説明

基板処理装置及び基板移載方法。

【課題】ウェーハ14の搬送において、移載禁止されたスロットに移載しないで、前記移載禁止されたスロット以外のスロットにウェーハ14を保持させてボート30に対するウェーハ14の搬送を実現する。
【解決手段】ウェーハ14を載置部に保持するボート30と、複数のスロットにウェーハ14を配置するポッド16と、複数枚又は一枚のウェーハ14を搬送するように構成されている基板移載機28と、特定の載置部に移載禁止指定を受けつけると、複数枚または一枚のどちらか選択しながら前記ウェーハ14を前記特定の載置部を除く他の載置部に保持させつつ前記ボート30に移載させるコントローラ152を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理する基板処理装置に係り、特に基板の搬送制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱処理装置において、被処理体としての基板は基板収容器としてのキャリアに収納され、この熱処理装置内の所定の収納棚に格納される。熱処理を行う際には、基板がキャリアから基板保持具としてのボートに搬送される。
【0003】
基板保持具としてのボートは、基板の保持可能枚数に合わせて、最上位の載置部としての最上位スロットから最下位の保持部としての最下位スロットまで等間隔に溝が刻まれており、全てのスロットに基板を保持することができる。基板のボート上の配置は、ユーザにより指定され、その方法は各スロットに対して基板の種別を直接割り当てる直接指定と、種別毎の搬送有無や枚数を指定し、配置はプログラムにより自動で指定される論理指定がある。例えば、直接指定に関して特許文献2、論理指定に関して特許文献3に代表されるように、モニタウェーハ(テスト用の基板)の枚数に応じ、モニタウェーハが均等に移載されるように移載位置を計算し、さらに全ウェーハ(基板)の移載データを作成し、前記移載データに従って移載作業を行うことが開示されている。このように、縦型装置は、基板保持具(ボート)に対して基板を所定の載置部(ボートスロット)に移載するように構成されている。しかしながら、上記のような縦型装置では、熱処理の影響により基板保持具(ボート)の撓みが問題となる場合がある。また、基板保持具(ボート)の一部が欠ける等の要因で所定の載置部(ボートスロット)に基板を配置できなくなった場合、基板保持具(ボート)を交換するしかなかった。
【0004】
また、パワーデバイス用素子材料として注目されているSiCは、高温条件下で行われるSiCエピタキシャル膜成長により形成される。特に、複数枚のSiCを均一に成膜して生産性を向上することができる基板処理装置としての縦型式熱処理装置の一例として特許文献1がある。
【0005】
特許文献1において、SiCエピタキシャル膜を形成する装置は、反応室内で複数枚の基板を縦方向に積層して処理する縦型構造を持つ基板処理装置であって、反応室内の基板の配列領域に設置されたガス供給ノズル内の温度がSi原料ガスの分解温度を越えるような装置構成でSiCエピタキシャル膜の成膜をする。この際、熱処理の影響による基板保持具(ボート)自身に撓みが生じるため、この基板保持具(ボート)に撓みを抑制するような特殊な構成が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−003885号公報
【特許文献2】特開2009−231748号公報
【特許文献3】特許第3594090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は斯かる実情に鑑み、基板の搬送において、基板保持具に対する所定の載置部への移載を禁止することを可能にし、上記の問題点を解決するような基板保持具に対する基板搬送を実現する基板処理装置及び基板移載方法を提供することを一つの目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための本発明の代表的な例は、基板を載置部に保持する基板保持具と、前記基板保持具に対して複数枚又は一枚の基板を搬送するように構成されている搬送手段と、特定の載置部に移載禁止指定を受けつけると、搬送枚数を複数枚または一枚のどちらか選択して前記基板を前記特定の載置部を除く他の載置部に移載する搬送制御手段とを有する熱処理装置であり、更に、複数の基板を縦方向に搭載した基板保持具を反応室に搬入及び前記複数の基板を前記反応室から搬出する駆動手段と、所定のプロセスレシピを実行して前記基板に所定の処理(例えば、SiC膜を形成する処理、超高温雰囲気でアニールする処理等)を施す処理制御手段と、を有する熱処理装置である。
【0009】
前記課題を解決するための本発明の代表的な他の例は、基板を載置部に保持する基板保持具に対して複数枚又は一枚の基板を搬送する工程を有する基板移載方法であって、移載禁止の載置部に指定された特定の載置部に接触しないように、搬送枚数を複数枚または一枚のどちらか選択して前記基板を前記特定の載置部を除く他の載置部に移載する基板移載方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の基板を水平状態で保持する基板保持具の一部の載置部が移載禁止の載置部に指定されても、移載機の支持部と前記基板保持具の載置部との接触を避け、移載禁止されていない載置部にのみ基板を配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明が適用される半導体製造装置の斜視図である。
【図2】本発明が適用される処理炉の側面断面図である。
【図3】本発明が適用される処理炉の平面断面図である。
【図4】本発明が適用される半導体製造装置の制御構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の基板保持具の一例を示す図である。
【図6】本発明の処理炉の平断面図の概略の一例である。
【図7】本発明が適用される半導体製造装置の操作画面の一例である。
【図8】本発明における移載禁止スロットへの移載指定時の処理(直接指定)である。
【図9】本発明における移載禁止スロットへの移載指定時の処理(論理指定)である。
【図10】本発明における移載禁止スロットへの移載機のアクセスを図示したものである。
【図11】本発明が適用される基板保持具への基板搬送指定シーケンスを説明する図である。
