説明

多相力率改善回路

【課題】多相交流を直流変換する駆動系をプラス側とマイナス側に分けて制御することにより制御系を簡単にして性能向上、小型化及び低コスト化を図る。
【解決手段】制御回路12は、各相の交流入力端子R,S,Tと中点電位Pとの電位差を検出し、電位差がプラスであれば入力電流波形が入力電圧波形に相似形になるようにプラス側インバータ回路10−1のインバータ素子18をスイッチング制御し、電位差がマイナスであれば入力電流波形が入力電圧波形に相似形になるようにマイナス側インバータ回路10−2のインバータ素子28をスイッチング制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多相交流電力から直流電力に変換する際に力率を改善する多相交流力率改善回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入力した3相交流電力を高力率に制御して直流電力に変換するアクティブフィルタ回路として知られた力率改善回路としては、例えば図8に示すものがある。
【0003】
図8において、R,S,Tは交流入力端子、P,Nは直流出力端子、L1,L2,L3はリアクトル、D1〜D18はダイオード、S1〜S3は各相のスイッチング素子、C1,C2はコンデンサである。ここで、リアクトルL1,L2,L3、ダイオードD1〜D18、スイッチング素子S1〜S3、及びコンデンサC1,C2で構成されるインバータは、昇圧チョッパを構成している。
【0004】
図8の従来回路の動作は次のようになる。例えばスイッチング素子S1,S2をオンすることで、R→L1→D1→S1→D8→D9→S2→D4→L2→S→Rの経路で電流が流れ、リアクトルL1,L2にエネルギーが蓄積される。さらに、S2がオンの状態でS1をオフすると、R→L1→D1→D13→C1→D9→S2→D4→L2→S→Rの経路でリアクトルL1,L2のエネルギーはコンデンサC1に充電される。
【0005】
一方、S1がオンの状態でS2をオフすると、R→L1→D1→S1→D8→C2→D16→D4→L2→S→Rの経路で電流が流れ、L1,L2のエネルギーはコンデンサC2に充電される。
【0006】
また、S1,S2の両方がオフ状態になると、R→L1→D1→D13→C1→C2→D16→D4→L2→S→Rの経路で電流が流れ、L1,L2のエネルギーはコンデンサC1,C2の両方に充電される。
【0007】
このようなスイッチング動作を繰り返すことにより、交流入力電圧の波形に交流入力電流の波形を相似形とし、入力電流を高力率に制御しながら交流電圧を直流電圧に変換することができる。また、スイッチング素子S1〜S3のオン時間を調整することで、2つのコンデンサC1,C2の電圧を個別に調整することができる。
【0008】
しかし、図8の従来回路にあっては、半導体素子(スイッチング素子とダイオード)の通過数が、リアクトルにエネルギーを蓄える場合に6つ、コンデンサC1またはC2を個別に充電する場合に5つ、コンデンサC1,C2の両方を同時に充電する場合に4つとなる。
【0009】
このため電流が通過する素子数が多く、半導体素子におけるエネルギー損失も大きくなってしまうことから、これを改善するため図9の従来回路が提案されている(特許文献2)。
【0010】
図9の3相交流力率改善回路において、R,S,Tは交流入力端子、P,Nは直流出力端子、L1,L2,L3はリアクトル、S1〜S6はMOSFETからなるスイッチング素子、D1〜D12はダイオード、C1,C2はコンデンサである。
【0011】
図9の従来回路の動作は次のようになる。例えばスイッチング素子S2,S3をオンさせた場合、R→L1→S2→D2→D3→S3→L2→S→Rの経路で電流が流れ、リアクトルL1,L2にエネルギーが蓄積される。
【0012】
S3がオンの状態でS2をオフすると、R→L1→S1の寄生ダイオード→D7→C1→D3→S3→L2→S→Rの経路で電流が流れ、コンデンサC1が充電される。また、S2がオンの状態でS3をオフすると、R→L1→S2→D2→C2→D10→S4の寄生ダイオード→L2→S→Rの経路で電流が流れ、コンデンサC2が充電される。
【0013】
更に、S2,S3を同時にオフすると、R→L1→S1の寄生ダイオード→D7→C1→C2→D10→S4の寄生ダイオード→L2→S→Rの経路で電流が流れ、コンデンサC1,C2が同時に充電される。
【0014】
このようなスイッチング動作を繰り返すことにより、交流入力電圧の波形に交流入力電流の波形を相似形とし、入力電流を高力率に制御しながら交流電圧を直流電圧に変換することができる。ここで、電流が通過する半導体素子は、リアクトルにエネルギーを蓄える場合に4つ、コンデンサC1またはC2に充電する場合に4つとなり、図9の回路よりも少なくすることができる。
【特許文献1】特許第2857094号公報
【特許文献2】特許第4051875号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、このような従来の3相交流力率改善回路にあっては、例えば図9の従来装置にあっては、三相交流電圧の大小関係から360°の位相角の範囲を60°の制御位相に分け、各相毎に設けた双方向スイッチ回路から一方のスイッチング素子を選択して制御するという複雑な制御を行っており、スイッチング素子を選択する切換回路が複雑化し、回路規模が大きく、コスト的に高価になるという問題がある。
【0016】
また、入力ダイオードの前段にチョークコイルが存在するため、スイッチング素子のオン、オフに伴ってチョークコイルに流れるリップル電流は安全規格品で構成される平滑用のコンデンサに流す必要があるが、安全規格品のコンデンサは安全規格品でないコンデンサに比べると流せるリップル電流(許容リップル電流値)が小さいため、大きなコンデンサを使用する必要があり、装置の大型化とコストアップの原因となっている。
【0017】
また、チョークコイルから出力側のコンデンサに流れるリップル電流の経路が長くなって経路から発生する漏れ磁束が大きくなるため、リップル電流による高周波成分が入力端子や出力端子に飛び込んで外部にノイズが伝送する量が増加する。
【0018】
また、リップル電流自体を小さくするためにチョークコイルのインダクタンスを大きな値にしなければならないため、チョークコイルが大型化する問題もある。
【0019】
更に、力率改善制御に使用する交流入力電流としてチョークコイルに流れる電流をチョークコイルにカレントトランスを直列接続することで直接検出しているため、商用交流周波数となる低周波まで測定可能な電流検出を行うため、低周波でも飽和しない大きなコアを用いたカレントトランスを設けなければならず、カレントトランスが大型化するという問題もある。
【0020】
本発明は、多相交流を直流変換する際の力率改善における駆動系をプラス側とマイナス側に分けて制御することにより制御系を簡単にして性能向上、小型化及び低コスト化を図るようにした多相交流力率改善回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、入力した多相交流電力を高力率に制御して直流電力に変換する力率改善回路に於いて、
