説明

多色成形用成形型と多色成形品の成形方法と多色成形品

【課題】 本発明は、一次成形品である光学素子の固定側の光学機能面を二次成形の際に第2の固定型で変形させてしまうことを防止でき、かつ一次成形によって成形された第1の成形品と二次成形型部材との結合界面の外表面に窪みが発生してしまうことを防止することができる多色成形用成形型と多色成形品の成形方法と多色成形品を提供することである。
【解決手段】 一次成形型10による一次成形後、二次成形を行う二次成形型20の第2の固定型200は、光学素子1の凸面光学機能面1a1と対応する部分が中空形状であって、前記光学素子1の凸面光学機能面1a1以外にのみ前記一次成形部との当接部を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の異なる樹脂を組合せて一体化する多色成形用成形型と多色成形品の成形方法と多色成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、2種類の異なる樹脂材料を用いて光学素子とその枠部材などの隣接部材とを成形し、一体化する技術として二色成形がある。特許文献1には、この二色成形の技術の一例が示されている。ここでは、光学部材を一次成形する一次成形型と、光学部材の隣接部材を二次成形する二次成形型とが設けられている。なお、一次成形型と二次成形型の可動型は、共通に使用される。そして、一次成形型の第1の固定型と可動型との間のキャビティ内で光学部材が一次成形された後、型開きされて光学部材が取り出される際に、光学素子の光学機能面が可動型に嵌合保持されたままの状態で保持される。続いて、この光学素子の光学機能面が嵌合保持された状態の可動型が二次成形型の第2の固定型と組合わされる。そして、二次成形型の第2の固定型と可動型との間で隣接部材が二次成形され、光学素子と隣接部材の二色成形品を得る方法が提案されている。
【0003】
また、特許文献2には、二色成形品の成形時に、一次成形によって成形された第1の成形品と二次成形型部材とによって構成された二次成形用キャビティへ二次成形用の溶融樹脂を充填して二次成形をする際の溶融樹脂の熱により第1の成形品の表面を溶融させることで第1の成形品と二色成形品の結合界面部分が互いに結合することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3820137号公報
【特許文献2】特開2004−1424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、一次成形で第1の固定型により成形された一次成形品である光学素子の固定側の光学機能面は、二次成形の際には第2の固定型に再度接触する。このとき、第1の固定型の光学機能面と第2の固定型の光学機能面の型形状は必ずしも同一形状とは限らず、一次成形により得た一次成形品である光学素子の固定側の光学機能面を二次成形の際に第2の固定型で変形させてしまう可能性がある。
【0006】
また、特許文献2の二次成形型部材では、一次成形によって成形された第1の成形品との境界部における結合界面の外表面に二次成形用の第2の樹脂内のエアー溜りであるエアートラップ部分が発生する可能性がある。この場合は、一次成形によって成形された第1の成形品と二次成形型部材との結合界面の外表面のエアートラップ部分には二次成形用の溶融樹脂を完全には充填することが出来ず、その外表面には窪みが発生してしまう可能性がある。
【0007】
本発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的は、一次成形品である光学素子の固定側の光学機能面を二次成形の際に第2の固定型で変形させてしまうことを防止でき、かつ一次成形によって成形された第1の成形品と二次成形型部材との結合界面の外表面に窪みが発生してしまうことを防止することができる多色成形用成形型と多色成形品の成形方法と多色成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面の態様は、第1の樹脂が通る第1の固定側ランナを備えた第1の固定型と、前記第1の固定型に対して接離可能な可動型との間に前記第1の樹脂によって少なくとも光学機能面を有する光学素子である一次成形部を成形する第1のキャビティを規定する第1の成形型と、前記第1の成形型で成形された前記光学素子に対して接合させた状態で、前記第1の樹脂とは異なる第2の樹脂によって二次成形部を成形する第2のキャビティを規定する第2の成形型とを有し、前記第2の成形型は、前記可動型に対して接離可能な第2の固定型を有し、前記可動型と前記第2の固定型との間に前記第2のキャビティを規定することにより多色成形品を成形する多色成形用成形型であって、前記第2の固定型は、前記光学素子の光学機能面と対応する部分が中空形状であって、前記光学素子の光学機能面以外にのみ前記一次成形部との当接部を有することを特徴とする多色成形用成形型である。
そして、上記構成では、第1の成形型による一次成形後、第2の成形型による二次成形時に、可動型と第2の固定型との間に規定された第2のキャビティに第2の樹脂を充填して多色成形品を成形する際に、第2の固定型の中空形状部分を光学素子の光学機能面と対応する部分に配置することにより、光学素子の光学機能面以外にのみ第2の成形型における一次成形部との当接部を当接させる。これにより、二次成形の際に第2の固定型で一次成形品である光学素子の固定側の光学機能面を変形させてしまうことを防止し、かつ一次成形によって成形された第1の成形品と二次成形型部材との結合界面の外表面に窪みが発生してしまうことを防止するようにしたものである。
【0009】
好ましくは、前記第2の固定型は、前記一次成形部との境界部に前記第2の樹脂によるエアートラップ部分と前記中空形状部分との間を連通し、かつ前記第2の樹脂が浸入不能な隙間であるエアーベントを有する。
そして、上記構成では、前記第2の樹脂が浸入不能な隙間である前記第2の固定型のエアーベントによって前記一次成形部との境界部に前記第2の樹脂によるエアートラップ部分と前記中空形状部分との間を連通することで、エアーベントを通して前記第2の固定型のエアー溜りであるエアートラップ部分のエアーを前記中空形状部分に逃がすことができる。
【0010】
本発明の他の局面の態様は、可動型と第1の固定型との間に規定される第1のキャビティで、光学機能面を有する光学素子である一次成形部を一次成形する一次成形ステップと、前記可動型の移動にともなって、前記第1のキャビティから前記一次成形部を前記可動型と、前記光学素子の光学機能面以外の部分に当接する中空形状の第2の固定型と、の間に規定される第2のキャビティへ移動させる可動型の移動ステップと、前記第2のキャビティで前記二次成形部を二次成形し、移動後の前記光学素子に対して前記二次成形部を一体化させる二次成形ステップと、を具備する多色成形品の成形方法である。