【図12】基板搬送指定シーケンスにより移載方法指定テーブルが作成される流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態は、移載禁止とする載置部としてのボートスロットを特定するための図示しない移載禁止パラメータを用意する。そして、図7のように、載置部としてのボートスロットを直接指定する方法では、移載禁止指定されたボートスロット(以後、移載禁止スロットとする)を明示または入力禁止として誤入力しないようにする。図8に移載禁止スロットの搬送処理について記す。上記移載禁止スロットが指定された場合、指定入力を無効にするか、若しくは移載指定時に異常通知し移載を実行させないようにする。図9は、論理指定においての移載禁止指定時の搬送処理について記す。移載指定は従来どおりだが、移載禁止スロットに移載を行わないようにする。このように、移載禁止スロットを特定するためのパラメータを利用することにより、直接指定、論理指定のいずれの方式においても、移載禁止スロットを移載対象から除いた最終配置が決定される。
【0013】
移載禁止スロットに対し、最終配置指定では被処理体としての基板が配置されない指定となっていても、搬送手段としての移載機が複数枚同時に搬送可能な場合は、移載禁止スロットに対して搬送手段としての移載機が搬送することが想定される。例えば、5枚一括搬送において基板支持部に基板は支持されていない場合、そのまま移載動作を実行する可能性がある。これを回避するため、図10に示すように基板保持具としてのボートへの移載方法決定時に移載禁止スロットを指定する。移載機の一部(特に、基板支持部であるアーム)が移載禁止スロットに搬送する指定の場合、対象の基板の移載方式を、例えば1枚搬送に限定し、特に基板支持部であるアームが移載禁止スロットへの搬送動作を実行しないようにする。
【0014】
上記の移載禁止スロットにアクセスしないように移載機を5枚一括で搬送させるか、1枚搬送に限定させるかを判定するための搬送プログラムが実行される。次に、図11を用いて、前記搬送プログラムによって実行される前記ボートスロットへの搬送指定について説明する。
【0015】
先ず、移載方法指定テーブルが初期化される。そして、前記移載方法指定テーブル内で移載を禁止する特定のボートスロットである移載禁止スロットの指定を受けつける。ここで、予め用意された移載禁止とする保持部としてのスロットを特定するための図示しない移載禁止パラメータが読み込まれる。前記パラメータで指定されたボートスロット(移載禁止スロット)は、搬送不可(移載禁止)と指定される。尚、移載禁止スロットは、後述するように本実施の形態のように一箇所とは限らないのはいうまでもない。また、所定の画面で直接指定できるように前記搬送プログラムを構成しても良い。次に、基板収容器としてのキャリアに対して5枚一括での搬送動作が可能かチェックされる。ここで、搬送不可であれば、1枚搬送となる。一方、5枚一括搬送が可能な状態であれば、基板保持具としてのボートに対して5枚一括搬送が可能かチェックされる。ここで、搬送不可と判断されると、1枚搬送を指定し、又、搬送可と判断されると、5枚一括搬送を指定する。
【0016】
上述の5枚一括搬送と1枚搬送を指定する搬送プログラムは、最上段のボートスロットから最下段のボートスロットへ向かって順次指定していくように実行される。そして、特に、移載を禁止しているボートスロットの近傍では、5枚一括搬送にすると移載禁止スロットに搬送動作を実行する恐れがあるため、搬送枚数が限定される。本実施の形態においては、1枚搬送に限定される。但し、例えば、限定される搬送枚数は、5枚より少ない数であり、且つ、移載機が移載禁止スロットに搬送動作をしないような条件であれば、何枚でも構わない。尚、搬送プログラムで搬送枚数を確定する対象のボートスロットは、反対の最下段のボートスロットから最上段のボートスロットへ向かって順次判定していく指定も可能である。
【0017】
図12は、移載方法指定テーブルが作成される様子を示したものである。次に、この図12を用いて上記搬送プログラムにより、移載方法指定テーブルが作成される過程を説明する。尚、図12では、スロットが10個しかないが、実施形態の一例を示すためのもので、スロット数はこれに限定されない。例えば、縦型装置の基板保持部(ボート)であれば、通常最上段のスロットから最下段のスロットは、100個以上になる場合もある。
【0018】
図12(a)は、搬送プログラムが起動され、移載方法指定テーブルが初期化した状態を示している。ここで、全ての対象スロットが指定無しとなっている。
図12(b)は、次に、搬送プログラムが、移載禁止パラメータを読み込み、移載禁止スロットを指定した状態を示している。尚、移載禁止スロットを画面上で直接指定できるように構成しても良いのは当然であり、そのときは、入力待ちとなる。ここでは、スロット番号8が移載禁止スロットに指定される。
図12(c)は、移載禁止スロットの指定が終了すると、搬送プログラムは、最上段のボートスロットから最下段のボートスロットへ向かって順次指定していく。図示例では、スロット番号10に1枚の搬送を行うように指定した状態を示す。これは、5枚一括搬送(スロット番号10からスロット番号6までに一括して基板を搬送する)指定が行えるか判別し、スロット番号8が移載禁止スロットに指定されているため、搬送不可と判定する。そのため、前述したように搬送プログラムは、1枚搬送指定に切り替え、スロット番号10のみを指定する。このとき、1枚搬送と5枚一括搬送のどちらかの搬送方式が指定されたかの情報を移載方法指定テーブルに付加してもよい。
図12(d)は、図12(c)同様に、スロット番号9に1枚の搬送を行うように指定された状態を示す。
図12(e)は、スロット番号8は移載禁止スロットに指定されているため、次のスロット番号7から5枚一括搬送(スロット番号7からスロット番号3までに一括して基板を搬送する)を指定した状態を示す。そして、最終的に、最下段スロットであるスロット番号1に搬送指定されるまで搬送プログラムが実行される。本実施の形態では、1枚と5枚としているが、1枚と複数枚の組合せであれば、本実施の形態に限定されないのはいうまでも無い。基本的には、移載機に接続されている基板支持部であるアームの数による。アームの数未満のアームだけを動かすように制御し、例えば、2枚搬送するように構成しても良い。
【0019】
このように、移載禁止スロット近傍では、1枚搬送に限定を行うようにして、移載禁止スロットに移載機の一部(基板支持部としてのアーム)を近づけないように制御される。従い、移載禁止スロットへの搬送が禁止され、特定のスロット(ボートスロット)に被処理体を配置できなくなった一部破損したボート(基板保持具)での運用が可能となる。
【0020】
例えば、代替ボートが準備できるまでの間も上記一部破損したボートを限定的に継続して使用することにより装置の稼働率が向上する。これは、縦型装置の基板保持部(ボート)で載置部(ボートスロット)の数が100以上の場合、特に有効な運用である。
