説明

基板処理装置及び基板処理方法

【課題】基板の被処理面を汚染する恐れのあるミスト等の堆積を防止する。
【解決手段】有底二重筒状体のチャンバー10と、基板20を支持するテーブル21とを含んで基板処理装置1を構成する。内側筒体12の外壁と外側筒体13の内壁とで囲まれる第2の空間S2内の気体を外側筒体13の外壁外へ排気させることで、第2の空間S2内の圧力を、内側筒体12内の第1の空間S1の圧力よりも低下させ、これにより第1の空間S1内の気体が、連通機構30を通過して第2の空間S2に向けて流れるようにする。その際、連通機構30を通過する気流を「絞る」ことにより、ベンチュリ効果によりその流れを付勢し、基板20を処理する際に発生したパーティクルを含むミストなどを第1空間S1から効率よく排気し、基板の被処理面の汚染を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体ウエハ又はガラス基板等の基板を支持した状態で水平方向に回転するテーブルを用いて、純水あるいは薬液の処理液で表面処理を行う基板処理装置及びに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程の一つであるフォトレジスト工程では、一般に、半導体ウエハ又はガラス基板(以下、これらを単に「基板」と称する)等の被処理面にエッチングして洗浄し、所定のパターンを露光した後、薬液を液盛することにより、レジストパターンを作成する。その後、レジストの溶解物を現像液と共に基板表面から除去するために、純水等で洗浄する等の表面処理が行われている。
一例を挙げると、回転するテーブルを備えた処理装置において、テーブルの回転軸の中心と処理対象の基板の中心とを一致させ、その基板を水平に載置して純水あるいは薬液等の処理液を、テーブルの中心部付近、つまり基板の中心部付近に供給する。そして、遠心力により付勢された処理液を基板の被処理面全体に行き渡わせることにより表面処理を進めている。
【0003】
しかし、従来のこの種の処理装置は、テーブルを高速回転させ処理液を供給するため、当該テーブルを含む処理空間内でパーティクルを含んだミストなどが巻き上がり、基板の被処理面に付着したり、処理後の基板表面を汚染してしまうという問題がある。また、処理に使用される薬液の性質が腐食性のものであれば、この薬液がミスト化して巻き上り処理装置の駆動部や搬送部などに付着してこれらの耐久性を低下させるという問題も起こる。
【0004】
ミストが被処理面に付着することを防止する観点からは、特許文献1に開示された装置がある。この装置では、処理が行われる処理容器に、垂下状に形成される円筒状の整流体を設け、この整流体と対向する処理容器の側壁に設けられた上部排気口から巻き上がったミストを排気するようにしている。
【0005】
特許文献2に開示された装置は、テーブルに対して相対的に昇降自在となる気流制御手段を設け、外圧値と内圧値を測定しながら当該気流制御手段とテーブルとの間隔を調整し気流の流入量を制御することで、一度排出されカップ内部に収容された雰囲気が再度カップ外部に漏れ出すことを防止できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−79220号公報
【特許文献2】特開2009−59795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されている装置では、上部排気口からも排気する構成である。また、これにより排気処理能力の高い機器が必要となりコストアップにつながる。さらに、整流体に付着したパーティクルを含むミストなどは除去されずに残るため、ある段階で基板の被処理面に降りかかり、当該基板を汚染することがある。
また、特許文献2に開示されている装置では、その構成が複雑であることから、製造コストの負担が大きくなる。さらに、気流制御手段に付着したパーティクルを含むミストなどは除去されずに残るため、前述したように、ある段階で基板の被処理面に降りかかり、当該基板を汚染することがある。
【0008】
本発明は、上記の問題を解消し、基板を処理する処理空間の気体を効率よく排気し、基板を汚染するパーティクルを含むミストなどの堆積を防止することができる基板処理技術を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、基板処理装置及び基板処理方法を提供する。
本発明の基板処理装置は、内側筒体と外側筒体とを含み、前記内側筒体内の第1の空間に処理対象の基板が配置される有底二重筒状体と、前記内側筒体の外壁と前記外側筒体の内壁とで囲まれる第2の空間の気体を当該第2の空間から当該外側筒体の外壁外に排気させる排気手段と、前記内側筒体の所定の部位に形成され、前記第1の空間と前記第2の空間とを連通させる連通機構とを備え、前記排気手段により、前記第2の空間の気体を当該第2の空間から前記外側筒体の外壁外に排気させて当該第2の空間の圧力を低下させることで、前記第1の空間の圧力を当該第2の空間の圧力よりも高くし、これにより当該第1の空間の気体が当該第2の空間に向けて流れる際に付勢されて前記連通機構を通過するように構成される。
この基板処理装置は、有底二重筒状体のチャンバーの第2の空間の気体を外側筒体の外壁外へ排出して第2の空間の圧力を低下させ、第1の空間の圧力を高くすることで第1の空間のテーブルの表面側にある気体が、連通機構を通過して第2の空間に向けて流れるように構成されている。連通機構を通過する際に気流を「絞る」ため、ベンチュリ効果により、その流れ(気流)が付勢される。これにより、基板を処理する際に発生するパーティクルを含むミストなどは第1の空間から効率よく排気されるため、基板の汚染を防止できる。また、第1の空間から無秩序に拡散することがなくなるため、気体による人体への影響、及び、基板処理装置の装備部品の腐食なども抑制できる。さらに、内側筒体の開口部も第1の空間に向かう気流を「絞る」ため、ベンチュリ効果により、気流がさらに付勢され、良好なダウンフローが得られる。
【0010】
ある実施の態様では、前記基板を、その表面側が処理対象となるように前記内側筒体内の第1の空間内で当該基板を水平に支持させる支持手段をさらに備え、前記排気手段により、前記第2の空間の気体を当該第2の空間から前記外側筒体の外壁外に排気させて当該第2の空間の圧力を低下させることで、前記第1の空間の圧力を当該第2の空間の圧力よりも高くし、これにより当該第1の空間の前記基板の表面側にある気体が当該第2の空間に向けて流れる際に付勢されて前記連通機構を通過するように構成される。
これにより、第1の空間の中で、基板の表面側が処理対象となるように支持された基板の被処理面上のパーティクルを含むミストなどが、第1の空間から効率よく排気されるため、基板の被処理面の汚染をより効果的に防止することができる。
【0011】
