説明

基板収納容器及び基板の取り扱い方法

【課題】フロントリテーナの基板に対する押圧力を増大させる必要がなく、蓋体取り外しの際、基板が飛び出すおそれを排除できる基板収納容器及び基板の取り扱い方法を提供する。
【解決手段】半導体ウェーハ1を水平に収納する容器本体と、容器本体を開閉する蓋体を備え、容器本体に、半導体ウェーハ1の後部周縁2をV溝18の谷20に接触させて保持するリヤリテーナ17を内蔵し、V溝18を一対の傾斜面により区画してその間の角度を45〜135°の範囲とし、蓋体に、半導体ウェーハ1を掬い上げてその前部周縁3を保持するフロントリテーナ33を装着する。容器本体内にロボットハンドを進入させて半導体ウェーハ1の下方に位置させ、ロボットハンドを容器本体の正面方向に向け斜め上方に移動させつつ半導体ウェーハ1を容器本体の支持片12から持ち上げ、ロボットハンド上に半導体ウェーハ1を吸着して後退させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板、半導体ウェーハ、マスクガラス等からなる基板が容器本体からロボットハンドで取り出される基板収納容器及び基板の取り扱い方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の基板収納容器は、図示しないが、半導体ウェーハを収納する容器本体と、この容器本体の開口した正面を開閉する蓋体とを備え、蓋体が取り外された容器本体に対して半導体ウェーハが挿入して収納されたり、取り出された後、輸送される(特許文献1、2、3参照)。
【0003】
容器本体は、フロントオープンボックスに形成され、背面壁に、半導体ウェーハの後部周縁をV溝により保持するリヤリテーナが形成されており、両側壁には、半導体ウェーハを水平に支持する複数の支持片が対設されている。また、蓋体には、容器本体に収納された半導体ウェーハの前部周縁を保持溝により保持するフロントリテーナが装着されている。
【0004】
このような基板収納容器の容器本体に半導体ウェーハが挿入して収納され、その後、容器本体の開口した正面に蓋体が嵌合されると、半導体ウェーハは、蓋体のフロントリテーナの押圧に伴い、リヤリテーナのV溝の傾斜面に後部周縁が接触しながら上昇し、リヤリテーナのV溝の谷に後部周縁が位置決めされることにより、複数の支持片から浮いた状態でV溝とフロントリテーナの保持溝との間に挟持される。
【0005】
これに対し、半導体ウェーハを収納した容器本体から蓋体が取り外され、この蓋体のフロントリテーナの押圧が解除されると、半導体ウェーハは、リヤリテーナのV溝の傾斜面に後部周縁が案内されつつ下降し、複数の支持片に水平に位置決め支持される。
【0006】
ところで、リヤリテーナのV溝は、容器本体に半導体ウェーハが挿入して収納され、蓋体が嵌合される場合には、傾斜面に半導体ウェーハの後部周縁を接触させて徐々に上昇させる必要があるので、傾斜面が緩やかな角度であることが好ましい。これに対し、容器本体の正面から蓋体が取り外される場合には、傾斜面に半導体ウェーハの後部周縁を案内させつつ確実に下降させる必要があるので、傾斜面が急な角度であることが好ましい。このようにリヤリテーナのV溝には、容器本体に半導体ウェーハが挿入・収納される場合と、取り出される場合とでは、相反する性能が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−120851号公報
【特許文献2】特開2006−120791号公報
【特許文献3】特開2004−111830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来における基板収納容器は、以上のようにリヤリテーナのV溝に相反する二つの性能が求められ、傾斜面が緩やかな角度で形成される場合には、蓋体のフロントリテーナを改良して半導体ウェーハに対する押圧力を増大しなければならないという問題が生じる。しかしながら、フロントリテーナの押圧力を増大すると、容器本体から蓋体を取り外した際、V溝の傾斜面に半導体ウェーハが案内されつつ勢い良く滑り落ち、複数の支持片から半導体ウェーハが前方に飛び出すおそれがある。