また、上述のように、移載禁止スロットが含まれる場合の基板移載方式は、特定のスロット(ボートスロット)に補強板が固定された特殊なボート(基板保持具)を採用する場合に、特に効力を発揮する。前記補強板は、熱処理の影響によりボート自身に撓みが生じるときに採用されうる。例えば、ボート自身の撓みが生じるほどの超高温での熱処理の一例として、SiCエピタキシャル膜を形成する処理が挙げられる。
【実施例】
【0021】
以下、SiCエピタキシャル膜を形成する装置について説明する。SiCは、シリコン(以下Siとする)に比べて結晶基板やデバイスの作製が難しいことが知られている。一方で、SiCを用いてデバイスを作製する場合は、SiC基板の上にSiCエピタキシャル膜を形成したウェーハを用いる。以下の実施形態では、基板処理装置の一例であるSiCエピタキシャル成長装置における、高さ方向にSiCウェーハを並べる、所謂バッチ式縦型SiCエピタキシャル成長装置で説明する。なお、バッチ式縦型SiCエピタキシャル成長装置とすることで、一度に処理できるSiCウェーハの数が多くなりスループットが向上する。
【0022】
SiCエピタキシャル膜を形成する装置として、本発明の実施形態の代表的な例は、複数の基板が縦方向に並んで配置される反応室と、前記反応室を覆うように設けられ、前記処理室を加熱する加熱部と、前記反応室内に前記複数の基板に沿うように設けられ、前記複数の基板が配置される方向に向けて第1ガスを噴出する第1ガス供給口を有する第1ガス供給管と、前記反応室内に前記複数の基板に沿うように設けられ、前記複数の基板が配置される方向に向けて第2ガスを噴出する第2ガス供給口を有する第2ガス供給管と、少なくとも前記第2ガスが前記第1ガス供給口へ向かう流れを抑制する第1遮蔽部と、を具備する熱処理装置である。
【0023】
<全体構成>
先ず、図1に於いて、本発明の第1の実施形態に於けるSiCエピタキシャル膜を成膜する基板処理装置、基板移載方法および、半導体デバイスの製造工程の一つであるSiCエピタキシャル膜を成膜する基板の製造方法について説明する。
【0024】
基板処理装置(成膜装置)としての半導体製造装置10は、バッチ縦型式熱処理装置であり、主要部が配置される筐体12を有する。前記半導体製造装置10には、例えばSi又はSiC等で構成された基板としてのウェーハ14(図2参照)を収納する基板収容器として、フープ(以下、ポッドと称す)16がウェーハキャリア(基板収容器)として使用される。前記筐体12の正面側には、ポッドステージ18が配置されており、該ポッドステージ18にポッド16が搬送される。ポッド16には、例えば25枚のウェーハ14が収納され、蓋が閉じられた状態で前記ポッドステージ18にセットされる。
【0025】
前記筐体12内の正面であって、前記ポッドステージ18に対向する位置には、ポッド搬送装置20が配置されている。又、該ポッド搬送装置20の近傍にはポッド収納棚22、ポッドオープナ24及び基板枚数検知器26が配置されている。前記ポッド収納棚22は前記ポッドオープナ24の上方に配置され、ポッド16を複数個載置した状態で保持する様に構成されている。前記基板枚数検知器26は、前記ポッドオープナ24に隣接して配置され、前記ポッド搬送装置20は前記ポッドステージ18と前記ポッド収納棚22と前記ポッドオープナ24との間でポッド16を搬送する。前記ポッドオープナ24はポッド16の蓋を開けるものであり、前記基板枚数検知器26は蓋を開けられたポッド16内のウェーハ14の枚数を検知する様になっている。
【0026】
前記筐体12内には、搬送手段としての基板移載機28、基板保持具としてのボート30が配置されている。図5は、前記ボート30の一例であって、前記ボート30の載置部としての特定のボートスロットに補強板が固定されている。この補強板は、ほぼウェーハ14と同じ形状になっている。また、材質もウェーハ14と同じである。前記基板移載機28は、基板支持部としてのアーム(ツイーザ)32を有し、図示しない駆動手段により昇降可能且つ回転可能な構造となっている。前記アーム32は、例えば、1枚または5枚一括でウェーハ14を取出すことができ、前記アーム32を動かすことにより、前記ポッドオープナ24の位置に置かれたポッド16及びボート30間にてウェーハ14を搬送する。前記基板移載機28は、上記特定のボートスロットに接触しないよう、複数枚または一枚のどちらか選択して前記ウェーハ14を前記特定のスロットを除く他のスロットに移載する。
【0027】
前記ボート30は、例えばカーボングラファイトやSiC等の耐熱性材料で構成されている。前記ボート30は、複数枚のウェーハ14を水平姿勢で、且つ互いに中心を揃えた状態で整列させて縦方向に積上げ、載置部としてのボートスロットに保持する様に構成されている。尚、前記ボート30の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料で構成された円盤形状の断熱部材としてボート断熱部34が配置されており、後述する被加熱体48からの熱が処理炉40の下方側に伝わりにくくなる様に構成されている。
【0028】
前記筐体12内の背面側上部には前記処理炉40が配置されている。該処理炉40内に複数枚のウェーハ14を装填した前記ボート30が搬入され、熱処理が行われる。
【0029】
<処理炉構成>
次に、図2、図3に於いて、SiCエピタキシャル膜を成膜する前記半導体製造装置10の前記処理炉40について説明する。処理炉40には、第1のガス供給口68を有する第1のガス供給ノズル60、第2のガス供給口72を有する第2のガス供給ノズル70、及び第1のガス排気口90が代表例としてそれぞれ1つずつ図示されている。又、不活性ガスを供給する第3のガス供給口360、第2のガス排気口390が図示されている。
【0030】
前記処理炉40は、円筒形状の反応室44を形成する前記反応管42を備えている。該反応管42は、石英又はSiC等の耐熱性材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。該反応管42の内側の筒中空部には、前記反応室44が形成れており、Si又はSiC等で構成された基板としてのウェーハ14を前記ボート30によって水平姿勢で、且つ互いに中心を揃えた状態で整列させて縦方向に積上げ、保持した状態で収納可能に構成されている。尚、補強板が固定されている特定のボートスロットには、ウェーハ14は移載されていない。つまり、図2で示されたボート30は、図5で示されたボート30を使用しているが、補強板がウェーハ14と同じ形状であるため、補強板とウェーハ14の見分けが付かないようになっている。
【0031】
