説明

多色成形用金型

【課題】汎用の射出成形機の要部をベースにして安価に製作することができる2色成形用金型を提供する。
【解決手段】固定盤(F)と、可動盤(M)と、4本のタイバー(T)を標準装備している射出成形機をベースにする。固定盤には固定側金型(1)を、可動盤には可動側金型(10)をタイバー(T)の内側において取り付ける。固定側金型と可動側金型との間には同様にタイバーの内側に回転側金型(20)を設ける。回転側金型はタイバーの外側に位置する井桁状の回転金型保持枠体(30)に回転可能に取り付ける。回転金型保持枠体は軸方向に移動自在である。回転側金型の両方のパーティング面側には、第1、2の回転凹部型(21、22)を形成し、固定側金型のパーティング面側にはコア型(2)を、可動側金型のパーティング面側には可動側凹部型(12)をそれぞれ形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定盤に取り付けられる固定側金型と、この固定盤に複数本のタイバーを介して接続されていると共に前記固定盤に対して型開閉される可動盤に取り付けられる可動側金型と、前記固定側金型と可動側金型との間に設けられている反転あるいは回転側金型とからなる、多色成形用金型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
1次成形で第1の樹脂材料を射出し、2次成形で第1の樹脂材料と異なる色の第2の樹脂材料を射出して、異なる色からなる成形品を一体的に成形する2色成形法も、第1の樹脂材料の上に第2の樹脂材料を重ねる形で射出して積層品を得る射出成形方法も共に複合成形方法として従来周知である。このような方法の実施に使用される金型も周知で、固定金型と、金型の中心軸を同転の中心として回転する回転金型とから構成されている。そして、これらの金型には、回転軸の一方に1次成形用のキャビティが、また他方に2次成形用のキャビティが設けられている。したがって、1次成形用のキャビティに第1の樹脂材料を射出すると、1次成形部分が成形される。そこで、型を開いて回転金型を2次成形位置へ回転させ、1次成形部分が保持されている2次成形用のキャビティに第2の樹脂材料を射出すると、2色成形品あるいは2層からなる積層品が得られる。
【0003】
また、3つの半成形品から1個の複合成形品を成形する射出成形方法は、本出願人により例えば特許文献1によって提案されている。この成形方法の実施に使用される金型は、スライド金型と、2個のスライドコアとから構成されている。スライドコアは、スライド金型のスライド方向と異なる方向にスライドすると共に、スライド金型とスライドコアは、スライド金型のキャビティとスライドコアのキャビティが互いに離間した位置と、接近して整合する位置とを採るようになっている。したがって、1次成形により、3個の半成形品をスライド金型とスライドコア内で同時に成形し、その後半成形品がスライド金型とスライドコア内に残った状態でスライドコアを開き、そしてスライド金型とスライドコアとをスライドさせて半成形品を所定の位置へ集合させる。そして、集合されて型締めされた接合部に溶融樹脂を2次成形により射出すると、スライド金型とスライドコア内で3個の半成形品が一体化された複合成形品が得られる。
【0004】
【特許文献1】特開2000−153538号公報
【特許文献2】特開平8ー108450号公報
【特許文献3】特開2004−66728号公報
【0005】
特許文献2には、固定側金型と、この固定側金型に対して型開閉される可動側金型と、これらの金型の間に設けられている中間プレートすなわち回転プレートとからなる3色成形用金型が示されている。回転プレートの、固定側金型に面したパーティング面にはコア型が形成されている。一方、固定側金型の、中間プレートに面した側には、円周方向に120度の間隔をおいて、前記コア型に対応する3個の第1、2、3の凹部が設けられている。第1、2の凹部には、固定側金型の方に半径外方から中心部に向かうように設けられているゲートが開口している。これに対し第3の凹部には、中間プレートの裏側に半径外方から中心部に向かうように設けられているゲートが開口している。したがって、中間プレートを120度ずつ回転させて3色からなる成形品を得ることができるが、第3のゲートは中間プレートの裏側に設けられているので、成形品の表面にゲートの痕跡は出ない。
【0006】
