多層成形品の成形方法及び成形システム
【課題】1次成形品及び2次成形品の成形サイクルタイムのいずれが長い場合であっても、2次成形品の生産サイクルタイムを長い方の成形サイクルタイムより短くすることができる多層成形品の成形方法及び成形システムを提供する。
【解決手段】1次成形品表面の一部又は全面に溶融樹脂を積層させ2次成形品を成形する多層成形品の成形方法において、成形サイクルタイムの長い方の成形品を成形する複数の射出成形装置を備え、それぞれの成形サイクル開始時間又は成形サイクル完了時間を相違させ、2次成形品の生産サイクルタイムが最短、かつ毎サイクル同じになるように、成形サイクルタイムが短い方の成形品を成形する射出成形装置A及び複数の射出成形装置のそれぞれの成形サイクルタイムと、成形サイクル開始時間と、成形サイクル完了時間とが制御される。
【解決手段】1次成形品表面の一部又は全面に溶融樹脂を積層させ2次成形品を成形する多層成形品の成形方法において、成形サイクルタイムの長い方の成形品を成形する複数の射出成形装置を備え、それぞれの成形サイクル開始時間又は成形サイクル完了時間を相違させ、2次成形品の生産サイクルタイムが最短、かつ毎サイクル同じになるように、成形サイクルタイムが短い方の成形品を成形する射出成形装置A及び複数の射出成形装置のそれぞれの成形サイクルタイムと、成形サイクル開始時間と、成形サイクル完了時間とが制御される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1次成形品表面の一部又は全面に溶融樹脂を積層させ2次成形品を成形する多層成形品の成形方法及び成形システムに関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂成形品における、異材、同材、異色、同色様々な組み合わせからなる多層成形品の成形方法として、成形用金型に特徴のあるもの、あるいは成形装置に特徴のあるもの等、種々の成形方法が知られている。1次成形された1次成形品を金型の所定位置に挿入し、その1次成形品表面の一部又は全面に溶融樹脂を積層させ2次成形品を成形する成形方法もそのひとつである。
【0003】
特許文献1には、第一射出成形機を用いてその第一金型に第一溶融樹脂を流し込みこれを固化させることにより射出成形を行い単数又は複数の樹脂成形品(1次成形品)を作製する第一工程と、工業用ロボットを用いて樹脂成形品又は樹脂成形組立品を第二射出成形機の第二金型にセットし、チャック及び/又は吸着を外す中間工程と、第二射出成形機を用いて第二金型と樹脂成形品又は樹脂成形組立品との隙間に第二溶融樹脂を流し込みこれを樹脂成形品又は樹脂成形組立品と一体になるように固化させることにより射出成形を行い二色成形品(2次成形品)を作製する第二工程とを備えた二色成形品の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−73151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の2色成形品を製造する製造方法の流れ(特許文献1、段落0062〜0063に記載の”2色成形品91の製造方法”)を図13に示す。図13は、特許文献1と本発明の対比を容易にするため、特許文献1の該当部の内容を特許文献1の明細書の記載から、出願人が図面化したものである。ここで、図13中の矢印は各成形品の成形サイクルを示し、白丸付矢印は樹脂成形品L(1次成形品)の第一金型(第一射出成形機)からの取り出しと第二金型(第二射出成形機)への挿入、黒丸付矢印は2色成形品M(2次成形品)の第二金型(第二射出成形機)からの払い出し(取り出し)を示している。
【0006】
図13(a)は樹脂成形品L(1次成形品)の成形サイクルタイムLよりも2色成形品M(2次成形品)の成形サイクルタイムMの方が長い場合を示している。樹脂成形品Lの成形完了後、白丸付矢印で示すように、工業用ロボットにより第一金型(第一射出成形機)から取り出された樹脂成形品Lがそのまま第二金型(第二射出成形機)に挿入される。続いて、2色成形品Mの成形が開始され、成形完了後、黒丸付矢印で示すように、第二金型の可動型に装備されたエジェクタープレートにより2色成形品Mが払い出され、第二金型の可動型の払い出し部分の直下に置かれた袋等にそのまま投入される。続いて、2色成形品Mが払い出された第二金型に、平行して成形されていた樹脂成形品Lが前記工業用ロボットにより挿入される。これらを繰り返すことにより2色成形品Mが連続して生産される。この形態では2色成形品Mの第二金型からの取り出しに前記工業用ロボットを使用しないため、2色成形品Mの第二金型からの払い出し(取り出し/黒丸付矢印)と、樹脂成形品Lの第二金型への挿入(白丸付矢印)とをこの順序で連続して行うことが可能である。
【0007】
図13(a)に示すように、最終製品である2色成形品M(2次成形品)の生産サイクルタイムX、すなわち、前の2色成形品Mの成形完了から次の2色成形品Mの成形完了までのサイクルタイムは、最短の場合でも成形サイクルタイムMと等しい。このように、この形態において、2色成形品Mの生産サイクルタイムXを成形サイクルタイムが長い2色成形品Mの成形サイクルタイムMより短くすることはできない。
【0008】
図13(b)は2色成形品M(2次成形品)の成形サイクルタイムMよりも樹脂成形品L(1次成形品)の成形サイクルタイムLの方が長い場合を示している。基本的な成形工程が同じなので詳細な説明は割愛する。図13(b)に示すように、最終製品である2色成形品Mの生産サイクルタイムXは、最短の場合でも成形サイクルタイムLと等しい。よって、この形態においても、2色成形品Mの生産サイクルタイムXを成形サイクルタイムが長い樹脂成形品Lの成形サイクルタイムLより短くすることはできない。
【0009】
すなわち、特許文献1の2色成形品の製造方法においては、樹脂成形品L(1次成形品)の成形サイクルタイムL及び2色成形品M(2次成形品)の成形サイクルタイムMのいずれが長い場合であっても、2色成形品Mの生産サイクルタイムXを成形サイクルタイムが長い方の成形品の成形サイクルタイムより短くすることはできないのである。特に、1次成形品の成形サイクルタイム及び2次成形品サイクルタイムのいずれか一方の成形サイクルタイムが長く、他方の成形サイクルタイムとの時間差が大きい多層成形品を成形する場合には、2次成形品の生産サイクルタイムが長い方の成形品の成形サイクルタイムに拘束されるので生産性の観点から問題があった。
【0010】
本発明は、上記したような問題点に鑑みてなされたもので、具体的には、1次成形品の成形サイクルタイム及び2次成形品の成形サイクルタイムのいずれが長い場合であっても、2次成形品の生産サイクルタイムを成形サイクルタイムが長い方の成形品の成形サイクルタイムより短くすることができる多層成形品の成形方法及び成形システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、請求項1に示すように、第1金型が取り付けられた第1射出成形装置により成形された1次成形品を、第2射出成形装置に取り付けられた第2金型の所定位置に挿入し、前記第2射出成形装置により前記1次成形品表面の一部又は全面に溶融樹脂を積層させ2次成形品を成形する多層成形品の成形方法において、
前記第1射出成形装置による前記1次成形品の成形サイクルタイムと、前記第2射出成形装置による前記2次成形品の成形サイクルタイムとを比較して、
成形サイクルタイムが長い方の成形品を成形する複数の射出成形装置を備え、
前記複数の射出成形装置それぞれの成形サイクル開始時間又は成形サイクル完了時間を相違させ、前記第2射出成形装置により成形される前記2次成形品の生産サイクルタイムが最短、かつ毎サイクル同じになるように、成形サイクルタイムが短い方の成形品を成形する射出成形装置Aの成形サイクルタイムと、前記複数の射出成形装置それぞれの成形サイクルタイムと、前記射出成形装置A及び前記複数の射出成形装置それぞれの成形サイクル開始時間及び成形サイクル完了時間とが制御されることを特徴とする多層成形品の成形方法によって達成される。
【0012】
すなわち、成形サイクルタイムの長い方の成形品を成形する射出成形装置を複数台備え、これら複数台それぞれの成形サイクル開始時間又は成形サイクル完了時間を相違させることにより、成形サイクルタイムの長い方の成形品の成形サイクルタイムを一部重複させ、成形サイクルタイムの長い方の成形品を順次成形することで、これら複数台による成形サイクルタイムを1台による成形サイクルタイムより短くすることができる。また、これら複数台の成形サイクルタイムに、成形サイクルタイムの短い方の成形品を成形する射出成形装置Aの成形サイクルタイムを連動させ、これら射出成形装置A、及び複数の射出成形装置それぞれの成形サイクルタイムと、これら射出成形装置A、及び複数の射出成形装置それぞれの成形サイクル開始時間と、成形サイクル完了時間とが、2次成形品の生産サイクルタイムが最短、かつ毎サイクル同じになるように制御されることにより、1次成形品の成形サイクルタイム及び2次成形品の成形サイクルタイムのいずれが長い場合であっても、2次成形品の生産サイクルタイムを成形サイクルタイムが長い方の成形品の成形サイクルタイムより短くすることができる。
【0013】
次に、請求項2に示すように、第1金型が取り付けられた第1射出成形装置により成形された1次成形品を、第2射出成形装置に取り付けられた第2金型の所定位置に挿入し、前記第2射出成形装置により前記1次成形品表面の一部又は全面に溶融樹脂を積層させ2次成形品を成形する多層成形品の成形方法において、
前記第1射出成形装置による前記1次成形品の成形サイクルタイムと、前記第2射出成形装置による前記2次成形品の成形サイクルタイムとを比較して、
成形サイクルタイムが短い方の成形品を成形する射出成形装置Aと、
前記射出成形装置Aの長手方向と直交する方向の両側に、前記射出成形装置Aの長手方向と略平行に配置された、成形サイクルタイムが長い方の成形品を成形する射出成形装置B及び射出成形装置Cと、
前記1次成形品を前記第1金型から取り出し、前記第2金型の所定位置へ挿入する1次成形品保持手段と、
前記2次成形品を前記第2金型から取り出す2次成形品保持手段と、
前記1次成形品保持手段と前記2次成形品保持手段とを支持し、前記射出成形装置A、B及びCのそれぞれに取り付けられた固定金型と可動金型との間へ、前記1次成形品保持手段と前記2次成形品保持手段とをそれぞれ独立して挿入させ、退避させる成形品移動手段とを備え、
前記射出成形装置B及びCそれぞれの成形サイクル開始時間又は成形サイクル完了時間を相違させ、前記第2射出成形装置により成形される前記2次成形品の生産サイクルタイムが最短、かつ毎サイクル同じになるように、前記射出成形装置A、B及びCそれぞれの成形サイクルタイムと、前記射出成形装置A、B及びCそれぞれの成形サイクル開始時間及び成形サイクル完了時間とが制御されることを特徴とする請求項1記載の多層成形品の成形方法であってもよい。
【0014】
すなわち、成形サイクルタイムの短い方の成形品を成形する射出成形装置1台(射出成形装置A)に対して、成形サイクルタイムの長い方の成形品を成形する射出成形装置を2台(射出成形装置B及びC)配置し、これら2台の成形サイクル開始時間又は成形サイクル完了時間を相違させることにより、成形サイクルタイムの長い方の成形品の成形サイクルタイムを一部重複させ、成形サイクルタイムの長い方の成形品を交互に成形することで、これら2台による成形サイクルタイムを1台による成形サイクルタイムより短くすることができる。また、これら2台の成形サイクルタイムに、成形サイクルタイムの短い方の成形品を成形するもう1台の射出成形装置の成形サイクルタイムを連動させ、これら3台の射出成形装置A、B及びCそれぞれの成形サイクルタイムと、これら3台の射出成形装置A、B及びCそれぞれの成形サイクル開始時間と、成形サイクル完了時間とが、2次成形品の生産サイクルタイムが最短、かつ毎サイクル同じになるように制御されることにより、1次成形品の成形サイクルタイム及び2次成形品の成形サイクルタイムのいずれが長い場合であっても、2次成形品の生産サイクルタイムを成形サイクルタイムが長い方の成形品の成形サイクルタイムより短くすることができる。そのためには、1次成形品と2次成形品とを独立して保持する1次成形品保持手段と2次成形品保持手段と、これら1次成形品保持手段と2次成形品保持手段とが、それぞれ1次成形品と2次成形品とを保持した状態で、それぞれ独立して、3台の射出成形装置A、B及びCいずれの固定金型及び可動金型間にも、進入させ、退避させるように支持する成形品移動手段とが必要である。
【0015】
更に、請求項3に示すように、前記制御された成形サイクルタイムと、成形サイクル開始時間と、成形サイクル完了時間とに基づき、
前記1次成形品保持手段による前記1次成形品の前記第1金型からの取り出し工程と、
前記2次成形品保持手段による前記2次成形品の前記第2金型からの取り出し工程と、
前記1次成形品保持手段による前記1次成形品の前記第2金型の前記所定位置への挿入工程とのそれぞれに要する時間が補正され、
前記2次成形品の生産サイクルタイムが最短、かつ毎サイクル同じになるように制御されるような請求項2記載の多層成形品の成形方法としてもよい。
【0016】
このように1次成形品保持手段及び2次成形品保持手段の各工程に要する時間が補正される、すなわち、前記制御あるいは外乱等によって各射出成形装置それぞれの成形サイクルタイムや、成形サイクル開始時間や、成形サイクル完了時間が変動しても、これを吸収するように各工程に要する時間を増減させることにより、2次成形品の生産サイクルタイムが最短、かつ毎サイクル同じになるように制御される。
【0017】
また、本発明の上記目的は、請求項4に示すように、第1金型が取り付けられた第1射出成形装置により成形された1次成形品を、第2射出成形装置に取り付けられた第2金型の所定位置に挿入し、前記第2射出成形装置により前記1次成形品表面の一部又は全面に溶融樹脂を積層させ2次成形品を成形する多層成形品の成形装置において、
前記第1射出成形装置による前記1次成形品の成形サイクルタイムと、第2射出成形装置による前記2次成形品の成形サイクルタイムとを比較して、
成形サイクルタイムが短い方の成形品を成形する射出成形装置Aと、
前記射出成形装置Aの長手方向と直交する方向の両側に、前記射出成形装置Aの長手方向と略平行に配置された、成形サイクルタイムが長い方の成形品を成形する射出成形装置B及び射出成形装置Cと、
前記1次成形品を前記第1金型から取り出し、前記第2金型の所定位置へ挿入する1次成形品保持手段と、
前記2次成形品を前記第2金型から取り出す2次成形品保持手段と、
前記1次成形品保持手段と前記2次成形品保持手段とを支持し、前記射出成形装置A、B及びCのそれぞれに取り付けられた固定金型と可動金型との間へ、前記1次成形品保持手段と前記2次成形品保持手段とをそれぞれ独立して挿入させ、退避させる成形品移動手段とを備えた多層成形品の成形システムによって達成される。
【0018】
このような多層成形品の成形システムにより、請求項1記載の多層成形品の成形方法が可能となり、1次成形品の成形サイクルタイム及び2次成形品の成形サイクルタイムのいずれが長い場合であっても、2次成形品の生産サイクルタイムを成形サイクルタイムが長い方の成形品の成形サイクルタイムより短くすることができる。
【0019】
次に、請求項5に示すように、前記第1射出成形装置が前記射出成形装置A、前記第2射出成形装置が前記射出成形装置B及びCである請求項4記載の多層成形品の成形システムであってもよい。
【0020】
これは、射出成形装置Aで成形される1次成形品の成形サイクルタイムより、射出成形装置B及びCで成形される2次成形品の成形サイクルタイムの方が長い場合で、射出成形装置Aで成形された1次成形品が、射出成形装置Aの両側に配置された射出成形装置B及びCの2台に交互に供給され、これら2台から交互に2次成形品が生産される形態である。
【0021】
また、請求項6に示すように、前記第2射出成形装置が前記射出成形装置A、前記第1射出成形装置が前記射出成形装置B及びCである請求項4記載の多層成形品の成形システムであってもよい。
【0022】
これは、射出成形装置Aで成形される2次成形品の成形サイクルタイムより、射出成形装置B及びCで成形される1次成形品の成形サイクルタイムの方が長い場合で、射出成形装置B及びCで成形された1次成形品が、射出成形装置B及びCの間に配置された射出成形装置Aの1台に交互に供給され、この1台から2次成形品が生産される形態である。すなわち、1次成形品の成形サイクルタイム及び2次成形品の成形サイクルタイムのいずれが長い場合であっても、請求項4記載の多層成形品の成形システムの構成が可能である。
【0023】
次に、請求項7に示すように、前記成形品移動手段が、前記射出成形装置A、B及びCの型締装置の上方に、装置長手方向と直交する方向に設けられた水平構造体から成る請求項4乃至請求項6記載の多層成形品の成形システムであってもよい。
【0024】
このように、射出成形装置A、B及びCの型締装置の上方に、装置長手方向と直交する方向に設けられた水平構造体に1次成形品保持手段と2次成形保持手段とが独立して支持される形態により、各射出成形装置に取り付けられたそれぞれの固定金型と可動金型間にこれらの成形品保持手段が最短距離で移動できる。
【0025】
次に、請求項8に示すように、前記成形品移動手段が、前記射出成形装置A及びB間で成形品の移動を行う成形品移動機構手段ABと、前記射出成形装置A及びC間で成形品の移動を行う成形品移動手段ACとから成る請求項6記載の多層成形品の成形システムであってもよい。
【0026】
