説明

多チャネル光送信モジュール及びその作製方法

【課題】放熱性を確保し、コストを抑えつつ、全チャネルで良好な高周波特性を得ることができる多チャネル光送信モジュール及びその作製方法を提供する。
【解決手段】多チャネル光送信モジュールにおいて、DFBレーザアレイ3Bと配線板支持板12の厚さの差を15μm以下とし、DFBレーザアレイ3Bと配線板支持板12をサブキャリア4Aの同一の上面に設け、DFBレーザアレイ3Bと配線板支持板12の上面にフリップチップ配線板15を配置し、フリップチップ配線板15を配線板支持板12の電極にバンプ16で固定すると共に、DFBレーザアレイ3Bの電極とフリップチップ配線板15の電極とを各々金バンプ14で結線した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大容量光通信網の構成要素である多チャネル光送信モジュール及びその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波信号配線の電気結線の取り方として、従来は金ワイヤを使ったワイヤボンディングによる結線が一般的であった。
【0003】
そこで、図1を参照して、従来の結線技術を説明する。なお、図1は、直接変調DFB(Distributed feedback)レーザを用いた単チャネル光送信モジュールおいて、従来の結線技術を用いた構成を示す構成図である。ここで、図1中、符号1はパッケージ、2はLDキャリア、3AはDFBレーザ、4Aはサブキャリア、5Aは第1レンズ、6はペルチェ素子、9はアイソレータ付き第2レンズ、10はフェルールカラー、11はピグテールファイバ、13は金ワイヤ、17は高周波配線板、19は外部接続のための中継高周波配線板を示している。
【0004】
図1に示す従来の単チャネル光送信モジュールの高周波信号配線を参照すると、中継高周波配線板19を介してパッケージ1に入ってきた高周波信号は、高周波配線板17との間は金ワイヤ13で結線され、高周波配線板17とDFBレーザ3Aとの間も金ワイヤ13で結線されている。このとき、DFBレーザ3Aと高周波配線板17を接続する金ワイヤ13の長さは、チップ幅を0.5mmとしたときに、最短で0.3mm程度になる。このように、高周波配線板17をDFBレーザ3Aの直近まで引っ張ってくることで、金ワイヤ13を使う距離を短くし、金ワイヤ13の持つ寄生インダクタンス成分による特性劣化を最小限に抑える工夫がなされていた。
【0005】
図2は、合波器付き4チャネルDFBレーザアレイを用いた多チャネル光送信モジュールおいて、前述の従来の結線技術を用いた構成を示す構成図である。なお、図2では、前述の図1で示した構成と同等のものには同じ符号を付している。但し、図2中、符号3Bは合波器付きDFBレーザアレイ(以降、DFBレーザアレイと呼ぶ。)を示している。
【0006】
図1に示した従来の単チャネル光送信モジュールと同様に、中継高周波配線板19を介してパッケージ1に入ってきた高周波信号は、高周波配線板17との間は金ワイヤ13で結線され、高周波配線板17とDFBレーザアレイ3Bの各チャネルとの間も金ワイヤ13で結線されている。このようにして、DFBレーザアレイ3Bの直近まで高周波配線板17を引いているため、DFBレーザアレイ3Bの外縁側の両DFBレーザと高周波配線板17を結ぶ金ワイヤ13の長さは、各DFBレーザ同士の間隔が0.5mmの場合、単チャネルの時と同様に、最短で0.3mm程度に抑えられている。ところが、DFBレーザアレイ3Bの中心側の2つのDFBレーザと高周波配線板17を結ぶ金ワイヤ13の長さは、最短でも0.7mm以上となり、外縁側に比べて2倍以上の長さ必要となる。
【0007】
このため、10Gbpsを超える高速電気信号(高周波信号)を扱う場合は、DFBレーザアレイ3Bの外縁側2チャネル以外のチャネル、つまり、DFBレーザアレイ3Bの中心側のチャネルにおいて、それらのDFBレーザに供給される高周波信号が金ワイヤ13の寄生インダクタンス成分により劣化する問題があった。加えて、多チャネル光送信モジュールは全チャネル同時動作させるため、金ワイヤ13の近接するチャネル間で、電気クロストークが発生し、波形が劣化する問題も発生していた。
【0008】
そこで、ワイヤ実装が不要であるフリップチップ実装技術を用いる方法が考えられる。
【0009】
図3は、合波器付き4チャネルDFBレーザアレイを用いた多チャネル光送信モジュールおいて、フリップチップ実装技術を用いた構成を示す構成図である。つまり、図2に示した合波器付き4チャネルDFBレーザアレイをフリップチップ実装した多チャネル光送信モジュールの構成図である。なお、図3では、前述の図1、図2で示した構成と同等のものには同じ符号を付している。但し、図3中、符号3Cは合波器付きDFBレーザアレイを、符号14は金バンプを示している。
【0010】
図3中に示すレーザアレイ3Cは、電極が形成されている面が下側になっており、金バンプ14を介して、サブキャリア4A上の配線と接合している。このように実装することで、サブキャリア4A上の配線とレーザアレイ3Cとを接続するワイヤが不要となり帯域の劣化、クロストークによる信号波形劣化を抑制することができる。しかしながら、レーザアレイ3Cが、金バンプ14のみを介して、サブキャリア4Aと接しているため、放熱性が悪く、デバイスの特性劣化につながる問題があった。
【0011】
又、前述のフリップチップ実装方法とは逆に、高周波配線板側をフリップチップ実装する形態も考えられる。
【0012】
図4は、合波器付き4チャネルDFBレーザアレイを用いた多チャネル光送信モジュールおいて、フリップチップ実装技術を用いた構成を示す構成図である。つまり、図2に示した合波器付き4チャネルDFBレーザアレイに対して、高周波配線板をフリップチップ実装した多チャネル光送信モジュールの構成図である。なお、図4では、前述の図1〜図3で示した構成と同等のものには同じ符号を付している。但し、図4中、符号15はフリップチップ実装した高周波配線板(以降、フリップチップ配線板と呼ぶ。)を示している。
【0013】
図4中に示すDFBレーザアレイ3Bは、サブキャリア4A上に設置されており、フリップチップ配線板15は、DFBレーザアレイ3B及び高周波配線板17の上面に配置されて、金バンプ14を介して、各々の配線同士を接合している。このような構成にすることで、サブキャリア4AとDFBレーザアレイ3Bが従来と同様に接するため、放熱性の面では、従来のワイヤ実装型と同等の性能が得られる。加えて、高周波配線板17とDFBレーザアレイ3Bとを接続するワイヤが不要となり、帯域の劣化、クロストークによる信号波形劣化を抑制することができる。
【0014】
しかしながら、この実装技術では、フリップチップ配線板15が全ての金バンプ14と接するために、DFBレーザアレイ3Bと高周波配線板17との高さ誤差を、金バンプ14が吸収できる程度の精度で作製する必要がある。このため、チップの研磨厚に依存する歩留まりの低下や配線板の厚さ精度に依存した高コスト化の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2003−207693号公報
【特許文献2】特開2008−244364号公報
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】T. Fujisawa, S. Kanazawa, N. Nunoya, H. Ishii, Y. Kawaguchi, A. Ohki, N. Fujiwara, K. Takahata, R. Iga, F. Kano, and H. Oohashi, "4×25-Gbit/s, 1.3-μm, monolithically integrated light source for 100-Gbit/s Ethernet," in Proc. ECOC, Th.9.D.1, 2010.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
