説明

塗工剤のコーティング方法およびコーティング装置

【課題】 粘着剤などの塗工剤の粘度に左右されることなく、簡単な構成でシート体に塗工剤を部分的に散在するように塗布する塗工剤のコーティング方法およびコーティング装置を提供すること。
【解決手段】 液槽18に充填された塗工剤5’を外表面9aに付着したコーティングロール9の回動と、該コーティングロール9に当接および離間する方向に反復移動する塗工剤除去手段16によって、コーティングロールの回転方向に対して断続した幅方向に延びる塗工剤の付着部6を形成し、その後マスキング手段15によって付着部6がマスキングされ、付着部6の一部のみ部分的にシート体1に付着した状態が形成される。シート体1がマスキング手段15の上面を通過するたびに塗工剤が連続して転写され、シート体1の表面には複数の塗工剤が疎らに形成される。したがって、シート体1の全面に塗工剤をコーティングする必要がなく節約も図れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転するコーティングロールの外表面に塗工剤を付着させるとともに、帯状のシート体を前記コーティングロールの外表面上で走行させて、前記帯状のシート体の表面に塗工剤を連続的に転写する塗工剤のコーティング方法およびコーティング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転するコーティングロールの外周面(外表面)に付着した接着剤を帯状のシート体表面に転写する方法として、例えば、所定パターンの凹部を有する第1のロールと、凸部を有する第2のロールとを備え、第1ロールの凹部に詰めた接着剤を第2ロールの凸部表面に転写させ、この第2ロールの外周面(外表面)上を走行する帯状のシート体に再転写するようにしたコーティング方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし帯状のシート体に接着剤を部分的に散在するように(疎らに)コーティングする場合には、第1ロールの凹部を細かく形成しなければならず、特に接着剤の粘度が高い場合には、凹部内に接着剤が充分に詰まらず転写ミスが生じる恐れがあった。
【0003】
そこで第1ロールに細かな凹部を形成することなく帯状のシート体に塗料を局部的に付着するようにコーティングする方法が既に開発されている(例えば、特許文献2参照)。このコーティング方法は、コーティングロールの回転方向に塗料をストライプ状に付着させ、帯状のシート体をコーティングロールとバッキングロールとの間に挟んで走行させ、転写時にバッキングロールをコーティングロールから離間させ、コーティングロールの回転速度を低速にすることで、帯状のシート体の幅方向に無塗布部分を作成して、塗料を局部的に付着する。
【0004】
【特許文献1】特開平10−277455号公報(段落0012、0013、図1、2)
【0005】
【特許文献2】特開2000−51778号公報(段落0017から0020、図2、3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし前記特許文献2に記載されたコーティング方法において、帯状のシート体の幅方向に無塗布部分を作成しようとする場合、バッキングロールをコーティングロールから離間させるとともに、コーティングロールの回転速度を高速から低速に切り換える必要があり、塗料の粘度が高い場合にはバッキングロールを離間しても塗料の切り離しが充分行えず、しかも無塗布部分の間隔を細かくしようとすると速度変動を頻繁に繰り返さなければならず、製作にコストと時間が掛かり、より簡単な構成でシート体に確実に塗料をコーティングさせるというの点で充分なものとは言えなかった。
【0007】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、粘着剤などの塗工剤の粘度に左右されることなく、簡単な構成で帯状のシート体に塗工剤を部分的に散在するように塗布する塗工剤のコーティング方法およびコーティング装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の塗工剤のコーティング方法は、回転するコーティングロールの外表面に塗工剤を付着させるとともに、シート体を前記コーティングロールの外表面上で走行させて、マスキング手段を介して前記シート体の表面に塗工剤を連続的に転写する塗工剤のコーティング方法において、前記コーティングロールの幅方向に配置した塗工剤除去手段を該コーティングロールに当接および離間する方向に反復移動させることにより、前記コーティングロールの回転方向に対して断続した幅方向に延びる塗工剤が付着した付着部を形成し、その後、前記マスキング手段により前記付着部から塗工剤を部分的に前記シート体の表面に転写したことを特徴としている。
