説明

基板生産方法および電子部品実装装置

【課題】部品切れ等によって優先レーンでの生産が継続できなくなった場合は、他の生産可能なレーンに生産を切替え、その後、優先レーンでの生産が可能となった場合に、優先レーンに生産復帰する基板生産方法および装置を提供する。
【解決手段】複数の基板搬送レーン17、18のうち先に基板16が投入された基板搬送レーンを優先レーンに設定し、優先レーン上の基板に電子部品を実装し、優先レーン上の基板の生産が継続できなくなった場合には、他の生産可能な基板搬送レーン上の基板に電子部品を実装するように生産するレーンを切替え、その後、優先レーン上の基板の生産が継続できるようになった段階で、優先レーン上の基板に電子部品を実装するように生産復帰させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の基板搬送レーンに基板を流し、優先レーンの基板に対して電子部品を装着するようにした基板生産方法および電子部品実装装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製品履歴の追跡を正しく行うことができるように、生産ロットにおける基板の搬送順序を先入れ・先出しの原則通りに維持できるようにした電子部品実装装置は、例えば、特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1に記載されたものは、実装対象の基板に、生産ロットにおける搬送順序を示す追番号Nを付与し、追番号Nが偶数であるか、奇数であるかによって、2列の待機ステージの何れかに搬入するようにしている。すなわち、基板を2つの搬送路に交互に供給し、未実装基板を待機する待機ステージより実装ステージへ、および実装ステージより実装済基板を待機する待機ステージへ基板を移動させる際に、2つの搬送路上の基板の追番号の大小比較を行い、小さい追番号の基板を先行して移動させるように基板の移動順序を決定するようにしている。これによって、上流側から搬入された順序に従って、先入れ、先出しの原則が維持される。この結果、特許文献1に記載のものによれば、不具合発生時の製品履歴の追跡を容易に行うことができる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−204192号公報(段落0030〜0035、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のものにおいては、カセットフィーダの部品切れ等により、一方の搬送路上の基板に電子部品を実装できなくなった場合の対応については、全く記載されておらず、一方の搬送路上の基板に部品切れ等の事態が発生した場合には、他方の搬送路における生産が可能であっても、運転を停止せざるを得ず、スループットが低下する問題がある。
【0006】
本発明は、上記した従来の不具合を解消するためになされたもので、部品切れ等によって優先レーンでの生産が継続できなくなった場合は、他の生産可能なレーンに生産を切替え、その後、優先レーンでの生産が可能となった場合に、優先レーンに生産復帰する基板生産方法および電子部品実装装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するために、請求項1に係る発明の特徴は、基板を搬送する複数の基板搬送レーンを有し、該複数の基板搬送レーン上を搬送される基板に電子部品を順次実装する電子部品実装装置における基板生産方法であって、実装される電子部品が異なる異種の基板を、前記複数の基板搬送レーンの各々に投入し、前記複数の基板搬送レーンのうち先に基板が投入された基板搬送レーンを優先レーンに設定し、該優先レーン上の基板に電子部品を実装し、優先レーン上の基板の生産が継続できなくなった場合には、他の生産可能な基板搬送レーン上の基板に電子部品を実装するように生産するレーンを切替え、その後、前記優先レーン上の基板の生産が継続できるようになった段階で、前記優先レーン上の基板に電子部品を実装するように生産復帰させるようにした基板生産方法である。
【0008】
請求項2に係る発明の特徴は、実装される電子部品が異なる異種の基板を各々搬送する複数の基板搬送レーンと、部品供給装置から電子部品をピックアップして前記基板搬送レーン上の基板に装着する装着手段と、前記複数の基板搬送レーンのうち先に基板が投入された基板搬送レーンを優先レーンに設定する優先レーン設定手段と、該優先レーン上の基板に電子部品を装着するように前記装着手段を制御するとともに、優先レーンに設定された基板搬送レーン上の基板の生産が継続できなくなった場合は、他の生産可能な基板搬送レーン上の基板に電子部品を装着するように生産するレーンを切替えるレーン切替え手段と、前記優先レーン上の基板の生産が継続できるようになった場合には前記優先レーン上の基板に電子部品を装着するように生産復帰させる生産復帰手段とを備えた電子部品実装装置である。