前記反応管42の下方には、該反応管42と同心円状にマニホールド36が配設されている。該マニホールド36は、例えばステンレス等からなり、上端及び下端が開口した円筒形状に形成されている。該マニホールド36は、前記反応管42を支持する様に設けられている。尚、前記マニホールド36と前記反応管42との間には、シール部材としてのOリング(図示せず)が設けられている。前記マニホールド36が図示しない保持体に支持されることにより、前記反応管42は垂直に据付けられた状態になっている。該反応管42と前記マニホールド36により、反応容器が形成されている。
【0032】
前記処理炉40は、加熱される被加熱体48及び磁場発生部としての誘導コイル50を具備している。前記被加熱体48は、前記反応室44内に配設され、該反応管42の外側に設けられた前記誘導コイル50により発生される磁場によって加熱される様になっており、前記被加熱体48が発熱することにより、前記反応室44内が加熱される様になっている。
【0033】
前記被加熱体48の近傍には、前記反応室44内の温度を検出する温度検出体として図示しない温度センサが設けられている。前記誘導コイル50及び温度センサは、温度制御部52と電気的に接続されており、温度センサにより検出された温度情報に基づき、前記誘導コイル50への通電具合が調節されることで、前記反応室44内の温度が所望の温度分布となる様所定のタイミングにて制御される様構成されている(図4参照)。
【0034】
尚、好ましくは、前記反応室44内に於いて前記第1及び第2のガス供給ノズル60,70と第1のガス排気口90との間であって、前記被加熱体48とウェーハ14との間には、前記被加熱体48とウェーハ14との間の空間を埋める様、鉛直方向に延在し断面が円弧状の構造物400を前記反応室44内に設けるのがよい。例えば、図3に示す様に、対向する位置にそれぞれ構造物400を設けることで、前記第1及び第2のガス供給ノズル60,70から供給されるガスが、前記被加熱体48の内壁に沿ってウェーハ14を迂回するのを防止することができる。前記構造物400としては、好ましくは断熱材若しくはカーボンフェルト等で構成すると、耐熱及びパーティクルの発生を抑制することができる。
【0035】
前記反応管42と前記被加熱体48との間には、例えば誘電されにくいカーボンフェルト等で構成された断熱材54が設けられ、該断熱材54を設けることにより、前記被加熱体48の熱が前記反応管42或は該反応管42の外側へ伝達するのを抑制することができる。
【0036】
又、前記誘導コイル50の外側には、前記反応室44内の熱が外側に伝達するのを抑制する為の、例えば水冷構造である外側断熱壁が前記反応室44を囲む様に設けられている。更に、前記外側断熱壁の外側には、前記誘導コイル50により発生された磁場が外側に漏れるのを防止する磁気シール58が設けられている。
【0037】
図2に示す様に、前記被加熱体48とウェーハ14との間には、少なくともSi(シリコン)原子含有ガスと、Cl(塩素)原子含有ガスとをウェーハ14に供給するために少なくとも1つの第1のガス供給口68が設けられた第1のガス供給ノズル60が設置される。又、被加熱体48とウェーハ14との間の前記第1のガス供給ノズル60とは異なる箇所には、少なくともC(炭素)原子含有ガスと還元ガスとをウェーハ14に供給するために、少なくとも1つの前記第2のガス供給口72が設けられた第2のガス供給ノズル70が設けられる。また、第1のガス排気口90も同様に被加熱体48とウェーハ14との間に配置される。又、前記反応管42と前記断熱材54との間に、前記第3のガス供給口360及び前記第2のガス排気口390が配置されている。
【0038】
なお、上述の第1のガス供給ノズル60及び第2のガス供給ノズル70へ供給されるガスは、装置構造を説明するための一例であり、その詳細については後述する。また、本図において、説明を簡単にするために第1のガス供給ノズル60及び第2のガス供給ノズル70を1本ずつ配置しているが、これらについても後に詳述する。
【0039】
前記第1のガス供給口68及び第1のガス供給ノズル60は、例えばカーボングラファイトで構成され、前記反応室44内に設けられる。又、前記第1のガス供給ノズル60は、マニホールド36を貫通する様に該マニホールド36に取付けられている。ここで、SiCエピタキシャル膜を形成する際に、前記第1のガス供給口68は、少なくともSi(シリコン)原子含有ガスとして、例えばモノシラン(以下SiH4とする)ガスと、Cl(塩素)原子含有ガスとして、例えば塩化水素(以下HClとする)ガスとを前記第1のガス供給ノズル60を介して、前記反応室44内に供給する様になっている。
【0040】
該第1のガス供給ノズル60は、第1のガスライン222に接続されている。該第1のガスライン222は、例えばガス配管213a,213bに接続され、該ガス配管213a,213bはそれぞれSiH4ガス、HClガスに対して流量制御器(流量制御手段)としてのマスフローコントローラ(以下MFCとする)211a,211b及びバルブ212a,212bを介して、例えばSiH4ガス供給源210a、HClガス供給源210bに接続されている。
【0041】
上記構成により、例えばSiH4ガス、HClガスのそれぞれの供給流量、濃度、分圧、供給タイミングを前記反応室44内に於いて制御することができる。前記バルブ212a,212b、前記MFC211a,211bは、ガス流量制御部78に電気的に接続されており、それぞれ供給するガスの流量が所定流量となる様に、所定のタイミングにて制御される様になっている(図4参照)。尚、SiH4ガス、HClガスそれぞれの前記ガス供給源210a,210b、前記バルブ212a,212b、前記MFC211a,211b、前記ガス配管213a,213b、前記第1のガスライン222、前記第1のガス供給ノズル60及び該第1のガス供給ノズル60に少なくとも1つ設けられる前記第1のガス供給口68により、ガス供給系として第1のガス供給系が構成される。
【0042】
前記第2のガス供給口72は、例えばカーボングラファイトで構成され、前記反応室44内に設けられる。また、前記第2のガス供給ノズル70は、前記マニホールド36を貫通する様に、該マニホールド36に取付けられている。ここで、SiCエピタキシャル膜を形成する際に、前記第2のガス供給口72は、少なくともC(炭素)原子含有ガスとして、例えばプロパン(以下C3H8とする)ガスと、還元ガスとして、例えば水素(H原子単体、若しくはH2分子。以下H2とする)とを前記第2のガス供給ノズル70を介して前記反応室44内に供給する様になっている。尚、前記第2のガス供給ノズル70は、複数本設けてもよい。
【0043】
