説明

多ユニット分析装置とそのラック搬送制御方法

【課題】ラックの誤搬送を回避して試薬や検体の無駄と検査時間の無駄を回避することが可能な多ユニット分析装置とそのラック搬送制御方法を提供すること。
【解決手段】複数の分析ユニット3〜6と、複数のラックを各分析ユニットに搬送する搬送装置11とを備えた多ユニット分析装置1とそのラック搬送制御方法。多ユニット分析装置は、ラック8の識別指標を読み取る読取装置24,33,48,58,68と、読取装置24が読み取った情報に基づいてラックを搬送する分析ユニットを搬送装置に指示すると共に、読取装置33,48,58,68が読み取った情報をもとに、正規の分析ユニットにラックが搬送されているか否かを確認する制御装置10とを備え、制御装置10は、ラックが正規の分析ユニットに搬送されている場合には分析処理に移行させ、ラックが誤った分析ユニットに搬送されている場合には正規の分析ユニットへの転送を搬送装置に指示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の分析ユニットを有する多ユニット分析装置とそのラック搬送制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、分析ユニットを複数有し、分析項目に応じて複数の分析ユニットのうちの特定の分析ユニットを選択して検体を分析する多ユニット分析装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特許第3271604号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示された多検体分析システムは、各分析ユニットに設けた識別情報読取装置によって検体ラックの外壁に設けた識別情報媒体から識別情報を読み取っているが、搬送先となる所定の分析ユニットに検体ラックが搬送されているか否かの確認はしていない。従って、特許文献1の多検体分析システムは、検体ラックの誤搬送があった場合には、当該検体ラックに保持された検体は、再検の必要が生じ、試薬や検体が無駄となるばかりではなく、検査時間も無駄になるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ラックの誤搬送を回避して試薬や検体の無駄と検査時間の無駄を回避することが可能な多ユニット分析装置とそのラック搬送制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に係る多ユニット分析装置は、並列して設けられる複数の分析ユニットと、前記複数の分析ユニットに沿って配置され、試料容器を複数保持すると共に、識別指標を有する複数のラックを前記各分析ユニットに搬送する搬送装置とを備え、前記複数のラックを前記搬送装置によって所定の分析ユニットへ搬送し、前記試料容器内の試料を分析する多ユニット分析装置であって、前記複数のラックの前記搬送装置への送り出し位置と各分析ユニットのそれぞれに設けられ、前記ラックの識別指標を読み取る読取装置と、前記複数のラックの送り出し位置で前記読取装置が読み取った前記識別指標の情報に基づいて前記ラックを搬送すべき分析ユニットを前記搬送装置に指示すると共に、搬送された分析ユニットの読取装置が読み取った前記識別指標の情報をもとに、指示された正規の分析ユニットに前記ラックが搬送されているか否かを確認する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記ラックが正規の分析ユニットに搬送されている場合には、当該分析ユニットによる分析処理に移行させ、前記ラックが誤った分析ユニットに搬送されている場合には、当該ラックの正規の分析ユニットへの転送を前記搬送装置に指示することを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に係る多ユニット分析装置は、上記の発明において、前記識別指標は、バーコード、電磁気的に情報を書き込み,消去可能な記録媒体、前記ラックに設ける切欠き又はカラーマーク或いは当該ラック自体の色の少なくとも一つを含むことを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に係る多ユニット分析装置は、上記の発明において、前記搬送装置は、互いに並行して配置され、前記ラックを前記各分析ユニットに順次搬送する搬送ラインと、各分析ユニットに搬送後