説明

変速操作装置、ダブルクラッチ変速装置

【課題】 本発明は、伝達部の歯車の偏摩耗を抑制できる変速操作装置を提供する。
【解決手段】 ダブルクラッチ変速装置300は、入力装置301と、変速操作装置100とを備える。変速操作装置100は、第1〜5のシフトフォーク106〜110と、第1〜5のシフトフォーク106〜110を駆動する第1,2のアーム部材125,126およびシフトスリーブ123と、第1〜5のシフトフォーク106〜110の駆動源であるシフト用モータ141と、シフト用モータ141の駆動力をシフトスリーブ123および第1,2のアーム部材125,126に伝達するシフト用減速部142とを備える。シフト用減速部142は、第1〜6のシフト用歯車143〜148を有する。第6のシフト用歯車148は、シフトスリーブ123に設けられる。変速操作装置100は、その動作モードとして、第6のシフト用歯車148を1回転する偏摩耗抑制動作モードを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車が備える変速操作装置に関する。また、本発明は、前記変速操作装置を備えるダブルクラッチ変速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に用いられるダブルクラッチ変速装置は、各変速段に対応する複数のギヤを備えて変速を操作する変速操作装置と、変速操作装置にエンジンの回転を入力する入力装置とを備えている。
【0003】
入力装置は、第1,2の主軸と、第1,2の主軸に選択的にエンジンの回転を伝達する第1,2のクラッチと、第1,2の主軸に設けられて第1,2の主軸と一体に回転する、各変速段に対応する固定ギヤとを備えている。
【0004】
変速操作装置は、出力軸に連結される例えば第1〜3の副軸と、これら副軸に回転自由に設けられて固定ギヤに噛み合う各変速段に対応する遊転ギヤと、遊転ギヤを副軸に一体に連結可能な係合装置とを備えている。
【0005】
変速操作装置は、さらに、シフトフォークと、当該シフトフォークが設けられる複数のシフトレールと、これらシフトレールが並ぶセレクト方向に軸線が沿うように配置されるシャフト部材とを備えている。シャフト部材は、セレクト方向に移動可能であるとともに、セレクト方向に延びる回転軸回りに回動可能である。
【0006】
シフトレールには、シフトラグが設けられている。シャフト部材には、アーム部材が設けられている。シャフト部材が回転することによって、アーム部材がセレクト方向に直交するシフト方向に移動する。アーム部材が目的の変速段のシフトラグに当接し当該シフトラグをシフト方向に押圧することによって、シフトフォークが係合装置を駆動し、それゆえ、目的の変速段へのシフトが達成される。
【0007】
このため、変速操作装置は、アーム部材をセレクト方向にそって目的のシフトレールまで移動するセレクト方向移動部と、シャフト部材を回転してアーム部材で目的のシフトラグを押圧するシフト方向移動部とを備えている。
【0008】
セレクト方向移動部とシフト方向移動部とは、ともに、電動モータなどのアクチュエータと、電動モータの回転を減速して伝達してシャフト部材の移動または回転を達成する複数の歯車の組み合わせで構成される伝達部とを備えている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−197940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
シフト方向移動部では、目的の変速段へのシフトが完了する瞬間に、伝達部において互いに噛み合う歯車どうしの噛み合い部分に大きな荷重が作用する。これに対して、目標変速段へのシフトを完了するべくアーム部材(シャフト部材)に求められる回転の範囲は、どの変速段においても一定である。つまり、互いに噛み合う歯車どうしにおいて、大きな荷重が入力される部分は、一定の部分となる。このため、大きな荷重が入力される部分の摩耗が進み、伝達部の歯車が偏摩耗する傾向にある。
【0011】
歯車が偏摩耗することによって、シャフト部材がスムーズに回転しなくなることが考えられ、それゆえ、シフト動作がスムーズに行われなくなることが考えられる。
【0012】
本発明は、伝達部の歯車の偏摩耗を抑制できる変速操作装置を提供することにある。他の本発明は、前記変速装置を備えるダブルクラッチ変速装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の発明の変速操作装置は、変速段用ギヤと、前記変速段用ギヤが回転自由に設けられる軸と、前記変速段用ギヤを前記軸と一体に回転するよう互いを係合可能な係合装置と、前記係合装置を動作するシフトフォークと、前記シフトフォークを駆動するシフトフォーク駆動機構と、前記シフトフォーク駆動機構の駆動源と、前記駆動源を制御する制御装置とを備える。前記シフトフォーク駆動機構は、前記シフトフォークを操作する操作部と、前記駆動源の駆動力を前記操作部に伝達する複数の歯車を備える伝達部とを備える。前記伝達部は、前記複数の歯車の互いに噛み合う組み合わせのうち少なくとも1つの組み合わせの一対の歯車の歯数が互いに素である。前記制御装置は、変速を行う変速動作モードと、前記複数の歯車のうち互いに噛み合いかつ歯数が互いに素である少なくとも1つの組み合わせの少なくとも一方の歯車を1回転させる偏摩耗抑制動作モードとを切換えて前記駆動源を制御する。
【0014】
請求項2に記載の発明の変速操作装置は、請求項1に記載の変速操作装置において、前記複数の歯車のうち、一方の歯車は前記伝達経路の最後に配置される最終歯車であり、他方の歯車は前記最終歯車に組み合う歯車である。
【0015】
請求項3に記載の発明の変速操作装置は、請求項1に記載の変速操作装置において、前記複数の歯車のうち互いに噛み合うすべての組み合わせにおいて各組み合わせの一対の歯車の歯数は、互いに素である。
【0016】
請求項4に記載の発明の変速操作装置では、請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の変速操作装置において、前記操作部は、セレクト方向に複数配置されて前記セレクト方向と直交するシフト方向に延び、かつ、各々に前記シフトフォークの少なくとも1つが固定されて前記シフト方向に移動可能なシフトレールと、前記シフトレールに設けられるシフトラグと、前記セレクト方向に延びるとともに、前記セレクト方向に延びる回転軸回りに回転可能なシャフト部材と、前記シャフト部材に設けられて前記シャフト部材の周方向に突出するアーム部材であって、前記シャフト部材の前記セレクト方向の移動に伴って前記セレクト方向に移動して前記シフトラグのうち目標シフトラグを選択し、当該選択の後前記シャフト部材の回転に伴って回転することによって前記目標シフトラグを押圧して前記シフトフォークを前記シフト方向に移動させるアーム部材とを備える。前記伝達部の前記伝達経路の最後に配置される最終歯車は、前記シャフト部材と一体に回転可能に設けられる。前記セレクト方向に沿う前記複数のシフトラグの並ぶ列は、前記アーム部材が1回転する際に前記アーム部材が前記シフトラグに接触しない無接触範囲を有する。前記偏摩耗抑制動作モードでは、前記アーム部材は、前記無接触範囲内に位置する。
【0017】
請求項5に記載の発明の変速操作装置では、請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の変速操作装置において、前記操作部は、回転可能に設けられて表面に前記シフトフォークを動作するガイド溝が形成されるシフトドラムである。前記ガイド溝は、前記シフトドラムの回転軸回りに連続して環状につながる。
【0018】
請求項6に記載の発明のダブルクラッチ変速装置は、請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載の変速操作装置を備える。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載の変速操作装置では、伝達部の複数の歯車のうち互いに噛み合いかつ歯数が互いに素である少なくとも1つの組み合わせの少なくとも一方の歯車を1回転させるたびに、上記歯数が互いに素である組み合わせの歯車の噛み合わせの範囲は変更される。
【0020】
このため、係合装置が変速段用ギヤと軸とを係合する瞬間に伝達部の歯車の噛み合い部分に作用する大きな力による摩耗が、歯車の偏った部分にのみ生じることがない。このため、偏摩耗が抑制される。歯車の偏摩耗の発生が抑制されることによって、伝達部による駆動源の駆動力の伝達がスムーズに行われるので、変速動作に不具合が生じにくくなる。
【0021】
請求項2に記載の変速操作装置では、偏摩耗しやすい最終歯車と最終歯車と噛み合う歯車との歯数を互いに素にすることによって、歯車に偏摩耗が生じることがより一層抑制されるので、変速動作の不具合の発生をより一層抑制することができる。
【0022】
請求項3に記載の変速操作装置では、伝達部の互いに噛み合う歯車の全ての組み合わせにおいて各組み合わせの一対の歯車の歯数を互いに素にすることによって、変速動作の不具合の発生をより一層抑制することができる。
【0023】
請求項4に記載の変速操作装置では、操作部が、シフトレールと、シフトラグと、シャフト部材と、アーム部材とを備える構造においても、請求項1〜3に記載の変速操作装置と同様の効果を得ることができる。
【0024】
