説明

塗布装置及び方法

【課題】 塗布装置及び方法において、ノズル内の異物を除去するために、閉塞する必要のある全てのノズルを確実に閉塞すること。
【解決手段】 塗布ヘッド22に設けた複数のノズル34から溶液を吐出させて基板に塗布する塗布装置において、前記塗布ヘッド22の一部のノズル34を同時に閉塞する閉塞手段50であって、それら一部のノズル34を構成する各個のノズル34をノズル毎に閉塞する閉塞部50Aを備えた閉塞手段50を有するもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗布ヘッドに設けた複数のノズルから溶液を吐出させて塗布する塗布装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット式の塗布ヘッドを備えた溶液の塗布装置では、溶液の乾燥固化物や溶液に混入していた異物等によりノズルに目詰まりを生じたとき、溶液の供給側から塗布ヘッドの全てのノズルに高い吐出圧力を付与し、ノズルの目詰まりを解消させることを行なっている。
【0003】
ところが、目詰まりを生じたノズルは、全てのノズルのうちの一部のノズルであるにもかかわらず、全てのノズルに付与された吐出圧力によって、目詰まりのないノズルからも溶液が流出し、溶液を無駄に消費することになる。しかも、目詰まりのないノズルの方が、目詰まりを生じたノズルよりも溶液の流れが良いため、目詰まりを生じたノズルに高い吐出圧力を付与することができず、目詰まりを十分に解消できないことがある。
【0004】
そこで、従来技術として、特許文献1に記載の如く、全てのノズルに高い吐出圧力を付与しながら、全てのノズルのうちで目詰まりを生じたノズルだけから溶液が流出し、他の一部のノズルからの溶液の流出を防止するように、全てのノズルのうちの一部のノズルを閉塞部材で閉塞するものがある。
【特許文献1】特開平10-175313号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の塗布装置では、閉塞部材の1つの突起部で、閉塞部材によって閉塞される一部のノズルを構成する複数のノズルを一括して閉塞するように構成されているため、以下の問題点がある。
【0006】
塗布ヘッドにおけるノズル形成面に対して突起部の平行度がずれていた場合、閉塞する必要のある複数のノズルのうち、一部のノズルを塞ぐことができても、他のノズルについては突起部との間に隙間を生ずることがある。この隙間から溶液が漏れ出ることにより、目詰まりを生じたノズルに高い吐出圧力を付与させることができなくなる。
【0007】
突起部が弾性材からなるものであれば、突起部をノズル形成面に対して強い力で押し付けることにより、突起部が弾性変形して閉塞する必要のある全てのノズルを塞ぐことができるが、強い力の押圧装置が必要になって装置が大型化する。また、強い力の押圧によって塗布ヘッドの取付け位置がずれるおそれもあり、強い力で突起部をノズル形成面に押し付けるのは好ましくない。
【0008】
本発明の課題は、塗布装置及び方法において、ノズル内の異物を除去するために、閉塞する必要のある全てのノズルを確実に閉塞することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、塗布ヘッドに設けた複数のノズルから溶液を吐出させて基板に塗布する塗布装置において、前記塗布ヘッドの一部のノズルを同時に閉塞する閉塞手段であって、それら一部のノズルを構成する各個のノズルをノズル毎に閉塞する閉塞部を備えた閉塞手段を有するようにしたものである。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において更に、前記閉塞手段が、塗布ヘッドのノズル列の長さの2倍以上の長さ範囲に渡り、当該長さ範囲の中央の一部に切欠窓を設け、当該長さ範囲の切欠窓を除く範囲に前記ノズルの配列に対応するように配列された閉塞部を備えるようにしたものである。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において更に、前記閉塞手段の閉塞部が各ノズルよりも大きな直径の弾性突部からなるようにしたものである。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかの発明において更に、前記ノズルから、前記基板に溶液を塗布するときよりも高い吐出圧力で前記溶液を吐出させる加圧手段を有するようにしたものである。