の前記ラックを回収部へ戻す戻しラインとを有することを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に係る多ユニット分析装置は、上記の発明において、さらに、前記搬送装置は、前記搬送ライン及び戻しラインに並行し、前記ラックを特定の分析ユニットに選択的に搬送する追い越しラインを有することを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に係る多ユニット分析装置は、上記の発明において、前記各分析ユニットに設けられる読取装置は、前記搬送装置を臨む位置に隣接して設けられていることを特徴とする。
【0011】
また、請求項6に係る多ユニット分析装置は、上記の発明において、前記各分析ユニットに設けられる読取装置は、バーコードリーダからなることを特徴とする。
【0012】
また、請求項7に係る多ユニット分析装置は、上記の発明において、前記複数の分析ユニットは、電解質検査項目分析ユニット,生化学検査項目分析ユニット,免疫検査項目分析ユニット,遺伝子検査項目分析ユニットの少なくとも二以上の組み合わせからなることを特徴とする。
【0013】
また、請求項8に係る多ユニット分析装置は、上記の発明において、前記免疫検査項目分析ユニット又は遺伝子検査項目分析ユニットは、前記電解質検査項目分析ユニット又は生化学検査項目分析ユニットでの分析に先立って分析を実行することを特徴とする。
【0014】
また、請求項9に係る多ユニット分析装置は、上記の発明において、並列して設けられる複数の分析ユニットと、前記複数の分析ユニットに沿って配置され、試料容器を複数保持すると共に、識別指標を有する複数のラックを前記各分析ユニットに搬送する搬送装置とを備え、複数のラックを前記搬送装置によって所定の分析ユニットへ搬送し、前記試料容器内の試料を分析する多ユニット分析装置であって、前記複数のラックの前記搬送装置への送り出し位置に設けられ、前記分析ユニットへの搬送前に前記ラックの識別指標を読み取る第一の読取装置と、前記各分析ユニットのそれぞれに設けられ、前記搬送装置によって搬送されてくる前記ラックの識別指標を読み取る第二の読取装置と、前記第一の読取装置が読み取った前記識別指標の情報に基づいて前記ラックを搬送すべき正規の分析ユニットを前記搬送装置に指示すると共に、前記第二の読取装置が読み取った前記識別指標の情報をもとに、前記ラックが正規の分析ユニットに搬送されているか否かを確認する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記ラックが正規の分析ユニットに搬送されている場合には、当該分析ユニットによる分析処理に移行させ、前記ラックが誤った分析ユニットに搬送されている場合には、当該ラックの正規の分析ユニットへの転送を前記搬送装置に指示することを特徴とする。
【0015】
また、請求項10に係る多ユニット分析装置は、上記の発明において、試料容器を複数保持すると共に、識別指標が設けられたラックと、互いに並列して設けられ、前記識別指標を読み取る読取装置がそれぞれ設けられた複数の分析ユニットと、前記ラックを前記複数の分析ユニットの所定の分析ユニットへ搬送する搬送装置と、前記識別指標に記録された情報に基づいて前記ラックに保持された試料容器の分析を行う分析ユニットを設定する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記読取装置が読み取った前記識別指標の情報をもとに、前記ラックが予め設定した正規の分析ユニットに搬送されている場合には、当該分析ユニットによる分析処理に移行させ、前記ラックが誤った分析ユニットに搬送されている場合には、当該ラックの正規の分析ユニットへの転送を前記搬送装置に指示することを特徴とする。