多相交流の各相の交流電力を入力する複数の交流入力端子と、
各相の交流入力端子の電位と多相交流をスター接続した場合の中点電位に対しプラス電位となる交流入力を整流する第1入力整流器と、
各相の交流入力端子に加わる中点電位に対しマイナス電位となる交流入力を整流する第2入力整流器と、
各相の第1入力整流器に続いて中点電位に対しプラス側回路として設けられた第1チョークコイル、第1インバータ素子、第1出力整流器及び第1平滑コンデンサを備えたプラス側インバータ回路と、
各相の第2入力整流器に続いて中点電位に対しマイナス側の回路として設けられた第2チョークコイル、第2インバータ素子、第2出力整流器及び第2平滑コンデンサを備えたマイナス側インバータ回路と、
各相のプラス側インバータ回路とマイナス側インバータ回路のプラス側整流出力、中点電位、マイナス側整流出力の各々を合成し、第1平滑コンデンサとを第2平滑コンデンサを中点電位を介して直列接続した回路に接続してコンデンサ両端からを負荷側に直流電力を出力する平滑出力回路と、
各相の交流入力端子と中点電位との電位差を検出し、電位差がプラスであればプラス側インバータ回路を入力電流波形が入力電圧波形に相似形になるようにスイッチング制御し、電位差がマイナスであればマイナス側インバータ回路を入力電流波形が入力電圧波形に相似形になるようにスイッチング制御する各相の制御回路と、
を設けたことを特徴とする。
【0022】
ここで、第1インバータ回路及び第2インバータ回路を昇圧チョッパ回路とする。
【0023】
本発明の多相交流力率改善回路は、更に、
第1入力整流器と前記プラス側インバータ回路の第1チョークコイルの間から中点電位との間に接続されたリップル電流を流す第1リップル用コンデンサと、
第2入力整流器とマイナス側インバータ回路の第2チョークコイルの間から中点電位との間に接続されたリップル電流を流す第2リップル用コンデンサと、
を設ける。
【0024】
制御回路部は、
平滑出力回路のプラス側の平滑コンデンサの直流電圧を直流出力電圧として検出する出力電圧検出回路と、
交流入力端子に加わる交流電圧と中点電位との電位差を交流入力電圧として検出する入力電圧検出回路と、
第1チョークコイルと第2チョークコイルに流れる電流を交流入力電流として検出する入力電流検出回路と、
直流出力電圧を所定電圧に保つと同時に、交流入力電流の波形が交流入力電圧の波形に相似形になるようにインバータ素子をスイッチングする制御信号を出力するスイッチング制御回路と、
交流入力端子の交流電圧と中点電位との電位差を検出し、電位差がプラスであればスイッチング制御回路の制御信号をプラス側インバータ回路に切替出力して第1インバータ素子のみを駆動し、電位差がマイナスであればスイッチング制御回路の制御信号をマイナス側インバータ回路に切換出力して第2インバータ素子のみを駆動する切換回路と、
を備える。
【0025】
入力電流検出回路は、
第1インバータ素子に1次巻線が直列接続され、第1インバータ素子のオンにより第1チョークコイルから第1インバータ素子に流れる電流を検出する第1カレントトランスと、
第2出力整流器に1次巻線が直列接続され、第1インバータ素子のオフにより第1チョークコイルから第1出力整流器に流れる電流を検出する第2カレントトランスと、
第2インバータ素子に1次巻線が直列接続され、第2インバータ素子のオンにより第2インバータ素子から第2チョークコイルに流れる電流を検出する第3カレントトランスと、
第2出力整流器に1次巻線が直列接続され、第1インバータ素子のオフにより第2出力整流器から第2チョークコイルに流れる電流を検出する第4カレントトランスと、
第1乃至第4カレントトランスの各2次巻線をダイオードオアにより合成接続して抵抗に電流検出信号を生成する電流検出回路と、
を備える。
【0026】
また、入力電流検出回路の別の形態にあっては、
第1インバータ素子と第2出力整流器の各々に直列接続された2つの1次巻線を備え、第1インバータ素子のオンにより第1チョークコイルから第1インバータ素子に流れる電流と、第1インバータ素子のオフにより第1チョークコイルから第1出力整流器に流れる電流を検出する第1カレントトランスと、
第2インバータ素子と第2出力整流器の各々に直列接続された2つの1次巻線を備え、第2インバータ素子のオンにより第2インバータ素子から第2チョークコイルに流れる電流と、第1インバータ素子のオフにより第2出力整流器から第2チョークコイルに流れる電流を検出する第2カレントトランスと、
第1及び第2カレントトランスの各2次巻線をダイオードオアにより合成接続して抵抗に電流検出信号を生成する電流検出回路と、
を備える。
【0027】
入力電圧検出回路は、
交流入力端子と中点電位の間に接続されて両者の電位差を分圧して入力する抵抗分圧回路と、
抵抗分圧回路から入力した交流電位差を全波整流信号に変換してスイッチング制御回路に交流入力電圧として出力する絶対値回路と、
を備える。
【0028】
制御回路は、
直流出力電圧を1/2に分圧した出力分圧電圧を基準電圧として、基準電圧に対する中点電圧の電位差を検出して絶対値回路の入力に加え、電位差をなくして第1及び第2平滑コンデンサの両端電圧を等しくするようにスイッチング制御回路に電位差でオフセットされた交流入力電圧を加える。
【0029】
第1インバータ回路の第1チョークコイルと第2インバータ回路の第2チョークコイルを、単一のコアに巻かれた1個のチョークコイルとする。
【0030】
各相の第1入力整流器はサイリスタであり、
サイリスタと並列にダイオードと電流制限抵抗の直列回路を接続した突入電流防止回路と、
各相のサイリスタに対し設けられ、多相交流電源の投入時にサイリスタをオフとし、投入から所定時間を経過したときにサイリスタをオンするサイリスタ駆動回路と、
を備える。
【0031】
また、別の形態にあっては、
各相の第1入力整流器はサイリスタであり、
各相のサイリスタのアノードをダイオードを介して合成接続した後に電流制限抵抗を介して第1平滑コンデンサのプラス側に接続した突入電流防止回路と、
各相のサイリスタに対し設けられ、多相交流電源の投入時にサイリスタをオフとし、投入から所定時間を経過したときにサイリスタをオンするサイリスタ駆動回路と、
を備える。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、例えば3相交流を例にとると、3相交流をスター接続した場合の中点電位から見た各相の交流入力端子に対しプラス側インバータ回路とマイナス側インバータ回路を設け、中点電位から見た交流入力電圧がプラスの場合はプラス側インバータ回路のみを駆動し、マイナスの場合はマイナス側インバータ回路のみを駆動するため、インバータ素子の切換えが簡単となり、これに伴いインバータ素子を選択して切換える制御回路も簡単となり、主回路及び制御回路を含めて回路全体としての小型化と低コスト化を図ることができる。
【0033】