そして、上記方法では、一次成形ステップによって可動型と第1の固定型との間に規定される第1のキャビティで、光学機能面を有する光学素子である一次成形部を一次成形後、移動ステップで可動型の移動にともなって、前記第1のキャビティから前記一次成形部を前記可動型と、前記光学素子の光学機能面以外の部分に当接する中空形状の第2の固定型と、の間に規定される第2のキャビティへ移動させる。その後、二次成形ステップで、前記第2のキャビティで前記二次成形部を二次成形し、移動後の前記光学素子に対して前記二次成形部を一体化させる。
【0011】
好ましくは、前記二次成形ステップは、前記第2の固定型に形成され、前記一次成形部との境界部に前記第2の樹脂によるエアートラップ部分と前記中空形状部分との間を連通し、かつ前記第2の樹脂が浸入不能な隙間であるエアーベントによって、二次成形時に前記第2のキャビティの前記エアートラップ部分に発生する気体を前記第2のキャビティ外に排出する。
【0012】
本発明の他の局面の態様は、前記各態様の多色成形品の成形方法のいずれかを用いて成形された多色成形品である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、一次成形品である光学素子の固定側の光学機能面を二次成形の際に第2の固定型で変形させてしまうことを防止でき、かつ一次成形によって成形された第1の成形品と二次成形型部材との結合界面の外表面に窪みが発生してしまうことを防止することができる多色成形用成形型と多色成形品の成形方法と多色成形品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態の二次成形体である二色成形品の上面図。
【図2】図1のII−II線断面図。
【図3】図2のA部を拡大して示す縦断面図。
【図4】第1の実施の形態の一次成形体である光学素子を示す上面図。
【図5】第1の実施の形態の射出成形型を型締め位置に移動した状態を示す二色成形型全体の縦断面図。
【図6】第1の実施の形態の射出成形型の一次成形型を型開き位置に移動した状態を示す縦断面図。
【図7】第1の実施の形態の射出成形型の一次成形型の可動型の平面図。
【図8】第1の実施の形態の射出成形型の一次成形型を型締め位置に移動した状態を示す縦断面図。
【図9】第1の実施の形態の一次成形型の第1のキャビティを拡大した状態を示す縦断面図。
【図10】第1の実施の形態の射出成形型の二次成形型を型開き位置に移動した状態を示す縦断面図。
【図11】第1の実施の形態の射出成形型の二次成形型の可動型の平面図。
【図12】図10のB部を拡大して示す縦断面図。
【図13】第1の実施の形態の射出成形型の二次成形型を型締め位置に移動した状態を示す縦断面図。
【図14】第1の実施の形態の二次成形型の第2のキャビティを拡大した状態を示す縦断面図。
【図15】第1の実施の形態の成形完了後の二色成形型全体の型開き状態を示す縦断面図。
【図16】本発明の第2の実施の形態に係る内視鏡全体の構成を示す側面図。
【図17】第2の実施の形態に係る内視鏡の先端部を示す正面図。
【図18】図17の18−18線断面図。
【図19】図18の19−19線断面図。
【図20】図18の20−20線断面図。
【図21】第2の実施の形態に係る内視鏡の先端部の二次成形型の第2のキャビティを拡大した状態を示す縦断面図。
【図22】本発明の第3の実施の形態の多色成形品を示すもので、(A)は多色成形品を示す上面図、(B)は(A)の21B−21B線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1の実施の形態]
(構成)
図1乃至図15は、本発明の第1の実施の形態を示す。図1は、本実施の形態の樹脂成形品である多色成形品、たとえば二色成形品3の上面図である。図2は、図1のII−II線断面図である。また、図5は二色成形品3を成型する二色成形型(成形型)50の全体の平面図である。
【0016】
図1および図2に示すように、本実施の形態の二色成形品3は、例えば光学レンズである光学素子(一次成形部)1と、この光学素子1を保持する円筒状の隣接部材(二次成形部)2と、を二色成形によって一体化した一体物によって形成されている。ここで、光学素子1は、例えば凸と凹形状からなるレンズである。この光学素子1は、光透過可能な透明樹脂材料である第1の樹脂(第1成形樹脂)、例えばPC(ポリカーボネート)など一般的な透明樹脂材料から選ばれる。隣接部材2は、光学素子1に隣接して配置され、前記第1の樹脂とは異なる第2の樹脂(第2成形樹脂)を射出成形して形成されている。この隣接部材2は、本実施の形態では、例えばPC(ポリカーボネート)に不透明な着色をした着色樹脂が使用される。
【0017】
図2に示すように光学素子1は、向かい合う2面(外面と内面)を有する光学素子本体1aと、この光学素子本体1aの外周部位に連結された円筒形状の筒壁部1bとを有する。光学素子本体1aの外面は、凸曲面形状の凸面光学機能面1a1であり、内面は、凹曲面形状の凹面光学機能面1a2である。隣接部材2は、二色成形品3を図示しない部品(内視鏡の観察光学系、またはカメラの撮像光学系など)に組付ける際の位置決めに用いられるレンズ枠であり、内径部分には他手段により得たレンズを組付ける構造をも具備している撮像レンズユニットである。
【0018】
本実施の形態では、図5に示す後述する二色成形型50で二色成形品3を二色成形する際に、図1および図2に示すように光学素子1の外表面にエアーベント転写形状1cが二次成形によって設けられる。このエアーベント転写形状1cは、光学素子1の光学機能面以外の部分が後述する二次成形型で押圧保持される際に成形される。
【0019】
次に、図5を用い二色成形型50の構成を説明する。本実施の形態の二色成形型50は一次成形型(第1の成形型)10と二次成形型(第2の成形型)20からなる。これらの一次成形型10と二次成形型20は、後述する射出成形機の可動プラテン70上に配置されている。
【0020】
一次成形型10は、PL(パーティングライン)を挟んで対向配置された第1の固定型100と可動型300とを有している。可動型300は第1の固定型100に対し型開閉方向(図5で上下方向)に移動可能に配置されている。また、二次成形型20はPLを挟んで対向配置された第2の固定型200と可動型300とを有している。可動型300は第2の固定型200に対し型開閉方向(図5で上下方向)に移動可能に配置されている。