【発明の効果】
【0009】
上記のように構成した請求項1、2に係る発明によれば、実装される電子部品が異なる異種の基板を、複数の基板搬送レーンの各々に投入するようになっているので、異種の基板は、複数の基板搬送レーンに投入した順序で、払い出しされるようになり、これによって、同一レーンより基板が連続して払い出されることによって発生するスループットのバランスのくずれを小さくできるようになり、バランスの取れたスループットを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態を示す電子部品実装装置の概略平面図である。
【図2】電子部品実装装置の制御系を示す概略図である。
【図3】2列の基板搬送レーンに同種の基板を投入した場合における基板生産方法を示す図である。
【図4】2列の基板搬送レーンに異種の基板を投入した場合における基板生産方法を示す図である。
【図5】2列の基板搬送レーンに異種の基板を投入した場合における別の基板生産方法を示す図である。
【図6】複数の生産モジュールを備えた生産ラインにおける基板生産方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、電子部品実装装置10の全体構成を概略的に示すもので、当該電子部品実装装置10は、主として、部品供給装置11、基板保持装置13、部品移載装置14、基板搬送装置15によって構成されている。なお、以下の説明においては、図1の左右方向をX軸、上下方向をY軸とする。
【0012】
基板搬送装置15は、基板16を図1の左右方向(X軸方向)に搬送するもので、基板搬送装置15は、X軸方向に沿って配設された2列の基板搬送レーン17、18と、これら基板搬送レーン17、18に沿って基板16を搬送する図略のベルトコンベアを備えている。2列の基板搬送レーン17、18は、基台20の中央部に配設された一対の実装ステージ17a、18aを備えている。
【0013】
各基板搬送レーン17、18に搬入された基板16は、図略のベルトコンベアによって実装ステージ17a、18aに搬入され、これら実装ステージ17a、18aに搬送された基板16は、基板保持装置13に設けられた図略のクランプ装置によって位置決めクランプされ、その状態で、基板16上に電子部品が装着される。基板16に電子部品が装着されると、基板16は図略のベルトコンベアによって実装ステージ17a、18aより払い出される。
【0014】
なお、実装ステージ17a、18aには、これら実装ステージ17a、18aに搬送された基板16を検出する基板検出センサS1、S2がそれぞれ設置されている。基板検出センサS1、S2の信号は、後述する制御装置に送出され、この制御装置によって、基板搬送レーン17、18上に実装ステージ17a、18aに搬送する基板16が存在し、実装ステージ17a、18aに基板16が存在せず空きの状態である場合に、基板搬送装置15に基板16の搬送が指令されるようになっている。
【0015】
部品移載装置14は、図1の上下方向(Y軸方向)に移動可能なY軸スライド21と、このY軸スライド21に図1の左右方向(X軸方向)に移動可能に支持されたX軸スライド22を備えている。Y軸スライド21は、図略のボールねじ機構を介してY軸サーボモータによりY軸方向に移動されるようになっており、また、X軸スライド22は、図略のボールねじ機構を介してX軸方向に移動されるようになっている。X軸スライド22には、電子部品を吸着保持する吸着ノズルを備えた装着ヘッド23が取付けられている。装着ヘッド23は、吸着ノズルに吸着保持した電子部品を基板16に装着するものである。
【0016】
また、基台20上には、装着ヘッド23に保持された電子部品の保持状態を撮像するCCDカメラ24が取付けられ、CCDカメラ24で撮像したデータに基づいて、電子部品の有無の確認および吸着保持の良否を判別できるようにしている。
【0017】
部品供給装置11は、複数のカセット式フィーダ25からなり、これらカセット式フィーダ25は、基板搬送レーン17、18の外側に、交換可能にX軸方向に並設されている。各カセット式フィーダ25のテープには、それぞれ電子部品が一定のピッチ間隔に収納保持され、テープをモータ等によりピッチ送りすることにより、電子部品を所定位置に供給するようになっている。
【0018】
