説明

基板処理装置

【課題】処理液の吐出量を正確に設定することが可能でかつノズルからの処理液の吐出動作の変更が容易な基板処理装置を提供する。
【解決手段】吐出ポンプ6はポンプ駆動モータ7により駆動され、レジストノズル4にレジスト液を供給して吐出させる。ポンプ駆動モータ7は制御部13の制御に基づきモータコントローラ12により駆動される。制御部13はレシピデータおよびサブライブラリを有する。サブライブラリにはポンプ駆動モータ7の駆動パターン、加減速時間、レジストノズル4からのレジスト液の吐出速度および吐出量が入力され、レシピデータにはレジストノズル4の吐出時間等の制御情報が入力部12より入力されて格納される。また、レシピデータおよびサブライブラリの各制御情報は入力部12から変更することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理液を吐出するノズルを備えた基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ、液晶表示装置用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、光ディスク用基板等の基板に所定の処理を行うために基板処理装置が用いられている。このような基板処理装置では、基板を水平姿勢で回転させながらその表面に処理液ノズルからレジスト液、現像液あるいは洗浄液等の処理液を供給することにより基板の表面処理を行う。
【0003】
図7は基板処理装置の一例としての回転式塗布装置の構成を示す模式図である。図7において、回転式塗布装置は、基板Wを保持する基板保持部2と、基板保持部2を回転駆動するスピンモータ1を備える。さらに、回転式塗布装置には基板Wの表面にレジスト液を供給するレジスト液供給系30が設けられている。レジスト液供給系30はレジスト液26を貯留するレジスト容器25、レジスト容器25内のレジスト液26を導くレジスト供給管5およびレジスト液を吐出するレジストノズル4を備える。レジスト供給管5の途中にはレジスト容器25内のレジスト液26をノズル4へ送り出すためのベローズ20およびベローズ20を伸縮駆動するシリンダ21が配置されている。シリンダ21には圧縮空気を導入する2本の導入管路28,29が接続されている。導入管路28,29にはそれぞれ開閉弁22,23が取り付けられている。また、導入管路28,29に接続される切替弁24は圧縮空気27を一方の導入管路28と他方の導入管路29とに切り替えて供給する。
【0004】
基板Wにレジスト液を供給する場合、切替弁24により圧縮空気27を導入管路28を通してシリンダ21に供給する。そして、ベローズ20を伸長してレジスト容器25からレジスト液26をベローズ20内に吸い込む。その後、切替弁24を切り替えて圧縮空気27を導入管路29からシリンダ21に供給する。これにより、ベローズ20を圧縮し、ベローズ20内のレジスト液26をレジスト供給管5を通してレジストノズル4から基板Wの表面に吐出させる。基板Wの表面に吐出されたレジスト液は、基板Wの回転による遠心力を受けて基板Wの全面に均一に塗り広げられる。
【0005】
基板Wの表面上に塗布形成されるレジスト薄膜の膜厚は、基板W上にレジスト薄膜の微細パターンを形成するために正確に制御される必要がある。また、レジスト薄膜の膜厚は基板Wに供給されるレジスト液の吐出量に依存する。このため、レジストノズル4からのレジスト液の吐出量は正確に制御される必要がある。
【0006】
図7の塗布装置では、レジスト液の吐出量は以下のように制御されている。まず、基板Wへの吐出前において、シリンダ21に圧縮空気27を供給してシリンダ21を駆動する時間、すなわちレジストノズル4からのレジスト液の吐出時間を種々設定し、その時のレジスト液の吐出量を計量容器で計量して吐出時間とレジスト液の吐出量との関係を予め求める。そして、その計量結果に基づいて、レジスト液の吐出量が所望の値となるようにレジスト液の吐出時間、すなわちシリンダ21の駆動時間を設定する。
【0007】