請求項6記載の、第2射出成形装置が前記射出成形装置A、第1射出成形装置が射出成形装置B及びCである場合は、このように射出成形装置A及びB間、射出成形装置A及びC間それぞれに成形品移動手段AB及びACを分割して配置し、それぞれの射出成形装置間のみで1次成形品及び2次成形品の移動を行っても、請求項4記載の多層成形品の成形システムの構成が可能である。
【0027】
更に、請求項9に示すように、前記成形品移動手段AB及びACの少なくとも一方が多関節ロボットである請求項8記載の多層成形品の成形システムであることが好ましい。
【0028】
このように、成形品移動手段AB及びACの少なくとも一方が多関節ロボットであれば、1次成形品の取り出し動作及び金型への挿入動作、2次成形品の取り出し動作の少なくとも一方の動作の自由度、位置精度及び繰り返し精度を向上させることができる。更に、成形品移動手段AB及びACの双方が多関節ロボットであれば、それら双方の動作の自由度、位置精度及び繰り返し精度を向上させることができる。
【0029】
次に、請求項10に示すように、前記1次成形品の少なくとも一面が意匠性を必要とする樹脂成形品であることを特徴とする請求項4乃至請求項9記載の多層成形品の成形システムであることが好ましい。
【0030】
1次成形品の少なくとも一面が意匠性を必要とする樹脂成形品である場合、1次成形は意匠の転写性にすぐれている射出圧縮成形方法や射出プレス成形方法が採用され、その成形品形状と成形方法から1次成形品の成形サイクルタイム及び2次成形品サイクルタイムのいずれか一方の成形サイクルタイムが長い上、他方の成形サイクルとの時間差が大きい場合が多い。よって2次成形品の生産サイクルタイムの短縮に寄与すること大である。
【0031】
次に、請求項11に示すように、前記1次成形品が透光性を有する樹脂成形品であることを特徴とする請求項4乃至請求項10記載の多層成形品の成形システムであることが好ましい。
【0032】
このような、1次成形品が透光性を有する樹脂成形品、例えば、車両、船舶、航空機等の樹脂窓や、液晶テレビ、プラズマテレビ、パソコン用液晶モニター等のディスプレイパネルや、自動車のクーペ、ハッチバック、ワゴン等の車種の樹脂窓部を含めて一体成形されたテールゲート(ハッチバックドア)である場合、1次成形品の透光性を有する樹脂成形品の歪みを小さくすることが要求されるため、成形後の歪みが少ない射出圧縮成形方法や射出プレス成形方法が採用されることがほとんどである。すなわち、1次成形品の成形サイクルタイム及び2次成形品サイクルタイムのいずれか一方の成形サイクルタイムが長い上、他方の成形サイクルタイムとの時間差が大きいので、2次成形品の生産サイクルタイムの短縮に寄与すること大である。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係る多層成形品の成形方法は、第1金型が取り付けられた第1射出成形装置により成形された1次成形品を、第2射出成形装置に取り付けられた第2金型の所定位置に挿入し、前記第2射出成形装置により前記1次成形品表面の一部又は全面に溶融樹脂を積層させ2次成形品を成形する多層成形品の成形方法において、
前記第1射出成形装置による前記1次成形品の成形サイクルタイムと、前記第2射出成形装置による前記2次成形品の成形サイクルタイムとを比較して、
成形サイクルタイムが長い方の成形品を成形する複数の射出成形装置を備え、
前記複数の射出成形装置それぞれの成形サイクル開始時間又は成形サイクル完了時間を相違させ、前記第2射出成形装置により成形される前記2次成形品の生産サイクルタイムが最短、かつ毎サイクル同じになるように、成形サイクルタイムが短い方の成形品を成形する射出成形装置Aの成形サイクルタイムと、前記複数の射出成形装置それぞれの成形サイクルタイムと、前記射出成形装置A及び前記複数の射出成形装置それぞれの成形サイクル開始時間及び成形サイクル完了時間とが制御されるので、1次成形品の成形サイクルタイム及び2次成形品の成形サイクルタイムのいずれが長い場合であっても、2次成形品の生産サイクルタイムを成形サイクルタイムが長い方の成形品の成形サイクルタイムより短くすることができる。
【0034】
また、本発明に係る多層成形品の成形システムは、第1金型が取り付けられた第1射出成形装置により成形された1次成形品を、第2射出成形装置に取り付けられた第2金型の所定位置に挿入し、前記第2射出成形装置により前記1次成形品表面の一部又は全面に溶融樹脂を積層させ2次成形品を成形する多層成形品の成形システムにおいて、
前記第1射出成形装置による前記1次成形品の成形サイクルタイムと、第2射出成形装置による前記2次成形品の成形サイクルタイムとを比較して、
成形サイクルタイムが短い方の成形品を成形する射出成形装置Aと、
前記射出成形装置Aの長手方向と直交する方向の両側に、前記射出成形装置Aの長手方向と略平行に配置された、成形サイクルタイムが長い方の成形品を成形する射出成形装置B及び射出成形装置Cと、
前記1次成形品を前記第1金型から取り出し、前記第2金型の所定位置へ挿入する1次成形品保持手段と、
前記2次成形品を前記第2金型から取り出す2次成形品保持手段と、
前記1次成形品保持手段と前記2次成形品保持手段とを支持し、前記射出成形装置A、B及びCのそれぞれに取り付けられた固定金型と可動金型との間へ、前記1次成形品保持手段と前記2次成形品保持手段とをそれぞれ独立して挿入させ、退避させる成形品移動手段とを備えた多層成形品の成形システムとしたので、1次成形品の成形サイクルタイム及び2次成形品の成形サイクルタイムのいずれが長い場合であっても、2次成形品の生産サイクルタイムを成形サイクルタイムが長い方の成形品の成形サイクルタイムより短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施例1に係る多層成形品を示す図である。
【図2】本発明の実施例1に係る多層成形品の成形システムの概略平面図である。
【図3】図2のY−Y矢視からの概略断面図である。
【図4】本発明の実施例1に係る1次成形工程を示した型締装置の概略縦断面図である。
【図5】本発明の実施例1に係る2次成形工程を示した型締装置の概略縦断面図である。
【図6】本発明の実施例1に係る多層成形品の成形方法の流れを示した図である。
【図7】本発明の実施例2に係る多層成形品を示す図である。
【図8】本発明の実施例2に係る多層成形品の成形方法の流れを示した図である。
【図9】本発明の実施例3に係る多層成形品を示す図である。
【図10】本発明の実施例3に係る多層成形品の成形システムの概略平面図である。
【図11】図10のY−Y矢視からの概略断面図である。
【図12】本発明の実施例3に係る多層成形品の成形方法の流れを示した図である。
【図13】特許文献1の2色成形品を作成する製造方法の流れを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0037】
図1乃至図6を参照しながら本発明の実施例1を説明する。図1は本発明の実施例1に係る多層成形品を示す図である。図1(a)が平面図、図1(b)が図1(a)のH−H矢視における断面図である。また、図1(c)は1次成形品である樹脂窓1aの冷却状態を示した図1(a)のH−H矢視における断面図、図1(d)は2次成形品である支持部位付樹脂窓1の支持部位1bの冷却状態を示した図1(a)のH−H矢視における断面図である。図2は本発明の実施例1に係る多層成形品の成形システムの概略平面図である。図3は図2のY−Y矢視における概略断面図である。図4は本発明の実施例1に係る1次成形工程を示した型締装置の概略縦断面図である。図4(a)は成形前の型開き状態、図4(b)は可動金型13aが型閉じ位置手前で、所定量S0だけ寸開させた位置で位置保持され、射出ユニット11から1次射出されている状態、図4(c)は1次射出終了後、可動金型13aが型閉じ位置まで型締めされて樹脂窓1aが圧縮成形されている状態、図4(d)は冷却固化時間経過後、成形された樹脂窓1aが1次成形品保持機構40aにより可動金型13aから取り出されている状態を示す。図5は本発明の実施例1に係る2次成形工程を示した型締装置の概略縦断面図である。図5(a)は成形前に1次成形品保持手段40aにより、樹脂窓1aが固定金型22aに挿入されている状態、図5(b)は可動金型23aが型閉じ位置まで型閉じされた状態、図5(c)は射出ユニット21から2次射出されている状態、図5(d)は冷却固化時間経過後、成形された支持部位付樹脂窓1が2次成形品保持機構40bにより固定金型22aから取り出されている状態を示す。図6は、本発明の実施例1に係る多層成形品の成形方法の流れを示した図である。図6(a)は1次成形品及び2次成形品の成形サイクルタイム比が1/3の場合、図6(b)は同じく1/2の場合、図6(c)は同じく2/3の場合を示す。
【0038】
最初に、成形の対象となる多層成形品について説明する。実施例1においては、図1に示すような支持部位付樹脂窓1(2次成形品)を成形対象とする。支持部位付樹脂窓1は1次成形で成形された平板形状の樹脂窓1a(1次成形品)の周囲に、支持部位1bを2次成形で積層させた多層成形品である。このような樹脂窓は、車両、船舶、航空機等の軽量化のため、ガラス窓の代替品として近年需要が増大している。一般的には、1次成形品である樹脂窓1aは、素材として透明あるいは半透明のポリカーボネート樹脂等を用いて射出圧縮成形等の成形後の歪みが少ない成形方法により1次成形され、その表面の一部に、有色のポリカーボネート樹脂あるいはアロイ樹脂等を用いて、ボスやリブ等を一体化した窓枠等の支持部位が2次成形により積層されるものである。
【0039】
ここで、1次成形品の成形サイクルタイム及び2次成形品の成形サイクルタイムを決定する要素は多々あるが、それぞれの成形品の成形層の厚さと冷却固化時間もその主要素のひとつである。例えば、1次成形品及び2次成形品の各成形層の厚みが略同じ場合、図1(c)に示すように1次成形品である樹脂窓1aがその両面から冷却可能(実線矢印)であるのに対して、図1(d)に示すように、2次成形品である支持部位付樹脂窓1の積層された支持部位1bは、樹脂窓1aが断熱層になるため、樹脂窓1a側からの冷却効率(破線矢印)が低く、片面からのみの冷却(実線矢印)が主となる。そのため、2次成形品の冷却固化時間は1次成形品と比べて単純計算で略倍となり、成形サイクルタイムもこれに順ずる。しかしながら、2次成形品に所望される仕様や形状から、1次成形品及び2次成形品の各成形層の厚みの関係は様々であるため、一概にどちらの成形サイクルタイムの方が長いとは言えない。よって、実施例1では、射出成形装置Aで成形される1次成形品である樹脂窓1aの成形サイクルタイムより、射出成形装置B及びCで成形される2次成形品である支持部位付樹脂窓1の成形サイクルタイムの方が長い場合を想定している。
【0040】
次に、多層成形品の成形システムについて説明する。図2に示すように、射出成形装置A(10)の両側に射出成形装置B(20)及び射出成形装置C(30)が配置されている。実施例1においては、前述した想定より樹脂窓1a(1次成形品)を成形する第1射出成形装置が射出成形装置A(10)、支持部位付樹脂窓1(2次成形品)を成形する第2射出成形装置が射出成形装置B(20)及び射出成形装置C(30)である。すなわち、射出成形装置A(10)で成形された樹脂窓1aが、射出成形装置A(10)の両側に配置された射出成形装置B(20)及びC(30)の2台に交互に供給され、これら2台から交互に支持部位付樹脂窓1が生産される形態である。そして、射出成形装置A(10)及び射出成形装置B(20)の間には2次成形品搬出手段1(50)が、射出成形装置A(10)及び射出成形装置C(30)の間には2次成形品搬出手段2(60)がそれぞれ配置されている。これら2次成形品搬送手段は、ベルトコンベアーやパレット搬送機構等で構成され、射出成形装置B(20)及びC(30)から搬送された支持部位付樹脂窓1を装置外の任意の位置まで搬送して成形システム外の後工程に引き渡す。
【0041】
射出成形装置A(10)、B(20)及びC(30)は特殊機能等のない汎用の射出成形装置である。代表して射出成形装置A(10)について説明する。固定プラテン12には、可動金型13aと組み合わされて1次成形品を成形する第1金型の固定金型12aが取り付けられ、図示しないベース部に固定されている。固定プラテン12を挟んで、固定金型12aの反対側には、射出ユニット11が固定金型12aに射出可能に配置されている。可動プラテン13には、固定金型12aと組み合わされて1次成形品を成形する第1金型の可動金型13aが取り付けられ、型締装置14により、固定プラテン12に対向して進退自在に図示しないベース部に取り付けられている。射出成形装置B(20)及びC(30)も基本的に同じ構造であるが、それぞれに取り付けられている固定金型22a及び32a、可動金型23a及び33aが、1次成形品を挿入して2次成形品を成形する第2金型である点のみ相違する。
【0042】
そして図3に示すように、射出成形装置A(10)、B(20)及びC(30)の固定金型と可動金型が型開きされたその上方に射出成形装置の長手方向と直交する方向に成形品移動手段40が成形品移動手段支柱40cにより床面から支持されている。成形品移動手段40には、樹脂窓1a(1次成形品)を第1金型(射出成形装置A)から取り出し、第2金型(射出成形装置B及びC)の所定位置へ挿入する1次成形品保持手段40aと、支持部位付樹脂窓1(2次成形品)を第2金型から取り出す2次成形品保持手段40bとが、それぞれ独立して取り付けられ、射出成形装置A(10)、B(20)及びC(30)のいずれの固定金型と可動金型の間にも、挿入、退避可能に支持されている。2次成形品保持手段40bが、2次成形品搬出手段1(50)及び2次成形品搬出手段2(60)のいずれにも支持部位付樹脂窓1を搬送可能なことは言うまでもない。
【0043】
次に、射出成形装置A(10)による1次成形と、射出成形装置B(20)及びC(30)による2次成形について説明する。初めに、成形サイクルタイムが短い樹脂窓1a(1次成形品)が成形される射出成形装置A(10)による1次成形について説明する。
【0044】
図4は、本発明の実施例1に係る1次成形工程を示した型締装置の概略縦断面図である。図4(a)に示す型開き状態から、図示しない型締装置により可動プラテン13が固定プラテン12側に型閉じされる。ここで、図4(b)に示すように、可動金型13aが型閉じ位置手前で、所定量S0だけ寸開された位置で位置保持され、この状態で拡大された金型キャビティ内に射出ユニット11から透明あるいは半透明のポリカーボネート樹脂等が射出充填される。
【0045】
射出充填完了後、あるいは射出充填と連動させて、図4(c)に示すように、可動金型13aが所定量S0だけ寸開された位置から型閉じ位置まで型閉じされ、金型キャビティ内に射出充填された透明あるいは半透明のポリカーボネート樹脂等が型締力により圧縮成形される。金型キャビティ内の樹脂窓1aの冷却固化時間経過後、可動金型13aに内蔵された図示しない保持機構により、樹脂窓1aを可動金型13aに保持させた状態で可動金型13aが型開きされ、成形品移動手段40により移動された1次成形品保持手段40aが、図4(d)に示すように、固定金型12aと可動金型13aとの間に挿入され、成形された樹脂窓1a(1次成形品)が可動金型13aから取り出される。ここで、可動金型13aに内蔵された図示しない保持機構及び1次成形品保持手段40aの樹脂窓1aの保持機構は、様々な機構が公知であるが、樹脂窓1aのような平板状の成形品を保持する場合は、保持対象を傷つけないような気密性を有するパッドを介して保持手段と保持対象との間を吸引し負圧にすることにより保持するタイプの保持機構が用いられることが多い。また、1次成形品保持手段40aが、成形品移動手段40による射出成形装置の長手方向と直交する方向の移動だけでなく、図示しないサーボモータや油圧シリンダー等を使用した駆動機構により、各射出成形装置の固定金型と可動金型との間で射出成形装置の長手方向への移動が可能であることは言うまでもない。
【0046】
このように図4(a)から図4(d)の成形工程を繰り返すことにより、射出成形装置A(10)から、樹脂窓1a(1次成形品)が連続して成形され、1次成形品保持手段40aにより取り出される。
【0047】
次に、成形サイクルタイムが長い支持部位付樹脂窓1(2次成形品)が成形される射出成形装置B(20)及びC(30)による2次成形について説明する。これら射出成形装置B(20)及びC(30)による2次成形は、成形サイクル開始時間又は成形サイクル完了時間が相違するだけで成形工程そのものは同じため、代表して射出成形装置B(20)による2次成形について説明する。
【0048】
図5は、本発明の実施例1に係る2次成形工程を示した型締装置の概略縦断面図である。図5(a)に示すように、射出成形装置A(10)で成形された樹脂窓1a(1次成形品)が、1次成形品保持手段40aに保持された状態で、成形品移動手段40により移動され、型開きした状態の固定金型22aの所定位置にそのまま挿入される。挿入された樹脂窓1aが、固定金型22aに内蔵された図示しない成形品保持手段により固定金型22aに保持された後、1次成形品保持手段40aが金型外へ退避する。その後、図5(b)に示すように、図示しない型締装置により可動プラテン23が固定プラテン22側に型閉じされる。
【0049】
