説明

基板処理装置

【課題】ウエハの加熱に電磁波加熱方法を使用する際に、ウエハの面状態や放射率によらずウエハの温度を非接触かつ正確に測定することができる基板処理装置を提供する。
【解決手段】電磁波加熱形バッチ式熱処理装置は、ウエハ1を収納するキャビティと、キャビティ内に電磁波を導入してウエハ1を加熱する電磁波源55と、ウエハ1と同質の材料によって形成されキャビティ内のウエハ1近傍に配置される温度検出体58と、温度検出体58の中心に埋設された熱電対57とを備える。温度検出体58は直径が電磁波の波長λの1/4または1/2の球形状に形成する。ウエハ1を複数枚積層したボート上に処理ウエハ1と同等のダミーウエハ1Aを設置し、キャビティの上に放射温度計59を設置する。熱電対57の温度を放射温度計59の温度によって補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置に関する。
例えば、半導体集積回路装置(以下、ICという。)の製造方法において、ICが作り込まれる半導体ウエハ(以下、ウエハという。)に熱処理(thermal treatment )を施すのに利用して有効なものに関する。
【背景技術】
【0002】
ICの製造方法において、ウエハを加熱処理する方法として、抵抗加熱方法が広く用いられてきた。
抵抗加熱方法を用いた場合の問題点として、昇温および降温時間が長い点が挙げられる。昇温および降温時間が長くなる理由は、処理炉を囲む断熱材および反応管等の熱容量が大きい構成部材の加熱冷却が必要であり、ウエハのみを加熱できないためである。
【0003】
近年、ICのパッケージング(packaging )技術の分野において、抵抗加熱方法によるホットプレートに代わり、マイクロ波等を使用する電磁波加熱方式が試みられている。
この場合、温度均一性を図るため周波数を、4〜8GHzで周波数を可変する方式が採用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のように、ウエハをマイクロ波等によって均一に加熱する場合、温度計測方法としては、非接触式温度計である放射温度計が使用されている。
しかし、放射温度計を使用する場合は、放射率が特定可能なポリイミドのキュア等を使用したパッケージングに限られるばかりでなく、その使用状況は、枚葉式基板処理装置に限定されている。
ICの製造方法で多用されるシリコンウエハは、低温においては放射率が極めて低い上に、典型的な放射温度計が検知する波長領域8〜14μmにおいて温度依存性が大きい。そのため、放射温度計を使用するのは難しい状況にある。
【0005】
本発明の目的は、基板の加熱に電磁波加熱方法を使用する際に、基板の表面状態、放射率によらず基板の温度を非接触かつ正確に測定することができる基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決するための手段のうち代表的なものは、次の通りである。
(1)基板を収納するキャビティと、
前記キャビティ内に電磁波を導入して前記基板を加熱する加熱源と、
前記基板と同質の材料によって形成され、前記キャビティ内の前記基板近傍に配置される温度検出体と、
前記温度検出体の温度を計測する温度計と、
を有する基板処理装置。
(2)前記温度検出体は、直径が前記電磁波の波長λの1/4以上好ましくは1/2以上の球形状に形成されており、中心部にはその中心部の温度を計測する温度計が挿入されていることを特徴とする前記(1)に記載の基板処理装置。
(3)前記基板を複数枚積層した上部に温度計測用基板を設置し、前記キャビティの最上部に補正用放射温度計を設置し、前記温度検出体を計測した前記温度計の温度と、前記補正用温度計の温度とを照合および/または補正することを特徴とする前記(1)または(2)に記載の基板処理装置。
(4)前記(1)の基板処理装置を使用して、パッケージングした前記基板を加熱することを特徴とする基板処理方法。
【発明の効果】
【0007】
前記した手段によれば、基板の加熱に電磁波加熱方法を使用する際に、基板の表面状態、放射率によらず基板の温度を非接触かつ正確に測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の一実施の形態を図面に即して説明する。
【0009】
本実施の形態において、本発明に係る基板処理装置は、ウエハに各種の熱処理を施すバッチ式熱処理装置として構成されている。
【0010】
図1および図2に示されているように、バッチ式熱処理装置10においては、基板であるウエハ1を収納して搬送するためのウエハキャリアとしては、FOUP(以下、ポッドという。)2が使用されている。
バッチ式熱処理装置10は筐体11を備えている。
筐体11の正面壁11aの正面前方部には正面メンテナンス口12が開設されている。正面メンテナンス口12はメンテナンス作業を実施するための開口である。正面メンテナンス口12は正面メンテナンス扉13、13によって開閉される。