特許文献3により、スタックモールド成形型が提案されている。この成形型50は、図7に示されているように、型保持部51と、この型保持部51と4本のタイバー52、52、…で結合されている移動体53とを備えている。型保持部51には固定型55が、そして移動体53に可動型56がそれぞれ取り付けられている。固定型55と可動型56との間には、これらの型55、56から等間隔に開閉されるミドルプレート60が設けられている。固定型55とミドルプレート60との間に第1のキャビティC1が、ミドルプレート60と可動型56との間には第2のキャビティC2が構成されている。第1のキャビティC1にはホットランナ群61を介して、そして第2キャビティC2にはコールドランナ62を介して溶融樹脂が射出充填されるようになっている。したがって、図7に示されているように可動型56を固定型55に対して型締めして溶融樹脂を射出すると、第1のキャビティC1にはホットランナ群61を介して、第2のキャビティC2にはホットランナ群61およびコールドランナ62を介して充填される。冷却固化を待って可動型56を開くと、ミドルプレート60は等間隔に開かれ、2個の成形品が同時に得られる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、2色成形品あるいは2層からなる積層成形品を得る射出成形方法は従来周知であり、また3色からなる複合成形品の成形装置も特許文献1、2等により提案されているので、これらの方法を適用して2色成形品も3色成形品も成形することはできる。これらの成形方法の実施に使用される成形装置は専用機であるので、高効率的に成形できる利点は認められる。また、成形する複合成形品の数が多くなると、専用機のメリットが生じるようにもなる。しかしながら、専用機は汎用性あるいは応用性に欠ける欠点がある。また、専用機は汎用機に比較して高価になり、互換性の部品もないので、保守費用が嵩む恐れもある。
【0008】
特許文献3に示されているスタックモールド成形型50を構成している型保持部51は、汎用機の固定盤に相当し、移動体53は可動盤に相当しているので、汎用機の固定盤には固定型55を、可動盤には可動型56をそれぞれ取り付け、比較的安価にスタックモールド成形型50を得ることはできる。しかしながら、このスタックモールド成形型50のミドルプレート60は、スライド的に移動するだけで、ミドルプレート60の両面に形成されている2個の凹部は、固定型55の凹部あるいは可動型56の凹部に対して入れ替えるようにはなっていないので、2色成形品も3色成形品も成形することはできない。また、上記成形型には、ミドルプレート60を固定型55と可動型56とから等距離に開くために、ラック・ピニオン機構が採用されているが、一方のラックの基端部は固定盤51に、他方のラックの基端部は可動盤53にそれぞれ取り付けられているので、汎用の固定盤51と可動盤53とを一部加工しなければならないという問題もある。また、上記スタックモールド成形型50は、2色成形用型ではないので1頭の射出ノズルのみが示されているだけで、複数頭の射出ノズルを配置するときに生じる問題については何ら言及もされていない。
【0009】
本発明は、上記したような従来の問題点に鑑みてなされたものであって、汎用の射出成形機の要部をベースにして安価に製作することができる多色成形用金型を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
汎用の射出成形機は、従来周知のように固定盤と、この固定盤に対して型開閉される可動盤と、前記固定盤と可動盤との間に設けられている複数本例えば4本のタイバーと、例えばトグル機構からなる型開閉装置とを備えている。そして、前記固定盤と可動盤には得ようとする成形品の種類に応じた金型が選択的に取り付けられるようになっている。そこで、本発明は選択的に取り付けられる金型の1つに本発明に係る金型を付け加えることにより、上記目的を達成しようとするものである。すなわち、汎用の固定盤には本発明に係る固定側金型を、そして汎用の可動盤には本発明に係る可動側金型を取り付けると共に、前記固定側金型と可動側金型との間に回転側金型を設けることにより、上記目的を達成しようとするものである。
【0011】