【0009】
本発明は上記に鑑みなされたもので、フロントリテーナの基板に対する押圧力を増大させる必要が少なく、容器本体から蓋体を取り外した際、支持片から基板が飛び出すおそれを排除することのできる基板収納容器及び基板の取り扱い方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明においては上記課題を解決するため、基板を対向する複数の支持片により略水平に支持して収納する容器本体と、この容器本体の開口した正面を開閉する蓋体とを備えたものであって、
容器本体の内部に、収納される基板の後部周縁をV溝の谷により保持するリヤリテーナを設け、蓋体には、容器本体に収納された基板の前部周縁を断面略V字形の保持溝の谷により保持する弾性のフロントリテーナを設け、
リヤリテーナのV溝を上下一対の傾斜面により区画してその間の角度を45〜135°の範囲とし、このV溝の谷を基板の端部の延長線上に位置させ、フロントリテーナの保持溝の谷を、複数の支持片により略水平に支持された基板よりも上方に位置させたことを特徴としている。
【0011】
また、本発明においては上記課題を解決するため、基板を対向する複数の支持片により略水平に支持して収納する容器本体と、この容器本体の開口した正面を開閉する蓋体とを備え、容器本体の内部に、収納される基板の後部周縁をV溝の谷に接触させて保持するリヤリテーナを設け、このリヤリテーナのV溝を上下一対の傾斜面により区画してその間の角度を45〜135°の範囲とし、蓋体には、容器本体に収納された基板を掬い上げてその前部周縁を保持する弾性のフロントリテーナを設け、
蓋体が取り外された容器本体から基板をロボットハンドにより取り出す基板の取り扱い方法であって、
容器本体内にロボットハンドを進入させて基板の下方に位置させ、ロボットハンドを容器本体の開口した正面方向に向け斜め上方に移動させつつ基板を支持片から持ち上げ、その後、ロボットハンド上に基板を固定して容器本体から外部にロボットハンドを後退させることを特徴としている。
【0012】
また、本発明においては上記課題を解決するため、基板を対向する複数の支持片により略水平に支持して収納する容器本体と、この容器本体の開口した正面を開閉する蓋体とを備え、容器本体の内部に、収納される基板の後部周縁をV溝の谷に接触させて保持するリヤリテーナを設け、このリヤリテーナのV溝を上下一対の傾斜面により区画してその間の角度を45〜135°の範囲とし、蓋体には、容器本体に収納された基板を掬い上げてその前部周縁を保持する弾性のフロントリテーナを設け、
蓋体が取り外された容器本体の基板をロボットハンドの複数のV溝クランプ間に挟んで取り出す基板の取り扱い方法であって、
容器本体内にロボットハンドを進入させて基板の下方に位置させ、ロボットハンドを上昇させて複数のV溝クランプ間に基板を位置させ、容器本体の内部後方側に位置するV溝クランプを容器本体の正面方向に移動させて複数のV溝クランプ間に基板を傾斜させて挟み、その後、容器本体から外部にロボットハンドを後退させることを特徴としている。
【0013】
なお、容器本体に基板を収納する場合には、ロボットハンドに基板を支持させ、容器本体にロボットハンドを進入させてリヤリテーナのV溝の谷に基板の後部周縁を近接させるとともに、複数の支持片に基板を支持させ、ロボットハンドの基板に対する支持を解除し、容器本体から外部にロボットハンドを後退させた後、容器本体の開口した正面に蓋体を嵌め入れれば良い。
【0014】
ここで、特許請求の範囲における基板には、少なくとも単数複数のガラス基板、半導体ウェーハ(例えば、φ300、450、600mmタイプ)、マスクガラス等が含まれる。また、容器本体は、正面の開口したタイプであれば、透明、不透明、半透明のいずれでも良い。リヤリテーナのV溝は、その傾斜面から最も深い谷までの角度が15〜75°の範囲、上方の傾斜面から最も深い谷までの角度が15〜60°の範囲、下方の傾斜面から深い谷までの角度が30〜75°の範囲であることが好ましい。
【0015】