高速の多チャネル光送信モジュールにとって、各チャネルにおいて高周波信号の劣化を極力抑えることは非常に重要である。しかしながら、従来技術では、チャネル数の増大に伴い、チップサイズが大きくなり、金ワイヤの長さも長くなるため、高周波信号が劣化する問題を抱えていた。又、帯域の劣化を防ぐフリップチップ実装技術を用いた場合、放熱性の劣化や高コスト化の問題があった。
【0018】
本発明は上記課題に鑑みなされたもので、放熱性を確保し、コストを抑えつつ、全チャネルで良好な高周波特性を得ることができる多チャネル光送信モジュール及びその作製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決する第1の発明に係る多チャネル光送信モジュールは、
複数のレーザ光を出力すると共に、各々のレーザ光の出力を制御する第1の電極が上面に複数設けられたレーザアレイと、
前記レーザアレイとの厚さの差が15μm以下であり、バンプ用の第2の電極が上面に設けられた支持板と、
前記レーザアレイ及び前記支持板を同一の上面に支持するキャリアと、
上面に高周波信号を供給する高周波配線を複数有し、下面に各々の前記高周波配線と接続されると共に前記第1の電極に対応した第3の電極を複数有し、当該下面を前記レーザアレイ及び前記支持板の上面に配置したフリップチップ配線板を備え、
前記フリップチップ配線板を前記支持板の前記第2の電極にバンプで固定すると共に、前記第1の電極と前記第3の電極とを各々金バンプで結線したことを特徴とする。
【0020】
上記課題を解決する第2の発明に係る多チャネル光送信モジュールは、
上記第1の発明に記載の多チャネル光送信モジュールにおいて、
前記支持板を前記レーザアレイと同時に研磨可能な材料としたことを特徴とする。
【0021】
上記課題を解決する第3の発明に係る多チャネル光送信モジュールは、
上記第1又は第2の発明に記載の多チャネル光送信モジュールにおいて、
前記支持板を少なくとも2個以上設けたことを特徴とする。
【0022】
上記課題を解決する第4の発明に係る多チャネル光送信モジュールは、
上記第1〜第3のいずれか1つの発明に記載の多チャネル光送信モジュールにおいて、
前記レーザアレイを、
3個以上の直接変調DFB(Distributed feedback)レーザ素子から構成するか、
又は、3個以上の電界吸収型光変調器集積DFBレーザ素子から構成するか、
又は、1個以上のDFBレーザ素子及び2個以上のマッハツェンダー変調器から構成したことを特徴とする。
【0023】
上記課題を解決する第5の発明に係る多チャネル光送信モジュールは、
上記第4の発明に記載の多チャネル光送信モジュールにおいて、
前記レーザ素子又は前記変調器からの光路を合波する合波器を前記レーザアレイに設けると共に、前記合波器を、多モード干渉型合波器又はアレイ導波路格子合波器としたことを特徴とする。
【0024】
上記課題を解決する第6の発明に係る多チャネル光送信モジュールは、
上記第4の発明に記載の多チャネル光送信モジュールにおいて、
前記レーザ素子又は前記変調器からの光路を合波する合波器を前記レーザアレイとは独立して設けると共に、前記合波器を、アレイ導波路格子合波器又は誘電体フィルタを用いた合波器としたことを特徴とする。
【0025】
上記課題を解決する第7の発明に係る多チャネル光送信モジュールの作製方法は、
複数のレーザ光を出力するレーザアレイの上面に、各々のレーザ光の出力を制御する第1の電極を複数設ける工程と、
支持板の上面にバンプ用の第2の電極を設ける工程と、
前記レーザアレイ及び前記支持板の下面を同時に研磨して、前記レーザアレイと前記支持板の厚さの差を15μm以下とする工程と、
前記レーザアレイ及び前記支持板をキャリアの同一の上面に設ける工程と、
上面に高周波信号を供給する高周波配線を複数有し、下面に各々の前記高周波配線と接続されると共に前記第1の電極に対応した第3の電極を複数有するフリップチップ配線板を、当該フリップチップ配線板の下面を下にして、前記レーザアレイ及び前記支持板の上面に配置する工程と、
前記フリップチップ配線板を前記支持板の前記第2の電極にバンプで固定する工程と、
前記第1の電極と前記第3の電極とを各々金バンプで結線する工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、同じ厚さのレーザアレイ及び支持板の上面にフリップチップ配線板をフリップチップ実装するので、放熱性を確保し、コストを抑えつつ、フリップチップ実装の特徴である、全チャネルで良好な高周波特性を得ることができる。その結果、10Gbpsを超える高周波信号を扱うときにおいても、信号劣化が少ない多チャネル光送信モジュールを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】DFBレーザを光源とした従来のワイヤ実装型の単チャネル光送信モジュールを示す構成図であり、(a)は上面図、(b)は側面図である。
【図2】合波器付きDFBレーザアレイを光源とした従来のワイヤ実装型の多チャネル光送信モジュールを示す構成図であり、(a)は上面図、(b)は側面図である。
【図3】合波器付きDFBレーザアレイを光源とし、DFBレーザアレイのフリップチップ実装型の多チャネル光送信モジュールを示す構成図であり、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は背面図である。
【図4】合波器付きDFBレーザアレイを光源とし、配線板のフリップチップ実装型の多チャネル光送信モジュールを示す構成図であり、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は背面図である。
【図5】本発明の実施形態の一例(実施例1)を示す図であり、合波器付きDFBレーザアレイを光源とし、ブリッジ型フリップチップ配線板を用いた多チャネル光送信モジュールの構成図であり、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は背面図である。
【図6】図5に示した多チャネル光送信モジュールの第1レンズを調芯するための実験系を示す構成図である。
【図7】図5に示した多チャネル光送信モジュールの第2レンズ及びピグテールファイバを調芯するための実験系を示す構成図である。
【図8】合波器付きDFBレーザアレイを光源とした多チャネル光送信モジュールのアイパターン測定用実験系を示す構成図である。
【図9】合波器付きDFBレーザアレイを光源とした多チャネル光送信モジュールのビットエラーレート測定用実験系を示す構成図である。
【図10】本発明の実施形態の他の一例(実施例2)を示す図であり、EADFBレーザアレイを光源とし、ブリッジ型フリップチップ配線板を用いた多チャネル光送信モジュール構成図であり、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は背面図である。
【図11】図10に示した多チャネル光送信モジュールの第1レンズアレイを調芯するための実験系を示す構成図である。
【図12】図10に示した多チャネル光送信モジュールの誘電体フィルタ合波器を実装するための実験系を示す構成図である。
【図13】EADFBレーザアレイを光源とした多チャネル光送信モジュールのアイパターン測定用実験系を示す構成図である。
【図14】図10に示した多チャネル光送信モジュールの比較例であり、EADFBレーザアレイを光源とした従来のワイヤ実装型の多チャネル光送信モジュールを示す構成図であり、(a)は上面図、(b)は側面図である。
【図15】EADFBレーザアレイを光源とした多チャネル光送信モジュールのビットエラーレート測定用実験系を示す構成図である。
