説明

多点変位検出装置

【課題】
多点で変位を同時に光学的に行おうとした場合、各種光学式変位計を多数用いる方法で多点の同時変位検出を行うことができるが、各センサはそれぞれ、レーザ等の光源、投射レンズ、受光レンズ、受光素子、処理回路、電源等を持ち、また、各センサの出力を受けるための多チャンネルAD回路や出力を処理するコンピュータおよびソフトウエアが必要であり、センサの数が多くなるほど非常に高コストになっていた。
【解決手段】
一端に色収差をもつレンズを備えた光ファイバと、他端に、一本が光源につながり、もう一本が検出器につながる光ファイバを備えた光ファイバカプラとを備えた多数のプローブと、多数のプローブの光源側の光ファイバを並べ、白色光または複数波長光を投入する光源と、多数のプローブの検出器側の光ファイバを並べ、そこに対向配置したカラーカメラとを備える多点変位検出装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多くの点で同時に高さ計測を行う多点変位検出装置に関するものである。。
【背景技術】
【0002】
従来、研究、開発、製造において、変位または変形を非接触で測定しモニタする必要のある場合が数多く存在している。例えば、非常に広い平面のそりを検出したり、円筒物体の真円形状を測ったり、複雑な形状の量産品の検査、あるいは磁気記憶装置、光学的組み立て、張力測定など、多点で計測を行うべき用途は多い。
【0003】
こういった変位の多点測定においては最も普通に使われるのが接触式の三次元測定機であるが、1度に1点しか測れず非常に時間もかかるものであった。そのため高速に非接触で変位を計測できる光学式変位計が製造現場等において多用されるようになっている。
【0004】
光学的変位計で最も普通に使われるのがレーザを用いた三角測量方式のものであり、レーザを投射し、斜め方向からみたレーザの反射光位置をPSD、CCDなどの位置検出器で検出して変位を測るものである。これらは小型化、量産化され、多数用いる場合には個々のアナログ出力を多チャンネルAD変換器でコンピュータに取り込み、多点計測処理をするのが一般的であった。
【0005】
この例を図5に示す。106はレーザを用いた三角測量式の変位計であり、101はレーザ、102は投光レンズ、103は受光レンズ、104は位置検出センサ、105は制御回路である。107は電源であり、変位計を動作させるのに必要である。109はA/Dボードであり、変位計106からでた信号をデジタル信号にしてコンピュータに取り込む。108はコンピュータである。110はソフトウエアであり、取り込んだデータを処理し、画像化等を行い、モニタ8に表示する。
【0006】
なお変位計の測定原理としては三角測量の他に共焦点原理のものがあり、ピンホールを光軸方向に振動させて変位を測定するものと、色収差のあるレンズを用いて分光して変位を測定するものがある。
【0007】
後者の色収差のあるレンズを用いる方法の例としては下記特許文献1の例があげられる。これは照明光を軸方向にスペクトル分割し、物体上へ焦点を合わせ、その際どの焦点にもある決まった波長が対応し、物体から反射した光はビームスプリッタを通じて分散素子上へ到達し、ここから光ダイオードアレイ上へ焦点合わせされる。光ダイオードアレイからの読み取り値によって最も強い信号を求め、物体表面の高さを算出するものである。
この方式には共焦点顕微鏡など様々なバリエーションがあり、下記特許文献の例が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】ドイツ特許GB2144537
【特許文献2】WO095000871
【特許文献3】特開平01−245215
【特許文献4】特表2000−512401
【特許文献5】特開2004−101532
【特許文献6】特表2007−536535
【特許文献7】特開2008−32668
【特許文献8】特開2008−268387
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
背景技術に記した光学式変位計を多数用いる方法で図5のように多点の同時変位検出を行うことができる。しかしながら、各センサはそれぞれ、レーザ等の光源、投射レンズ、受光レンズ、受光素子、処理回路、電源等を持ち、また、各センサの出力を受けるための多チャンネルAD回路や出力を処理するコンピュータおよびソフトウエアが必要であり、センサの数が多くなるほど非常に高コストになっていた。そこで、本発明はセンサが多数でも構成部品点数が少なく非常に低コストに製作できる多点変位検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、一端に色収差をもつレンズを備えた光ファイバと、他端に、一本が光源につながり、もう一本が検出器につながる光ファイバを備えた光ファイバカプラとを備えた多数のプローブと、多数のプローブの光源側の光ファイバを並べ、白色光または複数波長光を投入する光源と、多数のプローブの検出器側の光ファイバを並べ、そこに対向配置したカラーカメラとを備える多点変位検出装置とした。