すなわち、請求項1に記載の発明は、前記目的を達成するために、固定盤に取り付けられる固定側金型と、前記固定盤に複数本のタイバーを介して接続されていると共に前記固定盤に対して型開閉される可動盤に取り付けられる可動側金型と、前記固定側金型と可動側金型との間に設けられている反転あるいは回転側金型と、前記回転側金型を回転自在に支持している回転金型保持枠体とからなり、前記固定側金型と可動側金型と回転側金型は、前記複数本のタイバーの内側に配置され、前記回転金型保持枠体は、前記複数本のタイバーの外側に位置する枠部材により井桁状に構成され、そして前記固定側金型と前記可動側金型とに間隔保持部材を介して結合され、前記可動側金型が開かれると、前記間隔保持部材により前記固定側金型と可動側金型との間の実質的な中間位置に駆動され、閉じられると、前記固定側金型と回転側金型と可動側金型とが型閉じされるように駆動され、前記回転側金型の両方のパーティング面側には、第1、2の回転凹部型が形成され、前記固定側金型のパーティング面側には前記回転凹部型と共働するコア型が、前記可動側金型のパーティング面側には前記回転凹部型と共働する可動側凹部型がそれぞれ形成されている。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の金型において、第1の樹脂材料を射出する第1の射出ノズルは前記固定側金型の、パーティング面に実質的に直角な位置に、第2の樹脂材料を射出する第2の射出ノズルは前記可動側金型の、パーティング面と交わる所定の角度の位置に、それぞれタッチするように形成されている。
【0013】
請求項3に記載の発明は、固定盤に取り付けられる固定側金型と、前記固定盤に複数本のタイバーを介して接続されていると共に前記固定盤に対して型開閉される可動盤に取り付けられる可動側金型と、前記固定側金型と可動側金型との間に設けられている反転あるいは回転側金型と、前記回転側金型を回転自在に支持している回転金型保持枠体とからなり、前記固定側金型と可動側金型と回転側金型は、前記複数本のタイバーの内側に配置され、前記回転金型保持枠体は、前記複数本のタイバーの外側に位置する枠部材により井桁状に構成され、そして前記固定側金型と前記可動側金型とに間隔保持部材を介して結合され、前記可動側金型が開かれると、前記間隔保持部材により前記固定側金型と可動側金型との間の実質的な中間位置に駆動され、閉じられると、前記固定側金型と回転側金型と可動側金型とが型閉じされるように駆動され、前記回転側金型の両方のパーティング面側には第1、2の回転凹部型が形成され、前記固定側金型のパーティング面側には前記回転凹部型と共働する入れ駒が、前記可動側金型のパーティング面側には前記回転凹部型と共働する可動側型がそれぞれ形成され、前記入れ駒は、所定位置から複数段に後退するように構成され、後退する毎に前記回転側金型の回転凹部型との間に所定容積の新たなキャビティが形成され、後退することにより形成される新たなキャビティにはその都度新たなランナが開口するように構成されている。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の金型において、第1の樹脂材料を射出する第1の射出ノズルは前記可動側金型の、パーティング面と交わる所定の角度の位置に、第2の樹脂材料を射出する第2の射出ノズルは前記固定側金型の、パーティング面に実質的に直角な位置に、第3の樹脂材料を射出する第3の射出ノズルは前記固定側金型の、パーティング面と交わる所定の角度の位置に、それぞれタッチするように構成され、請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかの項に記載の金型において、前記間隔保持部材は、前記回転金型保持枠体の外側に位置するように構成される。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、請求項1に記載の発明によると、回転側金型の両方のパーティング面側には、第1、2の回転凹部型が形成され、固定側金型のパーティング面側には前記回転凹部型と共働するコア型が、可動側金型のパーティング面側には前記回転凹部型と共働する可動側凹部型がそれぞれ形成されているので、2色あるいは2材質からなる成形品を成形することができる。また、他の発明によると、固定側金型には入れ駒が設けられ、この入れ駒は所定位置から複数段に後退するように構成され、後退する毎に回転側金型の回転凹部型との間に所定容積の新たなキャビティが形成され、後退することにより形成される新たなキャビティにはその都度新たなランナが開口するように構成されているので、多色成形品あるいは多材質からなる多積層成形品を成形することができる。このような成形品を成形できる多色成形用金型は、汎用成形機あるいは標準的な成形機に備わっている固定盤には本発明に係る固定側金型を、可動盤には可動側金型を取り付け、固定側金型と可動側金型との間に回転側金型を設けるだけの構造であるので、汎用機をベースに安価に提供できるという、本発明に特有の効果が得られる。また、固定側金型も可動側金型もタイバーの内側に配置され、回転側金型を回転自在に保持している回転金型保持枠体はタイバーの外側に位置し、回転側金型もタイバーの内側に配置されているので、標準機の型締め装置をそのまま利用でき、さらに安価に提供できる。
