基準線発生装置及び芯出し装置
【課題】ビームスポット中心の検出が容易に行え、設置作業時間を従来に比べて短縮可能な基準線発生装置、及び該基準線発生装置を備えた芯出し装置を提供する。
【解決手段】コリメートしたラゲールガウスビーム12を発生させるラゲールガウスビーム生成部101と、上記ラゲールガウスビームを所定方向へ照射するために上位機ラゲールガウスビーム生成部を吊下げる吊下げ部20と、ラゲールガウスビームの照射方向を微調整する方向調整部30と、ラゲールガウスビーム生成部の揺動を抑えるダンパ部40を備えた。
【解決手段】コリメートしたラゲールガウスビーム12を発生させるラゲールガウスビーム生成部101と、上記ラゲールガウスビームを所定方向へ照射するために上位機ラゲールガウスビーム生成部を吊下げる吊下げ部20と、ラゲールガウスビームの照射方向を微調整する方向調整部30と、ラゲールガウスビーム生成部の揺動を抑えるダンパ部40を備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば鉛直や水平方向等において芯出しを行う場合等に使用可能な基準線発生装置、及び該基準線発生装置を備えた芯出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばエレベータの設置作業では、垂直方向において中心軸を定める、いわゆる芯出し作業が必要である。このような芯出しを行う装置として、従来、通常のレーザ光を使用した基準線発生装置が知られており、特許文献1には上記装置を用いたエレベータ向けの芯出し装置が記載されている。
【0003】
この芯出し装置では、レーザ光を発するビーム発生部と、該ビーム発生部から至近距離、例えばガイドレール1本分長程度の距離、に設けられた受光部との組からなる可動式装置を備える。そして、既に芯出し済みのガイドレールに上記ビーム発生部を配置し、新たにガイドレールを1つ設置する毎に上記可動式装置を移動させて、設置するガイドレールの芯出しを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−115851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のレーザ光を使った基準線発生装置では、通常のレーザビームを発生させ、このレーザビームにおけるビームスポットの中心を検出して基準線として用いている。しかしながら通常のレーザビームは、出射距離に応じてビームスポット径が大きくなるという特性があるため、照射距離が長くなるとビームスポット径が非常に拡大する。そのため、ビームスポットの中心位置の確認が目視では不可能になり、受光素子を用いた場合でも、解像度不足となり困難であった。
【0006】
よって、従来の芯出し装置は、中層以上の建築物に設置された昇降路での鉛直基準線や、大規模プラント建設時の水平基準線を設定するために用いることが出来なかった。
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、ビームスポット中心の検出が容易に行え、設置作業時間を従来に比べて短縮可能な基準線発生装置、及び該基準線発生装置を備えた芯出し装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は以下のように構成する。
即ち、本発明の一態様における基準線発生装置は、ラゲールガウスビームを生成するラゲールガウスビーム生成部と、生成された上記ラゲールガウスビームの照射方向を設定する照射方向設定部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様における基準線発生装置によれば、ラゲールガウスビーム生成部を備えたことから、レンズで絞っただけの通常のレーザビームではなく、ラゲールガウスビームを基準線として使用することができる。即ち、ラゲールガウスビームは、ビームの伝播軸に直交するビーム断面において、光強度が0となる中空部分を有し、長距離にて照射しても上記中空部分の直径を小さく維持できるという特徴がある。よって、ビームスポット中心を従来に比べて容易に検出することが可能となる。その結果、例えば、中層以上の建築物において鉛直基準線を設定する場合や、大規模プラントなどにおいて水平基準線を設定する場合等において、上記ラゲールガウスビーム、つまりラゲールガウスビーム生成部を用いることが可能である。
【0009】
また、基準線として使用するためには、ラゲールガウスビームの照射方向を高精度で決定することが必要となる。本発明の一態様における基準線発生装置によれば、さらに照射方向設定部を備えたことで、上記ラゲールガウスビームの照射方向を設定することができる。よって、精度良く位置決めを行うための基準線として上記ラゲールガウスビームを使用すること、つまり当該基準線発生装置を使用することが可能となる。
【0010】
このように本発明の一態様における基準線発生装置によれば、ビームスポット中心の検出が容易に行え、基準線を設定するための装置設置に要する時間を従来に比べて短縮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1による基準線発生装置の構成を示す図である。
【図2】図1に示す基準線発生装置から出射されるラゲールガウスビームの断面図である。
【図3】図1に示す基準線発生装置の変形例を示す図である。
【図4】図1に示す基準線発生装置の別の変形例を示す図である。
【図5】図1に示す基準線発生装置の他の変形例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態2による基準線発生装置に備わるラゲールガウスビーム生成部の構成を示す図である。
【図7】図6に示す基準線発生装置が出射するラゲールガウスビームの断面図である。
【図8】本発明の実施の形態3による芯出し装置の構成を示す図である。
【図9】図8に示す芯出し装置に備わる基準点検出部材を示す平面図である。
【図10A】図1に示す基準線発生装置に備わる吊下げ部の構成の一例を示す斜視図である。
【図10B】図1に示す基準線発生装置に備わる吊下げ部の構成の他の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態である基準線発生装置、及び該基準線発生装置を備えた芯出し装置について、図を参照しながら以下に説明する。尚、各図において、同一又は同様の構成部分については同じ符号を付している。
【0013】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1による基準線発生装置100を示している。基準線発生装置100は、基本的な構成部分として、ラゲールガウスビーム生成部101と、照射方向設定部102とを備え、例えば芯出し用の基準線としてのラゲールガウスビーム12を発生して所望方向へ照射する装置である。尚、本実施形態の基準線発生装置100は、鉛直方向に沿って基準線を設定可能なように各構成部分を形成、配置している。但し、基準線の設定方向は、後述する他の実施形態にて説明するように鉛直方向に限定するものではない。
【0014】
まず、ラゲールガウスビーム生成部101について説明する。
ラゲールガウスビーム生成部101は、基本的構成部分として、レーザビーム発生部10と、ホログラム11と、ケース13とを備え、本実施形態ではさらにレーザ整形用レンズ系14を有する。レーザビーム発生部10、ホログラム11、及びレーザ整形用レンズ系14は、レーザビーム発生部10から出射されるレーザ光の進行方向に沿って、本実施形態ではレーザビーム発生部10、レーザ整形用レンズ系14、ホログラム11の順で、レーザ光が通過可能なようにケース13内に配置され固定されている。尚、図1の配置位置に代えて、レーザ整形用レンズ系14は、ホログラム11の後に配置してもよい。
【0015】
レーザビーム発生部10は、レーザダイオード、気体レーザなどのレーザビームを放射可能なデバイスを備え、ケース13の一端部分13aに配置される。また、レーザビーム発生部10は、リモートコントロールにて電源のオンオフが可能なように構成してもよい。