他の実施の態様では、前記支持手段は、処理対象の前記基板を、その表面側に支持させるテーブルであり、前記テーブルを、前記第1の空間内で昇降自在に移動させるテーブル昇降手段をさらに備えており、前記第1の空間の気体が、前記連通機構を通過して前記第2の空間に向けて流れる際に、当該第1の空間内を上昇又は下降する前記テーブルの外端面と前記内側筒体の内壁との隙間を流れる前記第1の空間の気体が、当該テーブルの表面側から当該テーブルの裏面側に向けて流れる際に付勢されて当該隙間を通過するように構成される。
この基板処理装置は、内側筒体の内壁とテーブルの外端面との間には隙間があり、第1の空間の気体はテーブルの表面側から裏面側に向かってこの隙間を流れて外側筒体の外壁外へ排出される。この隙間は気流を「絞る」ため、ベンチュリ効果により、気流がさらに付勢される。そのため、テーブルが上昇又は下降する際に、テーブルが上昇又は下降する範囲の内側筒体の内壁に付着しているパーティクルを含むミストなどは、付勢された気流により効率よく当該内壁から除去される。これにより、内側筒体の内壁に基板の被処理面を汚染するパーティクルを含むミストなどの堆積が防止できる。
【0012】
また、他の実施の態様では、前記テーブルは、前記基板の被処理面を前記第1の空間に露出した状態で当該被処理面と平行に回転できるように前記内側筒体内に配備されており、前記基板は、前記テーブルが前記内側筒体の開口部で停止した状態で当該テーブルに支持され、又は、支持の解除が行われるものであり、前記テーブル昇降手段は、処理前の基板を支持した前記テーブルを前記内側筒体の開口部から下降させて当該下降を停止させ、且つ、処理後の基板を支持した当該テーブルを前記内側筒体の開口部まで上昇させて当該上昇を停止させるように構成されている。
この基板処理装置は、テーブルが内側筒体の開口部で停止して、当該開口部を「蓋」することとなり、第1の空間の気体及び第2の空間の気体が、この開口部を通過して処理空間の外に流出してしまうことが防止される。
さらに、他の実施の態様では、前記排気処理手段は、前記外側筒体の外壁の接線方向に平行して当該外側筒体の外壁に設けられた排気ダクトを介して、前記第2の空間の気体を当該外側筒体の外壁外に排気させるものであり、前記排気ダクトは、前記排気手段が前記第2の空間の気体を前記外側筒体の外壁外に排気させる際に、当該外側筒体の内壁に沿って回転する気流を生じさせ、当該気流により当該第2の空間の気体が付勢されて前記外側筒体の外壁外に排気されるように構成されている。
これにより、第2の空間の気体は、第2の空間内を回転する気流の遠心力により付勢さるため、排気効率を高めることができる。さらに、第2の空間の気体が効率よく外側筒体の外壁外に排気されるため、第1の空間の気体もより効率よく第2の空間に向けて流れ、第1の空間の排気効率も高まる。
【0013】
基板処理に用いられた使用済み処理液の回収の観点からは、前記第2の空間内には、前記連通機構を通過した、前記基板の処理に使用された使用済み処理液を回収する樋が前記内側筒体の外壁側から前記連通機構を覆うように備えられており、前記樋には、前記内側筒体の外壁側から前記連通機構の一部又は全部を遮蔽することで前記第1空間の気体の当該連通機構の通過を制限させる遮蔽壁が設けられており、前記遮蔽壁が前記連通機構の一部又は全部を遮蔽するために、前記樋を前記内側筒体の外壁に沿って上昇又は下降させる樋昇降手段を、さらに備えて構成されている。
この基板処理装置は、遮蔽壁により連通機構の一部又は全部を遮蔽することで、連通機構を通過する気流を制限することができる。これにより、遮蔽壁により連通機構の一部を遮蔽することで連通機構を通過する気流を制限し、例えば、使用する処理液の粘度に応じた付勢を気流に与え、基板の被処理面から振り切られる処理液の「キレ」を良好に均一化することができる。また、遮蔽壁により連通機構の全部を遮蔽し、内側筒体の開口部から窒素若しくはCDA(クリーンドライエア)ガスを吹き付けて、第1の空間を窒素雰囲気若しくはCDA雰囲気にすることができる。さらに、遮蔽壁により連通機構の全部を遮蔽すれば、第2の空間の気体が第1の空間に流出しないようにできる。
他の実施の態様では、前記樋には、当該樋に侵入して当該樋の中を移動する前記使用済み処理液の移動速度を減速させる障壁が設けられており、前記樋に侵入して当該樋の中を移動する前記使用済み処理液は前記障壁に当たり減速して当該樋で回収され、且つ、当該樋に侵入した前記第1の空間の気体は当該樋の中を通過して前記第2の空間に流出するように構成される。
樋に侵入して、当該樋の中を移動する使用済み処理液は、当該樋に設けられた障壁に当たってその勢を失い、重力の働きにより当該樋で回収される。また、樋に侵入した第1の空間の気体は、当該樋の中を通過して第2の空間に流出する。これにより、樋に侵入する気流が、当該樋の中で乱流を発生させて当該樋に侵入した使用済み処理液を撹拌せず、使用済み処理液の回収効率も高まる。
【0014】
また、他の実施の態様では、前記使用済み処理液を回収する樋は、複数種類の前記基板の処理に使用された当該使用済み処理液それぞれを独立して回収させるために、昇降方向に複数段設けられており、前記樋昇降手段は、各段でそれぞれ異なる前記使用済み処理液を回収させるために、回収される当該使用済み処理液に対応する段が前記連通機構を覆うように、前記樋を前記内側筒体の外壁に沿って上昇又は下降させるように構成されている。
これにより、一回の基板の処理で複数種類の処理液が使用される場合でも、回収される使用済み処理液それぞれを独立して回収できる。さらに、回収する使用済み処理液が変わる毎に行われる樋の洗浄が不要となり、効率的に基板の処理を行うことができる。
さらに、また、他の実施の態様は、前記有底二重筒状体が透光性部材で構成されている基板処理装置である。これにより、基板の処理状況が有底二重筒状体の外観から視認できるため、例えば、基板処理の最中に発生した装置の不具合、処理中の基板の破損などを迅速に発見することができる。
【0015】
基板を処理する処理空間の気体を排気する基板処理装置の処理方法であって、内側筒体と外側筒体とを含み、当該内側筒体内の第1の空間に処理対象の基板が配置される有底二重筒状体の、当該内側筒体の外壁と当該外側筒体の内壁とで囲まれる第2の空間の気体を、排気手段により当該第2の空間から当該外側筒体の外壁外に排気させて当該第2の空間の圧力を低下させることで、当該内側筒体内の第1の空間の圧力を当該第2の空間の圧力よりも高くし、前記第1の空間の気体が、前記内側筒体の所定の部位に形成され、当該第1の空間と前記第2の空間とを連通させる連通機構を通過して当該第2の空間に向けて流れる際に付勢される工程を含む基板処理方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、基板を処理する処理空間の気体を効率よく外部に排気することができ、基板を汚染するパーティクルを含むミストなどの堆積が効果的に防止される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】基板処理装置の概略縦断面図。
【図2】図1A−A部における概略平面図。
【図3】基板の搬出入時のテーブル位置を示す基板処理装置の概略縦断面図。
【図4】基盤が処理される際の気流及び処理液の移動状態を示した概略縦断面図。
