説明

変成炉の加熱方法及び変成炉

【課題】 より簡単に且つ確実にレトルト内の温度を均一化できる変成ガスの加熱方法を提供する。
【解決手段】 変成ガス発生用の触媒7を内蔵するとともに変成炉の炉体の内部に配設されるレトルト3と、該レトルト3における原料ガス上流側に熱風を供給する上流側リジェネバーナ8aと、前記レトルト3における原料ガス下流側に熱風を供給する下流側リジェネバーナ8bと、を備える変成炉において、前記レトルト3における原料ガス上流側に設けられた上流側制御用測温体33aの測温値に基づいて前記上流側リジェネバーナ8aの制御を行い、前記レトルト3における原料ガス下流側に設けられた下流側制御用測温体33bの測温値に基づいて前記下流側リジェネバーナ8bの温度制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変成ガスを発生させるための、変成炉の加熱方法に関するものである。本発明はまた、前記方法を実施するのに好適な変成炉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼のガス浸炭処理に用いる変成ガスを発生させるための変成炉として、特許文献1に記載のものが公知となっている。この従来の変成炉は、炉体の内部に配設されるレトルトと、該レトルトにおける原料ガス上流端部側に配設される上流端部側リジェネバーナと、前記レトルトにおける原料ガス下流端部側に配設される下流端部側リジェネバーナと、を備える。これらのリジェネバーナは、熱風の噴射と熱風の排気・蓄熱とを切り換えて行うことができ、いずれか一方のリジェネバーナが熱風の噴射を行うとき、他方は熱風の排気及び蓄熱を行う。前記レトルトの内部には、原料ガスを反応させて変成ガスを発生させるための触媒が配設される。
【0003】
前記レトルト内においては、原料ガスの上流側ほど未反応の原料ガスが多く存在するので、上流側ほど前記触媒による反応が活発に行われる。原料ガスの反応は吸熱反応であるため、上流側ほど原料ガスの反応による吸熱が激しい。そこで、前記各リジェネバーナによる熱風の供給を制御することにより、前記レトルト内における上流側と下流側の触媒間の温度を調節し均一化して、変成ガスの安定的な生成を図っている(特許文献1の0036段落参照)。具体的には、各リジェネバーナの熱風の噴射量を調整することで、熱量の供給量を増減させることが記載されている(特許文献1の0041段落参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−330169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記各リジェネバーナの熱風の噴射量を調整することで前記レトルト内の上流側と下流側の温度を確実に均一化させることは、なかなか難しい。
【0006】
本発明は、前記の如き事情に鑑みてなされたもので、より簡単に且つ確実にレトルト内の温度を均一化できる変成ガスの加熱方法を提供しようとするものである。
【0007】
本発明はまた、前記方法を実施するのに好適な変成炉を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、変成ガス発生用の触媒を内蔵するとともに変成炉の炉体の内部に配設されるレトルトと、該レトルトにおける原料ガス上流側に熱風を供給する上流側リジェネバーナと、前記レトルトにおける原料ガス下流側に熱風を供給する下流側リジェネバーナと、を備える変成炉において、前記レトルトにおける原料ガス上流側に設けられた上流側制御用測温体の測温値に基づいて前記上流側リジェネバーナの制御を行い、前記レトルトにおける原料ガス下流側に設けられた下流側制御用測温体の測温値により前記下流側リジェネバーナの制御を行うことを特徴とする変成炉の加熱方法である(請求項1)。
【0009】
好適な実施の一形態として、前記上流側制御用測温体が、前記レトルトの外側面又はレトルト内部であって、触媒内蔵部の長さをLとしたときに該触媒内蔵部の原料ガス上流側端部から1/10L〜4/10Lの位置に配置されており、前記下流側制御用測温体が、前記レトルトの外側面又はレトルト内部であって、前記触媒内蔵部の原料ガス上流側端部から1/2Lよりも下に配置されている態様を例示する(請求項2)。
【0010】