【0013】
請求項5の発明は、塗布ヘッドに設けた複数のノズルから溶液を吐出させて基板に塗布する塗布方法において、前記塗布ヘッドの一部のノズルを同時に閉塞し、かつそれら一部のノズルを構成する各個のノズルをノズル毎に閉塞するとともに、前記ノズルから、前記基板に溶液を塗布するときよりも高い吐出圧力で前記溶液を吐出させ、ノズル内の異物を除去するようにしたものである。
【発明の効果】
【0014】
(請求項1)
(a)塗布装置は、塗布ヘッドの一部のノズルを同時に閉塞する閉塞手段であって、それら一部のノズルを構成する各個のノズルをノズル毎に閉塞する閉塞部を備えた閉塞手段を有するものにした。閉塞手段は、吐出異常が認められたノズル及びその隣接するノズル以外の閉塞する必要のある各個のノズルのそれぞれを、各閉塞部によって個別に閉塞し、それら閉塞する必要のある全てのノズルを確実に閉塞できる。
【0015】
(請求項2)
(b)閉塞手段が、塗布ヘッドのノズル列の長さの2倍以上の長さ範囲に渡り、当該長さ範囲の中央の一部に切欠窓を設け、当該長さ範囲の切欠窓を除く範囲に前記ノズルの配列に対応するように配列された閉塞部を備える。閉塞手段の切欠窓を塗布ヘッドのノズル配列方向に沿う一端側から他端側に向けて相隣るノズルの配列ピッチに従って移動させれば、塗布ヘッドのノズル形成面の全てのノズルのうちの当該切欠窓に入る一部のノズルを選択的に当該切欠窓に取り込みできる。従って、単一の閉塞手段を用いることにより、塗布ヘッドのノズル配列方向に沿う全てのノズルについて、切欠窓に入ったノズルについては閉塞せず、他のノズルについては閉塞部によって上述(a)の如くに閉塞できる。
【0016】
(請求項3)
(c)閉塞手段の閉塞部が各ノズルよりも大きな直径の弾性突部からなるものとすることにより、各閉塞部により各個のノズルを容易に閉塞できる。
【0017】
(請求項4、5)
(d)塗布ヘッドの一部のノズルを同時に閉塞し、かつそれら一部のノズルを構成する各個のノズルをノズル毎に閉塞するとともに、前記ノズルから、前記基板に溶液を塗布するときよりも高い吐出圧力で前記溶液を吐出させ、ノズル内の異物を除去できる。これにより、吐出異常が認められるノズル及びその隣接するノズルだけに溶液を圧送し、溶液の無駄な消費を伴なうことなくノズルの目詰まりを解消できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は塗布装置を示す正面図、図2は図1の側面図、図3は塗布ヘッドを示す断面図、図4は塗布ヘッドのノズル形成面を示す平面図、図5は吐出状態検出装置と閉塞手段を示す正面図、図6は図5の平面図、図7は塗布ヘッドと閉塞手段を示す模式斜視図、図8は塗布ヘッドと閉塞手段を示す断面図である。
【実施例】
【0019】
図1と図2に示すこの発明に係る塗布装置は直方体状のベース1を有する。このベース1の下面の所定位置にはそれぞれ脚2が設けられ、これら脚2によって上記ベース1は水平に支持されている。
【0020】
図2に示すように、上記ベース1の上面の幅方向両端部には、所定の幅寸法の取付け板3が長手方向に沿ってそれぞれ設けられている。これら取付け板3の上面の幅方向一端部には長手方向に沿ってそれぞれガイド部材4が設けられている。これらガイド部材4の上面には、矩形板状のXテーブル5が、その下面の幅方向両側に平行に設けられた断面ほぼ逆U字状の一対の第1の受け部材6をスライド可能に係合させて支持されている。Xテーブル5の上面には、このXテーブル5よりも小さい載置テーブル7が設けられている。つまり、載置テーブル7は上記Xテーブル5を介して上記ガイド部材4に沿うX方向に移動可能となっている。