【0016】
レーザ整形用レンズ系14は、本実施形態では、レーザビーム発生部10から出射されたレーザビームをコリメートもしくは適当な波面に整形するためのものである。本実施形態では、コリメートもしくは適当な波面に整形されたレーザ光がホログラム11に入射される。
【0017】
ホログラム11は、本実施形態では、レーザビーム発生部10が出射したレーザ光からラゲールガウス(LG)ビームを作成するための一手段として用いられる。ホログラム11は、2次元パターンを有し、上記レーザビームが当該ホログラム11を通過することでラゲールガウスビーム12が生成される。尚、ラゲールガウスビームは、波面が螺旋階段のような形状をなすビーム、換言すると、回転対称なエネルギー密度の分布を有するドーナツ状のビームである。また、ラゲールガウスビームについては、「ラゲール・ガウスビームの発生と検出」 宮本洋子、和田篤、日本光学会、光学、P618(2)を参照することができる。
【0018】
図2にラゲールガウスビーム12の断面を示す。図2に示すように、ラゲールガウスビーム12は、光強度が0となる点を中心とした中空部分12aを有する。ホログラム11は、中空部分12aの直径や個数、位置などが最適になるように設計されたものが用いられる。
【0019】
尚、ラゲールガウスビーム12の生成は、上述のホログラム11に限るものではなく、公知の他の手段、例えば螺旋状位相プレート、シリンドリカルレンズを組み合わせた構成、等を用いることができる。
【0020】
上述した構成により、ケース13の他端部13bから、つまりラゲールガウスビーム生成部101からラゲールガウスビーム12が出射される。
【0021】
次に、照射方向設定部102について説明する。
照射方向設定部102は、基本的構成部分として吊下げ部20を有し、さらに方向調整部30を有することができる。また、さらにダンパ部40を有してもよい。本実施形態では、照射方向設定部102として吊下げ部20、方向調整部30、及びダンパ部40を備えている。
このような構成を有する照射方向設定部102は、ラゲールガウスビーム生成部101にて生成されたラゲールガウスビーム12の照射方向12bを設定する作用を行う。
【0022】
吊下げ部20は、当該基準線発生装置100の、空洞部51を有する筐体50から空洞部51内にラゲールガウスビーム生成部101を吊り下げて揺動自在に支持する。本実施形態では、ラゲールガウスビーム生成部101から出射されるラゲールガウスビーム12の照射方向12bが鉛直方向又は略鉛直方向に沿うように、吊下げ部20はラゲールガウスビーム生成部101を吊り下げる。このように吊り下げられることで、ラゲールガウスビーム生成部101は、常に重力を受けることから、ラゲールガウスビーム12の照射方向12bは、一意に決定される。
尚、図1では、上記鉛直方向をZ軸に、該Z軸に直交しかつ互いも直交する2軸をX軸及びY軸にそれぞれ設定している。
【0023】
また、基準線発生装置100の筐体50には、空洞部51内に配置されたラゲールガウスビーム生成部101から出射されるラゲールガウスビーム12が通過し外部へ導くための出射窓52が設けられている。ビーム出射窓52は、ガラスや樹脂などの透明なウィンドウである。また、落下物や火花などの衝撃を避けるために、出射窓52が存在する筐体50の上面53は、テーパー状に形成されていてもよい。
【0024】
吊下げ部20は、本実施形態では、紐や、剛性を有するテープ等の部材にてなり、空洞部51の天井部分51aと、ラゲールガウスビーム生成部101の上記他端部13bとの間に設けられ、図10Aに示すような1軸、あるいは図10Bに示すようにX軸吊下げ部20A及びY軸吊下げ部20Bの2軸で構成される。また、2軸のジンバル機構を用いてもよい。
尚、吊下げ部20は、ラゲールガウスビーム生成部101の他端部13bから出射されるラゲールガウスビーム12を遮るものではない。
【0025】
このように、吊下げ部20にてラゲールガウスビーム生成部101を吊り下げる構成を採ることで、ラゲールガウスビーム生成部101が揺れた場合でも元の方向に復元させることができる。また、ラゲールガウスビーム生成部101と吊下げ部20との位置関係によって、ビームの照射方向12bを決定できるため、鉛直方向だけでなく、任意の方向へビームを照射することができる。
【0026】
方向調整部30は、ラゲールガウスビーム生成部101における重力方向端部に取り付けられ、吊下げ部20にて吊り下げられているラゲールガウスビーム生成部101の傾きを調整することでラゲールガウスビーム12の照射方向12bを微調整する部分である。
上述のように、吊下げ部20により、ラゲールガウスビーム生成部101から出射されるラゲールガウスビーム12の照射方向12bは一意に決定されるが、ラゲールガウスビーム生成部101と吊下げ部20との取り付け公差、ラゲールガウスビーム生成部101におけるレーザビーム発生部10の取り付け公差、及び、その他の部品公差などに起因して照射方向12bが、本実施形態では鉛直上向きから外れる場合がある。そこで、方向調整部30を設けて、ラゲールガウスビーム生成部101の重心位置を移動可能とし、ラゲールガウスビーム12の照射方向12bが鉛直上向きに一致するように調整するものである。
【0027】
本実施形態では、方向調整部30は、ラゲールガウスビーム生成部101における重力方向端部に相当する、上記一端部分13aに位置するケース下面に設置され、X,Y方向の2軸に移動可能なように設けられた部材(以下、錘と記す)を備える。即ち、方向調整部30は、ラゲールガウスビーム生成部101の重心位置を移動させる錘を有し、該錘の移動により照射方向12bを微調整する。よって、方向調整部30の上記錘の重量及びその移動量は、ラゲールガウスビーム生成部101の重心の移動量、換言すると照射方向12bの調整量によって決定される。
【0028】
方向調整部30による調整は、必ずしも基準線発生装置100を使用する場所で行う必要は無い。他の場所で予めラゲールガウスビーム12の照射方向12bを調整して、方向調整部30の錘位置を固定すればよい。また、基準線発生装置100を使用する度に行う必要もなく、方向調整部30の錘位置を強固に固定すれば、連続して使用することが可能である。例えば基準線発生装置100に強い衝撃が加わった場合や、調整後から長時間が経過した場合には、再度、照射方向12bを確認し、方向調整部30を調整し直せばよい。
【0029】
このように、方向調整部30を設けた場合には、ラゲールガウスビーム12の照射方向12bを現地到着前に鉛直方向に高精度に合わせることができ、繰り返し使用できるため、基準線発生装置100の設置作業工数が減り、設置時間を大幅に短縮することができる。
【0030】
また、吊下げ部20及び方向調整部30を設けることで、基準線発生装置100から照射されるラゲールガウスビーム12の照射方向12bを高精度にて設定できる。よって、長い昇降路を持つ建築物におけるエレベータ据付や、大規模プラント建設時などの長距離に渡って基準線が必要とされる工事や建造物に対して、長距離照射してもビームが広がらないラゲールガウスビーム12を、例えば芯出し用の基準線として使用することができる。
【0031】
ダンパ部40は、吊下げ部20にて揺動自在に支持されているラゲールガウスビーム生成部101の揺動を抑制する機構であり、上記空洞部51内で、方向調整部30に対向した位置にて筐体50に設置される。上述のように、ラゲールガウスビーム生成部101は、吊下げ部20にて揺動自在に支持されていることから、当該基準線発生装置100の設置時等にてラゲールガウスビーム生成部101が揺動した場合や、作業中に例えば工具等が基準線発生装置100に接触してしまいラゲールガウスビーム生成部101が揺動した場合等では、ラゲールガウスビーム生成部101が静止するまでに長い時間を要してしまう。そこでダンパ部40を設けることで、ラゲールガウスビーム生成部101の揺動が静止するまでに要する時間の短縮を図る。