変成炉にかかわる本発明は、変成ガス発生用の触媒を内蔵するとともに変成炉の炉体の内部に配設されるレトルトと、該レトルトにおける原料ガス上流側に熱風を供給する上流側リジェネバーナと、前記レトルトにおける原料ガス下流側に熱風を供給する下流側リジェネバーナと、を備える変成炉において、前記レトルトにおける原料ガス上流側に上流側制御用測温体が設けられ、前記上流側リジェネバーナは前記上流側制御用測温体の測温値に基づいて制御され、前記レトルトにおける原料ガス下流側に下流側制御用測温体が設けられ、前記下流側リジェネバーナは前記下流側制御用測温体の測温値に基づいて制御される変成炉である(請求項3)。
【0011】
好適な実施の一形態として、前記上流側制御用測温体が、前記レトルトの外側面又はレトルト内部であって、触媒内蔵部の長さをLとしたときに触媒内蔵部の原料ガス上流側端部から1/10L〜4/10Lの位置に配置されており、前記下流側制御用測温体が、前記レトルトの外側面又はレトルト内部であって、前記触媒内蔵部の原料ガス上流側端部から1/2Lよりも下に配置されている態様を例示する(請求項4)。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の一形態に係る変成炉及びそれによる加熱方法の一部(第一の加熱工程)の概略図である。
【図2】図1の変成炉による加熱方法の他の一部(第二の加熱工程)の概略図である。
【図3】図1の変成炉による加熱方法のさらに他の一部(冷却工程)の概略図である。
【図4】本発明の実施の一形態に係る加熱方法の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の一形態について説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施の一形態に係る変成炉及びそれによる加熱方法の一部(第一の加熱工程)の概略図、図2は、図1の変成炉による加熱方法の他の一部(第二の加熱工程)の概略図、図3は、図1の変成炉による加熱方法のさらに他の一部(冷却工程)の概略図、図4は、本発明の実施の一形態に係る加熱方法の工程図である。
【0015】
まず、本発明の実施の一形態に係る変成炉の構成と作用を概略的に説明する。
【0016】
図1に示すように、本発明の実施の一形態に係る変成炉1は、密閉構造の炉体2を備えている。この炉体2の内部にはレトルト3が同心に配設されている。該レトルト3と前記炉体2との間には、中空筒状の加熱空間4が形成されている。前記レトルト3の内部には変成ガス導出管5が同心に配設され、該変成ガス導出管5と前記レトルト3の内側面との間の中空筒状の反応室(触媒内蔵部)6に、変成ガス発生用の触媒7が充填されている。前記炉体2には、一対のリジェネバーナ(蓄熱バーナ)8a,8bが配設されている。該各リジェネバーナ8a,8bは、前記加熱空間4に熱風9を供給し、前記レトルト3の外側から前記触媒7及び原料ガス10を加熱する。前記レトルト3内に供給される原料ガス10は、前記触媒7と接触しながら前記反応室6を流れる。この過程で、前記原料ガス10が、前記触媒7の作用と前記熱風9の加熱作用とにより、一酸化炭素と水素とを含む変成ガス11になる。この変成ガス11は、前記変成ガス導出管5から外部へ導出される。
【0017】
次に、前記変成炉1を具体的に説明する。
【0018】
前記レトルト3は、前記炉体2の天井部12に形成されたレトルト挿入孔13から挿入され、半球状の底面14は、前記炉体2内の底部に配設された台座15から離れた状態となっている。前記レトルト3の上部開口16は蓋部材17によって閉じられ、この蓋部材17と前記炉体2との間に介装された図示しないパッキンにより、前記レトルト3が密閉される。
【0019】
前記触媒7は、例えばニッケル(Ni)等の触媒層からなり、レトルトプラグ18と触媒支持板19との間の前記反応室6(触媒内臓部)内に充填されている。
【0020】
前記レトルトプラグ18は、前記レトルト3内の上端部において、前記変成ガス導出管5の外周面と前記レトルト3の内周面との間に嵌挿されている。前記レトルトプラグ18は、上下方向の多数の細管(図示せず)を有する。原料ガス10は、原料ガス供給路20を介して前記レトルトプラグ3の前記細管へと供給され、該細管により流速が速められて前記反応室6へ向けて供給される。前記原料ガス10としては、ブタンガス等を主に含有する炭化水素ガスと、空気等の酸化性ガスと、の混合ガスが用いられる。
【0021】
前記触媒支持板19は、前記レトルト3内の下部において、前記変成ガス導出管5の下端部と前記レトルト3の内周面との間に配設されている。前記触媒支持板19には、多数の小孔が形成されている。前記触媒支持板19と前記レトルト3の内部底面との間には、前記変成ガス導出管5に連通する半球状の空間21が形成される。前記反応室6で生成された変成ガス11は、前記半球状空間21を通って前記変成ガス導出管5内に入り、外部へと導出される。導出された変成ガス11は、適宜の温度に冷却されてガス浸炭等に用いられる。