【0021】
これら一次成形型10と二次成形型20とは固定型の構成は一次側と二次側で異なり、可動型の構成は一次側と二次側とで同一である。このため、ここでは可動型の構成部品の呼称は一次用と二次用とで区別せずに以下、可動型300とする。
そして、二色成形品3の成形時には、一次成形型10で一次成形体である光学素子1を一次成形した後、二次成形型20で隣接部材2を二次成形する。隣接部材2を二次成形すると同時に光学素子1と隣接部材2とを一体化し、二色成形品3が得られる。
【0022】
図6に示すように第1の固定型100は、一次固定側取付板110と一次固定側落下板120と一次固定側型板130とを有する。一次固定側型板130の中央部分には一次固定入子101が嵌挿されている。
この第1の固定型100に対向する可動型300は可動側型板310と可動側受板320とスペーサーブロック340と可動側取付板350とを有する。スペーサーブロック340の内側には突出し機構を構成するエジェクタープレート330が設けられている。このエジェクタープレート330には4本のエジェクターピン302が取付けられている(図7参照)。可動側型板310の中央部分には、可動入子301が嵌挿されている。即ち、可動入子301は、可動型300内に挿入されている。可動入子301は、一次成形型10の第1の固定型100と可動型300との型締め時(図8参照)に一次固定入子101と距離を開けて対向するように配置されている。
【0023】
図10に示すように第2の固定型200は、二次固定側取付板210と二次固定側落下板220と二次固定側型板230とを有する。二次固定側型板230は、可動側型板310の可動入子301と対応する部分に中空形状の二次固定空間201が設けられ、その外周に二次固定押圧保持部201Aが具備されている。この第2の固定型200に対向する可動型300は前述の通り第1の固定型100に対向する可動型300と同じ構成である。
【0024】
図5に示すようにこれら一次成形型10の可動側取付板350と二次成形型20の可動側取付板350とは同一の射出成形機の可動側プラテン70に固定されている。この可動側プラテン70は型開き方向に可動する。可動プラテン70の中央位置には型開き方向に平行な回転軸60が設けられている。可動側プラテン70はこの回転軸60を中心として回転可能となっている。さらに、一次成形型10の一次固定側取付板110と二次成形型20の二次固定側取付板210とは、図示しないが射出成形機の固定側プラテンに固定されている。
【0025】
次に、一次成形型10の詳細構造を記す。図6は、一次成形型10を型開きした状態を示す。図6に示すように一次成形型10の一次固定側型板130には、その下面の略中央に凹部130aが形成されている。図9に示すようにこの凹部130aの端面は、一次固定入子101の下面によって形成されている。この一次固定入子101の下面には、凹曲面形状の一次固定側成形面101Aが形成されている。この凹曲面形状の一次固定側成形面101Aにより光学素子1の凸曲面形状の凸面光学機能面1a1が成形される。さらに、一次固定側型板130には光学素子1の筒壁部1bの外側面形状を成形する成形面130bが形成されている。
【0026】
一次固定側型板130に対向する可動側型板310の可動入子301には第1の固定型100の凹曲面形状の一次固定側成形面101Aと離間してかつ対向するように凸曲面形状の可動側成形面301Aが形成されている。この凸曲面形状の可動側成形面301Aにより光学素子1の凹曲面形状の凹面光学機能面1a2が成形される。
【0027】
そして、一次成形型10の第1の固定型100と可動型300との型締め時(図8参照)には、第1の固定型100と可動型300との間で、凹曲面形状の一次固定側成形面101Aおよび外側面と、離間して第1の固定型100の凹曲面形状の一次固定側成形面101Aに対向する凸曲面形状の可動側成形面301Aとを含むように一次成形体である光学素子1の成形に必要な一次成形キャビティである第1のキャビティ1000が構成される。一次成形体である光学素子1の成形時には第1の固定型100の凹曲面形状の一次固定側成形面101Aと可動型300の凸曲面形状の可動側成形面301Aとによって光学素子1の凸面光学機能面1a1と凹面光学機能面1a2とが形成される。これと同時に第1の固定型100の光学素子1の外側面形状を成形する成形面130bによって光学素子1の筒壁部1bの外側面が形成される。
【0028】
また、一次固定側取付板110および一次固定側落下板120には、その略中央に一次成形体である光学素子1の成形材料である溶融材料を型開き方向に供給する一次成形用一次スプルー11がそれぞれに形成されている。さらに、一次固定側型板130には、一次成形用ランナー12と、一次成形用二次スプルー13と、第1のキャビティ1000に樹脂を充填するための一次成形用ピンポイントゲート14とが設けられている(図6参照)。
【0029】
そして、一次成形体である光学素子1の成形時には、光学素子1の成形材料である第1の樹脂の溶融材料が一次固定側取付板110と一次固定側落下板120の一次成形用一次スプルー11から一次固定側型板130の一次成形用二次スプルー13と一次成形用ピンポイントゲート14を経て光学素子1の第1のキャビティ1000内に充填される。
【0030】
また、一次固定型板130には一次固定側温調菅131が配設されており、この一次固定側温調菅131内には成形時に水や油などの温度調整された媒体が常時流れている状態で収容されている。
さらに、可動側型板310には可動入子301の外周部でPLに面する側に、型軸中心と同心状に二色成形品3の隣接部材2の二次成形用キャビティである第2のキャビティ5000の一部を形成するためのリング状の凹部である可動側空間3000が形成されている。そして、この可動側空間3000の底面に接するように4本のエジェクターピン302が配置される(図7参照)。
【0031】
次に、二次成形型20の詳細構造について記す。図10は、二次成形型20を型開きした状態を示す。図10に示すように第2の固定型200の二次固定側型板230の下面には、その略中央に第1の樹脂とは異なる第2の樹脂によって二次成形部である隣接部材2を成形する第2のキャビティ5000を規定するための二次固定側空間2000が形成されている。この二次固定側空間2000は、型軸中心と同心状の円形凹部によって形成されている。さらに、図14に示すように二次固定側空間2000は、二次固定側型板230の下面側に配置された大径な第1の円形凹部2000aと、この第1の円形凹部2000aよりも上側に配置され、第1の円形凹部2000aよりも小径な第2の円形凹部2000bとを含む。