筐体11の正面壁11aにはポッド搬入搬出口14が筐体11の内外を連通するように開設されている。ポッド搬入搬出口14はフロントシャッタ15によって開閉される。
ポッド搬入搬出口14の正面前方側にはロードポート16が設置されている。ロードポート16はポッド2を載置されて位置合わせする。
ポッド2はロードポート16上に工程内搬送装置(図示せず)によって搬入され、かつまた、ロードポート16上から搬出される。
【0011】
筐体11内の前後方向の略中央部における上部には、回転式ポッド棚17が設置されており、回転式ポッド棚17は複数個のポッド2を保管する。
すなわち、回転式ポッド棚17は支柱18および複数枚の棚板19を備えている。支柱18は水平面内で間欠回転される。複数枚の棚板19は支柱18に上中下段の各位置に配置され、放射状に支持されている。複数枚の棚板19はポッド2を複数個宛それぞれ載置した状態で保持する。
【0012】
筐体11内におけるロードポート16と回転式ポッド棚17との間には、ポッド搬送装置20が設置されている。ポッド搬送装置20はポッドエレベータ20aおよびポッド搬送機構20bを備えている。ポッド搬送装置20はポッドエレベータ20aとポッド搬送機構20bとの連続動作により、ロードポート16と回転式ポッド棚17とポッドオープナ21との間でポッド2を搬送する。
【0013】
ポッドオープナ21はポッド2を載置する載置台22、22と、ポッド2のキャップを着脱するキャップ着脱機構23、23とを備えている。ポッドオープナ21は載置台22に載置されたポッド2のキャップをキャップ着脱機構23によって装着したり外したりする。これにより、ポッド2はウエハ出し入れ口を開いたり閉じたりする。
【0014】
筐体11内には前後方向略中央下部に、サブ筐体24が後端まで構築されている。サブ筐体24の正面壁24aには一対のウエハ搬入搬出口25、25が垂直方向に上下二段に並べられて開設されている。上下段のウエハ搬入搬出口25、25には一対のポッドオープナ21、21がそれぞれ設置されている。ウエハ搬入搬出口25はウエハ1をサブ筐体24内に搬入したり、ウエハ1をサブ筐体24内から搬出するための出し入れ口(ゲート)である。
【0015】
サブ筐体24はポッド搬送装置20および回転式ポッド棚17の設置空間から流体的に隔絶された移載室26を構成している。移載室26は前側領域にウエハ移載機構27を設置されている。
ウエハ移載機構27はウエハ移載装置27a、ウエハ移載装置エレベータ27bおよびツィーザ27cを備えている。ウエハ移載装置27aは水平面内において回転または直動する。ウエハ移載装置エレベータ27bはウエハ移載装置27aを昇降させる。ツィーザ27cはウエハ移載装置27aに支持されており、ウエハ1を水平に保持する。
ウエハ移載装置エレベータ27bおよびウエハ移載装置27aの連続動作により、ツィーザ27cによって保持したウエハ1を後記するボートに搬送して装填(チャージング)したり、ボートに装填されたウエハ1をツィーザ27cによって受け取る。
図1に想像線で示されているように、ウエハ移載装置エレベータ27bは筐体11の右側端部とサブ筐体24の移載室26の前方領域右端部との間に設置されている。
【0016】
移載室26の後側領域には待機部28が構成されている。待機部28はボートを収容して待機させる予備室である。待機部28の天井面には炉口シャッタ29が設けられており、炉口シャッタ29は後記する処理炉の炉口を開閉する。
【0017】
図1に想像線で示されているように、筐体11の右側端部とサブ筐体24の待機部28の右端部との間には、ボートエレベータ30が設置されている。ボートエレベータ30のアーム31にはシールキャップ32が水平に据え付けられている。アーム31はボートエレベータ30の昇降台に連結された連結具である。シールキャップ32は処理炉の炉口を閉塞する蓋体である。
【0018】
図1に示されているように、ウエハ移載装置エレベータ27b側およびボートエレベータ30側と反対側である移載室26左側端部には、クリーンユニット33が設置されている。クリーンユニット33は供給フアンおよび防塵フィルタによって構成されている。クリーンユニット33は清浄化した雰囲気もしくは不活性ガスであるクリーンエア34(図1の矢印参照)を供給する。
図示はしないが、ウエハ移載装置27aとクリーンユニット33との間にはノッチ合わせ装置が設置されている。ノッチ合わせ装置はウエハの円周方向の位置を整合する。
クリーンユニット33から吹き出されたクリーンエア34は、ノッチ合わせ装置、ウエハ移載装置27aおよびボートを流通する。その後に、クリーンエア34は図示しないダクトにより吸い込まれる。吸い込まれたクリーンエア34は筐体11の外部に排気がなされるか、または、クリーンユニット33の吸い込み側である一次側(供給側)に戻されて、クリーンユニット33から移載室26内に再び吹き出される。