【図16】本発明の実施形態の他の一例(実施例3)を示す図であり、合波器付きMZ集積レーザアレイを光源とし、ブリッジ型フリップチップ配線板を用いた多チャネル光送信モジュール構成図であり、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は背面図である。
【図17】図16に示した多チャネル光送信モジュールの第1レンズを調芯するための実験系を示す構成図である。
【図18】図16に示した多チャネル光送信モジュールの比較例であり、合波器付きMZ集積レーザアレイを光源とした従来のワイヤ実装型の多チャネル光送信モジュールを示す構成図であり、(a)は上面図、(b)は側面図である。
【図19】周波数特性のワイヤ長さ依存性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明では、ブリッジ型配線板フリップチップ実装技術を用いることで、放熱性と帯域劣化の問題を同時に解決可能であり、加えて、配線板支持板とレーザアレイチップを同時に研磨することで、高さの精度問題を解決可能である。又、フリップチップ配線板は、従来の金バンプを介した固定と異なり、支持板を介してキャリアと安定して固定されているため、フリップチップ配線板に直接ワイヤボンディングをすることが可能となり、配線板支持板に高周波配線のパターニングが不要である。又、従来の配線板フリップチップ実装より、特性インピーダンス不整合による特性劣化の要因となる金バンプ部分を1カ所減らすことが可能となり、高周波特性改善が見込める。又、配線板支持板はDFBレーザアレイ作製のプロセスと同時に作製可能である点とパターンニング不要である点から、安価に作製可能である。このように、本発明では、良好な高周波特性が得られ、低コストで作製可能な多チャネル光送信モジュールが実現可能となる。
【0029】
このような本発明に係る多チャネル光送信モジュール及び作製方法について、その具体的な実施形態のいくつかを以下に説明する。なお、以下の実施例は、本発明を説明するいくつかの例示であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を行い得る。
【実施例1】
【0030】
(1.構成)
図5は、本実施例の多チャネル光送信モジュールを示す構成図であり、図5(a)は、その上面図、図5(b)は、その側面図、図5(c)は、その背面図である。
【0031】
本実施例の多チャネル光送信モジュールは、その筐体となるパッケージ1と、パッケージ1の内部に設けられ、後述するDFBレーザアレイ3Bを冷却するためのペルチェ素子6と、ペルチェ素子6の上面に設けられ、その上面にDFBレーザアレイ3Bや後述する第1レンズ5A等が配置されるLDキャリア2と、LDキャリア2の上面に設けられ、その上面にDFBレーザアレイ3Bが配置されるサブキャリア4Aと、複数の半導体レーザ素子とそれらからの光路を合波する合波器とが集積されたDFBレーザアレイ3Bと、DFBレーザアレイ3Bからのレーザ光を集光する第1レンズ5Aとを有している。このような構成により、DFBレーザアレイ3Bを、パッケージ1の内部に搭載している。
【0032】
又、パッケージ1の1つの側面(前面)の外側には、第1レンズ5Aで集光したレーザ光を集光し、後述するピグテールファイバ11に入射するアイソレータ付き第2レンズ9と、ピグテールファイバ11を保持するフェルールカラー10と、DFBレーザアレイ3Bからのレーザ光を外部へ伝搬するピグテールファイバ11とを設けている。
【0033】
本実施例では、多チャネル光送信用アレイデバイスとなるDFBレーザアレイ3Bとして、4チャネルの合波器付きDFBレーザアレイを用いた構成となっている。具体的には、DFBレーザアレイ3Bでは、半導体レーザ素子として、直接変調DFBレーザを用いており、合波器として、アレイ導波路格子合波器(以下、AWG合波器と呼ぶ。)を用いており、InPウェハ上に、4つの直接変調DFBレーザを配列して集積すると共に、各直接変調DFBレーザからの光路を合波するAWG合波器を集積している。なお、合波器は、後述の実施例3で示す多モード干渉型合波器(MMI合波器)でもよい。そして、DFBレーザアレイ3Bの上面には、複数の直接変調DFBレーザからのレーザ光の出力を制御するため、各直接変調DFBレーザに対応する電極(第1の電極)が各々設けられている。
【0034】
又、DFBレーザアレイ3Bでは、チャネル間隔を500μmとし、各チャネルの波長は、1295nm、1300nm、1305nm、1310nmとした。又、データレート25Gbps、Non Return to ZERO(以下、NRZと呼ぶ。)とし、疑似ランダム信号(以下、PRBSと呼ぶ。)は[231−1]の高周波信号を各チャネルに供給する。
【0035】
そして、サブキャリア4A上面に設けられたDFBレーザアレイ3Bを間にして、同一の上面の両外縁側には、配線板支持板12が各々設けられている。この配線板支持板12は、材料がDFBレーザアレイ3Bと同じInPを用いており、DFBレーザアレイ3Bとは、厚さの差が15μm以下となるように形成されている。又、配線板支持板12の上面には、フリップチップ配線板15を固定するバンプ用の電極(第2の電極)が設けられている。なお、この配線板支持板12は、1個でもよいが、2個以上あれば、より確実に、より安定して、フリップチップ配線板15を固定可能である。
【0036】
フリップチップ配線板15は、4チャネル分の高周波配線やグランド線を有するマイクロストリップ線路の配線形状になっている。フリップチップ配線板15自体は窒化アルミニウムを材料とし、高周波配線、グランド線はAuを材料としている。又、フリップチップ配線板15の上面に形成された4チャネル分の高周波配線と下面に形成された金バンプ接点(第3の電極)は、その側面に形成された高周波配線を介して電気的に接続されている。この金バンプ接点は、DFBレーザアレイ3B上面の電極に対応した位置に配置されている。
【0037】
そして、DFBレーザアレイ3B及び配線板支持板12の上面にフリップチップ配線板15が配置されており、DFBレーザアレイ3Bとは、金バンプ14を介して、各々の配線同士を接続し、配線板支持板12とは、バンプ16を介して、接続している。フリップチップ配線板15において、金バンプ14との接続部分及び配線板支持板12との接続部分は、金−スズ合金半田を使い、半田接合とした。なお、バンプ16は、金バンプでも半田バンプでもよい。
【0038】
又、パッケージ1内部の対面する側面であって、フリップチップ配線板15の両端部に対面する側面には、パッケージ1外部の配線とフリップチップ配線板15との中継のために、中継高周波配線板19が設けられている。
【0039】
なお、本実施例では、DFBレーザアレイ3B中に直接変調DFBレーザを4個配列しているが、直接変調DFBレーザを3個以上配列した構成であれば、本発明の効果を奏することが可能である。
【0040】
(2.動作原理)
本実施例において、DFBレーザアレイ3Bの各チャネルに、どのようにして高周波信号を供給するかを説明する。
【0041】
中継高周波配線板19からパッケージ1に入ってきた高周波信号は、金ワイヤ13を介して、フリップチップ配線板15に入り、更に、金バンプ14を介して、DFBレーザアレイ3Bの各直接変調DFBレーザに供給される。DFBレーザアレイ3Bによって光に変換された信号は、AWG合波器を介して、1つの導波路に合波されて出力される。出力された光は、第1レンズ5A、第2レンズ9によって集光されて、ピグテールファイバ11に結合される。
【0042】
(3.組み立て工程)
まず、DFBレーザアレイ3B及び配線板支持板12の作製手順を示す。
DFBレーザアレイ3Bについては、一般的な手順で、例えば、非特許文献1のような手順で、DFBレーザアレイ用InPウエハの成長面に電極のリフトオフパターン作製まで行う。又、配線板支持板12については、DFBレーザアレイ3Bと同じInPからなる基板を用いる。