【0032】
ダンパ部40は、本実施形態では、磁界遮断板41と、磁石42とを備えて構成される。磁界遮蔽板41は、ラゲールガウスビーム生成部101のケース13、又はケース13に設置された方向調整部30から延在し、磁石42で発生した磁界を遮るように設置される。例えば、コ字型の磁石42を用いて、その上側をS極、下側をN極とし、その間の空間を磁界遮蔽板41が横切るように配置する。図1に示すように、本実施形態では、磁石42は、X,Y軸方向に計4箇所に配置している。
【0033】
ダンパ部40の動作について説明する。ラゲールガウスビーム生成部101の揺動に伴い磁界遮蔽板41も揺れる。これにより、磁石42にて発生した磁界が急激に変動して磁界遮蔽板41に渦電流が流れる。これによって磁界の変動を打ち消す方向、つまり磁界遮蔽板41の動きを止めるように力が働く。このようにして、短時間で磁界遮蔽板41、つまりラゲールガウスビーム生成部101が静止する。
【0034】
ダンパ部40を設けることで、ラゲールガウスビーム生成部101が鉛直方向に静止するまでの時間が短縮されるため、方向調整部30との相乗により一層、基準線発生装置100の設置時間を短縮することが可能となる。
磁石42と磁界遮断板41との距離や、磁石42の磁界強度は、ラゲールガウスビーム生成部101を静止させるまでの時間によって決定する。
【0035】
以上説明した構成により基準線発生装置を形成することができるが、本実施形態では、基準線発生装置100は、さらに粗調整部60を備えている。
粗調整部60は、当該基準線発生装置100の設置面65に対して当該基準線発生装置100の、少なくとも傾斜を可変とする機構であり、基準線発生装置100の筐体50と、設置面65との間に設置される。即ち、方向調整部30により照射方向12bの微調整を行ったとしても、基準線発生装置100の設置面65が傾斜しており、補正仕切れない場合がある。例えば設置面65の傾斜が大き過ぎる場合、筐体50も大きく傾斜し、吊り下げられているラゲールガウスビーム生成部101が筐体50の空洞部51の内壁に当接したり、ダンパ部40を構成する磁界遮断部41が磁石42に当接したりして、ラゲールガウスビーム12の照射方向12bを鉛直上向きにできない、もしくは鉛直方向に対する照射方向12bの角度精度が低下するという事態が発生する。このような事態を防止するために、粗調整部60を設けるのが好ましい。
【0036】
このような粗調整部60は、支柱61と、設置面65に接する底板62とを有する。支柱61は、底板62と、基準線発生装置100の筐体50との間に、少なくとも1本設置され、設置面65に対して基準線発生装置100の高さ又は傾斜を可変とする。支柱61が1本である場合には、傾きの調整が可能であり、2本以上、設けた場合には、傾きに加えて高さを調整が可能である。このように粗調整部60は、照射方向12bが所望の方向、本実施形態では鉛直方向に沿うように基準線発生装置100の姿勢を補正する。
又、基準線発生装置100の筐体50の上面53が平面にて形成される場合には、基準線発生装置100の垂直度を確認するため、上面53には水準器63などを設けることもできる。
【0037】
以上のように構成される基準線発生装置100におけるラゲールガウスビーム12の発生動作等について説明する。
レーザビーム発生部10から発生したレーザビームは、レーザ整形用レンズ系14によりコリメートもしくは適当な波面に整形された後、ホログラム11を透過し、ラゲールガウスビーム12となる。図2に示され、また、既に説明したように、ラゲールガウスビーム12は、光強度が0となる点を中心とした中空部分12aを有する。レーザ整形用レンズ系14によってレーザビームをコリメートもしくは適当な波面に整形すると、中空部分12aの径は、非常に小さくすることができる。さらにコリメートもしくは適当な波面に整形することで、長距離照射した場合でも、中空部分12aを小さいまま維持することができる。この場合、例えば20m先において、中空部分12aの径を1mm程度にすることも可能である。
【0038】
このようなラゲールガウスビーム12は、一若しくは複数の中空部分12aを有し、その径を上述のように非常に小さく形成することで、ラゲールガウスビーム12の断面の中心、即ち基準点は、目視の場合でも容易に確認することが可能である。この基準点をビームの照射方向に沿って連続させることで基準線となる。
【0039】
このように、ラゲールガウスビーム12を用いることで、その照射距離に関わらず、ビームの照射方向12bに垂直な平面内で、基準点は同じ位置を通ることになる。この基準点位置を検出することで、ラゲールガウスビーム12、さらには、直径1mm程度の中空部分径に形成したラゲールガウスビーム12を用いることで、高精度な位置決め用の基準線として使用することができる。
【0040】
以上説明したように基準線発生装置100によれば、高い精度にて鉛直上向きにラゲールガウスビーム12を照射することができる。
また、レーザ整形用レンズ系14によってレーザビームをコリメートもしくは適当な波面に整形したことで、基準線として使用した場合の位置決め精度を向上させることができる。尚、上述したように、ホログラム11の後にレーザ整形用レンズ系14を配置することもでき、この場合には、レーザ整形用レンズ系14は、ラゲールガウスビーム12をコリメートする。
【0041】
また、上述のように本実施形態の基準線発生装置100では、ラゲールガウスビーム生成部101の揺動を静止させる手段としてダンパ部40を設けたが、ダンパ部40に代えて図3に示す基準線発生装置100Aのように、筐体50内の空洞部51内に、ラゲールガウスビーム生成部101の一部もしくは全体が沈むように液体緩衝材44を満たしてもよい。液体緩衝材44は、水、シリコンオイル等が使用可能であり、ラゲールガウスビーム生成部101の揺動を抑え、静止させるのに適した粘性を有する液体が好ましい。
【0042】
また、上述した実施の形態1における基準線発生装置100は、鉛直方向に沿って基準線を設定するように、つまりラゲールガウスビーム生成部101から照射されるラゲールガウスビーム12の照射方向12bが鉛直方向上向きとなるように、各構成部分を形成、配置した。この基準線発生装置100の変形例として、図4に示す基準線発生装置110、図5に示す基準線発生装置120を構成することもできる。尚、図4及び図5では、粗調整部60の図示を省略している。
【0043】
即ち、基準線発生装置110では、水平方向に沿って基準線を設定可能なように、吊下げ部20は、ラゲールガウスビーム12の照射方向12bが水平方向又はほぼ水平方向に沿うように、ラゲールガウスビーム生成部101を吊り下げている。尚、54は基準線発生装置110の筐体を、55は筐体54内の空洞部を示している。
【0044】
基準線発生装置120では、鉛直方向に対して任意の傾斜角にて基準線を設定可能なように、吊下げ部20は、ラゲールガウスビーム12の照射方向12bが上記傾斜角に沿うように、ラゲールガウスビーム生成部101を吊り下げている。尚、15はラゲールガウスビーム生成部101のケースを、56は基準線発生装置120の筐体を、57は筐体56内の空洞部をそれぞれ示している。
【0045】
基準線発生装置110、120におけるその他の構成は、基準線発生装置100に備わる構成と同じである。また、上述の実施形態1にて説明した変形例等は、基準線発生装置110、120にも適用可能である。
【0046】
基準線発生装置110、120に示すように、ラゲールガウスビーム生成部101の外形を変更して、ラゲールガウスビーム生成部101のケースに対する吊下げ部20の位置関係を変更することで、ラゲールガウスビーム12の照射方向12bを図1に示す鉛直方向から、図4、図5に示すような水平方向、傾斜方向等の任意の角度にも設定することができる。
また、このような基準線発生装置110、120においても、基準線発生装置100が奏する効果を得ることができる。
【0047】
実施の形態2.
