説明

基板上に機能材料のパターンを形成する方法

本発明は、機能材料のパターンを基板上に形成する方法を提供する。本方法は、隆起表面を備えたレリーフ構造を有し、弾性率が少なくとも10メガパスカルであるエラストマースタンプを用いる。機能材料と液体との液体組成物をレリーフ構造に適用し、液体を除去して、隆起表面にフィルムを形成する。エラストマースタンプは、機能材料を隆起表面から基板に転写して、機能材料のパターンを基板上に形成する。本方法は、電子デバイスおよびコンポーネントのマイクロ回路の製造に好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に機能材料のパターンを形成する方法に関し、特に、本方法は、隆起表面を有するエラストマースタンプを用いて、コンポーネントおよびデバイスのマイクロ加工に用いる基板上にパターンを形成するものである。
【背景技術】
【0002】
ほぼ全ての電子および光学デバイスにはパターン形成が必要である。マイクロ電子デバイスは、必要なパターンを形成するのに、フォトリソグラフィープロセスにより作製されてきた。この技術は、導体、絶縁体または半導体材料の薄膜を、基板上に堆積し、ネガまたはポジのフォトレジストを、材料の露出面にコートするものである。レジストに、所定のパターンで照射し、レジストの照射または非照射部分を表面から洗い流して、所定のパターンのレジストを表面に作製する。導電性金属材料のパターンを形成するには、所定のレジストパターンでカバーされていない金属材料をエッチングまたは除去する。次に、レジストパターンを除去して、金属材料のパターンを得る。しかしながら、フォトリソグラフィーは、複雑で、プラスチックエレクトロニクスの印刷では費用のかかり過ぎる多工程プロセスである。
【0003】
接触印刷は、パターン化材料を形成するのに、柔軟性のある非リソグラフィー法である。接触印刷には、潜在的に、従来のフォトリソグラフィー技術を超える大きな利点がある。接触印刷は、電子部品アセンブリにおいて、プラスチックエレクトロニクス上に比較的高解像度のパターンを形成できるからである。マイクロ接触印刷には、基板表面に付与されるミクロン寸法のパターンを可能にする高解像度技術という特徴がある。マイクロ接触印刷はまた、フォトリソグラフィーシステムよりも経済的である。手順的にあまり複雑でなく、究極のところスピンコーティング機器も後続の現像工程も必要としないからである。さらに、マイクロ接触印刷は、オープンリール式電子部品アセンブリ操作に潜在的に適しており、フォトリソグラフィーおよびe−電子リソグラフィー(約数十ナノメートルの解像度が望ましい従来より用いられている技術)等の他の技術よりも高処理量の生産が可能となる。多数の画像を、オープンリール式アセンブリ操作において、マイクロ接触印刷を用いて、単一スタンプから印刷することができる。
【0004】
接触印刷は、無線タグ(RFID)、センサ、メモリおよびバックパネルディスプレイ等のマイクロ電子デバイスの製造におけるフォトリソグラフィーに代わる可能性がある。分子種を形成する自己組織化単分子膜(SAM)を、基板に転写するというマイクロ接触印刷の能力はまた、金属のパターン化無電解堆積にも用途が見出されている。SAM印刷は、高解像度のパターンを作製することができるが、通常、金または銀の金属パターンを、チオールの化学により形成することに限られている。複数のバリエーションがあるものの、SAM印刷においては、エラストマースタンプに与えられたポジのレリーフパターンが基板に着色される。典型的にポリジメチルシロキサン(PDMS)でできたエラストマースタンプのレリーフパターンは、チオール材料により着色される。典型的に、チオール材料は、アルカンチオール材料である。基板は、金または銀の金属薄膜でブランケットコートされてから、金コートされた基板がスタンプと接触する。スタンプのレリーフパターンの金属膜との接触の際、所望のマイクロ回路パターンを有するチオール材料の単層が、金属膜に転写される。アルカンチオールは、自己組織化プロセスにより、金属に秩序ある単層を形成する。その結果、SAMは密集し、金属に良好に接合する。このように、SAMは、着色基板を、金属エッチング溶液に浸漬すると、エッチングレジストとして作用し、SAM保護金属領域以外は全て、下にある基板からエッチングされる。SAMは、剥離されて、所望のパターンの金属が残る。
【0005】
材料を基板、特に、発光素子に転写する方法は、Coe−Sullivanら、国際公開第2006/047215号パンフレットに開示されている。この方法には、スタンプアプリケータの表面に材料を選択的に堆積し、スタンプアプリケータの表面を基板に接触することが含まれる。スタンプアプリケータは、テクスチャ付与、すなわち、凹凸パターンのある表面を有していても、特徴部なし、すなわち、凹凸を有していなくてもよい。材料は、ナノ材料インクであり、これは半導体ナノ結晶を含む。材料の基板への直接接触印刷だと、所望のマイクロ回路パターンを基板から形成しない過剰の材料をエッチングまたは除去するSAM印刷に関連する工程が排除される。スタンプアプリケータは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)等のエラストマー材料で作製することができる。
【0006】
チオールの化学により印刷すると、20nmの特徴部が得られることが分かっているが、数少ない金属に限られており、オープンリール式プロセスには適合しない。対照的に、約50ミクロン以下、特に、1〜5ミクロンの解像度を備えた機能材料のパターンを、機能材料の直接レリーフ印刷により形成するのは難しい。
【0007】
従って、機能材料のパターンを基板上に形成する方法を提供することが望まれている。機能材料のパターンを、基板上に直接する形成する方法が望まれている。基板上に導体材料のパターンを直接形成して、パターンを形成しない導体材料を除去するための中間エッチング工程を省くことが特に望ましい。かかる方法については、エラストマースタンプによるマイクロ接触印刷をしやすく、解像度50ミクロン以下、特に、約1〜5ミクロンを再生できるのも望ましい。ただし、金属への印刷に限られない。かかる方法は、パターンの特徴部のない領域における機能材料の転写の問題を排除することも望まれている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基板上に機能材料のパターンを形成する方法を提供する。本方法は、隆起表面を備えたレリーフ構造を有し、弾性率が少なくとも10メガパスカルであるエラストマースタンプを提供することを含む。機能材料と液体とを含む液体組成物を、スタンプのレリーフ構造に適用し、少なくとも隆起表面に機能材料のフィルムが十分に形成されるように、レリーフ構造の組成物から液体を除去する。機能材料は、隆起表面から転写されて、基板上にパターンを形成する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】マイクロ回路のパターンまたはその他機能電子経路を形成するレリーフ構造を有するマスターの立断面図である。
【図2】支持体とマスターとの間に、化学線に露光されたエラストマー材料の層を有する印刷フォーム前駆体の一実施形態の立断面図である。
【図3】マスターから分離された、印刷フォーム前駆体から形成されたスタンプの立断面図である。スタンプは、マスターのレリーフパターンに対応するレリーフ構造を有し、特に、スタンプのレリーフ構造は、マスターのレリーフと反対の、少なくとも隆起表面とリセス表面のパターンを含む。
【図4】機能材料をスタンプのレリーフ構造に適用する一実施形態としての、スピンコーターのプラットフォームにあるエラストマースタンプの立断面図である。
【図5】基板と接触するレリーフ構造の隆起表面に、機能材料層を有するエラストマースタンプの立断面図である。
【図6】基板から分離され、隆起表面の機能材料を基板に転写して、機能材料のパターンを形成するエラストマースタンプの立断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の詳細な説明について、同じ参照文字は、全ての図面において同じ要素を参照している。
【0011】
本発明は、これらに限られるものではないが、電子、光学、センサおよび診断用途をはじめとする様々な用途において、デバイスおよびコンポーネントに用いるために、基板上に機能材料のパターンを形成する方法を提供する。本方法は、機能材料として、様々な活性材料および不活性材料のパターン形成に適用することができる。本方法は、マスキング材料としてチオール材料のエラストマースタンプによる適用に限定されない。本方法は、機能材料のパターンを、広い面積について、50ミクロン未満のライン解像度で、様々な基板上に機能材料のパターンを直接形成できるため、特に、マイクロ回路を形成することができる。1〜5ミクロンの微細ライン解像度でも、本発明の方法により達成することができる。本方法は、機能材料を転写するために、レリーフ構造を有するエラストマースタンプで、スタンプのサギングなし、または大幅なサギングなしで、材料の基板への望ましくない転写をすることなく、容易に印刷を行うものである。本方法は、従来のマイクロ接触印刷に付随する画像信頼性および解像度を保持しながら、機能材料のライン間にきれいな、特徴部のない(開放された)バックグラウンドを与える。本発明の方法では、比較的広い面積にわたって、ミクロンの解像度で様々な機能材料を印刷することができる。本方法はまた、1つ以上の下にある層の機能を損なうことなく、連続したオーバーレイの印刷を可能にする。本方法は、特に、オープンリール式プロセス等の電子デバイスおよびコンポーネントの製造のための高速製造プロセスに適用できる。
【0012】
スタンプは、基板のパターン化のために提供される。スタンプは、隆起表面を備えたレリーフ構造を含む。典型的に、レリーフ構造は、複数の隆起表面と複数のリセス表面とを含む。スタンプのレリーフ構造は、機能材料を基板上に印刷するための隆起表面のパターンを形成する。基板上の機能材料のパターンは、コンポーネントまたはデバイスに有効な機能を与える。エラストマースタンプのレリーフ構造の隆起表面は、本方法により基板上に最終的に形成される機能材料のパターンを表し、リセス表面は、基板上のバックグラウンドまたは特徴部のない領域を表す。本発明の方法は、少なくとも10メガパスカル(Mpa)の弾性率を有するエラストマースタンプを用いる。これにより、50ミクロン未満の解像度の基板上の様々な機能材料の特徴部を形成することができる。30ミクロン未満、1〜5ミクロンと微細なライン解像度を形成することができる。機能材料が、例えば、半導体または誘電体材料である、ある実施形態において、50ミクロン未満の解像度が可能である。この解像度は、電子デバイスおよびコンポーネントの要件に適合するものである。機能材料が、例えば、導電材料である、ある実施形態において、本方法は、1〜5ミクロンの特徴部を形成することができる。本発明の方法は、基板上に機能材料のパターンを直接印刷できるため、導電性パターンを形成するための標準マイクロ接触印刷に関連する中間エッチング工程が省かれる。ある実施形態において、本発明の方法は、スタンプサギング(すなわち、リセス部分の天井崩壊)から典型的に生じる、機能材料の、基板上のパターンのない領域への転写を最小にもする。本発明の方法は、スタンプの隆起表面およびリセス表面の相対的な寸法に関わらず、機能材料のパターン形成に適用することができる。
【0013】