次に、成長面を蒸着される面としたDFBレーザアレイ用InPウエハ及び配線板支持板用基板を共に真空蒸着機に入れ、電極を蒸着する。DFBレーザアレイ用InPウエハに関してはリフトオフ工程を行う。つまり、DFBレーザアレイ3Bとなるウェハ及び配線板支持板12となる基板の上面に電極(第1の電極、第2の電極)を形成している。
次に、DFBレーザアレイ用InPウエハ及び配線板支持板用基板を共に表面研磨治具にエレクトロンワックスを用いて接着し、電極蒸着面とは反対側の面を臭素(Br)−メタノール混合溶液をエッチャントとした化学機械研磨を行い、所望の厚さまで研磨する。
最後に、DFBレーザアレイ用InPウエハ及び配線板支持板用基板の研磨を行った面にも共に電極を蒸着し、その後、劈開により所望のサイズに切り出す。
【0043】
以上の手順を経ることで、同時に、かつ、同じ厚さ(厚さ誤差がほとんどない、あったとしても15μm以下)のDFBレーザアレイ3B及び配線板支持板12を作製する。つまり、DFBレーザアレイ3Bと配線板支持板12が同じ材料であるので、同じ手順を経て、同時に同じ厚さに作製可能となる。このようにして、DFBレーザアレイ3Bと配線板支持板12の厚さ誤差が10μm程度で作製可能である。金バンプ14の厚さが40μm程度あるので、金バンプ14で厚さ誤差が十分吸収可能であることがわかる。
【0044】
次に、本実施例の多チャネル光送信モジュールの作製手順を示す。
まず、DFBレーザアレイ3B及び配線板支持板12の下面側をサブキャリア4Aの同一の上面上に実装し、DFBレーザアレイ3Bの電極に金バンプ14を形成する。
次に、DFBレーザアレイ3B及び配線板支持板12の上面に、金バンプ14、バンプ16を介して、フリップチップ配線板15の下面側をフリップチップ実装する。このとき、金バンプ14、バンプ16は、金−スズ合金半田を用いて半田固定する。なお、フリップチップ配線板15には、予め、高周波配線、グランド線が形成されており、その下面側に金バンプ接点(第3の電極)が形成されている。そして、サブキャリア4AをLDキャリア2に実装する。
【0045】
そして、図6に示す実験系を用いて、第1レンズ5Aの調芯を行う。具体的には、DFBレーザアレイ3BのDFBレーザの任意の1チャネルに、直流電源22及びDCプローブ21を用い、フリップチップ配線板15を介して、電流を50mA程度供給する。この状態で、CCDカメラ24を用いて、DFBレーザアレイ3Bから出力されたレーザ光のビーム形状を確認し、レーザ光のビーム形状、位置が、光の進行方向のどの位置でも変わらなくなるように、第1レンズ5Aの調芯を行い、イットリウム・アルミニウム・ガーネットレーザ(以下、YAGレーザと呼ぶ。)23による溶接で、第1レンズ5AをLDキャリア2に固定する。
【0046】
その後、ペルチェ素子6を実装してあるパッケージ1の中にLDキャリア2を搭載する。そして、フリップチップ配線板15とパッケージ1側の中継高周波配線板19との間をワイヤボンディングによる金ワイヤ13で結線する。
【0047】
最後に、図7に示す実験系を用いて、第2レンズ9、ピグテールファイバ11の調芯を行う。具体的には、直流電源22を用いて、DFBレーザアレイ3BのDFBレーザの任意の1チャネルに電流を50mA程度供給し、この状態で、光パワーメータ25に入るパワーが最大になるように、第2レンズ9、フェルールカラー10、ピグテールファイバ11の調芯を行い、YAGレーザ23による溶接により、第2レンズ9、フェルールカラー10、ピグテールファイバ11を固定する。以上で、多チャネル光送信モジュールが完成する。
【0048】
(4.多チャネル光送信モジュールの特性)
アイパターン測定用実験系を図8に示す。この実験系の構成を簡単に説明する。多チャネル光送信モジュール31を光ファイバ32の一端に接続し、その光ファイバ32の他端を光分波器33に接続する。光分波器33には、多チャネル光送信モジュール31からのレーザ光を検出するフォトディテクタ34が接続されており、多チャネル光送信モジュール31にはパルスパタンジェネレータ35が接続されており、更に、フォトディテクタ34にはサンプリングオシロスコープ36接続されている。従って、パルスパタンジェネレータ35の信号に基づいて出力される多チャネル光送信モジュール31のレーザ光がフォトディテクタ34で検出され、検出されたレーザ光がサンプリングオシロスコープ36で解析される構成となっている。
【0049】
ここでは、比較として、図2に示した従来のワイヤ実装技術による多チャネル光送信モジュールの測定も同時に行った。この比較測定では、共に、チップ温度を25℃一定とし、DFBレーザのバイアス電流を50mA、入力信号の振幅を3.0Vppとした。この比較測定において、従来のワイヤ実装技術による多チャネル光送信モジュールが消光比4.0dBであったのに対して、本実施例のブリッジ型配線板フリップチップ実装技術による多チャネル光送信モジュールでは5.2dBの消光比が得られた。
【0050】
又、4チャネル同時にバイアス電流50mA、入力信号の振幅3.0Vppを印加した場合には、従来のワイヤ実装技術による多チャネル光送信モジュールが消光比3.0dBであったのに対して、本実施例のブリッジ型配線板フリップチップ実装技術による多チャネル光送信モジュールでは4.8dBの消光比が得られた。
【0051】
ビットエラーレート測定用実験系を図9に示す。次に、この実験系を用いて、符号誤り率特性(以下、BER特性と呼ぶ、)を測定した。この実験系の構成を簡単に説明する。多チャネル光送信モジュール31を光ファイバ32の一端に接続し、その光ファイバ32の他端を光分波器33に接続する。光分波器33には、多チャネル光送信モジュール31からのレーザ光を検出するフォトディテクタ34が接続されており、多チャネル光送信モジュール31にはパルスパタンジェネレータ35が接続されており、又、フォトディテクタ34には、光可変減衰器39を介して、エラーディテクタ37接続されている。従って、パルスパタンジェネレータ35の信号に基づいて出力される多チャネル光送信モジュール31のレーザ光がフォトディテクタ34で検出され、検出されたレーザ光がエラーディテクタ37で解析される構成となっている。
【0052】
ここでは、従来のワイヤ実装技術による多チャネル光送信モジュール及び本実施例のブリッジ型配線板フリップチップ実装技術による多チャネル光送信モジュール共に、各チャネルでのエラーフリー動作を確認することができた。又、全チャネル同時動作時に、チャネル2(図5(a)中の上から2番目のチャネル)の最小受光感度は、従来のワイヤ実装技術による多チャネル光送信モジュールが−3dBmであったのに対して、本実施例のブリッジ型配線板フリップチップ実装技術による多チャネル光送信モジュールでは−4.5dBmであった。
【0053】
以上により、後述する図19に示すように、10Gbpsを超える高周波信号を扱う時に、信号劣化が少ない多チャネル光送信モジュールが実現可能であることが明らかとなった。
【実施例2】
【0054】
(1.構成)
図10は、本実施例の多チャネル光送信モジュールを示す構成図であり、図10(a)は、その上面図、図10(b)は、その側面図、図10(c)は、その背面図である。なお、本実施例の多チャネル光送信モジュールにおいて、実施例1で説明した多チャネル光送信モジュールと同等の構成には同じ符号を付している。
【0055】
本実施例の多チャネル光送信モジュールは、その筐体となるパッケージ1と、パッケージ1の内部に設けられ、その上面に後述するEADFBレーザアレイ3Cや第1レンズアレイ5Bや誘電体フィルタ合波器7等が配置されるLDキャリア2と、LDキャリア2の上面に設けられ、その上面にEADFBレーザアレイ3Cが配置される配線付きサブキャリア4Bと、半導体レーザ素子及びその変調器の組が複数組集積されたEADFBレーザアレイ3Cと、EADFBレーザアレイ3Cからの複数レーザ光を各々集光する第1レンズアレイ5Bと、第1レンズアレイ5Bで集光されたレーザ光を合波する誘電体フィルタ合波器7とを有している。このような構成により、EADFBレーザアレイ3Cを、パッケージ1の内部に搭載している。