【0022】
前記一対のリジェネバーナ8a,8bは、一方が前記レトルト3の前記反応室6(触媒内蔵部)の原料ガス上流部3a側に熱風を供給する上流側リジェネバーナ8aであり、他方が、前記レトルト3の前記反応室6(触媒内蔵部)の原料ガス下流部3b側に熱風を供給する下流側リジェネバーナ8bである。本実施の形態では、前記レトルト3が上下方向に向けて配設され、原料ガス10が前記反応室6内を上から下へ向けて流れる。このため、前記一対のリジェネバーナ8a,8bは、それぞれが前記レトルト3の触媒7が充填されている反応室6の上端部3a側と触媒7が充填されている反応室6の下端部3b側とに熱風を供給するように、前記炉体2の上下に配設されている。前記各リジェネバーナ8a,8bに対応して、前記炉体2の上部には上側熱風出入口22aが形成され、前記炉体2の下部には、下側熱風出入口22bが形成されている。
【0023】
前記一対のリジェネバーナ8a,8bはいずれも同一構成のバーナであり、各バーナ8a,8bとも燃焼部23a,23bと蓄熱部24a,24bをそれぞれ備える。前記各リジェネバーナ8a,8bは、熱風9の噴射と熱風9の排気を切換えて行うことができる。一方のリジェネバーナが熱風9の噴射を行うとき、他方のリジェネバーナは熱風9の排気を行う。
【0024】
前記各リジェネバーナ8a,8bにおいて、前記燃焼部23a,23bでは、外部から供給される燃焼用ガス25と前記蓄熱部24a,24bを介して供給される燃焼用エア26とが混合、燃焼することにより熱風9がつくられる。この熱風9が、前記各熱風出入口22a,22bから前記炉体2内へと噴射される。前記各燃焼部23a,23bは、上側ガスバルブ27aと下側ガスバルブ27bのそれぞれを介して、共通の燃焼ガス供給源28へと連通している。また、前記各蓄熱部24a,24bは、上側エアバルブ29aと下側エアバルブ29bのそれぞれを介して、共通の燃焼用エア送出部30へと連通している。
【0025】
前記各リジェネバーナ8a,8bにおいて、前記蓄熱部24a,24bには、熱風9を排気するときに排気の熱が蓄熱される。前記蓄熱部24a,24bに蓄えられた熱は、次に前記各リジェネバーナ8a,8bから熱風9が噴射される際に、前記燃焼用エア26を予熱する。これにより燃焼効率が向上するので、燃焼用ガス25の消費量を低減でき、省コストに貢献できる。前記各蓄熱部24a,24bは、上側排気バルブ31aと下側排気バルブ31bのそれぞれを介して、共通の排気吸入部32に連通している。該排気吸入部32の吸気作用により、前記炉体2内の熱風9が吸引される。
【0026】
前記各熱風出入口22a,22bは、そこから噴射される熱風9が前記レトルト3に沿って互いに逆方向に回転しながら螺旋状に流通する向きに配設されている。このため、例えば、図1に示すように、前記上流側リジェネバーナ8aにより前記上側熱風出入口22aから噴射される熱風9は、前記レトルト3の回りを反時計方向へと回転しながら螺旋状に下降し、前記下側熱風出入口22bから排気される。また、図2に示すように、前記下流側リジェネバーナ8bにより前記下側熱風出入口22bから噴射される熱風9は、前記レトルト3の回りを時計方向へと回転しながら螺旋状に上昇し、前記上側熱風出入口22aから排気される。一方のリジェネバーナから前記加熱空間4に熱風9が噴射され、他方のリジェネバーナから前記排気吸入部32の作用で前記加熱空間内の熱風9が吸引されるので、前記加熱空間4における熱風9の流通がきわめて円滑に行われ、前記レトルト3が効率的に加熱される。
【0027】
前記上側熱風出入口22aは、前記レトルトプラグ18の下端部18bより下方位置、且つ触媒7が充填されている反応室6の上端部に設けるのが好ましい。前記レトルトプラグ18内は原料ガスの分解を避けるために、加熱を避ける。原料ガス10は、前記レトルトプラグ3内から前記反応室6へと供給される。
【0028】
一方、前記下側熱風出入口22bは、触媒7が充填されている反応室6の下端部、すなわち触媒支持板19の僅か上方位置に配設するのが好ましい。
【0029】
このように、前記各熱風出入口22a,22bを、前記レトルト3の中心軸方向において互いに上下に離隔した位置に配設することにより、熱風9の流れが前記レトルト3の上から下まで満遍なく行き渡るので、前記レトルト3の全体を効率良く加熱することができる。
【0030】