該第2のガス供給ノズル70は、第2のガスライン260に接続されている。該第2のガスライン260は、例えばガス配管213c,213dと接続され、該ガス配管213c,213dはそれぞれ、C(炭素)原子含有ガスとして、例えばC3H8ガスに対して流量制御手段としてのMFC211c及びバルブ212cを介してC3H8ガス供給源210cに接続され、還元ガスとして、例えばH2ガスに対して流量制御手段としてのMFC211d及びバルブ212dを介してH2ガス供給源210dに接続されている。
【0044】
上記構成により、例えばC3H8ガス、H2ガスの供給流量、濃度、分圧を前記反応室44内に於いて制御することができる。前記バルブ212c,212d、前記MFC211c,211dは前記ガス流量制御部78に電気的に接続されており、供給するガス流量が所定の流量となる様、所定のタイミングにて制御される様になっている(図4参照)。尚、C3H8ガス、H2ガスのガス供給源210c,210d、前記バルブ212c,212d、前記MFC211c,211d、前記ガス配管213c,213d、前記第2のガスライン260、第2のガス供給ノズル70、前記第2のガス供給口72により、ガス供給系として第2のガス供給系が構成される。
【0045】
又、前記第1のガス供給ノズル60及び前記第2のガス供給ノズル70に於いて、基板の配列領域に前記第1のガス供給口68及び前記第2のガス供給口72が1つ設けられていてもよく、ウェーハ14の所要数枚毎に設けられていてもよい。
【0046】
<排気系>
図3に示す様に、前記第1のガス排気口90が、前記第1のガス供給ノズル60及び前記第2のガス供給ノズル70の位置に対して対向する様に配置され、前記マニホールド36には、前記第1のガス排気口90に接続されたガス排気管230が貫通する様設けられている。該ガス排気管230の下流側には、図示しない圧力検出器としての圧力センサ及び、圧力調整器としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ214を介して真空ポンプ等の真空排気装置220が接続されている。圧力センサ及び前記APCバルブ214には、圧力制御部98が電気的に接続されており、該圧力制御部98は圧力センサにより検出された圧力に基づいて前記APCバルブ214の開度を調整し、前記処理炉40内の圧力が所定の圧力となる様所定のタイミングにて制御する様に構成されている(図4参照)。
【0047】
上記した様に、前記第1のガス供給口68から少なくともSi(シリコン)原子含有ガスとCl(塩素)原子含有ガスとを供給し、前記第2のガス供給口72から少なくともC(炭素)原子含有ガスと還元ガスとを供給し、供給されたガスはSi又はSiCで構成されたウェーハ14に対し平行に流れ、前記第1のガス排気口90より排気されるので、ウェーハ14全体が効率的且つ均一にガスに晒される。
【0048】
又、図3に示す様に、前記第3のガス供給口360は前記反応管42と前記断熱材54との間に配置され、前記マニホールド36を貫通する様に取付けられている。更に、前記第2のガス排気口390が、前記反応管42と前記断熱材54との間であり、前記第3のガス供給口360に対して対向する様に配置され、前記第2のガス排気口390は前記ガス排気管230に接続されている。前記第3のガス供給口360は前記マニホールド36を貫通する第3のガスライン240に形成され、バルブ212e、MFC211eを介してガス供給源210eと接続されている。該ガス供給源210eからは不活性ガスとして、例えば希ガスのArガスが供給され、SiCエピタキシャル膜成長に寄与するガス、例えばSi(シリコン)原子含有ガス又はC(炭素)原子含有ガス又はCl(塩素)原子含有ガス又はそれらの混合ガスが、前記反応管42と前記断熱材54との間に進入するのを防ぎ、前記反応管42の内壁又は前記断熱材54の外壁に不要な生成物が付着するのを防止することができる。
【0049】
又、前記反応管42と前記断熱材54との間に供給された不活性ガスは、前記第2のガス排気口390より前記ガス排気管230の下流側にある前記APCバルブ214を介して前記真空排気装置220から排気される。
【0050】
<制御部>
次に、図4に於いて、SiCエピタキシャル膜を成膜する前記半導体製造装置10を構成する各部の制御構成について説明する。
【0051】
温度制御部52、前記ガス流量制御部78、前記圧力制御部98、前記駆動制御部108は、操作部及び入出力部を構成し、前記半導体製造装置10全体を制御する主制御部150に電気的に接続されている。又、前記温度制御部52、前記ガス流量制御部78、前記圧力制御部98、前記駆動制御部108は、コントローラ152として構成されている。尚、図示されていないが、前記温度制御部52、前記ガス流量制御部78、前記圧力制御部98は、処理制御部として構成されていてもよい。
【0052】
<各ガス供給系に供給されるガスの詳細>
次に、上述した第1のガス供給系及び第2のガス供給系を構成する理由について説明する。SiCエピタキシャル膜を成膜する半導体製造装置では、少なくともSi(シリコン)原子含有ガスと、C(炭素)原子含有ガスとで構成される原料ガスを前記反応室44に供給し、SiCエピタキシャル膜を成膜する必要がある。また、本実施例の様に、複数枚のウェーハ14が水平姿勢で多段に整列させて保持される場合に於いて、ウェーハ間の均一性を向上させるため、成膜ガスを夫々のウェーハ近傍のガス供給口から供給できるように、前記反応室44内にガス供給ノズルを設けている。従って、ガス供給ノズル内も反応室と同じ条件となっている。この時、Si原子含有ガスとC原子含有ガスを同じガス供給ノズルにて供給すると、原料ガス同士が反応することで原料ガスが消費され、前記反応室44の下流側で原料ガスが不足するだけでなく、ガス供給ノズル内で反応し堆積したSiC膜等の堆積物がガス供給ノズルを閉塞し、原料ガスの供給が不安定になると共に、パーティクルを発生させる等の問題を生じてしまう。
【0053】
そこで、本実施例では、第1のガス供給ノズル60を介してSi原子含有ガスを供給し、第2のガス供給ノズル70を介してC原子含有ガスを供給している。このように、Si原子含有ガスとC原子含有ガスを異なるガス供給ノズルから供給することにより、ガス供給ノズル内では、SiC膜が堆積しないようにすることができる。なお、Si原子含有ガス及びC原子含有ガスの濃度や流速を調整したい場合は、夫々適切なキャリアガスを供給すればよい。
【0054】