【図5】テーブルが下降する際の気流を模式的に示した概略縦断面図。
【図6】テーブルが上昇する際の気流を模式的に示した概略縦断面図。
【図7】多段式樋で使用済み処理液が回収される様子を、気流及び処理液の移動の様子を含めて模式的に示した概略縦断面図。
【図8】基板処理装置において実行される基板処理方法の全体手順説明図。
【図9】第2実施形態の基板処理装置の概略縦断面図。
【図10】第2実施形態の基板処理装置の概略平面図。
【図11】基板の搬出入時のテーブル位置と、多段式樋の様子とを示す基板処理装置の概略縦断面図。
【図12】多段式樋で使用済み処理液が回収される様子を、気流及び処理液の移動の様子を模式的に示した概略縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の基板処理装置は、薬液、洗浄液その他の液体(処理液)などを使用して、半導体ウエハやガラス基板のような基板を処理する装置である。この基板処理装置は、使用済み処理液やパーティクルを含んだミストなどが、基板の被処理面に付着すること、基板表面を汚染することなどを防止するための好適な気流を形成するチャンバーの構造に主たる特徴がある。以下、基板の一方の表面を、洗浄及び乾燥のような被処理面とし、この被処理面を水平に支持した状態で、被処理面と平行に回転するテーブルを有しており、このテーブル上の被処理面に向けて、処理液が供給される装置を例として、この基板処理装置の実施の形態例を説明する。
【0019】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態の基板処理装置1の周辺部材の構成例を示す概略縦断面図である。
図1に示す基板処理装置1は、内側筒体12と外側筒体13とを含む有底二重筒体から成るチャンバー10と、トップカバー11を含んで構成される。このチャンバー10とトップカバー11により形成される空間が、基板20に各種処理を施すための主たる処理空間となる。
有底筒体とは、筒状体の上底部が開口し、下底部が側壁と連設されているものをいい、有底二重筒体は、外側筒体の中に内側筒体が配置されているものをいう。なお、筒体の形状は、円筒のほか、多角形筒であってもよい。
【0020】
チャンバー10の内側筒体12と外側筒体13の形状の一例として、それぞれが円筒形状のものを図1及び図2で示している。このチャンバー10の外壁には、排気ダクト27が設けられている。詳細は後述する。
【0021】
基板処理装置1は、テーブル21の回転及びテーブル21を上昇又は下降させるためのアクチュエータ機能を備えたモータ23と、基板処理に使用された使用済み処理液を回収するための多段式樋24、多段式樋24を上昇又は下降させるためのアクチュエータ26、モータ23及びアクチュエータ26、排気処理部50、図示しない基板20の被処理面に処理液を供給する処理液供給機構、基板20をテーブル21に支持するためのチャック機構などを制御するためのコンピュータを含む制御部40を主として備えている。
【0022】
内側筒体(12)内の第1の空間(以下、S1空間という場合がある)でテーブル21が回転できるように、当該内側筒体12の内壁と対向するテーブル21の外端面との間は所定の隙間が設けられている。所定の隙間とは、例えば、テーブル21の外端面と対向する内側筒体12との隙間を例えば2mm程度とする。この隙間の大きさを調整することで、後述する気流に与える付勢を強めたり、又は、弱めたりすることができる。内側筒体のトップカバー10側の一端は、開口されている(開口部)。
【0023】
内側筒体12の所定の部位には、S1空間と当該内側筒体12の外壁と外側筒体13の内壁とで囲まれる第2の空間(以下、S2空間という場合がある)とを連通する連通機構30が形成されている。
この連通機構30は、基板20の処理の際に供給された処理液が基板20の被処理面上を移動して、その後当該被処理面から振り切られ、当該振り切られた使用済み処理液を、後述する多段式樋24で回収させるように通過させる。そのため、連通機構30は、被処理面から振り切られた使用済み処理液が内側筒体12と交わる(ぶつかる)当該内側筒体12の部位に、任意の形状及びサイズで形成されている。
任意の形状及びサイズとは、例えば、被処理面から振り切られた使用済み処理液が内側筒体12と交わる(ぶつかる)当該内側筒体12の部位を中心に、幅40mm程度の帯状に内側筒体12の内壁を取り囲み、この囲んだ部分の約80パーセントが開口するような形状及びサイズである。別例としては、前述の囲んだ範囲を全て開口させて、内側筒体12に形成された連通機構30を挟み、内側筒体12が上下に2分割されるようにしてもよい。
この連通機構30を通過して、S1空間の気体は、S2空間へ流出する。この気体は、例えば、基板20の処理に使用された使用済みの処理液のミスト、パーティクルを含むミスト、ガス化した使用済み処理液などを含むものである。
【0024】
トップカバー11には、処理前の基板20を基板処理装置1の処理空間の外から当該処理空間に搬入し、又は、処理後の基板20を基板処理装置1の処理空間から当該処理空間の外に搬出するための基板搬出入口が備えられている。このトップカバー11により囲まれる空間は、前述した処理空間の一部を形成する。この基板搬出入口が閉じた状態で基板20の処理が行われるため、処理空間に発生した処理液のミスト及びガス化した処理液などは、当該処理空間の外に流出しないようになっている。トップカバー11により囲まれる空間には、図示しないクリーンエアー供給機構によりクリーンエアーが供給される。
【0025】
多段式樋24は、複数種類の基板20の処理に使用された使用済み処理液それぞれを独立して回収させるために、昇降方向に複数段設けられている。そのため、多段式樋24は、各段でそれぞれ異なる使用済み処理液を回収させるために、回収される当該使用済み処理液に対応する段(以下、便宜上、特定の樋という場合がある)が連通機構30を覆うように、制御部40に制御されて内側筒体12の外壁に沿って上昇又は下降する。図1は、3段の樋を例示しているが、段数は任意である。
多段式樋24の各段の中で連通機構30を覆う特定の樋には、S1空間の気体も侵入してくる。この特定の樋に侵入するS1空間の気体が、当該特定の樋の中を通過してS2空間に向けて流すための排気口が、それぞれの樋に設けられている。詳細は後述する。
【0026】
制御部40は、供給する処理液の供給開始又は停止、供給する処理液の単位時間当たりの供給量などを制御するために、図示しない処理液供給機構に指示を出す。制御部40は、基板20をテーブル21に支持し又は支持の解除を制御するために、図示しないチャック機構に指示を出す。
制御部40により制御されたモータ23の回転力は、駆動部22を介してテーブル21に伝達され、これによりテーブル21が回転し、あるいは回転を停止する。また、制御部40は、モータ23が備えるアクチュエータ機能によるテーブル21の上昇の開始あるいは停止、又は下降の開始あるいは停止の制御も行う。制御部40により制御されたアクチュエータ26の送り出し又は引き戻しの作用は、伝達部25を介して多段式樋24に伝達され、これにより多段式樋24が上昇の開始あるいは停止、又は下降の開始あるいは停止する。この制御部40による制御手順については後述する。