【0021】
上記ガイド部材4には固定子が設けられ、上記第1の受け部材6には可動子が設けられ、上記固定子と可動子とで駆動手段となるリニアモータ8を形成している。
【0022】
上記載置テーブル7には、例えばアクティブマトリックス方式の液晶表示装置に用いられるガラス製の基板Wが供給される。この基板Wは、上記載置テーブル7に真空吸着や静電吸着などの手段によって吸着保持される。従って、載置テーブル7に保持された基板Wは上記Xテーブル5によってX方向に駆動されるようになっている。
【0023】
上記ベース1の長手方向中途部には上記一対のガイド部材4を跨ぐように門型の支持体11が立設されている。この支持体11の両側上部には角柱からなる取付け部材12が水平に架設されている。
【0024】
上記取付け部材12にはヘッドテーブル19が上記Xテーブル5の駆動方向であるX方向と直交するY方向(図2に矢印で示す)に沿って移動可能に設けられている。上記支持体11の幅方向一側にはパルスモータからなる第1のY駆動源21が設けられている。このY駆動源21は上記ヘッドテーブル19をY方向に沿って駆動するようになっている。尚、ヘッドテーブル19のY方向の駆動はパルスモータに代わり、リニアモータで行なうようにしても良い。
【0025】
上記ヘッドテーブル19の一側面にはインクジェット方式によって機能性薄膜である、例えば配向膜を形成する溶液(ポリイミド溶液)をドット状に吐出する複数の塗布ヘッド22がY方向に沿って配置されている。この実施の形態では、例えば7つの塗布ヘッド22が千鳥状に2列で配置されている。
【0026】
図3と図4に示すように、上記各塗布ヘッド22はヘッド本体28を備えている。ヘッド本体28は筒状に形成され、その下面開口は可撓板29によって閉塞されている。この可撓板29はノズルプレート31によって覆われており、このノズルプレート31と上記可撓板29との間には複数の液室32が形成されている。
【0027】
各液室32は、ノズルプレート31内に形成された主管路31Aに枝管路31Bを介してそれぞれ連通していて、上記主管路31Aから枝管路31Bを介して溶液が各液室32に供給される。主管路31Aは、一端が後述する給液孔33に接続され、他端が後述する回収孔37に接続される。
【0028】
上記ヘッド本体28の長手方向一端部には上記液室32に連通する上記給液孔33が形成されている。この給液孔33から上記各液室32には機能性薄膜を形成する上記溶液が供給される。それによって、上記液室32内は溶液で満たされるようになっている。
【0029】
また、給液孔33には、給液管33Aを介して溶液を供給する供給源を構成する溶液供給容器39が接続されていて、この溶液供給容器39から溶液が供給される。尚、溶液供給容器39には、加圧された窒素ガス等の加圧気体を供給するポンプや圧力タンク等の加圧手段38が開閉弁33Bを備えた供給管33Cを介して接続される。
【0030】
図4に示すように、上記ノズルプレート31には、基板Wの搬送方向に直交する方向である、Y方向に沿って2列をなす複数のノズル34が千鳥状に穿設されている。各ノズル34は各液室32に連通している。上記可撓板29の上面には、図3に示すように上記各ノズル34にそれぞれ対向して駆動手段としての複数の圧電素子35が設けられている。
【0031】
各圧電素子35は上記ヘッド本体28内に設けられた駆動部36によって駆動電圧が供給される。それによって、圧電素子35は伸縮し、可撓板29を部分的に変形させるから、これによって吐出圧力が発生し、その圧電素子35に対向位置するノズル34から溶液がドット状に吐出され、搬送される基板Wの上面に供給塗布される。従って、基板Wの上面には、ドット状の溶液が行列状に配列されてなる塗布パターンが形成される。そして、この塗布パターンは、ドット状の各溶液が流動して濡れ広がることにより、付着し合って1つの膜となる。