型閉じ後、型締めされた状態で、図5(c)に示すように、金型内に挿入された樹脂窓1a(1次成形品)と固定金型22aとの間に形成された金型キャビティ内に射出ユニット21から有色のポリカーボネート樹脂あるいはアロイ樹脂等が射出充填され、樹脂窓1aの片面の周囲にボスやリブ等を一体化した窓枠等の支持部位1bが積層される。積層された支持部位1bの冷却固化時間経過後、固定金型22aに内蔵された図示しない保持機構により、支持部位付樹脂窓1(2次成形品)を固定金型22aに保持させた状態で可動金型23aが型開きされ、成形品移動手段40により移動された2次成形品保持手段40bが、図5(d)に示すように、固定金型22aと可動金型23aとの間に挿入され、成形された支持部位付樹脂窓1が固定金型22aから取り出される。ここで、固定金型B22aに内蔵された図示しない保持機構及び2次成形品保持手段40bの支持部位付樹脂窓1の保持機構は、様々な機構が公知であるが、支持部位付樹脂窓1のような平板状の成形品を保持する場合は、保持対象を傷つけないような気密性を有するパッドを介して保持手段と保持対象との間を吸引し負圧にすることにより保持するタイプの保持機構が用いられることが多い。また、2次成形品保持手段40bが、成形品移動手段40による射出成形装置の長手方向と直交する方向の移動だけでなく、図示しないサーボモータや油圧シリンダー等を使用した駆動機構により、各射出成形装置の固定金型と可動金型との間で射出成形装置の長手方向への移動が可能であることは言うまでもない。
【0050】
このように図5(a)から図5(d)の成形工程を繰り返すことにより、射出成形装置B(20)から、支持部位付樹脂窓1(2次成形品)が連続して成形され、2次成形品保持手段40bにより取り出される。また、前述したように、成形サイクル開始時間又は成形サイクル完了時間を相違させて、射出成形装置C(30)からも、支持部位付樹脂窓1が連続して成形される。このように、射出成形装置B(20)及びC(30)から交互に成形される支持部位付樹脂窓1が、2次成形品保持手段40bにより2次成形品搬出手段1(50)及び2次成形品搬出手段2(60)に搬出され、成形システム外へ搬出される。
【0051】
次に、本発明の実施例1に係る多層成形品の成形方法を説明する。図6は、本発明の実施例1に係る多層成形品の成形方法の流れを示した図である。特許文献1の2色成形品を製造する製造方法の流れで説明したのと同様に、図6中の矢印は各成形品の成形サイクルを示し、白丸付矢印は樹脂窓1a(1次成形品)の第1金型(射出成形装置A)からの取り出しと第2金型(射出成形装置B及びC)への挿入、黒丸付矢印は支持部位付樹脂窓1(2次成形品)の第2金型(射出成形装置B及びC)からの取り出しを示している。また、図6中の記号A、B、C、50及び60は、それぞれ射出成形装置A(10)、B(20)、C(30)、2次成形品搬出手段1(50)及び2次成形品搬出手段2(60)を示している。
【0052】
図6(a)は、射出成形装置A(10)により成形される樹脂窓1a(1次成形品)の成形サイクルタイムを1、射出成形装置B(20)及びC(30)により成形される支持部位付樹脂窓1(2次成形品)の成形サイクルタイムを3と想定した場合である。(1次成形品及び2次成形品の成形サイクルタイム比が1/3。)図6(a)に示すように、成形サイクルタイムの長い支持部位付樹脂窓1を成形する射出成形装置B(20)及びC(30)の成形サイクル開始時間(又は成形サイクル完了時間)を1.5程相違させ、これらの2次成形に連動させて射出成形装置A(10)の成形サイクルを組み合わせると、最終製品である支持部位付樹脂窓1の生産サイクルタイムX、すなわち、前の支持部位付樹脂窓1の成形完了から次の支持部位付樹脂窓1の成形完了までのサイクルタイムは1.5となり、成形サイクルタイムの長い支持部位付樹脂窓1の成形サイクルタイム3の略1/2まで短くすることができる。ここで、樹脂窓1aの射出成形装置A(10)からの射出成形装置B(20)及びC(30)それぞれへの挿入(白丸付矢印)は重複していないので、1台の1次成形品保持手段40aで実施可能である。また、連続して行われる射出成形装置B(20)及びC(30)からの支持部位付樹脂窓1の取り出し(黒丸付矢印)と、射出成形装置B(20)及びC(30)への樹脂窓1aの挿入(白丸付矢印)とは、独立した2次成形品保持手段40bと1次成形品保持手段40aとによって実施されるので、この形態における支持部位付樹脂窓1の生産サイクルタイムXに問題はない。
【0053】
図6(b)は、樹脂窓1a(1次成形品)の成形サイクルタイムを1、支持部位付樹脂窓1(2次成形品)の成形サイクルタイムを2と想定した場合である。(1次成形品及び2次成形品の成形サイクルタイム比が1/2。)図6(b)に示すように、成形サイクルタイムの長い支持部位付樹脂窓1を成形する射出成形装置B(20)とC(30)との成形サイクル開始時間(又は成形サイクル完了時間)を1程相違させ、これらの2次成形に連動させて射出成形装置A(10)の成形サイクルを組み合わせると、最終製品である支持部位付樹脂窓1の生産サイクルタイムXは1となり、成形サイクルタイムの長い支持部位付樹脂窓1の成形サイクルタイム2の略1/2まで短くすることができる。この形態においても、図6(a)と同様、支持部位付樹脂窓1の生産サイクルタイムXに問題はない。
【0054】
図6(c)は、樹脂窓1a(1次成形品)の成形サイクルタイムを1、支持部位付樹脂窓1(2次成形品)の成形サイクルタイムを1.5と想定した場合である。(1次成形品及び2次成形品の成形サイクルタイム比が2/3。)図6(c)に示すように、成形サイクルタイムの長い支持部位付樹脂窓1を成形する射出成形装置B(20)とC(30)との成形サイクル開始時間(又は成形サイクル完了時間)を1程相違させ、これらの2次成形に連動させて射出成形装置A(10)の成形サイクルを組み合わせると、最終製品である支持部位付樹脂窓1の生産サイクルタイムXは1となり、成形サイクルタイムの長い支持部位付樹脂窓1の成形サイクルタイム1.5の略2/3まで短くすることができる。この形態においても、図6(a)と同様、支持部位付樹脂窓1の生産サイクルタイムXに問題はない。
【0055】
図6(a)、(b)に示すように、1次成形品及び2次成形品の成形サイクルタイム比が1/2以下の場合は、2次成形品の生産サイクルタイムを2次成形品の成形サイクルタイムの略1/2まで短くすることができる。ただし、図6(c)に示すように、1次成形品及び2次成形品の成形サイクルタイム比が1/2より大きい場合は、成形サイクルタイムの短い1次成形品を連続で成形しても、2次成形品の成形に間に合わず、2次成形に待ち時間が発生する。よって、2次成形品の生産サイクルタイムXを成形サイクルタイムの長い2次成形品の成形サイクルタイムより短くすることはできるものの、その短縮率は1/2より大きくなる。このように、本発明は1次成形品及び2次成形品の成形サイクルタイム比が1/2以下の場合に十分な効果を奏するものである。
【0056】
また、本発明の成形システムと異なり、1次成形品保持手段40aと2次成形品保持手段40bとが独立しておらず一体の場合は、保持手段自体が大型化し金型内での動作の自由度が低下する上、連続して行われる射出成形装置B(20)及びC(30)からの支持部位付樹脂窓1の取り出し(黒丸付矢印)と、射出成形装置B(20)及びC(30)への樹脂窓1aの挿入(白丸付矢印)において、1次成形品を保持したまま第2金型内に進入し、1次成形品の第2金型への挿入と、2次成形品の第2金型からの取り出しとを第2金型内で連続して行う、あるいは2次成形品を第2金型から取り出した後、1次成形品を第1金型から取り出し、第2金型へ挿入する必要があるため、金型内でのこれらの動作が困難であったり、時間がかかったりして、2次成形品の生産サイクルタイムXが長くなってしまう。そのため、1次成形品と2次成形品との成形サイクルタイム比が極端に大きい場合を除き、本発明の成形システムのように、1次成形品保持手段40aと2次成形品保持手段40bとは独立して金型間に挿入可能でなければならない。
【0057】
次に、本発明の実施例2について、図面を参照しながら説明する。
【実施例2】
【0058】
図7乃至図8を参照しながら本発明の実施例2を説明する。図7は本発明の実施例2に係る多層成形品を示す図である。図7(a)が平面図、図7(b)が図7(a)のI−I矢視における断面図である。図8は本発明の実施例2に係る多層成形品の成形方法の流れを示した図である。図8(a)は2次成形品及び1次成形品の成形サイクルタイム比が1/3の場合、図8(b)は同じく1/2の場合、図8(c)は同じく2/3の場合を示す。
【0059】
最初に、成形の対象となる多層成形品について説明する。実施例2においては、図7に示すようなディスプレイパネル4(2次成形品)を成形対象とする。ディスプレイパネル4は1次成形で成形された平板形状のパネル部4a(1次成形品)の内側周囲に、パネル支持部位4bを2次成形で積層させた多層成形品である。このようなディスプレイパネルは、液晶テレビ、プラズマテレビ、パソコン用液晶モニター等の意匠性向上のため、近年需要が増大している。素材は1次成形品、2次成形品共に実施例1の支持部位付樹脂窓と同様で、1次成形に射出圧縮成形等の成形後の歪みが少ない成形方法が採用される点も同様である。
【0060】
実施例2は、実施例1と異なり、射出成形装置A(10)で成形される2次成形品であるディスプレイパネル4の成形サイクルタイムより、射出成形装置B(20)及びC(30)で成形される1次成形品であるパネル部4aの成形サイクルタイムの方が長い場合を想定している。すなわち、ディスプレイパネル4(2次成形品)を成形する第2射出成形装置が射出成形装置A(10)、パネル部4a(1次成形品)を成形する第1射出成形装置が射出成形装置B(20)及び射出成形装置C(30)であり、射出成形装置B(20)及びC(30)で成形されたパネル部4aが、射出成形装置B(20)及びC(30)の間に配置された射出成形装置A(10)の1台に交互に供給され、この1台からディスプレイパネル4が生産される形態である。よって、実施例2においても、成形システム構成は実施例1で示した図2及び図3と同じであるが、図4に示す1次成形工程が射出成形装置A(10)ではなく射出成形装置B(20)及びC(30)により実施され、図5に示す2次成形工程が射出成形装置B(20)及びC(30)ではなく射出成形装置A(10)により実施される点と、成形の対象となる多層成形品とが実施例1と異なる。
【0061】
次に、本発明の実施例2に係る多層成形品の成形方法を説明する。図8は、本発明の実施例2に係る多層成形品の成形方法の流れを示した図である。実施例1で説明したのと同様に、図8中の矢印は各成形品の成形サイクルを示し、白丸付矢印はパネル部4a(1次成形品)の第1金型(射出成形装置B及びC)からの取り出しと第2金型(射出成形装置A)への挿入、黒丸付矢印はディスプレイパネル4(2次成形品)の第2金型(射出成形装置A)からの取り出しを示している。また、図8中の記号A、B、C、50及び60は、それぞれ射出成形装置A(10)、B(20)、C(30)、2次成形品搬出手段1(50)及び2次成形品搬出手段2(60)を示している。
【0062】
図8(a)は、射出成形装置A(10)により成形されるディスプレイパネル4(2次成形品)の成形サイクルタイムを1、射出成形装置B(20)及びC(30)により成形されるパネル部4a(1次成形品)の成形サイクルタイムを3と想定した場合である。(2次成形品及び1次成形品の成形サイクルタイム比が1/3。)図8(a)に示すように、成形サイクルタイムの長いパネル部4aを成形する射出成形装置B(20)及びC(30)の成形サイクル開始時間(又は成形サイクル完了時間)を1.5程相違させ、これらの1次成形に連動させて射出成形装置A(10)の成形サイクルを組み合わせると、最終製品であるディスプレイパネル4の生産サイクルタイムX、すなわち、前のディスプレイパネル4の成形完了から次のディスプレイパネル4の成形完了までのサイクルタイムは1.5となり、成形サイクルタイムの長いパネル部4aの成形サイクルタイム3の略1/2まで短くすることができる。ここで、パネル部4aの射出成形装置B(20)及びC(30)それぞれからの射出成形装置A(10)への挿入(白丸付矢印)は重複していないので、1台の1次成形品保持手段40aで実施可能である。また、連続して行われる射出成形装置A(10)からのディスプレイパネル4の取り出し(黒丸付矢印)と、射出成形装置A(10)へのパネル部4aの挿入(白丸付矢印)とは、独立した2次成形品保持手段40bと1次成形品保持手段40aとによって実施されるので、この形態におけるディスプレイパネル4の生産サイクルタイムXに問題はない。
【0063】
更にこの形態においては、射出成形装置B(20)及びC(30)の間に配置された射出成形装置A(10)によりディスプレイパネル4(2次成形品)が成形されるので、2次成形品搬出手段1(50)及び2次成形品搬出手段2(60)のいずれか一方の側にディスプレイパネル4の搬出を集約することで、2次成形品搬出手段1台でディスプレイパネル4を成形システム外へ搬出してもよい。
【0064】
図8(b)は、ディスプレイパネル4(2次成形品)の成形サイクルタイムを1、パネル部4a(1次成形品)の成形サイクルタイムを2と想定した場合である。(2次成形品及び1次成形品の成形サイクルタイム比が1/2。)図8(b)に示すように、成形サイクルタイムの長いパネル部4aを成形する射出成形装置B(20)及びC(30)との成形サイクル開始時間(又は成形サイクル完了時間)を1程相違させ、これらの2次成形に連動させて射出成形装置A(10)の成形サイクルを組み合わせると、最終製品であるディスプレイパネル4の生産サイクルタイムXは1となり、成形サイクルタイムの長いパネル部4aの成形サイクルタイム2の略1/2まで短くすることができる。この形態においても、図8(a)と同様、ディスプレイパネル4の生産サイクルタイムXに問題はない。
【0065】
図8(c)は、ディスプレイパネル4(2次成形品)の成形サイクルタイムを1、パネル部4a(1次成形品)の成形サイクルタイムを1.5と想定した場合である。(2次成形品及び1次成形品の成形サイクルタイム比が2/3。)図8(c)に示すように、成形サイクルタイムの長いパネル部4aを成形する射出成形装置B(20)及びC(30)との成形サイクル開始時間(又は成形サイクル完了時間)を1程相違させ、これらの2次成形に連動させて射出成形装置A(10)の成形サイクルを組み合わせると、最終製品であるディスプレイパネル4の生産サイクルタイムXは1となり、成形サイクルタイムの長いパネル部4aの成形サイクルタイム1.5の略2/3まで短くすることができる。この形態においても、図8(a)と同様、ディスプレイパネル4の生産サイクルタイムXに問題はない。
【0066】
図8(a)、(b)に示すように、2次成形品及び1次成形品の成形サイクルタイム比が1/2以下の場合は、2次成形品の生産サイクルタイムを2次成形品の成形サイクルタイムの略1/2まで短くすることができる。ただし、図8(c)に示すように、2次成形品及び1次成形品の成形サイクルタイム比が1/2より大きい場合は、成形サイクルタイムの短い2次成形品を連続で成形すると、成形サイクルタイムの長い1次成形品の成形が間に合わないため、2次成形品の生産サイクルタイムXを成形サイクルタイムの長い2次成形品の成形サイクルタイムより短くすることはできるものの、その短縮率は1/2より大きくなる。このように、本発明は2次成形品及び1次成形品の成形サイクルタイム比が1/2以下の場合に十分な効果を奏するものである。
【0067】
次に、本発明の実施例3について、図面を参照しながら説明する。
【実施例3】
【0068】
図9乃至図12を参照しながら本発明の実施例3を説明する。図9は本発明の実施例3に係る多層成形品を示す図である。図9(a)が斜視図、図9(b)が図9(a)のJ−J矢視における断面図である。図10は本発明の実施例3に係る多層成形品の成形システムの概略平面図である。図11は図10のY−Y矢視からの概略断面図である。図12は本発明の実施例3に係る多層成形品の成形方法の流れを示した図である。図12(a)は2次成形品及び1次成形品の成形サイクルタイム比が1/3の場合、図12(b)は同じく1/2の場合、図12(c)は同じく2/3の場合を示す。
【0069】
最初に、成形の対象となる多層成形品について説明する。実施例3においては、図9に示すような自動車用のテールゲート7(2次成形品)を成形対象とする。テールゲート7は、自動車のクーペ、ハッチバック、ワゴン等の車種のテールゲート(ハッチバックドア)であり、樹脂窓部を含めて一体成形された自動車用部材である。1次成形で成形されたテールゲート樹脂窓7a(1次成形品)の周囲に、テールゲートボディ7bを2次成形で積層させており、このような自動車の樹脂窓部を含むドア等を一体成形した樹脂製部品は、自動車の軽量化や組立工数の削減のため、近年需要が増大している。素材は1次成形品、2次成形品共に実施例1の支持部位付樹脂窓と同様で、1次成形に射出圧縮成形等の成形後の歪みが少ない成形方法が採用される点も同様である。実施例1及び実施例2の多層成形品と比較して、一般的に1次成形品、2次成形品共に成形品寸法が大きい。
【0070】
実施例3も、実施例2と同様に、射出成形装置A(10)で成形される2次成形品であるテールゲート7の成形サイクルタイムより、射出成形装置B(20)及びC(30)で成形される1次成形品であるテールゲート樹脂窓7aの成形サイクルタイムの方が長い場合を想定している。すなわち、テールゲート7(2次成形品)を成形する第2射出成形装置が射出成形装置A(10)、テールゲート樹脂窓7a(1次成形品)を成形する第1射出成形装置が射出成形装置B(20)及び射出成形装置C(30)であり、射出成形装置B(20)及びC(30)で成形されたテールゲート樹脂窓7aが、射出成形装置B(20)及びC(30)の間に配置された射出成形装置A(10)の1台に交互に供給され、この1台からテールゲート7が生産される形態である。
【0071】