実施の形態1における基準線発生装置100は、上述のように、ラゲールガウスビーム12の断面において光強度が0の部分つまり上記基準点を目視でも検出可能な構成を採っている。しかしながら、基準線発生装置100の使用環境によっては、基準点が視認しづらい可能性もある。本実施形態2の基準線発生装置は、この点を改善したものであり、上述のラゲールガウスビーム生成部101に改良を加えている。
【0048】
図6は、本実施の形態2の基準線発生装置130に備わるラゲールガウスビーム生成部105を示している。ラゲールガウスビーム生成部105は、実施の形態1にて説明したラゲールガウスビーム生成部101と、目視用のレーザビームを発生する目視用レーザビーム発生部104とを備える。尚、本実施の形態2の基準線発生装置130において、ラゲールガウスビーム生成部105以外の構成部分は、上述の基準線発生装置100、110、120における構成部分と同一又は同様である。よって、ここでは、ラゲールガウスビーム生成部105についてのみ説明を行う。
【0049】
ラゲールガウスビーム生成部105におけるラゲールガウスビーム生成部101は、上述したものと同じであり、説明は省略する。目視用レーザビーム発生部104は、ラゲールガウスビーム生成部101が出射するラゲールガウスビーム12において発光しない中空部分12aに対して、可視光波長を有する目視用レーザビーム82を重畳させる構成部分である。
【0050】
具体的に説明すると、目視用レーザビーム発生部104は、レーザ発生部80と、ハーフミラー81とを備える。レーザ発生部80は、レーザダイオード、気体レーザなどの、レーザビームを出射するデバイスから構成されている。レーザ発生部80が発するレーザ光は、可視領域で、かつラゲールガウスビーム生成部101のレーザビーム発生部10が発するレーザ光とは異なる波長を有し、さらにレーザビーム発生部10が発するレーザ光とは目視で相違がわかる程度の波長差を有する光であるのが好ましい。
【0051】
ハーフミラー81は、レーザ発生部80から出射された目視用レーザビーム82の光軸を、ラゲールガウスビーム生成部101におけるラゲールガウスビーム12の光軸と一致させる角度に設置される。ハーフミラー81をこのように配置することで、図7に示すように、ラゲールガウスビーム12の中空部分12a内に目視用レーザビーム82を配置することができる。
【0052】
このような構成により、本実施形態2の基準線発生装置130は、ラゲールガウスビーム12と、目視用レーザビーム82とを重畳して形成してなる図7のラゲールガウスビーム12Aを出射する。
【0053】
ハーフミラー81の透過率は、50%である必要は無く、レーザビーム発生部10の光出力と、レーザ発生部80の光出力とに応じて変更しても良い。また、長距離での照射においても光強度を維持可能なように、レーザ発生部80にホログラムやシリンドリカルレンズの組合せを設けて、ラゲールガウスビームを形成してもよい。この場合、目視用レーザビーム発生部104が出射するラゲールガウスビームと、ラゲールガウスビーム生成部101が出射するラゲールガウスビーム12の中空部分12aとが重ならないように構成する。
【0054】
以上のように構成されるラゲールガウスビーム生成部105を備えることで、本実施形態2の基準線発生装置130によれば、実施の形態1の基準線発生装置100を使用した場合では周辺の明るさによってビーム断面つまり基準点が視認しづらい環境においても、本実施形態2におけるラゲールガウスビーム12Aでは、中空部分がその周縁部分とは異なる色で示されることから、基準点を視認し易いという効果が得られる。
尚、ラゲールガウスビーム生成部105は、基準線発生装置100のみならず、上述した他の基準線発生装置100A、110、120に対しても適用可能であり、基準線発生装置130にて得られる上述の効果を得ることができる。
【0055】
実施の形態3.
次に、上述した基準線発生装置100、100A、110、120、130のいずれかを備えて構成される芯出し装置について説明する。
図8に示すように、本実施形態3の芯出し装置200は、基準線発生装置100、100A、110、120、130のいずれかと、基準点検出部材70又は受光部210とを備える。尚、受光部210を備える場合には、さらに受光部210に接続される基準点決定部220を有する。図8では、受光部210及び基準点決定部220を備えた場合を図示している。
【0056】
基準線発生装置100、100A、110、120、130については上述した内容であり、ここでの説明は省略する。
基準点検出部材70は、基準線発生装置100、100A、110、120、130のいずれかから照射されるラゲールガウスビーム12あるいはラゲールガウスビーム12Aから、目視にて基準点を得るための部材である。出射されたラゲールガウスビーム12あるいはラゲールガウスビーム12Aから基準点を得るためには、作業者は、通常、紙、樹脂、定規などの平面である物体をラゲールガウスビーム12、12Aに当て、中空部分12aあるいは目視用レーザビーム82を元に基準点を割り出す。この場合、上記紙等に代えて、基準点検出部材70を使用することで、より容易に基準点を割り出すことが可能となる。
【0057】
即ち、基準点検出部材70は、図9に示すように、短冊状の薄片71であり、半透明透過窓72を有する。この半透明透過窓72にラゲールガウスビーム12、12Aを投影し、そのスポットの中央部分を割り出す。投射方向と反対側から透かしてラゲールガウスビーム12、12Aを読み取ることで、ビーム断面に対して基準点検出部材70を傾斜させる必要がない。一方、投射方向と同じ側から読み取ってもよい。また、基準点の検出を容易にするため、半透明透過窓72に例えば十字形の目印72aを設けることもできる。
このような基準点検出部材70を用いることで、電気を要する機器や特殊な装置を使用することなく、目視で基準点を検出することができ、作業が容易になるという利点がある。
【0058】
一方、受光部210は、ラゲールガウスビーム12、12Aを電気的に受光する部分であり、CMOS、CCDなどの固体撮像素子、フォトダイオード、光電子増倍管などの光検出素子を備える。基準点決定部220は、受光部210からラゲールガウスビーム12、12Aのビーム断面における光強度分布を取得し、信号処理又は画像処理にて、ラゲールガウスビーム12あるいは12Aの断面の中心を、又は、中空部分12aの中央若しくは複数の中空部分12aから特徴付けられる基準点を、電気的に検出する。
【0059】
このように受光部210及び基準点決定部220を備えた構成では、ラゲールガウスビーム12、12Aのビーム断面の基準点位置を、信号処理、画像処理で自動的に求めることが可能になるので、目視の場合に比べ、高い精度にて位置決めが可能になるという利点がある。
【0060】
次に、以上のように構成された本実施形態の芯出し装置200を用いた芯出し方法について、簡単に説明する。
基準線発生装置100、100A、110、120、130については、既に説明したように、方向調整部30を用いてラゲールガウスビーム12あるいは12Aの照射方向12bを、鉛直方向等、所望の方向に一致させ、また、必要であれば、粗調整部60により設置面65に対して基準線発生装置の位置決めを行う。
【0061】
このように基準線発生装置100等を設置した後、基準点検出部材70、又は受光部210及び基準点決定部220を用いて、ラゲールガウスビーム12あるいは12Aから基準点を求める。芯出しを行いたい被検出部材がある場合には、この被検出部材に基準点検出部材70又は受光部210を取り付けることで上記被検出部材の芯出しを行う。
【符号の説明】
【0062】
11 ホログラム、14 ビーム整形用レンズ系、12 ラゲールガウスビーム、
20 吊下げ部、30 方向調整部、40 ダンパ部、44 液体緩衝材、
50 筐体、60 粗調整部、70 基準点検出部材、
100 基準線発生装置、101 ラゲールガウスビーム生成部、
102 照射方向設定部、104 目視用レーザビーム発生部、
105 ラゲールガウスビーム生成部、110、120、130 基準線発生装置、
200 芯出し装置、210 受光部、220 基準点決定部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば鉛直や水平方向等において芯出しを行う場合等に使用可能な基準線発生装置、及び該基準線発生装置を備えた芯出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばエレベータの設置作業では、垂直方向において中心軸を定める、いわゆる芯出し作業が必要である。このような芯出しを行う装置として、従来、通常のレーザ光を使用した基準線発生装置が知られており、特許文献1には上記装置を用いたエレベータ向けの芯出し装置が記載されている。