また、各相の入力整流器とチョークコイルとの間から中点電位の間にリップル電流吸収用のコンデンサを設けたことで、チョークコイルからコンデンサに流れるリップル電流の経路、即ちリップル電流のループを短くすることができ、経路から発生する漏れ磁束を抑制し、入力端子や出力端子にリップル電流による高周波成分が飛び込んで外部に伝送するノイズを低減できる。
【0034】
また、入力整流器の直後にリップル電流吸収用のコンデンサを設けたことで、従来の安全規格品を必要とした平滑コンデンサによるリップル電流の吸収に対し、安全規格品に囚われることなく大きなリップル電流を流すことのできるコンデンサ、即ちリップル許容電流値の大きなコンデンサをリップル電流の吸収用に設けることができ、コンデンサを小型軽量化することができる。
【0035】
また、リップル電流定格の大きなコンデンサを使用できることから、チョークコイルのインダクタンス値を小さくしてリップル電流が増したことによる悪影響を緩和できるため、より小型のチョークコイルを用いることで全体の小型化と低コスト化ができる。
【0036】
また、チョークコイルのリップル電流を小さくできることから、より高い周波数による高周波動作が実現でき、これに伴う小型化と低コスト化ができる。
【0037】
また、力率改善制御に使用する入力電流の検出として、チョークコイルに流れる電流を直接検出するのではなく、インバータ素子のオンでインバータ素子に流れる電流と、インバータ素子のオフで出力整流器に流れる電流とをカレントトランスにより別々に検出して合成することで、従来の低周波までの検出を必要としたコアの大きなカレントトランスではなく、コアの小さな高周波用のカレントトランスを使用することができ、全体の小型化と低コスト化ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
図1は本発明による力率改善回路の第1実施形態を示した回路ブロック図であり、多相交流として3相交流を例に取っている。
【0039】
図1において、本実施形態の力率改善回路にあっては、3相交流電力を入力する交流入力端子R,S,Tを有し、各相ごとに交流電力を高効率に制御して直流電力に変換する力率改善制御のための駆動系と制御系を設けている。
【0040】
例えば交流入力端子Rを例に取ると、交流入力端子Rに対しては、3相交流をスター接続した場合の中点電位Pに対しプラス電位となる交流入力を整流する第1整流器としてのサイリスタ14と、中点電位に対しマイナス電位となる交流入力を整流する第2整流器としての入力ダイオード24を接続している。
【0041】
サイリスタ14の出力側にはプラス側インバータ回路としてプラス側昇圧チョッパ回路10−1が設けられ、また入力ダイオード24の出力側にはマイナス側インバータ回路としてのマイナス側昇圧チョッパ回路10−2が設けられている。
【0042】
プラス側昇圧チョッパ回路10−1は、チョークコイル16、MOS−FETを用いたインバータ素子18、第2出力整流器としての出力ダイオード20、及び第1平滑コンデンサとしてのコンデンサ22で構成される。
【0043】
一方、マイナス側昇圧チョッパ回路10−2は、チョークコイル26、MOS−FETを用いたインバータ素子28、第2出力整流器としての出力ダイオード30、及び第2平滑コンデンサとしてのコンデンサ32を備えている。
【0044】
プラス側昇圧チョッパ回路10−1とマイナス側昇圧チョッパ回路10−2は制御回路12により制御される。制御回路12で力率改善のための制御を行うため、プラス側昇圧チョッパ回路10−1及びマイナス側昇圧チョッパ回路10−2における交流入力電圧、交流入力電流及び直流出力電圧を検出して、制御回路12に入力している。
【0045】
交流入力電圧の検出は、交流入力端子Rと中点電位P点の信号ラインとの間に直列接続された抵抗54,56による分圧電圧を入力し、これに基づいて検出している。
【0046】
一方、入力電流はチョークコイル16,26に流れる平均電流として検出することができるが、本実施形態にあっては、チョークコイル16,26に流れるチョーク電流を直接検出するのではなく、インバータ素子18のオン、オフに伴って異なる経路で流れる電流を検出して合成することで、交流入力電流を得るようにしている。
【0047】
即ちプラス側昇圧チョッパ回路10−1にあっては、インバータ素子18と直列に第1カレントトランス1次巻線58−1を接続し、インバータ素子18のオンによりチョークコイル16からインバータ素子18に流れる電流を検出している。また出力ダイオード20と直列に第2カレントトランス1次巻線60−1を接続し、インバータ素子18のオフに伴ってチョークコイル16から出力ダイオード20に流れる電流を検出している。
【0048】
またマイナス側昇圧チョッパ回路10−2にあっては、インバータ素子28と直列に第3カレントトランス1次巻線62−1を直列接続し、インバータ素子28のオンに伴いチョークコイル26に流れる電流を検出し、また出力ダイオード30と直列に第4カレントトランス1次巻線64−1を接続し、インバータ素子28のオフに伴ってチョークコイル26に向かって出力ダイオード30から流れる電流を検出するようにしている。
【0049】
このような4つのカレントトランス1次巻線58−1,60−1,62−1,64−1に対応して、制御回路12側に設けている4つのカレントトランスの2次巻線に各検出電流に応じた検出電圧が誘起され、4つの2次巻線のダイオードオアによる合成として、プラス側昇圧チョッパ回路10−1とマイナス側昇圧チョッパ回路10−2に流れる交流入力電流を検出するようにしている。
【0050】
更に制御回路12は、プラス側の平滑用のコンデンサ22の両端電圧を抵抗46,48の直列回路による分圧電圧として検出し、この分圧電圧を直流出力電圧として入力することで、予め定めた設定電圧となるように出力電圧を制御する定電圧制御を行っている。
【0051】
制御回路12は、中点電位Pに対する交流入力端子Rに加わる交流電圧がプラスの場合に、プラス側昇圧チョッパ回路10−1のドライブ回路66にスイッチング信号を出力し、交流入力電流を交流入力電圧の相似形となるようにスイッチング制御することで力率改善を図る。
【0052】
また制御回路12は、中点電位Pに対する交流入力端子Rに加わる交流電圧がマイナスの場合に、マイナス側昇圧チョッパ回路10−2のドライブ回路68にスイッチング信号を出力し、インバータ素子28のスイッチングにより、同じく交流入力電圧のマイナス期間において交流入力電流が交流入力電圧と相似形になるようにスイッチング制御して、力率を改善する。
【0053】
ここで、プラス側昇圧チョッパ回路10−1における入力側のサイリスタ14とチョークコイル16との間から中点電位Pの信号ラインとの間には、リップル吸収用コンデンサ38を接続している。同様にマイナス側昇圧チョッパ回路10−2についても、入力ダイオード24とチョークコイル26との間から中点電位Pの信号ラインとの間にリップル吸収用コンデンサ40を接続している。
【0054】
このようにチョークコイル16,26の入力側から中点電位に対しリップル吸収用コンデンサ38,40を接続したことで、インバータ素子18のスイッチングによりチョークコイル16に流れるリップル電流の経路、即ちリップル電流ループを小さくすることができる。
