壁掛防振装置
【課題】振動源を内蔵する重量機器の壁面設置に好適な壁掛防振装置を提供する。
【解決手段】壁掛防振装置1は、本体フレーム2と、本体フレーム2に固定される上側支持体6及び下側支持体7と、壁面に取り付けられる上側壁取付金具3及び下側壁取付金具4と、上側支持体6と上側壁取付金具3、及び、下側支持体7と下側壁取付金具4の間のそれぞれ両端に介装される防振部材5と、を主要構成として備えている。縦枠2aは断面チャネル形状に構成され、かつ、側面側が機器10と対向する側については機器背面(又は壁面)と平行、また、壁面と対向する側については上端部から下端部に向かって幅が漸次細くなる(d1>d2)、台形形状に構成されている。
【解決手段】壁掛防振装置1は、本体フレーム2と、本体フレーム2に固定される上側支持体6及び下側支持体7と、壁面に取り付けられる上側壁取付金具3及び下側壁取付金具4と、上側支持体6と上側壁取付金具3、及び、下側支持体7と下側壁取付金具4の間のそれぞれ両端に介装される防振部材5と、を主要構成として備えている。縦枠2aは断面チャネル形状に構成され、かつ、側面側が機器10と対向する側については機器背面(又は壁面)と平行、また、壁面と対向する側については上端部から下端部に向かって幅が漸次細くなる(d1>d2)、台形形状に構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は壁掛防振装置に関し、特に、振動源を内蔵する重量機器の壁面設置に好適な壁掛防振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、給湯器や熱源機等、振動源を内蔵する重量機器を壁面に設置する場合、振動による騒音発生が問題となっている。特に、集合住宅等においては、振動を防止するために壁留め部材を上下のスラブに固定する施工が必要となり、コストアップ要因ともなっている。
かかる壁面設置の防振対策として、機器の上下部を固定する壁掛金具を、防振部材である座付ブッシュと押えリングで狭持した状態で壁面にボルト固定し、壁掛金具に伝わる機器の振動を、座付ブッシュと押えリングで吸収する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、支持体である固定用ボルトは壁面に対して垂直方向に締め付けられるのに対して、機器に働く重力の作用線は壁面と平行であるため、モーメントの影響により防振部材に不均一な荷重が掛かり、振動の低減効果を十分に発揮できないという問題がある。さらに、防振ゴムに圧縮力と剪断力の両方が作用するため機器が前傾し、釣り合い位置で機器を鉛直に正立させるように支持体や防振材料を設計することが困難である。
【0003】
このような問題を解決するために、本出願人は、剛構造のみを経由して機器から壁面まで到達できないように、静荷重を支持する経路中に必ず防振材料が挿入されるような構成の壁掛防振装置100を提案している(特許文献2参照)。
壁掛防振装置100は、図13に示すように、上側の防振支持部101に関して、支持部材102の中心軸の作用線L11は、給湯器103の重心の垂直面上投影点Gを通過するように配置されている。また、防振支持部104に関して、支持部材105の中心軸の作用線L12は、壁面に垂直(水平方向)、かつ、給湯器103の重心の垂直面上投影点Gを通過するように配置されている。
【特許文献1】特開2000−329190号公報
【特許文献2】特開2007−315407号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる構成により、壁掛防振装置100においては重心周りのモーメントがゼロとなり、防振材料は支持方向にのみ均一に圧縮又は伸長されるため、剪断力に弱い材料を防振材料として用いることが可能になり、また、防振材料の耐久性を向上させることができる。
しかしながら、熱源機の使用態様としては給湯、暖房、追焚及びこれらの組み合わせがあり、これらすべての用途に対して支障のない防振性能を確保するためには、防振支持部の構成のみならず、機器取り付け部を含む装置全体として防振性能を検討する必要がある。