蓋体は、透明、不透明、半透明のいずれでも良く、施錠して蓋体の脱落を防止する施錠機構を内蔵しても良い。さらに、ロボットハンドは、特に限定されるものではなく、負圧により基板を吸着するタイプ、あるいは複数のV溝クランプにより基板を挟むタイプ等を採用することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、フロントリテーナの基板に対する押圧力を増大させる必要が少なく、容器本体から蓋体を取り外した際、支持片から基板が飛び出すおそれを排除することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る基板収納容器及び基板の取り扱い方法の実施形態における基板収納容器を模式的に示す斜視説明図である。
【図2】本発明に係る基板収納容器及び基板の取り扱い方法の実施形態における基板収納容器を模式的に示す断面説明図である。
【図3】本発明に係る基板の取り扱い方法の実施形態における半導体ウェーハ、支持片、リヤリテーナの関係を模式的に示す断面説明図である。
【図4】本発明に係る基板の取り扱い方法の実施形態における半導体ウェーハの後部周縁とリヤリテーナとの関係を模式的に示す断面説明図である。
【図5】本発明に係る基板の取り扱い方法の実施形態におけるリヤリテーナに突き当てられた半導体ウェーハが支持片から浮く状態を模式的に示す断面説明図である。
【図6】本発明に係る基板の取り扱い方法の実施形態におけるロボットハンドを模式的に示す平面説明図である。
【図7】本発明に係る基板の取り扱い方法の実施形態における半導体ウェーハの裏面下方に半導体ウェーハを位置させた状態を模式的に示す説明図である。
【図8】図7のロボットハンドを容器本体の正面方向に向け、斜め上方に移動させつつ半導体ウェーハを支持片から持ち上げる状態を模式的に示す説明図である。
【図9】図8のロボットハンドの吸着パッドに半導体ウェーハを吸着固定する状態を模式的に示す説明図である。
【図10】容器本体から外部にロボットハンドを後退させる状態を模式的に示す説明図である。
【図11】本発明に係る基板の取り扱い方法の第2の実施形態におけるロボットハンドを模式的に示す平面説明図である。
【図12】本発明に係る基板の取り扱い方法の第2の実施形態における半導体ウェーハの裏面下方に半導体ウェーハを位置させた状態を模式的に示す説明図である。
【図13】図12のロボットハンドを上昇させて複数のV溝クランプ間に半導体ウェーハを収容した状態を模式的に示す説明図である。
【図14】図13の複数のV溝クランプ間に半導体ウェーハを挟持した状態を模式的に示す説明図である。
【図15】図14のロボットハンドを上昇させる状態を模式的に示す説明図である。
【図16】図15の容器本体から外部にロボットハンドを水平に後退させる状態を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明すると、本実施形態における基板の取り扱い方法は、図1ないし図10に示すように、薄く撓み易い半導体ウェーハ1を収納する基板収納容器の容器本体10と、この容器本体10の開口した正面11を開閉する蓋体30とを備え、容器本体10から半導体ウェーハ1を回転可能なロボットハンド40により取り出す取り扱い方法であり、容器本体10にロボットハンド40を進入させて半導体ウェーハ1の下方に位置させ、ロボットハンド40を容器本体10の正面11方向に向け斜めに移動させつつ半導体ウェーハ1を持ち上げた後、ロボットハンド40に半導体ウェーハ1を固定して容器本体10から外部に取り出すようにしている。
【0019】
半導体ウェーハ1は、例えば925μmの厚さを有するφ450mmのシリコンウェーハからなり、周縁部に図示しない位置合わせや識別用のノッチが平面V字形に切り欠かれており、基板収納容器の容器本体10に複数枚、具体的には25枚が上下に整列して収納される。
【0020】
基板収納容器の容器本体10と蓋体30とは、所定の樹脂を含有する成形材料により複数の部品がそれぞれ射出成形され、この複数の部品の組み合わせで構成される。この成形材料の所定の樹脂としては、例えば力学的性質や耐熱性等に優れるポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、液晶ポリマー、あるいは環状オレフィン樹脂等があげられる。所定の樹脂には、カーボン、カーボン繊維、金属繊維、カーボンナノチューブ、導電性ポリマー、帯電防止剤、又は難燃剤等が必要に応じ選択的に添加される。