スタンプは、マイクロ接触印刷の業界の当業者であれば理解される従来のやり方で形成される。例えば、スタンプは、レリーフ形態を表す表面(スタンプレリーフ構造の反対)を有するマスター上で、材料の層を鋳造および硬化することにより製造される。スタンプは、化学線への露光、加熱またはこれらの組み合わせにより硬化される。スタンプは、このように、エラストマー材料の層を含む。これは、エラストマー層、硬化層または硬化エラストマー層と呼ばれる。スタンプはまた、例えば、レリーフ構造を生成するやり方で、剥離またはエングレイブによっても製造できる。スタンプのレリーフ構造において、隆起表面が基板と十分選択的に接触するよう、隆起表面はリセス表面から高さがある。リセス表面から隆起表面までの高さもまた、レリーフ深さと呼ばれる。一実施形態において、隆起表面は、リセス表面から約0.2〜20ミクロンの高さを有している。他の実施形態において、隆起表面は、リセス表面から約0.2〜2ミクロンの高さを有している。スタンプを形成するエラストマー層は、レリーフ構造が、印刷のための層中に形成できるのであれば特に限定されない厚さを有している。一実施形態において、エラストマー層の厚さは、1〜51ミクロンである。他の実施形態において、エラストマー層の厚さは、5〜25ミクロンである。
【0014】
エラストマー層により、少なくとも10メガパスカル、好ましくは10メガパスカルを超える弾性率のスタンプが得られる。弾性率は、応力の増分対歪みの増分の比率である。本発明の方法について、弾性率は、ヤング率であり、低い歪みで、応力と歪みの関係が直線で、材料が、応力および歪みから回復できるようなものである。弾性率はまた、弾力性係数、弾力性率または弾性係数とも呼ばれる。弾性率は、当業者に周知の機械的特性である。材料の弾性率およびその他機械的特性の説明およびその分析は、Marks’Standard Handbook for Mechanical Engineers,eds.Avalone,E.およびBaumeister III,T.,第9版、5章、McGraw Hill、1987年にある。エラストマースタンプの弾性率を求めるのに好適な方法は、OliverおよびPharr、J.Mater.Res.7,1564(1992年)に記載されている。この方法は、エラストマー薄層、例えば、厚さ51ミクロン未満のスタンプを形成するエラストマー層の弾性率を求めるのに特に好適である。印刷スタンプの弾性率は、試料表面に対して法線で、既知の形状を有するインデンター先端を備えたインデンテーション試験機(インデンター)で測定することができる。インデンター先端を、プリセット値まで増大する負荷をかけることにより、試料に作用させる。試料の部分的または完全な弛緩が生じるまで、負荷を徐々に減じる。試料に、複数回のインデンテーションを行うことができる。荷重/非荷重および変位は、試験プロセス全体にわたって、連続的に記録されて、荷重変位曲線が生成され、これにより、弾性率その他といった機械的特性を求めることができる。各インデンテーションについての荷重/非荷重曲線の分析は、J.Mater.Res.に元々紹介されたOliverおよびPharrに記載された方法により行われる。
【0015】
スタンプを形成する材料は、エラストマーで、これは、スタンプの少なくとも隆起部分を、基板の表面に適合させて、マスキング材料の完全な転写を促進するためのものである。少なくとも10メガパスカルの弾性率によって、直接レリーフ印刷により、基板上に機能材料の微細な解像度のパターンを、スタンプは確実に再生することができる。少なくとも10メガパスカルの弾性率を備えたスタンプは、機能材料の基板への直接印刷により、改善された解像度が可能となる。少なくとも10メガパスカルの弾性率を有するスタンプのある実施形態において、スタンプが示すリセス領域におけるサギングは少ない。一実施形態において、エラストマースタンプは、少なくとも11メガパスカルの弾性率を有する。一実施形態において、エラストマースタンプは、少なくとも15メガパスカルの弾性率を有する。他の実施形態において、エラストマースタンプは、少なくとも20メガパスカルの弾性率を有する。他の実施形態において、エラストマースタンプは、少なくとも40メガパスカルの弾性率を有する。
【0016】
スタンプは、機能材料のパターンを、基板にレリーフ印刷することにより再生することのできる任意の材料または材料の組み合わせから製造することができる。エラストマースタンプを形成するのに好適なポリマー材料としては、これらに限られるものではないが、例えば、フルオロポリマー、重合可能なフッ素化化合物、エポキシポリマー、共役ジオレフィンハイドロカーボンのポリマー、例えば、ポリイソプレン、1,2−ポリブタジエン、1,4−ポリブタジエンおよびブタジエン/アクリロニトリル、A−B−A型ブロックコポリマーのエラストマーブロックコポリマー(Aは、非エラストマーブロック、好ましくはビニルポリマーおよび最も好ましくはポリスチレンを表し、Bはエラストマーブロック、好ましくはポリブタジエンまたはポリイソプレンを表す)ならびにアクリレートポリマーが挙げられる。A−B−Aブロックポリマーとしては、これらに限られるものではないが、ポリ(スチレン−ブタジエン−スチレン)およびポリ(スチレン−イソプレン−スチレン)が例示される。シリコーンポリマー、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)が、少なくとも10メガパスカルの弾性率を備えたスタンプを与えることのできる範囲であれば、シリコーンポリマーも好適な材料である。エラストマースタンプに用いる材料の選択は、ある程度、スタンプに/スタンプにより適用された機能材料および液体の組成に応じて異なる。例えば、エラストマースタンプ用に選択された材料は、組成物、特に、液体と接触しながら、膨潤に対して抵抗性がなければならない。フルオロポリマーは、典型的に、有機溶剤(機能材料について)に対して抵抗性がある。機能材料と共に用いるある溶剤、例えば、クロロホルムは、シリコーンベースのスタンプ、例えば、PDMSを膨潤する傾向がある。スタンプの膨潤によって、基板上の微細解像度パターンを生成する能力が変わる。ポリマー材料は、エラストマーであっても、硬化によりエラストマーになるものであってもよい。ポリマー材料自体は、感光性であり、かつ/またはポリマー材料が、組成物を感光性とする1種以上の添加剤と共に組成物中に含まれていてもよい。
【0017】
一実施形態において、レリーフ構造が、化学線に露光する際に形成できるようエラストマースタンプを形成する材料は感光性である。「感光性」という用語には、感光性組成物が、化学線に応答して、1つ以上の反応、特に、光化学反応を開始できる系が含まれる。化学線への露光の際、モノマーおよび/またはオリゴマーの連鎖重合は縮合機構か、フリーラジカル付加重合のいずれかにより誘導される。全ての光重合可能な機構が考えられるが、エラストマースタンプ材料として有用な感光性組成物は、1つ以上の末端エチレン化不飽和基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーのフリーラジカル開始付加重合について説明する。これに関して、化学線に露出したときの光開始剤系は、モノマーおよび/またはオリゴマーの重合を開始するのに必要なフリーラジカルの源として作用し得る。
【0018】
組成物は感光性である。組成物は、光開始付加重合によりポリマーを形成することのできる少なくとも1つのエチレン化不飽和基を有する化合物を含有するためである。感光性組成物はまた、化学線により活性化される開始系も含有していて、光重合を誘導してもよい。重合可能な化合物は、非末端エチレン化不飽和基を有している、かつ/または組成物は、架橋を促進するモノマー等の1つ以上のその他の化合物を含有していてもよい。このように、「光重合可能な」という用語は、光重合可能、光架橋可能またはその両方の系を包含するものである。本明細書で用いる、光重合はまた、硬化とも呼ばれる。エラストマースタンプを形成する感光性組成物は、1つ以上の成分および/または添加剤を含んでいてよく、これらに限られるものではないが、組成物を安定化またはその他強化する光開始剤、1つ以上のエチレン化不飽和化合物(モノマーと呼ばれる)、フィラ−、界面活性剤、熱重合防止剤、処理助剤、酸化防止剤、光増感剤等が挙げられる。
【0019】
光開始剤は、化学線に感受性のある単一化合物または化合物の組み合わせとすることができ、過剰な停止反応なしで、重合を開始するフリーラジカルを生成する。公知の部類の光開始剤、特に、フリーラジカル開始剤、例えば、芳香族ケトン、キノン、ベンゾフェノン、ベンゾインエーテル、アリールケトン、過酸化物、ビイミダゾール、ベンジルジメチルケタ―ル、ヒドロキシルアルキルフェニルアセトフォン、ジアルコキシアセトフェノン、トリメチルベンゾイルホスフィンオキシド誘導体、アミノケトン、ベンゾイルシクロヘキサノール、メチルチオフェニルモルホリノケトン、モルホリノフェニルアミノケトン、アルファハロゲノアセトフェノン、オキシスルホニルケトン、スルホニルケトン、オキシフルホニルケトン、スルホニルケトン、ベンゾイルオキシムエステル、チオキサントロン、カンファーキノン、ケトクマリンおよびミヒラーズケトンを用いてよい。一実施形態において、光開始剤は、芳香族ケトン型の公知のフッ素を含まない光開始剤に基づくフッ素化光開始剤を含む。あるいは、光開始剤は、化合物の混合物であってもよく、そのうちの1つが、放射線により活性化される感光剤により、そのように行うと、フリーラジカルを与える。液体光開始剤は、組成物中で良好に分散するため、特に好適である。好ましくは、開始剤は、紫外線に感受性がある。光開始剤は、通常、感光性組成物の重量に基づいて、0.001%〜10.0%の量で存在する。
【0020】
化学線により活性化される組成物中に用いることのできるモノマーは業界で周知であり、これらに限られるものではないが、付加重合エチレン化不飽和化合物が挙げられる。付加重合化合物はまた、オリゴマーであってもよく、オリゴマーの単体または混合物とすることができる。組成物は、単体モノマーまたはモノマーの組み合わせを含有することができる。付加重合可能なモノマー化合物は、組成物の重量の5%未満、好ましくは3%未満の量で存在し得る。
【0021】
一実施形態において、エラストマースタンプは、化学線に露光する際に、重合するフッ素化化合物を含む感光性組成物で構成されていて、フッ素化エラストマーベースの材料を形成する。好適なエラストマーベースのフッ素化化合物としては、これらに限られるものではないが、重合反応により重合または架橋可能なパーフルオロポリエーテル、フルオロオレフィン、フッ素化熱可塑性エラストマー、フッ素化エポキシ樹脂、フッ素化モノマーおよびフッ素化オリゴマーが挙げられる。一実施形態において、フッ素化化合物は、反応して重合し、フッ素化エラストマー材料を形成する1つ以上の末端エチレン化不飽和基を有する。エラストマーベースのフッ素化化合物は、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリシロキサン、ポリアミドおよび印刷フォーム前駆体および/またはその使用に好適なスタンプの所望の特性を達成するその他等でホモ重合または共重合することができる。化学線への露光は、フッ素化化合物を重合するのに十分なものであり、印刷スタンプとして用いられるようになり、高圧および/または室温より高い高温の印加は必要ない。化学線に露光することにより硬化するフッ素化化合物を含有する組成物の利点は、PDMSベースの系等、熱硬化する組成物に比べると特に、組成物が比較的早く(例えば、1分以下で)硬化し、単純なプロセス過程であることである。
【0022】