【0032】
上記ヘッド本体28の長手方向他端部には上記液室32に連通する上記回収孔37が形成されている。上記給液孔33から液室32に供給された溶液は、上記回収孔37から回収することができるようになっている。即ち、各ヘッド22は上記液室32に供給された溶液をノズル34から吐出させるだけでなく、上記液室32を通じて上記回収孔37から回収することが可能となっている。
【0033】
図1に示すように、上記ガイド部材4の一端部には上記塗布ヘッド22のノズル34から吐出される溶液を撮像するための検出装置41が設けられている。この検出装置41は第1の可動部材42を有する。この第1の可動部材42は下面の幅方向両端部に一対の第2の受け部材43(1つのみ図示)が設けられ、この受け部材43を上記ガイド部材4にスライド可能に係合させて設けられている。そして、上記ノズル34から吐出される溶液を測定しないときには図1に示すように上記ガイド部材4の長手方向一端部の待機位置、つまり載置テーブル7の往復動の邪魔にならない位置で待機している。
【0034】
尚、第1の可動部材42は上記リニアモータ8によって上記ガイド部材4に沿うX方向に駆動することができ、上記ガイド部材4に設けられた載置テーブル7と上記第1の可動部材42を選択的に駆動することが可能となっている。
【0035】
上記第1の可動部材42の上面には、この第1の可動部材42の長手方向に沿って移動可能な第2の可動部材45が長手方向を上記第1の可動部材42に対して直交させて設けられている。
【0036】
図5と図6に示すように、上記第1の可動部材42の長手方向一端にはパルスモータからなる第2のY駆動源46が設けられ、この第2のY駆動源46によって上記第2の可動部材45を上記X方向と交差するY方向、つまり上記塗布ヘッド22の並設方向に沿って駆動することができるようになっている。
【0037】
上記第2の可動部材45のX方向に沿う長手方向一端部には高速度カメラ48が設けられ、他端にはこの高速度カメラ48に向けて照明光を出射する光源49が設けられている。上記高速度カメラ48と光源49とで検出手段を構成している。
【0038】
所定の塗布ヘッド22のノズル34から溶液が吐出されるとともに、光源49から照明光が出射され、上記高速度カメラ48によって上記ノズル34から吐出され基板Wに到達する前の溶液が撮像されるようになっている。
【0039】
溶液を撮像した上記高速度カメラ48は、その撮像信号を画像処理装置に出力する。画像処理装置は上記高速度カメラ48からの撮像信号を処理し、その撮像信号によってノズル34の溶液吐出状態を出力する。
【0040】
尚、上記第2の可動部材45の長手方向中央部分の上面には各塗布ヘッド22の複数のノズル34の一部のものを閉塞する閉塞手段50、及びそれらのノズル34から吐出される溶液を受ける受け皿60が設けられている。
【0041】
即ち、塗布装置にあっては、一定の可動タイミング毎に、検出装置41を用いて各塗布ヘッド22のノズル34の溶液吐出状態を検出し、吐出不良(目詰まり)が生じているノズル34の有無を検出し、吐出不良が生じているノズル34があればその位置を検出する。
【0042】
そして、いずれかの塗布ヘッド22において吐出不良が生じているノズル34があったときには、閉塞手段50を用いて後述する如くにそのノズル34以外のノズル34を閉塞し、塗布ヘッド22の回収孔37の回収管37Aの開閉弁37Bを閉じた状態で、開閉弁33Bが開放して溶液供給容器39内に加圧手段38から加圧された窒素ガスを供給することで給液孔33の給液管33Aに溶液を圧送する。このとき、加圧手段38から供給する加圧ガスの圧力は、基板Wに溶液を塗布するときに圧電素子35によって付与される吐出圧力よりも十分大きな吐出圧力が全てのノズル34に対して付与される大きさに設定される。これにより、閉塞手段50により閉塞されていないノズル34から加圧された溶液を排出し、当該ノズル34の目詰まりを解消させる。