図10は本発明の実施例3に係る多層成形品の成形システムの概略平面図であり、図11は図10のX−X矢視からの概略断面図である。前述の想定のとおり、テールゲート7(2次成形品)を成形する第2射出成形装置が射出成形装置A(10)、テールゲート樹脂窓7a(1次成形品)を成形する第1射出成形装置が射出成形装置B(20)及び射出成形装置C(30)である。
【0072】
ここで、成形の対象となる多層成形品以外の実施例3の実施例2との相違点は、図10及び図11に示すように、射出成形装置A(10)及びB(20)間、射出成形装置A(10)及びC(30)間それぞれに、成形品移動手段AB(45)及び成形品移動手段AC(46)のように成形品移動手段を分割して配置し、それぞれの射出成形装置間のみで1次成形品及び2次成形品の移動を行う点である。成形品移動手段AB(45)及び成形品移動手段AC(46)は、多関節ロボットであり、それぞれのロボットアームの先端に1次成形品保持手段40a及び2次成形品保持手段40bを備え、第1金型(射出成形装置B又はC)からテールゲート樹脂窓7a(1次成形品)を取り出し、第2金型(射出成形装置A)の所定位置に挿入すると共に、第2金型からテールゲート7(2次成形品)を取り出し、2次成形品搬出手段1(50)及び2次成形品搬出手段2(60)に搬出する。また、図10中の成形品移動手段AB(45)及び成形品移動手段AC(46)を中心とする円は、多関節ロボットのロボットアーム先端の最大可動範囲を示している。
【0073】
このような射出成形装置A(10)及びB(20)間、射出成形装置A(10)及びC(30)間それぞれに、成形品移動手段AB(45)及び成形品移動手段AC(46)のように成形品移動手段を分割して配置すると、成形システム全体の高さを低くすることができる。ただし、この場合は成形品移動手段AB(45)及び成形品移動手段AC(46)それぞれに、1次成形品保持手段40a及び2次成形品保持手段40bを装備しなければならない。実施例1の、1次成形品保持手段40aと2次成形品保持手段40bとが独立しておらず一体の場合で説明したように、1次成形品を保持したまま第2金型内に進入する必要はないが、保持手段自体が大型化し金型内での動作の自由度が低下する。
1次成形品保持手段40aと2次成形品保持手段40bとが独立しておらず一体の場合
【0074】
しかしながら、実施例3のように、これら成形品移動手段AB(45)及び成形品移動手段AC(46)に多関節ロボットを採用することにより、1次成形品の取り出し動作及び金型への挿入動作と、2次成形品の取り出し動作との自由度、位置精度及び繰り返し精度を向上させることができる。また、成形品移動手段AB(45)及び成形品移動手段AC(46)の多関節ロボットのロボットアーム先端に図示しないオートツールチャンジャー(ATC/自動工具交換装置)を装備し、それぞれの多関節ロボットが必要とする工程毎に、先端の1次成形品保持手段40a及び2次成形品保持手段40bを自動で交換するようにすれば、前述の保持手段自体が大型化する問題は解決することができ、多関節ロボットによる動作の自由度、位置精度及び繰り返し精度の向上効果を鑑みると、実施例3のように1次成形品、2次成形品共に成形品寸法が大きい成形品を扱うのに好ましい形態である。
【0075】
次に、本発明の実施例3に係る多層成形品の成形方法を説明する。図12は、本発明の実施例3に係る多層成形品の成形方法の流れを示した図である。実施例2で説明したのと同様に、図12中の矢印は各成形品の成形サイクルを示し、白丸付矢印はテールゲート樹脂窓7a(1次成形品)の第1金型(射出成形装置B及びC)からの取り出しと第2金型(射出成形装置A)への挿入、黒丸付矢印はテールゲート7(2次成形品)の第2金型(射出成形装置A)からの取り出しを示している。また、図8中の記号A、B、C、50、60、AB及びACは、それぞれ射出成形装置A(10)、B(20)、C(30)、2次成形品搬出手段1(50)、2次成形品搬出手段2(60)、成形品移動手段AB(45)及びAC(46)を示している。
【0076】
図12(a)は、射出成形装置A(10)により成形されるテールゲート7(2次成形品)の成形サイクルタイムを1、射出成形装置B(20)及びC(30)により成形されるテールゲート樹脂窓7a(1次成形品)の成形サイクルタイムを3と想定した場合である。(2次成形品及び1次成形品の成形サイクルタイム比が1/3。)図8(a)に示すように、成形サイクルタイムの長いテールゲート樹脂窓7aを成形する射出成形装置B(20)及びC(30)の成形サイクル開始時間(又は成形サイクル完了時間)を1.5程相違させ、これらの1次成形に連動させて射出成形装置A(10)の成形サイクルを組み合わせると、最終製品であるテールゲート7の生産サイクルタイムX、すなわち、前のテールゲート7の成形完了から次のテールゲート7の成形完了までのサイクルタイムは1.5となり、成形サイクルタイムの長いテールゲート樹脂窓7aの成形サイクルタイム3の略1/2まで短くすることができる。ここで、テールゲート樹脂窓7aの射出成形装置B(20)及びC(30)それぞれからの射出成形装置A10への挿入(白丸付矢印)は重複せず、また、射出成形装置A(10)からのテールゲート7の取り出し(黒丸付矢印)と、射出成形装置A(10)へのテールゲート樹脂窓7aの挿入(白丸付矢印)とは、それぞれ異なる成形品移動手段AB(45)及びAC(46)によって実施されるので、この形態におけるディスプレイパネル4の生産サイクルタイムXに問題はない。
【0077】
また、射出成形装置A(10)からのテールゲート7の取り出し(黒丸付矢印)と、射出成形装置A(10)へのテールゲート樹脂窓7aの挿入(白丸付矢印)との間には、0.5程の余裕があるので、サイクルタイム的に可能であれば、成形品移動手段AB(45)及びAC(46)のいずれか一方の多関節ロボットを使用し、実施例2と同様に、2次成形品搬出手段1(50)及び2次成形品搬出手段2(60)のいずれか一方の側にテールゲート7の搬出を集約することで、2次成形品搬出手段1台でテールゲート7を成形システム外へ搬出してもよい。
【0078】
図12(b)は、テールゲート7(2次成形品)の成形サイクルタイムを1、テールゲート樹脂窓7a(1次成形品)の成形サイクルタイムを2と想定した場合である。(2次成形品及び1次成形品の成形サイクルタイム比が1/2。)図12(b)に示すように、成形サイクルタイムの長いテールゲート樹脂窓7aを成形する射出成形装置B(20)及びC(30)との成形サイクル開始時間(又は成形サイクル完了時間)を1程相違させ、これらの1次成形に連動させて射出成形装置A(10)の成形サイクルを組み合わせると、最終製品であるテールゲート7の生産サイクルタイムXは1となり、成形サイクルタイムの長いテールゲート樹脂窓7aの成形サイクルタイム2の略1/2まで短くすることができる。この形態においても、図12(a)と同様、テールゲート7の生産サイクルタイムXに問題はない。
【0079】
図12(c)は、テールゲート7(2次成形品)の成形サイクルタイムを1、テールゲート樹脂窓7a(1次成形品)の成形サイクルタイムを1.5と想定した場合である。(2次成形品及び1次成形品の成形サイクルタイム比が2/3。)図12(c)に示すように、成形サイクルタイムの長いテールゲート樹脂窓7aを成形する射出成形装置B(20)とC(30)との成形サイクル開始時間(又は成形サイクル完了時間)を1程相違させ、これらの1次成形に連動させて射出成形装置A(10)の成形サイクルを組み合わせると、最終製品であるテールゲート7の生産サイクルタイムXは1となり、成形サイクルタイムの長いテールゲート樹脂窓7aの成形サイクルタイム1.5の略2/3まで短くすることができる。この形態においても、図8(a)と同様、テールゲート7の生産サイクルタイムXに問題はない。
【0080】
図12(a)、(b)に示すように、2次成形品及び1次成形品の成形サイクルタイム比が1/2以下の場合は、2次成形品の生産サイクルタイムを2次成形品の成形サイクルタイムの略1/2まで短くすることができる。ただし、図12(c)に示すように、2次成形品及び1次成形品の成形サイクルタイム比が1/2より大きい場合は、成形サイクルタイムの短い2次成形品を連続で成形すると、成形サイクルタイムの長い1次成形品の成形が間に合わないため、2次成形品の生産サイクルタイムXを成形サイクルタイムの長い2次成形品の成形サイクルタイムより短くすることはできるものの、その短縮率は1/2より大きくなる。このように、本発明は2次成形品及び1次成形品の成形サイクルタイム比が1/2以下の場合に十分な効果を奏するものである。
【0081】
本発明は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、上記の実施の形態に限定されることなく色々な形で実施できる。例えば、実施例1乃至実施例3において、射出成形装置A(10)、B(20)及びC(30)は横型射出成形装置であって、それぞれの射出ユニットが交互になるように配置する形態としたが、すべての射出成形装置の射出ユニットを揃えて配置する形態であってもよいし、各射出成形装置が竪型射出成形装置であってもよい。また、1次成形品及び2次成形品を固定金型及び可動金型のいずれの金型に残すか、あるいは、1次成形品を第2金型の固定金型及び可動金型のいずれの金型に挿入するか等は、1次成形品及び2次成形品の形状や大きさに基づいて適宜選択されるべきである。更に、成形後の歪みが少ない成形方法として、実施例1で示した射出圧縮成形方法以外にも、射出プレス成形方法等も1次成形品の形状や大きさに基づいて適宜、最適な成形方法が選択されるべきである。
【0082】
他には、実施例1において、成形品移動手段40が成形品移動手段支柱40cにより床面から支持されている形態としたが、成形品移動手段は、射出成形装置A(10)、B(20)及びC(30)の各固定プラテンから支持する形態でも、天井から支持する形態でもよい。また、実施例3において、成形品移動手段AB(45)及び成形品移動手段AC(46)の双方に多関節ロボットを採用する形態としたが、1次成形品保持手段40a及び2次成形品保持手段を同じ保持手段で兼用できるのであれば、成形品移動手段AB(45)及びAC(46)に既設の取出装置を流用する形態や、いずれか一方を多関節ロボット、他方を既設の取出装置の流用とする形態であってもよい。
【0083】
更に、実施例3のように、成形品移動手段を分割して配置する形態を、中央の射出成形装置A(10)により2次成形される形態に限定したが、1次成形品と2次成形品との成形サイクルタイム比が極端に大きい場合においては、両側の射出成形装置B(20)及びC(30)により2次成形される形態でもよい。また、1次成形品と2次成形品との成形サイクルタイム比が極端に大きい場合においては、射出成形装置A(10)、B(20)及びC(30)のいずれで2次成形するかによらず、成形品移動手段を分割せず、1次成形品保持手段40aと2次成形品保持手段40bとを備えた1台の多関節ロボットを、各射出成形装置の固定金型と可動金型が型開きされたその上方に配置された成形品移動手段40の水平構造体に沿って移動させる形態であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明に係る多層成形品の成形方法及び成形システムにより、1次成形品の成形サイクルタイム及び2次成形品の成形サイクルタイムのいずれが長い場合であっても、2次成形品の生産サイクルタイムを成形サイクルタイムが長い方の成形品の成形サイクルタイムより短くすることができ、特に、1次成形品及び2次成形品の成形サイクルタイム比が1/2以下の場合に十分な効果を奏することは説明したとおりである。更に、付け加えるならば、多層多色用の専用射出成形装置や専用金型が不要で、特殊機能等のない汎用の射出成形装置の組み合わせにより十分な効果を奏するものであるから、新たな設備投資を抑制することができる。また、本発明の成形システムは基本的にその構成のまま、それぞれの射出成形装置において単層単色成形が可能なので成形システムとしての汎用性が高く、樹脂成形品の製造業者にとって産業上利用価値が極めて高い。
【符号の説明】
【0085】
1 支持部位付樹脂窓(2次成形品)
4 ディスプレイパネル(2次成形品)
7 テールゲート(2次成形品)
10 射出成形装置A
20 射出成形装置B
30 射出成形装置C
40 成形品移動手段
40a 1次成形品保持手段
40b 2次成形品保持手段
45 成形品移動手段AB
46 成形品移動手段AC
【技術分野】
【0001】
本発明は、1次成形品表面の一部又は全面に溶融樹脂を積層させ2次成形品を成形する多層成形品の成形方法及び成形システムに関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂成形品における、異材、同材、異色、同色様々な組み合わせからなる多層成形品の成形方法として、成形用金型に特徴のあるもの、あるいは成形装置に特徴のあるもの等、種々の成形方法が知られている。1次成形された1次成形品を金型の所定位置に挿入し、その1次成形品表面の一部又は全面に溶融樹脂を積層させ2次成形品を成形する成形方法もそのひとつである。
【0003】
特許文献1には、第一射出成形機を用いてその第一金型に第一溶融樹脂を流し込みこれを固化させることにより射出成形を行い単数又は複数の樹脂成形品(1次成形品)を作製する第一工程と、工業用ロボットを用いて樹脂成形品又は樹脂成形組立品を第二射出成形機の第二金型にセットし、チャック及び/又は吸着を外す中間工程と、第二射出成形機を用いて第二金型と樹脂成形品又は樹脂成形組立品との隙間に第二溶融樹脂を流し込みこれを樹脂成形品又は樹脂成形組立品と一体になるように固化させることにより射出成形を行い二色成形品(2次成形品)を作製する第二工程とを備えた二色成形品の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−73151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の2色成形品を製造する製造方法の流れ(特許文献1、段落0062〜0063に記載の”2色成形品91の製造方法”)を図13に示す。図13は、特許文献1と本発明の対比を容易にするため、特許文献1の該当部の内容を特許文献1の明細書の記載から、出願人が図面化したものである。ここで、図13中の矢印は各成形品の成形サイクルを示し、白丸付矢印は樹脂成形品L(1次成形品)の第一金型(第一射出成形機)からの取り出しと第二金型(第二射出成形機)への挿入、黒丸付矢印は2色成形品M(2次成形品)の第二金型(第二射出成形機)からの払い出し(取り出し)を示している。
【0006】
図13(a)は樹脂成形品L(1次成形品)の成形サイクルタイムLよりも2色成形品M(2次成形品)の成形サイクルタイムMの方が長い場合を示している。樹脂成形品Lの成形完了後、白丸付矢印で示すように、工業用ロボットにより第一金型(第一射出成形機)から取り出された樹脂成形品Lがそのまま第二金型(第二射出成形機)に挿入される。続いて、2色成形品Mの成形が開始され、成形完了後、黒丸付矢印で示すように、第二金型の可動型に装備されたエジェクタープレートにより2色成形品Mが払い出され、第二金型の可動型の払い出し部分の直下に置かれた袋等にそのまま投入される。続いて、2色成形品Mが払い出された第二金型に、平行して成形されていた樹脂成形品Lが前記工業用ロボットにより挿入される。これらを繰り返すことにより2色成形品Mが連続して生産される。この形態では2色成形品Mの第二金型からの取り出しに前記工業用ロボットを使用しないため、2色成形品Mの第二金型からの払い出し(取り出し/黒丸付矢印)と、樹脂成形品Lの第二金型への挿入(白丸付矢印)とをこの順序で連続して行うことが可能である。
【0007】
図13(a)に示すように、最終製品である2色成形品M(2次成形品)の生産サイクルタイムX、すなわち、前の2色成形品Mの成形完了から次の2色成形品Mの成形完了までのサイクルタイムは、最短の場合でも成形サイクルタイムMと等しい。このように、この形態において、2色成形品Mの生産サイクルタイムXを成形サイクルタイムが長い2色成形品Mの成形サイクルタイムMより短くすることはできない。
【0008】
図13(b)は2色成形品M(2次成形品)の成形サイクルタイムMよりも樹脂成形品L(1次成形品)の成形サイクルタイムLの方が長い場合を示している。基本的な成形工程が同じなので詳細な説明は割愛する。図13(b)に示すように、最終製品である2色成形品Mの生産サイクルタイムXは、最短の場合でも成形サイクルタイムLと等しい。よって、この形態においても、2色成形品Mの生産サイクルタイムXを成形サイクルタイムが長い樹脂成形品Lの成形サイクルタイムLより短くすることはできない。
【0009】
すなわち、特許文献1の2色成形品の製造方法においては、樹脂成形品L(1次成形品)の成形サイクルタイムL及び2色成形品M(2次成形品)の成形サイクルタイムMのいずれが長い場合であっても、2色成形品Mの生産サイクルタイムXを成形サイクルタイムが長い方の成形品の成形サイクルタイムより短くすることはできないのである。特に、1次成形品の成形サイクルタイム及び2次成形品サイクルタイムのいずれか一方の成形サイクルタイムが長く、他方の成形サイクルタイムとの時間差が大きい多層成形品を成形する場合には、2次成形品の生産サイクルタイムが長い方の成形品の成形サイクルタイムに拘束されるので生産性の観点から問題があった。
【0010】