【0055】
例えばプラス側昇圧チョッパ回路10−1にあっては、リップル電流ループとして、チョークコイル16、インバータ素子18及びリップル旧収容コンデンサ38となる短いループが形成され、その結果、リップル電流ループの面積を最小にすることができる。
【0056】
この点はマイナス側昇圧チョッパ回路10−2についても同様であり、インバータ素子28のスイッチングに伴うチョークコイル26に発生するリップル電流のリップル電流ループは、インバータ素子28、チョークコイル26及びリップル吸収用コンデンサ40となる最小ループで構成される。
【0057】
このように交流入力の整流後にチョークコイル16,26に流れるリップル電流に対しリップル吸収用コンデンサ38,40が接続されたことで、従来、リップル電流の吸収に使用していた出力側の平滑用のコンデンサ22,32として安全規格品を必要としていたが、本発明にあっては、専用のリップル吸収用コンデンサ38,40を接続したことで、安全規格品に捉われることなく、リップル電流定格の大きなコンデンサを使用することができ、平滑用のコンデンサ22,32をリップル電流定格を大きくするために大型のコンデンサとする必要がない。
【0058】
またリップル電流定格の大きなリップル吸収用コンデンサ38,40を使用できたことで、チョークコイル16,26のインダクタンスを小さくして、リップル電流が増したことによる悪影響を緩和でき、そのため小型のチョークコイル16,26を用いることができる。
【0059】
またチョークコイル16,26に流れるリップル電流ループを短くできたことで、漏洩磁束により入力端子や出力端子にノイズが伝送される割合が大幅に低減し、その結果、インバータ回路をより高周波動作させることができ、高周波動作に伴い、インバータ回路に使用する素子を小さくできることで、全体として小型化を図ることができる。
【0060】
更に、プラス側の第1入力整流器であるサイリスタ14に対しては、ダイオード34と電流制限抵抗36を直列接続した突入電流防止回路を並列接続している。サイリスタ14に対してはサイリスタ駆動回路15が設けられており、交流電源の投入時にサイリスタ駆動回路15はサイリスタ14をオフとしており、このため交流入力端子Rに加わる交流電圧はダイオード34で整流され、電流制限抵抗36を通って、制限された電流として平滑用のコンデンサ22,32に流れ、コンデンサ22,32の電圧が安定した所定時間後に、サイリスタ制御回路15はサイリスタ14をオンすることで突入電流を防止している。
【0061】
残りの交流入力端子S,Tに対する回路構成も交流入力端子Rに対する回路構成と同じであることから、同じ符号で表している。相違点は、交流入力端子R,S,Tの出力平滑回路として共通の平滑用のコンデンサ22,32に各相のプラス側昇圧チョッパ回路10−1及びマイナス側昇圧チョッパ回路10−2の出力を合成して接続している点である。
【0062】
即ち、出力側に設けた平滑用のコンデンサ22,32の直列回路のプラス側中点電位P及びマイナス側のそれぞれに対し、交流入力端子R,S,Tに対応して設けているプラス側昇圧チョッパ回路10−1とマイナス側昇圧チョッパ回路10−2のプラス側中点電位及びマイナス側を合成して接続している。
【0063】
そして、平滑用のコンデンサ22,32の直列回路のプラス側とマイナス側の両端電圧を直流出力端子+V,GNDとして、ここから負荷に直流電力を出力するようにしている。
【0064】
図2は図1の実施形態における中点電位Pから見た3相交流の入力電圧を示した波形図である。図1の交流入力端子R,S,Tのそれぞれには、図2に示すように120°の位相差を持った交流電圧Er,Es,Etが加わっている。
【0065】
3相の交流入力電圧Er,Es,Etに対し、各相の制御回路12は、交流入力電圧がプラスの場合はプラス側昇圧チョッパ回路10−1をスイッチングし、マイナスの場合はマイナス側昇圧チョッパ回路10−2をスイッチングしている。
【0066】
このような各相の制御回路12によるスイッチングにより、3相交流入力端子R,S,Tの間における交流入力電流の経路は、図2の360°で示す1周期につき60°ごとのA〜Lで示す12の区間に分けて電流経路が変化する。
【0067】
例えば区間Aにあっては、交流電圧Et,Erがプラス側で交流電圧Etが大きく、交流電圧Esがマイナス側であることから、それぞれの交流電圧のプラス側かマイナス側かに応じた昇圧チョッパ回路のスイッチングに伴い、交流入力端子T,Rから交流入力端子Sに向かって交流入力電流が流れる。
【0068】
即ち、第1の経路は次のようになる。
(T)→(T相昇圧チョッパ回路10−1)→(22)→(P)→(S相昇圧チョッパ回路10−2)→(S)
もう1つの経路は次のようになる。
(R)→(R相昇圧チョッパ回路10−1)→(22)→(P)→(S相昇圧チョッパ回路10−2)→(S)
残りの区間B〜Lについても同様に、プラス側の電圧となっている交流入力端子からマイナス側となっている交流入力端子に向かい、各相の交流電圧のプラスとマイナスに応じたプラス側及びマイナス側の昇圧チョッパ回路10−1,10−2のスイッチング動作に伴い、交流入力電流が流れる。
【0069】
図3は図1の交流入力端子Rについて制御回路12の詳細を示した回路ブロック図である。図3において、制御回路12には、スイッチング制御回路70、切替回路72、切替制御回路73、入力電圧検出回路74、入力電流検出回路76及びバランス制御回路78が設けられている。
【0070】
スイッチング制御回路70は、プラス側昇圧チョッパ回路10−1とマイナス側昇圧チョッパ回路10−2に設けているインバータ素子18,28に対しスイッチング信号を出力し、交流入力端子Rに対する交流入力電圧に相似形となるように交流入力電流の波形をスイッチング制御し、力率改善を図る。またスイッチング制御回路70は同時に、直流出力電圧を所定の一定電圧に制御するための出力電圧安定化制御を行っている。
【0071】
スイッチング制御回路70の入力側には誤差増幅器80が設けられる。誤差増幅器80はプラス側の平滑用のコンデンサ22の両端電圧を抵抗46,48により分圧して出力電圧として入力し、基準電圧源82との誤差電圧を出力する。誤差増幅器80の応答特性は帰還回路に設けた抵抗84とコンデンサ86で設定され、比較的緩やかな低周波応答性を設定している。
【0072】
誤差増幅器80に続いては乗算器88が設けられている。乗算器88は、誤差増幅器80からの誤差電圧と、入力電圧検出回路74で検出した交流入力電圧とを乗算し、抵抗90を介して誤差増幅器92に入力している。誤差増幅器92の帰還回路には高周波成分を除去するためのコンデンサ94が設けられる。
【0073】
誤差増幅器92には入力電流検出回路76からの交流入力電流の検出信号が入力しており、両者の誤差電圧をコンパレータ96に出力している。コンパレータ96には三角波発生回路98が接続されており、誤差増幅器92からの誤差電圧をスライスレベルとして、三角波信号との比較により誤差信号が増加するとオンデューティが増加し、誤差信号が低下するとオンデューティが減少するスイッチング信号を出力する。