この特徴によれば、コーティングロールの回転速度を変化させることなく、塗工剤除去手段をコーティングロールに当接および離間する方向に移動させた後、マスキング手段を介してシート体の表面に塗工剤を部分的に転写することで、塗工剤の粘度に左右されることなくシート体の表面に塗工剤が疎らに転写できるので、塗工剤を全面にコーティングする必要のない場合の塗工剤の節約が図れる。
【0009】
本発明の請求項2に記載の塗工剤のコーティング方法は、請求項1に記載の塗工剤のコーティング方法であって、前記マスキング手段には前記コーティングロールの幅方向に複数の切欠きが形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、マスキング手段の複数の切欠きとコーティングロールの回転方向に断続した塗工剤が付着した付着部との整合した部分の塗工剤のみがシート体に転写されるので、切欠きの数を適宜選定することにより、転写される塗工剤の疎ら度合いを自由に設定することができる。尚、マスキング手段の切欠きを等間隔に形成することで、疎らに転写される塗工剤を整然と配列することができる。
【0010】
本発明の請求項3に記載の塗工剤のコーティング方法は、請求項1または2に記載の塗工剤のコーティング方法であって、前記塗工剤除去手段のコーティングロールの回転方向後方には、前記コーティングロール外表面に付着する塗工剤の厚みを調整する塗工剤調整手段が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、コーティングロールと塗工剤調整手段との近接距離を適宜調整することにより、コーティングロールに付着される塗工剤の付着高さが調整され、余分な塗工剤が掻き落とされるので、コーティングロールには、所望高さの断続した塗工剤の付着部が形成される。
【0011】
本発明の請求項4に記載の塗工剤のコーティング方法は、請求項1乃至3のいずれかに記載の塗工剤のコーティング方法であって、前記シート体は剥離紙からなり、塗工剤が転写された剥離紙を帯状のコンデンサ用電解紙に一体的に密着させて該電解紙に塗工剤を再転写させたことを特徴としている。
この特徴によれば、電解紙に塗工剤を再転写できるようにコーティングすることにより、電解コンデンサの製作における電極箔の貼り付け作業を迅速かつ容易に行えるとともに、電解紙と電極箔とを積層したコンデンサ素子に電解液を含浸させる際にも、電解紙には塗工剤が疎らに付着されているので、電解液の含浸性が向上し、電解コンデンサの電気的特性を改善することができる。
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の請求項5に記載の塗工剤のコーティング装置は、回転するコーティングロールの外表面に塗工剤を付着させるとともに、シート体を前記コーティングロールの外表面上で走行させて、マスキング手段を介して前記シート体の表面に塗工剤を連続的に転写する塗工剤のコーティング装置において、前記コーティングロールに当接および離間する方向に反復移動可能な塗工剤除去手段を備えるとともに、前記マスキング手段は、前記コーティングロールの幅方向に付着した塗工剤から部分的に塗工剤を前記シート体の表面に転写する開口部を有していることを特徴としている。
この特徴によれば、コーティングロールの回転速度を変化させることなく、塗工剤除去手段をコーティングロールに当接および離間する方向に移動させてコーティングロールの回転方向に対して断続した幅方向に延びる塗工剤の一部を、マスキング手段の開口部を介して、シート体の表面に転写できるので、塗工剤の粘度に左右されることなくシート体の表面に塗工剤が疎ら且つ確実に転写できる装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例】
【0014】