一実施形態において、エラストマースタンプは、フッ素化化合物が、パーフルオロポリエーテル(PFPE)化合物である感光性組成物の層を含む。パーフルオロポリエーテル化合物は、少なくとも大部分がパーフルオロエーテルセグメント、すなわち、パーフルオロポリエーテルを含む化合物である。PFPE化合物中に存在するパーフルオロエーテルセグメントの大部分は、PFPE化合物の総重量に基づいて、80重量パーセント以上である。パーフルオロポリエーテル化合物はまた、フッ素化されていないハイドロカーボンまたはハイドロカーボンエーテルである、かつ/またはフッ素化されているが、過フッ素化されていないハイドロカーボンまたはハイドロカーボンエーテルである1つ以上の延長セグメントを含んでいてもよい。一実施形態において、パーフルオロポリエーテル化合物は、少なくとも大部分がパーフルオロポリエーテルセグメントおよび末端光反応性セグメント、任意で、フッ素化されていないハイドロカーボンの延長セグメントを含む。パーフルオロポリエーテル化合物は、1つ以上の末端エチレン化不飽和基により官能基が付与されて、化合物を、化学線に対して反応性とする(すなわち、光反応性セグメント)。光反応性セグメントはまた、光重合可能なセグメントとも呼ばれる。
【0023】
パーフルオロポリエーテル化合物は、限定されないが、鎖状および分岐構造を含む。パーフルオロポリエーテル化合物の鎖状骨格構造が好ましい。PFPE化合物は、モノマーであってよいが、典型的には、室温でオリゴマーおよび液体である。パーフルオロポリエーテル化合物は、オリゴマーパーフルオロエーテルセグメントを有するオリゴマー二官能性モノマーと考えてもよい。パーフルオロポリエーテル化合物は、光化学的に重合して、スタンプのエラストマー層を与える。PFPEベースの材料の利点は、PFPEが高フッ素化されていて、有機溶剤、特に、マイクロ接触印刷技術に用いるのに望ましい塩化メチレン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサンおよびアセトニトリル等による膨潤に抵抗性があることである。
【0024】
任意で、エラストマースタンプは、可撓性フィルム、好ましくは可撓性ポリマーフィルムの支持体を含む。可撓性支持体は、スタンプのエラストマーレリーフ表面を、印刷可能な電子基板に、反りまたは歪みを生じさせることなく、適合または実質的に適合可能とする。支持体はまた、スタンプをマスターから剥離しながら、スタンプのエラストマー層と共に曲げることができるほど十分に可撓性でもある。支持体は、非反応性で、スタンプの製造および使用状況にわたって安定なままのフィルムを形成するポリマー材料とすることができる。好適なフィルム支持体としては、トリアセチルセルロース等のセルロースフィルムおよび、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリイミドおよびポリエステル等の熱可塑性材料が例示される。好ましいのは、ポリエチレン、例えば、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートのフィルムである。同じく支持体に含まれるのは可撓性ガラスである。典型的に、支持体の厚さは、2〜50ミル(0.0051〜0.13cm)である。典型的に、支持体はシートフィルムの形態であるが、この形態に限定されない。一実施形態において、支持体は、感光性組成物が重合する化学線に対して透明、または実質的に透明である。
【0025】
任意で、エラストマースタンプは、機能材料適用前は、レリーフ表面に1つ以上の層を含んでいてよい。1つ以上の層は、例えば、機能材料の、スタンプから基板への転写を補助する。追加の層として用いるのに好適な材料の一例としては、フッ素化化合物が挙げられる。一実施形態において、追加の層は、機能材料の基板への転写後、エラストマースタンプと共に残る。
【0026】
機能材料は、マイクロ加工によりパターン化されて、様々なコンポーネントおよびデバイスにおける操作を促進する材料である。機能材料は、活性材料または不活性材料とすることができる。活性材料としては、これらに限られるものではないが、電気的活性材料、光活性材料および生物学的活性材料が挙げられる。本明細書で用いる「電気的活性」、「光活性」および「生物学的活性」とは、電磁場、電位、太陽またはその他エネルギー放射線、生物刺激場またはこれらの組み合わせ等の刺激に応答して所定の活性を示す材料のことを指す。不活性材料としては、これらに限られるものではないが、絶縁材料、例えば、誘電体材料、平坦化材料、バリア材料および閉じ込め材料が挙げられる。一実施形態において、平坦化材料が、カラーフィルタにおいてピクセルのパターンの上部に印刷されて、全てのピクセルを同じ高さとする。一実施形態において、バリア材料は、パターンで印刷されて、バリアを形成して、カソード中の電荷によって、有機発光ダイオード(OLED)中、発光ポリマー層への電荷注入が促される。一実施形態において、閉じ込め材料は、パターンとして印刷されて、後に適用される液体の、閉じ込め材料のパターンにより画定される特定の領域に対する膨張を制限する。不活性材料についての機能材料は、上述した実施形態に用いるものだけに限定されない。活性材料および不活性材料は、有機または無機とすることができる。有機材料は、ポリマー材料または小分子材料とすることができる。
【0027】
機能材料は、電子コンポーネントおよびデバイスのマイクロ製造に用いるためにパターン化された材料である。機能材料としては、これらに限られるものではないが、例えば、導体材料、半導体材料、および誘電体材料が挙げられる。機能材料として用いる導体材料としては、これらに限られるものではないが、酸化インジウム錫、銀、金、銅およびパラジウム等の金属、金属錯体、金属合金等が例示される。半導体材料としては、これらに限られるものではないが、例えば、シリコン、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、酸化亜鉛およびセレン化亜鉛が例示される。
【0028】
機能材料は、微粒子、ポリマー、分子等をはじめとする任意の形態とすることができる。典型的に、半導体材料および誘電体材料はポリマーであるが、この形態に限定されず、機能材料は、可溶半導体分子を含むことができる。
【0029】
本方法に用いる機能材料はまた、導体、半導体および誘電体材料のナノ粒子を含んでいてもよい。ナノ粒子は、サイズがナノメートル(nm)で測定される微小粒子である。ナノ粒子は、200nm未満の少なくとも1つの寸法を有する粒子を含む。一実施形態において、ナノ粒子の直径は、約3〜100nmである。サイズ範囲の下端では、ナノ粒子はクラスターと呼ばれる。ナノ粒子の形状は、限定されず、ナノスフェア、ナノロッドおよびナノカップが挙げられる。半導体材料でできたナノ粒子はまた、電子エネルギーレベルの量子化が生じるのに粒子が十分に小さい(典型的に、10nm未満)場合には、量子ドットとも呼ばれる。半導体材料は、発光量子ドットを含む。バルク材料は、通常、そのサイズに関わらず一定した物理特性を有するが、ナノ粒子については、これは当てはまらないことが多い。半導体粒子における量子閉じ込め、金属粒子における表面プラズモン共鳴および磁気材料における超常磁性のように、サイズ依存特性が観察される。機能材料としては、これらに限られるものではないが、半固体ナノ粒子、例えば、リポソーム、軟性ナノ粒子、ナノ結晶、ハイブリッド構造、例えば、コア−シェルナノ粒子が挙げられる。機能材料としては、カーボンのナノ粒子、例えば、カーボンナノチューブ、導電性カーボンナノチューブおよび半導体カーボンナノチューブが挙げられる。金、銀および銅の金属ナノ粒子および分散液は、NanotechnologiesおよびANPより市販されている。
【0030】
「光活性」という用語は、フォトルミネッセンス、エレクトロルミネッセンス、着色または感光性を示す材料のことを意味する。この用語には、特に、染料、光学漂白剤、フォトルミネッセンス材料、化学線に反応性の化合物および光開始剤が含まれる。一実施形態において、光活性材料には、化学線に応答して、反応、特に、光化学反応を開始できる材料または材料の組み合わせが含まれる。光活性材料は、それ自体が、化学線に反応性のある化合物を含む、かつ/または1種以上の化合物、例えば、組成物の化学線への反応性を与える、モノマーおよび光開始剤の組成物を含むことができる。機能材料の好適な光活性材料としては、感光性組成物およびエラストマースタンプに好適な材料として上述したようなものが挙げられる。一実施形態において、光活性材料は、エラストマースタンプについて上述したとおり、1種以上のフッ素化化合物、例えば、フルオロポリマー、フッ素化モノマーおよびフッ素化オリゴマーとすることができる。他の実施形態において、機能材料は、有機発光ポリマーである。
【0031】
小分子材料と呼ばれる機能材料のさらなる例としては、これらに制限されないが、有機染料、半導体分子、蛍光発色団、りん光発色団、薬理活性化合物、生物学的活性化合物、触媒活性を有する化合物が挙げられ、単体または他の材料と様々に組み合わせて、電子、センサまたは診断用途に有用なパターン化されたデバイスの製造に好適である。
【0032】
本発明において用いられるバイオ系材料とも呼ばれる生物学的活性材料としては、これらに限られるものではないが、様々な分子量のデオキシリボ核酸(DNA)が挙げられ、テンプレートまたは骨格として用いて、DNAを、明確な形状へと結合する他の材料、蛋白質、ポリ(オリゴ)ペプチドおよびポリ(オリゴ)サッカリドを配置することができる、単体または他の材料との様々な組み合わせが、電子、センサまたは診断用途のパターン化デバイスの製造に好適である。
【0033】
機能材料は、典型的に、液体に、分散、溶解または懸濁されて、スタンプに適用するための組成物が形成される。機能材料に用いる液体は、限定されず、有機化合物および水性化合物を含むことができる。一実施形態において、液体は、アルコールベースの化合物である有機化合物である。液体は、他の物質(すなわち、機能材料)を溶解して、均一な混合物を形成することのできる物質である溶剤、または本発明の方法の工程を実施するのに十分、溶液中に材料を分散または懸濁できるキャリア化合物であってよい。溶剤またはキャリアのいずれにしろ、液体と機能材料は、適用中、スタンプの少なくとも隆起表面を湿潤できるものでなければならない。機能材料は、組成物の総重量に基づいて、0.1〜30重量%で液体中に存在する。液体は、機能材料のための溶剤またはキャリアとして、1種または2種以上の化合物を含む。一実施形態において、液体は、機能材料のための1種の溶剤を含む。他の実施形態において、液体溶液は、機能材料のための1種のキャリア化合物を含む。他の実施形態において、液体は、機能材料のための2種の溶剤、すなわち、共溶剤混合物を含む。共溶剤混合物を用いる実施形態において、混合物中の成分は、次のガイドラインのうち1つ以上に従って選択する。(1)個々の溶剤成分の蒸発速度(すなわち、揮発度)が異なる。(2)特定の機能材料のための個々の溶剤成分の容媒和力が異なる。個々の溶剤成分の容媒和力および揮発度は、組成物中および/または液体除去中の勾配が形成されるよう十分に異なる。(3)個々の溶剤成分は、スタンプのレリーフ構造からの液体の除去中に生じる組成物範囲にわたって互いに混和する。(4)共溶剤混合物は、スタンプからの液体の除去中、スタンプの隆起表面を濡らし続ける。共溶剤混合物の一例としては、揮発性の低い貧溶剤と共に二成分溶剤溶液を形成する揮発性の高い非常に良好な溶剤(機能材料の)が挙げられる。二成分溶剤溶液が、スタンプの隆起表面から蒸発するにつれて、溶液組成が絶え間なく変化する(勾配)。溶液勾配は、液体の除去中の機能材料の特性変化を促して、スタンプ上にフィルムを形成することができる。かかる乾燥勾配の結果として、変化する特性としては、小芳香族分子の凝集体、例えば、半導体材料、およびDNAや半導体ポリマー等の(バイオ)ポリマーの配座が挙げられる。乾燥勾配から得られる機能材料のフィルムは、物理、化学または生物学的に異なる特性を有し、基板の機能材料のプリ−またはポスト−転写の状態に影響する可能性がある。
