基板処理装置及び半導体装置の製造方法
【課題】処理面近傍に形成する磁場の強度を変更しても処理面近傍に均一な磁場を形成することが可能であり基板上に成膜する磁性薄膜の磁気異方性を良好に揃える。
【解決手段】基板を処理する処理室と、処理室内で基板を支持する基板支持部と、基板支持部に支持された基板の処理面に磁性薄膜を成膜する成膜機構と、基板支持部に支持された基板の処理面に対して該処理面を側方から挟むように互いに対向して配置される一対の磁気部と、処理室内のガス雰囲気を排気するガス排気部と、を備えている。磁気部は、複数の磁気体がそれぞれ配列してなり、基板の中心部を挟む磁気体の配列間隔が、基板の外縁部を挟む磁気体の配列間隔よりも大きく設定されている。
【解決手段】基板を処理する処理室と、処理室内で基板を支持する基板支持部と、基板支持部に支持された基板の処理面に磁性薄膜を成膜する成膜機構と、基板支持部に支持された基板の処理面に対して該処理面を側方から挟むように互いに対向して配置される一対の磁気部と、処理室内のガス雰囲気を排気するガス排気部と、を備えている。磁気部は、複数の磁気体がそれぞれ配列してなり、基板の中心部を挟む磁気体の配列間隔が、基板の外縁部を挟む磁気体の配列間隔よりも大きく設定されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理する基板処理装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気抵抗素子メモリ(MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory))等の半導体装置の製造工程の一工程として、例えばCoFeB膜等の磁性薄膜を基板上に形成する基板処理工程が実施されてきた。係る工程を実施する従来の基板処理装置は、基板を処理する処理室と、前記処理室内で前記基板を支持する基板支持部と、前記基板支持部に支持された前記基板の処理面に磁性薄膜を成膜する成膜機構と、前記基板支持部に支持された前記基板の処理面に対して該処理面を側方から挟むように対向して配置される磁気部と、前記処理室内のガス雰囲気を排気するガス排気部と、を備えて構成されている。
【0003】
磁性薄膜を前記基板の前記処理面に成膜する際には、磁性薄膜を構成する粒子を前記成膜機構から前記基板の前記処理面に向けて照射する。この際、前記磁気部により前記基板の前記処理面近傍に均一な磁場を形成する。前記成膜機構から前記基板の前記処理面に向けて照射される粒子は、前記処理面近傍に形成された均一な磁場による作用を受ける。その結果、前記磁性薄膜の磁区(磁力を持った結晶集合体)の磁極方向を揃えることができ、磁性薄膜の磁気異方性を揃えることができる(例えば特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−163058号公報
【特許文献2】特開昭63−302612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の基板処理工程では、例えば磁気抵抗素子メモリの仕様変更や特性向上のため、前記基板上に成膜する磁性薄膜の種類を変える場合がある。その場合、成膜する磁性薄膜の種類に応じて、処理面近傍に形成する磁場の強度を変更する場合がある。
【0006】
しかしながら、上述の基板処理装置では、処理面近傍に形成する磁場の強度を変更すると、前記磁場の均一性が低下してしまう場合があった。その結果、前記基板上に成膜する磁性薄膜の磁気異方性を揃えることが困難となってしまう場合があった。
【0007】
本発明は、処理面近傍に形成する磁場の強度を変更しても処理面近傍に均一な磁場を形成することが可能であり、基板上に成膜する磁性薄膜の磁気異方性を良好に揃えることが可能な基板処理装置及び半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、基板を処理する処理室と、前記処理室内で前記基板を支持する基板支持部と、前記基板支持部に支持された前記基板の処理面に磁性薄膜を成膜する成膜機構と、前記基板支持部に支持された前記基板の前記処理面に対して該処理面を側方から挟むように互いに対向して配置される一対の磁気部と、前記処理室内のガス雰囲気を排気するガス排気部と、を備え、前記磁気部は複数の磁気体がそれぞれ配列してなり、前記基板の中心部を挟む前記磁気体の配列間隔が、前記基板の外縁部を挟む前記磁気体の配列間隔よりも大きく設定されている基板処理装置が提供される。
【0009】
本発明の他の態様によれば、処理室内に搬入した基板を基板支持部により支持する工程と、前記基板支持部に支持された前記基板の処理面に対して該処理面を側方から挟むように互いに対向して配置される一対の磁気部であって、前記磁気部は複数の磁気体がそれぞれ配列してなり、前記基板の中心部を挟む前記磁気体の配列間隔が、前記基板の外縁部を挟む前記磁気体の配列間隔よりも大きく設定されるように前記磁気体がそれぞれ複数配置され、前記磁気体間であって少なくとも前記基板の前記処理面近傍に磁場を形成した状態で、ガス排気部から前記処理室内のガス雰囲気を排気しつつ、成膜機構により前記基板の前記処理面に磁性薄膜を成膜する工程と、を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る基板処理装置及び半導体装置の製造方法によれば、処理面近傍に形成する磁場の強度を変更しても処理面近傍に均一な磁場を形成することが可能であり、基板上に成膜する磁性薄膜の磁気異方性を良好に揃えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る基板処理装置の概略構成図である。
【図2】図1の基板処理装置の側面断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る第1の処理炉の断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る第1の処理炉を図3のA方向からみた断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る第1の処理炉を図3のB方向からみた断面図である。
【図6】(a)は本発明の第1の実施形態に係るターゲット保持機構の平面図であり、(b)は図6(a)に示すターゲット保持機構の断面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係るミリング用イオン供給部及びスパッタ用イオン供給部が備える各種電極の平面図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係るイオンミリング工程の様子を示す概略図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る磁性薄膜形成工程の様子を示す概略図である。
【図10】本発明の第1の実施形態に係る磁気部及びウエハの平面図である。
【図11】本発明の第1の実施形態に係る磁気部及びウエハの断面図である。
【図12】本発明の第1の実施形態に係る磁気部を構成している小片磁石の配列の説明図である。
【図13】本発明の第1の実施形態に係る磁気部によりウエハの処理面近傍に形成される磁場の平面方向における強度分布の解析例である。
【図14】本発明の第1の実施形態に係る磁気部によりウエハの処理面近傍に形成される磁場の垂直方向における強度分布の解析例である。
【図15】本発明の第1の実施形態に係る磁気部によりウエハの処理面近傍に形成される磁場偏向角のウエハ中心からの距離依存性を示すグラフ図である。
【図16】長尺な磁石として形成された従来の磁気部及びウエハの平面図である。
【図17】長尺な磁石として形成された従来の磁気部によりウエハの処理面近傍に形成される磁場の平面方向における強度分布の解析例である。
【図18】(a)はウエハの処理面近傍に磁場を形成することなく成膜した磁性薄膜内の各磁区の磁極方向を例示する概略図であり、(b)はウエハの処理面近傍に均一な磁場を形成しつつ成膜した磁性薄膜内の各磁区の磁極方向を例示する概略図である。
【図19】本発明の第2の実施形態に係る磁気部及びウエハの平面図である。
【図20】本発明の第2の実施形態に係る磁気部及びウエハの断面図である。
【図21】本発明の第3の実施形態に係る磁気部及びウエハの平面図である。
【図22】本発明の第4の実施形態に係る磁気部及びウエハの平面図である。
【図23】本発明の第5の実施形態に係る磁気部の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<本発明の第1の実施形態>
(1)基板処理装置の構成
まず、本発明の第1の実施形態にかかる基板処理装置の概要構成例を、図1、図2を用いて説明する。本発明が適用される基板処理装置では、基板としてのウエハ1を搬送するキャリヤとして、FOUP(Front Opening Unified Pod。以下、ポッドという。)が使用される。また、以下の説明において、前後左右は図1を基準とする。すなわち、図1が示されている紙面に対して、前は紙面の下、後ろは紙面の上、左右は紙面の左右とする。
【0013】
(第1の搬送室)
図1及び図2に示されているように、基板処理装置は、第1の搬送室12を備えている。第1の搬送室12は、真空状態などの大気圧未満の圧力(負圧)に耐え得るロードロックチャンバ構造に構成されている。第1の搬送室12の筐体11は、平面視が六角形で上下両端が閉塞した箱形状に形成されている。第1の搬送室12内には、負圧下でウエハ1を移載する第1の基板移載機13が設置されている。第1の基板移載機13は、エレベータ14によって、第1の搬送室12内の気密性を維持しつつ昇降できるように構成されている。
【0014】
(予備室)
筐体11の六枚の側壁のうち前側に位置する二枚の側壁には、搬入用の予備室15と搬出用の予備室16とが、それぞれゲートバルブ17,18を介して連結されている。予備室15及び予備室16は、それぞれ負圧に耐え得るロードロックチャンバ構造に構成されている。さらに、予備室15には、搬入用の基板置き台19が設置されている。また、予備室16には、搬出用の基板置き台20が設置されている。
【0015】
(第2の搬送室)
予備室15及び予備室16の前側には、略大気圧下で用いられる第2の搬送室22が、ゲートバルブ23、24を介して連結されている。第2の搬送室22には、ウエハ1を移載する第2の基板移載機25が設置されている。第2の基板移載機25は、第2の搬送室22に設置されたエレベータ26によって昇降されるように構成されているとともに、リニアアクチュエータ27によって左右方向に往復移動されるように構成されている。
【0016】
第2の搬送室22の左側には、ノッチ又はオリフラ合わせ装置28が設置されている(図1参照)。また、第2の搬送室22の上部には、クリーンエアを供給するクリーンユニット29が設置されている(図2参照)。
【0017】
第2の搬送室22の筐体21の前側には、ウエハ1を第2の搬送室22に対して搬入搬出するウエハ搬入搬出口30と、ポッドオープナ31とが設置されている。ウエハ搬入搬出口30を挟んでポッドオープナ31と反対側、すなわち筐体21の外側にはIOステージ32が設置されている。ポッドオープナ31は、ポッド2のキャップ2aを開閉すると共に、ウエハ搬入搬出口30を閉塞可能なクロージャ31aと、クロージャ31aを駆動する駆動機構31bとを備えている。ポッドオープナ31は、IOステージ32に載置されたポッド2のキャップ2aを開閉することにより、ポッド2に対するウエハ1の出し入れを可能にする。また、ポッド2は図示しない工程内搬送装置(RGV)によって、IOステージ32に対して、搬入(供給)及び搬出(排出)されるようになっている。
【0018】
(処理炉及びクーリングユニット)
図1に示されているように、筐体11の六枚の側壁のうち後ろ側(背面側)に位置する二枚の側壁には、ウエハ1に所望の処理を行う第1の処理炉33と第2の処理炉34とが、ゲートバルブ35、36を介してそれぞれ隣接して連結されている。第1の処理炉33及び第2の処理炉34は、いずれもホットウォール式の処理炉として構成されている。なお、本実施形態では、第1の処理炉33及び第2の処理炉34は、後述するようにスパッタリング成膜装置として構成されている。
【0019】
また、筐体11における六枚の側壁のうちの残りの互いに対向する二枚の側壁には、冷却室としての第1のクーリングユニット37と、第2のクーリングユニット38とがそれぞれ連結されている。第1のクーリングユニット37及び第2のクーリングユニット38は、いずれも処理済みのウエハ1を冷却するように構成されている。
【0020】
なお、基板処理装置には、第1の搬送室12、第2の搬送室22、予備室15,16、第1の処理炉33、第2の処理炉34、第1のクーリングユニット37、第2のクーリングユニット38の全ての動作を制御する制御部としてのコントローラ240が設けられている。
【0021】
(2)処理炉の構成
続いて、スパッタリング成膜装置として構成された第1の処理炉33及び第2の処理炉34の構成について、図3、図4及び図5を用いて説明する。なお、第1の処理炉33及び第2の処理炉34の構成はほぼ同一であるため、以下の説明では、第1の処理炉33を例に挙げて説明することとする。
【0022】
図3は、本実施形態に係る第1の処理炉33を筐体11側から見た断面図である。図4は、本実施形態に係る第1の処理炉33を図3のA方向(下側)からみた断面図である。図5は、本実施形態に係る第1の処理炉33を図3のB方向(側方)からみた断面図である。
【0023】
図3、図4及び図5に示すように、第1の処理炉33は、ウエハ1を処理する処理室してのスパッタリング成膜室42と、スパッタリング成膜室42内でウエハ1を支持する基板支持部50と、基板支持部50に支持されたウエハ1の処理面に磁性薄膜を成膜する後述の成膜機構と、基板支持部50に支持されたウエハ1の処理面に対して処理面を側方から挟むように互いに対向して配置される後述する一対の磁気部と、スパッタリング成膜室42内のガス雰囲気を排気する後述のガス排気部と、を主に備えて構成されている。
【0024】
(スパッタリング成膜室)
処理室としてのスパッタリング成膜室42は、真空容器41内に形成されている。真空容器41は、直方体の筐体形状に構成されている。真空容器41は、筐体11における背面壁に隣接して連結されている。真空容器41の筐体11に隣接した側壁(以下、正面壁とする。)には、スパッタリング成膜室42内にウエハ1を搬入搬出する搬入搬出口43が開設されている。搬入搬出口43は、ゲートバルブ35(図1及び図2参照)によって開閉されるように構成されている。スパッタリング成膜室42内外へのウエハ1の搬送は、上述したように図1に示した第1の基板移載機13によって行われる。そして、ゲートバルブ35を開放することより、第1の搬送室12とスパッタリング成膜室42との間で、ウエハ1を搬送可能となっている。また、ゲートバルブ35を閉めることにより、スパッタリング成膜室42内を気密に保ち、スパッタリング成膜室42内を真空排気することが可能となっている。
【0025】
真空容器41の側壁上部(図3の左側上部)には、回転機構44が設置されている。
回転機構44は、サーボモータ等によって構成されている。回転機構44の回転軸45は、スパッタリング成膜室42内に左右方向に延在するように水平に挿入されて回転自在に支持されている。回転軸45の端部にはターゲット保持機構46が配置されている。図6(a)は、本実施形態に係るターゲット保持機構46の平面図(図3の下側から見た図)であり、図6(b)はターゲット保持機構46の断面図である。図6に示すように、ターゲット保持機構46は例えば八角錐台状に形成されている。八角錐台状に形成されたターゲット保持機構46の各側面(8枚の側面)には、スパッタリングターゲットとしての第1ターゲット47A〜第8ターゲット47Hがそれぞれ保持されるように構成されている。回転機構44によりターゲット保持機構46を回転させることにより、後述するスパッタ用イオン供給部80から供給されるイオンガス(スパッタリングガス)を、第1ターゲット47A〜第8ターゲット47Hのうちいずれか選択された1つのターゲットに照射させることが可能なように構成されている。なお、ターゲット保持機構46は、八角錐台状に形成される場合に限らず、他の多角錐台状に構成されていてもよく、また表裏にそれぞれターゲットを保持する板部材として構成されていてもよい。
【0026】
第1ターゲット47A〜第8ターゲット47Hの材料は、互いに異なる金属や酸化マグネシウム(MgO)等の絶縁材等とすることができ、ウエハ1上に成膜する薄膜の種類に応じて適宜変更される。例えば、基板としてのウエハ1上にCoFeB(コバルト、鉄、ボロン)からなる磁性薄膜を成膜する場合には、ターゲットの材料としてCoFeB合金を用いることができる。また、ウエハ1上にPtFeP(プラチナ、鉄、りん)からなる磁性薄膜を成膜する場合には、ターゲットの材料としてPtFeP合金を用いることができる。また、磁性薄膜の種類によっては、ターゲットの材料として、上述の三元系の合金にさらにCuやNi等を混合した四元又は五元系合金を用いても良い。また、スパッタリングターゲットの材料として、Fe、Cu及びNi等の単体を用いてもよい。また、スパッタリングターゲットを、例えばCoやPt等からなる部材上にFeP合金チップ、FeCu合金チップ、FeNi合金チップ、FeCuP合金チップ、FeNiP合金チップ等の合金チップのうち少なくとも1種のチップを所定の組成割合となるようにして載せた複合ターゲットとして構成してもよい。
【0027】
(基板支持部)
スパッタリング成膜室42の下部には、基板支持部50が設けられている。基板支持部50の上面(保持面)には、磁性薄膜が成膜される基板として、Siからなるウエハ1が水平姿勢で載置されるように構成されている。なお、磁性薄膜が成膜される基板としては、Siウエハ基板の他に例えば、石英ガラス基板、結晶化ガラス基板、酸化マグネシウム(MgO)基板等を用いてもよい。基板支持部50上に載置されたウエハ1の上面(磁性薄膜が成膜される処理面)は、ターゲット保持機構46の第1ターゲット47A〜第8ターゲット47Hのうち、いずれか選択された1つのターゲットに対向するように配置されている。
【0028】
