説明

基板浮上搬送方法及び基板浮上搬送装置及び基板処理装置

【課題】浮上ステージにおける基板の浮上高や姿勢を最適化しつつ、浮上用高圧気体の消費効率を改善すること。
【解決手段】このレジスト塗布装置における浮上ステージ10は、搬送方向において塗布領域MCTの前後に延びる搬入領域MINおよび搬出領域MOUTの浮上面をそれぞれ多数の浮上エリアに区画している。これらの浮上面には多数の噴出口12配置されている。各々の浮上エリアにおける高圧気体の噴出圧力は噴出圧力制御部により独立に可変ないしオン・オフ制御されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステージ上で基板を浮上搬送する基板浮上搬送方法および装置ならびに基板に対して浮上搬送中に所望の処理を施す基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、フラットパネルディスプレイ(FPD)製造のフォトリソグラフィー工程においては、被処理基板(たとえばガラス基板)をステージ上で浮上搬送しながらステージ上方に設置した長尺形のノズルよりレジスト液を吐出させることにより、基板上の一端から他端までレジスト液を塗布する浮上搬送方式のレジスト塗布装置が用いられている。
【0003】
このような浮上搬送方式のレジスト塗布装置に用いられている浮上ステージは、その上面(浮上面)から垂直上方に高圧の気体(通常はエア)を噴き出し、その高圧気体の圧力によって基板を水平姿勢で浮かすようにしている。そして、浮上ステージの左右両側に配置されている直進運動型の搬送部が、浮上ステージ上で浮いている基板を着脱可能に保持してステージ長手方向に基板を搬送するようになっている。
【0004】
通常、浮上ステージの上面(浮上面)は、搬送方向に沿って搬入領域、塗布領域および搬出領域の3つに分割されている。塗布領域は、ここで基板上にレジスト液が供給される領域であり、長尺形レジストノズルは塗布領域の中心部の上方に配置される。塗布領域における浮上高はレジストノズルの下端(吐出口)と基板上面(被処理面)との間の塗布ギャップを規定する。この塗布ギャップはレジスト塗布膜の膜厚やレジスト消費量を左右する重要なパラメータであり、高い精度で一定に維持される必要がある。このことから、塗布領域の浮上面には、高圧気体を噴き出す噴出口に混在させて負圧で周囲の気体(空気)を吸い込む吸引口も多数設けられている。そして、基板の塗布領域を通過する部分に対して、噴出口から高圧気体による垂直上向きの力を加えると同時に、吸引口より負圧吸引力による垂直下向きの力を加えて、相対抗する双方向の力のバランスを制御することにより、所定の浮上高(通常30〜60μm)を大きな浮上剛性で安定に保ち、基板に反りがあればそれを水平に矯正するようになっている。また、塗布領域においては、そのように精密な浮上高を安定に保つために、たとえば光学式の浮上高センサを用いたフィードバック制御も行われている。
【0005】
これに対して、搬入領域は基板の搬入と浮上搬送の開始が行われる領域であり、搬出領域は浮上搬送の終了と基板の搬出とが行われる領域である。通常、搬入領域および搬出領域は、吸引口が無くて噴出口だけを一面に設けており、浮上高が通常200〜2000μmの範囲内に保たれるように、オープンループ制御による一定の噴出圧力で高圧エアを各噴出口より噴出させるようにしている。
【0006】
なお、この種の浮上ステージにおける浮上高とは、基板の最下部とステージ上面(浮上面)との間の距離間隔のことである。したがって、たとえば、矩形の基板の周縁部が下がる方向に沿っている場合は、その基板周縁部の下端とステージ上面(浮上面)との間の距離間隔が浮上高となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−244155号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のこの種のレジスト塗布装置においては、浮上搬送中に基板が浮上ステージ(特に搬入領域または搬出領域)の浮上面を擦ることがないように、被処理対象の中で想定される最も浮きにくい基板あるいは最も反りの大きい基板を基準として、高圧気体の噴出圧力を高めに設定していた。しかしながら、そのことによって、浮上しやすくて反りの少ない基板が浮上ステージ上に搬入されるときは、高圧気体の噴出圧力が過剰になって、高圧気体を必要以上に消費していることが問題となっている。さらには、高圧気体の噴出圧力が過剰であると、搬入領域および搬出領域における浮上高が最適範囲(200〜2000μm)を超えることがある。そうすると、塗布領域側の負担、すなわち浮上剛性を強くして精密浮上高(30〜60μm)を保つ負担が増大し、塗布領域でも高圧気体およびバキュームの用力消費量が増えることになる。
【0009】
本発明は、上記のような従来技術の課題を解決するものであり、浮上ステージにおける基板の浮上高や姿勢を最適化しつつ浮上用高圧気体の消費効率を改善する基板浮上搬送方法および基板浮上搬送装置を提供する。
【0010】
さらに、本発明は、塗布処理の信頼性、再現性および効率を改善する基板処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の基板浮上搬送方法は、浮上ステージの浮上面より噴出する気体の圧力によって基板を空中に浮かせ、空中に浮く前記基板を前記浮上ステージ上で水平方向に搬送する浮上式の基板搬送方法であって、前記浮上ステージの浮上面を複数の浮上エリアに区画し、前記基板の種類、属性もしくは反り状態または前記基板の部位に応じて前記気体の噴出圧力を各々の前記浮上エリア毎に独立に可変し、またはオン・オフ制御する。
【0012】