【0034】
機能材料および液体の組成物は、組成物をスタンプのレリーフ構造の少なくとも隆起表面に適用することにより、スタンプに提供される。機能材料および液体の組成物は、これらに限られるものではないが、注入、流し込み、液体鋳造、ジェッティング、浸漬、吹付け、蒸着およびコーティングをはじめとする任意の好適な方法により、スタンプに適用することができる。コーティングの好適な方法としては、スピンコーティング、ディップコーティング、スロットコーティング、ローラーコーティングおよびドクターブレーディングが例示される。一実施形態において、組成物がスタンプに適用されて、スタンプのレリーフ構造上に層を形成する。すなわち、組成物は、隆起表面とリセス表面に層を形成する。スタンプの組成物の層は、連続または不連続とすることができる。組成物の層の厚さは、特に限定されない。一実施形態において、組成物層の厚さは、典型的に、スタンプのレリーフ高さ(隆起表面とリセス表面との差)より少ない。
【0035】
組成物は、スタンプのレリーフ構造の少なくとも隆起表面上に層を形成することができなければならない。スタンプのエラストマーモジュラスの要件を超えて、スタンプ材料の耐溶剤性等のエラストマースタンプの特定の他の特性、ならびに溶剤の沸点および機能材料の溶剤における溶解度等の機能材料の組成物の特定の特性は、特定の機能材料の能力に影響して、層を形成し、パターンとして基板に転写するものである。しかし、マイクロ接触印刷の当業者であれば、機能材料およびエラストマースタンプの適切な組み合わせを決めることができる。
【0036】
一実施形態において、機能材料は、基板に適用するための溶剤の液体溶液中にある。他の実施形態において、機能材料は、基板に適用するための共溶剤混合物中にある。機能材料、特に、ナノ粒子の形態にあるときは、適用のためのキャリアシステム中に懸濁している。
【0037】
機能材料および液体の組成物を、スタンプの少なくとも隆起表面に適用した後、組成物から液体の一部またはすべてを除去し、機能材料はスタンプ上に残す。レリーフ構造上の組成物からの液体は、十分に除去されて、機能材料のフィルムを、スタンプの少なくとも隆起表面に形成する。2種以上の化合物を、機能材料組成物のための液体として用いる場合には、2種以上の化合物の一部またはすべてを除去して、フィルムを形成する。除去は、ガスジェット、吸収材料によるブロット、室温または高温での蒸発等をはじめとする任意のやり方で行うことができる。一実施形態において、除去は、スタンプ上の機能材料の適用中、乾燥によりなされる。効率的な乾燥は、比較的低沸点の機能材料のための溶剤の選択により、かつ/または機能材料の組成物の非常に薄い層(すなわち、約1ミクロン未満)の適用により補助される。液体は、組成物層から十分に除去されて、レリーフ構造に従って、機能材料のパターンが基板に転写されるようにする。一実施形態において、スタンプ上の機能材料のフィルムの厚さは、0.001〜2ミクロンである。他の実施形態において、スタンプ上の機能材料のフィルム層の厚さは、0.01〜1ミクロンである。
【0038】
一実施形態において、機能材料は、液体、すなわち、溶剤またはキャリアを実質的に含まず、レリーフ構造上にフィルムを形成する。他の実施形態において、液体は、組成物から実質的に除去されて、機能材料の乾燥したフィルムを、少なくとも隆起表面に形成し、乾燥したフィルムを、気化状態の化合物に露出して、基板への転写を促す。気化した化合物は限定されず、水蒸気または有機化合物蒸気が挙げられる。以下に限定されるものではないが、フィルムがやや可鍛性となって、機能材料を基板に接合する能力が増大する限りは、乾燥したフィルムを気化した化合物に露出すると、乾燥したフィルムが可塑化するものと考えられる。典型的に、気化した化合物の乾燥したフィルムへの影響は一時的で、その直後、または実質的にその直後に、フィルムが基板へ転写される。
【0039】
レリーフ構造の隆起表面から基板までの機能材料の転写により、基板上の機能材料のパターンが作成される。転写はまた印刷とも呼ばれる。機能材料の基板の隆起表面との接触によって、機能材料が転写され、スタンプが基板から分離されると、機能材料のパターンが形成される。一実施形態において、隆起表面にある機能材料の全てまたは実質的に全てが基板に転写される。基板からのスタンプの分離は、これらに限られるものではないが、剥離、ガスジェット、液体ジェット、機械的デバイス等をはじめとする任意の好適な手段によりなされる。
【0040】
任意で、圧力をスタンプに加えて、機能材料の基板との接触および基板への完全な転写を確実なものとする。機能材料を基板に転写するのに用いる好適な圧力は、5ポンド/cm2未満、好ましくは1ポンド/cm2未満、より好ましくは0.1〜0.9ポンド/cm2、最も好ましくは約0.5ポンド/cm2である。機能材料の基板への転写はいずれのやり方で行ってもよい。機能材料の転写は、スタンプのレリーフ表面を基板に動かす、または基板をスタンプのレリーフ表面に動かす、または基板とレリーフ表面の両方を接触させて動かすことによりなされる。一実施形態において、機能材料は、手動で転写される。他の実施形態において、機能材料の転写は、例えば、コンベヤーベルト、オープンリール式プロセス、直接駆動可動固定具またはパレット、チェーン、ベルトまたはギア駆動固定具またはパレット、摩擦ローラ、印刷プレスまたは回転式装置により、自動化される。機能材料の層の厚さは、特に限定されず、基板上の機能材料層の典型的な厚さは、10〜10000オングストロームである。
【0041】
本発明の方法は、典型的に、室温、すなわち、17〜30℃(63〜86°F)の温度で行われるが、これに限定されない。熱が、エラストマースタンプ、機能材料、基板、基板上にパターンを形成する能力に悪影響を及ぼさない限りは、本発明の方法は、約100℃までの高温で行われる。
【0042】
機能材料のパターンが、上に形成できるのであれば、基板は、限定されないが、プラスチック、ポリマーフィルム、金属、シリコン、ガラス、ファブリック、紙およびこれらの組み合わせが挙げることができる。基板は不透明または透明とすることができる。基板は剛性または可撓性とすることができる。本発明の方法による機能材料のパターンが基板上に形成される前、基板はまた、他の材料の1つ以上の層および/または1つ以上のパターンを含んでいてもよい。基板の表面は、接着促進表面、例えば、プライマー層を含む、または処理して、接着層または機能材料の基板への接着を促すことができる。好適な基板としては、例えば、ポリマー、ガラスまたはセラミック基板上に金属フィルムのあるもの、ポリマー基板上に1枚または複数の導電性フィルム、その上に金属フィルムのあるもの、ポリマー基板上に半導体フィルム、その上に金属フィルムのあるものが挙げられる。好適な基板のさらなる例としては、例えば、ガラス、酸化インジウム錫コートガラス、酸化インジウム錫コートポリマーフィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、シリコンおよび金属ホイルが例示される。基板は、パターンが転写される1つ以上の電荷注入層、電荷輸送層および半導体層を含むことができる。
【0043】
任意で、基板上の機能材料のパターンは、加熱、紫外線および赤外線等の化学線源への露光等のさらなる処理工程を行ってもよい。機能材料が、ナノ粒子の形態である実施形態において、追加の処理工程は、機能材料を有効にする必要がある。例えば、機能材料が、金属ナノ粒子で構成されているときは、機能材料のパターンを加熱して、粒子を焼結し、パターンのラインを導電性にしてもよい。焼結は、ナノ粒子の形態等の金属粉末を、溶融せずに、加熱することにより、コヒーレント結合塊を形成する。導体材料を、約220℃未満、好ましくは約140℃未満の温度まで加熱すると、ナノ粒子導体材料が、連続機能フィルムへと焼結する。
【0044】
本発明の方法は、これらに限られるものではないが、電子、光学、センサおよび診断用途をはじめとする様々な用途で、デバイスおよびコンポーネントに用いる基板上に機能材料のパターンを形成する方法を提供する。本方法を用いて、電子デバイスおよびコンポーネント、ならびに光学デバイスおよびコンポーネントに用いる活性材料または不活性材料のパターンを形成することができる。かかる電子および光学デバイスおよびコンポーネントとしては、無線タグ(RFID)、センサ、メモリおよびバックパネルディスプレイが挙げられる。本方法を用いて、基板上に、導体材料、半導体材料、誘電体材料のパターンを形成することができる。本方法を用いて、センサまたは診断用途に用いる基板上に生物材料および薬理活性材料のパターンを形成することができる。本方法によれば、機能材料を、セルまたはピクセルのバリア壁を形成して、発光材料、カラーフィルタ着色材料を含むパターンへ、あるいは、溶液から供給されたソース材料とドレイン電極間のチャネル長を画定するパターンへと形成することができる。バリア壁のパターンはまた、閉じ込め層またはバリア層とも呼ばれる。本方法によれば、機能材料を、バリア壁を形成するパターンへと形成し、カラーフィルタピクセルとして用いるセルを作成することができる。カラーフィルタピクセルに、顔料着色剤、染料着色剤をはじめとするカラーフィルタ用の着色材料を充填することができる。本方法によれば、機能材料を、ソース材料およびドレイン材料等の他の材料が、チャネルに供給されるトップゲートデバイスのためのトランジスタチャネルへと形成することができる。本方法によれば、機能材料を、ソースおよびドレイン材料が、チャネルに供給されるボトムゲートデバイスのための基板の半導体層上のトランジスタチャネルへと形成することができる。他の材料を、インクジェットをはじめとする手段により、溶液として基板上のセルに供給することができる。
【0045】
図1〜3は、鋳造操作において、スタンプ5をスタンプ前駆体10から作製する方法の一実施形態を示す。図1に、マスター基板15の表面14に形成されたマイクロ電子特徴部のネガレリーフのパターン13を有するマスター12を示す。マスター基板15は、平滑または実質的に平滑な金属、プラスチック、セラミックまたはガラスとすることができる。一実施形態において、マスター基板はガラスまたはシリコン面である。典型的に、マスター基板15上のレリーフパターン13は、当業者に周知の従来の方法により、フォトレジスト材料で形成される。プラスチック格子フィルムおよび石英格子フィルムはまたマスターとしても用いることができる。約ナノメートルの微細特徴部が望ましい場合には、マスターは、e−ビーム放射線によりシリコンウェハ上に形成することができる。
【0046】
マスター12は、鋳型筺体に、かつ/またはその周囲に沿ってスペーサ(図示せず)と共に配置して、感光性組成物の均一な層の形成を補助してもよい。スタンプを形成するプロセスは、鋳型筺体またはスペーサを用いずに単純化することができる。
【0047】