基板支持部50は、回転機構51によって回転可能に構成されている。回転機構51は、チルト機構52によって、水平姿勢(ウエハ1の処理面がターゲット保持機構46側に向く姿勢)とされるか、或いは垂直姿勢(ウエハ1の処理面が後述するミリング用イオン供給部60側に向く姿勢)とされるように構成されている。なお、図3〜図5は、回転機構51が水平姿勢となっている様子を示している。回転機構51及びチルト機構52は、例えばサーボモータ等によって構成されている。なお、本実施形態では、基板支持部50に一対の磁気部を設けて、ウエハ1の処理面近傍に均一な磁場を形成するようにしている。磁気部の詳細構成は、後述する。
【0029】
(ミリング用イオン供給部)
真空容器41の側壁下部(図3の右側下部)には、ミリング用イオン供給部60が設置
されている。ミリング用イオン供給部60は、対向したウエハ1にイオンを照射することによってウエハ1の表面の自然酸化膜又は汚染物質を除去(イオンミリング)するように構成されている。
【0030】
図3〜図5に示すように、ミリング用イオン供給部60は、イオン源室62を備えている。イオン源室62は、筐体61内に形成されている。筐体61は、一端(真空容器41との接続側とは反対側)が閉塞した円筒形状に形成されている。真空容器41の側壁下部(筐体61との接続部)には、イオン照射口63が開設されている。イオン照射口63には、ミリング用イオン供給部60の筐体61の開口が整合されている。筐体61の閉塞壁には、ミリング用イオン源としてのArガスをイオン源室62内に導入(供給)するガス導入管64が接続されている。ミリング用イオン供給部60の筐体61外周には、磁石65が設置されている。磁石65は、筐体61内にプラズマを閉じ込めるカスプ磁場を生成するように構成されている。
【0031】
筐体61内の閉塞壁(イオン照射口63の反対側の端部)には、フィラメント66が設置されている。フィラメント66には、フィラメント66に電力を供給するフィラメント電源(直流電源)67が接続されている。フィラメント電源67の陰極は、イオン源室62内にプラズマを形成するアーク電源(直流電源)68の陰極に接続されている。筐体61のイオン照射口63側の端部には、接地電極70と、減速電極72と、加速電極75とが、イオン照射口63側から順に設置されている。接地電極70はアースに接続されている。減速電極72は減速電源(直流電源)71の陰極に接続されている。減速電源71の陽極はアースに接続されている。加速電極75は、抵抗73を介して加速電源(直流電源)74の陽極に接続されている。また、筐体61及びアーク電源68の陽極も加速電源74の陽極に接続されている。加速電源74の陰極はアースに接続されている。
【0032】
接地電極70、減速電極72及び加速電極75は、円形の平板形状に形成されている。なお、図7は、加速電極75を代表して示している。接地電極70、減速電極72及び加速電極75(以下各電極とも呼ぶ)には、それぞれ、円形の小孔として形成されたイオンビームを透過させる透過口76が多数個形成されている。各電極における透過口76群の開口率(開口面積/全体面積)は、全体的に均一になるように設定されている。例えば、口径の等しい透過口76が全面にわたって均一に分布されている。ミリング用イオン供給部60のイオン照射口63の手前には、イオン照射口63を開閉するシャッタ機構77が設置されている。なお、フィラメント電源67、アーク電源68、減速電源71、加速電源74及びシャッタ機構77は、コントローラ240によって制御されるようになっている。
【0033】
(スパッタ用イオン供給部)
真空容器41の側壁上部(図3の左側上部)には、スパッタ用イオン供給部80が設置されている。スパッタ用イオン供給部80は、第1ターゲット47A〜第8ターゲット47Hのうち、いずれか選択された1つのターゲットにイオンガス(スパッタリングイオン)を照射することにより、選択されたターゲットから粒子を叩き出してウエハ1の処理面に供給し、ウエハ1の処理面に薄膜を成膜するように構成されている。
【0034】
図3〜図5に示すように、スパッタ用イオン供給部80は、イオン源室82を備えている。イオン源室82は、筐体81内に形成されている。筐体81は、一端(真空容器41との接続側とは反対側)が閉塞した円筒形状に形成されている。真空容器41の側壁上部(筐体81との接続部)には、イオン照射口83が開設されている。イオン照射口83には、スパッタ用イオン供給部80の筐体81の開口が整合されている。筐体81の閉塞壁には、スパッタ用イオン源としてのArガスをイオン源室82内に導入するガス導入管84が接続されている。スパッタ用イオン供給部80の筐体81外周には、磁石85が設置
されている。磁石85は、筐体81内にプラズマを閉じ込めるカスプ磁場を生成するように構成されている。
【0035】
筐体81内の閉塞壁(イオン照射口83と反対側の端部)には、フィラメント86が設置されている。フィラメント86には、フィラメント86に電力を供給するフィラメント電源(直流電源)87が接続されている。フィラメント電源87の陰極は、イオン源室82内にプラズマを形成するアーク電源(直流電源)88の陰極に接続されている。筐体81のイオン照射口83側の端部には、接地電極90と、減速電極92と、加速電極95とが、イオン照射口83側から順に設置されている。接地電極90はアースに接続されている。減速電極92は、減速電源(直流電源)91の陰極に接続されている。減速電源91の陽極はアースに接続されている。加速電極95は、抵抗93を介して加速電源(直流電源)94の陽極に接続されている。また、筐体81及びアーク電源88の陽極も加速電源94の陽極に接続されている。加速電源94の陰極はアースに接続されている。
【0036】
接地電極90、減速電極92及び加速電極95は、ミリング用イオン供給部60の場合と同様に、円形の平板形状に形成されている。なお、図7は、加速電極95を代表して示している。接地電極90、減速電極92及び加速電極95(以下各電極とも呼ぶ)には、それぞれ、円形の小孔として形成されたイオンビームを透過させる透過口96が多数個形成されている。各電極における透過口96群の開口率(開口面積/全体面積)は、全体的に均一になるように設定されている。例えば、口径の等しい透過口96が全面にわたって均一に分布されている。なお、フィラメント電源87、アーク電源88、減速電源91及び加速電源94は、コントローラ240によって制御されるようになっている。
【0037】
主に、スパッタ用イオン供給部80、ターゲット保持機構46により、本実施形態に係る成膜機構が構成されている。
【0038】
(ガス排気部)
真空容器41の側壁下部(図3の左側下部)には、排気口53が形成されている。排気口53には、配管54が接続されている。配管54には、排気ポンプ55が接続されている。排気口53は、イオン照射口63から供給されたイオンが直接照射しない位置に配置されている。すなわち、排気口53は、ミリング用イオン供給部60からのイオンが直接照射されないように、イオン照射口63と対向しない位置にずらされて配置されている。このように排気口53をスパッタ用イオン供給部80の下方に設置することにより、スパッタ用イオン供給部80の下方に形成されるデッドスペースを有効に活用することができるようにしている。また、排気口53をイオン照射口63とは対向しない位置に設置することにより、イオンの直接照射による配管54内壁や排気ポンプ55の劣化を抑制することができる。主に、排気口53、配管54及び排気ポンプ55により、本実施形態に係るガス排気部が構成されている。
【0039】
(磁気部)
次に、本実施形態に係る磁気部の詳細構成について図10、図11及び図12を用いて説明する。図10は、本実施形態に係る磁気部100及びウエハ1の平面図である。図11は、本実施形態に係る磁気部100及びウエハ1の断面図である。図12は、本実施形態に係る磁気部100を構成している小片磁石101の配列の説明図である。図10、図11に示すように、基板支持部50は、回転機構51に連結される連結ベース8と、連結ベース8上に設けられウエハ1を保持する基板保持部4と、連結ベース8の外周を囲うように環状に設けられる磁気ヨーク3と、を備えている。基板保持部4は、位置決め機構としてウエハ1の周方向の位置決めを行う例えば真空チャックや静電チャック等のチャック機構として構成されている。磁気ヨーク3には磁気部100が取り付けられるように構成されている。磁気ヨーク3に取り付けられた磁気部100は、基板支持部50に支持され
たウエハ1の処理面に対して処理面を側方から挟むように互いに対向して配置されるように構成されている。磁気部100は、真空封止可能に構成された磁石ケース100aと、磁石ケース100aに設けられた複数の磁気体としての小片磁石101と、を備えている。
【0040】
一対の磁石ケース100aは、互いに平行に配置されている。磁石ケース100aは、ウエハ1の外縁部から所定の距離を空けて配置されている。磁石ケース100aは、ウエハ1の接線に対して平行方向に設置されるようになっている。磁石ケース100aは、長手状に形成されている。磁気ケース100aは、ウエハ1の直径よりも長手方向に長く延在している。磁石ケース100aは、真空封止可能な箱体により構成されている。磁気ケース100aは、複数の小片磁石101を収納可能に構成されており、開閉自在な蓋体(図示しない)を閉じることにより気密に封止可能となっている。
【0041】
複数の小片磁石101は、磁石ケース100aの長手方向に沿って配置されている。すなわち、複数の小片磁石101は、ウエハ1の接線に対して平行方向に配置されている。複数の小片磁石101は、同一形状、同一サイズに形成されている。隣接する小片磁石101同士の間には、非磁気体としてのスペーサ102が設けられている。スペーサ102と小片磁石101とは、交互に配列されるようになっている。ウエハ1の中心部を挟む小片磁石101の配列間隔は、ウエハ1の外縁部を挟む小片磁石101の配列間隔よりも大きく設定されている。すなわち、小片磁石101は、ウエハ1の中心部側からウエハ1の外縁部側に向って隣接する間隔が小さくなるように配置されている。そして、ウエハ1の中心部を挟むスペーサ102の配列間隔は、ウエハ1の外縁部を挟むスペーサ102の配列間隔よりも小さくなるように設定されている。
複数の小片磁石101は、ウエハ1の直径よりも長手方向に長く配列されている。ウエハ1の直径範囲内に配置される小片磁石101の単位長さ当たりの配置数は、ウエハ1の直径範囲外に配置される小片磁石101の単位長さ当たりの配置数よりも少なくなるようになっている。
例えば、小片磁石101の間隔を、ウエハ1の外縁部からウエハ1の中心部に向かって順にL1,L2,L3,L4,L5,L6とした場合、L1<L2<L3<L4<L5<L6を満たすように各小片磁石101がそれぞれ配置される(図12参照)。
【0042】
これにより、ウエハ1の直径範囲外に配置される小片磁石101の形成する磁場の磁束密度は、ウエハ1の直径範囲内に配置される小片磁石101の形成する磁場の磁束密度よりも少なくなるようになっている。また、小片磁石101は、ウエハ1の処理面近傍に形成する磁場の磁力線の傾斜角度(水平方向の傾斜角度)が3%以内に収まるように配置されている。従って、ウエハ1の処理面近傍に形成される磁場の磁力線が、ウエハ1の中心部付近から外縁部に至るまで互いに平行となり、これによりウエハ1の処理面近傍に形成される磁場が均一になる。また、ウエハ1の処理面近傍に形成される磁場の磁力線が、ウエハ1の処理面に対して平行となり、これによりウエハ1の処理面近傍に形成される磁場が均一になる。これにより、ウエハ1に成膜される磁性薄膜の磁気異方性を良好に揃え、磁性薄膜を用いる磁気抵抗素子メモリ等のデバイス性能を向上させることができる。
【0043】
なお、スペーサ102を用いることで、磁気部100の組み立て性が向上し、小片磁石101のそれぞれの配置の微調整が容易となる。また、小片磁石101の個数は、ウエハ1の処理面近傍に形成する磁場の強度により変更可能である。
スペーサ102の形状、磁石形状、磁石特性の組合せを変更することで、ウエハ1の処理面近傍に形成する磁場領域の変更も可能となる。小片磁石101に用いられる磁石としては、例えば、ネオジウム磁石、サマリウムコバルト磁石等の希土類系磁石、フェライト磁石、鉄・クロム・コバルト磁石、プラチナ磁石、アルニコ(Al、Ni、Co)磁石などである。なお、磁石は、永久磁石に限らず、例えば、コイルを用いた電磁石でもよい。
また、磁気ヨーク3は、例えば、保磁力が小さく透磁率が大きい鉄(Fe)、ケイ素鋼等の軟磁性材料により構成されている。また、スペーサ102は、例えば非磁性のSUS、石英(SiO2)、アルミナ(Al2O3)等により構成されている。なお、スペーサ102の代わりに隔壁を磁石ケース100aに設けてもよい。
【0044】
上述のように小片磁石101及びスペーサ102が収納された磁石ケース100aは、磁気ヨーク3の左右それぞれに取り付けられる。そして、磁気ヨーク3は、連結ベース8により基板保持部4と回転機構51とに連結される。これにより、磁気部100は、基板支持部50にウエハ1を載置保持した際に、ウエハ1の処理面に対して処理面を側方から挟むように互いに対向して配置されるようになっている。そして、ウエハ1の処理面に磁性薄膜を成膜する際に、回転機構51により磁気部100をウエハ1と一体的に回転させることが可能となっている。これにより、ウエハ1の処理面近傍での均一な磁場の形成を保持しつつ、成膜される磁性薄膜の磁気異方性を良好に揃えることが可能となり、磁性薄膜の面内膜厚均一性を向上することが可能となる。
【0045】
(3)基板処理装置の動作
まず、基板処理装置におけるウエハ1の処理の一連の流れを、図1及び図2に即して説明する。尚、以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ240により全体的に制御される。
【0046】
未処理のウエハ1を例えば25枚収納したポッド2を工程内搬送装置(図示しない)によって基板処理装置へ搬送する。図1及び図2に示すように、ポッド2は、工程内搬送装置から受け渡されてIOステージ32上に載置される。ポッド2のキャップ2aをポッドオープナ31によって取り外し、ポッド2のウエハ出し入れ口を開放する。
【0047】
ポッドオープナ31によりポッド2を開放すると、第2の基板移載機25がポッド2内からウエハ1をピックアップして予備室15内に搬入し、ウエハ置き台19上にウエハ1を移載する。この移載作業中には、予備室15の第1の搬送室12側のゲートバルブ17を閉じており、第1の搬送室12内の負圧を維持している。ポッド2に収納された所定枚数、例えば25枚のウエハ1のウエハ置き台19上への移載を完了すると、ゲートバルブ23を閉じ、予備室15内を排気装置(図示せず)によって負圧に排気する。
【0048】
予備室15内が予め設定した圧力値になると、ゲートバルブ17を開き、予備室15と第1の搬送室12とを連通させる。続いて、第1の搬送室12の第1の基板移載機13が、ウエハ置き台19上からウエハ1をピックアップして第1の搬送室12内に搬入する。ゲートバルブ17を閉じた後、ゲートバルブ35を開き、第1の搬送室12と第1の処理炉33とを連通させる。
続いて、第1の基板移載機13が第1の搬送室12内から第1の処理炉33内にウエハ1を搬入し、第1の処理炉33内の支持具上に移載する。ゲートバルブ35を閉じた後、後述するように、磁性薄膜形成工程を含む基板処理工程を第1の処理炉33において実施する。
【0049】
第1の処理炉33において基板処理工程が完了すると、ゲートバルブ35を開き、第1の基板移載機13によって、第1の処理炉33内から第1の搬送室12内に処理済みのウエハ1を搬出する。第1の処理炉33内からウエハ1を搬出した後、ゲートバルブ35を閉じる。
【0050】
第1の基板移載機13によって第1の処理炉33内から搬出したウエハ1を、第1のクーリングユニット37内へ搬入し、処理済みのウエハ1を冷却する。
【0051】
処理済みのウエハ1を冷却している間、予備室15内のウエハ置き台19上に予め準備していたウエハ1を、第1の基板移載機13によって第1の処理炉33内に搬入する。第1の処理炉33のゲートバルブ35を閉じた後、後述するように、磁性薄膜形成工程を含む基板処理工程を第1の処理炉33において実施する。
【0052】
第1のクーリングユニット37において予め設定した冷却時間が経過したら、第1の基板移載機13によって、第1のクーリングユニット37内から第1の搬送室12内に冷却済みのウエハ1を搬出する。
【0053】
第1のクーリングユニット37内から第1の搬送室12内に冷却済みのウエハ1を搬出した後、ゲートバルブ18を開く。そして、第1のクーリングユニット37から搬出したウエハ1を予備室16内へ搬送し、ウエハ置き台20上に移載した後、ゲートバルブ18によって予備室16を閉じる。
【0054】
以上の作動を繰り返すことにより、予備室15内に搬入した所定枚数、例えば、25枚のウエハ1を順次処理していく。
【0055】
予備室15内に搬入した全てのウエハ1に対する処理を終了し、全ての処理済みウエハ1を予備室16内に収納して、ゲートバルブ18によって予備室16を閉じる。そして、予備室16内に不活性ガスを供給して略大気圧にする。予備室16内を略大気圧にしたら、ゲートバルブ24を開き、IOステージ32に載置した空のポッド2のキャップ2aをポッドオープナ31によって開く。続いて、第2の搬送室22内の第2の基板移載機25が、ウエハ置き台20上からウエハ1をピックアップして第2の搬送室22内に搬出し、第2の搬送室22におけるウエハ搬入搬出口30を通してポッド2内に収納していく。
【0056】
25枚の処理済みウエハ1のポッド2内への収納を完了すると、ポッドオープナ31によってポッド2のキャップ2aを閉じる。そして、閉じたポッド2を、IOステージ32上から次の工程へと工程内搬送装置によって搬送する。
【0057】