また、本発明の基板浮上搬送装置は、複数の浮上エリアに区画された浮上面を有し、前記浮上面より高圧の気体を噴出して基板を空中に浮かす浮上ステージと、高圧気体を送出する高圧気体供給源と、前記高圧気体供給源と複数の前記浮上エリアとの間に設けられ、前記基板の種類、属性もしくは反り状態または前記基板の部位に応じて高圧気体の噴出圧力を各々の前記浮上エリア毎に独立に可変し、またはオン・オフ制御する噴出圧力制御部と、空中に浮く前記基板を着脱可能に保持して前記浮上ステージ上で搬送する基板搬送部とを有する。
【0013】
本発明の基板浮上搬送方法または基板浮上搬送装置においては、浮上ステージの浮上面を複数の浮上エリアに区画し、各浮上エリアにおける噴出圧力を独立に可変し、またはオン・オフ制御することにより、基板の種類、属性もしくは反り状態に応じて基板の浮上高ないし矯正の最適化を図り、さらには高圧気体等の用力の使用効率を向上させることができる。
【0014】
また、本発明の基板処理装置は、本発明の基板浮上搬送装置と、搬送方向の所定の位置にて前記浮上ステージの上方に配置され、その直下を通過する前記基板に向けて処理液を吐出するノズルと、前記ノズルに前記処理液を供給する処理液供給部とを有する。
【0015】
本発明の基板処理装置は、本発明の基板浮上搬送装置を含む上記の構成により、浮上式塗布処理の信頼性、再現性および効率を改善することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の基板浮上搬送方法または基板浮上搬送装置によれば、上記のような構成および作用により、浮上ステージにおける基板の浮上高や姿勢を最適化しつつ、浮上用高圧気体等の用力消費効率を改善することができる。
【0017】
また、本発明の基板処理装置によれば、上記のような構成および作用により、塗布処理の信頼性、再現性および効率を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態におけるレジスト塗布装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】上記レジスト塗布装置における浮上ステージの浮上面を示す平面図である。
【図3】上記レジスト塗布装置において基板上にレジスト塗布膜が形成される様子を示す側面図である。
【図4】実施形態における浮上面区分のパターンを示す図である。
【図5A】実施形態における噴出圧力制御部の構成例を示す図である。
【図5B】実施形態における噴出圧力制御部の構成例を示す図である。
【図6A】4辺の周縁部が中心部より垂れ下がるような反りのある基板が浮上ステージ(搬入領域)上を移動するときの作用を示す側面図である。
【図6B】4辺の周縁部が中心部より垂れ下がるような反りのある基板が浮上ステージ上を移動するときの作用を示す正面図である。
【図7】図6Aおよび図6Bに示すタイプの反りがある基板に対する噴出圧力制御部の作用を説明するための図である。
【図8A】4辺の周縁部が中心部より持ち上がるような反りのある基板が浮上ステージ(搬入領域)上を移動するときの作用を示す側面図である。
【図8B】4辺の周縁部が中心部より持ち上がるような反りのある基板が浮上ステージ(搬入領域)上を移動するときの作用を示す側面図である。
【図9】図8Aおよび図8Bに示すタイプの反りがある基板に対する噴出圧力制御部の作用を説明するための図である。
【図10】左右2辺の周縁部が中間部より垂れ下がるような反りのある基板に対する噴出圧力制御部の作用を説明するための図である。
【図11】前後2辺の周縁部が中間部より垂れ下がるような反りのある基板に対する噴出圧力制御部の作用を説明するための図である。
【図12】浮上ステージの塗布領域において基板の浮上高を設定通りの精密浮上高に制御するための浮上圧力制御機構の一例を示す図である。
【図13】一変形例における噴出圧力制御部の構成を示す図である。
【図14】別の実施例における噴出圧力制御部の構成を示す図である。
【図15】別の実施例における噴出圧力制御部の構成を示す図である。
【図16】別の実施例における噴出圧力制御部の構成を示す図である。
【図17】図14の実施例における噴出圧力制御部の作用を示す図である。
【図18】図15の実施例における噴出圧力制御部の作用を示す図である。
【図19】図16の実施例における噴出圧力制御部の作用を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。
【0020】
図1〜図3につき、本発明の一実施形態におけるレジスト塗布装置の全体的な構成および作用を説明する。このレジスト塗布装置は、たとえばLCD(液晶ディスプレイ)用の矩形のガラス基板Gを被処理基板とする。
【0021】
図1に示すように、浮上ステージ10の上面または浮上面には、高圧の気体(たとえばエア)を噴出する多数の噴出口12が一面に形成されている。浮上ステージ10の左右両側には直進運動型の第1(左側)および第2(右側)の搬送部16L,16Rが配置されている。これらの搬送部16L,16Rは、各々単独で、あるいは両者協働して、ステージ10上で浮いている基板Gを着脱可能に保持してステージ長手方向(X方向)に基板Gを搬送するようになっている。浮上ステージ10上で基板Gは、その一対の辺が搬送方向(X方向)と平行で、他の一対の辺が搬送方向と直交するような水平姿勢をとって、浮上搬送される。
【0022】
浮上ステージ10は、図2に示すように、その長手方向(X方向)に沿って複数たとえば3つの領域MIN,MCT,MOUTに分割されている。一端の領域MINは搬入領域であり、レジスト塗布処理を受けるべき新規の基板Gはたとえば搬送方向上流側で浮上ステージ10に隣接する第1のソーターユニット(図示せず)から平流しでこの搬入領域MINに搬入される。
【0023】
搬入領域MINは基板Gの浮上搬送が開始される領域でもあり、この領域の浮上面には基板Gを搬入の浮上搬送に適した浮上高Hβで浮かせるために多数の噴出口12が一面に設けられている。この搬入領域MINにおける基板Gの浮上高Hβは、特に高い精度を必要とせず、たとえば200〜2000μmの範囲内に保たれればよい。また、搬送方向(X方向)において、搬入領域MINのサイズは基板Gのサイズを上回っているのが好ましい。さらに、搬入領域MINには、基板Gをステージ10上で位置合わせするためのアライメント部(図示せず)も設けられてよい。