図2に示す一実施形態において、感光性組成物が導入されて、層20を、レリーフパターン13を有するマスター12の表面に形成する。感光性組成物は、これらに限られるものではないが、注入、流し込み、液体鋳造およびコーティングをはじめとする任意の好適な方法により、マスター12に導入することができる。一実施形態において、感光性組成物は、液体をマスターに注ぐことにより、層20に形成される。感光性組成物20の層をマスター12に形成すると、化学線露光後に、硬化した組成物が、厚さ約5〜50ミクロンの固体エラストマー層を形成する。示される実施形態において、支持体16は、マスター12の反対の感光性組成物層20の側部に配置されて、接着層が、存在する場合には、感光性組成物の層に近接して、スタンプ前駆体10が形成される。支持体16は、スタンプ前駆体10を得るのに好適な任意のやり方で組成物層に適用することができる。図示した実施形態においては紫外線である化学線露光の際、スタンプ前駆体10の透明支持体16を通して、感光性層20が重合して、スタンプ5のための組成物のエラストマー層24を形成する。感光性組成物20の層は、化学線露光により硬化または重合する。さらに、典型的に、露光を窒素雰囲気中で実施して、露光中の、雰囲気酸素の存在、および重合反応に酸素が与える影響を排除または最小にする。
【0048】
印刷フォーム前駆体を、紫外(UV)または可視光等の化学線に露光して、層20を硬化することができる。化学線は、透明支持体16を通して、感光性材料を露光する。露光した材料は、重合および/または架橋して、マスターのレリーフパターンに対応するレリーフ表面を備えた固体エラストマー層を有するスタンプまたはプレートとなる。一実施形態において、好適な露光エネルギーは、365nm I−ライナ露光ユニットで約10〜20ジュールである。
【0049】
化学線源は、紫外、可視および赤外波長領域を含む。特定の化学線源の適合性は、感光性組成物の感光度、任意の開始剤および/またはスタンプ前駆体を調製するのに用いる少なくとも1つのモノマーにより決まる。スタンプ前駆体の好ましい感光度は、良好な室内光安定性を与えるよう、スペクトルのUVおよび短波長可視光領域にある。好適な可視およびUV源としては、カーボンアーク、水銀蒸気アーク、蛍光ランプ、電子フラッシュユニット、電子ビームユニット、レーザおよび写真フラッドランプが例示される。UV放射線の最も好適な源は、水銀蒸気ランプ、特に、日光ランプである。これらの放射線源は、通常、310〜400nmの長波UV放射線を放出する。これらの特定のUV源に感受性のあるスタンプ前駆体は、310〜400nmを吸収するエラストマーベースの化合物(および開始剤)を用いる。
【0050】
図3において、支持体16を含むスタンプ5は、剥離によりマスター12から分離される。スタンプ5の支持体16は、支持体およびスタンプが、マスター12から分離するのに必要な曲げに耐えられるという点で十分に可撓性である。支持体16は、硬化したエラストマー層24と共に残って、ソフトリソグラフィー印刷法に関連したマイクロパターンおよびマイクロ構造を再生するのに必要な寸法安定性を備えたスタンプ5を与える。スタンプ5は、支持体16の反対側に、マスター12のレリーフパターン13のネガに対応するリセス表面28と隆起表面30とを有するレリーフ構造26を含む。レリーフ構造26には、隆起部分30とリセス部分28との間に高さの差、すなわち、レリーフ深さがある。スタンプ5のレリーフ構造26は、機能材料32を、基板34に印刷するための隆起表面30と、印刷されないリセス表面部分28とのパターンを形成する。
【0051】
図4において、スタンプ5は、機能材料32を、スタンプ5のレリーフ構造26に適用するための一実施形態として、スピンコーティングデバイスのプラットフォーム35にある。機能材料32は、スタンプ5のレリーフ構造26に適用され、プラットフォームを回転して、機能材料の比較的均一な連続層を形成する。スタンプ5への適用後、機能材料を乾燥して、室温での蒸発により、液体キャリアを除去する。
【0052】
図5において、機能材料32の層を有するスタンプ5と基板34とを、互いに近接配置して、スタンプ5の隆起表面30の機能材料が、基板34の表面38と接触するようにする。
【0053】
図6において、スタンプ5は、基板34から分離しており、基板と接触する機能材料32は基板上に残り、転写されて、機能材料のパターン40を形成する。基板34は、機能材料32のパターン40と機能材料のない開口領域42とを含む。基板34上にある機能材料32は、電子デバイスまたはコンポーネントのパターン40を作成する。
【0054】
本発明の方法は、少なくとも10メガパスカル(Mpa)の弾性率を有するエラストマースタンプを用いる。これによって、50ミクロン未満の解像度から少なくとも1〜5ミクロンと様々な機能材料の微細な特徴部を、基板上に形成する能力が与えられる。好適なライン解像度の機能材料のパターンを形成する本発明の方法の能力は、決してこれらに限られるものではないが、エラストマースタンプの材料の選択、印刷されている機能材料、機能材料の組成、本発明の方法が実施される条件等により影響される。電子デバイスおよびコンポーネントにおいて、最終用途に所望のライン解像度を与えるための最良の材料および条件を決めるのは、当業者にとって所定のことであると考えられる。
【実施例】
【0055】
用語
ITO 酸化インジウム錫
PFPE パーフルオロポリエーテル
THF テトラヒドロフラン
【0056】
特に断りのない限り、パーセンテージは全て合計組成物の重量基準である。
【0057】
実施例1
以下の実施例は、ポリフルオロポリエーテル(PFPE)製の印刷スタンプによる基板上への発光ポリマー(LEP)の印刷の実例である。
【0058】
印刷スタンプ作製
マスター作製:
厚さ1.5マイクロメートルの層のネガフォトレジストSU−8タイプ2(MicroChem(Newton,MA)製)を、3000rpmで60秒間シリコンウェハ上にコートした。コートされたフォトレジストフィルムを備えたウェハを、65℃で1分間加熱してから、95℃で1分間ベークして、フィルムを完全に乾燥した。ベークしたフィルムを、12秒間、I−ライナ(OAI Mask Aligner、Model200)中で365nmで、寸法が1〜5ミクロンのライン、スペースおよびスクエアのパターンを有するマスキングを通して露光し、65℃で1分間ポストベークした。95℃で1分間の最終ベーク後、露光したフォトレジストを、SU−8現像液で1分間現像し、イソプロピルアルコールで洗った。現像したフィルムを窒素で乾燥し、ウェハ上にパターンを形成し、スタンプのためのマスターとして用いた。
【0059】
スタンプ前駆体作製:
支持体を、UV硬化性の光学的に透明な接着剤、タイプNOA73(Norland Products;Cranbury,NJより購入)の層を、厚さ5ミクロンで、5ミル(0.0127cm)のMelinex(登録商標)561ポリエステルフィルム支持体上に、スピンコーティングにより、3000rpmで適用し、紫外線(350〜400nm)に、1.6ワット出力(20mワット/cm2)で、90秒間、窒素環境で露光により硬化することにより作製した。
【0060】
ポリフルオロポリエーテル化合物を、以下の手順により作製した。無水THF(100ml)中Solvay Solexsis(Thorofare,NJ)(10gr、0.005モル、1当量)およびBHT(1wt%FLK−D20 0.001gr)より購入したFLK−D20ジオールの溶液を、滴下漏斗、温度計、凝縮器およびN2パージアダプタを備えた三つ口丸底反応フラスコ(250ml)中で攪拌した。反応フラスコを、0℃まで、好ましくは氷水浴を用いて冷却した。トリエチルアミン(1.948gr、0.0193モル、3.85等量)を、THF中FLK−D20ジオールの溶液に、15分間にわたって滴下して添加した。反応を0℃に維持した。塩化アクリロイル(1.585gr、0.0185モル、3.5当量)を充填した第2の滴下漏斗に、溶液を60分間にわたって滴下して添加した。混合物の温度は、5℃を超えないようにした。厚い塩が、塩化アクリロイルの添加により沈殿した。混合物を10〜15℃まで、2時間にわたって暖めてから、室温とし、反応物をN2雰囲気下で一晩攪拌した。反応混合物を、500mlの蒸留水に注ぎ、2時間攪拌した。D20−DAを、水溶液から酢酸エチルまたは塩化メチレンにより抽出した。約83%の変換率であった。アルミナカラムを通して溶液を流すことにより、粗生成物を精製して、透明な無色の油を得た。調製したパーフルオロポリエーテル(プレポリマー)化合物の構造は下式のものであった。式中、アクリレート末端基(式中、XおよびX’はH)、不規則に供給されたパーフルオロメチレンオキシ(CF2O)およびパーフルオロエチレンオキシ(CF2CF2O)骨格繰り返しサブユニットの数を指定するmおよびnは、PFPE化合物の分子量が数平均で約2000となるようなものである。
【0061】
【化1】

【0062】
フッ素化開始剤を、以下の手順で、以下の反応に従って調製した。
【0063】
【化2】

【0064】
【表1】

【0065】
フッ素化光開始剤の調製手順:
500mLの丸底フラスコに、α−ヒドロキシメチルベンゾイン(20.14g)、トリエチルアミン(Fluka、8.40g)および塩化メチレン(100mL)を添加した。混合物を、正の窒素圧力下で、室温で磁気的に攪拌した。別のフラスコに、HFPOダイマーフッ化酸(32.98g)およびFreon−113(CFCl2CF2Cl,Aldrich、60mL)を添加した。酸フッ化物溶液を、攪拌しているα−ヒドロキシメチルベンゾイン溶液に、4〜5℃で30分間にわたって滴下して添加し、発熱反応を制御した。反応ポットを、添加完了後、2.5時間にわたって、室温で攪拌した。
【0066】
反応物を、4×500mL飽和NaCl溶液で洗った。有機層を、MgSO4で乾燥し、セリット/塩化メチレンパッドでろ過した。TLC分析によれば、少量の出発材料が粗生成物に残ったのが分かった。生成物を、真空中で濃縮し、ヘキサン(100mL)に溶解した。この溶液を、シリカゲルに事前吸収し、90:10ヘキサン:EtOAc溶離剤を用いて、シリカカラムを通して洗浄した。所望の生成物を、ジアステレオマー(33g、収率72%)の混合物である淡黄色油として分離した。
【0067】
PFPEジアクリレートプレポリマー(分子量約2000)および1重量%の調製したフッ素化光開始剤を混合し、0.45マイクロメートルPTFEフィルタでろ過し、PFPE感光組成物を形成した。
【0068】
PFPE感光組成物を、マスターとして用いるウェハの現像したフォトレジストパターン上に注ぐことにより、印刷スタンプを作製し、湿潤厚さ約25ミクロンの層を形成した。
【0069】
支持体を、マスターの反対の表面にあるPFPE組成物の層に適用し、接着剤が層と接触するようにした。PFPE層を、UV放射線に、10分間、365nmのI−ライナで露光して、PFPE層を硬化または重合して、スタンプを形成した。マスターから剥がすことにより、スタンプを分離したところ、マスターのパターンに対応するレリーフ表面を有していた。
【0070】
弾性率試験方法:
印刷スタンプの弾性率を、Hysitron TriboIndenter(MN、Minneapolis、Hysitron Inc.,)で測定し、OliverおよびPharr、J.Mater.Res.7,1564(1992年)に記載された試験方法に従って求めた。TriboIndenterは、Berkovichダイアモンドインデンターを備えており、エラストマースタンプの試料にインデンテーションを行った。各スタンプについて、最大負荷100マイクロニュートンまで、少なくとも2組の25のインデンテーションを実施した。表面の影響および基板との相互作用は、測定した表面粗さに、11回以上、試料の合計厚さの10%以下インデンテーションすることにより最小とした。各セットのインデンテーションは、10um離れており、セットは少なくとも1mm分離されていた。インデンテーションを、5−2−5負荷関数を用いて行った。5秒負荷を加え、2秒保持(負荷をかけて、閉ループフィードバックを制御)して、ヒステリシス/クリープの影響を減じてから、5秒負荷をかけない状態とした。負荷/負荷なし曲線を、OliverおよびPharrの方法に従って得て、弾性率を求めた。トップから5%〜ボトムから20%まで曲線の負荷なし部分の75パーセントを計算に用いて、弾性率を求めた。この方法を用いたナノインデンテーションデータの分析に必要なインデンター面積関数を、縮合シリカ中で一連のインデントを用いて計算した。