【0032】
また、第2の固定型200の二次固定側型板230は、光学素子1の凸面光学機能面1a1と対応する部分が中空形状の二次固定空間201である。そして、二次固定押圧保持部201Aは、光学素子1の凸面光学機能面1a1以外の部分にのみ一次成形部との当接部を有する。
【0033】
さらに、第2の固定型200の二次固定押圧保持部201Aは、一次成形部との境界部に前記第2の樹脂によるエアートラップ部分と前記中空形状の二次固定空間201の部分との間を連通し、かつ前記第2の樹脂が浸入不能な隙間である2つのエアーベント201Bを有する。エアーベント201Bは、第2のキャビティ5000内に溶融樹脂を射出した際、第2のキャビティ5000内に残留するエアー(空気)や原材料から発生したガスを抜くためのエアー抜きやガス抜き構造の溝部である。
【0034】
図11に示すように本実施の形態の2つのエアーベント201Bは、二次固定押圧保持部201Aにおける第2の円形凹部2000bの内底部に形成された第2の円形凹部2000bの半径方向に延設された直線状の溝部によって形成されている。各エアーベント201Bの内端部は、二次固定空間201に連結され、外端部は、第2の円形凹部2000bの外周縁の角部に連結されている。さらに、上記エアーベント201Bは、第2のキャビティ5000に充填された樹脂が流れない(浸入しない)大きさの隙間であり、例えば1mm程度の幅で、深さ0.02mm程度の大きさに形成されている。なお、エアーベント201Bの大きさは、実際には成形樹脂の到達粘度、材料からの揮発物質等が関係するので成形品体積、成形樹脂流動長により樹脂の種類に応じて適宜、選択的に設定される。
【0035】
また、二次固定金型20の二次固定側取付板210と二次固定側落下板220には中央位置に二次成形体である隣接部材2の成形材料である第2の樹脂の溶融材料を型開き方向に供給する二次成形用一次スプルー21がそれぞれに形成されている。さらに、二次固定側型板230には1つの二次成形用ランナー22と、2つの二次成形用二次スプルー23と、二次成形用キャビティである第2のキャビティ5000になる二次固定側空間2000および可動側空間3000に樹脂を充填するための2つの二次成形用ピンポイントゲート24とが設けられる。ここで、2つの二次成形用二次スプルー23と、図11に示す2つの二次成形用ピンポイントゲート24とは、二次固定押圧保持部201Aの二次固定空間201の両側に配置されている。2つの二次成形用ピンポイントゲート24の中心間を結ぶ線は2つのエアーベント201Bの中心線間を結ぶ線とほぼ直交する状態に配置されている。なお、エアーベント201Bの数は、必ずしも2つに限定されるものではなく、1または複数であってもよい。特に、第2のキャビティ5000に樹脂を充填するための2つの二次成形用ピンポイントゲート24の数に合わせてエアベント201Bを設けることが好ましい。
【0036】
二次成形型20の第2の固定型200と可動型300との型締め時には、図13に示すように予め第2の固定型200と可動型300との間には一次成形体である光学素子1がセットされる。このとき、光学素子1は、一次成形型10の可動型300の可動入子301に嵌合された状態で保持されている。そして、図9および図13に示すように第2の固定型200と可動型300との間には、PLを挟んで第2の固定型200の二次固定側空間2000と可動型300の可動側型板310の可動側空間3000とが対向配置された状態で連通されて二次成形用キャビティである第2のキャビティ5000が形成される。この状態で、二次成形用キャビティである第2のキャビティ5000に第2の樹脂が充填されることで一次成形品である光学素子1の周囲に隣接部材2が光学素子1に対して接合させた状態で、二次成形される。
【0037】
次に、二色成形品3の製造方法について説明する。本実施の形態の樹脂成形品である二色成形品3の製造時は、図5の二色成形型50が使用される。図5の二色成形型50では、一次成形型10で一次成形体である光学素子1の成形が行なわれ、同時に二次成形型20で二次成形体である隣接部材2の二次成形が行なわれる。
【0038】
一次成形型10による一次成形体である光学素子1の成形時には、まず図5に示すように第1の固定型100および第2の固定型200に対し、接近させる方向に可動型300を移動させて型締めを行なう。このとき、一次成形型10では、図8に示すように第1の固定型100と可動型300とが接合された状態で型締めされる。
【0039】
その後、図示しない樹脂射出ユニットにて、一次成形体である光学素子1の成形材料である透明な第1の樹脂の溶融材料が一次固定側取付板110と一次固定落下板120の一次成形用一次スプルー11から一次固定型板130の一次成形用ランナー12に供給される。続いて、第1の樹脂の溶融材料は、一次成形用ランナー12から一次成形用二次スプルー13を経て一次成形用ピンポイントゲート14を通過し、第1のキャビティ1000内に供給され、充填される(一次成形ステップ)。
【0040】
次いで、第1のキャビティ1000内で充填された第1の樹脂に対し、所定の圧力で所定の時間だけ保圧状態を維持する。続いて、第1のキャビティ1000内の充填樹脂(第1の樹脂)を冷却することで光学素子1が得られる。
その後、図15に示すように第1の固定型100および第2の固定型200に対し、離れる方向に可動型300を移動させて型開きを行なう。このとき、図15に示すように一次成形体である光学素子1は、充填樹脂の冷却収縮により、可動型300の可動入子301に嵌合保持されている。型開きを行なうと同時に一次成形体である光学素子1と一次成形用二次スプルー13とを一次成形用ピンポイントゲート14の位置で切り離す。
【0041】
次に、一次成形体である光学素子1を可動入子301で嵌合保持したまま、回転軸60を中心として成形機の可動プラテン70を180°回転させる。これにより、二次成形型20では一次成形体である光学素子1を嵌合保持した可動型300と第2の固定型200が対向して配置され、同時に一次成形型10では一次成形体である光学素子1のない可動型300と第1の固定型100が対向して配置される。この状態で二色成形型50を閉じる(図5参照)。
【0042】
このとき、図14に示すように可動型300の可動入子301で保持された一次成形体である光学素子1の凸面光学機能面1a1は、第2の固定型200の二次固定空間201により第2の固定型200に接触すること無く、その外周をエアーベント201Bが設けられた二次固定押圧保持部201Aの壁面に密着される(移動ステップ)。
【0043】