【0016】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項11に係る多ユニット分析装置のラック搬送制御方法は、並列して設けられる複数の分析ユニットと、前記複数の分析ユニットに沿って配置され、試料容器を複数保持すると共に、識別指標を有する複数のラックを前記各分析ユニットに搬送する搬送装置とを備え、複数のラックを前記搬送装置によって所定の分析ユニットへ搬送し、前記試料容器内の試料を分析する多ユニット分析装置のラック搬送制御方法であって、前記複数のラックのそれぞれの識別指標から読み取った情報に基づいて前記ラックを搬送すべき分析ユニットを前記搬送装置に指示するステップと、前記各分析ユニットに搬送された前記ラックの識別指標から読み取った情報をもとに、指示された正規の分析ユニットに当該ラックが搬送されているか否かを確認するステップと、前記ラックが正規の分析ユニットに搬送されている場合に、当該分析ユニットによる分析処理に移行させるステップと、前記ラックが誤った分析ユニットに搬送されている場合に、当該ラックを正規の分析ユニットへの転送を前記搬送装置に指示するステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかる多ユニット分析装置は、正規の分析ユニットにラックが搬送されているか否かを制御装置が確認する。このとき、制御装置は、ラックが正規の分析ユニットに搬送されている場合には、当該分析ユニットによる分析処理に移行させ、ラックが誤った分析ユニットに搬送されている場合には、当該ラックを搬送装置によって正規の分析ユニットに転送させる。このため、本発明の多ユニット分析装置とそのラック搬送制御方法は、ラックの誤搬送を回避して試薬や検体の無駄と検査時間の無駄を回避することができるうえ、信頼性が向上するという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の多ユニット分析装置とそのラック搬送制御方法にかかる実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本発明の多ユニット分析装置の概略構成を示す平面図である。図2は、図1に示す多ユニット分析装置で使用されるラックの斜視図である。図4は、図1に示す多ユニット分析装置の中央制御装置の詳細を示すブロック図である。
【0019】
多ユニット分析装置1は、血清等の検体中に含まれる特定物質の量を分析するもので、図1に示すように、サンプラ2、搬送装置11に沿って並列して設けられる分析ユニット3〜6、搬送制御部9、中央制御装置10及び搬送装置11を備えている。
【0020】
サンプラ2は、分析ユニット3〜6と共に並列して設けられており、ラック供給部21、ラック回収部22及びラック収納部23を有している。ラック供給部21は、試料容器7を保持した複数のラック8がセットされる部分であり、ラック回収部22と共に中央制御装置10からの制御の下に作動し、これらのラック8を順次搬送装置11の追い越しライン12又は搬送ライン13に送り出す。ラック回収部22は、戻しライン14によって搬送されてくるラック8を回収してラック収納部23に搬送する。これにより、分析終了後の試料容器7を保持したラック8は、ラック収納部23に収納される。また、サンプラ2は、複数のラック8の搬送装置11への送り出し位置にバーコードリーダ24が設けられている。バーコードリーダ24は、サンプラ2から搬送装置11へ送り出されるラック8に貼付されたバーコードラベル8bのバーコードを読み取り、読み取ったラック情報を中央制御装置10へ出力する。
【0021】
ここで、ラック8は、図2に示すように、試料容器7を保持する複数の凹部8aが長手方向に沿って所定ピッチで形成され、搬送装置11によって搬送される。ラック8は、追い越しライン12又は搬送ライン13に沿った図中に矢印で示す搬送方向を基準とすると、側面及び端面にバーコードリーダ24,33,48,58,68によって読み取られる識別指標としてバーコードラベル8bが貼付されている。バーコードラベル8bには、ラック8の種類,ラック番号及び各試料容器7に保持された検体の分析項目等を含むラック情報を記録したバーコードが付されている。
【0022】
なお、ラック8に設ける識別指標としては、バーコードラベル8bの他に、電磁気的な情報の書込み,消去が可能な、例えば、図3に示すICタグのような記録媒体8cや、ラック8に設ける切欠き8d又はカラーマーク8e或いはラック8自体の色の少なくとも一つ或いはこれらを組み合わせて使用してもよい。この場合、識別指標としてICタグを使用する場合、読取装置としては無線通信手段を用い、識別指標として切欠き8d又はカラーマーク8e或いはラック8自体の色を使用する場合、読取装置としてはCCDカメラ等の撮像手段を用いる。
【0023】
また、試料容器7は、分析対象となる検体が予め収容されており、図2に示すように、分析項目等を記録したバーコードラベル7aが貼付されている。バーコードラベル7aは、ラック8に貼付したバーコードラベル8bと同様に、バーコードリーダ24,33,48,58,68によって読み取られる。ここで、試料容器7は、血清等の検体を収容する容器であるが、試薬単独を収容する場合や、試薬と検体の混合液を含む液体試料を収容する場合或いは空の場合もある。