図2において、30は、電子部品実装装置10を制御する制御装置を示し、当該制御装置30は、中央処理装置(CPU)と、各種の制御データおよび制御プログラム等を記憶するメモリと、入出力装置からなっており、制御装置30によって、基板16の搬送や、基板16への電子部品の実装が制御されるようになっている。制御装置30は、優先レーン設定手段31、生産レーン切替え手段32および生産レーン復帰手段33を備えている。
【0019】
優先レーン設定手段31は、複数の基板搬送レーン17、18のうち、実装ステージ17a、18aに先に基板16が投入された基板搬送レーンを優先レーンに設定するものであり、優先レーンに設定された基板搬送レーン上の基板16に対して電子部品の実装作業が実行される。
【0020】
生産レーン切替え手段32は、優先レーンに設定された基板搬送レーン上の基板16の実装作業が、部品切れ等の理由によって継続できなくなった場合に、もう一方の基板搬送レーン(非優先レーン)上に電子部品の実装作業が行える基板16が存在していることを条件に、電子部品の実装作業を非優先レーンに切替えるものである。これによって、優先レーンでの生産が継続できなくなった間においても、実装作業を中断することなく継続して行えるようにしている。
【0021】
生産レーン復帰手段33は、例えば、部品切れを生じたカセット式フィーダ25がセット(補給)され、優先レーンでの生産が可能となった場合に、非優先レーン上の基板16の実装作業を中断して、再び優先レーン上の基板16の実装作業に復帰させるものである。これによって、基板16を投入された順番に払い出すことができるようになる。
【0022】
制御装置30には、基板16を搬送する基板搬送装置15と、装着ヘッド23を取付けたX軸、Y軸スライド22、21を駆動するスライド駆動装置35と、カセット式フィーダ25の部品切れを検出する部品切れ検出装置36と、基板検出センサS1、S2がそれぞれ接続されている。なお、部品切れ検出装置36は、装着ヘッド23の吸着ノズルに電子部品が吸着されなくなったことを検出するCCDカメラ24によって構成することができる。あるいはまた、カセット式フィーダ25に収納保持された電子部品の残量を管理することによって、部品切れを検出することもできる。
【0023】
次に、図3を参照しながら、基板16の実装制御について説明する。なお、以下の説明においては、2列の基板搬送レーン17、18に同種の基板16を投入し、1つの装着ヘッド23によって各基板搬送レーン17、18上の基板16に電子部品を順次実装する実施例について述べる。
【0024】
2列の基板搬送レーン17、18に基板16がない状態で、図3(A)に示すように、2列の基板搬送レーン17、18の何れか一方、例えば、第1の基板搬送レーン17に、電子部品を実装すべき基板16(図3(A)2点鎖線)が搬入される。
【0025】
第1の基板搬送レーン17に基板16が搬入され、かつ実装ステージ17aにおいて基板の空き状態が基板検出センサS1の信号に基づいて検出されると、第1の基板搬送レーン17に搬入された基板16は、図3(A)の実線で示すように、図略のベルトコンベアによって実装ステージ17aに搬入され、図略のクランプ装置によって位置決めクランプされる。そして、制御装置30の優先レーン設定手段31によって、実装ステージ17aに先に基板16が搬送された基板搬送レーン17が、優先レーンと設定される。
【0026】
実装ステージ17aに基板16が搬送されると、XY軸スライド駆動装置35が作動され、装着ヘッド23の吸着ノズルによってカセット式フィーダ25より電子部品が吸着保持されて、図3(B)に示すように、優先レーンに設定された基板搬送レーン17の実装ステージ17a上の基板16に対して電子部品の実装作業が実行される。なお、2列の基板搬送レーン17、18の実装ステージ17a、18aに同時に基板16が搬入された場合には、予め定められた特定の基板搬送レーン(例えば、第1の基板搬送レーン17)が優先レーンと定められる。
【0027】
ところで、実装ステージ17aにおいて、電子部品を実装している最中に、図3(C)に示すように、あるカセット式フィーダ25に部品切れが発生すると、これが部品切れ検出装置36によって検出され、制御装置30に対して部品切れ信号が送出される。これにより、優先レーンでの生産継続が不可能な状態になったことが認識され、実装ステージ17aにおける基板16への電子部品の実装作業が中断される。なお、図3(C)において、部品切れを生じたカセット式フィーダ25、および実装作業を中断した基板16をそれぞれ網かけして示している。
【0028】