【0003】
この芯出し装置では、レーザ光を発するビーム発生部と、該ビーム発生部から至近距離、例えばガイドレール1本分長程度の距離、に設けられた受光部との組からなる可動式装置を備える。そして、既に芯出し済みのガイドレールに上記ビーム発生部を配置し、新たにガイドレールを1つ設置する毎に上記可動式装置を移動させて、設置するガイドレールの芯出しを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−115851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のレーザ光を使った基準線発生装置では、通常のレーザビームを発生させ、このレーザビームにおけるビームスポットの中心を検出して基準線として用いている。しかしながら通常のレーザビームは、出射距離に応じてビームスポット径が大きくなるという特性があるため、照射距離が長くなるとビームスポット径が非常に拡大する。そのため、ビームスポットの中心位置の確認が目視では不可能になり、受光素子を用いた場合でも、解像度不足となり困難であった。
【0006】
よって、従来の芯出し装置は、中層以上の建築物に設置された昇降路での鉛直基準線や、大規模プラント建設時の水平基準線を設定するために用いることが出来なかった。
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、ビームスポット中心の検出が容易に行え、設置作業時間を従来に比べて短縮可能な基準線発生装置、及び該基準線発生装置を備えた芯出し装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は以下のように構成する。
即ち、本発明の一態様における基準線発生装置は、ラゲールガウスビームを生成するラゲールガウスビーム生成部と、生成された上記ラゲールガウスビームの照射方向を設定する照射方向設定部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様における基準線発生装置によれば、ラゲールガウスビーム生成部を備えたことから、レンズで絞っただけの通常のレーザビームではなく、ラゲールガウスビームを基準線として使用することができる。即ち、ラゲールガウスビームは、ビームの伝播軸に直交するビーム断面において、光強度が0となる中空部分を有し、長距離にて照射しても上記中空部分の直径を小さく維持できるという特徴がある。よって、ビームスポット中心を従来に比べて容易に検出することが可能となる。その結果、例えば、中層以上の建築物において鉛直基準線を設定する場合や、大規模プラントなどにおいて水平基準線を設定する場合等において、上記ラゲールガウスビーム、つまりラゲールガウスビーム生成部を用いることが可能である。
【0009】
また、基準線として使用するためには、ラゲールガウスビームの照射方向を高精度で決定することが必要となる。本発明の一態様における基準線発生装置によれば、さらに照射方向設定部を備えたことで、上記ラゲールガウスビームの照射方向を設定することができる。よって、精度良く位置決めを行うための基準線として上記ラゲールガウスビームを使用すること、つまり当該基準線発生装置を使用することが可能となる。
【0010】
このように本発明の一態様における基準線発生装置によれば、ビームスポット中心の検出が容易に行え、基準線を設定するための装置設置に要する時間を従来に比べて短縮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1による基準線発生装置の構成を示す図である。
【図2】図1に示す基準線発生装置から出射されるラゲールガウスビームの断面図である。
【図3】図1に示す基準線発生装置の変形例を示す図である。
【図4】図1に示す基準線発生装置の別の変形例を示す図である。
【図5】図1に示す基準線発生装置の他の変形例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態2による基準線発生装置に備わるラゲールガウスビーム生成部の構成を示す図である。
【図7】図6に示す基準線発生装置が出射するラゲールガウスビームの断面図である。
【図8】本発明の実施の形態3による芯出し装置の構成を示す図である。
【図9】図8に示す芯出し装置に備わる基準点検出部材を示す平面図である。
【図10A】図1に示す基準線発生装置に備わる吊下げ部の構成の一例を示す斜視図である。
【図10B】図1に示す基準線発生装置に備わる吊下げ部の構成の他の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態である基準線発生装置、及び該基準線発生装置を備えた芯出し装置について、図を参照しながら以下に説明する。尚、各図において、同一又は同様の構成部分については同じ符号を付している。
【0013】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1による基準線発生装置100を示している。基準線発生装置100は、基本的な構成部分として、ラゲールガウスビーム生成部101と、照射方向設定部102とを備え、例えば芯出し用の基準線としてのラゲールガウスビーム12を発生して所望方向へ照射する装置である。尚、本実施形態の基準線発生装置100は、鉛直方向に沿って基準線を設定可能なように各構成部分を形成、配置している。但し、基準線の設定方向は、後述する他の実施形態にて説明するように鉛直方向に限定するものではない。
【0014】
まず、ラゲールガウスビーム生成部101について説明する。
ラゲールガウスビーム生成部101は、基本的構成部分として、レーザビーム発生部10と、ホログラム11と、ケース13とを備え、本実施形態ではさらにレーザ整形用レンズ系14を有する。レーザビーム発生部10、ホログラム11、及びレーザ整形用レンズ系14は、レーザビーム発生部10から出射されるレーザ光の進行方向に沿って、本実施形態ではレーザビーム発生部10、レーザ整形用レンズ系14、ホログラム11の順で、レーザ光が通過可能なようにケース13内に配置され固定されている。尚、図1の配置位置に代えて、レーザ整形用レンズ系14は、ホログラム11の後に配置してもよい。
【0015】
レーザビーム発生部10は、レーザダイオード、気体レーザなどのレーザビームを放射可能なデバイスを備え、ケース13の一端部分13aに配置される。また、レーザビーム発生部10は、リモートコントロールにて電源のオンオフが可能なように構成してもよい。
【0016】
レーザ整形用レンズ系14は、本実施形態では、レーザビーム発生部10から出射されたレーザビームをコリメートもしくは適当な波面に整形するためのものである。本実施形態では、コリメートもしくは適当な波面に整形されたレーザ光がホログラム11に入射される。
【0017】
ホログラム11は、本実施形態では、レーザビーム発生部10が出射したレーザ光からラゲールガウス(LG)ビームを作成するための一手段として用いられる。ホログラム11は、2次元パターンを有し、上記レーザビームが当該ホログラム11を通過することでラゲールガウスビーム12が生成される。尚、ラゲールガウスビームは、波面が螺旋階段のような形状をなすビーム、換言すると、回転対称なエネルギー密度の分布を有するドーナツ状のビームである。また、ラゲールガウスビームについては、「ラゲール・ガウスビームの発生と検出」 宮本洋子、和田篤、日本光学会、光学、P618(2)を参照することができる。
【0018】
図2にラゲールガウスビーム12の断面を示す。図2に示すように、ラゲールガウスビーム12は、光強度が0となる点を中心とした中空部分12aを有する。ホログラム11は、中空部分12aの直径や個数、位置などが最適になるように設計されたものが用いられる。
【0019】
尚、ラゲールガウスビーム12の生成は、上述のホログラム11に限るものではなく、公知の他の手段、例えば螺旋状位相プレート、シリンドリカルレンズを組み合わせた構成、等を用いることができる。
【0020】
上述した構成により、ケース13の他端部13bから、つまりラゲールガウスビーム生成部101からラゲールガウスビーム12が出射される。
【0021】
次に、照射方向設定部102について説明する。
照射方向設定部102は、基本的構成部分として吊下げ部20を有し、さらに方向調整部30を有することができる。また、さらにダンパ部40を有してもよい。本実施形態では、照射方向設定部102として吊下げ部20、方向調整部30、及びダンパ部40を備えている。
このような構成を有する照射方向設定部102は、ラゲールガウスビーム生成部101にて生成されたラゲールガウスビーム12の照射方向12bを設定する作用を行う。
【0022】