【0021】
容器本体10は、図1や図2に示すように、上記成形材料により不透明のフロントオープンボックスタイプに形成され、開口した横長の正面11を水平横方向に向けた状態で半導体加工装置や気体置換装置上に位置決めして搭載されたり、洗浄槽の洗浄液により洗浄される。この容器本体10の内部両側、換言すれば、両側壁の内面には、半導体ウェーハ1の両側部周縁を水平に支持する左右一対の支持片12が対設され、この相対向する一対の支持片12が容器本体10の上下方向に所定のピッチで複数配列形成される。
【0022】
各支持片12は、半導体ウェーハ1の側部周縁に沿うよう湾曲した長い板形に形成されたり、半導体ウェーハ1の側部周縁の後方に沿う湾曲板に形成されたり、あるいは前部支持片と後部支持片とに分割して形成される。この支持片12の表面の前後部には、半導体ウェーハ1との接触面積を縮小する観点から、半導体ウェーハ1の裏面の両側部周縁に点接触する支持突部13が選択的にそれぞれ形成される。
【0023】
容器本体10の底板14の四隅部付近には、円筒形のフィルタボスがそれぞれ穿孔して配設され、この複数のフィルタボスに、容器本体10の内外を連通する給気用フィルタと排気用フィルタとがそれぞれOリングを介し着脱自在に嵌合される。また、容器本体10の底板14の前部両側と後部中央とには、容器本体10を位置決めする位置決め具がそれぞれ螺着される。
【0024】
容器本体10の底板14には、複数の給気用フィルタ、排気用フィルタ、及び位置決め具をそれぞれ露出させるボトムプレートが締結ビスを介して水平に螺着され、容器本体10の天板15には、工場の天井搬送機構に把持される搬送用のトップフランジが締結ビスを介し水平に螺着される。
【0025】
容器本体10の背面壁16は、中央部に透明の覗き窓が必要に応じ、二色成形法等により縦長に形成され、この覗き窓が形成される場合には、容器本体10の内部が外部から視覚的に観察・把握される。背面壁16の内面両側には、収納される半導体ウェーハ1の後部周縁2をV溝18の谷20に接触させて保持するリヤリテーナ17がそれぞれ一体形成される。
【0026】
各リヤリテーナ17には、図2ないし図5に示すように、複数のV溝18が上下方向に所定のピッチで並ぶことで形成され、各V溝18が上下一対の傾斜面19により区画形成されており、この一対の傾斜面19間の角度θが45〜135°、好ましくは60〜120°の範囲とされる。
【0027】
一対の傾斜面19間の角度θが45〜135°の範囲なのは、角度θが45°未満の場合には、半導体ウェーハ1の上下方向に対する保持規制が弱まり、基板収納容器の輸送中に半導体ウェーハ1の損傷や破損を招くからである。これに対し、角度θが135°を超える場合には、容器本体10に進入するロボットハンド40の動きに余裕がなくなり、ロボットハンド40を高精度に制御せざるを得ないからである。このようなV溝18の谷20は、収納される半導体ウェーハ1の端部である後部周縁2の延長線上に位置する。
【0028】
容器本体10の正面11の周縁には外方向に張り出すリムフランジ21が膨出形成され、このリムフランジ21内に着脱自在の蓋体30が蓋体開閉装置により嵌合される。リムフランジ21の外周面の両側部には、蓋体30用のクランプ突部22がそれぞれ突出形成される。また、容器本体10の両側壁の表面には、補強や変形防止の他、指等を干渉させることのできるグリップ部が着脱自在に装着される。
【0029】
蓋体30は、図1や図2に示すように、容器本体10の開口したリムフランジ21内にガスケットを介し着脱自在に嵌合する横長の筐体31と、この筐体31の開口した表面(正面)を被覆する表面プレートとを備え、筐体31の左右両側部には、容器本体10のクランプ突部22に嵌合するクランプ片32がそれぞれ前後方向に回転可能に軸支される。筐体31の裏面中央部には、半導体ウェーハ1の前部周縁3を弾発的に保持するフロントリテーナ33が着脱自在に装着され、裏面両側部には、半導体ウェーハ1の前部周縁3の両側を弾発的に保持する保持具34がそれぞれ着脱自在に装着される。
