説明

基板洗浄装置及びその補液補給装置

【課題】構成が簡単で且つ故障しにくい、連続運転に適した基板洗浄装置を提供することである。
【解決手段】補液を連続的に補給する補液補給装置から補液が補給され、一定流量の前記補液を通過させる定量ユニットと、前記定量ユニットを通過した前記補液が供給される補液タンクと、液体の流入口が前記補液タンク内部に開口し、前記補液タンクの最上部と前記補液タンクの底の間に位置する高さに最高所が設定されたサイフォンを具備する洗浄装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体等の基板を薬液で処理する基板洗浄装置及びこの装置に用いられる薬液補給装置に関し、特に、故障又は部材の劣化が少なく連続運転に適した基板洗浄装置及びこの装置に用いられる薬液補給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置等の製造工程では、化学薬品すなわち薬液に基板を浸漬する洗浄処理(ウェットエッチング等)が頻繁に行われる(特許文献1)。例えば、半導体基板上に形成された窒化膜(Si膜)のエッチングには、加熱した燐酸(HPO)が用いられる。また、半導体基板(ウエハ)上のフォトレジストの剥離や、金属、重金属、パーティクルの除去には、硫酸と過酸化水素水の混合液が用いられる。
【0003】
このような処理に於いて予定した通りの効果が得られるためには、使用する薬液の濃度及び温度が常に一定に保たれている必要がある。
【0004】
ところで、半導体装置等は、製造ラインを連続運転して生産される。従って、半導体装置の製造工程の一部である洗浄処理も、休み無く稼動する基板洗浄装置によって行われる。
【0005】
このような基板洗浄装置では、薬液の温度は、温度制御装置を備えた加熱装置等によって常に一定に保たれている。
【0006】
一方、薬液の濃度は、洗浄処理の間にも、蒸発しやすい成分が除々に蒸発し変化してしまう。従って、蒸発した成分を補給するため、先行する洗浄処理と後続の洗浄処理の合間に、蒸発しやすい成分を補給し、薬液の濃度が常に一定になるように保つ必要がある(薬液の濃度が変化しない場合であっても、洗浄処理によって薬液が目減するので、適宜目減りした薬液を補給する必要がある。)。
【特許文献1】特許第3437535号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
(1)関連技術
図9は、本発明者が使用してきた基板洗浄装置2の模式図である。
【0008】
基板洗浄装置2は、通常、基板洗浄装置或いはエッチング装置と呼ばれている。狭義の洗浄すなわち異物を薬液で除去することは、エッチングとは必ずしも一致しない概念である。しかし、エッチングを剥離洗浄(又は、機能洗浄)と呼び、狭義の洗浄とエッチング双方を纏めて「洗浄」と呼ぶこともある。従って、以後、本発明では、「洗浄」とはこのような広義の洗浄を意味するものとし、基板洗浄装置とはこの様な広義の洗浄を行う装置を意味するものとする。
【0009】
基板洗浄装置2は、例えば2種類の液体が混合された薬液(混合液)4で満たされ、処理すべき基板6が収納される混合洗浄槽8を備えている。
【0010】
また、基板洗浄装置2は、補液10(成分比が変化し、或いは、目減りした薬液4に、補充される補充液)が貯えられる補液タンク12を備えている。
【0011】
また、基板洗浄装置2は、混合洗浄槽8に補液10を間歇的に補給するための制御ユニット14と、補液12の液位(液面位置)を監視する第1の液位監視センサ15と、第2の液位監視センサ16を備えている。
【0012】
また、基板洗浄装置2は、制御ユニット14によって開閉される第1の閉止バルブ18と、同じく制御ユニット14によって開閉される第2の閉止バルブ20を備えている。
【0013】
また、補液タンク12の底には、第1の閉止バルブ18が途中に設けられた第1の配管22の一端が接続され、第1の配管22の他端は混合洗浄槽8の内側に開口している。
【0014】
更に、補液タンク12の内部には、上記第2の閉止バルブ20が途中に設けられた第2の配管24の一端が開口している。そして、第2の配管24の他端には、補液を常時補給する補液供給システム(図示せず)が接続されている。ここで、補液供給システムは、例えば、工場内の複数の装置に薬液(例えば、純水)を常時供給する共通設備である。
【0015】
図10は、補液タンク12から混合洗浄槽8に補給される補液流量の時間変化を説明する図である。図10の下半分に示すように、補液の補給は間歇的に行われる。すなわち、補液の補給サイクル(周期)26は、短時間の内に補液10を混合洗浄槽8に補給する補液補給期間28と、その後の維持期間30からなっている。