以上の動作は、第1の処理炉33及び第1のクーリングユニット37を使用する場合を例にして説明したが、第2の処理炉34及び第2のクーリングユニット38を使用する場合についても同様の動作を実施する。なお、上述の連続処理装置では、一方の予備室15を搬入用、他方の予備室16を搬出用としたが、一方の予備室16を搬入用、他方の予備室15を搬出用としてもよい。第1の処理炉33と第2の処理炉34とは、それぞれ同じ処理を行ってもよいし、別の処理を行ってもよい。第1の処理炉33と第2の処理炉34とで別の処理を行う場合、例えば、第1の処理炉33でウエハ1に所定の基板処理を行った後に、続けて、第2の処理炉34で別の基板処理を行ってもよい。また、第1の処理炉33でウエハ1に所定の基板処理を行った後に、第2の処理炉34で別の基板処理を行わない場合においては、第1のクーリングユニット37又は第2のクーリングユニット38を経由するようにしてもよい。また、第1の処理炉33と第2の処理炉34とでの処理で熱処理しない等、必要に応じ、第1のクーリングユニット37又は第2のクーリングユニット38を経由しないようにしてもよい。
【0058】
(4)基板処理工程
次に、磁気抵抗素子メモリ等の半導体装置の製造工程の一工程として実施される基板処理工程を、主に図3〜図5を参照しながら説明する。基板処理工程は、上記構成に係る基板処理装置により実施される。
【0059】
(ウエハを支持する工程)
まず、予め所定の圧力に減圧したスパッタリング成膜室42内に搬入搬出口43からウ
エハ1を搬入し、水平姿勢の基板支持部50の基板保持部4の上に受け渡す。このとき、基板支持部50の基板保持部4は、ウエハ1をチャックして位置決め保持する(図11参照)。
【0060】
続いて、搬入搬出口43をゲートバルブ35(図1及び図2参照)によって閉じた後、スパッタリング成膜室42内を排気ポンプ55によって真空引きし、スパッタリング成膜室42内の圧力を例えば0.1〜0.01Paに減圧する。
【0061】
(イオンミリング工程)
続いて、ミリング用イオン供給部60にてArガスをプラズマ化し、Arのイオンビーム78を発生させる。具体的には、ガス導入管64からミリング用イオン供給部60のイオン源室62内にArガスを所定の流量、例えば10sccmで供給する。そして、フィラメント電源67をONにし、フィラメント66から熱電子を放出させる。そして、アーク電源68をONにし、イオン源室62内で電子を移動させてAr原子に衝突させ、イオン源室62内に供給されたArガスをプラズマ化させる。そして、減速電源71及び加速電源74をONとし、加速電極75をプラス電位、減速電極72をマイナス電位とする。その結果、加速電極75、減速電極72及び接地電極70の電位差から生じる電界により、Arイオンを透過口76群からスパッタリング室内42に向けて引き出してイオンビーム78を発生させる。このとき、イオン照射口63をシャッタ機構77によって閉じておく。なお、減速電極72と接地電極70との間の電位差は、スパッタリング室42内にある電子がイオン源室62内に入り込むのを阻止する役目を果たす。
【0062】
そして、図8に示すように、基板支持部50をチルト機構52によって垂直姿勢(ウエハ1の処理面がミリング用イオン供給部60側に向く姿勢)にする。続いて、基板支持部50を回転機構51によって回転させつつ、イオン照射口63をシャッタ機構77によって開く。そして、ミリング用イオン供給部60からイオンビーム78をウエハ1に照射し、ウエハ1をイオンミリング加工するイオンミリング工程を実施する。イオンミリング加工とは、イオンビームを対象物(ウエハ)に照射することにより、対象物を削る加工方法をいう。このイオンミリング加工により、ウエハ1の表面の酸化膜や汚染物質を除去する。所定時間(例えば60〜120秒)が経過したら、ミリング用イオン供給部60によるイオンビーム78の照射を停止し、イオンミリング工程を終了する。
【0063】
(磁性薄膜を成膜する工程)
続いて、回転機構51による基板支持部50の回転を継続させつつ、図9に示すように、基板支持部50をチルト機構52によって水平姿勢(ウエハ1の処理面がターゲット保持機構46側に向く姿勢)にする。
【0064】
また、ターゲット保持機構46を回転機構44によって所定の角度だけ回転させ、第1ターゲット47A〜47Hのうち、予め選択した所望のターゲットをウエハ1の処理面に対向させる。本工程では、例えばCoFeB合金からなるターゲットをウエハ1の処理面に対向させる。
【0065】
ガス導入管84からスパッタ用イオン供給部80のイオン源室82内にArガスを所定の流量(例えば2〜20sccm)で供給する。そして、イオンミリング工程の場合と同様にスパッタ用イオン供給部80にてArガスをプラズマ化し、Arのイオンビーム97を発生させる。次いで、スパッタ用イオン供給部80からターゲットに、Arのイオンビーム97を照射する。すると、CoFeB合金を構成する分子等の粒子98が前記ターゲットから飛び出す。そして、飛び出した粒子98をウエハ1の処理面に照射して吸着(堆積)させ、ウエハ1の処理面にCoFeBの磁性薄膜を成膜する。
【0066】
ここで、本実施形態では、磁気部100により、ウエハ1の全面にわたって均一な磁場をウエハ1の処理面近傍に形成させるようにしている。すなわち、磁気部100によりウエハ1の処理面近傍に形成される磁場の磁力線がウエハ1の中心部付近から外縁部に至るまで互いに平行となり、ウエハ1の処理面近傍に形成される磁場が均一になるようにしている。また、磁気部100によりウエハ1の処理面近傍に形成される磁場の磁力線がウエハ1の処理面に対して平行となり、ウエハ1の処理面近傍に形成される磁場が均一になるようにしている。このため、CoFeB合金を構成する分子等の粒子98は、磁気部100が形成している均一な磁場による作用を受け、磁極方向が揃いつつウエハ1の処理面に堆積する。
【0067】
このとき、粒子98がウエハ1の処理面に向かって飛ぶ力(粒子98の流れる力)の方が、粒子98がウエハ1の処理面近傍に形成されている磁場から受ける力(ローレンツ力)より大きくなるようにする。このようにすることで、粒子98のウエハ1の処理面への到達が妨げられることはなく、ウエハ1の処理面への成膜量の磁場による影響を抑制できる。所定時間(例えば30〜180秒)が経過し、ウエハ1の処理面に所望の膜厚の磁性薄膜を形成したら、スパッタ用イオン供給部80によるイオンビーム97の供給を停止し、磁性薄膜形成工程を終了する。
【0068】
(絶縁薄膜を成膜する工程)
続いて、絶縁薄膜としてMgO薄膜を成膜する。ターゲット保持機構46を回転機構44によって所定の角度だけ回転させ、ターゲット材をMgO合金に切り換えてMgO合金をウエハ1の処理面に対向させる。
そして、上述の磁性薄膜形成工程と同様にスパッタ用イオン供給部80を作動させてウエハ1の処理面に成膜したCoFeB薄膜上にMgO薄膜を成膜する。所定時間(例えば300〜500秒)経過してウエハ1の処理面に所望の膜厚の絶縁薄膜を形成したら、スパッタ用イオン供給部80によるイオンビーム97の供給を停止し絶縁薄膜を成膜する工程を終了する。
【0069】
その後、再び磁性薄膜であるCoFeB薄膜を成膜する場合には、ターゲット保持機構46を回転機構44によって回転させ、ターゲット材をCoFeB合金に切り換えて上述したようにスパッタ用イオン供給部80を作動してウエハ1の処理面(MgO薄膜)上にCoFeB薄膜を形成する。これにより、磁気抵抗素子メモリに用いられるCoFeB/MgO/CoFeBの三層構造を形成することができる。
【0070】
(ウエハの搬出工程)
ウエハ1の処理面にCoFeB薄膜とMgO薄膜とを順に成膜したら、搬出して基板処理工程を終了する。その後、ゲートバルブ35(図1及び図2参照)によって搬入搬出口43を開放し、基板支持部50に保持した処理後のウエハ1を搬入搬出口43から搬出する。
【0071】
(5)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
【0072】
(a)本実施形態によれば、ウエハ1の処理面に対して処理面を側方から挟むように互いに対向して一式の磁気部100が配置されている。磁気部100は、磁石ケース100aに複数の磁気体として複数の小片磁石101をそれぞれ配列している。そしてウエハ1の中心部を挟む小片磁石101の配列間隔が、ウエハ1の外縁部を挟む小片磁石101の配列間隔よりも大きく設定されている。
【0073】
これにより、ウエハ1の処理面近傍に形成される磁場の磁力線がウエハ1の中心部付近
から外縁部に至るまで互いに平行となり、ウエハ1の処理面近傍に形成される磁場が均一になる。また、ウエハ1の処理面近傍に形成される磁場の磁力線がウエハ1の処理面に対して平行となり、ウエハ1の処理面近傍に形成される磁場が均一になる。これにより、ウエハ1に成膜される磁性薄膜の磁気異方性を良好に揃え、磁性薄膜を用いる磁気抵抗素子メモリ等のデバイス性能を向上させることができる。
【0074】
なお、ウエハ1の処理面近傍に形成される磁場と、磁性薄膜の磁気異方性との関係について、以下に説明する。図18(a)はウエハ1の処理面近傍に外部磁場を形成することなく成膜した磁性薄膜内の各磁区320の磁極方向321を例示する概略図であり、図18(b)はウエハ1の処理面近傍に均一な外部磁場を形成しつつ成膜した磁性薄膜内の各磁区320の磁極方向321を例示する概略図である。図18(a)に示すように、ウエハ1の処理面近傍に外部磁場を形成することなく成膜した磁性薄膜の場合には、各磁区320の磁極方向321は不規則となる。一方、図18(b)に示すように、ウエハ1の処理面近傍に均一な外部磁場を形成しつつ成膜した磁性薄膜の場合には、外部磁場の作用を受け、各磁区320の磁極方向321が外部磁場と一様に揃う。このように磁性薄膜形成中にウエハ1の処理面近傍に均一な磁場を形成することで、磁性薄膜内の各磁区の磁極方向の状態を一様に揃え、磁気抵抗素子メモリのデバイス特性の向上が可能となる。
【0075】
また、以下に、本実施形態に係る磁気部100を用いた場合のウエハ1の処理面近傍に形成される磁場の強度分布の解析例を、図13〜図15に示す。
【0076】
図13は、本実施形態に係る磁気部100によりウエハ1の処理面近傍に形成される磁場の平面方向における強度分布の解析例である。図14は、本実施形態に係る磁気部100によりウエハ1の処理面近傍に形成される磁場の垂直方向における強度分布の解析例である。図15は、本実施形態に係る磁気部100によりウエハ1の処理面近傍に形成される磁場偏向角のウエハ1中心からの距離依存性を示すグラフ図である。なお、図13〜図15に示す解析モデルは、簡素化のため実機の半領域で解析を実施している。
【0077】
図13によれば、本実施形態の磁気部100を用いた場合、ウエハ1の処理面を上方から見ると、ウエハ1の処理面近傍に形成される磁場の磁力線が、ウエハ1の中心部付近から外縁部に至るまで互いに平行となり、ウエハ1の処理面全面にわたり磁場が均一になっていることが分かる。また、図14によれば、本実施形態の磁気部100を用いた場合、ウエハ1の処理面を側方から見ると、ウエハ1の処理面近傍に形成される磁場の磁力線が、ウエハ1の処理面に対して平行となり、ウエハ1の処理面全面にわたり磁場が均一になっていることが分かる。また、図15によれば、本実施形態の磁気部100を用いた場合、ウエハ1の処理面近傍に形成される磁場の磁力線301の傾きは±約2度以下であり、目標である磁力線301の傾きの±3度を下回っていることが分かる。なお、図13〜図15のいずれにおいても、ウエハ1の処理面近傍に形成される磁場の強度は、例えば50〜100[Oe]であった。従って、本実施形態の磁気部100を用いた場合、磁性薄膜の形成に必要な磁場条件を満足する均一な磁場の形成が可能であることが分かる。
【0078】
なお、参考までに、長尺な磁石401として形成された従来の磁気部400を用いた場合のウエハ1の処理面近傍に形成される磁場について説明する。図16は、長尺な磁石401として形成された従来の磁気部400及びウエハ1を示す平面図である。図17は、長尺な磁石として形成された従来の磁気部400によりウエハ1の処理面近傍に形成される磁場の平面方向における強度分布の解析例である。なお、図16、図17に示す解析モデルも同様に、簡素化のため実機の半領域で解析を実施している。図17に示すように、磁気部400として従来の長尺な磁石401を用いた場合、磁石401両端の磁極周辺(N極、S極)の磁束密度に引きずられ、ウエハ1外縁部の磁力線301bがウエハ1中心部の磁力線301bに対して斜めに形成されている。このため、ウエハ1中心部の磁力線
301aとウエハ1外縁部での磁力線301bとは互いに平行にならず、不均一な磁場となっていることが分かる。
【0079】
(b)磁気抵抗素子メモリの仕様変更や特性向上等のため、成膜する磁性薄膜の種類を、例えばCoFeB薄膜からPtFeP薄膜等に変更する場合がある。かかる場合、成膜する磁性薄膜の種類に応じてウエハ1の処理面近傍に形成する磁場の強度変更が必要となる場合がある。本実施形態においては、基板支持部50から磁気部100を取り外し、磁石ケース100a内に配置する小片磁石101の磁力強度や個数等を変更することで、ウエハ1の処理面近傍に形成する磁場の強度を容易に変更することが可能である。そして、磁石ケース100a内に配置する小片磁石101及びスペーサ102の配列を調整することで、ウエハ1の処理面近傍に形成される磁場を均一に保つことが可能である。これにより、ウエハ1に成膜される磁性薄膜の磁気異方性を良好に揃え、磁性薄膜を用いる磁気抵抗素子メモリ等のデバイス性能を向上させることができる。なお、成膜する磁性薄膜の種類に応じて小片磁石101及びスペーサ102の配列を予め調整した磁気部100を用意しておくことで、磁気部100を迅速に交換することが可能となる。
【0080】
(c)本実施形態によれば、粒子98がウエハ1の処理面に向かって飛ぶ力(粒子98の流れる力)の方が、粒子98がウエハ1の処理面近傍に形成されている磁場から受ける力(ローレンツ力)より大きくなるようにしている。その結果、粒子98のウエハ1の処理面への到達が妨げられることを抑制でき、ウエハ1の処理面への成膜量への磁場よる影響を抑制できる。
【0081】
(d)本実施形態によれば、小片磁石101を同一形状、同一サイズに形成している。これにより、小片磁石101の製造コストを低減させ、基板処理装置の製造コストを抑制することができる。
【0082】
(e)本実施形態によれば、磁石ケース100aを取り付けた磁気ヨーク3を回転機構51に連結している。そして、ウエハ1の処理面に磁性薄膜を成膜する際に、ウエハ1だけを回転させるのではなく、回転機構51により磁気部100をウエハ1と一体的に回転させている。すなわち、磁性薄膜の面内膜厚均一性を向上させるためにウエハ1を回転させた場合であっても、ウエハ1の処理面近傍での磁場の均一性を保持し、成膜される磁性薄膜の磁気異方性を良好に揃えることができる。なお、磁性を有する粒子98がウエハ1の処理面に吸着(堆積)した後では、磁性薄膜の各磁区の磁場方向を変えることは困難である。本実施形態によれば、粒子98がウエハ1の処理面に堆積する直前に、粒子98に対して磁気部100の形成している均一な磁場を作用させることができるため、成膜される磁性薄膜の磁気異方性を良好に揃えることができる。
【0083】
(f)本実施形態によれば、位置決め機構としてウエハ1の周方向の位置決めを行う基板保持部4を設けている。これにより、基板支持部50に載置されるウエハ1の磁気部100に対する位置、すなわちウエハ1の外周と磁気部100との距離を一定とすることができる。従って、ウエハ1の処理面に再現性良く均一な磁場を形成することができ、基板処理の歩留りを改善させることができる。
【0084】
(g)本実施形態によれば、真空封止可能な磁石ケース100aに小片磁石101を複数配列している。これにより、磁気部100(磁石ケース100a)の大きさを任意に変更でき、磁気部100(磁気ケース100a)をウエハ1の直径2倍未満の大きさにすることができる。従って、スパッタリング成膜室42内の磁気部100を設置するスペースを縮小化でき、基板処理装置を小型化することが可能である。
また、スパッタリング成膜室42の真空置換時間を短縮化することができ、ウエハ1の処理時間を短縮化でき、基板処理の生産性を向上させることができる。
【0085】
(h)本実施形態によれば、一対の磁気部100をウエハ1の処理面を側方から挟むように互いに対向して配置している。そして、磁気部100をウエハ1の接線に対して平行方向にそれぞれ配列している。そして、搬入搬出口43を一対の磁気部100の間に設けるようにしている。これにより、ウエハ1の搬入搬出のスペースを常に確保することができる。
【0086】
<第2の実施形態>
図19は、本発明の第2の実施形態に係る磁気部100B及びウエハ1の平面図である。図20は、本発明の第2の実施形態に係る磁気部100B及びウエハ1の断面図である。
【0087】
本実施形態では、磁気部100Bが備える磁気体が、永久磁石ではなく電磁石である点が第1の実施形態と異なる。すなわち、本実施形態では、図19及び図20に示すように、磁気部100Bは、磁石ケース100aに複数の磁気体としての複数の小片電磁石101Bが設けられている点が第1の実施形態と異なる。なお、ウエハ1の中心部を挟む小片電磁石101Bの配列間隔は、第1の実施形態と同様に、ウエハ1の外縁部を挟む小片電磁石101Bの配列間隔よりも大きく設定されている。複数の小片電磁石101Bには、それぞれ給電部111が接続されている。なお、給電部111と小片電磁石101Bとは、カップリング部(図示しない)を介して接続されている。なお、カップリング部は、回転側と固定側との間を金属ブラシ等により電気的に接続するスリップリング機構として構成されている。これにより、基板支持部50の回転が妨げられないようになっている。給電部111は、コントローラ240(図1参照)に接続されている。コントローラ240は、給電部111が複数の小片電磁石101Bのそれぞれに給電する電力量を調整制御する給電制御部として構成されている。
【0088】
それ以外の構成は第1の実施形態と同様である。
【0089】
本実施形態によれば、磁気部100Bが備える磁気体が、永久磁石ではなく、電磁石である小片電磁石101Bにより構成されている。したがって、給電部111から小片電磁石101Bに給電する電力量を変更することで、ウエハ1の処理面近傍に形成する磁場の強度を容易且つ任意に変更可能である。すなわち、成膜する磁性薄膜の種類に応じて磁場の強度を変更する場合であっても、磁場の強度を容易且つ任意に変更することができる。
【0090】