【0027】
図2は、図1に示された基板処理装置1の「A−A」部の概略平面図である。テーブル21に基板20が支持され、テーブル21を取り囲む内側筒体12と、内側筒体12の外周を取り囲むように備わる多段式樋24と、多段式樋24を取り囲む外側筒体13と、を含んで基板処理装置1が構成されている様子を図2は例示している。
図2中の排気ダクト27は、制御部40により制御される排気処理部50に接続されている。この排気処理部50は、排気ダクト27を介してS2空間の気体を吸引する。S2空間の気体が吸引されることでS2空間の圧力は低くなり、S1空間圧力はS2空間の圧力と比較して高くなる。そのため、S1空間の気体は連通機構30を通過してS2空間に向けて流れ、S1空間の気体は結果として外側筒体13の外壁外に排気されることとなる。
【0028】
排気ダクト27は、外側筒体13の外壁の接線方向に平行して設けてもよい。この状態で排気ダクト27を介してS2空間の排気を行うと、外側筒体13の内周に沿って回転する気流が発生する。S2空間の気体は、この回転する気流の遠心力により付勢され効率よく外側筒体13の外壁外に排気される。また、S2空間の気体が付勢されて排気されるため、S1空間の気体も効率よくS2空間に向けて流れる。
【0029】
図3は、テーブル21が内側筒体12の開口部で停止している様子を例示している。
テーブル21は、制御部40に制御されるモータ23が備えるアクチュエータ機能を使用して、制御部40の指示で上昇又は下降される。
ここで、内側筒体12の開口部でテーブル21が停止すれば、当該開口部はテーブル21により「蓋」された状態となる。この状態で、基板搬出入口が開かれ、図示しない基板搬出入機構により処理前の基板20が処理空間に搬入される。搬入された基板20は、図示しないチャック機構によりテーブル21に支持され、その後基板搬出入口が閉じられる。また、処理が終了した基板20を処理空間から搬出する場合も、内側筒体12の開口部がテーブル21により「蓋」された状態で、基板搬出入口が開かれ、処理空間から当該基板20が搬出される。これにより、S1空間及びS2空間のそれぞれの気体を、内側筒体12の開口部からトップカバー11により囲まれる空間に流出させずに基板20の搬出入が可能となる。また、基板20の搬出入の際に基板搬出入口が開いても、S1空間及びS2空間は汚染されずに済むことにもなる。
【0030】
図4は、テーブル21に支持された基板20の被処理面への処理の様子及び、その際の気流の様子を模式的に示している。図4に示す処理液は、制御部40の制御により、処理液供給機構に接続されているノズルから、テーブル21の回転速度が所定値に達した状態で、所定時間、基板20の中心に向けて鉛直下方に供給される。供給された処理液は、基板20の中心から侵入し、テーブル21の回転による遠心力で付勢されて基板20の外周方向へと拡散する。拡散した処理液は、基板20の外周へと達して被処理面上から振り切られる。振り切られた処理液は、連通機構30を通過して使用済み処理液の種類に応じて多段式樋24の特定の樋で回収される。
被処理面上から振り切られた処理液が、連通機構30を通過できるような遠心力による付勢は、テーブル21の回転速度の他、気流による付勢、処理液の粘度や処理液の供給圧力、基板20の被処理面の面積等を考慮して設定される。
【0031】
図4に示す気流は、排気処理部50がS2空間の気体の吸引することと、テーブル21の回転による遠心力の作用とが相乗して発生する。気流は、トップカバー11により囲まれる空間から、内側筒体12の開口部を通過してS1空間に向かう。内側筒体12の開口部は通過する気流を「絞る」ため、絞られた気流はベンチュリ効果により付勢される。
開口部を通過して付勢された気流は、テーブル21の表面に向かってS1空間内を進み、その後連通機構30を通過して多段式樋24の特定の樋に侵入する。
【0032】
連通機構30は、通過する気流を「絞る」ため、絞られた気流は、ベンチュリ効果により付勢される。連通機構30を通過して付勢された気流は、侵入した特定の樋の中を通過してS2空間に流出する。これらの付勢された気流の働きにより、基板20の処理の際にS1空間に発生したパーティクルを含むミストなどが、S1空間から効率よく排気される。また、特定の樋の内部表面に付着するパーティクルを含むミストなども、付勢された気流の働きにより当該内部表面から効率よく除去できる。
この気流には、例えば、図示しないクリーンエアー供給機構からの単位時間当たりのクリーンエアー供給量と、排気処理部50によるS2空間の気体の単位時間当たりの排気量とをそれぞれ調整し、好適な付勢を与えることができる。
【0033】
図5は、内側筒体12の開口部で、処理前の基板20を支持したテーブル21が下降する際の気流の様子を例示している。
テーブル21は、制御部40がアクチュエータ機能を備えたモータ23に指示を出して下降が開始される。テーブル21が下降する際に、制御部40は、テーブル21の表面側のS1空間の気体が、内側筒体12の内壁とテーブル21の外端面との隙間を通過して、テーブル21の裏面側のS1空間に向けて流れるように、排気処理部50に指示を出し、S2空間の気体を吸引させる。このような流れを作る単位時間当たりのS2空間の気体の吸引量は、例えば、テーブル21の下降速度に応じた、テーブル21の表面側のS1空間とテーブル21の裏面側のS1空間の体積の変化量から吸引量の設定を予め行い、制御部40から排気処理部50に指示させる。
また、テーブル21の表面側とテーブル21の裏面側とのそれぞれのS1空間の圧力を図示しない圧力計で計測し、この計測結果からテーブル21の表面側のS1空間の圧力が高くなるような吸引量とすることもできる。テーブル21の裏面側のS1空間に向けて流れた気体は、連通機構30を通過して多段式樋24の特定の樋に侵入し、その後第2空間に流出する。
【0034】
内側筒体12の内壁とテーブル21の外端面との隙間は、この隙間を通過する気流を「絞る」ため、絞られた気流はベンチュリ効果により付勢される。この付勢された気流の働きにより、テーブル21が下降する範囲の内側筒体12の内周面に付着するパーティクルを含むミストなどは効率よく当該内周面から除去される。
【0035】
図6は、処理が終了した基板20を支持したテーブル21が、内側筒体12の開口部に向けて上昇する際の気流の様子を例示している。
テーブル21は、制御部40が、アクチュエータ機能を備えたモータ23に指示を出して上昇が開始される。前述したテーブル21が下降する際と同様に、テーブル21が上昇する際にも、制御部40は、テーブル21の表面側のS1空間の気体が、内側筒体12の内壁とテーブル21の外端面との隙間を通過して、テーブル21の裏面側のS1空間に向けて流れるように、排気処理部50に指示を出してS2空間の気体を吸引させる。このような流れをつくる単位時間当たりのS2空間の気体の吸引量は、例えば、テーブル21の上昇速度に応じた、テーブル21の表面側のS1空間とテーブル21の裏面側のS1空間の体積の変化量から吸引量の設定を予め行い、制御部40から排気処理部50に指示させる。また、テーブル21の表面側とテーブル21の裏面側とのそれぞれのS1空間の圧力を図示しない圧力計で計測し、この計測結果からテーブル21の表面側のS1空間の圧力が高くなるような吸引量とすることもできる。