【0019】
図1および図2に示されているように、筐体11の後側上部には処理炉35が垂直に設置されている。
図3に示されているように、処理炉35はシールド36を備えている。
シールド36は電磁波の外部への漏洩を効果的に防止可能な導電性材料によって形成されている。例えば、このような導電性材料としては、銅、アルミニウム、ステンレス、白金、銀等を挙げることができる。
但し、シールド36は導電性材料のみによって形成するに限らない。シールド36は多層シールド材料によって形成してもよい。例えば、多層シールド材料は、導電性材料からなる基材の内側表面に、電磁波を反射する反射面および電磁波を吸収する吸収層を形成することにより、構築することができる。
シールド36は一端開口で他端閉塞の円筒形状に形成されており、シールド36は中心線が垂直になるように縦に配されて固定的に支持されている。
シールド36の筒中空部は複数枚のウエハ1が収容されるキャビティ37を形成しており、シールド36の内径は取り扱うウエハ1の最大外径よりも大きくなるように設定されている。
シールド36の下端部には炉口フランジ38が設置されている。炉口フランジ38は処理炉35の炉口39を形成している。炉口フランジ38がサブ筐体24に支持された状態で、シールド36は垂直に据え付けられた状態になっている。
【0020】
図3に示されているように、ボートエレベータ30は処理炉35の真下近傍に設置されている。ボートエレベータ30のアーム31に支持されたシールキャップ32は炉口39を閉塞する。すなわち、シールキャップ32は炉口フランジ38の外径と略等しい円盤形状に形成されており、ボートエレベータ30によって上昇されることにより、炉口39を気密シールする。
【0021】
シールド36の下端部の側壁には排気管40の一端が接続されており、排気管40は他端を排気装置(図示せず)に接続されている。排気装置は排気管40を介してキャビティ37を排気する。
シールド36の排気管40と異なる位置には、キャビティ37へガスを供給するためのガス供給管41の一端が接続されている。
【0022】
シールキャップ32上にはボート42が垂直に立脚されて支持されている。ボート42は複数枚のウエハ1を保持して、キャビティ37内に搬入(ボートローディング)したり、キャビティ37外へ搬出(ボートアンローディング)したりする。
ボート42は石英等の誘電体が使用されて形成されている。
ボート42は上下で一対の端板43、44と、3本の保持柱45、45、45とを備えている。3本の保持柱45、45、45は両端板43、44間に垂直に架橋されている。3本の保持柱45、45、45には複数の保持溝46が、上下方向に等間隔に配置されてそれぞれ形成されており、同一段の保持溝46、46、46は同一平面を構成している。すなわち、ボート42は同一段の保持溝46、46、46によってウエハ1の外周縁部を保持することにより、複数枚のウエハ1を中心を揃えて整列させた状態で保持する。
ボート42の下部には複数枚の断熱板47が配置されている。断熱板47はキャビティ37からの熱の放射を抑制する。
シールキャップ32下面の中央にはロータリーアクチュエータ48が設置されている。ロータリーアクチュエータ48の回転軸49はボート42を支持する。すなわち、ロータリーアクチュエータ48は回転軸49によってボート42を回転させる。
【0023】
シールド36の外部にはベース51が水平に配置されており、ベース51上にはケース52がシールド36と同心円状に設置されている。ケース52は上端が閉塞した円筒形状もしくは多角形筒状に形成されており、シールド36よりも大きい。ケース52はシールド36の外側を取り囲んで電磁波の漏洩を防止し、シールド36を保護するとともに、周囲の環境を保護する。
なお、ケース52は省略してもよい。
【0024】
シールド36の側壁には複数の電磁波導入ポート53が穿設されている。各電磁波導入ポート53にはキャビティ37内に電磁波を供給するための導波管54の一端がそれぞれ接続されている。
導波管54の他端にはキャビティ37内に電磁波を供給して加熱する加熱源としての電磁波源55が接続されている。電磁波源55は電磁波であるマイクロ波またはミリ波を供給する。マイクロ波は波長1m以下の電波で極超短波とも称される。マイクロ波には遠赤外部に接する1mm以下のサブミリ波まで含まれる。
電磁波源55は0.5〜50GHzの電磁波を導波管54に供給する。
電磁波源55にはコントローラ56が接続されている。コントローラ56は供給する電磁波の周波数を増減して調整する調整部を構成している。
【0025】