また、本実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、ウエハ1の中心部を挟む小片電磁石101Bの配列間隔が、ウエハ1の外縁部を挟む小片電磁石101Bの配列間隔よりも大きく設定されている。これにより、各小片電磁石101Bに給電する電力量を個別に調整することなく、ウエハ1の処理面近傍に均一な磁場を形成することが可能である。すなわち、各小片電磁石101Bに給電する電力量を同一としても、ウエハ1の処理面近傍に均一な磁場を形成することが可能である。
【0091】
また、本実施形態によれば、上述したように、各小片電磁石101Bに給電する電力量を個別に調整する必要がない。すなわち、小片電磁石101Bへの給電制御を簡素化することが可能となる。従って、給電部111及び磁気部100Bを安価に製造することができ、基板処理装置の製造コストを抑制することができる。
【0092】
なお、本実施形態は、各小片電磁石101Bに給電する電力量を同一とする場合に限らず、各小片電磁石101Bに給電する電力量を個別に調整するようにしてもよい。かかる場合、ウエハ1の処理面近傍に形成する磁場をより均一化させることが可能となる。
【0093】
なお、本実施形態では、ウエハ1の回転と共に、このウエハ1と一体的に磁気部100Bを回転させるようにしている。すなわち、ウエハ1の処理面に磁性薄膜を成膜する際に、ウエハ1だけを回転させるのではなく、回転機構51により磁気部100をウエハ1と一体的に回転させている。
すなわち、磁性薄膜の面内膜厚均一性を向上させるためにウエハ1を回転させた場合であっても、ウエハ1の処理面近傍での磁場の均一性を保持し、成膜される磁性薄膜の磁気異方性を良好に揃えることができる。
【0094】
これに対し、ウエハ1と一体的に磁気部100Bを回転させない方法も考えられる。かかる方法では、ウエハ1の外周を円周状に囲むように複数の電磁石を配置する。そして、各電磁石に対する給電をウエハ1の回転に合わせて切り替えるようにし、ウエハ1の処理面とウエハ1の処理面近傍に形成する外部磁場とを合わせて同期させて回転させる。しかしながら、このような方法の場合、ウエハ1の回転に合わせて各電磁石に対する給電を切り換える複雑な制御が必要となり、基板処理装置の製造コストが増大してしまう。また、ウエハ1の外周を囲むように複数の電磁石が配置されるためスパッタリング成膜室42の容積が増大し、真空置換時間等が増大し、基板処理の生産性が悪化してしまう。これに対し、本実施形態では、ウエハ1の回転に伴う複雑な給電制御を行う必要がなく、基板処理装置の製造コストを低減させることができる。また、磁気部100B(磁石ケース100a)を小型化できるため、スパッタリング成膜室42(処理室)の容積の増大を防ぎ、真空置換時間等を短縮でき、基板処理の生産性を向上させることができる。
【0095】
<第3の実施形態>
図21は、本発明の第3の実施形態に係る磁気部100C及びウエハ1の平面図である。
【0096】
本実施形態では、磁気部100Cが備える非磁性体の長手方向のサイズを同一にし、磁気体の長手方向のサイズを異ならせている点が第1の実施形態と異なる。すなわち、本実施形態では、図21に示すように、磁気部100Cは、非磁気体としてのスペーサ102Cの長手方向のサイズを同一にし、磁気体としての小片磁石101Cの長手方向のサイズを異ならせている点が第1の実施形態と異なる。具体的には、スペーサ102Cが長手方向のサイズを同一に形成されると共に、ウエハ1の中心部を挟む小片磁石101のサイズ(磁気部100Cの長手方向に沿った小片磁石101の長さ)が、ウエハ1の外縁部を挟むサイズ(磁気部100Cの長手方向に沿った小片磁石101の長さ)よりも大きく設定されている。また、磁気ケース100cがウエハ1の直径サイズの大きさに形成されている。すなわち、小片磁石101C及びスペーサ102Cは、ウエハ1の直径サイズの大きさの位置まで配列されている。
【0097】
それ以外の構成は第1の実施形態と同様である。
【0098】
本実施形態によれば、スペーサ102Cが長手方向のサイズを同一に形成されると共に、ウエハ1の中心部を挟む小片磁石101Cの長手方向のサイズが、ウエハ1の外縁部を挟む小片磁石101Cの長手方向のサイズよりも大きく設定されている。これにより、ウエハ1の中心部を挟む小片磁石101Cの単位長さ当たりの配置数を、ウエハ1の外縁部を挟む小片磁石101Cの単位長さ当たりの配置数よりも少なくすることができる。また、磁気ケース100cの大きさがウエハ1の直径サイズの大きさと略同一の大きさに形成されている。これにより、磁気部100Cを小型化でき、基板処理装置の装置サイズを小型化できるとともに、スパッタリング成膜室42(処理室)の真空置換時間等を短縮でき、基板処理の生産性を向上させることができる。
【0099】
<第4の実施形態>
図22は、本発明の第4の実施形態に係る磁気部100D及びウエハ1の平面図である。
【0100】
本実施形態では、ウエハ1の接線に対して平行方向に小片磁石101Dを配置するのではなく、ウエハ1の外縁部側に向って湾曲させて、すなわち、ウエハ1の中心側近傍からウエハ1の外周に沿わせて小片磁石101Dを配置している点が第3の実施形態と異なる。すなわち、本実施形態では、図22に示すように磁気部100Dは、ウエハ1の中心側近傍からウエハ1の外周に沿わせえてウエハ1の外縁部側に向って湾曲させて小片磁石101Dを配置している点が第3の実施形態と異なる。また、本実施形態では、第3の実施形態と同様に、スペーサ102Dが長手方向のサイズを同一に形成されると共に、ウエハ1の中心部を挟む小片磁石101Dの長手方向のサイズが、ウエハ1の外縁部を挟む小片磁石101Dの長手方向のサイズよりも大きく設定されている。なお、第3の実施形態と同様に、磁気ケース100dの大きさがウエハ1の直径サイズの大きさと略同一の大きさに形成されている。
【0101】
それ以外の構成は第3の実施形態と同様である。
【0102】
本実施形態によれば、ウエハ1の中心側近傍からウエハ1の外縁部側に向って湾曲させて小片磁石101Dを配置している。
これにより、小片磁石101Dがウエハ1の外縁部側でより近くに位置するので、ウエハ1の外縁部側に形成される磁場の磁束密度を増大させることができる。従って、成膜される磁性薄膜の磁気異方性をウエハ1の外縁部側でより良好に揃えることができる。
【0103】
<第5の実施形態>
図23は、本発明の第5の実施形態に係る磁気部100Eの部分拡大図である。
【0104】
本実施形態では、小片磁石101Eは、少なくともウエハ1側方向の形状が鋭角に形成されている点が第1の実施形態と異なる点である。すなわち、本実施形態では、図23に示すように、小片磁石101Eは、少なくともウエハ1側方向の形状が鋭角に形成されている点が第1の実施形態と異なる点である。
【0105】
それ以外の構成は第1の実施形態と同様である。
【0106】
本実施形態によれば、小片磁石101Eは、少なくともウエハ1側方向の形状が鋭角に形成されている。これにより、小片磁石101Eのウエハ1に対向する面の表面積を増大させることができ、ウエハ1の処理面近傍に形成される磁場の磁力線の量をウエハ1の中心部付近からウエハ1の外縁部に至るまで増大させることができる。従って、ウエハ1の処理面近傍に形成される磁場の強度を増大させることができ、成膜される磁性薄膜の磁気異方性をより良好に揃えることができる。
【0107】
<本発明の他の実施形態>
なお、上述の実施形態においては、イオンミリング工程を行った後、磁性薄膜であるCoFeB薄膜を成膜する工程を行い、その後、絶縁薄膜であるMgO薄膜を成膜する工程を行う基板処理工程を実施したが、本発明はこれに限定されない。イオンミリング工程を行った後、磁性薄膜であるCoFeB薄膜を成膜する工程のみを行い、CoFeB薄膜の一層のみ成膜することも勿論適用可能である。また、磁性薄膜であるCoFeB薄膜を成膜する工程を行い、その後、絶縁薄膜であるMgO薄膜を成膜する工程を行った後に、さらに磁性薄膜であるCoFeB薄膜を成膜する工程を行って三層成膜することも適用可能であり、さらに成膜を重ねて三層以上成膜することも適用可能である。
【0108】
また、成膜する磁性薄膜は、CoFeB薄膜に限らず、例えばPtFeP薄膜等の磁性薄膜であってもよい。さらに、CoFeB薄膜やPtFeP薄膜等の三元系の磁性薄膜に限らず、例えばCuやNi等を混合した四元又は五元系以上の磁性薄膜を成膜する場合にも適用可能である。
【0109】
また、上述の実施形態においては、第1の処理炉33及び第2の処理炉34がスパッタリング成膜装置として構成されている場合について説明したが、本発明はかかる場合に限らず、磁性薄膜を成膜する他の基板処理装置全般に適用することができる。
【0110】
また、磁性薄膜が成膜される基板としては、Siウエハ基板の他に石英ガラス基板、結晶化ガラス基板、MgO基板等であってもよい。
【0111】
また、本発明は、本実施形態にかかる半導体製造装置等のウエハ基板を処理する基板処理装置に限らず、プリント配線基板、液晶パネル、磁気ディスクやコンパクトディスク等の基板を処理する基板処理装置にも好適に適用できる。
【0112】
以上、本発明の実施の形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0113】
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0114】
本発明の一態様によれば、
基板を処理する処理室と、
前記処理室内で前記基板を支持する基板支持部と、
前記基板支持部に支持された前記基板の処理面に磁性薄膜を成膜する成膜機構と、
前記基板支持部に支持された前記基板の前記処理面に対して該処理面を側方から挟むように互いに対向して配置される一対の磁気部と、
前記処理室内のガス雰囲気を排気するガス排気部と、を備え、
前記磁気部は複数の磁気体がそれぞれ配列してなり、
前記基板の中心部を挟む前記磁気体の配列間隔が、前記基板の外縁部を挟む前記磁気体の配列間隔よりも大きく設定されている
基板処理装置が提供される。
【0115】
前記成膜機構は、前記基板支持部に支持される前記基板の前記処理面に粒子を照射するターゲットが保持されるターゲット保持部と、前記ターゲット保持部に保持されたターゲットにイオンを照射するスパッタ用イオン供給部とを備えている。
【0116】
好ましくは、前記基板支持部と、前記磁気部とを一体で回転させる回転機構をさらに有する。
【0117】
さらに好ましくは、複数の前記磁気体にそれぞれ給電する給電部と、前記給電部が複数の前記磁気体のそれぞれに給電する給電電流を調整制御する給電制御部と、をさらに有する。
【0118】
さらに好ましくは、隣接する前記磁気体同士の間に非磁気体が設けられて前記非磁気体と前記磁気体とが交互に配置され、前記基板の中心部を挟む前記非磁気体の配列間隔が前記基板の外縁部を挟む前記非磁気体の配列間隔よりも大きく設定されている。
【0119】
さらに好ましくは、前記磁気体は、前記基板の中心部側から前記基板の外縁部側に向っ
て隣接する間隔が小さくなるように配置されている。
【0120】
さらに好ましくは、前記磁気体は、同一形状に形成されている。
【0121】
さらに好ましくは、前記磁気部は前記基板の直径よりも平行方向に長く延在し、該延在部分に配置される前記磁気体の単位長さ当たりの配置数が前記基板の直径範囲内に配置される前記磁気体の単位長さ当たりの配置数よりも少なくなるよう構成されている。
【0122】
さらに好ましくは、前記磁気部は前記基板の直径よりも前記基板の接線に対して平行方向に長く延在し、該延在部分に配置される前記磁気体の単位長さ当たりの配置数が前記基板の直径範囲内に配置される前記磁気体の単位長さ当たりの配置数よりも少なくなるよう構成されている。
【0123】
さらに好ましくは、前記磁気体は、それぞれ形成される磁力線の傾斜角度が3%以内に収まるように配置されている。
【0124】
さらに好ましくは、前記磁気部は前記基板の直径よりも前記基板の接線に対して平行方向に長く延在し、該延在部分に配置される前記磁気体の形成する磁束密度が、前記基板の直径範囲内に配置される前記磁気体の形成する磁束密度よりも少なくなるよう構成されている。
【0125】
さらに好ましくは、前記基板支持部に、前記基板の周方向の位置決めを行う位置決め機構をさらに有する。
【0126】
さらに好ましくは、前記磁気部は、前記基板の中心側近傍から前記基板の外周に沿って前記基板の外縁部側に向って湾曲されて形成されている。
【0127】
さらに好ましくは、前記磁気体は、少なくとも前記基板側方向の形状が鋭角に形成されている。
【0128】
さらに好ましくは、前記基板の外縁部から近い位置に配置される前記磁気体の配列間隔が、前記基板の外縁部から遠い位置に配置される前記磁気体の配列間隔よりも大きく設定されている。
【0129】
さらに好ましくは、隣接する前記磁気体同士の間に非磁気体が設けられて前記非磁気体と前記磁気体とが交互に配置され、前記基板の中心部を挟む前記非磁気体の長手方向のサイズが前記基板の外縁部を挟む前記非磁気体の長手方向のサイズよりも大きく設定されている。
【0130】
さらに好ましくは、前記基板の中心部を挟む前記磁気体の長手方向のサイズが前記基板の外縁部を挟む前記磁気体の長手方向のサイズよりも大きく設定されている。
【0131】
本発明の他の態様によれば、
処理室内に搬入した基板を基板支持部により支持する工程と、
前記基板支持部に支持された前記基板の処理面に対して該処理面を側方から挟むように互いに対向して配置される一対の磁気部であって、前記磁気部は複数の磁気体がそれぞれ配列してなり、前記基板の中心部を挟む前記磁気体の配列間隔が、前記基板の外縁部を挟む前記磁気体の配列間隔よりも大きく設定されるように前記磁気体がそれぞれ複数配置され、前記磁気体間であって少なくとも前記基板の前記処理面近傍に磁場を形成した状態で、ガス排気部から前記処理室内のガス雰囲気を排気しつつ、成膜機構により前記基板の前
記処理面に磁性薄膜を成膜する工程と、
を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0132】
好ましくは、前記基板処理工程は、回転機構により前記基板支持部及び前記磁気部を一体で回転させつつ前記基板を処理する。
【0133】
さらに好ましくは、前記基板処理工程は、少なくとも前記基板の前記処理面近傍に形成される前記磁場に対してそれぞれの磁力線の傾斜角度が3%以内に収まる状態で前記基板を処理する。
【0134】
本発明のさらに他の態様によれば、
基板を処理する処理室と、
前記処理室内で前記基板を支持する基板支持部と、
前記基板支持部に支持された前記基板の処理面に磁性薄膜を成膜する成膜機構と、
前記基板支持部に支持された前記基板の処理面に対して該処理面を側方から挟むように互いに対向して配置される一対の磁気部と、
前記処理室内のガス雰囲気を排気するガス排気部と、を備え、
前記磁気部は複数の磁気体と複数の非磁気体とがそれぞれ前記基板の接線に対して平行方向に交互に配列してなり、前記基板の中心部を挟む前記非磁気体の配列間隔が前記非磁気体の配列間隔よりも大きく設定される
基板処理装置が提供される。
【0135】
本発明のさらに他の態様によれば、
処理室内に搬入した基板を基板支持部により支持する工程と、
前記基板支持部に支持された前記基板の処理面に対して該処理面を側方から挟むように互いに対向して配置される一対の磁気部であって、前記磁気部は複数の磁気体がそれぞれ前記基板の接線に対して平行方向に配列してなり、前記基板の中心部を挟む前記磁気体の平行方向の配列間隔が、前記基板の外縁部を挟む前記磁気体の前記平行方向の配列間隔よりも大きく設定され、前記磁気体間であって少なくとも前記基板の前記処理面近傍に磁場を形成した状態で、ガス排気部から前記処理室内のガス雰囲気を排気しつつ、成膜機構により前記基板の前記処理面に磁性薄膜を成膜する工程と、
を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【符号の説明】
【0136】
1 ウエハ(基板)
3 磁気ヨーク
4 基板保持部(位置決め機構)
42 スパッタリング成膜室(処理室)
46 ターゲット保持機構(成膜機構)
50 基板支持部
51 回転機構
53 排気口(ガス排気部)
54 配管(ガス排気部)
55 排気ポンプ(ガス排気部)
80 スパッタ用イオン供給部(成膜機構)
100 磁気部
100a 磁石ケース
101 小片永久磁石(磁気体)
102 スペーサ(非磁気体)
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理する基板処理装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気抵抗素子メモリ(MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory))等の半導体装置の製造工程の一工程として、例えばCoFeB膜等の磁性薄膜を基板上に形成する基板処理工程が実施されてきた。係る工程を実施する従来の基板処理装置は、基板を処理する処理室と、前記処理室内で前記基板を支持する基板支持部と、前記基板支持部に支持された前記基板の処理面に磁性薄膜を成膜する成膜機構と、前記基板支持部に支持された前記基板の処理面に対して該処理面を側方から挟むように対向して配置される磁気部と、前記処理室内のガス雰囲気を排気するガス排気部と、を備えて構成されている。
【0003】
磁性薄膜を前記基板の前記処理面に成膜する際には、磁性薄膜を構成する粒子を前記成膜機構から前記基板の前記処理面に向けて照射する。この際、前記磁気部により前記基板の前記処理面近傍に均一な磁場を形成する。前記成膜機構から前記基板の前記処理面に向けて照射される粒子は、前記処理面近傍に形成された均一な磁場による作用を受ける。その結果、前記磁性薄膜の磁区(磁力を持った結晶集合体)の磁極方向を揃えることができ、磁性薄膜の磁気異方性を揃えることができる(例えば特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−163058号公報
【特許文献2】特開昭63−302612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の基板処理工程では、例えば磁気抵抗素子メモリの仕様変更や特性向上のため、前記基板上に成膜する磁性薄膜の種類を変える場合がある。その場合、成膜する磁性薄膜の種類に応じて、処理面近傍に形成する磁場の強度を変更する場合がある。
【0006】