そして、実際のレジスト液吐出時には、上記処理により設定された駆動時間に基づいてシリンダ21が駆動され、レジストノズル4からレジスト液が基板Wの表面に吐出される。そして、設定した駆動時間が経過すると、導入管路28,29の開閉弁22,23が閉鎖され、シリンダ21の駆動が停止される。これにより、レジストノズル4からのレジスト液の吐出が停止する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来の回転式塗布装置では、レジスト液の吐出量はシリンダ21への導入管路28,29の開閉弁22,23の開閉動作により制御されていた。開閉弁22,23の開閉動作は圧縮空気27を利用して行われている。このため、開閉弁22,23の開閉動作は常に一定とはならず、そのためにレジスト液の吐出量を正確に制御することが困難であった。
【0009】
また、開閉弁22,23はそれぞれ固有の流量特性を有している。このため、同じ種類の開閉弁22,23を用いた回転式塗布装置であっても各回転式塗布装置ごとにレジスト液の吐出時間と吐出量との関係が異なる。そこで、各回転式塗布装置ごとにレジスト液の吐出時間と吐出量との関係を求めて吐出時間を設定する必要があった。
【0010】
一方、従来の回転式塗布装置においてレジスト液の吐出量を変更する場合には、レジスト液の吐出時間を変更するのみならず、レジストノズル4からのレジスト液の吐出速度を変更することも可能である。そして、この場合には、シリンダ21に供給される圧縮空気27の供給管路に設けられた流量制御装置(図示せず)を手動で変更して圧縮空気27の供給量を調整していた。しかしながら、レジスト液の吐出速度を変更する必要が生じる度に、圧縮空気27の流量制御装置を手動で再調整する必要があり、レジスト液の吐出速度の変更が困難であった。
【0011】
本発明の目的は、ノズルからの処理液の吐出量を正確に設定することが可能でかつノズルからの処理液の吐出動作の変更が容易な基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)第1の発明
第1の発明に係る基板処理装置は、処理液供給源から導かれる処理液を基板に供給して所定の処理を行う基板処理装置であって、基板を保持する基板保持手段と、基板保持手段に保持された基板に処理液を吐出するノズルと、処理液供給源の処理液をノズルへ送り出すポンプと、ポンプを駆動するモータと、所定の処理のための複数の処理工程における処理手順を規定する処理手順情報およびモータの動作を規定するモータ制御情報を入力するための入力手段と、入力手段により入力された処理手順情報をレシピデータとして格納するとともにモータ制御情報をサブライブラリとして格納し、処理手順情報に基づいて複数の処理工程を制御し、モータ制御情報に基づいてモータの動作を制御する制御手段とを備えたものである。
【0013】
第1の発明に係る基板処理装置においては、処理液をノズルへ送り出すポンプはモータにより駆動される。モータの回転動作は、制御手段により正確に制御することができる。このため、モータにより駆動されるポンプからの処理液の吐出量を正確に制御することによりノズルから吐出される処理液の吐出量を所望の値に設定することができる。さらに、入力手段からは所定の処理のための複数の処理工程における処理手順を規定する処理手順情報およびモータの動作を規定するモータ制御情報を入力することができる。この入力された処理手順情報がレシピデータとして格納され、モータ制御情報がサブライブラリとして格納される。処理手順情報に基づいて複数の処理工程が制御され、モータ制御情報に基づいてモータの動作が制御される。このため、入力手段から処理手順情報またはモータ制御情報を入力することにより、ノズルの処理液の吐出動作を容易に変更することが可能となる。
【0014】
(2)第2の発明
第2の発明に係る基板処理装置は、第1の発明に係る基板処理装置の構成において、モータ制御情報は、ノズルからの処理液の吐出時間、吐出速度、モータの加速時間および減速時間の制御情報を含むものである。
【0015】
第2の発明に係る基板処理装置においては、制御手段がノズルからの処理液の吐出時間、吐出速度、モータの加速時間および減速時間の制御情報に基づいてモータの動作を制御することができる。これにより、ノズルからの処理液の吐出動作を正確に制御することができる。