本発明は、上記したような問題点に鑑みてなされたもので、具体的には、1次成形品の成形サイクルタイム及び2次成形品の成形サイクルタイムのいずれが長い場合であっても、2次成形品の生産サイクルタイムを成形サイクルタイムが長い方の成形品の成形サイクルタイムより短くすることができる多層成形品の成形方法及び成形システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、請求項1に示すように、第1金型が取り付けられた第1射出成形装置により成形された1次成形品を、第2射出成形装置に取り付けられた第2金型の所定位置に挿入し、前記第2射出成形装置により前記1次成形品表面の一部又は全面に溶融樹脂を積層させ2次成形品を成形する多層成形品の成形方法において、
前記第1射出成形装置による前記1次成形品の成形サイクルタイムと、前記第2射出成形装置による前記2次成形品の成形サイクルタイムとを比較して、
成形サイクルタイムが長い方の成形品を成形する複数の射出成形装置を備え、
前記複数の射出成形装置それぞれの成形サイクル開始時間又は成形サイクル完了時間を相違させ、前記第2射出成形装置により成形される前記2次成形品の生産サイクルタイムが最短、かつ毎サイクル同じになるように、成形サイクルタイムが短い方の成形品を成形する射出成形装置Aの成形サイクルタイムと、前記複数の射出成形装置それぞれの成形サイクルタイムと、前記射出成形装置A及び前記複数の射出成形装置それぞれの成形サイクル開始時間及び成形サイクル完了時間とが制御されることを特徴とする多層成形品の成形方法によって達成される。
【0012】
すなわち、成形サイクルタイムの長い方の成形品を成形する射出成形装置を複数台備え、これら複数台それぞれの成形サイクル開始時間又は成形サイクル完了時間を相違させることにより、成形サイクルタイムの長い方の成形品の成形サイクルタイムを一部重複させ、成形サイクルタイムの長い方の成形品を順次成形することで、これら複数台による成形サイクルタイムを1台による成形サイクルタイムより短くすることができる。また、これら複数台の成形サイクルタイムに、成形サイクルタイムの短い方の成形品を成形する射出成形装置Aの成形サイクルタイムを連動させ、これら射出成形装置A、及び複数の射出成形装置それぞれの成形サイクルタイムと、これら射出成形装置A、及び複数の射出成形装置それぞれの成形サイクル開始時間と、成形サイクル完了時間とが、2次成形品の生産サイクルタイムが最短、かつ毎サイクル同じになるように制御されることにより、1次成形品の成形サイクルタイム及び2次成形品の成形サイクルタイムのいずれが長い場合であっても、2次成形品の生産サイクルタイムを成形サイクルタイムが長い方の成形品の成形サイクルタイムより短くすることができる。
【0013】
次に、請求項2に示すように、第1金型が取り付けられた第1射出成形装置により成形された1次成形品を、第2射出成形装置に取り付けられた第2金型の所定位置に挿入し、前記第2射出成形装置により前記1次成形品表面の一部又は全面に溶融樹脂を積層させ2次成形品を成形する多層成形品の成形方法において、
前記第1射出成形装置による前記1次成形品の成形サイクルタイムと、前記第2射出成形装置による前記2次成形品の成形サイクルタイムとを比較して、
成形サイクルタイムが短い方の成形品を成形する射出成形装置Aと、
前記射出成形装置Aの長手方向と直交する方向の両側に、前記射出成形装置Aの長手方向と略平行に配置された、成形サイクルタイムが長い方の成形品を成形する射出成形装置B及び射出成形装置Cと、
前記1次成形品を前記第1金型から取り出し、前記第2金型の所定位置へ挿入する1次成形品保持手段と、
前記2次成形品を前記第2金型から取り出す2次成形品保持手段と、
前記1次成形品保持手段と前記2次成形品保持手段とを支持し、前記射出成形装置A、B及びCのそれぞれに取り付けられた固定金型と可動金型との間へ、前記1次成形品保持手段と前記2次成形品保持手段とをそれぞれ独立して挿入させ、退避させる成形品移動手段とを備え、
前記射出成形装置B及びCそれぞれの成形サイクル開始時間又は成形サイクル完了時間を相違させ、前記第2射出成形装置により成形される前記2次成形品の生産サイクルタイムが最短、かつ毎サイクル同じになるように、前記射出成形装置A、B及びCそれぞれの成形サイクルタイムと、前記射出成形装置A、B及びCそれぞれの成形サイクル開始時間及び成形サイクル完了時間とが制御されることを特徴とする請求項1記載の多層成形品の成形方法であってもよい。
【0014】
すなわち、成形サイクルタイムの短い方の成形品を成形する射出成形装置1台(射出成形装置A)に対して、成形サイクルタイムの長い方の成形品を成形する射出成形装置を2台(射出成形装置B及びC)配置し、これら2台の成形サイクル開始時間又は成形サイクル完了時間を相違させることにより、成形サイクルタイムの長い方の成形品の成形サイクルタイムを一部重複させ、成形サイクルタイムの長い方の成形品を交互に成形することで、これら2台による成形サイクルタイムを1台による成形サイクルタイムより短くすることができる。また、これら2台の成形サイクルタイムに、成形サイクルタイムの短い方の成形品を成形するもう1台の射出成形装置の成形サイクルタイムを連動させ、これら3台の射出成形装置A、B及びCそれぞれの成形サイクルタイムと、これら3台の射出成形装置A、B及びCそれぞれの成形サイクル開始時間と、成形サイクル完了時間とが、2次成形品の生産サイクルタイムが最短、かつ毎サイクル同じになるように制御されることにより、1次成形品の成形サイクルタイム及び2次成形品の成形サイクルタイムのいずれが長い場合であっても、2次成形品の生産サイクルタイムを成形サイクルタイムが長い方の成形品の成形サイクルタイムより短くすることができる。そのためには、1次成形品と2次成形品とを独立して保持する1次成形品保持手段と2次成形品保持手段と、これら1次成形品保持手段と2次成形品保持手段とが、それぞれ1次成形品と2次成形品とを保持した状態で、それぞれ独立して、3台の射出成形装置A、B及びCいずれの固定金型及び可動金型間にも、進入させ、退避させるように支持する成形品移動手段とが必要である。
【0015】
更に、請求項3に示すように、前記制御された成形サイクルタイムと、成形サイクル開始時間と、成形サイクル完了時間とに基づき、
前記1次成形品保持手段による前記1次成形品の前記第1金型からの取り出し工程と、
前記2次成形品保持手段による前記2次成形品の前記第2金型からの取り出し工程と、
前記1次成形品保持手段による前記1次成形品の前記第2金型の前記所定位置への挿入工程とのそれぞれに要する時間が補正され、
前記2次成形品の生産サイクルタイムが最短、かつ毎サイクル同じになるように制御されるような請求項2記載の多層成形品の成形方法としてもよい。
【0016】
このように1次成形品保持手段及び2次成形品保持手段の各工程に要する時間が補正される、すなわち、前記制御あるいは外乱等によって各射出成形装置それぞれの成形サイクルタイムや、成形サイクル開始時間や、成形サイクル完了時間が変動しても、これを吸収するように各工程に要する時間を増減させることにより、2次成形品の生産サイクルタイムが最短、かつ毎サイクル同じになるように制御される。
【0017】
また、本発明の上記目的は、請求項4に示すように、第1金型が取り付けられた第1射出成形装置により成形された1次成形品を、第2射出成形装置に取り付けられた第2金型の所定位置に挿入し、前記第2射出成形装置により前記1次成形品表面の一部又は全面に溶融樹脂を積層させ2次成形品を成形する多層成形品の成形装置において、
前記第1射出成形装置による前記1次成形品の成形サイクルタイムと、第2射出成形装置による前記2次成形品の成形サイクルタイムとを比較して、
成形サイクルタイムが短い方の成形品を成形する射出成形装置Aと、
前記射出成形装置Aの長手方向と直交する方向の両側に、前記射出成形装置Aの長手方向と略平行に配置された、成形サイクルタイムが長い方の成形品を成形する射出成形装置B及び射出成形装置Cと、
前記1次成形品を前記第1金型から取り出し、前記第2金型の所定位置へ挿入する1次成形品保持手段と、
前記2次成形品を前記第2金型から取り出す2次成形品保持手段と、
前記1次成形品保持手段と前記2次成形品保持手段とを支持し、前記射出成形装置A、B及びCのそれぞれに取り付けられた固定金型と可動金型との間へ、前記1次成形品保持手段と前記2次成形品保持手段とをそれぞれ独立して挿入させ、退避させる成形品移動手段とを備えた多層成形品の成形システムによって達成される。
【0018】
このような多層成形品の成形システムにより、請求項1記載の多層成形品の成形方法が可能となり、1次成形品の成形サイクルタイム及び2次成形品の成形サイクルタイムのいずれが長い場合であっても、2次成形品の生産サイクルタイムを成形サイクルタイムが長い方の成形品の成形サイクルタイムより短くすることができる。
【0019】
次に、請求項5に示すように、前記第1射出成形装置が前記射出成形装置A、前記第2射出成形装置が前記射出成形装置B及びCである請求項4記載の多層成形品の成形システムであってもよい。
【0020】
これは、射出成形装置Aで成形される1次成形品の成形サイクルタイムより、射出成形装置B及びCで成形される2次成形品の成形サイクルタイムの方が長い場合で、射出成形装置Aで成形された1次成形品が、射出成形装置Aの両側に配置された射出成形装置B及びCの2台に交互に供給され、これら2台から交互に2次成形品が生産される形態である。
【0021】
また、請求項6に示すように、前記第2射出成形装置が前記射出成形装置A、前記第1射出成形装置が前記射出成形装置B及びCである請求項4記載の多層成形品の成形システムであってもよい。
【0022】
これは、射出成形装置Aで成形される2次成形品の成形サイクルタイムより、射出成形装置B及びCで成形される1次成形品の成形サイクルタイムの方が長い場合で、射出成形装置B及びCで成形された1次成形品が、射出成形装置B及びCの間に配置された射出成形装置Aの1台に交互に供給され、この1台から2次成形品が生産される形態である。すなわち、1次成形品の成形サイクルタイム及び2次成形品の成形サイクルタイムのいずれが長い場合であっても、請求項4記載の多層成形品の成形システムの構成が可能である。
【0023】
次に、請求項7に示すように、前記成形品移動手段が、前記射出成形装置A、B及びCの型締装置の上方に、装置長手方向と直交する方向に設けられた水平構造体から成る請求項4乃至請求項6記載の多層成形品の成形システムであってもよい。
【0024】
このように、射出成形装置A、B及びCの型締装置の上方に、装置長手方向と直交する方向に設けられた水平構造体に1次成形品保持手段と2次成形保持手段とが独立して支持される形態により、各射出成形装置に取り付けられたそれぞれの固定金型と可動金型間にこれらの成形品保持手段が最短距離で移動できる。
【0025】
次に、請求項8に示すように、前記成形品移動手段が、前記射出成形装置A及びB間で成形品の移動を行う成形品移動機構手段ABと、前記射出成形装置A及びC間で成形品の移動を行う成形品移動手段ACとから成る請求項6記載の多層成形品の成形システムであってもよい。
【0026】
請求項6記載の、第2射出成形装置が前記射出成形装置A、第1射出成形装置が射出成形装置B及びCである場合は、このように射出成形装置A及びB間、射出成形装置A及びC間それぞれに成形品移動手段AB及びACを分割して配置し、それぞれの射出成形装置間のみで1次成形品及び2次成形品の移動を行っても、請求項4記載の多層成形品の成形システムの構成が可能である。
【0027】
更に、請求項9に示すように、前記成形品移動手段AB及びACの少なくとも一方が多関節ロボットである請求項8記載の多層成形品の成形システムであることが好ましい。
【0028】
このように、成形品移動手段AB及びACの少なくとも一方が多関節ロボットであれば、1次成形品の取り出し動作及び金型への挿入動作、2次成形品の取り出し動作の少なくとも一方の動作の自由度、位置精度及び繰り返し精度を向上させることができる。更に、成形品移動手段AB及びACの双方が多関節ロボットであれば、それら双方の動作の自由度、位置精度及び繰り返し精度を向上させることができる。
【0029】
次に、請求項10に示すように、前記1次成形品の少なくとも一面が意匠性を必要とする樹脂成形品であることを特徴とする請求項4乃至請求項9記載の多層成形品の成形システムであることが好ましい。
【0030】
1次成形品の少なくとも一面が意匠性を必要とする樹脂成形品である場合、1次成形は意匠の転写性にすぐれている射出圧縮成形方法や射出プレス成形方法が採用され、その成形品形状と成形方法から1次成形品の成形サイクルタイム及び2次成形品サイクルタイムのいずれか一方の成形サイクルタイムが長い上、他方の成形サイクルとの時間差が大きい場合が多い。よって2次成形品の生産サイクルタイムの短縮に寄与すること大である。
【0031】
次に、請求項11に示すように、前記1次成形品が透光性を有する樹脂成形品であることを特徴とする請求項4乃至請求項10記載の多層成形品の成形システムであることが好ましい。
【0032】
このような、1次成形品が透光性を有する樹脂成形品、例えば、車両、船舶、航空機等の樹脂窓や、液晶テレビ、プラズマテレビ、パソコン用液晶モニター等のディスプレイパネルや、自動車のクーペ、ハッチバック、ワゴン等の車種の樹脂窓部を含めて一体成形されたテールゲート(ハッチバックドア)である場合、1次成形品の透光性を有する樹脂成形品の歪みを小さくすることが要求されるため、成形後の歪みが少ない射出圧縮成形方法や射出プレス成形方法が採用されることがほとんどである。すなわち、1次成形品の成形サイクルタイム及び2次成形品サイクルタイムのいずれか一方の成形サイクルタイムが長い上、他方の成形サイクルタイムとの時間差が大きいので、2次成形品の生産サイクルタイムの短縮に寄与すること大である。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係る多層成形品の成形方法は、第1金型が取り付けられた第1射出成形装置により成形された1次成形品を、第2射出成形装置に取り付けられた第2金型の所定位置に挿入し、前記第2射出成形装置により前記1次成形品表面の一部又は全面に溶融樹脂を積層させ2次成形品を成形する多層成形品の成形方法において、
前記第1射出成形装置による前記1次成形品の成形サイクルタイムと、前記第2射出成形装置による前記2次成形品の成形サイクルタイムとを比較して、
成形サイクルタイムが長い方の成形品を成形する複数の射出成形装置を備え、
前記複数の射出成形装置それぞれの成形サイクル開始時間又は成形サイクル完了時間を相違させ、前記第2射出成形装置により成形される前記2次成形品の生産サイクルタイムが最短、かつ毎サイクル同じになるように、成形サイクルタイムが短い方の成形品を成形する射出成形装置Aの成形サイクルタイムと、前記複数の射出成形装置それぞれの成形サイクルタイムと、前記射出成形装置A及び前記複数の射出成形装置それぞれの成形サイクル開始時間及び成形サイクル完了時間とが制御されるので、1次成形品の成形サイクルタイム及び2次成形品の成形サイクルタイムのいずれが長い場合であっても、2次成形品の生産サイクルタイムを成形サイクルタイムが長い方の成形品の成形サイクルタイムより短くすることができる。
【0034】
また、本発明に係る多層成形品の成形システムは、第1金型が取り付けられた第1射出成形装置により成形された1次成形品を、第2射出成形装置に取り付けられた第2金型の所定位置に挿入し、前記第2射出成形装置により前記1次成形品表面の一部又は全面に溶融樹脂を積層させ2次成形品を成形する多層成形品の成形システムにおいて、
前記第1射出成形装置による前記1次成形品の成形サイクルタイムと、第2射出成形装置による前記2次成形品の成形サイクルタイムとを比較して、
成形サイクルタイムが短い方の成形品を成形する射出成形装置Aと、
前記射出成形装置Aの長手方向と直交する方向の両側に、前記射出成形装置Aの長手方向と略平行に配置された、成形サイクルタイムが長い方の成形品を成形する射出成形装置B及び射出成形装置Cと、
前記1次成形品を前記第1金型から取り出し、前記第2金型の所定位置へ挿入する1次成形品保持手段と、
前記2次成形品を前記第2金型から取り出す2次成形品保持手段と、
前記1次成形品保持手段と前記2次成形品保持手段とを支持し、前記射出成形装置A、B及びCのそれぞれに取り付けられた固定金型と可動金型との間へ、前記1次成形品保持手段と前記2次成形品保持手段とをそれぞれ独立して挿入させ、退避させる成形品移動手段とを備えた多層成形品の成形システムとしたので、1次成形品の成形サイクルタイム及び2次成形品の成形サイクルタイムのいずれが長い場合であっても、2次成形品の生産サイクルタイムを成形サイクルタイムが長い方の成形品の成形サイクルタイムより短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施例1に係る多層成形品を示す図である。
【図2】本発明の実施例1に係る多層成形品の成形システムの概略平面図である。
【図3】図2のY−Y矢視からの概略断面図である。
【図4】本発明の実施例1に係る1次成形工程を示した型締装置の概略縦断面図である。
【図5】本発明の実施例1に係る2次成形工程を示した型締装置の概略縦断面図である。
【図6】本発明の実施例1に係る多層成形品の成形方法の流れを示した図である。
【図7】本発明の実施例2に係る多層成形品を示す図である。
【図8】本発明の実施例2に係る多層成形品の成形方法の流れを示した図である。
【図9】本発明の実施例3に係る多層成形品を示す図である。
【図10】本発明の実施例3に係る多層成形品の成形システムの概略平面図である。
【図11】図10のY−Y矢視からの概略断面図である。
【図12】本発明の実施例3に係る多層成形品の成形方法の流れを示した図である。
【図13】特許文献1の2色成形品を作成する製造方法の流れを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0037】