しかしながら、上述の基板処理装置では、処理面近傍に形成する磁場の強度を変更すると、前記磁場の均一性が低下してしまう場合があった。その結果、前記基板上に成膜する磁性薄膜の磁気異方性を揃えることが困難となってしまう場合があった。
【0007】
本発明は、処理面近傍に形成する磁場の強度を変更しても処理面近傍に均一な磁場を形成することが可能であり、基板上に成膜する磁性薄膜の磁気異方性を良好に揃えることが可能な基板処理装置及び半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、基板を処理する処理室と、前記処理室内で前記基板を支持する基板支持部と、前記基板支持部に支持された前記基板の処理面に磁性薄膜を成膜する成膜機構と、前記基板支持部に支持された前記基板の前記処理面に対して該処理面を側方から挟むように互いに対向して配置される一対の磁気部と、前記処理室内のガス雰囲気を排気するガス排気部と、を備え、前記磁気部は複数の磁気体がそれぞれ配列してなり、前記基板の中心部を挟む前記磁気体の配列間隔が、前記基板の外縁部を挟む前記磁気体の配列間隔よりも大きく設定されている基板処理装置が提供される。
【0009】
本発明の他の態様によれば、処理室内に搬入した基板を基板支持部により支持する工程と、前記基板支持部に支持された前記基板の処理面に対して該処理面を側方から挟むように互いに対向して配置される一対の磁気部であって、前記磁気部は複数の磁気体がそれぞれ配列してなり、前記基板の中心部を挟む前記磁気体の配列間隔が、前記基板の外縁部を挟む前記磁気体の配列間隔よりも大きく設定されるように前記磁気体がそれぞれ複数配置され、前記磁気体間であって少なくとも前記基板の前記処理面近傍に磁場を形成した状態で、ガス排気部から前記処理室内のガス雰囲気を排気しつつ、成膜機構により前記基板の前記処理面に磁性薄膜を成膜する工程と、を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る基板処理装置及び半導体装置の製造方法によれば、処理面近傍に形成する磁場の強度を変更しても処理面近傍に均一な磁場を形成することが可能であり、基板上に成膜する磁性薄膜の磁気異方性を良好に揃えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る基板処理装置の概略構成図である。
【図2】図1の基板処理装置の側面断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る第1の処理炉の断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る第1の処理炉を図3のA方向からみた断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る第1の処理炉を図3のB方向からみた断面図である。
【図6】(a)は本発明の第1の実施形態に係るターゲット保持機構の平面図であり、(b)は図6(a)に示すターゲット保持機構の断面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係るミリング用イオン供給部及びスパッタ用イオン供給部が備える各種電極の平面図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係るイオンミリング工程の様子を示す概略図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る磁性薄膜形成工程の様子を示す概略図である。
【図10】本発明の第1の実施形態に係る磁気部及びウエハの平面図である。
【図11】本発明の第1の実施形態に係る磁気部及びウエハの断面図である。
【図12】本発明の第1の実施形態に係る磁気部を構成している小片磁石の配列の説明図である。
【図13】本発明の第1の実施形態に係る磁気部によりウエハの処理面近傍に形成される磁場の平面方向における強度分布の解析例である。
【図14】本発明の第1の実施形態に係る磁気部によりウエハの処理面近傍に形成される磁場の垂直方向における強度分布の解析例である。
【図15】本発明の第1の実施形態に係る磁気部によりウエハの処理面近傍に形成される磁場偏向角のウエハ中心からの距離依存性を示すグラフ図である。
【図16】長尺な磁石として形成された従来の磁気部及びウエハの平面図である。
【図17】長尺な磁石として形成された従来の磁気部によりウエハの処理面近傍に形成される磁場の平面方向における強度分布の解析例である。
【図18】(a)はウエハの処理面近傍に磁場を形成することなく成膜した磁性薄膜内の各磁区の磁極方向を例示する概略図であり、(b)はウエハの処理面近傍に均一な磁場を形成しつつ成膜した磁性薄膜内の各磁区の磁極方向を例示する概略図である。
【図19】本発明の第2の実施形態に係る磁気部及びウエハの平面図である。
【図20】本発明の第2の実施形態に係る磁気部及びウエハの断面図である。
【図21】本発明の第3の実施形態に係る磁気部及びウエハの平面図である。
【図22】本発明の第4の実施形態に係る磁気部及びウエハの平面図である。
【図23】本発明の第5の実施形態に係る磁気部の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<本発明の第1の実施形態>
(1)基板処理装置の構成
まず、本発明の第1の実施形態にかかる基板処理装置の概要構成例を、図1、図2を用いて説明する。本発明が適用される基板処理装置では、基板としてのウエハ1を搬送するキャリヤとして、FOUP(Front Opening Unified Pod。以下、ポッドという。)が使用される。また、以下の説明において、前後左右は図1を基準とする。すなわち、図1が示されている紙面に対して、前は紙面の下、後ろは紙面の上、左右は紙面の左右とする。
【0013】
(第1の搬送室)
図1及び図2に示されているように、基板処理装置は、第1の搬送室12を備えている。第1の搬送室12は、真空状態などの大気圧未満の圧力(負圧)に耐え得るロードロックチャンバ構造に構成されている。第1の搬送室12の筐体11は、平面視が六角形で上下両端が閉塞した箱形状に形成されている。第1の搬送室12内には、負圧下でウエハ1を移載する第1の基板移載機13が設置されている。第1の基板移載機13は、エレベータ14によって、第1の搬送室12内の気密性を維持しつつ昇降できるように構成されている。
【0014】
(予備室)
筐体11の六枚の側壁のうち前側に位置する二枚の側壁には、搬入用の予備室15と搬出用の予備室16とが、それぞれゲートバルブ17,18を介して連結されている。予備室15及び予備室16は、それぞれ負圧に耐え得るロードロックチャンバ構造に構成されている。さらに、予備室15には、搬入用の基板置き台19が設置されている。また、予備室16には、搬出用の基板置き台20が設置されている。
【0015】
(第2の搬送室)
予備室15及び予備室16の前側には、略大気圧下で用いられる第2の搬送室22が、ゲートバルブ23、24を介して連結されている。第2の搬送室22には、ウエハ1を移載する第2の基板移載機25が設置されている。第2の基板移載機25は、第2の搬送室22に設置されたエレベータ26によって昇降されるように構成されているとともに、リニアアクチュエータ27によって左右方向に往復移動されるように構成されている。
【0016】
第2の搬送室22の左側には、ノッチ又はオリフラ合わせ装置28が設置されている(図1参照)。また、第2の搬送室22の上部には、クリーンエアを供給するクリーンユニット29が設置されている(図2参照)。
【0017】
第2の搬送室22の筐体21の前側には、ウエハ1を第2の搬送室22に対して搬入搬出するウエハ搬入搬出口30と、ポッドオープナ31とが設置されている。ウエハ搬入搬出口30を挟んでポッドオープナ31と反対側、すなわち筐体21の外側にはIOステージ32が設置されている。ポッドオープナ31は、ポッド2のキャップ2aを開閉すると共に、ウエハ搬入搬出口30を閉塞可能なクロージャ31aと、クロージャ31aを駆動する駆動機構31bとを備えている。ポッドオープナ31は、IOステージ32に載置されたポッド2のキャップ2aを開閉することにより、ポッド2に対するウエハ1の出し入れを可能にする。また、ポッド2は図示しない工程内搬送装置(RGV)によって、IOステージ32に対して、搬入(供給)及び搬出(排出)されるようになっている。
【0018】
(処理炉及びクーリングユニット)
図1に示されているように、筐体11の六枚の側壁のうち後ろ側(背面側)に位置する二枚の側壁には、ウエハ1に所望の処理を行う第1の処理炉33と第2の処理炉34とが、ゲートバルブ35、36を介してそれぞれ隣接して連結されている。第1の処理炉33及び第2の処理炉34は、いずれもホットウォール式の処理炉として構成されている。なお、本実施形態では、第1の処理炉33及び第2の処理炉34は、後述するようにスパッタリング成膜装置として構成されている。
【0019】
また、筐体11における六枚の側壁のうちの残りの互いに対向する二枚の側壁には、冷却室としての第1のクーリングユニット37と、第2のクーリングユニット38とがそれぞれ連結されている。第1のクーリングユニット37及び第2のクーリングユニット38は、いずれも処理済みのウエハ1を冷却するように構成されている。
【0020】
なお、基板処理装置には、第1の搬送室12、第2の搬送室22、予備室15,16、第1の処理炉33、第2の処理炉34、第1のクーリングユニット37、第2のクーリングユニット38の全ての動作を制御する制御部としてのコントローラ240が設けられている。
【0021】
(2)処理炉の構成
続いて、スパッタリング成膜装置として構成された第1の処理炉33及び第2の処理炉34の構成について、図3、図4及び図5を用いて説明する。なお、第1の処理炉33及び第2の処理炉34の構成はほぼ同一であるため、以下の説明では、第1の処理炉33を例に挙げて説明することとする。
【0022】
図3は、本実施形態に係る第1の処理炉33を筐体11側から見た断面図である。図4は、本実施形態に係る第1の処理炉33を図3のA方向(下側)からみた断面図である。図5は、本実施形態に係る第1の処理炉33を図3のB方向(側方)からみた断面図である。
【0023】
図3、図4及び図5に示すように、第1の処理炉33は、ウエハ1を処理する処理室してのスパッタリング成膜室42と、スパッタリング成膜室42内でウエハ1を支持する基板支持部50と、基板支持部50に支持されたウエハ1の処理面に磁性薄膜を成膜する後述の成膜機構と、基板支持部50に支持されたウエハ1の処理面に対して処理面を側方から挟むように互いに対向して配置される後述する一対の磁気部と、スパッタリング成膜室42内のガス雰囲気を排気する後述のガス排気部と、を主に備えて構成されている。
【0024】
(スパッタリング成膜室)
処理室としてのスパッタリング成膜室42は、真空容器41内に形成されている。真空容器41は、直方体の筐体形状に構成されている。真空容器41は、筐体11における背面壁に隣接して連結されている。真空容器41の筐体11に隣接した側壁(以下、正面壁とする。)には、スパッタリング成膜室42内にウエハ1を搬入搬出する搬入搬出口43が開設されている。搬入搬出口43は、ゲートバルブ35(図1及び図2参照)によって開閉されるように構成されている。スパッタリング成膜室42内外へのウエハ1の搬送は、上述したように図1に示した第1の基板移載機13によって行われる。そして、ゲートバルブ35を開放することより、第1の搬送室12とスパッタリング成膜室42との間で、ウエハ1を搬送可能となっている。また、ゲートバルブ35を閉めることにより、スパッタリング成膜室42内を気密に保ち、スパッタリング成膜室42内を真空排気することが可能となっている。
【0025】
真空容器41の側壁上部(図3の左側上部)には、回転機構44が設置されている。
回転機構44は、サーボモータ等によって構成されている。回転機構44の回転軸45は、スパッタリング成膜室42内に左右方向に延在するように水平に挿入されて回転自在に支持されている。回転軸45の端部にはターゲット保持機構46が配置されている。図6(a)は、本実施形態に係るターゲット保持機構46の平面図(図3の下側から見た図)であり、図6(b)はターゲット保持機構46の断面図である。図6に示すように、ターゲット保持機構46は例えば八角錐台状に形成されている。八角錐台状に形成されたターゲット保持機構46の各側面(8枚の側面)には、スパッタリングターゲットとしての第1ターゲット47A〜第8ターゲット47Hがそれぞれ保持されるように構成されている。回転機構44によりターゲット保持機構46を回転させることにより、後述するスパッタ用イオン供給部80から供給されるイオンガス(スパッタリングガス)を、第1ターゲット47A〜第8ターゲット47Hのうちいずれか選択された1つのターゲットに照射させることが可能なように構成されている。なお、ターゲット保持機構46は、八角錐台状に形成される場合に限らず、他の多角錐台状に構成されていてもよく、また表裏にそれぞれターゲットを保持する板部材として構成されていてもよい。
【0026】
第1ターゲット47A〜第8ターゲット47Hの材料は、互いに異なる金属や酸化マグネシウム(MgO)等の絶縁材等とすることができ、ウエハ1上に成膜する薄膜の種類に応じて適宜変更される。例えば、基板としてのウエハ1上にCoFeB(コバルト、鉄、ボロン)からなる磁性薄膜を成膜する場合には、ターゲットの材料としてCoFeB合金を用いることができる。また、ウエハ1上にPtFeP(プラチナ、鉄、りん)からなる磁性薄膜を成膜する場合には、ターゲットの材料としてPtFeP合金を用いることができる。また、磁性薄膜の種類によっては、ターゲットの材料として、上述の三元系の合金にさらにCuやNi等を混合した四元又は五元系合金を用いても良い。また、スパッタリングターゲットの材料として、Fe、Cu及びNi等の単体を用いてもよい。また、スパッタリングターゲットを、例えばCoやPt等からなる部材上にFeP合金チップ、FeCu合金チップ、FeNi合金チップ、FeCuP合金チップ、FeNiP合金チップ等の合金チップのうち少なくとも1種のチップを所定の組成割合となるようにして載せた複合ターゲットとして構成してもよい。
【0027】
(基板支持部)
スパッタリング成膜室42の下部には、基板支持部50が設けられている。基板支持部50の上面(保持面)には、磁性薄膜が成膜される基板として、Siからなるウエハ1が水平姿勢で載置されるように構成されている。なお、磁性薄膜が成膜される基板としては、Siウエハ基板の他に例えば、石英ガラス基板、結晶化ガラス基板、酸化マグネシウム(MgO)基板等を用いてもよい。基板支持部50上に載置されたウエハ1の上面(磁性薄膜が成膜される処理面)は、ターゲット保持機構46の第1ターゲット47A〜第8ターゲット47Hのうち、いずれか選択された1つのターゲットに対向するように配置されている。
【0028】
基板支持部50は、回転機構51によって回転可能に構成されている。回転機構51は、チルト機構52によって、水平姿勢(ウエハ1の処理面がターゲット保持機構46側に向く姿勢)とされるか、或いは垂直姿勢(ウエハ1の処理面が後述するミリング用イオン供給部60側に向く姿勢)とされるように構成されている。なお、図3〜図5は、回転機構51が水平姿勢となっている様子を示している。回転機構51及びチルト機構52は、例えばサーボモータ等によって構成されている。なお、本実施形態では、基板支持部50に一対の磁気部を設けて、ウエハ1の処理面近傍に均一な磁場を形成するようにしている。磁気部の詳細構成は、後述する。
【0029】
(ミリング用イオン供給部)
真空容器41の側壁下部(図3の右側下部)には、ミリング用イオン供給部60が設置
されている。ミリング用イオン供給部60は、対向したウエハ1にイオンを照射することによってウエハ1の表面の自然酸化膜又は汚染物質を除去(イオンミリング)するように構成されている。
【0030】
図3〜図5に示すように、ミリング用イオン供給部60は、イオン源室62を備えている。イオン源室62は、筐体61内に形成されている。筐体61は、一端(真空容器41との接続側とは反対側)が閉塞した円筒形状に形成されている。真空容器41の側壁下部(筐体61との接続部)には、イオン照射口63が開設されている。イオン照射口63には、ミリング用イオン供給部60の筐体61の開口が整合されている。筐体61の閉塞壁には、ミリング用イオン源としてのArガスをイオン源室62内に導入(供給)するガス導入管64が接続されている。ミリング用イオン供給部60の筐体61外周には、磁石65が設置されている。磁石65は、筐体61内にプラズマを閉じ込めるカスプ磁場を生成するように構成されている。
【0031】
筐体61内の閉塞壁(イオン照射口63の反対側の端部)には、フィラメント66が設置されている。フィラメント66には、フィラメント66に電力を供給するフィラメント電源(直流電源)67が接続されている。フィラメント電源67の陰極は、イオン源室62内にプラズマを形成するアーク電源(直流電源)68の陰極に接続されている。筐体61のイオン照射口63側の端部には、接地電極70と、減速電極72と、加速電極75とが、イオン照射口63側から順に設置されている。接地電極70はアースに接続されている。減速電極72は減速電源(直流電源)71の陰極に接続されている。減速電源71の陽極はアースに接続されている。加速電極75は、抵抗73を介して加速電源(直流電源)74の陽極に接続されている。また、筐体61及びアーク電源68の陽極も加速電源74の陽極に接続されている。加速電源74の陰極はアースに接続されている。
【0032】
接地電極70、減速電極72及び加速電極75は、円形の平板形状に形成されている。なお、図7は、加速電極75を代表して示している。接地電極70、減速電極72及び加速電極75(以下各電極とも呼ぶ)には、それぞれ、円形の小孔として形成されたイオンビームを透過させる透過口76が多数個形成されている。各電極における透過口76群の開口率(開口面積/全体面積)は、全体的に均一になるように設定されている。例えば、口径の等しい透過口76が全面にわたって均一に分布されている。ミリング用イオン供給部60のイオン照射口63の手前には、イオン照射口63を開閉するシャッタ機構77が設置されている。なお、フィラメント電源67、アーク電源68、減速電源71、加速電源74及びシャッタ機構77は、コントローラ240によって制御されるようになっている。