更に、Si原子含有ガスを、より効率的に使用するため水素ガスのような還元ガスを用いる場合がある。この場合、還元ガスは、C原子含有ガスを供給する第2のガス供給ノズル70を介して供給することが望ましい。このように還元ガスをC原子含有ガスと共に供給し、反応室44内でSi原子含有ガスと混合することにより、還元ガスが少ない状態となるためSi原子含有ガスの分解を成膜時と比較して抑制することができ、第1のガス供給ノズル内におけるSi膜の堆積を抑制することが可能となる。この場合、還元ガスをC原子含有ガスのキャリアガスとして用いることが可能となる。なお、Si原子含有ガスのキャリアとしては、アルゴン(Ar)のような不活性ガス(特に希ガス)を用いることにより、Si膜の堆積を抑制することが可能となる。
【0055】
更に、第1のガス供給ノズル60には、HClのような塩素原子含有ガスを供給することが望ましい。このようにすると、Si原子含有ガスが熱により分解し、第1のガス供給ノズル内に堆積可能な状態となったとしても、塩素によりエッチングモードとすることが可能となり、第1のガス供給ノズル内へのSi膜の堆積をより抑制することが可能になる。
【0056】
尚、図2に示す例では、第1のガス供給ノズル60にSiH4ガス及びHClガスを供給し、第2のガス供給ノズル70にC3H8ガス及びH2ガスを供給する構成で説明したが、上述した通り、図2に示す例は、最も良いと考えられる組合せであり、それに限られることはない。
【0057】
又、図2に示す例では、SiCエピタキシャル膜を形成する際に流すCl(塩素)原子含有ガスとしてHClガスを例示したが、塩素ガスを用いてもよい。
【0058】
又、上述ではSiCエピタキシャル膜を形成する際に、Si(シリコン)原子含有ガスとCl(塩素)原子含有ガスとを供給したが、Si原子とCl原子を含むガス、例えばテトラクロロシラン(以下SiCl4とする)ガス、トリクロロシラン(以下SiHCl3)ガス、ジクロロシラン(以下SiH2Cl2)ガスを供給してもよい。また、言うまでもないが、これらのSi原子及びCl原子を含むガスは、Si原子含有ガスでも有り、又は、Si原子含有ガス及びCl原子含有ガスの混合ガスともいえる。特に、SiCl4は、熱分解される温度が比較的高いため、ノズル内のSi消費抑制の観点から望ましい。
【0059】
又、上述ではC(炭素)原子含有ガスとしてC3H8ガスを例示したが、エチレン(以下C2H4とする)ガス、アセチレン(以下C2H2とする)ガスを用いてもよい。
【0060】
また、還元ガスとしてH2ガスを例示したが、これに限らず他のH(水素)原子含有ガスを用いても良い。更には、キャリアガスとしては、Ar(アルゴン)ガス、He(ヘリウム)ガス、Ne(ネオン)ガス、Kr(クリプトン)ガス、Xe(キセノン)ガス等の希ガスのうち少なくとも1つを用いてもよいし、上記したガスを組合せた混合ガスを用いてもよい。
【0061】
<ガス供給ノズルの構成>
ここで、ガス供給ノズル内の堆積は、Si原子含有ガス等のSiC膜の成膜に寄与する成膜ガスの供給方法を工夫することで抑制することは可能である。しかしながら、分離して供給された成膜ガスは、ガス供給口68、72から噴出した直後に混合される。ガス供給口68、72付近で成膜ガスが混合されるとガス供給口にSiC膜が堆積する可能性があり、その結果、ガス供給口の閉塞や堆積したSiC膜の剥がれによるパーティクルの発生が生じる恐れがある。
【0062】
上述のガス供給口付近でのSiC膜の堆積を抑制するための構造を図6を用いて説明する。なお、ガス供給方式は、セパレート方式として説明する。まず、ガス供給ノズルの配置について、図6を用いて説明する。図6は、反応室44を上部から見た断面図であり、理解を容易にするため必要な部材のみを記載している。図6が示す通り、Si原子含有ガスを供給する第1のガス供給ノズル60とC原子含有ガスを供給する第2のガス供給ノズル70とが交互に配置される。このように交互に配置することにより、Si原子含有ガスとC原子含有ガスの混合を促進することができる。また、第1のガス供給ノズル及び第2のガス供給ノズルは、奇数本とすることが望ましい。奇数本とすると、中心の第2ガス供給ノズル70を中心に成膜ガス供給を左右対称とすることができ、ウェーハ14内の均一性を高めることができる。
【0063】
また、図6では、C原子含有ガスを供給する第2のガス供給ノズル70を中央、及び、両端に配置し、Si原子含有ガスを供給する第1のガス供給ノズル60を第2のガス供給ノズルの間に配置しているが、Si原子含有ガスを供給する第1のガス供給ノズル70を中央、及び、両端に配置し、Si原子含有ガスを供給する第2のガス供給ノズル70を第1のガス供給ノズルの間に配置するようにしてもよい。なお、C原子含有ガスを供給する第2のガス供給ノズル70を中央、及び、両端に配置し、Si原子含有ガスを供給する第1のガス供給ノズル60を第2のガス供給ノズルの間に配置することが望ましい。このように配置することにより、C原子含有ガスと共にキャリアガスとして大量に供給する(場の主流となる)H2の流量比(中央/両端)を調整することでウェーハ上のガス流れをコントロールすることができ、面内膜厚の制御が容易となる。
【0064】
<SiC膜の形成方法>
次に、上述した前記半導体製造装置10を用い、半導体デバイスの製造工程の一工程として、SiC等で構成されるウェーハ14等の基板上に、例えばSiC膜を形成する基板の製造方法について説明する。尚、以下の説明に於いて前記半導体製造装置10を構成する各部の動作は、前記コントローラ152により制御される。
【0065】
先ず、前記ポッドステージ18に複数枚のウェーハ14を収納したポッド16がセットされると、前記ポッド搬送装置20により前記ポッド16を前記ポッドステージ18から前記ポッド収納棚22へ搬送し、ストックする。次に、前記ポッド搬送装置20により、前記ポッド収納棚22にストックされた前記ポッド16を前記ポッドオープナ24に搬送してセットし、該ポッドオープナ24により前記ポッド16の蓋を開き、前記基板枚数検知器26により前記ポッド16に収納されているウェーハ14の枚数を検知する。
【0066】
次に、前記基板移載機28は、前記ポッドオープナ24の位置にある前記ポッド16からウェーハ14を取出し、前記ウェーハ14の移載を禁止するように指定された特定のボートスロットに接触しないよう、複数枚または一枚のどちらか選択して前記ウェーハ14を前記特定のボートスロットを除く他のボートスロットに保持させて、前記特定のボートスロットに相当するスロットに補強板が固定されている前記ボート30に移載する。
【0067】
複数枚のウェーハ14が前記補強板を備えた前記ボート30に装填されると、ウェーハ14を前記特定のボートスロットを除く載置部としてのボートスロットに保持した前記ボート30は、前記昇降モータ122による前記昇降台114及び昇降シャフト124の昇降動作により前記反応室44内に搬入(ボートローディング)される。この状態では、前記シールキャップ102はOリング(図示せず)を介して前記マニホールド36の下端をシールした状態となる。