コントローラ56には温度計としての熱電対57が複数接続されており、図3(b)に示されているように、熱電対57の熱接点は温度検出体58に挿入されている。複数の温度検出体58はシールド36側壁の複数の電磁波導入ポート53に対向する位置にそれぞれ配置されている。複数の温度検出体58はこれらにそれぞれ近接する場所のウエハ1の温度に感温し、同等の温度となる。熱電対57は温度検出体58の温度を測定し、測定結果をコントローラ56に送信する。
コントローラ56は熱電対57からの測定結果に基づいて後述する制御を実施する。
【0026】
温度検出体58はウエハ1と同質の材料、例えば、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、化合物半導体によって形成されている。
また、温度検出体58は球形状に形成されており、球の直径は電磁波の波長λの1/4以上1/1以下、好ましくは、1/2以上1/1以下に設定されている。
【0027】
シールド36の天井壁中央には、補正用温度計としての放射温度計59が垂直方向下向きに設置されており、図4に示されているように、放射温度計59はボート42の最上位置に配置されたダミーウエハ1Aの温度を測定するとともに、当該測定結果をコントローラ56に送信する。
【0028】
次に、前記構成に係るバッチ式熱処理装置10を用いる本発明の一実施形態であるICの製造方法の熱処理工程を、ウエハパッケージング工程を例に説明する。
ウエハパッケージング工程においては、ICが作り込まれた側の主面にポリイミド等のパッケージング材料を塗布されたウエハ1がポッド2に収納されて、バッチ式熱処理装置10に送られて来る。
予め、図3および図4に示されているにように、ボート42の最上位置には、これから熱処理しようとするウエハ1と同等のダミーウエハ1Aが配置される。
【0029】
図1および図2に示されているように、ポッド2がロードポート16に供給されると、フロントシャッタ15はポッド搬入搬出口14を開放する。
ポッド搬入搬出口14が開放すると、ポッド搬送装置20はロードポート16上のポッド2を筐体11内へポッド搬入搬出口14から搬入する。ポッド搬送装置20は搬入したポッド2を回転式ポッド棚17の指定された棚板19へ搬送して受け渡す。
ポッド2を棚板19に一時的に保管した後、ポッド搬送装置20はポッド2を棚板19から一方のポッドオープナ21に搬送し、載置台22に移載する。
なお、ポッド搬送装置20はロードポート16上のポッド2を回転式ポッド棚17に搬送せずに、ポッドオープナ21に直接搬送する場合もある。
【0030】
ポッド2を搬送中、キャップ着脱機構23はポッドオープナ21のウエハ搬入搬出口25を閉じている。クリーンユニット33は移載室26にクリーンエア34を流通させて循環させる。
クリーンユニット33が移載室26にクリーンエア34として窒素ガスを循環させることにより、移載室26内の酸素濃度は筐体11内(大気雰囲気)の酸素濃度よりも遥かに低く(例えば、20ppm以下)維持される。
【0031】
ポッドオープナ21は載置台22に載置されたポッド2の開口側端面をサブ筐体正面壁24aの搬入搬出口25開口縁辺部に押し付ける。キャップ着脱機構23はポッド2のキャップを取り外し、ウエハ出し入れ口を開放させる。
ポッド2が開放されると、ウエハ移載装置27aはツィーザ27cによってウエハ1をポッド2からウエハ出し入れ口を通じてピックアップしノッチ合わせ装置に搬送する。
ノッチ合わせ装置がウエハ1のノッチを合わせると、ウエハ移載装置27aはウエハ1をノッチ合わせ装置からピックアップし、移載室26の後方にある待機部28へ搬入し、ボート42に装填(チャージング)する。
ボート42にウエハ1を受け渡したウエハ移載装置27aはポッド2に戻り、次のウエハ1をピックアップし、再び、ボート42に搬送し、ボート42に装填する。
【0032】
この一方(上段または下段)のポッドオープナ21からボート42へのウエハ1の装填作業中に、ポッド搬送装置20は回転式ポッド棚17から別のポッド2を他方(下段または上段)のポッドオープナ21に搬送し移載する。ポッドオープナ21はポッド2を開放する。すなわち、ウエハ移載装置27aによるウエハ装填作業と、ポッド搬送装置20およびポッドオープナ21によるポッド開放作業とが、同時進行される。
【0033】
所定枚数のウエハ1がボート42に移載されると、ボートエレベータ30はボート42を上昇させ、図4に示されているように、処理炉35のキャビティ37に搬入(ボートローディング)する。
ボート42が上限に達すると、シールキャップ32が炉口39をシール状態に閉塞するので、キャビティ37は気密に閉じられた状態になる。
この状態で、複数の温度検出体58は配置された各場所でウエハ1にそれぞれ近接し、放射温度計59はボート42の最上位置に配置されたダミーウエハ1Aに対向する。
【0034】
気密に閉じられると、排気管40はキャビティ37を排気する。
ロータリーアクチュエータ48はボート42を回転させる。