【0016】
次に、何故、このように補液10を間歇的に補給するのかという理由、具体例に基づいて説明する。
【0017】
基板洗浄装置2が用いた半導体基板の洗浄の例としては、加熱した燐酸(HPO;熱燐酸)による窒化膜(Si膜)のエッチングがある。
【0018】
この窒化膜のエッチングでは、まず、燐酸が、混合洗浄槽8に注入され、混合洗浄槽8を満たす(混合洗浄槽8を完全に満たす必要は、必ずしもない。)。混合洗浄槽8に満たされた燐酸は、図示せれていない加熱装置によって100℃以上に加熱される。
【0019】
燐酸(HPO)は、通常、20〜30%の水分を含むように調整されている。このような燐酸水溶液を100℃以上に加熱すると、沸点の高い燐酸(沸点;213℃)は蒸発することなく液体として止まっているが、沸点の低い水分は盛んに蒸発してしまう。このため、蒸発した水分を補うため、適宜純水を補給する必要がある。
【0020】
図9の基板洗浄装置2では、(窒化膜の形成された)半導体基板6を混合洗浄槽8から取り出した後次の半導体基板6を収納するまでの期間、すなわち混合洗浄槽8に半導体基板6が収納されていない期間に、補液タンク12に貯えた純水を所定量一気に混合洗浄槽8内の薬液(例えば、熱燐酸)に補給する(図10の補液補給期間28参照)。
【0021】
蒸発した水分を薬液4に補給するためには、上述したような間歇的補給方法ではなく、少量の純水を連続的に薬液4に補給するという方法もある。しかし、熱燐酸に純水を注入すると、熱燐酸が沸騰し、盛んに気泡が発生するという問題がある。
【0022】
このような混合液の沸騰や気泡の発生は、窒化膜の円滑なエッチングを阻害する。そこで、図10のように純水の補給は短時間(補液補給期間28)に集中的に行い、十分に時間が経ち純水の補給によって発生した気泡が消失した後に、混合洗浄槽8に満たした熱燐酸(すなわち、薬液)に半導体基板6を浸漬する。
【0023】
このようにすれば、蒸発した水分を補給するために熱燐酸に純水を注入しても、熱燐酸の沸騰や気泡発生の問題が回避可能になり、正常な窒化膜のエッチングが可能になる。
【0024】
次に、図9の基板洗浄装置2が、混合洗浄槽8に満たされた薬液4(例えば、熱燐酸)に、補液10(例えば、純水)を間歇的に補給する仕組みについて説明する。
【0025】
今、補液タンク12に装着された第1の液位監視センサ15が液面の存在を検知する位置(第1の液位(液面位置)32)まで、純水が補液タンク12に満たされているとする。この時、第1の閉止バルブ18と第2の閉止バルブ20は閉じている。
【0026】
制御ユニット14は、所定の時刻t1になると第1の閉止バルブ18を開き、純水を混合洗浄槽8に補給する(図10の補液供給期間28)。この間、制御ユニット14は、第1及び第2の液位監視センサ15,16によって補液タンク10に貯えられた純水(補液10)の液位を監査し、第2の液位監視センサ16が液面の存在を検知する位置(第2の液位34)に液位が到達した時点で、第1の閉止バルブ18を閉じる。
【0027】
このようにして、短期間(補液補給期間28)で混合洗浄槽8内の薬液4に、第1の液位32と第2の液位34の間に存在する純水(正確には、同一体積の純水)を補給する。
【0028】
第1の閉止バルブ18が閉じられから、補液補給サイクル26が終了するまでの期間(維持期間30;時刻t2からt3まで)、制御ユニット14は、第1の閉止バルブ18を閉じる。
【0029】
一方、制御ユニット14は、維持期間30中に、第2の閉止バルブ20を開き、減少した純水を補液タンク12内に補給する(図11の補液供給期間98を参照)。
【0030】
この間、制御ユニット14は、第1及び第2の液位監視センサ15,16によって補液タンク12に貯えられた純水(補液10)の液位を監視し、液位が、第1の液位32に上昇した時点で第2の閉止バルブ20を閉じておく。こうして、補液タンク12には液位32まで純水が満たされ、補液タンク12の状態は、最初の状態に戻る。
【0031】
こうして、最初の補液供給開始(t1)後、所定の時間Tが経過した後(t3)、一つの補液補給サイクル26が完結し、次の補液補給サイクル26が開始する(時間監視)。
そして、この補液補給サイクル26が繰り返されることによって、純水を満たした補液タンク12から、所定容量の純水(補液10)が一定の周期で、間歇的に混合洗浄槽8内の薬液4に補給される。
【0032】