続いて、図13に示すように二次成形型20の二次成形キャビティである第2のキャビティ5000に着色された第2の樹脂を充填し、充填された第2の樹脂に所定の圧力で所定の時間だけ保圧状態を維持する。その後、充填された第2の樹脂を冷却することで二次成形体である隣接部材2が得られる。このときに一次成形体である光学素子1と二次成形体である隣接部材2が一体化され二色成形品3が成形される(二次成形ステップ)。なお、この二次成形型20による二次成形時には、一次成形型10では上述した一次成形体である光学素子1の一次成形が同時に行なわれている。
【0044】
二色成形品3が成形後、図15に示すように二次成形型20の可動型300を開く。このとき、二次成形用ピンポイントゲート24にて二次成形用二次スプルー23を二色成形品3から切り離す。その後、エジェクターピン302を成形機の突出し機構により突出すことで二次成形型20の可動型300にある二色成形品3を取り出す。
【0045】
なお、この二次成形型20の型開き時には、一次成形型10でも同時に型開きが行なわれ、一次成形体である光学素子1が可動型300によって成形された状態で可動型300の可動入子301に嵌合保持されている。続いて、上述した一連の一次成形工程と二次成形工程とが繰り返される。
【0046】
(作用)
次に、上記構成の作用について説明する。本実施の形態の二色成形型50の使用時には、まず、本実施の形態では、透明な第1の樹脂により一次成形体である光学素子1が一次成形された後、その透明な第1の樹脂の成形収縮により一次成形体である光学素子1が可動型300の可動入子301に嵌合状態で保持される。
【0047】
続いて、一次成形型10の型開きを行なうと同時に一次成形体である光学素子1は第1の固定型100から離型する。その後、二次成形型20による二次成形時には、一次成形体である光学素子1は可動型300の可動入子301に嵌合保持された状態で可動型300と第2の固定型200の二次固定押圧保持部201Aとにより光学素子1の凸面光学機能面1a1以外の外周部分が押圧保持される。このとき、第2の固定型200の二次固定空間201が光学素子1の光学機能面1aと対応する位置に配置されているので、光学素子1の光学機能面1aが第2の固定型200の壁面に接触することなく、二色成形品3の二次成形が行なわれる。
【0048】
この二色成形品3の二次成形時には、光学素子1と隣接部材2との境界に発生するエアーが二色成形体3の外表面に当たる第2の固定型200の二次固定押圧部201Aの2つのエアーベント201Bを通して二次固定空間201へ排出される。このとき、光学素子1の光学機能面1a以外の外表面には、第2の固定型200の二次固定押圧保持部201Aのエアーベント201Bとの接合部分にエアーベント転写形状1cが成形される。
【0049】
(効果)
そこで、上記構成のものにあっては次の効果を奏する。すなわち、本実施の形態の二色成形品3の二色成形型50では、第2の固定型200に中空形状の二次固定空間201を光学素子1の光学機能面1aと対応する位置に配置した状態で設けたので、第1の固定型100の一次固定入子101によって一次成形体である光学素子1の凸面光学機能面1a1が一次成形された後、二色成形品3の二次成形時には光学素子1の凸面光学機能面1a1は二次固定空間201によって第2の固定型200の壁面に直接接触することがなくなる。したがって、光学素子1の凸面光学機能面1a1は第2の固定型200の形状の不揃いなどによって変形することがなくなるので、高精度な光学素子1を具備した二色成形品3が得られる。
【0050】
また、隣接部材2の二次成形時には、一部に光学素子1によって構成された二次成形キャビティ5000に溶融した第2の樹脂の充填時に発生するエアー溜りのエアーが二次固定押圧部201の2つのエアーベント201Bを通して効率よく第2のキャビティ5000から排出される。したがって、二色成形体3の外表面における光学素子1と隣接部材2の境界部分でエアー溜りが発生することがなくなり、二次成形樹脂の充填不足による窪みがない高精度な二色成形品3が得られる。
【0051】
なお、二次固定押圧部201の2つのエアーベント201Bは、第2のキャビティ5000内のエアーを排出可能な状態で構成されていれば、その形状を二次成形用の第2の樹脂の流動を考慮して、流動末端部(合流位置)のみに構成したり、流動過程の途中に構成したりと、隣接部材2の充填具合にあわせて調整を行なうことができる。さらに、第1の固定型100の一次固定入子101にその反転形状(突起)を設け、一次成形によってその機能を光学素子1に具備させるなど適宜変更することができ、この方法に限定されるものではなく、必要に応じて任意の方法に変更することが出来る。
【0052】
[第2の実施の形態]
(構成)
図16乃至図20は、本発明の第2の実施の形態を示す。本実施の形態は、内視鏡401の先端部406の成形に適用した適用例である。図16は、体腔内を観察し、診断、治療等を行う内視鏡401の全体の構成を示す。内視鏡401は、患者の体腔内に挿入される細長で可撓性を有する挿入部405を有する。挿入部405の先端には、硬性の先端部406が配設され、挿入部405の基端には操作部407が設けられている。
【0053】
挿入部405は、細長い可撓管部405aと、この可撓管部405aの先端に連結された湾曲部405bとを有し、この湾曲部405bの先端に前記先端部406が連結されている。上記湾曲部405bは、例えば、図示しない複数の湾曲駒を挿入部405の中心軸の方向(長手軸方向)に沿って一列に並べて配置し、隣接する湾曲駒を軸部材によって上下方向に回動するように枢着したものである。これにより、湾曲部405bは上下の2方向へのみ湾曲できる形式になっている。湾曲部405bは、上下のみならず、左右の方向にも湾曲可能な4方向に湾曲できる形式にしてもよい。
【0054】
操作部407は、把持部407aと、湾曲機構部407bと、を有する。なお、イメージガイドを使用するファイバースコープの場合は、操作部407の末端部に図示しない接眼部が設けられている。湾曲機構部407bには、レバー式の湾曲操作ノブ407b1が設けられている。湾曲部405bは、操作部407の湾曲操作ノブ407b1を回動することにより、上下方向へのみ強制的に湾曲させられ、先端部406の向きを変えるようになっている。さらに、把持部407aには、チャンネル口金407dが設けられている。
【0055】
操作部407の側面には、ユニバーサルコード407eの一端が連結されている。このユニバーサルコード407eの他端には図示しないスコープコネクタが設けられている。内視鏡401は、このスコープコネクタを介して光源装置402及び信号処理装置403に接続され、信号処理装置403には、観察モニタ404が接続されている。
【0056】