また、給湯器の場合は接続配管の数が通常一定であり、重心位置が変化することは比較的少ないが、暖房・追焚系統を含む熱源機の場合は系統数が種々異なるため、重心位置が変化する場合もある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本出願人らは鋭意研究の結果、上記技術をさらに発展させ、重心位置の多少の変化に影響を受けることなく、高い防振効果を確保できる壁掛防振装置を考案し、試験により確認して発明を完成した。
本発明は以下の内容を要旨とする。すなわち、本発明に係る壁掛防振装置は、
(1)対象機器と壁面の間に配置される壁掛防振装置であって、対象機器を背面側から固定する本体フレームと、本体フレームに固定される上部フレーム側支持体及び下部フレーム側支持体と、壁面に固定される上部壁側支持体及び下部壁側支持体と、上部フレーム側支持体と上部壁側支持体、又は、下部フレーム側支持体と下部壁側支持体の間に介装される防振部材と、を備え、かつ、該本体フレームを構成する縦枠の側面からみて壁面と対向する側の幅を、上端部から下端部に向かい、漸次、細くなるように構成して成る、ことを特徴とする。
【0006】
(2)上記発明において、前記防振部材の変形方向の延長線が機器の重心を通るように、前記上部フレーム側支持体と前記上部壁側支持体、及び、前記下部フレーム側支持体と前記下部壁側支持体を構成したことを特徴とする。
(3)上記各発明において、前記防振部材は、バネ入り防振ゴムと、スリーブ状弾性体と、の二層に構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、機器の重心位置の変化や、機器運転態様(例えば、給湯、暖房、追焚等)にかかわれず、良好な防振性能を確保できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に係る壁掛防振装置の実施形態について、図1乃至7を参照してさらに詳細に説明する。重複を避けるため、各図において同一構成には同一符号を用いて示している。なお、本発明の範囲は特許請求の範囲記載のものであって、以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。
(第一の実施形態)
図1は、本発明の一実施形態に係る壁掛防振装置1の全体構成を示す図である。
図2は、壁掛防振装置1の正面構成(a)及び側面構成(b)を示す図である。
図3は、機器10を取り付けた状態における壁掛防振装置1の側面構成を示す図である。
図4は、防振部材5の展開図である。
図5は、防振部材5の断面構成を示す図である。
図6は、機器10を取り付けた状態における壁掛防振装置1の力の釣り合いを示す図である。
【0009】
図1乃至3を参照して、壁掛防振装置1は本体フレーム2と、本体フレーム2に固定される上側支持体6(特許請求の範囲における上部フレーム側支持体に相当)、及び下側支持体7(同、下部フレーム側支持体に相当)と、壁面に取り付けられる上側壁取付金具3(同、上部壁側支持体に相当)及び下側壁取付金具4(同、下部壁側支持体に相当)と、上側支持体6と上側壁取付金具3、及び、下側支持体7と下側壁取付金具4の間のそれぞれ両端に介装される防振部材5と、を主要構成として備えている。防振部材5を除き、各構成にはステンレス薄板材料が用いられている。
本体フレーム2は、左右の縦枠2aと、上下の横枠2b、2cと、により構成されている。横枠2b、2cには、機器(熱源機)10を取り付けるための複数のビス孔2dが設けられている。各ビス孔2dの位置は、複数の機器の壁取付金具のボルト孔位置に合わせて設けられている。
【0010】
縦枠2aは断面チャネル形状に構成され、かつ、側面側の機器10と対向する側は機器背面(又は壁面)と平行、また、壁面と対向する側については、上端部から下端部に向かって幅が漸次細くなる(d1>d2)、台形形状に構成されている。
上側支持体6は縦枠2aに、また下側支持体7については縦枠2a及び横枠2cに、それぞれスポット溶接及びリベット固定され、本体フレーム2と一体に構成されている。上側支持体6及び下側支持体7の取付角度については後述する。