図1は、本発明の実施例における塗工剤のコーティング方法を行なうコーティング装置の全体像を示す斜視図であり、図2は、コーティング装置による塗工剤の塗工を示す側断面図であり、図3は、塗工剤の剥離紙への転写過程を示す平面視要部拡大図であり、図4は、コーティング装置によって巻回された巻回体を再び剥離紙と電解紙に剥離して分離する過程を示す斜視図であり、図5は、剥離紙が剥離された電解紙を利用して、巻回式積層電解コンデンサのコンデンサ素子を形成する過程を示す斜視図である。尚、実施例では、コーティングされる塗工剤の一例として粘着剤を例示する。
【0015】
図1に示されるようにコーティング装置17は、液槽18内に充填された粘着剤5’を長尺帯状のシート体である剥離紙1に冷溶着で付着させるもので、以下、本実施例の説明において、コーティング装置17の剥離紙1の搬送方向を前方側とし、剥離紙1の供給側を後方とし、剥離紙1の幅方向を左右方向として説明する。
【0016】
図1および図2に示されるようにコーティング装置17について詳細に説明すると、下方位置に左右幅方向に長い矩形の液層18が設けられており、ゴム系・シリコン系・アクリル系などの粘度を有する粘着剤5’で充たされている。液層18の直上には幅方向に延びる軸芯を中心に左側面視反時計回りで回動制御されるドラム型のコーティングロール9が軸支され、下部が液層18内の粘着剤5’に浸された状態で設けられており、コーティングロール9の回動によって粘着剤5’を上方に掻き揚げ可能になっている。尚、コーティングロール9の回転速度は一定の速度で回動制御されている。
【0017】
このコーティングロール9の上端には、左右の幅方向に接触するように延設された薄板状の塗工マスキング板15が後方から前方に向けて上方に反り返るように設けられており、この塗工マスキング板15には後方から前方に掛けて、左右方向に所定間隔で開口部としての切欠きスリット15aが形成されている。コーティングロール9の後方面の上下中央位置には、塗工剤除去手段としての薄板状の可動ドクターブレード16がコーティングロール9の幅方向に沿って設けられている。
【0018】
可動ドクターブレード16のコーティングロールの回転方向後方(下方近傍位置)には、塗工剤調整手段としての薄板状の固定ドクターブレード20がコーティングロール9の幅方向に沿って設けられており、その先端部がコーティングロール9面に近接されている。この固定ドクターブレード20によって液槽18からコーティングロール9の外表面9aに掻き揚げられる余分な粘着剤5’が掻き落とされ、外表面9aには所定の厚みに調整された粘着層7が形成されることになる。
【0019】
この可動ドクターブレード16は、コーティングロール9に当接および離間する方向に反復して繰り返し可動制御される構成になっていることから、粘着層7の切り離しが繰り返し行なわれ、断続的に余分な粘着層7が掻き落とされる。そして、可動ドクターブレード16の反復移動が継続されることで、図1に示されるようにコーティングロール9の外表面9aには、コーティングロールの回転方向に対して断続した幅方向に延びる付着部6が複数形成される。
【0020】
さらに、可動ドクターブレード16の上部には、コーティングロール9と略同幅で側面円径がやや小さい弾性ドラム8が設けられており、左側面視時計回りに回転される。この弾性ドラム8と塗工マスキング板15との間には帯状の剥離紙1が挟み込まれ、弾性ドラム8によって剥離紙1および塗工マスキング板15がコーティングロール9の外表面9aに押し付けられながら、剥離紙1が後方から前方に向けて移動されていく。
【0021】
弾性ドラム8の前方位置には上下に所定間隔離間され、左右に延びる案内ローラ11,12が軸支されており、さらに前方上部位置に左右に軸支され左側面視時計回りで回転制御される巻取りローラ10が設けられており、前述の弾性ドラム8と塗工マスキング板15から移動された剥離紙1を案内ローラ11に経由させるとともに、前方下部より剥離紙1と略同型の長尺帯状の電解紙3(後述において説明する電解コンデンサ内部のコンデンサ素子に用いられるセパレータ)を案内ローラ12に経由させたのち、剥離紙1と電解紙3の両者が幅方向に重ね合わされて巻取りローラ10によって、剥離紙および電解紙3の巻回体19を構成するようにして巻取られていく。
【0022】