【0016】
また、回転金型保持枠体がタイバーの外側に配置されているので、タイバーの内側には回転側金型が位置し、大きな回転側金型を採用できる。これにより、大型の多色成形品を成形することもできる。さらには、回転金型保持枠体は間隔保持部材を介して可動側金型と固定側金型とに連結されているので、可動側金型を開閉すると、回転側金型は自動的に開閉され、安価に多色成形用金型が得られる。また、射出ノズルが固定側金型の、パーティング面と交わる所定の角度の位置に、タッチするように構成されている発明によると、複数頭の射出ユニットを互いに干渉することなく配置することができる。このとき射出ノズルがタッチする力は、パーティング面と所定の角度をなしているので、パーティング面と平行に作用する力は半減される。半減されるのでタイバー等に悪影響を及ぼす力も減少する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を説明にする。図1は、本発明の第1の実施形態に係る2色成形用金型を示す図で、その(ア)はその平面図、その(イ)は縦側面図、その(ウ)は(イ)において矢視ウーウ方向に見た側面図であるが、これらの図に示されているように、本実施の形態に係る2色成形用金型は、固定盤Fと、可動盤Mと、これらの盤F、Mを結んでいる複数本例えば4本のタイバーT、T、…とを含んでいるが、これらの部材は射出成形機として汎用部材である。そして、本実施の形態によると、上記汎用部材である固定盤Fには固定側金型1が、可動盤Mには可動側金型10がそれぞれ取り付けられている。そして、これらの金型1、10の間に反転あるいは回転側金型20が設けられている。
【0018】
固定側金型1は、4本のタイバーT、T、…の内側に位置し、パーティング面P1側に、所定大きさおよび高さのコア型2が形成されている。また、固定側金型1にはパーティング面P1と直角にスプル3が形成されている。このスプル33は固定盤Fに取り付けられているロケートリングRと連通している。したがって、第2の射出ノズルN2がタッチする力は、固定盤Fすなわち固定側金型1に直角、換言するとパーティング面P1に直角に作用することになる。
【0019】
可動側金型10も、4本のタイバーT、T、…の内側に位置している。図1の(ア)では可動側金型10の一部がタイバーT、T、…から一部がはみ出しているように示されているが、可動側金型10は軸方向に移動するだけで回転はしないので、可動側金型10がタイバーT、T、…と干渉するようなことはない。可動側金型10のパーティング面P2には、深さおよび大きさにおいて2段の可動側凹部型12が形成されている。この凹部型12は、前述した固定側金型1のコア型2と実質的に同じ大きさになっている。このように構成されている可動側金型10は、略立方体を呈しているが、角の一部はパーティング面P2に対して所定の角度に切り落とされている。切り落とされた斜面13にロケートリング14が取り付けられている。ロケートリング14からは第1のホットスプル15、ホットランナ16および第2のホットスプル17が延び、第2のホットスプル17はゲートを介して凹部型12の底部に開口している。ロケートリング14が斜面13に設けられているので、後述する第1の射出ノズルがロケートリング14にタッチする力は、パーティング面P2に斜めに作用する。これにより、パーティング面P2をずらすように作用し、タイバーT、T、…等に悪影響を及ぼす力は半減される。
【0020】