【0068】
前記補強板を備えた前記ボート30搬入後、前記反応室44内が所定の圧力(真空度)となる様に、前記真空排気装置220によって真空排気される。この時、前記反応室44内の圧力は、圧力センサ(図示せず)によって測定され、測定された圧力に基づき前記第1のガス排気口90及び前記第2のガス排気口390に連通するAPCバルブ214がフィードバック制御される。又、ウェーハ14及び前記反応室44内が所定の温度となる様前記被加熱体48が加熱される。この時、前記反応室44内が所定の温度分布となる様、温度センサ(図示せず)が検出した温度情報に基づき前記誘導コイル50への通電具合がフィードバック制御される。続いて、前記回転機構104により、前記ボート30が回転されることで、ウェーハ14が周方向に回転される。また、前記ボート30は、前記補強板を設けているため、前記加熱処理に影響を受け、撓むことは無い。また、撓みが発生しても前記補強板を設けているため、前記ウェーハ14が前記載置部から転落することは無く、ロットアウトを抑えることができる。
【0069】
続いて、SiCエピタキシャル成長反応に寄与するSi(シリコン)原子含有ガス及びCl(塩素)原子含有ガスは、それぞれ前記ガス供給源210a,210bから供給され、前記第1のガス供給口68より前記反応室44内に噴出される。又、C(炭素)原子含有ガス及び還元ガスであるH2ガスが、所定の流量となる様に対応する前記MFC211c,211dの開度が調整された後、前記バルブ212c,212dが開かれ、それぞれのガスが前記第2のガスライン260に流通し、前記第2のガス供給ノズル70に流通して前記第2のガス供給口72より前記反応室44内に導入される。
【0070】
前記第1のガス供給口68及び前記第2のガス供給口72より供給されたガスは、前記反応室44内の前記被加熱体48の内側を通り、前記第1のガス排気口90から前記ガス排気管230を通って排気される。前記第1のガス供給口68及び前記第2のガス供給口72より供給されたガスは、前記反応室44内を通過する際に、SiC等で構成されるウェーハ14と接触し、ウェーハ14表面上にSiCエピタキシャル膜成長がなされる。その際、ガス供給ノズルに設けられた遮蔽壁により他のガス供給口に向かう流れが抑制され、その結果、ウェーハの均質化を図ることができる。
【0071】
又、前記ガス供給源210eより、不活性ガスとしての希ガスであるArガスが所定の流量となる様に対応する前記MFC211eの開度が調整された後、前記バルブ212eが開かれ、前記第3のガスライン240に流通し、前記第3のガス供給口360から前記反応室44内に供給される。前記第3のガス供給口360から供給された不活性ガスとしての希ガスであるArガスは、前記反応室44内の前記断熱材54と前記反応管42との間を通過し、前記第2のガス排気口390から排気される。
【0072】
次に、予め設定された時間が経過すると、上述したガスの供給が停止され、図示しない不活性ガス供給源より不活性ガスが供給され、前記反応室44内の前記被加熱体48の内側の空間が不活性ガスで置換されると共に、前記反応室44内の圧力が常圧に復帰される。
【0073】
その後、前記昇降モータ122により前記シールキャップ102が下降され、前記マニホールド36の下端が開口されると共に、処理済みのウェーハ14が前記ボート30に保持された状態で前記マニホールド36の下端から前記反応管42の外部に搬出(ボートアンローディング)され、前記ボート30に保持されたウェーハ14が冷える迄、前記ボート30を所定位置にて待機させる。待機させた該ボート30のウェーハ14が所定温度迄冷却されると、前記基板移載機28により、前記ボート30からウェーハ14を取出し、前記ポッドオープナ24にセットされている空のポッド16に搬送して収納する。このとき、前記ボート30へのウェーハ14の移載と同様に、補強板が固定されている特定のボートスロットに前記基板移載機28の前記アーム32を前記特定のボートスロットに近づけないように制御される。その後、ポッド搬送装置20によりウェーハ14が収納された前記ポッド16を前記ポッド収納棚22、又は前記ポッドステージ18に搬送する。この様にして、前記半導体製造装置10の一連の作動が完了する。
【0074】
上述した様に、前記第1のガス供給口68から少なくともSi(シリコン)原子含有ガスとCl(塩素)原子含有ガスとを供給し、前記第2のガス供給口72から少なくともC(炭素)原子含有ガスと還元ガスとを供給したので、前記第1のガス供給ノズル60及び前記第2のガス供給ノズル70内での堆積膜の成長を抑制し、又前記反応室44内では前記第1のガス供給ノズル60及び前記第2のガス供給ノズル70より供給されるSi(シリコン)原子含有ガスとCl(塩素)原子含有ガス、C(炭素)原子含有ガスと還元ガスであるH2ガスが反応することで、SiC等から構成される複数のウェーハ14を水平姿勢で且つ多段に保持した場合に於いて、均一にSiCエピタキシャル膜成長を行うことができる。
【0075】
このように、遮蔽部である遮蔽壁により少なくとも第2のガス供給口72から噴出した第2ガスが第1のガス供給口68に向かう流れを抑制することでガス供給口への膜の堆積を抑制し、均質なウェーハ14を製造することができる。
【0076】
また、上述の実施形態によれば、超高温での熱処理に耐えるために補強板を固定した状態の基板保持具に対して安全に基板を移載することができ、前記基板に対して所定の処理を行うことができる。
【0077】
このように、本実施の形態において、ボートの載置部(ボートスロット)に関して、一部破損があった場合や補強板等が特定のボートスロットに固定されている場合など、特定のボートスロットを移載禁止に指定して、移載機が搬送動作を行わないよう搬送制御することについて説明してきたが、基板収容器としてのキャリアの基板配置部としての溝(スロット)についても同様に本実施の形態を適用して特定のスロットを避けるように搬送することが可能である。
【0078】
なお、本発明の好ましい態様について付記する。
(1)本発明の一態様によれば、複数の基板が縦方向に並んで配置される反応室と、前記反応室を覆うように設けられ、前記処理室を加熱する加熱部と、前記反応室内に前記複数の基板に沿うように設けられ、前記複数の基板が配置される方向に向けて第1ガスを噴出する第1ガス供給口を有する第1ガス供給管と、前記反応室内に前記複数の基板に沿うように設けられ、前記複数の基板が配置される方向に向けて第2ガスを噴出する第2ガス供給口を有する第2ガス供給管と、少なくとも前記第2ガスが前記第1ガス供給口へ向かう流れを抑制する第1遮蔽部と、を具備する基板処理装置が提供される。