請求項5に記載の変速操作装置では、操作部がシフトドラムである構造においても、請求項1〜3に記載の変速操作装置と同様の効果を得ることができる。
【0025】
請求項6に記載のダブルクラッチ変速装置では、当該ダブルクラッチ変速装置の変速操作装置は、請求項1〜5の記載の変速操作装置と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る変速装置と入力装置とを示す概略図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る変速装置の変速操作装置を示す斜視図。
【図3】図2に示された変速操作装置を別の方向から見た状態を示す斜視図。
【図4】図2に示された変速操作装置を示す側面図。
【図5】図2に示された第1〜4のシフトラグを示す平面図。
【図6】図4に示される第1,2のセンサの基準位置の補正制御動作モードを示すフローチャート。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る変速操作装置を、一部切欠いて示す側面図。
【図8】図7に示される第1〜4のガイド溝が展開された状態を示す展開図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の第1の実施形態に係る変速操作装置とダブルクラッチ変速装置とを、図1〜5を用いて説明する。図1は、本実施形態の変速操作装置100を備えるダブルクラッチ変速装置300を示す模式図である。ダブルクラッチ変速装置300は、前進6段後進1段式である。
【0028】
ダブルクラッチ変速装置300は、一例として走行用のエンジン302を備える自動車(図示せず)に搭載されている。ダブルクラッチ変速装置300は、変速操作装置100(図2〜4に示す)と、入力装置301と、これらを収容するケーシング121(図4に一部示す)とを備えている。変速操作装置100は、本発明の変速操作装置の一例である。図1に示すように、エンジン302の回転は、入力装置301によって変速操作装置100に入力され、変速操作装置100がエンジン302の回転を変速する。
【0029】
入力装置301は、第1,2のクラッチ2,3と、同軸上に配置された第1,2の主軸4,5と、複数の固定ギヤとを備えている。
【0030】
第1の主軸4は、第2の主軸5の内側に、第2の主軸5とは独立して回転可能に収容されている。第1の主軸4は、第1のクラッチ2を介して、エンジン302の出力軸9から動力が伝達される。第2の主軸5は、第2のクラッチ3を介して出力軸9から動力が伝達される。
【0031】
複数の固定ギヤは、各変速段に対応する固定ギヤである。第1の主軸4には、1速用固定ギヤ11と、3速用固定ギヤ13と、5速用固定ギヤ15とが接続されている。1速用固定ギヤ11と3速用固定ギヤ13と5速用固定ギヤ15とは、第1の主軸4に一体に固定されており、第1の主軸4と一体に回転する。
【0032】
第2の主軸5には、2速兼リバース用固定ギヤ12と、4速兼6速用固定ギヤ14とが接続されている。2速兼リバース用固定ギヤ12と4速兼6速用固定ギヤ14とは、第2の主軸5に一体に固定されており、第2の主軸5と一体に回転する。
【0033】
次に、図1〜4を用いて、変速操作装置100について説明する。図2,3は、変速操作装置100の一部を示す斜視図である。図4は、変速操作装置100の一部を示す側面図である。
【0034】
図1〜4に示すように、変速操作装置100は、第1〜3の副軸6,7,8と、複数の遊転ギヤと、係合装置と、第1〜5のシフトレール101〜105と、第1〜5のシフトフォーク106〜110と、シャフト部120と、セレクト方向駆動部130と、シフト方向移動部140と、ECU150と、第1,2のセンサ160,161とを備えている。
【0035】
図1に示すように、第1〜3の副軸6〜8は、第1の主軸4と第2の主軸5と軸線が平行になるように夫々離間して配置されているとともに、デフ10に動力を伝達可能に構成されている。デフ10は、図示しない車輪に連結されており、ダブルクラッチ変速装置300で変速されたエンジン302の回転を車輪に伝達する。
【0036】
複数の遊転ギヤは、各変速段に対応する遊転ギヤである。第1の副軸6には、1速用遊転ギヤ21と、2速用遊転ギヤ22と、4速用遊転ギヤ24と、5速用遊転ギヤ25とが、第1の副軸6に対して相対的に回転可能に枢支されている。第2の副軸7には、3速用遊転ギヤ23と、6速用遊転ギヤ26と、リバース用中間遊転ギヤ28とが、第2の副軸7に対して相対的に回転可能に枢支されている。第3の副軸8には、リバース用遊転ギヤ29が、第3の副軸8に対して相対的に回転可能に枢支されている。
【0037】
1速用遊転ギヤ21は、1速用固定ギヤ11と噛み合っており、1速用固定ギヤ11に合わせて回転する。2速用遊転ギヤ22は、2速兼リバース用固定ギヤ12と噛み合っており、2速兼リバース用固定ギヤ12に合わせて回転する。3速用遊転ギヤ23は、3速用固定ギヤ13と噛み合っており、3速用固定ギヤ13に合わせて回転する。
【0038】
4速用遊転ギヤ24は、4速兼6速用固定ギヤ14と噛み合っており、4速兼6速用固定ギヤ14に合わせて回転する。5速用遊転ギヤ25は、5速用固定ギヤ15と噛み合っており、5速用固定ギヤ15に合わせて回転する。6速用遊転ギヤ26は、4速兼6速用固定ギヤ14と噛み合っており、4速兼6速用固定ギヤ14に合わせて回転する。
【0039】
リバース用中間遊転ギヤ28は、2速兼リバース用固定ギヤ12と噛み合っており、2速兼リバース用固定ギヤ12に合わせて回転する。リバース用遊転ギヤ29は、リバース用中間遊転ギヤ28に噛み合っており、リバース用中間遊転ギヤ28に合わせて回転する。
【0040】
第1の副軸6には、第1,2の係合装置31,32が設けられている。第1の係合装置31は、1速用遊転ギヤ21と5速用遊転ギヤ25とを選択的に第1の副軸6に係合する。具体的には、第1の係合装置31は、第1の副軸6に組みつけられて第1の副軸6と一体に回転するクラッチハブ32と、クラッチハブスリーブ33とを備えている。クラッチハブ32の周面には、第1の副軸6の軸線回りに連続して配置される複数の歯が形成されている。クラッチハブ32の歯は、第1の副軸6の軸線に沿って延びている。
【0041】
クラッチハブスリーブ33は、クラッチハブ32の歯と噛み合って第1の副軸6と一体に回転する。クラッチハブスリーブ33は、第1の副軸6にそって、1速用遊転ギヤ21と噛み合う位置と、5速用遊転ギヤ25と噛み合う位置との間で移動可能である。これら両噛み合う位置の間の位置は、どちらのギヤとも噛み合わないニュートラル位置である。
【0042】
クラッチハブスリーブ33は、1速用遊転ギヤ21または5速用遊転ギヤ25に選択的に噛み合うことによって、噛み合った方のギヤを第1の副軸6と一体に回転するように、第1の副軸6に係合する。
【0043】
同様に、第1の副軸6は、2速用遊転ギヤ22または4速用遊転ギヤ24を第1の副軸6に選択的に係合可能な第2の係合装置41が設けられる。第2の係合装置41は、第1の副軸6に組みつけられて第1の副軸6と一体に回転するクラッチハブ42と、クラッチハブスリーブ43とを備えている。クラッチハブ42の構造は、クラッチハブ32と同様であり、第1の副軸6に設けられている。
【0044】
クラッチハブスリーブ43は、クラッチハブ42の歯と噛み合って第1の副軸6と一体に回転する。クラッチハブスリーブ43は、クラッチハブ42に対して、第1の副軸6にそって2速用遊転ギヤ22と噛み合う位置と4速用遊転ギヤ24と噛み合う位置との間で移動可能である。これら両噛み合う位置の間の位置は、どちらのギヤとも噛み合わないニュートラル位置である。
【0045】
クラッチハブスリーブ43は、2速用遊転ギヤ22または4速用遊転ギヤ24に選択的に噛み合うことによって、噛み合った方のギヤを第1の副軸6と一体に回転するように、第1の副軸6に係合する。
【0046】
第2の副軸7には、3速用遊転ギヤ23を第2の副軸7に係合可能な第3の係合装置51と、6速用遊転ギヤ26を第2の副軸7に係合可能な第4の係合装置61とが設けられている。
【0047】
第3の係合装置51は、第2の副軸7に組みつけられて第2の副軸7と一体に回転するクラッチハブ52と、クラッチハブスリーブ53とを備えている。クラッチハブ52の周面には、第2の副軸7の軸線回りに連続して配置される複数の歯が形成されている。クラッチハブ52の歯は、第2の副軸7の軸線に沿って延びている。
【0048】
クラッチハブスリーブ53は、クラッチハブ52の歯と噛み合って第2の副軸7と一体に回転する。クラッチハブスリーブ53は、クラッチハブ52に対して相対的に第2の副軸7の軸線に沿って、2速用遊転ギヤ22と噛み合う位置と2速用遊転ギヤ22に噛み合わない位置との間で移動可能である。クラッチハブスリーブ53は、2速用遊転ギヤ22に噛み合うことによって、2速用遊転ギヤ22を第2の副軸7と一体に回転するように、第2の副軸7に係合する。
【0049】
第4の係合装置61は、第2の副軸7に組みつけられて第2の副軸7と一体に回転するクラッチハブ62と、クラッチハブスリーブ63とを備えている。クラッチハブ62の周面には、第2の副軸7の軸線回りに連続して配置される複数の歯が形成されている。クラッチハブ62の歯は、第2の副軸7の軸線に沿って延びている。
【0050】
