説明

外科処置用移植片

【解決手段】 先端部を設けた、又は1つ又はそれ以上のフィラメントにより相互接続された、生態適合性を有する移植片本体を含んでいる移植片を開示している。移植片本体は、小腸粘膜下組織のような生体改変可能材料(bioremodelable materials)を始めとして、生体適合性を有する各種材料から製作される。移植片の組立方法も開示している。また、移植片を患者体内の望ましい位置に送り込む方法も開示している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用装置に関し、特に、外科処置用移植片に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、2003年8月11日出願の米国仮特許出願第60/494,613号「先端部付移植片」並びに2004年3月30日出願の米国仮特許出願第60/558,163号「外科処置用グラフト」の優先権を主張する。
【0003】
外科処置又は内視鏡を用いる場合、患者の軟組織の切開箇所に移植片を挿入する必要のあることが多い。例えば、そのような移植片は、目標組織に嵩を足して、それにより目標組織部位を補強するために使用されることもある。そのような処置は「膨化」手法と呼ばれることもしばしばあり、尿失禁や膀胱尿管逆流疾病を含め泌尿器疾病の治療に頻繁に利用されている。「膨化」手法は、胃食道逆流症(以後「GERD」と称す)の治療にもしばしば用いられている。GERDは、米国では成人の約40%が罹患している消化不良の一形態である。より具体的には、GERDは、病理生理学的には、胃液が胃から食道内に逆流している食道の状態をいう。GERDの症状には、胸焼け、胃内容物の吐出、又は嚥下又は嚥下された物質の胃への移動が困難となる嚥下障害がある。GERDは、原因は様々であるが、とりわけ下部食道括約筋(以後「LES」と称す)の一過性の弛緩及びLESの安静時の緊張低下に起因する場合が多い。
【0004】
GERDの治療に使用される内視鏡的手法の1つとして、Johnson他に与えられた米国特許第6,098、629号に記載されている、LESに事前に形成された切開箇所に、具体的には粘膜下組織層に1つ又は複数の移植片を経壁的に挿入する手法があり、同特許を参考文献として本願に援用する。一般的には、移植片は、LESの質量を増加させて、LESの安静時緊張を増すことにより、GERDを効果的に治療する。この手法は、最初に、LESに隣接する粘膜下組織にアクセスするための挿入部位を内視鏡により確認する段階を含んでいる。次に、粘膜下組織を覆っている粘膜層を鋭利な離断器具で穿刺する。次に、人工器官を受け入れる大きさの嚢を粘膜下組織に作る。嚢は、液体注入(即ち、水疱形成)又は鈍器を使った鈍的切開によって作り出す。嚢が出来上がると、その嚢の中に移植片を挿入する。移植片は、通常、捕捉器具、クラムシェル型展開装置、又は他の類似の挿入器具で挿入される。挿入後、粘膜下組織の開口部は、従来からの適当な閉鎖技法を使って閉じられる。
【0005】
軟組織移植片は、近接照射療法に使用することもできる。近接照射療法は、放射性移植片を直接腫瘍内部に又はこれに隣接する部位に挿入し、腫瘍の寛解を行うことを含んでいる。同様に、軟組織移植片を使用して各種薬剤を目標部位に運ぶこともできる。即ち、薬剤を含浸させ又は塗布した移植片を患者の軟組織に移植すると、移植片から患者体内に薬剤が放出される。
【0006】
しかしながら、移植片を挿入するために現在利用可能な手法には、移植片の体内移動を含め幾つかの重大な欠点がある。移植片は、例えば、移植片を収納するために作られた嚢が当該移植片にとって大きすぎる場合は、移動することがある。その様なことが起こると、移植片は、その目標位置からあまり理想的ではない位置に移動しかねない。もっと深刻な場合には、移植片の移動によって、移植片が全く効果を発揮できず、結果的にフォローアップのための又は追加的な医療処置が必要になることもある。
【0007】
別の欠点は、現在利用可能な移植片の大きさである。1つの移植片ではとても小さすぎて、目標領域に所望の嵩を実現することができないことがしばしばある。従って、しばしば、複数の移植片を目標領域に挿入しなければならなくなる。しかしながら、複数の移植片を送り込むには、医師が各移植片毎に送出器具を目標組織内に再挿入する必要があるので、処置に要する時間が長くなり、不要な外傷を発生させる原因となる。
【0008】