テーブル21の裏面側のS1空間に流れた気体は、連通機構30を通過して多段式樋24の中の特定の樋に侵入し、その後第2空間に流出する。
【0036】
内側筒体12の内壁とテーブル21の外端面との隙間は、通過する気流を「絞る」ため、絞られた気流はベンチュリ効果により付勢される。この付勢された気流の働きにより、テーブル21が上昇する範囲の内側筒体12の内周面に付着するパーティクルを含むミストなどは当該内周面から効率よく除去される。
【0037】
ここで、排気処理部50によるS2空間の気体の吸引量は、テーブル21が上昇することで、S2空間の気体がS1空間に流入しない程度のものであってもよい。テーブル21が上昇することで、テーブル21の裏面側のS1空間の体積は増加して当該空間の圧力は低下するため、テーブル21の表面側のS1空間の圧力が高くなり、テーブル21の表面側のS1空間の気体は、内側筒体12の内壁とテーブル21の外端面との隙間を通過して、テーブル21の裏面側のS1空間に向けて流れる。そのため、上述の効果と同様の効果が得られる。また、排気処理部50で使用されるエネルギーを軽減することにもなる。
【0038】
図7は、基板20の中心に向けてノズルから供給された処理液の移動の様子、気流の様子、多段式樋24の特定の樋で使用済み処理液が回収される様子のそれぞれを例示している。ここでは、一例として、多段式樋24の中の最上段に設けられた段で、使用済み処理液を回収する例を示す。
モータ23の回転力により、基板20を支持したテーブル21が回転し、この状態でノズルから処理液が供給される。供給された処理液は、テーブル21の回転による遠心力と気流とが相乗して付勢し、基板20の中心から外周へ向けて拡散し、基板20の外周へと達した処理液は被処理面から振り切られ、連通機構30に向けてさらに移動する。
付勢されて被処理面から振り切られた使用済み処理液は、連通機構30に到達し、当該連通機構30を通過して特定の樋に侵入し、多段式樋24の天板24aに設けられた障壁24bに当たる。この障壁24bに当たることで、使用済み処理液は、その勢いが失われ、重力の働きにより、障壁24bの傾斜に沿うように、下向きに移動して回収部24cで回収される。回収部24cで回収された使用済み処理液は、図示しないドレインを介して回収部24cから外側筒体13の外壁外に排出される。
【0039】
図7に示す気流の中で、付勢されて連通機構30を通過した気流は、特定の樋に侵入して当該特定の樋の中を流れ、その後障壁24bに当たる。この気体に含まれているパーティクルを含んだミストなどの一部は、障壁24bに当たることでその勢いを失い、重力の働きにより気体から分離して、障壁24bの傾斜に沿うように下向きに移動して回収部24cで回収される。障壁24bに当たった気体は、進行する方向を変えながらも天板24aと回収部24cとで挟まれる空間を流れ、排気口からS2空間に流出する。
また、障壁24bに使用済み処理液がぶつかることでミスト化した使用済み処理液は、特定の樋の中をS2空間に向かう気流によりS1空間に流出しない。
【0040】
多段式樋24の各段に設けられている排気口は、その面積を変えることで、連通機構30を通過した気流が、特定の樋の内壁に付着したパーティクルを含むミストなどを当該内壁から徐くするのに好適な付勢された気流となるように調整することができる。
この実施形態の基板処理装置1では、多段式樋24を備えた構成について説明したが、使用済み処理液を回収するための樋は1段のものであってもよい。
【0041】
<基板処理のための制御手順>
次に、基板処理装置1による基板処理方法、特に、制御部40による主要な制御手順を説明する。図8は、この制御手順説明図である。
制御部40は、基板処理装置1を操作するオペレータの基板処理の開始指示の入力受付を契機に、制御を開始する(ステップS100)。制御部40は、テーブル21が、図示しない基板搬出入機構から基板を受け取るために、内側筒体12の開口部で停止していることを検知(ステップS101)し、チャック制御機構を起動して、基板20をテーブル21の所定部位に水平に支持させる(ステップS102)。
制御部40は、基板20が支持され、基板搬出入口が閉じられたことを検知すると、排気処理部50を起動し、排気開始の指示を出す(ステップS103)。
制御部40は、モータ23を起動する。モータ23は、制御部40の指示によりモータ23が備えるアクチュエータ機能を使用して、テーブル21の下降を開始させる(ステップS104)。
【0042】
制御部40は、テーブル21が所定の位置まで下降したかを図示しないセンサ(第1のセンサ)によって検知すると、テーブル21の下降を停止させるようモータ23に指示を出し、テーブル21の下降が停止されたことを検知した場合(ステップS1025:Yes)、テーブル21の回転を開始するようにモータ23へ指示を出す(ステップS106)。これにより、テーブル21が、水平に回転を開始する。
【0043】
制御部40は、アクチュエータ26を起動する。アクチュエータ26は、制御部40の指示により、特定の樋が連通機構30を内側筒体12の外壁側から覆うように多段式樋24を上昇又は下降させる。
テーブル21の回転開始指示後、規定時間(第1時間)が経過したことを図示しないタイマによって検知すると、制御部40は、ノズルの位置決めを指示するとともに、図示しない処理液供給機構に対して処理液の供給を開始させるように指示を出す(ステップS107)。これにより、処理液がノズルから基板20の被処理面の中心に向けて供給される。
処理液の供給開始指示後、規定時間(第2時間)が経過したことをタイマによって検知すると、制御部40は、処理液供給機構に対して処理液の供給停止を指示する(ステップS108:Yes)。処理液の供給停止により、テーブル21上の基板20の被処理面に残った処理液をテーブル21の外方へ払拭させる。これにより、乾燥処理が行われる。
【0044】
さらに規定時間(第3時間)が経過したことをタイマによって検知すると、制御部40は、テーブル21の回転を止めるように、モータ23へ停止指示を出す(ステップS110)。モータ23が停止したことを検知すると、制御部40は、モータ23が備えるアクチュエータ機能を使用して、テーブル21の上昇開始を指示する(ステップS111)。制御部40は、テーブル21が内側筒体12の開口部まで上昇したかを図示しないセンサ(第2のセンサ)によって検知すると、テーブル21の上昇を停止させるようにモータ23に指示を出し、テーブル21の上昇が停止されたことを検知した場合(ステップS112:Yes)、排気処理部50へ排気停止の指示を出す(ステップS113)。制御部40は、図示しない基板搬出入機構により処理済みの基盤20が搬出できるように、図示しないチャック制御機構に基板20の支持解放を指示する(ステップS114)。これにより、基板20の表面処理が完了する。