上側壁取付金具3は、薄板を略「く」の字状に折り曲げた構造を備え、折曲部を境に壁面取付部3aと防振部材支持部3bが形成されている。折曲部はリブ3dにより補強されている。壁面取付部3aには両端に取付用ボルト孔3cが設けられており、壁掛防振装置1を壁面12にボルト固定可能に構成されている。下側壁取付金具4についても同様に、壁面取付部4aと防振部材支持部4bを備え、壁面取付部4aには両端に取付用ボルト孔4cが設けられている。
図4、5を参照して防振部材5は、内層であるスリーブ状弾性体5aと、外層であるバネ5cがモールドされたバネ入り弾性体5bと、が一体に構成された二層構造を備えている。
【0011】
次に防振部材5を介してなされる、上側結合部8(支持体6と壁取付金具3)の結合態様について説明する。上側結合部8については、上側支持体6と壁取付金具3の間に防振部材5、壁取付金具3の外面側にゴムブッシング5f、座金5g、二連ナット5hをこの順に配置し、各部品の貫通部に固定ボルト5d(実際には上側支持体6の外面側に溶接されている)を挿通して、ボルト・ナットを締付けている。かかる構成により上側支持体6、防振部材5及び壁取付金具3は一体に結合されている。説明を省略するが、下側結合部9(支持体7と壁取付金具4)についても同様の結合態様である。
【0012】
次に図6を参照して、上側結合部8及び下側結合部9の取付角度について説明する。上側結合部8については、上側支持体6及び壁取付金具3の取付角度は、防振部材5の変形方向の延長線L1が、ほぼ機器10の重心Gを通るように設定されている。同様に下側結合部9についても、下側支持体7及び壁取付金具4の取付角度は、防振部材5の変形方向の延長線L2が、ほぼ機器の重心Gを通るように設定されている。これにより、各防振部材5の接触面は、締め付け方向に対して垂直方向に全面的に接触した状態で締め付けられるため、各防振部材5の反力F1,F2は、各結合部の取付方向に対して平行に作用することになる。
【0013】
次に図3を参照して、壁掛防振装置1の設置方法について説明する。まず、壁面12への取り付けは、壁掛防振装置1の壁取付金具3、4のボルト孔を、壁面12に固定されている取付用ボルト(不図示)に挿通し、ナットで固定することにより行う。次いで、壁掛防振装置1の上側支持体6及び下側支持体7と、機器10の背面側取付金具10a、10bの対応するビス孔位置にボルトを挿通し、ナットで固定することにより設置が完了する。
【0014】
なお、本実施形態では防振部材5の変形方向の延長線L1、L2が、機器10の重心Gを通るように、上側結合部8及び下側結合部9の取付角度を設定する例を示したが、一方又は両方が重心Gから多少外れる取付角度に設定してもよい。
また、縦枠2aは断面チャネル形状の例を示したが、アングル形状等、フレームの強度を確保できる他の形状、材質のものを用いることもできる。
【0015】
(第二の実施形態)
さらに図7を参照して、本発明の他の実施形態について説明する。図7は、第二の実施形態に係る壁掛防振装置20の正面構成(a)及び側面構成(b)を示す図である。
壁掛防振装置20が上述の壁掛防振装置1と異なる点は、下側結合部22の取り付け角度である。すなわち、下側結合部22については、防振部材5の変形方向の延長線L3が水平方向となるように取り付けられている。この場合、変形方向延長線L3は、必ずしも機器の重心Gを通る必要はない。
その他の構成については、壁掛防振装置1と同一である。縦枠2aの側面側の幅についても壁掛防振装置1と同様に、上端部から下端部に向かって漸次狭くなるように構成されている。
【実施例】
【0016】
本発明の効果を確認するため、本発明に係る壁掛防振装置(第一の実施形態と同タイプ)を用いて、熱源機(給湯暖房機)の暖房運転時及び追焚運転時における防振性能を評価した。比較のため、縦枠形状のみ異なるタイプ及び従来タイプ(市販品の標準防振金具)を用いた評価も併せて行った。
(1)供試壁掛防振装置
表1に示す3タイプの壁掛防振装置について評価を行った。タイプ(a)が本発明に係る防振装置(第一の実施形態と同タイプ)である。各部寸法を図8にしめす。各部の材質は、防振部材を除きSUS304 2.0t(但し、縦枠部については1.5t)を用いている。また、防振部材にはバネ入り防振ゴムを用いている。