ところで、このように一定量の純水(補液10)を周期的に熱燐酸(薬液4)に補給するだけでは、燐酸の濃度が徐々に最初のものと異なって来る。従って、所定数の補液補給サイクル26が終了したら、混合洗浄槽8内の燐酸(薬液4)を新しいものに交換している。
【0033】
(2)課題
しかし、図9に示すような基板洗浄装置2は、制御ユニット14や複数の閉止バルブ等を備えており構成が複雑である。しかも、第1及び第2の閉止バルブ18,20は、始終開閉されるので疲労劣化し、故障を起し易い。このような故障に気づかず、半導体装置の製造を続けてしてしまうと、大量の不良品が発生してしまう。
【0034】
そこで、本発明の目的は、構成が簡単で且つ故障しにくい、連続運転に適した基板洗浄装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0035】
(第1の側面)
上記の目的を達成するために、本発明の第1の側面は、補液を連続的に補給する補液補給装置から補液が補給され、一定流量の前記補液を通過させる定量ユニットと、前記定量ユニットを通過した前記補液が供給される補液タンクと、液体の流入口が前記補液タンク内部かつ下方に向けて開口し、前記補液タンクの最上部と前記補液タンクの底の間に位置する高さに湾曲部位を有する補液供給管(すなわち、液体の流入口が前記補液タンク内部に開口し、前記補液タンクの最上部と前記補液タンクの底の間に位置する高さに最高所が設定されたサイフォン)を具備した補液補給装置を特徴とする。
【0036】
第1の側面によれば、定量ユニット54(例えば、定量バブル)によって供給される一定流量の補液をサイフォンで間歇的に薬液に補給するので、構成が簡単で且つ故障しにくい、連続運転に適した、基板洗浄装置のための補液供給装置を提供することができる。
【0037】
(第2の側面)
上記の目的を達成するために、本発明の第2の側面は、第1の側面の補液補給装置において、前記流入口と前記最高所の間に継手を具備し、前記流入口と前記継手の間に配置された、前記補液供給管(すなわち、前記サイフォン)を構成する管を、長さの異なる他の管と交換可能としたことを特徴とする。
【0038】
第2の側面によれば、第1の側面の補液補給装置に於いて、サイフォンの最高所と流入口の高低差の変更が可能になるので、迅速に補液補給サイクルを変更することが可能になる。
【0039】
(第3の側面)
上記の目的を達成するために、本発明の第3の側面は、第1の側面の補液補給装置において、流出口と前記最高所の間に補液の流路を開閉する流路開閉ユニットを有し、且つ前記流入口と前記最高所の高低差が異なる複数の前記補液供給管(すなわち、前記サイフォン)を具備したことを特徴とする。
【0040】
第3の側面によれば、特別な作業(サイフォン管の一部交換等)を伴うことなく、簡単な操作で補液補給サイクルを変更することができる。
【0041】
(第4の側面)
上記の目的を達成するために、本発明の第4の側面は、第1の側面の補液補給装置において、前記補液供給管(すなわち、前記サイフォン)が、前記最高所に配置された屈曲自在な第1の管と、一端が前記第1の管の一端に接続され、他端が前記補液の流出口となっている第2の管と、一端が前記第1の管の他端に接続され、他端が前記補液の流入口となっている第3の管によって構成され、 更に、前記第3の管の前記他端を上下させる流入口昇降ユニットを具備したことを特徴とする。
【0042】
第4の側面によれば、特別な作業(サイフォン管の一部交換等)を伴うことなく、簡単な操作で補液補給サイクルを変更することができる。
【0043】
(第5の側面)
上記の目的を達成するために、本発明の第5の側面は、第1乃至4のいずれかの側面の前記補液補給装置と、前記補液供給管(すなわち、前記サイフォン)の前記流出口が内部に開口した、薬液が注入される混合洗浄槽を具備した基板洗浄装置を特徴とする。
【0044】
第5の側面によれば、定量ユニット54(例えば、定量バブル)によって供給される一定流量の補液をサイフォンで間歇的に薬液に補給するので、構成が簡単で且つ故障しにくい、連続運転に適した基板洗浄装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、定量ユニット54(例えば、定量バブル)によって供給される一定流量の補液をサイフォンで間歇的に薬液に補給するので、構成が簡単で且つ故障しにくい、連続運転に適した基板洗浄装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下、図面にしたがって本発明の実施の形態について説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。なお、図面が異なっても対応する部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0047】