前記変成炉1には、原料ガス上流部3a側における前記炉体2内の温度を測定する上流側制御用測温体としての上流側熱電対33aと、原料ガス下流部3b側における前記炉体2内の温度を測定する下流側制御用測温体としての下流側熱電対33bとが、前記反応室6のレトルト3の外側面に配設される。本実施の形態では、前記炉体2内において、前記レトルト3の上部と下部に対応する位置に、前記各熱電対33a,33bが配設されている。図1の例では、前記レトルトプラグ18の下端部18bよりやや下方となる高さ位置に前記上流側熱電対33aが配設され、前記触媒支持板19よりやや上方となる高さ位置に前記下流側熱電対33bが配設される。前記各熱電対33a,33bにより前記炉体2内の温度分布を把握できるので、温度均一化のための適切な制御を行うことが可能となる。
【0031】
レトルト3の外側面に配設されるとは、レトルト3の外側表面に熱電対等の測温体を接触させた状態あるいは実質的にレトルト3の温度制御ができる程度のレトルト3の外側表面の近傍を指す。なお、レトルト3の内部の触媒に接するような形で測温体を配設しても良い。
【0032】
次に、前記変成炉1を使用した変成ガスの生成方法(変成炉の加熱方法)を説明する。
【0033】
図4に示すように、本実施の形態による変成ガスの生成方法は、第一の加熱工程と第二の加熱工程とを含み、これらの加熱工程が交互に行われる。前記第一の加熱工程は、前記上流側リジェネバーナ8aから供給される熱風9を前記レトルト3の外側面に沿って流通させて前記下流側リジェネバーナ8bの蓄熱部24bを通して排出させる加熱工程である。一方、前記第二の加熱工程は、前記下流側リジェネバーナ8bから供給される熱風9を前記レトルト3の外側面に沿って流通させて前記上流側リジェネバーナ8aの蓄熱部24aを通して排出させる加熱工程である。
【0034】
図1には、前記第一の加熱工程の実施状態が示されている。すなわち、前記上側ガスバルブ27a、前記上側エアバルブ29a、前記下側排気バルブ31bがそれぞれ開状態とされ、これに対応して、前記下側ガスバルブ27b、前記下流側エアバルブ29b、前記上側排気バルブ31aが閉状態とされる。これにより、前記上流側リジェネバーナ8aから熱風9が噴射され、この熱風9は、前記レトルト3の回りを反時計方向へと回転しながら螺旋状に下降し、前記下側熱風出入口22bから吸入されて、前記下流側リジェネバーナ8bの蓄熱部24bを通して排出される。該蓄熱部24bには、熱風9の熱が蓄えられる。
【0035】
図2には、前記第二の加熱工程の実施状態が示されている。すなわち、前記下流側ガスバルブ27b、前記下側エアバルブ29b、前記上側排気バルブ31aがそれぞれ開状態とされ、これに対応して、前記上側ガスバルブ27a、前記上側エアバルブ29a、前記下側排気バルブ31bが閉状態とされる。これにより、前記下流側リジェネバーナ8bから熱風9が噴射され、この熱風9は、前記レトルト3の回りを時計方向へと回転しながら螺旋状に上昇し、前記上側熱風出入口22aから吸入されて、前記上流側リジェネバーナ8aの蓄熱部24aを通して排出される。該蓄熱部24aには、熱風9の熱が蓄えられる。
【0036】
前記レトルト3内においては、原料ガス10の上流側ほど未反応の原料ガスが多く存在するので、上流側ほど前記触媒7による反応が活発に行われる。原料ガス10の反応は吸熱反応であるため、上流側ほど原料ガス10の反応による吸熱が激しい。
【0037】
この吸熱反応が起こる原料ガスの供給される上流側の温度を上げることで、反応を促進し、生成する変成ガスの発生量を増やすことができる。しかし、上流側の供給熱量を増加すると、レトルトの下部が高温になりすぎレトルトの耐久性が劣化したり、リジェネバーナの排気ガスにより蓄熱部が加熱しすぎるという不具合が発生することが判った。そこで、本発明の発明者等は、生成する変成ガスの発生量を増やし、且つこれらの問題を解決できる、本発明を創案した、
【0038】
本発明では、原料ガス上流側に設けられた上流側制御用測温体と、原料ガス下流側に設けられた下流側制御用測温体からのそれぞれの測温値により、上流側リジェネバーナと下流側リジェネバーナの動作を制御し、レトルトの温度制御をすることを特徴とする。
【0039】
すなわち、図1の第一の加熱工程として、まず上流側リジェネバーナ8aが動作する際は、上流側リジェネバーナの燃焼は、上流側制御用測温体としての前記上流側熱電対33aの測温値により制御される。具体的には、前記上流側熱電対33aの測温値に基づいて、且つ、該上流側熱電対33aが設定された所定の温度となるように、前記上流側リジェネバーナ8aの燃焼がその出力や時間などの方法により制御される。なお、このときさらに、下流側制御用測温体としての前記下流側熱電対33bの測温値が所定の温度以上にならないように、上流側リジェネバーナ8aの出力や時間等を制御しても良い。