【0017】
【表1】
【0018】
(2)試験装置及び測定方法
標準的な給湯暖房機(給湯:2.7〜24号、暖房:2.67〜14.0kw、追焚:9.3 kw)を各タイプの壁掛防振装置に取り付けて、図9に示すように壁面裏側の高さ方向7箇所の左右(計14箇所)に振動センサ(加速度計)を配置して、暖房運転及び追焚時運転時の周波数別の加速度(m/s2)を測定した。
【0019】
(2)測定結果
a)暖房運転時
図10は、各タイプの各測定位置における加速度値を示す図である。これより最大振動位置において、本発明タイプ(a)及びストレートタイプ(b)は、ともに従来タイプ(c)と比較して、最大振動位置の加速度値が約1/3に減少していることが分かる。
b)追焚運転時
図11は、暖房用、追焚用の2つのポンプが駆動する追焚運転時の測定結果を示している。ストレートタイプでは、熱源機の追い焚き運転により側面の金具に共振が発生し、壁に伝わる振動加速度も大きくなり、防振性能が落ちていることが分かる。本発明タイプでは、上下の幅が異なるため共振が発生せず、良好な防振性能を示しているものと思われる。
図12は、位置3Aにおける周波数−加速度特性を示す図である。ストレートタイプでは80Hz付近に大きなピークがある。本発明タイプにも同じ所にピークはあるが、ストレートタイプと比較して加速度値は約1/10であり、本発明による効果が高いことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、熱源機のみならず、振動源を内蔵する重量機器用の壁掛防振装置として広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第一の実施形態に係る壁掛防振装置1を示す図である。
【図2】壁掛防振装置1の正面構成(a)及び側面構成(b)を示す図である。
【図3】機器10を取り付けた状態における壁掛防振装置1の側面構成を示す図である。
【図4】防振部材5の展開図である。
【図5】防振部材5の断面構成を示す図である。
【図6】機器10を取り付けた状態における壁掛防振装置1の力の釣り合いを示す図である。
【図7】第二の実施形態に係る壁掛防振装置20を示す図である。
【図8】試験に用いた本発明に係る壁掛防振装置の寸法を示す図である。
【図9】実施例の試験装置を示す図である。
【図10】暖房運転時の各タイプの各測定位置における加速度値を示す図である。
【図11】追焚運転時の各タイプの各測定位置における加速度値を示す図である。
【図12】追焚運転時の位置3Aにおける周波数−加速度特性を示す図である。
【図13】従来の壁掛防振装置100の側面を示す図である。
【符号の説明】
【0022】
1、20・・・壁掛防振装置
2 本体フレーム
2a 縦枠
2b 横枠
2c 横枠
2d ボルト孔
2d 各ボルト孔
3 上側壁取付金具
4 下側壁取付金具
5 防振部材
6 上側支持体
7 下側支持体
8 上側結合部
9 下側結合部
10 機器
L1〜L3 防振部材変形方向延長線
【技術分野】
【0001】
本発明は壁掛防振装置に関し、特に、振動源を内蔵する重量機器の壁面設置に好適な壁掛防振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、給湯器や熱源機等、振動源を内蔵する重量機器を壁面に設置する場合、振動による騒音発生が問題となっている。特に、集合住宅等においては、振動を防止するために壁留め部材を上下のスラブに固定する施工が必要となり、コストアップ要因ともなっている。
かかる壁面設置の防振対策として、機器の上下部を固定する壁掛金具を、防振部材である座付ブッシュと押えリングで狭持した状態で壁面にボルト固定し、壁掛金具に伝わる機器の振動を、座付ブッシュと押えリングで吸収する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、支持体である固定用ボルトは壁面に対して垂直方向に締め付けられるのに対して、機器に働く重力の作用線は壁面と平行であるため、モーメントの影響により防振部材に不均一な荷重が掛かり、振動の低減効果を十分に発揮できないという問題がある。さらに、防振ゴムに圧縮力と剪断力の両方が作用するため機器が前傾し、釣り合い位置で機器を鉛直に正立させるように支持体や防振材料を設計することが困難である。