図17〜図19に示すように、挿入部405の先端部406は、単一部品の先端部本体(先端構成部)406aを備える。この先端部本体406aは樹脂により一体にモールド成型される。先端部本体406aを形成する材料の樹脂は、光学的に不透明な、例えば黒色に着色された樹脂、例えばPSU(ポリサルホン)にて形成されている。
【0057】
図18に示すように、先端部本体406aの先端面には、照明光を出射するための2つの照明窓部51a、51bと、1つの観察窓部52と、1つの処置具挿通用のチャンネル408の先端開口部408aとが設けられている。本実施の形態では、図18中で先端部本体406aの先端面の中心位置Oに対して上側に処置具挿通用のチャンネル408の先端開口部408a、下側に観察窓部52がそれぞれ配置され、先端開口部408aの中心線O1と、観察窓部52の中心線O2との間を結ぶ基準線L1の左右対称位置に2つの照明窓部51a、51bがそれぞれ配置されている。
【0058】
さらに、図17中で先端部本体406aの上面側(チャンネル408の先端開口部408a側)の外周面には、先端側に向かって細くなる先細状の傾斜面406bが形成されている。これにより、先端部本体406aの先端面は、横に長く上下に扁平な形状、例えば、上下方向を短軸とし、左右方向を長軸とした略楕円形状のへら状部になっている。先端部本体406aの周面は、先端面の縁から先端部本体406aの後端部外周まで急激な角や激しい凹凸のない滑らかな表面によって形成される。具体的には、略楕円形の先端面の縁から先端部本体406aの後半基端部の略円形外周面に移行するまで、その全体が連続した曲面によって形成されている。先端部本体406aの外周面は、略楕円形の先端面の縁から先端部406の後端に隣接して設置される略円形断面の湾曲部405bに至るまでの間において略楕円形から略円形に移行する滑らかな曲面である。
【0059】
図19に示すように、先端部本体406aの上面側の傾斜面406bは、湾曲部405bが湾曲する方向、ここでは、先端部406を起上する向き側に位置して配置されている。先端部本体406aの先端面の周縁や先端部本体406aの外に露出する角部分にはいずれも丸みのある縁が形成されている。
【0060】
図18に示すように、先端部本体406aの内部には、挿入部405の軸方向と平行に4つの孔(406a1〜406a4)が形成されている。第1の孔406a1には、チャンネル408の先端開口部408aが形成されている。第2の孔406a2と第3の孔406a3には、照明用光学系の組付け部材を設置する左右一対の照明用収納孔が形成されている。第4の孔406a4には、観察用光学系の組付け部材を設置する観察用孔が形成されている。
【0061】
チャンネル408の先端開口部408aを形成する第1の孔(チャンネル孔)406a1の内端には、図示しないチャンネルチューブが接続口金を介して接続されている。このチャンネルチューブの手元側部分は、湾曲部405bおよび可撓管部405a内を通じて操作部407まで導かれ、チャンネル口金407dに接続されている。そして、チャンネル口金407dから先端部406の先端開口部408aまで貫通するチャンネル408を形成している。このチャンネル408は、処置具の挿通に使用する他に送気・送水等に使用される。
【0062】
図19に示すように、観察用光学系の組付け部材を設置する第4の孔(観察用孔)406a4には、最先端位置に観察窓部52を形成する第1レンズ(またはカバーガラス)414aが配設されている。この第1レンズ414aの後方には、第2レンズ414b、第3レンズ414c、第4レンズ414dが順次配設され、観察光学系414が形成されている。この観察光学系414は、先端部本体406aの第4の孔406a4の内周壁面と例えば、接着剤で固定されている。観察光学系414の結像位置には、CCD等の撮像素子を有する撮像素子部415が配置されている。
【0063】
そして、観察光学系414によって結像された観察像は、撮像素子部415によって電気信号に変換されて図示しない信号ケーブルを介して信号処理装置403に伝送され、信号処理装置403によって映像信号に変換されて観察モニタ404に出力される。なお、撮像素子部415に代えてイメージガイドファイバの先端が固定される構成にしてもよい。この場合は、観察光学系414によって結像された観察像は、イメージガイドファイバを通して接眼部に導かれ、接眼部で観察像が観察される。
【0064】
図20に示すように先端部本体406aの第2の孔(照明用収納孔)406a2と第3の孔(照明用収納孔)406a3には、最先端位置に照明窓部51a、51bを形成する照明レンズ412が配設されている。本実施の形態では、光学部材の一例である照明レンズ412とその支持部材416である先端部本体406aとが一体に形成された二色成形品413が形成されている。
【0065】
本実施の形態の二色成形品413において、照明レンズ412は、医療分野で使用されることの多い光学部品用の樹脂であって、光学的に透明な樹脂、例えばPSU(ポリサルホン)にて形成されている。また、支持部材416は、光学的に不透明な、例えば黒色に着色された樹脂、例えばPSU(ポリサルホン)にて形成されている。そして、これらは二色成形による射出成形、すなわち照明レンズ412が一次成形された後、支持部材416である先端部本体406aが二次成形される成形工程によって一体に形成されている。支持部材416は、光学的に不透明であるため、照明レンズ412の外周部から不要な光が散乱することを防止する。
【0066】
また、図20に示すように本実施の形態では照明レンズ412は、ほぼ円形のレンズ本体412aと、このレンズ本体412aの外周部位に連結された円筒形状の筒壁部412bとを有する。レンズ本体412aの外面は、傾斜面形状の光学機能面412a1であり、内面は、凹曲面形状の凹面光学機能面412a2である。そして、先端部本体406aの上面側の傾斜面406bと照明レンズ412の傾斜面形状の光学機能面412a1は段差なく、同一面としてなだらかに接続されている。
【0067】
先端部本体406aの上面側の傾斜面406bと照明レンズ412の傾斜面形状の光学機能面412a1は同一面としてなだらかに接続されていることで、その境界には汚れの侵入することはない。
また、上記二色成形品413の成形型は、主要部の大部分が第1の実施の形態(図1乃至図15参照)と同じであるため、一次成形型の構成は、省略し、ここでは、図21を参照して上記二色成形品413の二次成形型421の要部の概略構成について説明する。図21中で、参照符号422は、第2の固定型、423は、可動型である。可動型423と第2の固定型との接合面には二色成形品413の隣接部材である支持部材416の二次成形用キャビティである第2のキャビティ5001が形成されている。