回転側金型20は、回転金型保持枠体30に以下に説明するように、反転あるいは回転可能に取り付けられている。回転金型保持枠体30は、図1の(ウ)にもっともよく示されているように、タイバーT、Tの外側に位置する上下の枠部材31、32と、同様にタイバーT、Tの外側に位置する左右の枠部材33、34とから井桁状に形成されている。このように構成されている回転金型保持枠体30は、間隔保持部材40、40を介して固定側金型1と可動側金型10とに結合されている。間隔保持部材40、40は、左左の枠部材33、34の外側にそれぞれ配置されているが、同じ構造をしているので、以下一方の間隔保持部材40について説明する。間隔保持部材40は、図1の(イ)に示されているように、略Z状を呈するZ状リンク41と、2本の棒状リンク42、42とからなっている。Z状リンク41の略中心部が、左の枠部材33に回動軸43により回動自在に取り付けられている。Z状リンク41の両先端部は棒状リンク42、42の先端部にピン軸44により互いに回動可能に結合され、棒状リンク42、42の基端部は固定側金型1と可動側金型10とにそれぞれ回動軸45、45により回動自在に取り付けられている。したがって、可動側金型10を開くと、図1の(イ)に示されているように、Z状リンク41と2本の棒状リンク42、42は実線で示されているように延びて、回転金型保持枠体30は固定側金型1と可動側金型10との略中間位置を採る。型締めすると、Z状リンク41と2本の棒状リンク42、42は鎖線で示されているように縮み、回転金型保持枠体30に取り付けられている回転側金型20は固定側金型1と可動側金型10とに型締めされる位置を採る。すなわち、回転金型保持部材30は、図示されないガイドレール等に案内されて、可動側金型20の型開閉動作に連動して、一定の姿勢を保って軸方向にスライド的に駆動されるようになっている。
【0021】
回転側金型20の上下の端部の中心部には、回転軸24、24が取り付けられ、これらの回動軸24、24が上下の枠部材31、32の中間点において回動自在に軸受けされている。したがって、本実施の形態によると、回転側金型20は垂直軸(24、24)を中心にして反転あるいは回転することになる。この回転側金型20を180度反転あるいは回転させるための、サーボモータ、ピストンシリンダユニット等の駆動装置は図1には示されていない。また、汎用の射出成形機に備わっているトグル機構、トグル機構を駆動するサーボモータ、直圧シリンダ等の型締装置、成形品突き出すエジェクタ装置等も図1には示されていない。
【0022】
このように回転自在に設けられている回転側金型20は、略立方体を呈し、固定側金型1あるいは可動側金型10と同様にタイバーT、T、…の内側に位置する大きさになっている。そして、その両パーティング面P1、P2には第1、2の回転凹部型21、22がそれぞれ形成されている。これらの回転凹部型21、22は、固定側金型1のコア型2よりも、所定量だけ大きく且つ深くなっている。
【0023】
次に、図1の(エ)に示されているような、赤色の第1部分Rと、緑色の第2部分Gとからなる2色成形品の成形例について説明する。回転側金型20のパーティング面P1、P2が固定側金型1および可動側金型10のそれと平行になるように回転駆動して、可動側金型10を固定側金型1に対して型締めする。間隔保持部材40、40は図1の(イ)において鎖線で示されているように縮んで、回転側金型20も固定側金型1に対して型締めされる。そうすると、図2の(ア)に示されているように、固定側金型1のコア型2と回転側金型20の第1の回転凹部型21とにより第1部分Rを成形するためのキャビティC1が構成される。第1の射出ノズルN1から赤色の溶融樹脂を射出する。溶融樹脂はスプル3からキャビティC1に充填される。充填されている途中の段階が図2の(ア)に示されている。これにより、第1部分Rが成形される。ある程度の固化を待って、可動側金型10を開く。可動側金型10が開かれると、間隔保持部材40、40により回転側金型20も開かれて、固定側金型1と可動側金型10との中間位置に位置する。このとき、赤色の第1部分Rは回転側金型20の第1の回転凹部型21内に残っている。このようにして型を開いた状態が図2の(イ)に示されている。
【0024】
回転側金型20を180度回転させる。180度回転した状態が図2の(ウ)に示されている。可動側金型10を固定側金型1に対して型締めする。型締めすると、図2の(エ)に示されているように、固定側金型1のコア型2と回転側金型20の第2の回転凹部型22とにより第1部分Rを成形するためのキャビティC1が構成される。また、可動側金型10の凹部型12と回転側金型20の第1の回転凹部型21に残っている第1部分Rとにより第2部分Gを成形するためのキャビティC2が構成される。第1の射出ノズルN1から赤色の溶融樹脂を、第2の射出ノズルN2から緑色の溶融樹脂を、今度は実質的に同時に射出する。これにより、第1部分Rと、第1部分Rと第2部分Gとが積層された2色成形品とが同時に成形される。可動側金型10を開くと、間隔保持部材40、40により回転側金型20は、固定側金型1と可動側金型10との中間位置に開かれる。同時に、エジェクタピンが突き出て2色成形品が突き出される。2色成形品が突き出されたら、回転側金型20を180度回転させる。180度回転させると、図2の(ウ)の状態に戻る。以下前述したようにして成形する。あるいは、異種材料から同様にして積層成形品を成形する。