部品切れにより、優先レーンでの生産継続が不可能な状態になったことが検出されると、優先レーンではないもう一方の基板搬送レーン18(以下、これを非優先レーンという)の実装ステージ18aに、生産可能な基板16が存在するか否かを確認される。図3(C)に示すように、非優先レーンの実装ステージ18aに、生産可能な基板16が存在する場合には、制御装置30の生産レーン切替え手段32によって、生産レーンの切替えが指令され、装着ヘッド23によって電子部品を実装するレーンを基板搬送レーン18側に切替えて生産を開始する。
【0029】
すなわち、スライド駆動装置35を制御して、装着ヘッド23を、非優先レーンの実装ステージ18aとカセット式フィーダ25との間で作動させ、図3(D)に示すように、非優先レーンの実装ステージ18aに位置決めクランプされている基板16に対して電子部品を実装する。この場合、ある電子部品に部品切れが発生しているため、当該電子部品を除いた実装作業となり、非優先レーンで実装作業が完了されることはない。この間に、作業者によって部品切れを生じたカセット式フィーダ25の交換作業が行われる。
【0030】
非優先レーンにおける基板16への電子部品の実装作業中に、部品切れを生じたカセット式フィーダ25の交換が完了し、図3(E)に示すように、優先レーンにおける生産を継続できる条件が整うと、制御装置30の生産レーン復帰手段33によって、生産レーンの復帰が指令され、この指令に基づいて、非優先レーンにおける実装作業を中断し、再び優先レーン(基板搬送レーン17)における生産を再開する。
【0031】
このようにして、優先レーンにおける基板16への電子部品の所定の実装作業が完了すると、図3(F)に示すように、所定の実装作業が完了した基板16が図略のベルトコンベアによって、実装ステージ17aから搬出されるとともに、実装作業を中断していた非優先レーンにおける基板16への実装作業が再開される。その後、非優先レーンにおける基板16への電子部品の所定の実装作業が完了すると、当該基板16が図略のベルトコンベアによって、実装ステージ18aから搬出される。
【0032】
この結果、基板16は、基板搬送レーン17、18に投入した順序で、払い出しできるようになり、これによって、例えば、基板に不具合が発生した場合においても、簡易のトレーサビリティ管理、すなわち、製品履歴の追跡を容易に行えるようになる。
【0033】
しかも、上記した実施の形態によれば、優先レーン上の基板16に電子部品が供給できなくなった場合においても、生産を停止させることなく継続できるので、基板16を生産する稼働率を向上することができるとともに、基本的に基板搬送レーン17、18に投入された順序で基板16を払い出すことができるため、スループットのバランスのくずれを小さくでき、スループットの低下を抑えることができる。
【0034】
上記した実装制御においては、2列の基板搬送レーン17、18に同種の基板16を投入する例で説明したが、2列の基板搬送レーン17、18に異種の基板16、すなわち、実装すべき電子部品を異にする基板16を投入することもでき、この実施例を図4に基づいて説明する。なお、以下においては、第1の基板搬送レーン17に投入される基板を、16Aと表わし、第2の基板搬送レーン18に投入される基板を、16Bと表わすことにする。
【0035】
図4(A)〜(D)は、図3(A)〜(D)に基づいて述べたと同様に、優先レーン(第1の基板搬送レーン17)において、電子部品を実装している最中に、あるカセット式フィーダ25に部品切れが発生して、優先レーンでの生産継続が不可能な状態になった場合には、非優先レーン(第2の基板搬送レーン18)の実装ステージ18aに、生産可能な基板16が存在することを条件にして、実装作業が優先レーンから非優先レーンに切替えられる。
【0036】
ところが、優先レーンと非優先レーンを異種の基板16A、16Bが流れているため、部品切れを生じた電子部品の種類によっては、非優先レーンにおける基板16Bの実装作業には使用しない場合がある。その結果、非優先レーンにおける基板16Bの実装作業時間によっては、部品切れの電子部品が補給される前に、非優先レーンにおける基板16Bへの電子部品の実装作業が完了してしまうことが発生する。
【0037】
従って、この実施例のように、優先レーンにおける生産を再開できる条件が整う前に、非優先レーンにおける基板16Bへの電子部品の実装作業が完了した場合には、図4(E)に示すように、非優先レーン上の実装済基板16Bを、図略のベルトコンベアによって、実装ステージ18aから搬出するように制御する。
【0038】
そして、図4(F)に示すように、部品切れしたカセット式フィーダ25が補給され、優先レーンにおける生産を継続できる条件が整うと、制御装置30の生産レーン復帰手段33によって、生産レーンの復帰が指令され、この指令に基づいて、優先レーンにおける生産が再開される。そして、優先レーンにおける基板16Aの所定の実装作業が完了すると、当該基板16Aは実装ステージ17aから搬出される。