クラッチハブスリーブ63は、クラッチハブ62の歯と噛み合って第2の副軸7と一体に回転する。クラッチハブスリーブ63は、クラッチハブ62に対して相対的に第2の副軸7の軸線に沿って、6速用遊転ギヤ26と噛み合う位置と、6速用遊転ギヤ26と噛み合わない位置との間で移動可能である。クラッチハブスリーブ63は、6速用遊転ギヤ26と噛み合うことによって、6速用遊転ギヤ26を第2の副軸7と一体に回転するように、第2の副軸7に係合する。なお、クラッチハブスリーブ63は、クラッチハブ62を基準として6速用遊転ギヤ26と反対側に移動可能である。
【0051】
第3の副軸8には、リバース用遊転ギヤ29を第3の副軸8に係合可能な第5の係合装置71が設けられている。第5の係合装置71は、第3の副軸8に組みつけられて第3の副軸8と一体に回転するクラッチハブ72と、クラッチハブスリーブ73とを備えている。クラッチハブ72の周面には、第3の副軸8の軸線回りに連続して配置される複数の歯が形成されている。クラッチハブ72の歯は、第3の副軸8の軸線に沿って延びている。
【0052】
クラッチハブスリーブ73は、クラッチハブ72の歯と噛み合って第3の副軸8と一体に回転する。クラッチハブスリーブ73は、クラッチハブ72に対して相対的に第3の副軸8の軸線に沿って、リバース用遊転ギヤ29と噛み合う位置とリバース用遊転ギヤ29に噛み合わない位置との間で移動可能である。クラッチハブスリーブ73は、リバース用遊転ギヤ29に噛み合うことによって、リバース用遊転ギヤ29を第3の副軸8と一体に回転するように、第3の副軸8に係合する。
【0053】
各遊転ギヤ21〜29は、本発明で言う変速段用ギヤの一例である。第1〜3の副軸6〜8は、本発明で言う軸の一例である。第1〜5の係合装置31〜71は、本発明で言う係合装置の一例である。
【0054】
図2〜4に示すように、第1〜5のシフトレール101〜105は、第1〜3の副軸6〜8に平行に延びており、互いに離間して配置されている。第1のシフトレール101には、第1のシフトフォーク106が固定されている。第1のシフトレール101は、第1のシフトフォーク106と一体に第1の副軸6の軸線方向に移動可能である。
【0055】
第1のシフトフォーク106は、第1の係合装置31のクラッチハブスリーブ33に係合している。第1のシフトレール101が第1の副軸6の軸線にそって移動することによって第1のシフトフォーク106が第1の副軸6の軸線にそって移動し、それゆえ、第1のシフトフォーク106を介してクラッチハブスリーブ33が第1の副軸6の軸線にそって移動する。このため、第1のシフトフォーク106の移動にともなって、第1の係合装置31が動作される。
【0056】
第2のシフトレール102には、第2のシフトフォーク107が固定されている。第2のシフトレール102は、第2のシフトフォーク107と一体に第1の副軸6の軸線方向に移動可能である。第2のシフトフォーク107は、第2の係合装置41のクラッチハブスリーブ43に係合している。第2のシフトレール102が第1の副軸6にそって移動することによって第2のシフトフォーク107が第1の副軸6にそって移動し、それゆえ、第2のシフトフォーク107を介してクラッチハブスリーブ43が第1の副軸6の軸線にそって移動する。このため、第2のシフトフォーク107の移動にともなって、第2の係合装置41が動作される。
【0057】
第3のシフトレール103には、第3のシフトフォーク108が固定されている。第3のシフトレール103は、第3のシフトフォーク108と一体に第2の副軸7の軸線にそって移動可能である。第3のシフトフォーク108は、第3の係合装置51のクラッチハブスリーブ53に係合している。第3のシフトレール103が第2の副軸7の軸線にそって移動することによって第3のシフトフォーク108が第2の副軸7にそって移動し、それゆえ、第3のシフトフォーク108を介してクラッチハブスリーブ53が第2の副軸7の軸線にそって移動する。このため、第3のシフトフォーク108の移動にともなって、第3の係合装置51が動作される。
【0058】
第4のシフトレール104には、第4のシフトフォーク109が固定されている。第4のシフトレール104は、第4のシフトフォーク109と一体に第2の副軸7の軸線にそって移動可能である。第4のシフトフォーク109は、第4の係合装置61のクラッチハブスリーブ63に係合している。第4のシフトレール104が第2の副軸7の軸線にそって移動することによって第4のシフトフォーク109が第2の副軸7にそって移動し、それゆえ、第4のシフトフォーク109を介してクラッチハブスリーブ63が第2の副軸7の軸線に沿って移動する。このため、第4のシフトフォーク109の移動にともになった、第4の係合装置61が動作される。
【0059】
第5のシフトレール105には、第5のシフトフォーク110が固定されている。第5のシフトレール105は、第4のシフトレール104と一体に移動するよう互いに固定されている。具体的には、図3に示すように、第5のシフトレール105は、第4のシフトフォーク109に固定されている。
【0060】
第4のシフトレール104が移動すると第5のシフトレール105も合わせて移動する。第5のシフトフォーク110は、第5のシフトレール105と一体に移動する。それゆえ、第4,5のシフトレール104,105の移動にともなって、第5のシフトフォーク110が第3の副軸8の軸線に沿って移動する。上記したように、第4の係合装置61のクラッチハブスリーブ63は、クラッチハブ62を挟んで6速用遊転ギヤ26と反対側に移動可能である。このため、第4のシフトレール104は、第5のシフトフォーク110を介して第5の係合装置71のクラッチハブスリーブ73がリバース用遊転ギヤ29と係合するまで移動することができる。
【0061】
第1のシフトレール101には、第1のシフトラグ111が形成されている。第1のシフトラグ111は、第1のシフトレール101から突出する形状であって、後述されるシャフト部120に向かって突出する。第1のシフトラグ111は、第1のシフトレール101と一体に移動する。
【0062】
第2のシフトレール102には、第2のシフトラグ112が形成されている。第2のシフトラグ112は、第2のシフトレール102から突出する形状であって、シャフト部120に向かって突出する。第2のシフトラグ112は、第2のシフトレール102と一体に移動する。
【0063】
第3のシフトレール103には、第3のシフトラグ113が形成されている。第3のシフトラグ113は、第3のシフトレール103から突出する形状であって、シャフト部120に向かって突出する。第3のシフトラグ113は、第3のシフトレール103と一体に移動する。
【0064】
第4のシフトレール104には、第4のシフトラグ114が形成されている。第4のシフトラグ114は、第4のシフトレール104から突出する形状であって、シャフト部120に向かって突出する。第4のシフトラグ114は、第4,5のシフトレール104,105と一体に移動する。
【0065】
第1〜4のシフトラグ111〜114は、板状部材であて、その先端に爪部111a〜114aが形成されている。第1〜5のシフトレール101〜105の移動方向は、ともに同じ方向である。第1〜5のシフトレール101〜105の移動方向を、シフト方向Xとする。シフト方向Xは、第1〜3の副軸6〜8の軸線方向と平行である。
【0066】
第1〜5のシフトレール101〜105は、シフト方向Xと直交するセレクト方向Yに
並んでいる。第1〜4のシフトラグ111〜114は、セレクト方向Yに互いに離間して配置される。図5は、第1〜4のシフトラグ111〜114を示す平面図である。図5に示すように、図中左側から右側に向かって順番に、第1の爪部111a、第2の爪部112a、第3の爪部113a、第4の爪部114aが配置されている。
【0067】
図2〜4に示すように、シャフト部120は、第1〜5のシフトレール101〜105の近傍に配置されている。シャフト部120は、ケーシング121に固定される中心軸122と、円筒状のシフトスリーブ123と、円筒状のセレクトスリーブ124とを備えている。ケーシング121は、その壁部が図4に一部示されている。中心軸122と、シフトスリーブ123と、セレクトスリーブ124とは、ケーシング121内に収容されている。
【0068】
中心軸122は、セレクト方向Yに平行に配置されており、ケーシング121に固定されている。シフトスリーブ123は、内部に中心軸122を収容している。シフトスリーブ123は、中心軸122に対してセレクト方向Yに移動可能であり、かつ、中心軸122の軸線Cを回転軸として自転可能(本発明で言う回転可能を示す)である。シフトスリーブ123の軸線Dは、中心軸122の軸線Cと重なっており、軸線C,Dはともにセレクト方向Yに平行である。つまり、軸線C,Dは、セレクト方向に延びている。
【0069】
シフトスリーブ123の一端部には、第1のアーム部材125が設けられている。他端部には、第2のアーム部材126が設けられている。第1,2のアーム部材125,126は、シフトスリーブ123と一体に移動し、かつ、一体に回転する。第1のアーム部材125は、中心軸122の径方向に突出する一対の突出部125a,125bを有している。第2のアーム部材126は、中心軸122の径方向に突出する一対の突出部126a,126bを有している。突出部125a,126aが並ぶ方向は、セレクト方向Yに平行である。突出部125b,126bが並ぶ方向は、セレクト方向Yに平行である。
【0070】