移植片を、例えばLES内に、経壁的に挿入する場合に現在利用可能な手法には、更に幾つかの欠点が伴う。第1に、移植片用の嚢を作る作業は、通常、周辺組織に過度の外傷を発生させることになり、特に嚢の作成に鈍器を使用する場合にはそうである。他の欠点として、移植片を目標組織内に挿入する場合、移植片が粘膜切開部の縁に引っかかるか又は絡まるので、挿入が難しいということがある。更には、移植片は、所望の軌道に沿って且つ所望の空間的な向きで、目標組織内へと送り出すのが困難である。
【特許文献1】米国仮特許出願第60/494,613号
【特許文献2】米国仮特許出願第60/558,163号
【特許文献3】米国特許第6,098,629号
【特許文献4】米国特許第6,358,284号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、上で指摘した欠点のうちの1つ又はそれ以上を解消又は改善する特徴を有する医療装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、本発明の上記目的は、2つ又はそれ以上の生体改変可能(bio-remodelable)
移植片本体を細糸の長さに沿って配置した連鎖型移植片を提供することによって実現される。移植片本体は、小腸粘膜下組織のような細胞外基質物質から形成することができ、所与の用途にとって望ましい形状とすることができる。例えば、移植片本体は、その形状が球形、楕円形、直方体又は円筒形であってもよい。また、患者体内での送出時に装置の視認化を支援するため、放射線不透過性マーカーを設けてもてもよい。本発明の別の態様によれば、上記目的は、ネット又はマトリクスを形成する連鎖型移植片を提供することにより実現される。本発明の更に別の態様によれば、連鎖型移植片を組み立てるための方法が提供されている。
【0011】
本発明の更に別の態様によれば、本発明の上記目的は、第1の外周囲を有する移植片本体と、移植片本体に接続された穿通部材と、を含んでいる先端部付移植片を提供することによって実現される。穿通部材は、ステンレス鋼、プラスチック、更には剛性の生体再吸収可能材料(bio-resorbable material) のような生体適合性を有する材料で製作することができる。穿通部材は、穿通部と、穿通部に隣接して配置された拡張部を含んでいる。穿通部は、先導刃先又は先導点を形成する。拡張部は、穿通部によって作られた開口を、移植片を受け入れることのできる大きさの直径にまで拡張する。
【0012】
本発明の別の態様によれば、移植片本体及び/又は穿通部材を通って軸方向に伸張する通路が設けられている。通路は、先端部付移植片を、ガイドワイヤに外挿して目標部位に向かわせることができるようにしている。
【0013】
本発明の別の態様によれば、先端部付移植片を組み立てるための方法が提供されている。本発明の更に別の態様によれば、移植片を受け入れることができる大きさの開口部を作ると同時に移植片をその開口部に挿入するための方法が提供されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を、図面を参照しながら説明するが、各図を通して類似要素には同じ番号を付している。本発明の各種要素の関係と機能は、以下の詳細な説明によって、より良く理解頂けるであろう。しかしながら、以下に説明する本発明の実施形態は一例に過ぎず、本発明は、図面に示す実施形態に限定されるわけではない。また、図面は縮尺が合っているわけではなく、場合によっては、製作及び組み立ての従来からの詳細事項のような本発明の理解に必要ではないと思われる詳細については、これらを省略していることも理解されたい。
【0015】
先ず、図1は、本発明の第1の実施形態、具体的には連鎖型移植片10を示している。図1から図4に示すように、連鎖型移植片10は、普通は、細糸18に取り付けられた2つ又はそれ以上の移植片本体14を備えている。概括的には、連鎖型移植片10は、目標組織(例えば、LESの上方の食道管腔)に隣接する箇所に送られる。連鎖型移植片10は、次いで、目標組織内に導入され、これにより周辺組織が膨化される。
【0016】
移植片本体14は、目標組織を膨化し支持するのに適した、望ましい生体適合性を有する様々な移植片材料で形成することができる。本発明の或る好適な実施形態では、移植片本体は生体改変可能な(bio-remodelable)細胞外基質で形成されている。細胞外基質の1つの適した形態は、ブタ又はウシの小腸粘膜下組織(以後「SIS」と称す)から採取されている。SISは、特別な生体改変可能特性(bio-remodeling