【0039】
このように、第1および第2の基板搬送レーン17、18に異種の基板16A、16Bを投入する場合においては、カセット式フィーダ25の交換に要する時間と、非優先レーン上の基板16Bの実装時間との関係で、稀に、基板搬送レーン17、18に投入した順序で基板16を払い出しすることができなくなる恐れが発生するが、基本的には、基板搬送レーン17、18に投入した順序で、基板16の払い出しが行われることになる。これにより、スループットのバランスのくずれを小さくでき、スループットの低下を抑えることができる。
【0040】
図5は、図4で述べた実施例の変形例を示すもので、異種の基板16A、16Bを生産する場合においても、非優先レーンの基板を先に払い出すことがないようにして、必ず基板搬送レーン17、18に投入した順序で、基板16の払い出しが行われるようにしたものである。
【0041】
すなわち、図4で述べた実施例と同様に、電子部品を実装すべき基板16が、第1および第2の基板搬送レーン17、18の何れか一方の実装ステージ(例えば、第1の基板搬送レーン17の実装ステージ17a)に搬入される(図5(A)参照)と、優先レーン設定手段31によって第1の基板搬送レーン17が優先レーンに設定される。
【0042】
実装ステージ17aに基板16Aが搬送されると、図5(B)に示すように、実装ステージ17a上の基板16Aに電子部品が実装される。そして、電子部品を実装している最中に、図5(C)に示すように、あるカセット式フィーダ25に部品切れが発生すると、部品切れ検出装置36の検出信号に基づいて、実装ステージ17aにおける基板16Aへの電子部品の実装作業が中断されるとともに、生産レーン切替え手段32によって、生産レーンの切替えが指令される。これによって、図5(D)に示すように、非優先レーンの実装ステージ18aに位置決めクランプされている基板16Bに対して電子部品が実装される。
【0043】
この場合、優先レーンと非優先レーンを異種の基板16A、16Bが流れているため、部品切れを生じたカセット式フィーダ25が補給される前に、非優先レーンにおける基板16Bへの電子部品の実装作業がすべて完了してしまうことが発生する。しかしながら、予め優先レーンにおける基板16Aを必ず先に払い出すように設定しておくことにより、非優先レーンにおいて電子部品の実装作業が完了した基板16Bは、払い出されることなく、その状態で待機する。このときの基板16Bを図5(F)に斜線入りで示している。
【0044】
しかる状態で、カセット式フィーダ25が補給され、優先レーンにおける生産を継続できる条件が整うと、図5(F)に示すように、再び優先レーンにおける生産を開始するように復帰される。このようにして、優先レーンにおける基板16Aへの電子部品の実装作業が完了すると、図5(G)に示すように、優先レーン上の基板16Aが図略のベルトコンベアによって、実装ステージ17aから搬出される。
【0045】
そして、優先レーン上の基板16Aの払い出しが完了した後に、非優先レーンの実装ステージ18aに基板16Bが存在している場合には、非優先レーンであった第2の基板搬送レーン18が、今度は優先レーンに切替えられる。このとき、優先レーン(第2の基板搬送レーン18)上に払い出すべき実装済の基板16Bが存在しているため、当該基板16Bが、図略のベルトコンベアによって、実装ステージ18aから搬出される。
【0046】
これによって、異種の基板16A、16Bは、2列の基板搬送レーン17、18に投入した順序で、払い出しされるようになり、これによって、いかなる状況下においても、同一レーンより基板が連続して払い出されることによって発生するスループットのバランスのくずれを防止できるようになり、バランスの取れた理想通りのスループットを実現できる。同時に、不具合発生時の製品履歴の追跡も行えるようになる。
【0047】
図6は、2列の基板搬送レーン17、18上に、それぞれ複数の実装ステージ41a、42a〜41d、42dを配設し、各実装ステージ41a、42a〜41d、42dにおいて、異種の基板16A、16Bを順次生産する例を示したものであり、これをもとに上記した実施の形態の生産方法を適用した場合の効果を詳しく説明する。
【0048】