【0024】
浮上ステージ10の長手方向中心部に設定された領域MCTはレジスト液供給領域または塗布領域であり、基板Gはこの塗布領域MCTを通過する際に上方のレジストノズル18からレジスト液Rの供給を受ける。この塗布領域MCTの浮上面には、基板Gを浮上剛性の大きな精密浮上高Hα(標準値:30〜60μm)で安定に浮かせるために、高圧エアを噴き出す噴出口12と負圧で周囲のエアを吸い込む吸引口14とを一定の密度または配置パターンで混在させて設けている。
【0025】
搬送方向(X方向)における塗布領域MCTのサイズは、レジストノズル18の直下付近に上記のような浮上剛性の大きな精密浮上高Hαを保持できるほどのスペース的な余裕があればよいので、通常は基板Gのサイズよりも小さくてよく、たとえば1/3〜1/10程度でよい。
【0026】
塗布領域MCTの下流側に位置する浮上ステージ10の他端の領域MOUTは搬出領域である。このレジスト塗布装置で塗布処理を受けた基板Gは、この搬出領域MOUTからたとえば搬送方向下流側で浮上ステージ10に隣接する第2のソーターユニット(図示せず)を経由して次工程の基板処理装置たとえば減圧乾燥装置(図示せず)へ平流しで移送される。この搬出領域MOUTの浮上面には、基板Gを搬出の浮上搬送に適した浮上高Hβ(たとえば200〜2000μm)で浮かせるために噴出口12が一面に多数設けられている。
【0027】
レジストノズル18は、その長手方向(Y方向)で浮上ステージ10上の基板Gを一端から他端までカバーできるスリット状の吐出口18aを有し、門形または逆さコ字形のフレーム(図示せず)に取り付けられ、たとえばボールネジ機構を有するノズル昇降部(図示せず)の駆動で昇降移動可能であり、レジスト液供給部(図示せず)からのレジスト液供給管20に接続されている。
【0028】
第1(左側)および第2(右側)の搬送部16L,16Rは、浮上ステージ10の左右両側に平行に配置された第1および第2のガイドレール22L,22Rと、これらのガイドレール22L,22R上で搬送方向(X方向)に移動可能に取り付けられた第1および第2のスライダ24L,24Rと、両ガイドレール22L,22R上で両スライダ24L,24Lを同時または個別に直進移動させる第1および第2の搬送駆動部(図示せず)と、基板Gを着脱可能に保持するために両スライダ24L,24Rに搭載されている第1および第2の保持部26L,26Rとをそれぞれ有している。各搬送駆動部は、直進型の駆動機構たとえばリニアモータによって構成されている。
【0029】
第1(左側)の保持部26Lは、基板Gの左側二隅の裏面(下面)にそれぞれ真空吸着力で結合する複数個の吸着パッド28Lと、各吸着パッド28Lを搬送方向(X方向)に一定の間隔を置いた複数箇所で鉛直方向の変位を規制して支持する複数個のパッド支持部30Lと、これら複数個のパッド支持部30Lをそれぞれ独立に昇降移動または昇降変位させる複数個のパッドアクチエータ32Lとを有している。
【0030】
第2(右側)の保持部26Rは、基板Gの左側二隅の裏面(下面)にそれぞれ真空吸着力で結合する複数個の吸着パッド28Rと、各吸着パッド28Rを搬送方向(X方向)に一定の間隔を置いた複数箇所で鉛直方向の変位を規制して支持する複数個のパッド支持部30Rと、これら複数個のパッド支持部30Rをそれぞれ独立に昇降移動または昇降変位させる複数個のパッドアクチエータ32Rとを有している。
【0031】
左右両側の各吸着パッド28L,28Rは、図示省略するが、たとえばステンレス鋼(SUS)からなる直方体形状のパッド本体の上面に複数個の吸引口を設けている。それらの吸引口はパッド本体内のバキューム通路および外部のバキューム管を介してパッド吸着制御部の真空源(図示せず)にそれぞれ通じている。
【0032】
このレジスト塗布装置において、レジスト塗布処理が行われるときは、図3に示すように、基板Gが浮上搬送によって搬入領域MINから塗布領域MCTに入る際に、基板Gの浮上高が漸次的に下がり、ラフで大きな浮上高Hβから精密で小さな浮上高Hαへと変化する。そして、塗布領域MCT内では、特にレジストノズル18の直下付近では、基板Gの浮上高(精密浮上高)Hαが標準値(30〜60μm)に保たれる。基板Gが塗布領域MCTを過ぎると、基板Gの浮上高は漸次的にラフ浮上高Hβの標準値(200〜2000μm)へと増大していく。
【0033】
こうして、基板Gが塗布領域MCT内では上下にぶれたりせずに精密浮上高Hαを保って移動することにより、レジストノズル18より帯状に供給されるレジスト液Rが基板G上で均一に塗布され、基板Gの前端から後端に向かってレジスト液Rの塗布膜RMが一定の膜厚で形成される。
【0034】
この実施形態では、以下に述べるような浮上ステージ10上の空間的かつ時間的な噴出圧力の可変制御ないしオン・オフ制御機能により、浮上ステージ10上で浮上搬送される基板Gの浮上高や姿勢を最適化しつつ浮上用高圧気体の消費効率ひいてはバキューム消費効率を改善している。
【0035】
図4に点線で示すように、この実施形態の浮上ステージ10は、搬入領域MINおよび搬出領域MOUTの浮上面をそれぞれ多数の浮上エリアに区画している。より詳細には、搬入領域MINの浮上面は、搬送方向(X方向)において複数個(m個)の短冊状エリアE1,E2,・・,Emに区画され、各々の短冊状エリアEi(i=1,2,・・,m)が搬送方向と直交する水平方向(Y方向)において左右両端部の浮上エリアALi,ARiと中間部の浮上エリアASiとに区画されている。全体的に見ると、左端浮上エリア(AL1,AL2,・・,ALm)、中間浮上エリア(AS1,AS2,・・,ASm)および右端浮上エリア(AR1,AR2,・・,ARm)が搬送方向(X方向)にそれぞれ一列に並んで第1、第2および第3の浮上エリア群38(1),38(2),38(3)を形成している。