characteristics)を有しているので、好適な材料である。この特性の故に、SISは、様々な外科処置用途で成功裏に使用されている。その様な用途の1つが、Fearnot他に与えられた米国特許第6,358,284号に記載されており、同特許を参考文献として本願に援用する。その外科処置用途には、精製された粘膜下組織を尿管グラフトとして用いる例が含まれている。SISのような生体改変可能材料(bio-remodelable
material)の使用に代えて、移植片本体は、例えば、ステンレス鋼、ポリマー類、及びシリコンフォーム又はポリウレタンフォームのような生体適合性を有する発泡材を含め、様々な他の生体適合性材料で形成することができる。
【0017】
図1から図4に示すように、移植片本体14は、多種多様な形状とすることができる。例えば、移植片本体14は、円筒体(図1)、楕円体(図2)、又は球状体(図3及び図4)に形成してもよい。同様に、各移植片本体の大きさは、連鎖型移植片の具体的な医療上の用途次第で変わる。また、例えば腫瘍の治療など患者の治療上の必要性次第で、移植片本体に、所望の治療成果を生じさせるのに適した薬剤を含浸させ又は塗布してもよい。
【0018】
図5に示すように、生体適合性を有する放射線不透過性粉末、ボール、又は他のマーカー、例えばステンレス鋼ボール34、を移植片本体に添加してもよい。その結果、医師は、周辺の生体組織及び/又は目標組織に対する移植片本体の位置を追跡することができ、それによって連鎖型移植片を患者体内で適正に配置し易くなる。例えば、医師は、移植片本体の位置を、連鎖型移植片の送出の間、X線透視で追跡することができる。
【0019】
図1から図5に示すように、連鎖型移植片10は、2つ又はそれ以上の移植片本体14をつなぐのに使用されている細糸18を含んでいる。細糸18は、一旦目標組織に正しく配置されると、移植片本体14を固定し安定化する。具体的には、細糸18は、移植片本体14が望ましくない又は効果的でない位置に個別に移動するのを防ぐ。細糸18は、生体適合性を有する1本のフィラメント又は糸である。好適な材料の1つは、再吸収可能な(resorbable)の縫合糸に使われている糸又はフィラメントである。代わりに、非再吸収可能縫合糸(non-resorbable
sutures)を使用してもよい。
【0020】
なお、移植片本体14は、図2に示すように互いに接近させて配置してもよいし、図1、図3、図4に示すように互いに間隔を空けて配置してもよい点に注目されたい。即ち、移植片本体同士の離間距離は、細糸又はフィラメントに沿う具体的な望ましい位置に応じて設定することができる。また、移植片本体は、細糸沿いに等間隔に配置する必要はない。むしろ、隣接する移植片本体同士の間隔は、必要に応じて変えることができる。更に、図4に示すように、移植片本体14は、フィラメントのネット上に配置してもよい。このようなネット状の配置とすれば、医師は、移植片を創傷部又は外科処置部位に対して縦横に伸張させ、創傷部又は外科処置部位を補強及び膨化することができる。
【0021】
連鎖型移植片10を組み立てるには、様々な方法を採用することができる。好適な組立方法を図6に示している。モールド型26は、円筒状の移植片本体14を成形するように作られている。球、直方体、及び/又は楕円形の移植片本体を成形可能なモールド型を、代わりに使用することも考えられる。図示のモールド型26は、10個の移植片本体14を有する連鎖型移植片10を成形するように作られているが、もっと多くの又はもっと少ない移植片本体を備えた連鎖型移植片を成形可能なモールド型を使用してもよい。
【0022】
連鎖型移植片10は、図6に示すように組み立てられる。最初に、円筒形状部30に細糸18を通す。細糸18を所定の位置に配置した後、所望の移植片材料を各円筒形状部30に充填する。或る方法では、移植片材料は、形状部に注入される液体を含んでいる。円筒形状部30に、SISのような移植片材料が完全に充填される前に、随意的に、放射線不透過性マーカー34を円筒に挿入してもよい。連鎖型移植片は、組み立てた後、乾燥させる。連鎖型移植片は、空気乾燥又は凍結乾燥されるが、一晩夜通し乾燥させるのが望ましい。次いで、乾燥した連鎖型移植片をモールド型26から取り出して、小刀又は挟みで所望の長さに切断する。なお、各種材料に対しては、代替的硬化法も使用できることに注目されたい。例えば、エポキシ材料で形成された連鎖型移植片は重合化又は架橋結合反応で硬化させ、セメント材料で形成された連鎖型移植片は加水分解反応で硬化させる。連鎖型移植片のこの他の代表的な形成方法には、インサート成形があるが、これはプラスチックを鋳型に注入して、そのプラスチックの中に添加物を挿入するものである。