(実施の形態1)
本実施の形態は、構成が簡単でしかも故障しにくい基板洗浄装置及びその補液補給装置に係るものである。
【0048】
(1)構 成
図1は、本実施の形態に於ける補液補給装置36の模式図である。
【0049】
本実施の形態に於ける基板洗浄装置36は、サイフォン40を備えた補液補給装置38と、このサイフォン40の流出口52が内部に開口した(薬液が注入される)混合洗浄槽8を備えている。
【0050】
補液補給装置38は、補液を連続的に補給する補液供給装置(例えば、工場内に共通設備として設けられた純水補給システム;図示せず)から補液10が供給され、且つ一定流量の補液10を通過させる定量ユニット42(例えば、定量バルブ)を備えている。
【0051】
また、補液補給装置38は、定量ユニット42を通過した補液が補給される補液タンク12を備えている。
【0052】
更に、補液補給装置38は、補液の流入口44が補液タンク12内部(補液タンクの底又は側面も含む)に開口し、補液タンク12の最上部(補液によって補液タンク12が満たされる最高点)46と補液タンクの底48の間に位置する高さに最高所(最高位地点)50の高さが設定されたサイフォン40を備えている。
【0053】
尚、サイフォン40の流入口44とは、サイフォン40を構成する管の一端に位置する開口部であり、他端に位置する流出口52より高所に配置される。サイフォン40によって汲み出される液体は、この流入口44からサイフォン40を構成する管(サイフォン管)に入り、流出口52から放出される。
【0054】
以上の説明から明らかように、本実施の形態に於ける基板洗浄装置36には、上記関連技術とは異なり、制御ユニット14が存在しない。しかも、関連技術に於ける基板洗浄装置36が備えていた閉止バルブ18,20のように、繰り返し運動する可動部材も、本実施の形態に於ける基板洗浄装置36には存在しない。
【0055】
すなわち、本実施の形態に於ける基板洗浄装置36は、構成が簡単でしかも故障を起しにく、連続運転に適しているという特質を有している。
(2)動 作
次に、図1に示す基板洗浄装置36の動作を、具体例に基づいて説明する。
【0056】
ここで、補液タンク12には純水(補液)が供給され、混合洗浄槽8には熱燐酸(薬液4)が注入され満たされているとする。また、半導体基板6には窒化膜(Si膜)が形成され、基板洗浄装置36は、この窒化膜を熱燐酸(薬液4)によってエッチングするものとする。
【0057】
図2は、図示しない純水供給システム(補液供給装置)から、補液タンク12に供給される純水(補液10)の流量の時間変化を説明する図である。
【0058】
補液タンク12には、純水供給システム(補液供給装置)から送出され、且つ、補液供給管54に設けられた定量ユニット42を通過することを許された純水(補液)のみ供給される。従って、補液タンク12には、図2の流量曲線62が示すように一定流量Fの純水(補液10)が絶え間なく供給される。
【0059】
図3は、補液タンク12から混合洗浄槽8内の熱燐酸(薬液4)に補給される純水(補液10)の流量の時間変化を説明する図である。図3に示すように、純水(補液)の補給は間歇的に行われる。
【0060】
純水の補給サイクル(補液供給サイクル26)は、補液タンク12内に純水(補液10)が貯えられる貯液期間60と、短時間の内に純水(補液10)を、混合洗浄槽8内の熱燐酸(薬液4)に補給する補液補給期間28とからなっている。
【0061】
このような補液供給サイクル26は、次のようにして形成される。
【0062】
まず、補液タンク12内の補液10の液面が、サイフォン50の流入口44の高さに等しい、第3の液位56にあるとする。この場合、サイフォン40の内部には、空気が流入している。このためサイフォン40は、補液タンク12内の純水(補液10)を、混合洗浄槽8内には降下させることができない。すなわち、サイフォン40は、純水(補液10)を補液タンク12から汲み出すことはできない。
【0063】
一方、図2のように一定流量の純水(補液10)が、補液供給管54を通して、補液タンク12に供給され続ける。やがて、純水(補液10)の液位は、図4に示すように、サイフォンの最高所50と同じ高さ(第4の液位58)に達するまで増加する。尚、図4は、補液タンク12内の液位の時間変化を表した図である。ここまでの期間が、補液タンク12に所定量の補液10(例えば、純水)が供給される貯液期間60である。