図5に示すように、シフトスリーブ123をセレクト方向Yに移動することによって、第1,2のアーム部材125,126を第1〜4のシフトラグ111〜114のいずれかとシフト方向Xに対向するように配置し、シフトスリーブ123を中心軸122の軸線回りに回転することによって第1,2のアーム部材125,126を第1〜4のシフトラグ111〜114のいずれかに当接し、さらに押圧する。このことによって、押圧されたシフトラグが固定されるシフトレールがシフト方向Xに移動し、それゆえ、係合装置が動作されて変速が達成される。
【0071】
シフトスリーブ123と、第1,2のアーム部材125,126と、第1〜4のシフトラグ111〜114と、第1〜4のシフトレール101〜104とは、本発明で言うシフトフォーク駆動機構の操作部の一例を構成している。シフトスリーブ123は、本発明で言うシャフト部材の一例である。シフトスリーブ123の回転軸(中心軸122の軸線)は、セレクト方向に平行であり、それゆえ、第1,2のアーム部材125,126の回転軸もセレクト方向にそう。
【0072】
セレクトスリーブ124は、内側にシフトスリーブ123を収容しており、中心軸122の軸線回りにシフトスリーブ123に対して回転可能である。セレクトスリーブ124は、シフトスリーブ123に固定される第2のアーム部材126とつば部127との間に挟まれて配置されている。つば部127は、シフトスリーブ123の周方向に突出する形状である。セレクトスリーブ124は、第2のアーム部材126とつば部127とに挟まれることによって、シフトスリーブ123に対して相対的にセレクト方向Yの移動しないように規制されている。
【0073】
セレクトスリーブ124には、セレクト方向Yに延びる長孔128が形成されている。長孔128には、回転規制ピン129が挿入されている。回転規制ピン129は、ケーシング121に固定されている。回転規制ピン129は、セレクトスリーブ124の中心軸122の軸線回りの回転を規制する。なお、長孔128がセレクト方向Yに延びることによって、セレクトスリーブ124は、セレクト方向Yに移動可能である。
【0074】
セレクト方向駆動部130は、シフトスリーブ123とセレクトスリーブ124とをセレクト方向Yに移動する機能を有する。セレクト方向駆動部130は、セレクト用モータ131と、セレクト用減速部132とを備える。セレクト用減速部132は、複数の歯車を備えている。本実施形態では、一例として第1のセレクト用歯車133と、第2のセレクト用歯車134と、第3のセレクト用歯車135と、第4のセレクト用歯車137とを備えている。
【0075】
第1のセレクト用歯車133は、ウォームギヤであってセレクト用モータ131の出力軸に組み付けられており、当該出力軸と一体に回転する。第2のセレクト用歯車134は、ウォームホイールギヤであって、第1のセレクト用歯車133に噛み合っている。第3のセレクト用歯車135は、歯が環状に連続して並ぶ平歯車である。
【0076】
第3のセレクト用歯車135は、軸136によって第2のセレクト用歯車134に一体に固定されている。軸136の軸線は、第2,3のセレクト用歯車134,135の回転軸と同軸になるように配置されている。第2,3のセレクト用歯車134,135は、一体に回転する。
【0077】
第4のセレクト用歯車137は、ラックギヤである。第4のセレクト用歯車137は、セレクトスリーブ124の周面にセレクト方向Yに平行に固定されている。第3,4のセレクト方向駆動ギヤ135,137は、互いに噛み合っている。
【0078】
上記構造によって、セレクト用モータ131の回転がセレクトスリーブ124に伝達され、セレクトスリーブ124とシフトスリーブ123とがセレクト方向Yに移動可能となる。
【0079】
シフト方向移動部140は、シフト用モータ141と、シフト用モータ141の回転を減速してシフトスリーブ123に伝達するシフト用減速部142とを備えている。シフト用減速部142は、複数のギヤを備えている。本実施形態では、一例として、第1〜6のシフト用歯車143〜148を備えている。なお、シフト用減速部142が備える歯車の数は、6つに限定されない。例えば、5つや7つなどの他の複数であってもよい。
【0080】
第1〜6のシフト用歯車143〜148は、シフト用モータ141の回転をシフトスリーブ123に伝達する。第1〜6のシフト用歯車143〜148は、シフト用モータ141からシフトスリーブ123までの伝達経路において、シフト用モータ141からシフトスリーブ123に向かって順番に配置されている。
【0081】
第1のシフト用歯車143は、歯が環状に連続して並ぶピニオンギヤであって、シフト用モータ141の出力軸に固定されており、当該出力軸と一体に回転する。第2のシフト用歯車144は、歯が環状に連続して並ぶ平歯車であって、第1のシフト用歯車143と噛み合っている。第1のシフト用歯車143は、第2のシフト用歯車144に噛み合った状態で、連続して回転可能に形成されている。第2のシフト用歯車144は、第1のシフト用歯車143と噛み合った状態で連続して回転可能に形成されている。
【0082】
第3のシフト用歯車145は、歯が環状に連続して並ぶ平歯車である。第3のシフト用歯車145は、軸149を介して第2のシフト用歯車144に一体に回転するように連結されている。軸149の軸線は、第2,3のシフト用歯車144,145の回転軸と同軸になるように配置されている。第4のシフト用歯車146は、歯が環状に連続して並ぶ平歯車であって、第3のシフト用歯車145に噛み合っている。第3のシフト用歯車145は、第4のシフト用歯車146と噛み合った状態で連続して回転可能に形成されている。第4のシフト用歯車146は、第3のシフト用歯車145と噛み合った状態で連続して連続して回転可能に形成されている。なお、本実施形態で言う連続して回転可能とは、回転が遮られず、互いに噛み合った状態で無限に回転可能なことを示す。
【0083】
第5のシフト用歯車147は、第4のシフト用歯車146に一体に固定されている。第4,5のシフト用歯車146,147の回転軸は、同じである。第5のシフト用歯車147は、歯が回転軸回りに環状に連続して並びかつセレクト方向Yに延びるスプライン軸である。第5のシフト用歯車147は、第4のシフト用歯車146と一体に回転する。
【0084】
第6のシフト用歯車148は、シフトスリーブ123に固定されている。第6のシフト用歯車148は、歯がシフトスリーブ123の軸線つまり中心軸122の軸線まわりに環状に連続して並ぶ平歯車である。第6のシフト用歯車148は、シフトスリーブ123と一体に回転する。第6のシフト用歯車148は、第5のシフト用歯車147と噛み合っている。第5のシフト用歯車147がセレクト方向Yに延びるスプライン軸であることによって、シフトスリーブ123がセレクト方向Yに移動しても、第5,6のシフト用歯車147,148の噛み合い状態は、保たれる。第5のシフト用歯車147は、第6のシフト用歯車148と噛み合った状態で連続して回転可能に形成される。第6のシフト用歯車148は、第5のシフト用歯車147と噛み合った状態で連続して回転可能に形成される。第6のシフト用歯車148は、本発明で言う最終歯車の一例である。第5のシフト用歯車147は、本発明で言う最終歯車に噛み合うギヤの一例である。
【0085】
上記構造によって、シフト用モータ141の回転がシフトスリーブ123に固定される第6のシフト用歯車148に伝達され、それゆえ、シフトスリーブ123が中心軸122の軸線回りに回転する。シフトスリーブ123が中心軸122の軸線回りに回転することによって、第1,2のアーム部材125,126がシフト方向Xに変位する。シフト用モータ141は、本発明で言う駆動源の一例である。
【0086】
第1,2のシフト用歯車143,144の歯数は、互いに素となる関係である。第3,4のシフト用歯車145,146の歯数は、互いに素となる関係である。第5,6のシフト用歯車147,148の歯数は、互いに素となる関係である。本実施形態では、シフト用減速部142内の互いに噛み合う全ての組の一対のギヤの歯数の関係は、互いに素となる関係である。
【0087】
ここで、第1〜4のシフトラグ111〜114のセレクト方向Yにそう位置関係を説明する。図5に示すように、第2のシフトラグ112の爪部112aと第3のシフトラグ113の爪部113aとは、第1,2のアーム部材125,126を収容できる間隔を有して配置されている。図5中、セレクト方向Yに第2,3のシフトラグ112,113の間の範囲A内に配置される第1,2のアーム部材125,126を実線で示す。第1,2のアーム部材125,126が第2,3のシフトラグ112,113の間の範囲A内に配置されると、シフトスリーブ123が中心軸122の軸線回りに1回転しても、第1,2のアーム部材125,126は、第1〜4のシフトラグ111〜114のいずれにも当ることがない。つまり、シフトスリーブ123は、中心軸122の軸線回りに1回転することができる。範囲Aは、本発明で言う無接触範囲の一例である。このことは、本発明で言う、セレクト方向にそう複数のシフトラグの並ぶ列は、シフト部材が回転する際にシフトラグに接触しない無接触範囲を有すことの一例である。
【0088】
セレクト用モータ131とシフト用モータ141とは、ECU150により、一例として図示しないシフトレバーの操作とエンジンの運転状態等に基づいて駆動制御される。シフトレバーは、運転者によって操作される。本実施形態では、ECU150は、変速段を目標変速段に切り換える際に、セレクト用モータ131の動作とシフト用モータ141の動作とを順次切り換えて駆動制御するとともに、第1,2のクラッチ2、3の作動を制御する。