【0040】
図2の第二の加熱工程としては、下流側リジェネバーナ8bが動作するが、前記下流側熱電対33bの測温値に基づいて、且つ、該下流側熱電対33bが設定された所定の温度となるように、前記下流側リジェネバーナ8bの燃焼がその出力や時間などの方法により制御される。
【0041】
また、上流側熱電対33aは、吸熱反応の部分に対応するように、レトルト3の反応室6の触媒7中であって、前記触媒内蔵部(反応室)6の長さをLとしたときに、触媒内蔵部の上端部から1/10L〜4/10Lの位置に配置されることが好ましい。この範囲に上記吸熱部が存在する。具体的には触媒内蔵部の触媒の上端部から100〜400mm下方にあたる。さらに好ましくは、触媒内蔵部の上端部から1/10L〜3/10Lの位置で、100〜300mm下方であることが好ましい。
【0042】
また、下流側熱電対33bは、レトルト3の下部が高温になりすぎないようにするため、その位置はレトルト3の反応室6の触媒7中であって、前記触媒内蔵部(反応室)の長さをLとしたときに、触媒内蔵部の上端部から1/2Lより下方であることが好ましく、さらには6/10Lより下方であることが好ましい。
【0043】
本実施の形態としては、上述の通り、上部に下部より多くの熱量を供給する必要があるが、上下のバーナの出力や時間によって熱量の供給を制御することが好ましい。
【0044】
例えば、上下のリジェネバーナの切り替えを一定の時間毎に行うとすると、上部のバーナの出力を100kWとし、下部のバーナの出力を50kWとする。これにより熱量のバランスをとることができる。
【0045】
また、本実施の形態では、前記各リジェネバーナ8a,8bによる熱風9の供給時間を制御することにより、上部に下部より多くの熱量を供給し、前記レトルト3内における上流側と下流側の触媒7間の温度を調節し均一化して、変成ガス11の安定的な生成を図ることもできる。
【0046】
具体的には、前記各リジェネバーナ8a,8bによる前記第一の加熱工程の毎回の実施時間を前記第二の加熱工程の毎回の実施時間より長く設定する。これにより、前記レトルト3における原料ガス上流部3a側の温度と、原料ガス下流部3b側の温度の均一化が図られる。すなわち、前記原料ガス上流部3a側の温度は、吸熱反応により低下し易いが、前記第一の加熱工程が前記第二の加熱工程よりも長時間行われることにより、前記温度の低下が抑制され、レトルト全体における温度の均一化が確実に達成される。したがって、原料ガスの反応効率が向上し、良質の変成ガスを効率的に生成することができる。
【0047】
ところで、前記第一の加熱工程を前記第二の加熱工程よりも長時間行うと、前記上流側リジェネバーナ8aの蓄熱部24aに比べて、前記下流側リジェネバーナ8bの蓄熱部24bが高温になりやすい。その理由は二つある。一つは、前記上流側リジェネバーナ8aの蓄熱部24aよりも前記下流側リジェネバーナ8bの蓄熱部24bの方が蓄熱時間が長くなるからである。二つ目の理由は、前記下流側リジェネバーナ8bの蓄熱部24bの方が冷却時間が短いからである。すなわち、前記各蓄熱部24a,24bは、蓄熱後に該各蓄熱部24a,24bを通過する燃焼用エア26との間の熱交換により冷やされる。したがって、前記第一の加熱工程を前記第二の加熱工程よりも長時間行えば、前記上流側リジェネバーナ8aの蓄熱部24aよりも前記下流側ジェジェネバーナ8bの蓄熱部24bの方が冷却時間が短くなるのである。
【0048】
以上のように、前記下流側リジェネバーナ8bの蓄熱部24bは、前記上流側リジェネバーナ8aの蓄熱部24aよりも、蓄熱時間が長く、且つ冷却時間が短い。したがって、前記第一の加熱工程と前記第二の加熱工程を何度も繰り返していると、前記下流側リジェネバーナ8bの蓄熱部24bが高熱により破損してしまう事態も考えられる。
【0049】
そこでこの場合には、前記第二の加熱工程の直後に冷却工程を加え、その後に前記第一の加熱工程を行うようにする。ここで、前記冷却工程とは、前記下流側リジェネバーナ8bへの燃焼用ガス25の供給をストップし、前記下流側リジェネバーナ8bの蓄熱部24bを通して供給される燃焼用エア26のみを前記レトルト3の外側面に沿って流通させ、前記上流側リジェネバーナ8aの蓄熱部24aを通して排出させる工程である。
【0050】