【0016】
(3)第3の発明
第3の発明に係る基板処理装置は、第1または第2の発明に係る基板処理装置の構成において、複数の処理工程は処理液吐出工程を含み、処理手順情報は、処理液吐出工程におけるノズルからの処理液の吐出時間の制御情報を含み、制御手段は、処理手順情報のノズルからの処理液の吐出時間の制御情報およびモータ制御情報に基づいてモータがポンプを駆動する動作を制御するものである。
【0017】
第3の発明に係る基板処理装置においては、制御手段は、レシピデータとして格納された処理手順情報の吐出時間の制御情報に基づいてモータがポンプを駆動する時間を制御することができる。これにより、ノズルからの処理液の吐出時間を所望の値に調整して処理液の吐出量を制御することができる。
【0018】
特に、処理手順情報がノズルからの処理液の吐出時間の制御情報を含んでいる。このため、ノズルからの処理液の吐出量を変化させる場合、処理手順情報に含まれる処理液の吐出時間の制御情報を変更することにより、モータ制御情報を変更することなくノズルからの処理液の吐出量を容易に変更することができる。
【0019】
(4)第4の発明
第4の発明に係る基板処理装置は、第1または第2の発明に係る基板処理装置の構成において、複数の処理工程は処理液吐出工程を含み、モータ制御情報は、処理液吐出工程におけるノズルからの処理液の吐出時間の制御情報を含み、制御手段は、モータ制御情報に基づいてモータがポンプを駆動する動作を制御するものである。
【0020】
第4の発明に係る基板処理装置においては、制御手段は、サブライブラリとして格納されたモータ制御情報の吐出時間の制御情報に基づいてモータがポンプを駆動する時間を制御することができる。これにより、ノズルからの処理液の吐出時間を所望の値に調整して処理液の吐出量を制御することができる。
【0021】
(5)第5の発明
第5の発明に係る基板処理装置は、第1〜第4のいずれかの発明に係る基板処理装置において、入力手段は、モータ制御情報としてノズルからの処理液の吐出量、吐出時間、吐出速度、モータの加速時間および減速時間の5つの制御情報のうち少なくとも4つの制御情報を入力可能であり、制御手段は、5つの制御情報のうち4つの制御情報が入力された場合に、4つの制御情報をレシピデータまたはサブライブラリとして格納し、格納された4つの制御情報に基づいて5つの制御情報のうちの残りの制御情報を求め、5つの制御情報に基づいてモータの動作を制御するものである。
【0022】
第5の発明に係る基板処理装置においては、モータの動作制御に必要な5つの制御情報のうち、4つの制御情報が入力された場合に、制御手段が残りの制御情報を求めてモータの動作を制御することができる。これにより、作業者の制御情報の入力作業を簡素化することができる。
【0023】
(6)第6の発明
第6の発明に係る基板処理装置は、第1〜第5のいずれかの発明に係る基板処理装置の構成において、モータ制御情報は処理液の吐出速度の制御情報を含み、制御手段は、処理液の吐出速度の制御情報に基づいてモータの回転速度を制御するものである。
【0024】
第6の発明に係る基板処理装置においては、制御手段は、吐出速度の制御情報に基づいてモータの回転速度を制御することができる。これにより、ノズルから所望の吐出速度で処理液を基板に吐出することができる。
【0025】
(7)第7の発明
第7の発明に係る基板処理装置は、第1〜第6のいずれかの発明に係る基板処理装置の構成において、モータ制御情報はモータの加速時間および減速時間の少なくとも一方の制御情報を含み、制御手段は、モータの加速時間および減速時間の少なくとも一方の制御情報に基づいてモータの加速または減速動作を制御するものである。
【0026】
第7の発明に係る基板処理装置においては、制御手段は、加速時間および減速時間の少なくとも一方の制御情報に基づいてモータの加速または減速動作を制御することができる。これにより、ノズルからの処理液の吐出初期および吐出終期の状態を所望の状態に制御することができる。
【0027】
(8)第8の発明
第8の発明に係る基板処理装置は、第1〜第7のいずれかの発明に係る基板処理装置の構成において、モータ制御情報は処理液の吐出量の制御情報を含み、制御手段は、処理液の吐出量の制御情報に基づいてモータの回転動作を制御するものである。