尚、図2に示されるように剥離紙1は予め後方上部の剥離給紙軸13に軸支されロールシート体として巻回されており、同様にして電解紙3も予め前方下部の電解給紙軸14に軸支されロールシート体として巻回されており、コーティング装置17内で剥離紙1および電解紙3が消耗された場合でも、これらロールシート体を交換するだけで簡便に剥離紙1および電解紙3の補給が行なえるようになっている。
【0023】
粘着層7の除去手段である可動ドクターブレード16によって形成された付着部6は、コーティングロール9の回動によって外表面9aに付着されたまま塗工マスキング板15の下面に搬送される。ここで、後述においても詳しく説明するがマスキング手段である塗工マスキング板15によって、さらに不必要な付着部6の一部がマスキングされて、切欠きスリット15aに臨んだ部分粘着剤5のみがコーティングロール9と弾性ドラム8の外表面8aとの間に挟み込まれた剥離紙1の表面である被転写面2に転写される。
【0024】
このようにして、固定ドクターブレード20の先端部と外表面9aとの間隔を予め調整しておくことで、粘着剤5’が常に一定の厚み(高さ)となる粘着層7が形成されるので、その後の可動ドクターブレード16の反復移動よっても、より確実に断続した所定厚さ(高さ)の付着部6が形成され、剥離紙1の表面には塗工マスキング板15を介して、常に斑のない所定厚みの部分粘着剤5が形成される。また、固定ドクターブレード20と外表面9aとの間隔は適宜変更可能になっており、粘着層7の厚み(高さ)を自由に設定調整可能になっている。
【0025】
そして、被転写面2には要部拡大部分(一点鎖線の囲繞部分)に示されるように部分粘着剤5の付着部分2aと付着されない無着部分2bとが形成されることで、連続的に部分粘着剤5が疎らな状態で転写され巻取りローラ10によって、剥離紙1の被転写面2と電解紙3の再転写面4とで部分粘着剤5が挟み込まれ、部分粘着剤5の表面が再転写面4に付着されながら多層に巻き取られていく。
【0026】
尚、粘着剤5’に粘度の高い塗工剤が用いられる場合には、可動ドクターブレード16と固定ドクターブレード20を極力近接した状態が好ましく、このようにすれば、可動ドクターブレード16のコーティングロール9への当接時に、可動ドクターブレード16の前端部16aの下面(コーティングロール9の回動方向後方)とコーティングロール9の外表面9aとの間に粘着剤の液溜まりが生じることが防止されることから、コーティングロール9から可動ドクターブレード16が離間されて新たな付着部6が形成される際に、液溜まりによる悪影響が回避される。さらに、この場合では、固定ドクターブレード20を可動ドクターブレード16の摺動板としても利用することも可能である。
【0027】
また、可動ドクターブレード16の反復移動速度や、コーティングロール9の回動速度を適宜選択することにより、同じく、転写される部分粘着剤5の疎ら度合いを自由に設定することができる。尚、少なくとも可動ドクターブレード16の反復移動速度や、コーティングロール9の回動速度を一定とすることで、剥離紙1に部分粘着剤5を精度良く転写することができることから好ましいが、前述の反復移動速度や回動速度を適宜変更することもできる。
【0028】
次いで、図3に示されるように部分粘着剤5の剥離紙1への転写過程について具体的に説明すると、マスキング手段である塗工マスキング板15の複数の切欠きスリット15aはコーティングロール9の幅方向に複数形成されている。そこで、まずコーティングロール9の回動と可動ドクターブレード16の前端部16aがコーティングロール9の外表面9aに所定の時間毎に当接および離間する反復移動によって、コーティングロールの回転方向に対して断続した幅方向に延びた付着部6が形成される。
【0029】
さらにコーティングロール9が回動されていくと、塗工マスキング板15によって切欠きスリット15a内には付着部6の一部(部分粘着剤5)が臨む状態となり、他の付着部6はマスキングされる。そして、巻取りローラ10(図1,2参照)の巻取りによって剥離紙1が進行方向(後方から前方)に移動されながら、塗工マスキング板15の上面を通過する際に、切欠きスリット15aとの整合した付着部6の粘着剤(切欠きスリット15a内の部分粘着剤5)のみが剥離紙1に転写される。
【0030】