必要に応じて、窒素ガス等の不活性ガスがガス供給管41から供給される。
電磁波源55はウエハ1を所定温度(例えば、200℃程度)に昇温させる。すなわち、電磁波源55はマイクロ波またはミリ波を導波管54を経由してケース52内に供給する。ケース52内に供給されたマイクロ波はシールド36およびウエハ1に入射して効率的に吸収されるために、シールド36およびウエハ1をきわめて効果的に昇温させる。
電磁波による加熱に際して、放射温度計59は対向したダミーウエハ1Aの温度を計測し、計測温度をコントローラ56に送信する。
各熱電対57は各温度検出体58の温度すなわち各場所で近接したウエハ1の温度をそれぞれ計測し、計測温度をコントローラ56にそれぞれ送信する。
コントローラ56は各熱電対57の計測温度を放射温度計59の計測温度によって校正しつつ各熱電対57の計測温度に基づいて、各電磁波源55をフィードバック制御することにより、ボート42上のウエハ1群の温度分布を適正に維持する。
【0035】
予め設定された処理時間が経過すると、ボート42の回転、ガスの供給、マイクロ波の供給および排気管40の排気が停止する。
その後に、ボートエレベータ30はシールキャップ32を下降させることにより、炉口39を開口するとともに、ボート42を炉口39からキャビティ37の外部に搬出(ボートアンローディング)する。
【0036】
ウエハ移載機構27はボート42のウエハ1をポッド2内に、前述した作動とは逆の手順により収める。
以上の作動が繰り返されることにより、複数枚のウエハ1がバッチ処理される。
【0037】
ところで、図5および図6に示されているように、シリコンウエハは、低温においては放射率が極めて低い上に、典型的な放射温度計が検知する波長領域8〜14μmにおいて温度依存性が大きい。そのため、 放射温度計を使用するのは難しい。
【0038】
前述したウエハパッケージング工程において、周波数として、2.45GHzの単一マイクロ波を利用した場合、波長λは約12cmとなり、半波長(1/2λ)=約6cmおきに高温部または低温部が発生することになり、均一な加熱が難しい。
そこで、周波数を可変(VFM:Variable Frequency MicroWave)にして、高温部または低温部が発生する空間的間隔を狭くして均一に加熱すること、が考えられる。
【0039】
ここで、ウエハ温度の計測方法が、重要な課題となる。
ウエハ1のICが作り込まれた側の主面には様々な膜(酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、半導体膜、金属膜等)が付着されているため、温度による放射率の変動が大きい。
ウエハパッケージング工程のウエハ1には、その上にポリイミド等のパッケージング材料がさらに塗布されているため、温度による放射率の変動がより一層大きい。
このようなウエハの温度を非接触型の放射温度計によって計測する場合には、放射率を的確に断定することは困難であるため、放射温度計による計測は不向きである。
また、バッチ式熱処理装置の場合には、複数枚のウエハがボートに積載されているので、上下のウエハの隙間から放射される赤外線を検知することとなり、計測個所および計測温度の信頼性に問題が出てくる場合がある。
【0040】
前述した通り、本実施形態に係るバッチ式熱処理装置10においては、電磁波による加熱に際して、放射温度計59はボート42の最上位置に配置されたダミーウエハ1Aに対向し、ダミーウエハ1Aの温度を計測し、熱電対57がそれぞれ埋設された複数の温度検出体58は配置された各場所でウエハ1にそれぞれ近接し、近接したウエハ1の温度をそれぞれ計測する。
ダミーウエハ1Aに塗布されたポリイミドの放射率は既知であるので、放射温度計59はポリイミドが塗布されたダミーウエハ1Aの温度を正確に計測することができる。
温度検出体58はウエハ1と同質の材料によって球形状に形成されているとともに、球の直径が電磁波のエネルギを吸収し易い値に設定されているので、温度検出体58の球の中心に埋設された熱電対57は、温度検出体58が検出したウエハ1の温度を対応性よく測定することができる。
したがって、コントローラ56は熱電対57の計測温度を放射温度計59の計測温度によって校正することにより、ポリイミドが塗布されたウエハ1の温度を正確に認識することができる。
つまり、コントローラ56は熱電対57の計測温度と放射温度計59の計測温度との関係を予め求めておくことにより、各熱電対57の計測温度を放射温度計59の計測温度によって校正することができるので、各電磁波源55を各熱電対57の計測温度に基づいてフィードバック制御することにより、ボート42上のウエハ1群の温度分布を適正に維持することができる。
【0041】
前記実施の形態によれば、次の効果が得られる。
【0042】