【0056】
又、パッケージ1の1つの側面(前面)の外側には、誘電体フィルタ合波器7で合波したレーザ光を集光し、後述するピグテールファイバ11に入射するアイソレータ付き第2レンズ9と、ピグテールファイバ11を保持するフェルールカラー10と、EADFBレーザアレイ3Cからのレーザ光を外部へ伝搬するピグテールファイバ11とを設けている。
【0057】
本実施例では、多チャネル光送信用アレイデバイスとなるEADFBレーザアレイ3Cとして、4チャネル電界吸収型光変調器集積DFBレーザアレイを用いた構成となっている。具体的には、EADFBレーザアレイ3Cでは、半導体レーザ素子として、DFBレーザを用いており(以下、DFBレーザ部と呼ぶ。)、変調器として、電界吸収型光変調器(以下、EA部と呼ぶ。)を用いており、InPウェハ上に、4組のDFBレーザ部及びEA部を配列して集積している。なお、合波器としては、誘電体フィルタを用いており、EADFBレーザアレイ3Cには集積せず、それとは独立して設けている。従って、各EA部からの光路を、EADFBレーザアレイ3Cの外部に設けた誘電体フィルタ合波器7が合波することになる。なお、合波器は、実施例1で示したようなアレイ導波路格子合波器(AWG合波器)でもよい。そして、EADFBレーザアレイ3Cの上面には、複数のDFBレーザからのレーザ光の出力を制御するため、各EA部に対応する電極(第1の電極)が各々設けられている。
【0058】
又、EADFBレーザアレイ3Cでは、チャネル間隔を500μmとし、各チャネルの波長は、チップ温度25℃のとき、1295nm、1300nm、1305nm、1310nmとした。又、データレート25Gbps、NRZとし、PRBSは[231−1]の高周波信号を各チャネルに供給する。
【0059】
そして、サブキャリア4B上面に設けられたEADFBレーザアレイ3Cを間にして、同一の上面の両外縁側には、配線板支持板12が各々設けられている。この配線板支持板12は、材料がEADFBレーザアレイ3Cと同じInPを用いており、EADFBレーザアレイ3Cとは、厚さの差が15μm以下となるように形成されている。又、配線板支持板12の上面には、フリップチップ配線板15を固定するバンプ用の電極(第2の電極)が設けられている。なお、この配線板支持板12は、1個でもよいが、2個以上あれば、より確実に、より安定して、フリップチップ配線板15を固定可能である。
【0060】
フリップチップ配線板15は、4チャネル分の高周波配線やグランド線を有するマイクロストリップ線路の配線形状になっている。フリップチップ配線板15自体は酸化アルミニウムを材料とし、高周波配線、グランド線はCuを材料としている。又、フリップチップ配線板15の上面に形成された4チャネル分の高周波配線と下面に形成された金バンプ接点(第3の電極)は、フリップチップ配線板15を貫通して形成された貫通ビアで電気的に接続されている。この金バンプ接点は、EADFBレーザアレイ3C上面の電極に対応した位置に配置されている。
【0061】
そして、EADFBレーザアレイ3C及び配線板支持板12の上面にフリップチップ配線板15が配置されており、EADFBレーザアレイ3Cとは、金バンプ14を介して、各々の配線同士を接続し、配線板支持板12とは、バンプ16を介して、接続している。フリップチップ配線板15において、金バンプ14との接続部分は金−金での超音波接合とし、配線板支持板12との接続部分は、バンプ16として、銀−スズ−銅合金半田を使い、半田接合とした。
【0062】
又、パッケージ1内部の対面する側面であって、フリップチップ配線板15の両端部に対面する側面には、パッケージ1外部の配線とフリップチップ配線板15との中継のために、中継高周波配線板19が設けられている。
【0063】
なお、本実施例では、EADFBレーザアレイ3C中に、DFBレーザと電界吸収型光変調器からなる電界吸収型光変調器集積DFBレーザを4個配列しているが、電界吸収型光変調器集積DFBレーザを3個以上配列した構成であれば、本発明の効果を奏することが可能である。
【0064】
(2.動作原理)
本実施例において、EADFBレーザアレイ3Cの各チャネルに、どのようにして高周波信号を供給するかを説明する。
【0065】
中継高周波配線板19からパッケージ1に入ってきた高周波信号は、金ワイヤ13を介して、フリップチップ配線板15に入り、更に、金バンプ14を介して、EADFBレーザアレイ3Cの各EA部に供給される。EADFBレーザアレイ3Cによって光に変換された信号は、第1レンズアレイ5Bを介してコリメート光になり、誘電体フィルタ合波器7を介して1つの光路に合波されて出力される。出力された光は、第2レンズ9によって集光されて、ピグテールファイバ11に結合される。
【0066】
(3.組み立て工程)
まず、EADFBレーザアレイ3C及び配線板支持板12の作製手順を示す。
EADFBレーザアレイ3Cについては、一般的な手順で、例えば、非特許文献1のような手順で、EADFBレーザアレイ用InPウエハの成長面に電極のリフトオフパターン作製まで行う。又、配線板支持板12については、EADFBレーザアレイ3Cと同じInPからなる基板を用いる。
次に、成長面を蒸着される面としたEADFBレーザアレイ用InPウエハ及び配線板支持板用基板を共に真空蒸着機に入れ、電極を蒸着する。EADFBレーザアレイ用InPウエハに関してはリフトオフ工程を行う。つまり、EADFBレーザアレイ3Cとなるウェハ及び配線板支持板12となる基板の上面に電極(第1の電極、第2の電極)を形成している。
次に、EADFBレーザアレイ用InPウエハ及び配線板支持板用基板を共に表面研磨治具にエレクトロンワックスを用いて接着し、電極蒸着面とは反対側の面を臭素(Br)−メタノール混合溶液をエッチャントとした化学機械研磨を行い、所望の厚さまで研磨する。
最後に、EADFBレーザアレイ用InPウエハ及び配線板支持板用基板の研磨を行った面にも共に電極を蒸着し、その後、劈開により所望のサイズに切り出す。
【0067】
以上の手順を経ることで、同時に、かつ、同じ厚さ(厚さ誤差がほとんどない、あったとしても15μm以下)のEADFBレーザアレイ3C及び配線板支持板12を作製する。つまり、EADFBレーザアレイ3Cと配線板支持板12が同じ材料であるので、同じ手順を経て、同時に同じ厚さに作製可能となる。このようにして、EADFBレーザアレイ3Cと配線板支持板12の厚さ誤差が10μm程度で作製可能である。金バンプ14の厚さが40μm程度あるので、金バンプ14で厚さ誤差が十分吸収可能であることがわかる。
【0068】
次に、本実施例の多チャネル光送信モジュールの作製手順を以下に示す。
【0069】
まず、EADFBレーザアレイ3C及び配線板支持板12の下面側をサブキャリア4Bの同一の上面上に実装し、EADFBレーザアレイ3Cの電極に金バンプ14を形成する。
次に、EADFBレーザアレイ3C及び配線板支持板12の上面に、金バンプ14、バンプ16を介して、フリップチップ配線板15の下面側をフリップチップ実装する。このとき、金バンプ14を超音波接合した後、銀−スズ−銅合金半田からなるバンプ16が溶ける温度までリフロー炉で加熱して半田接合する。なお、フリップチップ配線板15には、予め、高周波配線、グランド線が形成されており、その下面側に金バンプ接点(第3の電極)が形成されている。
そして、サブキャリア4BをLDキャリア2に実装した後、EADFBレーザアレイ3CのDFBレーザ部とサブキャリア4Bをワイヤボンディングによって金ワイヤ13で結線する。
【0070】