【0071】
印刷スタンプの弾性率は、20メガパスカルであった。
【0072】
基板への発光ポリマー(LEP)の乾式転写印刷:
基板は、NeoVac Company(CA、Santa Rosa)より購入し、厚さ5ミルのMylar(登録商標)ポリエチレンテレフタレート支持体上に、シート抵抗70オーム/□の酸化インジウム錫(ITO)を有していた。
【0073】
LEPは、COVION(登録商標)Super NRS−PPV(Merck製)であった。トルエン中0.5重量%のSuper NRS−PPV溶液を、窒素ドライボックス中で調製し、PTFE1.5ミクロンフィルタでろ過した。LEPの構造は以下のとおりである。
【0074】
【化3】

【0075】
NRS−PPV溶液を、PFPEスタンプのレリーフ表面上に、4500rpmでスパンコートして、スタンプ上の乾燥フィルムをコートし、形成した。スタンプのレリーフ表面は、最上平坦面をそれぞれ有する隆起部分と、最下平坦面をそれぞれ有するリセス部分とを含んでいた。溶液を、隆起部分の最上面と、リセス部分の最下面にコートした。
【0076】
PFPEスタンプの隆起部分の最上面にある乾燥したNRS−PPVは、隆起部分を、基板のITO表面に接触印刷することにより転写され、基板上に、超NRS−PPV発光ポリマーのパターンを作成する。超NRS−PPVの厚さは、28nmであった。LEPの印刷パターンの解像度は5ミクロン以下であった。
【0077】
実施例2
以下の実施例は、PFPE製の印刷スタンプによる基板上への他の発光ポリマー(LEP)の印刷の実例である。
【0078】
マスターおよびPFPEスタンプを、実施例1に記載したようにして作製した。
【0079】
基板上へのLEPの印刷:
LEP溶液は、Hoechst製のポリ(p−フェニレンビニレン)誘導体であるOC1−C10であった。以下の構造を有している。
【0080】
【化4】

【0081】
THF/トルエン(50/50v/v)中OC1−C10の0.5重量%溶液を調製し、窒素ドライボックス中で維持した。溶液を、PFPEスタンプのレリーフ表面上に、4500rpmで、乾燥窒素雰囲気中スパンコートして、スタンプ上の層として、OC1−C10をコートし乾燥した。
【0082】
用いた基板は、実施例1に記載した基板と同じであった。PFPEの隆起部分の最上面にあるOC1−C10は、基板のITO表面上に接触転写により印刷された。転写は、65℃に維持されたホットプレート上に、乾燥窒素雰囲気下で、ITO基板を置き、スタンプに僅かの圧力を適用することによりなされた。OC1−C10発光ポリマーのパターンを、スタンプの隆起部分のパターンに従って基板上に作成した。
【0083】
基板上の印刷したOC1−C10フィルム層の厚さは、32nmであった。LEPの印刷パターンの解像度は、10ミクロン未満であった。
【0084】
実施例3
以下の実施例は、PFPE製の印刷スタンプによる基板上への誘電体材料の印刷の実例である。
【0085】
印刷された誘電体材料は、Elvacite(登録商標)2042、ポリ(エチルメタクリレート)およびElvacite(登録商標)2045、ポリ(ブチルメタクリレート)(両者共Lucite International製)であった。基板は、厚さ約3000オングストロームのSiO2の層を有するシリコンウェハであった。
【0086】
実施例3の両方の印刷試料について、マスターおよびPFPEスタンプを、分子量約1000の異なるPFPE化合物および異なる光開始剤を用いた以外は、実施例1に記載したようにして作製した。
【0087】
パーフルオロポリエーテル化合物E10−DAは、Sartomerより製品タイプCN4000として供給され、受け取ったままの状態で用いた。E10−DAは、式R−E−CF2−O−(CF2−O−)n(−CF2−CF2−O−)m−CF2−E’−R’の構造を有し、式中、RおよびR’はそれぞれアクリレートであり、Eは、(CH2CH2O)1-2CH2の鎖状非フッ素化ハイドロカーボンエーテルであり、E’は、(CF2CH2O(CH2CH2O)1-2の鎖状ハイドロカーボンエーテルであり、分子量約1000である。光開始剤は、Darocur1173(Switzerland,BaselのCiba Specialty Chemicals製)であった。Darocur1173の構造は次のとおりである。
【0088】
【化5】

【0089】
PFPEジアクリレートプレポリマーE10−DAおよび1wt%Darocur1173光開始剤を混合し、ろ過して、印刷スタンプを作成するのに用いたPFPE組成物を形成した。
【0090】
印刷スタンプの弾性率を、実施例1に記載したようにして測定した。印刷スタンプの弾性率は、40メガパスカルであった。
【0091】
基板へのElvacite2042ポリ(エチルメタクリレート)の印刷:
溶剤としての塩化メチレン中ポリ(エチルメタクリレート)の1wt%溶液を、2000rpmで60秒間、PFPEスタンプのレリーフ表面上にスパンコートした。
【0092】
塩化メチレンが非常に低沸点であるため、溶剤は、フィルムのスピニング中完全に蒸発した。ポリ(エチルメタクリレート)のフィルムが、スタンプのレリーフ表面に残った。フィルムを備えたスタンプのレリーフ表面は、ウェハのSiOx表面に近接配置し、65℃で、適度な圧力を基板上のスタンプに適用した。フィルムが、レリーフの隆起部分の最上面からの接触転写により印刷された。基板からスタンプを分離したところ、誘電体フィルムのパターンが基板に転写された。
【0093】
ポリ(エチルメタクリレート)の転写フィルムの厚さは、約0.125マイクロメートルであった。ポリ(エチルメタクリレート)の印刷パターンの解像度は、50ミクロン以下であった。
【0094】
基板上へのElvacite2045ポリ(エチルメタクリレート)の印刷:
溶剤としてのクロロホルム中ポリ(ブチルメタクリレート)の1wt%溶液を、2000rpmで60秒間、PFPEスタンプのレリーフ表面上にスパンコートした。
【0095】
上述したように、溶剤が完全に蒸発したら、ポリ(ブチルメタクリレート)のフィルムが、スタンプのレリーフ表面に残った。フィルムを備えたスタンプのレリーフ表面は、ウェハのSiOx表面に近接配置し、65℃で、適度な圧力(約0.5ポンド/cm2)を基板上のスタンプに適用した。フィルムが、レリーフの隆起部分の最上面からの転写により印刷された。基板からスタンプを分離したところ、ポリ(エチルメタクリレート)のパターンが基板に転写された。クロロホルムから鋳造されたポリ(ブチルメタクリレート)の転写フィルムの厚さは、約70ナノメートルであった。ポリ(ブチルメタクリレート)の印刷パターンの解像度は、50ミクロン以下であった。
【0096】
実施例4
以下の実施例は、PFPEスタンプを用いた、基板上へのAldrich製誘電体材料、ポリ2−ビニルピリリドン(分子量20,000)の印刷の実例である。基板は、SiO2の層(3000オングストローム)を有するシリコンウェハであった。
【0097】
マスターおよびPFPEスタンプを、実施例1に記載したようにして作製した。
【0098】
基板上の誘電体材料の染料転写印刷:
クロロホルム中ポリ(2−ビニルピロリドン)の1重量%溶液を、2000rpmで60秒間、PFPEスタンプのレリーフ表面上にスパンコートした。クロロホルムは、スピニング中蒸発して、スタンプのレリーフ表面の隆起部分とリセス部分に2−ビニルピロリドンのフィルムが残った。フィルムを備えたスタンプのレリーフ表面を、ウェハのSiO2表面に近接配置して、室温で、適度な圧力を基板上のスタンプに適用した。フィルムは、レリーフの隆起部分の最上面から印刷されて、ポリ(2−ビニルピロリドン)のパターンを基板上に形成した。基板からスタンプを分離したところ、ポリ(2−ビニルピロリドン)フィルムが、PFPEスタンプから、シリコンウェハのSiO2表面に転写された。
【0099】
ポリ(2−ビニルピロリドン)の転写フィルムの厚さは、ウェハ上で約47nmであった。ポリ−2−ビニルピロリドンの印刷パターンの解像度は、5ミクロン以下であった。
【0100】
実施例5
以下の実施例は、PFPEスタンプを用いた、基板上への誘電体材料の印刷の実例である。
【0101】
誘電体材料は、Aldrich製ポリヒドロキシスチレン(PHS)(分子量約20,000)であった。基板は、SiO2の層(3000オングストローム)を有するシリコンウェハであった。
【0102】
マスターおよびPFPEスタンプを、実施例1に記載したようにして作製した。
【0103】
基板上の誘電体材料の染料転写印刷:
THF中PHSの5重量%溶液を、2000rpmで60秒間、PFPEスタンプのレリーフ表面上にスパンコートした。THF溶液中の溶剤は、スピンコーティング中に蒸発して、スタンプのレリーフ表面の少なくとも隆起部分にPHSのフィルムが残った。フィルムを備えたスタンプのレリーフ表面を、ウェハのSiO2表面に近接配置して、65℃で、適度な圧力(約0.5ポンド/cm2)を、スタンプの支持体側に加えて、フィルムを基板と接触させた。乾燥フィルムを、レリーフスタンプの隆起部分の最上面の接触転写により印刷した。基板からスタンプを分離したところ、PHSのパターン化フィルムが、シリコンウェハのSiO2表面に転写された。
【0104】
PHSの転写フィルムの厚さは、約290nmであった。PHSの印刷パターンの解像度は50ミクロン以下であった。
【0105】
実施例6
以下の実施例は、PFPEスタンプを用いた、基板上への半導体材料の印刷の実例である。
【0106】
半導体材料は、Aldrich製ポリチオフェンであった。基板は、SiO2の層(3000オングストローム)を有するシリコンウェハであった。
【0107】
マスターおよびPFPEスタンプを、実施例1に記載したようにして作製した。
【0108】
基板上の半導体材料の染料転写印刷:
クロロホルム中ポリチオフェンの1.2重量%溶液を、2000rpmで60秒間、PFPEスタンプのレリーフ表面上にスパンコートした。ポリチオフェン溶液中の溶剤は、スピニング中に蒸発して、スタンプのレリーフ表面にポリチオフェンのフィルムが残った。乾燥フィルムを備えたスタンプのレリーフ表面を、ウェハのSiO2表面に近接配置して、60℃で、適度な圧力(約0.5ポンド/cm2)を、スタンプの支持体側に加えて、フィルムを基板と接触させた。フィルムを、レリーフの隆起部分の最上面の基板との接触転写により印刷した。基板からスタンプを分離したところ、転写により、ポリチオフェンフィルムのパターンが、シリコンウェハのSiO2表面上に形成された。
【0109】
ポリチオフェンの転写フィルムの厚さは、約290nmであった。ポリチオフェンの印刷パターンの解像度は50ミクロン以下であった。
【0110】
実施例7
以下の実施例は、PFPEスタンプを用いた、基板上への誘電体材料の印刷の実例である。
【0111】
誘電体材料は、DuPont製ポリアニリンジノニルナフタレンスルホン酸(PANI/DNNSA)であった。基板は、SiO2の層(3000オングストローム)を有するシリコンウェハであった。
【0112】
マスターおよびPFPEスタンプを、実施例1に記載したようにして作製した。
【0113】
基板上の導体材料の染料転写印刷:
キシレン中PANI/DNNSAの15重量%溶液を、2000RPMで60秒間、PFPEスタンプのレリーフ表面上にスパンコートした。PANI/DNNSA溶液中の溶剤は、スピニング中に蒸発して、スタンプのレリーフ表面の隆起部分およびリセス表面にPANI/DNNSAのフィルムが残った。フィルムを備えたスタンプのレリーフ表面を、ウェハのSiO2表面に近接配置して、65℃で、適度な圧力を、スタンプの支持体側に加えて、フィルムを基板と接触させた。フィルムを、レリーフ表面の隆起部分の最上面の接触転写により印刷した。基板からスタンプを分離したところ、PANI/DNNSAのパターン化フィルムが、PFPEスタンプから、シリコンウェハのSiO2表面に転写された。
【0114】
PANI/DNNSAの転写フィルムの厚さは、約290nmであった。PANI/DNNSAの印刷パターンの解像度は50ミクロンであった。
【0115】
実施例8A
以下の実施例は、PFPEスタンプを用いた、基板上への導体材料の印刷の実例である。
【0116】
導体材料は、ANP(South Korea)製の粒径10nmの銀粉末であるSilverjet DGH50であった。基板は、5ミルのMelinex(登録商標)ポリエステルフィルムタイプST504であった。
【0117】
マスターおよびPFPEスタンプを、実施例1に記載したようにして作製した。PFPEスタンプの弾性率は、20メガパスカルであった。
【0118】
基板上の導体材料の染料転写印刷:
9.9グラムのSilverjet DGH50および0.1グラムのElvacite(登録商標)タイプ2028、メタクリレートコポリマー(Lucite製)の分散液を、40グラムのトルエンと混合して、10分間、チップ超音波印加装置により、超音波印加した。分散液を、0.45ミクロンのPTPEフィルタで2回ろ過した。ろ過した分散液を、PFPEスタンプのレリーフ表面上に、60秒間スパンコートした。分散液の溶剤は、スピニング中に蒸発して、スタンプのレリーフ表面の隆起部分およびリセス表面に銀およびElvacite2028のフィルムが残った。銀フィルムを備えたスタンプのレリーフ表面を、Melinex(登録商標)フィルムに近接配置して、65℃で、適度な圧力を、スタンプの支持体側に加えて、フィルムを基板と接触させた。フィルムを、レリーフの隆起部分の最上面から基板まで接触転写により印刷した。基板からスタンプを分離したところ、銀のパターンが、基板上に形成された。
【0119】
基板上の銀パターンを、140℃で48時間、焼成および焼結した。銀フィルムのシート抵抗を、2オーム/□まで減じた。
【0120】
パターン化された銀の転写フィルムの厚さは、約70nmであった。銀の印刷パターンの解像度は5ミクロン以下であった。
【0121】
比較例8B
以下の例は、PDMSスタンプを用いた、基板上への導体材料の印刷の実例である。
【0122】
ポリジメチルシロキサン(PDMS)のスタンプを、PFPEスタンプについて用いたのと同じマスターを用いて、次のようにして作製した以外は、実施例8Aを繰り返した。
【0123】
PDMSスタンプ作製:
Sylgard184、ポリジメチルシロキサンおよび硬化剤(両者共Dow Corning製)を、10:1の比で混合した。混合物を脱気して、フォトレジストパターン化シリコンウェハマスター上に注いだ。厚さ5ミルのポリエステルバッキングMelinex(登録商標)561(DuPont製)を適用した後、プレポリマーを、65℃で120分間加熱することにより、硬化した。ポリエステル支持体上の硬化したPDMSのスタンプを、マスターから分離した。
【0124】
印刷スタンプの弾性率を、実施例1に記載したようにして測定した。PDMS印刷スタンプの弾性率は、5.6メガパスカルであった。
【0125】
基板上の導体材料の染料転写印刷:
PFPEスタンプで用いた、銀組成物の適用、乾燥および銀のフィルムおよびElvacite2028の印刷について同じ手順を、PDMSスタンプについて繰り返した。圧力適用の際に、銀フィルムが、PDMSスタンプから剥がれて、銀材料を、隆起部分とリセス部分との両方から、基板に転写し、銀材料のパターンが、基板上に形成されないようにした。銀材料を、上述したように焼成および焼結し、未パターン化フィルムのシート抵抗を、2.2オーム/□まで減じた。
【0126】
実施例9
以下の実施例は、PFPEスタンプを用いた、小分子の乾燥印刷の実例である。
【0127】
マスターおよびPFPEスタンプを、実施例1に記載したようにして作製した。
【0128】
基板上の小分子の染料転写印刷:
塩化メチレン中、ブリリアントグリーン染料材料(MW482.65)(Aldrich製、CAS番号[633−03−4])の5%溶液を調製した。溶液を、PFPEスタンプ上に、3000rpmでスパンコートし、スタンプ上の溶液を乾燥した。スタンプのレリーフ表面は、最上平坦面をそれぞれ有する隆起部分と、最下平坦面をそれぞれ有するリセス部分とを含んでいた。溶液を、隆起部分の最上面と、リセス部分の最下面にコートした。
【0129】
PFPEスタンプの隆起部分の最上面の乾燥材料の乾燥したフィルムを、適度な圧力(約0.5ポンド/cm2)を加えることにより、隆起部分の接触印刷により、65℃で、Melinex(登録商標)504ポリエステルフィルムの基板に転写した。基板からスタンプを分離したところ、レリーフパターンの最上面の乾燥フィルムが、基板に転写され、染料フィルムのパターンが形成された。
【0130】
転写された染料フィルムの厚さは、約50nmであった。染料の構造は、以下の式の右手側に見られる。
【0131】
【化6】

【0132】
実施例10
以下の実施例は、DNAの基板上への乾燥印刷の実例である。マスターおよびPFPEスタンプを、実施例1に記載したようにして作製した。
【0133】
デオキシリボ核酸(DNA)溶液の調製:
高重合DNA(サロモン試験、Sigma−Aldrich Biochemical)(0.200g)を、2回蒸留水(40mL)に添加した。得られた混合物を、下垂プラットフォームで、24時間にわたって緩やかに攪拌したところ、約0.5重量パーセントの濃度の粘性の均一な溶液が得られた。得られた溶液のアリコート(20ml)を、2回蒸留水(80ml)で希釈したところ、約0.1重量パーセントの濃度の第2の溶液が得られた。0.1wt%のDNA溶液を、さらに12時間にわたって緩やかに攪拌したところ、スピンコーティング手順で用いるまで、暗所に4℃で保管した。
【0134】
DNAの染料転写印刷:
上述した0.1wt%のDNA溶液を、PFPEスタンプ上に、3000RPMでスパンコートして、スタンプのレリーフ構造に乾燥フィルムをコートし、形成した。スタンプのレリーフ表面は、最上平坦面をそれぞれ有する隆起部分と、最下平坦面をそれぞれ有するリセス部分とを含んでいた。溶液を、隆起部分の最上面と、リセス部分の最下面にコートした。
【0135】
スタンプの最上面の乾燥したDNAフィルムは、適度な圧力(約0.5ポンド/cm2)を加えることにより、Melinex(登録商標)タイプ504ポリエステルフィルムの基板上の隆起部分の直接印刷により、65℃で転写された。基板からスタンプを分離したところ、DNAフィルムが、PFPEスタンプに転写されて、基板上にパターンが形成された。
【0136】
印刷されたDNAは、その二本鎖を保持していた。DNAは、次のいくつかのプローブの存在で蛍光を発する。(1)臭化エチジウム(二重らせん挿入剤)および(2)DAPI(二重らせん溝結合剤)。これらの定性的なプローブに基づく結果によれば、「印刷」バイオポリマーについて二重(二本鎖)形状が保持されたことが分かる。
【0137】
DNAの印刷パターンのライン解像度は5ミクロン以下であった。
【0138】
実施例11
以下の実施例は、PFPE製の印刷スタンプによる基板上へのフッ素含有モノマーの印刷の実例である。
【0139】
マスターおよびPFPEスタンプを、実施例1に記載したようにして作製した。
【0140】
基板へのフッ素含有モノマーの印刷:
フッ素含有モノマーは、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,12−ヘネイコサフルオロ−ドデシルアクリレート(Aldrich製、CAS番号[17741−60−5])、以降ヘネイコサフルオロ−ドデシルアクリレートと呼ばれ、以下の構造を有している。
【0141】
【化7】

【0142】
式CF3CFHCFHCF2CF3のVertrel(登録商標)XF(DuPont製)中ヘネイコサフルオロ−ドデシルアクリレートの3重量%溶液を、ヘネイコサフルオロ−ドデシルアクリレートに基づいて、実施例1のフッ素化開始剤1wt%により調製した。溶液を、PFPEスタンプのレリーフ表面上に、2000rpmで、20秒間、3回スパンコートした。
【0143】
基板を、正孔輸送材料ポリマーを、Corning1737ガラス(Corning Inc.製)に、3000rpmでスピンコーティングし、260℃で15分間熱硬化することにより作製した。正孔輸送材料ポリマーは、フルオレン−トリアリールアミンコポリマーであり、以下の構造を有している。
【0144】
【化8】

【0145】
式中、a:b:cの比率は約35:50:15で、Mnは約26,000で、Mwは約89,000であった。正孔輸送材料ポリマーの出発材料は以下のとおりである。
aは、9,9−ジオクチル−2,7−ジブロモフルオレンであった。
bは、N,N’−ビス(4−ブロモmフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジンであった。
cは、2,7−ジブロモ−9,9’−(ビニルベンジル)−フルオレンであった。
【0146】
ポリマーは、Yamamoto,Progress in Polymer Science,Vol.17,p1153(1992年)に記載されている合成方法により作製した。モノマー単位のジハロ誘導体を、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)等の化学量論の0価のニッケル化合物と反応させる。
【0147】
層、材料、部材または構造を指すとき、「正孔輸送」という用語は、かかる層、材料、部材または構造が、かかる層、材料、部材または構造の厚さを通して、比較的効率的に、かつ電荷の喪失を少なくして、正電荷の移動を促すことを意味している。
【0148】
PFPEの隆起部分の最上面にあるヘネイコサフルオロ−ドデシルアクリレートは、正孔輸送層を有する基板表面への接触転写により印刷された。転写は、室温で実施され、スタンプに圧力を適用せずに、ヘネイコサフルオロ−ドデシルアクリレートのパターンを基板上に形成した。基板からスタンプを分離した後、パターン化されたヘネイコサフルオロ−ドデシルアクリレートを、10分間、I−ライナ(17mW/cm2、OAI)を用いて、窒素環境中でUV露光して、モノマーを基板上で硬化させた。ヘネイコサフルオロ−ドデシルアクリレートのパターンを、スタンプの隆起部分のパターンに従って、基板のコート表面に作成した。
【0149】
基板上の印刷されたヘネイコサフルオロ−ドデシルアクリレート層の厚さは、2nmであった。ヘネイコサフルオロ−ドデシルアクリレートの印刷されたパターンの解像度は、5ミクロン未満であった。ナノメートルの解像度が、バリア層の印刷用に、この方法で達成できるものと考えられる。
【0150】
実施例12
以下の実施例は、弾性率が10.5メガパスカルのポリフルオロポリエーテル製のスタンプによる基板上への有機発光ポリマー材料の印刷の実例である。
【0151】
この例について、マスターおよびPFPEスタンプを、分子量4000の異なるPFPE化合物を用いた以外は、実施例1に記載したようにして作製した。