【0003】
このような問題を解決するために、本出願人は、剛構造のみを経由して機器から壁面まで到達できないように、静荷重を支持する経路中に必ず防振材料が挿入されるような構成の壁掛防振装置100を提案している(特許文献2参照)。
壁掛防振装置100は、図13に示すように、上側の防振支持部101に関して、支持部材102の中心軸の作用線L11は、給湯器103の重心の垂直面上投影点Gを通過するように配置されている。また、防振支持部104に関して、支持部材105の中心軸の作用線L12は、壁面に垂直(水平方向)、かつ、給湯器103の重心の垂直面上投影点Gを通過するように配置されている。
【特許文献1】特開2000−329190号公報
【特許文献2】特開2007−315407号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる構成により、壁掛防振装置100においては重心周りのモーメントがゼロとなり、防振材料は支持方向にのみ均一に圧縮又は伸長されるため、剪断力に弱い材料を防振材料として用いることが可能になり、また、防振材料の耐久性を向上させることができる。
しかしながら、熱源機の使用態様としては給湯、暖房、追焚及びこれらの組み合わせがあり、これらすべての用途に対して支障のない防振性能を確保するためには、防振支持部の構成のみならず、機器取り付け部を含む装置全体として防振性能を検討する必要がある。
また、給湯器の場合は接続配管の数が通常一定であり、重心位置が変化することは比較的少ないが、暖房・追焚系統を含む熱源機の場合は系統数が種々異なるため、重心位置が変化する場合もある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本出願人らは鋭意研究の結果、上記技術をさらに発展させ、重心位置の多少の変化に影響を受けることなく、高い防振効果を確保できる壁掛防振装置を考案し、試験により確認して発明を完成した。
本発明は以下の内容を要旨とする。すなわち、本発明に係る壁掛防振装置は、
(1)対象機器と壁面の間に配置される壁掛防振装置であって、対象機器を背面側から固定する本体フレームと、本体フレームに固定される上部フレーム側支持体及び下部フレーム側支持体と、壁面に固定される上部壁側支持体及び下部壁側支持体と、上部フレーム側支持体と上部壁側支持体、又は、下部フレーム側支持体と下部壁側支持体の間に介装される防振部材と、を備え、かつ、該本体フレームを構成する縦枠の側面からみて壁面と対向する側の幅を、上端部から下端部に向かい、漸次、細くなるように構成して成る、ことを特徴とする。
【0006】
(2)上記発明において、前記防振部材の変形方向の延長線が機器の重心を通るように、前記上部フレーム側支持体と前記上部壁側支持体、及び、前記下部フレーム側支持体と前記下部壁側支持体を構成したことを特徴とする。
(3)上記各発明において、前記防振部材は、バネ入り防振ゴムと、スリーブ状弾性体と、の二層に構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、機器の重心位置の変化や、機器運転態様(例えば、給湯、暖房、追焚等)にかかわれず、良好な防振性能を確保できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に係る壁掛防振装置の実施形態について、図1乃至7を参照してさらに詳細に説明する。重複を避けるため、各図において同一構成には同一符号を用いて示している。なお、本発明の範囲は特許請求の範囲記載のものであって、以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。
(第一の実施形態)
図1は、本発明の一実施形態に係る壁掛防振装置1の全体構成を示す図である。
図2は、壁掛防振装置1の正面構成(a)及び側面構成(b)を示す図である。