【0028】
第8の発明に係る基板処理装置においては、制御手段は、処理液の吐出量の制御情報に基づいてモータの回転動作を制御することができる。これにより、ノズルからの処理液の吐出量を所望の値に制御することができる。
【0029】
(9)第9の発明
第9の発明に係る基板処理装置は、第1〜第8のいずれかの発明に係る基板処理装置の構成において、入力手段は、ポンプの特性に応じて制御情報を補正するための補正情報をさらに入力し、制御手段は、入力手段により入力された補正情報をサブライブラリとして格納し、モータ制御情報を補正情報に基づいて補正し、補正後のモータ制御情報に基づいてモータの動作を制御するものである。
【0030】
第9の発明に係る基板処理装置においては、入力手段によりノズルの処理液の吐出動作を制御する制御情報と、ポンプの特性に応じて制御情報を補正するための補正情報とを入力することができる。補正情報は、同一仕様の基板処理装置に対して汎用的に作成された制御情報に対し、個々の基板処理装置のポンプ固有の特性に応じて汎用の制御情報を補正するための情報を有する。そこで、制御手段が入力された補正情報に基づいて制御情報を補正してノズルの処理液の吐出動作を制御することにより、処理液の吐出動作を所望の状態に正確に制御することができる。
【0031】
(10)第10の発明
第10の発明に係る基板処理装置は、第1〜第9のいずれかの発明に係る基板処理装置の構成において、モータ制御情報はモータの回転速度の変化を示す回転速度変化パターンを含み、制御手段は、回転速度変化パターンに基づいてモータの回転動作を制御するものである。
【0032】
第10の発明に係る基板処理装置においては、入力手段からモータの回転速度変化パターンを入力し、入力された回転速度変化パターンに従ってモータの回転動作を制御することができる。これにより、処理液をノズルから所望の状態で吐出させることができる。
【0033】
(11)第11の発明
第11の発明に係る基板処理装置は、第1〜第10のいずれかの発明に係る基板処理装置の構成において、回転速度変化パターンは台形状のパターンであるものである。
【0034】
第11の発明に係る基板処理装置においては、台形状の回転速度変化パターンを入力することが可能であり、制御手段が台形状の回転速度変化パターン、ノズルからの処理液の吐出量、吐出時間、吐出速度、モータの加速時間および減速時間の制御情報に基づいてモータの動作を制御することができる。これにより、ノズルからの処理液の吐出動作を正確に制御することができる。
【0035】
(12)第12の発明
第12の発明に係る基板処理装置は、第10の発明に係る基板処理装置の構成において、回転速度変化パターンは、モータの加速時および減速時に回転速度がS字状に変化するS字状のパターンであるものである。
【0036】
第12の発明に係る基板処理装置においては、モータの加速時および減速時に回転速度がS字状に変化するS字状のパターンが入力可能であり、制御手段は、ノズルからの処理液の吐出量、吐出時間、吐出速度、モータの加速時間および減速時間の制御情報に基づいてS字状の回転速度変化パターンに従ったモータの回転動作を制御することができる。これにより、ノズルの処理液の吐出動作を正確に制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
図1は本発明の実施例による基板処理装置の一例としての回転式塗布装置の概略構成図である。図1において、回転式塗布装置は、スピンモータ1と、スピンモータ1の回転軸の先端に取り付けられ、基板Wを水平姿勢で保持して回転駆動される基板保持部2を備える。また、回転式塗布装置は、基板Wにレジスト液を供給するレジスト液供給系30を有する。レジスト液供給系30は、レジスト液9を貯留するレジスト容器8と、レジスト液9を吐出するレジストノズル4と、レジストノズル4とレジスト容器8とを連結するレジスト供給管路5と、レジスト供給管路5中に設けられた吐出ポンプ6およびポンプ駆動モータ7を備える。
【0038】
レジストノズル4は基板Wの上方位置と基板Wの外方の待機位置との間を移動可能に形成されている。