【0036】
一方、搬出領域MOUTの浮上面は、搬送方向(X方向)において複数個(n個)の短冊状エリアF1,F2,・・,Fnに区画され、各々の短冊状エリアFj(j=1,2,・・,n)が搬送方向と直交する水平方向(Y方向)において左右両端部の浮上エリアBLj,BRjと中間部の浮上エリアBSjとに区画されている。全体的に見ると、左端浮上エリア(BL1,BL2,・・,BLm)、中間浮上エリア(BS1,BS2,・・,BSm)および右端浮上エリア(BR1,BR2,・・,BRm)が搬送方向(X方向)にそれぞれ一列に並んで第4、第5および第6の浮上エリア群38(4),38(5),38(6)を形成している。
【0037】
上記のような第1〜第6の浮上エリア群38(1)〜38(6)の各浮上エリアALi,ARi,ASi,BLj,BRj,BSj内に分布する噴出口12の密度および/または配置パターンは、同じであってもよく、あるいは異なっていてもよく、それぞれ独立に選定されてよい。この実施形態では、図2に示すように、搬入領域MINおよび搬出領域MOUTの左端浮上エリアALi,BLjおよび右端浮上エリアARi,BRjに同一の噴出口密度および配置パターンを設定し、搬入領域MINおよび搬出領域MOUTの中間浮上エリアASi,BSjに同一の噴出口密度および配置パターンを設定している。そして、面積の小さい両端の浮上エリアALi,BLj,ARi,BRjの単位面積当たりの応答性を高くするため、それらの噴出口密度を面積の大きい中間浮上エリアASi,BSjの噴出口密度よりも一段高くしている。
【0038】
図5Aおよび図5Bに、浮上ステージ10の搬入領域MINおよび搬出領域MOUTにおける高圧気体の噴出圧力を制御するための噴出圧力制御部40の構成を示す。
【0039】
この実施形態における噴出圧力制御部40は、たとえばコンプレッサからなる高圧気体供給源42と各浮上エリアALi,ASi,ARi,BLj,BSj,BRjとの間に設けられ、基板Gの種類、属性もしくは反り状態または基板Gの部位に応じて高圧気体の噴出圧力を各々の浮上エリアALi,ASi,ARi,BLj,BSj,BRj毎に独立に可変し、またはオン・オフ制御するように構成されている。
【0040】
この噴出圧力制御部40は、高圧気体供給源42からの高圧気体を各浮上エリアALi,ASi,ARi,BLj,BSj,BRjに分配供給するための高圧気体流路網44と、この高圧気体流路網44において高圧気体供給源42からの一次高圧気体を減圧して複数段階(たとえば強・中・弱の3段階)の圧力に調整された二次高圧気体をそれぞれ出力する複数(3つ)のレギュレータ46,48,50と、各浮上エリアALi,ASi,ARi,BLj,BSj,BRjに対してこれらのレギュレータ46,48,50からの3種類の二次高圧気体のいずれか1つを個別に選択するための切換弁52ALi,52ASi,52ARi,52BLj,52BSj,52BRjと、各浮上エリアALi,ASi,ARi,BLj,BSj,BRjにおける高圧気体の噴出を個別にオン・オフするための開閉弁54ALi,54ASi,54ARi,54BLj,54BSj,54BRjと、上記レギュレータ、切換弁および開閉弁の各々を個別に制御するコントローラ55とを有している。
【0041】
この噴出圧力制御部40においては、上記の構成により、各浮上エリア毎に高圧気体の噴出をオン・オフできるとともに、噴出圧力を「強」、「中」、「弱」の3通り(3段階)に可変することができる。たとえば、浮上エリアALiについては、開閉弁54AL1をオンにして、切換弁52AL1をレギュレータ46に切り換えると「強」の噴出圧力が選択され、切換弁52AL1をレギュレータ48に切り換えると「中」の噴出圧力が選択され、切換弁52AL1をレギュレータ50に切り換えると「弱」の噴出圧力が選択される。開閉弁54AL1をオフにすると、浮上エリアALiから高圧エアが噴出しなくなる。
【0042】
なお、高圧気体流路網42の途中に、たとえば各開閉弁54ALi,54ASi,54ARi,54BLj,54BSj,54BRjと各浮上エリアALi,ASi,ARi,BLj,BSj,BRjとの間には、各浮上エリアALi,ASi,ARi,BLj,BSj,BRj内に分布する多数の噴出口12に均一な圧力で高圧エアを分配するためのマニホールドまたはバッファ室(図示せず)が設けられている。
【0043】
コントローラ55は、たとえばマイクロコンピュータからなり、上記噴出圧力制御部40内の各部の制御を行うほか、このレジスト塗布装置内の他の機構、たとえばレジスト液供給部、基板搬送部等に対する制御も行い、さらにはレジスト塗布処理において装置全体のシーケンスを制御する。
【0044】
コントローラ55は、このレジスト塗布処理装置が組み込まれている上位システム(たとえば塗布現像処理装置)を統括制御するホストコンピュータ(図示せず)と種種のデータおよび信号をやりとりする。特に、このレジスト塗布処理装置に搬入される処理対象の基板Gに関して、基板の種類または属性(たとえば長さ×幅サイズ、厚み、材質、下地膜の層順位・種類等)の情報をたとえばロット単位でホストコンピュータから受け取るようになっている。
【0045】
コントローラ55は、このような属性情報を基に、所定のアルゴリズムによって、処理対象の基板Gについてその浮上特性や反り具合を推定することができる。たとえば、基板のサイズ、厚み、材質等のデータから、単位面積当たりの重量を求めて、当該基板を所望の浮上高に浮かせるために必要な噴出圧力を決定することができる。また、基板の反りは、主に基板上にそれまで積層形成されている複数の層(特に金属配線層)間のバイメタル効果に起因して起こる。したがって、今回レジスト塗布処理を受ける下地膜の層順位または種類に応じて反りの種類(態様)および程度が変わる。逆な見方をすれば、下地膜に関する情報を基に、反りの種類(態様)および程度を推定することができる。
【0046】