【0064】
サイフォンの最高所50に液位が達すると、サイフォン40内部は、流入口44と最高所50の間が純水(補液10)で満たされ、最高所50から流出口52に向かって純水(補液10)が降下し始める。
【0065】
一度降下が始まると純水(補液10)は一気に混合洗浄槽8に降下し、補液タンク12の液面は、サイフォン50の流入口44と同じ高さ(第3の液位56)まで下がる。純水(補液10)の液面が流入口44まで下がると、流入口44から、サイフォン40を構成する管(サイフォン管)の内部に空気が入り、液位の降下が停止する。貯液期間60の終了した後、ここまでの期間が補液補給期間28である。
【0066】
この間、混合洗浄槽8には純水が補給され、水分が蒸発し濃縮された熱燐酸(薬液4)の濃度は所定の値に回復する。
【0067】
その後、再び、補液タンク12への純水(補液10)の供給が始まり、補液補給サイクル26が繰り返される。
【0068】
すなわち、純水の補給サイクル(補液供給サイクル26)は、補液タンク12内に純水(補液10)が貯えられる貯液期間60と、第3の液位56と第4の液位58の間に存在する純水(補液10)が短時間で混合洗浄槽8に降下し、熱燐酸(薬液4)で満たされた混合洗浄槽8に純水が補給される補液補給期間28とからなっている。
【0069】
尚、本基板洗浄装置36を用いた半導体基板6の洗浄(ここでは、窒化膜のエッチング)は、以下のように行われる。
【0070】
一つ手前の補液供給サイクル26の補液供給期間28に、補液タンク12から純水が熱燐酸に補給されると、熱燐酸は沸騰し多数の気泡を発生する。
【0071】
そこで、所定の時間が経過し、この気泡が消失するのを待ってから、半導体基板6を、混合洗浄槽8内の熱燐酸(薬液4)に浸漬する。
次に、所定の時間(エッチング時間)が経過した後、半導体基板6を熱燐酸(薬液4)から取り出す。
【0072】
次に、別途設けられた洗浄装置内で、半導体基板6に付着した燐酸を洗い流して、窒化膜のエッチングが終了する。
【0073】
この工程を繰り返すことにより、半導体基板に形成された窒化膜の連続エッチングが可能になる。
【0074】
(3)補液補給サイクル
このように、補液補給サイクル26とは、複数の半導体基板6を順次洗浄する洗浄工程の周期に他ならない。従って、補液補給装置38の設計に当たっては、補液補給サイクル26を、洗浄工程の周期として定められた所定の値に一致させることが重要である。
【0075】
補液補給サイクル(周期)26を所定の値Tとするためには、定量ユニット42(例えば、定量バルブ)の流量Fと補液タンク12の底面積Sに基づいて、式(1)によって得られる値Hに、サイフォン40の最高所50と流入口44の間の高低差Δを一致させればよい(図5参照)。
【0076】
【数1】

【0077】
尚、補液10が補液タンク12から混合洗浄槽8内に補給される時間δTは、補液補給サイクル26に比べ十分に短いものとして、式(1)では考慮されていない。もし、必要であれば、上記所定の値TからδTを差し引いた値を、式(1)のTに代入すればよい。
【0078】
(実施の形態2)
本実施の形態は、実施の形態1の補液補給装置36に於いて、サイフォン40の最高所50と流入口44の間の高低差Δを変更可能とし、補液補給サイクル26の迅速な変更を可能とする補液補給装置に係るものである。
【0079】
(1)構成
本実施の形態に於ける基板洗浄装置の構成は、補液供給装置の構成を除き、実施の形態1に於ける基板洗浄装置36の構成と一致する。従って、以下、補液供給装置の構成についてのみ説明する。
【0080】
図6は、本実施の形態に於ける補液供給装置64の模式図である。尚、図6には、混合洗浄槽8も破線で示されている。
【0081】
本実施の形態に於ける補液供給装置64は、実施の形態1の補液補給装置38が備えた構成の全て具備している。
【0082】
但し、本実施の形態に於ける補液供給装置64では、サイフォン40の流入口44とサイフォン40の最高所50の間に継手66を設けて、流入口44と継手66の間に配置された管(サイフォンを構成する管すなわちサイフォン管の一部)68を、長さの異なる管に交換可能としている。
【0083】
従って、本実施の形態によれば、サイフォン40の最高所50と流入口44の間の高低差Δを容易に変更可能である。このため、本実施の形態によれば、補液補給サイクル26を変更する必要が生じた場合に、迅速な対応が可能である。
【0084】
すなわち、本実施の形態の補液供給装置64は、実施の形態1の補液供給装置36に於いて、 流入口44と最高所50の間に継手66を具備し、流入口44と継手66の間に配置された、サイフォン40を構成する管を、長さの異なる他の管と交換可能としたものである。