【0043】
以下、閉塞手段50の構成について説明する。
閉塞手段50は、各塗布ヘッド22の全てのノズル34のうちの一部のノズル34を同時に閉塞するものであり、それら一部のノズル34を構成する各個のノズル34をノズル毎に閉塞する複数個の閉塞部50Aを備える。
【0044】
閉塞手段50は、図7、図8に示す如く、第2の可動部材45の上面に設けたエアシリンダ等からなる昇降装置51によって昇降可能に支持された閉塞プレート52を有する。閉塞プレート52は、塗布ヘッド22のノズルプレート31に配列されたノズル34列の長さの2倍以上の長さ範囲に亘る長さをもつ矩形状をなし、当該長さ範囲の中央の一部に切欠窓53を設け、当該長さ範囲の切欠窓53を除く範囲にノズル34の配列に対応するように配列された複数個の閉塞部50Aを備える。切欠窓53に取り込まれたノズル34は閉塞部50Aによって閉塞されず、溶液供給容器39から圧送された溶液が排出される。閉塞手段50の閉塞プレート52に設けられる複数個の閉塞部50Aは、各ノズル34の孔径よりも大きな直径の半球状をなすシリコンゴム等の弾性材料の弾性突部54からなる。
【0045】
本実施例の閉塞手段50は、閉塞プレート52に3列の閉塞部50A(弾性突部54)が設けられる。他方、塗布ヘッド22は、前述した如く、ノズルプレート31のノズル形成面に2列のノズル34を設け、1列目のノズル34と2列目のノズル34はそれらのノズル配列方向にその配列ピッチの1/2ピッチずつずらされて千鳥状をなすように配置されている。閉塞手段50は、塗布ヘッド22において2列をなすノズル34の千鳥配置に合わせて、1列目と3列目の閉塞部50A(弾性突部54)に対し、2列目の閉塞部50A(弾性突部54)をそれらの配列方向にそれらの配列ピッチの1/2ピッチずらして設けている。塗布ヘッド22のノズル34が2列あるのに対して、閉塞手段50の閉塞部50A(弾性突部54)が3列あるのは、塗布ヘッド22の2列目の一部のノズル34を除いた他のノズル34を塞ぐときには、閉塞手段50の1列目の閉塞部50A(弾性突部54)と2列目の閉塞部50A(弾性突部54)を閉塞用として用い、塗布ヘッド22の1列目の一部のノズル34を除いた他のノズル34を塞ぐときには、閉塞手段50の2列目の閉塞部50A(弾性突部54)と3列目の閉塞部50A(弾性突部54)を閉塞用として用いるためである。
【0046】
本実施例の閉塞手段50は、切欠窓53の窓サイズを、塗布ヘッド22の2列のノズル34のうち、1列3個分のノズル34を取り込む大きさにした。従って、溶液供給容器39から圧送された溶液が3個のノズル34から排出されることになる。
【0047】
従って、塗布装置における各塗布ヘッド22のノズル34に生じた目詰まりは以下の如くに解消される。
【0048】
尚、以下の(1)〜(4)の動作は、載置テーブル7上に供給された基板Wに対する溶液の塗布が完了した後、溶液の塗布が完了した基板Wを搬出し、次に溶液が塗布される基板Wを搬入するとき等、載置テーブル7を図1に示すベース1の左端の搬入搬出位置に停止させている状態下で行なうと良い。
【0049】
(1)第1の可動部材42及び第2の可動部材45により、検出装置41を各塗布ヘッド22のノズルプレート31の下方に位置付け、塗布ヘッド22のノズル34から溶液を吐出させ、検出装置41のカメラ48によりノズル34の溶液吐出状態を検出し、不良吐出ノズル34を検出する。
【0050】
このとき、1つのカメラ48で吐出状態を検出できるノズル34の数には限りがあるので、7つの塗布ヘッド7のノズル34を1つのカメラ48で吐出状態を検出可能な数毎のグループに分け、カメラ48をY方向に間欠的に移動させながら、グループ毎にノズル34の溶液吐出状態を検出する。