【0089】
第1,2のセンサ160,161は、変速時に第1のアーム部材125と第2のアーム部材126の現在位置を把握するために用いられる。第1,2のセンサ160,161は、図4のみ図示されている。他の図面では省略されている。第1のセンサ160は、第1のアーム部材125と第2のアーム部材126のセレクト位置(セレクト方向Yの位置)を検出するために用いられる。第1のセンサ160は、具体的には、セレクト用モータ131に内蔵された回転角センサである。
【0090】
第2のセンサ161は、第1のアーム部材125と第2のアーム部材126のシフト位置(シフト方向Xの位置)を検出するために用いられる。第2のセンサ161は、具体的には、シフト用モータ141に内蔵された回転角センサである。
【0091】
第1,2のセンサ160,161は、基準位置に対する相対角(移動量)を検出するような比較的安価な相対角センサであって、その出力値はECU150に入力され、セレクト用モータ131とシフト用モータ141の駆動制御に用いられる。アーム部材125,126と、シフトラグ111〜114との当接する位置は、シフト方向Xとセレクト方向Yとのそれぞれの基準位置に対して設定されている。
【0092】
また、変速操作装置100は、第1のアーム部材125と第2のアーム部材126のセレクト方向Yの移動範囲を限定するセレクト用ストッパ170を備えている。
【0093】
セレクト用ストッパ170は、第2のアーム部材126が第4の爪部114aよりセレクト方向Yに爪部111aと反対側に離間した所定のセレクト方向基準位置、即ち第2のアーム部材126がシフト方向に移動しても爪部114aに接触しないようなセレクト位置で、シフトスリーブ123の第2のアーム部材126側の端部が接触するようにケーシング121に設けられた壁面である。つまり、セレクト方向の基準位置は、シフトスリーブ123がセレクト用ストッパ170に当接する位置である。
【0094】
また、図4,5に示すように、変速操作装置100は、シフトスリーブ123がセレクト方向の基準位置にあるときに、シフトスリーブ123の回転を限定するシフト用ストッパ171を備えている。シフト用ストッパ171は、第2のアーム部材126に当ることによって、シフトスリーブ123の回転を規制する。第1,2のアーム部材125,126がシフト方向Xに爪部111a〜114aに対向する位置にある場合は、第2のアーム部材126が回転してもシフト用ストッパ171に当らない。
【0095】
シフト用ストッパ171は、シフトスリーブ123がセレクト用ストッパ170に当接した状態において中心軸122の軸線回りに一方向に回転したときに突出部126aが当接する第1の部分172と、中心軸122の軸線回りに他方向に回転したときに突出部126bが当接する第2の部分173とを有している。図4には、第1の部分172が示されている。第2の部分173は、第1の部分172の紙面奥側に配置されている。図5では、第1,2の部分172,173は、2点鎖線で示されている。
【0096】
第1,2のアーム部材125,126の2つの突出部125a,125b,126a、126bの開き角は、第1,2のアーム部材125,126がシフト方向基準位置にあるときに、シフトスリーブ123がセレクト方向Yに移動してもアーム部材125,126がニュートラル位置にある爪部111a〜114aに当らないように、若干の隙間を持って設定されている。
【0097】
シフト方向基準位置は、第1,2のアーム部材125,126の2つの突出部125a,125b,126a,126bの間の中央に、ニュートラル位置にある各爪部111a〜114aが位置する第1,2のアーム部材125,126の回転位置である。
【0098】
次に、変速操作装置100の動作を説明する。変速操作装置100は、動作モードとして、変速動作モードM1と、第1,2のセンサ160,161の基準位置の補正制御動作モードM2とを有している。変速動作モードM1は、セレクト用モータ131とシフト用モータ141とを制御して、第1,2のアーム部材125,126を動作し、変速を行う動作である。
【0099】
具体的には、変速段が1速の場合は、第1の係合装置31が1速用遊転ギヤ21を第1の副軸6に係合し、かつ、第1のクラッチ2が接続される。変速段が2速の場合は、第2の係合装置41が2速用遊転ギヤ22を第1の副軸6に係合し、かつ、第2のクラッチ3が接続される。変速段が3速の場合は、第3の係合装置51が3速用遊転ギヤ23を第2の副軸7に係合し、かつ、第1のクラッチ2が接続される。
【0100】
変速段が4速用の場合は、第2の係合装置41が4速用遊転ギヤ24を第1の副軸6に係合し、かつ、第2のクラッチ3が接続される。変速段が5速の場合は、第1の係合装置31が5速用遊転ギヤ25を第1の副軸6に係合し、かつ、第1のクラッチ2が接続される。変速段が6速の場合は、第4の係合装置61が6速用遊転ギヤ26を第2の副軸7に係合し、かつ、第2のクラッチ3が接続される。変速段がリバースの場合は、第5の係合装置71がリバース用遊転ギヤ29を第3の副軸8に係合し、かつ、第2のクラッチ3が接続される。
【0101】
ついで、第1,2のセンサ160,161の基準位置の補正制御動作モードM2について説明する。図6は、第1のセンサ160と第2のセンサ161の基準位置の補正制御動作モードM2を示すフローチャートである。本ルーチンは、電源ON時に実行される。ここでいう電源ON時とは、エンジンの駆動が開始された時であり、一例として、運転者がイグニッションキーをスタート位置まで回した時である。本実施形態では、電源OFFとなると、第1,2のアーム部材125,126は、シフト方向Xとセレクト方向Yとの初期位置に戻されるように動作が設定されている。初期位置は、シフト方向Xの基準位置とセレクト方向Yの基準位置とに対して、予め設定されている位置である。
【0102】
図6に示すように、電源がONになるとECU150は、ステップST10に進み、セレクト用モータ131を作動制御し、初期位置からセレクト用ストッパ170に向かってシフトスリーブ123を移動させる。そして、ステップST20に進む。
【0103】
ステップST20では、シフトスリーブ123の第2のアーム部材126側の端部が何らかに接触して、シフトスリーブ123の移動が規制された接触状態であるか否かを判定する。詳しくは、セレクト用モータ131を作動させても、第1のセンサ160の出力値、即ち第2のアーム部材126のセレクト位置が変化しないか否かを判別する。第2のアーム部材126の移動が規制された接触状態であると判定された場合には、セレクト用モータ131の作動を停止させ、ステップST30に進む。接触状態でないと判定された場合には、ステップST20を繰り返す。ECU150は、シフトスリーブ123がセレクト用ストッパ170に当接した状態を基準位置として、基準位置を補正する。
【0104】
ステップST30では、シフトスリーブ123がセレクト用ストッパ170に当接した状態で、シフトスリーブ123を中心軸122の軸線回りに回転する。まず、中心軸122の軸線回りの一方向に第2のアーム部材126の突出部126aがシフト用ストッパ171の第1の部分172に当接するまで回転し、ついで他方向に突出部126bが第2の部分173に当接するまで回転する。第1,2の部分172,173に当接した回転位置は、第2のセンサ161によって検出されてECU150に記憶される。ついで、ステップST40に進む。
【0105】
ステップST40では、シフト用モータ141を作動制御して、ステップST30において記憶された第2のセンサ161の出力値(第1,2の部分172,173に当接する位置)の中間値となる位置にシフトスリーブ123を移動させる。そして、このときのシフトスリーブ123の位置を基準位置とし、基準位置のデータを補正する(シフト位置補正制御)。本実施形態では、シフト方向Xの基準位置は、シフト方向Xの初期位置である。ついで、ステップST50に進む。
【0106】
ステップST40では、セレクト用モータ131を作動制御してシフトスリーブ123をセレクト方向の初期位置に移動させる。セレクト方向Yの初期位置は、第1,2のアーム部材125,126が第2,3のシフトラグ112,113の間の範囲A内に配置される位置であり、セレクト方向Yの基準位置に対して予め決定されている。第1のセンサ160の検出値より、シフトスリーブ123がセレクト方向Yの初期位置に配置されると、ついでステップST60に進む。図5中、セレクト方向Yの初期位置にあるアーム部材125,126を実線で示す。
【0107】
ステップST60では、ECU150は、シフト用モータ141を駆動して、第6のシフト用歯車148を1回転する。つまり、シフトスリーブ123、第1,2のアーム部材125,126を1回転し、再び初期位置に戻す。第6のシフト用歯車148が1回転すると、本ルーチンを終了する。第5,6のシフト用歯車147,148の歯数は、互いに素である。このため、第6のシフト用歯車148が1回転することによって、シフトスリーブ123が初期位置にある状態において、第5,6のシフト用歯車147,148において互いに噛み合う位置が、回転前に対してずれる。このことによって、第5のシフト用歯車147が偏摩耗することが抑制される。この点について具体的に説明する。
【0108】