図1乃至図6を参照しながら本発明の実施例1を説明する。図1は本発明の実施例1に係る多層成形品を示す図である。図1(a)が平面図、図1(b)が図1(a)のH−H矢視における断面図である。また、図1(c)は1次成形品である樹脂窓1aの冷却状態を示した図1(a)のH−H矢視における断面図、図1(d)は2次成形品である支持部位付樹脂窓1の支持部位1bの冷却状態を示した図1(a)のH−H矢視における断面図である。図2は本発明の実施例1に係る多層成形品の成形システムの概略平面図である。図3は図2のY−Y矢視における概略断面図である。図4は本発明の実施例1に係る1次成形工程を示した型締装置の概略縦断面図である。図4(a)は成形前の型開き状態、図4(b)は可動金型13aが型閉じ位置手前で、所定量S0だけ寸開させた位置で位置保持され、射出ユニット11から1次射出されている状態、図4(c)は1次射出終了後、可動金型13aが型閉じ位置まで型締めされて樹脂窓1aが圧縮成形されている状態、図4(d)は冷却固化時間経過後、成形された樹脂窓1aが1次成形品保持機構40aにより可動金型13aから取り出されている状態を示す。図5は本発明の実施例1に係る2次成形工程を示した型締装置の概略縦断面図である。図5(a)は成形前に1次成形品保持手段40aにより、樹脂窓1aが固定金型22aに挿入されている状態、図5(b)は可動金型23aが型閉じ位置まで型閉じされた状態、図5(c)は射出ユニット21から2次射出されている状態、図5(d)は冷却固化時間経過後、成形された支持部位付樹脂窓1が2次成形品保持機構40bにより固定金型22aから取り出されている状態を示す。図6は、本発明の実施例1に係る多層成形品の成形方法の流れを示した図である。図6(a)は1次成形品及び2次成形品の成形サイクルタイム比が1/3の場合、図6(b)は同じく1/2の場合、図6(c)は同じく2/3の場合を示す。
【0038】
最初に、成形の対象となる多層成形品について説明する。実施例1においては、図1に示すような支持部位付樹脂窓1(2次成形品)を成形対象とする。支持部位付樹脂窓1は1次成形で成形された平板形状の樹脂窓1a(1次成形品)の周囲に、支持部位1bを2次成形で積層させた多層成形品である。このような樹脂窓は、車両、船舶、航空機等の軽量化のため、ガラス窓の代替品として近年需要が増大している。一般的には、1次成形品である樹脂窓1aは、素材として透明あるいは半透明のポリカーボネート樹脂等を用いて射出圧縮成形等の成形後の歪みが少ない成形方法により1次成形され、その表面の一部に、有色のポリカーボネート樹脂あるいはアロイ樹脂等を用いて、ボスやリブ等を一体化した窓枠等の支持部位が2次成形により積層されるものである。
【0039】
ここで、1次成形品の成形サイクルタイム及び2次成形品の成形サイクルタイムを決定する要素は多々あるが、それぞれの成形品の成形層の厚さと冷却固化時間もその主要素のひとつである。例えば、1次成形品及び2次成形品の各成形層の厚みが略同じ場合、図1(c)に示すように1次成形品である樹脂窓1aがその両面から冷却可能(実線矢印)であるのに対して、図1(d)に示すように、2次成形品である支持部位付樹脂窓1の積層された支持部位1bは、樹脂窓1aが断熱層になるため、樹脂窓1a側からの冷却効率(破線矢印)が低く、片面からのみの冷却(実線矢印)が主となる。そのため、2次成形品の冷却固化時間は1次成形品と比べて単純計算で略倍となり、成形サイクルタイムもこれに順ずる。しかしながら、2次成形品に所望される仕様や形状から、1次成形品及び2次成形品の各成形層の厚みの関係は様々であるため、一概にどちらの成形サイクルタイムの方が長いとは言えない。よって、実施例1では、射出成形装置Aで成形される1次成形品である樹脂窓1aの成形サイクルタイムより、射出成形装置B及びCで成形される2次成形品である支持部位付樹脂窓1の成形サイクルタイムの方が長い場合を想定している。
【0040】
次に、多層成形品の成形システムについて説明する。図2に示すように、射出成形装置A(10)の両側に射出成形装置B(20)及び射出成形装置C(30)が配置されている。実施例1においては、前述した想定より樹脂窓1a(1次成形品)を成形する第1射出成形装置が射出成形装置A(10)、支持部位付樹脂窓1(2次成形品)を成形する第2射出成形装置が射出成形装置B(20)及び射出成形装置C(30)である。すなわち、射出成形装置A(10)で成形された樹脂窓1aが、射出成形装置A(10)の両側に配置された射出成形装置B(20)及びC(30)の2台に交互に供給され、これら2台から交互に支持部位付樹脂窓1が生産される形態である。そして、射出成形装置A(10)及び射出成形装置B(20)の間には2次成形品搬出手段1(50)が、射出成形装置A(10)及び射出成形装置C(30)の間には2次成形品搬出手段2(60)がそれぞれ配置されている。これら2次成形品搬送手段は、ベルトコンベアーやパレット搬送機構等で構成され、射出成形装置B(20)及びC(30)から搬送された支持部位付樹脂窓1を装置外の任意の位置まで搬送して成形システム外の後工程に引き渡す。
【0041】
射出成形装置A(10)、B(20)及びC(30)は特殊機能等のない汎用の射出成形装置である。代表して射出成形装置A(10)について説明する。固定プラテン12には、可動金型13aと組み合わされて1次成形品を成形する第1金型の固定金型12aが取り付けられ、図示しないベース部に固定されている。固定プラテン12を挟んで、固定金型12aの反対側には、射出ユニット11が固定金型12aに射出可能に配置されている。可動プラテン13には、固定金型12aと組み合わされて1次成形品を成形する第1金型の可動金型13aが取り付けられ、型締装置14により、固定プラテン12に対向して進退自在に図示しないベース部に取り付けられている。射出成形装置B(20)及びC(30)も基本的に同じ構造であるが、それぞれに取り付けられている固定金型22a及び32a、可動金型23a及び33aが、1次成形品を挿入して2次成形品を成形する第2金型である点のみ相違する。
【0042】
そして図3に示すように、射出成形装置A(10)、B(20)及びC(30)の固定金型と可動金型が型開きされたその上方に射出成形装置の長手方向と直交する方向に成形品移動手段40が成形品移動手段支柱40cにより床面から支持されている。成形品移動手段40には、樹脂窓1a(1次成形品)を第1金型(射出成形装置A)から取り出し、第2金型(射出成形装置B及びC)の所定位置へ挿入する1次成形品保持手段40aと、支持部位付樹脂窓1(2次成形品)を第2金型から取り出す2次成形品保持手段40bとが、それぞれ独立して取り付けられ、射出成形装置A(10)、B(20)及びC(30)のいずれの固定金型と可動金型の間にも、挿入、退避可能に支持されている。2次成形品保持手段40bが、2次成形品搬出手段1(50)及び2次成形品搬出手段2(60)のいずれにも支持部位付樹脂窓1を搬送可能なことは言うまでもない。
【0043】
次に、射出成形装置A(10)による1次成形と、射出成形装置B(20)及びC(30)による2次成形について説明する。初めに、成形サイクルタイムが短い樹脂窓1a(1次成形品)が成形される射出成形装置A(10)による1次成形について説明する。
【0044】
図4は、本発明の実施例1に係る1次成形工程を示した型締装置の概略縦断面図である。図4(a)に示す型開き状態から、図示しない型締装置により可動プラテン13が固定プラテン12側に型閉じされる。ここで、図4(b)に示すように、可動金型13aが型閉じ位置手前で、所定量S0だけ寸開された位置で位置保持され、この状態で拡大された金型キャビティ内に射出ユニット11から透明あるいは半透明のポリカーボネート樹脂等が射出充填される。
【0045】
射出充填完了後、あるいは射出充填と連動させて、図4(c)に示すように、可動金型13aが所定量S0だけ寸開された位置から型閉じ位置まで型閉じされ、金型キャビティ内に射出充填された透明あるいは半透明のポリカーボネート樹脂等が型締力により圧縮成形される。金型キャビティ内の樹脂窓1aの冷却固化時間経過後、可動金型13aに内蔵された図示しない保持機構により、樹脂窓1aを可動金型13aに保持させた状態で可動金型13aが型開きされ、成形品移動手段40により移動された1次成形品保持手段40aが、図4(d)に示すように、固定金型12aと可動金型13aとの間に挿入され、成形された樹脂窓1a(1次成形品)が可動金型13aから取り出される。ここで、可動金型13aに内蔵された図示しない保持機構及び1次成形品保持手段40aの樹脂窓1aの保持機構は、様々な機構が公知であるが、樹脂窓1aのような平板状の成形品を保持する場合は、保持対象を傷つけないような気密性を有するパッドを介して保持手段と保持対象との間を吸引し負圧にすることにより保持するタイプの保持機構が用いられることが多い。また、1次成形品保持手段40aが、成形品移動手段40による射出成形装置の長手方向と直交する方向の移動だけでなく、図示しないサーボモータや油圧シリンダー等を使用した駆動機構により、各射出成形装置の固定金型と可動金型との間で射出成形装置の長手方向への移動が可能であることは言うまでもない。
【0046】
このように図4(a)から図4(d)の成形工程を繰り返すことにより、射出成形装置A(10)から、樹脂窓1a(1次成形品)が連続して成形され、1次成形品保持手段40aにより取り出される。
【0047】
次に、成形サイクルタイムが長い支持部位付樹脂窓1(2次成形品)が成形される射出成形装置B(20)及びC(30)による2次成形について説明する。これら射出成形装置B(20)及びC(30)による2次成形は、成形サイクル開始時間又は成形サイクル完了時間が相違するだけで成形工程そのものは同じため、代表して射出成形装置B(20)による2次成形について説明する。
【0048】
図5は、本発明の実施例1に係る2次成形工程を示した型締装置の概略縦断面図である。図5(a)に示すように、射出成形装置A(10)で成形された樹脂窓1a(1次成形品)が、1次成形品保持手段40aに保持された状態で、成形品移動手段40により移動され、型開きした状態の固定金型22aの所定位置にそのまま挿入される。挿入された樹脂窓1aが、固定金型22aに内蔵された図示しない成形品保持手段により固定金型22aに保持された後、1次成形品保持手段40aが金型外へ退避する。その後、図5(b)に示すように、図示しない型締装置により可動プラテン23が固定プラテン22側に型閉じされる。
【0049】
型閉じ後、型締めされた状態で、図5(c)に示すように、金型内に挿入された樹脂窓1a(1次成形品)と固定金型22aとの間に形成された金型キャビティ内に射出ユニット21から有色のポリカーボネート樹脂あるいはアロイ樹脂等が射出充填され、樹脂窓1aの片面の周囲にボスやリブ等を一体化した窓枠等の支持部位1bが積層される。積層された支持部位1bの冷却固化時間経過後、固定金型22aに内蔵された図示しない保持機構により、支持部位付樹脂窓1(2次成形品)を固定金型22aに保持させた状態で可動金型23aが型開きされ、成形品移動手段40により移動された2次成形品保持手段40bが、図5(d)に示すように、固定金型22aと可動金型23aとの間に挿入され、成形された支持部位付樹脂窓1が固定金型22aから取り出される。ここで、固定金型B22aに内蔵された図示しない保持機構及び2次成形品保持手段40bの支持部位付樹脂窓1の保持機構は、様々な機構が公知であるが、支持部位付樹脂窓1のような平板状の成形品を保持する場合は、保持対象を傷つけないような気密性を有するパッドを介して保持手段と保持対象との間を吸引し負圧にすることにより保持するタイプの保持機構が用いられることが多い。また、2次成形品保持手段40bが、成形品移動手段40による射出成形装置の長手方向と直交する方向の移動だけでなく、図示しないサーボモータや油圧シリンダー等を使用した駆動機構により、各射出成形装置の固定金型と可動金型との間で射出成形装置の長手方向への移動が可能であることは言うまでもない。
【0050】
このように図5(a)から図5(d)の成形工程を繰り返すことにより、射出成形装置B(20)から、支持部位付樹脂窓1(2次成形品)が連続して成形され、2次成形品保持手段40bにより取り出される。また、前述したように、成形サイクル開始時間又は成形サイクル完了時間を相違させて、射出成形装置C(30)からも、支持部位付樹脂窓1が連続して成形される。このように、射出成形装置B(20)及びC(30)から交互に成形される支持部位付樹脂窓1が、2次成形品保持手段40bにより2次成形品搬出手段1(50)及び2次成形品搬出手段2(60)に搬出され、成形システム外へ搬出される。
【0051】
次に、本発明の実施例1に係る多層成形品の成形方法を説明する。図6は、本発明の実施例1に係る多層成形品の成形方法の流れを示した図である。特許文献1の2色成形品を製造する製造方法の流れで説明したのと同様に、図6中の矢印は各成形品の成形サイクルを示し、白丸付矢印は樹脂窓1a(1次成形品)の第1金型(射出成形装置A)からの取り出しと第2金型(射出成形装置B及びC)への挿入、黒丸付矢印は支持部位付樹脂窓1(2次成形品)の第2金型(射出成形装置B及びC)からの取り出しを示している。また、図6中の記号A、B、C、50及び60は、それぞれ射出成形装置A(10)、B(20)、C(30)、2次成形品搬出手段1(50)及び2次成形品搬出手段2(60)を示している。
【0052】
図6(a)は、射出成形装置A(10)により成形される樹脂窓1a(1次成形品)の成形サイクルタイムを1、射出成形装置B(20)及びC(30)により成形される支持部位付樹脂窓1(2次成形品)の成形サイクルタイムを3と想定した場合である。(1次成形品及び2次成形品の成形サイクルタイム比が1/3。)図6(a)に示すように、成形サイクルタイムの長い支持部位付樹脂窓1を成形する射出成形装置B(20)及びC(30)の成形サイクル開始時間(又は成形サイクル完了時間)を1.5程相違させ、これらの2次成形に連動させて射出成形装置A(10)の成形サイクルを組み合わせると、最終製品である支持部位付樹脂窓1の生産サイクルタイムX、すなわち、前の支持部位付樹脂窓1の成形完了から次の支持部位付樹脂窓1の成形完了までのサイクルタイムは1.5となり、成形サイクルタイムの長い支持部位付樹脂窓1の成形サイクルタイム3の略1/2まで短くすることができる。ここで、樹脂窓1aの射出成形装置A(10)からの射出成形装置B(20)及びC(30)それぞれへの挿入(白丸付矢印)は重複していないので、1台の1次成形品保持手段40aで実施可能である。また、連続して行われる射出成形装置B(20)及びC(30)からの支持部位付樹脂窓1の取り出し(黒丸付矢印)と、射出成形装置B(20)及びC(30)への樹脂窓1aの挿入(白丸付矢印)とは、独立した2次成形品保持手段40bと1次成形品保持手段40aとによって実施されるので、この形態における支持部位付樹脂窓1の生産サイクルタイムXに問題はない。
【0053】
図6(b)は、樹脂窓1a(1次成形品)の成形サイクルタイムを1、支持部位付樹脂窓1(2次成形品)の成形サイクルタイムを2と想定した場合である。(1次成形品及び2次成形品の成形サイクルタイム比が1/2。)図6(b)に示すように、成形サイクルタイムの長い支持部位付樹脂窓1を成形する射出成形装置B(20)とC(30)との成形サイクル開始時間(又は成形サイクル完了時間)を1程相違させ、これらの2次成形に連動させて射出成形装置A(10)の成形サイクルを組み合わせると、最終製品である支持部位付樹脂窓1の生産サイクルタイムXは1となり、成形サイクルタイムの長い支持部位付樹脂窓1の成形サイクルタイム2の略1/2まで短くすることができる。この形態においても、図6(a)と同様、支持部位付樹脂窓1の生産サイクルタイムXに問題はない。
【0054】
図6(c)は、樹脂窓1a(1次成形品)の成形サイクルタイムを1、支持部位付樹脂窓1(2次成形品)の成形サイクルタイムを1.5と想定した場合である。(1次成形品及び2次成形品の成形サイクルタイム比が2/3。)図6(c)に示すように、成形サイクルタイムの長い支持部位付樹脂窓1を成形する射出成形装置B(20)とC(30)との成形サイクル開始時間(又は成形サイクル完了時間)を1程相違させ、これらの2次成形に連動させて射出成形装置A(10)の成形サイクルを組み合わせると、最終製品である支持部位付樹脂窓1の生産サイクルタイムXは1となり、成形サイクルタイムの長い支持部位付樹脂窓1の成形サイクルタイム1.5の略2/3まで短くすることができる。この形態においても、図6(a)と同様、支持部位付樹脂窓1の生産サイクルタイムXに問題はない。
【0055】
図6(a)、(b)に示すように、1次成形品及び2次成形品の成形サイクルタイム比が1/2以下の場合は、2次成形品の生産サイクルタイムを2次成形品の成形サイクルタイムの略1/2まで短くすることができる。ただし、図6(c)に示すように、1次成形品及び2次成形品の成形サイクルタイム比が1/2より大きい場合は、成形サイクルタイムの短い1次成形品を連続で成形しても、2次成形品の成形に間に合わず、2次成形に待ち時間が発生する。よって、2次成形品の生産サイクルタイムXを成形サイクルタイムの長い2次成形品の成形サイクルタイムより短くすることはできるものの、その短縮率は1/2より大きくなる。このように、本発明は1次成形品及び2次成形品の成形サイクルタイム比が1/2以下の場合に十分な効果を奏するものである。
【0056】