【0025】
図3に、間隔保持部材40’の他の実施の形態が示されている。本実施の形態によると、一対のラック46、47と、この一対のラック46、47に同時に噛み合っている1個のピニオン48とからなっている。上方のラック46の基端部は固定側金型1に取り付けられ、下方のラック47の基端部は可動側金型10に取り付けられている。ピニオン48は、これらのラック46、47に同時に噛み合うようにして回転金型保持枠体30の左の枠部材33に回転自在に取り付けられている。したがって、可動側金型10を型開閉方向に駆動すると、回転金型保持枠体30は、前述したように固定側金型1と可動側金型10の中間位置と型閉じ位置とに駆動されることになる。本実施の形態によってもラック46、47は固定側金型1と可動側金型10とに取り付けられているので、汎用の固定盤Fと可動盤Mを格別に手直しする必要はない。上記のラック・ピニオン機構は、右の枠部材34にも同様に取り付けられている。
【0026】
最後に、3色成形用金型の実施の形態を図4によって説明する。本実施の形態によっても、固定側金型1’と可動側金型10’と、回転側金型20とを備えているが、これらの金型1’、10’は前述した2色成形用の金型1、10と同じようにして固定盤Fと可動盤Mに取り付けられているので、タイバーは図4には示されていない。また、回転側金型20は同じ構造の回転金型保持枠体30に取り付けられているので、回転金型保持枠体30も、間隔保持部材40も示されていない。
【0027】
本実施の形態によると、固定側金型1’にはパーティング面P1側に所定大きさのボアが軸方向に形成され、このボアにスライドコアあるいは入れ駒4が軸方向に移動自在に設けられている。図4に示されている実施の形態は3色成形用金型であるので、入れ駒4はエアシリンダ5等により軸方向に1段に駆動されるようになっている。図4に示されている状態では、入れ駒4は初期位置にあり、その頂面6はパーティング面P1よりも所定量だけ内側に入り込んでいる。これにより、ボアの内周面と入れ駒4の頂面6とにより第1の凹部7が構成されている。この第1の凹部7にはスプル3’に連なった第1のランナ8が開口している。図4において右方向に1段駆動されると、第2の凹部が構成されるが、新しく構成される第2の凹部にはスプル3”に連なった第2のランナ9が新たに開口するようになっている。
【0028】
可動側金型10’は、2色成形用の可動側金型10と比較して可動側凹部型12がないだけで他は同じ構造をしているので、同じ参照数字を付して重複説明はしない。また、回転側金型20は同じ構造をしているので、同様に説明はしない。なお、本実施の形態によると、ボアの大きさは、回転側金型20の第1あるいは第2の回転凹部型21、22と実質的に同じ大きさになっている。
【0029】
次に、上記3色成形用金型を使用して、積層した形の赤色、緑色および黄色の3色からなる成形品を成形する例について説明する。回転側金型20をそのパーティング面P1が固定側金型1’のパーテイング面P1と平行になるように駆動しておいて、可動側金型10’を固定側金型1’に対して型締めする。そうすると、間隔保持部材40は前述したように縮んで、図4あるいは図5の(ア)に示されているように、固定側金型1’と回転側金型20と可動側金型10’は型締めされる。型締めされることにより、可動側金型10’のパーティング面P2と回転側金型20の第2の回転凹部型22とにより、第1層を成形するためのキャビティC1が構成される。図5の(イ)に示されているように、第1の射出ノヅルN1から赤色の溶融樹脂をキャビティC1に射出・充填する。これにより、1番目の赤色の第1層R1が成形される。
【0030】