変速動作モードM1では、シフト用モータ141で発生される駆動力が、シフト用減速部142を介して第1〜5の係合装置41,51,61,71のうち次のシフトへの変速に用いられる係合装置に伝達される。そして、係合装置による遊転ギヤと副軸との係合が達成されることによって、変速が完了する。遊転ギヤと副軸との係合の瞬間は、クラッチハブスリーブを遊転ギヤと噛み合わせるために大きな力が必要となる。
【0109】
このため、シフト用減速部142の互いに噛み合う歯車において、遊転ギヤと副軸との係合の瞬間に互いに噛み合う部位には、大きな荷重が作用する。さらに、遊転ギヤと副軸とを係合した状態でのシフトスリーブ123の初期位置に対する回転角は、一方向に回転する場合において一定であり、他方向に回転する場合において一定である。つまり、シフト用減速部142内の互いに噛み合う歯車において、遊転ギヤと副軸とが係合する瞬間に互いに噛み合う部位は、同じ部位になる。
【0110】
このため、互いに噛み合う歯車において、遊転ギヤと副軸とが互いに係合する瞬間に噛み合う部位が摩耗し、それゆえ、偏摩耗する傾向にある。
【0111】
さらに、第5,6のシフト用歯車147,148は、シフト用減速部142内の駆動力伝達経路の最後に位置しているので、歯車間の噛み合い部分に作用する荷重が最も大きくなる。このため、第5のシフト用歯車147は、偏摩耗が特に進む傾向にある。
【0112】
しかしながら、本実施形態では、第5,6のシフト用歯車147,148の歯数が互いに素であるとともに、第6のシフト用歯車148が1回転することによって、当該1回転するたびに、第5,6のシフト用歯車147,148において遊転ギヤと副軸との係合の瞬間に互いに噛み合う部位は、変化する。
【0113】
このため、第5のシフト用歯車147が偏摩耗することが抑制される。第5のシフト用歯車147の偏摩耗が抑制されるので、シフト用モータ141の駆動力がスムーズにシフトフォークに伝達されるので、変速動作に不具合が生じることが抑制される。補正制御動作モードM2は、本発明で言う偏摩耗抑制動作モードの一例である。第6のシフト用歯車148は、本発明で言う少なくとも一方の歯車の一例である。
【0114】
また、本実施形態では、シフト用減速部142の複数の歯車において、互いに噛み合う全ての組み合わせの各々の一対の歯車の歯数は、互いに素である。このため、第6のシフト用歯車148を1回転するたびに、互いに噛み合う歯車どうしにおいても遊転ギヤと副軸との係合の瞬間に互いに噛み合う部位は、当該1回転のたびに変化する。このため、全ての歯車は、偏摩耗することが抑制される。
【0115】
また、自動車が走行を開始する前に最終歯車である第6のシフト用歯車148を1回転することによって、実際に走行が開始されるときには、互いに噛み合う組み合わせの歯車どうしにおいて最大の力が作用する噛み合い部分は変更される。このため、前回の走行で生じたギヤの摩耗が、次の走行に影響をおよぼすことを抑制することができる。
【0116】
本実施形態では、1つのシフトレールに1つのシフトフォークが設けられている。具体的には、第1のシフトレール101に第1のシフトフォーク106が固定されている。第2のシフトレール102に第2のシフトフォーク107が固定されている。第3のシフトレール103に第3のシフトフォーク108が固定されている。第4のシフトレール104に第4のシフトフォーク109が固定されている。第5のシフトレール105に、第5のシフトフォーク110が固定されている。
【0117】
しかしながら、これに限定されない。1つのシフトレールに2つなどの複数のシフトフォークが設けられてもよい。このことは、本発明で言う、シフトフォークの少なくとも1つが固定されることを示している。
【0118】
また、本実施形態では、偏摩耗抑制動作モードで1回転する歯車を第6のシフト用歯車148として、当該1回転する歯車を有する組み合わせとして、第5,6のシフト用歯車147,148としている。
【0119】
しかしながら、本発明で言う伝達部は、本実施形態では減速機能を有しており(シフト用減速部142)、アクチュエータ(シフト用モータ)の回転を減速して伝達する。このため、最終歯車である第6のシフト用歯車148が1回転すると、第1〜5のシフト用歯車143〜147は、各々1回転以上回転する。
【0120】
言い換えると、本実施形態では、互いに噛み合いかつ歯数が互いに素である組み合わせの全てにおいて、各組み合わせの一対の歯車は、偏摩耗抑制動作モードの際に1回転以上することになる。
【0121】
このことは、本発明で言う、複数の歯車のうち互いに噛み合いかつ歯数が互いに素である少なくとも1つの組み合わせの少なくとも一方の歯車を1回転させることを示している。
【0122】
なお、これに限定されない。偏摩耗抑制動作モード時には、本発明で言う伝達部の複数の歯車のうち互いに噛み合いかつ歯数が互いに素である少なくとも1つの組み合わせの少なくとも一方の歯車を1回転させればよい。
【0123】
例えば、シフト用減速部142において、歯数が互いに素である組み合わせが第5,6のシフト用歯車147、148のみであり、偏摩耗抑制動作モード時に、第6のシフト用歯車148が1回転する場合、本発明で言う複数の歯車のうち互いに噛み合いかつ歯数が互いに素である少なくとも1つの組み合わせの一例は、第5,6のシフト用歯車147,148となる。そして、本発明で言う、1回転する少なくとも一方の歯車の一例は、第6の歯車となる。なお、本実施形態では、第5のシフト用歯車147も1回転するようになるので、両歯車が1回転することを含む。
【0124】
また、例えば、互いに噛み合い、かつ、歯数が互いに素である組み合わせが、第3,4のシフト用歯車145,146の組み合わせのみだった場合は、第3,4のシフト用歯車145,146の少なくとも一方または両方が、偏摩耗抑制動作モード時に1回転するようにしてもよい。
【0125】
また、例えば、第3,4のシフト用歯車145,146の組み合わせと、第5,6のシフト用歯車147,148の組み合わせとの各々において歯数が互いに素である場合は、これら2つの組み合わせのうち一方の組み合わせにおいていずれか一方の歯車が1回転してもよいし、両歯車が1回転してもよい。または、両組み合わせにおいていずれか一方の歯車が1回転してもよいし、両歯車が1回転してもよい。
【0126】
なお、本実施形態では、最終歯車(第6のシフト用歯車)は、シフトスリーブ123に設けられており、シフトスリーブ123は偏摩耗抑制動作モード終了後に初期位置に戻る必要がある。このため、最終歯車以外の歯車を1回転する設定とした場合は、同時に、最終歯車が初期位置にもどるようにアクチュエータの動作を制御する必要がある。動作の制御一例としては、偏摩耗抑制動作モードで1回転するよう設定された歯車を1回転以上の回転として、シフトスリーブ123が初期位置に戻るようにする。
【0127】
上記のように、互いに噛み合いかつ歯数が互いに素である少なくとも1つの組み合わせの少なくとも一方の歯車を1回転することによって、上記組み合わせの歯車の偏摩耗が抑制される。
【0128】
さらに、最も偏摩耗しやすい最終歯車と、最終歯車と噛み合う歯車との歯数を互いに素にし、これらの少なくとも一方を1回転することによって、変速動作の不具合の発生をより一層抑制することができる。
【0129】
さらに、本実施形態のように、互いに噛み合う全ての組み合わせの各々の一対の歯車の歯数を互いに素にすることによって、変速動作の不具合の発生をより一層抑制することができる。
【0130】
つぎに、本発明の第2の実施形態に係る変速操作装置を、図7,8を用いて説明する。第1の実施形態と同様の機能を有する構成は、同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態では、変速操作装置100の構成が、第1の実施形態と異なる。他の構造は、第1の実施形態と同様であってよい。上記異なる構造を説明する。
【0131】
図7は、本実施形態の変速操作装置100を、一部切欠いて示している。図7に示すように、変速操作装置100は、ECU150と、シフト・セレクト用モータ200と、第3のセンサ201と、減速部210と、シフトドラム220と、第6〜8のシフトレール231〜233と、第1〜5のシフトフォーク106〜110とを備えている。
【0132】
第6〜8のシフトレール231〜233は、第1の実施形態の第1〜5のシフトレール101〜105に代えて用いられる。第6〜8のシフトレール231〜233は、第1〜3の副軸6〜8と平行になるように配置されている。第6〜8のシフトレール231〜233は、各々の軸線方向に移動しない。第6〜8のシフトレール231〜233は、例えばケーシング121に固定されている。第1〜5のシフトフォーク106〜110は、第1の実施形態と同様の構造でよいが、支持されるシフトレールが第1の実施形態と異なる。
【0133】
第1,2のシフトフォーク106,107は、第6のシフトレール231に、第6のシフトレール231の軸線にそって移動可能に支持されている。第3,4のシフトフォーク108,109は、第7のシフトレール232に、第7のシフトレール232の軸線にそって移動可能に支持されている。第5のシフトフォーク110は、第8のシフトレール233に、第8のシフトレール233の軸線にそって移動可能に支持される。第5のシフトフォーク110は、第4のシフトフォーク109に連結されており、第4のシフトフォーク109と一体に移動する。
【0134】