図3には、前記冷却工程の実施状態が示されている。すなわち、前記下側エアバルブ29b、前記上側排気バルブ31aがそれぞれ開状態とされ、前記上側ガスバルブ27a、前記上側エアバルブ29a、前記下側排気バルブ31b及び前記下側ガスバルブ27bが閉状態とされる。これにより、前記下流側リジェネバーナ8bの蓄熱部24bがエアで冷やされる。このエアは、前記レトルト3の回りを時計方向へと回転しながら螺旋状に上昇し、前記上側熱風出入口22aから吸入されて、前記上流側リジェネバーナ8aの蓄熱部24aを通して排出される。
【0051】
前記冷却工程は、前記第二の加熱工程と前記第一の加熱工程との間に毎回行う。前記冷却工程を加えることにより、前記燃焼用エア26によって前記下流側リジェネバーナ8bの蓄熱部24bが冷却されるので、該蓄熱部24bの蓄熱温度が低下する。これにより、該蓄熱部24bの破損が防止される。また、前記冷却工程を行うことにより、炉内温度が高温になり過ぎることも抑制できるので、前記炉体2の破損も防止できる。
【0052】
好適な実施の一形態として、前記第二の加熱工程の毎回の実施時間と前記冷却工程の毎回の実施時間の合計時間が、前記第一の加熱工程の毎回の実施時間と同一である態様とすることもできる。
【0053】
前記各工程の実施時間は、例えば、前記第一の加熱工程を30秒、前記第二の加熱工程を15秒、前記冷却工程を15秒のように設定することができる。
【0054】
なお、前記各工程の実施時間は、前記各熱電対33a,33bの実験的な測定値を利用して予め定めておくこともできるし、変成ガスの実際の生成工程において、前記各熱電対33a,33bの測定値を参照しながらオペレータが随時調整したり、あるいは、前記各熱電対33a,33bの測定値をマイクロコンピュータ等を含む制御回路に連続的に入力して自動制御する方式とすることもできる。
【0055】
また、前記各加熱工程において、前記加熱空間4内を加熱前にパージする前パージと、前記加熱空間4内を加熱後にパージする後パージと、を含ませることもできる。例えば、前記前パージは1秒、前記後パージは3秒程度行う。
【実施例】
【0056】
実施例1
図1に示す変成炉において、レトルト3の反応室6の外側面に制御用熱電対33a,33bを反応室6の上部と下部に設けた。レトルト3中の触媒7は、レトルトプラグ18の下端から触媒支持板19まで充填されており、この高さ(長さ)は1280mmであった。上部の熱電対33a、すなわち原料ガスの上流側に設けられた上流側制御用測温体は、前記レトルトプラグ18の下端から350mmの位置に設けた。また、下部の熱電対33b、すなわち原料ガスの下流側に設けられた下流側制御用測温体は、前記レトルトプラグ18の下端から1190mmの位置に設けた。なお、制御温度はいずれも1080℃とした。
【0057】
原料ガスは、炭化水素系ガスとして都市ガス13Aを、炭酸ガスとして二酸化炭素を、酸化性ガスとして空気を使用した。都市ガス13A、二酸化炭素、空気のモル比率は、およそ1:0.6:1.4として所定量を変成炉に導入した。
【0058】
リジェネバーナの燃焼量は上下とも75kWとし、上下の燃焼の切り替えは30秒/30秒とし、ガスを所定の量流したときの変成ガス(CO濃度:35vol%)の発生量と、反応室6内の触媒7の温度分布と、蓄熱体を通る排ガスの排気温度を測定した。なお、原料ガスは、得られる変成ガス中のCHガスの濃度(vol%)が0.05vol%以下であるように制御した中で、最も変成ガスの発生量が多くなるように供給した。
【0059】
反応室6内の触媒7の温度分布は、レトルトプラグ18の下端から距離を変えた触媒7内の複数の箇所に熱電対を設けて測温した。レトルトプラグ下端からの距離は、上から(1)250mm、(2)350mm、(3)550mm、(4)640mm、(5)1010mm、(6)1190mmである。
【0060】
このとき、変成ガスの発生量は60m3/hであり、上記箇所の触媒の温度は(1)1085℃、(2)1056℃、(3)1050℃、(4)1055℃、(5)1070℃、(6)1080℃であり、上部蓄熱体の排ガス温度は254℃で、下部蓄熱体の排ガス温度は283℃であった。
【0061】
なお、発生した変成ガスの成分は、COが35vol%、CO2が0.6vol%、CH4が0.05vol%、残部がNであった。
【0062】
実施例2
リジェネバーナの燃焼量を85kWとした以外は、実施例1と同様にして変成ガス(CO濃度:35vol%)を発生させた。
【0063】