【0024】
分析ユニット3〜6は、搬送装置11に沿って並列して設けられ、中央制御装置10からの制御の下に作動する。分析ユニット3は、電極法によって検体中の電解質を測定するユニットであり、検体分注機構31、バーコードリーダ33及びユニット制御部34を有している。
【0025】
検体分注機構31は、回動、かつ、昇降可能に構成され、追い越しライン12上の吸引位置S3b又は搬送ライン13上の吸引位置S3aにおいてラック8が保持した複数の試料容器7から検体を順次吸引し、測定容器32に吐出する。測定容器32に吐出された検体は、ナトリウム,塩素,カリウム,カルシウム,無機リン等のイオンからなる電解質が測定される。バーコードリーダ33は、搬送装置11を臨む位置に追い越しライン12に隣接して設けられ、追い越しライン12や搬送ライン13によって分析ユニット3へ搬送されてきたラック8に貼付されたバーコードラベル8bのバーコードを読み取る。バーコードリーダ33は、読み取ったバーコードに記録されたラック情報を中央制御装置10へ出力する。ユニット制御部34は、CPU,RAM及びROM等により構成され、中央制御装置10からの指示を受けて検体分注機構31を含む分析ユニット3全体の動作を制御する副制御部である。ユニット制御部34は、分析ユニット3における測定項目,測定結果等を含む測定データを中央制御装置10へ出力する。
【0026】
分析ユニット4〜6は、分析ユニット4が生化学項目を、分析ユニット5が免疫項目を、分析ユニット6が遺伝子項目を、それぞれ分析するが、主要構成が同じであるので、分析ユニット4について説明し、分析ユニット5,6については対応する構成部分に対応する符号を付している。
【0027】
分析ユニット4は、キュベットホイール42、第一試薬テーブル44、第二試薬テーブル45、バーコードリーダ48及びユニット制御部49を有している。
【0028】
キュベットホイール42は、周方向に沿って異なる半径で複数の反応容器43が内外2列に保持されており、検体分注機構41によって反応容器43に検体が分注される。検体分注機構41は、検体分注機構31と同様に構成され、追い越しライン12上の吸引位置S4b又は搬送ライン13上の吸引位置S4aにおいてラック8が保持した複数の試料容器7から検体を順次吸引し、反応容器43に吐出する。第一試薬テーブル44は、第一試薬を収容した複数の試薬ボトルを保持しており、近傍に第一試薬分注機構46が配置されている。第一試薬分注機構46は、分析項目に対応した第一試薬を対応する反応容器43に分注する。第二試薬テーブル45は、第二試薬を収容した複数の試薬ボトルを保持し、第二試薬分注機構47によって分析項目に対応した第二試薬が対応する反応容器43に分注される。
【0029】
バーコードリーダ48は、追い越しライン12や搬送ライン13によって分析ユニット4へ搬送されてきたラック8に貼付されたバーコードラベル8bのバーコードを読み取る。バーコードリーダ48は、読み取ったバーコードに記録されたラック情報を中央制御装置10へ出力する。ユニット制御部49は、CPU,RAM及びROM等により構成され、中央制御装置10からの指示を受けて分析ユニット4全体の動作を制御する副制御部である。ユニット制御部49は、分析ユニット4における測定項目,測定結果等を含む測定データを中央制御装置10へ出力する。
【0030】
ここで、分析ユニット5,6は、高い分析精度を要求され、検体のキャリーオバーが厳しく制限されている。このため、分析ユニット5,6は、分析ユニット3,4での分析に先立って優先的に分析が実行されるように中央制御装置10によって制御する。
【0031】
搬送制御部9は、中央制御装置10からの指示を受けてラック供給部21から送り出されるラック8を追い越しライン12や搬送ライン13に振り分け、分析ユニット6における分析処理が終了したラックを戻しライン14に戻すと共に、戻しライン14を搬送されてくるラック8をラック回収部22へ回収する等の動作を制御する。
【0032】