第1の射出ノズルN1を待避させる。ある程度の固化を待って、可動側金型10’を開く。回転側金型20は、1番目の第1層R1を保持した状態で間隔保持部材40により、前述したように中間位置に開かれる。可動側金型10’と回転側金型20とが開かれた状態が図5の(ウ)に示されている。このように開かれると、回転側金型20は、固定側金型1’にも可動側金型10’に干渉されることなく、回転可能である。180度回転させる。回転させると、回転側金型20に残っている1番目の第1層R1は、図5の(エ)に示されているように、固定側金型1’の方を向く。可動側金型10’を固定側金型1’に対して型締めする。そうすると、図6の(ア)に示されているように、可動側金型10’のパーティング面P2と回転側金型20の第1の回転凹部型21とにより、2番目の第1層R2を成形するためのキャビティC1が構成される。また、回転側金型20に残っている1番目の第1層R1と、初期状態にある入れ駒4の頂面6とにより第2層を成形するためのキャビティC2が構成される。
【0031】
次いで、第1の射出ノズルN1からは赤色の溶融樹脂をキャビティC1に向けて、第2の射出ノズルN2からは緑色の溶融樹脂をキャビティC2に向けて射出する。これにより、赤色の2番目の第1層R2が成形される。また、赤色の1番目の第1層R1に緑色の第2層Gが積層された形で成形される。このようにして射出・充填している途中の段階が図6の(ア)に示されている。
【0032】
緑色の第2層Gがある程度固化するのを待って、入れ駒4を1段後退させる。そうすると、緑色の第2層Gと入れ駒4の頂面6とによりキャビティC3が構成される。このキャビティC3には、第2のランナ9が開口している。図6の(ウ)に示されているように、第3の射出ノズルN3から黄色の溶融樹脂をキャビティC3に向けて射出する。これにより、赤色の第1層R1と緑色の第2層Gと黄色の第3層Yが積層された3色成形品が成形される。第3の射出ノズルN3を待避させて、可動盤側金型10’を開く。3色成形品は突き出され、回転側金型20は中間位置に開かれる。この状態が図6の(エ)に示されている。入れ駒4を初期位置に戻すと、図5の(ウ)に示されている状態と同じ状態に戻る。以下同様にして成形する。
【0033】
上記実施の形態によると、第2、3の射出ノズルN2、N3は、固定盤Fにタッチするようになっている。汎用の固定盤は、一般に1頭の射出ノズルがタッチするようになっているので、汎用の固定盤を一部加工する必要がある。これを避けるために、図4において鎖線で示されているように、固定側金型1’に第3の射出ノズルN3がタッチするように実施することもできる。
【0034】
また、上記実施の形態によると、入れ駒4は1段に後退するようになっているので3色成形品が得られるが、複数段に後退するように実施すると多色成形品が得られることは明らかである。さらには、本実施の形態によると、回転金型保持枠体30は、間隔保持部材40により駆動されるようになっているが、可動側金型10の型開閉動作に連動する例えばピストンシリンダユニットにより駆動するように実施することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る2色成形用金型を示す図で、その(ア)はその平面図、その(イ)は縦側面図、その(ウ)は(イ)において矢視ウーウ方向に見た側面図、その(エ)は本実施の形態により得られる2色成形品の断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る2色成形用金型を示す図で、その(ア)〜(エ)はそれぞれ異なる成形段階にある金型を示す断面図である。
【図3】本発明の間隔保持部材の他の実施の形態を示す側面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る3色成形用金型の要部を示す平面図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る3色成形用金型を示す図で、その(ア)〜(エ)はそれぞれ異なる成形段階にある金型を示す断面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る3色成形用金型を示す図で、その(ア)〜(エ)は図5に示す成形段階の次の、それぞれ異なる成形段階にある金型を示す断面図である。
【図7】従来例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0036】
F 固定盤 M 可動盤
T タイバー N1〜N3 第1〜3の射出ノズル
1、1’ 固定側金型 2 コア型
10、10’ 可動側金型 12 凹部型
13 斜面 14 ロケートリング
20 回転側金型 21、22 第1、2の回転凹部型
30 回転金型保持枠体 31、32 上下の枠部材