【0023】
連鎖型移植片10は、図14に示すように組み立てることもできる。図14は、移植片本体14と細糸18を組み立てるのに使用される管状のモールド型を示している。連鎖型移植片10を組み立てる場合、所望の移植片材料を管状のモールド型44に充填する。連鎖型移植片は、空気乾燥又は凍結乾燥させるが、一晩夜通し乾燥させるのが望ましい。次いで、乾燥した連鎖型移植片10を、管状のモールド型44から取り出して、小刀又は挟みで所望の長さに切断する。
【0024】
連鎖型移植片10は、侵襲性を最小限にした又は切開式の外科処置での使用を含めて、広範な用途に用いることができる。侵襲性を最小限にした代表的な外科処置は、LESを膨化させることによるGERDの治療である。GERDに関わる用途において、連鎖型移植片の望ましい送出方法では、通常、先ず内視鏡で望ましい移植位置を確認し、次いで連鎖型移植片をその箇所に挿入する。図7に示すように、例証的な内視鏡74(X線透視鏡、超音波内視鏡、又は従来の内視鏡であるのが望ましい)を患者の口腔及び食道70に通して、LES82付近、胃84の上方且つ横隔膜78に隣接する箇所まで送り出す。図8に示すように、ニードル86を内視鏡74の作業チャネルに通してLES82に差し込む。図9に示すように、ニードル86がLES82に入ると、ガイドワイヤ90を挿入して目標組織へのアクセスを維持する。図10に示すように、ガイドワイヤ90を目標組織に留置したまま、ニードル86を抜き取る。次に、図11に示すように、カテーテル94をガイドワイヤに外挿して所望の移植位置まで挿入し、連鎖型移植片10を送り出す。カテーテル94のルーメン(図11)を通して所望の移植位置まで挿入されている従来型のプッシャ器具で、連鎖型移植片10を押し出して、LESに入れる。図11に示すように、連鎖型移植片の送り出しの過程を通して、カテーテル94の位置は、目標の組織領域全体に亘って追加の移植片本体14を分散配置させるために変えることができる。連鎖型移植片が一旦目標組織に入ると、図12に示すように、カテーテル94と内視鏡74を抜き取る。
【0025】
図13に示すように、連鎖型移植片は、ガイドワイヤに外挿して直接送出するようになっていてもよい。このような送出のための構成では、移植片本体14には、ガイドワイヤを通すための通路60が設けられる。送出に先立ち、複数の移植片本体14をガイドワイヤに外挿式に装填する。移植片本体を装填し終えると、図10に示すようにガイドワイヤの遠位端を目標組織に挿入する。次に、従来型のプッシャ器具(図示せず)を使用して、移植片本体を目標組織内に押し出す。
【0026】
なお、連鎖型移植片は、代わりに、ガイドワイヤを使用せずに送出してもよいことにも注目されたい。例えば、連鎖型移植片は、LESに直接挿入されているカテーテルを通して目標組織に送り込んでもよい。別の代わりのやり方では、連鎖型移植片の送り込みにカニューレを使用する。
【0027】
連鎖型移植片10は、代わりに、組織膨化又は補強が必要な各種切開式外科処置にも使用することができる。連鎖型移植片10は、医師により切開部に直接挿入される。切開式の処置又は侵襲性を最小限に抑えた処置の何れにおいても、医師は、連鎖型移植片14を具体的な切開部に合わせて設定することができ、例えば、幾つかの別体の連鎖型移植片を使用する、2つ又はそれ以上の連鎖型移植片を結合して移植片全体の長さを伸ばす、又は連鎖型移植片を切断して全体長を短縮するなどして、調整することができる。代わりのやり方では、医師は、相互接続された連鎖型移植片のネット(図4)を挿入してもよい。事実、医師は、相互接続された連鎖型移植片のネットを丸めて又は束ねて、その丸めた又は束ねたネットを切開部に挿入してもよい。ネット型のものは、医師が大きな切開部を補強又は膨化したいと望む場合には特に有用である。
【0028】
さて、図15と図16は、本発明の第2の実施形態、特に先端部付移植片110を示している。図15を見るとよく分かるように、先端部付移植片110は、概括的には、移植片本体126(粗いか又は一様でない縁部を有することが多い)と、穿通部及び拡張部を有する滑らかな移植片先端部114とを備えている。図17に示すように、先端部114は、更に、ねじ部134付の胴部132を有する近位端を含んでいる。後に詳しく説明するが、胴部132は、移植片本体126を先端部114に固定している。