このようなライン構成においては、各基板搬送レーン17、18における複数の実装ステージ41a、42a〜41d、42dにおける生産時間は必ずしも一致しない。ここで、基板を第1および第2の基板搬送レーン17、18に交互に投入して、順番に生産するものとすると、その生産ラインにおけるスループットは、第1および第2の基板搬送レーン17、18の生産時間を足したものとなる。そして、生産ラインのスループットは、生産ライン内で最も時間がかかる実装ステージによって決まるため、予め、2つのレーン17、18の生産時間を足したものがほぼ等しくなるように、各実装ステージにおける生産時間のバランスをとっている。このために、各実装ステージ41a、42a〜41d、42dにおける生産時間を、例えば、図6に示すように割り振ることにより、生産ラインのスループットは第3の実装ステージによって決定される35秒となる。
【0049】
ところで、例えば、第1の基板搬送レーン17の2番目の実装ステージ41bにおいて、部品切れ等により生産継続が不可能になった場合、図3から図5の例で述べたように、生産レーンが第2の基板搬送レーン18の側に切替えられ、2番目の実装ステージ42bによって引き続き生産が継続されるようになる。
【0050】
この場合、部品切れした部品が補給されても、第2の基板搬送レーン18の2番目の実装ステージ42bにおける基板の生産を、所定の実装作業が完了するまで継続すると、2番目の実装ステージから3番目の実装ステージに、連続して同じレーンから基板が流れることになる。このような現象は、特に、レーンを切替えた実装ステージにおける生産時間が短く、基板を短時間で後工程に払い出してしまう場合等により顕著に起こり得る。このために、3番目の実装ステージでの生産時間が変化(増加)することになり、ラインのスループットが一瞬悪化する結果を招く。すなわち、通常3番目の実装ステージにおいては、35秒で2つの基板が生産されていたものが、片側だけのレーン生産では、2つの基板を生産するのに50秒(25秒×2)を要することになる。
【0051】
しかしながら、本実施の形態で述べたように、優先レーン(第1の基板搬送レーン17)上の基板16Aに電子部品が供給できるようになった場合に、非優先レーン(第2の基板搬送レーン18)から優先レーン上の基板に電子部品を実装するように生産復帰させることにより、同じレーンの基板が連続して流れる可能性が減少できるようになる。これによって、1ライン当たりのスループット変化が最小限に抑えられ、ラインのスループット向上が期待できる。
【0052】
なお、図6に示した例は実施の形態の生産方法を適用した場合の効果を説明するための一例であり、2列の基板搬送レーン17、18において同種の基板を生産する場合など、図6において各実装ステージ41a、42a〜41d、42dにおける生産時間が同じである場合であっても、スループットのバランスのくずれを小さくでき、スループットの低下を抑えることができる。この点を説明すると、通常のバランスが取れた状態では、一方の基板搬送レーンでの生産中にもう一方の基板搬送レーンの基板の搬入出を行うことができるため、基板搬送による生産のロスタイムは見かけ上ゼロとなるが、基板の搬入出の順序が変わると、その上流や下流の実装ステージにおいては一方の基板搬送レーンでの生産中にもう一方の基板搬送レーンの基板の搬入出を行うことができなくなり、そのような場合には基板の搬送時間がロスタイムとなってしまう。しかし、上記した実施の形態のごとく基本的に基板搬送レーン17、18に投入された順序で基板16を払い出すことができれば、通常のバランスが取れた状態を大きく崩すことがないため基板搬送による生産のロスタイムが生じにくくなるのである。
【0053】
上記した実施の形態においては、2列の基板搬送レーン17、18を設けた電子部品実装装置10について述べたが、基板搬送レーンは必ずしも2列に限定されるものではなく、基板搬送レーンを3列以上設けたものにも本発明は適用できるものである。
【0054】
また、上記した実施の形態においては、先に基板が投入された基板搬送レーンを優先レーンに設定したが、先に投入された基板を優先基板に設定し、この優先基板を先に払い出すように制御し、優先基板を払い出した後に、他のレーンの基板を払い出すようにすることもできる。この場合も、表現こそ違え、優先レーンを設定することと実質的に同じであることは明らかであり、従って、優先レーンを設定することと同意語と解釈されるべきものであり、その範疇に包含されることは勿論である。
【0055】
また、上記した実施の形態においては、基板16に装着すべき電子部品の部品切れが生じたときに、生産するレーンを切替えるようにしたが、生産するレーンの切替えは、部品切れが生じた場合だけでなく、何らかの理由によって優先レーンでの生産の続行が困難になった場合、例えば、カセット式フィーダ25が故障した場合、画像処理にエラーが発生した場合、あるいは作為的に生産を一時的にストップする場合等の理由によって、基板の生産が継続できなくなった場合に適用できるものである。