【0045】
ここで、一回の基板の処理で複数種類の処理液が使用される場合の手順を説明する。
制御部40は、規定時間(第3時間)が経過した後もテーブル21の回転を維持させる。制御部40は、予め設定された条件のもと、次に供給する処理液に対応する特定の樋で使用済み処理液を回収させるために、アクチュエータ26を起動し、アクチュエータ26は制御部40の指示で、特定の樋が連通機構30を内側筒体の外壁側から覆うように多段式樋24を上昇又は下降させる。制御部40は、多段式樋24が所定の位置で停止したことを図示しないセンサ(第3のセンサ)によって検知すると、図示しない処理液供給機構に処理液の供給開始(ステップS107)を指示する。
直近の処理に使用された処理液と異なる種類の処理液を供給する際に繰返し、制御部40がこの指示を出すことで、種類が異なる使用済み処理液を独立してそれぞれ回収できる。
【0046】
また、制御部40が、排気処理部50に排気開始の指示又は排気停止の指示を出すことを契機に、図示しないクリーンエアー供給機構からのクリーンエアーの供給の開始又は供給の停止を連動させてもよい。例えば、制御部40から排気開始の指示が出れば、クリーンエアーも供給開始され、又は、制御部40から排気停止の指示が出れば、クリーンエアーも供給停止されることで、基板20の搬出入の際にトップカバー11により囲まれる空間の気体が基板搬出入口からあふれ出ることが防止できる。
【0047】
このように、基板処理装置1では、S1空間の気体が連通機構30を通過してS2空間に向けて流れる際に、内側筒体12の開口部及び連通機構30を通過する気流が付勢され、この付勢された気流によりS1空間の気体が効率よく外側筒体13の外壁外へ排気されるので、基板20を処理する際に発生するパーティクルを含むミストなどで基板が汚染されてしまうことが防止される。
テーブル21の外端面と内側筒体12の内壁との間には隙間があり、S1空間の気体はテーブル21の表面側からテーブル21の裏面側に向かう流れになるが、この隙間は気流を「絞る」ため、ベンチュリ効果によりその気流はさらに付勢される。これにより、テーブル21が上昇又は下降する範囲の内側筒体12の内壁に付着しているパーティクルを含むミストなどが、当該内壁から効率よく除去され堆積を防止する。
【0048】
さらに、テーブル21の回転による遠心力と、付勢された気流との相乗により、処理液が直ちにテーブル21の外方に放出されるので、処理液の「キレ」が良くなり、乾燥処理を迅速に完了させることができる。
また、さらに、チャンバー10、トップカバー11などを透光性部材で構成して、基板20の処理状況を当該チャンバー10の外観から視認できるようにすることで、基板処理の最中に発生した装置の不具合、処理中の基板の破損などを迅速に発見することができる。
【0049】
さらに、また、トップカバー11により囲まれる空間、S1空間、S2空間の順にそれぞれの空間の圧力を段階的に低下させることができるため、処理空間の気体が当該処理空間外に無秩序に拡散することがなくなる。これにより、処理空間の気体による人体への影響、及び、基板処理装置の装備部品の腐食などが抑制できる。また、処理空間をコンパクト化することで当該処理空間内の空気の乱流を防ぎ、より効率的に気体の拡散を抑止することもできる。さらに、基板処理の際にガス(例えば、ヘリウムガス)が使用される場合では、テーブル21で内側筒体12の開口部に「蓋」することと相乗して、当該ガスの拡散が抑えられる。
【0050】
[第2実施形態]
この実施形態は、基板処理装置1においてさらにトップカバー11により囲まれる空間の排気及び、連通機構30の一部又は全部を遮蔽して、当該連通機構30を通過する気体を制限又は停止ができる基板処理装置の実施形態について説明する。
【0051】
図9は、本実施形態の基板処理装置2の周辺部材の構成例を示す概略縦断面図である。
また、第1実施形態で説明したものと重複する部分については同じ符号を用い、重複説明を省略する。この実施形態の基板処理装置2は、FFU(ファンフィルタユニット)60とトップカバー排気ダクト61が付加され、多段式樋65、底板66、排気処理部70が第1実施形態と異なる部分である。
【0052】
FFU60は、トップカバー11により囲まれる空間に向けて清浄空気を吹き出す。S2空間の気体が吸引されることで、FFU60から吹き出された清浄空気は、トップカバー11により囲まれる空間からS1空間に流れ、S1空間から連通機構30並びに多段式樋65の中の特定の樋を通過して、S2空間に流出する。この清浄空気は、それぞれの空間を移動するに伴い、基板20の処理に使用された使用済みの処理液のミスト、パーティクルを含むミスト、ガス化した使用済み処理液などを含むものとなる(以下、便宜上、単に気体と示す場合がある)。
トップカバー11の外周面にはトップカバー排気ダクト61が設けられている。詳細は後述する。
【0053】
多段式樋65は、基板20の処理に使用された複数種類の使用済み処理液がそれぞれ混ざらず回収させるために、複数段に重ねられそれぞれ独立して配設されている。図9では、樋を3段に積み重ねて一体形状にしたものを例示している。多段式樋65は、回収する使用済み処理液の種類に応じた特定の樋が、使用済み処理液を回収する。そのため、多段式樋65は、特定の樋が内側筒体12の外壁側から連通機構30を覆うように制御部40に制御されて上昇又は下降をする。連通機構30を覆う多段式樋65の中の特定の樋には、S1空間の気体も侵入してくる。そのため、樋に侵入するS1空間の気体が、当該樋の中を通過してS2空間に流出するために排気口がそれぞれの樋に設けられている。詳細は後述する。
【0054】
底板66は、基板20の処理のためにテーブル21が下降を停止した場所で、テーブル21の裏面と間に所定の隙間をもって対向して内側筒体12に備えられている。所定の隙間は、例えば5mm程度とする。トップカバー11により囲まれる空間と、内側筒体12と底板66とで囲まれて連通機構30及びテーブル21を含む第1の空間(S1空間)が基板処理装置2の主たる処理空間となる。
【0055】
図10は、基板処理装置2の概略平面図である。図10中のトップカバー排気ダクト61は、制御部40により制御される排気処理部70に接続されている。この排気処理部70は、トップカバー排気ダクト61を介してトップカバー11により囲まれる空間の気体を吸引する。
【0056】
また、トップカバー11の外壁の接線方向に平行して、トップカバー排気ダクト61を設けてもよい。トップカバー排気ダクト61を介してトップカバー11により囲まれる空間の排気を行うと、トップカバー11の内周に沿って回転する気流が発生する。トップカバー11により囲まれる空間の気体は、この回転する気流の遠心力により付勢されて効率よく排気される。
【0057】