【0029】
概括的には、先端部付移植片110を、内視鏡の作業チャネルを通して目標組織(例えば、LES上方の食道管腔)に隣接する箇所に送り込む。次いで、先端部の穿通部が目標組織を穿通するように、先端部114を目標組織内に導入する。先端部が、目標組織内へと前進したら、穿通部によって作られた穿通部位を先端部の拡張部によって広げて、先端部付移植片を受け入れることができる大きさの空洞を形成する。また、先端部の形状は、先端部が目標組織を穿通し進入する際に、移植片本体の向きと軌道を制御又は誘導できるようになっているのが望ましい。即ち、先端部は、移植片本体の望ましい向きと軌道を実現するのに必要なだけ、目標組織を拡張するように作ることができる。例えば、先端部を湾曲させて、移植片本体が目標組織に進入する際に、湾曲した軌道に沿って移植片本体が誘導されるようにすることもできる。代わりのやり方としては、先端部は、目標組織を単純に穿通及び/又は拡張するためだけに形成してもよい。
【0030】
図15を見ればよく分かるように、先端部114は穿通部又は穿通点118を有する遠位端を備えている。先端部の先導点は、隣接組織への不要な外傷を回避しつつ、目標組織を容易に穿刺又は穿通できるように、鋭利であるのが望ましい。無論、本発明の別の実施形態では、穿通部は、目標組織を穿通、切断、引き裂き、引き伸ばし、又はその他の方法で拡張できる各種形状に成形されている。代わりに、穿通部に切断刃を設けて、先端部付移植片を目標組織内に更に穿通し易いようにしてもよい。例えば、鋭利に成形された先導刃先を有する楔形状の先端部を使用してもよい。図15に示すように、先端部114は断面が丸くなっている。しかしながら、代わりに異なる断面を有する他の形状を使用してもよい。例えば、先端部は、断面が三角形、方形、楕円形、又はその他非対称形であってもよい。
【0031】
先端部は、目標組織を穿通できるだけの剛性を有する様々な種材料で形成することができる。例えば、先端部は、金属、セラミック、ポリマー、複合材、天然材料、生体再吸収可能材料(bio-resorbable materials)、又は分解可能材料(dissolvable materials)で形成することができる。本発明の或る好適な実施形態では、移植片先端部は外科用等級のステンレス鋼で形成されている。
【0032】
図15を見ればよく分かるように、先端部114は、拡張部122も含んでいる。拡張部122は、穿通点118によって最初に作られた切開部の穿通部を、先端部付移植片の投影形状にほぼ近い形状にまで拡大するようになっている。図15と図17に示すように、拡張部122は拡張される組織に対する外傷を小さくするように漏斗状になっている。また、図15に示すように、拡張部122の最大外周は、移植片本体126と同一かそれよりわずかに大きい程度が望ましい。これにより、先端部によって作られた開口部は、移植片本体が開口部を取り囲む組織に引っかかったり絡んだりしないだけの大きさを確保することができる。代わりに、拡張部は、穿通点118によって作られた開口部を、移植片本体の外周よりも相当大きい円周になるまで、拡張するようになっていてもよい。先端部の拡張部は、先端部付移植片110が不本意な方向に移動するのを防ぐように作ることもできる。これは、先端部付移植片が第1の方向に動く際に、目標組織を容易に穿通及び拡張し、さらに、第1の方向とは逆の第2の方向への移動に抵抗する、矢形又は槍形の拡張部を追加して設けることにより実現することができる。
【0033】
先端部114は、図17に示すように胴部132を更に含んでいる。胴部132は、先端部114の近位端に設けられており、先端部114を移植片本体126に固定するようになっている。加えて、移植片本体126を先端部114にしっかりと締結するための把持面として、ねじ部134が設けられている。移植片本体126は、胴部132に固定され、先端部の近位端に当接するが、これについては後に詳しく説明する。
【0034】