【0039】
ポンプ駆動モータ7はパルスモータからなる。パルスモータでは、駆動パルスにより回転数を正確に制御することができる。このパルスモータからなるポンプ駆動モータ7は主コントローラ11の制御の下でモータコントローラ10から出力される駆動パルスにより回転駆動される。
【0040】
吐出ポンプ6はポンプ駆動モータ7から回転力を受けてレジスト液9をレジスト容器8内からレジスト供給管路5を通してレジストノズル4に送り出し、レジストノズル4から吐出させる。
【0041】
主コントローラ11は、入力部12、制御部13および表示部14から構成される。入力部12は、レジストノズル4からのレジスト液9の吐出動作の制御情報やポンプ駆動モータ7の回転動作の制御情報を入力する。
【0042】
制御部13は、回転式塗布装置における処理手順を規定する制御情報を格納するレシピデータ、およびポンプ駆動モータ7の動作を規定する制御情報を格納するサブライブラリを有する。入力部12から入力される各制御情報は、レシピデータおよびサブライブラリの所定位置に格納される。そして、制御部13はレシピデータおよびサブライブラリを参照して回転式塗布装置の各部の動作を制御するとともに、モータコントローラ10に制御信号を出力してポンプ駆動モータ7の回転動作を制御する。
【0043】
表示部14は、入力部12から入力される制御情報や制御部13で求められる制御情報等を表示する。
【0044】
図2はレシピデータの説明図であり、図3はサブライブラリの説明図である。さらに、図4は回転式塗布装置の処理工程におけるポンプ駆動モータの回転速度変化を示す図である。
【0045】
図2〜図4に示すように、回転式塗布装置では、レジスト液吐出工程、回転塗布工程、基板のリンス工程、乾燥工程および待機工程の各処理工程が行われる。図2のレシピデータ15には、回転式塗布装置の各処理工程に対応する処理ステップ15a、各処理ステップにおける基板回転数15b、各処理ステップにおける処理時間15cおよびレジストノズルの移動タイミング情報(図示せず)等の制御情報が格納されている。
【0046】
また、図3のサブライブラリ16には、レジストノズル4からのレジスト液の吐出速度Vd、ポンプ駆動モータ7の加速時間Taおよび減速時間Tr、レジスト液の吐出量Q、ポンプ駆動モータ7の駆動パターンPおよびレジスト液の吐出量の補正値Cが格納されている。
【0047】
上記実施例においては、基板保持部2が本発明の基板保持手段に相当し、レジストノズル4がノズルに相当し、吐出ポンプ6がポンプに相当し、ポンプ駆動モータ7がモータに相当し、主コントローラ11の入力部14が入力手段に相当し、制御部12が制御手段に相当する。さらに、レシピデータ15が処理手順情報に相当し、サブライブラリ16がモータ制御情報に相当する。
【0048】
上記構成を有する回転式塗布装置の処理動作について以下に説明する。通常、回転式塗布装置のレシピデータ15およびサブライブラリ16は予め作成され、主コントローラ11の制御部13に格納されている。そして、回転式塗布装置は格納されたレシピデータ15およびサブライブラリ16を参照して各処理工程を行う。
【0049】
また、レシピデータ15およびサブライブラリ16に格納された制御情報に基づく処理動作を変更して新たな処理動作を行わせる場合には、主コントローラ11の入力部12から変更すべき制御情報を入力する。ここでは、レジストノズル4の吐出動作を変更する場合について説明する。
【0050】
この場合、作業者は入力部12からレジストノズル4からのレジスト液の吐出速度Vd、ポンプ駆動モータ7の加速時間Taおよび減速時間Tr、レジスト液の吐出量Q、ポンプ駆動モータ7の駆動パターンP、レジスト液の吐出量の補正値Cおよびレジスト液の吐出時間Tdを入力する。入力された制御情報のうち、レジスト液の吐出時間Tdは図2のレシピデータ15の処理ステップS3の処理時間15c内の時間T3として格納され、残りの制御情報は図3のサブライブラリ16内の所定位置に格納される。これにより、処理が開始状態となる。
【0051】