1) 電磁波によってウエハを加熱することにより、ウエハを直接的に加熱することができるので、ウエハをエネルギ効率よく加熱することができ、また、低温領域での温度を適正かつ精密に制御することができる。
【0043】
2) 複数枚のウエハを電磁波によって一律に加熱することにより、ウエハのボート全長および各ウエハ面内の温度を均一に分布させることができるため、ウエハの熱処理状況をウエハ面内および各ウエハ相互間のいずれにおいても均一化することができる。
【0044】
3) 複数枚のウエハを一括してバッチ処理することにより、ウエハを一枚ずつ枚葉処理する場合に比べて、スループットを大幅に向上させることができる。
【0045】
4) ウエハと同質の材料によって形成した球形状の温度検出体に熱電対を埋設し、この温度検出体をウエハ近傍に配置することにより、電磁波導入ポートに対するウエハの位置にかかわらず、ウエハの温度を正確かつ安定的に計測することができる。
【0046】
5) 処理するウエハと同等に形成されたダミーウエハの温度を放射温度計によって計測することにより、各熱電対の計測温度を放射温度計の計測温度によって補正することができるので、各電磁波源を各熱電対の計測温度に基づいてフィードバック制御することにより、ボート上のウエハ群の温度分布を適正に維持することができる。
【0047】
6) 熱電対を埋設した温度検出体はウエハ近傍に容易に配置することができるので、電磁波加熱によるバッチ式熱処理装置への搭載を容易化することができる。
【0048】
7) ダミーウエハをボートの最上位置に配置することにより、放射温度計はキャビティの天井壁に配置すれば済むため、電磁波加熱によるバッチ式熱処理装置への搭載を容易化することができる。
【0049】
図7は本発明の他の実施形態である枚葉式プラズマ処理装置を示している。
本実施形態において、本発明に係る基板処理装置は、図7に示されているように、枚葉式プラズマ処理装置110として構成されており、被処理基板であるウエハを減圧下の処理室で1枚ずつ処理するものとして構成されている。
【0050】
図7に示された枚葉式プラズマ処理装置110は筐体111を備えており、筐体111は処理室112を誘電体ドーム113とともに構成している。処理室112は気密に構成されている。
誘電体ドーム113の外側にはコイル114が設けられており、コイル114は処理室112内にプラズマを生成する。コイル114には高周波電源115と整合器116とが接続されており、高周波電源115の出力する高周波電力が整合器116を介してコイル114に供給されることにより、処理室112内でプラズマ117を生成する。
筐体111は略二重円筒形状に形成されており、内側円筒と外側円筒との間の空間がバッファ室118を形成している。筐体111の外側円筒下端部には排気口119がバッファ室118に連通するように開設されており、排気口119には排気管120の一端が接続されている。排気管120の他端はポンプ121に接続されており、ポンプ121はバッファ室118を排気管120および排気口119を経由して排気する。
筐体111にはガス導入管122の一端が接続されており、ガス導入管122の他端はガス供給装置(図示せず)に接続されている。ガス導入管122はガス供給装置からのガスを処理室112に導入する。ガス導入管122から処理室112へ導入されたガスは、処理室112内でプラズマ化され、プラズマ117およびプラズマ117で生成された活性種によりウエハ1をプラズマ処理する。
【0051】
処理室112内にはサセプタ123が内側円筒上端に設けられている。サセプタ123は石英(SiO2 )が使用されて略円板形状に形成されている。サセプタ123上にはマイクロ波吸収板124が載置されている。マイクロ波吸収板124は2.45GHzのマイクロ波を吸収する材料(例えば、シリコン)が使用されてウエハ1よりも若干大きめの円板形状に形成されている。
サセプタ123の外側にはカバーリング125が設けられている。カバーリング125は内径がウエハ1の外径よりも大きく、外径がサセプタ123の外径よりも大きい円形リング形状に形成されており、プラズマ117に晒されるウエハ1近傍の部材からの汚染物質の発生を抑制する構造となっている。
【0052】
筐体111の内側円筒中空部はマイクロ波を導入するキャビティ126を構成しており、キャビティ126の底には仕切り板127が昇降可能に配置されている。
筐体111の仕切り板127下方にはエレベータ128が設置されており、エレベータ128のシャフト129には支持台130が水平に固定されている。支持台130上にはマイクロ波電源131が設置されており、マイクロ波電源131には導波管132を介してアイソレータ133が接続されている。アイソレータ133には導波管134を介して整合器135が接続されている。整合器135は導波管136を介して、仕切り板127に開設されたマイクロ波導入口137に接続されている。