図11は、テーブル21が内側筒体12の開口部で停止している様子を例示している。多段式樋65に設けられた使用済み処理液を回収するための回収部65cには、内側筒体12の外壁側から連通機構30の一部又は全部を遮蔽するための遮蔽壁が設けられている。この遮蔽壁で連通機構30の一部を内側筒体12の外壁側から遮蔽して、S1空間の気体の当該連通機構30の通過を制限することができる。また、この遮断壁で連通機構30の全部を遮蔽して、S1空間の気体の連通機構30の通過を止めることができる。この遮蔽壁は回収部65cに所定の形状で設けられており、所定の形状とは、例えば、内側筒体12の外壁側から連通機構30を覆う幅を持ち、当該内側筒体12の外壁を取り囲む帯状のものである。
【0058】
多段式樋65は、制御部40により制御されるアチュエータ26が、制御部40の指示で上昇の開始又は停止、下降の開始又は停止される。第1実施形態で説明した様に、処理前の基板20又は処理後の基板20は、テーブル21が内側筒体12の開口部で停止した状態で、処理空間に搬入又は処理空間から搬出される。基板20を搬入又は搬出するために基板搬出入口が開かれる際に、制御部40は、アクチュエータ26に指示を出して、多段式樋65を上昇又は下降させて、遮蔽壁により連通機構30の全部を遮蔽させる。連通機構30の全部を遮蔽することで、S2空間の気体はS2空間から連通機構30を通過してS1空間に流出することがなくなる。
そのため、テーブル21で「蓋」された内側筒体12の開口部から、S2空間の気体が流出してしまうことを、より確実に防止することができる。
また、例えば、基板搬出入口を開ける際に、連通機構30の全部を遮蔽した状態でトップカバー11により囲まれる空間の気体を排気処理機構70に吸引させる。これにより、より確実に処理空間の気体が、当該処理空間の外に流出してしまうことが防ぐことができる。
【0059】
図12は、基板20の中心に向けてノズルから供給された処理液の移動の様子、気流の様子、多段式樋65で使用済み処理液が回収される様子、遮蔽壁により連通機構30の一部が遮蔽されている様子のそれぞれを例示している。図12では、一例として、多段式樋65の中の最上段に設けられた段で、使用済み処理液を回収している。
【0060】
基板20を支持したテーブル21が回転し、この状態でノズルから処理液が供給されると、この処理液は、テーブル21の回転による遠心力と気流との相乗により付勢されて、基板20の中心から外周へ向けて拡散する。基板20の外周へと達した処理液は、被処理面から振り切られて連通機構30に向けて移動する。付勢され被処理面から振り切られた使用済み処理液は、連通機構30に到達し、当該連通機構30を通過して、特定の樋に侵入して回収される。
【0061】
連通機構30を通過する気流に加わる付勢は、制御部40がアクチュエータ26に指示を出して多段式樋65を上昇又は下降させ、遮蔽壁により連通機構30を遮蔽する割合を変化させることで調整できる。具体的には、例えば、遮蔽壁が連通機構30を遮蔽する面積を大きくすることで、当該連通機構30を通過する気流に加える付勢を高めたり、連通機構30を遮蔽する面積を小さくすることで、当該連通機構30を通過する気流に加える付勢を弱めたりする。気流に加える付勢は、任意に変化させることができるため、例えば、一回の基板処理で処理液の粘度が異なる複数の処理液を使用する場合や、ノズルから供給する処理液の供給圧力を変える場合に、基板20の被処理面に処理液がとどまる時間を調整でき、好適な処理条件を導き出すことが容易となる。
【0062】
このように、基板処理装置2では、基板20の搬出入の際に、遮蔽壁により内側筒体12の外壁側から連通機構30の全部を遮蔽することで、S2空間の気体のS1空間への流出が阻止される。これにより、テーブル21で「蓋」された内側筒体12の開口部から、S2空間の気体が流出してしまうことを、より確実に防止することができる。
【0063】
また、遮蔽壁により連通機構30を遮蔽する面積を変えて、当該連通機構30を通過する気流に加える付勢を変化させることができる。これにより、使用する処理液の特性が異なっても、基板20の処理結果が均一となるように設定が可能となる。
具体的には、例えば、使用される処理液の粘度が高い場合では、遮蔽壁により連通機構30を遮蔽する割合を大きくして通過する気流を大きく絞り、処理液が基板20の被処理面の外周で振り切られる際の「キレ」を良くする。
他の具体例としては、例えば、供給された処理液は被処理面上で気流によっても付勢されるため、処理液を供給して基板20の被処理面を処理する際には、必要な時間だけ処理液が被処理面上にとどまるよう気流に与える付勢を弱め、処理液の供給を停止して乾燥処理を行う際には、気流に与える付勢を強め迅速に乾燥処理を行う。
【0064】
また、連通機構30をそのままに、厚みが異なる複数種類の基板を処理する場合には、基板20を支持したテーブル21が下降を停止して、基板20の処理が開始されるテーブル21の停止場所と、遮蔽壁による連通機構30を遮蔽する割合を調整することで対応することができる。具体的には、例えば、基準とされる基板の厚みよりも薄い基板20が処理対象である場合、テーブル21の停止場所を相対的に高くし、必要な付勢が気流に加わるように遮蔽壁で連通機構30を遮蔽することで、処理が可能となる。また、基準とされる基板よりも厚い基板が処理対象である場合、テーブル21の停止場所を相対的に低くし、必要な付勢が気流に加わるように遮蔽壁で連通機構30を遮蔽することで、処理が可能となる。
【0065】
さらに、第1実施形態で説明した基板処理装置1が備える多段式樋24に替えて、本実施形態の多段式樋65を備えることも可能であることは言うまでもない。また、本実施形態では、樋を3段に重ねた形状の多段式樋65を例示しているが、樋が1段のものであっても良い。
【0066】
[変形例]
(1)第1実施形態で説明した基板処理装置1に、本実施形態で説明したトップカバー排気ダクト61及び排気処理部70をさらに備えた構成とすることもできる。この場合、例えば、基板20の処理工程で、排気処理部50によるS2空間の気体の吸引は停止することなく行う。テーブル21が内側筒体12の開口部で停止している際に、排気処理部70が、トップカバー排気ダクトを介してトップカバー11により囲まれる空間の気体を吸引する。これにより、より確実に処理空間の気体が当該処理空間の外に流出してしまうことが防止される。
【0067】
(2)第2実施形態の基板処理装置2の底板66に排気ダクトを設けて、当該排気ダクトを介してS1空間の気体を図示しない排気処理機構により吸引させることもできる。これにより、テーブル21の裏面側のS1空間の気体が排気されるため、より確実に基板20の被処理面の汚染が防止される。また、テーブル21が上昇又は下降による内側筒体12の内壁に付着したパーティクルを含むミストなどの除去は、遮蔽壁で連通機構30の全部を遮蔽し、底板66に設けられた排気ダクトを介して図示しない排気処理機構によりS1空間の気体を吸引させることも実現される。
【符号の説明】
【0068】