【0074】
コンパレータ96からのスイッチング信号は、切替回路72を介してプラス側のドライブ回路66またはマイナス側のドライブ回路68に出力される。切替回路72は切替制御回路73により切替制御される。
【0075】
切替制御回路73には、交流入力端子Rと中点電位Pの信号ラインとの間に直列接続した抵抗54,56の分圧による分圧電圧が抵抗104を介して入力しており、また中点電位Pの信号ラインが抵抗106を介して入力し、それぞれコンパレータ112に入力している。
【0076】
コンパレータ112の入力側にはダイオード108,110を逆極性に接続したダイオードリミッタが設けられている。抵抗54,56の分圧回路からは分圧された交流電圧が入力し、この交流入力電圧は中点電位に対する正負の電圧信号であり、ダイオードリミッタ108,110でリミッタされた後に増幅されることで、交流信号のプラス区間とマイナス区間に応じた矩形パルス信号を出力する。
【0077】
このため、コンパレータ112からプラス側に対応したHレベル出力が得られると、切替回路72は図示のようにa側に切り替わり、スイッチング制御回路70からのスイッチング制御信号をプラス側のドライブ回路66に出力し、インバータ素子18のスイッチングにより、プラス側昇圧チョッパ回路10−1を交流入力電圧Erがプラス側の間スイッチング制御して、交流入力電圧を直流電圧に高力率制御により変換する。
【0078】
一方、交流入力電圧がプラス側となると、切替制御回路73のコンパレータ112の出力はLレベルとなり、切替回路72はb側に切り替えられ、スイッチング制御回路70からのスイッチング信号はマイナス側のドライブ回路68に供給され、インバータ素子28のスイッチングによりマイナス側昇圧チョッパ回路10−2を駆動し、交流入力電圧Erのマイナス区間に亘り、交流入力電力を直流電力に高力率で変換する力率改善制御を行う。
【0079】
入力電圧検出回路74は、交流入力端子Rと中点電位Pの信号線の間に設けた抵抗54,56の直列回路による分圧電圧を抵抗100を介して絶対値回路102に入力し、交流電圧の絶対値信号を交流入力電圧検出信号として乗算器88の一方に入力している。絶対値回路102は交流電圧を中点電位に対しプラス側に反転させる、いわゆる全波整流回路として動作する。
【0080】
入力電流検出回路76は、プラス側昇圧チョッパ回路10−1及びマイナス側昇圧チョッパ回路10−2に設けている4つのカレントトランス1次巻線58,60,62,64に対応して4つのカレントトランス2次巻線58−2,60−2,62−2,64−2を備えており、それぞれと直列にダイオード114,116,118,120を接続してダイオードオアを構成しており、このダイオードオアの出力を合成して電流検出抵抗122に接続している。
【0081】
このため電流検出抵抗122には4つのカレントトランスで検出された電流検出信号の合成電圧が生成し、これをスイッチング制御回路70の誤差増幅器92に交流入力電流の検出信号として加えている。
【0082】
本実施形態にあっては、交流入力電流を検出するためチョークコイル16,26に直接カレントトランスを接続してチョーク電流を検出するのではなく、インバータ素子18,28と出力ダイオード20,30のそれぞれに分けてカレントトランスを設けて、合成検出により交流入力電流を検出している。
【0083】
このため4つのカレントトランスはインバータ素子18,28のスイッチング周波数に同期した電流信号を伝送すればよく、従来、交流周波数までの低周波検知を必要とすることでコアが大型化していたカレントトランスに比べ、高周波検知でよいことから、カレントトランスの数は4台となっても小型のカレントトランスを使用することができ、全体としての小型化を図ることができる。
【0084】
バランス制御回路78は、直流出力電圧に対する平滑用のコンデンサ22,32を直列接続した中点電位Pの変動を抑えるように制御する。バランス制御回路78には誤差増幅器132が設けられ、誤差増幅器132の一方に中点電位P即ちコンデンサ22,32の接続点の電位を抵抗124を介して入力し、誤差増幅器132の他方には直流出力電圧を同じ値の抵抗50,52で分圧したVout/2を基準電圧として入力している。
【0085】
また誤差増幅器132の入力側には、ダイオード128,130を逆極性に接続したダイオードリミッタが設けられる。誤差増幅器132の応答特性は帰還回路に設けたコンデンサ134と抵抗136で決まり、平滑用のコンデンサ22,32に発生する商用周波数のリップル電圧では応答しないようにカットオフ周波数を設定している。
【0086】
バランス制御回路78は次のように動作する。コンデンサ22,32に対する充填電圧が等しい安定状態にあっては、中点電位Pと直流出力電圧の半分となる(Vout/2)は一致しており、誤差増幅器132の誤差電圧はゼロとなっている。
【0087】
この状態でインバータ回路のスイッチングデューティのばらつきなどにより中点電位Pが増加したとすると、誤差増幅器132はプラスの誤差電圧を出力する。バランス制御回路78の出力は入力電圧検出回路74の絶対値回路102の入力に抵抗137を介して接続されており、バランス制御回路78から出力された誤差電圧で絶対値回路102から出力される入力電圧検出信号を直流的にオフセットさせ、この場合にはプラス側に増加させる。
【0088】
このため、乗算器88に対する交流入力電圧の検出信号がバランス制御回路78による誤差電圧分だけプラス側にオフセットされ、スイッチング制御回路72のコンパレータ96からはオンデューティを増加させたスイッチング制御信号が出力される。
【0089】
このとき交流入力電圧Erがプラス側であれば、図示のようにドライブ回路66に対しスイッチ制御信号を出力し、インバータ素子18をオンオフ制御し、オンデューティが大きいことから、コンデンサ22の充電電圧を増加させる。これによって、増加した中点電位Pがコンデンサ22の充電電圧の増加に伴って低下し、出力電圧の半分となる(Vout/2)に安定化されることになる。
【0090】
このようなバランス制御回路78の動作により、コンデンサ22,32を直列接続した中点電位Pは、常にコンデンサ22,32の直列回路の両端から出力される直流出力電圧の2分の1の電圧に安定化されるバランス制御が行われる。
【0091】
図4は図3の入力電圧検出回路74に設けている絶対値回路102の具体的な実施形態を示した回路図である。図4(A)の絶対値回路は、オペアンプ138,140、抵抗142,148,150及びダイオード144,146で構成され、抵抗142の抵抗値をR1、抵抗150の抵抗値をR2とすると
R1=R2
となる必要条件の下に、交流入力電圧を全波整流波形に変換する絶対値動作を行う。
【0092】
図4(B)の絶対値回路は、オペアンプ152、抵抗154,156,158,164、及びダイオード160,162で構成され、抵抗154の抵抗値をR1、抵抗158の抵抗値をR2とすると
R1=R2