吊下げ部20は、当該基準線発生装置100の、空洞部51を有する筐体50から空洞部51内にラゲールガウスビーム生成部101を吊り下げて揺動自在に支持する。本実施形態では、ラゲールガウスビーム生成部101から出射されるラゲールガウスビーム12の照射方向12bが鉛直方向又は略鉛直方向に沿うように、吊下げ部20はラゲールガウスビーム生成部101を吊り下げる。このように吊り下げられることで、ラゲールガウスビーム生成部101は、常に重力を受けることから、ラゲールガウスビーム12の照射方向12bは、一意に決定される。
尚、図1では、上記鉛直方向をZ軸に、該Z軸に直交しかつ互いも直交する2軸をX軸及びY軸にそれぞれ設定している。
【0023】
また、基準線発生装置100の筐体50には、空洞部51内に配置されたラゲールガウスビーム生成部101から出射されるラゲールガウスビーム12が通過し外部へ導くための出射窓52が設けられている。ビーム出射窓52は、ガラスや樹脂などの透明なウィンドウである。また、落下物や火花などの衝撃を避けるために、出射窓52が存在する筐体50の上面53は、テーパー状に形成されていてもよい。
【0024】
吊下げ部20は、本実施形態では、紐や、剛性を有するテープ等の部材にてなり、空洞部51の天井部分51aと、ラゲールガウスビーム生成部101の上記他端部13bとの間に設けられ、図10Aに示すような1軸、あるいは図10Bに示すようにX軸吊下げ部20A及びY軸吊下げ部20Bの2軸で構成される。また、2軸のジンバル機構を用いてもよい。
尚、吊下げ部20は、ラゲールガウスビーム生成部101の他端部13bから出射されるラゲールガウスビーム12を遮るものではない。
【0025】
このように、吊下げ部20にてラゲールガウスビーム生成部101を吊り下げる構成を採ることで、ラゲールガウスビーム生成部101が揺れた場合でも元の方向に復元させることができる。また、ラゲールガウスビーム生成部101と吊下げ部20との位置関係によって、ビームの照射方向12bを決定できるため、鉛直方向だけでなく、任意の方向へビームを照射することができる。
【0026】
方向調整部30は、ラゲールガウスビーム生成部101における重力方向端部に取り付けられ、吊下げ部20にて吊り下げられているラゲールガウスビーム生成部101の傾きを調整することでラゲールガウスビーム12の照射方向12bを微調整する部分である。
上述のように、吊下げ部20により、ラゲールガウスビーム生成部101から出射されるラゲールガウスビーム12の照射方向12bは一意に決定されるが、ラゲールガウスビーム生成部101と吊下げ部20との取り付け公差、ラゲールガウスビーム生成部101におけるレーザビーム発生部10の取り付け公差、及び、その他の部品公差などに起因して照射方向12bが、本実施形態では鉛直上向きから外れる場合がある。そこで、方向調整部30を設けて、ラゲールガウスビーム生成部101の重心位置を移動可能とし、ラゲールガウスビーム12の照射方向12bが鉛直上向きに一致するように調整するものである。
【0027】
本実施形態では、方向調整部30は、ラゲールガウスビーム生成部101における重力方向端部に相当する、上記一端部分13aに位置するケース下面に設置され、X,Y方向の2軸に移動可能なように設けられた部材(以下、錘と記す)を備える。即ち、方向調整部30は、ラゲールガウスビーム生成部101の重心位置を移動させる錘を有し、該錘の移動により照射方向12bを微調整する。よって、方向調整部30の上記錘の重量及びその移動量は、ラゲールガウスビーム生成部101の重心の移動量、換言すると照射方向12bの調整量によって決定される。
【0028】
方向調整部30による調整は、必ずしも基準線発生装置100を使用する場所で行う必要は無い。他の場所で予めラゲールガウスビーム12の照射方向12bを調整して、方向調整部30の錘位置を固定すればよい。また、基準線発生装置100を使用する度に行う必要もなく、方向調整部30の錘位置を強固に固定すれば、連続して使用することが可能である。例えば基準線発生装置100に強い衝撃が加わった場合や、調整後から長時間が経過した場合には、再度、照射方向12bを確認し、方向調整部30を調整し直せばよい。
【0029】
このように、方向調整部30を設けた場合には、ラゲールガウスビーム12の照射方向12bを現地到着前に鉛直方向に高精度に合わせることができ、繰り返し使用できるため、基準線発生装置100の設置作業工数が減り、設置時間を大幅に短縮することができる。
【0030】
また、吊下げ部20及び方向調整部30を設けることで、基準線発生装置100から照射されるラゲールガウスビーム12の照射方向12bを高精度にて設定できる。よって、長い昇降路を持つ建築物におけるエレベータ据付や、大規模プラント建設時などの長距離に渡って基準線が必要とされる工事や建造物に対して、長距離照射してもビームが広がらないラゲールガウスビーム12を、例えば芯出し用の基準線として使用することができる。
【0031】
ダンパ部40は、吊下げ部20にて揺動自在に支持されているラゲールガウスビーム生成部101の揺動を抑制する機構であり、上記空洞部51内で、方向調整部30に対向した位置にて筐体50に設置される。上述のように、ラゲールガウスビーム生成部101は、吊下げ部20にて揺動自在に支持されていることから、当該基準線発生装置100の設置時等にてラゲールガウスビーム生成部101が揺動した場合や、作業中に例えば工具等が基準線発生装置100に接触してしまいラゲールガウスビーム生成部101が揺動した場合等では、ラゲールガウスビーム生成部101が静止するまでに長い時間を要してしまう。そこでダンパ部40を設けることで、ラゲールガウスビーム生成部101の揺動が静止するまでに要する時間の短縮を図る。
【0032】
ダンパ部40は、本実施形態では、磁界遮断板41と、磁石42とを備えて構成される。磁界遮蔽板41は、ラゲールガウスビーム生成部101のケース13、又はケース13に設置された方向調整部30から延在し、磁石42で発生した磁界を遮るように設置される。例えば、コ字型の磁石42を用いて、その上側をS極、下側をN極とし、その間の空間を磁界遮蔽板41が横切るように配置する。図1に示すように、本実施形態では、磁石42は、X,Y軸方向に計4箇所に配置している。
【0033】
ダンパ部40の動作について説明する。ラゲールガウスビーム生成部101の揺動に伴い磁界遮蔽板41も揺れる。これにより、磁石42にて発生した磁界が急激に変動して磁界遮蔽板41に渦電流が流れる。これによって磁界の変動を打ち消す方向、つまり磁界遮蔽板41の動きを止めるように力が働く。このようにして、短時間で磁界遮蔽板41、つまりラゲールガウスビーム生成部101が静止する。
【0034】
ダンパ部40を設けることで、ラゲールガウスビーム生成部101が鉛直方向に静止するまでの時間が短縮されるため、方向調整部30との相乗により一層、基準線発生装置100の設置時間を短縮することが可能となる。
磁石42と磁界遮断板41との距離や、磁石42の磁界強度は、ラゲールガウスビーム生成部101を静止させるまでの時間によって決定する。
【0035】
以上説明した構成により基準線発生装置を形成することができるが、本実施形態では、基準線発生装置100は、さらに粗調整部60を備えている。
粗調整部60は、当該基準線発生装置100の設置面65に対して当該基準線発生装置100の、少なくとも傾斜を可変とする機構であり、基準線発生装置100の筐体50と、設置面65との間に設置される。即ち、方向調整部30により照射方向12bの微調整を行ったとしても、基準線発生装置100の設置面65が傾斜しており、補正仕切れない場合がある。例えば設置面65の傾斜が大き過ぎる場合、筐体50も大きく傾斜し、吊り下げられているラゲールガウスビーム生成部101が筐体50の空洞部51の内壁に当接したり、ダンパ部40を構成する磁界遮断部41が磁石42に当接したりして、ラゲールガウスビーム12の照射方向12bを鉛直上向きにできない、もしくは鉛直方向に対する照射方向12bの角度精度が低下するという事態が発生する。このような事態を防止するために、粗調整部60を設けるのが好ましい。
【0036】
このような粗調整部60は、支柱61と、設置面65に接する底板62とを有する。支柱61は、底板62と、基準線発生装置100の筐体50との間に、少なくとも1本設置され、設置面65に対して基準線発生装置100の高さ又は傾斜を可変とする。支柱61が1本である場合には、傾きの調整が可能であり、2本以上、設けた場合には、傾きに加えて高さを調整が可能である。このように粗調整部60は、照射方向12bが所望の方向、本実施形態では鉛直方向に沿うように基準線発生装置100の姿勢を補正する。
又、基準線発生装置100の筐体50の上面53が平面にて形成される場合には、基準線発生装置100の垂直度を確認するため、上面53には水準器63などを設けることもできる。