このようにして、塗工剤除去手段である可動ドクターブレード16をコーティングロール9に当接および離間する方向に反復移動させた後、マスキング手段である塗工マスキング板15を介して剥離紙1の表面に粘着剤を転写する一連の転写作業の継続によって、帯状の剥離紙1の表面には複数の部分粘着剤5が疎らに形成されていくことになる。
【0031】
したがって、(液槽18内の)粘着剤5’の粘度に左右されることなく確実に剥離紙1の全域に渡って部分粘着剤5が部分的に散在するように転写され、かつ部分粘着剤5の散在形態も適宜設定可能であり、剥離紙1の表面に部分粘着剤5を所望の疎ら形状に転写することができる。
【0032】
本実施例の場合、切欠きスリット15aが幅方向に等間隔で複数形成されているので、剥離紙1に疎らに転写される部分粘着剤5が整然と配列される。また、切欠きスリット15aの切欠きの数を適宜選定することにより、転写される粘着剤5の疎ら度合いを自由に設定することができる。
【0033】
図4には、コーティング装置17(図1、2参照)によって疎らかつ均等に部分粘着剤5を付着した剥離紙1と電解紙3とが重ね合わされて巻回された巻回体19が、巻取りローラ10から取り出されており、この巻回体19の一端部側より剥離紙1を剥離させていくと、部分粘着剤5が剥離紙1の被転写面2から離間され、電解紙3の再転写面4に一体的に密着され再転写される。このように、電解紙3の再転写面4には部分粘着剤5の付着部分4aと付着されない無着部分4bとが形成されることで、連続的に部分粘着剤5が疎らかつ均等な状態で転写されるとともに、剥離紙1の被転写面2は無着部分2bのみとなる。
【0034】
次に、図5に示されるように疎らに部分粘着剤5が付着された電解紙3を、例えば巻回式積層電解コンデンサの円筒状タイプのコンデンサ素子30に使用した一例が示されており、コンデンサ素子30の製作手順を説明すると、コンデンサ素子30は帯状の電極箔である陽極箔31および陰極箔33と、これら電極箔にそれぞれ対応して設けられるセパレータとしての電解紙3、3’と、金属棒の2本の引出端子32,34とから構成されている。
【0035】
予め電解紙3の再転写面4には疎らに付着された部分粘着剤5を介して、電解紙3よりも若干幅狭な帯状の陽極箔31が貼付されており、同様にして電解紙3’の再転写面4には疎らに付着された部分粘着剤5を介して電解紙3よりも若干幅狭な帯状の陰極箔33が貼付されている。電解紙3,3’に付着される部分粘着剤5の配置位置は、予め幅方向に沿っても疎らかつ均等に付着されていることから、陽極箔31および陰極箔33の幅方向の両端部近傍にも極力近接した位置で接合されるので、例えば巻回の際に電解紙3,3’から陽極箔31および陰極箔33の剥がれる虞が未然に防止されている。さらに部分粘着剤5は陽極箔31および陰極箔33の全域に渡って疎らに接合されるので、より確実な接合状態を維持できる。
【0036】
これら陽極箔31および陰極箔33は、陰極箔33よりも陽極箔31が内側になるようにして巻回されていく。そして、巻回過程において一方の陽極箔31には引出端子32が接続され、他方の陰極箔33には引出端子34が接続されて上部に突出するように引き出され、多層に巻回積層されることでコンデンサ素子30が製作される。このように、電解紙3に再転写できるように部分粘着剤5をコーティングしたことにより、電解コンデンサの製作における電極箔(陽極箔31および陰極箔33)の貼り付け作業を迅速かつ容易に行なえる。
【0037】
また、引出端子32、34のコンデンサ素子30との内部の接続部分は、特に図示しないが電極箔(陽極箔31ならび陰極箔33)と接続し易いように平板状に形成されるほうが好ましいが、本発明はこれに限定されるものではない。尚、引出端子32,34は、コンデンサの外部引き出し用となる外部端子をインサート形成し、別途電極箔に接続した内部端子を外部端子と接続したものを用いても良い。
【0038】
また、この電解紙3を用いたコンデンサ素子は本発明に限定されるものではなく、陽極箔と陰極箔を前後に複数積層させた積層タイプのコンデンサ素子や角状コンデンサ、電気二重層コンデンサ、ラミネートフィルムコンデンサ等の各種コンデンサのコンデンサ素子のセパレータとしても適用できるものである。さらには、燃料電池などの電池内における正極と負極との間に介在されるセパレータにも適用できるものである。
【0039】