図3は、機器10を取り付けた状態における壁掛防振装置1の側面構成を示す図である。
図4は、防振部材5の展開図である。
図5は、防振部材5の断面構成を示す図である。
図6は、機器10を取り付けた状態における壁掛防振装置1の力の釣り合いを示す図である。
【0009】
図1乃至3を参照して、壁掛防振装置1は本体フレーム2と、本体フレーム2に固定される上側支持体6(特許請求の範囲における上部フレーム側支持体に相当)、及び下側支持体7(同、下部フレーム側支持体に相当)と、壁面に取り付けられる上側壁取付金具3(同、上部壁側支持体に相当)及び下側壁取付金具4(同、下部壁側支持体に相当)と、上側支持体6と上側壁取付金具3、及び、下側支持体7と下側壁取付金具4の間のそれぞれ両端に介装される防振部材5と、を主要構成として備えている。防振部材5を除き、各構成にはステンレス薄板材料が用いられている。
本体フレーム2は、左右の縦枠2aと、上下の横枠2b、2cと、により構成されている。横枠2b、2cには、機器(熱源機)10を取り付けるための複数のビス孔2dが設けられている。各ビス孔2dの位置は、複数の機器の壁取付金具のボルト孔位置に合わせて設けられている。
【0010】
縦枠2aは断面チャネル形状に構成され、かつ、側面側の機器10と対向する側は機器背面(又は壁面)と平行、また、壁面と対向する側については、上端部から下端部に向かって幅が漸次細くなる(d1>d2)、台形形状に構成されている。
上側支持体6は縦枠2aに、また下側支持体7については縦枠2a及び横枠2cに、それぞれスポット溶接及びリベット固定され、本体フレーム2と一体に構成されている。上側支持体6及び下側支持体7の取付角度については後述する。
上側壁取付金具3は、薄板を略「く」の字状に折り曲げた構造を備え、折曲部を境に壁面取付部3aと防振部材支持部3bが形成されている。折曲部はリブ3dにより補強されている。壁面取付部3aには両端に取付用ボルト孔3cが設けられており、壁掛防振装置1を壁面12にボルト固定可能に構成されている。下側壁取付金具4についても同様に、壁面取付部4aと防振部材支持部4bを備え、壁面取付部4aには両端に取付用ボルト孔4cが設けられている。
図4、5を参照して防振部材5は、内層であるスリーブ状弾性体5aと、外層であるバネ5cがモールドされたバネ入り弾性体5bと、が一体に構成された二層構造を備えている。
【0011】
次に防振部材5を介してなされる、上側結合部8(支持体6と壁取付金具3)の結合態様について説明する。上側結合部8については、上側支持体6と壁取付金具3の間に防振部材5、壁取付金具3の外面側にゴムブッシング5f、座金5g、二連ナット5hをこの順に配置し、各部品の貫通部に固定ボルト5d(実際には上側支持体6の外面側に溶接されている)を挿通して、ボルト・ナットを締付けている。かかる構成により上側支持体6、防振部材5及び壁取付金具3は一体に結合されている。説明を省略するが、下側結合部9(支持体7と壁取付金具4)についても同様の結合態様である。
【0012】
次に図6を参照して、上側結合部8及び下側結合部9の取付角度について説明する。上側結合部8については、上側支持体6及び壁取付金具3の取付角度は、防振部材5の変形方向の延長線L1が、ほぼ機器10の重心Gを通るように設定されている。同様に下側結合部9についても、下側支持体7及び壁取付金具4の取付角度は、防振部材5の変形方向の延長線L2が、ほぼ機器の重心Gを通るように設定されている。これにより、各防振部材5の接触面は、締め付け方向に対して垂直方向に全面的に接触した状態で締め付けられるため、各防振部材5の反力F1,F2は、各結合部の取付方向に対して平行に作用することになる。
【0013】
次に図3を参照して、壁掛防振装置1の設置方法について説明する。まず、壁面12への取り付けは、壁掛防振装置1の壁取付金具3、4のボルト孔を、壁面12に固定されている取付用ボルト(不図示)に挿通し、ナットで固定することにより行う。次いで、壁掛防振装置1の上側支持体6及び下側支持体7と、機器10の背面側取付金具10a、10bの対応するビス孔位置にボルトを挿通し、ナットで固定することにより設置が完了する。
【0014】
