールドキュアがなされる。
【0043】
[剥離工程]
基板上の半導体装置製造用耐熱性粘着シート2に固定されたチップ1が樹脂により封止された後、200〜250℃で、1〜90秒間(ホットプレートなど)または1〜15 分間(熱風乾燥器など)の条件下で加熱を行い、半導体装置製造用耐熱性粘着シート2の基板固定用接着剤層13を膨張させることにより、半導体装置製造用耐熱性粘着シート2の基板固定用接着剤層13と基板3との接着力を低下させて、半導体装置製造用耐熱性粘着シート2と基板3とを剥離する。あるいは、半導体装置製造用耐熱性粘着シート2の基材層11と基板固定用接着剤層13との接着力を低下させて、基材層11と基板固定用接着剤層13とを剥離する。
次いで、チップを樹脂により封止してなる層から、半導体装置製造用耐熱性粘着シート2を剥離する。
また、半導体装置製造用耐熱性粘着シート2と基板3を分離せず一体とし、半導体装置製造用耐熱性粘着シート2の粘着剤層12から封止樹脂4により封止された複数のチップ1を分離する方法を採用しても良い。
【0044】
[電極形成工程]
次いで、チップ1を樹脂4により封止してなる層のチップ1の一面が表面に露出されている、半導体装置製造用耐熱性粘着シート2が積層されていた側において、スクリーン印刷等の方法により、各々のチップの所定の箇所に電極5を形成する。電極材料としては公知の材料を使用できる。
【0045】
[ダイシング工程]
チップ1を封止樹脂4により封止してなる層を好ましくはダイシングリング7を設けたダイシングシート8に固定した後に、通常のダイシング工程において使用されるダイシングブレード6を用いて、各パッケージに個片化する。このときに、各チップ1が所定の位置に存在していないと、電極の形成が不正確になることに加え、個々のパッケージのチップ1の位置が不正確であったり、さらにダイシング時にダイシングブレード6がチップ1に接触する可能性がある。
【0046】
本発明の半導体装置製造用耐熱性粘着シート2を使用すると、封止樹脂4による封止工程においてチップ1の位置がずれることを防止できるので、このような支障がなく、円滑にダイシング工程を実施でき、結果的に封止樹脂4内に正確にチップ1が位置するパッケージが得られる。
以下に、実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0047】
[測定方法]
以下の実施例及び比較例における測定及び評価は下記の方法により行った。
対SUS初期粘着力:常温におけるSUS304BA板に対する180 °引き剥がし粘着力。
対SUS304加熱後粘着力:対SUS304BA板に貼り合わせ後に150 ℃、60 min加熱した後の180 °引き剥がし粘着力。
対SUS304 175℃粘着力:175度におけるSUS304BA板に対する引き剥がし粘着力。
対パッケージ剥離力:パッケージから粘着シートを実際に剥離する際の180 °引き剥がし粘着力。
チップずれ距離:パッケージ作成後にチップの初期位置からのずれをデジタルマイクロスコープにより測定。
糊残り:粘着シート剥離後のパッケージ表面を目視により糊残りの有無を確認。
以下において、「部」とあるのは「重量部」を意味する。
【実施例1】
【0048】
ブチルアクリレートモノマー100重量部に対して、構成モノマーとしてのアクリル酸モノマーを3重量部配合してアクリル系共重合体を得た。このアクリル系共重合体100重量部に対して、エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学製:Tetrad‐C)を3重量部、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン製:コロネート−L)5重量部を添加したアクリル系粘着剤に、紫外線硬化性化合物(日本合成化学製:UV−1700B)50重量部と、紫外線硬化開始剤(長瀬産業製:イルガキュア651)3重量部とを添加して、粘着剤組成物を調製した。
次に、25μm厚のポリイミドフィルム(東レデュポン製:カプトン100H)を基材層として、前記粘着剤組成物を塗布して乾燥し、厚さ約10μmの粘着剤層を有する半導体装置製造用耐熱性粘着シートを作製した。
この半導体装置製造用耐熱性粘着シート上に、5 mm × 5 mmサイズのSiウェハーチップを配置し、粉末状のエポキシ系封止樹脂(日東電工製:GE-7470LA)を振りかけ、温度175 ℃、圧力3.0 kg/cm2、時間2 minでモールドした。その後、150 ℃で60 minの加熱により樹脂の硬化を促進(ポストモールドキュア)させ、パッケージを作製した。