【0056】
なお、作為的に生産を一時的にストップする場合とは、例えば、部品供給装置11に空スロットが存在する場合に、カセット式フィーダ25の部品がなくなりそうになることを、残量管理によって検出して事前に警告を発し、この警告に基づいて作業者により、予め予備のカセット式フィーダを空スロットにセットすることによって生ずる。すなわち、カセット式フィーダ25の部品がなくなった場合、電子部品の取り出しを予備のカセット式フィーダから行うことにより、生産レーンを切替えなくても、部品切れによる生産の中断をなくすることが可能となるが、正規の部品取り出し位置において実装作業の効率が最適化されているため、予備のカセット式フィーダ25を、電子部品が無くなって取外された正規の部品取り出し位置にセットし直すことがあるためである。このように、優先レーン上の基板の生産が停止する時間がわずかな場合には、スループットのバランスのくずれがほとんどなく効果が大きくなる。
【0057】
さらに、上記した実施の形態においては、2列の基板搬送レーン17、18の実装ステージにそれぞれ基板16を検出する基板検出センサS1、S2を設けた例について述べたが、これら基板検出センサを廃止し、基板搬送装置15を制御する制御装置30によって、各レーン上における基板16の位置を記憶させることも可能である。
【0058】
斯様に、上記した実施の形態で述べた具体的構成は、本発明の一例を示したものにすぎず、本発明はこのような具体的構成に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の態様を採り得るものである。
【符号の説明】
【0059】
10…電子部品実装装置、11…部品供給装置、13…基板保持装置、14…部品移載装置、15…基板搬送装置、16(16A、16B)…基板、17、18…基板搬送レーン、17a、18a…実装ステージ、21…Y軸スライド、22…X軸スライド、23…装着ヘッド、24…CCDカメラ、25…カセット式フィーダ、30…制御装置、31…優先レーン設定手段、32…生産レーン切替え手段、33…生産レーン復帰手段、35…スライド駆動装置、36…部品切れ検出装置、S1、S2…基板検出センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を搬送する複数の基板搬送レーンを有し、該複数の基板搬送レーン上を搬送される基板に電子部品を順次実装する電子部品実装装置における基板生産方法であって、
実装される電子部品が異なる異種の基板を、前記複数の基板搬送レーンの各々に投入し、
前記複数の基板搬送レーンのうち先に基板が投入された基板搬送レーンを優先レーンに設定し、
該優先レーン上の基板に電子部品を実装し、
優先レーン上の基板の生産が継続できなくなった場合には、他の生産可能な基板搬送レーン上の基板に電子部品を実装するように生産するレーンを切替え、
その後、前記優先レーン上の基板の生産が継続できるようになった段階で、前記優先レーン上の基板に電子部品を実装するように生産復帰させるようにした、
ことを特徴とする基板生産方法。
【請求項2】
実装される電子部品が異なる異種の基板を各々搬送する複数の基板搬送レーンと、
部品供給装置から電子部品をピックアップして前記基板搬送レーン上の基板に装着する装着手段と、
前記複数の基板搬送レーンのうち先に基板が投入された基板搬送レーンを優先レーンに設定する優先レーン設定手段と、
該優先レーン上の基板に電子部品を装着するように前記装着手段を制御するとともに、優先レーンに設定された基板搬送レーン上の基板の生産が継続できなくなった場合は、他の生産可能な基板搬送レーン上の基板に電子部品を装着するように生産するレーンを切替えるレーン切替え手段と、
前記優先レーン上の基板の生産が継続できるようになった場合には前記優先レーン上の基板に電子部品を装着するように生産復帰させる生産復帰手段と、
を備えたことを特徴とする電子部品実装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−114467(P2012−114467A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−53407(P2012−53407)
【出願日】平成24年3月9日(2012.3.9)
【分割の表示】特願2007−34687(P2007−34687)の分割
【原出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(000237271)富士機械製造株式会社 (775)
【Fターム(参考)】