【0033】
(スパッタ用イオン供給部)
真空容器41の側壁上部(図3の左側上部)には、スパッタ用イオン供給部80が設置されている。スパッタ用イオン供給部80は、第1ターゲット47A〜第8ターゲット47Hのうち、いずれか選択された1つのターゲットにイオンガス(スパッタリングイオン)を照射することにより、選択されたターゲットから粒子を叩き出してウエハ1の処理面に供給し、ウエハ1の処理面に薄膜を成膜するように構成されている。
【0034】
図3〜図5に示すように、スパッタ用イオン供給部80は、イオン源室82を備えている。イオン源室82は、筐体81内に形成されている。筐体81は、一端(真空容器41との接続側とは反対側)が閉塞した円筒形状に形成されている。真空容器41の側壁上部(筐体81との接続部)には、イオン照射口83が開設されている。イオン照射口83には、スパッタ用イオン供給部80の筐体81の開口が整合されている。筐体81の閉塞壁には、スパッタ用イオン源としてのArガスをイオン源室82内に導入するガス導入管84が接続されている。スパッタ用イオン供給部80の筐体81外周には、磁石85が設置
されている。磁石85は、筐体81内にプラズマを閉じ込めるカスプ磁場を生成するように構成されている。
【0035】
筐体81内の閉塞壁(イオン照射口83と反対側の端部)には、フィラメント86が設置されている。フィラメント86には、フィラメント86に電力を供給するフィラメント電源(直流電源)87が接続されている。フィラメント電源87の陰極は、イオン源室82内にプラズマを形成するアーク電源(直流電源)88の陰極に接続されている。筐体81のイオン照射口83側の端部には、接地電極90と、減速電極92と、加速電極95とが、イオン照射口83側から順に設置されている。接地電極90はアースに接続されている。減速電極92は、減速電源(直流電源)91の陰極に接続されている。減速電源91の陽極はアースに接続されている。加速電極95は、抵抗93を介して加速電源(直流電源)94の陽極に接続されている。また、筐体81及びアーク電源88の陽極も加速電源94の陽極に接続されている。加速電源94の陰極はアースに接続されている。
【0036】
接地電極90、減速電極92及び加速電極95は、ミリング用イオン供給部60の場合と同様に、円形の平板形状に形成されている。なお、図7は、加速電極95を代表して示している。接地電極90、減速電極92及び加速電極95(以下各電極とも呼ぶ)には、それぞれ、円形の小孔として形成されたイオンビームを透過させる透過口96が多数個形成されている。各電極における透過口96群の開口率(開口面積/全体面積)は、全体的に均一になるように設定されている。例えば、口径の等しい透過口96が全面にわたって均一に分布されている。なお、フィラメント電源87、アーク電源88、減速電源91及び加速電源94は、コントローラ240によって制御されるようになっている。
【0037】
主に、スパッタ用イオン供給部80、ターゲット保持機構46により、本実施形態に係る成膜機構が構成されている。
【0038】
(ガス排気部)
真空容器41の側壁下部(図3の左側下部)には、排気口53が形成されている。排気口53には、配管54が接続されている。配管54には、排気ポンプ55が接続されている。排気口53は、イオン照射口63から供給されたイオンが直接照射しない位置に配置されている。すなわち、排気口53は、ミリング用イオン供給部60からのイオンが直接照射されないように、イオン照射口63と対向しない位置にずらされて配置されている。このように排気口53をスパッタ用イオン供給部80の下方に設置することにより、スパッタ用イオン供給部80の下方に形成されるデッドスペースを有効に活用することができるようにしている。また、排気口53をイオン照射口63とは対向しない位置に設置することにより、イオンの直接照射による配管54内壁や排気ポンプ55の劣化を抑制することができる。主に、排気口53、配管54及び排気ポンプ55により、本実施形態に係るガス排気部が構成されている。
【0039】
(磁気部)
次に、本実施形態に係る磁気部の詳細構成について図10、図11及び図12を用いて説明する。図10は、本実施形態に係る磁気部100及びウエハ1の平面図である。図11は、本実施形態に係る磁気部100及びウエハ1の断面図である。図12は、本実施形態に係る磁気部100を構成している小片磁石101の配列の説明図である。図10、図11に示すように、基板支持部50は、回転機構51に連結される連結ベース8と、連結ベース8上に設けられウエハ1を保持する基板保持部4と、連結ベース8の外周を囲うように環状に設けられる磁気ヨーク3と、を備えている。基板保持部4は、位置決め機構としてウエハ1の周方向の位置決めを行う例えば真空チャックや静電チャック等のチャック機構として構成されている。磁気ヨーク3には磁気部100が取り付けられるように構成されている。磁気ヨーク3に取り付けられた磁気部100は、基板支持部50に支持され
たウエハ1の処理面に対して処理面を側方から挟むように互いに対向して配置されるように構成されている。磁気部100は、真空封止可能に構成された磁石ケース100aと、磁石ケース100aに設けられた複数の磁気体としての小片磁石101と、を備えている。
【0040】
一対の磁石ケース100aは、互いに平行に配置されている。磁石ケース100aは、ウエハ1の外縁部から所定の距離を空けて配置されている。磁石ケース100aは、ウエハ1の接線に対して平行方向に設置されるようになっている。磁石ケース100aは、長手状に形成されている。磁気ケース100aは、ウエハ1の直径よりも長手方向に長く延在している。磁石ケース100aは、真空封止可能な箱体により構成されている。磁気ケース100aは、複数の小片磁石101を収納可能に構成されており、開閉自在な蓋体(図示しない)を閉じることにより気密に封止可能となっている。
【0041】
複数の小片磁石101は、磁石ケース100aの長手方向に沿って配置されている。すなわち、複数の小片磁石101は、ウエハ1の接線に対して平行方向に配置されている。複数の小片磁石101は、同一形状、同一サイズに形成されている。隣接する小片磁石101同士の間には、非磁気体としてのスペーサ102が設けられている。スペーサ102と小片磁石101とは、交互に配列されるようになっている。ウエハ1の中心部を挟む小片磁石101の配列間隔は、ウエハ1の外縁部を挟む小片磁石101の配列間隔よりも大きく設定されている。すなわち、小片磁石101は、ウエハ1の中心部側からウエハ1の外縁部側に向って隣接する間隔が小さくなるように配置されている。そして、ウエハ1の中心部を挟むスペーサ102の配列間隔は、ウエハ1の外縁部を挟むスペーサ102の配列間隔よりも小さくなるように設定されている。
複数の小片磁石101は、ウエハ1の直径よりも長手方向に長く配列されている。ウエハ1の直径範囲内に配置される小片磁石101の単位長さ当たりの配置数は、ウエハ1の直径範囲外に配置される小片磁石101の単位長さ当たりの配置数よりも少なくなるようになっている。
例えば、小片磁石101の間隔を、ウエハ1の外縁部からウエハ1の中心部に向かって順にL1,L2,L3,L4,L5,L6とした場合、L1<L2<L3<L4<L5<L6を満たすように各小片磁石101がそれぞれ配置される(図12参照)。
【0042】
これにより、ウエハ1の直径範囲外に配置される小片磁石101の形成する磁場の磁束密度は、ウエハ1の直径範囲内に配置される小片磁石101の形成する磁場の磁束密度よりも少なくなるようになっている。また、小片磁石101は、ウエハ1の処理面近傍に形成する磁場の磁力線の傾斜角度(水平方向の傾斜角度)が3%以内に収まるように配置されている。従って、ウエハ1の処理面近傍に形成される磁場の磁力線が、ウエハ1の中心部付近から外縁部に至るまで互いに平行となり、これによりウエハ1の処理面近傍に形成される磁場が均一になる。また、ウエハ1の処理面近傍に形成される磁場の磁力線が、ウエハ1の処理面に対して平行となり、これによりウエハ1の処理面近傍に形成される磁場が均一になる。これにより、ウエハ1に成膜される磁性薄膜の磁気異方性を良好に揃え、磁性薄膜を用いる磁気抵抗素子メモリ等のデバイス性能を向上させることができる。
【0043】
なお、スペーサ102を用いることで、磁気部100の組み立て性が向上し、小片磁石101のそれぞれの配置の微調整が容易となる。また、小片磁石101の個数は、ウエハ1の処理面近傍に形成する磁場の強度により変更可能である。
スペーサ102の形状、磁石形状、磁石特性の組合せを変更することで、ウエハ1の処理面近傍に形成する磁場領域の変更も可能となる。小片磁石101に用いられる磁石としては、例えば、ネオジウム磁石、サマリウムコバルト磁石等の希土類系磁石、フェライト磁石、鉄・クロム・コバルト磁石、プラチナ磁石、アルニコ(Al、Ni、Co)磁石などである。なお、磁石は、永久磁石に限らず、例えば、コイルを用いた電磁石でもよい。
また、磁気ヨーク3は、例えば、保磁力が小さく透磁率が大きい鉄(Fe)、ケイ素鋼等の軟磁性材料により構成されている。また、スペーサ102は、例えば非磁性のSUS、石英(SiO2)、アルミナ(Al2O3)等により構成されている。なお、スペーサ102の代わりに隔壁を磁石ケース100aに設けてもよい。
【0044】
上述のように小片磁石101及びスペーサ102が収納された磁石ケース100aは、磁気ヨーク3の左右それぞれに取り付けられる。そして、磁気ヨーク3は、連結ベース8により基板保持部4と回転機構51とに連結される。これにより、磁気部100は、基板支持部50にウエハ1を載置保持した際に、ウエハ1の処理面に対して処理面を側方から挟むように互いに対向して配置されるようになっている。そして、ウエハ1の処理面に磁性薄膜を成膜する際に、回転機構51により磁気部100をウエハ1と一体的に回転させることが可能となっている。これにより、ウエハ1の処理面近傍での均一な磁場の形成を保持しつつ、成膜される磁性薄膜の磁気異方性を良好に揃えることが可能となり、磁性薄膜の面内膜厚均一性を向上することが可能となる。
【0045】
(3)基板処理装置の動作
まず、基板処理装置におけるウエハ1の処理の一連の流れを、図1及び図2に即して説明する。尚、以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ240により全体的に制御される。
【0046】
未処理のウエハ1を例えば25枚収納したポッド2を工程内搬送装置(図示しない)によって基板処理装置へ搬送する。図1及び図2に示すように、ポッド2は、工程内搬送装置から受け渡されてIOステージ32上に載置される。ポッド2のキャップ2aをポッドオープナ31によって取り外し、ポッド2のウエハ出し入れ口を開放する。
【0047】
ポッドオープナ31によりポッド2を開放すると、第2の基板移載機25がポッド2内からウエハ1をピックアップして予備室15内に搬入し、ウエハ置き台19上にウエハ1を移載する。この移載作業中には、予備室15の第1の搬送室12側のゲートバルブ17を閉じており、第1の搬送室12内の負圧を維持している。ポッド2に収納された所定枚数、例えば25枚のウエハ1のウエハ置き台19上への移載を完了すると、ゲートバルブ23を閉じ、予備室15内を排気装置(図示せず)によって負圧に排気する。
【0048】
予備室15内が予め設定した圧力値になると、ゲートバルブ17を開き、予備室15と第1の搬送室12とを連通させる。続いて、第1の搬送室12の第1の基板移載機13が、ウエハ置き台19上からウエハ1をピックアップして第1の搬送室12内に搬入する。ゲートバルブ17を閉じた後、ゲートバルブ35を開き、第1の搬送室12と第1の処理炉33とを連通させる。
続いて、第1の基板移載機13が第1の搬送室12内から第1の処理炉33内にウエハ1を搬入し、第1の処理炉33内の支持具上に移載する。ゲートバルブ35を閉じた後、後述するように、磁性薄膜形成工程を含む基板処理工程を第1の処理炉33において実施する。
【0049】
第1の処理炉33において基板処理工程が完了すると、ゲートバルブ35を開き、第1の基板移載機13によって、第1の処理炉33内から第1の搬送室12内に処理済みのウエハ1を搬出する。第1の処理炉33内からウエハ1を搬出した後、ゲートバルブ35を閉じる。
【0050】
第1の基板移載機13によって第1の処理炉33内から搬出したウエハ1を、第1のクーリングユニット37内へ搬入し、処理済みのウエハ1を冷却する。
【0051】
処理済みのウエハ1を冷却している間、予備室15内のウエハ置き台19上に予め準備していたウエハ1を、第1の基板移載機13によって第1の処理炉33内に搬入する。第1の処理炉33のゲートバルブ35を閉じた後、後述するように、磁性薄膜形成工程を含む基板処理工程を第1の処理炉33において実施する。
【0052】
第1のクーリングユニット37において予め設定した冷却時間が経過したら、第1の基板移載機13によって、第1のクーリングユニット37内から第1の搬送室12内に冷却済みのウエハ1を搬出する。
【0053】
第1のクーリングユニット37内から第1の搬送室12内に冷却済みのウエハ1を搬出した後、ゲートバルブ18を開く。そして、第1のクーリングユニット37から搬出したウエハ1を予備室16内へ搬送し、ウエハ置き台20上に移載した後、ゲートバルブ18によって予備室16を閉じる。
【0054】
以上の作動を繰り返すことにより、予備室15内に搬入した所定枚数、例えば、25枚のウエハ1を順次処理していく。
【0055】
予備室15内に搬入した全てのウエハ1に対する処理を終了し、全ての処理済みウエハ1を予備室16内に収納して、ゲートバルブ18によって予備室16を閉じる。そして、予備室16内に不活性ガスを供給して略大気圧にする。予備室16内を略大気圧にしたら、ゲートバルブ24を開き、IOステージ32に載置した空のポッド2のキャップ2aをポッドオープナ31によって開く。続いて、第2の搬送室22内の第2の基板移載機25が、ウエハ置き台20上からウエハ1をピックアップして第2の搬送室22内に搬出し、第2の搬送室22におけるウエハ搬入搬出口30を通してポッド2内に収納していく。
【0056】
25枚の処理済みウエハ1のポッド2内への収納を完了すると、ポッドオープナ31によってポッド2のキャップ2aを閉じる。そして、閉じたポッド2を、IOステージ32上から次の工程へと工程内搬送装置によって搬送する。
【0057】
以上の動作は、第1の処理炉33及び第1のクーリングユニット37を使用する場合を例にして説明したが、第2の処理炉34及び第2のクーリングユニット38を使用する場合についても同様の動作を実施する。なお、上述の連続処理装置では、一方の予備室15を搬入用、他方の予備室16を搬出用としたが、一方の予備室16を搬入用、他方の予備室15を搬出用としてもよい。第1の処理炉33と第2の処理炉34とは、それぞれ同じ処理を行ってもよいし、別の処理を行ってもよい。第1の処理炉33と第2の処理炉34とで別の処理を行う場合、例えば、第1の処理炉33でウエハ1に所定の基板処理を行った後に、続けて、第2の処理炉34で別の基板処理を行ってもよい。また、第1の処理炉33でウエハ1に所定の基板処理を行った後に、第2の処理炉34で別の基板処理を行わない場合においては、第1のクーリングユニット37又は第2のクーリングユニット38を経由するようにしてもよい。また、第1の処理炉33と第2の処理炉34とでの処理で熱処理しない等、必要に応じ、第1のクーリングユニット37又は第2のクーリングユニット38を経由しないようにしてもよい。
【0058】
(4)基板処理工程
次に、磁気抵抗素子メモリ等の半導体装置の製造工程の一工程として実施される基板処理工程を、主に図3〜図5を参照しながら説明する。基板処理工程は、上記構成に係る基板処理装置により実施される。
【0059】
(ウエハを支持する工程)
まず、予め所定の圧力に減圧したスパッタリング成膜室42内に搬入搬出口43からウ
エハ1を搬入し、水平姿勢の基板支持部50の基板保持部4の上に受け渡す。このとき、基板支持部50の基板保持部4は、ウエハ1をチャックして位置決め保持する(図11参照)。
【0060】
続いて、搬入搬出口43をゲートバルブ35(図1及び図2参照)によって閉じた後、スパッタリング成膜室42内を排気ポンプ55によって真空引きし、スパッタリング成膜室42内の圧力を例えば0.1〜0.01Paに減圧する。
【0061】
(イオンミリング工程)
続いて、ミリング用イオン供給部60にてArガスをプラズマ化し、Arのイオンビーム78を発生させる。具体的には、ガス導入管64からミリング用イオン供給部60のイオン源室62内にArガスを所定の流量、例えば10sccmで供給する。そして、フィラメント電源67をONにし、フィラメント66から熱電子を放出させる。そして、アーク電源68をONにし、イオン源室62内で電子を移動させてAr原子に衝突させ、イオン源室62内に供給されたArガスをプラズマ化させる。そして、減速電源71及び加速電源74をONとし、加速電極75をプラス電位、減速電極72をマイナス電位とする。その結果、加速電極75、減速電極72及び接地電極70の電位差から生じる電界により、Arイオンを透過口76群からスパッタリング室内42に向けて引き出してイオンビーム78を発生させる。このとき、イオン照射口63をシャッタ機構77によって閉じておく。なお、減速電極72と接地電極70との間の電位差は、スパッタリング室42内にある電子がイオン源室62内に入り込むのを阻止する役目を果たす。
【0062】
そして、図8に示すように、基板支持部50をチルト機構52によって垂直姿勢(ウエハ1の処理面がミリング用イオン供給部60側に向く姿勢)にする。続いて、基板支持部50を回転機構51によって回転させつつ、イオン照射口63をシャッタ機構77によって開く。そして、ミリング用イオン供給部60からイオンビーム78をウエハ1に照射し、ウエハ1をイオンミリング加工するイオンミリング工程を実施する。イオンミリング加工とは、イオンビームを対象物(ウエハ)に照射することにより、対象物を削る加工方法をいう。このイオンミリング加工により、ウエハ1の表面の酸化膜や汚染物質を除去する。所定時間(例えば60〜120秒)が経過したら、ミリング用イオン供給部60によるイオンビーム78の照射を停止し、イオンミリング工程を終了する。