次の工程として、電解液が充填された容器内にコンデンサ素子30を浸す(引出端子32,34を除く)ことで、このコンデンサ素子30内に電解液を含浸させる作業を行なう。そして、電解液に浸されたコンデンサ素子30内では、陽極箔31と電解紙3を接合する部分粘着剤5以外の非接合部分35に間隙が形成されることから、この間隙を介して電解液がコンデンサ素子30の内部の隅々に浸透され十分に行き渡される。同様にして、図示を省略するが陰極箔33と電解紙3’を接合する部分粘着剤5以外の非接合部分35にも間隙が形成される。
【0040】
このように、電解紙3,3’と電極箔(陽極箔31,陰極箔33)とを交互に積層したコンデンサ素子30に電解液を含浸させる際にも、電解紙3,3’には部分粘着剤5が疎らに付着されているので、電解紙3と陽極箔31および電解紙3’と陰極箔33との間に部分粘着剤5以外の非接合部分35が形成されるので、電解液の含浸率および含浸速度を飛躍的に高めることができる。
【0041】
以上の説明により電解液が含浸されたコンデンサ素子30は、容器より取り出され、特に図示しないが外装ケースの開口から収納され、この開口が2本の引出端子32,34を密封状態で外部に導出した封口体で封止されることで、外装ケース内にコンデンサ素子30が密封され電解コンデンサが作製される。尚、外装ケースの形状はコンデンサ素子30の形状に合わせて円筒形状として円筒状コンデンサとしても良いし、有底四角形状とした外装ケースを用いて角状コンデンサとしても良い。また、巻回されたコンデンサ素子30の円筒形を湾曲させて薄型楕円状のコンデンサとしても良い。
【0042】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成は実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれ、例えば上記実施例では、固定ドクターブレード20で予めコーティングロール9の外表面9aに付着される粘着剤5’の厚み(粘着層7)を調整することで、剥離紙1に斑のない所定厚みの粘着剤を転写できることから好ましいが、本発明はこれに限定されるものではなく、コーティング装置17に固定ドクターブレード20を設けずに、可動ドクターブレード16の離間位置の設定により粘着剤の厚みを調整しても良い。またコーティングロール9による粘着剤5’の付着形成気時に液槽の外形形状を利用して、コーティングロール9の外表面9aに付着される粘着剤5’の厚みを調整する構成にしても良い。
【0043】
また上記実施例では、部分粘着材5が直接転写されるシート体として再転写を目的とする剥離紙1を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、被転写体となる電解紙の強度や品質に影響を与えない場合には、剥離紙1の被転写体となる電解紙などのシート体を塗工マスキング板15と弾性ドラム8との間に直接挟み込み、塗工マスキング板15の切り欠きスリット15aに臨んだ部分粘着材5をシート体(被転写体)に直接転写しても良い。この場合には、部分粘着材5が転写されたシート体(被転写体)面には剥離紙1を配して多層に巻取っても良い。また、シート体(被転写体)の非転写側の面に剥離機能を持たせることで剥離紙1を用いずに巻き取るようにしても良い。
【0044】
また上記実施例では、部分粘着剤5が再転写された電解紙3は、電解コンデンサのコンデンサ素子30に利用されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、電解コンデンサ用の電解紙3以外の適用例として、引出端子32,34と電極箔(陽極箔31,陰極箔33)との接続部を覆うあて紙にも適用できる。つまり、部分粘着剤5が再転写されたあて紙(通常は、電解紙と同じ材質)にて接続部を覆うことで、電解液の含浸性を高めることができる。
【0045】
この他にも部分粘着剤5の転写対象としては、シート状のものであれば良く、各種材料からなる布やフィルムに適用でき、長尺テープ状の粘着シールにも利用することもでき、粘着剤が疎ら且つ全域に渡って形成されるので、粘着強度は保たれつつも粘着剤が全面に渡り付着されていないので、剥がしやすい粘着テープとしての利用も可能になる。また、疎らな粘着剤の間には間隙(粘着剤の非接合部分)が無数に形成されるので、通気性も高められ、医療救急用の絆創膏にも応用できる。さらに塗工剤としては、上記実施例にて記載した粘着剤以外にも、各種塗料やコーティング剤を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施例における塗工剤のコーティング方法を行なうコーティング装置の全体像を示す斜視図である。