【0085】
尚、補液供給装置64を構成する補液タンク12の上部には、着脱が容易な上蓋70が設けられている。流入口44と継手66の間に配置されたサイフォン管の一部68の交換作業は、この上蓋70を開けて、補液タンク12の上部から手を差し入れて行えばよい。すなわち、継手66からサイフォン管の一部68を外し、長さの異なる新たなサイフォン管の一部を継手66に接続すればよい。
【0086】
(2)動作
本実施の形態に於ける基板洗浄装置の動作は、実施の形態1に於ける基板洗浄装置の動作と同じである。
【0087】
(実施の形態3)
本実施の形態は、実施の形態2のような特別な作業(交換作業)を伴うことなく、簡単な操作で補液補給サイクル26の変更を可能とする補液補給装置に係るものである。
【0088】
(1)構 成
本実施の形態に於ける補液補給装置の構成は、補液供給装置の構成を除き、実施の形態1に於ける基板洗浄装置36(図1参照)の構成と一致する。従って、以下、補液供給装置の構成についてのみ説明する。
【0089】
図7は、本実施の形態に於ける補液供給装置72の模式図である。尚、図7には、混合洗浄槽8も破線で示されている。
【0090】
本実施の形態に於ける補液供給装置72は、実施の形態1の補液補給装置38が備えた構成の全て具備している。
【0091】
但し、本実施の形態に於ける補液供給装置72は、複数のサイフォン管76を有する点で、実施の形態1に於ける補液供給装置38と相違する(図1参照)。
【0092】
また、本実施の形態に於ける補液供給装置72は、その複数のサイフォン管76夫々が、サイフォン76の流出口52と最高所50の間に補液の流路を開閉する流路開閉ユニット74(例えば、閉止バルブ)を有する点でも、実施の形態1に於ける補液供給装置38とは相違する。
【0093】
更に、本実施の形態に於ける補液供給装置72では、複数のサイフォン76夫々で、流入口44と最高所50の高低差Δ1,Δ2,Δ3が異なっている。
【0094】
すなわち、本実施の形態に於ける補液供給装置72は、サイフォン76の流出口52と最高所50の間に補液の流路を開閉する流路開閉ユニット74(例えば、閉止バルブ)を有し、流入口44と最高所50の高低差Δ1,Δ2,Δ3が異なる複数のサイフォン76を具備している。
【0095】
(2)動 作
本実施の形態に於ける補液供給装置72の動作は、基本的には実施の形態1に於ける補液供給装置38の動作と同じである。
【0096】
個々のサイフォン管76の動作は、流路開閉ユニット74が開いている場合には、実施の形態1に於けるサイフォン管40の動作と同じである。一方、流路開閉ユニット74が閉じている場合には、サイフォン76は、流路が塞がれているので、サイフォンとしての機能(液体の汲み出しを)を果すことはできない。
【0097】
補液供給装置72を動作させるためには、複数のサイフォン76の何れか一本だけの流路開閉ユニット74を開き、他のサイフォン76の流路開閉ユニット76は閉じる。このような状態で補液供給装置72を動作させることによって、流路開閉ユニット74の開いているサイフォン76のみがサイフォンとして機能し、補液が混合洗浄槽8内の薬液に補給される。
【0098】
この際、補液供給装置72の補液補給サイクル26は、流路開閉ユニット74の開いたサイフォン76における流入口44と最高所50の高低差によって決まる。例えば、中央のサイフォン76の流路開閉ユニット74のみを開いたとすると、補液補給サイクル26は、中央のサイフォン76における流入口44と最高所50の高低差Δ2によって決まる。
【0099】
従って、流入口44と最高所50の高低差が異なる複数のサイフォン76が設けられる本実施の形態によれば、実施の形態2のようにサイフォン管の一部を交換するという特別な作業を行わなくても、流路開閉ユニット74を開閉するだけで、補液補給サイクル26の変更が可能になる。
【0100】
(実施の形態4)
本実施の形態も、実施の形態2のような特別な作業(交換作業)を伴うことなく、簡単な操作で補液補給サイクル26の変更を可能とする補液補給装置に係るものである。
【0101】
(1)構 成
本実施の形態に於ける補液補給装置の構成は、補液供給装置38の構成を除き、実施の形態1の基板洗浄装置36(図1参照)と構成が一致する。従って、以下、補液供給装置38の構成についてのみ説明する。
【0102】
図8は、本実施の形態に於ける補液供給装置78の模式図である。尚、図8には、混合洗浄槽8も破線で示されている。
【0103】