図16、図18、図19に示す本発明の第3の実施形態では、医療装置110に通路138が設けられている。通路138は、先端部114と移植片本体126の両方を軸方向に貫いて伸張している。通路138は、ガイドワイヤ、ニードル、又はカニューレ上を滑動するように作られている。先端部付移植片110の先端部は、従って、目標組織に対して正しい向きで目標組織に挿入することができる。結果として、通路138は先端部付移植片110を挿入し易くする。医療装置を、カテーテル、ニードル、又はカニューレと共に使用すると、医療装置の挿入前に目標組織を容易に穿通し所望の流体を注入することができる。通路138を備えていること以外は、先端部付移植片110の第3の実施形態は、上記第2の実施形態と同じである。
【0035】
移植片本体126は、第1の実施形態の移植片本体に関して説明したもののような、望ましい各種移植片材料で形成することができる。先に指摘したように、本発明の或る好適な実施形態では、移植片本体は、精製された粘膜下組織で形成することができ、これは、中でも脊椎動物の小腸粘膜下組織から引き出すことのできる生体改変物質(bio-remodelable material)である。生体適合性を有する放射線不透過性の粉末又は他のマーカーを、移植片本体に添加してもよい。こうすると、先端部付移植片を体内で正しく設置し易くなる。
【0036】
先端部付移植片110を組み立てるのに、様々な方法を採用することができる。或る好適な組立方法は、先端部の遠位端を、手作業か又はクランプによるかの何れかの方法で固定する段階を含んでいる。次に、ロッドを先端部の通路に通して挿入する。所望の直径を有する移植片本体を作るために、必要次第で、SISの薄い条片を胴部とロッドに巻きつける。先端部付移植片は、組み立てが終わると、乾燥させる。先端部付移植片は、空気乾燥又は凍結乾燥させるが、一晩夜通し乾燥させるのが望ましい。次に、乾燥した移植片本体を小刀で所望の長さに切断する。
【0037】
別の組立方法を図19に示しているが、これは、移植片先端部を把持するモールド型の中にSIS材料の条片を突き固める段階を含んでいる。この特定の方法では、最初に、先端部114を貫通してロッド146を挿入する。次いで、SIS材料の条片の端を一時的に胴部132に(例えば、条片の端部を胴部132に押圧することによって)ピン止めし、SISの条片の残り部分を胴部132とロッド146の近位部の周りに緩く巻き付ける。先端部114は、その後、先端部114がモールド型142の縁158に係合保持されるように、更に十分な量だけモールド型142内に挿入する。先端部とSISの条片をモールド型142内に挿入した後、充填ロッド154を使って、SISの条片又は条片群を胴部132に突き固める。次いで、手動組立式移植片に関連して先に説明したように、先端部とSIS条片をモールド型内で乾燥させる。移植片がモールド型内で乾燥した後、プッシャロッド150を使って、組み立てられた移植片本体と先端部をモールド型142から取り出す。必要に応じて、同じ手順を繰り返して追加のSIS条片を先端部に添加することができる。モールド型内で移植片を乾燥させた結果、滑らかで嵩の低い移植片が出来上がり、より円滑に移植が行えるようになる。
【0038】
図20から図26に示すように、先端部付移植片を送り込む或る好適な方法は、概括的には、先ず内視鏡で望ましい移植位置を確認し、次いで先端部付移植片をその位置に挿入する段階を含んでいる。特に、図20に示すように、内視鏡74を患者の口腔及び食道70に通して、LES82の付近に送り込む。その後、図21に示すように、内視鏡74の作業チャネルを通してニードル86を送り込む。ニードル86がLES82内の望ましい位置に入ったら、ガイドワイヤ90を使って目標組織へのアクセスを維持する(図22)。ガイドワイヤ90は、最終的には、先端部付移植片を正確な位置に送り込むためのパイロットとしての役目を果たす。ガイドワイヤ90によって所望の移植位置にアクセスした後、ニードル86を取り出す(図23)。続いて、先端部付移植片110をガイドワイヤ90に外挿して通す(図24)。次いで、先端部付移植片をガイドワイヤ90に沿って所望の移植位置に向けて押し出す。先端部付移植片が目標組織に到達したら、従来型のプッシャ器具94で先端部付移植片を目標組織内に押し込む。先端部付移植片が目標組織内に入ったら、ガイドワイヤ90を引き抜く(図25参照)。図26に示すように、この処置は、所与の病状に応じて必要な個数の先端部付移植片110を挿入するために、繰り返される。目標領域を確認し、且つ先端部付移植片送出用の作業チャネルとして機能させるため、超音波内視鏡を使用するのが望ましい。なお、代わりのやり方として、ガイドワイヤを使用すること無く、先端部付移植片を送り込むこともできる。例えば、従来型のプッシャ器具を使って、カニューレ又はカテーテルを通して、又はニードルに外挿して、先端部付移植片を送り込むこともできる。