エレベータ128は支持台130をシャフト129によって昇降させることにより、仕切り板127を昇降させることができるようになっており、仕切り板127の昇降により、キャビティ126内に導入されたマイクロ波の定在波の状態を変更させる。
【0053】
キャビティ126の底壁を構成した仕切り板127には、モータ138によって回転されるスタラファン139が設置されている。スタラファン139は回転することにより、キャビティ126内のマイクロ波の定在波の状態を代える。
マイクロ波の周波数として、2.45GHzを用いると、マイクロ波のエネルギの高い部分が局在化し、マイクロ波吸収板124における吸収が偏り、ウエハ1の加熱が不均一になる可能性がある。
これを改善するために、モータ138によってスタラファン139を回転させることにより、定在波の状態を経時変化させて、マイクロ波吸収板124に吸収されるマイクロ波の不均一さを改善する。
スタラファン139を回転させることにより、定在波の状態を短時間に周期的に変化させることができるので、キャビティ126内のマイクロ波エネルギの分布を素早く均一化することができる。
【0054】
図7に示されているように、複数個の温度検出体58はカバーリング125上に周方向に等間隔に配されて設けられている。各温度検出体58はマイクロ波吸収板124上のウエハ1の外周に、ウエハ1の移載作業と干渉しない範囲内で可及的に近接するようにそれぞれ配置されている。
前記実施形態と同様に、温度検出体58はウエハ1と同質の材料、例えば、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、化合物半導体によって形成されている。温度検出体58は球形状に形成されており、球の直径は電磁波の波長λの1/4以上1/1以下、好ましくは、1/2以上1/1以下に設定されている。
温度検出体58内には熱電対57の熱接点が埋設されており、熱電対57はコントローラ56に接続されている。
コントローラ56はウエハ1外周に近接した複数の熱電対57からの測定結果に基づいて、後述する制御を実施する。
【0055】
次に、以上の構成に係る枚葉式プラズマ処理装置の作用を説明する。
【0056】
バッファ室118内および処理室112内はポンプ121により排気管120および排気口119を経由して排気されて、所定の圧力に減圧される。
その後に、ウエハ1がマイクロ波吸収板124上にウエハ移載装置(図示せず)によって載置される。このとき、マイクロ波吸収板124はマイクロ波によって所定の温度に保持されている。
カバーリング125上の複数個の温度検出体58内にそれぞれ埋設された熱電対57は、ウエハ1外周近傍の温度をそれぞれ計測し、コントローラ56にそれぞれ送信する。
コントローラ56はウエハ1外周に近接した複数の熱電対57からの測定結果に基づいて、後述する制御を実施する。
【0057】
一例として、ウエハ1の温度を900℃に加熱する場合について説明する。
ウエハ1の搬送時はマイクロ波吸収板124の温度が300℃になるように、マイクロ波電源131の出力を制御し、ウエハ搬送終了後、30秒程度待機してウエハ1の温度がマイクロ波吸収板124の温度とほぼ同じになった後に、マイクロ波電力の投入量を増やしてマイクロ波吸収板124の温度を上昇させる。
このとき、マイクロ波はキャビティ126内の導電性の壁で反射され、マイクロ波電力の多くはマイクロ波吸収板124に吸収されるため、これを効率良く加熱する。
マイクロ波の周波数として、2.45GHzを用いると、マイクロ波のエネルギの高い部分が局在化し、マイクロ波吸収板124における吸収が偏り、ウエハ1の加熱が不均一になる可能性がある。
マイクロ波をキャビティ126内に投入する場合は、整合器135によって反射が極少になるように調整する。
しかし、その調整が困難な場合は、キャビティ126の壁の一部である仕切り板127をエレベータ128によって上下に移動させることにより、反射波電力が0ワット[W]となる最適な位置を見出す。
また、スタラファン139を回転させることにより、定在波の状態を短時間に周期的に変化させることができるので、キャビティ126内のマイクロ波エネルギの分布を素早く均一化することができる。
【0058】
ガス導入管122から一定流量の反応性ガスが導入されて、処理室112内の圧力が所定値に設定された後に、高周波電源115の出力する高周波電力がコイル114に整合器116を介して印加されると、処理室112内でプラズマ117が生成され、このプラズマ117および活性種がウエハ1に供給されるため、所定のプラズマ処理がウエハ1に施される。
【0059】
本実施形態においては、ウエハと同質の材料によって形成した球形状の温度検出体に熱電対を埋設し、この温度検出体をウエハ外周近傍の複数箇所にそれぞれ配置することにより、ウエハ外周の複数箇所の温度を正確かつ安定的にそれぞれ計測することができるので、ウエハの周方向の温度を均一に制御することができる。ウエハの周方向の温度分布を均一に制御することにより、温度分布に依存するウエハ面内のプラズマ処理状況を均一化することができる。