【0068】
可動型423には、可動側型板424の中央部分に可動入子425が配設されている。そして、一次成形後、一次成形体である照明レンズ412は、この可動入子425の上面に嵌合保持されている。
第2の固定型422の二次固定側型板426は、照明レンズ412の傾斜面形状の光学機能面412a1と対応する部分が中空形状の二次固定空間427である。そして、二次固定押圧保持部427Aは、照明レンズ412の傾斜面形状の光学機能面412a1以外の部分にのみ一次成形部との当接部を有する。なお、参照符号431は、第2の固定型422の二次成形スプルーである。
【0069】
さらに、第2の固定型422の二次固定押圧保持部427Aは、一次成形部との境界部に前記第2の樹脂によるエアートラップ部分と前記中空形状の二次固定空間427の部分との間を連通し、かつ前記第2の樹脂が浸入不能な隙間である2つのエアーベント227Bを有する。
なお、二色成形品413の製造方法に関しては、基本的に第1の実施の形態と同じであるため、省略する。
【0070】
(作用・効果)
本実施の形態によれば、内視鏡401の先端部406において、照明レンズ412と支持部材416により構成されたに二色成形品413の外表面には窪みがなく平滑な面で成形されることで、リユースの際の洗浄が簡単になり安価で衛生的な内視鏡治療が可能になる。
【0071】
さらに、二次成形型421による二次成形時には、一次成形体である照明レンズ412は可動型423の可動入子425に嵌合保持された状態で可動型423と第2の固定型422の二次固定押圧保持部427Aとにより照明レンズ412の傾斜面形状の光学機能面412a1以外の外周部分が押圧保持される。このとき、第2の固定型422の二次固定空間427が照明レンズ412の傾斜面形状の光学機能面412a1と対応する位置に配置されているので、照明レンズ412の傾斜面形状の光学機能面412a1が第2の固定型422の壁面に接触することなく、二色成形品413の二次成形が行なわれる。
【0072】
この二色成形品413の二次成形時には、照明レンズ412と隣接部材である支持部材416との境界に発生するエアーが二色成形体413の外表面に当たる第2の固定型422の二次固定押圧部427Aの2つのエアーベント427Bを通して二次固定空間427へ排出される。このとき、傾斜面形状の光学機能面412a1以外の外表面には、第2の固定型422の二次固定押圧保持部427Aのエアーベント427Bとの接合部分にエアーベント転写形状が成形される。
【0073】
これにより、二色成形品413の二次成形時に二次成形用キャビティのエアーが溶融樹脂の射出圧力による圧縮されることがなくなり、その圧縮熱による照明レンズ412と射出樹脂自身を変質することがなくなる。したがって、照明レンズ412と隣接部材である支持部材416の耐薬品性能や密着強度が悪化することがない二色成形品413が得られることで、リユースの際の薬品洗浄により侵食することがなく、密着強度も十分で安全な内視鏡401を提供することが可能になる。
【0074】
[第3の実施の形態]
(構成)
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。上記各実施の形態では、多色成形品として、図2に示す二色成形品3や、図20に示す二色成形品413に適用した適用例を示したが、必ずしも二色成形品に限定されるものではない。たとえば、図22(A),(B)の第3の実施の形態に示すように多色成形品として三色成形品501や、四色以上の多色成形品に適用してもよい。
【0075】
本実施の形態の三色成形品501は、例えば光学レンズである光学素子(第1成形部)502と、この光学素子502を保持するレンズ枠である円筒状の着色外周部(第2成形部)503と、前記光学素子502と前記着色外周部503との間に配置されたリング状の中間層(第3成形部)504とを多色成形によって一体化した一体物によって形成されている。ここで、光学素子502は、光透過性の樹脂材料である第1の樹脂を射出成形して形成されている。着色外周部503は、光学素子502と離間して配置され、前記第1の樹脂とは異なる第2の樹脂を射出成形して形成されている。中間層504は、光学素子502と着色外周部503との間に配置され、前記第1の樹脂と前記第2の樹脂とは異なる第3の樹脂を前記光学素子502と前記着色外周部503との間に射出成形して形成されている。
【0076】
ここで、三色成形品501の射出成形時には、光学素子502と中間層504との結合界面には熱溶融されて混合された状態で結合された第1の熱溶融結合部505が形成され、中間層504と着色外周部503との結合界面には同様に熱溶融されて混合された状態で結合された第2の熱溶融結合部506が形成されている。
【0077】
図22(B)に示すように光学素子502は、向かい合う2面を有し、これら2面がそれぞれ光学機能面502a,502bとなる。図22(B)中で上側が凸曲面状の第1の光学機能面502a、下側が凸曲面状の第2の光学機能面502bである。着色外周部503は、三色成形品501を図示しない鏡筒に取り付ける際の鏡筒内での位置決めとして機能する。
【0078】
上記三色成形品501の成形型の可動型には、可動側型板の中央部分に可動入子が配設されている。そして、一次成形後、一次成形体である光学素子502は、この可動入子の上面に嵌合保持されている。
二次成形型の第2の固定型の二次固定側型板は、光学素子502の上側が凸曲面状の第1の光学機能面502aと対応する部分が中空形状の二次固定空間である。そして、二次固定押圧保持部は、上側が凸曲面状の第1の光学機能面502a以外の部分にのみ一次成形部との当接部を有する。
【0079】
さらに、第2の固定型の二次固定押圧保持部は、一次成形部との境界部に前記第2の樹脂によるエアートラップ部分と前記中空形状の二次固定空間の部分との間を連通し、かつ前記第2の樹脂が浸入不能な隙間である2つのエアーベントを有する。
(作用・効果)
本実施の形態の三色成形品501の成形時にも上記各実施の形態と同様の製造方法で成形が行われる。そして、二次成形型による二次成形時には、一次成形体である光学素子502は可動型の可動入子に嵌合保持された状態で可動型と第2の固定型の二次固定押圧保持部とにより光学素子502の第1の光学機能面502a以外の外周部分が押圧保持される。このとき、第2の固定型の二次固定空間が光学素子502の第1の光学機能面502aと対応する位置に配置されているので、光学素子502の第1の光学機能面502aが第2の固定型の壁面に接触することなく、三色成形品501の二次成形が行なわれる。