もっとも、基板の反りに関しては、図3に示すように、たとえば浮上ステージ10の入口付近に光学式の反り検出部56を好適に設けることができる。この反り検出部56は、搬送方向と直交する水平方向(Y方向)に複数個の光学式距離センサ58を一定間隔で一列に並べて配置し、上記第1のソーターユニットから平流しで浮上ステージ10上に搬入される基板Gが真下を通過する際に、それら複数の光学式距離センサ58を通じて基板Gの2次元的な平坦度を光学的な走査でモニタし、基板Gの反りの種類(態様)および程度を正確に測定することができる。反り検出部56における信号処理は、専用の演算回路で行ってもよく、あるいはコントローラ55が兼用して行ってもよい。
【0047】
次に、図6〜図11につき、この実施形態における噴出圧力制御部40の作用を説明する。なお、以下の説明では基板Gが浮上ステージ10の搬入領域MINの上を移動するときの作用について述べるが、搬出領域MOUTの上を移動するときも基本的には同じである。
【0048】
第1の例として、図6Aおよび図6Bに示すように、均一な噴出圧力で浮上させたときに4辺の周縁部が中心部より低く垂れ下がるような反りがある基板Gが処理対象として浮上ステージ10上に搬入されたとする。この場合は、基板Gが浮上搬送によって搬入領域MINの上を移動する際に、基板Gの4辺の周縁部に対する高圧気体の噴出圧力が基板Gの中心部に対する高圧気体の噴出圧力よりも相対的に高くなるように、噴出圧力制御部40において搬入領域MIN内の各浮上エリアにおける高圧気体の噴出圧力を基板Gの移動に合わせて順次可変し、またはオン・オフする制御が行われる。
【0049】
したがって、浮上ステージ10上で移動する基板Gが図7の(a)に示す位置にある時は、基板Gの4辺の周縁部の下にある浮上エリア(AL2〜AL9)、(AS2,AS3,AS8,AS9)、(AR2〜AR9)における高圧気体の噴出圧力がたとえば「強」に制御され、基板Gの中心部の下にある浮上エリア(AS4〜AS7)における高圧気体の噴出圧力が一段低い値たとえば「中」に制御される。そして、他の浮上エリア(AL1,AL10〜AL12)、(AS1,AS10〜AS12)、(AR1,AR10〜AR12)においては、高圧気体の噴出がオフに制御される。
【0050】
その直後に、基板Gが図7の(b)に示す位置にある時は、この時点で基板Gの4辺の周縁部の下にある浮上エリア(AL3〜AL10)、(AS3,AS4,AS9,AS10)、(AR3〜AR10)における高圧気体の噴出圧力が「強」に制御され、基板Gの中心部の下にある浮上エリア(AS5〜AS8)における高圧気体の噴出圧力が「中」に制御される。そして、他の浮上エリア(AL1,AL2,AL11,AL12)、(AS1,ASL2,AS11,AS12)、(AR1,AR2,AR11,AR12)においては、高圧気体の噴出がオフに制御される。
【0051】
さらにその直後で、基板Gが図7の(c)に示す位置にある時は、この時点で基板Gの4辺の周縁部の下にある浮上エリア(AL4〜AL11)、(AS4,AS5,AS10,AS11)、(AR4〜AR11)における高圧気体の噴出圧力が「強」に制御され、基板Gの中心部の下にある浮上エリア(AS6〜AS9)における高圧気体の噴出圧力が「中」に制御される。そして、それ以外の浮上エリア(AL1,AL2,AL3,AL12)、(AS1,AS2,AS3,AS12)、(AR1,AR2,AR3,AR12)においては、高圧気体の噴出がオフに制御される。
【0052】
なお、基板Gが薄くて軽い場合は、基板Gの中心部の下に位置している各浮上エリアにおける高圧気体の噴出圧力を「弱」に制御し、基板Gの4辺の周縁部の下に位置している各浮上エリアにおける高圧気体の噴出圧力を「中」または「強」に制御してもよい。
【0053】
上記のように、基板Gの4辺の周縁部に対する高圧気体の噴出圧力を基板Gの中心部に対する高圧気体の噴出圧力よりも相対的に高くすることによって、図6Aおよび図6Bに示すように、基板Gの4辺の反りをある程度まで矯正する効果も得られる。
【0054】
第2の例として、図8Aおよび図8Bに示すように、均一な噴出圧力で浮上させたときに4辺の周縁部が中心部より上に持ち上がるような反りがある基板Gが処理対象として浮上ステージ10上に搬入されたとする。この場合は、基板Gが浮上搬送によって搬入領域MINの上を移動する際に、基板Gの4辺の周縁部に対する高圧気体の噴出圧力が基板Gの中心部に対する高圧気体の噴出圧力よりも相対的に低くなるように、噴出圧力制御部40において搬入領域MIN内の各浮上エリアにおける高圧気体の噴出圧力を基板Gの移動に合わせて順次可変し、またはオン・オフする制御が行われる。
【0055】
たとえば、図9に示すように、基板Gの中心部の下に位置している浮上エリア(図9の(a)の場面ではAS4〜AS7)における高圧気体の噴出圧力を「強」に制御し、基板Gの4辺の周縁部の下に位置している浮上エリア(AL2〜AL9,AS2,AS3,AS8,AS9,AR2〜AR9)における高圧気体の噴出圧力を「中」(または「弱」)に制御し、それ以外の浮上エリア(AL1,AL10〜AL12,AS1,AS10〜AS12,AR1,AR10〜AR12)において高圧気体の噴出をオフにする制御が行われる。
【0056】
あるいは、基板Gが薄くて軽い場合は、基板Gの中心部の下に位置している各浮上エリアにおける高圧気体の噴出圧力を「中」に制御し、基板Gの4辺の周縁部の下に位置している各浮上エリアにおける高圧気体の噴出圧力を「弱」に制御してもよい。
【0057】
上記のように、基板Gの4辺の周縁部に対する高圧気体の噴出圧力を基板Gの中心部に対する高圧気体の噴出圧力よりも相対的に低くすることによって、図8Aおよび図8Bに示すように、基板Gの4辺の反りをある程度まで矯正する効果も得られる。
【0058】