また、本発明の成形システムと異なり、1次成形品保持手段40aと2次成形品保持手段40bとが独立しておらず一体の場合は、保持手段自体が大型化し金型内での動作の自由度が低下する上、連続して行われる射出成形装置B(20)及びC(30)からの支持部位付樹脂窓1の取り出し(黒丸付矢印)と、射出成形装置B(20)及びC(30)への樹脂窓1aの挿入(白丸付矢印)において、1次成形品を保持したまま第2金型内に進入し、1次成形品の第2金型への挿入と、2次成形品の第2金型からの取り出しとを第2金型内で連続して行う、あるいは2次成形品を第2金型から取り出した後、1次成形品を第1金型から取り出し、第2金型へ挿入する必要があるため、金型内でのこれらの動作が困難であったり、時間がかかったりして、2次成形品の生産サイクルタイムXが長くなってしまう。そのため、1次成形品と2次成形品との成形サイクルタイム比が極端に大きい場合を除き、本発明の成形システムのように、1次成形品保持手段40aと2次成形品保持手段40bとは独立して金型間に挿入可能でなければならない。
【0057】
次に、本発明の実施例2について、図面を参照しながら説明する。
【実施例2】
【0058】
図7乃至図8を参照しながら本発明の実施例2を説明する。図7は本発明の実施例2に係る多層成形品を示す図である。図7(a)が平面図、図7(b)が図7(a)のI−I矢視における断面図である。図8は本発明の実施例2に係る多層成形品の成形方法の流れを示した図である。図8(a)は2次成形品及び1次成形品の成形サイクルタイム比が1/3の場合、図8(b)は同じく1/2の場合、図8(c)は同じく2/3の場合を示す。
【0059】
最初に、成形の対象となる多層成形品について説明する。実施例2においては、図7に示すようなディスプレイパネル4(2次成形品)を成形対象とする。ディスプレイパネル4は1次成形で成形された平板形状のパネル部4a(1次成形品)の内側周囲に、パネル支持部位4bを2次成形で積層させた多層成形品である。このようなディスプレイパネルは、液晶テレビ、プラズマテレビ、パソコン用液晶モニター等の意匠性向上のため、近年需要が増大している。素材は1次成形品、2次成形品共に実施例1の支持部位付樹脂窓と同様で、1次成形に射出圧縮成形等の成形後の歪みが少ない成形方法が採用される点も同様である。
【0060】
実施例2は、実施例1と異なり、射出成形装置A(10)で成形される2次成形品であるディスプレイパネル4の成形サイクルタイムより、射出成形装置B(20)及びC(30)で成形される1次成形品であるパネル部4aの成形サイクルタイムの方が長い場合を想定している。すなわち、ディスプレイパネル4(2次成形品)を成形する第2射出成形装置が射出成形装置A(10)、パネル部4a(1次成形品)を成形する第1射出成形装置が射出成形装置B(20)及び射出成形装置C(30)であり、射出成形装置B(20)及びC(30)で成形されたパネル部4aが、射出成形装置B(20)及びC(30)の間に配置された射出成形装置A(10)の1台に交互に供給され、この1台からディスプレイパネル4が生産される形態である。よって、実施例2においても、成形システム構成は実施例1で示した図2及び図3と同じであるが、図4に示す1次成形工程が射出成形装置A(10)ではなく射出成形装置B(20)及びC(30)により実施され、図5に示す2次成形工程が射出成形装置B(20)及びC(30)ではなく射出成形装置A(10)により実施される点と、成形の対象となる多層成形品とが実施例1と異なる。
【0061】
次に、本発明の実施例2に係る多層成形品の成形方法を説明する。図8は、本発明の実施例2に係る多層成形品の成形方法の流れを示した図である。実施例1で説明したのと同様に、図8中の矢印は各成形品の成形サイクルを示し、白丸付矢印はパネル部4a(1次成形品)の第1金型(射出成形装置B及びC)からの取り出しと第2金型(射出成形装置A)への挿入、黒丸付矢印はディスプレイパネル4(2次成形品)の第2金型(射出成形装置A)からの取り出しを示している。また、図8中の記号A、B、C、50及び60は、それぞれ射出成形装置A(10)、B(20)、C(30)、2次成形品搬出手段1(50)及び2次成形品搬出手段2(60)を示している。
【0062】
図8(a)は、射出成形装置A(10)により成形されるディスプレイパネル4(2次成形品)の成形サイクルタイムを1、射出成形装置B(20)及びC(30)により成形されるパネル部4a(1次成形品)の成形サイクルタイムを3と想定した場合である。(2次成形品及び1次成形品の成形サイクルタイム比が1/3。)図8(a)に示すように、成形サイクルタイムの長いパネル部4aを成形する射出成形装置B(20)及びC(30)の成形サイクル開始時間(又は成形サイクル完了時間)を1.5程相違させ、これらの1次成形に連動させて射出成形装置A(10)の成形サイクルを組み合わせると、最終製品であるディスプレイパネル4の生産サイクルタイムX、すなわち、前のディスプレイパネル4の成形完了から次のディスプレイパネル4の成形完了までのサイクルタイムは1.5となり、成形サイクルタイムの長いパネル部4aの成形サイクルタイム3の略1/2まで短くすることができる。ここで、パネル部4aの射出成形装置B(20)及びC(30)それぞれからの射出成形装置A(10)への挿入(白丸付矢印)は重複していないので、1台の1次成形品保持手段40aで実施可能である。また、連続して行われる射出成形装置A(10)からのディスプレイパネル4の取り出し(黒丸付矢印)と、射出成形装置A(10)へのパネル部4aの挿入(白丸付矢印)とは、独立した2次成形品保持手段40bと1次成形品保持手段40aとによって実施されるので、この形態におけるディスプレイパネル4の生産サイクルタイムXに問題はない。
【0063】
更にこの形態においては、射出成形装置B(20)及びC(30)の間に配置された射出成形装置A(10)によりディスプレイパネル4(2次成形品)が成形されるので、2次成形品搬出手段1(50)及び2次成形品搬出手段2(60)のいずれか一方の側にディスプレイパネル4の搬出を集約することで、2次成形品搬出手段1台でディスプレイパネル4を成形システム外へ搬出してもよい。
【0064】
図8(b)は、ディスプレイパネル4(2次成形品)の成形サイクルタイムを1、パネル部4a(1次成形品)の成形サイクルタイムを2と想定した場合である。(2次成形品及び1次成形品の成形サイクルタイム比が1/2。)図8(b)に示すように、成形サイクルタイムの長いパネル部4aを成形する射出成形装置B(20)及びC(30)との成形サイクル開始時間(又は成形サイクル完了時間)を1程相違させ、これらの2次成形に連動させて射出成形装置A(10)の成形サイクルを組み合わせると、最終製品であるディスプレイパネル4の生産サイクルタイムXは1となり、成形サイクルタイムの長いパネル部4aの成形サイクルタイム2の略1/2まで短くすることができる。この形態においても、図8(a)と同様、ディスプレイパネル4の生産サイクルタイムXに問題はない。
【0065】
図8(c)は、ディスプレイパネル4(2次成形品)の成形サイクルタイムを1、パネル部4a(1次成形品)の成形サイクルタイムを1.5と想定した場合である。(2次成形品及び1次成形品の成形サイクルタイム比が2/3。)図8(c)に示すように、成形サイクルタイムの長いパネル部4aを成形する射出成形装置B(20)及びC(30)との成形サイクル開始時間(又は成形サイクル完了時間)を1程相違させ、これらの2次成形に連動させて射出成形装置A(10)の成形サイクルを組み合わせると、最終製品であるディスプレイパネル4の生産サイクルタイムXは1となり、成形サイクルタイムの長いパネル部4aの成形サイクルタイム1.5の略2/3まで短くすることができる。この形態においても、図8(a)と同様、ディスプレイパネル4の生産サイクルタイムXに問題はない。
【0066】
図8(a)、(b)に示すように、2次成形品及び1次成形品の成形サイクルタイム比が1/2以下の場合は、2次成形品の生産サイクルタイムを2次成形品の成形サイクルタイムの略1/2まで短くすることができる。ただし、図8(c)に示すように、2次成形品及び1次成形品の成形サイクルタイム比が1/2より大きい場合は、成形サイクルタイムの短い2次成形品を連続で成形すると、成形サイクルタイムの長い1次成形品の成形が間に合わないため、2次成形品の生産サイクルタイムXを成形サイクルタイムの長い2次成形品の成形サイクルタイムより短くすることはできるものの、その短縮率は1/2より大きくなる。このように、本発明は2次成形品及び1次成形品の成形サイクルタイム比が1/2以下の場合に十分な効果を奏するものである。
【0067】
次に、本発明の実施例3について、図面を参照しながら説明する。
【実施例3】
【0068】
図9乃至図12を参照しながら本発明の実施例3を説明する。図9は本発明の実施例3に係る多層成形品を示す図である。図9(a)が斜視図、図9(b)が図9(a)のJ−J矢視における断面図である。図10は本発明の実施例3に係る多層成形品の成形システムの概略平面図である。図11は図10のY−Y矢視からの概略断面図である。図12は本発明の実施例3に係る多層成形品の成形方法の流れを示した図である。図12(a)は2次成形品及び1次成形品の成形サイクルタイム比が1/3の場合、図12(b)は同じく1/2の場合、図12(c)は同じく2/3の場合を示す。
【0069】
最初に、成形の対象となる多層成形品について説明する。実施例3においては、図9に示すような自動車用のテールゲート7(2次成形品)を成形対象とする。テールゲート7は、自動車のクーペ、ハッチバック、ワゴン等の車種のテールゲート(ハッチバックドア)であり、樹脂窓部を含めて一体成形された自動車用部材である。1次成形で成形されたテールゲート樹脂窓7a(1次成形品)の周囲に、テールゲートボディ7bを2次成形で積層させており、このような自動車の樹脂窓部を含むドア等を一体成形した樹脂製部品は、自動車の軽量化や組立工数の削減のため、近年需要が増大している。素材は1次成形品、2次成形品共に実施例1の支持部位付樹脂窓と同様で、1次成形に射出圧縮成形等の成形後の歪みが少ない成形方法が採用される点も同様である。実施例1及び実施例2の多層成形品と比較して、一般的に1次成形品、2次成形品共に成形品寸法が大きい。
【0070】
実施例3も、実施例2と同様に、射出成形装置A(10)で成形される2次成形品であるテールゲート7の成形サイクルタイムより、射出成形装置B(20)及びC(30)で成形される1次成形品であるテールゲート樹脂窓7aの成形サイクルタイムの方が長い場合を想定している。すなわち、テールゲート7(2次成形品)を成形する第2射出成形装置が射出成形装置A(10)、テールゲート樹脂窓7a(1次成形品)を成形する第1射出成形装置が射出成形装置B(20)及び射出成形装置C(30)であり、射出成形装置B(20)及びC(30)で成形されたテールゲート樹脂窓7aが、射出成形装置B(20)及びC(30)の間に配置された射出成形装置A(10)の1台に交互に供給され、この1台からテールゲート7が生産される形態である。
【0071】
図10は本発明の実施例3に係る多層成形品の成形システムの概略平面図であり、図11は図10のX−X矢視からの概略断面図である。前述の想定のとおり、テールゲート7(2次成形品)を成形する第2射出成形装置が射出成形装置A(10)、テールゲート樹脂窓7a(1次成形品)を成形する第1射出成形装置が射出成形装置B(20)及び射出成形装置C(30)である。
【0072】
ここで、成形の対象となる多層成形品以外の実施例3の実施例2との相違点は、図10及び図11に示すように、射出成形装置A(10)及びB(20)間、射出成形装置A(10)及びC(30)間それぞれに、成形品移動手段AB(45)及び成形品移動手段AC(46)のように成形品移動手段を分割して配置し、それぞれの射出成形装置間のみで1次成形品及び2次成形品の移動を行う点である。成形品移動手段AB(45)及び成形品移動手段AC(46)は、多関節ロボットであり、それぞれのロボットアームの先端に1次成形品保持手段40a及び2次成形品保持手段40bを備え、第1金型(射出成形装置B又はC)からテールゲート樹脂窓7a(1次成形品)を取り出し、第2金型(射出成形装置A)の所定位置に挿入すると共に、第2金型からテールゲート7(2次成形品)を取り出し、2次成形品搬出手段1(50)及び2次成形品搬出手段2(60)に搬出する。また、図10中の成形品移動手段AB(45)及び成形品移動手段AC(46)を中心とする円は、多関節ロボットのロボットアーム先端の最大可動範囲を示している。
【0073】
このような射出成形装置A(10)及びB(20)間、射出成形装置A(10)及びC(30)間それぞれに、成形品移動手段AB(45)及び成形品移動手段AC(46)のように成形品移動手段を分割して配置すると、成形システム全体の高さを低くすることができる。ただし、この場合は成形品移動手段AB(45)及び成形品移動手段AC(46)それぞれに、1次成形品保持手段40a及び2次成形品保持手段40bを装備しなければならない。実施例1の、1次成形品保持手段40aと2次成形品保持手段40bとが独立しておらず一体の場合で説明したように、1次成形品を保持したまま第2金型内に進入する必要はないが、保持手段自体が大型化し金型内での動作の自由度が低下する。
1次成形品保持手段40aと2次成形品保持手段40bとが独立しておらず一体の場合
【0074】
しかしながら、実施例3のように、これら成形品移動手段AB(45)及び成形品移動手段AC(46)に多関節ロボットを採用することにより、1次成形品の取り出し動作及び金型への挿入動作と、2次成形品の取り出し動作との自由度、位置精度及び繰り返し精度を向上させることができる。また、成形品移動手段AB(45)及び成形品移動手段AC(46)の多関節ロボットのロボットアーム先端に図示しないオートツールチャンジャー(ATC/自動工具交換装置)を装備し、それぞれの多関節ロボットが必要とする工程毎に、先端の1次成形品保持手段40a及び2次成形品保持手段40bを自動で交換するようにすれば、前述の保持手段自体が大型化する問題は解決することができ、多関節ロボットによる動作の自由度、位置精度及び繰り返し精度の向上効果を鑑みると、実施例3のように1次成形品、2次成形品共に成形品寸法が大きい成形品を扱うのに好ましい形態である。
【0075】
次に、本発明の実施例3に係る多層成形品の成形方法を説明する。図12は、本発明の実施例3に係る多層成形品の成形方法の流れを示した図である。実施例2で説明したのと同様に、図12中の矢印は各成形品の成形サイクルを示し、白丸付矢印はテールゲート樹脂窓7a(1次成形品)の第1金型(射出成形装置B及びC)からの取り出しと第2金型(射出成形装置A)への挿入、黒丸付矢印はテールゲート7(2次成形品)の第2金型(射出成形装置A)からの取り出しを示している。また、図8中の記号A、B、C、50、60、AB及びACは、それぞれ射出成形装置A(10)、B(20)、C(30)、2次成形品搬出手段1(50)、2次成形品搬出手段2(60)、成形品移動手段AB(45)及びAC(46)を示している。
【0076】
図12(a)は、射出成形装置A(10)により成形されるテールゲート7(2次成形品)の成形サイクルタイムを1、射出成形装置B(20)及びC(30)により成形されるテールゲート樹脂窓7a(1次成形品)の成形サイクルタイムを3と想定した場合である。(2次成形品及び1次成形品の成形サイクルタイム比が1/3。)図8(a)に示すように、成形サイクルタイムの長いテールゲート樹脂窓7aを成形する射出成形装置B(20)及びC(30)の成形サイクル開始時間(又は成形サイクル完了時間)を1.5程相違させ、これらの1次成形に連動させて射出成形装置A(10)の成形サイクルを組み合わせると、最終製品であるテールゲート7の生産サイクルタイムX、すなわち、前のテールゲート7の成形完了から次のテールゲート7の成形完了までのサイクルタイムは1.5となり、成形サイクルタイムの長いテールゲート樹脂窓7aの成形サイクルタイム3の略1/2まで短くすることができる。ここで、テールゲート樹脂窓7aの射出成形装置B(20)及びC(30)それぞれからの射出成形装置A10への挿入(白丸付矢印)は重複せず、また、射出成形装置A(10)からのテールゲート7の取り出し(黒丸付矢印)と、射出成形装置A(10)へのテールゲート樹脂窓7aの挿入(白丸付矢印)とは、それぞれ異なる成形品移動手段AB(45)及びAC(46)によって実施されるので、この形態におけるディスプレイパネル4の生産サイクルタイムXに問題はない。
【0077】
また、射出成形装置A(10)からのテールゲート7の取り出し(黒丸付矢印)と、射出成形装置A(10)へのテールゲート樹脂窓7aの挿入(白丸付矢印)との間には、0.5程の余裕があるので、サイクルタイム的に可能であれば、成形品移動手段AB(45)及びAC(46)のいずれか一方の多関節ロボットを使用し、実施例2と同様に、2次成形品搬出手段1(50)及び2次成形品搬出手段2(60)のいずれか一方の側にテールゲート7の搬出を集約することで、2次成形品搬出手段1台でテールゲート7を成形システム外へ搬出してもよい。
【0078】
図12(b)は、テールゲート7(2次成形品)の成形サイクルタイムを1、テールゲート樹脂窓7a(1次成形品)の成形サイクルタイムを2と想定した場合である。(2次成形品及び1次成形品の成形サイクルタイム比が1/2。)図12(b)に示すように、成形サイクルタイムの長いテールゲート樹脂窓7aを成形する射出成形装置B(20)及びC(30)との成形サイクル開始時間(又は成形サイクル完了時間)を1程相違させ、これらの1次成形に連動させて射出成形装置A(10)の成形サイクルを組み合わせると、最終製品であるテールゲート7の生産サイクルタイムXは1となり、成形サイクルタイムの長いテールゲート樹脂窓7aの成形サイクルタイム2の略1/2まで短くすることができる。この形態においても、図12(a)と同様、テールゲート7の生産サイクルタイムXに問題はない。