なお、本実施例の回転式塗布装置では、入力部12より上記の7つの制御情報をすべて入力しなくてもよい。例えば、ポンプ駆動モータ7の回転速度を図5に示すような台形状の駆動パターンで制御する場合には、レジスト液9の吐出量Q、吐出速度Vd、吐出時間Td、加速時間Taおよび減速時間Trの5つの制御情報のうち、少なくとも4つの制御情報を入力すればよい。この場合、制御部13は入力された4つの制御情報に基づいて残りの制御情報を算出する。
【0052】
例えば、入力部12よりレジスト液9の吐出速度Vd、吐出時間Td、ポンプ駆動モータ7の加速時間Taおよび減速時間Trを入力すると、制御部13がレジスト液の吐出量Qを算出し、サブライブラリ16内に格納するとともに、表示部14に表示する。これにより、作業者はレジスト液の吐出量Qを確認することができる。
【0053】
また、ポンプ駆動モータ7の回転速度を図6に示すようなS字状の駆動パターンで制御する場合には、台形状の駆動パターンの場合と同様の少なくとも4つの制御情報に加え、ポンプ駆動モータ7の加速時および減速時のS字状の回転速度の制御情報を入力すればよい。
【0054】
さらに、制御部13は、入力部12から吐出ポンプ6によるレジスト液の吐出量の補正値Cが入力されると、補正値Cに基づいてポンプ駆動モータ7の回転動作を補正する。通常、サブライブラリ16は、同一仕様の吐出ポンプ6およびポンプ駆動モータ7が用いられる回転式塗布装置に共通して用いられる。しかしながら、同一仕様の吐出ポンプ6であっても、各ポンプの吐出能力に装置固有の差異が生じる。例えば、ポンプ駆動モータ7に駆動パルスを2000パルス与えると1ml(ミリリットル)のレジスト液を吐出する仕様を有する吐出ポンプ6において、実際に2000パルスの駆動パルスをポンプ駆動モータ7に与えて吐出ポンプ6の吐出量を計測すると、1mlと異なる場合がある。
【0055】
そこで、実測した所定駆動パルス数当たりの吐出量を補正値Cとして入力部12から入力すると、制御部13は1駆動パルス当たりのレジスト液の吐出量を算出する。そして、レジストノズル4からの実際の吐出量を算出して表示部14に表示する。これにより、作業者は実際のレジストノズル4からのレジスト液の吐出量を確認することができる。
【0056】
また、レジストノズル4からの実際の吐出量が、入力された吐出量Qとなるように制御する場合には、補正値Cから算出した吐出量に基づいてレジスト液の吐出時間Tdの入力値あるいは吐出速度Vdの入力値を補正する。これにより、レジストノズル4からの吐出量を、入力した所望の吐出量Qに設定することができる。
【0057】
上記の制御情報の入力が終了すると、作業者からの処理開始の入力情報を受けて、制御部13は、レシピデータ15の処理ステップS1の制御情報に基づいてレジストノズル4を基板Wの上方に移動させる。
【0058】
次に、処理ステップS2およびS3に示す制御情報に基づいてレジスト吐出処理が行われる。このとき、制御部13は、入力部12から入力され、かつサブライブラリ16に格納された制御情報に基づいてレジストノズル4から基板Wにレジスト液を吐出させる。例えば、入力部12により台形状の駆動パターンPが入力された場合、制御部13は各制御情報に従って、ポンプ駆動モータ7を図5に示すように回転駆動する。すなわち、レジスト液の吐出時刻t1からTa時間の間ポンプ駆動モータ7を加速し、その後一定の回転速度Rmで(Td−(Ta+Tr))時間回転させる。さらに、Tr時間の間ポンプ駆動モータ7を減速し、時刻t2において停止させる。これにより、レジストノズル4からはレジスト液9が所定の吐出速度Vdで所定の吐出量Qだけ基板W上に吐出される。
【0059】
その後、処理ステップS3〜S5に示す制御情報に基づいて、スピンモータ1が回転数R1,R4,R5で回転駆動され、基板Wの表面に吐出されたレジスト液9が全面に塗り広げられる。
【0060】
さらに、処理ステップS6〜S8に示す制御情報に基づいて、基板Wの裏面のリンス処理および基板Wの周縁のエッジクリーニング処理が行われる。
【0061】
さらに、処理ステップS9〜S10に示す制御情報に基づいて、基板Wからのリンス液の振り切り乾燥が行われた後、待機状態となる。
【0062】