第3の例として、図示省略するが、均一な噴出圧力で浮上させたときに搬送方向の左右2辺の周縁部が中心部より下に垂れ下がるような反りがある基板Gが処理対象として浮上ステージ10上に搬入されたとする。この場合は、基板Gが浮上搬送によって搬入領域MINの上を移動する際に、基板Gの左右2辺の周縁部に対する高圧気体の噴出圧力が基板Gの中間部に対する高圧気体の噴出圧力よりも相対的に高くなるように、噴出圧力制御部40において搬入領域MIN内の各浮上エリアにおける高圧気体の噴出圧力を基板Gの移動に合わせて順次可変し、またはオン・オフする制御が行われる。
【0059】
たとえば、図10に示すように、基板Gの左右2辺の周縁部の下に位置している各浮上エリア(図10の(a)の場面ではAL2〜AL9,AR2〜AR9)における高圧気体の噴出圧力を「強」に制御し、基板Gの中間部の下に位置している各浮上エリア(AS2〜AS9)における高圧エアの噴出圧力を「中」(または「弱」)に制御し、それ以外の浮上エリア(AL1,AL10〜AL12,AS1,AS10〜AS12,AR1,AR10〜AR12)において高圧気体の噴出をオフにする制御が行われる。
【0060】
第4の例として、図示省略するが、均一な噴出圧力で浮上させたときに搬送方向の前後2辺の周縁部が中心部より下に垂れ下がるような反りがある基板Gが処理対象として浮上ステージ10上に搬入されたとする。この場合は、基板Gが浮上搬送によって搬入領域MINの上を移動する際に、基板Gの前後2辺の周縁部に対する高圧気体の噴出圧力が基板Gの中間部に対する高圧気体の噴出圧力よりも相対的に高くなるように、噴出圧力制御部40において搬入領域MIN内の各浮上エリアにおける高圧気体の噴出圧力を基板Gの移動に合わせて順次可変し、またはオン・オフする制御が行われる。
【0061】
たとえば、図11に示すように、基板Gの前後2辺の周縁部の下に位置している浮上エリア(図11の(a)の場面ではAL2,AL3,AL8,AL9,AS2,AS3,AS8,AS9,AR2,AR3,AR8,AR9)における高圧気体の噴出圧力を「強」に制御し、基板Gの中間部の下に位置している浮上エリア(AL4〜AL7,AS4〜AS7,AR4〜AR7)における高圧気体の噴出圧力を「中」(または「弱」)に制御し、それ以外の浮上エリア(AL1,AL10〜AL12,AS1,AS10〜AS12,AR1,AR10〜AR12)において高圧気体の噴出をオフにする制御が行われる。
【0062】
このように、基板Gの選択された所定の部位(たとえば周縁部/中心部)が真上またはその近傍に在るか否かに応じて、各々の浮上エリアにおける高圧エアの噴出圧力を可変し、またはオン・オフ制御することにより、浮上ステージ10上の基板Gの浮上高およびその反り状態に対する矯正力を最適化できるとともに、浮上搬送に用いる高圧気体の消費効率を向上させることができる。したがって、塗布処理の信頼性、再現性および効率を改善することができる。
【0063】
図12に、塗布領域MCTにおいて基板Gの浮上高(精密浮上高)Hαを設定値に保つための浮上圧力制御機構の一例を示す。
【0064】
この浮上圧力制御機構において、高圧気体供給源42は配管または高圧気体供給管60を介して浮上ステージ10の塗布領域MCT専用の高圧気体導入口62に接続されており、この高圧気体供給管60の途中にたとえば電空レギュレータからなる比例制御弁64が設けられている。一方、工場用力のバキューム源66は配管またはバキューム管68を介して塗布領域MCT専用のバキューム導入口70に接続されており、このバキューム管68の途中にコンダクタンスバルブ72が設けられている。
【0065】
さらに、浮上ステージ10には、光学式の距離センサ74が取り付けられている。この光学式距離センサ74は、直上の基板Gに向けて光ビームLBを照射し、基板Gの下面からの反射光を受光して、その受光位置から所定の測定基準高さ位置と基板Gの下面との間の距離ひいては基板Gの浮上高の測定値[Hα]を求める。コントローラ55は、その測定値[Hα]が精密浮上高Hαの設定値に一致するように比例制御弁64およびコンダクタンスバルブ72の開度を制御する。
【0066】
この実施形態では、上述したように搬入領域MINおよび搬出領域MOUTにおいて基板Gの浮上高および姿勢が最適化されるので、塗布領域MCTにおいて基板Gの浮上高(精密浮上高)Hαに設定値に合わせるための浮上圧力制御機構の負担が軽減される。そして、浮上圧力制御機構で消費する高圧気体の消費効率およびバキューム消費効率も改善される。

[他の実施形態または変形例]
【0067】
以上、本発明の好適な一実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種種の変形が可能である。
【0068】
たとえば、上記実施形態における噴出圧力制御部40を図13に示すような構成に変形することも可能である。この変形例は、浮上ステージ10の左右両端部の浮上エリアAL1〜ALm,AR1〜ARm(BL1〜BLn,BR1〜BRn)に対して共通の比例制御弁76を設ける。比例制御弁76は、たとえば電空レギュレータからなり、コントローラ55の制御の下で連続的に可変の二次高圧気体を出力する。この変形例によっても、上述した第1〜第4の噴出圧力制御法(図7、図9、図10、図11)を実現することができる。
【0069】
別の実施例として、噴出圧力制御部40を図14に示すような構成にすることも可能である。この構成例は、浮上ステージ10の左右両端部の浮上エリアAL1〜ALm,AR1〜ARm(BL1〜BLm,BR1〜BRm)に対して共通の比例制御弁76を設けるとともに、中間部の浮上エリアAS1〜ASm(BS1〜BSn)に対しても共通の比例制御弁78を設ける、この比例制御弁78も、たとえば電空レギュレータからなり、コントローラ55の制御の下で連続的に可変の二次高圧気体を出力する。
【0070】