となる必要条件の下に、交流入力電圧を全波整流波形に変換する絶対値動作を行う。即ち、オペアンプ152は入力信号の絶対値の反転信号を出力する。
【0093】
図4(C)の絶対値回路は、オペアンプ166,168、抵抗170,172,178,180,182及びダイオード174,176で構成される。
ここで抵抗170の抵抗値をR1、抵抗172の抵抗値をR2、抵抗178の値をR3、抵抗180の値をR4、抵抗182の値をR5とすると、
R1=R2,R3=R5,R4=R3/2
となる必要条件の下に、交流入力電圧を全波整流した波形に変換する絶対値動作が行われる。
【0094】
図5は図3の制御回路12に設けた切替回路72の実施形態を切替制御回路73と共に示した回路図である。
【0095】
図5において、切替回路72には差動接続されたトランジスタ184,186、MOS−FETを用いたゲートスイッチ202,204、及び抵抗188,190,192,194,196,200が設けられている。
【0096】
切替回路72のトランジスタ184のベースには、切替制御回路73に設けているコンパレータ112の出力が、抵抗188,190の入力回路を介して接続される。
【0097】
切替制御回路73のコンパレータ112は、交流入力端子Rと中点電位Pとの間に接続した抵抗54,56による分圧電圧を抵抗104を介して入力し、ダイオード108,110のダイオードリミッタでスライスすることにより、交流波形のプラス期間でHレベル、マイナス期間でLレベルとなる矩形パルス波形を出力している。
【0098】
コンパレータ112の出力が交流電圧波形のプラス期間に対応してHレベルの場合、トランジスタ184がオンし、このため差動接続したトランジスタ186がオフとなる。トランジスタ184,186のコレクタにはゲートスイッチ202,204のゲートGが接続されている。
【0099】
トランジスタ184がオンになるとゲートスイッチ204はオフとなり、一方、トランジスタ186がオフとなることでゲートスイッチ202がオンとなる。ゲートスイッチ202,204のドレイン側には、スイッチング制御回路70に設けたコンパレータ96からのスイッチング信号が入力しており、このときオンとなっているゲートスイッチ202を介して、プラス側のドライブ回路66にスイッチング信号を供給する。
【0100】
一方、交流入力端子Rの交流電圧がマイナスの半サイクルになるとコンパレータ112の出力がLレベルに反転し、トランジスタ184がオフ、トランジスタ186がオンとなる。このためゲートスイッチ202がオフ、ゲートスイッチ204がオンとなり、オンとなったゲートスイッチ204を介して、コンパレータ96からのスイッチング信号はマイナス側のドライブ回路68に供給されることになる。
【0101】
ここで、図3に示している例えば交流入力端子Rのプラス側昇圧チョッパ回路10−1とマイナス側昇圧チョッパ回路10−2にあっては、切替回路72を使用せずに、スイッチング制御回路70からのスイッチング信号を両方のドライブ回路66,68に直接入力して、インバータ素子18,28を同時にスイッチングしても、交流入力電圧がプラス側の場合はプラス側昇圧チョッパ回路10−1が動作し、マイナス側の場合はマイナス側昇圧チョッパ回路10−2が動作し、交流入力電圧のプラスとマイナスに応じた切替は基本的には必要ない。
【0102】
しかしながら、例えば交流入力電圧がプラス側で、プラス側昇圧チョッパ回路10−1のインバータ素子18をオン、オフしながら、同時にマイナス側のインバータ素子28をオン、オフした場合、交流入力電圧がプラス側にあることから、インバータ素子28をオン、オフしても、チョークコイル26、入力ダイオード24となる経路で電流が流れることはないが、マイナス側のインバータ素子28をオン、オフ動作するだけでドライブ回路68でドライブ電力が消費され、またマイナス側に設けている出力ダイオード30もインバータ素子28のオンオフに合わせて逆電圧の印加を受けることでリカバリ損失が発生する。
【0103】
そこで本実施形態にあっては、切替回路72を設けることで、交流入力電圧がプラスの場合はプラス側のみを動作し、マイナス側については動作しないようにすることで、動作しない側のドライブ回路のドライブ電力の消費と、動作しない側の出力ダイオードに逆電圧を加えないようにしてリカバリ電圧の発生を防ぐようにしている。
【0104】
このように本実施形態にあっては、図5に示す切替回路72を設けたことで、交流入力電圧がプラスであればプラス側に設けたプラス側昇圧チョッパ回路10−1のみを駆動し、マイナス側であればマイナス側昇圧チョッパ回路10−2のみを駆動するドライブ切替えを行うことで、昇圧チョッパ回路の動作モードである連続モード、不連続モード、あるいは臨界モードや、スパイク電圧のためにダイオードやインバータ素子に設けるスナバ回路の構成に依存することなく、交流入力電圧に対しプラス側とマイナス側に分けて回路構成して動作する構成の力率改善回路の簡潔な構成と、プラス側とマイナス側で相互に干渉のない安定した動作を行わせることができる。
【0105】
なお、図4及び図5の回路は一例であり、実際の製品化に際しては、更に高精度の回路を使用することが可能である。
【0106】
図6はカレントトランスを共通コアとした本発明の第2実施形態を交流入力端子R側について示した回路ブロック図である。図6において、交流入力端子Rに続くプラス側昇圧チョッパ回路10−1とマイナス側昇圧チョッパ回路10−2における回路構成は、カレントトランス以外については図3の実施形態と同じである。
【0107】
図6の第2実施形態にあっては、プラス側及びマイナス側の交流入力電流を検出するためのカレントトランスを、図3の実施形態における4台から2台で構成するようにしている。
【0108】
即ち、プラス側のインバータ素子18に接続したカレントトランス1次巻線206−1と、マイナス側のインバータ素子28に直列接続したカレントトランス1次巻線206−2は、同じカレントトランスのコア206に分かれており、コア206に対し共通に、入力電流検出回路76に示すカレントトランス2次巻線206−3を設けている。
【0109】
またプラス側の出力ダイオード20に接続したカレントトランス1次巻線208−1と、マイナス側の出力ダイオード30に接続したカレントトランス2次巻線208−2は、同じコア208に分かれており、コア208に対しては入力電流検出回路76に示すカレントトランス2次巻線208−3が設けられている。
【0110】
このように、図3において設けていた4台のカレントトランスを、図6の実施形態にあっては2台とすることができる理由は、次の通りである。
【0111】
図6の実施形態にあっては、スイッチング制御回路70からのスイッチング信号は、切替回路72により、交流入力電圧のプラス側の場合はプラス側昇圧チョッパ回路10−1に出力され、マイナス側の場合はマイナス側昇圧チョッパ回路10−2に出力され、それぞれのインバータ素子18,28は同時にスイッチングされることはない。
【0112】