本実施の形態に於ける補液供給装置78は、実施の形態1の補液補給装置38が備える構成の全て具備している。
【0104】
但し、本実施の形態に於ける補液供給装置78は、最高所50に配置された屈曲部すなわち上方弧端部80が、屈曲自在な管(例えば、フレキシブルチューブ)で構成されている。
【0105】
すなわち、本実施の形態の補液供給装置78は、サイフォン82が、最高所に配置された屈曲自在な第1の管84を具備している。
【0106】
また、本実施の形態の補液供給装置78は、一端が第1の管84の一端88に接続され、他端が補液の流出口52となっている第2の管86を備えている。
【0107】
また、本実施の形態の補液供給装置78は、一端が第1の管84の他端90に接続され、他端が補液の流入口44となっている第3の管92を具備している。
【0108】
更に、本実施の形態の補液供給装置78は、第3の管92の他端を上下させる流入口昇降ユニット94を具備している。
【0109】
ここで、流入口昇降ユニット94は、例えば、第3の管88の先端部(補液の流入口44)近傍に一端が固定された、自由に上下する支柱である。
【0110】
(2)動 作
本実施の形態に於ける補液供給装置78の動作は、基本的には実施の形態1に於ける補液供給装置38の動作と同じである。
【0111】
但し、本実施の形態に於ける補液供給装置78では、流入口昇降ユニット94を操作することによって、補液の流入口44の高さを変化させる。このため、流入口44の高さを変えることによって、流入口44と最高所50の高低差Δを連続的に変化させることが可能になる。例えば、図8のように、異なる高低差Δ1,Δ2,Δ3を実現することができる。
【0112】
このような流入口44の高さの調整は、上方弧端部80を、屈曲自在な第1の管88で構成したことによって可能になる。この装置の操作及び動作は、以下の通りである。
【0113】
まず、補液供給装置を動作させる前に、所望の補液補給サイクル26が得られるように、流入口44と最高所50の高低差Δを、式(1)によって得られる値に一致させる。高低差Δの調整は、流入口昇降ユニット94によって行う。
【0114】
次に、例えば、流入口昇降ユニット94の上下方向の駆動機構を停止し、第3の配管92が動かないように固定する。
【0115】
第3の配管92を固定した後の、補液供給装置78の動作は、実施の形態1の補液供給装置36と同じである。すなわち、定量ユニット42によって流量を一定にした補液の供給を補液タンク12に開始すると、薬液4への補液の間歇的補給が自動的に始まる。
すなわち、補液の流入口44の高さが変更可能に構成された本実施の形態によれば、実施の形態2のようにサイフォン管の一部を交換するという特別な作業を行わなくても、流入口昇降ユニット94を操作するだけで、補液補給サイクル26を変更することができる。
【0116】
以上の例では、サイフォンの流入口44は補液タンク12内側の中空部に開口しているが、補液タンク12の底や側面に開口してもよい。この場合、最高所も含めサイフォンは、全体が、補液タンク12の外部に配置さえることになる。
【0117】
また、流入口昇降ユニット94が、第3の管84の先端部(補液の流入口44)近傍に一端が固定された上下の移動が自在な支柱で構成されている場合には、この支柱の上部96に目盛りを付けておくと高さの調整が容易である。
【0118】
また、以上の例では、薬液は熱燐酸で補液は純水であったが、本発明は、これ以外の薬液及び補液にも適用可能でである。例えば、硫酸と過酸化水素水の混合液を薬液とし、補液として過酸化水素水を用いて、半導体基板上のフォトレジストの剥離や、金属、重金属、パーティクルの除去等の洗浄に、本発明を利用してもよい。
【0119】
また、洗浄される基板は、半導体基板に限られない。例えば、ガラス基板や、石英基板、LN(LiNbO)基板等他の基板の洗浄にも、本発明は適用可能である。
【0120】
また、本発明は混合薬液の濃度を一定に保つためだけでなく、目減りした薬液を洗浄槽(混合洗浄槽)に補充するために利用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明は、半導体装置等の製造業で利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】実施の形態1に於ける基板洗浄装置の模式図である。
【図2】補液タンクに供給される補液流量の時間変化を説明する図である。
【図3】補液タンクから混合洗浄槽に補給される補液流量の時間変化を説明する図である。
【図4】補液タンク内の液位の時間変化を説明する図である。