【0037】
以上のように構成される基準線発生装置100におけるラゲールガウスビーム12の発生動作等について説明する。
レーザビーム発生部10から発生したレーザビームは、レーザ整形用レンズ系14によりコリメートもしくは適当な波面に整形された後、ホログラム11を透過し、ラゲールガウスビーム12となる。図2に示され、また、既に説明したように、ラゲールガウスビーム12は、光強度が0となる点を中心とした中空部分12aを有する。レーザ整形用レンズ系14によってレーザビームをコリメートもしくは適当な波面に整形すると、中空部分12aの径は、非常に小さくすることができる。さらにコリメートもしくは適当な波面に整形することで、長距離照射した場合でも、中空部分12aを小さいまま維持することができる。この場合、例えば20m先において、中空部分12aの径を1mm程度にすることも可能である。
【0038】
このようなラゲールガウスビーム12は、一若しくは複数の中空部分12aを有し、その径を上述のように非常に小さく形成することで、ラゲールガウスビーム12の断面の中心、即ち基準点は、目視の場合でも容易に確認することが可能である。この基準点をビームの照射方向に沿って連続させることで基準線となる。
【0039】
このように、ラゲールガウスビーム12を用いることで、その照射距離に関わらず、ビームの照射方向12bに垂直な平面内で、基準点は同じ位置を通ることになる。この基準点位置を検出することで、ラゲールガウスビーム12、さらには、直径1mm程度の中空部分径に形成したラゲールガウスビーム12を用いることで、高精度な位置決め用の基準線として使用することができる。
【0040】
以上説明したように基準線発生装置100によれば、高い精度にて鉛直上向きにラゲールガウスビーム12を照射することができる。
また、レーザ整形用レンズ系14によってレーザビームをコリメートもしくは適当な波面に整形したことで、基準線として使用した場合の位置決め精度を向上させることができる。尚、上述したように、ホログラム11の後にレーザ整形用レンズ系14を配置することもでき、この場合には、レーザ整形用レンズ系14は、ラゲールガウスビーム12をコリメートする。
【0041】
また、上述のように本実施形態の基準線発生装置100では、ラゲールガウスビーム生成部101の揺動を静止させる手段としてダンパ部40を設けたが、ダンパ部40に代えて図3に示す基準線発生装置100Aのように、筐体50内の空洞部51内に、ラゲールガウスビーム生成部101の一部もしくは全体が沈むように液体緩衝材44を満たしてもよい。液体緩衝材44は、水、シリコンオイル等が使用可能であり、ラゲールガウスビーム生成部101の揺動を抑え、静止させるのに適した粘性を有する液体が好ましい。
【0042】
また、上述した実施の形態1における基準線発生装置100は、鉛直方向に沿って基準線を設定するように、つまりラゲールガウスビーム生成部101から照射されるラゲールガウスビーム12の照射方向12bが鉛直方向上向きとなるように、各構成部分を形成、配置した。この基準線発生装置100の変形例として、図4に示す基準線発生装置110、図5に示す基準線発生装置120を構成することもできる。尚、図4及び図5では、粗調整部60の図示を省略している。
【0043】
即ち、基準線発生装置110では、水平方向に沿って基準線を設定可能なように、吊下げ部20は、ラゲールガウスビーム12の照射方向12bが水平方向又はほぼ水平方向に沿うように、ラゲールガウスビーム生成部101を吊り下げている。尚、54は基準線発生装置110の筐体を、55は筐体54内の空洞部を示している。
【0044】
基準線発生装置120では、鉛直方向に対して任意の傾斜角にて基準線を設定可能なように、吊下げ部20は、ラゲールガウスビーム12の照射方向12bが上記傾斜角に沿うように、ラゲールガウスビーム生成部101を吊り下げている。尚、15はラゲールガウスビーム生成部101のケースを、56は基準線発生装置120の筐体を、57は筐体56内の空洞部をそれぞれ示している。
【0045】
基準線発生装置110、120におけるその他の構成は、基準線発生装置100に備わる構成と同じである。また、上述の実施形態1にて説明した変形例等は、基準線発生装置110、120にも適用可能である。
【0046】
基準線発生装置110、120に示すように、ラゲールガウスビーム生成部101の外形を変更して、ラゲールガウスビーム生成部101のケースに対する吊下げ部20の位置関係を変更することで、ラゲールガウスビーム12の照射方向12bを図1に示す鉛直方向から、図4、図5に示すような水平方向、傾斜方向等の任意の角度にも設定することができる。
また、このような基準線発生装置110、120においても、基準線発生装置100が奏する効果を得ることができる。
【0047】
実施の形態2.
実施の形態1における基準線発生装置100は、上述のように、ラゲールガウスビーム12の断面において光強度が0の部分つまり上記基準点を目視でも検出可能な構成を採っている。しかしながら、基準線発生装置100の使用環境によっては、基準点が視認しづらい可能性もある。本実施形態2の基準線発生装置は、この点を改善したものであり、上述のラゲールガウスビーム生成部101に改良を加えている。
【0048】
図6は、本実施の形態2の基準線発生装置130に備わるラゲールガウスビーム生成部105を示している。ラゲールガウスビーム生成部105は、実施の形態1にて説明したラゲールガウスビーム生成部101と、目視用のレーザビームを発生する目視用レーザビーム発生部104とを備える。尚、本実施の形態2の基準線発生装置130において、ラゲールガウスビーム生成部105以外の構成部分は、上述の基準線発生装置100、110、120における構成部分と同一又は同様である。よって、ここでは、ラゲールガウスビーム生成部105についてのみ説明を行う。
【0049】
ラゲールガウスビーム生成部105におけるラゲールガウスビーム生成部101は、上述したものと同じであり、説明は省略する。目視用レーザビーム発生部104は、ラゲールガウスビーム生成部101が出射するラゲールガウスビーム12において発光しない中空部分12aに対して、可視光波長を有する目視用レーザビーム82を重畳させる構成部分である。
【0050】
具体的に説明すると、目視用レーザビーム発生部104は、レーザ発生部80と、ハーフミラー81とを備える。レーザ発生部80は、レーザダイオード、気体レーザなどの、レーザビームを出射するデバイスから構成されている。レーザ発生部80が発するレーザ光は、可視領域で、かつラゲールガウスビーム生成部101のレーザビーム発生部10が発するレーザ光とは異なる波長を有し、さらにレーザビーム発生部10が発するレーザ光とは目視で相違がわかる程度の波長差を有する光であるのが好ましい。
【0051】
ハーフミラー81は、レーザ発生部80から出射された目視用レーザビーム82の光軸を、ラゲールガウスビーム生成部101におけるラゲールガウスビーム12の光軸と一致させる角度に設置される。ハーフミラー81をこのように配置することで、図7に示すように、ラゲールガウスビーム12の中空部分12a内に目視用レーザビーム82を配置することができる。
【0052】
このような構成により、本実施形態2の基準線発生装置130は、ラゲールガウスビーム12と、目視用レーザビーム82とを重畳して形成してなる図7のラゲールガウスビーム12Aを出射する。
【0053】
ハーフミラー81の透過率は、50%である必要は無く、レーザビーム発生部10の光出力と、レーザ発生部80の光出力とに応じて変更しても良い。また、長距離での照射においても光強度を維持可能なように、レーザ発生部80にホログラムやシリンドリカルレンズの組合せを設けて、ラゲールガウスビームを形成してもよい。この場合、目視用レーザビーム発生部104が出射するラゲールガウスビームと、ラゲールガウスビーム生成部101が出射するラゲールガウスビーム12の中空部分12aとが重ならないように構成する。
【0054】
以上のように構成されるラゲールガウスビーム生成部105を備えることで、本実施形態2の基準線発生装置130によれば、実施の形態1の基準線発生装置100を使用した場合では周辺の明るさによってビーム断面つまり基準点が視認しづらい環境においても、本実施形態2におけるラゲールガウスビーム12Aでは、中空部分がその周縁部分とは異なる色で示されることから、基準点を視認し易いという効果が得られる。
尚、ラゲールガウスビーム生成部105は、基準線発生装置100のみならず、上述した他の基準線発生装置100A、110、120に対しても適用可能であり、基準線発生装置130にて得られる上述の効果を得ることができる。
【0055】
実施の形態3.