中央制御装置10は、多ユニット分析装置1全体を制御するパーソナルコンピュータであり、図4に示すように、主制御部10a、表示部10e、プリンタ10f及び入力部10gを備えている。主制御部10aは、制御部10b、転送制御部10c、記憶部10dを有し、バーコードリーダ24から送られてくるラック情報(検体の分析項目)に基づいてラック8を搬送すべき分析ユニットを決定し、決定した搬送先の分析ユニットを搬送装置11に指示する。また、主制御部10aは、バーコードリーダ33,48,58,68が読み取ったバーコードラベル8bの情報に基づいて指示された正規の分析ユニットにラック8が搬送されているか否かを確認する。
【0033】
制御部10bは、CPU,RAM及びROM等により構成されており、多ユニット分析装置1全体の制御を行う。転送制御部10cは、バーコードリーダ33,48,58,68が読み取ったバーコードラベル8bの情報からラック8が誤った分析ユニットに搬送されている場合に、搬送装置11に転送を指示する。記憶部10dは、バーコードリーダ33,48,58,68が読み取ったラック情報を始めとして多ユニット分析装置1の分析操作に関する各種情報を記憶する。
【0034】
表示部10eは、多ユニット分析装置1での分析操作に関連した分析内容,分析結果或いは警報等の種々の情報を表示するもので、ディスプレイパネル等が使用される。プリンタ10fは、表示部10eに表示される情報をプリントアウトする。入力部10gは、多ユニット分析装置1へ分析操作に関連した分析項目等を含む種々の情報を入力する操作を行う部分であり、例えば、キーボードやマウス等が使用される。
【0035】
搬送装置11は、中央制御装置10からの指示を受けてラック8を搬送するベルトコンベアを使用した搬送装置である。搬送装置11は、分析ユニット3〜6の配列方向に沿って互いに並行して配置され、緊急検体や割り込み検体用のラック8を特定の分析ユニットに選択的に搬送する追い越しライン12と、ラック8を分析ユニット3〜6に順次搬送する搬送ライン13と、各分析ユニットに搬送後のラック8をラック回収部22へ戻す戻しライン14とを有している。追い越しライン12及び搬送ライン13は、間欠的に運転されてラック8をピッチ送りすることにより分析ユニット3〜6の吸引位置S3a,S3b〜S6a,S6bに位置決めして順次停止させる。搬送装置11は、少なくとも搬送ライン13と戻しライン14とを有していれば、追い越しライン12は必ずしも必要ではない。
【0036】
また、搬送装置11は、吸引位置S4a,S4b〜S6a,S6bから見てラック8の搬送方向下流側に、追い越しライン12、搬送ライン13及び戻しライン14を跨ってラインチェンジャ15が設けられている。ラインチェンジャ15は、ラック8の搬送方向に対して直交する横方向にスライドし、ラック8を搬送するラインを変更する。
【0037】
以上のように構成される多ユニット分析装置1は、サンプラ2のラック供給部21に試料容器7を保持した複数のラック8をセットし、スイッチをオンすると、中央制御装置10の制御の下に、ラック8がラック供給部21から順次送り出され、搬送装置11によってラック8が分析ユニット3〜6へ搬送される。そして、多ユニット分析装置1は、搬送先の分析ユニットで試料容器8内の検体が分析された後、搬送装置11に搬送されてラック8がサンプラ2へ戻され、ラック回収部22で回収される。このときのラック搬送制御方法の一例を、図5を参照しつつ以下に説明する。図5は、中央制御装置によるラック搬送制御方法の一例を多ユニット分析装置1の各部における操作を含めて示すフローチャートである。
【0038】
先ず、中央制御装置10は、ラック供給部21にラック8の送り出しを指示する(ステップS100)。次に、ラック8がラック供給部21から送り出されるのに伴い、バーコードリーダ24が、送り出されるラック8のバーコードラベル8bに記録された検体の分析項目を含むラック情報を順次読み取る(ステップS102)。このとき、バーコードリーダ24は、読み取ったラック情報を順次中央制御装置10へ出力する。
【0039】
次いで、中央制御装置10は、バーコードリーダ24から順次入力されるラック情報に基づきラック供給部21から送り出されるラック8の搬送先となる分析ユニットを搬送装置11に指示する(ステップS104)。この中央制御装置10からの指示に基づき、搬送装置11は、搬送先となる分析ユニットの位置に応じてラック8を追い越しライン12又は搬送ライン13に振り分け、ラック8を指示された分析ユニットへ搬送する(ステップS106)。このとき、搬送装置11は、ラック8をバーコードリーダの位置に停止させる。
【0040】