そして、図11に示す実験系を用いて、第1レンズアレイ5Bの調芯を行う。具体的には、EADFBレーザアレイ3CのDFBレーザ部の4チャネル各々に、直流電源22及びDCプローブ21を用いて、電流を70mA程度供給する。この状態で、CCDカメラ24を用いて、EADFBレーザアレイ3Cから出力されたレーザ光のビーム形状を確認し、各チャネルから出力されたレーザ光のビーム形状、位置が、いずれのチャネルにおいても、光の進行方向のどの位置でも変わらなくなるように、第1レンズアレイ5Bの調芯を行い、YAGレーザ23による溶接で、第1レンズアレイ5BをLDキャリア2に固定する。
【0071】
次に、図12に示す実験系を用いて、4チャネルから出力された各レーザ光が1つの光路に合波するように、誘電体フィルタ合波器7をLDキャリア2に実装していく。
具体的には、まず、EADFBレーザアレイ3Cのチャネル2、3(図12中の中央の2つのチャネル)各々から出力されたレーザ光が、CCDカメラ24で見て、光の進行方向のどの位置でも同一の場所になるように、誘電体フィルタ7−4、7−5を実装する。
次に、チャネル1(図12中の上側のチャネル)から出力されたレーザ光が、誘電体フィルタ7−4を通して、CCDカメラ24で見て、光の進行方向のどの位置でも同一の場所になるように、誘電体フィルタ7−3を実装する。
同様に、チャネル4(図12中の下側のチャネル)から出力されたレーザ光が、誘電体フィルタ7−5を通して、CCDカメラ24で見て、光の進行方向のどの位置でも同一の場所になるように、誘電体フィルタ7−6を実装する。
そして、チャネル3、4(図12中の下側の2つのチャネル)から出力されたレーザ光が、CCDカメラ24で見て、光の進行方向のどの位置でも同一の場所になるように、誘電体フィルタ7−2を実装する。
最後に、チャネル1、2(図12中の上側の2つのチャネル)から出力されたレーザ光が、誘電体フィルタ7−2を通して、CCDカメラ24で見て、光の進行方向のどの位置でも同一の場所になるように、誘電体フィルタ7−1を実装する。
以上により、光路を1つに合波することができる誘電体フィルタ合波器7を実装することになる。
【0072】
その後、パッケージ1の中にLDキャリア2を搭載する。次に、フリップチップ配線板15とパッケージ1側の中継高周波基板19との間をワイヤボンディングによって、金ワイヤ13で結線する。同時に、サブキャリア4Bとパッケージ1側の中継高周波基板19との各配線もワイヤボンディングによって、金ワイヤ13で結線する。
【0073】
最後に、前述の図7で示した実験系を用いて、第2レンズ9、ピグテールファイバ11の調芯を行う。具体的には、直流電源22を用いて、EADFBレーザアレイ3CのDFBレーザの任意の1チャネルに、電流を100mA程度供給し、この状態で、光パワーメータ25に入るパワーが最大になるように、第2レンズ9、ピグテールファイバ11の調芯を行い、YAGレーザ23による溶接で、第2レンズ9、フェルールカラー10、ピグテールファイバ11を固定する。以上で、多チャネル光送信モジュールが完成する。
【0074】
(4.多チャネル光送信モジュールの特性)
アイパターン測定用実験系を図13に示す。この実験系の構成を簡単に説明する。多チャネル光送信モジュール31を光ファイバ32の一端に接続し、その光ファイバ32の他端を光分波器33に接続する。光分波器33には、多チャネル光送信モジュール31からのレーザ光を検出するフォトディテクタ34が接続されており、多チャネル光送信モジュール31には直流電源39及びパルスパタンジェネレータ35が接続されており、更に、フォトディテクタ34にはサンプリングオシロスコープ36接続されている。従って、パルスパタンジェネレータ35の信号に基づいて出力される多チャネル光送信モジュール31のレーザ光がフォトディテクタ34で検出され、検出されたレーザ光がサンプリングオシロスコープ36で解析される構成となっている。
【0075】
ここでは、比較として、図14に示す従来のワイヤ実装技術による多チャネル光送信モジュールの測定も同時に行った。この従来のワイヤ実装技術による多チャネル光送信モジュールは、上記フリップチップ配線板15を使わない構成である。
【0076】
この比較測定では、共に、外気25℃一定とし、DFBレーザ部のバイアス電流を100mA、EA部のバイアス電圧を−1.5V、入力信号の振幅を2.0Vppとした。この比較測定において、チャネル2は、従来のワイヤ実装技術による多チャネル光送信モジュールが消光比8.0dBであったのに対して、本実施例のブリッジ型配線板フリップチップ実装技術による多チャネル光送信モジュールでは9.1dBの消光比が得られた。
【0077】
又、4チャネル同時に、DFBレーザ部にバイアス電流100mA、EA部にバイアス電圧−1.5V、入力信号の振幅2.0Vppを印加した場合には、チャネル2は、従来のワイヤ実装技術による多チャネル光送信モジュールが消光比7.0dBであったのに対して、本実施例のブリッジ型配線板フリップチップ実装技術による多チャネル光送信モジュールでは8.3dBの消光比が得られた。
【0078】
ビットエラーレート測定用実験系を図15に示す。次に、この実験系を用いて、BER特性を測定した。この実験系の構成を簡単に説明する。多チャネル光送信モジュール31を光ファイバ32の一端に接続し、その光ファイバ32の他端を光分波器33に接続する。光分波器33には、多チャネル光送信モジュール31からのレーザ光を検出するフォトディテクタ34が接続されており、多チャネル光送信モジュール31には直流電源39及びパルスパタンジェネレータ35が接続されており、更に、フォトディテクタ34には、光可変減衰器39を介して、エラーディテクタ37接続されている。従って、パルスパタンジェネレータ35の信号に基づいて出力される多チャネル光送信モジュール31のレーザ光がフォトディテクタ34で検出され、検出されたレーザ光がエラーディテクタ37で解析される構成となっている。
【0079】
ここでは、従来のワイヤ実装技術による多チャネル光送信モジュール及び本実施例のブリッジ型配線板フリップチップ実装技術による多チャネル光送信モジュール共に、各チャネルでのエラーフリー動作を確認することができた。又、4チャネル同時動作時、チャネル2の最小受光感度は、従来のワイヤ実装技術による多チャネル光送信モジュールが−7dBmであったのに対して、本実施例のブリッジ型配線板フリップチップ実装技術による多チャネル光送信モジュールでは−8.6dBmであった。
【0080】
以上により、後述する図19に示すように、10Gbpsを超える高周波信号を扱うときに、信号劣化が少ない多チャネル光送信モジュールが実現可能であることが明らかとなった。
【実施例3】
【0081】
(1.構成)
図16は、本実施例の多チャネル光送信モジュールを示す構成図であり、図16(a)は、その上面図、図16(b)は、その側面図、図16(c)は、その背面図である。又、なお、本実施例の多チャネル光送信モジュールにおいても、実施例1で説明した多チャネル光送信モジュールと同等の構成には同じ符号を付している。
【0082】
本実施例の多チャネル光送信モジュールは、その筐体となるパッケージ1と、パッケージ1の内部に設けられ、後述するMZ集積レーザアレイ3Dを冷却するためのペルチェ素子6と、ペルチェ素子6の上面に設けられ、その上面にMZ集積レーザアレイ3Dや後述する第1レンズ5A等が配置されるLDキャリア2と、LDキャリア2の上面に設けられ、その上面にMZ集積レーザアレイ3Dが配置される配線付きサブキャリア4Bと、半導体レーザ素子及びその変調器の組が複数組集積されると共に、それらからの光路を合波する合波器が集積されたMZ集積レーザアレイ3Dと、MZ集積レーザアレイ3Dからのレーザ光を集光する第1レンズ5Aとを有している。このような構成により、MZ集積レーザアレイ3Dを、パッケージ1の内部に搭載している。
【0083】