【0049】
〔比較例1〕
粘着シートを、ポストモールドキュアを行う前に剥離する以外は、実施例1と同様の方法でパッケージを作製した。
【0050】
〔比較例2〕
ブチルアクリレートモノマー100重量部に対して、構成モノマーとしてのアクリル酸モノマーを3重量部配合してアクリル系共重合体を得た。このアクリル系共重合体100重量部に対して、エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学製:Tetrad‐C)を0.6重量部、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン製:コロネート−L)2重量部を添加して、粘着剤組成物を調製した。以後は、実施例1と同様の方法でパッケージを作製した。
【0051】
〔比較例3〕
ブチルアクリレートモノマー100重量部に対して、構成モノマーとしてのアクリル酸モノマーを3重量部配合してアクリル系共重合体を得た。このアクリル系共重合体100重量部に対して、エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学製:Tetrad‐C)を3重量部、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン製:コロネート−L)5重量部を添加して、粘着剤組成物を調製した。以後は、実施例1と同様の方法でパッケージを作製した。
【0052】
これらの実施例1及び比較例1〜3の結果を下記表1に示す。
【表1】

【0053】
実施例1によれば、充分な初期粘着力を有することによりチップずれを抑制し、且つ粘着剤がポストモールドキュアの加熱処理によって硬化することにより粘着力が低下し、軽剥離且つ剥離後の糊残りも無い良好なパッケージを得ることができた。
【0054】
比較例1においては、実施例1と同様に充分な初期粘着力を有している為、チップずれは抑制することが出来た。しかしながら、ポストモールドキュア以前の粘着剤が未硬化の状態でテープが剥離された為、剥離力が実施例1よりも高く、剥離後の糊残りが発生した。
【0055】
比較例2においては、実施例1と同様に初期粘着力が高い為に、チップずれを抑制することは出来た。しかしながら、紫外線硬化型粘着剤を用いていない為、加熱による粘着剤の硬化に伴う粘着力の低下がなく、初期粘着力よりも加熱後粘着力が高くなった。その為、パッケージからの剥離力が大きく、剥離後に糊残りが発生した。
【0056】
比較例3においては、比較例2と同様に紫外線硬化型粘着剤を用いていない為、初期粘着力よりも加熱後粘着力が高くなったが、その水準は比較例2よりも低く、糊残りの発生はなかった。しかしながら、初期粘着力が低い為に、チップずれ距離が大きくなった。
以上の結果より、樹脂封止工程でチップを保持し、その後の加熱処理により粘着剤層が硬化することにより剥離時の糊残りを低減することができる基板レス半導体パッケージ製造用の半導体装置製造用耐熱性粘着シートを提供することができた。
【実施例2】
【0057】
アクリロニトリルブタジエンゴム(日本ゼオン(株)製、Nipol1072J)42部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、エピコート828;エポキシ当量190g/eq)53部、イミダゾール(四国化成(株)製、C11Z)5部を配合し、濃度35重量%となるようにMEK溶媒に溶解し接着剤溶液を作製した。この接着剤溶液を、基材フィルムとして厚さが35μmの銅箔上に塗布した後、150℃で3分乾燥させる事により、接着剤厚さ10μmの接着剤の層を形成して半導体装置製造用耐熱性粘着シートとした。
この半導体装置製造用耐熱性粘着シート上に、3mm× 3 mmサイズのSiウェハーチップを配置し、粉末状のエポキシ系封止樹脂(日東電工製:GE-7470LA)を振りかけ、温度175 ℃、圧力3.0 kg/cm2、時間2 minでモールドした。その後、150 ℃で60 minの加熱により樹脂の硬化を促進(ポストモールドキュア)させ、パッケージを作製した。
【実施例3】
【0058】