このためインバータ素子18,28のオンによりカレントトランス1次巻線206−1,206−2に同時に電流が流れることはなく、交流入力電圧のプラス側とマイナス側の異なるタイミングで別々に電流が流れることになる。
【0113】
したがって、インバータ素子18,28に接続しているカレントトランス1次巻線206−1,206−2は、同時に電流を検出する必要がないため、同じコア206に1次巻線として設けることができ、カレントトランス2次巻線206−3についても、別々に電流が検出されることで1つに共通化することができ、これによって、図3の実施形態でインバータ素子18,28のそれぞれに設けていた2台のカレントトランスを、図6の実施形態にあっては1台とすることができる。
【0114】
同様に出力ダイオード20,30に接続しているカレントトランス1次巻線208−1,208−2についても、交流入力電圧のプラス側とマイナス側で、インバータ素子18,28がオフしたときに別々に電流が流れることから、コア208を共通とし、且つコア208に対し共通にカレントトランス2次巻線208−3を設け、これによって、図3の実施形態で2台であったカレントトランスを1台のカレントトランスとすることができる。
【0115】
入力電流検出回路76にあっては、2台のカレントトランスに対するカレントトランス2次巻線206−3,208−3に対し、ダイオード210,212を直列接続してダイオードオアとし、このダイオードオアの出力を合成して電流検出抵抗214に接続することで、スイッチング制御回路70に対し、プラス側昇圧チョッパ回路10−1のスイッチングで流れる交流入力電流、及びマイナス側昇圧チョッパ回路10−2のスイッチングで流れる直流入力電流を検出して入力するようにしている。
【0116】
なお図6にあっては、図3の実施形態に対し、出力ダイオード20,30に対するカレントトランス1次巻線208−1,208−2の位置が左右入れ替わっているが、これはどちらであってもよい。
【0117】
図7は2個のチョークコイルのコアを共通化して1個とした本発明の第3実施形態を示した回路ブロック図である。図7にあっては、交流入力端子R,S,Tに対する制御回路を除くプラス側昇圧チョッパ回路10−1とマイナス側昇圧チョッパ回路10−2を示している。
【0118】
交流入力端子R,S,Tに対するサイリスタ14及び入力ダイオード24、リップル吸収用コンデンサ38,40、及びプラス側昇圧チョッパ回路10−1,マイナス側昇圧チョッパ回路10−2、更に出力側の平滑用コンデンサ22,32は、図1の実施形態と同じであるが、チョークコイル16,26について、コア216を共通とすることで、図1にあっては2つのチョークコイルを設けていたものを、図7の実施形態にあっては1つのチョークコイルとすることで全体としての小型化を達成している。
【0119】
また図7の実施形態にあっては、図1で交流入力端子R,S,Tのサイリスタ14に個別に設けていた突入電流防止回路を、共通回路として設けている。即ち、交流入力端子R,S,Tに設けているサイリスタ14のアノード側からダイオード34を介して分岐し、ダイオード34のカソード側を共通接続して電流制限抵抗36に接続し、電流制限抵抗36の2次側を信号線216により出力側の平滑コンデンサ22,32のプラス側に接続している。
【0120】
このような突入電流防止回路の共通化は、サイリスタ駆動回路15に対し、チョークコイル16,26のサブ巻線を用いて動作用のサブ電源の供給を行っていない回路であれば実現可能である。
【0121】
なお上記の実施形態にあっては、昇圧インバータ回路として昇圧チョッパ回路を例に取るものであったが、本発明はこれに限定されず、これ以外に極性反転型の昇降圧型のチョッパ回路、あるいは極性非反転となる昇降型のチョッパ回路を用いることができる。
【0122】
また上記の実施形態は多相交流として3相交流を例に取るものであったが、3相以外の多相交流についても同様に適用することができる。
【0123】
また上記の実施形態にあっては、サイリスタ14、入力ダイオード24、インバータ素子18,28、及び出力ダイオード20,30に加わるスパイク電圧を吸収するためのスナバ回路については省略しているが、必要に応じて適宜の回路構成を持つスナバ回路を設けることになり、スナバ回路の構成は適宜の回路でよい。
【0124】
また本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】本発明による力率改善回路の第1実施形態を示した回路ブロック図
【図2】図1の実施形態における中点電位から見た3相交流の入力電圧を示した波形図
【図3】図1の交流入力端子Rについて制御回路の詳細を示した回路ブロック図
【図4】図3の絶対値回路の実施形態を示した回路ブロック図
【図5】図3の切換制御回路及び切換回路の実施形態を示した回路ブロック図
【図6】カレントトランスを共通コアとした本発明の第2実施形態を交流入力端子Rについて示した回路ブロック図
【図7】2個のチョークコイルのコアを共通化して1個とした本発明の第3実施形態を示した回路ブロック図
【図8】昇圧チョッパを用いた従来の三相交流力率改善回路を示したブロック図
【図9】昇圧チョッパを用いた従来の三相交流力率改善回路の他の例を示したブロック図
【符号の説明】
【0126】
10−11,21,31:プラス側昇圧チョッパ回路
10−12,22,32:マイナス側昇圧チョッパ回路
12−1〜12−3:制御回路
14:サイリスタ
16:チョークコイル
18:インバータ素子
20:出力ダイオード
22:コンデンサ
24:入力ダイオード
26:チョークコイル
28:インバータ素子
30:出力ダイオード
32:コンデンサ
34:ダイオード
36:電流制限抵抗
38,40,42,44:リップル吸収用コンデンサ
58−1,60−1,62−1,64−1:カレントトランス1次巻線
58−2,60−2,62−2,64−2:カレントトランス2次巻線
66,68:ドライブ回路
70:スイッチング制御回路
72:切換回路
73:切換制御回路
74:入力電圧検出回路
76:入力電流検出回路
78:バランス制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力した多相交流電力を高力率に制御して直流電力に変換する力率改善回路に於いて、
多相交流の各相の交流電力を入力する複数の交流入力端子と、
前記各相の交流入力端子の電位と前記多相交流をスター接続した場合の中点電位に対しプラス電位となる交流入力を整流する第1入力整流器と、
前記各相の交流入力端子に加わる前記中点電位に対しマイナス電位となる交流入力を整流する第2入力整流器と、
前記各相の第1入力整流器に続いて前記中点電位に対しプラス側回路として設けられた第1チョークコイル、第1インバータ素子及び第1出力整流器を備えたプラス側インバータ回路と、
前記各相の第2入力整流器に続いて前記中点電位に対しマイナス側の回路として設けられた第2チョークコイル、第2インバータ素子及び第2出力整流器を備えたマイナス側インバータ回路と、