【0079】
図12(c)は、テールゲート7(2次成形品)の成形サイクルタイムを1、テールゲート樹脂窓7a(1次成形品)の成形サイクルタイムを1.5と想定した場合である。(2次成形品及び1次成形品の成形サイクルタイム比が2/3。)図12(c)に示すように、成形サイクルタイムの長いテールゲート樹脂窓7aを成形する射出成形装置B(20)とC(30)との成形サイクル開始時間(又は成形サイクル完了時間)を1程相違させ、これらの1次成形に連動させて射出成形装置A(10)の成形サイクルを組み合わせると、最終製品であるテールゲート7の生産サイクルタイムXは1となり、成形サイクルタイムの長いテールゲート樹脂窓7aの成形サイクルタイム1.5の略2/3まで短くすることができる。この形態においても、図8(a)と同様、テールゲート7の生産サイクルタイムXに問題はない。
【0080】
図12(a)、(b)に示すように、2次成形品及び1次成形品の成形サイクルタイム比が1/2以下の場合は、2次成形品の生産サイクルタイムを2次成形品の成形サイクルタイムの略1/2まで短くすることができる。ただし、図12(c)に示すように、2次成形品及び1次成形品の成形サイクルタイム比が1/2より大きい場合は、成形サイクルタイムの短い2次成形品を連続で成形すると、成形サイクルタイムの長い1次成形品の成形が間に合わないため、2次成形品の生産サイクルタイムXを成形サイクルタイムの長い2次成形品の成形サイクルタイムより短くすることはできるものの、その短縮率は1/2より大きくなる。このように、本発明は2次成形品及び1次成形品の成形サイクルタイム比が1/2以下の場合に十分な効果を奏するものである。
【0081】
本発明は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、上記の実施の形態に限定されることなく色々な形で実施できる。例えば、実施例1乃至実施例3において、射出成形装置A(10)、B(20)及びC(30)は横型射出成形装置であって、それぞれの射出ユニットが交互になるように配置する形態としたが、すべての射出成形装置の射出ユニットを揃えて配置する形態であってもよいし、各射出成形装置が竪型射出成形装置であってもよい。また、1次成形品及び2次成形品を固定金型及び可動金型のいずれの金型に残すか、あるいは、1次成形品を第2金型の固定金型及び可動金型のいずれの金型に挿入するか等は、1次成形品及び2次成形品の形状や大きさに基づいて適宜選択されるべきである。更に、成形後の歪みが少ない成形方法として、実施例1で示した射出圧縮成形方法以外にも、射出プレス成形方法等も1次成形品の形状や大きさに基づいて適宜、最適な成形方法が選択されるべきである。
【0082】
他には、実施例1において、成形品移動手段40が成形品移動手段支柱40cにより床面から支持されている形態としたが、成形品移動手段は、射出成形装置A(10)、B(20)及びC(30)の各固定プラテンから支持する形態でも、天井から支持する形態でもよい。また、実施例3において、成形品移動手段AB(45)及び成形品移動手段AC(46)の双方に多関節ロボットを採用する形態としたが、1次成形品保持手段40a及び2次成形品保持手段を同じ保持手段で兼用できるのであれば、成形品移動手段AB(45)及びAC(46)に既設の取出装置を流用する形態や、いずれか一方を多関節ロボット、他方を既設の取出装置の流用とする形態であってもよい。
【0083】
更に、実施例3のように、成形品移動手段を分割して配置する形態を、中央の射出成形装置A(10)により2次成形される形態に限定したが、1次成形品と2次成形品との成形サイクルタイム比が極端に大きい場合においては、両側の射出成形装置B(20)及びC(30)により2次成形される形態でもよい。また、1次成形品と2次成形品との成形サイクルタイム比が極端に大きい場合においては、射出成形装置A(10)、B(20)及びC(30)のいずれで2次成形するかによらず、成形品移動手段を分割せず、1次成形品保持手段40aと2次成形品保持手段40bとを備えた1台の多関節ロボットを、各射出成形装置の固定金型と可動金型が型開きされたその上方に配置された成形品移動手段40の水平構造体に沿って移動させる形態であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明に係る多層成形品の成形方法及び成形システムにより、1次成形品の成形サイクルタイム及び2次成形品の成形サイクルタイムのいずれが長い場合であっても、2次成形品の生産サイクルタイムを成形サイクルタイムが長い方の成形品の成形サイクルタイムより短くすることができ、特に、1次成形品及び2次成形品の成形サイクルタイム比が1/2以下の場合に十分な効果を奏することは説明したとおりである。更に、付け加えるならば、多層多色用の専用射出成形装置や専用金型が不要で、特殊機能等のない汎用の射出成形装置の組み合わせにより十分な効果を奏するものであるから、新たな設備投資を抑制することができる。また、本発明の成形システムは基本的にその構成のまま、それぞれの射出成形装置において単層単色成形が可能なので成形システムとしての汎用性が高く、樹脂成形品の製造業者にとって産業上利用価値が極めて高い。
【符号の説明】
【0085】
1 支持部位付樹脂窓(2次成形品)
4 ディスプレイパネル(2次成形品)
7 テールゲート(2次成形品)
10 射出成形装置A
20 射出成形装置B
30 射出成形装置C
40 成形品移動手段
40a 1次成形品保持手段
40b 2次成形品保持手段
45 成形品移動手段AB
46 成形品移動手段AC
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1金型が取り付けられた第1射出成形装置により成形された1次成形品を、第2射出成形装置に取り付けられた第2金型の所定位置に挿入し、前記第2射出成形装置により前記1次成形品表面の一部又は全面に溶融樹脂を積層させ2次成形品を成形する多層成形品の成形方法において、
前記第1射出成形装置による前記1次成形品の成形サイクルタイムと、前記第2射出成形装置による前記2次成形品の成形サイクルタイムとを比較して、
成形サイクルタイムが長い方の成形品を成形する複数の射出成形装置を備え、
前記複数の射出成形装置それぞれの成形サイクル開始時間又は成形サイクル完了時間を相違させ、前記第2射出成形装置により成形される前記2次成形品の生産サイクルタイムが最短、かつ毎サイクル同じになるように、成形サイクルタイムが短い方の成形品を成形する射出成形装置Aの成形サイクルタイムと、前記複数の射出成形装置それぞれの成形サイクルタイムと、前記射出成形装置A及び前記複数の射出成形装置それぞれの成形サイクル開始時間及び成形サイクル完了時間とが制御されることを特徴とする多層成形品の成形方法。
【請求項2】
成形サイクルタイムが短い方の成形品を成形する射出成形装置Aと、
前記射出成形装置Aの長手方向と直交する方向の両側に、前記射出成形装置Aの長手方向と略平行に配置された、成形サイクルタイムが長い方の成形品を成形する射出成形装置B及び射出成形装置Cと、
前記1次成形品を前記第1金型から取り出し、前記第2金型の所定位置へ挿入する1次成形品保持手段と、
前記2次成形品を前記第2金型から取り出す2次成形品保持手段と、
前記1次成形品保持手段と前記2次成形品保持手段とを支持し、前記射出成形装置A、B及びCのそれぞれに取り付けられた固定金型と可動金型との間へ、前記1次成形品保持手段と前記2次成形品保持手段とをそれぞれ独立して挿入させ、退避させる成形品移動手段とを備え、
前記射出成形装置B及びCそれぞれの成形サイクル開始時間又は成形サイクル完了時間を相違させ、前記第2射出成形装置により成形される前記2次成形品の生産サイクルタイムが最短、かつ毎サイクル同じになるように、前記射出成形装置A、B及びCそれぞれの成形サイクルタイムと、前記射出成形装置A、B及びCそれぞれの成形サイクル開始時間及び成形サイクル完了時間とが制御されることを特徴とする請求項1記載の多層成形品の成形方法。
【請求項3】
前記制御された成形サイクルタイムと、成形サイクル開始時間と、成形サイクル完了時間とに基づき、
前記1次成形品保持手段による前記1次成形品の前記第1金型からの取り出し工程と、
前記2次成形品保持手段による前記2次成形品の前記第2金型からの取り出し工程と、
前記1次成形品保持手段による前記1次成形品の前記第2金型の前記所定位置への挿入工程とのそれぞれに要する時間が補正され、
前記2次成形品の生産サイクルタイムが最短、かつ毎サイクル同じになるように制御されることを特徴とする請求項2記載の多層成形品の成形方法。
【請求項4】
第1金型が取り付けられた第1射出成形装置により成形された1次成形品を、第2射出成形装置に取り付けられた第2金型の所定位置に挿入し、前記第2射出成形装置により前記1次成形品表面の一部又は全面に溶融樹脂を積層させ2次成形品を成形する多層成形品の成形システムにおいて、
前記第1射出成形装置による前記1次成形品の成形サイクルタイムと、第2射出成形装置による前記2次成形品の成形サイクルタイムとを比較して、
成形サイクルタイムが短い方の成形品を成形する射出成形装置Aと、
前記射出成形装置Aの長手方向と直交する方向の両側に、前記射出成形装置Aの長手方向と略平行に配置された、成形サイクルタイムが長い方の成形品を成形する射出成形装置B及び射出成形装置Cと、
前記1次成形品を前記第1金型から取り出し、前記第2金型の所定位置へ挿入する1次成形品保持手段と、
前記2次成形品を前記第2金型から取り出す2次成形品保持手段と、
前記1次成形品保持手段と前記2次成形品保持手段とを支持し、前記射出成形装置A、B及びCのそれぞれに取り付けられた固定金型と可動金型との間へ、前記1次成形品保持手段と前記2次成形品保持手段とをそれぞれ独立して挿入させ、退避させる成形品移動手段とを備えたことを特徴とする多層成形品の成形システム。
【請求項5】
前記第1射出成形装置が前記射出成形装置A、前記第2射出成形装置が前記射出成形装置B及びCであることを特徴とする請求項4記載の多層成形品の成形システム。
【請求項6】
前記第2射出成形装置が前記射出成形装置A、前記第1射出成形装置が前記射出成形装置B及びCであることを特徴とする請求項4記載の多層成形品の成形システム。
【請求項7】
前記成形品移動手段が、前記射出成形装置A、B及びCの型締装置の上方に、装置長手方向と直交する方向に設けられた水平構造体から成ることを特徴とする請求項4乃至請求項6記載の多層成形品の成形システム。
【請求項8】
前記成形品移動手段が、前記射出成形装置A及びB間で成形品の移動を行う成形品移動手段ABと、前記射出成形装置A及びC間で成形品の移動を行う成形品移動手段ACとから成ることを特徴とする請求項6記載の多層成形品の成形システム。
【請求項9】
前記成形品移動手段AB及びACの少なくとも一方が多関節ロボットであることを特徴とする請求項8記載の多層成形品の成形システム。
【請求項10】
前記1次成形品の少なくとも一面が意匠性を必要とする樹脂成形品であることを特徴とする請求項4乃至請求項9記載の多層成形品の成形システム。
【請求項11】
前記1次成形品が透光性を有する樹脂成形品であることを特徴とする請求項4乃至請求項10記載の多層成形品の成形システム。
【請求項1】
第1金型が取り付けられた第1射出成形装置により成形された1次成形品を、第2射出成形装置に取り付けられた第2金型の所定位置に挿入し、前記第2射出成形装置により前記1次成形品表面の一部又は全面に溶融樹脂を積層させ2次成形品を成形する多層成形品の成形方法において、
前記第1射出成形装置による前記1次成形品の成形サイクルタイムと、前記第2射出成形装置による前記2次成形品の成形サイクルタイムとを比較して、
成形サイクルタイムが長い方の成形品を成形する複数の射出成形装置を備え、
前記複数の射出成形装置それぞれの成形サイクル開始時間又は成形サイクル完了時間を相違させ、前記第2射出成形装置により成形される前記2次成形品の生産サイクルタイムが最短、かつ毎サイクル同じになるように、成形サイクルタイムが短い方の成形品を成形する射出成形装置Aの成形サイクルタイムと、前記複数の射出成形装置それぞれの成形サイクルタイムと、前記射出成形装置A及び前記複数の射出成形装置それぞれの成形サイクル開始時間及び成形サイクル完了時間とが制御されることを特徴とする多層成形品の成形方法。
【請求項2】
成形サイクルタイムが短い方の成形品を成形する射出成形装置Aと、
前記射出成形装置Aの長手方向と直交する方向の両側に、前記射出成形装置Aの長手方向と略平行に配置された、成形サイクルタイムが長い方の成形品を成形する射出成形装置B及び射出成形装置Cと、
前記1次成形品を前記第1金型から取り出し、前記第2金型の所定位置へ挿入する1次成形品保持手段と、
前記2次成形品を前記第2金型から取り出す2次成形品保持手段と、
前記1次成形品保持手段と前記2次成形品保持手段とを支持し、前記射出成形装置A、B及びCのそれぞれに取り付けられた固定金型と可動金型との間へ、前記1次成形品保持手段と前記2次成形品保持手段とをそれぞれ独立して挿入させ、退避させる成形品移動手段とを備え、
前記射出成形装置B及びCそれぞれの成形サイクル開始時間又は成形サイクル完了時間を相違させ、前記第2射出成形装置により成形される前記2次成形品の生産サイクルタイムが最短、かつ毎サイクル同じになるように、前記射出成形装置A、B及びCそれぞれの成形サイクルタイムと、前記射出成形装置A、B及びCそれぞれの成形サイクル開始時間及び成形サイクル完了時間とが制御されることを特徴とする請求項1記載の多層成形品の成形方法。
【請求項3】
前記制御された成形サイクルタイムと、成形サイクル開始時間と、成形サイクル完了時間とに基づき、
前記1次成形品保持手段による前記1次成形品の前記第1金型からの取り出し工程と、
前記2次成形品保持手段による前記2次成形品の前記第2金型からの取り出し工程と、
前記1次成形品保持手段による前記1次成形品の前記第2金型の前記所定位置への挿入工程とのそれぞれに要する時間が補正され、
前記2次成形品の生産サイクルタイムが最短、かつ毎サイクル同じになるように制御されることを特徴とする請求項2記載の多層成形品の成形方法。
【請求項4】
第1金型が取り付けられた第1射出成形装置により成形された1次成形品を、第2射出成形装置に取り付けられた第2金型の所定位置に挿入し、前記第2射出成形装置により前記1次成形品表面の一部又は全面に溶融樹脂を積層させ2次成形品を成形する多層成形品の成形システムにおいて、
前記第1射出成形装置による前記1次成形品の成形サイクルタイムと、第2射出成形装置による前記2次成形品の成形サイクルタイムとを比較して、
成形サイクルタイムが短い方の成形品を成形する射出成形装置Aと、
前記射出成形装置Aの長手方向と直交する方向の両側に、前記射出成形装置Aの長手方向と略平行に配置された、成形サイクルタイムが長い方の成形品を成形する射出成形装置B及び射出成形装置Cと、
前記1次成形品を前記第1金型から取り出し、前記第2金型の所定位置へ挿入する1次成形品保持手段と、
前記2次成形品を前記第2金型から取り出す2次成形品保持手段と、
前記1次成形品保持手段と前記2次成形品保持手段とを支持し、前記射出成形装置A、B及びCのそれぞれに取り付けられた固定金型と可動金型との間へ、前記1次成形品保持手段と前記2次成形品保持手段とをそれぞれ独立して挿入させ、退避させる成形品移動手段とを備えたことを特徴とする多層成形品の成形システム。
【請求項5】
前記第1射出成形装置が前記射出成形装置A、前記第2射出成形装置が前記射出成形装置B及びCであることを特徴とする請求項4記載の多層成形品の成形システム。
【請求項6】
前記第2射出成形装置が前記射出成形装置A、前記第1射出成形装置が前記射出成形装置B及びCであることを特徴とする請求項4記載の多層成形品の成形システム。
【請求項7】
前記成形品移動手段が、前記射出成形装置A、B及びCの型締装置の上方に、装置長手方向と直交する方向に設けられた水平構造体から成ることを特徴とする請求項4乃至請求項6記載の多層成形品の成形システム。
【請求項8】
前記成形品移動手段が、前記射出成形装置A及びB間で成形品の移動を行う成形品移動手段ABと、前記射出成形装置A及びC間で成形品の移動を行う成形品移動手段ACとから成ることを特徴とする請求項6記載の多層成形品の成形システム。
【請求項9】
前記成形品移動手段AB及びACの少なくとも一方が多関節ロボットであることを特徴とする請求項8記載の多層成形品の成形システム。
【請求項10】
前記1次成形品の少なくとも一面が意匠性を必要とする樹脂成形品であることを特徴とする請求項4乃至請求項9記載の多層成形品の成形システム。
【請求項11】
前記1次成形品が透光性を有する樹脂成形品であることを特徴とする請求項4乃至請求項10記載の多層成形品の成形システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−173243(P2011−173243A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36826(P2010−36826)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(300041192)宇部興産機械株式会社 (268)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(300041192)宇部興産機械株式会社 (268)
【Fターム(参考)】
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