シフトドラム220は、円柱形状であって、軸線が第6〜8のシフトレール231〜233に平行になるように配置されている。シフトドラム220は、シフトドラム220の軸線回りに回転に支持されている。
【0135】
シフトドラム220の周壁部221には、第1〜4のシフトフォーク106〜109の移動をガイドするガイド溝240が形成されている。ガイド溝240は、第1のシフトフォーク用の第1のガイド溝241と、第2のシフトフォーク用の第2のガイド溝242と、第3のシフトフォーク用の第3のガイド溝243と、第4のシフトフォーク用の第4のガイド溝244とを有している。第1〜4のガイド溝241〜244は、シフトドラム220の回転軸回りに連続する環状に形成されており、一周つながっている。図8は、第1〜4のガイド溝241〜244が展開された状態を示す展開図である。ガイド溝240は、本発明で言うガイド溝の一例である。
【0136】
第1〜4のシフトフォーク106〜109の端部は、対応するガイド溝241〜244に挿入されている。シフトドラム220が回転することによって、ガイド溝241〜244と、挿入された端部との相対位置が変化する。ガイド溝241〜244は、シフトドラム220の回転にともなって挿入された端部を押圧し、シフトフォークを移動する。シフトドラム220は、本発明で言うシフトフォーク駆動機構の一例である。図8に、第1〜4のシフトフォーク106〜109の、1〜6速に対応する位置を示している。
【0137】
図8において、第1〜4のガイド溝241〜244の展開図の左側には、第1,2のガイド溝241,242においてシフトドラム220の各シフト位置に対応する回転位置を示している。回転位置は、図中上から、ニュートラル(Nと図示)、1速、2速、3速、4速、5速、6速、リバース(Rと図示)の順番で示されている。
【0138】
展開図の右側には、第3,4のガイド溝243,244においてシフトドラム220の各シフト位置に対する回転位置を示している。回転位置は、図中上から、6速、リバース(Rと図示)、ニュートラル(Nと図示)、1速、2速、3速、4速、5速の順番で示されている。
【0139】
本実施形態では、第6,7のシフトレール231,232は、シフトドラム220の回転軸を基準として周方向に90度離れて配置されている。このため、第1,2のガイド溝241,242の各シフト位置と、第3,4のガイド溝243,244の各シフト位置とは、シフトドラム220の周方向にずれている。
【0140】
第1のガイド溝241は、クラッチハブスリーブ33を1,5速用遊転ギヤ21,25に係合する位置とギヤ21,25に係合しないニュートラル位置との間で第1のシフトフォーク106を移動可能な形状である。具体的には、第1のガイド溝241は、ニュートラルの位置P1と、1速用遊転ギヤ21側の位置P2と、5速用遊転ギヤ25側の位置P3との位置を有している。
【0141】
位置P2,P3は、位置P1を挟んで両側の位置である。シフトが1速にある状態では、第1のガイド溝241は、位置P2にある。第2のガイド溝242は、クラッチハブスリーブ43を2,4速用遊転ギヤ22,24に係合する位置とギヤ22,24に係合しないニュートラル位置との間で第2のシフトフォーク107を移動可能な形状である。具体的には、第2のガイド溝242は、ニュートラルの位置P4と、2速用遊転ギヤ22側の位置P5と、4速用遊転ギヤ24側の位置P6との位置を有している。
【0142】
位置P5,P6は、位置P4を挟んで両側の位置である。第3のガイド溝243は、クラッチハブスリーブ53を3速用遊転ギヤ23に係合する位置とギヤ23に係合しないニュートラル位置との間で第3のシフトフォーク108を移動可能な形状である。具体的には、第3のガイド溝243は、ニュートラルの位置P7と3速用遊転ギヤ23側の位置P8とを有している。
【0143】
第4のガイド溝244は、クラッチハブスリーブ63を6速用遊転ギヤ26に係合する位置とギヤ26に係合しないニュートラル位置と、クラッチハブスリーブ73をリバース用遊転ギヤ29に係合するべく第5のシフトフォーク110を駆動する位置との間で第4のシフトフォーク109を移動可能な形状である。具体的には、第4のガイド溝244は、ニュートラルの位置P9と、6速用遊転ギヤ26側の位置P10と、リバース用遊転ギヤ29側の位置P11とを有している。
【0144】
位置P10,P11は、位置P9を挟んで両側の位置である。シフトドラム220が回転すると、第1〜4のガイド溝241〜244によって第1〜5のシフトフォーク106〜110が駆動されて、シフト変換が達成される。
【0145】
減速部210は、第1〜4の歯車211〜214を備えている。なお、減速部210が備える歯車の数は、4つに限定されない。例えば、5つや6つなどの他の複数であってもよい。第1の歯車211は、歯が環状に並ぶ平歯車であって、シフト・セレクト用モータ200の出力軸に設けられており、出力軸と一体に回転する。第2の歯車212は、歯が環状に並ぶ平歯車であって、第1の歯車211に噛み合っている。第1の歯車211は、第2の歯車212に噛み合った状態で連続して回転可能に形成されている。第2の歯車212は、第1の歯車211に噛み合った状態で連続して回転可能に形成されている。
【0146】
第3の歯車213は、歯が環状に並ぶ平歯車であって、第2の歯車212と軸215によって一体に連結されている。軸215の軸線は、第2,3の歯車212,213の回転軸に同軸となるように配置されている。第4の歯車214は、歯がシフトドラム220の軸線回りに環状に連続して並ぶ平歯車であって、シフトドラム220に、シフトドラム220の軸線回りに一体に回転するように固定されている。第3の歯車213は、第4の歯車214に噛み合った状態で連続して回転可能に形成されている。第4の歯車214は、第3の歯車213に噛み合った状態で連続して回転可能に形成されている。
【0147】
本実施形態では、減速部210内の互いに噛み合う全ての組み合わせの一対の歯車の歯数は、互いに素である。具体的には、第1,2の歯車211,212の歯数は、互いに素である。第3,4の歯車213,214の歯数は、互いに素である。減速部210は、本発明で言う伝達部の一例である。第4の歯車214は、本発明で言う最終歯車の一例である。第3の歯車213は、本発明で言う最終歯車に噛み合う歯車の一例である。
【0148】
シフト・セレクト用モータ200には、第3のセンサ201が設けられている。第3のセンサ201は、シフト・セレクト用モータ200の回転角度を検出する。ECU150は、予め設定されるシフト・セレクト用モータ200の基準位置に対するシフト・セレクト用モータ200の回転位置を把握する。ECU150は、第3のセンサ201の検出値に基づいて、シフト・セレクト用モータ200の回転を制御してシフトドラム220の回転を制御する。基準位置は、初期位置であって、変速段がニュートラルの位置(いずれの係合装置も係合していない状態)である。シフト・セレクト用モータ200は、本発明で言う駆動源の一例である。
【0149】
本実施形態の変速操作装置100は、補正制御動作モードM2を有していない。本実施形態では、ECU150の制御によってシフトドラム220を回転することによって変速を行う。この動作が、本発明で言う変速動作モードである。各変速段の位置は、シフトドラム220の基準位置に対して相対的に決まった位置である。
【0150】
また、本実施形態では、一例として、第1の実施形態と同様に、電源OFFになるとシフトドラム220は、初期位置に戻るように設定されている。そして、電源ONとなると、最終歯車である第3の歯車213を1回転する。つまり、シフトドラム220を1回転して再び初期位置に戻す。ガイド溝241〜244は、各々シフトドラム220の軸線回りに環状につながっている。このため、シフトドラム220は1回転可能である。この動作が、本発明で言う、偏摩耗抑制動作モードの一例である。本実施形態は、第1の実施形態と同様の作用と効果とを得ることができる。
【0151】
本実施形態では、偏摩耗抑制動作モードで1回転する歯車を第4の歯車214として、当該1回転する歯車を有する組み合わせとして、第3,4の歯車213,214としている。
【0152】
しかしながら、本発明で言う伝達部は、本実施形態では減速機能を有しており(減速部210)、アクチュエータ(シフト・セレクト用モータ200)の回転を減速して伝達する。このため、最終歯車である第4の歯車214が1回転すると、第1〜3の歯車211〜213は、各々1回転以上する回転する。
【0153】
言い換えると、本実施形態では、互いに噛み合いかつ歯数が互いに素である組み合わせの全てにおいて、各組み合わせの一対の歯車は、偏摩耗抑制動作モードの際に1回転以上することになる。
【0154】
このことは、本発明で言う、複数の歯車のうち互いに噛み合いかつ歯数が互いに素である少なくとも1つの組み合わせの少なくとも一方の歯車を1回転させることを示している。
【0155】
なお、本実施形態では、偏摩耗抑制動作モード時に本発明で言う歯車の全てを1回転以上するが、これに限定されない。偏摩耗抑制動作モード時には、本発明で言う伝達部の複数の歯車のうち互いに噛み合いかつ歯数が互いに素である少なくとも1つの組み合わせの少なくとも一方の歯車を1回転させればよい。
【0156】