【0051】
(2)第1の可動部材42及び第2の可動部材45により、不良吐出ノズル34を生じた塗布ヘッド22のノズルプレート31の下方に閉塞手段50を位置付ける。より具体的には、吐出不良ノズル34が閉塞プレート52の切欠窓53の中央に対向位置するように、第1の可動部材42と第2の可動部材45を移動させる。閉塞手段50の閉塞手段50の昇降装置51により、閉塞プレート52を上昇させ、閉塞手段50の閉塞部50A(弾性突部54)を吐出不良ノズル34以外のノズル34に押し当ててそれらノズル34を閉塞し、吐出不良ノズル34を切欠窓53の内部に取り込む。
【0052】
(3)塗布ヘッド22の回収孔37を閉じた状態で、溶液供給容器39から溶液を圧送して全てのノズル34に圧電素子35によって付与される吐出圧力よりも高い吐出圧力を付与し、閉塞手段50により閉塞されていないノズル34から加圧された溶液を排出し、当該ノズル34の目詰まりを解消させる。
【0053】
(4)塗布ヘッド22の全ての不良吐出ノズル34に対する上述(2)、(3)の目詰まり除去作業が終了した時点で、第1の可動部材42及び第2の可動部材45により閉塞手段50を塗布ヘッド22の下方から退避させる。不図示のワイピング装置のブレードにより、塗布ヘッド22のノズルプレート31のノズル形成面をワイピングする。
【0054】
尚、上述(4)の動作を終えた後、全てのノズル34、或いは吐出不良が生じていたノズル34に対して再度(1)の動作を実行し、不良吐出ノズル34の目詰まりの解消を確認するようにしても良い。ここで、未だ目詰まりが解消されていなかった場合は、再度上述(2)、(3)の目詰まり除去作業を行なうか、作業者にその旨を促す報知をモニタ等の表示器へのメッセージ表示やブザー等の警報機による警報を介して行なうかをすると良い。
【0055】
また、(1)による検出の結果、不良吐出ノズル34が検出されなかった場合には、(2)〜(4)の動作を行なう必要はない。
【0056】
本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
(a)塗布装置は、塗布ヘッド22の全てのノズル34のうちの一部のノズル34を同時に閉塞する閉塞手段50であって、それら一部のノズル34を構成する各個のノズル34をノズル毎に閉塞する閉塞部50Aを備えた閉塞手段50を有するものにした。閉塞手段50は、吐出異常が認められたノズル34及びその隣接するノズル34以外の閉塞する必要のある各個のノズル34のそれぞれを、各閉塞部50Aが個々に独立して弾性変形することによってノズル34毎に閉塞することから、他の閉塞部50Aの閉塞状態の影響を互いに受けることなく、個々の閉塞部50Aがそれら閉塞する必要のある全てのノズル34を確実に閉塞できる。そのため、ノズル34の目詰まり等の吐出異常を効果的に解消させることができる。
【0057】
(b)閉塞手段50が、塗布ヘッド22のノズル列の長さの2倍以上の長さ範囲に渡り、当該長さ範囲の中央の一部に切欠窓53を設け、当該長さ範囲の切欠窓53を除く範囲に当該ノズルの配列に対応するように配列された閉塞部50Aを備える。閉塞手段50の切欠窓53を塗布ヘッド22のノズルの配列方向に沿う一端側から他端側に向けて相隣るノズル34の配列ピッチに従って移動させれば、塗布ヘッド22のノズル形成面の全てのノズル34のうちの当該切欠窓53に入る一部のノズル34を選択的に当該切欠窓53に取り込みできる。従って、単一の閉塞手段50を用いることにより、塗布ヘッド22のノズルの配列方向に沿う全てのノズル34について、切欠窓53に入ったノズル34については閉塞せず、他のノズル34については閉塞部50Aによって上述(a)の如くに閉塞できる。
【0058】
(c)閉塞手段50の閉塞部50Aが各ノズル34よりも大きな直径の弾性突部54からなるものとすることにより、各閉塞部50Aにより各個のノズル34を容易に閉塞できる。
【0059】