【0030】
フロントリテーナ33は、筐体31の裏面中央部に装着されて蓋体30の変形を防止する縦長の枠体35を備え、この枠体35の左右一対の縦桟部には、中心方向に指向する複数の弾性片36が上下に並べて一体形成される。各弾性片36は、可撓性が付与され、先端部には、半導体ウェーハ1の前部周縁3を断面V字形の保持溝37により掬い上げて保持する小さな保持ブロック38が一体形成される。保持溝37は、深い谷39が複数の支持片12により水平に支持された半導体ウェーハ1よりも上方に位置し、下方の傾斜面により半導体ウェーハ1の前部周縁3を上方に誘導し、谷39に突き当てて保持するよう機能する。
【0031】
このようなフロントリテーナ33は、所定の材料、例えばポリエステル系、ポリスチレン系、ポリオレフィン系の各種熱可塑性エラストマー等の弾性材料を使用して形成されることが好ましいが、ポリエーテルエーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂により形成することもできる。
【0032】
なお、フロントリテーナ33は、筐体31の裏面に装着される枠体35の左右一対の縦桟部間に、複数の弾性片36を上下に並べて架設し、各弾性片36に、半導体ウェーハ1の前部周縁3を断面V字形の保持溝37により掬い上げて保持する保持ブロック38を一体化することにより形成することができる。また、筐体31の裏面に、複数の弾性片36を上下に並べて配列形成し、各弾性片36の先端部に、半導体ウェーハ1の前部周縁3を断面V字形の保持溝37により掬い上げて保持する保持ブロック38を一体化することで形成することもできる(図2参照)。
【0033】
ロボットハンド40は、図6に示すように、二股に分岐した平面略U字形に形成され、専用のロボットに三次元動作可能に接続支持される。このロボットハンド40の表面には、半導体ウェーハ1の裏面に接触する複数の吸着パッド41が間隔をおいて配設され、この複数の吸着パッド41がロボットの真空ポンプの駆動で半導体ウェーハ1を真空吸着するよう機能する。
【0034】
上記構成において、容器本体10に半導体ウェーハ1を挿入して収納する場合には、先ず、ロボットハンド40の吸着パッド41に半導体ウェーハ1を吸着させ、容器本体10内にロボットハンド40を水平に進入させてリヤリテーナ17のV溝18の谷20に半導体ウェーハ1の後部周縁2を約1mm離した位置で一対の支持片12に半導体ウェーハ1を支持突部13を介して支持させ、ロボットハンド40の半導体ウェーハ1に対する吸着を解除し、その後、容器本体10から外部にロボットハンド40を水平に後退させる(図3参照)。
【0035】
この際、半導体ウェーハ1の後部周縁2は、V溝18の傾斜面19に接触して谷20方向に徐々にせり上がるのではなく、V溝18の谷20に当初から水平に対向する(図3、図4参照)。すなわち、V溝18の谷20は、一対の支持片12の支持突部13に支持される半導体ウェーハ1の延長線上に存在することとなる。
【0036】
こうしてロボットハンド40を後退させたら、容器本体10の開口した正面11に蓋体30を嵌入し、容器本体10の一対のクランプ突部22に蓋体30のクランプ片32をそれぞれ嵌合係止すれば、容器本体10に半導体ウェーハ1を挿入して収納することができる。
【0037】
この際、半導体ウェーハ1は、リヤリテーナ17側にスライドして後部周縁2がV溝18の谷20に突き当てられるとともに、フロントリテーナ33の保持溝37の傾斜面に前部周縁3が掬い上げられて徐々に上昇し、保持溝37の最も深い谷39に突き当たるので、上方にやや揺動して支持片12から浮き上がり、支持片12から浮いた傾斜状態でリヤリテーナ17とフロントリテーナ33との間に挟持される(図5参照)。
【0038】