【図2】コーティング装置による塗工剤の塗工を示す側断面図である。
【図3】塗工剤の剥離紙への転写過程を示す平面視要部拡大図である。
【図4】コーティング装置によって巻回された巻回体を再び剥離紙と電解紙に剥離して分離する過程を示す斜視図である。
【図5】剥離紙が剥離された電解紙を利用して、巻回式積層電解コンデンサのコンデンサ素子を形成する過程を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
1 剥離紙(シート体)
2 粘着剤の被転写面
2a 付着部分
2b 無着部分
3、3’ 帯状のコンデンサ用電解紙
4 粘着剤の再転写面
4a 付着部分
4b 無着部分
5 部分粘着剤
5’ 粘着剤(塗工剤)
6 断続状の付着部
7 粘着層
8 弾性ドラム
8a 外表面
9 コーティングロール
9a 外表面
10 巻取りローラ
11,12 案内ローラ
13 剥離給紙軸
14 電解給紙軸
15 塗工マスキング板(マスキング手段)
15a 切欠きスリット(開口部)
16 可動ドクターブレード(塗工剤除去手段)
16a 前端部
17 塗工剤のコーティング装置
18 液槽
19 剥離紙および電解紙の巻回体
20 固定ドクターブレード(塗工剤調整手段)
30 巻回式積層コンデンサのコンデンサ素子
31 陽極箔(電極箔)
32 引出端子
33 陰極箔(電極箔)
34 引出端子
35 粘着剤の非接合部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転するコーティングロールの外表面に塗工剤を付着させるとともに、シート体を前記コーティングロールの外表面上で走行させて、マスキング手段を介して前記シート体の表面に塗工剤を連続的に転写する塗工剤のコーティング方法において、前記コーティングロールの幅方向に配置した塗工剤除去手段を該コーティングロールに当接および離間する方向に反復移動させることにより、前記コーティングロールの回転方向に対して断続した幅方向に延びる塗工剤が付着した付着部を形成し、その後、前記マスキング手段により前記付着部から塗工剤を部分的に前記シート体の表面に転写したことを特徴とする塗工剤のコーティング方法。
【請求項2】
前記マスキング手段には前記コーティングロールの幅方向に複数の切欠きが形成されている請求項1に記載の塗工剤のコーティング方法。
【請求項3】
前記塗工剤除去手段のコーティングロールの回転方向後方には、前記コーティングロール外表面に付着する塗工剤の厚みを調整する塗工剤調整手段が設けられている請求項1または2に記載の塗工剤のコーティング方法。
【請求項4】
前記シート体は剥離紙からなり、塗工剤が転写された剥離紙を帯状のコンデンサ用電解紙に一体的に密着させて該電解紙に塗工剤を再転写させた請求項1乃至3のいずれかに記載の塗工剤のコーティング方法。
【請求項5】
回転するコーティングロールの外表面に塗工剤を付着させるとともに、シート体を前記コーティングロールの外表面上で走行させて、マスキング手段を介して前記シート体の表面に塗工剤を連続的に転写する塗工剤のコーティング装置において、前記コーティングロールに当接および離間する方向に反復移動可能な塗工剤除去手段を備えるとともに、前記マスキング手段は、前記コーティングロールの幅方向に付着した塗工剤から部分的に塗工剤を前記シート体の表面に転写する開口部を有していることを特徴とする塗工剤のコーティング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−346570(P2006−346570A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−175764(P2005−175764)
【出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【出願人】(000228578)日本ケミコン株式会社 (514)
【Fターム(参考)】