33、34 左右の枠部材 40、40’ 間隔保持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定盤(F)に取り付けられる固定側金型(1)と、前記固定盤に複数本のタイバー(T、T、…)を介して接続されていると共に前記固定盤に対して型開閉される可動盤(M)に取り付けられる可動側金型(10)と、前記固定側金型と可動側金型との間に設けられている反転あるいは回転側金型(20)と、前記回転側金型を回転自在に支持している回転金型保持枠体(30)とからなり、
前記固定側金型と可動側金型と回転側金型は、前記複数本のタイバーの内側に配置され、
前記回転金型保持枠体(30)は、前記複数本のタイバーの外側に位置する枠部材(31〜34)により井桁状に構成され、そして前記固定側金型と前記可動側金型とに間隔保持部材(40)を介して結合され、前記可動側金型が開かれると、前記間隔保持部材により前記固定側金型と可動側金型との間の実質的な中間位置に駆動され、閉じられると、前記固定側金型と回転側金型と可動側金型とが型閉じされるように駆動され、
前記回転側金型の両方のパーティング面側には、第1、2の回転凹部型(21、22)が形成され、前記固定側金型のパーティング面側には前記回転凹部型と共働するコア型(2)が、前記可動側金型のパーティング面側には前記回転凹部型と共働する可動側凹部型(12)がそれぞれ形成されている、多色成形用金型。
【請求項2】
請求項1に記載の金型において、第1の樹脂材料を射出する第1の射出ノズル(N1)は前記固定側金型の、パーティング面に実質的に直角な位置に、第2の樹脂材料を射出する第2の射出ノズル(N2)は前記可動側金型の、パーティング面と交わる所定の角度の位置に、それぞれタッチするように構成されている、多色成形用金型。
【請求項3】
固定盤(F)に取り付けられる固定側金型(1’)と、前記固定盤に複数本のタイバーを介して接続されていると共に前記固定盤に対して型開閉される可動盤(M)に取り付けられる可動側金型(10’)と、前記固定側金型と可動側金型との間に設けられている反転あるいは回転側金型(20)と、前記回転側金型を回転自在に支持している回転金型保持枠体(30)とからなり、
前記固定側金型と可動側金型と回転側金型は、前記複数本のタイバーの内側に配置され、
前記回転金型保持枠体(30)は、前記複数本のタイバーの外側に位置する枠部材(31〜34)により井桁状に構成され、そして前記固定側金型と前記可動側金型とに間隔保持部材(40)を介して結合され、前記可動側金型が開かれると、前記間隔保持部材により前記固定側金型と可動側金型との間の実質的な中間位置に駆動され、閉じられると、前記固定側金型と回転側金型と可動側金型とが型閉じされるように駆動され、
前記回転側金型の両方のパーティング面側には第1、2の回転凹部型(21、22)が形成され、
前記固定側金型のパーティング面側には前記回転凹部型と共働する入れ駒(4)が、前記可動側金型のパーティング面側には前記回転凹部型と共働する可動側型(P2)がそれぞれ形成され、
前記入れ駒は、所定位置から複数段に後退するように構成され、後退する毎に前記回転側金型の回転凹部型との間に所定容積の新たなキャビティが形成され、後退することにより形成される新たなキャビティにはその都度新たなランナが開口することを特徴とする、多色成形用金型。
【請求項4】
請求項3に記載の金型において、第1の樹脂材料を射出する第1の射出ノズルは前記可動側金型の、パーティング面と交わる所定の角度の位置に、第2の樹脂材料を射出する第2の射出ノズルは前記固定側金型の、パーティング面に実質的に直角な位置に、第3の樹脂材料を射出する第3の射出ノズルは前記固定側金型の、パーティング面と交わる所定の角度の位置に、それぞれタッチするように形成されている、多色成形用金型。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの項に記載の金型において、前記間隔保持部材(40、40’)は、前記回転金型保持枠体(30)の外側に位置している、多色成形用金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−64278(P2010−64278A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−230206(P2008−230206)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】