次に、蓋体30が取り外された容器本体10から半導体ウェーハ1をロボットハンド40により取り出す場合には、先ず、容器本体10内にロボットハンド40を水平に進入させて半導体ウェーハ1の裏面下方に僅かな隙間をおいて位置(図7参照)させ、ロボットハンド40を容器本体10の開口した正面11方向に向け、斜め上方に移動させつつ半導体ウェーハ1を支持片12の支持突部13から持ち上げ(図8参照)、その後、ロボットハンド40の複数の吸着パッド41に半導体ウェーハ1を吸着固定し(図9参照)、容器本体10から外部にロボットハンド40を水平に後退させれば(図10参照)、容器本体10から半導体ウェーハ1をロボットハンド40により取り出すことができる。
【0039】
上記構成によれば、半導体ウェーハ1の前部周縁3をフロントリテーナ33の保持溝37により掬い上げて保持するので、V溝18の傾斜面19を緩やかな角度で形成することができる。また、リヤリテーナ17のV溝18の谷20に半導体ウェーハ1の後部周縁2を最初から対向させるので、容器本体10内で半導体ウェーハ1が前後方向にスライドするだけで、V溝18の傾斜面19を谷20までせり上がることがない。したがって、半導体ウェーハ1に対するフロントリテーナ33の押圧力を増大する必要がない。
【0040】
また、フロントリテーナ33の押圧力増大の必要がないので、容器本体10から蓋体30を取り外した際、V溝18の傾斜面19に半導体ウェーハ1が案内されつつ勢い良く滑落するのを抑制防止することができる。したがって、蓋体30の取り外しに伴い、複数の支持片12から半導体ウェーハ1が前方に飛び出すおそれを排除することができる。また、半導体ウェーハ1が勢い良く滑落するのを未然に防止できるので、滑落に伴う半導体ウェーハ1の損傷や破損、パーティクルの発生を抑制することも可能になる。
【0041】
次に、図11ないし図16は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、ロボットハンド40を真空吸着タイプとするのではなく、ロボットハンド40をエッジクランプタイプとするようにしている。
【0042】
ロボットハンド40は、図11に示すように、二股に分岐した平面略U字形に形成され、専用のロボットに三次元動作可能に接続支持される。このロボットハンド40の表面には、半導体ウェーハ1の周縁部に接触する複数のV溝クランプ42が間隔をおきスライド可能に配設され、この複数のV溝クランプ42がエアシリンダ等の駆動で半導体ウェーハ1を挟持するよう機能する。各V溝クランプ42は、上下一対の傾斜面による断面V字形の溝を備えた薄いブロックに形成され、一対の傾斜面間の角度が45〜135°、好ましくは60〜120°の範囲とされる。
【0043】
上記構成において、蓋体30が取り外された容器本体10から半導体ウェーハ1をロボットハンド40により取り出す場合には、先ず、容器本体10内にロボットハンド40を水平に進入させて半導体ウェーハ1の下方に僅かな隙間をおいて位置させ(図12参照)、ロボットハンド40を上昇させて複数のV溝クランプ42間に半導体ウェーハ1を収容(図13参照)し、容器本体10の背面壁16側に位置するV溝クランプ42を容器本体10の正面11方向にスライドさせて複数のV溝クランプ42間に半導体ウェーハ1を挟持する(図14参照)。
【0044】
この際、半導体ウェーハ1は、背面壁16側のV溝クランプ42のスライドに伴い、正面11側のV溝クランプ42の傾斜面に前部周縁3が案内されて徐々に上昇する。したがって、半導体ウェーハ1は、前部周縁3が上方にやや傾いた状態で複数のV溝クランプ42間に挟持される。
【0045】
こうして複数のV溝クランプ42間に半導体ウェーハ1を挟持したら、ロボットハンド40をやや上昇させて支持片12の支持突部13から半導体ウェーハ1を浮上(図15参照)させ、容器本体10から外部にロボットハンド40を水平に後退させれば(図16参照)、容器本体10から半導体ウェーハ1をロボットハンド40により取り出すことができる。その他の部分については、上記実施形態と略同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、半導体ウェーハ1の取り出し方法の多様化が大いに期待できるのは明らかである。
【0046】