1・・・基板処理装置、10・・・チャンバー、11・・・トップカバー、12・・・内側筒体、13・・・外側筒体、20・・・基板、21・・・テーブル、22・・・モータ駆動部、23・・・モータ、24・・・多段式樋、25・・・アクチュエータ駆動部、26・・・アクチュエータ制御部、30・・・連通機構、40・・・制御部、50・・・排出処理機構、60・・・FFU、61・・・トップカバー排気ダクト、65・・・多段式樋、66・・・底板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側筒体と外側筒体とを含み、前記内側筒体内の第1の空間に処理対象の基板が配置される有底二重筒状体と、
前記内側筒体の外壁と前記外側筒体の内壁とで囲まれる第2の空間の気体を当該第2の空間から当該外側筒体の外壁外に排気させる排気手段と、
前記内側筒体の所定の部位に形成され、前記第1の空間と前記第2の空間とを連通させる連通機構と、を備え、
前記排気手段により、前記第2の空間の気体を当該第2の空間から前記外側筒体の外壁外に排気させて当該第2の空間の圧力を低下させることで、前記第1の空間の圧力を当該第2の空間の圧力よりも高くし、これにより当該第1の空間の気体が当該第2の空間に向けて流れる際に付勢されて前記連通機構を通過するように構成されている、
基板処理装置。
【請求項2】
前記基板を、その表面側が処理対象となるように前記内側筒体内の第1の空間内で当該基板を水平に支持させる支持手段をさらに備え、
前記排気手段により、前記第2の空間の気体を当該第2の空間から前記外側筒体の外壁外に排気させて当該第2の空間の圧力を低下させることで、前記第1の空間の圧力を当該第2の空間の圧力よりも高くし、これにより当該第1の空間の前記基板の表面側にある気体が当該第2の空間に向けて流れる際に付勢されて前記連通機構を通過するように構成されている、
請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記支持手段は、処理対象の前記基板を、その表面側に支持させるテーブルであり、
前記テーブルを、前記第1の空間内で昇降自在に移動させるテーブル昇降手段をさらに備えており、
前記第1の空間の気体が、前記連通機構を通過して前記第2の空間に向けて流れる際に、当該第1の空間内を上昇又は下降する前記テーブルの外端面と前記内側筒体の内壁との隙間を流れる前記第1の空間の気体が、当該テーブルの表面側から当該テーブルの裏面側に向けて流れる際に付勢されて当該隙間を通過するように構成されている、
請求項2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記テーブルは、前記基板の被処理面を前記第1の空間に露出した状態で当該被処理面と平行に回転できるように前記内側筒体内に配備されており、
前記基板は、前記テーブルが前記内側筒体の開口部で停止した状態で当該テーブルに支持され、又は、支持の解除が行われるものであり、
前記テーブル昇降手段は、処理前の基板を支持した前記テーブルを前記内側筒体の開口部から下降させて当該下降を停止させ、且つ、処理後の基板を支持した当該テーブルを前記内側筒体の開口部まで上昇させて当該上昇を停止させるように構成されている、
請求項3記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記排気処理手段は、前記外側筒体の外壁の接線方向に平行して当該外側筒体の外壁に設けられた排気ダクトを介して、前記第2の空間の気体を当該外側筒体の外壁外に排気させるものであり、
前記排気ダクトは、前記排気手段が前記第2の空間の気体を前記外側筒体の外壁外に排気させる際に、当該外側筒体の内壁に沿って回転する気流を生じさせ、当該気流により当該第2の空間の気体が付勢されて前記外側筒体の外壁外に排気されるように構成されている、
請求項1乃至4いずれかの項記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記第2の空間内には、前記連通機構を通過した、前記基板の処理に使用された使用済み処理液を回収する樋が前記内側筒体の外壁側から前記連通機構を覆うように備えられており、
前記樋には、前記内側筒体の外壁側から前記連通機構の一部又は全部を遮蔽することで前記第1空間の気体の当該連通機構の通過を制限させる遮蔽壁が設けられており、
前記遮蔽壁が前記連通機構の一部又は全部を遮蔽するために、前記樋を前記内側筒体の外壁に沿って上昇又は下降させる樋昇降手段を、さらに備える、
請求項1乃至5いずれかの項記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記樋には、当該樋に侵入して当該樋の中を移動する前記使用済み処理液の移動速度を減速させる障壁が設けられており、
前記樋に侵入して当該樋の中を移動する前記使用済み処理液は前記障壁に当たり減速して当該樋で回収され、且つ、当該樋に侵入した前記第1の空間の気体は当該樋の中を通過して前記第2の空間に流出するように構成されている、
請求項6記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記使用済み処理液を回収する樋は、複数種類の前記基板の処理に使用された当該使用済み処理液それぞれを独立して回収させるために、昇降方向に複数段設けられており、
前記樋昇降手段は、各段でそれぞれ異なる前記使用済み処理液を回収させるために、回収される当該使用済み処理液に対応する段が前記連通機構を覆うように、前記樋を前記内側筒体の外壁に沿って上昇又は下降させるように構成されている、
請求項7記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記有底二重筒状体は、透光性部材で構成されており、
前記基板の処理状況が、前記有底二重筒状体の外観から視認できるように構成されている、
請求項1乃至8記載の基板処理装置。
【請求項10】
基板を処理する処理空間の気体を排気する基板処理装置の処理方法であって、
内側筒体と外側筒体とを含み、当該内側筒体内の第1の空間に処理対象の基板が配置される有底二重筒状体の、当該内側筒体の外壁と当該外側筒体の内壁とで囲まれる第2の空間の気体を、排気手段により当該第2の空間から当該外側筒体の外壁外に排気させて当該第2の空間の圧力を低下させることで、当該内側筒体内の第1の空間の圧力を当該第2の空間の圧力よりも高くし、
前記第1の空間の気体が、前記内側筒体の所定の部位に形成され、当該第1の空間と前記第2の空間とを連通させる連通機構を通過して当該第2の空間に向けて流れる際に付勢される工程を含む、
基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−134390(P2012−134390A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286450(P2010−286450)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【特許番号】特許第4812897号(P4812897)
【特許公報発行日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(500487837)ミクロ技研株式会社 (16)
【Fターム(参考)】