【0063】
(磁性薄膜を成膜する工程)
続いて、回転機構51による基板支持部50の回転を継続させつつ、図9に示すように、基板支持部50をチルト機構52によって水平姿勢(ウエハ1の処理面がターゲット保持機構46側に向く姿勢)にする。
【0064】
また、ターゲット保持機構46を回転機構44によって所定の角度だけ回転させ、第1ターゲット47A〜47Hのうち、予め選択した所望のターゲットをウエハ1の処理面に対向させる。本工程では、例えばCoFeB合金からなるターゲットをウエハ1の処理面に対向させる。
【0065】
ガス導入管84からスパッタ用イオン供給部80のイオン源室82内にArガスを所定の流量(例えば2〜20sccm)で供給する。そして、イオンミリング工程の場合と同様にスパッタ用イオン供給部80にてArガスをプラズマ化し、Arのイオンビーム97を発生させる。次いで、スパッタ用イオン供給部80からターゲットに、Arのイオンビーム97を照射する。すると、CoFeB合金を構成する分子等の粒子98が前記ターゲットから飛び出す。そして、飛び出した粒子98をウエハ1の処理面に照射して吸着(堆積)させ、ウエハ1の処理面にCoFeBの磁性薄膜を成膜する。
【0066】
ここで、本実施形態では、磁気部100により、ウエハ1の全面にわたって均一な磁場をウエハ1の処理面近傍に形成させるようにしている。すなわち、磁気部100によりウエハ1の処理面近傍に形成される磁場の磁力線がウエハ1の中心部付近から外縁部に至るまで互いに平行となり、ウエハ1の処理面近傍に形成される磁場が均一になるようにしている。また、磁気部100によりウエハ1の処理面近傍に形成される磁場の磁力線がウエハ1の処理面に対して平行となり、ウエハ1の処理面近傍に形成される磁場が均一になるようにしている。このため、CoFeB合金を構成する分子等の粒子98は、磁気部100が形成している均一な磁場による作用を受け、磁極方向が揃いつつウエハ1の処理面に堆積する。
【0067】
このとき、粒子98がウエハ1の処理面に向かって飛ぶ力(粒子98の流れる力)の方が、粒子98がウエハ1の処理面近傍に形成されている磁場から受ける力(ローレンツ力)より大きくなるようにする。このようにすることで、粒子98のウエハ1の処理面への到達が妨げられることはなく、ウエハ1の処理面への成膜量の磁場による影響を抑制できる。所定時間(例えば30〜180秒)が経過し、ウエハ1の処理面に所望の膜厚の磁性薄膜を形成したら、スパッタ用イオン供給部80によるイオンビーム97の供給を停止し、磁性薄膜形成工程を終了する。
【0068】
(絶縁薄膜を成膜する工程)
続いて、絶縁薄膜としてMgO薄膜を成膜する。ターゲット保持機構46を回転機構44によって所定の角度だけ回転させ、ターゲット材をMgO合金に切り換えてMgO合金をウエハ1の処理面に対向させる。
そして、上述の磁性薄膜形成工程と同様にスパッタ用イオン供給部80を作動させてウエハ1の処理面に成膜したCoFeB薄膜上にMgO薄膜を成膜する。所定時間(例えば300〜500秒)経過してウエハ1の処理面に所望の膜厚の絶縁薄膜を形成したら、スパッタ用イオン供給部80によるイオンビーム97の供給を停止し絶縁薄膜を成膜する工程を終了する。
【0069】
その後、再び磁性薄膜であるCoFeB薄膜を成膜する場合には、ターゲット保持機構46を回転機構44によって回転させ、ターゲット材をCoFeB合金に切り換えて上述したようにスパッタ用イオン供給部80を作動してウエハ1の処理面(MgO薄膜)上にCoFeB薄膜を形成する。これにより、磁気抵抗素子メモリに用いられるCoFeB/MgO/CoFeBの三層構造を形成することができる。
【0070】
(ウエハの搬出工程)
ウエハ1の処理面にCoFeB薄膜とMgO薄膜とを順に成膜したら、搬出して基板処理工程を終了する。その後、ゲートバルブ35(図1及び図2参照)によって搬入搬出口43を開放し、基板支持部50に保持した処理後のウエハ1を搬入搬出口43から搬出する。
【0071】
(5)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
【0072】
(a)本実施形態によれば、ウエハ1の処理面に対して処理面を側方から挟むように互いに対向して一式の磁気部100が配置されている。磁気部100は、磁石ケース100aに複数の磁気体として複数の小片磁石101をそれぞれ配列している。そしてウエハ1の中心部を挟む小片磁石101の配列間隔が、ウエハ1の外縁部を挟む小片磁石101の配列間隔よりも大きく設定されている。
【0073】
これにより、ウエハ1の処理面近傍に形成される磁場の磁力線がウエハ1の中心部付近
から外縁部に至るまで互いに平行となり、ウエハ1の処理面近傍に形成される磁場が均一になる。また、ウエハ1の処理面近傍に形成される磁場の磁力線がウエハ1の処理面に対して平行となり、ウエハ1の処理面近傍に形成される磁場が均一になる。これにより、ウエハ1に成膜される磁性薄膜の磁気異方性を良好に揃え、磁性薄膜を用いる磁気抵抗素子メモリ等のデバイス性能を向上させることができる。
【0074】
なお、ウエハ1の処理面近傍に形成される磁場と、磁性薄膜の磁気異方性との関係について、以下に説明する。図18(a)はウエハ1の処理面近傍に外部磁場を形成することなく成膜した磁性薄膜内の各磁区320の磁極方向321を例示する概略図であり、図18(b)はウエハ1の処理面近傍に均一な外部磁場を形成しつつ成膜した磁性薄膜内の各磁区320の磁極方向321を例示する概略図である。図18(a)に示すように、ウエハ1の処理面近傍に外部磁場を形成することなく成膜した磁性薄膜の場合には、各磁区320の磁極方向321は不規則となる。一方、図18(b)に示すように、ウエハ1の処理面近傍に均一な外部磁場を形成しつつ成膜した磁性薄膜の場合には、外部磁場の作用を受け、各磁区320の磁極方向321が外部磁場と一様に揃う。このように磁性薄膜形成中にウエハ1の処理面近傍に均一な磁場を形成することで、磁性薄膜内の各磁区の磁極方向の状態を一様に揃え、磁気抵抗素子メモリのデバイス特性の向上が可能となる。
【0075】
また、以下に、本実施形態に係る磁気部100を用いた場合のウエハ1の処理面近傍に形成される磁場の強度分布の解析例を、図13〜図15に示す。
【0076】
図13は、本実施形態に係る磁気部100によりウエハ1の処理面近傍に形成される磁場の平面方向における強度分布の解析例である。図14は、本実施形態に係る磁気部100によりウエハ1の処理面近傍に形成される磁場の垂直方向における強度分布の解析例である。図15は、本実施形態に係る磁気部100によりウエハ1の処理面近傍に形成される磁場偏向角のウエハ1中心からの距離依存性を示すグラフ図である。なお、図13〜図15に示す解析モデルは、簡素化のため実機の半領域で解析を実施している。
【0077】
図13によれば、本実施形態の磁気部100を用いた場合、ウエハ1の処理面を上方から見ると、ウエハ1の処理面近傍に形成される磁場の磁力線が、ウエハ1の中心部付近から外縁部に至るまで互いに平行となり、ウエハ1の処理面全面にわたり磁場が均一になっていることが分かる。また、図14によれば、本実施形態の磁気部100を用いた場合、ウエハ1の処理面を側方から見ると、ウエハ1の処理面近傍に形成される磁場の磁力線が、ウエハ1の処理面に対して平行となり、ウエハ1の処理面全面にわたり磁場が均一になっていることが分かる。また、図15によれば、本実施形態の磁気部100を用いた場合、ウエハ1の処理面近傍に形成される磁場の磁力線301の傾きは±約2度以下であり、目標である磁力線301の傾きの±3度を下回っていることが分かる。なお、図13〜図15のいずれにおいても、ウエハ1の処理面近傍に形成される磁場の強度は、例えば50〜100[Oe]であった。従って、本実施形態の磁気部100を用いた場合、磁性薄膜の形成に必要な磁場条件を満足する均一な磁場の形成が可能であることが分かる。
【0078】
なお、参考までに、長尺な磁石401として形成された従来の磁気部400を用いた場合のウエハ1の処理面近傍に形成される磁場について説明する。図16は、長尺な磁石401として形成された従来の磁気部400及びウエハ1を示す平面図である。図17は、長尺な磁石として形成された従来の磁気部400によりウエハ1の処理面近傍に形成される磁場の平面方向における強度分布の解析例である。なお、図16、図17に示す解析モデルも同様に、簡素化のため実機の半領域で解析を実施している。図17に示すように、磁気部400として従来の長尺な磁石401を用いた場合、磁石401両端の磁極周辺(N極、S極)の磁束密度に引きずられ、ウエハ1外縁部の磁力線301bがウエハ1中心部の磁力線301bに対して斜めに形成されている。このため、ウエハ1中心部の磁力線
301aとウエハ1外縁部での磁力線301bとは互いに平行にならず、不均一な磁場となっていることが分かる。
【0079】
(b)磁気抵抗素子メモリの仕様変更や特性向上等のため、成膜する磁性薄膜の種類を、例えばCoFeB薄膜からPtFeP薄膜等に変更する場合がある。かかる場合、成膜する磁性薄膜の種類に応じてウエハ1の処理面近傍に形成する磁場の強度変更が必要となる場合がある。本実施形態においては、基板支持部50から磁気部100を取り外し、磁石ケース100a内に配置する小片磁石101の磁力強度や個数等を変更することで、ウエハ1の処理面近傍に形成する磁場の強度を容易に変更することが可能である。そして、磁石ケース100a内に配置する小片磁石101及びスペーサ102の配列を調整することで、ウエハ1の処理面近傍に形成される磁場を均一に保つことが可能である。これにより、ウエハ1に成膜される磁性薄膜の磁気異方性を良好に揃え、磁性薄膜を用いる磁気抵抗素子メモリ等のデバイス性能を向上させることができる。なお、成膜する磁性薄膜の種類に応じて小片磁石101及びスペーサ102の配列を予め調整した磁気部100を用意しておくことで、磁気部100を迅速に交換することが可能となる。
【0080】
(c)本実施形態によれば、粒子98がウエハ1の処理面に向かって飛ぶ力(粒子98の流れる力)の方が、粒子98がウエハ1の処理面近傍に形成されている磁場から受ける力(ローレンツ力)より大きくなるようにしている。その結果、粒子98のウエハ1の処理面への到達が妨げられることを抑制でき、ウエハ1の処理面への成膜量への磁場よる影響を抑制できる。
【0081】
(d)本実施形態によれば、小片磁石101を同一形状、同一サイズに形成している。これにより、小片磁石101の製造コストを低減させ、基板処理装置の製造コストを抑制することができる。
【0082】
(e)本実施形態によれば、磁石ケース100aを取り付けた磁気ヨーク3を回転機構51に連結している。そして、ウエハ1の処理面に磁性薄膜を成膜する際に、ウエハ1だけを回転させるのではなく、回転機構51により磁気部100をウエハ1と一体的に回転させている。すなわち、磁性薄膜の面内膜厚均一性を向上させるためにウエハ1を回転させた場合であっても、ウエハ1の処理面近傍での磁場の均一性を保持し、成膜される磁性薄膜の磁気異方性を良好に揃えることができる。なお、磁性を有する粒子98がウエハ1の処理面に吸着(堆積)した後では、磁性薄膜の各磁区の磁場方向を変えることは困難である。本実施形態によれば、粒子98がウエハ1の処理面に堆積する直前に、粒子98に対して磁気部100の形成している均一な磁場を作用させることができるため、成膜される磁性薄膜の磁気異方性を良好に揃えることができる。
【0083】
(f)本実施形態によれば、位置決め機構としてウエハ1の周方向の位置決めを行う基板保持部4を設けている。これにより、基板支持部50に載置されるウエハ1の磁気部100に対する位置、すなわちウエハ1の外周と磁気部100との距離を一定とすることができる。従って、ウエハ1の処理面に再現性良く均一な磁場を形成することができ、基板処理の歩留りを改善させることができる。
【0084】
(g)本実施形態によれば、真空封止可能な磁石ケース100aに小片磁石101を複数配列している。これにより、磁気部100(磁石ケース100a)の大きさを任意に変更でき、磁気部100(磁気ケース100a)をウエハ1の直径2倍未満の大きさにすることができる。従って、スパッタリング成膜室42内の磁気部100を設置するスペースを縮小化でき、基板処理装置を小型化することが可能である。
また、スパッタリング成膜室42の真空置換時間を短縮化することができ、ウエハ1の処理時間を短縮化でき、基板処理の生産性を向上させることができる。
【0085】
(h)本実施形態によれば、一対の磁気部100をウエハ1の処理面を側方から挟むように互いに対向して配置している。そして、磁気部100をウエハ1の接線に対して平行方向にそれぞれ配列している。そして、搬入搬出口43を一対の磁気部100の間に設けるようにしている。これにより、ウエハ1の搬入搬出のスペースを常に確保することができる。
【0086】
<第2の実施形態>
図19は、本発明の第2の実施形態に係る磁気部100B及びウエハ1の平面図である。図20は、本発明の第2の実施形態に係る磁気部100B及びウエハ1の断面図である。
【0087】
本実施形態では、磁気部100Bが備える磁気体が、永久磁石ではなく電磁石である点が第1の実施形態と異なる。すなわち、本実施形態では、図19及び図20に示すように、磁気部100Bは、磁石ケース100aに複数の磁気体としての複数の小片電磁石101Bが設けられている点が第1の実施形態と異なる。なお、ウエハ1の中心部を挟む小片電磁石101Bの配列間隔は、第1の実施形態と同様に、ウエハ1の外縁部を挟む小片電磁石101Bの配列間隔よりも大きく設定されている。複数の小片電磁石101Bには、それぞれ給電部111が接続されている。なお、給電部111と小片電磁石101Bとは、カップリング部(図示しない)を介して接続されている。なお、カップリング部は、回転側と固定側との間を金属ブラシ等により電気的に接続するスリップリング機構として構成されている。これにより、基板支持部50の回転が妨げられないようになっている。給電部111は、コントローラ240(図1参照)に接続されている。コントローラ240は、給電部111が複数の小片電磁石101Bのそれぞれに給電する電力量を調整制御する給電制御部として構成されている。
【0088】
それ以外の構成は第1の実施形態と同様である。
【0089】
本実施形態によれば、磁気部100Bが備える磁気体が、永久磁石ではなく、電磁石である小片電磁石101Bにより構成されている。したがって、給電部111から小片電磁石101Bに給電する電力量を変更することで、ウエハ1の処理面近傍に形成する磁場の強度を容易且つ任意に変更可能である。すなわち、成膜する磁性薄膜の種類に応じて磁場の強度を変更する場合であっても、磁場の強度を容易且つ任意に変更することができる。
【0090】
また、本実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、ウエハ1の中心部を挟む小片電磁石101Bの配列間隔が、ウエハ1の外縁部を挟む小片電磁石101Bの配列間隔よりも大きく設定されている。これにより、各小片電磁石101Bに給電する電力量を個別に調整することなく、ウエハ1の処理面近傍に均一な磁場を形成することが可能である。すなわち、各小片電磁石101Bに給電する電力量を同一としても、ウエハ1の処理面近傍に均一な磁場を形成することが可能である。
【0091】
また、本実施形態によれば、上述したように、各小片電磁石101Bに給電する電力量を個別に調整する必要がない。すなわち、小片電磁石101Bへの給電制御を簡素化することが可能となる。従って、給電部111及び磁気部100Bを安価に製造することができ、基板処理装置の製造コストを抑制することができる。
【0092】
なお、本実施形態は、各小片電磁石101Bに給電する電力量を同一とする場合に限らず、各小片電磁石101Bに給電する電力量を個別に調整するようにしてもよい。かかる場合、ウエハ1の処理面近傍に形成する磁場をより均一化させることが可能となる。
【0093】
なお、本実施形態では、ウエハ1の回転と共に、このウエハ1と一体的に磁気部100Bを回転させるようにしている。すなわち、ウエハ1の処理面に磁性薄膜を成膜する際に、ウエハ1だけを回転させるのではなく、回転機構51により磁気部100をウエハ1と一体的に回転させている。
すなわち、磁性薄膜の面内膜厚均一性を向上させるためにウエハ1を回転させた場合であっても、ウエハ1の処理面近傍での磁場の均一性を保持し、成膜される磁性薄膜の磁気異方性を良好に揃えることができる。
【0094】
これに対し、ウエハ1と一体的に磁気部100Bを回転させない方法も考えられる。かかる方法では、ウエハ1の外周を円周状に囲むように複数の電磁石を配置する。そして、各電磁石に対する給電をウエハ1の回転に合わせて切り替えるようにし、ウエハ1の処理面とウエハ1の処理面近傍に形成する外部磁場とを合わせて同期させて回転させる。しかしながら、このような方法の場合、ウエハ1の回転に合わせて各電磁石に対する給電を切り換える複雑な制御が必要となり、基板処理装置の製造コストが増大してしまう。また、ウエハ1の外周を囲むように複数の電磁石が配置されるためスパッタリング成膜室42の容積が増大し、真空置換時間等が増大し、基板処理の生産性が悪化してしまう。これに対し、本実施形態では、ウエハ1の回転に伴う複雑な給電制御を行う必要がなく、基板処理装置の製造コストを低減させることができる。また、磁気部100B(磁石ケース100a)を小型化できるため、スパッタリング成膜室42(処理室)の容積の増大を防ぎ、真空置換時間等を短縮でき、基板処理の生産性を向上させることができる。
【0095】
<第3の実施形態>
図21は、本発明の第3の実施形態に係る磁気部100C及びウエハ1の平面図である。
【0096】
本実施形態では、磁気部100Cが備える非磁性体の長手方向のサイズを同一にし、磁気体の長手方向のサイズを異ならせている点が第1の実施形態と異なる。すなわち、本実施形態では、図21に示すように、磁気部100Cは、非磁気体としてのスペーサ102Cの長手方向のサイズを同一にし、磁気体としての小片磁石101Cの長手方向のサイズを異ならせている点が第1の実施形態と異なる。具体的には、スペーサ102Cが長手方向のサイズを同一に形成されると共に、ウエハ1の中心部を挟む小片磁石101のサイズ(磁気部100Cの長手方向に沿った小片磁石101の長さ)が、ウエハ1の外縁部を挟むサイズ(磁気部100Cの長手方向に沿った小片磁石101の長さ)よりも大きく設定されている。また、磁気ケース100cがウエハ1の直径サイズの大きさに形成されている。すなわち、小片磁石101C及びスペーサ102Cは、ウエハ1の直径サイズの大きさの位置まで配列されている。