このように、本実施例による回転式塗布装置では、主コントローラ11の入力部12からレジストノズル4の吐出動作およびポンプ駆動モータ7の回転動作の制御情報を入力することができる。このため、レジスト液の種類や基板Wの直径等に応じてレジスト液の吐出量を最適な量に変更することができる。
【0063】
また、正確な回転制御が可能なパルスモータからなるポンプ駆動モータ7を用いて吐出ポンプ6を駆動することにより、レジストノズル4からのレジスト液の吐出量を正確に制御することができる。加えて、吐出ポンプ6の実際の吐出量から求めた補正値Cに基づいてレジストノズル4からの吐出動作を補正することにより、共通のサブライブラリ16を用いた場合でも各吐出ポンプ6の吐出特性に応じた補正を行なってレジスト液の吐出量を所望の量に正確に制御することができる。
【0064】
なお、上記実施例において、ポンプ駆動モータ7の駆動パターンについては、台形状やS字状パターンのみならず、他の駆動パターンを与えることも可能である。
【0065】
また、上記実施例においては、レジスト液9の吐出時間Tdとして、レシピデータ15の処理時間15cのT3時間の欄に格納された処理時間を利用する例を示したが、吐出時間Tdをサブライブラリ16に格納するように構成してもよい。
【0066】
なお、上記実施例のようにレシピデータ15に吐出時間Tdを入力するようにしておけば、ノズル4からのレジストの吐出量を変化させる場合、このレシピデータ15内の吐出時間を変更することにより、サブライブラリ16内のデータを変更することなく、ノズル4からのレジストの吐出量を容易に変更することができる。
【0067】
さらに、上記実施例においては、回転式塗布装置のレジストノズル4のレジスト供給系30を例に説明したが、エッジクリーニングノズルのリンス液供給系に本発明を適用することも可能であり、さらに洗浄装置や現像装置等他の処理液供給系を有する基板処理装置に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の基板処理装置の実施例としての回転式塗布装置の構成を示す模式図である。
【図2】図1の回転式塗布装置のレシピデータの説明図である。
【図3】図1の回転式塗布装置のサブライブラリの説明図である。
【図4】図1の回転式塗布装置のスピンモータの回転数変化を示す図である。
【図5】図1のポンプ駆動モータの回転速度制御の説明図である。
【図6】図1のポンプ駆動モータの回転速度制御の他の例を示す図である。
【図7】従来の回転式塗布装置の構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0069】
1 スピンモータ
2 基板保持部
4 レジストノズル
5 レジスト供給管路
6 吐出ポンプ
7 ポンプ駆動モータ
8 レジスト容器
9 レジスト液
10 モータコントローラ
11 主コントローラ
12 制御部
13 表示部
14 入力部
15 レシピデータ
16 サブライブラリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液供給源から導かれる処理液を基板に供給して所定の処理を行う基板処理装置であって、
基板を保持する基板保持手段と、
前記基板保持手段に保持された基板に処理液を吐出するノズルと、
前記処理液供給源の処理液を前記ノズルへ送り出すポンプと、
前記ポンプを駆動するモータと、
前記所定の処理のための複数の処理工程における処理手順を規定する処理手順情報および前記モータの動作を規定するモータ制御情報を入力するための入力手段と、
前記入力手段により入力された前記処理手順情報をレシピデータとして格納するとともに前記モータ制御情報をサブライブラリとして格納し、前記処理手順情報に基づいて前記複数の処理工程を制御し、前記モータ制御情報に基づいて前記モータの動作を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記モータ制御情報は、前記ノズルからの処理液の吐出時間、吐出速度、前記モータの加速時間および減速時間の制御情報を含むことを特徴とする請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記複数の処理工程は処理液吐出工程を含み、