【0011】
また、このとき、多数のプローブの検出器側の光ファイバを検出対象を表現するように並べる多点変位検出装置とした。
【0012】
また、一端に色収差をもつレンズを備えた光ファイバと、他端に、一本が光源につながり、もう一本が検出器につながる光ファイバを備えた光ファイバカプラとを備えた多数のプローブと、多数のプローブの光源側の光ファイバを並べ、白色光または複数波長光を投入する光源と、多数のプローブの検出器側の光ファイバを1列に並べ、光ファイバからでた光を光ファイバの並び方向の直交方向へ分光する分光器と、分光された光を結像する手段と、結像された光を検知する2次元カメラとを備える多点変位検出装置とした。
【発明の効果】
【0013】
上記のように構成することにより、どんなに多点であっても増えるのは光ファイバとカプラとレンズで構成されたプローブのみであり、光源、電源、カメラ、モニタとも1個で済むため非常に低コストの多点同時変位測定が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例1における多点変位検出装置の3点の場合の構成図である。
【図2】本発明の実施例1における多点変位検出装置を平面測定に適用した場合の構成図である。
【図3】本発明の実施例1における多点変位検出装置を外径測定に適用した場合の構成図である。
【図4】本発明の実施例2における分光検出系を説明するための図である。
【図5】背景技術で構成した多点変位検出装置の3点の場合の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0015】
図1に、本発明の実施例1における多点変位検出装置の3点の場合の構成図を示す。全体は複数のプローブ10と、一つの検出部11と、ひとつのモニタ8で構成されている。
【0016】
プローブ10は光ファイバ2と色収差をもつレンズ1で構成されている。光ファイバ2から出た光は色収差をもつレンズ1で集光されるが色収差をもつためその集光位置は波長により異なる。例として図に赤R、緑G、青Bの光線を記した。対象物体9上に光が当たった時集光されている色は位置により異なり、(a)、(b)では緑Gが、(c)では赤Rが集光されている。
【0017】
対象物体9で反射された光はレンズ1を逆に戻り、光ファイバ2に入射する。ここで実際に光ファイバ2に戻れるのは対象物体9上で集光されている色のみである。他の色は対象物体9上では光点の径が大きいため、光ファイバ2の入口に戻った時も光点の径が大きく、ごくわずかしか光ファイバ2に入射しない。
【0018】
一方、検出部11は光源5、カプラ3、カラーカメラ7およびそれぞれをつなぐ光ファイバ4、6で構成されている。なおカプラ3、光ファイバ4、6はプローブ数と同数必要であるため、プローブの一部と考えてよい。光源5はこの例では白色光源であり、ハロゲンランプやキセノンランプが用いられる。光源5の光は光ファイバ4に投入され、プローブ10に伝達され、上記で説明した機能が行われる。光ファイバカプラ3は光ファイバ4により伝達された光源からの光を光ファイバ2に伝達し、光ファイバ2から戻ってきた光を光ファイバ6に伝達する。
【0019】
光ファイバ6の出力光はカラーカメラ7に入射する。カラーカメラ7は検知画像をモニタ8に出力する。プローブ10からの検知光は(a)、(b)からの場合は緑が、(c)からは赤が戻ってきているので、モニタ8にはその並び順通り、緑G、緑G、赤Rとなって表示される。
【0020】
このモニタを見ている検査者はその色を見て対象物体9のうち1点が他と違うことを認識できる。このようにして多点同時の変位検出が行われる。なお検査結果を数値化したい場合にはカメラの出力をコンピュータに入力し、色画像処理をすることにより数値化することができる。この処理はごく簡単なものである。なおコンピュータで処理する場合にはカメラは1次元のカラーカメラでもよい。その場合には応答をかなり速くすることができる。
【0021】
以上はわかりやすくするために3点による検出例をあげたが、同様な構成で簡単にプローブを増やすことができる。また、変位の標準値を同じ色にしておけばプローブがいくら増えても人間の目で色違いは簡単に認識できる。また、カメラ部における光ファイバの並び方を実際に検査する物体を表現するようにしておけば不良位置の認識も素早くできることになる。また、光源の波長範囲を工夫すれば異常値のみを表示することもできる。
【0022】
図2は本発明の実施例1における多点変位検出装置を平面測定に適用した場合の構成図である。71はカラーカメラ内のCCD等の撮像素子を表している。なお、カプラ3、光源5、光ファイバ4は本図では省略している。対象平面91上のプローブa〜iの並び方とカメラ上のファイバ6の撮像素子71上の並び方を同じにしておくことにより、モニタ8の画面上にて対象平面上の異常点を一目で判断することができる。本図ではプローブiの部分が異常であることを示している。
【0023】