又、パッケージ1の1つの側面(前面)の外側には、第1レンズ5Aで集光したレーザ光を集光し、後述するピグテールファイバ11に入射する第2レンズ9と、ピグテールファイバ11を保持するフェルールカラー10と、MZ集積レーザアレイ3Dからのレーザ光を外部へ伝搬するピグテールファイバ11とを設けている。
【0084】
本実施例では、多チャネル光送信用アレイデバイスとなるMZ集積レーザアレイ3Dとして、2チャネルの合波器付きマッハツェンダー変調器集積DFBレーザアレイを用いた構成となっている。具体的には、MZ集積レーザアレイ3Dでは、半導体レーザ素子として、DFBレーザを用いており(以下、DFBレーザ部と呼ぶ)、変調器として、マッハツェンダー変調器を用いており(以下、MZ部と呼ぶ)、合波器として、多モード干渉型合波器(以下、MMI合波器と呼ぶ。)を用いており、InPウェハ上に、2組のDFBレーザ部及びMZ部を配列して集積すると共に、各MZ部からの光路を合波するMMI合波器を集積している。なお、合波器は、実施例1で示したアレイ導波路格子合波器(AWG合波器)でもよい。そして、MZ集積レーザアレイ3Dの上面には、複数のDFBレーザからのレーザ光の出力を制御するため、各MZ部に対応する電極(第1の電極)が各々設けられている。
【0085】
又、MZ集積レーザアレイ3Dでは、チャネル間隔を1000μmとし、各チャネルの波長は、チップ温度25℃のとき、1550nm、1560nmとした。又、データレート50Gbps、NRZとし、PRBSは[231−1]の高周波信号を各チャネルに供給する。
【0086】
そして、サブキャリア4B上面に設けられたMZ集積レーザアレイ3Dを間にして、同一の上面の両外縁側には、配線板支持板12が各々設けられている。この配線板支持板12は、材料としてSi(シリコン)を用いており、MZ集積レーザアレイ3Dとは、厚さの差が15μm以下となるように形成されている。又、配線板支持板12の上面には、フリップチップ配線板15を固定するバンプ用の電極(第2の電極)が設けられている。なお、この配線板支持板12は、1個でもよいが、2個以上あれば、より確実に、より安定して、フリップチップ配線板15を固定可能である。
【0087】
フリップチップ配線板15は、2チャネル分(4本)の高周波配線を有する差動マイクロストリップ線路の配線形状になっている。フリップチップ配線板15自体はレジンを材料とし、高周波配線はAlを材料としている。又、フリップチップ配線板15の上面に形成された2チャネル分(4本)の高周波配線と下面に形成された金バンプ接点(第3の電極)は、フリップチップ配線板15を貫通して形成された貫通ビアで電気的に接続されている。この金バンプ接点は、MZ集積レーザアレイ3D上面の電極に対応した位置に配置されている。
【0088】
そして、MZ集積レーザアレイ3D及び配線板支持板12の上面にフリップチップ配線板15が配置されており、MZ集積レーザアレイ3Dとは、金バンプ14を介して、各々の配線同士を接続し、配線板支持板12とは、金からなるバンプ16を介して、接続している。フリップチップ配線板15において、金バンプ14との接続部分及び配線板支持板12との接続部分は、金−金での超音波接合とした。
【0089】
又、パッケージ1内部の対面する側面であって、フリップチップ配線板15の両端部に対面する側面には、パッケージ1外部の配線とフリップチップ配線板15との中継のために、中継高周波配線板19が設けられている。
【0090】
なお、本実施例では、MZ集積レーザアレイ3D中に、2つのDFBレーザと2つのマッハツェンダー変調器を配列しているが、DFBレーザを1個以上、マッハツェンダー変調器を2個以上配列した構成であれば、本発明の効果を奏することが可能である。
【0091】
(2.動作原理)
本実施例において、MZ集積レーザアレイ3Dの各チャネルに、どのようにして高周波信号を供給するかを説明する。
【0092】
中継高周波配線板19からパッケージ1に入ってきた高周波信号は、金ワイヤ13を介して、フリップチップ配線板15に入り、更に、金バンプ14を介して、MZ集積レーザアレイ3Dの各MZ部に供給される。MZ集積レーザアレイ3DのDFBレーザ部によって光に変換され、MZ部で変調された信号は、MMI合波器を介して、1つの導波路に合波されて出力される。出力された光は、第1レンズ5A、第2レンズ9によって集光されて、ピグテールファイバ11に結合される。
【0093】
(3.組み立て工程)
まず、MZ集積レーザアレイ3D及び配線板支持板12の作製手順を示す。
MZ集積レーザアレイ3Dについては、一般的な手順で、例えば、非特許文献1のような手順で、MZ集積レーザアレイ用InPウエハの成長面に電極のリフトオフパターン作製まで行う。又、配線板支持板12については、シリコンからなる基板を用いる。
次に、成長面を蒸着される面としたMZ集積レーザアレイ用InPウエハ及び配線板支持板用基板を共に真空蒸着機に入れ、電極を蒸着する。MZ集積レーザアレイ用InPウエハに関してはリフトオフ工程を行う。つまり、MZ集積レーザアレイ3Dとなるウェハ及び配線板支持板12となる基板の上面に電極(第1の電極、第2の電極)を形成している。
次に、MZ集積レーザアレイ用InPウエハ及び配線板支持板用基板を共に表面研磨治具にエレクトロンワックスを用いて接着し、電極蒸着面とは反対側の面を、研磨粉としてアルミナ粉末を用いた機械研磨を行い、所望の厚さまで研磨する。
最後に、MZ集積レーザアレイ用InPウエハ及び配線板支持板用基板の研磨を行った面にも共に電極を蒸着し、その後、劈開により所望のサイズに切り出す。
【0094】
以上の手順を経ることで、同時に、かつ、同じ厚さ(厚さ誤差がほとんどない、あったとしても15μm以下)のMZ集積レーザアレイ3D及び配線板支持板12を作製する。つまり、MZ集積レーザアレイ3Dと配線板支持板12が同等の物性の材料であるので、同じ手順を経て、同時に同じ厚さに作製可能となる。このようにして、MZ集積レーザアレイ3Dと配線板支持板12の厚さ誤差が15μm程度で作製可能である。金バンプ14の厚さが40μm程度あるので、金バンプ14で厚さ誤差が十分吸収可能であることがわかる。
【0095】
本実施例の多チャネル光送信モジュールの作製手順を以下に示す。
【0096】
まず、MZ集積レーザアレイ3D及び配線板支持板12の下面側をサブキャリア4Bの同一の上面上に実装すると共に終端抵抗18を実装し、MZ集積レーザアレイ3Dの電極に金バンプ14、配線板支持板12の電極に金からなるバンプ16を形成する。
次に、MZ集積レーザアレイ3D及び配線板支持板12の上面に、金バンプ14、バンプ16を介して、フリップチップ配線板15をフリップチップ実装する。このとき、金バンプ14、バンプ16を超音波接合する。
次に、サブキャリア4BをLDキャリア2に実装した後、MZ集積レーザアレイ3DのDFBレーザ部とサブキャリア4B、MZ集積レーザアレイ3DのMZ部の電極パッドと終端抵抗18を、ワイヤボンディングによって各々金ワイヤ13で結線する。
【0097】
そして、図17に示す実験系を用いて、第1レンズ5Aの調芯を行う。具体的には、MZ集積レーザアレイ3DのDFBレーザ部の任意の1チャネルに、直流電源22及びDCプローブ21を用いて、電流を100mA程度供給する。この状態で、CCDカメラ24を用いて、MZ集積レーザアレイ3Dから出力されたレーザ光のビーム形状を確認し、レーザ光のビーム形状、位置が、光の進行方向のどの位置でも変わらなくなるように、第1レンズ5Aを調芯し、YAGレーザ23による溶接で、第1レンズ5AをLDキャリア2に固定する。
【0098】
その後、パッケージ1に実装したペルチェ素子6にLDキャリア2を搭載する。そして、フリップチップ配線板15とパッケージ1側の中継高周波基板19との間を金ワイヤ13で結線する。
【0099】