このようにして、ラック8が搬送先の分析ユニット、例えば、分析ユニット5に搬送されると、バーコードリーダ58がバーコードラベル8bに記録されたラック情報を順次読み取る(ステップS108)。このとき、バーコードリーダ58は、読み取ったラック情報を順次中央制御装置10へ出力する。
【0041】
次に、中央制御装置10は、バーコードリーダ58が読み取ったラック情報をバーコードリーダ24から入力されたラック情報と比較し、ラック供給部21から送り出されたラック8と分析ユニット5に搬送されたラック8が一致しているか否かを判定する(ステップS110)。判定の結果、ラック8が不一致の場合(ステップS110,No)、ラック供給部21から送り出されたラック8と分析ユニット5に搬送されたラック8が異なり、ラック8は誤った分析ユニットへ搬送されている。このため、中央制御装置10は、ラック8の正規の分析ユニットへの転送を搬送装置11に指示する(ステップS112)。これにより、ラック8は、搬送装置11によって正規の分析ユニットへ転送される。
【0042】
このようにしてラック8が正規の分析ユニットへ転送された後、中央制御装置10は、ステップS108に戻って以降のステップを繰り返す。ここで、ラック8の転送に際し、中央制御装置10は、分析ユニット5に搬送され、バーコードリーダ58が読み取ったラック情報に基づいてラック8の転送先である正規の分析ユニットを決定する。
【0043】
一方、ラック8が一致している場合(ステップS110,Yes)、中央制御装置10は、分析ユニット5に分析開始を指示する(ステップS114)。これにより、分析ユニット5は、ユニット制御部59の制御の下に、ラック8の試料容器7に保持された検体の分析を開始する。分析ユニット5における検体の分析が終了すると、ユニット制御部59は、中央制御装置10に分析終了を報告する(ステップS116)。ここで、ユニット制御部59は、総ての測定結果のデータを中央制御装置10に出力する。
【0044】
次いで、中央制御装置10は、ラック8から読み取ったラック情報に基づき、他の分析ユニットでの分析が必要か否かを判定する(ステップS118)。判定の結果、他の分析ユニットでの分析が必要な場合(ステップS118,Yes)、中央制御装置10は、他の分析ユニットへのラック8の搬送を搬送装置11に指示する(ステップS120)。
【0045】
これにより、ラック8は、搬送装置11によって他の分析ユニットへ搬送される。ラック8が他の分析ユニットへ搬送された後、中央制御装置10は、ステップS108に戻って以降のステップを繰り返す。
【0046】
一方、他の分析ユニットでの分析が不要な場合(ステップS118,No)、中央制御装置10は、各分析ユニットに設けたユニット制御部から入力された測定項目,測定結果等を含む測定データを確認し、再検が必要か否かを判定する(ステップS122)。判定の結果、再検が必要な場合(ステップS122,Yes)、中央制御装置10は、ステップS112に戻って搬送装置11にラック8を再検のための所定の分析ユニットへの転送を指示する。
【0047】
一方、再検査が不要な場合(ステップS122,No)、中央制御装置10は、搬送装置11にラック8の回収を指示する(ステップS124)。これにより、搬送装置11は、ラインチェンジャ15を作動させ、追い越しライン12又は搬送ライン13を搬送されているラック8を戻しライン14へ移動させ、戻しライン14によってラック8をサンプラ2へ搬送し、ラック回収部22で回収させる。
【0048】
多ユニット分析装置1は、このようなラック搬送制御方法によってラック供給部21に供給されたラック8を分析項目に対応した所定の分析ユニットに搬送することにより、試料容器7内の検体を分析する。従って、多ユニット分析装置1は、ラック8の誤搬送を回避して試薬や検体の無駄と検査時間の無駄を回避することができるうえ、分析装置としての信頼性が向上する。
【0049】
尚、多ユニット分析装置1は、ラック供給部21から送り出されたラック8と各分析ユニットに搬送されたラック8が一致しているか否かを判定し、分析の開始や、正規の分析ユニットへの転送を中央制御装置10が指示したが、各分析ユニットに設けたユニット制御部が指示してもよい。
【0050】