(2)上記(1)に記載される基板処理装置において、前記第1遮蔽部は、少なくとも前記第1ガス供給口の両側に設けられ、前記第1ガス供給口から前記複数の基板が配置される方向に延在する遮蔽壁である基板処理装置が提供される。
(3)上記(1)または(2)に記載される基板処理装置において、前記第1ガスは、Si原子含有ガスとC原子含有ガスの混合ガスであり、前記第2ガスは、還元ガスである基板処理装置が提供される。
(4)上記(3)に記載される基板処理装置において、前記第2ガス供給ノズルには、前記第1ガスが前記第2ガス供給口に向かう流れを抑制する遮蔽部が設けられない基板処理装置が提供される。
(5)上記(1)または(2)に記載される基板処理装置において、前記第1ガスは、Si原子含有ガスであり、前記第2ガスは、C原子含有ガスと還元ガスの混合ガスである基板処理装置が提供される。
(6)上記(5)に記載される基板処理装置において、前記第1ガスが前記第2ガス供給口へ向かう流れを抑制する第2遮蔽部を更に具備し、前記第2遮蔽部は、前記第2ガス供給口の両側に設けられ、前記第2ガス供給口から前記複数の基板が配置される方向に延在する第2遮蔽壁である基板処理装置が提供される。
(7)上記(1)に記載される基板処理装置において、前記第1遮蔽部は、前記第1ガス供給口から噴出する前記第1ガスの第1ガス流と前記第2ガス供給口から噴出する前記第2ガスの第2ガス流との間に設けられた不活性ガスの第3ガス流である基板処理装置が提供される。
(8)上記(7)に記載される基板処理装置において、前記第1ガス供給ノズルと前記第2ガス供給ノズルとの間に前記複数の基板に沿うように設けられ、前記不活性ガスを供給する第3ガス供給口を有する基板処理装置が提供される。
(9)上記(8)に記載される基板処理装置において、前記第3ガス供給口は、前記基板の中心部より前記第1ガス供給口に近い方向に向けられる基板処理装置が提供される。
(10)上記(9)において、前記第3ガス供給口は、前記第1ガス供給口に向けられる基板処理装置が提供される。
(11)上記(7)乃至(10)のいずれか一つに記載される基板処理装置において、前記第1ガスは、Si原子含有ガスであり、前記第2ガスは、C原子含有ガスである基板処理装置が提供される。
(12)上記(7)乃至(10)のいずれか一つに記載される基板処理装置において、前記第1ガスは、Si原子含有ガスとC原子含有ガスの混合ガスであり、前記第2ガスは、還元ガスである基板処理装置が提供される。
(13)本発明の他の一態様によれば、移載禁止指定された特定の載置部に接触しないよう、複数枚または一枚のどちらか選択して前記基板を前記特定の載置部を除く他の載置部に移載する移載工程と、複数の基板を縦方向に搭載したボートを反応室内に搬入するボートローディング工程と、前記反応室内に搬入された前記複数の基板に沿うように前記反応室内に設けられた第1ガス供給ノズルに設けられた第1ガス供給口から第1ガス、及び、前記反応室内に搬入された前記複数の基板に沿うように前記反応室内に設けられた第2ガス供給ノズルに設けられた第2ガス供給口から第2ガスを前記複数の基板に供給し、前記第1ガスと前記第2ガスが混合されることにより前記複数の基板上に所定の膜を形成する成膜工程と、前記所定の膜が形成された前記複数の基板を前記反応室から搬出するボートアンローディング工程と、を有し、前記成膜工程において、前記第1ガスが前記第2ガス供給口に向かう流れを遮蔽部により抑制する基板の製造方法が提供される。
(14)本発明の他の一態様によれば、移載禁止指定された特定の載置部に接触しないよう、複数枚または一枚のどちらか選択して前記基板を前記特定の載置部を除く他の載置部に移載する移載工程と、複数の基板を縦方向に搭載したボートを反応室内に搬入するボートローディング工程と、前記反応室内に搬入された前記複数の基板に沿うように前記反応室内に設けられた第1ガス供給ノズルに設けられた第1ガス供給口から第1ガス、及び、前記反応室内に搬入された前記複数の基板に沿うように前記反応室内に設けられた第2ガス供給ノズルに設けられた第2ガス供給口から第2ガスを前記複数の基板に供給し、前記第1ガスと前記第2ガスが混合されることにより前記複数の基板上に所定の膜を形成する成膜工程と、前記所定の膜が形成された前記複数の基板を前記反応室から搬出するボートアンローディング工程と、を有し、前記成膜工程において、前記第1ガスが前記第2ガス供給口に向かう流れを遮蔽部により抑制する半導体デバイスの製造方法が提供される。
(15)本発明の他の一態様によれば、移載禁止指定された特定の載置部に接触しないよう、複数枚または一枚のどちらか選択して前記基板を前記特定の載置部を除く他の載置部に移載する移載工程を有する基板移載方法が提供される。
(16)本発明の他の一態様によれば、移載禁止指定された特定の載置部に接触しないよう、複数枚または一枚のどちらか選択して前記基板を前記特定の載置部を除く他の載置部に移載する搬送制御手段を備えた基板処理装置が提供される。
【符号の説明】
【0079】
10:半導体製造装置、12:筐体、14:ウェーハ、16:ポッド、30:ボート、40:処理炉、42:反応管、44:反応室、48:被加熱体、50:誘導コイル、60:第1のガス供給ノズル、68:第1のガス供給口、70:第2のガス供給ノズル、72:第2のガス供給口、90:第1のガス排気口、150:主制御部、152:コントローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を載置部に保持する基板保持具と、複数の基板配置部に基板を配置する基板収容器と、複数枚又は一枚の基板を搬送するように構成されている搬送手段と、特定の載置部に移載禁止指定を受けつけると、複数枚または一枚のどちらか選択しながら前記基板を前記特定の載置部を除く他の載置部に保持させつつ前記基板保持具に移載させる搬送制御手段と、を有する熱処理装置。
【請求項2】
基板を載置部に保持する基板保持具に対して前記基板を搬送する移載工程を有する基板移載方法であって、前記移載工程では、移載禁止に指定された特定の載置部に接触しないよう、複数枚または一枚のどちらか選択して前記基板を前記特定の載置部を除く他の載置部に保持させて、前記基板保持具に前記基板を移載する基板移載方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−182351(P2012−182351A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44932(P2011−44932)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】