(d)塗布ヘッド22の全てのノズル34のうちの一部のノズル34を同時に閉塞し、かつそれら一部のノズル34を構成する各個のノズル34をノズル毎に閉塞するとともに、全てのノズル34に高い吐出圧力を付与し、ノズル34内の異物を除去できる。これにより、吐出異常が認められるノズル34及びその隣接するノズル34だけに溶液を圧送し、溶液の無駄な消費を伴うことなくノズル34の目詰まりを解消できる。
【0060】
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【0061】
例えば、上記実施例において、閉塞部50Aを弾性材料の弾性突部54として閉塞プレート52上に直接固定したが、バネを介して固定するようにしても良い。
【0062】
また、閉塞手段50の切欠窓53の窓サイズを1列3個分のノズル34を取り込む大きさにしたが、これに限られるものではなく、少なくとも目詰まりを解消する必要のある1つの不良吐出ノズル34を取り込める大きさであれば良い。但し、取り込めるノズル34の数が多いほど、溶液の無駄な消費が多くなり、また、不良吐出ノズル34に作用する溶液の圧力が分散されることになるので、窓サイズを大きくしすぎるのは好ましくない。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は塗布装置を示す正面図である。
【図2】図2は図1の側面図である。
【図3】図3は塗布ヘッドを示す断面図である。
【図4】図4は塗布ヘッドのノズル形成面を示す平面図である。
【図5】図5は吐出状態検出装置と閉塞手段を示す正面図である。
【図6】図6は図5の平面図である。
【図7】図7は塗布ヘッドと閉塞手段を示す模式斜視図である。
【図8】図8は塗布ヘッドと閉塞手段を示す断面図である。
【符号の説明】
【0064】
22 塗布ヘッド
34 ノズル
38 加圧手段
50 閉塞手段
50A 閉塞部
53 切欠窓
54 弾性突部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布ヘッドに設けた複数のノズルから溶液を吐出させて基板に塗布する塗布装置において、
前記塗布ヘッドの一部のノズルを同時に閉塞する閉塞手段であって、それら一部のノズルを構成する各個のノズルをノズル毎に閉塞する閉塞部を備えた閉塞手段を有することを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記閉塞手段が、塗布ヘッドのノズル列の長さの2倍以上の長さ範囲に渡り、当該長さ範囲の中央の一部に切欠窓を設け、当該長さ範囲の切欠窓を除く範囲に前記ノズルの配列に対応するように配列された閉塞部を備える請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記閉塞手段の閉塞部が各ノズルよりも大きな直径の弾性突部からなる請求項1又は2に記載の塗布装置。
【請求項4】
前記ノズルから、前記基板に溶液を塗布するときよりも高い吐出圧力で前記溶液を吐出させる加圧手段を有する請求項1〜3のいずれかに記載の塗布装置。
【請求項5】
塗布ヘッドに設けた複数のノズルから溶液を吐出させて基板に塗布する塗布方法において、
前記塗布ヘッドの一部のノズルを同時に閉塞し、かつそれら一部のノズルを構成する各個のノズルをノズル毎に閉塞するとともに、前記ノズルから、前記基板に溶液を塗布するときよりも高い吐出圧力で前記溶液を吐出させ、ノズル内の異物を除去することを特徴とする塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−268946(P2009−268946A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−119285(P2008−119285)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】