ここでは、枚葉装置の例としてプラズマ処理装置を用いて説明したが、それに限るものではなく、加熱することでウエハを処理する装置であればよい。
【0060】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変更が可能であることはいうまでもない。
【0061】
例えば、温度検出体の数は、電磁波電源の個数と等しくするに限らず、それ以上設けてもよい。
【0062】
本発明は、バッチ式熱処理装置または枚葉式プラズマ処理装置に限らず、拡散装置や減圧CVD装置およびアニール装置等の基板処理装置全般に適用することができる。
【0063】
また、被処理基板はウエハに限らず、ホトマスクやプリント配線基板、液晶パネル、コンパクトディスクおよび磁気ディスク等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施の形態であるバッチ式熱処理装置を示す一部省略斜視図である。
【図2】側面断面図である。
【図3】(a)は処理炉を通る正面断面図、(b)は温度検出体の断面図である。
【図4】処理ステップにおける処理炉部分を示す正面断面図である。
【図5】波長と放射率と温度との関係を示すグラフである。
【図6】波長と放射率との関係を示すグラフである。
【図7】本発明の他の実施形態である枚葉式プラズマ処理装置を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0065】
1…ウエハ(基板)、2…ポッド、
10…バッチ式熱処理装置(基板処理装置)、11…筐体、11a…正面壁、12…正面メンテナンス口、13…正面メンテナンス扉、14…ポッド搬入搬出口、15…フロントシャッタ、16…ロードポート、
17…回転式ポッド棚、18…支柱、19…棚板、
20…ポッド搬送装置、20a…ポッドエレベータ、20b…ポッド搬送機構、
21…ポッドオープナ、22…載置台、23…キャップ着脱機構、
24…サブ筐体、24a…正面壁、25…ウエハ搬入搬出口、26…移載室、
27…ウエハ移載機構、27a…ウエハ移載装置、27b…ウエハ移載装置エレベータ、27c…ツィーザ、
28…待機部、29…炉口シャッタ、
30…ボートエレベータ、31…アーム、32…シールキャップ、
33…クリーンユニット、34…クリーンエア、
35…処理炉、36…シールド、37…キャビティ、38…炉口フランジ、39…炉口、40…排気管、41…ガス供給管、
42…ボート(搬送治具)、43、44…端板、45…保持柱、46…保持溝、47…断熱板、48…ロータリーアクチュエータ、49…回転軸、
51…ベース、52…ケース、53…電磁波導入ポート、54…導波管、55…電磁波源(マイクロ波加熱源)、56…コントローラ(調整部)、57…熱電対(温度計)、58…温度検出体、59…放射温度計、
110…基板処理装置(枚様式プラズマ処理装置)、111…筐体、112…処理室、113…誘電体ドーム、114…コイル、115…高周波電源、116…整合器、117…プラズマ、
118…バッファ室、119…排気口、120…排気管、121…ポンプ、
122…ガス導入管、
123…サセプタ、124…マイクロ波吸収板、125…カバーリング、
126…キャビティ、127…仕切り板、128…エレベータ、129…シャフト、
130…支持台、131…マイクロ波電源、132…導波管、133…アイソレータ、134…導波管、135…整合器、136…導波管、137…マイクロ波導入口、
138…モータ、139…スタラファン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収納するキャビティと、
前記キャビティ内に電磁波を導入して前記基板を加熱する加熱源と、
前記基板と同質の材料によって形成され、前記キャビティ内の前記基板近傍に配置される温度検出体と、
前記温度検出体の温度を計測する温度計と、
を有する基板処理装置。
【請求項2】
前記温度検出体は、直径が前記電磁波の波長λの1/4以上好ましくは1/2以上の球形状に形成されており、中心部にはその中心部の温度を計測する温度計が挿入されていることを特徴とする前記請求項1に記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−302177(P2009−302177A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−152715(P2008−152715)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】