なお、本実施形態では防振部材5の変形方向の延長線L1、L2が、機器10の重心Gを通るように、上側結合部8及び下側結合部9の取付角度を設定する例を示したが、一方又は両方が重心Gから多少外れる取付角度に設定してもよい。
また、縦枠2aは断面チャネル形状の例を示したが、アングル形状等、フレームの強度を確保できる他の形状、材質のものを用いることもできる。
【0015】
(第二の実施形態)
さらに図7を参照して、本発明の他の実施形態について説明する。図7は、第二の実施形態に係る壁掛防振装置20の正面構成(a)及び側面構成(b)を示す図である。
壁掛防振装置20が上述の壁掛防振装置1と異なる点は、下側結合部22の取り付け角度である。すなわち、下側結合部22については、防振部材5の変形方向の延長線L3が水平方向となるように取り付けられている。この場合、変形方向延長線L3は、必ずしも機器の重心Gを通る必要はない。
その他の構成については、壁掛防振装置1と同一である。縦枠2aの側面側の幅についても壁掛防振装置1と同様に、上端部から下端部に向かって漸次狭くなるように構成されている。
【実施例】
【0016】
本発明の効果を確認するため、本発明に係る壁掛防振装置(第一の実施形態と同タイプ)を用いて、熱源機(給湯暖房機)の暖房運転時及び追焚運転時における防振性能を評価した。比較のため、縦枠形状のみ異なるタイプ及び従来タイプ(市販品の標準防振金具)を用いた評価も併せて行った。
(1)供試壁掛防振装置
表1に示す3タイプの壁掛防振装置について評価を行った。タイプ(a)が本発明に係る防振装置(第一の実施形態と同タイプ)である。各部寸法を図8にしめす。各部の材質は、防振部材を除きSUS304 2.0t(但し、縦枠部については1.5t)を用いている。また、防振部材にはバネ入り防振ゴムを用いている。
【0017】
【表1】
【0018】
(2)試験装置及び測定方法
標準的な給湯暖房機(給湯:2.7〜24号、暖房:2.67〜14.0kw、追焚:9.3 kw)を各タイプの壁掛防振装置に取り付けて、図9に示すように壁面裏側の高さ方向7箇所の左右(計14箇所)に振動センサ(加速度計)を配置して、暖房運転及び追焚時運転時の周波数別の加速度(m/s2)を測定した。
【0019】
(2)測定結果
a)暖房運転時
図10は、各タイプの各測定位置における加速度値を示す図である。これより最大振動位置において、本発明タイプ(a)及びストレートタイプ(b)は、ともに従来タイプ(c)と比較して、最大振動位置の加速度値が約1/3に減少していることが分かる。
b)追焚運転時
図11は、暖房用、追焚用の2つのポンプが駆動する追焚運転時の測定結果を示している。ストレートタイプでは、熱源機の追い焚き運転により側面の金具に共振が発生し、壁に伝わる振動加速度も大きくなり、防振性能が落ちていることが分かる。本発明タイプでは、上下の幅が異なるため共振が発生せず、良好な防振性能を示しているものと思われる。
図12は、位置3Aにおける周波数−加速度特性を示す図である。ストレートタイプでは80Hz付近に大きなピークがある。本発明タイプにも同じ所にピークはあるが、ストレートタイプと比較して加速度値は約1/10であり、本発明による効果が高いことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、熱源機のみならず、振動源を内蔵する重量機器用の壁掛防振装置として広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第一の実施形態に係る壁掛防振装置1を示す図である。
【図2】壁掛防振装置1の正面構成(a)及び側面構成(b)を示す図である。
【図3】機器10を取り付けた状態における壁掛防振装置1の側面構成を示す図である。
【図4】防振部材5の展開図である。
【図5】防振部材5の断面構成を示す図である。
【図6】機器10を取り付けた状態における壁掛防振装置1の力の釣り合いを示す図である。
【図7】第二の実施形態に係る壁掛防振装置20を示す図である。
【図8】試験に用いた本発明に係る壁掛防振装置の寸法を示す図である。
【図9】実施例の試験装置を示す図である。