このとき、変成ガスの発生量は60m3/hであり、上記各箇所の触媒の温度は(1)1078℃、(2)1062℃、(3)1064℃、(4)1070℃、(5)1075℃、(6)1080℃であり、上部蓄熱体の排ガス温度は254℃で、下部蓄熱体の排ガス温度は283℃であった。
【0064】
なお、発生した変成ガスの成分は、COが35vol%、CO2が0.6vol%、CH4が0.05vol%、残部がNであった。
【0065】
実施例3
リジェネバーナの燃焼量を89kWとした以外は、実施例1と同様にして変成ガス(CO濃度:35vol%)を発生させた。
【0066】
このとき、変成ガスの発生量は58m3/hであり、上記各箇所の触媒の温度は(1)1084℃、(2)1073℃、(3)1066℃、(4)1067℃、(5)1075℃、(6)1080℃であり、上部蓄熱体の排ガス温度は254℃で、下部蓄熱体の排ガス温度は288℃であった。
【0067】
なお、発生した変成ガスの成分は、COが35vol%、CO2が0.6vol%、CH4が0.04vol%、残部がNであった。
【0068】
比較例1
触媒の中央に相当するレトルト外側面に制御用測温体として熱電対をレトルトプラグの下端から640mmの位置に1つだけ設け、上流側リジェネバーナおよび下流側リジェネバーナをこの1つの熱電対により制御した以外は、実施例1と同様にして変成ガス(CO濃度:35vol%)を発生させた。
【0069】
このとき、変成ガスの発生量は42m3/hであり、上記各箇所の触媒の温度は(1)1005℃、(2)1005℃、(3)1020℃、(4)1080℃、(5)1065℃、((6)は未測定)であり、上部蓄熱体の排ガス温度は200℃で、下部蓄熱体の排ガス温度は250℃であった。
【0070】
なお、発生した変成ガスの成分は、COが35vol%、CO2が0.6vol%、CH4が0.04vol%、残部がNであった。
【0071】
比較例2
レトルトの外側面に制御用測温体として熱電対をレトルトプラグの下端から1190mmの位置に1つだけ設け、上流側リジェネバーナおよび下流側リジェネバーナをこの1つの熱電対により制御した以外は、実施例1と同様にして変成ガス(CO濃度:35vol%)を発生させた。
【0072】
このとき、変成ガスの発生量は41m3/hであり、上部蓄熱体の排ガス温度は249℃で、下部蓄熱体の排ガス温度は268℃であった。
【0073】
なお、発生した変成ガスの成分は、COが35vol%、CO2が0.6vol%、CH4が0.02vol%、残部がNであった。
【0074】
比較例3
レトルトの外側面に制御用測温体として熱電対をレトルトプラグの下端から350mmの位置に1つだけ設け、上部リジェネバーナおよび下部リジェネバーナをこの1つの熱電対により制御した以外は、実施例1と同様にして変成ガス(CO濃度:35vol%)を発生させた。
【0075】
このとき、変成ガスの発生量は63m3/hであり、上記箇所の触媒の温度は(1)1080℃、(2)1080℃、(3)1080℃、(4)1110℃、(5)1030℃、(6)1150℃であり、上部蓄熱体の排ガス温度は269℃で、下部蓄熱体の排ガス温度は293℃であった。
【0076】
なお、発生した変成ガスの成分は、COが35vol%、CO2が0.6vol%、CH4が0.01vol%、残部がNであった。
【0077】
実施例4
上流側測温体として熱電対をレトルトの外側面のレトルトプラグの下端から250mmの位置とした以外は、実施例1と同様にして変成ガス(CO濃度:35vol%)を発生させた。
【0078】
このとき、変成ガスの発生量は55m3/hであり、上部蓄熱体の排ガス温度は275℃で、下部蓄熱体の排ガス温度は287℃であった。
【0079】
なお、発生した変成ガスの成分は、COが35vol%、CO2が0.6vol%、CH4が0.04vol%、残部がNであった。
【0080】
実施例5
上流側測温体として熱電対をレトルトの外側面のレトルトプラグの下端から450mmの位置とした以外は、実施例1と同様にして変成ガス(CO濃度:35vol%)を発生させた。
【0081】
このとき、変成ガスの発生量は60m3/hであり、上部蓄熱体の排ガス温度は273℃で、下部蓄熱体の排ガス温度は293℃であった。
【0082】
なお、発生した変成ガスの成分は、COが35vol%、CO2が0.6vol%、CH4が0.02vol%、残部がNであった。
【0083】
実施例6
上流側測温体として熱電対をレトルトの外側面のレトルトプラグの下端から550mmの位置とした以外は、実施例1と同様にして変成ガス(CO濃度:35vol%)を発生させた。