前記各相のプラス側インバータ回路とマイナス側インバータ回路のプラス側整流出力、中点電位、マイナス側整流出力の各々を合成し、第1平滑コンデンサと第2平滑コンデンサを中点電位を介して直列接続した回路に接続してコンデンサ両端から負荷側に直流電力を出力する平滑出力回路と、
前記各相の交流入力端子と前記中点電位との電位差を検出し、前記電位差がプラスであれば前記プラス側インバータ回路を入力電流波形が入力電圧波形に相似形になるようにスイッチング制御し、前記電位差がマイナスであれば前記マイナス側インバータ回路を入力電流波形が入力電圧波形に相似形になるようにスイッチング制御する各相の制御回路と、
を設けたことを特徴とする多相交流力率改善回路。
【請求項2】
請求項1記載の多相交流力率改善回路に於いて、前記第1インバータ回路及び第2インバータ回路を昇圧チョッパ回路としたことを特徴とする多相交流力率改善回路。
【請求項3】
請求項1記載の多相交流力率改善回路に於いて、更に、
前記第1入力整流器と前記プラス側インバータ回路の第1チョークコイルの間から前記中点電位との間に接続されたリップル電流を流す第1リップル用コンデンサと、
前記第2入力整流器と前記マイナス側インバータ回路の第2チョークコイルの間から前記中点電位との間に接続されたリップル電流を流す第2リップル用コンデンサと、
を設けたことを特徴とする多相交流力率改善回路。
【請求項4】
請求項1記載の多相交流力率改善回路に於いて、前記制御回路は、
前記平滑出力回路のプラス側の平滑コンデンサの直流電圧を直流出力電圧として検出する出力電圧検出回路と、
前記交流入力端子に加わる交流電圧と前記中点電位との電位差を交流入力電圧として検出する入力電圧検出回路と、
前記第1チョークコイルと第2チョークコイルに流れる電流を交流入力電流として検出する入力電流検出回路と、
前記直流出力電圧を所定電圧に保つと同時に、前記交流入力電流の波形が前記交流入力電圧の波形に相似形になるように前記インバータ素子をスイッチングする制御信号を出力するスイッチング制御回路と、
前記交流入力端子の交流電圧と前記中点電位との電位差を検出し、前記電位差がプラスであれば前記スイッチング制御回路の制御信号を前記プラス側インバータ回路に切替出力して第1インバータ素子のみを駆動し、前記電位差がマイナスであれば前記スイッチング制御回路の制御信号を前記マイナス側インバータ回路に切換出力して第2インバータ素子のみを駆動する切換回路と、
を備えたことを特徴とする多相交流力率改善回路。
【請求項5】
請求項4記載の多相交流力率改善回路に於いて、前記入力電流検出回路は、
前記第1インバータ素子に1次巻線が直列接続され、前記第1インバータ素子のオンにより前記第1チョークコイルから第1インバータ素子に流れる電流を検出する第1カレントトランスと、
前記第2出力整流器に1次巻線が直列接続され、前記第1インバータ素子のオフにより前記第1チョークコイルから前記第1出力整流器に流れる電流を検出する第2カレントトランスと、
前記第2インバータ素子に1次巻線が直列接続され、第2インバータ素子のオンにより第2インバータ素子から前記第2チョークコイルに流れる電流を検出する第3カレントトランスと、
前記前記第2出力整流器に1次巻線が直列接続され、前記第1インバータ素子のオフにより前記第2出力整流器から前記第2チョークコイルに流れる電流を検出する第4カレントトランスと、
前記第1乃至第4カレントトランスの各2次巻線をダイオードオアにより合成接続して抵抗に電流検出信号を生成する電流検出回路と、
を備えたことを特徴とする多相交流力率改善回路。
【請求項6】
請求項4記載の多相交流力率改善回路に於いて、前記入力電流検出回路は、
前記第1インバータ素子と前記第2出力整流器の各々に直列接続された2つの1次巻線を備え、前記第1インバータ素子のオンにより前記第1チョークコイルから第1インバータ素子に流れる電流と、前記第1インバータ素子のオフにより前記第1チョークコイルから前記第1出力整流器に流れる電流を検出する第1カレントトランスと、
前記第2インバータ素子と前記第2出力整流器の各々に直列接続された2つの1次巻線を備え、前記第2インバータ素子のオンにより第2インバータ素子から前記第2チョークコイルに流れる電流と、前記第1インバータ素子のオフにより前記第2出力整流器から前記第2チョークコイルに流れる電流を検出する第2カレントトランスと、
前記第1及び第2カレントトランスの各2次巻線をダイオードオアにより合成接続して抵抗に電流検出信号を生成する電流検出回路と、
を備えたことを特徴とする多相交流力率改善回路。
【請求項7】
請求項4記載の多相交流力率改善回路に於いて、前記入力電圧検出回路は、
前記交流入力端子と中点電位の間に接続されて両者の電位差を分圧して入力する抵抗分圧回路と、
前記抵抗分圧回路から入力した交流電位差を全波整流信号に変換して前記スイッチング制御回路に交流入力電圧として出力する絶対値回路と、
を備えたことを特徴とする多相交流力率改善回路。
【請求項8】
請求項7記載の多相交流力率改善回路に於いて、前記制御回路は、
前記直流出力電圧を1/2に分圧した出力分圧電圧を基準電圧として、前記基準電圧に対する前記中点電圧の電位差を検出して前記絶対値回路の入力に加え、前記電位差をなくして前記第1及び第2平滑コンデンサの両端電圧を等しくするように前記スイッチング制御回路に前記電位差でオフセットされた交流入力電圧を加えることを特徴とする多相交流力率改善回路。
【請求項9】
請求項1記載の多相交流力率改善回路に於いて、前記第1インバータ回路の第1チョークコイルと前記第2インバータ回路の第2チョークコイルは、単一のコアに巻かれた1個のチョークコイルであることを特徴とする多相交流力率改善回路。
【請求項10】
請求項1記載の多相交流力率改善回路に於いて、
前記各相の第1入力整流器はサイリスタであり、
前記サイリスタと並列にダイオードと電流制限抵抗の直列回路を接続した突入電流防止回路と、
前記各相のサイリスタに対し設けられ、多相交流電源の投入時に前記サイリスタをオフとし、投入から所定時間を経過したときに前記サイリスタをオンするサイリスタ駆動回路と、
を備えたことを特徴とする多相交流力率改善回路。
【請求項11】
請求項1記載の多相交流力率改善回路に於いて、
前記各相の第1入力整流器はサイリスタであり、
各相の前記サイリスタのアノードをダイオードを介して合成接続した後に電流制限抵抗を介して前記第1平滑コンデンサのプラス側に接続した突入電流防止回路と、
前記各相のサイリスタに対し設けられ、多相交流電源の投入時に前記サイリスタをオフとし、投入から所定時間を経過したときに前記サイリスタをオンするサイリスタ駆動回路と、
を備えたことを特徴とする多相交流力率改善回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−22125(P2010−22125A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−179932(P2008−179932)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(000103208)コーセル株式会社 (80)
【Fターム(参考)】