アクリロニトリルブタジエンゴム(日本ゼオン(株)製、Nipol1072J)24部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、エピコート1002;エポキシ当量650g/eq)65部、フェノール樹脂(荒川化学(株)製、P-180)10部、トリフェニルフォスファン(北興化成(株)製、TPP)1部を配合し、濃度35重量%となるようにMEK溶媒に溶解し粘着剤溶液を作製した。この粘着剤溶液を、基材フィルムとして厚さが35μmの銅箔上に塗布した後、150℃で3分乾燥させる事により、厚さ10μmの粘着剤の層を形成して半導体装置製造用耐熱性粘着シートとした。以後は、実施例2と同様の方法でパッケージを作製した。
【0059】
〔比較例4〕
アクリロニトリルブタジエンゴム(日本ゼオン(株)製、Nipol1072J)70部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、エピコート828;エポキシ当量190g/eq)28部、イミダゾール(四国化成(株)製、C11Z)2部を配合し、濃度35重量%となるようにMEK溶媒に溶解し粘着剤溶液を作製した。この粘着剤溶液を、基材フィルムとして厚さが35μmの銅箔上に塗布した後、150℃で3分乾燥させる事により、粘着剤厚さ10μmの粘着剤の層を形成して半導体装置製造用耐熱性粘着シートとした。以後は、実施例2と同様の方法でパッケージを作製した。
【0060】
〔比較例5〕
アクリロニトリルブタジエンゴム(日本ゼオン(株)製、Nipol1072J)10部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、エピコート1002;エポキシ当量650g/eq)79部、フェノール樹脂(荒川化学(株)製、P-180)10部、トリフェニルフォスファン(北興化成(株)製、TPP)1部を配合し、濃度35重量%となるようにMEK溶媒に溶解し粘着剤溶液を作製した。この粘着剤溶液を、基材フィルムとして厚さが35μmの銅箔上に塗布した後、150℃で3分乾燥させる事により、粘着剤厚さ10μmの粘着剤の層を形成して半導体装置製造用耐熱性粘着シートとした。以後は、実施例2と同様の方法でパッケージを作製した。
【0061】
これらの実施例2及び3、比較例4及び5の結果を下記表2に示す。
【表2】

【0062】
表から明らかなように、本発明の実施例2〜3はパッケージに対する離型性に優れており糊残りも見られない。また、充分な初期粘着力を有することによりチップずれを抑制している。これに対して、本発明とは異なる比較例4に示すゴム成分が多い場合、十分な初期粘着力を有するが、粘着剤層が軟らかいために樹脂封止する際チップずれが発生していた。また、硬化後の弾性率も低く糊残りが発生していた。比較例5に示すゴム成分が少ない場合、初期粘着力不足により樹脂封止する際にチップずれが発生していた。
【実施例4】
【0063】
アクリル酸エチル−アクリル酸ブチル−アクリル酸(20部-80部-10部)からなる共重合体ポリマー100部に、エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学製:Tetrad‐C)を1.0部、ロジンフェノール系粘着付与剤5部、200℃発泡膨張タイプの熱膨張性微小球50部とトルエンを均一に混合、溶解した塗工液を作製した。
次に、予め付加反応型シリコーン粘着剤(東レダウコーニング製SD−4587L)を厚さ5μmとなるように塗工し、乾燥させた、25μm厚のポリイミドフィルム(東レデュポン製:カプトン100H)を基材層として、シリコーン粘着剤が塗布されていない面に、前記粘着剤組成物を塗布して乾燥し、厚さ約40μmの粘着剤層を有する半導体装置製造用耐熱性粘着シートを得た。
【0064】
この半導体装置製造用耐熱性粘着シートの熱膨張粘着剤面を平滑な台に圧着固定後、シリコーン粘着剤面上に、5 mm ×5 mmサイズのSiウェハーチップを配置し、粉末状のエポキシ系封止樹脂(日東電工製:GE-7470LA)を振りかけ、温度175 ℃、圧力400kpa、時間2 minでモールドした。その後、150 ℃で60 minの加熱により樹脂の硬化を促進(ポストモールドキュア)させ、パッケージを作製した。
【実施例5】
【0065】