この構成例によれば、図17に示すように、基板Gが浮上搬送によって搬入領域MIN(および搬出領域MOUT)の上を移動する際に、基板Gの左右2辺の周縁部に対する高圧気体の噴出圧力が基板Gの中間部に対する高圧気体の噴出圧力よりも相対的に高くなるように、もしくは相対的に低くなるように、噴出圧力制御部40において搬入領域MIN(および搬出領域MOUT)内の各浮上エリアにおける高圧気体の噴出圧力を基板Gの移動に合わせて順次可変し、またはオン・オフする制御を行うことができる。これによって、搬送方向の左右両端部と中間部との間で反っている基板Gに対して浮上高および矯正力の最適化を図れるとともに、高圧気体の消費効率を向上させることができる。
【0071】
別の実施例として、浮上ステージ10の搬入領域MIN(搬出領域MOUT)の浮上面を、図18に示すように搬送方向(X方向)においてのみ複数の浮上エリアAP1〜APmに区画することも可能である。この場合、噴出圧力制御部40をたとえば図15に示すように構成することができる。この構成は、上述した実施形態の構成(図5A)において中間部の浮上エリアAS1〜ASm(BS1〜BSn)に対する構成部分に相当する。
【0072】
この構成例によれば、図18に示すように、基板Gが浮上搬送によって搬入領域MIN(および搬出領域MOUT)の上を移動する際に、基板Gの前後2辺の周縁部に対する高圧気体の噴出圧力が基板Gの中間部に対する高圧気体の噴出圧力よりも相対的に高くなるように、もしくは相対的に低くなるように、噴出圧力制御部40において搬入領域MIN(および搬出領域MOUT)内の各浮上エリアにおける高圧気体の噴出圧力を基板Gの移動に合わせて順次可変し、またはオン・オフする制御を行うことができる。これによって、搬送方向の前後両端部と中間部との間で反っている基板Gに対して浮上高および矯正力の最適化を図れるとともに、高圧気体の消費効率を向上させることができる。
【0073】
別の実施例として、浮上ステージ10の搬入領域MIN(搬出領域MOUT)の浮上面を、図19に示すように搬送方向と直交する水平方向(Y方向)においてのみ複数の浮上エリアAL,AS,ARに区画することも可能である。この場合、噴出圧力制御部40をたとえば図16に示すように構成することができる。この構成は、図14の実施例において、左右両端の浮上エリアAL1〜ALm,AR1〜ARm(BL1〜BLm,BR1〜BRm)に対する開閉弁54AL1〜54ALm,54AR1〜54ARm(54BL1〜54BLm,54BR1〜54BRm)を比例制御弁76の上流側に集約して1つの開閉弁80に置き換えるとともに、中間部の浮上エリアAS1〜ASm(BS1〜BSn)に対する開閉弁54AS1〜54ASm(54BS1〜54BSn)を比例制御弁78の上流側に集約して1つの開閉弁82に置き換えたものである。
【0074】
この構成例によれば、図19に示すように、基板Gが浮上搬送によって搬入領域MIN(および搬出領域MOUT)の上を移動する際に、基板Gの左右2辺の周縁部に対する高圧気体の噴出圧力が基板Gの中間部に対する高圧気体の噴出圧力よりも相対的に高くなるように、もしくは相対的に低くなるように、噴出圧力制御部40において搬入領域MIN(および搬出領域MOUT)内の各浮上エリアにおける高圧気体の噴出圧力を可変する制御を行うことができる。これによって、搬送方向の左右両端部と中間部との間で反っている基板Gに対して浮上高および矯正力の最適化を図ることができる。
【0075】
上記した実施形態では、塗布領域MCTの浮上面には一面に噴出口12と吸引口14とを混在させていた。しかし、図示省略するが、塗布領域MCTの左右両端部を噴出口12だけを配置する1つまたは複数の浮上エリアとし、搬入領域MINおよび搬出領域MOUTにおける左右両端部の浮上エリアと同様または同列に制御することも可能である。
【0076】
上記した実施形態はLCD製造用のレジスト塗布装置に係るものであったが、本発明は被処理基板上に処理液を塗布する任意の基板処理装置に適用可能である。したがって、本発明における処理液としては、レジスト液以外にも、たとえば層間絶縁材料、誘電体材料、配線材料等の塗布液も可能であり、現像液やリンス液等も可能である。さらに、本発明は、浮上ステージを用いる検査装置にも適用可能である。その場合、上記実施形態における塗布領域は検査領域に置き換わり、レジストノズルはたとえば光学式検査計またはカメラ等に置き換わる。
【0077】
本発明における被処理基板はLCD基板に限らず、他のフラットパネルディスプレイ用基板、半導体ウエハ、CD基板、ガラス基板、フォトマスク、プリント基板等も可能である。
【符号の説明】
【0078】
10 浮上ステージ
12 噴出口
14 吸引口
16L,16R 搬送部
18 レジストノズル
40 噴出圧力制御部
42 高圧気体供給源
44 高圧流路網
46,48,50 レギュレータ
ALi,ASi,ARi,BLj,BSj,BRj 浮上エリア
52ALi,52ASi,52ARi,52BLj,52BSj,52BRj 切換弁
54ALi,54ASi,54ARi,54BLj,54BSj,54BRj 開閉弁
55 コントローラ
56 反り検出部
76,78 比例制御弁
80,82 開閉弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮上ステージの浮上面より噴出する気体の圧力によって基板を空中に浮かせ、空中に浮く前記基板を前記浮上ステージ上で水平方向に搬送する基板浮上搬送方法であって、
前記浮上ステージの浮上面を複数の浮上エリアに区画し、
前記基板の種類、属性もしくは反り状態または前記基板の部位に応じて前記気体の噴出圧力を各々の前記浮上エリア毎に独立に可変し、またはオン・オフ制御する基板浮上搬送方法。
【請求項2】
前記浮上ステージの浮上面は、搬送方向において複数の前記浮上エリアに区画されている、請求項1に記載の基板浮上搬送方法。
【請求項3】
前記浮上ステージの浮上面は、搬送方向と交差する水平方向において複数の前記浮上エリアに区画されている、請求項1に記載の基板浮上搬送方法。
【請求項4】
前記浮上ステージの浮上面は、搬送方向および搬送方向と交差する水平方向において複数の前記浮上エリアに区画されている、請求項1に記載の基板浮上搬送方法。
【請求項5】