【0097】
それ以外の構成は第1の実施形態と同様である。
【0098】
本実施形態によれば、スペーサ102Cが長手方向のサイズを同一に形成されると共に、ウエハ1の中心部を挟む小片磁石101Cの長手方向のサイズが、ウエハ1の外縁部を挟む小片磁石101Cの長手方向のサイズよりも大きく設定されている。これにより、ウエハ1の中心部を挟む小片磁石101Cの単位長さ当たりの配置数を、ウエハ1の外縁部を挟む小片磁石101Cの単位長さ当たりの配置数よりも少なくすることができる。また、磁気ケース100cの大きさがウエハ1の直径サイズの大きさと略同一の大きさに形成されている。これにより、磁気部100Cを小型化でき、基板処理装置の装置サイズを小型化できるとともに、スパッタリング成膜室42(処理室)の真空置換時間等を短縮でき、基板処理の生産性を向上させることができる。
【0099】
<第4の実施形態>
図22は、本発明の第4の実施形態に係る磁気部100D及びウエハ1の平面図である。
【0100】
本実施形態では、ウエハ1の接線に対して平行方向に小片磁石101Dを配置するのではなく、ウエハ1の外縁部側に向って湾曲させて、すなわち、ウエハ1の中心側近傍からウエハ1の外周に沿わせて小片磁石101Dを配置している点が第3の実施形態と異なる。すなわち、本実施形態では、図22に示すように磁気部100Dは、ウエハ1の中心側近傍からウエハ1の外周に沿わせえてウエハ1の外縁部側に向って湾曲させて小片磁石101Dを配置している点が第3の実施形態と異なる。また、本実施形態では、第3の実施形態と同様に、スペーサ102Dが長手方向のサイズを同一に形成されると共に、ウエハ1の中心部を挟む小片磁石101Dの長手方向のサイズが、ウエハ1の外縁部を挟む小片磁石101Dの長手方向のサイズよりも大きく設定されている。なお、第3の実施形態と同様に、磁気ケース100dの大きさがウエハ1の直径サイズの大きさと略同一の大きさに形成されている。
【0101】
それ以外の構成は第3の実施形態と同様である。
【0102】
本実施形態によれば、ウエハ1の中心側近傍からウエハ1の外縁部側に向って湾曲させて小片磁石101Dを配置している。
これにより、小片磁石101Dがウエハ1の外縁部側でより近くに位置するので、ウエハ1の外縁部側に形成される磁場の磁束密度を増大させることができる。従って、成膜される磁性薄膜の磁気異方性をウエハ1の外縁部側でより良好に揃えることができる。
【0103】
<第5の実施形態>
図23は、本発明の第5の実施形態に係る磁気部100Eの部分拡大図である。
【0104】
本実施形態では、小片磁石101Eは、少なくともウエハ1側方向の形状が鋭角に形成されている点が第1の実施形態と異なる点である。すなわち、本実施形態では、図23に示すように、小片磁石101Eは、少なくともウエハ1側方向の形状が鋭角に形成されている点が第1の実施形態と異なる点である。
【0105】
それ以外の構成は第1の実施形態と同様である。
【0106】
本実施形態によれば、小片磁石101Eは、少なくともウエハ1側方向の形状が鋭角に形成されている。これにより、小片磁石101Eのウエハ1に対向する面の表面積を増大させることができ、ウエハ1の処理面近傍に形成される磁場の磁力線の量をウエハ1の中心部付近からウエハ1の外縁部に至るまで増大させることができる。従って、ウエハ1の処理面近傍に形成される磁場の強度を増大させることができ、成膜される磁性薄膜の磁気異方性をより良好に揃えることができる。
【0107】
<本発明の他の実施形態>
なお、上述の実施形態においては、イオンミリング工程を行った後、磁性薄膜であるCoFeB薄膜を成膜する工程を行い、その後、絶縁薄膜であるMgO薄膜を成膜する工程を行う基板処理工程を実施したが、本発明はこれに限定されない。イオンミリング工程を行った後、磁性薄膜であるCoFeB薄膜を成膜する工程のみを行い、CoFeB薄膜の一層のみ成膜することも勿論適用可能である。また、磁性薄膜であるCoFeB薄膜を成膜する工程を行い、その後、絶縁薄膜であるMgO薄膜を成膜する工程を行った後に、さらに磁性薄膜であるCoFeB薄膜を成膜する工程を行って三層成膜することも適用可能であり、さらに成膜を重ねて三層以上成膜することも適用可能である。
【0108】
また、成膜する磁性薄膜は、CoFeB薄膜に限らず、例えばPtFeP薄膜等の磁性薄膜であってもよい。さらに、CoFeB薄膜やPtFeP薄膜等の三元系の磁性薄膜に限らず、例えばCuやNi等を混合した四元又は五元系以上の磁性薄膜を成膜する場合にも適用可能である。
【0109】
また、上述の実施形態においては、第1の処理炉33及び第2の処理炉34がスパッタリング成膜装置として構成されている場合について説明したが、本発明はかかる場合に限らず、磁性薄膜を成膜する他の基板処理装置全般に適用することができる。
【0110】
また、磁性薄膜が成膜される基板としては、Siウエハ基板の他に石英ガラス基板、結晶化ガラス基板、MgO基板等であってもよい。
【0111】
また、本発明は、本実施形態にかかる半導体製造装置等のウエハ基板を処理する基板処理装置に限らず、プリント配線基板、液晶パネル、磁気ディスクやコンパクトディスク等の基板を処理する基板処理装置にも好適に適用できる。
【0112】
以上、本発明の実施の形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0113】
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0114】
本発明の一態様によれば、
基板を処理する処理室と、
前記処理室内で前記基板を支持する基板支持部と、
前記基板支持部に支持された前記基板の処理面に磁性薄膜を成膜する成膜機構と、
前記基板支持部に支持された前記基板の前記処理面に対して該処理面を側方から挟むように互いに対向して配置される一対の磁気部と、
前記処理室内のガス雰囲気を排気するガス排気部と、を備え、
前記磁気部は複数の磁気体がそれぞれ配列してなり、
前記基板の中心部を挟む前記磁気体の配列間隔が、前記基板の外縁部を挟む前記磁気体の配列間隔よりも大きく設定されている
基板処理装置が提供される。
【0115】
前記成膜機構は、前記基板支持部に支持される前記基板の前記処理面に粒子を照射するターゲットが保持されるターゲット保持部と、前記ターゲット保持部に保持されたターゲットにイオンを照射するスパッタ用イオン供給部とを備えている。
【0116】
好ましくは、前記基板支持部と、前記磁気部とを一体で回転させる回転機構をさらに有する。
【0117】
さらに好ましくは、複数の前記磁気体にそれぞれ給電する給電部と、前記給電部が複数の前記磁気体のそれぞれに給電する給電電流を調整制御する給電制御部と、をさらに有する。
【0118】
さらに好ましくは、隣接する前記磁気体同士の間に非磁気体が設けられて前記非磁気体と前記磁気体とが交互に配置され、前記基板の中心部を挟む前記非磁気体の配列間隔が前記基板の外縁部を挟む前記非磁気体の配列間隔よりも大きく設定されている。
【0119】
さらに好ましくは、前記磁気体は、前記基板の中心部側から前記基板の外縁部側に向っ
て隣接する間隔が小さくなるように配置されている。
【0120】
さらに好ましくは、前記磁気体は、同一形状に形成されている。
【0121】
さらに好ましくは、前記磁気部は前記基板の直径よりも平行方向に長く延在し、該延在部分に配置される前記磁気体の単位長さ当たりの配置数が前記基板の直径範囲内に配置される前記磁気体の単位長さ当たりの配置数よりも少なくなるよう構成されている。
【0122】
さらに好ましくは、前記磁気部は前記基板の直径よりも前記基板の接線に対して平行方向に長く延在し、該延在部分に配置される前記磁気体の単位長さ当たりの配置数が前記基板の直径範囲内に配置される前記磁気体の単位長さ当たりの配置数よりも少なくなるよう構成されている。
【0123】
さらに好ましくは、前記磁気体は、それぞれ形成される磁力線の傾斜角度が3%以内に収まるように配置されている。
【0124】
さらに好ましくは、前記磁気部は前記基板の直径よりも前記基板の接線に対して平行方向に長く延在し、該延在部分に配置される前記磁気体の形成する磁束密度が、前記基板の直径範囲内に配置される前記磁気体の形成する磁束密度よりも少なくなるよう構成されている。
【0125】
さらに好ましくは、前記基板支持部に、前記基板の周方向の位置決めを行う位置決め機構をさらに有する。
【0126】
さらに好ましくは、前記磁気部は、前記基板の中心側近傍から前記基板の外周に沿って前記基板の外縁部側に向って湾曲されて形成されている。
【0127】
さらに好ましくは、前記磁気体は、少なくとも前記基板側方向の形状が鋭角に形成されている。
【0128】
さらに好ましくは、前記基板の外縁部から近い位置に配置される前記磁気体の配列間隔が、前記基板の外縁部から遠い位置に配置される前記磁気体の配列間隔よりも大きく設定されている。
【0129】
さらに好ましくは、隣接する前記磁気体同士の間に非磁気体が設けられて前記非磁気体と前記磁気体とが交互に配置され、前記基板の中心部を挟む前記非磁気体の長手方向のサイズが前記基板の外縁部を挟む前記非磁気体の長手方向のサイズよりも大きく設定されている。
【0130】
さらに好ましくは、前記基板の中心部を挟む前記磁気体の長手方向のサイズが前記基板の外縁部を挟む前記磁気体の長手方向のサイズよりも大きく設定されている。
【0131】
本発明の他の態様によれば、
処理室内に搬入した基板を基板支持部により支持する工程と、
前記基板支持部に支持された前記基板の処理面に対して該処理面を側方から挟むように互いに対向して配置される一対の磁気部であって、前記磁気部は複数の磁気体がそれぞれ配列してなり、前記基板の中心部を挟む前記磁気体の配列間隔が、前記基板の外縁部を挟む前記磁気体の配列間隔よりも大きく設定されるように前記磁気体がそれぞれ複数配置され、前記磁気体間であって少なくとも前記基板の前記処理面近傍に磁場を形成した状態で、ガス排気部から前記処理室内のガス雰囲気を排気しつつ、成膜機構により前記基板の前
記処理面に磁性薄膜を成膜する工程と、
を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0132】
好ましくは、前記基板処理工程は、回転機構により前記基板支持部及び前記磁気部を一体で回転させつつ前記基板を処理する。
【0133】
さらに好ましくは、前記基板処理工程は、少なくとも前記基板の前記処理面近傍に形成される前記磁場に対してそれぞれの磁力線の傾斜角度が3%以内に収まる状態で前記基板を処理する。
【0134】
本発明のさらに他の態様によれば、
基板を処理する処理室と、
前記処理室内で前記基板を支持する基板支持部と、
前記基板支持部に支持された前記基板の処理面に磁性薄膜を成膜する成膜機構と、
前記基板支持部に支持された前記基板の処理面に対して該処理面を側方から挟むように互いに対向して配置される一対の磁気部と、
前記処理室内のガス雰囲気を排気するガス排気部と、を備え、
前記磁気部は複数の磁気体と複数の非磁気体とがそれぞれ前記基板の接線に対して平行方向に交互に配列してなり、前記基板の中心部を挟む前記非磁気体の配列間隔が前記非磁気体の配列間隔よりも大きく設定される
基板処理装置が提供される。
【0135】
本発明のさらに他の態様によれば、
処理室内に搬入した基板を基板支持部により支持する工程と、
前記基板支持部に支持された前記基板の処理面に対して該処理面を側方から挟むように互いに対向して配置される一対の磁気部であって、前記磁気部は複数の磁気体がそれぞれ前記基板の接線に対して平行方向に配列してなり、前記基板の中心部を挟む前記磁気体の平行方向の配列間隔が、前記基板の外縁部を挟む前記磁気体の前記平行方向の配列間隔よりも大きく設定され、前記磁気体間であって少なくとも前記基板の前記処理面近傍に磁場を形成した状態で、ガス排気部から前記処理室内のガス雰囲気を排気しつつ、成膜機構により前記基板の前記処理面に磁性薄膜を成膜する工程と、
を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【符号の説明】
【0136】
1 ウエハ(基板)
3 磁気ヨーク
4 基板保持部(位置決め機構)
42 スパッタリング成膜室(処理室)
46 ターゲット保持機構(成膜機構)
50 基板支持部
51 回転機構
53 排気口(ガス排気部)
54 配管(ガス排気部)
55 排気ポンプ(ガス排気部)
80 スパッタ用イオン供給部(成膜機構)
100 磁気部
100a 磁石ケース
101 小片永久磁石(磁気体)
102 スペーサ(非磁気体)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する処理室と、
前記処理室内で前記基板を支持する基板支持部と、
前記基板支持部に支持された前記基板の処理面に磁性薄膜を成膜する成膜機構と、
前記基板支持部に支持された前記基板の前記処理面に対して該処理面を側方から挟むように互いに対向して配置される一対の磁気部と、
前記処理室内のガス雰囲気を排気するガス排気部と、を備え、
前記磁気部は複数の磁気体がそれぞれ配列してなり、
前記基板の中心部を挟む前記磁気体の配列間隔が、前記基板の外縁部を挟む前記磁気体の配列間隔よりも大きく設定されている
ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記基板支持部と前記磁気部とを一体で回転させる回転機構をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
複数の前記磁気体にそれぞれ給電する給電部と、前記給電部が複数の前記磁気体のそれぞれに給電する給電電流を調整する給電量調整部と、をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項4】
処理室内に搬入した基板を基板支持部により支持する工程と、
前記基板支持部に支持された前記基板の処理面に対して該処理面を側方から挟むように互いに対向して配置される一対の磁気部であって、前記磁気部は複数の磁気体がそれぞれ配列してなり、前記基板の中心部を挟む前記磁気体の配列間隔が、前記基板の外縁部を挟む前記磁気体の配列間隔よりも大きく設定されるように前記磁気体がそれぞれ複数配置され、前記磁気体間であって少なくとも前記基板の前記処理面近傍に磁場を形成した状態で、ガス排気部から前記処理室内のガス雰囲気を排気しつつ、成膜機構により前記基板の前記処理面に磁性薄膜を成膜する工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記基板処理工程は、回転機構により前記基板支持部及び前記磁気部を回転させつつ前記基板を処理することを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項1】
基板を処理する処理室と、
前記処理室内で前記基板を支持する基板支持部と、
前記基板支持部に支持された前記基板の処理面に磁性薄膜を成膜する成膜機構と、
前記基板支持部に支持された前記基板の前記処理面に対して該処理面を側方から挟むように互いに対向して配置される一対の磁気部と、
前記処理室内のガス雰囲気を排気するガス排気部と、を備え、
前記磁気部は複数の磁気体がそれぞれ配列してなり、
前記基板の中心部を挟む前記磁気体の配列間隔が、前記基板の外縁部を挟む前記磁気体の配列間隔よりも大きく設定されている
ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記基板支持部と前記磁気部とを一体で回転させる回転機構をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
複数の前記磁気体にそれぞれ給電する給電部と、前記給電部が複数の前記磁気体のそれぞれに給電する給電電流を調整する給電量調整部と、をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項4】
処理室内に搬入した基板を基板支持部により支持する工程と、
前記基板支持部に支持された前記基板の処理面に対して該処理面を側方から挟むように互いに対向して配置される一対の磁気部であって、前記磁気部は複数の磁気体がそれぞれ配列してなり、前記基板の中心部を挟む前記磁気体の配列間隔が、前記基板の外縁部を挟む前記磁気体の配列間隔よりも大きく設定されるように前記磁気体がそれぞれ複数配置され、前記磁気体間であって少なくとも前記基板の前記処理面近傍に磁場を形成した状態で、ガス排気部から前記処理室内のガス雰囲気を排気しつつ、成膜機構により前記基板の前記処理面に磁性薄膜を成膜する工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記基板処理工程は、回転機構により前記基板支持部及び前記磁気部を回転させつつ前記基板を処理することを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図15】
【図16】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図6】
【図13】
【図14】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図15】
【図16】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図6】
【図13】
【図14】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−58072(P2011−58072A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211039(P2009−211039)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】
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