【0039】
本発明の開示した実施形態の様々な要素の構造及び組成における他の開示されていない又は付随的な詳細事項は、それら要素が開示されたように実行するのに必要な属性を備えている限り、何れも本発明の利点を実現するのに決定的であるとは考えられない。自明のように、本開示の視点に照らし、医療技術分野における当業者であれば、多種多様な追加の移植片本体の形状、先端部、大きさ、細糸、及びそれらの巧い組み合わせを想起できるであろう。事実、構造上のこれら及びその他の詳細事項の選択については、本開示の視点に照らし、当分野の基本的な技量を有する者の能力の範囲内に十分に入ると考えられる。同様に、医療技術分野における当業者であれば、本開示の視点に照らし、連鎖型又は先端部付移植片の多種多様な用途及び使用法を想起できるであろう。本発明の図示の実施形態は、実際の作動的な構造を開示し、それにより本発明が有効に実施されるようにする目的で、かなり詳細に説明してきた。ここに記載した設計は、例示のみを目的としている。本発明の新規な特性は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、他の構造形態に組み入れることができる。本発明は、図示の実施形態に関して説明した要素を備えている、及びそれらから構成されている実施形態を包含している。特に表示しない限り、ここに使用している全ての一般的な単語及び用語は、The American Heritage Dictionary第3版に定義されている慣例的な意味に解釈されるものとする。全ての技術用語は、特定の技術分野における一般的な技量を有する者が利用している適切な技術的秩序によって確立されている慣用的な意味に解釈されるものとする。全ての医療用語は、Stedman's
Medical Dictionary第27版に定義されている意味に解釈されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】数個の円筒形移植片本体と細糸を含んでいる、本発明の或る実施形態の側面図である。
【図2】数個の楕円形移植片本体と細糸を含んでいる、本発明の或る実施形態の側面図である。
【図3】数個の球形移植片本体と細糸を含んでいる、本発明の或る実施形態の側面図である。
【図4】膨化ネットを含んでいる、本発明の或る実施形態の側面図である
【図5】放射線不透過性マーカーを含んでいる、本発明の或る実施形態の側面図である
【図6】アッセンブリモールド型を含んでいる、本発明の或る実施形態の側断面図である。
【図7】から
【図12】本発明の或る実施形態による、連鎖型外科処置用移植片の挿入方法を、順を追って説明する図である。
【図13】ガイドワイヤルーメンを含んでいる、本発明の或る実施形態の側断面図である。
【図14】アッセンブリチューブを含んでいる、本発明の或る実施形態の側断面図である。
【図15】移植片と、移植片先端部とを含んでいる、本発明の或る実施形態の側部斜視図である。
【図16】移植片と、移植片先端部と、チャネルと、ワイドワイヤとを含んでいる、本発明の或る実施形態の側部斜視図である。
【図17】移植片と、移植片先端部とを含んでいる、本発明の或る実施形態の側断面図である。
【図18】移植片と、移植片先端部と、チャネルとを含んでいる、本発明の或る実施形態の側断面図である。
【図19】アッセンブリモールド型を含んでいる、本発明の或る実施形態の側断面図である。
【図20】から
【図26】移植片先端部を備えた移植片を有する医療装置を移植する場合の、本発明による方法の或る実施形態を、順を追って説明する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の移植片本体と第1のフィラメントとを備えている医療材において、前記複数の移植片本体は前記第1のフィラメントの上に配置されている、医療材。
【請求項2】
前記複数の移植片本体は生体改変可能材料を備えている、請求項1に記載の医療材。
【請求項3】
前記生体改変可能材料は細胞外基質を備えている、請求項2に記載の医療材。
【請求項4】
前記細胞外基質は小腸の粘膜下組織である、請求項3に記載の医療材。
【請求項5】
前記複数の移植片本体の1つ又はそれ以上は、形状が球形である、請求項3に記載の医療材。
【請求項6】
前記複数の移植片本体の1つ又はそれ以上は、形状が円筒形である、請求項3に記載の医療材。
【請求項7】