前記処理手順情報は、前記処理液吐出工程における前記ノズルからの処理液の吐出時間の制御情報を含み、
前記制御手段は、前記処理手順情報の前記ノズルからの処理液の吐出時間の制御情報および前記モータ制御情報に基づいて前記モータが前記ポンプを駆動する動作を制御することを特徴とする請求項1または2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記複数の処理工程は処理液吐出工程を含み、
前記モータ制御情報は、前記処理液吐出工程における前記ノズルからの処理液の吐出時間の制御情報を含み、
前記制御手段は、前記モータ制御情報に基づいて前記モータが前記ポンプを駆動する動作を制御することを特徴とする請求項1または2記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記入力手段は、前記モータ制御情報として前記ノズルからの処理液の吐出量、吐出時間、吐出速度、前記モータの加速時間および減速時間の5つの制御情報のうち少なくとも4つの制御情報を入力可能であり、
前記制御手段は、前記5つの制御情報のうち4つの制御情報が入力された場合に、前記4つの制御情報を前記レシピデータまたは前記サブライブラリとして格納し、格納された前記4つの制御情報に基づいて前記5つの制御情報のうちの残りの制御情報を求め、前記5つの制御情報に基づいて前記モータの動作を制御することを特徴とする基板処理装置。
【請求項6】
前記モータ制御情報は処理液の吐出速度の制御情報を含み、
前記制御手段は、前記処理液の吐出速度の制御情報に基づいて前記モータの回転速度を制御することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記モータ制御情報は前記モータの加速時間および減速時間の少なくとも一方の制御情報を含み、
前記制御手段は、前記モータの加速時間および減速時間の少なくとも一方の制御情報に基づいて前記モータの加速または減速動作を制御することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記モータ制御情報は処理液の吐出量の制御情報を含み、
前記制御手段は、前記処理液の吐出量の制御情報に基づいて前記モータの回転動作を制御することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記入力手段は、前記ポンプの特性に応じて前記制御情報を補正するための補正情報をさらに入力し、
前記制御手段は、前記入力手段により入力された補正情報を前記サブライブラリとして格納し、前記モータ制御情報を前記補正情報に基づいて補正し、補正後のモータ制御情報に基づいて前記モータの動作を制御することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記モータ制御情報は前記モータの回転速度の変化を示す回転速度変化パターンを含み、
前記制御手段は、前記回転速度変化パターンに基づいて前記モータの回転動作を制御することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記回転速度変化パターンは台形状のパターンであることを特徴とする請求項10記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記回転速度変化パターンは、前記モータの加速時および減速時に回転速度がS字状に変化するS字状のパターンであることを特徴とする請求項10記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−60251(P2006−60251A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−307275(P2005−307275)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【分割の表示】特願平10−97115の分割
【原出願日】平成10年4月9日(1998.4.9)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】