例えば、減速部210において、歯数が互いに素である組み合わせが第3,4の歯車213、214のみであり、偏摩耗抑制動作モード時に、第4の歯車214が1回転する場合、本発明で言う、複数の歯車のうち互いに噛み合いかつ歯数が互いに素である少なくとも1つの組み合わせの一例は、第3,4の歯車213,214となる。そして、本発明で言う、1回転する少なくとも一方の歯車の一例は、第4の歯車214となる。なお、本実施形態では、第3の歯車213も1回転するようになるので、両歯車が1回転することを含む。
【0157】
また、例えば、互いに噛み合い、かつ、歯数が互いに素である組み合わせが、第1,2の歯車211,212の組み合わせのみだった場合は、第1,2の歯車211,212の少なくとも一方または両方が、偏摩耗抑制動作モード時に1回転するようにしてもよい。
【0158】
また、例えば、第1,2の歯車211,212の組み合わせと、第3,4の歯車213,214の組み合わせとの各々において歯数が互いに素である場合は、これら2つの組み合わせのうち一方の組み合わせにおいていずれか一方の歯車が1回転してもよいし、両歯車が1回転してもよい。または、両組み合わせにおいていずれか一方の歯車が1回転してもよいし、両歯車が1回転してもよい。
【0159】
なお、本実施形態では、最終歯車(第4の歯車)は、シフトドラム220に設けられているので、偏摩耗抑制動作モード終了後にシフトドラム220は初期位置に戻る必要がある。このため、最終歯車以外の歯車を1回転する設定とする場合は、同時に、シフトドラム220が初期位置にもどるようにシフト・セレクト用モータ200の動作を制御する必要がある。動作の制御一例としては、偏摩耗抑制動作モードで1回転するよう設定された歯車を1回転以上の回転として、シフトドラムが初期位置に戻るようにする。
【0160】
また、本実施形態では、減速部210において互いに噛み合う組み合わせの歯車の歯数を互いに素としたが、これに限定されない。例えば、互いに噛み合う組み合わせのうち、少なくとも1つの組み合わせの歯車の歯数が互いに素であれば、この組み合わせの少なくとも一方の歯車が1回転するたびに、上記歯数が互いに素である組み合わせの歯車の偏摩耗が抑制される。
【0161】
さらに、最も偏摩耗しやすい最終歯車と、最終歯車と噛み合う歯車との歯数を互いに素にすることによって、変速動作の不具合の発生をより一層抑制することができる。
【0162】
さらに、本実施形態のように、互いに噛み合う全ての組み合わせ歯車の歯数を互いに素にすることによって、変速動作の不具合の発生をより一層抑制することができる。
【0163】
なお、第1,2の実施形態では、自動車が走行開始時に偏摩耗抑制動作モードが行われている。走行開始時の判断の一例として、電源ON時としている。しかしながら、これに限定されない。第1,2の実施形態においても、偏摩耗抑制動作モードは、走行の終了時に行われてもよい。走行の終了時の判断の一例として、電源OFF時としている。走行終了時に偏摩耗抑制動作モードが行われることによって、次の走行時には、互いに噛み合う歯車どうしの噛み合う範囲が変更されるので、第1,2の実施形態と同様の作用、効果を得ることができる。
【0164】
この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0165】
6…第1の副軸(軸)、7…第2の副軸(軸)、8…第3の副軸(軸)、21…1速用遊転ギヤ(変速段用ギヤ)、22…2速用遊転ギヤ(変速段用ギヤ)、23…3速用遊転ギヤ(変速段用ギヤ)、24…4速用遊転ギヤ(変速段用ギヤ)、25…5速用遊転ギヤ(変速段用ギヤ)、26…6速用遊転ギヤ(変速段用ギヤ)、29…リバース用遊転ギヤ(変速段用ギヤ)、31…第1の係合装置(係合装置)、41…第2の係合装置(係合装置)、51…第3の係合装置(係合装置)、61…第4の係合装置(係合装置)、71…第5の係合装置(係合装置)、100…変速操作装置、101…第1のシフトレール(シフトレール)、102…第2のシフトレール(シフトレール)、103…第3のシフトレール(シフトレール)、104…第4のシフトレール(シフトレール)、105…第5のシフトレール(シフトレール)、106…第1のシフトフォーク(シフトフォーク)、107…第2のシフトフォーク(シフトフォーク)、108…第3のシフトフォーク(シフトフォーク)、109…第4のシフトフォーク(シフトフォーク)、110…第5のシフトフォーク(シフトフォーク)、111…第1のシフトラグ(シフトラグ、操作部)、112…第2のシフトラグ(シフトラグ、操作部)、113…第3のシフトラグ(シフトラグ、操作部)、114…第4のシフトラグ(シフトラグ、操作部)、123…シフトスリーブ(シフトフォーク駆動機構、シャフト部材、操作部)、125…第1のアーム部材(シフトフォーク駆動機構、操作部、アーム部材)、126…第2のアーム部材(シフトフォーク駆動機構、操作部、アーム部材)、141…シフト用モータ(駆動源)、142…シフト用減速機(伝達部、シフトフォーク駆動機構)、143…第1のシフト用歯車(複数の歯車)、144…第2のシフト用歯車(複数の歯車)、145…第3のシフト用歯車(複数の歯車)、146…第4のシフト用歯車(複数の歯車)、147…第5のシフト用歯車(複数の歯車)、148…第6のシフト用歯車(複数の歯車、最終歯車)、200…シフト・セレクト用モータ(駆動源)、210…減速部(伝達部、シフトフォーク駆動機構)、211…第1の歯車(複数の歯車)、212…第2の歯車(複数の歯車)、213…第3の歯車(複数の歯車)、214…第4の歯車(複数の歯車、最終歯車)、220…シフトドラム(シフトフォーク駆動機構、操作部)、240…ガイド溝、300…ダブルクラッチ変速装置、A…範囲(無接触範囲)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速段用ギヤと、
前記変速段用ギヤが回転自由に設けられる軸と、
前記変速段用ギヤを前記軸と一体に回転するよう互いを係合可能な係合装置と、
前記係合装置を動作するシフトフォークと、
前記シフトフォークを駆動するシフトフォーク駆動機構と、
前記シフトフォーク駆動機構の駆動源と、
前記駆動源を制御する制御装置と
を具備する変速操作装置であって、
前記シフトフォーク駆動機構は、
前記シフトフォークを操作する操作部と、
前記駆動源の駆動力を前記操作部に伝達する複数の歯車を備える伝達部と
を具備し、
前記伝達部は、前記複数の歯車の互いに噛み合う組み合わせのうち少なくとも1つの組み合わせの一対の歯車の歯数が互いに素であり、
前記制御装置は、変速を行う変速動作モードと、前記複数の歯車のうち互いに噛み合いかつ歯数が互いに素である少なくとも1つの組み合わせの少なくとも一方の歯車を1回転させる偏摩耗抑制動作モードとを切換えて前記駆動源を制御する
ことを特徴とする変速操作装置。
【請求項2】
前記複数の歯車のうち、一方の歯車は前記伝達部の伝達経路の最後に配置される最終歯車であり、他方の歯車は前記最終歯車に組み合う歯車である
ことを特徴とする請求項1に記載の変速操作装置。
【請求項3】
前記複数の歯車のうち互いに噛み合うすべての組み合わせにおいて各組み合わせの一対の歯車の歯数は、互いに素である
ことを特徴とする請求項1に記載の変速操作装置。
【請求項4】
請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の変速操作装置において、
前記操作部は、
セレクト方向に複数配置されて前記セレクト方向と直交するシフト方向に延び、かつ、各々に前記シフトフォークの少なくとも1つが固定されて前記シフト方向に移動可能なシフトレールと、
前記シフトレールに設けられるシフトラグと、
前記セレクト方向に延びるとともに、前記セレクト方向に延びる回転軸回りに回転可能なシャフト部材と、
前記シャフト部材に設けられて前記シャフト部材の周方向に突出するアーム部材であって、前記シャフト部材の前記セレクト方向の移動に伴って前記セレクト方向に移動して前記シフトラグのうち目標シフトラグを選択し、当該選択の後前記シャフト部材の回転に伴って回転することによって前記目標シフトラグを押圧して前記シフトフォークを前記シフト方向に移動させるアーム部材と
を具備し、
前記伝達部の伝達経路の最後に配置される最終歯車は、前記シャフト部材と一体に回転可能に設けられ、
前記セレクト方向に沿う前記複数のシフトラグの並ぶ列は、前記アーム部材が1回転する際に前記アーム部材が前記シフトラグに接触しない無接触範囲を有し、
前記偏摩耗抑制動作モードでは、前記アーム部材は、前記無接触範囲内に位置する
ことを特徴とする変速操作装置。
【請求項5】
前記操作部は、回転可能に設けられて表面に前記シフトフォークを動作するガイド溝が形成されるシフトドラムであり、
前記ガイド溝は、前記シフトドラムの回転軸回りに連続して環状につながる
ことを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の変速操作装置。
【請求項6】
請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載の変速操作装置を具備することを特徴とするダブルクラッチ変速装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−7659(P2012−7659A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143148(P2010−143148)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】