次に、上述した基準線発生装置100、100A、110、120、130のいずれかを備えて構成される芯出し装置について説明する。
図8に示すように、本実施形態3の芯出し装置200は、基準線発生装置100、100A、110、120、130のいずれかと、基準点検出部材70又は受光部210とを備える。尚、受光部210を備える場合には、さらに受光部210に接続される基準点決定部220を有する。図8では、受光部210及び基準点決定部220を備えた場合を図示している。
【0056】
基準線発生装置100、100A、110、120、130については上述した内容であり、ここでの説明は省略する。
基準点検出部材70は、基準線発生装置100、100A、110、120、130のいずれかから照射されるラゲールガウスビーム12あるいはラゲールガウスビーム12Aから、目視にて基準点を得るための部材である。出射されたラゲールガウスビーム12あるいはラゲールガウスビーム12Aから基準点を得るためには、作業者は、通常、紙、樹脂、定規などの平面である物体をラゲールガウスビーム12、12Aに当て、中空部分12aあるいは目視用レーザビーム82を元に基準点を割り出す。この場合、上記紙等に代えて、基準点検出部材70を使用することで、より容易に基準点を割り出すことが可能となる。
【0057】
即ち、基準点検出部材70は、図9に示すように、短冊状の薄片71であり、半透明透過窓72を有する。この半透明透過窓72にラゲールガウスビーム12、12Aを投影し、そのスポットの中央部分を割り出す。投射方向と反対側から透かしてラゲールガウスビーム12、12Aを読み取ることで、ビーム断面に対して基準点検出部材70を傾斜させる必要がない。一方、投射方向と同じ側から読み取ってもよい。また、基準点の検出を容易にするため、半透明透過窓72に例えば十字形の目印72aを設けることもできる。
このような基準点検出部材70を用いることで、電気を要する機器や特殊な装置を使用することなく、目視で基準点を検出することができ、作業が容易になるという利点がある。
【0058】
一方、受光部210は、ラゲールガウスビーム12、12Aを電気的に受光する部分であり、CMOS、CCDなどの固体撮像素子、フォトダイオード、光電子増倍管などの光検出素子を備える。基準点決定部220は、受光部210からラゲールガウスビーム12、12Aのビーム断面における光強度分布を取得し、信号処理又は画像処理にて、ラゲールガウスビーム12あるいは12Aの断面の中心を、又は、中空部分12aの中央若しくは複数の中空部分12aから特徴付けられる基準点を、電気的に検出する。
【0059】
このように受光部210及び基準点決定部220を備えた構成では、ラゲールガウスビーム12、12Aのビーム断面の基準点位置を、信号処理、画像処理で自動的に求めることが可能になるので、目視の場合に比べ、高い精度にて位置決めが可能になるという利点がある。
【0060】
次に、以上のように構成された本実施形態の芯出し装置200を用いた芯出し方法について、簡単に説明する。
基準線発生装置100、100A、110、120、130については、既に説明したように、方向調整部30を用いてラゲールガウスビーム12あるいは12Aの照射方向12bを、鉛直方向等、所望の方向に一致させ、また、必要であれば、粗調整部60により設置面65に対して基準線発生装置の位置決めを行う。
【0061】
このように基準線発生装置100等を設置した後、基準点検出部材70、又は受光部210及び基準点決定部220を用いて、ラゲールガウスビーム12あるいは12Aから基準点を求める。芯出しを行いたい被検出部材がある場合には、この被検出部材に基準点検出部材70又は受光部210を取り付けることで上記被検出部材の芯出しを行う。
【符号の説明】
【0062】
11 ホログラム、14 ビーム整形用レンズ系、12 ラゲールガウスビーム、
20 吊下げ部、30 方向調整部、40 ダンパ部、44 液体緩衝材、
50 筐体、60 粗調整部、70 基準点検出部材、
100 基準線発生装置、101 ラゲールガウスビーム生成部、
102 照射方向設定部、104 目視用レーザビーム発生部、
105 ラゲールガウスビーム生成部、110、120、130 基準線発生装置、
200 芯出し装置、210 受光部、220 基準点決定部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラゲールガウスビームを生成するラゲールガウスビーム生成部と、
生成された上記ラゲールガウスビームの照射方向を設定する照射方向設定部と、
を備えたことを特徴とする基準線発生装置。
【請求項2】
上記照射方向設定部は、当該基準線発生装置の筐体内に上記ラゲールガウスビーム生成部を吊り下げて支持する吊下げ部と、上記吊下げ部にて支持されている上記ラゲールガウスビーム生成部に取り付けられ上記照射方向の微調整を行う方向調整部とを備えた、請求項1記載の基準線発生装置。
【請求項3】
上記照射方向設定部は、上記吊下げ部にて支持されている上記ラゲールガウスビーム生成部の揺動を抑制するダンパ部をさらに備えた、請求項2記載の基準線発生装置。
【請求項4】
設置面に対して当該基準線発生装置の傾斜を可変とする粗調整部をさらに備えた、請求項1から3のいずれか1項に記載の基準線発生装置。
【請求項5】
上記ラゲールガウスビーム生成部は、上記ラゲールガウスビームをコリメートもしくは適当な波面に整形するビーム整形用レンズ系を有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の基準線発生装置。
【請求項6】
上記ラゲールガウスビーム生成部は、生成されたラゲールガウスビームの中空部分に対して上記ラゲールガウスビームとは異なる波長を有するレーザビームを重畳させる目視用レーザビーム発生部をさらに有する、請求項1から5のいずれか1項に記載の基準線発生装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の基準線発生装置を備えたことを特徴とする芯出し装置。
【請求項8】
上記基準線発生装置から照射されたラゲールガウスビームの断面の中心を目視で確認可能とする基準点検出部材をさらに備えた、請求項7記載の芯出し装置。
【請求項9】
上記基準線発生装置から照射されたラゲールガウスビームを電気的に受光する受光部と、上記受光部に接続され、受光したラゲールガウスビームの断面の中心を電気的に求める基準点決定部とをさらに備えた、請求項7記載の芯出し装置。
【請求項1】
ラゲールガウスビームを生成するラゲールガウスビーム生成部と、
生成された上記ラゲールガウスビームの照射方向を設定する照射方向設定部と、
を備えたことを特徴とする基準線発生装置。
【請求項2】
上記照射方向設定部は、当該基準線発生装置の筐体内に上記ラゲールガウスビーム生成部を吊り下げて支持する吊下げ部と、上記吊下げ部にて支持されている上記ラゲールガウスビーム生成部に取り付けられ上記照射方向の微調整を行う方向調整部とを備えた、請求項1記載の基準線発生装置。
【請求項3】
上記照射方向設定部は、上記吊下げ部にて支持されている上記ラゲールガウスビーム生成部の揺動を抑制するダンパ部をさらに備えた、請求項2記載の基準線発生装置。
【請求項4】
設置面に対して当該基準線発生装置の傾斜を可変とする粗調整部をさらに備えた、請求項1から3のいずれか1項に記載の基準線発生装置。
【請求項5】
上記ラゲールガウスビーム生成部は、上記ラゲールガウスビームをコリメートもしくは適当な波面に整形するビーム整形用レンズ系を有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の基準線発生装置。
【請求項6】
上記ラゲールガウスビーム生成部は、生成されたラゲールガウスビームの中空部分に対して上記ラゲールガウスビームとは異なる波長を有するレーザビームを重畳させる目視用レーザビーム発生部をさらに有する、請求項1から5のいずれか1項に記載の基準線発生装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の基準線発生装置を備えたことを特徴とする芯出し装置。
【請求項8】
上記基準線発生装置から照射されたラゲールガウスビームの断面の中心を目視で確認可能とする基準点検出部材をさらに備えた、請求項7記載の芯出し装置。
【請求項9】
上記基準線発生装置から照射されたラゲールガウスビームを電気的に受光する受光部と、上記受光部に接続され、受光したラゲールガウスビームの断面の中心を電気的に求める基準点決定部とをさらに備えた、請求項7記載の芯出し装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【公開番号】特開2010−237032(P2010−237032A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85245(P2009−85245)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】
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