【図5】実施の形態1に於ける補液供給装置の模式図である。
【図6】実施の形態2に於ける補液供給装置の模式図である。
【図7】実施の形態3に於ける補液供給装置の模式図である。
【図8】実施の形態4に於ける補液供給装置の模式図である。
【図9】本発明者が使用してきた基板洗浄装置(関連技術)の模式図である。
【図10】関連技術における、混合洗浄槽に補給される補液流量の時間変化を説明する図である。
【図11】関連技術における、補液タンクに補給される補液流量の時間変化を説明する図である。
【符号の説明】
【0123】
2・・・基板洗浄装置(関連技術) 4・・・薬液 6・・・基板
8・・・混合洗浄槽 10・・・補液
12・・・補液タンク 14・・・制御ユニット
15・・・第1の液位監視センサ 16・・・第2の液位監視センサ
18・・・第1の閉止バルブ 20・・・第2の閉止バルブ 22・・・第1の配管
24・・・第2の配管 26・・・補液補給サイクル 28・・・補液補給期間
30・・・維持期間 32・・・第1の液位 34・・・第2の液位
36・・・本発明に於ける基板洗浄装置 38・・・補液補給装置(実施の形態1)
40・・・サイフォン 42・・・定量ユニット 44・・・流入口
46・・・補液タンクの最上部 48・・・補液タンクの底
50・・・サイフォンの最高所(最高地点) 52・・・流出口
54・・・補液供給管 56・・・第3の液位 58・・・第4の液位
60・・・貯液期間 62・・・流量曲線 64・・・補液補給装置(実施の形態2)
66・・・継手 68・・・流入口と継手の間に配置されたサイフォン管の一部
70・・・上蓋 72・・・補液補給装置(実施の形態3)
74・・・流路開閉ユニット 76・・・サイフォン管(実施の形態3)
78・・・補液補給装置(実施の形態4) 80・・・上方弧端部
82・・・サイフォン(実施の形態4) 84・・・屈曲自在な第1の管
86・・・第2の管 88・・・第1の管の一端 90・・・第1の管の他端
92・・・第3の配管 94・・・流入口昇降ユニット
96・・・支柱上部(目盛り位置) 98・・・補液供給期間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
補液を連続的に補給する補液補給装置から補液が補給され、一定流量の前記補液を通過させる定量ユニットと、
前記定量ユニットを通過した前記補液が供給される補液タンクと、
液体の流入口が前記補液タンク内部かつ下方に向けて開口し、前記補液タンクの最上部と前記補液タンクの底の間に位置する高さに湾曲部位を有する補液供給管を具備した補液補給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の補液補給装置において、
前記流入口と前記最高所の間に継手を具備し、
前記流入口と前記継手の間に配置された、前記補液供給管を構成する管を、長さの異なる他の管と交換可能としたことを特徴とする補液補給装置。
【請求項3】
請求項1に記載の補液補給装置において、
流出口と前記最高所の間に補液の流路を開閉する流路開閉ユニットを有し、且つ前記流入口と前記最高所の高低差が異なる複数の前記補液供給管を具備したことを特徴とする補液補給装置。
【請求項4】
請求項1に記載の補液補給装置において、
前記補液供給管が、
前記最高所に配置された屈曲自在な第1の管と、
一端が前記第1の管の一端に接続され、他端が前記補液の流出口となっている第2の管と、
一端が前記第1の管の他端に接続され、他端が前記補液の流入口となっている第3の管
によって構成され、
更に、前記第3の管の前記他端を上下させる流入口昇降ユニットを具備したことを特徴とする補液補給装置。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれか一項に記載の前記補液補給装置と、
前記補液供給管の前記流出口が内部に開口した、薬液が注入される混合洗浄槽を
具備した基板洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−54650(P2009−54650A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−217495(P2007−217495)
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(308014341)富士通マイクロエレクトロニクス株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】