なお、上記実施形態の容器本体10の支持片12とリヤリテーナ17とは、半導体ウェーハ1の撓み防止の観点から、近接したり、隣接していても良いし、あるいは離隔していても良い。また、容器本体10の背面壁16の中央、あるいは支持片12の最奥側に位置する側壁23の内面(図2参照)にリヤリテーナ17を一体形成したり、別体のリヤリテーナ17を取り付けても良い。
【0047】
また、リヤリテーナ17をフロントリテーナ33と同様の弾性材料で形成しても良い。さらに、蓋体30のクランプ片32を省略し、筐体31と表面プレートとの間に、容器本体10の正面11に嵌合した蓋体30を施錠する施錠機構を内蔵しても良い。
【符号の説明】
【0048】
1 半導体ウェーハ(基板)
2 後部周縁
3 前部周縁
10 容器本体
11 正面
12 支持片
13 支持突部
16 背面壁(容器本体の内部後方)
17 リヤリテーナ
18 V溝
19 傾斜面
20 谷
23 側壁
30 蓋体
33 フロントリテーナ
35 枠体
36 弾性片
37 保持溝
38 保持ブロック
39 谷
40 ロボットハンド
41 吸着パッド
42 V溝クランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を対向する複数の支持片により略水平に支持して収納する容器本体と、この容器本体の開口した正面を開閉する蓋体とを備えた基板収納容器であって、
容器本体の内部に、収納される基板の後部周縁をV溝の谷により保持するリヤリテーナを設け、蓋体には、容器本体に収納された基板の前部周縁を断面略V字形の保持溝の谷により保持する弾性のフロントリテーナを設け、
リヤリテーナのV溝を上下一対の傾斜面により区画してその間の角度を45〜135°の範囲とし、このV溝の谷を基板の端部の延長線上に位置させ、フロントリテーナの保持溝の谷を、複数の支持片により略水平に支持された基板よりも上方に位置させたことを特徴とする基板収納容器。
【請求項2】
基板を対向する複数の支持片により略水平に支持して収納する容器本体と、この容器本体の開口した正面を開閉する蓋体とを備え、容器本体の内部に、収納される基板の後部周縁をV溝の谷に接触させて保持するリヤリテーナを設け、このリヤリテーナのV溝を上下一対の傾斜面により区画してその間の角度を45〜135°の範囲とし、蓋体には、容器本体に収納された基板を掬い上げてその前部周縁を保持する弾性のフロントリテーナを設け、
蓋体が取り外された容器本体から基板をロボットハンドにより取り出す基板の取り扱い方法であって、
容器本体内にロボットハンドを進入させて基板の下方に位置させ、ロボットハンドを容器本体の開口した正面方向に向け斜め上方に移動させつつ基板を支持片から持ち上げ、その後、ロボットハンド上に基板を固定して容器本体から外部にロボットハンドを後退させることを特徴とする基板の取り扱い方法。
【請求項3】
基板を対向する複数の支持片により略水平に支持して収納する容器本体と、この容器本体の開口した正面を開閉する蓋体とを備え、容器本体の内部に、収納される基板の後部周縁をV溝の谷に接触させて保持するリヤリテーナを設け、このリヤリテーナのV溝を上下一対の傾斜面により区画してその間の角度を45〜135°の範囲とし、蓋体には、容器本体に収納された基板を掬い上げてその前部周縁を保持する弾性のフロントリテーナを設け、
蓋体が取り外された容器本体の基板をロボットハンドの複数のV溝クランプ間に挟んで取り出す基板の取り扱い方法であって、
容器本体内にロボットハンドを進入させて基板の下方に位置させ、ロボットハンドを上昇させて複数のV溝クランプ間に基板を位置させ、容器本体の内部後方側に位置するV溝クランプを容器本体の正面方向に移動させて複数のV溝クランプ間に基板を傾斜させて挟み、その後、容器本体から外部にロボットハンドを後退させることを特徴とする基板の取り扱い方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−60994(P2011−60994A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208979(P2009−208979)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】