【0152】
ポリオロポリエーテル化合物D40−DAは、Sartomerより供給され、受け取ったままの状態で用いた。作製されたポリフルオロポリエーテル化合物(プレポリマー)は、実施例1で示した式の構造を有していた。式中、アクリレート末端基(式中、XおよびX’はHである)、不規則に供給されたパーフルオロメチレンオキシ(CF2O)およびパーフルオロエチレンオキシ(CF2CF2O)骨格繰り返しサブユニットの数を指定するmおよびnは、PFPE化合物の分子量が数平均で約4000となるようなものである。用いた光開始剤は、実施例3に記載したDarocur1173であった。
【0153】
パーフルオロポリエーテルプレポリマー(分子量4000)および1wt%の光開始剤を混合して、ろ過し、PFPE感光性組成物を形成した。印刷スタンプを、実施例1に記載したPFPE光開始剤から作製した。
【0154】
印刷スタンプの弾性率は、実施例1に記載したとおりにして測定した。印刷スタンプの弾性率は、10.5メガパスカルであった。
【0155】
ST504基板上への有機発光ポリマー(OLEP)の印刷:
Covion Super−Yellow(登録商標)、置換ポリフェニレン−ビニレン1−4コポリマー(Merck製)(以降OLEP)の1wt%溶液を、溶剤としてのトルエン中に溶解し、4000rpmで、60秒間、PFPEスタンプのレリーフ表面上にスパンコートした。溶剤は、フィルムのスピニング中完全に蒸発した。OLEPの50nmのフィルムが、スタンプのレリーフ表面に残った。基板は、5ミルのMelinex(登録商標)フィルムタイプST504であった。フィルムを備えたスタンプのレリーフ表面は、ST504フィルムのアクリルコート側に、65℃で、近接配置した。フィルムが、レリーフの隆起部分の最上面からの接触転写により印刷された。基板からスタンプを分離したところ、OLEPフィルムのパターンが基板に転写された。
【0156】
OLEPの転写フィルムの厚さは、約50nmであった。OLEPの印刷パターンの解像度は、5ミクロン以下で、ライン間の分離は2ミクロンであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能材料のパターンを基板上に形成する方法であって、
a)隆起表面を備えたレリーフ構造を有し、弾性率が少なくとも10メガパスカルであるエラストマースタンプを準備し、
b)機能材料と液体とを含む組成物を前記レリーフ構造に適用し、
c)少なくとも前記隆起表面に前記機能材料のフィルムが十分に形成されるように、前記レリーフ構造上の前記組成物から前記液体を除去し、
d)前記機能材料を前記隆起表面から基板に転写する
ことを含む方法。
【請求項2】
前記基板上の前記機能材料の厚さが10〜10000オングストロームである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
転写する工程が、前記スタンプの前記隆起表面を、約5ポンド/cm2未満の圧力で前記基板と接触させることを含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記機能材料が、導体材料、半導体材料、誘電体材料、小分子材料、バイオ系材料およびこれらの組み合わせからなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記機能材料が、電気的活性材料、光活性材料および生物学的活性材料からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記機能材料が、絶縁材料、平坦化材料、バリア材料および閉じ込め材料からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記機能材料が1種以上のフッ素化化合物を含み、前記方法が、前記基板上の前記フッ素化化合物の前記パターンを化学線に露光する工程e)をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記機能材料が、有機染料、半導体分子、蛍光発色団、りん光発色団、薬理活性化合物、生物学的活性化合物、触媒活性を有する化合物およびこれらの組み合わせからなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記機能材料が、フォトルミネッセンス材料、エレクトロルミネッセンス材料およびこれらの組み合わせからなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記機能材料が、デオキシリボ核酸(DNA)、蛋白質、ポリ(オリゴ)ペプチドおよびポリ(オリゴ)サッカリドからなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記機能材料が、導体材料、半導体材料および誘電体材料からなる群から選択されるナノ粒子を含む請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ナノ粒子の直径が約3〜100nmである請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記機能材料がナノ粒子の形態にあり、前記液体の除去により不連続フィルムが形成される請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記機能材料が導体材料のナノ粒子を含み、前記方法が、前記基板上の前記ナノ粒子を焼結して、導体材料の連続フィルムを形成する工程e)をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項15】
焼結が、前記ナノ粒子を約220℃までの温度に加熱することを含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記機能材料が、銀、金、銅、パラジウム、酸化インジウム錫およびこれらの組み合わせからなる群から選択される導体材料である請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記機能材料が、シリコン、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、酸化亜鉛、セレン化亜鉛およびこれらの組み合わせからなる群から選択される半導体材料である請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記機能材料が量子ドットである請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記機能材料が、カーボンナノチューブ、導体カーボンナノチューブ、半導体カーボンナノチューブおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記除去工程c)が前記組成物を加熱することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記除去工程c)が、前記組成物上にガスストリームを吹きつけることによる請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記除去工程c)が蒸発による請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記エラストマースタンプが、シリコーンポリマー、エポキシポリマー、共役ジオレフィンハイドロカーボンのポリマー、A−B−A型ブロックコポリマーのエラストマーブロックコポリマー(Aは非エラストマーブロックを表し、Bはエラストマーブロックを表す)、アクリレートポリマー、フルオロポリマー、重合可能なフッ素化化合物およびこれらの組み合わせからなる群から選択される組成物の層を含む請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記エラストマースタンプを、感光性組成物の層から形成することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記エラストマースタンプを、化学線に露光することにより重合可能なフッ素化化合物を含む組成物の層から形成することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記フッ素化化合物が、パーフルオロポリエーテル化合物である請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記エラストマースタンプが、可撓性フィルムの支持体をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記エラストマースタンプの弾性率が、10メガパスカルを超える請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記基板が、プラスチック、ポリマーフィルム、金属、シリコン、ガラス、ファブリック、紙およびこれらの組み合わせからなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記パターンが前記基板上の層に転写され、前記基板上の前記層が、プライマー層、電荷注入層、電荷輸送層および半導体層からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記液体が、有機化合物および水性化合物からなる群から選択される1種以上の化合物を含む請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記液体が、1種以上のキャリア化合物を含む請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記液体が、前記機能材料用の1種以上の溶剤を含む請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記液体が、前記機能材料用の2種以上の溶剤を含み、前記液体を前記組成物から除去することにより、前記機能材料が凝集される請求項1に記載の方法。
【請求項35】
前記液体が、前記機能材料用の2種以上の溶剤を含み、前記液体を前記組成物から除去することにより、前記機能材料が適合される請求項1に記載の方法。
【請求項36】
転写の前に、前記フィルムを、気化状態の化合物に露出することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項37】
前記パターンが、前記基板のセルまたはチャネル用のバリア壁を形成する請求項1に記載の方法。
【請求項38】
前記セルまたはチャネルに、発光材料、ソース材料、ドレイン材料およびカラーフィルタ用の着色材料からなる群から選択される第2の材料の溶液を供給することをさらに含む請求項37に記載の方法。
【請求項39】
請求項1に記載の方法により作製された要素。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−505264(P2010−505264A)
【公表日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530358(P2009−530358)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【国際出願番号】PCT/US2007/019653
【国際公開番号】WO2008/042079
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】