搬送方向に並んで配置される少なくとも一群の前記浮上エリアについては、前記基板の選択された所定の部位が真上またはその近傍に在るか否かに応じて、各々の前記浮上エリアにおける高圧気体の噴出圧力を可変し、またはオン・オフ制御する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の基板浮上搬送方法。
【請求項6】
前記浮上ステージの少なくとも一部の区間においては、前記基板の選択された所定の部位に対する高圧気体の噴出圧力が前記基板の他の部位に対する高圧気体の噴出圧力よりも上回るように、前記区間内の各々の前記浮上エリアにおける高圧気体の噴出圧力を前記基板の移動に合わせて順次可変し、またはオン・オフ制御する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の基板浮上搬送方法。
【請求項7】
前記基板がその中心部と周縁部との間で反っているときは、前記浮上ステージの少なくとも一部の区間において、前記基板の周縁部に対する高圧気体の噴出圧力が前記基板の中心部に対する高圧気体の噴出圧力よりも相対的に高く、もしくは相対的に低くなるように、前記区間内の各々の前記浮上エリアにおける高圧気体の噴出圧力を前記基板の移動に合わせて順次可変し、またはオン・オフ制御する、請求項6に記載の基板浮上搬送方法。
【請求項8】
前記基板が搬送方向の前後両端部と中間部との間で反っているときは、前記浮上ステージの少なくとも一部の区間において、前記基板の前後両端部に対する高圧気体の噴出圧力が前記基板の中間部に対する高圧気体の噴出圧力よりも相対的に高く、もしくは相対的に低くなるように、前記区間内の各々の前記浮上エリアにおける高圧気体の噴出圧力を前記基板の移動に合わせて順次可変し、またはオン・オフ制御する、請求項6に記載の基板浮上搬送方法。
【請求項9】
前記基板が搬送方向の左右両端部と中間部との間で反っているときは、前記浮上ステージの少なくとも一部の区間において、前記基板の左右両端部に対する高圧気体の噴出圧力が前記基板の中間部に対する高圧気体の噴出圧力よりも相対的に高く、もしくは相対的に低くなるように、前記区間内の各々の前記浮上エリアにおける高圧気体の噴出圧力を前記基板の移動に合わせて順次可変し、またはオン・オフ制御する、請求項6に記載の基板浮上搬送方法。
【請求項10】
前記浮上ステージの少なくとも一部の区間においては、前記基板の任意の部位が真上またはその近傍に在るか否かに応じて、前記区間内の各々の前記浮上エリアにおける高圧気体の噴出圧力を前記基板の移動に合わせて順次可変し、またはオン・オフ制御する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の基板浮上搬送方法。
【請求項11】
複数の浮上エリアに区画された浮上面を有し、前記浮上面より高圧の気体を噴出して基板を空中に浮かす浮上ステージと、
高圧気体を送出する高圧気体供給源と、
前記高圧気体供給源と複数の前記浮上エリアとの間に設けられ、前記基板の種類、属性もしくは反り状態または前記基板の部位に応じて高圧気体の噴出圧力を各々の前記浮上エリア毎に独立に可変し、またはオン・オフ制御する噴出圧力制御部と、
空中に浮く前記基板を着脱可能に保持して前記浮上ステージ上で搬送する基板搬送部と
を有する基板浮上搬送装置。
【請求項12】
前記浮上ステージの浮上面は、搬送方向において複数の前記浮上エリアに区画されている、請求項11に記載の基板浮上搬送装置。
【請求項13】
前記浮上ステージの浮上面は、搬送方向と交差する水平方向において複数の前記浮上エリアに区画されている、請求項11に記載の基板浮上搬送装置。
【請求項14】
前記浮上ステージの浮上面は、搬送方向および搬送方向と交差する水平方向において複数の前記浮上エリアに区画されている、請求項11に記載の基板浮上搬送装置。
【請求項15】
前記噴出圧力制御部は、前記気体流路網において噴出圧力を共通にする一群の前記浮上エリアに高圧気体を分配する第1の流路に設けられる比例制御弁を有し、前記一群の浮上エリアに供給する高圧気体の噴出圧力を可変するために前記比例制御弁の開度を調節する、請求項11〜14のいずれか一項に記載の基板浮上搬送装置。
【請求項16】
前記噴出圧力制御部は、前記気体流路網において噴出圧力を共通にする一群の前記浮上エリアに高圧気体を分配する第1の流路に並列的に設けられる複数のレギュレータを有し、前記一群の浮上エリアに供給する高圧気体の噴出圧力を可変するために前記複数のレギュレータのいずれかを選択的に作動させる、請求項11〜14のいずれか一項に記載の基板浮上搬送装置。
【請求項17】
前記噴出圧力制御部は、前記気体流路網において各々の前記浮上エリアに高圧気体を分配する第2の流路に設けられる開閉弁を有し、前記基板の選択された所定の部位もしくは任意の部位が当該浮上エリアの真上またはその近傍に在るか否かに応じて、前記開閉弁をオン・オフ制御する、請求項11〜16のいずれか一項に記載の基板浮上搬送装置。
【請求項18】
各々の前記浮上エリアには、高圧気体を噴出する多数の噴出口が一定の密度で設けられている、請求項11〜17のいずれか一項に記載の基板浮上搬送装置。
【請求項19】
基板上に処理液を塗布するための基板処理装置であって、
請求項11〜18のいずれか一項に記載の基板浮上搬送装置と、
搬送方向の所定の位置にて前記浮上ステージの上方に配置され、その直下を通過する前記基板に向けて処理液を吐出するノズルと、
前記ノズルに前記処理液を供給する処理液供給部と
を有する基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−190890(P2012−190890A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51340(P2011−51340)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】