前記複数の移植片本体の1つ又はそれ以上は、形状が直方体である、請求項3に記載の医療材。
【請求項8】
前記複数の移植片本体の1つ又はそれ以上は、形状が楕円形である、請求項3に記載の医療材。
【請求項9】
前記複数の移植片本体の1つ又はそれ以上を通って伸張する通路を更に備えており、前記通路はワイヤガイドを通すように作られている、請求項3に記載の医療材。
【請求項10】
前記複数の移植片本体の少なくとも1つに作動可能に接続されている放射線不透過性マーカーを更に備えている、請求項3に記載の医療材。
【請求項11】
前記第1のフィラメントは、作動可能に接続されてネットを形成している複数のフィラメントを備えており、前記複数の移植片本体は更に前記複数のフィラメントの上に配置されている、請求項1に記載の医療材。
【請求項12】
外周囲を備えている移植片本体と、
前記移植片本体に接続されている穿通部材であって、穿通部と前記穿通部に隣接して設けられた拡張部とを備えている前記穿通部材と、を備えている医療材。
【請求項13】
前記穿通部は体組織を突通するように作られている、請求項12に記載の医療材。
【請求項14】
前記移植片本体と前記穿通部材を通って軸方向に伸張する通路を更に備えている、請求項13に記載の医療材。
【請求項15】
前記穿通部材は、前記拡張部に隣接して設けられた胴部を更に備えており、前記胴部は、前記移植片本体を前記穿通部材に固定するようになっている、請求項14に記載の医療材。
【請求項16】
前記穿通部材は、前記移植片本体の外周囲よりも大きい外周囲を更に備えている、請求項15に記載の医療材。
【請求項17】
前記穿通部材は、前記移植片本体の外周囲に実質的に等しい外周囲を更に備えている、請求項15に記載の医療材。
【請求項18】
前記穿通部材は、前記移植片本体の外周囲よりも小さい外周囲を更に備えている、請求項15に記載の医療材。
【請求項19】
前記穿通部材は生体適合性を有する金属で形成されている、請求項12に記載の医療材。
【請求項20】
前記移植片本体は生体改変可能材料で形成されている、請求項19に記載の医療材。
【請求項21】
前記生体改変可能材料は細胞外基質である、請求項20に記載の医療材。
【請求項22】
前記移植片本体は生体再吸収可能材料で形成されている、請求項12に記載の医療材。
【請求項23】
前記移植片本体は合成材料で形成されている、請求項12に記載の医療材。
【請求項24】
前記穿通部は切刃先を画定している、請求項12に記載の医療材。
【請求項25】
前記移植片本体と前記穿通部材を通って軸方向に伸張する通路を更に備えている、請求項12に記載の医療材。
【請求項26】
前記穿通部材は、前記拡張部に隣接して設けられた胴部を更に備えており、前記胴部は、前記移植片本体を前記穿通部材に固定するようになっている、請求項25に記載の医療材。
【請求項27】
前記穿通部材は、前記移植片本体の外周囲に実質的に等しい外周囲を更に備えている、請求項26に記載の医療材
【請求項28】
前記穿通部は漏斗状である、請求項27に記載の医療材。
【請求項29】
前記穿通部は略円形断面を画定している、請求項28に記載の医療材。
【請求項30】
前記穿通部は略三角形断面を画定している、請求項28に記載の医療材。
【請求項31】
前記穿通部は略方形断面を画定している、請求項28に記載の医療材。
【請求項32】
前記拡張部に隣接して設けられた中実胴部を更に備えており、前記胴部は、前記移植片本体を前記穿通部材に固定するようになっている、請求項12に記載の医療材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公表番号】特表2007−502161(P2007−502161A)
【公表日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523284(P2006−523284)
【出願日】平成16年8月10日(2004.8.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/025777
【国際公開番号】WO2005/018468
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(591157154)ウィルソン−クック・メディカル・インコーポレーテッド (135)
【氏名又は名称原語表記】WILSON−COOK MEDICAL INCORPORATED
【Fターム(参考)】