【図10】暖房運転時の各タイプの各測定位置における加速度値を示す図である。
【図11】追焚運転時の各タイプの各測定位置における加速度値を示す図である。
【図12】追焚運転時の位置3Aにおける周波数−加速度特性を示す図である。
【図13】従来の壁掛防振装置100の側面を示す図である。
【符号の説明】
【0022】
1、20・・・壁掛防振装置
2 本体フレーム
2a 縦枠
2b 横枠
2c 横枠
2d ボルト孔
2d 各ボルト孔
3 上側壁取付金具
4 下側壁取付金具
5 防振部材
6 上側支持体
7 下側支持体
8 上側結合部
9 下側結合部
10 機器
L1〜L3 防振部材変形方向延長線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象機器と壁面の間に配置される壁掛防振装置であって、
対象機器を背面側から固定する本体フレームと、
本体フレームに固定される上部フレーム側支持体及び下部フレーム側支持体と、
壁面に固定される上部壁側支持体及び下部壁側支持体と、
上部フレーム側支持体と上部壁側支持体、又は、下部フレーム側支持体と下部壁側支持体の間に介装される防振部材と、を備え、かつ、
該本体フレームを構成する縦枠の側面からみて壁面と対向する側の幅を、上端部から下端部に向かい、漸次、細くなるように構成して成る、
ことを特徴とする壁掛防振装置。
【請求項2】
前記防振部材の変形方向の延長線が機器の重心を通るように、前記上部フレーム側支持体と前記上部壁側支持体、及び、前記下部フレーム側支持体と前記下部壁側支持体を構成したことを特徴とする請求項1に記載の壁掛防振装置。
【請求項3】
前記防振部材は、バネ入り防振ゴムと、スリーブ状弾性体と、の二層に構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の壁掛防振装置。
【請求項1】
対象機器と壁面の間に配置される壁掛防振装置であって、
対象機器を背面側から固定する本体フレームと、
本体フレームに固定される上部フレーム側支持体及び下部フレーム側支持体と、
壁面に固定される上部壁側支持体及び下部壁側支持体と、
上部フレーム側支持体と上部壁側支持体、又は、下部フレーム側支持体と下部壁側支持体の間に介装される防振部材と、を備え、かつ、
該本体フレームを構成する縦枠の側面からみて壁面と対向する側の幅を、上端部から下端部に向かい、漸次、細くなるように構成して成る、
ことを特徴とする壁掛防振装置。
【請求項2】
前記防振部材の変形方向の延長線が機器の重心を通るように、前記上部フレーム側支持体と前記上部壁側支持体、及び、前記下部フレーム側支持体と前記下部壁側支持体を構成したことを特徴とする請求項1に記載の壁掛防振装置。
【請求項3】
前記防振部材は、バネ入り防振ゴムと、スリーブ状弾性体と、の二層に構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の壁掛防振装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−133434(P2010−133434A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307251(P2008−307251)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(390024877)トーセツ株式会社 (28)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【出願人】(000224994)特許機器株式会社 (59)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(390024877)トーセツ株式会社 (28)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【出願人】(000224994)特許機器株式会社 (59)
【Fターム(参考)】
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