図3は本発明の実施例1における多点変位検出装置を外径測定に適用した場合の構成図である。図2の場合と同様に、対象円筒物体92の外径上のプローブ位置と撮像素子71上のファイバ6の位置関係を同じにしておくことにより、モニタ8の画面上にて異常点を一目で判断することができる。本図ではプローブhに異常があった場合を示している。
【0024】
プローブを増やす場合に必要なのはプローブ10、カプラ3、光ファイバ2,4、6であり、プローブ10への配線も光ファイバ2が増えるだけである。プローブ10内にはレンズ1があるだけである。背景技術とくらべ、光源、レンズ、検出素子、制御回路、電源、A/Dボード、コンピュータ、ソフトウエア等が不要であるため従来の光学的変位計に比べ多点検出時のコストは大きく低減される。
【実施例2】
【0025】
図4は本発明の実施例2における分光検出系を説明するための図である。プローブ10からの検知光が、紙面の垂直方向に一列に整列された光ファイバ6から出射される。この検知光はコリメータレンズ61で平行光化され、回折格子62により分光され、集光レンズ63により、カメラ7の撮像素子71面上に集光される。
【0026】
回折格子により色に応じた角度に変換されるので撮像素子71上の集光位置は色によって位置が変わることになる。よってプローブ10の検知した変位に従ってモニタ8上の光点の上下の高さが変わることになる。なお回折格子でなく分散プリズムであっても同様に可能である。
【0027】
このとき検出された変位はモニタ8上の光点の位置によりわかるのでカメラ7はカラーカメラでなく白黒カメラでもかまわない。しかしカラーカメラとして色情報も表示させた方が検出結果の表現力としては優れている。
【0028】
一方、この画像をコンピュータに入力し、画像処理により、光点位置をデータ化することもできる。この場合は白黒カメラの方が位置情報の精度が上がるので望ましい。なお画像の上下の位置情報を変位に変換することは光切断法等で一般に行われていて容易である。
【0029】
なお、この実施例2の場合、多点で透明膜厚も測ることができる。透明膜の場合、膜の上と下の2点で反射した光が戻ってくるため、光ファイバ6の出射光に波長が二つ含まれることになる。これを分光すると膜の上と下に相当する色と位置に分離されるのでこれをモニタで見る、あるいはコンピュータで処理することにより多点の膜厚を検出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上詳細に説明したように本発明によれば非常に簡単な構成で、また、低コストで多点の同時変位検出を行うことができるので、製造現場のあらゆるところでの変位検出に用いることができ、産業上非常に有用である。
【符号の説明】
【0031】
1 レンズ
2 プローブ用光ファイバ
3 カプラ
4 光源用光ファイバ
5 光源
6 カメラ用光ファイバ
7 カメラ
8 モニタ
9 対象物体
10 プローブ
11 検出部
61 コリメータレンズ
62 回折格子
63 集光レンズ
71 撮像素子
91 平面物体
92 円筒物体
101 レーザ
102 投光レンズ
103 受光レンズ
104 位置検出素子
105 制御回路
106 三角測量式変位計
107 電源
108 コンピュータ
109 A/D変換器
110 ソフトウエア
R 赤色光
G 緑色光
B 青色光


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に色収差をもつレンズを備えた光ファイバと、他端に、一本が光源につながり、もう一本が検出器につながる光ファイバを備えた光ファイバカプラとを備えた多数のプローブと、多数のプローブの光源側の光ファイバを並べ、白色光または複数波長光を光ファイバに投入する光源と、多数のプローブの検出器側の光ファイバを並べ、そこに対向配置したカラーカメラとを備えることを特徴とする多点変位検出装置。
【請求項2】
多数のプローブの検出器側の光ファイバを検出対象を表現するように並べることを特徴とする請求項1の多点変位検出装置。
【請求項3】
一端に色収差をもつレンズを備えた光ファイバと、他端に、一本が光源につながり、もう一本が検出器につながる光ファイバを備えた光ファイバカプラとを備えた多数のプローブと、多数のプローブの光源側の光ファイバを並べ、白色光または複数波長光を光ファイバに投入する光源と、多数のプローブの検出器側の光ファイバを1列に並べ、光ファイバからでた光を光ファイバの並び方向の直交方向へ分光する分光器と、分光された光を結像する手段と、結像された光を検知する2次元カメラとを備えたことを特徴とする多点変位検出装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−17552(P2011−17552A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160743(P2009−160743)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(599032981)オプトウエア株式会社 (9)
【Fターム(参考)】