最後に、前述の図7で示した実験系を用いて、第2レンズ9、ピグテールファイバ11の調芯を行う。具体的には、直流電源22を用いて、MZ集積レーザアレイ3DのDFBレーザ部の任意の1チャネルに、電流を100mA程度供給し、この状態で、光パワーメータ25に入るパワーが最大になるように、第2レンズ9、フェルールカラー10、ピグテールファイバ11の調芯を行い、YAGレーザ23による溶接で、第2レンズ9、フェルールカラー10、ピグテールファイバ11を固定する。以上で、多チャネル光送信モジュールが完成する。
【0100】
(4.多チャネル光送信モジュールの特性)
前述の図13で示したアイパターン測定用実験系を用いて、多チャネル光送信モジュールの特性評価を行った。ここでは、比較として、図18に示す従来のワイヤ実装技術による多チャネル光送信モジュールの測定も同時に行った。この従来のワイヤ実装技術による多チャネル光送信モジュールは、上記フリップチップ配線板15を使わない構成である。なお、MZ集積レーザアレイ3Dにおいて、図中(図16、図18参照)の上側をチャネル1、下側をチャネル2として説明する。
【0101】
この比較測定では、共に、25℃一定とし、DFBレーザ部のバイアス電流を120mA、MZ部の左電極のバイアス電圧を−3.5V、右電極のバイアス電圧を−3.0Vとし、両電極には差動信号を印加し、振幅を3.0Vppとした。この比較測定において、チャネル2は、従来のワイヤ実装技術による多チャネル光送信モジュールが消光比9.5dBであったのに対して、本実施例のブリッジ型配線板フリップチップ実装技術による多チャネル光送信モジュールでは10.4dBの消光比が得られた。
【0102】
又、2チャネル同時に、DFBレーザ部にバイアス電流120mA、MZ部にバイアス電圧−0.5V、入力信号の振幅2.0Vppを印加した場合には、チャネル2は、従来のワイヤ実装技術による多チャネル光送信モジュールが消光比8.9dBであったのに対して、本実施例の多チャネル光送信モジュールでは10.0dBの消光比が得られた。
【0103】
次に、前述の図15で示したビットエラーレート測定用実験系を用いて、BER特性を測定した。ここでは、従来のワイヤ実装技術による多チャネル光送信モジュール及び本実施例のブリッジ型配線板フリップチップ実装技術による多チャネル光送信モジュール共に、各チャネルでのエラーフリー動作を確認することができた。又、2チャネル同時動作時、チャネル2の最小受光感度は、従来のワイヤ実装技術による多チャネル光送信モジュールが−9dBmであったのに対して、本実施例のブリッジ型配線板フリップチップ実装技術による多チャネル光送信モジュールでは−11.2dBmであった。
【0104】
以上により、10Gbpsを超える高周波信号を扱うときに、信号劣化が少ない多チャネル光送信モジュールが実現可能であることが明らかとなった。
【0105】
参考のため、図19に、周波数特性のワイヤ長さ依存性のグラフを示す。これは、DFBレーザの内部を等価回路で表し、その等価回路に終端抵抗40Ω(DFBレーザの寄生抵抗と合わせて50Ω)とワイヤのインダクタンス成分を直列に入れたときの周波数応答性をシミュレーションしたものである。なお、このシミュレーションでは、DFBレーザの光・電気変換は加味していない。図19のグラフからわかるように、ワイヤ長さが0.7mmでは3dB帯域は10GHz程度であり(実線参照)、ワイヤ長さを0.3mmに抑えられれば、3dB帯域は20GHzを越えるところまで行くが(一点鎖線参照)、ワイヤフリーの場合には、周波数応答性は40GHzまで比較的フラットであり(二点鎖線参照)、20Gbpsを超える信号を伝送するには十分である。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明は、10Gbpsを超える高周波信号を扱う多チャネル光送信モジュールに好適なものである。
【符号の説明】
【0107】
3B DFBレーザアレイ
3C EADFBレーザアレイ
3D MZ集積レーザアレイ
4A、4B サブキャリア
12 配線板支持板
14 金バンプ
15 フリップチップ配線板
16 バンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレーザ光を出力すると共に、各々のレーザ光の出力を制御する第1の電極が上面に複数設けられたレーザアレイと、
前記レーザアレイとの厚さの差が15μm以下であり、バンプ用の第2の電極が上面に設けられた支持板と、
前記レーザアレイ及び前記支持板を同一の上面に支持するキャリアと、
上面に高周波信号を供給する高周波配線を複数有し、下面に各々の前記高周波配線と接続されると共に前記第1の電極に対応した第3の電極を複数有し、当該下面を前記レーザアレイ及び前記支持板の上面に配置したフリップチップ配線板を備え、
前記フリップチップ配線板を前記支持板の前記第2の電極にバンプで固定すると共に、前記第1の電極と前記第3の電極とを各々金バンプで結線したことを特徴とする多チャネル光送信モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の多チャネル光送信モジュールにおいて、
前記支持板を前記レーザアレイと同時に研磨可能な材料としたことを特徴とする多チャネル光送信モジュール。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の多チャネル光送信モジュールにおいて、
前記支持板を少なくとも2個以上設けたことを特徴とする多チャネル光送信モジュール。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の多チャネル光送信モジュールにおいて、
前記レーザアレイを、
3個以上の直接変調DFB(Distributed feedback)レーザ素子から構成するか、
又は、3個以上の電界吸収型光変調器集積DFBレーザ素子から構成するか、
又は、1個以上のDFBレーザ素子及び2個以上のマッハツェンダー変調器から構成したことを特徴とする多チャネル光送信モジュール。
【請求項5】
請求項4に記載の多チャネル光送信モジュールにおいて、
前記レーザ素子又は前記変調器からの光路を合波する合波器を前記レーザアレイに設けると共に、前記合波器を、多モード干渉型合波器又はアレイ導波路格子合波器としたことを特徴とする多チャネル光送信モジュール。
【請求項6】
請求項4に記載の多チャネル光送信モジュールにおいて、
前記レーザ素子又は前記変調器からの光路を合波する合波器を前記レーザアレイとは独立して設けると共に、前記合波器を、アレイ導波路格子合波器又は誘電体フィルタを用いた合波器としたことを特徴とする多チャネル光送信モジュール。
【請求項7】
複数のレーザ光を出力するレーザアレイの上面に、各々のレーザ光の出力を制御する第1の電極を複数設ける工程と、
支持板の上面にバンプ用の第2の電極を設ける工程と、
前記レーザアレイ及び前記支持板の下面を同時に研磨して、前記レーザアレイと前記支持板の厚さの差を15μm以下とする工程と、
前記レーザアレイ及び前記支持板をキャリアの同一の上面に設ける工程と、
上面に高周波信号を供給する高周波配線を複数有し、下面に各々の前記高周波配線と接続されると共に前記第1の電極に対応した第3の電極を複数有するフリップチップ配線板を、当該フリップチップ配線板の下面を下にして、前記レーザアレイ及び前記支持板の上面に配置する工程と、
前記フリップチップ配線板を前記支持板の前記第2の電極にバンプで固定する工程と、
前記第1の電極と前記第3の電極とを各々金バンプで結線する工程とを有することを特徴とする多チャネル光送信モジュールの作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−174700(P2012−174700A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31767(P2011−31767)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】