【0080】
この三色成形品501の二次成形時には、光学素子502と隣接部材である着色外周部503との境界に発生するエアーが着色外周部503の外表面に当たる第2の固定型の二次固定押圧部の2つのエアーベントを通して二次固定空間へ排出される。このとき、光学素子502の第1の光学機能面502a以外の外表面には、第2の固定型の二次固定押圧保持部のエアーベントとの接合部分にエアーベント転写形状が成形される。
【0081】
これにより、三色成形品501の二次成形時に二次成形用キャビティのエアーが溶融樹脂の射出圧力による圧縮されることがなくなり、その圧縮熱による光学素子502と射出樹脂自身を変質することがなくなる。したがって、光学素子502と隣接部材である着色外周部503の耐薬品性能や密着強度が悪化することがない三色成形品501が得られることで、リユースの際の薬品洗浄により侵食することがなく、密着強度も十分で安全な内視鏡を提供することが可能になる。
【0082】
さらに、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施できることは勿論である。
次に、本出願の他の特徴的な技術事項を下記の通り付記する。

(付記項1) 可動側金型と、第1の樹脂が通る第1の固定側ランナを備え、前記第1の樹脂によって少なくとも光学機能面を有する光学素子を成形する第1のキャビティを、前記可動側金型との間に規定する第1の固定側金型と、成形された前記光学素子に対して、前記第1の樹脂とは異なる第2の樹脂によって2次成形部を成形する第2のキャビティを、前記可動側金型との間に規定する第2の固定側金型と、により2色成形品を成形する2色成形用金型であって、前記第2の固定側金型は、中空形状であって、前記光学素子の光学機能面以外にのみ当接することを特徴とする2色成形用金型。
【0083】
(付記項2) 前記第2の固定側金型は、エアーベントを有することを特徴とする付記項1に記載の2色成形用金型。
(付記項3) 可動側金型と第1の固定側金型との間に規定される第1のキャビティで、光学機能面を有する光学素子を成形する1次成形ステップと、前記可動側金型の移動にともなって、前記可動側金型と、前記光学素子の光学機能面以外の部分に当接する中空形状の第2の固定側金型と、の間に規定される第2のキャビティへ前記第1のキャビティから前記1次成形部を移動させる可動側金型移動ステップと、前記第2のキャビティで前記成形品の2次成形部を成形し、移動後の前記光学素子に対して前記2次成形部を一体化させる2次成形ステップと、により2色成形品を成形する2色成形品の成形方法。
【0084】
(付記項4) 前記第2の固定側金型はエアーベントを有し、
前記2次成形ステップは、前記エアーベントによって、成形時に発生する気体をキャビティ外に排出することを特徴とする付記項3に記載の2色成形品の成形方法。
(付記項5) 前記付記項3乃至4のいずれかに記載の2色成形品の成形方法を用いて成形された2色成形品。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、複数の異なる樹脂を組合せて一体化する多色成形用成形型と多色成形品の成形方法と多色成形品を使用する技術分野や、これを製造する技術分野に有効である。
【符号の説明】
【0086】
1…光学素子、1a1…凸面光学機能面、2…隣接部材、3…二色成形品、10…一次成形型(第1の成形型)、20…二次成形型(第2の成形型)、100…第1の固定型、200…第2の固定型、201…中空形状の二次固定空間、201B…エアーベント、300…可動型、1000…第1のキャビティ、5000…第2のキャビティ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の樹脂が通る第1の固定側ランナを備えた第1の固定型と、前記第1の固定型に対して接離可能な可動型との間に前記第1の樹脂によって少なくとも光学機能面を有する光学素子である一次成形部を成形する第1のキャビティを規定する第1の成形型と、
前記第1の成形型で成形された前記光学素子に対して接合させた状態で、前記第1の樹脂とは異なる第2の樹脂によって二次成形部を成形する第2のキャビティを規定する第2の成形型とを有し、
前記第2の成形型は、前記可動型に対して接離可能な第2の固定型を有し、前記可動型と前記第2の固定型との間に前記第2のキャビティを規定することにより多色成形品を成形する多色成形用成形型であって、
前記第2の固定型は、前記光学素子の光学機能面と対応する部分が中空形状であって、前記光学素子の光学機能面以外にのみ前記一次成形部との当接部を有する
ことを特徴とする多色成形用成形型。
【請求項2】
前記第2の固定型は、前記一次成形部との境界部に前記第2の樹脂によるエアートラップ部分と前記中空形状部分との間を連通し、かつ前記第2の樹脂が浸入不能な隙間であるエアーベントを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の多色成形用成形型。
【請求項3】
可動型と第1の固定型との間に規定される第1のキャビティで、光学機能面を有する光学素子である一次成形部を一次成形する一次成形ステップと、
前記可動型の移動にともなって、前記第1のキャビティから前記一次成形部を前記可動型と、前記光学素子の光学機能面以外の部分に当接する中空形状の第2の固定型と、の間に規定される第2のキャビティへ移動させる可動型の移動ステップと、
前記第2のキャビティで前記二次成形部を二次成形し、移動後の前記光学素子に対して前記二次成形部を一体化させる二次成形ステップと、
を具備する多色成形品の成形方法。
【請求項4】
前記二次成形ステップは、前記第2の固定型に形成され、前記一次成形部との境界部に前記第2の樹脂によるエアートラップ部分と前記中空形状部分との間を連通し、かつ前記第2の樹脂が浸入不能な隙間であるエアーベントによって、二次成形時に前記第2のキャビティの前記エアートラップ部分に発生する気体を前記第2のキャビティ外に排出することを特徴とする請求項3に記載の多色成形品の成形方法。
【請求項5】
前記請求項3乃至4のいずれかに記載の多色成形品の成形方法を用いて成形された多色成形品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−218331(P2012−218331A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87620(P2011−87620)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】