アクリル酸エチル−アクリル酸ブチル−アクリル酸(20部-80部-10部)からなる共重合体ポリマー100部に、エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学製:Tetrad‐C)を1.0部、ロジンフェノール系粘着付与剤5部とトルエンを均一に混合、溶解した塗工液を作製した以外は、実施例4と同様の方法でパッケージを作製した。
【0066】
〔比較例6〕
半導体装置製造用耐熱性粘着シートのシリコーン粘着剤の代わりに、ブチルアクリレートモノマー100重量部に対して、構成モノマーとしてのアクリル酸モノマーを3重量部からなるアクリル系共重合体100重量部に対して、エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学製:Tetrad‐C)を0.6重量部、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン製:コロネート−L)2重量部を添加して得られた粘着剤組成物を、ポリイミドフィルム(東レデュポン製:カプトン100H)に塗布以外は、実施例4と同様の方法でパッケージを作製した。
【0067】
これらの実施例4及び5、比較例6の結果を下記表3に示す。
【表3】

【0068】
実施例4においては、充分なモールド時の粘着力を有することによりチップずれを抑制し、且つ封止樹脂への粘着力が小さいというシリコーン粘着剤の特徴を利用して、パッケージの軽剥離且つ剥離後の糊残りも無い良好なパッケージを得ることができた。
【0069】
実施例5においても、実施例4と同様に175度粘着力が高い為に、チップずれを抑制することが出来、パッケージの軽剥離且つ剥離後の糊残りも無い良好なパッケージを得ることができた。
【0070】
比較例6においては、アクリル粘着剤の特徴である高温域での粘着力低下のため、チップずれを抑制することができなかった。この結果は基材層のみが充分に低い熱膨張率を有していても、シリコーン粘着剤層でなければ、チップのズレを解決できないことを示している。加えて多官能である封止樹脂への粘着力が高いために剥離力が実施例よりも高く、剥離後の糊残りが発生した。
【符号の説明】
【0071】
1:チップ
2:半導体装置製造用耐熱性粘着シート
3:基板
4:封止樹脂
5:電極
6:ダイシングブレード
7:ダイシングリング
8:ダイシングテープ
9:糊残り
10:平滑な剥離シート
11:基材層
12:粘着剤層
13:基板固定用接着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板レス半導体チップを樹脂封止する際に、貼着して使用される半導体装置製造用耐熱性粘着シートであって、前記耐熱性粘着シートは基材層と粘着剤層とを有し、該粘着剤層は貼り合わせ後の対SUS304粘着力が0.5N/20mm以上であり、樹脂封止工程完了時点に至るまでに受ける刺激により硬化して、対パッケージ剥離力が2.0N/20mm以下になる層であることを特徴とする半導体装置製造用耐熱性粘着シート。
【請求項2】
前記粘着剤層が、放射線硬化型粘着剤からなることを特徴とする請求項1記載の半導体装置製造用耐熱性粘着シート。
【請求項3】
前記放射線硬化型粘着剤が、紫外線硬化型粘着剤であることを特徴とする請求項1または2記載の半導体装置製造用耐熱性粘着シート。
【請求項4】
前記放射線硬化型粘着剤が、加熱処理によっても硬化可能であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の半導体装置製造用耐熱性粘着シート。
【請求項5】
該粘着剤層は貼り合わせ後から樹脂封止工程完了時点に至るまでに硬化する、ゴム成分およびエポキシ樹脂成分を含み、粘着剤中の有機物に占めるゴム成分の割合が20〜60重量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の半導体装置製造用耐熱性粘着シート。
【請求項6】
請求項1〜5に記載のいずれかの半導体装置製造用耐熱性粘着シートを使用する基板レス半導体パッケージ製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−134811(P2011−134811A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291523(P2009−291523)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】