また、多ユニット分析装置1は、分析ユニット4〜6として、分析ユニット4が生化学項目を、分析ユニット5が免疫項目を、分析ユニット6が遺伝子項目を、それぞれ分析するものとした。しかし、分析ユニット3〜6は、電解質検査項目分析ユニット,生化学検査項目分析ユニット,免疫検査項目分析ユニット,遺伝子検査項目分析ユニットのうち二以上の分析ユニットを組み合わせたものであれば、上述の組み合わせに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の多ユニット分析装置の概略構成を示す平面図である。
【図2】図1に示す多ユニット分析装置で使用されるラックの斜視図である。
【図3】識別指標の他の例を示すラックの斜視図である。
【図4】図1に示す多ユニット分析装置の中央制御装置の詳細を示すブロック図である。
【図5】中央制御装置によるラック搬送制御方法の一例を多ユニット分析装置1の各部における操作を含めて示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0052】
1 多ユニット分析装置
2 サンプラ
21 ラック供給部
22 ラック回収部
23 ラック収納部
24 バーコードリーダ
3 分析ユニット
31 検体分注機構
32 測定容器
33 バーコードリーダ
34 ユニット制御部
4 分析ユニット
41 検体分注機構
42 キュベットホイール
43 反応容器
44 第一試薬テーブル
45 第二試薬テーブル
46 第一試薬分注機構
47 第二試薬分注機構
48 バーコードリーダ
49 ユニット制御部
5 分析ユニット
51 検体分注機構
52 キュベットホイール
53 反応容器
54 第一試薬テーブル
55 第二試薬テーブル
56 第一試薬分注機構
57 第二試薬分注機構
58 バーコードリーダ
59 ユニット制御部
6 分析ユニット
61 検体分注機構
62 キュベットホイール
63 反応容器
64 第一試薬テーブル
65 第二試薬テーブル
66 第一試薬分注機構
67 第二試薬分注機構
68 バーコードリーダ
69 ユニット制御部
7 試料容器
8 ラック
8b バーコードラベル
9 搬送制御部
10 中央制御装置
11 搬送装置
12 追い越しライン
13 搬送ライン
14 戻しライン
15 ラインチェンジャ
S3a〜S6b 吸引位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列して設けられる複数の分析ユニットと、前記複数の分析ユニットに沿って配置され、試料容器を複数保持すると共に、識別指標を有する複数のラックを前記各分析ユニットに搬送する搬送装置とを備え、前記複数のラックを前記搬送装置によって所定の分析ユニットへ搬送し、前記試料容器内の試料を分析する多ユニット分析装置であって、
前記複数のラックの前記搬送装置への送り出し位置と各分析ユニットのそれぞれに設けられ、前記ラックの識別指標を読み取る読取装置と、
前記複数のラックの送り出し位置で前記読取装置が読み取った前記識別指標の情報に基づいて前記ラックを搬送すべき分析ユニットを前記搬送装置に指示すると共に、搬送された分析ユニットの読取装置が読み取った前記識別指標の情報をもとに、指示された正規の分析ユニットに前記ラックが搬送されているか否かを確認する制御装置と
を備え、
前記制御装置は、前記ラックが正規の分析ユニットに搬送されている場合には、当該分析ユニットによる分析処理に移行させ、前記ラックが誤った分析ユニットに搬送されている場合には、当該ラックの正規の分析ユニットへの転送を前記搬送装置に指示することを特徴とする多ユニット分析装置。
【請求項2】
前記識別指標は、バーコード、電磁気的に情報を書き込み,消去可能な記録媒体、前記ラックに設ける切欠き又はカラーマーク或いは当該ラック自体の色の少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1に記載の多ユニット分析装置。
【請求項3】
前記搬送装置は、互いに並行して配置され、前記ラックを前記各分析ユニットに順次搬送する搬送ラインと、各分析ユニットに搬送後の前記ラックを回収部へ戻す戻しラインとを有することを特徴とする請求項1に記載の多ユニット分析装置。
【請求項4】
さらに、前記搬送装置は、前記搬送ライン及び戻しラインに並行し、前記ラックを特定の分析ユニットに選択的に搬送する追い越しラインを有することを特徴とする請求項3に記載の多ユニット分析装置。
【請求項5】
前記各分析ユニットに設けられる読取装置は、前記搬送装置を臨む位置に隣接して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の多ユニット分析装置。