【0084】
このとき、変成ガスの発生量は60m3/hであり、上部蓄熱体の排ガス温度は262℃で、下部蓄熱体の排ガス温度は289℃であった。
【0085】
なお、発生した変成ガスの成分は、COが35vol%、CO2が0.6vol%、CH4が0.02vol%、残部がNであった。
【0086】
以上、本発明の実施例においては、比較例と比べて変成ガスの発生が13〜19m3/hも量が増え、またレトルトを長期使用する場合の耐熱の限界と考えられる1100℃以下に各箇所の温度が制御され、且つ蓄熱体を破壊しない300℃以下の排ガス温度を保持することができる。
【0087】
また、通常、変成炉において変成ガスの発生量を増やそうとすると、不完全反応が起こりやすく、CHガス濃度が高くなる。CHガス濃度が高くなると炉内にススが溜まり、炉の操業不能に陥る危険性がある。これに対し、本発明の変成炉の加熱方法及び変成炉により、CHガスの発生を抑制し且つ変成ガスの発生量を大幅に増大することができた。
【0088】
さらには、本発明により、レトルトの局部的な温度上昇を抑制し、また、リジェネバーナの蓄熱体を破壊しない温度に制御することができ、レトルト及びリジェネバーナの耐久性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0089】
1 変成炉
2 炉体
3 レトルト
3a 原料ガス上流端部
3b 原料ガス下流端部
7 触媒
8a 上流端部側リジェネバーナ
8b 下流端部側リジェネバーナ
9 熱風
24a 蓄熱部
24b 蓄熱部
26 エア(燃焼用エア)
33a 上流端部側熱電対
33b 下流端部側熱電対

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変成ガス発生用の触媒を内蔵するとともに変成炉の炉体の内部に配設されるレトルトと、
該レトルトにおける原料ガス上流側に熱風を供給する上流側リジェネバーナと、
前記レトルトにおける原料ガス下流側に熱風を供給する下流側リジェネバーナと、を備える変成炉において、
前記レトルトにおける原料ガス上流側に設けられた上流側制御用測温体の測温値に基づいて前記上流側リジェネバーナの制御を行い、
前記レトルトにおける原料ガス下流側に設けられた下流側制御用測温体の測温値に基づいて前記下流側リジェネバーナの制御を行うことを特徴とする変成炉の加熱方法。
【請求項2】
前記上流側制御用測温体は、前記レトルトの外側面又はレトルト内部であって、触媒内蔵部の長さをLとしたときに該触媒内蔵部の原料ガス上流側端部から1/10L〜4/10Lの位置に配置されており、
前記下流側制御用測温体は、前記レトルトの外側面又はレトルト内部であって、前記触媒内蔵部の原料ガス上流側端部から1/2Lよりも下に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の変成炉の加熱方法。
【請求項3】
変成ガス発生用の触媒を内蔵するとともに変成炉の炉体の内部に配設されるレトルトと、
該レトルトにおける原料ガス上流側に熱風を供給する上流側リジェネバーナと、
前記レトルトにおける原料ガス下流側に熱風を供給する下流側リジェネバーナと、を備える変成炉において、
前記レトルトにおける原料ガス上流側に上流側制御用測温体が設けられ、
前記上流側リジェネバーナは前記上流側制御用測温体の測温値に基づいて制御され、
前記レトルトにおける原料ガス下流側に下流側制御用測温体が設けられ、
前記下流側リジェネバーナは該下流側制御用測温体の測温値に基づいて制御される、変成炉。
【請求項4】
前記上流側制御用測温体は、前記レトルトの外側面又はレトルト内部であって、触媒内蔵部の長さをLとしたときに該触媒内蔵部の原料ガス上流側端部から1/10L〜4/10Lの位置に配置されており、
前記下流側制御用測温体は、前記レトルトの外側面又はレトルト内部であって、前記触媒内蔵部の原料ガス上流側端部から1/2Lよりも下に配置されていることを特徴とする、請求項3に記載の変成炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−260769(P2010−260769A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−113705(P2009−113705)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【出願人】(306039120)DOWAサーモテック株式会社 (45)
【Fターム(参考)】