【請求項6】
前記各分析ユニットに設けられる読取装置は、バーコードリーダからなることを特徴とする請求項1に記載の多ユニット分析装置。
【請求項7】
前記複数の分析ユニットは、電解質検査項目分析ユニット,生化学検査項目分析ユニット,免疫検査項目分析ユニット,遺伝子検査項目分析ユニットの少なくとも二以上の組み合わせからなることを特徴とする請求項1に記載の多ユニット分析装置。
【請求項8】
前記免疫検査項目分析ユニット又は遺伝子検査項目分析ユニットは、前記電解質検査項目分析ユニット又は生化学検査項目分析ユニットでの分析に先立って分析を実行することを特徴とする請求項7に記載の多ユニット分析装置。
【請求項9】
並列して設けられる複数の分析ユニットと、前記複数の分析ユニットに沿って配置され、試料容器を複数保持すると共に、識別指標を有する複数のラックを前記各分析ユニットに搬送する搬送装置とを備え、複数のラックを前記搬送装置によって所定の分析ユニットへ搬送し、前記試料容器内の試料を分析する多ユニット分析装置であって、
前記複数のラックの前記搬送装置への送り出し位置に設けられ、前記分析ユニットへの搬送前に前記ラックの識別指標を読み取る第一の読取装置と、
前記各分析ユニットのそれぞれに設けられ、前記搬送装置によって搬送されてくる前記ラックの識別指標を読み取る第二の読取装置と、
前記第一の読取装置が読み取った前記識別指標の情報に基づいて前記ラックを搬送すべき正規の分析ユニットを前記搬送装置に指示すると共に、前記第二の読取装置が読み取った前記識別指標の情報をもとに、前記ラックが正規の分析ユニットに搬送されているか否かを確認する制御装置と
を備え、
前記制御装置は、前記ラックが正規の分析ユニットに搬送されている場合には、当該分析ユニットによる分析処理に移行させ、前記ラックが誤った分析ユニットに搬送されている場合には、当該ラックの正規の分析ユニットへの転送を前記搬送装置に指示することを特徴とする多ユニット分析装置。
【請求項10】
試料容器を複数保持すると共に、識別指標が設けられたラックと、
互いに並列して設けられ、前記識別指標を読み取る読取装置がそれぞれ設けられた複数の分析ユニットと、
前記ラックを前記複数の分析ユニットの所定の分析ユニットへ搬送する搬送装置と、
前記識別指標に記録された情報に基づいて前記ラックに保持された試料容器の分析を行う分析ユニットを設定する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記読取装置が読み取った前記識別指標の情報をもとに、前記ラックが予め設定した正規の分析ユニットに搬送されている場合には、当該分析ユニットによる分析処理に移行させ、前記ラックが誤った分析ユニットに搬送されている場合には、当該ラックの正規の分析ユニットへの転送を前記搬送装置に指示することを特徴とする多ユニット分析装置。
【請求項11】
並列して設けられる複数の分析ユニットと、前記複数の分析ユニットに沿って配置され、試料容器を複数保持すると共に、識別指標を有する複数のラックを前記各分析ユニットに搬送する搬送装置とを備え、複数のラックを前記搬送装置によって所定の分析ユニットへ搬送し、前記試料容器内の試料を分析する多ユニット分析装置のラック搬送制御方法であって、
前記複数のラックのそれぞれの識別指標から読み取った情報に基づいて前記ラックを搬送すべき分析ユニットを前記搬送装置に指示するステップと、
前記各分析ユニットに搬送された前記ラックの識別指標から読み取った情報をもとに、指示された正規の分析ユニットに当該ラックが搬送されているか否かを確認するステップと、
前記ラックが正規の分析ユニットに搬送されている場合に、当該分析ユニットによる分析処理に移行させるステップと、
前記ラックが誤った分析ユニットに搬送されている場合に、当該ラックを正規の分析ユニットへの転送を前記搬送装置に指示するステップと、
を含むことを特徴とする多ユニット分析装置のラック搬送制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−309743(P2007−309743A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−137734(P2006−137734)
【出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】